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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】糸クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 7/04 20060101AFI20240328BHJP
   D01H 1/40 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
D01H7/04
D01H1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561772
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022060994
(87)【国際公開番号】W WO2022229147
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021110888.8
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター、ヨゼフ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056BD01
4L056BD32
4L056BD42
4L056BE00
4L056BF45
4L056BF58
4L056CA65
4L056CA66
(57)【要約】
本発明は、クランプ間隙で糸を取外し可能に固定するための、スピンドルのための糸クランプ装置に関し、スピンドルに対して同軸に配置可能な内側スリーブと、軸方向で内側スリーブに固定可能な糸セパレータとを有する第1のクランプユニットを備え、第1のクランプユニットはスピンドルの上側部分に軸方向に位置決めしながら固定可能であり、及び、糸セパレータとクランプ部材との間のクランプ間隙を閉止するクランプ位置と、クランプ間隙を解放する開放位置との間で第1のクランプユニットに対して軸方向に位置調節可能であるクランプ部材を有する第2のクランプユニットを備えている。本発明によると、糸セパレータは、スピンドル上側部分での軸方向に位置決めをする固定のために、並びに、スピンドル上側部分との相対回転不能の結合のために構成され、糸セパレータと内側スリーブとが互いに相対回転不能に結合可能であることが意図される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ間隙(7)で糸を取外し可能に固定するための、紡績機械又は撚糸機械のスピンドルのための糸クランプ装置(1)であって、
-前記スピンドルに対して同軸に配置可能な内側スリーブ(3a、3b)と、軸方向で前記内側スリーブ(3a、3b)に固定可能な糸セパレータ(4a、4b、4c)とを有する第1のクランプユニット(2)を備え、前記第1のクランプユニット(2)は前記スピンドルの上側部分に軸方向に位置決めしながら固定可能であり、及び、
-前記糸セパレータ(4a、4b、4c)とクランプ部材(6)との間の前記クランプ間隙(7)を閉止するクランプ位置と、前記クランプ間隙(7)を解放する開放位置との間で前記第1のクランプユニット(2)に対して軸方向に位置調節可能であるクランプ部材(6)を有する第2のクランプユニット(5)を備える、糸クランプ装置において、
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)は、スピンドル上側部分での軸方向に位置決めをする固定のために、並びに、前記スピンドル上側部分との相対回転不能の結合のために構成され、
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)と前記内側スリーブ(3a、3b)とが互いに相対回転不能に結合可能であることを特徴とする、糸クランプ装置。
【請求項2】
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)は前記スピンドル上側部分に押し嵌め可能であることを特徴とする、請求項1に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項3】
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)は前記内側スリーブ(3a、3b)と摩擦接合式及び/又は形状接合式に相対回転不能に結合可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項4】
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)は焼結方法によって金属含有材料で形成されることを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか一項又は複数項に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項5】
前記糸セパレータ(4a、4b、4c)は、前記内側スリーブ(3a、3b)の接触区域(8a、8b)と係合させることが可能な、特に前記接触区域(8a、8b)へ圧入可能な、係合部材(9)を有することを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一項又は複数項に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項6】
前記係合部材(9)は、前記スピンドル上側部分で前記内側スリーブ(3a)をクランプするために変形可能な材料で構成された前記接触区域(8a)に圧入可能であることを特徴とする、請求項4に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項7】
前記接触区域(8a、8b)は前記係合部材(9)と作用接続させることが可能な連結部材(10)を有することを特徴とする、請求項4に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項8】
前記係合部材(9)及び特に前記連結部材(10)は噛合部(14)として構成されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項9】
前記接触区域(8a、8b)と前記糸セパレータ(4a、4b、4c)との間の領域に配置される、前記接触区域(8a、8b)及び前記糸セパレータ(4a、4b、4c)と摩擦接合式及び/又は形状接合式に相対回転不能に結合される結合部材を有することを特徴とする、請求項1から8のうちいずれか一項又は複数項に記載の糸クランプ装置(1)。
【請求項10】
前記結合部材は固着リング又は歯付きリングとして構成されることを特徴とする、請求項7に記載の糸クランプ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ間隙で糸を取外し可能に固定するための、紡績機械又は撚糸機械のスピンドルのための糸クランプ装置に関し、
-スピンドルに対して同軸に配置可能な内側スリーブと、軸方向で内側スリーブに固定可能な糸セパレータとを有する第1のクランプユニットを備え、第1のクランプユニットはスピンドルの上側部分に軸方向に位置決めしながら固定可能であり、及び、
-糸セパレータとクランプ部材との間のクランプ間隙を閉止するクランプ位置と、クランプ間隙を解放する開放位置との間で第1のクランプユニットに対して軸方向へ位置調節可能であるクランプ部材を有する第2のクランプユニットを備えている。
【0002】
冒頭に述べた種類の糸クランプ装置は、たとえばドイツ特許出願公開第102011076744A1号明細書などの従来技術から、多様な実施形態で公知となっている。このような糸クランプ装置を用いて、満杯の糸リールを交換するときにいわゆる巻付糸を紡績機械又は撚糸機械で固定することができる。
【0003】
そのために糸クランプ装置は、通常、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの回転可能な上側部分に取り付けられた第1及び第2のクランプユニットを有している。第1のクランプユニットは、たとえば紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの回転可能な上側部分に相対回転不能に取り付けられた内側スリーブと、端面側で内側スリーブに一端で当接する糸セパレータとを有しており、内側スリーブは他端で軸方向の位置固定のために紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分に固定される。それに対して第2のクランプ部材、たとえば内側スリーブに対して同軸に配置される外側スリーブは、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの回転可能な上側部分に対して、並びに第1のクランプユニットに対して、軸方向へ可動なように支承され、たとえばばねを通じて、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの特定の回転数まで、糸セパレータと第2のクランプ部材との間のクランプ間隙を閉じるクランプ位置で保持される。
【0004】
このとき第2のクランプ部材は、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分の回転によって引き起こされる遠心力付勢がないクランプ位置にあるとき、クランプ間隙で糸を固定するように構成される。それに対して遠心力の影響のもとでは、クランプ間隙で固定されている糸が解放される開放位置の方向への、第2のクランプ部材の軸方向の変位が行われる。
【0005】
公知の糸クランプ装置では、第1のクランプユニットの内側スリーブと相対回転不能に結合するための、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分の結合領域は、区域的にローレット状に構成される。組み付けられるときにローレット状の区域が内側スリーブに食い込み、それによって円周方向に作用する形状接合が、内側スリーブと紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分との間で生起される。しかし、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分の区域的なローレット状の構成は、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの製造に関して高い要求事項を課す。たとえばローレット状の区域のエッジが十分に鋭利に形成されていないと、紡績スピンドル又は撚糸スピンドルの上側部分への内側スリーブへの組付けのときに、当該エッジが所定の仕方で内側スリーブのプラスチックに食い込まない。このことは、その代りに内側スリーブが径方向外側に向かって押圧される材料押除けプロセスが起こることに帰結し、そのために内側スリーブの外径が区域的に大きくなる。それにより、内側スリーブと、内側スリーブに対して軸方向へ変位可能なクランプ部材との間で望ましくない摩擦が生じる可能性があり、このような摩擦は、糸クランプ装置の閉塞及びそれに伴う不具合につながりかねない。
【0006】
その代替としてドイツ特許出願公開第102011076744A1号明細書より、内側スリーブの内面を、スピンドル表面の対応する輪郭へ係合するための噛合部のある環状面を有するように構成することが公知である。この解決法も、内側スリーブとスピンドル表面の両方の製造に関して高い要求事項を課す。噛合部が不正確に構成されていると、内側スリーブの側で同じく材料押除けが生じることがあり、これが内側スリーブを径方向外側に向かって押圧する。
【0007】
以上を背景としたうえで本発明の課題は、紡績機械又は撚糸機械のスピンドルと内側スリーブとの回り止めされた結合を簡易かつ確実な方式で可能にする糸クランプ装置を提供することにある。
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有する糸クランプ装置によってこの課題を解決する。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明に基づく糸クランプ装置は、第1及び第2のクランプユニットを有する。第1のクランプユニットは、スピンドルに対して同軸に配置可能な内側スリーブと、軸方向で内側スリーブに固定可能な糸セパレータとを含み、第1のクランプユニットはスピンドルの上側部分に軸方向に位置決めしながら固定可能である。第2のクランプユニットは、糸セパレータとクランプ部材との間のクランプ間隙を閉止するクランプ位置と、クランプ間隙を解放する開放位置との間で第1のクランプユニットに対して軸方向に位置調節可能であるクランプ部材を備えている。第2のクランプユニットは、従来技術から公知の通常の構成を有することができる。たとえば第2のクランプユニットのクランプ部材は、内側スリーブに対して相対的に可動なように内側スリーブにより支承される、1部分又は多部分からなる外側スリーブとして構成されていてよい。そのために、内側スリーブと外側スリーブないしクランプ部材はそれぞれの内面ないし外面に、互いに作用接続する、ないしは作用接続している、対応する支承手段とスライド手段を有することができる。支承手段として、互いに係合させることが可能な突起と切欠きを純粋に例示として挙げておく。これらが内側スリーブとクランプ部材とで対応するように構成されていることで、内側スリーブに対するクランプ部材の案内された相対運動を生じさせることができる。このときスライド手段は、好ましくは、スピンドルの回転数に依存してクランプ部材がクランプ間隙の相応の開放と閉止のために内側スリーブに対して相対的に可動であるように、内側スリーブとクランプ部材との間で支承される複数の遠心力部材を有する、通常の遠心力ユニットによって構成されていてよい。
【0010】
本発明による糸クランプ装置について特徴をなすのは、糸セパレータが、スピンドルの上側部分での軸方向に位置決めをする固定のために、並びに、スピンドル上側部分との相対回転不能の結合のために構成され、糸セパレータと内側スリーブとが互いに相対回転不能に結合可能であることにある。紡績機械又は撚糸機械のスピンドル上側部分に糸クランプ装置を配置するために、第1のクランプユニットの内側スリーブがスピンドルの上側部分に外嵌される。外嵌方向での内側スリーブの軸方向位置は、スピンドルの相応の構成によって、たとえば内側スリーブが一端で端面側に当接可能である突起や段部によって、規定されるのが好ましい。スピンドルへの外嵌方向と反対向きに内側スリーブを軸方向で位置固定するための役目を果たすのは、本発明によると、スピンドルの上で軸方向に規定されて内側スリーブと他端で作用接続される糸セパレータである。
【0011】
本発明によると、糸セパレータは内側スリーブの軸方向での位置固定に加えて、更に、スピンドルと内側スリーブを相対回転不能に結合するための役目を果たすことが意図され、そのために糸セパレータは少なくとも内側スリーブと相対回転不能に、更に好ましくはスピンドル上側部分と相対回転不能に結合可能である。それに応じて糸セパレータは、少なくとも内側スリーブの外嵌方向と反対向きにスピンドル上側部分で内側スリーブを軸方向に位置決めすることに加えて、更に、内側スリーブをスピンドルと相対回転不能に結合するための役目を果たし、糸セパレータは、スピンドル上側部分で内側スリーブを軸方向に位置決めする位置にあるとき、更に、第1のクランプユニットをスピンドル上側部分と相対回転不能に結合させる。糸セパレータがこの位置にあるときの内側スリーブと糸セパレータとの相対回転不能の結合可能性を通じて、スピンドル上側部分での内側スリーブの相対回転不能の結合が実現され、それにより、内側スリーブとの相対回転不能の結合のための結合領域でスピンドルを別途に構成することを省略することができる。
【0012】
このように糸クランプ装置は、スピンドル上側部分への内側スリーブの特別に簡易で確実な相対回転不能の組付けを可能にし、たとえばスピンドル上側部分にある結合部材との協同作用で生じる、動作障害につながる内側スリーブの変形を効果的に回避することができる。本発明による糸クランプ装置は、スピンドルと糸クランプ装置との特別に簡易で低コストの結合を可能にする。
【0013】
このとき、スピンドル上側部分と糸セパレータとの相対回転不能の結合は原則として任意の方式で構成されていてよく、たとえば、特定の形状付与を通じてスピンドル上側部分と糸セパレータとの間の回り止めが実現される、形状接合式の結合を通じて構成されていてよい。本発明の好ましい実施形態では、糸セパレータをスピンドル上側部分に押し嵌め可能であることが意図される。
【0014】
本発明のこの実施形態では糸セパレータは、糸クランプ装置がスピンドルへの組付位置にあるとき、プレス嵌めを通じてスピンドル上側部分と相対回転不能に結合されるように構成される。このときプレス嵌めは、少なくとも内側スリーブの外嵌方向と反対向きにスピンドルの軸方向で内側スリーブを確実に位置決めすることに加えて、更に、スピンドルに対する内側スリーブの回り止めが保証されるように構成される。このときスピンドルと糸セパレータとの間のプレス嵌めは、特別に簡易かつ低コストに成立させることができる。
【0015】
内側スリーブと糸セパレータとの相対回転不能の結合のために、本発明の好ましい実施形態では、糸セパレータが摩擦接合式、材料接合式、及び/又は形状接合式に相対回転不能なように内側スリーブと結合可能であることが意図される。摩擦接合式の結合は、たとえば糸セパレータと内側スリーブの互いに接触させることが可能な各面の表面の適当な構成によって生起することができ、圧着力と、各面の間に生じる摩擦とが、確実な回り止めを保証する。材料接合式の結合は、たとえば接着を用いて行うことができる。
【0016】
形状接合式の結合を成立させるために、本発明の好ましい発展形態では、糸セパレータが、内側スリーブの接触区域と係合させることが可能な、特に接触区域に圧入可能な、係合部材を有することが意図される。本発明のこの実施形態では、糸セパレータは内側スリーブとの接触領域で、スピンドルに糸クランプ装置が組み付けられるときに、又はその前に、糸セパレータの係合部材が定義された位置で内側スリーブに押し込まれるように構成され、それにより、内側スリーブと糸セパレータとの間で形状接合式の結合が成立する。本発明のこの好ましい実施形態により、スピンドルへの内側スリーブの実質的にクリアランスのない回り止めされた配置が、特別に確実かつ簡易な方式で可能となる。更に、糸セパレータのこの好ましい実施形態は、スピンドル上側部分での第1のクランプユニットの軸方向に位置決めをする固定を、内側スリーブの外嵌方向だけでなく、これと反対方向にも生じさせる。この好ましい実施形態では、スピンドル上側部分ないしスピンドルそのもので内側スリーブを外嵌方向に固定する部材を省略することも十分にできる。
【0017】
特に好ましくは、スピンドル上側部分で内側スリーブをクランプするために、力作用によって変形可能な材料で構成される内側スリーブの接触区域の中へ、係合部材を圧入可能である。たとえば糸セパレータの選択された、又は全部の係合部材は、それぞれの寸法に関して、スピンドルに糸クランプ装置を組み付けるときに、係合部材がたとえばプラスチック含有材料で構成される内側スリーブの接触区域の中に押し込まれて、内側スリーブ中心の方向に材料押除けが行われるように構成されていてよく、それが相応の材料押除け個所で内側スリーブの内径の縮小に帰結し、それにより、内側スリーブをスピンドル上側部分でクランプするクランプ力が生じる。糸セパレータは、一般に金属含有材料で構成されていてよく、それにより、特に係合部材をこの好ましい実施形態で特別に確実かつ容易に、内側スリーブの接触区域の中へ押し込むことができる。金属含有材料で構成される糸セパレータは、通常の施削方法とは異なり、焼結方法によって製作されるのが特別に好ましい。それにより、特に多角形で構成される係合部材を、きわめて正確に糸セパレータに形成することができる。それによって第1のクランプユニットを簡易かつ確実な方式で、円周方向でも軸方向でもスピンドル上側部分に固定することができ、内側スリーブ及び/又はスピンドル上側部分に何らかの別の固定部材は必要ない。このとき、内側スリーブの内径がスピンドル上側部分への内側スリーブの外嵌を可能にするとともに、係合部材の圧入によるクランプ作用を可能にするように、内側スリーブの内径がスピンドル上側部分の外径に依存して選択されているのが好ましい。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態では、内側スリーブの接触領域は、係合部材と作用接続させることが可能な連結部材を有することが意図される。本発明のこの実施形態では、糸セパレータの係合部材の形状に合わせて適合化された連結部材が内側スリーブの接触区域に配置され、これらの連結部材は、糸クランプ装置がスピンドルに組み付けられた状態のとき、対応する係合部材と円周方向で形状接合式に協同作用し、それにより回り止めされた確実な結合が保証される。このとき係合部材と連結部材は、特に好ましくは、軸方向でも円周方向でも特別に確実に回り止めされた、内側スリーブの軸方向の位置決めを、糸セパレータを通じて可能にする噛合部として構成されていてよい。
【0019】
本発明の別の好ましい実施形態では、接触区域と糸セパレータとの間の領域に、接触区域及び糸セパレータとの摩擦接合式及び/又は形状接合式の相対回転不能の結合のために構成された結合部材が配置される。本発明のこの好ましい実施形態では、結合部材は、軸方向で糸セパレータとも内側スリーブの接触区域とも相対回転不能に結合可能であるアダプタ部材としての役目を果たす。したがって結合部材の利用は、糸セパレータと内側スリーブをそれぞれの構成に関わりなく結合領域で互いに相対回転不能に結合することを可能にする。このとき結合部材は、少なくとも糸セパレータ及び内側スリーブと円周方向で摩擦接合式及び/又は形状接合式に互いに結合するアダプタとしての役目を果たし、それにより、糸セパレータと接触区域との相互に調整された適合化を省略することができる。
【0020】
結合部材は、更に好ましくは、第1のクランプユニットをスピンドル上側部分で軸方向に、かつ回り止めして、クランプないし締り嵌めによって固定するように構成されていてよい。このとき、結合部材はスピンドル上側部分にプレス嵌めをもって配置可能であってよいのが好ましく、及び/又は、糸クランプ装置を組み付けるときの糸セパレータの側及び/又は接触区域の側での材料押除けによってスピンドル上側部分とのクランプ作用を生成するために、上で説明したような係合部材を有する。その代替として、糸セパレータと結合部材との間、及び/又は内側スリーブの接触区域と結合部材との間の作用接続は、スピンドル上側部分で第1のクランプユニットをクランプするための結合部材の側での上で説明したような材料押除けが、糸セパレータ及び/又は接触区域に相応の係合部材を設けることによって生じるようになっていてよい。材料押除けを有するコンポーネントは、ないし相応のコンポーネント区域は、たとえばプラスチック含有材料のような、力作用によって変形可能な材料で構成される。このとき内径は、上で説明したようにスピンドル上側部分の外径に依存して構成され、それにより、力作用ないし締り嵌めないしプレス嵌めを材料押除けによって生成することができる。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態では、結合部材は、摩擦接合式及び/又は形状接合式の相対回転不能の結合を特別に確実な方式で保証することができる固着リング又は歯付きリングとして構成されることが意図され、このとき固着リングは十分な摩擦モーメントを提供し、歯付きリングは確実な形状接合式の結合を保証する。
【0022】
更に好ましくは、糸セパレータは、公知のものとは異なり、焼結方法によって金属含有材料で製作されていてよく、それにより、特に多角形の形状をいっそう正確に形成することができる。
【0023】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】1つの実施形態に基づく糸クランプ装置の分解図を示す模式図である。
図2】糸クランプ装置の内側スリーブの別の実施例を示す、模式的な斜視図である。
図3図1の糸クランプ装置の糸セパレータを示す模式的な斜視図である。
図4】糸セパレータの別の実施例を示す模式的な斜視図である。
図5】糸セパレータの別の実施例を示す模式的な斜視図である。
【0025】
スピンドル(ここには図示せず)の上側部分に、特にここには同じく図示しない紡績機械又は撚糸機械に糸をクランプするための図1に示す糸クランプ装置1は、スピンドルの上側部分に対して相対回転不能に配置可能な、第1のクランプユニット2の内側スリーブ3aを含んでいて、第1のクランプユニットは内側スリーブ3aに加えて、更に、スピンドルの上側部分に押し嵌め可能な糸セパレータ4aを有しており、この糸セパレータは、スピンドルの上側部分への外嵌方向と反対向きに糸クランプ装置1を軸方向で固定する。
【0026】
スピンドル上側部分と内側スリーブ3aとの回り止めされた結合のために、スピンドル上側部分に相対回転不能に押し嵌め可能な糸セパレータ4aは、内側スリーブ3aとの接触領域に、同軸に延びるように配置された係合部材9を歯15の形態で備えている(図3参照)。
【0027】
スピンドル上側部分に糸クランプ装置1が組み付けられた状態のとき、歯15は、端面側で内側スリーブ3aの接触区域8aに圧入され、内側スリーブがスピンドル上側部分で軸方向に、かつ回り止めされてクランプされ、そのようにしてスピンドル上側部分での内側スリーブ3aの回り止めされた配置を保証するような接触区域8aの材料押除けを、内側スリーブ中心部の方向に生じさせる。その代替又は追加として、別の実施例に基づく糸セパレータ4aは、プレス嵌めを通じてスピンドル上側部分に回り止めされ、かつ軸方向に固定されて配置されていてよい。
【0028】
内側スリーブ3aに対して同軸に、軸方向で内側スリーブ3aに対してスライド可能なクランプ部材6が配置されていて、このクランプ部材は内側スリーブ3aに外嵌可能な外側スリーブを形成し、周知の方式で長軸11に沿って内側スリーブ3a及び糸セパレータ4aに対して相対的にスライドさせることができる。糸セパレータ4aとクランプ部材6の互いのほうを向く面は、糸クランプ装置1のクランプ間隙7を形成し、その中で糸をスピンドルにクランプすることができる。軸方向へスライド可能なクランプ部材6は、本実施例では、圧縮コイルばね12によって軸方向に初期応力をかけられて内側スリーブ3aに支承されていて、スピンドルが休止位置にあるときに、クランプ部材6が糸セパレータ4aと接触するクランプ位置に配置されるようになっている。糸を解放する開放位置に向かう方向へのクランプ部材6の自動化されたスライドのために、糸クランプ装置1は、ここには図示しない遠心力ユニットを周知の方式で含んでいて、その遠心力機構は、スピンドルが特定の最低回転数で回転するとただちに、軸方向へスライド可能なクランプ部材6を糸セパレータ4aから隔てる多数の遠心力部材を含んでおり、それによってクランプ間隙7が開き、クランプ間隙7に配置されている糸が解放される。
【0029】
図2には、図3に示す糸セパレータ4aと接触区域8bで相対回転不能に結合するために、多数の連結部材10からなる、同軸に周回する噛合部14を有する内側スリーブ3bの別の実施例が、模式的に簡略化して示されている。内側スリーブ3bでの噛合部14の構成は、図3に示す糸セパレータ4aの噛合部14の構成に合わせて適合化され、それにより、スピンドル上側部分への糸クランプ装置1の組付位置のとき、糸セパレータ4aと内側スリーブ3bとの間で回り止めされた確実な結合が保証される。
【0030】
図4は、連結部材9が球冠16によって形成され、第1のクランプユニット2が組み付けられるときにこの球冠が内側スリーブ3aの接触区域8aに圧入され、そのようにして、スピンドル上側部分に回り止めされて配置される糸セパレータ4bを通じて回り止めされた結合を保証する、糸セパレータ4bの別の実施例を示している。
【0031】
図5は、内側スリーブ3aとの回り止めされた結合のための係合部材9が、円周方向で相前後して位置するように配置された複数のウェブ17によって形成され、これらのウェブが、内側スリーブ3aの接触区域8aとともに円周方向で形状接合式に作用する結合を成立させる多角形に成形された接触面を形成する、糸セパレータ4cの別の実施例を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 糸クランプ装置
2 第1のクランプユニット
3a、3b 内側スリーブ
4a、4b、4c 糸セパレータ
5 第2のクランプユニット
6 クランプ部材
7 クランプ間隙
8a、8b 接触区域
9 係合部材
10 連結部材
11 長軸
12 圧縮コイルばね
13 シール部材
14 噛合部
15 歯
16 球冠
17 ウェブ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】