(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】小さい外径を有するスリーブ又は金属コイルのコイラーマンドレル上での確実な取り扱い
(51)【国際特許分類】
B21C 47/24 20060101AFI20240328BHJP
B65H 19/12 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B21C47/24 F
B65H19/12 Z
B21C47/24 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560739
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022057424
(87)【国際公開番号】W WO2022207401
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・クチャー
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアノート・ディリーザマー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・シャラウアー
【テーマコード(参考)】
3F064
4E026
【Fターム(参考)】
3F064AA06
3F064EA01
3F064EA17
4E026AA04
4E026DA06
4E026DA13
4E026DA18
(57)【要約】
本発明は、調節可能な保持アーム(11)を有するコイル搬送キャリッジ(1)と、小さい外径を有する金属コイル(20)又はスリーブ(21)をコイラーマンドレル(22)上で確実に取り扱うための方法と、に関する。コイル搬送キャリッジ(1)は、コイル(20)又はスリーブ(21)を受容するための鉛直に変位可能なコイルサドル(5)と、コイルサドル(5)上で向かい合う2つの、回転駆動部(9)を用いて旋回可能な、コイル(20)又はスリーブ(21)を安定させるための保持アーム(11)と、コイル搬送キャリッジ(1)を移動させるための第2の駆動ユニット(13)と、を有している。コイラーマンドレル(22)から取り外すために、コイルサドル(5)は、コイラーマンドレル(22)上に存在するコイル(20)に対して調節され、保持アーム(11)は、コイル(20)上に旋回する。コイラーマンドレル(22)に取り付けるために、スリーブ(21)は、まずコイル搬送キャリッジ(1)のコイルサドル(5)に載置され、この際、保持アーム(11)によって案内される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイラーマンドレル(22)上のコイル(20)又はスリーブ(21)を確実に取り扱うためのコイル搬送キャリッジ(1)であって、
-第1の駆動ユニット(3)を用いて、鉛直方向に変位可能なコイルサドル(5)であって、前記コイル(20)又は前記スリーブ(21)を受容するための、複数のそれぞれ第1の水平方向(X
1)の周りに軸方向に回転可能である支持ローラ(7)を備えた、コイルサドル(5)と、
-回転駆動部(9)を用いて前記第1の水平方向(X
1)の周りに旋回可能であり、前記コイルの外径が限界径d
0より大きくない場合は前記コイル(20)を安定させるため、又は前記スリーブ(21)を安定させるための保持アーム(11)であって、対を成して、前記第1の水平方向(X
1)に対して垂直に方向付けられた第2の水平方向(X
2)において、互いに向かい合うように前記コイルサドル(5)上に配置されている、保持アーム(11)と、
-前記コイル搬送キャリッジ(1)を水平方向に移動させるための第2の駆動ユニット(13)と、
-前記第1の駆動ユニット(3)及び前記第2の駆動ユニット(13)と前記回転駆動部(9)とを作動させるための制御ユニット(16)と、
-上位の制御ユニット(19)と通信するためのデータインターフェース(17)と、
を有しているコイル搬送キャリッジ(1)。
【請求項2】
前記回転駆動部(9)が歯車モータとして構成されている、請求項1に記載のコイル搬送キャリッジ(1)。
【請求項3】
前記保持アーム(11)が停止位置Pに旋回することが可能であり、これによって、前記第2の水平方向(X
2)における前記保持アーム(11)間の最大延長(d
max)は、前記第2の水平方向(X
2)における前記コイル搬送キャリッジ(1)の最大の寸法(d
btw)よりも小さいか等しくなる、請求項1又は2に記載のコイル搬送キャリッジ(1)。
【請求項4】
前記保持アーム(11)が、500mmと前記限界径d
0との間の外径を有する前記コイル(20)又は前記スリーブ(21)を積極的に安定させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル搬送キャリッジ(1)。
【請求項5】
前記保持アーム(11)が、前記保持アームの内側面(11’)に、摩擦低減コーティング(14)又は摺動ローラ(15)を備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル搬送キャリッジ(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル搬送キャリッジ(1)を用いて、外径が限界径d
0よりも小さいコイル(20)をコイラーマンドレル(22)から取り外すための方法であって、
-第1のステップ(S1)では、コイルサドル(5)が、第1の駆動ユニット(3)を用いて鉛直に変位し、コイラーマンドレル(22)上に存在する、繰り出されたストリップ部分(20’)に接続されているコイル(20)に対して調節され、前記コイルサドル(5)の支持ローラ(7)は、前記コイル(20)に、周囲側において前記コイルの下面で接触し、
-第2のステップ(S2)では、保持アーム(11)が回転駆動部(9)を用いて前記コイル(20)上へ旋回し、
-第3のステップ(S3)では、前記繰り出されたストリップ部分(20’)が、切断装置(24)を用いて前記コイル(20)から切断され、
-第4のステップ(S4)では、前記コイル(20)のストリップの自由端(20”)が、周囲側において、前記コイル(20)の長手軸(M)を通る鉛直線に対して所定の角度範囲(α
max)内に位置決めされるまで、前記コイル(20)が前記コイラーマンドレル(22)を用いて前記コイル(20)の繰り出し方向(U)とは逆に回転し、続いて、前記コイラーマンドレル(22)は潰され、
-第5のステップ(S5)では、前記コイル搬送キャリッジ(1)は、前記コイル(1)が前記コイラーマンドレル(22)から完全に取り外されるまで、第2の駆動ユニット(13)を用いて、前記コイラーマンドレル(22)から離れるように動かされ、同時に、前記コイラーマンドレル(22)は繰り出し方向(U)に対して逆に回転し、
-第6のステップ(S6)では、前記コイルは、前記コイル搬送キャリッジ(1)によって、前記第2の駆動ユニット(13)を作動させることを通じて、目標位置、例えば結合ステーションまで搬送される方法。
【請求項7】
前記第5のステップ(S5)と前記第6のステップ(S6)との間のステップ(S5’)において、前記コイルサドル(5)が第1の駆動ユニット(3)を用いて鉛直に下降する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
制御ユニット(16)が、データインターフェース(17)を介して、上位の制御ユニット(19)からデータを受信し、前記データに基づいて前記制御ユニット(16)は、前記ステップ(S1)から(S6)のシーケンスが実行されるように、前記第1の駆動ユニット(3)及び前記第2の駆動ユニット(13)と前記回転駆動部(9)とを作動させる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記データが、前記コイラーマンドレル(22)の状態(m)及び/又は前記コイラーマンドレル(22)上の前記コイル(20)の寸法(a)及び/又は前記コイルの重量(g)及び/又は目標位置(Z)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコイル搬送キャリッジ(1)を用いてスリーブ(21)をコイラーマンドレル(22)に取り付けるための方法であって、
-第1のステップ(S11)では、前記コイル搬送キャリッジ(1)が、第2の駆動ユニット(13)を用いて、受け渡しステーション(30)の前方の受容位置(A)に移動し、コイルサドル(5)は、第1の駆動ユニット(3)を用いて、受け取り高さ(h
0)に移動し、保持アーム(11)は、回転駆動部(9)を用いて固定位置(S)に旋回し、
-第2のステップ(S12)では、前記スリーブ(21)は、前記受け渡しステーション(30)の受け渡し装置(32)を用いて、前記コイル搬送キャリッジ(1)の前記コイルサドル(5)に載置され、
-第3のステップ(S13)では、前記保持アーム(11)が、前記回転駆動部(9)を用いて前記スリーブ(21)上に旋回し、これによって、前記保持アーム(11)の内側面(11’)が前記スリーブ(21)に周囲側で接触し、
-第4のステップ(S14)では、前記コイル搬送キャリッジ(1)が、前記第2の駆動ユニット(13)を用いて、前記コイラーマンドレル(22)の直前の位置に移動し、
-第5のステップ(S15)では、前記コイルサドル(5)が、前記第1の駆動ユニット(3)を用いて鉛直方向に変位し、これによって、前記スリーブ(21)の長手軸(M)は前記コイラーマンドレル(22)の高さに位置し、
-第6のステップ(S16)では、前記コイル搬送キャリッジ(1)は、前記第2の駆動ユニット(13)を用いて、前記スリーブ(21)が前記コイラーマンドレル(22)に完全に取り付けられるまで、潰れた前記コイラーマンドレル(22)に向かって移動し、
-第7のステップ(S17)では、前記コイラーマンドレル(22)が拡張し、これによって、前記スリーブ(21)が前記コイラーマンドレル(22)によって非積極的に保持され、
-第8のステップ(S18)では、前記保持アーム(11)は、前記回転駆動部(9)を用いて前記スリーブ(21)から離れるように旋回し、前記コイルサドル(5)は、前記第1の駆動ユニット(3)を用いて鉛直に下降する方法。
【請求項11】
前記第2のステップ(S12)の間、前記コイルサドル(5)が、前記第1の駆動ユニット(3)を用いて鉛直方向に移動し、これによって、前記コイル搬送キャリッジ(1)は、前記受け渡し装置(32)のいかなる部分とも衝突しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
制御ユニット(16)が、データインターフェース(17)を介して、上位の制御ユニット(19)からデータを受信し、前記データに基づいて前記制御ユニット(16)は、前記ステップ(S11)から(S18)のシーケンスが実行されるように、前記第1の駆動ユニット(3)及び前記第2の駆動ユニット(13)と前記回転駆動部(9)とを作動させる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記データが、前記スリーブ(21)の寸法(a)及び/又は前記コイラーマンドレル(22)の状態(m)及び/又は受容位置(A)を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節可能な保持アームを備えたコイル搬送キャリッジと、小さい外径を有する金属又はスリーブをコイラーマンドレル上で確実に取り扱うための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術からは、鉛直方向に変位可能なコイルサドルを備えた水平方向に移動可能なコイル搬送キャリッジが知られている。コイルサドルの上面には、コイルを受容するために、複数の支持ローラが配置されていてよく、各支持ローラはそれぞれ、水平方向の周りに軸方向に回転することができる。このようなコイル搬送キャリッジは、十分な自重を有し、したがってさらなる剪断手段を有さずとも跳ね上がる傾向を有さないようなコイルの確実な取り扱い(例えば、出発位置から目標位置への搬送、コイラーマンドレルへの取り付け又はコイラーマンドレルからの取り外しなど)に適している。
【0003】
しかしながら、製造規格によっては、コイラーマンドレルから繰り出される金属ストリップが完全には繰り出されず(例えば、リバーシブルコイラーの場合)、当該金属ストリップの残片がコイラーマンドレルに残存し、当該残片をコイラーマンドレルから搬出しなければならない場合がある。このような残片は、その外径が特定の値d0、例えば750mmを超えない場合、「残片コイル」とも呼ばれ、一般的に、有する自重も小さくなる。値d0を以下において「限界径」と称する。
【0004】
このような残片をコイラーマンドレルから搬出するために、残片に依然として接続されている元のストリップの大部分を繰り出した後で、コイル搬送キャリッジのコイルサドルが、残片の下面に対して調節される。続いて分離切断が行われ、繰り出されたストリップ部分が、コイラーマンドレルに残存する残片から切断される。その後、コイラーマンドレルに残存する残片は、ストリップの自由端が周囲側においてコイルサドルの近くに位置する(いわゆる5時又は7時の位置)ように、コイラーマンドレルによって巻き戻される(すなわち、繰り出し方向とは逆に回転させられる)。
【0005】
残片の外径が最大の限界径d0を下回る場合、当該残留コイルは、特にストリップ材料が高い内部強度を有する場合、機械的に不安定であり、金属ストリップに存在する残留弾性応力ゆえに跳ね上がる傾向を有し得るが、これは自明のことながら、その輸送及び取り扱いに際する安全上の大きな危険を意味する。先行技術からは、不安定なコイルを搬送するための様々な解決策が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1は、コイル搬送キャリッジを用いてコイラーマンドレルから高強度コイルを取り外すために、2つの押さえアームを用いて各コイルを安定させることを提案しており、押さえアームはそれぞれコイルの外周面又はコイルアイ内に押さえ力を及ぼす。このような解決策では、高い構造的複雑性が必要とされ、利用できる搬送範囲は限定されている。なぜなら、押さえアームはそれぞれ別々に移動可能な機械装置として構成されており、コイル搬送キャリッジの動きと同期させなければならないからである。
【0007】
特許文献2からは、コイルサドル内で下降可能なクランプユニットを備えたコイル搬送キャリッジが知られており、クランプユニットは、作動した状態において、コイル搬送キャリッジに載置された金属コイルのコイルアイに押さえ力を作用させることによって、金属コイルをコイルサドルに対して押圧し、金属コイルをその位置に安定させることができる。原則的には、クランプユニットが作動した場合でも、このようなコイル搬送キャリッジ上でコイルを回転させることは可能であるが、同時にクランプユニットを伸長させた場合に、依然として完全にコイラーマンドレル上に存在しているコイルを、直接コイル搬送キャリッジに引き受けることは、コイラーマンドレルに衝突するので不可能である。
【0008】
特許文献3は、高強度コイルが2つの固定された支持点に載置された後、不安定な均衡位置にあるかどうかを検査し、その場合、さらなる可動の支持点を、金属コイルの中心面の下方において、金属コイルの外周面に対して調節することを開示している。コイルはその中心面の下方においてのみ保持され、したがって外周面の半分以上に沿っては保持されないので、支持点に対する積極的な接続は存在せず、すでに安定して載置されたコイルに関しても、例えば強い振動又はコイル自体の熱収縮によって引き起こされる強い残留応力による自己開放を確実に排除することは不可能である。
【0009】
さらに、既存のコイラーマンドレルが許容するよりも大きい内径を有するコイルを巻く必要が存在する場合もある。この目的のために、いわゆる「スリーブ」が、巻き取りプロセスの前に、当該コイラーマンドレルに取り付けられる。スリーブは、残留コイルと同様に、低い自重を有するので、コイル搬送キャリッジを用いて取り扱われる際に、横に倒れる、又は転落する危険が存在しており、したがって、先行技術に係るスリーブは、スリーブマニピュレータの形の専用の機械装置を用いて、コイラーマンドレルに取り付けられる。
【0010】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3で提案された解決策はいずれも、分離切断を行った後の残留コイルを、コイラーマンドレルに巻き戻す際にすでに機械的に安定させるため、かつ、スリーブをコイラーマンドレルに取り付けするために用いることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第2648860号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3366381号明細書
【特許文献3】欧州特許第2544835号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、先行技術から知られているコイル搬送キャリッジをさらに発展させて、コイル、特に限界径d0よりも小さい外径を有するコイル、及びスリーブのコイラーマンドレル上での確実な取り扱いを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、本課題は、請求項1の特徴を有するコイル搬送キャリッジと、請求項6の特徴を有する方法と、請求項10の特徴を有する方法と、によって解決される。
【0014】
本発明の有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0015】
コイル、特に限界径d0よりも小さい外径を有するコイル、又はスリーブをコイラーマンドレル上で確実に取り扱うための本発明に係るコイル搬送キャリッジは、第1の駆動ユニットによって鉛直方向に変位可能なコイルサドルを含んでいる。コイルサドルの上面には、コイル又はスリーブを受容するための複数の支持ローラが配置されており、支持ローラはそれぞれ、第1の水平方向X1の周りに軸方向に回転可能である。好ましくは、第1の水平方向X1は、コイラーマンドレルの長手軸と一致する。
【0016】
コイル搬送キャリッジはさらに、コイルの外径が限界径d0より大きくない場合はコイルを安定させるため、又はスリーブを安定させるための保持アームを有している。保持アームは対を成して、第2の水平方向X2において、互いに向かい合うようにコイルサドル上に配置されており、第2の水平方向X2は、第1の水平方向X1に対して垂直に方向付けられている。保持アームは、回転駆動部を用いて、第1の水平方向X1の周りに旋回可能であり、したがって、コイルサドル上に存在するコイル又はスリーブ上に旋回可能であり、したがって、望ましくないコイルの跳ね上がり、コイル若しくはスリーブが横に転落することを防止することができる。好ましくは、コイル搬送キャリッジは、2本又は4本の保持アームを有している。コイルの外径が最大の限界径d0を超える場合、保持アームは不要である。
【0017】
さらに、本発明に係るコイル搬送キャリッジは、第2の駆動ユニットを有しており、第2の駆動ユニットを用いて、コイル搬送キャリッジは水平方向に移動可能である。これによって、コイル搬送キャリッジは、例えば、コイルをコイラーマンドレルから取り外すため、又はスリーブをコイラーマンドレルに取り付けるために、コイラーマンドレルに向かって、又はコイラーマンドレルから離れるように移動可能である。好ましくは、第2の駆動ユニットを用いてコイル搬送キャリッジを移動させることができる水平方向は、コイラーマンドレルの領域又はスリーブに関する受容領域において、第1の水平方向X1と一致する。
【0018】
本発明に係るコイル搬送キャリッジはまた、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットと回転駆動部とを作動させるための制御ユニット、並びに、上位の制御ユニットと通信するためのデータインターフェースを有している。当該データインターフェースによって、コイル搬送キャリッジの制御ユニットは、例えばプラント自動化であり得る上位の制御ユニットから、実行されるべき搬送プロセスに関するデータを受信することができる。
【0019】
上位の制御ユニットから受信するデータは、次の搬送プロセスのキーデータの形式でのみ存在可能であり、当該キーデータは、例えば、コイラーマンドレルの状態m(潰れた状態か、又は広がった状態)、コイルの寸法a及び/又は重量g、コイルが搬送されるべき目標位置Z、又はコイル搬送キャリッジからスリーブが引き受けられるべき受容位置Aを含んでいる。この場合、制御ユニットは、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニット並びに回転駆動部の作動に関する時間的順序と制御信号とを自動的に決定し、実行するように設定されている。パラメータには、例えば、移動距離又は各機械装置の調整力が含まれる。
【0020】
制御ユニットは、コイラーマンドレルに関する状態信号を基に、コイルをコイラーマンドレルから取り外すことができるか、又は、スリーブをコイラーマンドレルに取り付けることができるかを自動的に決定するように設定されていてもよい。例えば、制御ユニットは、許容されない動作状態(例えば、コイルがコイラーマンドレルから取り外される、又はスリーブがコイラーマンドレルに取り付けられるべきだが、コイラーマンドレルが依然として広がっている場合)を自動的に検出し、データインターフェースを介して上位の制御ユニットに報告し、さらなる制御命令を待つことができる。
【0021】
さらなるセンサ信号(例えば、障害物を検出するためのライトバリア)も制御ユニットに供給することが可能であり、制御ユニットは、これらのさらなるセンサ信号に基づいて、搬送プロセスが衝突を生じさせることなく実行できるかどうかを自動的に判断できるように構成されていてよい。制御ユニットは、コイル搬送キャリッジ又はその一部の障害物への衝突が迫っている状態を、許容されない動作状態として自動的に認識し、データインターフェースを介して上位の制御ユニットに報告し、必要な場合には搬送プロセスを中断するか、又は開始しないようにすることができる。
【0022】
本発明に係るコイル搬送キャリッジの一態様では、回転駆動部は歯車モータとして構成されている。コイル搬送キャリッジの保持アームは、コイル又はスリーブを固定するために回転運動を行う必要があるので、回転出力軸を有するモータと対応する減速ギアとの組み合わせによって、有利には、各回転駆動部の小型設計を実現することが可能であり、これによって、コイル又はスリーブを取り扱う際の衝突の危険が最小限に抑えられる。
【0023】
本発明に係るコイル搬送キャリッジのさらなる態様では、保持アームは停止位置Pに旋回することが可能であり、これによって、第2の水平方向X2における保持アーム間の最大延長dmaxは、第2の水平方向X2におけるコイル搬送キャリッジの最大の寸法dbtwよりも小さいか等しくなる。第2の水平方向X2における支持アーム間の「最大延長」dmaxは、支持アームが停止位置Pにある際、第2の水平方向X2における2つの支持アームのそれぞれに存在する点の2つによって形成される可能な最大の距離であると理解される。同様に、第2の水平方向X2におけるコイル搬送キャリッジの「最大の寸法」dbtwは、コイル搬送キャリアの両側にそれぞれ位置する点の2つによって第2の水平方向X2において形成される可能な最大の距離であると理解される。
【0024】
単純化して表現すると、保持アームの停止位置への旋回は、コイル搬送キャリッジの幅方向を第2の水平方向X2と同一視する場合、停止位置Pにおける保持アームがコイル搬送キャリッジ自体よりも「幅広く」はないという結果をもたらす。これによって、有利なことに、その寸法ゆえに安定化を必要としないコイルを搬送する際に、保持アームが省スペースに停止位置に旋回可能であり、先行技術から知られたコイル搬送キャリッジと比較して追加のスペースを必要としないことを実現する。したがって、本発明に係るコイル搬送キャリッジは、対応する走行区間の構造上の変更が不要であるので、既存の搬送装置の代用又は追加装備として適している。
【0025】
好ましくは、保持アームは、500mmと限界径d0との間の範囲にある外径を有するコイル又はスリーブを積極的に安定させるように構成されている。限界径d0は、例えば750mmとすることができる。これは、保持アームを適切に成形することによって達成される。「積極的な安定化」とは、コイル搬送キャリッジの各保持アームが、コイルサドル上に存在するコイル又はスリーブに対して回転駆動部によって適切に調節された場合に、コイル又はスリーブの長手軸Mを通る水平中心面の上方の少なくとも1点において、周囲側でコイル又はスリーブに接触することであると理解される。
【0026】
保持アームの調節プロセス中及びコイル搬送キャリッジによる搬送中に、コイル又はスリーブの周面に傷又はへこみが生じることを避けるために、保持アームは、その内側面に好ましくは摩擦低減コーティング又は摺動ローラを備えている。
【0027】
本発明に係るコイル搬送キャリッジを用いて、外径が限界径d0よりも小さいコイルをコイラーマンドレルから取り外すための本発明に係る方法では、第1のステップS1において、コイル搬送キャリッジのコイルサドルが、第1の駆動ユニットを用いて鉛直に変位し、コイラーマンドレル上に存在する、この時点では依然として繰り出されているストリップ部分に接続されているコイルに対して調節され、コイルサドルの支持ローラは、その下面でコイルに接触する。
【0028】
コイラーマンドレル上に存在するコイルとのコイルサドルの調節は、例えば、力制御又は位置制御によって行われ得る。位置制御による調節は、対応するコイルの直径に基づいて、又はセンサ信号(例えば距離センサ若しくは接触センサからの)に基づいて行なわれ得る。力制御による調節は、コイルサドルに関する力測定装置を用いて、対応するコイル重量g又は所定の最大調整力に基づいて行われ得る。力制御による調節と位置制御による調節とを組み合わせることも可能である。当該コイルの直径又は当該コイルの重量gは、この目的のために、データインターフェースを介してコイル搬送キャリッジの制御ユニットに伝達されてもよい。
【0029】
特に好ましくは、コイルサドルは、繰り出されたストリップ部分が切断された後のコイルの重量に対応する力で、コイラーマンドレル上に存在するコイルに対して調節される。これによって、コイラーマンドレルは、コイルの重量から解放され、後続のステップにおいて問題なく、コイルをコイラーマンドレルから取り外すことができる。なぜなら、このためにはコイラーマンドレルが潰れることが必要であるが、その際に、コイルの重量又はコイルサドルの過剰な調整力によって引き起こされる弾性ひずみを補償する必要がもはやないからである。
【0030】
本発明に係る方法の第2のステップS2では、保持アームが回転駆動部を用いてコイル上へ旋回する。保持アームのコイルへの旋回は、例えば特定のトルクを加えることによって実施可能であり、これによって、保持アームがコイルの外周面に実際に接触することが確実化される。これによって、次の第3のステップS3において繰り出されたストリップ部分をコイルから切断することによって生じるストリップの自由端は、コイルの外周面に押し付けられ、制御されない落下又は跳ね上がりから機械的に保護される。第3のステップS3における繰り出されたストリップ部分のコイルからの切断は、切断装置を用いて行われ、当該切断装置は、コイラーマンドレルの横方向、すなわちその長手軸に対して横方向に配置されている。
【0031】
本発明に係る方法の第4のステップS4では、コイルのストリップの自由端が、周囲側において、コイルの長手軸Mを通る鉛直線に対して所定の角度範囲αmax内に位置決めされるまで、コイルがコイラーマンドレルを用いてコイルの繰り出し方向Uとは逆に回転する。この角度範囲αmaxは、コイルサドルの支持ローラの幾何学的配置によって決定されていてよく、ストリップの自由端は、例えば、支持ローラの1つから最大20cmの位置(いわゆる5時又は7時の位置)に配置される。好ましくは、ストリップの自由端は、コイルが繰り出し方向Uとは逆に回転する場合、ストリップ縁がコイルのその下に位置する層に押し付けられることを避けるために、支持ローラの1つを越えては回転しない。コイルの繰り出し方向Uは、コイラーマンドレルから繰り出される際にコイルが回転する方向であると理解される。コイラーマンドレルを広げた状態では、コイラーマンドレルとコイルとの間にコイルアイ内で機械的接触が生じる。したがって、次に、すなわち繰り出し方向Uの逆に回転した後、広げられていたコイラーマンドレルは潰される(すなわち、マンドレルとコイルとの間にもはや機械的接触が存在しないように、その外径が縮小される)。
【0032】
本発明に係る方法の後続の第5のステップS5において、コイル搬送キャリッジは、コイルがコイラーマンドレルから完全に取り外され、コイラーマンドレルの部分がコイルのコイルアイ内にもはや突出しなくなるまで、第2の駆動ユニットを用いてコイラーマンドレルから離れるように動かされる。同時に、コイル搬送キャリッジが遠ざかる間、コイルの内巻きがコイラーマンドレルに吊り下げられたままになることを回避するために、コイラーマンドレルを繰り出し方向Uに対して逆に回転させる。最後の第6のステップS6において、コイルは、コイル搬送キャリッジによって、第2の駆動ユニットを作動させることによって、目標位置、例えば結合ステーションまで搬送される。
【0033】
本発明に係る方法の一態様によると、第5のステップS5と第6のステップS6との間に実施されるステップS5’において、コイルサドルが第1の駆動ユニットを用いて鉛直に下降する。これによって、搬送プロセス中の第2の水平方向X2におけるコイル搬送キャリッジの機械的安定性が向上する。
【0034】
本発明に係る方法のさらなる態様によると、コイル搬送キャリッジの制御ユニットは、データインターフェースを介して、上位の制御ユニットからデータを受信し、当該データに基づいて制御ユニットは、ステップS1からS6のシーケンスが実行されるように、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットと回転駆動部とを作動させる。
【0035】
本発明に係る方法の一態様によると、上位の制御ユニットから受信したデータは、上述した次の搬送プロセスのキーデータの形でのみ存在し得る。この際、データは、コイラーマンドレルの状態m、コイラーマンドレル上のコイルの寸法a、コイルの重量g、又はコイルがコイラーマンドレルから取り外された後で搬送されるべき目標位置Zを含み得る。
【0036】
この場合、制御ユニットは、時間的順序と、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニット並びに回転駆動部の作動に関する制御信号と、を自動的に決定し、実行するように設定されるので、ステップS1~S6のシーケンスは、コイル搬送キャリッジ又はその制御ユニットによって自律的に実行され、これは、コイル搬送キャリッジのいわゆる完全自動運転モードと呼ばれる。その利点は、上位の制御ユニット側において、それぞれのコイル搬送に関する制御及び監視の労力が最小限に抑えられることにある。
【0037】
代替的に、コイル搬送キャリッジの制御ユニットは、実行されるべき搬送プロセスの個々の部分ステップに関しても、例えば上述のステップS1~S6の各々について、データインターフェースを介して、上位の制御ユニットから、対応するデータパケットを受信することが可能であり、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニット並びに回転駆動部の作動に関する制御信号は、コイル搬送キャリッジの制御ユニットによって決定されるが、個々の部分ステップの時間的順序は、上位の制御ユニットによって指定される。これは、コイル搬送キャリッジの半自動運転モードに相当し、搬送プロセスの時間的順序に関してより大きな時間的な柔軟性を提供する。
【0038】
さらなる代替案によると、コイル搬送キャリッジの制御ユニットは、上述のステップS1~S6のシーケンスを実施するために、例えば第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニット並びに回転駆動部などの各機械装置の作動に関する制御信号を、データインターフェースを通じて、上位の制御ユニット又はオペレータから直接(例えば、対応するボタン又はスイッチを作動させることによって)受信することもできる。これは、コイル搬送キャリッジのマニュアル運転モード(インチングモードとも呼ばれる)に相当する。
【0039】
本発明に係るコイル搬送キャリッジを用いてスリーブをコイラーマンドレルに取り付けるための本発明に係る方法では、第1のステップS11において、コイル搬送キャリッジが第2の駆動ユニットを用いて、受け渡しステーション30の前方の受容位置Aに移動し、コイルサドルは、スリーブの受け取りのために、第1の駆動ユニットを用いて、鉛直方向の受け取り高さh0に移動する。保持アームが、回転駆動部を用いて固定位置Sに旋回する一方で、コイル搬送キャリッジは受容位置Aに存在している。受容位置Aは、第1の水平方向X1に対して受け渡しステーションと同じ位置に存在するので、コイルサドルの中心は、方向X1に対してその長手軸Mに沿ってスリーブの中心と一致する。
【0040】
受け取り高さh0は、スリーブの直径と、スリーブがそこからコイル搬送キャリッジに移される受け渡しステーションの構造寸法と、に依存する。例えば、受け取り高さh0を、受け渡しステーションにおけるスリーブの初期高さh1よりも500mm~1000mm低くすることが可能であり、受け取り高さh0及び初期高さh1はそれぞれ、同じ基準高さ(例えば、受け渡しステーションの土台レベル)に関連している。
【0041】
固定位置Sでは、保持アームは、その大部分がコイルサドルの支持ローラの上方に存在するような位置に旋回し、保持アームの内側面は、コイル搬送キャリッジに移されるスリーブが保持アーム自体に接触することなく保持アーム間でコイルサドル上に下降し得る程度に、第2の水平方向X2において互いに離間している。これによって、受け渡しプロセス中にスリーブが過誤によって落下する、又は、転落することが防止される。
【0042】
受け渡しステーションの構造寸法及び該当するスリーブの直径は、データインターフェースを介して、コイル搬送キャリッジの制御ユニットに伝送されていてよく、制御ユニットは、受け渡しステーションの構造寸法及び該当するスリーブの直径から、コイルサドルの受け取り高さh0及び保持アームの固定位置Sを自動的に決定する。代替的に、受け取り高さh0及び固定位置Sは、制御ユニットに固定値として保存されていてもよい。
【0043】
第2のステップS12において、スリーブは、受け渡し装置を用いて、受け渡しステーションからコイル搬送キャリッジのコイルサドルに降ろされる。例えば、受け渡し装置は、旋回装置として構成されていてよく、受け渡し装置を用いて、スリーブは、初期高さh1から、この時点で受け取り高さh0に存在するコイルサドルへと受け渡される。
【0044】
第3のステップS13では、回転駆動部を用いて保持アームがスリーブ上に旋回し、これによって、保持アームの内側面が周囲側でスリーブの外周面に積極的に接触し、続く第4のステップS14では、コイル搬送キャリッジが、第2の駆動ユニットを用いて、コイラーマンドレルの直前の位置に移動し、第5のステップS15では、第1の駆動ユニットを用いて、コイルサドルが、スリーブの長手軸Mがコイラーマンドレルの高さに位置するまで鉛直方向に変位する。
【0045】
続いて、第6のステップS16において、コイル搬送キャリッジは、第2の駆動ユニットを用いて、スリーブがコイラーマンドレルに完全に取り付けられるまで、潰れたコイラーマンドレルに向かって、その長手軸に沿って移動するが、スリーブの内径が潰れた状態のコイラーマンドレルの直径よりも大きいので、依然としてコイラーマンドレルには接触しない。次に、第7のステップS17において、コイラーマンドレルが拡張し、スリーブがコイラーマンドレルによって非積極的に保持される。
【0046】
第8のステップS18では、保持アームは、回転駆動部を用いてスリーブから離れるように旋回し、コイルサドルは、第1の駆動ユニットを用いて鉛直に下降する。これによって、一方においてコイルサドルと保持アームとの間、他方においてコイルサドルとスリーブとの間には、もはや機械的な接触が存在しないので、例えばコイル搬送キャリッジは、第2の駆動ユニットを用いて、コイラーマンドレルから離れるように移動し得る。これによって、コイラーマンドレルの領域における作業空間は、コイラーマンドレルに配設された巻き付け装置(例えば、いわゆるバスケットローラ)のために解放され得るので、スリーブへの金属ストリップの巻き取りが可能になる。
【0047】
コイラーマンドレル上にスリーブを取り付けるための本発明に係る方法の一態様では、第2のステップS12の間、コイルサドルが、第1の駆動ユニットを用いて鉛直方向に変位するので、コイル搬送キャリッジは、受け渡しステーションの受け渡し装置のいかなる部分とも衝突しない。
【0048】
例えば、旋回装置の形状である受け渡し装置は、2つの支持アームを含むことが可能であり、当該支持アームは、第1の水平方向X1において互いに離間しており、当該支持アームによって、スリーブが、コイル搬送キャリッジに受け渡される際に保持される。スリーブがコイルサドルに載置される際に、支持アームの一部は、支持ローラの下方で鉛直方向に旋回する必要があり、コイル搬送キャリッジの一部、例えば旋回アーム用の回転駆動部と衝突する可能性があるので、このような場合には、衝突を回避するために、コイルサドルの移動を旋回装置又は支持アームの移動と同期させる必要がある。
【0049】
スリーブをコイラーマンドレルに取り付けるための本発明に係る方法の別の態様によると、制御ユニットは、データインターフェースを介して、上位の制御ユニットからデータを受信し、当該データに基づいて、制御ユニットは、ステップS11からS18のシーケンスが実行されるように、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニットと回転駆動部とを作動させる。この場合、(先に説明したコイラーマンドレルからコイルを取り外すための方法に類似して)やはりデータは、スリーブの寸法a、コイラーマンドレルの状態m、及び/又は受容位置Aを含むことが可能であり、この場合、制御ユニットは、時間的順序と、第1の駆動ユニット及び第2の駆動ユニット並びに回転駆動部の作動に関する制御信号と、を自動的に決定及び実行するように設定されており、したがって、ステップS11~S18のシーケンスがコイル搬送キャリッジ又はその制御ユニットによって自律的に実行される(完全自動運転モード)。この際、やはり、上位の制御ユニット側におけるそれぞれのスリーブ搬送のための制御及び監視の労力は、有利なことに最小化される。
【0050】
しかしながら、同様に、スリーブ搬送は、既に上述したように、半自動運転モード又はマニュアル運転モードで実施することもできる。
【0051】
本発明の上述の特性、特徴及び利点並びにそれらを得るための方法は、図面に基づいてより詳細に行われる以下の実施例の説明に関連して、より明確かつ容易に理解されるであろう。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】コイル又は残留コイルを受け取る際の第1の水平方向X
1において見た、本発明に係るコイル搬送キャリッジの第1の実施例を示す図である。
【
図2】コイル又は残留コイルを受け取る際の第1の水平方向X
1において見た、本発明に係るコイル搬送キャリッジの第1の実施例を示す図である。
【
図2A】残留コイルと共に
図2の一部を示す図である。
【
図3】第2の水平方向X
2における、
図1及び
図2のコイル搬送キャリッジの実施例を示す図である。
【
図4】スリーブを受け取るための受容位置Aにおける、第1の水平方向X
1において見た、本発明に係るコイル搬送キャリッジを示す図である。
【
図5】第2の水平方向X
2において見た、
図4の本発明に係るコイル搬送キャリッジを示す図である。
【
図6】スリーブの受け渡しステーションを示す図である。
【
図7】コイラーマンドレルからコイルを取り外すための本発明に係る方法のシーケンスを示す図である。
【
図8】スリーブをコイラーマンドレルに取り付けるための本発明に係る方法のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図中、対応する部分には同じ参照符号が付されている。
【0054】
図1及び
図2は、第1の水平方向X
1において、コイラーマンドレル22からコイル20を受け取る際の本発明に係るコイル搬送キャリッジ1を示している。コイル20の長手軸Mは、コイラーマンドレル22の長手軸Mと一致し、第1の水平方向X
1に方向付けられている。コイル搬送キャリッジ1は、コイルサドル5を有しており、コイルサドル5は、第1の駆動ユニット3を用いて鉛直方向に変位可能である。第1の駆動ユニット3は、例えば、油圧シリンダとして構成されていてよい。コイルサドル5の上側面には、各々が第1の水平方向X
1の周りに軸方向に回転可能な4つの支持ローラ7が、第1の水平方向X
1において対をなして配置されており、そのうちの各2つの支持ローラが、
図1、
図2及び
図2Aにおいて視認可能である。さらに、コイル搬送キャリッジ1は、シャーシ4と、シャーシ4上に配置された第2の駆動ユニット13と、を有しており、第2の駆動ユニット13を用いて、コイル搬送キャリッジ1は、レール8上を第1の水平方向X
1において移動することができる。
【0055】
さらに、コイル搬送キャリッジ1は、残留コイル20又はスリーブ21を安定させるための4つの保持アーム11を有しており、そのうちの2つの保持アームは、
図1、
図2及び
図2Aにおいてそれぞれ視認可能である。保持アーム11は、対を成して、第2の水平方向X
2において、互いに向かい合ってコイルサドル5上に配置されており、第2の水平方向X
2は、第1の水平方向X
1に対して垂直に方向付けられている。支持アームは、回転駆動部9(
図3に示す)を用いて、第1の水平方向X
1の周りに旋回可能に構成されている。
【0056】
図1には、残留コイル20が示されており、残留コイル20の外径は、限界径d
0よりも小さく、残留コイル20は、ストリップ部20’を介して、金属ストリップ2のすでに繰り出された部分に依然として接続されている。残留コイル20から金属ストリップ2を繰り出す際の繰り出し方向Uは時計回りであり、残留コイル20に当接していないストリップ部20’は、一対の駆動ローラ23によって保持される。繰り出し方向Uに見て、一対の駆動ローラ23の後方には切断装置24が配置されており、切断装置24を用いて、金属ストリップ2をコイラーマンドレル22上に残っている残留コイル20から切断することができる。
【0057】
さらに、
図1には、鉛直方向下方の位置にコイルサドル5が示されており、その上方に、大きさの対比を明確にする目的で残留コイル20に加えて、破線で示されたコイル20が概略的に示されており、その外径は、破線で示された限界径d
0よりも大きく、そのストリップの自由端20”は、コイルサドル5の支持ローラ7に近い7時の位置に配置されている。このようなコイル20は、その自重ゆえに安定させる必要がないので、
図1のコイル搬送キャリッジ1の保持アーム11は、停止位置Pに旋回する。
【0058】
図2において、コイル搬送キャリッジ1のコイルサドル5は、
図1と同じ鉛直方向下方の位置と、保持アーム11がコイラーマンドレル22上の残留コイル20に当接し、保持アーム11がそのそれぞれの内側面11’で残留コイル20に周囲側で接触するように、鉛直方向上方に上昇した位置と、の両方で概略的に示されている。やはり、残留コイル20のストリップの自由端20”は、
図2においても、コイルサドル5の支持ローラ7に近い7時の位置に配置されている。さらに、
図2において、第2の水平方向X
2における、停止位置Pにある支持アーム11間の最大延長d
maxは、
図1及び
図2においてシャーシ4に沿って延在するコイル搬送キャリッジ1の最大の寸法d
btwよりも小さいことが明らかである。
【0059】
図2Aは、
図2の部分拡大図であり、残留コイル20はコイルサドル5(
図2Aには図示せず)の支持ローラ7に載置されており、保持アーム11は残留コイル20に対して調節されている。残留コイル20のストリップの自由端20”は、残留コイル20の長手軸Mの下方で、残留コイル20の長手軸Mを通る鉛直線に対する所定の角度範囲α
max内で左側の支持ローラ7の近傍に配置されるので、その自重が、有利には残留コイル20の跳ね上がりに抵抗する。左側の保持アーム11の内側面11’には、摩擦低減コーティング14が施され、右側の保持アーム11の内側面11’には摺動ローラ15が取り付けられている。
【0060】
図3は、第2の水平方向X
2での無負荷状態における本発明に係るコイル搬送キャリッジの実施例を示しており、
図3では、4つの支持ローラ7のうちの2つ、又は4つの保持アーム11のうちの2つが視認可能である。保持アーム11は、第1の水平方向X
1において、コイルサドル5上の支持ローラ7の間に配置されている。当該実施例の変型例では、コイル搬送キャリッジは、4つよりも多い支持ローラ7、例えば6つ若しくは8つの支持ローラ7、又は異なる数の保持アーム11、例えば2つ若しくは6つの保持アーム11を有し得る。支持アーム11のうちの2つは、それぞれ回転駆動部9によって駆動され、これによって、第1の水平方向X
1の周りに旋回可能である。コイル搬送キャリッジ1のシャーシ4は、車輪12を介してレール8に取り付けられている。
【0061】
コイル搬送キャリッジ1の制御ユニット16に接続されたデータインターフェース17は、制御ユニット16が上位の制御ユニット19とデータを交換することを可能にする。本発明に係るコイル搬送キャリッジの第1の実施例によると、上位の制御ユニット19への通信リンクは、例えばWLAN又はデータレーザーリンクの形の無線伝送路として構成されている。しかしながら、代替的に、データインターフェース17と上位の制御ユニット19との間の有線伝送路も可能であり、例えば、垂下ケーブルの形で、又は、コイル搬送キャリッジ1の電源に変調された信号として可能である。
【0062】
図4では、スリーブ21の受け取りの際、受け渡しステーション30の前方の受容位置Aにある、本発明に係るコイル搬送キャリッジ1が示されている。受け渡しステーション30は、多段の土台31と、スリーブ21を搬送するためのローラコンベヤ36と、スリーブ21をコイル搬送キャリッジ1に受け渡すための可動旋回装置32と、を含んでいる。スリーブ21は、土台31の第1段に支持された固定長手方向部材38を介して、ローラコンベヤ36から旋回装置32に移され得る。旋回装置32は、横方向部材35を介して接続された、上に向かって湾曲したランナを有する2つの支持アーム34を含んでいる。例えば
図4に示されたように回転可能に取り付けられた油圧シリンダとして構成されていてよく、その上端で横方向部材35に接続されている旋回駆動部37を用いて、支持アーム34は、支持アーム34上に存在するスリーブ21と共に下降し得る。
【0063】
スリーブ21のコイル搬送キャリッジ1との受け渡しプロセスを明確にするために、
図4では、旋回装置32は3つの旋回位置で示されており、スリーブ21は、最も高い旋回位置において初期高さh
1で旋回装置32の支持アーム34に載置されている。同様に、コイル搬送キャリッジ1のコイルサドル5は、保持アーム11が停止位置Pにある下方の鉛直方向位置と、これよりも上方の受け取り高さh
0の鉛直方向位置と、において示されており、当該受け取り位置では、スリーブ21の旋回装置32からコイルサドル5への重量転移によって受け渡しが行われる。受け渡しの際、保持アーム11は固定位置Sに旋回し、これによって、スリーブ21は、旋回装置32が下降する際に、第2の水平方向X
2の方向において横に転落しないように保護される。初期高さh
1と受け取り高さh
0とはそれぞれ、土台31の第1の段に関連している。必要な場合には、旋回装置32及びコイルサドル5の下降は、旋回装置32の部材とコイル搬送キャリッジ1の部材との衝突が回避されるように、スリーブ21の受け渡しの際に調整して行われ得る。
【0064】
図5は、主要な部分において
図3に一致しており、さらに、受け渡しステーション30の前方におけるコイル搬送キャリッジ1の受容位置A、及び、旋回装置32の最も高い旋回位置におけるスリーブ21と支持アーム34とが概略的に示されている。
【0065】
図6には、ローラコンベヤ36、支持アーム34を備えた旋回装置32、横方向部材35及び旋回駆動部37を備えた受け渡しステーション30と、旋回アーム34のランナによって、第2の水平方向X
2において転落しないように固定されたスリーブ21と、が、鉛直方向における上面図で示されている。さらに、コイル搬送キャリッジ1用の受容位置Aが示されており、受容位置Aは、第1の水平方向X
1において支持アーム34の間の中央に位置している。
【0066】
図7には、本発明に係るコイル搬送キャリッジ1を用いて、コイラーマンドレル22からコイル20を取り外すための本発明に係る方法が、上述したステップS1~S6から成るシーケンスの形で概略的に示されている。コイル搬送キャリッジ1の制御ユニット16には、まず、インターフェース17を介して、及び、上位の制御ユニット19への無線接続リンクを介して、実行すべきコイル搬送のキーデータが、上位の制御ユニット19から伝送される。この際、キーデータは、少なくとも、コイラーマンドレル22の状態m、コイル20の寸法(外径、その長手軸Mに沿った寸法等)、コイル重量g、コイル20がコイル搬送キャリッジ1によって搬送されるべき目標位置Zを含んでいる。制御ユニット16は、ステップS1、S2、S5、S5’及びS6において、コイル搬送キャリッジの対応する機械装置(上述したように、コイルサドル5又はコイル搬送キャリッジ1を移動させるための第1の駆動ユニット3及び第2の駆動ユニット13、ならびに保持アーム11を変位させるための回転駆動部9)を、制御ユニット16によって作動させることによって、シーケンスを自動的に実行するように設定されている。これらの作動は、
図7においてそれぞれ、対応するステップから上述の機械装置への破線の矢印によって表されている。
【0067】
第3のステップS3及び第4のステップS4において、制御ユニット16には、切断装置24による分離切断が行われたこと、又は、コイラーマンドレル22によるコイル20の繰り出し方向Uとは逆への回転が行われたこと、それに続いてコイラーマンドレル22が潰れたことが通知され、これは
図7において、各機械装置から該当するステップへの破線矢印によって表されている。この通知は、例えば、対応する確認信号によって、やはり外部の制御ユニット19及びインターフェース17を介して行うことが可能である。言い換えれば、制御ユニット16は、シーケンスのさらなるステップを実行する前に、外部の機械装置による上述のプロセスの実行の確認を待機する。
【0068】
図7と同様に、
図8には、スリーブ21をコイラーマンドレル22に取り付けるための本発明に係る方法のシーケンスが、上述したステップS11~S18から成るシーケンスの形で概略的に示されている。やはり、コイル搬送キャリッジ1の制御ユニット16には、まず、インターフェース17を介して、上位の制御ユニット19への無線接続リンクを介して、実行すべきスリーブ搬送のキーデータが、上位の制御ユニット19から伝送される。キーデータは、少なくともスリーブ21の寸法(外径、その長手軸Mに沿った寸法など)、コイラーマンドレル22の状態m、及びコイル搬送キャリッジ1からスリーブ21が受け取られるべき受け渡しステーション30の受容位置Aを含んでいる。制御ユニット16はやはり、ステップS11からS16及びS19において、コイル搬送キャリッジの対応する機械装置(上述したように、第1の駆動ユニット3及び第2の駆動ユニット13ならびに回転駆動装置9)を、制御ユニット16によって作動させることによって(
図8において再び、当該機械装置への破線の矢印によって表される)、シーケンスを自動的に実行するように設定されている。
【0069】
第2のステップS12において、制御ユニット16には、受け渡し装置32を用いてスリーブ21が載置されたことが伝えられるが、これは、例えば、やはり外部の制御ユニット19及びインターフェース17を介して対応する確認信号を送信することによって行われ得る。さらに、スリーブ21を載置する間に、制御ユニット16には、上述のコイルサドル5の移動と受け渡し装置32の移動とを同期するためのさらなる信号(例えば受け渡し装置32の最新の位置信号)が伝送され得る。第7のステップS17において、制御ユニット16には、コイラーマンドレル22が広げられたことが伝えられ、これは、スリーブ21がこの時点からコイラーマンドレル22によって非積極的に保持されることを意味しており、続いて、制御ユニット16は、最終ステップS18に移行する。
【符号の説明】
【0070】
1 コイル搬送キャリッジ
2 金属ストリップ
3 第1の駆動ユニット
4 シャーシ
5 コイルサドル
7 支持ローラ
8 レール
9 回転駆動部
11 保持アーム
11’ 内側面
12 車輪
13 第2の駆動ユニット
14 コーティング
15 摺動ローラ
16 制御ユニット
17 インターフェース
19 上位の制御ユニット
20 コイル、残留コイル
20’ ストリップ部分
20” ストリップの自由端
21 スリーブ
22 コイラーマンドレル
23 駆動ローラ
24 切断装置
30 受け渡しステーション
31 土台
32 受け渡し装置、旋回装置
34 支持アーム
35 横方向部材
36 ローラコンベヤ
37 旋回駆動部
38 長手方向部材
αmax 角度範囲
a コイル、スリーブの寸法
dmax 最大延長
d0 限界径
dbtw コイル搬送キャリッジの寸法
g コイルの重量
h0 受け取り高さ
h1 初期高さ
m コイラーマンドレルの状態
M 長手軸
P 停止位置
S 固定位置
A 受容位置
S1...S18 方法ステップ
U 繰り出し方向
X1、X2 水平方向
Z 目標位置
【国際調査報告】