(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】高級直鎖アルカンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 5/00 20060101AFI20240328BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C12P5/00
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560775
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022057981
(87)【国際公開番号】W WO2022207503
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハース
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リヒター
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AB01
4B064CC01
4B065AA23X
4B065AC14
4B065CA10
4B065CA12
(57)【要約】
本発明は、生物工学的方法および化学的方法の組合せを用いて高級直鎖アルカンを製造する方法に関する。特に、本発明は、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカン、好ましくはウンデカンを高級アルカノン、すなわち7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンを介して製造することに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸から7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカンを製造する方法であって、
(a)エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸もしくはその任意の塩と、2炭素鎖伸長を行うことが可能な少なくとも1つの微生物とを接触させて、中間体として4~7個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、ならびに/またはその塩および/もしくはそのエステルを生成すること、
(b)少なくとも1つの抽出剤を用いて、(a)からの前記中間体、その塩および/またはそのエステルを抽出することであって、前記抽出剤が、少なくとも1つのアルキルホスフィンオキシドおよび任意に少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または少なくとも1つのトリアルキルアミンおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または2-オクチルドデカノールのような分岐高級アルコールである、抽出すること、
(c)(b)からの抽出された前記中間体および/またはそのエステル、ならびに任意に1~22個の炭素原子を含む更なる直鎖アルカン酸と、少なくとも1つのケトン化触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンにすること、
(d)工程(c)からの前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンと、前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンの接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカノールにすること、
(e)酸性不均一系触媒の存在下で前記7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールを脱水して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルケンを形成すること、ならびに
(f)工程(e)で得られた前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルケンと、接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカンにすること;
または脱水特性および水素化特性をもたらす触媒または触媒混合物を用いて、工程(e)および(f)を単一の工程に組み合わせることで、工程(d)で得られた前記7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールを直接水素化分解して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルカンにすること
を含み、
前記アルキルホスフィンオキシドが、トリオクチルホスフィンオキシド、オクチルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記アルカンが、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、テトラデカンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
(c)の前記ケトン化触媒が金属酸化物触媒またはそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物触媒またはそれらの混合物が、ヘテロポリ酸(H
3PW
12O
40)触媒、酸化チタン(TiO
2)触媒、酸化セリウム(CeO
2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnO
2)触媒、酸化ランタン(La
2O
3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO
2、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe
4O
5、Fe
5O
6、Fe
5O
7)、ケイ素-アルミニウム(Si-Al)混合酸化物触媒およびジルコニア(ZrO
2)触媒からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における前記ケトン化触媒が、酸化マンガン(MnO
2)触媒または酸化マグネシウム(MgO)触媒である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)の適切な反応条件が150℃~350℃の反応温度を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
(a)における前記微生物が、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)およびクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)からなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルホスフィンオキシドがトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)であり、前記アルカンが、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンおよびテトラデカンの混合物である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
TOPOとアルカンの混合物との重量比が1:100~1:10である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
(b)における水性媒体のpHを5.5~8に維持する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(d)の前記水素化金属触媒が、ルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)および白金(Pt)触媒からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(e)の前記酸性不均一系触媒が、アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む触媒である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程(e)の前記酸性不均一系触媒がZSM-5を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工程(e)の前記触媒が遷移金属をさらに含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属がモリブデンである、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学的方法および化学的方法の組合せを用いて高級直鎖アルカンを製造する方法に関する。特に、本発明は、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカン、好ましくはウンデカンを高級アルカノン、すなわち7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンを介して製造することに関する。
【0002】
今日の燃料は、二酸化炭素排出量を減少させるために代替または改良する必要がある。国内および国際の両方での規制/法令により、輸送部門からの二酸化炭素の大幅な削減が求められている。こういった要求を満たすためには、既存の乗り物(トラック、バス、ジェット機等)でも二酸化炭素排出量を減少させる必要がある。この削減の解決手段の1つは、燃料または燃料の成分、例えば二酸化炭素および再生可能な水素、またはそれから作製される低級アルカン酸、例えば酢酸またはブタン酸を原料として用いて合成されるウンデカン等の高級直鎖アルカンであり得る。したがって、ウンデカン等の高級アルカンを、エタノールおよび/または低級直鎖アルカン酸、例えば酢酸またはブタン酸等の単純な有機化合物から開始して製造するプロセスを提供することが必要とされている。今日、エタノールの大半がすでに、空気から除去された二酸化炭素、植物から製造されている。サトウキビ、トウモロコシのような植物、または植物残渣が、太陽光および空気から得られた二酸化炭素からグルコース誘導体を形成するために使用される。代替的には、クロストリジウムのような酢酸生成生物を用いて、二酸化炭素および水素および一酸化炭素からエタノールを形成することもできる。
【0003】
プロセスを提供する必要性は、エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸から7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカンを製造する方法であって、
(a)エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸もしくはその任意の塩と、2炭素鎖伸長を行うことが可能な少なくとも1つの微生物とを接触させて、中間体として4~7個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、ならびに/またはその塩および/もしくはそのエステルを生成すること、
(b)少なくとも1つの抽出剤を用いて、(a)からの中間体、その塩および/またはそのエステルを抽出することであって、抽出剤が、少なくとも1つのアルキルホスフィンオキシドおよび任意に少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または少なくとも1つのトリアルキルアミンおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または2-オクチルドデカノールのような分岐高級アルコールである、抽出すること、
(c)(b)からの抽出された中間体および/またはそのエステル、ならびに任意に1~22個の炭素原子を含む更なるアルカン酸と、少なくとも1つのケトン化触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンにすること、
(d)工程(c)からの7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンと、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンの接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカノールにすること、
(e)酸性不均一系触媒の存在下で第二級アルカノールを脱水して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルケンを形成すること、ならびに
(f)工程(e)で得られた7~28個の炭素原子を含む直鎖アルケンと、接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカンにすること;
または脱水特性および水素化特性をもたらす触媒または触媒混合物を用いて、工程(e)および(f)を単一の工程に組み合わせることで、工程(d)で得られた7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールを直接水素化分解して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルカンにすること
を含む、方法によって満たされる。
【0004】
4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を生成するために炭素鎖伸長を行うことが可能な工程(a)の微生物は、
図1(Jeon et al. Biotechnol Biofuels (2016) 9:129)による炭素鎖伸長が可能であり得る任意の生物とすることができる。炭素鎖伸長経路は、Seedorf, H., et al., 2008にも開示されている。本発明の任意の態様による微生物には、野生型では炭素鎖伸長が可能でないが、遺伝子組換えの結果としてこの形質を獲得した微生物も含まれ得る。特に、(a)の微生物は、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)およびクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)からなる群から選択することができ、より詳細には、本発明の任意の態様による微生物は、クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】(a)クロストリジウム属およびブチリビブリオ属による酪酸(C
4)産生(Kim BH, et al. Appl Environ Microbiol. 1984;48(4):764-70)、ならびに(b)メガスファエラ・エルスデニイ(Megasphaera elsdenii)およびクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)で仮定されているヘキサン酸産生(Khan MA. Melbourne: Victoria University; 2006)等の炭素鎖伸長の微生物代謝経路を示す図である。
【0006】
本発明による方法では、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸は、酢酸であってもよく、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸は、ブタン酸およびヘキサン酸であってもよい。
【0007】
本発明による方法では、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸は、プロパン酸であってもよく、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸は、ペンタン酸であってもよい。
【0008】
本発明による方法では、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸は、ブタン酸であってもよく、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸は、ヘキサン酸であってもよい。
【0009】
本発明による方法では、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸は、ペンタン酸であってもよく、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸は、ヘプタン酸であってもよい。
【0010】
本発明による方法の好ましい実施形態では、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸は、好ましくは酢酸であり、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸は、好ましくはヘキサン酸またはそのエステルであり、工程(a)~(c)における中間体アルカン酸は、好ましくはヘキサン酸であり、工程(c)および(d)における7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンは、好ましくは6-ウンデカノンであり、工程(d)および(e)ならびに組み合わせた工程(e)および(f)における対応する第二級直鎖アルカノールは、好ましくは6-ウンデカノールであり、工程(e)および(f)における直鎖アルケンは、好ましくは5-ウンデセンであり、直鎖アルカンは、好ましくはドデカンである。
【0011】
本発明の任意の態様による(b)における抽出工程は、使用する抽出剤の量に対する収率の向上を可能にする。例えば、50重量%未満の抽出剤を使用して、純粋なアルカンのみを使用した場合と同量のヘキサン酸を抽出することができる。したがって、少量の抽出剤を用いて、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸をより多量に抽出することができる。また、抽出剤は微生物にとって有害でない。したがって、本発明の任意の態様による抽出剤は、中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を本発明の任意の態様に従って生物工学的に製造する場合に存在することができる。したがって、本発明の任意の態様による水性媒体を、特に4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を分離する工程(b)の後に、工程(a)に戻して再循環させることができる。本発明の任意の態様による抽出剤が微生物にとって有毒でないことから、この再循環の工程により、微生物を再循環させ、再利用することができる。本発明の任意の態様による方法において水性媒体を再循環させるこの工程は、第1のサイクルにおいて工程(b)から最初に抽出されなかった4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸の残渣を、さらに1回または水性媒体を再循環させるのに応じて何度でも抽出する機会を与えることができるという更なる利点を有する。さらに、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸は、蒸留によって本発明の任意の態様による抽出剤から容易に分離することができる。これは、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が少なくとも抽出剤よりも大幅に低い沸点で蒸留されるためであり、蒸留による分離後に抽出剤を容易に再循環させることができる。
【0012】
本発明による方法は、4~7個の炭素原子を含む単離された中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を水性媒体から抽出する工程も含み得る。4~7個の炭素原子を含む単離された中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸は、中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が製造された媒体から分離することができる中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を指すことがある。一例では、中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸は、水性媒体(例えば、中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が特定の細胞によって炭素源から産生される発酵培地)中で製造され得る。単離された中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸は、水性媒体から抽出されたヘキサン酸を指すことがある。特に、抽出工程により水性媒体から過剰な水を分離することができ、それにより4~7個の炭素原子を含む抽出された中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を含有する混合物が形成される。
【0013】
抽出剤は、「抽出媒体」(‘extraction medium’ or ‘extracting medium’)と称されることもある。抽出剤は、本発明の任意の方法に従って製造された4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が最初に製造された水性媒体から抽出/単離するために使用することができる。抽出工程の最後に、水性媒体から過剰な水を除去することができ、それにより4~7個の炭素原子を含む抽出された中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を含有する抽出剤が得られる。特に、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が抽出され、取り出される抽出工程の最後に、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を製造するために使用された細胞を含む発酵培地が残っていてもよく、これらの細胞を続いて発酵培地とともに工程(a)に再循環させてもよい。当業者であれば、第1のサイクルの後に発酵培地および/または細胞の補充が必要であるかを決定することができるであろう。特に、本発明の任意の態様による第1のサイクルは、1ラウンドの工程(a)~(c)を含む。培地および/または細胞を続いて第2のサイクル以降に再循環させることができる。抽出剤は、ヘキサン酸を水性媒体から抽出する効率的な手段をもたらし得る化合物の組合せを含むことができる。特に、抽出剤は、
-少なくとも1つのアルキルホスフィンオキシドおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または
-少なくとも1つのトリアルキルアミンおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン
を含み得る。
【0014】
本発明の任意の態様による抽出剤は、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を抽出剤中に効率的に抽出することができる。このアルキルホスフィンオキシドまたはトリアルキルアミンと少なくとも1つのアルカンとの混合物の抽出剤は、混合物が発酵培地の存在下で所望の4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を抽出する際に効率的に働くため、本発明の任意の態様による方法において好適であると考えられ得る。特に、アルキルホスフィンオキシドまたはトリアルキルアミンと少なくとも1つのアルカンとの混合物は、実行にいかなる特別な装置も必要とせず、高い生成物収率で比較的容易に実施されるため、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸の抽出のための当該技術分野で現在知られているどの方法よりも良好に働くと考えられ得る。さらに、本発明の任意の態様による抽出剤は、工程(a)による微生物にも有毒でない。
【0015】
抽出剤中のアルカンは、少なくとも12個の炭素原子を含み得る。特に、アルカンは少なくとも12~18個の炭素原子を含み得る。一例では、アルカンはドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンおよびオクタデカンからなる群から選択することができる。更なる例では、抽出剤はアルカンの混合物を含んでいてもよい。抽出剤中のアルカンは、アルキルホスフィンオキシドおよび/またはトリアルキルアミンの溶媒として使用することができる。抽出剤中のアルカンの存在により、反応温度および抽出温度が35℃~45℃となるように、抽出温度を低温に維持することができる。より詳細には、工程(a)の反応温度および抽出温度は、本発明の任意の態様による細菌に最適な温度、すなわち37~40℃、より詳細には約37℃とすることができる。両方のプロセスを同時に行うことを可能にすることは、抽出工程中にアルカン酸を抽出することができ、より多くのアルカン酸を生成する更なる反応を行うために細胞が保持されるという付加的な利点を有する。(アルカン酸を生成する)反応および(アルカン酸の)抽出の両方のプロセスは、同じポット内で行ってもよい。別の例では、両方のプロセスが2つの異なるポット内で行われる。本発明の任意の態様に従って使用されるアルカンは、12個未満の炭素原子を有するアルカンと比較してアルカンの沸点が高くなることから、少なくとも12~18個の炭素原子を含む。アルカンの高い沸点により、抽出剤からの標的生成物(アルカン酸)の分離を当該技術分野で既知の任意の方法、例えば抽出剤をアルカン酸から分離し、再利用し得るような蒸留によって行うことが可能となる。蒸留は、150~350℃の温度で行うことができる。
【0016】
アルキルホスフィンオキシドは、OPX3の一般式を有し、ここでXはアルキルである。本発明の任意の態様による適切なアルキルホスフィンオキシドは、直鎖、分岐または環式炭化水素から構成されるアルキル基を含み、炭化水素は、1~約100個の炭素原子および1~約200個の水素原子から構成される。特に、本発明の任意の態様によるアルキルホスフィンオキシドに関して使用される「アルキル」は、1~20個の炭素原子、多くの場合、4~15個の炭素原子、または6~12個の炭素原子を有し、直鎖、環式、分岐鎖またはこれらの混合から構成され得る炭化水素基を指すことができる。アルキルホスフィンオキシドは、各リン原子上に1~3つのアルキル基を有し得る。一例では、アルキルホスフィンオキシドは、P上に3つのアルキル基を有する。幾つかの例では、アルキル基は、C4~C15またはC6~C12アルキル基の1つの炭素の代わりに酸素原子を含んでいてもよいが、但し、酸素原子はアルキルホスフィンオキシドのPに結合しない。
【0017】
典型的には、アルキルホスフィンオキシドはトリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、オクチルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに詳細には、アルキルホスフィンオキシドは、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)であり得る。
【0018】
トリアルキルアミンは、3つの水素原子がアルキルラジカルに置き換えられた、アンモニア(NH3)に由来する有機化学化合物である。トリアルキルアミンの例はジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチル-n-プロピルアミン、ジメチル-i-プロピルアミン、メチルジ-n-プロピルアミン、ジメチルブチルアミン、トリオクチルアミン等である。特に、本発明の任意の態様による抽出剤に使用されるトリアルキルアミンは、水に溶解しなくてもよく、トリオクチルアミンであり得る。
【0019】
一例では、本発明の任意の態様による抽出剤は、アルキルホスフィンオキシドまたはトリアルキルアミンと少なくとも1つのアルカンとの組合せであってもよい。特に、アルカンは少なくとも12個の炭素原子を含み得る。より詳細には、アルカンは12~18個の炭素原子を含み得る。一例では、アルカンはドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンおよびオクタデカンからなる群から選択することができる。更なる例では、アルカンはアルカンの混合物であってもよい。
【0020】
更なる例では、抽出剤はアルカンの混合物を含んでいてもよい。さらに詳細には、本発明の任意の態様による抽出剤は、TOPOとテトラデカンまたはヘキサデカンとの組合せであってもよい。一例では、本発明の任意の態様による抽出剤は、TOPOと12~18個の炭素原子を含むアルカンの混合物との組合せであってもよい。
【0021】
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)は、式OP(C8H17)3を有する有機リン化合物である。TOPOは、本発明の任意の態様による少なくとも1つのアルカンとともに抽出剤の一部とすることができる。特に、TOPOと少なくとも12個の炭素原子を含むアルカンとの混合物は、アルカンに対して約1:100~1:10の重量比のTOPOを含むことができる。より詳細には、本発明の任意の態様による抽出剤におけるTOPOとアルカンとの重量比は、約1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:25、1:20、1:15または1:10であり得る。さらに詳細には、TOPOとアルカンとの重量比は、1:90~1:10、1:80~1:10、1:70~1:10、1:60~1:10、1:50~1:10、1:40~1:10、1:30~1:10または1:20~1:10の範囲内で選択することができる。TOPOとアルカンとの重量比は、1:40~1:15または1:25~1:15であってもよい。一例では、TOPOとアルカンとの重量比は約1:15であり得る。この例では、アルカンはヘキサデカンであってもよく、したがって、TOPOとヘキサデカンとの重量比は約1:15であり得る。
【0022】
別の例では、抽出剤が、少なくとも12個の炭素原子を含むアルカンへのTOPOの溶解度と比較して、抽出剤に使用されるアルカンへの溶解度が高いアルキルホスフィンオキシドまたはトリアルキルアミンを含む場合、アルキルホスフィンオキシド(TOPO以外)またはトリアルキルアミンとアルカンとの重量比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1であり得る。一例では、抽出剤はトリヘキシルホスフィンオキシドであってもよく、トリヘキシルホスフィンオキシドとアルカンとの比率は1:1であり得る。他の例では、抽出剤は低級鎖アルキルホスフィンオキシドであってもよく、低級鎖アルキルホスフィンオキシドとアルカンとの比率は2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1であり得る。この場合、低級鎖アルキルホスフィンオキシドとは、C1~C4アルキル基を有するホスフィンオキシドを指す。別の例では、抽出剤は、アルカンへの溶解度がホスフィンオキシドよりも高いことが知られているトリアルキルアミンであってもよい。例えば、トリアルキルアミンはトリオクチルアミン(TOA)であってもよく、アルカンと1:1までの比率で本発明の任意の態様による抽出剤中に存在していてもよい。低級鎖長アミンは、さらに高い比率で使用することができる。他の例では、抽出剤は低級鎖トリアルキルアミンであってもよく、低級鎖トリアルキルアミンとアルカンとの比率は2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1であり得る。この場合、低級鎖アルキルホスフィンオキシドとは、C1~C4アルキル基を有するホスフィンオキシドを指す。
【0023】
本明細書で使用される「約」という用語は、20パーセント以内の変動を指す。特に、本明細書で使用される「約」という用語は、所与の測定値または値の±20%、より詳細には±10%、さらに詳細には±5%を指す。
【0024】
好ましくは、本発明による方法の工程(b)において、アルキルホスフィンオキシドはトリオクチルホスフィンオキシド、オクチルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)であり、アルカンはペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンおよびテトラデカンからなる群から選択され、好ましくはテトラデカンであり、好ましくは、TOPOとテトラデカンとの重量比は1:100~1:10である。
【0025】
好ましくは、本発明による方法の工程(b)における水性媒体のpHは、5.5~8に維持される。
【0026】
本発明の任意の態様による工程(a)において、エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えば酢酸、プロパン酸、ブタン酸もしくはペンタン酸、もしくはその任意の塩を、2炭素鎖伸長を行うことが可能な少なくとも1つの微生物と接触させて、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸、ブタン酸もしくはペンタン酸、ならびに/またはその塩および/もしくはそのエステルを生成する。
【0027】
一例では、炭素源はアセテート、プロパノエート、ブタノエート(ブチレート)およびペンタノエートからなる群から選択される少なくとも1つの他の炭素源と組み合わせたエタノールであってもよい。特に、炭素源はエタノールおよびアセテートとすることができる。別の例では、炭素源はエタノールと酪酸(ブタン酸)との組合せであってもよい。一例では、炭素基質はエタノール単独であり得る。別の例では、炭素基質は2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えばアセテート単独であり得る。
【0028】
2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えばアセテートおよび/またはエタノールの供給源は、利用可能性によって異なり得る。一例では、エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸(例えばアセテート)は、合成ガス(シンガス)または当該技術分野で既知の任意の炭水化物の発酵生成物であってもよい。特に、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸(例えばアセテート)および/またはエタノール産生の炭素源は、アルコール、アルデヒド、グルコース、スクロース、フルクトース、デキストロース、ラクトース、キシロース、ペントース、ポリオール、ヘキソース、エタノールおよび合成ガスからなる群から選択することができる。供給源の混合物を炭素源として使用することができる。
【0029】
さらに詳細には、炭素源は合成ガス(シンガス)であってもよい。合成ガスは、少なくとも1つの酢酸生成菌の存在下でエタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えばアセテートに変換することができる。
【0030】
二酸化炭素および/または一酸化炭素を含む基質の供給源に関して、当業者であれば、炭素源としてCOおよび/またはCO2を供給するために多くの可能な供給源が存在することを理解するであろう。シンガスまたはシンガスの供給源は、例えば水蒸気改質、部分酸化、または水もしくはCO2からの電気化学的合成によって得ることができる。実際には、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸(例えばアセテート)および/またはエタノールをCOおよび/またはCO2の供給源から形成することができるように、本発明の炭素源として、微生物に十分な量の炭素を供給することが可能な任意のガスまたは任意のガス混合物を使用し得ることが分かる。
【0031】
概して、本発明の酢酸生成細胞について、炭素源は少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%のCO2および/またはCOを含み、ここで重量パーセント(%)は、本発明の任意の態様による細胞が利用可能な全ての炭素源に対するものである。炭素材料源を供給してもよい。
【0032】
ガス状の炭素源の例としては、排ガス、例えば合成ガス、煙道ガス、および酵母発酵またはクロストリジウム発酵によって生成する石油精製ガスが挙げられる。これらの排ガスは、セルロース含有材料のガス化または石炭ガス化から形成される。一例では、これらの排ガスは、必ずしも他のプロセスの副生成物として生成しなくてもよく、本発明の混合培養に使用するために特別に生成することができる。
【0033】
本発明の任意の態様による工程(a)に使用される2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸(例えばアセテート)および/またはエタノールの生成のための炭素源は、合成ガスであってもよい。合成ガスは、例えば石炭ガス化の副生成物として生成し得る。したがって、微生物は廃棄物である物質を有益な資源に変換することが可能であり得る。
【0034】
別の例では、合成ガスは、置換および非置換の有機化合物を生成するために本発明の混合培養に使用される、広く入手可能な低コストの農業原料のガス化の副生成物であってもよい。
【0035】
ほぼ全ての形態の植物をこの目的で使用することができるため、合成ガスに変換され得る原料の例は非常に多い。特に、原料は、ススキ等の多年生草、トウモロコシ残渣、おがくず等の加工廃棄物等からなる群から選択される。
【0036】
概して、合成ガスは、乾燥バイオマスのガス化装置において、主に熱分解、部分酸化および水蒸気改質によって得ることができ、合成ガスの主要生成物はCO、H2およびCO2である。シンガスはCO2の電気分解の生成物でもあり得る。当業者であれば、CO2の電気分解を行い、所望の量のCOを含むシンガスを生成するのに適した条件を理解するであろう。
【0037】
通常、ガス化プロセスから得られた合成ガスの一部は、生成物収率を最適化し、タールの形成を回避するために初めに処理される。合成ガス中の望ましくないタールおよびCOの分解は、石灰および/またはドロマイトを用いて行うことができる。
【0038】
全体効率、エタノールおよび/もしくはアセテートの生産性、ならびに/または全体的な炭素捕捉は、連続ガス流中のCO2、COおよびH2の化学量論に依存し得る。適用される連続ガス流は、CO2およびH2の組成であってもよい。特に、連続ガス流において、CO2の濃度範囲は、約10~50重量%、特に3重量%とすることができ、H2は44重量%~84重量%、特に64~66.04重量%の範囲内である。別の例では、連続ガス流は、N2のような不活性ガスを50重量%のN2濃度まで含んでいてもよい。
【0039】
より詳細には、COおよび/またはCO2を含む炭素源は、連続ガス流中で酢酸生成細胞と接触する。さらに詳細には、連続ガス流は合成ガスを含む。これらのガスは、例えば水性媒体中に開口するノズル、フリット、水性媒体中にガスを供給するパイプ内の膜等を用いて供給することができる。
【0040】
当業者であれば、適切な間隔で流れの組成および流量をモニタリングする必要があり得ることを理解するであろう。流れの組成の制御は、標的のまたは望ましい組成を達成するように構成流の比率を変化させることによって達成することができる。混合流の組成および流量は、当該技術分野で既知の任意の手段によってモニタリングすることができる。一例では、システムは、少なくとも2つの流れの流量および組成を連続的にモニタリングし、それらを組み合わせて、最適な組成の連続ガス流中に単一の混合基質流を生成するように適合され、最適化された基質流を発酵槽に移す手段を有する。
【0041】
還元剤、例えば水素を炭素源とともに供給してもよい。特に、この水素は、COおよび/またはCO2を供給および/または使用する際に供給することができる。一例では、水素ガスは、存在する合成ガスの一部である。別の例では、合成ガス中の水素ガスが不十分な場合、追加の水素ガスを供給してもよい。
【0042】
本明細書で使用される「酢酸生成菌」という用語は、Wood-Ljungdahl経路を実行することができ、したがってCO、CO2および/または水素を、2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えばアセテートに変換することができる微生物を指す。これらの微生物には、野生型ではWood-Ljungdahl経路を有しないが、遺伝子組換えの結果としてこの形質を獲得した微生物が含まれる。かかる微生物としては、E.コリ(E.coli)細胞が挙げられるが、これに限定されない。これらの微生物は、一酸化炭素資化(carboxydotrophic)菌として知られることもある。現在、21の異なる属の酢酸生成菌が当該技術分野で知られており(Drake et al., 2006)、これらには幾つかのクロストリジウムが含まれることもある(Drake & Kusel, 2005)。これらの細菌は、水素をエネルギー源とし、二酸化炭素または一酸化炭素を炭素源として利用することができる(Wood, 1991)。さらに、アルコール、アルデヒド、カルボン酸および多数のヘキソースも炭素源として利用され得る(Drake et al., 2004)。アセテートの形成をもたらす還元経路は、アセチル-CoAまたはWood-Ljungdahl経路と称される。
【0043】
特に、酢酸生成菌はアセトアナエロビウム・ノテラエ(Acetoanaerobium noterae)(ATCC 35199)、アセトネマ・ロングム(Acetonema longum)(DSM 6540)、アセトバクテリウム・カービノリカム(Acetobacterium carbinolicum)(DSM 2925)、アセトバクテリウム・マリクム(Acetobacterium malicum)(DSM 4132)、アセトバクテリウム属種番号446(Morinaga et al., 1990, J. Biotechnol., Vol. 14, p. 187-194)、アセトバクテリウム・ウィリンガエ(Acetobacterium wieringae)(DSM 1911)、アセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)(DSM 1030)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchi)(DSM 22112)、アーキオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)(DSM 4304)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)(DSM 2950、旧称ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminococcus productus)、旧称ペプトストレプトコッカス・プロダクタス(Peptostreptococcus productus))、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)(DSM 3468)、クロストリジウム・アセティクム(Clostridium aceticum)(DSM 1496)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)(DSM 10061、DSM 19630およびDSM 23693)、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)(DSM 15243)、クロストリジウム・コスカティイ(Clostridium coskatii)(ATCC番号PTA-10522)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)(ATCC BA-623)、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)(DSM 92)、クロストリジウム・グライコリカム(Clostridium glycolicum)(DSM 1288)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)(DSM 13528)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)C-01(ATCC 55988)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)ERI-2(ATCC 55380)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)O-52(ATCC 55989)、クロストリジウム・マヨムベイ(Clostridium mayombei)(DSM 6539)、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)(DSM 12182)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)(DSM 15248)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)(DSM 757)、クロストリジウム属種ATCC 29797(Schmidt et al., 1986, Chem. Eng. Commun., Vol. 45, p. 61-73)、デスルホトマクルム・クズネツォビイ(Desulfotomaculum kuznetsovii)(DSM 6115)、デスルホトマクルム・サーモベンゾイカム亜種サーモシントロフィカム(Desulfotomaculum thermobenzoicum subsp. thermosyntrophicum)(DSM 14055)、ユウバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum)(DSM 20543)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)C2A(DSM 2834)、モーレラ属種HUC22-1(Sakai et al., 2004, Biotechnol. Let., Vol. 29, p. 1607-1612)、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)(DSM 521、旧称クロストリジウム・サーモアセチカム(Clostridium thermoaceticum))、モーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)(DSM 1974)、オキソバクター・フェニジイ(Oxobacter pfennigii)(DSM 322)、スポロミュサ・アエリボランス(Sporomusa aerivorans)(DSM 13326)、スポロミュサ・オバータ(Sporomusa ovata)(DSM 2662)、スポロミュサ・シルバセティカ(Sporomusa silvacetica)(DSM 10669)、スポロミュサ・スフェロイデス(Sporomusa sphaeroides)(DSM 2875)、スポロミュサ・ターミティダ(Sporomusa termitida)(DSM 4440)およびサーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)(DSM 2030、旧称アセトゲニウム・キブイ(Acetogenium kivui))からなる群から選択することができる。
【0044】
より詳細には、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)の株ATCC BAA-624を使用することができる。さらに詳細には、例えば米国特許出願公開第2007/0275447号明細書および米国特許出願公開第2008/0057554号明細書に記載されているクロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)の「P7」および「P11」と分類された細菌株を使用することができる。
【0045】
別の特に適切な細菌は、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)であり得る。特に、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)PETC、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)ERI2、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)COLおよびクロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)O-52からなる群から選択される株を合成ガスからヘキサン酸への変換に使用することができる。これらの株は、例えば国際公開第98/00558号、国際公開第00/68407号、ATCC 49587、ATCC 55988およびATCC 55989に記載されている。
【0046】
4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸の製造は、合成ガスに由来する2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸(例えばアセテート)および/またはエタノールからであり、炭素鎖伸長が可能な微生物とともに酢酸生成菌を使用することを含み得る。例えば、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)をクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)と同時に使用してもよい。別の例では、単一の酢酸生成細胞が両方の生物の活性を発揮することがある。例えば、酢酸生成菌は、Wood-Ljungdahl経路および炭素鎖伸長経路の両方を実行することが可能であり得るC.カルボキシディボランス(C.carboxidivorans)であってもよい。
【0047】
例えば、本発明の任意の態様による工程(a)に使用されるエタノールおよび/またはアセテートは、合成ガスの発酵生成物であってもよく、または他の手段によって得られてもよい。エタノールおよび/またはアセテートを続いて工程(a)において微生物と接触させることができる。
【0048】
「接触させる」という用語は、本明細書で使用される場合、微生物とエタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、例えばアセテートとを直接接触させることを意味する。一例では、エタノールが炭素源であり、工程(a)における接触は、エタノールと工程(a)の微生物とを接触させることを含む。接触は直接的な接触であってもよく、または細胞とエタノールとを分離する膜等を含み得るか、もしくは細胞およびエタノールを2つの異なるコンパートメント等に収容し得る間接的な接触であってもよい。例えば、工程(b)において、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸と抽出媒体とは、異なるコンパートメント内にあってもよい。
【0049】
本発明の任意の態様による4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を産生することが可能な微生物は、細菌を培養するための当該技術分野で一般に知られている任意の培養培地、基質、条件およびプロセスを用いて培養することができる。これにより、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル(例えばヘキサン酸)を、生物工学的方法を用いて製造することができる。4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル(例えばヘキサン酸)の製造に使用される微生物に応じて、適切な増殖培地、pH、温度、撹拌速度、播種レベル、および/または好気、微好気もしくは嫌気条件は異なる。当業者であれば、本発明の任意の態様による方法を実施するために必要な他の条件を理解するであろう。特に、容器(例えば発酵槽)内の条件を、使用する微生物に応じて変化させることができる。微生物の最適な機能に適するように条件を変化させることは、当業者の知識の範囲内である。
【0050】
一例では、本発明の任意の態様による方法、特に工程(a)は、pHが5~8、5.5~8または5.5~7の水性媒体中で行うことができる。圧力は1~10barであり得る。微生物は、約20℃~約80℃の範囲の温度で培養することができる。一例では、微生物を37℃で培養することができる。
【0051】
幾つかの例では、微生物の増殖、ならびに4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル(例えばヘキサン酸)の産生のために、水性媒体は、微生物の増殖、または4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/もしくはそのエステル、例えばヘキサン酸の産生の促進に適した任意の栄養素、成分および/またはサプリメントを含んでいてもよい。特に、水性媒体は、炭素源、窒素源、例えばアンモニウム塩、酵母エキス、またはペプトン;ミネラル;塩;補因子;緩衝剤;ビタミン;ならびに細菌の増殖を促進し得る任意の他の成分および/または抽出物の少なくとも1つを含み得る。使用する培養培地は、特定の株の要件に適したものでなければならない。様々な微生物に対する培養培地の説明は、「Manual of Methods for General Bacteriology」に記載されている。
【0052】
「水溶液」または「媒体」という用語は、水、主に溶媒としての水を含む任意の溶液を含み、本発明の任意の態様による細胞を、少なくとも一時的に代謝的に活性な状態および/または生存状態に維持するために使用することができ、必要であれば、任意の付加的な基質を含む。当業者は、細胞を維持および/または培養するために使用され得る、通常は培地と称される多数の水溶液の調製に精通しており、例えばE.コリ(E.coli)の場合にはLB培地、C.リュングダリイ(C.ljungdahlii)の場合にはATCC1754培地を使用することができる。最小培地、すなわち、複合培地とは対照的に、細胞を代謝的に活性な状態および/または生存状態に維持するのに不可欠な塩および栄養素の最小限のセットのみを含む、適度に単純な組成の培地を水溶液として使用することが、望ましくない副生成物による生成物の不必要な汚染を回避するために有利である。例えば、M9培地を最小培地として使用することができる。細胞は、所望の生成物を生成するのに十分な時間、例えば、少なくとも1、2、4、5、10または20時間にわたって炭素源とともにインキュベートされる。選択される温度は、本発明の任意の態様による細胞が触媒的に有能かつ/または代謝的に活性であり続けるような温度でなければならず、例えば10~42℃、好ましくは30~40℃、特に細胞がC.リュングダリイ(C.ljungdahlii)細胞である場合には32~38℃である。本発明の任意の態様による水性媒体には、ヘキサン酸が製造される媒体も含まれる。これは主に、溶液が実質的に水を含む媒体を指す。一例では、細胞がヘキサン酸の製造に使用される水性媒体は、ヘキサン酸の抽出のために抽出剤と接触させる媒体そのものである。
【0053】
本発明の任意の態様によれば、発酵を工程(a)で行うと同時に、抽出を工程(b)で行うことが好ましい。これは、工程(b)における4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸および/またはそのエステルの原位置抽出を表す。
【0054】
本発明の任意の態様による工程(b)では、水性媒体中の4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル(例えばヘキサン酸)は、ヘキサン酸を水性媒体から抽出剤中に抽出するのに十分な時間にわたって抽出剤と接触させることができる。当業者であれば、分配平衡に達するのに必要とされる時間、および抽出プロセスを最適化するのに必要とされ得る適切な気泡凝集を決定することが可能であろう。幾つかの例では、必要とされる時間は、抽出され得るヘキサン酸の量に依存し得る。特に、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル(例えばヘキサン酸)を水性媒体から抽出剤中に抽出するのに必要とされる時間は、数分しかかからないこともある。本発明の任意の態様によれば、発酵が工程(a)で行われる際に抽出が工程(b)で行われる場合、抽出の時間は発酵の時間と同等であり得る。
【0055】
使用される抽出剤と抽出されるヘキサン酸の量との比率は、抽出を行う速度に応じて異なり得る。一例では、抽出剤の量は、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を含む水性媒体の量に等しい。抽出剤と水性媒体とを接触させる工程の後に、2つの相(水相および有機相)を当該技術分野で既知の任意の手段を用いて分離する。一例では、分離漏斗を用いて2つの相を分離することができる。ミキサセトラ、パルスカラム等を用いて2つの相を分離することもできる。一例では、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸からの抽出媒体の分離は、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸が抽出剤よりも大幅に低い沸点で蒸留されることを考慮して、蒸留を用いて行うことができる。当業者であれば、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸の特性に応じて、工程(b)で所望のヘキサン酸から抽出剤を分離する最良の方法を選択することが可能であろう。特に、本発明の任意の態様による工程(c)は、工程(b)からの4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を回収することを含む。4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸と有機抽出剤との接触は、2つの相の形成をもたらし、2つの相(水相および有機相)は、当該技術分野で既知の任意の手段を用いて分離される。一例では、分離漏斗を用いて2つの相を分離することができる。ミキサセトラ、パルスカラム、熱分離等を用いて2つの相を分離することもできる。一例では、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸がヘキサン酸である場合、ヘキサン酸からの抽出媒体の分離は、ヘキサン酸が抽出媒体よりも大幅に低い沸点で蒸留されることを考慮して、蒸留を用いて行うことができる。
【0056】
工程(b)は、有機吸収剤を再び再循環または再利用できるようにして終了する。
【0057】
したがって、本発明の任意の態様によるヘキサン酸を抽出するための方法は、ヘキサン酸を製造する任意の生物工学的方法とともに用いることができる。通常、生物学的方法を用いてヘキサン酸を製造する発酵プロセス中に、ヘキサン酸が水性媒体中に蓄積したままとなり、発酵培地中で或る特定の濃度に達した後に、標的生成物(ヘキサン酸)そのものが微生物の活性および生産性を阻害する可能性があるため、このことは特に有利である。これにより発酵プロセスの全収率が制限される。この抽出方法を用いることで、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸は、生成されたままで抽出されるため、最終生成物の阻害が劇的に減少する。
【0058】
また、本発明の任意の態様による方法は、ヘキサン酸の回収のための蒸留および/または沈殿に主に依存しないため、特に生成されたままでの発酵方法からのヘキサン酸を取り出す従来の方法よりも効率的であり、コスト効率が良い。蒸留または沈殿プロセスは、より高い製造コスト、より低い収率およびより多くの廃棄物をもたらし、したがってプロセスの全体効率が低下する可能性がある。本発明の任意の態様による方法は、これらの欠点を克服しようとするものである。
【0059】
特に、本発明の任意の態様による微生物と炭素源との混合物は、本発明の任意の態様を実施するために、任意の既知のバイオリアクターまたは発酵槽において用いることができる。一例では、アセテートおよび/またはエタノールからの4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸の生物工学的製造で始まり、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸の抽出で終わる本発明の任意の態様による完全な方法は、単一の容器において行われる。したがって、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を生成する工程と、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を抽出する工程との間に分離工程を設けなくてもよい。これにより時間およびコストが節約される。特に、発酵プロセス中に、微生物を水性媒体中にて抽出剤の存在下で増殖させることができる。このため、本発明の任意の態様による方法は、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を生成するワンポット手段を提供する。また、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸は、生成されたままで抽出されるため、最終生成物の阻害が起こらず、ヘキサン酸の収率が確実に維持される。4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸を取り出すために更なる分離工程を行ってもよい。漏斗、カラム、蒸留等を使用するような当該技術分野で既知の任意の分離方法を用いることができる。残りの抽出剤および/または細胞を続いて再循環させることができる。
【0060】
別の例では、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸の抽出プロセスは、別の工程として、かつ/または別のポットにおいて行ってもよい。発酵が行われた後、抽出すべき所望の4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸がすでに生成されている場合、本発明の任意の態様による抽出剤を発酵培地に添加してもよく、または発酵培地を抽出剤が入ったポットに添加してもよい。次いで、所望の4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を、漏斗、カラム、蒸留等を使用するような当該技術分野で既知の任意の分離方法によって抽出することができる。残りの抽出剤を続いて再循環させることができる。細胞を含む発酵培地も再循環させることができる。
【0061】
方法の別の利点は、抽出剤を再循環させることができることである。したがって、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸を抽出剤から分離した後、抽出剤を再循環させて再利用することで、廃棄物を減少させることができる。
【0062】
本発明の任意の態様による方法の工程(c)は、(b)からの抽出された4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸と、少なくとも1つのケトン化触媒および任意に1~22個の炭素原子を含む更なるアルカン酸とを、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸から7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンへの化学的ケトン化に適した反応条件下で接触させることを含む。
【0063】
「1~22個の炭素原子を含む更なるアルカン酸」という用語は、ヘキサン酸を包含しない。好ましくは1~22個の炭素原子を含む更なるアルカン酸は、4~18個、好ましくは5~12個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸から選択される。
【0064】
本発明の任意の態様によるケトン化触媒は、任意の金属酸化物触媒またはそれらの混合物であり得る。ケトン化では、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/またはそのエステル、例えばヘキサン酸と、更なるアルカン酸ならびに/または4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、その塩および/もしくはそのエステル、例えばヘキサン酸とを反応させ、好ましくは、1個の水および1個の二酸化炭素を除去しながら、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸(例えばヘキサン酸)の2つの分子を1つのケトン分子に二量化する。ヘキサン酸が4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸である場合、ヘキサン酸無水物((CH3(CH2)4)COOCO(CH2)4CH3)が形成され得る、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸のケトン化に関与する可能性がある機構は、少なくともWoo, Y., Ind. Eng. Chem. Res. 2017, 56: 872-880に開示されている。様々な金属酸化物触媒の存在下でのヘキサン酸のケトン化は、Wang, S. J. Phys. Chem. C 2017, 121, 18030-18046にも示されている。
【0065】
本発明の任意の態様に従って使用されるケトン化触媒は、工程(a)に従って生物学的に製造されたヘキサン酸から、より高いエネルギー密度のケトン、好ましくはC11を効率的に製造するための不均一系触媒であり得る。特に、ケトン化触媒は、ヘテロポリ酸(H3PW12O40)触媒、酸化ニオブ(Nb2O5)触媒、酸化チタン(TiO2)触媒、酸化セリウム(CeO2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnOx)触媒、酸化ランタン(La2O3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、Fe4O5、Fe5O6、Fe5O7)、ケイ素-アルミニウム(SiyAlzO)混合酸化物触媒、酸化アルミニウム(Al2O3)触媒およびジルコニア(ZrO2)触媒からなる群から選択される任意の金属酸化物触媒またはその混合物であってもよい。MnOxの「x」は1、2または4であり得る。SiyAlzOの「y」および「z」は、比z/yが0~1の任意の数となる任意の数を指すことができる。一例では、Pham T. N., ACS Catal. 2013, 3: 2456-2473に開示されているように、適切な不均一系水素化金属触媒および適切な反応条件を用いてケトン化をヘキサン酸に対して行う。開示のような条件は、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、例えば6-ウンデカノンを効果的に得るために使用される触媒に応じて変化させることができる。さらに別の例では、MnO2および/またはAl2O3触媒は、Glinski, M. et al, Polish J. Chem. 2004, 78: 299-302に開示されている内容に基づいて、ヘキサン酸から6-ウンデカノンへのケトン化に使用することができる。更なる例では、Nb2O5触媒は、米国特許第6,265,618号明細書、特に実施例3に開示されているように、ヘキサン酸から6-ウンデカノンへのケトン化に使用することができる。当業者であれば、単純な試行錯誤により、現行の技術水準に基づき、ヘキサン酸、最終的には別のアルカン酸から7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンを製造するための適切な触媒および適切な条件を特定することが可能であろう。Orozco, L.M et al ChemSusChem, 2016, 9(17): 2430-2442およびOrozco, L.M et al Green Chemistry, 2017, 19(6): 1555-1569にも、本発明の任意の態様によるケトン化触媒として使用され得る他の触媒が開示されている。
【0066】
金属酸化物触媒またはそれらの混合物は、好ましくはヘテロポリ酸(H3PW12O40)触媒、酸化チタン(TiO2)触媒、酸化セリウム(CeO2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnO2)触媒、酸化ランタン(La2O3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、Fe4O5、Fe5O6、Fe5O7)、ケイ素-アルミニウム(Si-Al)混合酸化物触媒およびジルコニア(ZrO2)触媒からなる群から選択される。好ましくは、工程(c)におけるケトン化触媒は、酸化マンガン(MnOx)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒またはジルコニアエアロゲル触媒である。特に、工程(c)におけるケトン化触媒は、酸化マンガン(MnOx)触媒または酸化マグネシウム(MgO)触媒であり得る。
【0067】
工程(c)における種々のケトン化触媒の使用に適した条件を決定することは、当業者の知識の範囲内であろう。特に、ケトン化触媒はジルコニアエアロゲル触媒であってもよく、Woo, Y., Ind. Eng. Chem. Res. 2017, 56: 872-880に開示されているようなヘキサン酸のケトン化に使用することができる。ジルコニアエアロゲル触媒は、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンを効率的に生成し得るだけでなく、触媒の浸出も回避する。Lee, Y. et al in Applied Catalysis A: General. 2015, 506: 288-293には、種々のケトン化触媒およびヘキサン酸のケトン化におけるそれらの有効性が開示されている。当業者であれば、Lee, Y. et alに記載の方法を用いて、4~7個の炭素原子を含む中間体直鎖アルカン酸、例えばヘキサン酸のケトン化への使用に適したケトン化触媒および/または条件を非常に容易に決定することができる。
【0068】
特に、工程(c)の適切な反応条件は、100℃~500℃、100℃~450℃、100℃~400℃、100℃~350℃、100℃~300℃、100℃~250℃、100℃~200℃、150℃~500℃、150℃~450℃、150℃~400℃、150℃~350℃、150℃~300℃、150℃~250℃、150℃~200℃、200℃~500℃、200℃~450℃、200℃~400℃、200℃~350℃、200℃~300℃、200℃~250℃、250℃~500℃、250℃~450℃、250℃~400℃、250℃~350℃、250℃~300℃等の反応温度を含む。
【0069】
好ましくは、工程(c)の適切な反応条件は、150℃~350℃の反応温度を含む。
【0070】
より詳細には、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンは、ケトン化触媒としてMgO/SiO2触媒を用い、150℃~350℃の反応温度、好ましくは200℃~350℃の反応温度でヘキサン酸から製造することができる。
【0071】
本発明による方法の工程(d)は、工程(c)で得られた7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンと、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンから7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカノール、好ましくは6-ウンデカノールへの接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させることを提供する。
【0072】
特に本発明による方法の工程(d)は、本発明の任意の態様に従って製造された7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンと、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンから7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノール、好ましくは6-ウンデカノールへの接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させることを含む。高級アルカノール、好ましくは第二級アルコールである6-ウンデカノール(C11H24O)は、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノン、好ましくは6-ウンデカノンの接触水素化の結果であり、水素分子が炭素-酸素二重結合に付加され、最終的に高級アルカノール、好ましくは6-ウンデカノールが最終生成物として得られる。
【0073】
水素化金属触媒は、均一系または不均一系触媒であり得る。均一系金属触媒は、当該技術分野で既知の金属錯体であってもよい。特に、水素化金属触媒は不均一系触媒であり得る。固体触媒を使用する多相触媒反応を用いることの幾つかの利点としては、触媒と生成物との容易な分離、容易な回収および触媒の再循環、ならびに比較的穏やかな操作条件が挙げられる。不均一系触媒の使用には明らかな経済的および環境的インセンティブもある。特に、水素化金属触媒はルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)触媒および白金(Pt)触媒からなる群から選択することができる。より詳細には、触媒はNi、PdおよびPt触媒からなる群から選択することができる。一例では、本発明の任意の態様に従って使用される水素化金属触媒は、Alonso, F. Tetrahedron, 2008, 64: 1847-52に記載されているようなニッケルナノ粒子であってもよい。別の例では、Gorgas, N., Organometallics, 2014, 33 (23): 6905-6914に開示されているように、鉄(II)PNPピンサー錯体を、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンから高級第二級アルコール、好ましくは6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化のための水素化金属触媒として使用することができる。さらに別の例では、Tariq Shah M., et al., ACS Applied Materials & Interfaces, 2015: 7(12), 6480-9に記載されているようなルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)触媒または白金(Pt)触媒のマグネタイトナノ粒子を、本発明の任意の態様による不均一系水素化金属触媒として使用することができる。
【0074】
さらに別の例では、Chen, J-X., Tetrahedron, 2000, 56: 2153-2166に開示されているように、銅-ホスフィン錯体が本発明の任意の態様による均一系水素化金属触媒として使用される。更なる例では、Journal of Molecular Catalysis A: Chemical, 2014, 388-389: 116-122に開示されているような不均一系Pt触媒、特にPt/Al2O3触媒を、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンから高級第二級アルコール、好ましくは6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化に使用してもよい。ChemSusChem, 2017: 10(11), 2527-2533にも、6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化のための酸触媒と組み合わせて、または酸触媒なしで使用され得るPt/C、Ru/CおよびPd/C等の様々な不均一系触媒が開示されている。以上を踏まえて、当業者であれば、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンから高級アルカノール、好ましくは6-ウンデカノンから6-ウンデカノールを得るために、本発明の任意の態様に従って使用するのに適した水素化触媒を決定することができる。
【0075】
当業者であれば、7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノール、好ましくは6-ウンデカノンの水素化による6-ウンデカノールを効率的に製造するために適切な水素化金属触媒を決定し、それに応じて条件を変化させることが容易に可能であろう。
【0076】
本発明による方法の工程(d)の水素化金属触媒は、好ましくはルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)および白金(Pt)触媒からなる群から選択される。
【0077】
本発明による方法の工程(e)は、7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノール、例えば6-ウンデカノールを酸性不均一系触媒の存在下で脱水して、対応する高級アルケン、例えば5-ウンデセンを形成することを含む。
【0078】
好ましくは、工程(e)の酸性不均一系触媒は、アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む触媒である。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、工程(e)の酸性不均一系触媒はZSM-5を含む。
【0079】
Zeolite Socony Mobil-5(ZSM-5(five)の骨格型MFI)であるZSM-5は、ゼオライトのペンタシルファミリーに属するアルミノケイ酸塩ゼオライトである。その化学式は、NanAlnSi96-nO192・16H2O(0<n<27)である。1975年にMobil Oil Companyにより特許が取得され、炭化水素異性化反応の不均一系触媒として石油産業で広く使用されている。
【0080】
工程(e)の酸性不均一系触媒は、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、モリブデンおよびマンガンから選択される遷移金属、好ましくはモリブデン、好ましくは5重量%モリブデンをさらに含んでいてもよい。
【0081】
脱水工程(e)の反応温度は約100~約250℃、好ましくは約120~約180℃である。溶媒はトルエンであり得る。
【0082】
7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールの脱水である工程(e)と、得られた7~28個の炭素原子を含む直鎖アルケンから7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルカンへの接触水素化である工程(f)とを、脱水特性および水素化特性をもたらす触媒または触媒混合物を用いて単一の工程に組み合わせることができる。
【0083】
実施例
実施例1
アセテートおよびエタノールからヘキサン酸を形成するクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)
エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換には細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を使用した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0084】
前培養については、250mlボトル内の100mlのDMSZ52培地(pH=7.0;10g/L酢酸K、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/l NH4Cl、0.20g/l MgSO4・7H2O、1g/L酵母エキス、0.50mg/Lレサズリン、10μl/l HCl(25%、7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、70μg/L ZnCl2・7H2O、100μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、0.25g/Lシステイン-HCl・H2O、0.25g/L Na2S・9H2O)にクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の凍結培養物(frozen cryoculture)を5ml播種し、37℃で144時間、OD600nm>0.2までインキュベートした。
【0085】
本培養については、500mlボトル内の200mlの新鮮DMSZ52培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。この増殖培養物を37℃で27時間、OD600nm>0.6までインキュベートした。次いで、細胞懸濁液を遠心分離し、産生バッファー(pH6.0;0.832g/L酢酸K、5.0g/lエタノール)で洗浄し、再び遠心分離した。
【0086】
産生培養については、500mlボトル内の200mlの産生バッファーに本培養からの洗浄した細胞を播種し、OD600nmを0.2とした。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放振盪水浴にて37℃および100rpmで71時間インキュベートした。培養期間の開始時および終了時にサンプルを採取した。これらを光学密度、pHおよび各種分析物(NMRにより試験)について試験した。
【0087】
結果から、産生段階でアセテートの量が0.54g/lから0.03g/lに減少し、エタノールの量が5.6g/lから4.9g/lに減少することが示された。また、酪酸の濃度は0.05g/lから0.28g/lに増加し、ヘキサン酸の濃度は0.03g/lから0.79g/lに増加した。
【0088】
実施例2
酪酸およびエタノールからヘキサン酸を形成するクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)
エタノールおよび酪酸からヘキサン酸への生体内変換には細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を使用した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0089】
前培養については、250mlボトル内の100mlのDMSZ52培地(pH=7.0;10g/L酢酸K、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/l NH4Cl、0.20g/l MgSO4・7H2O、1g/L酵母エキス、0.50mg/Lレサズリン、10μl/l HCl(25%、7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、70μg/L ZnCl2・7H2O、100μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、0.25g/Lシステイン-HCl・H2O、0.25g/L Na2S・9H2O)にクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の凍結培養物を5ml播種し、37℃で144時間、OD600nm>0.3までインキュベートした。
【0090】
本培養については、500mlボトル内の200mlの新鮮DMSZ52培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。この増殖培養物を37℃で25時間、OD600nm>0.4までインキュベートした。次いで、細胞懸濁液を遠心分離し、産生バッファー(pH6.16;4.16g/L酢酸K、10.0g/lエタノール)で洗浄し、再び遠心分離した。
【0091】
産生培養については、500mlボトル内の200mlの産生バッファーに本培養からの洗浄した細胞を播種し、OD600nmを0.2とした。第1の培養物では、初めに1.0g/l酪酸を産生バッファーに添加し、第2の培養物では、酪酸を産生バッファーに添加しなかった。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放振盪水浴にて37℃および100rpmで71時間インキュベートした。培養期間の開始時および終了時にサンプルを採取した。これらを光学密度、pHおよび各種分析物(NMRにより試験)について試験した。
【0092】
結果から、酪酸添加培養物の産生段階でアセテートの量が3.1g/lから1.1g/lに減少し、エタノールの量が10.6g/lから7.5g/lに減少することが示された。また、酪酸の濃度は1.2g/lから2.2g/lに増加し、ヘキサン酸の濃度は0.04g/lから2.30g/lに増加した。
【0093】
非添加培養物の産生段階では、アセテートの量が3.0g/lから1.3g/lに減少し、エタノールの量が10.2g/lから8.2g/lに減少した。また、酪酸の濃度は0.1g/lから1.7g/lに増加し、ヘキサン酸の濃度は0.01g/lから1.40g/lに増加した。
【0094】
実施例3
デカンおよびTOPOの存在下でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、デカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養物に添加した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0095】
前培養については、250mlのVeri01培地(pH7.0;10g/L酢酸カリウム、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/L NH4Cl、0.20g/L MgSO4・7H2O、10μl/L HCl(7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、36μg/L ZnCl2、64μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、1.2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、65mg/Lグリシン、24mg/Lヒスチジン、64.6mg/Lイソロイシン、93.8mg/Lロイシン、103mg/Lリジン、60.4mg/Lアルギニン、21.64mg/L L-システイン-HCl、21mg/Lメチオニン、52mg/Lプロリン、56.8mg/Lセリン、59mg/Lトレオニン、75.8mg/Lバリン)に、クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の生菌培養物10mlを播種し、開始OD600nmを0.1とした。
【0096】
1000mL耐圧ガラスボトル内での培養を開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および100%CO2による換気速度1L/時間で671時間行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。100g/L NaOH溶液の自動添加によりpHを6.2に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持した。
【0097】
本培養については、250mlボトル内の100mlの新鮮Veri01培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。デカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに1ml添加した。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放水浴シェーカーにて37℃および150rpmで43時間、100%CO2雰囲気下でインキュベートした。
【0098】
培養中に幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0099】
本培養中にブチレートの濃度は0.14g/Lから2.12g/Lに増加し、ヘキサノエートの濃度は0.22g/Lから0.91g/Lに増加したが、エタノールの濃度は15.04から11.98g/lに減少し、アセテートの濃度は6.01から4.23g/Lに減少した。
【0100】
OD600nmは、この間に0.111から0.076に減少した。
【0101】
実施例4
テトラデカンおよびTOPOの存在下でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、テトラデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養物に添加した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0102】
1000mL耐圧ガラスボトル内でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の前培養を、250mlのEvoDM24培地(pH5.5;0.429g/L酢酸Mg、0.164g/l酢酸Na、0.016g/L酢酸Ca、2.454g/l酢酸K、0.107mL/L H3PO4(8.5%)、0.7g/L酢酸NH4、0.35mg/L酢酸Co、1.245mg/L酢酸Ni、20μg/L d-ビオチン、20μg/L葉酸、10μg/Lピリドキシン-HCl、50μg/Lチアミン-HCl、50μg/Lリボフラビン、50μg/Lニコチン酸、50μg/Lパントテン酸Ca、50μg/LビタミンB12、50μg/L p-アミノベンゾエート、50μg/Lリポ酸、0.702mg/L (NH4)2Fe(SO4)2・4H2O、1ml/L KS-アセテート(93.5mM)、20mL/Lエタノール、0.37g/L酢酸)中、開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および25%CO2と75%N2との混合物による換気速度1L/時間で行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。2.5M NH3溶液の自動添加によりpHを5.5に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持し、約1.5のOD600nmを維持した。
【0103】
本培養については、250mlボトル内の100mlのVeri01培地(pH6.5;10g/L酢酸カリウム、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/L NH4Cl、0.20g/L MgSO4・7H2O、10μl/L HCl(7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、36μg/L ZnCl2、64μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、1.2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、65mg/Lグリシン、24mg/Lヒスチジン、64.6mg/Lイソロイシン、93.8mg/Lロイシン、103mg/Lリジン、60.4mg/Lアルギニン、21.64mg/L L-システイン-HCl、21mg/Lメチオニン、52mg/Lプロリン、56.8mg/Lセリン、59mg/Lトレオニン、75.8mg/Lバリン、2.5mL/L 25%HCl)に、前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。テトラデカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに1ml添加した。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放水浴シェーカーにて37℃および150rpmで47時間、100%CO2雰囲気下でインキュベートした。
【0104】
培養中に幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0105】
本培養中にブチレートの濃度は0.05g/Lから3.78g/Lに増加し、ヘキサノエートの濃度は0.09g/Lから4.93g/Lに増加したが、エタノールの濃度は15.52から9.36g/lに減少し、アセテートの濃度は6.36から2.49g/Lに減少した。
【0106】
OD600nmは、この間に0.095から0.685に増加した。
【0107】
実施例5
ヘキサデカンおよびTOPOの存在下でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、ヘキサデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養物に添加した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0108】
前培養については、250mlのVeri01培地(pH7.0;10g/L酢酸カリウム、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/L NH4Cl、0.20g/L MgSO4・7H2O、10μl/L HCl(7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、36μg/L ZnCl2、64μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、1.2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、65mg/Lグリシン、24mg/Lヒスチジン、64.6mg/Lイソロイシン、93.8mg/Lロイシン、103mg/Lリジン、60.4mg/Lアルギニン、21.64mg/L L-システイン-HCl、21mg/Lメチオニン、52mg/Lプロリン、56.8mg/Lセリン、59mg/Lトレオニン、75.8mg/Lバリン)に、クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の生菌培養物10mlを播種し、開始OD600nmを0.1とした。
【0109】
1000mL耐圧ガラスボトル内での培養を開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および100%CO2による換気速度1L/時間で671時間行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。100g/L NaOH溶液の自動添加によりpHを6.2に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持した。
【0110】
本培養については、250mlボトル内の100mlの新鮮Veri01培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。ヘキサデカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに1ml添加した。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放水浴シェーカーにて37℃および150rpmで43時間、100%CO2雰囲気下でインキュベートした。
【0111】
培養中に幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0112】
本培養中にブチレートの濃度は0.14g/Lから2.86g/Lに増加し、ヘキサノエートの濃度は0.20g/Lから2.37g/Lに増加したが、エタノールの濃度は14.59から10.24g/lに減少し、アセテートの濃度は5.87から3.32g/Lに減少した。
【0113】
OD600nmは、この間に0.091から0.256に増加した。
【0114】
実施例6
ヘプタデカンおよびTOPOの存在下でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、ヘプタデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養物に添加した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0115】
前培養については、250mlのVeri01培地(pH7.0;10g/L酢酸カリウム、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/L NH4Cl、0.20g/L MgSO4・7H2O、10μl/L HCl(7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、36μg/L ZnCl2、64μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、1.2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、65mg/Lグリシン、24mg/Lヒスチジン、64.6mg/Lイソロイシン、93.8mg/Lロイシン、103mg/Lリジン、60.4mg/Lアルギニン、21.64mg/L L-システイン-HCl、21mg/Lメチオニン、52mg/Lプロリン、56.8mg/Lセリン、59mg/Lトレオニン、75.8mg/Lバリン)に、クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の生菌培養物10mlを播種し、開始OD600nmを0.1とした。
【0116】
1000mL耐圧ガラスボトル内での培養を開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および100%CO2による換気速度1L/時間で671時間行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。100g/L NaOH溶液の自動添加によりpHを6.2に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持した。
【0117】
本培養については、250mlボトル内の100mlの新鮮Veri01培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。ヘプタデカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに1ml添加した。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放水浴シェーカーにて37℃および150rpmで43時間、100%CO2雰囲気下でインキュベートした。
【0118】
培養中に幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0119】
本培養中にブチレートの濃度は0.15g/Lから2.82g/Lに増加し、ヘキサノエートの濃度は0.19g/Lから2.85g/Lに増加したが、エタノールの濃度は14.34から9.58g/lに減少し、アセテートの濃度は5.88から3.20g/Lに減少した。
【0120】
OD600nmは、この間に0.083から0.363に増加した。
【0121】
実施例7
ドデカンおよびTOPOの存在下でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、ドデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養物に添加した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0122】
前培養については、250mlのVeri01培地(pH7.0;10g/L酢酸カリウム、0.31g/L K2HPO4、0.23g/L KH2PO4、0.25g/L NH4Cl、0.20g/L MgSO4・7H2O、10μl/L HCl(7.7M)、1.5mg/L FeCl2・4H2O、36μg/L ZnCl2、64μg/L MnCl2・4H2O、6μg/L H3BO3、190μg/L CoCl2・6H2O、1.2μg/L CuCl2・6H2O、24μg/L NiCl2・6H2O、36μg/L Na2MO4・2H2O、0.5mg/L NaOH、3μg/L Na2SeO3・5H2O、4μg/L Na2WO4・2H2O、100μg/LビタミンB12、80μg/L p-アミノ安息香酸、20μg/L D(+)-ビオチン、200μg/Lニコチン酸、100μg/L D-パントテン酸Ca、300μg/L塩酸ピリドキシン、200μg/lチアミン-HCl・2H2O、20ml/Lエタノール、2.5g/L NaHCO3、65mg/Lグリシン、24mg/Lヒスチジン、64.6mg/Lイソロイシン、93.8mg/Lロイシン、103mg/Lリジン、60.4mg/Lアルギニン、21.64mg/L L-システイン-HCl、21mg/Lメチオニン、52mg/Lプロリン、56.8mg/Lセリン、59mg/Lトレオニン、75.8mg/Lバリン)に、クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の生菌培養物10mlを播種し、開始OD600nmを0.1とした。
【0123】
1000mL耐圧ガラスボトル内での培養を開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および100%CO2による換気速度1L/時間で671時間行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。100g/L NaOH溶液の自動添加によりpHを6.2に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持した。
【0124】
本培養については、250mlボトル内の100mlの新鮮Veri01培地に前培養からの遠心分離した細胞を播種し、OD600nmを0.1とした。ドデカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに1ml添加した。培養物にブチルゴム栓で蓋をし、開放水浴シェーカーにて37℃および150rpmで43時間、100%CO2雰囲気下でインキュベートした。
【0125】
培養中に幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0126】
本培養中にブチレートの濃度は0.14g/Lから2.62g/Lに増加し、ヘキサノエートの濃度は0.22g/Lから2.05g/Lに増加したが、エタノールの濃度は14.62から10.64g/lに減少し、アセテートの濃度は5.92から3.54g/Lに減少した。
【0127】
OD600nmは、この間に0.091から0.259に増加した。
【0128】
実施例8
水とヘキサデカンおよびTOPOの混合物との間のヘキサン酸の分配係数の決定
実験の全段階において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるpHおよびヘキサン酸の濃度の決定のために両相からのサンプルを採取した。5g/kgヘキサン酸の水溶液100gおよびヘキサデカン中の6%トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)の混合物33gを分液漏斗に充填し、37℃で1分間混合した。次いで、漏斗を三脚リングに設置し、エマルションを静置して自然に分離させた。水相のpHを測定した。次いで、1M NaOH溶液を漏斗に添加し、混合した。分離およびサンプリングの工程を水相中のpHが6.2に達するまで繰り返した。この時点で後の分析のために両相からのサンプルを採取した。水相はHPLCによって直接分析することができた。有機相の分析については、希釈したヘキサン酸を初めに水(1M NaOHの添加によりpH12.0)に再抽出し、続いてHPLCによって分析した。水とヘキサデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸の分配係数KDを両相中のヘキサン酸の濃度から算出した。
【0129】
K(D)=c(Hex、有機相)/c(Hex、水相)
pH6.2での水とヘキサデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸のKDは4.7であった。
【0130】
実施例9
水とヘプタデカンおよびTOPOの混合物との間のヘキサン酸の分配係数の決定
実験の全段階において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるpHおよびヘキサン酸の濃度の決定のために両相からのサンプルを採取した。5g/kgヘキサン酸の水溶液100gおよびヘプタデカン中の6%トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)の混合物33gを分液漏斗に充填し、37℃で1分間混合した。次いで、漏斗を三脚リングに設置し、エマルションを静置して自然に分離させた。水相のpHを測定した。1M NaOH溶液を漏斗に添加し、混合した。分離およびサンプリングの工程を水相中のpHが6.2に達するまで繰り返した。この時点で後の分析のために両相からのサンプルを採取した。水相はHPLCによって直接分析することができた。有機相の分析については、希釈したヘキサン酸を初めに水(1M NaOHの添加によりpH12.0)に再抽出し、続いてHPLCによって分析した。水とヘプタデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸の分配係数KDを両相中のヘキサン酸の濃度から算出した。
【0131】
K(D)=c(Hex、有機相)/c(Hex、水相)
pH6.2での水とヘプタデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸のKDは5.0であった。
【0132】
実施例10
水とテトラデカンおよびTOPOの混合物との間のヘキサン酸の分配係数の決定
実験の全段階において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるpHおよびヘキサン酸の濃度の決定のために両相からのサンプルを採取した。5g/kgヘキサン酸+0.5g/kg酢酸の水溶液130gおよびテトラデカン中の6%トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)の混合物15gを分液漏斗に充填し、37℃で1分間混合した。次いで、漏斗を三脚リングに設置し、エマルションを静置して自然に分離させた。水相のpHを測定した。1M NaOH溶液を漏斗に添加し、混合した。分離およびサンプリングの工程を水相中のpHが6.2に達するまで繰り返した。この時点で後の分析のために両相からのサンプルを採取した。水相はHPLCによって直接分析することができた。有機相の分析については、希釈したヘキサン酸を初めに水(1M NaOHの添加によりpH12.0)に再抽出し、続いてHPLCによって分析した。水とテトラデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸の分配係数KDを両相中のヘキサン酸の濃度から算出した。
【0133】
K(D)=c(Hex、有機相)/c(Hex、水相)
pH6.9での水およびテトラデカン中の6%TOPOとの系におけるヘキサン酸のKDは1.3であった。
【0134】
実施例11
クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の培養およびヘキサン酸の抽出
細菌クロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)を、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸への生体内変換のために培養した。産生されたヘキサン酸の原位置抽出のために、テトラデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を連続的に培養物に通した。全ての培養工程を、ブチルゴム栓で密閉することができる耐圧ガラスボトルにおいて嫌気条件下で行った。
【0135】
1000mL耐圧ガラスボトル内でのクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)の前培養を、250mlのEvoDM45培地(pH5.5;0.004g/L酢酸Mg、0.164g/l酢酸Na、0.016g/L酢酸Ca、0.25g/l酢酸K、0.107mL/L H3PO4(8.5%)、2.92g/L酢酸NH4、0.35mg/L酢酸Co、1.245mg/L酢酸Ni、20μg/L d-ビオチン、20μg/L葉酸、10μg/Lピリドキシン-HCl、50μg/Lチアミン-HCl、50μg/Lリボフラビン、50μg/Lニコチン酸、50μg/Lパントテン酸Ca、50μg/LビタミンB12、50μg/L p-アミノベンゾエート、50μg/Lリポ酸、0.702mg/L (NH4)2Fe(SO4)2・4H2O、1ml/L KS-アセテート(93.5mM)、20mL/Lエタノール、0.37g/L酢酸)中、開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および25%CO2と75%N2との混合物による換気速度1L/時間で行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。2.5M NH3溶液の自動添加によりpHを5.5に維持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、発酵ブロスを孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs,Rancho Dominguez,USA)に通して反応器から連続的に取り出して、細胞を反応器内に保持し、約1.5のOD600nmを維持した。
【0136】
本培養については、1000mlボトル内の150mlのEvoDM39培地(pH5.8;0.429g/L酢酸Mg、0.164g/l酢酸Na、0.016g/L酢酸Ca、2.454g/l酢酸K、0.107mL/L H3PO4(8.5%)、1.01mL/L酢酸、0.35mg/L酢酸Co、1.245mg/L酢酸Ni、20μg/L d-ビオチン、20μg/L葉酸、10μg/Lピリドキシン-HCl、50μg/Lチアミン-HCl、50μg/Lリボフラビン、50μg/Lニコチン酸、50μg/Lパントテン酸Ca、50μg/LビタミンB12、50μg/L p-アミノベンゾエート、50μg/Lリポ酸、0.702mg/L (NH4)2Fe(SO4)2・4H2O、1ml/L KS-アセテート(93.5mM)、20mL/Lエタノール、8.8mL NH3溶液(2.5mol/L)、27.75ml/L酢酸(144g/L))に、前培養からの細胞ブロス100mlを播種し、OD600nmを0.71とした。
【0137】
培養は、開放水浴シェーカーにて37℃、150rpm、および25%CO2と75%N2との混合物による換気速度1L/時間で65時間行った。反応器のヘッドスペースにガスを排出した。2.5M NH3溶液の自動添加によりpHを5.8に維持した。新鮮培地を0.5d-1の希釈速度で反応器に連続的に供給し、OD600nmを約0.5に維持して発酵ブロスを反応器から連続的に取り出した。テトラデカン中の6%(w/w)TOPOの混合物をさらに120g、発酵ブロスに添加した。次いで、この有機混合物を反応器に連続的に供給し、有機相も1d-1の希釈速度で反応器から連続的に取り出した。
【0138】
培養中に水相および有機相の両方から幾つかの5mLサンプルを採取し、OD600nm、pH、および生成物の形成を決定した。生成物濃度の決定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準としてトリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。
【0139】
水相での本培養中に、8.18g/Lエタノール、3.20g/Lアセテート、1.81g/Lブチレートおよび0.81g/Lヘキサノエートの定常状態濃度に達した。OD600nmは、0.5で安定したままであった。有機相では、0.43g/kgエタノール、0.08g/kgアセテート、1.13g/kgブチレートおよび8.09g/kgヘキサノエートの定常状態濃度に達した。実験後に、細胞は更なる培養に移しても生存したままであった。
【0140】
水性媒体とテトラデカン中の6%TOPOとの系における基質および生成物の分配係数KDを両相中の濃度から算出した。
【0141】
K(D)=c(有機相)/c(水相)
定常状態でのKDは、エタノールについては0.05、酢酸については0.03、酪酸については0.62、ヘキサン酸については9.99であった。
【0142】
実施例12
ヘキサン酸のケトン化
ケトン化を加熱連続流動床反応器において行った。初めに、反応器にシリカ上の酸化マグネシウム(50重量%、14.00g)を充填し、アルゴン流(54mL/分)下にて330℃で1時間加熱した。温度を360℃に上げた。次いで、テトラデカン中のヘキサン酸の混合物(v/v:3/1)を3.3mL/時間の速度で反応器に連続的に供給した。ガス状流出流を、水およびドライアイスとイソプロパノールとの混合物で冷却した2つの冷却トラップによって回収した。回収された画分を秤量し、ガスクロマトグラフィー(GC)によって組成について分析した。合計370.65gのヘキサン酸を反応器に供給したが、これは最大理論収量の271.70gの6-ウンデカノン、ならびに副生成物としての28.75gの水および70.21gの二酸化炭素に相当する。得られた6-ウンデカノンの量は267.67gであり、水の量は28.32gであった。これは完全変換で99%の質量回収率に相当する。通常のGC測定により、微量のヘキサン酸のみが検出され、副生成物が検出されなかったため、高い生産性および選択性が確認された。
【0143】
実施例13
ヘキサン酸とパルミチン酸との交差ケトン化
交差ケトン化の技術的手順は、基質フィードの組成を除いてヘキサン酸の単独ケトン化(実施例12)と同一である。フィードは、基質としてのヘキサン酸(116.16g、1.00mol)およびパルミチン酸(256.43g、1.00mol)、ならびに内部標準としてのテトラデカン(124.20g)からなる。基質フィードを3.3mL/時間の速度で添加し、360℃の温度で反応させる。2つのアルカン酸の存在により、3つのケトン:6-ウンデカノン、6-ヘンイコサノンおよび16-ヘントリアコンタノンの生成物混合物が得られる。完全変換では、得られる量は42.58gの6-ウンデカノン、155.29gの6-ヘンイコサノンおよび112.71gの16-ヘントリアコンタノンである。
【0144】
実施例14
ヘキサン酸と酢酸との交差ケトン化
交差ケトン化の技術的手順は、基質フィードの組成を除いてヘキサン酸の単独ケトン化(実施例12)と同一である。フィードは、基質としてのヘキサン酸(232.32g、2.00mol)および酢酸(120.10g、2.00mol)、ならびに内部標準としてのテトラデカン(117.47g)からなる。基質フィードを3.3mL/時間の速度で添加し、360℃の温度で反応させる。2つのアルカン酸の存在により、3つのケトン:2-プロパノン、2-ヘプタノンおよび6-ウンデカノンの生成物混合物が得られる。完全変換では、得られる量は29.04gの2-プロパノン、114.19gの2-ヘプタノンおよび85.15gの6-ウンデカノンである。
【0145】
実施例15
高級直鎖アルカノンから対応する高級直鎖アルカンへの水素化
C11ケトン(6-ウンデカノン)から直鎖アルカン(ウンデカン)への水素化反応を300mlオートクレーブ反応器(PARR Instrument Company)において行った。反応器をアルミニウムブロックに入れ、反応器内に設置した熱電対によって温度を制御した。典型的には、30mgの固体触媒、170.3mg、1.0mmolの基質を、炉乾燥させた磁気撹拌子を有する4mlガラスバイアルに添加した。2.0mlの乾燥トルエンを溶媒として使用し、バイアルにスクリューキャップを取り付け、隔膜を介して針を挿入した。(バイアルを反応器に入れる。)反応器を10barのH2で3回パージした後、圧力を20barまで上げた。反応器を所望の温度(120℃)まで20時間加熱した。反応後、氷浴を用いて反応器を5℃まで冷却し、気相をゆっくりと放出し、残りの液体を固体触媒から慎重に分離し、内部標準(100μLのn-ヘキサデカン)を用いて別々に分析した。
【0146】
【0147】
ケトン水素化を担持不均一系触媒である3.0Co@γ-Al2O3でH-ZSM5ゼオライト(zeolith)を添加して調べた。この混合物は、99%のケトン変換率および98%のアルカン収率を示した。
【0148】
金属触媒の調製方法は、以下の通りである:
3重量%Co@γ-Al2O3、還元剤としてのアスコルビン酸およびキャッピング剤としてのグルコースをH2O中で使用、800℃で2時間の熱分解、Co塩は硝酸コバルト(II)六水和物である。典型的な合成では、149mg、0.51mmolのCo(NO3)2・6H2Oを20mlのD.I H2Oに溶解し、続いて265mg、3.0mmolのアスコルビン酸および92mg、1mmolのD-(+)-グルコースの水溶液を段階的に添加した。内容物を90℃で2~3時間撹拌した。次に、1.0gのγ-Al2O3担体を添加し、スラリーをR.Tで一晩撹拌した。過剰な水を遠心分離によって除去し、固体を120℃の炉内で10時間乾燥させた後、アルゴン雰囲気下にて800℃で2時間熱分解した。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸から7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカンを製造する方法であって、
(a)エタノールおよび/または2~5個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸もしくはその任意の塩と、2炭素鎖伸長を行うことが可能な少なくとも1つの微生物とを接触させて、中間体として4~7個の炭素原子を含む直鎖アルカン酸、ならびに/またはその塩および/もしくはそのエステルを生成すること、
(b)少なくとも1つの抽出剤を用いて、(a)からの前記中間体、その塩および/またはそのエステルを抽出することであって、前記抽出剤が、少なくとも1つのアルキルホスフィンオキシドおよび任意に少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または少なくとも1つのトリアルキルアミンおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン;または2-オクチルドデカノールのような分岐高級アルコールである、抽出すること、
(c)(b)からの抽出された前記中間体および/またはそのエステル、ならびに任意に1~22個の炭素原子を含む更なる直鎖アルカン酸と、少なくとも1つのケトン化触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンにすること、
(d)工程(c)からの前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンと、前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルカノンの接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカノールにすること、
(e)酸性不均一系触媒の存在下で前記7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールを脱水して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルケンを形成すること、ならびに
(f)工程(e)で得られた前記7~28個の炭素原子を含む直鎖アルケンと、接触水素化のための少なくとも1つの水素化金属触媒とを接触させて、7~28個の炭素原子を含む対応する第二級直鎖アルカンにすること;
または脱水特性および水素化特性をもたらす触媒または触媒混合物を用いて、工程(e)および(f)を単一の工程に組み合わせることで、工程(d)で得られた前記7~28個の炭素原子を含む第二級直鎖アルカノールを直接水素化分解して、7~28個の炭素原子を含む対応する直鎖アルカンにすること
を含
む、方法。
【請求項2】
(c)の前記ケトン化触媒が金属酸化物触媒またはそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物触媒またはそれらの混合物が、ヘテロポリ酸(H3PW12O40)触媒、酸化チタン(TiO2)触媒、酸化セリウム(CeO2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnO2)触媒、酸化ランタン(La2O3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、Fe4O5、Fe5O6、Fe5O7)、ケイ素-アルミニウム(Si-Al)混合酸化物触媒およびジルコニア(ZrO2)触媒からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における前記ケトン化触媒が、酸化マンガン(MnO2)触媒または酸化マグネシウム(MgO)触媒である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(c)の適切な反応条件が150℃~350℃の反応温度を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
(a)における前記微生物が、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)およびクロストリジウム・クリュイベリ(Clostridium kluyveri)からなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルホスフィンオキシドが
、トリオクチルホスフィンオキシド
、オクチルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記アルカンが、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン
、テトラデカン
およびそれらの混合物
からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
TOPOとアルカンの混合物との重量比が1:100~1:10である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
(b)における水性媒体のpHを5.5~8に維持する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(d)の前記水素化金属触媒が、ルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)および白金(Pt)触媒からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(e)の前記酸性不均一系触媒が、アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む触媒である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程(e)の前記酸性不均一系触媒がZSM-5を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工程(e)の前記触媒が遷移金属をさらに含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属がモリブデンである、請求項13記載の方法。
【国際調査報告】