(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】代謝率を上昇させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240328BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240328BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61N5/06
A61B18/12
A61N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561773
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022024315
(87)【国際公開番号】W WO2022217162
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】マンシュタイン ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ワン-エヴァース マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サルマ ヌンシアーダ
【テーマコード(参考)】
4C082
4C160
【Fターム(参考)】
4C082PA06
4C082PC01
4C082PC04
4C082PC10
4C082PJ12
4C160JJ22
4C160JJ33
4C160KK20
4C160KK23
4C160MM22
(57)【要約】
処置システムは、対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、計算機と、を備えることができ、計算機は、ユーザ入力装置から、エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示すユーザ入力を受け取り、ユーザ入力に基づき、対象の基礎代謝率を上昇させるために1つ又は複数の動作パラメータに応じて、エネルギー源に皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して皮膚組織を熱損傷させるように制御するように構成することができ、ターゲット領域は、処置領域間に挟まれた無処置部分を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、
ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、
計算機と、
を備えており、
前記計算機は、
前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、
前記ユーザ入力に基づき、前記対象の基礎代謝率を上昇させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御する
ように構成されており、
前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む
ことを特徴とする処置システム。
【請求項2】
前記計算機はさらに、前記皮膚組織の前記ターゲット領域内に前記処置領域をランダム分布させるように、前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて前記エネルギー源を制御するように構成されている、
請求項1記載の処置システム。
【請求項3】
前記処置領域の形成は、前記対象の脂肪の量を減少させるものである、
請求項1記載の処置システム。
【請求項4】
前記複数の処置領域は、前記ターゲット領域において、複数の列と複数の行とを含む処置領域のアレイを構成し、
前記アレイの前記複数の列内と前記複数の行内とに前記処置領域がある、
請求項1記載の処置システム。
【請求項5】
前記エネルギー源は、光源であるトランスデューサであり、
前記計算機はさらに、前記光源に前記皮膚組織の前記ターゲット領域に向けて光を放出させることにより前記皮膚組織の前記複数の処置領域を形成するように構成されている、
請求項4記載の処置システム。
【請求項6】
前記計算機はさらに、前記光源に前記皮膚組織の前記ターゲット領域に向けて光の複数のビームを放出させるように構成されており、
前記複数の各ビームはそれぞれ、前記皮膚組織の前記複数の処置領域の各対応する処置領域を形成する、
請求項5記載の処置システム。
【請求項7】
前記光源は、前記ターゲット領域に送られて前記複数の処置領域と前記無処置領域を形成するフラクショナル照射パターンを生じさせるように構成されている、
請求項5記載の処置システム。
【請求項8】
前記皮膚の前記複数の各処置領域は非剥離性処置領域である、
請求項5記載の処置システム。
【請求項9】
前記コントローラはさらに、前記複数の各処置領域を形成するために9mJ以下のエネルギーを前記光源に出力させるように制御する、
請求項8記載の処置システム。
【請求項10】
前記皮膚の前記複数の各処置領域は剥離性処置領域である、
請求項5記載の処置システム。
【請求項11】
前記コントローラはさらに、前記複数の各処置領域を形成するために17mJ以下のエネルギーを前記光源に出力させるように制御する、
請求項10記載の処置システム。
【請求項12】
前記ターゲット領域は、
前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の10パーセント、
前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の20パーセント、
前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の30パーセント、又は
前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の32パーセント
のうち少なくとも1つである、請求項1記載の処置システム。
【請求項13】
前記ターゲット領域は、前記対象の生殖器又は前記対象の頭部のうち少なくとも1つを含まない、
請求項12記載の処置システム。
【請求項14】
前記複数の各処置領域それぞれが、前記ターゲット領域において処置面を形成すると共に、前記無処置領域は前記ターゲット領域において無処置面を形成し、
前記ターゲット領域の総処置面積は、前記複数の処置領域の全ての処置面によって定義され、
前記ターゲット領域の総表面積に対する前記処置面積の割合は10パーセント以上である、
請求項1記載の処置システム。
【請求項15】
前記処置領域の総表面積に対する前記処置面積の割合は、15パーセント以上、20パーセント以上、30パーセント以上、又は32パーセント以上のうち少なくとも1つである、
請求項13記載の処置システム。
【請求項16】
前記複数の各処置領域それぞれが処置面を形成すると共に、前記無処置領域は無処置面を形成し、
前記ターゲット領域の総処置面積は、前記複数の処置領域の全ての処置面によって定義され、
前記対象の総体表面積に対する前記処置面積の割合は少なくとも1パーセントである、
請求項1記載の処置システム。
【請求項17】
前記対象の総体表面積に対する前記の処置面積の割合は、2パーセント、3.6パーセント、又は6.3パーセントのうち少なくとも1つである、
請求項16記載の処置システム。
【請求項18】
前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記ターゲット領域における脂肪組織の量を減少させる、
請求項1記載の処置システム。
【請求項19】
前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記対象の脂肪の総量を減少させる、
請求項1記載の処置システム。
【請求項20】
前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、白色脂肪細胞又はベージュ脂肪細胞である脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変換する、
請求項1記載の処置システム。
【請求項21】
前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記対象の血流中を循環するノルアドレナリンの量を増加させる、
請求項1記載の処置システム。
【請求項22】
前記エネルギー源はトランスデューサを含む、
請求項1記載の処置システム。
【請求項23】
前記エネルギー源は電気発生器と1つ又は複数の電極とを備えており、
前記電気発生器は、前記1つ又は複数の電極に電気信号を送ることにより前記皮膚組織を熱損傷させるように構成されている、
請求項1記載の処置システム。
【請求項24】
前記エネルギー源は、前記皮膚組織のターゲット領域を切開又は穿刺することなく前記複数の処置領域を形成するように構成されている、
請求項1記載の処置システム。
【請求項25】
前記複数の処置領域の1つの処置領域は1ミリメートル以下の幅を有する、
請求項1記載の処置システム。
【請求項26】
前記複数の各処置領域は、当該各処置領域の皮下組織内に及ばない、
請求項1記載の処置システム。
【請求項27】
対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、
ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、
計算機と、
を備えており、
前記計算機は、
前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、
前記ユーザ入力に基づき、前記対象の脂肪の総量を減少させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御する
ように構成されており、
前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む
ことを特徴とする処置システム。
【請求項28】
対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、
ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、
計算機と、
を備えており、
前記計算機は、
前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、
前記ユーザ入力に基づき、1つ又は複数の白色脂肪細胞を1つ若しくは複数のベージュ脂肪細胞又は1つ若しくは複数の褐色脂肪細胞に変換するために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御する
ように構成されており、
前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む
ことを特徴とする処置システム。
【請求項29】
代謝率を上昇させる方法であって、
エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、
前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置部分は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、
前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の基礎代謝率を上昇させることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
各処置部分は1ミリメートル以下の幅を有する、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記複数の処置領域を形成することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域における脂肪の量を減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の量を減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織の前記にターゲット領域おける脂肪の厚さを減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の厚さを減少させること、又は、
前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の脂肪の総量を減少させること、
のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記複数の処置領域を形成することにより少なくとも1つの白色脂肪細胞をベージュ又は褐色脂肪細胞に変換することをさらに含む、
請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つのホルモンの濃度を上昇させること、又は、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つの神経伝達物質の濃度を上昇させること
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのホルモン又は前記少なくとも1つの神経伝達物質はノルエピネフリンである、
請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記複数の処置領域は、前記皮膚組織に穿刺又は切開することなく形成される、
請求項29記載の方法。
【請求項36】
前記エネルギー源を前記ターゲット領域に移動させることと、
前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域にエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域を形成することと、
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域に第1のエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域の第1のサブセットを形成することと、
前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域に第2のエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域の第2のサブセットを形成することと、
をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記処置領域の前記第1のサブセットは処置領域の第1の行であり、前記処置領域の前記第2のサブセットは処置領域の第2の行である、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記処置領域の前記第1のサブセットは処置領域の第1の列であり、前記処置領域の前記第2のサブセットは処置領域の第2の列である、
請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記ターゲット領域は第1のターゲット領域であり、
前記方法はさらに、
前記第1のターゲット領域とは異なる第2のターゲット領域に前記エネルギー源を移動させることと、
前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記第2のターゲット領域にエネルギーを送ることにより当該第2のターゲット領域において他の複数の処置領域を形成することと、
をさらに含み、
前記他の複数の処置領域は、前記皮膚組織の前記第2のターゲット領域において複数の無処置領域間に挟まれる、
請求項35記載の方法。
【請求項41】
体重障害を改善する方法であって、
エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、
前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置領域は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、
前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の基礎代謝率を上昇させることと、
前記対象の基礎代謝率の上昇に基づき当該対象の脂肪の量を減少させることと、
前記対象の脂肪の量の減少により前記体重障害を改善することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
各処置領域は1ミリメートル以下の幅を有する、
請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記複数の処置領域を形成することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域における脂肪の量を減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の量を減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織の前記にターゲット領域おける脂肪の厚さを減少させること、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の厚さを減少させること、又は、
前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の脂肪の総量を減少させること、
のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記複数の処置領域を形成することにより少なくとも1つの白色脂肪細胞をベージュ又は褐色脂肪細胞に変換することをさらに含む、
請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つのホルモンの濃度を上昇させること、又は、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つの神経伝達物質の濃度を上昇させること
をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つのホルモン又は前記少なくとも1つの神経伝達物質はノルエピネフリンである、
請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記複数の処置領域は、前記皮膚組織に穿刺又は切開することなく形成される、
請求項41記載の方法。
【請求項48】
前記複数の処置領域を形成することにより、前記体重障害により生じる1つ又は複数の疾患を改善することをさらに含む、
請求項41記載の方法。
【請求項49】
前記1つ又は複数の疾患は、糖尿病、心疾患、高血圧、精神病、疼痛、高コレステロール、又は高トリグリセリドレベルのうち少なくとも1つを含む、
請求項48記載の方法。
【請求項50】
1つ又は複数の疾患を改善する方法であって、
エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、
前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置領域は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、
前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象の脂肪の量を減少させることと、
前記対象の脂肪の量の減少により前記1つ又は複数の疾患を改善することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
前記1つ又は複数の疾患は、糖尿病、心疾患、高血圧、精神病、疼痛、高コレステロール、又は高トリグリセリドレベルのうち少なくとも1つを含む、
請求項50記載の方法。
【請求項52】
対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、
ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、
計算機と、
を備えており、
前記計算機は、
前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、
前記ユーザ入力に基づき、前記対象の血流中を循環するノルアドレナリンの量を増加させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御する
ように構成されており、
前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む
ことを特徴とする処置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、米国特許出願第63/173,175号(出願日:2021年4月9日、発明の名称:「Method and Apparatus for Metabolic Enhancement Using Fractional Skin Treatment(フラクショナル皮膚処置を用いた代謝強化のための方法及び装置)」)に係る優先権を主張するものであり、同出願の記載内容は全て、参照により本願の開示内容に含まれるものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
なし。
【背景技術】
【0003】
肥満症を患い又は過体重である個人の数は連続的に増加している。これらの体重関連の問題は、より深刻な疾患のリスクに繋がり、又はこれを増大させる可能性があり、かかる深刻な疾患に含まれるものは例えば高血圧、糖尿病、心疾患、脳卒中、睡眠時無呼吸症、精神病、疼痛、及び死にも繋がることがある。食事制限や運動等の介入が有効であることが判明しているものの、これらには限界がある。実際、上記のような介入の結果には、遺伝子が比較的大きな影響を及ぼし得る。よって、上記の介入を厳しく厳守する個人であっても、その所望の脂肪減少目標を達成できないことがある。
【0004】
過体重でない個人や肥満症でない個人でも、その脂肪減少目標を達成することに苦労することがある。例えば、食事制限や運動は個人の総脂肪量を減少させることができるが、残念なことに食事制限や運動は、局所的な脂肪減少をコントロールするために使用することができない。換言すると、食事制限や運動は身体の特定の箇所にターゲットを絞って脂肪減少を行うことができない。例えば、特定の筋肉群に対する運動(例えば上腕二頭筋カール等)は、当該筋肉群(上腕二頭筋等)の箇所の脂肪減少を直接的に促進するものではない。よって、比較的健康な個人であっても、不所望の手に負えない脂肪領域を無くすことについて困難を有し得る。
【0005】
よって、代謝率を上昇させるための改善されたシステム及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本願開示の一部の非限定的な例は、処置システムを提供する。前記処置システムは、対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、計算機と、を備えることができ、前記計算機は、前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、前記ユーザ入力に基づき、前記対象の基礎代謝率を上昇させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御するように構成することができ、前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む。
【0007】
一部の非限定的な例では、前記計算機はさらに、前記皮膚組織の前記ターゲット領域内に前記処置領域をランダム分布させるように、前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて前記エネルギー源を制御するように構成されている。
【0008】
一部の非限定的な例では、前記処置領域の形成は、前記対象の脂肪の量を減少させるものである。
【0009】
一部の非限定的な例では、前記複数の処置領域は、前記ターゲット領域において処置領域のアレイを構成する。前記アレイは、複数の列と複数の行とを含む。前記アレイの前記複数の列内と前記複数の行内とに前記処置領域がある。
【0010】
一部の非限定的な例では、前記エネルギー源は、光源であるトランスデューサであり、前記計算機はさらに、前記光源に前記皮膚組織の前記ターゲット領域に向けて光を放出させることにより前記皮膚組織の前記複数の処置領域を形成するように構成されている。
【0011】
一部の非限定的な例では、前記計算機はさらに、前記光源に前記皮膚組織の前記ターゲット領域に向けて光の複数のビームを放出させるように構成されており、前記複数の各ビームはそれぞれ、前記皮膚組織の前記複数の処置領域の各対応する処置領域を形成する。
【0012】
一部の非限定的な例では、前記光源は、前記ターゲット領域に送られて前記複数の処置領域と前記無処置領域を形成するフラクショナル照射パターンを生じさせるように構成されている。
【0013】
一部の非限定的な例では、前記皮膚の前記複数の各処置領域は非剥離性処置領域である。
【0014】
一部の非限定的な例では、前記コントローラはさらに、前記複数の各処置領域を形成するために9mJ以下のエネルギーを前記光源に出力させるように制御する。
【0015】
一部の非限定的な例では、前記皮膚の前記複数の各処置領域は剥離性処置領域である。
【0016】
一部の非限定的な例では、前記コントローラはさらに、前記複数の各処置領域を形成するために17mJ以下のエネルギーを前記光源に出力させるように制御する。
【0017】
一部の非限定的な例では、前記ターゲット領域は前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の10パーセント、前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の20パーセント、前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の30パーセント、又は前記対象の前記皮膚組織の総体表面積の32パーセントのうち少なくとも1つである。
【0018】
一部の非限定的な例では、前記ターゲット領域は、前記対象の生殖器又は前記対象の頭部のうち少なくとも1つを含まない。
【0019】
一部の非限定的な例では、前記複数の各処置領域それぞれが、前記ターゲット領域において処置面を形成すると共に、前記無処置領域は前記ターゲット領域において無処置面を形成する。前記ターゲット領域の総処置面積は、前記複数の処置領域の全ての処置面によって定義される。前記ターゲット領域の総表面積に対する前記処置面積の割合は10パーセント以上である。
【0020】
一部の非限定的な例では、前記処置領域の総表面積に対する前記処置面積の割合は、15パーセント以上、20パーセント以上、30パーセント以上、又は32パーセント以上のうち少なくとも1つである。
【0021】
一部の非限定的な例では、前記複数の各処置領域それぞれが処置面を形成すると共に、前記無処置領域は無処置面を形成し、前記ターゲット領域の総処置面積は、前記複数の処置領域の全ての処置面によって定義され、前記対象の総体表面積に対する前記処置面積の割合は少なくとも1パーセントである。
【0022】
一部の非限定的な例では、前記対象の総体表面積に対する前記の処置面積の割合は、2パーセント、3.6パーセント、又は6.3パーセントのうち少なくとも1つである。
【0023】
一部の非限定的な例では、前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記ターゲット領域における脂肪組織の量を減少させる。
【0024】
一部の非限定的な例では、前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記対象の脂肪の総量を減少させる。
【0025】
一部の非限定的な例では、前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、白色脂肪細胞又はベージュ脂肪細胞である脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変換する。
【0026】
一部の非限定的な例では、前記皮膚組織の前記ターゲット領域の前記複数の処置領域の形成は、前記対象の血流中を循環するノルアドレナリンの量を増加させる。
【0027】
一部の非限定的な例では、前記エネルギー源はトランスデューサを含む。
【0028】
一部の非限定的な例では、前記エネルギー源は電気発生器と1つ又は複数の電極とを備えており、前記電気発生器は、前記1つ又は複数の電極に電気信号を送ることにより前記皮膚組織を熱損傷させるように構成されている。
【0029】
一部の非限定的な例では、前記エネルギー源は、前記皮膚組織のターゲット領域を切開又は穿刺することなく前記複数の処置領域を形成するように構成されている。
【0030】
一部の非限定的な例では、前記複数の処置領域の1つの処置領域は1ミリメートル以下の幅を有する。
【0031】
一部の非限定的な例では、前記複数の各処置領域は、当該各処置領域の皮下組織内に及ばない。
【0032】
本願開示の一部の実施形態は処置システムを提供するものであり、当該処置システムは、対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、計算機と、を備えることができ、前記計算機は、前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、前記ユーザ入力に基づき、前記対象の脂肪の総量を減少させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御するように構成することができ、前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む。
【0033】
本願開示の一部の実施形態は処置システムを提供するものであり、当該処置システムは、対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、計算機と、を備えることができ、前記計算機は、前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、前記ユーザ入力に基づき、1つ又は複数の白色脂肪細胞を1つ若しくは複数のベージュ脂肪細胞又は1つ若しくは複数の褐色脂肪細胞に変換するために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御するように構成することができ、前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む。
【0034】
本願開示の一部の実施形態は処置システムを提供するものであり、当該処置システムは、対象の皮膚組織を熱損傷するように構成されたエネルギー源と、ユーザ入力を受け取るように構成されたユーザ入力装置と、計算機と、を備えることができ、前記計算機は、前記ユーザ入力装置から、前記エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示す前記ユーザ入力を受け取り、前記ユーザ入力に基づき、前記対象の血流中を循環するノルアドレナリンの量を増加させるために前記1つ又は複数の動作パラメータに応じて、前記エネルギー源に前記皮膚組織のターゲット領域内に複数の処置領域を形成して前記皮膚組織を熱損傷させるように制御するように構成することができ、前記ターゲット領域は、前記処置領域間に挟まれた無処置部分を含む。
【0035】
一部の実施形態は代謝率を上昇させる方法を開示するものである。当該方法は、エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置部分は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の基礎代謝率を上昇させることと、を含むことができる。
【0036】
一部の非限定的な例では、各処置部分は1ミリメートル以下の幅を有する。
【0037】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域における脂肪の量を減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の量を減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織の前記にターゲット領域おける脂肪の厚さを減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の厚さを減少させること、又は、前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の脂肪の総量を減少させること、のうち少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0038】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより少なくとも1つの白色脂肪細胞をベージュ又は褐色脂肪細胞に変換することを含むことができる。
【0039】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つのホルモンの濃度を上昇させること、又は、前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つの神経伝達物質の濃度を上昇させることを含むことができる。
【0040】
一部の非限定的な例では、前記少なくとも1つのホルモン又は前記少なくとも1つの神経伝達物質はノルエピネフリンである。
【0041】
一部の非限定的な例では、前記複数の処置領域は、前記皮膚組織に穿刺又は切開することなく形成される。
【0042】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記エネルギー源を前記ターゲット領域に移動させることと、前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域にエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域を形成することと、を含むことができる。
【0043】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域に第1のエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域の第1のサブセットを形成することと、前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記ターゲット領域に第2のエネルギーを送ることにより前記複数の処置領域の第2のサブセットを形成することと、を含むことができる。
【0044】
一部の非限定的な例では、前記処置領域の前記第1のサブセットは処置領域の第1の行であり、前記処置領域の前記第2のサブセットは処置領域の第2の行である。
【0045】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記処置領域の前記第1のサブセットを処置領域の第1の列とし、前記処置領域の前記第2のサブセットを処置領域の第2の列とすることができる。
【0046】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記ターゲット領域を第1のターゲット領域とすることができ、前記方法はさらに、前記第1のターゲット領域とは異なる第2のターゲット領域に前記エネルギー源を移動させることと、前記エネルギー源が静止した状態で当該エネルギー源から前記第2のターゲット領域にエネルギーを送ることにより当該第2のターゲット領域において他の複数の処置領域を形成することと、を含むことができ、前記他の複数の処置領域は、前記皮膚組織の前記第2のターゲット領域において複数の無処置領域に散在する。
【0047】
本願開示の一部の実施形態は体重障害を改善する方法を提供するものである。当該方法は、エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置領域は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の基礎代謝率を上昇させることと、前記対象の基礎代謝率の上昇に基づき当該対象の脂肪の量を減少させることと、前記対象の脂肪の量の減少により前記体重障害を改善することと、を含むことができる。
【0048】
一部の非限定的な例では、各処置領域は1ミリメートル以下の幅を有する。
【0049】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域における脂肪の量を減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の量を減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織の前記にターゲット領域おける脂肪の厚さを減少させること、前記複数の処置領域を形成することにより、前記皮膚組織における前記ターゲット領域とは異なる領域の脂肪の厚さを減少させること、又は、前記複数の処置領域を形成することにより前記対象の脂肪の総量を減少させること、のうち少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0050】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより少なくとも1つの白色脂肪細胞をベージュ又は褐色脂肪細胞に変換することを含むことができる。
【0051】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つのホルモンの濃度を上昇させること、又は、前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象内を循環する少なくとも1つの神経伝達物質の濃度を上昇させることを含むことができる。
【0052】
一部の非限定的な例では、前記少なくとも1つのホルモン又は前記少なくとも1つの神経伝達物質はノルエピネフリンである。
【0053】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記皮膚組織に穿刺又は切開することなく前記複数の処置領域を形成することができる。
【0054】
一部の非限定的な例では上記方法は、前記複数の処置領域を形成することにより、前記体重障害により生じる1つ又は複数の疾患を改善することを含むことができる。
【0055】
一部の非限定的な例では、前記1つ又は複数の疾患は糖尿病、心疾患、高血圧、精神病、疼痛、高コレステロール、又は高トリグリセリドレベルのうち少なくとも1つを含む。
【0056】
一部の実施形態は、1つ又は複数の疾患を改善する方法を提供するものである。当該方法は、エネルギー源を用いて対象の皮膚組織のターゲット領域にエネルギーを送ることと、前記ターゲット領域において前記エネルギーが前記皮膚組織と相互作用することにより前記皮膚組織の前記ターゲット領域において複数の処置領域を形成することと、ただし、前記複数の処置領域は前記皮膚組織の前記ターゲット領域の無処置領域に散在し、前記複数の処置領域を形成することにより、前記対象の脂肪の量を減少させることと、前記対象の脂肪の量の減少により前記1つ又は複数の疾患を改善することと、を含むことができる。
【0057】
一部の非限定的な例では、前記1つ又は複数の疾患は糖尿病、心疾患、高血圧、精神病、疼痛、高コレステロール、又は高トリグリセリドレベルのうち少なくとも1つを含む。
【0058】
本願開示の上記及び他の側面及び利点は、以下の説明から明らかである。以下の説明では当該説明の一部を構成する添付の図面を参照しており、同図面は1つ又は複数の実施形態例を例示するものである。これらの実施形態例は必ずしも本願開示の全範囲を示すものとは限らない。
【0059】
以下の説明は、本願開示の非限定的な例の種々の構成を示すのを助けるために提示されるものであり、本願開示の範囲を限定したり、代替的な実施態様を除外することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図2A】複数の処置領域と無処置領域とを含む対象の皮膚組織のターゲット領域の概略的な上面図である。
【
図2C】処置を受けた後の複数のターゲット領域を有する対象の一例を示す図である。
【
図2D】処置を受けた後の大きなターゲット領域を有する対象の一例を示す図である。
【
図2E】処置を受けた後の他の大きなターゲット領域を有する対象の一例を示す図である。
【
図3B】皮膚組織のターゲット領域についての
図3Aの処置システムの断面図である。
【
図3C】シールドと、当該シールドに結合されたアクチュエータと、を示す図であり、シールドはスロットを有することができる。
【
図10A】他の処置システムの概略図の側面図である。
【
図11】
図10Aの処置システムのスライドの代替構成の概略的な正面図である。
【
図12】他の処置システムの概略図の側面図である。
【
図13】他の処置システムの概略図の側面図である。
【
図14】他の処置システムの概略図の側面図である。
【
図16】対象の代謝の上昇、対象の体重障害の改善、体重障害に関連する1つ又は複数の疾患の改善、対象の脂肪の総量の減少、対象の総重量の減少等のうち少なくとも1つのプロセスのフローチャートである。
【
図17】融合性レーザ処置及びフラクショナルレーザ処置のコンセプトを示すグラフィック表現図である。
【
図19】処置領域あたり35mJかつ11%の(処置領域の)密度で対象の片方の脚に非剥離FP(「nFP」)を施したものと、処置領域あたり20mJかつ15%の(処置領域の)密度で当該対象のもう片方の脚に剥離FP(「aFP」)を施したものの写真である。
【
図20】
図19の対象の両脚の陽電子放出断層撮影(「PET」)画像である。
【
図21】体重に対する体表面積(「BSA」)に対する体重のグラフであり、(例えばMeeh方程式等を用いて)フィッティングされた関数を共に示す。
【
図22】6つのグループにおけるエネルギー総消費量のグラフと、当該6つのグループにおける水総消費量のグラフと、を示す図である。
【
図23】6つのグループにおけるエネルギー総消費量のグラフと、当該6つのグループにおける水総消費量のグラフと、を示す図である。
【
図24】6つのグループの処置前及び処置後における1日の平均エネルギー消費量のグラフである。
【
図25】6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【
図26】6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【
図27】6つのグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【
図28】6つのグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【
図29】6つのグループの第1のセット及び6つのグループの第2セットの1日の平均のエネルギー消費量の棒グラフである。
【
図30】6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【
図31】6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【
図32】10のグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【
図33】10のグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【
図34】7つのグループにおいてEchoMRIを用いた脂肪減少の棒グラフと、当該7つのグループにおいてEchoMRIを用いた体重減少の棒グラフと、を示す図である。
【
図35】7つのグループにおいてEchoMRIを用いた脂肪減少の棒グラフと、当該7つのグループにおいてEchoMRIを用いた体重減少の棒グラフと、を示す図である。
【
図36】剥離性FPグループのマウスの写真である。
【
図37】非剥離性FPグループのマウスの写真である。
【
図38】複数の異なる処置グループの白色脂肪組織の画像である。
【
図39】剥離性レーザグループのノルアドレナリン濃度のグラフと、非剥離性レーザグループのノルアドレナリン濃度のグラフとを示す図である。
【
図40】剥離性レーザグループのIL-6濃度のグラフと、非剥離性レーザグループのIL-6濃度のグラフとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
上記の通り、個体は総脂肪減少を無くしたり、脂肪減少のターゲットを特定の局所領域に絞ることが困難であることがあり、これらはいずれも、老化プロセスの中で(例えば個体の老化と共に基礎代謝率が減少する等の理由により)一層困難になり得る。食事制限や運動は総脂肪減少を助け得るが、食事制限や運動は局所的にターゲットを絞って脂肪を無くすことができない。脂肪吸引術を含む従来の方法は上記の問題に対応して、局所的にターゲットを絞って脂肪を無くすことはできるが、処置領域外の脂肪を無くすことはできない。興味深いことに、重度の熱傷の犠牲者は病態生理学的なストレス反応を示すことがあり、かかるストレス反応には代謝亢進反応の長期化が含まれ、これは運が悪いと数か月以上続くことがある。このような熱傷により誘引される代謝反応は、外傷の程度の重大化としてより顕著に現れることがあり、重大な体重減少と特定の健康上の合併症、例えば悪液質、免疫機能の低下、肝臓障害(例えば肝臓脂肪症等)、敗血症、多臓器機能不全症候群等を引き起こし得る。
【0062】
よって、皮膚組織の大きな領域にわたって十分な許容範囲の損傷(例えばフラクショナル損傷等)を与えて代謝を強化し、脂肪減少を含む所望の体重減少等の有利な効果を実現し、メタボリックシンドロームを改善し、インシュリン抵抗性を改善すること等を図ることができると共に、重度の外傷、免疫系障害、その他重度の熱傷に起因する深刻な問題等を回避できる構成とし得るシステム及び装置が必要とされ得る。
【0063】
本願開示の一部の非限定的な例では、代謝率を上昇させるための改善されたシステム及び方法を提供することにより上記の問題(及びその他)について利点を提供するものである。例えば、本願開示の非限定的な例では、エネルギー源(例えばレーザ等)と、1つ又は複数の動作パラメータ(例えばパルス持続時間、パルス幅、出力される総エネルギー、皮膚組織のターゲット領域に対するエネルギーの総持続時間等)に応じて当該エネルギー源を制御するように構成された計算機と、を備えることができる処置システムが提供される。計算機が上記の1つ又は複数の動作パラメータに応じてエネルギー源を制御する際には、ターゲット領域における皮膚組織を制御下で熱損傷することができる。このようにして処置システムは、エネルギーを受け取った皮膚組織のターゲット領域における代謝率を上昇させて対象の基礎代謝率を上昇させるという利点を奏することができるだけでなく、皮膚を安全に熱損傷して副作用を最小限に抑えて、迅速な治癒を促進することができる。例えば、複数の処置領域(例えば、エネルギー源からエネルギーを受け取る領域等)と、当該複数の処置領域間に挟まれた無処置領域(例えば、エネルギー源からエネルギーを受け取らない領域等)とを含む(又はその逆の)フラクショナルパターンに従って、皮膚組織を熱損傷することができる。このようにして一部の事例では、処置領域(例えば熱損傷を受ける組織等)の間に無処置領域(例えば健康な組織等)を挟むと共に、処置領域を比較的小さい寸法(例えば幅1ミリメートル未満等)とすることにより、処置領域は迅速に治癒することができる。よって上記の措置により、(例えば身体に生じる外傷が過度に重度でなければ)代謝率の上昇を制御下で促進することができる(これによって例えば、特定の有利な反応を生じさせることができる)。例えば、無制御の深刻な熱傷は数カ月以上にわたって代謝率を不所望に上昇し、適切に治癒しない場合があるが(例えば瘢痕が残る等)、上記の処置システムにより提供される制御下の熱損傷は上記のような無制御の熱傷とは異なり、損傷が持続することなく、熱損傷された領域を迅速かつ完全に治癒することができ、また、代謝率が上昇する期間を格段に短縮できる(例えば1週間等)という利点も奏する。
【0064】
一部の非限定的な例では、処置システムは皮膚組織にフラクショナル皮膚処置(「フラクショナルリサーフェイシング」との呼称でも知られている)を施すことができる。フラクショナル皮膚処置は、健康な組織に包囲された複数の小さい損傷領域を皮膚組織に形成すること(例えば剥離又は熱損傷等)を含む美容的処置である。フラクショナル処置は、損傷を受ける領域の寸法が小さく(例えば一般に約1mm未満)、健康な組織の近接性とにより、身体にとって十分に許容可能な処置である。上述の熱損傷の局所的に散在する(又は「フラクショナル」)性質により、損傷を受けた領域の迅速な治癒を促進することができると共に、組織収縮等の他の所望の作用も促進することができる。フラクショナルリサーフェイシングは顔領域に施すことができるが、身体の他の領域に対してもフラクショナル処置を施すことができる。生体組織に上述のようなフラクショナル損傷を生じさせる方法及び装置は、ますます注目を集め、使用されてきている。上記の不連続な小さい損傷領域は、特定の種類のレーザその他のエネルギーベースの装置を用いて、当該レーザその他のエネルギーベースの装置が皮膚組織と相互作用して剥離又は熱損傷された組織の小さい領域を複数生じさせることにより形成することができる。このようなフラクショナル損傷は十分に許容可能なものであり、美容科の患者が、処置後に処置領域において若干の日焼けに匹敵するような感覚を持つという事例もある。
【0065】
本願開示の一部の非限定的な例は、身体の広範な領域(例えば、対象の総体表面の10パーセント超)にわたって皮膚組織にフラクショナル熱損傷を生じさせることにより身体の代謝を上昇するための安全な方法及び装置を提供する。かかるフラクショナル損傷は十分に許容可能なものであり、このような代謝率の上昇によって、多大な労力を要する運動や食事制限法を要することなく、所望の体重減少その他の有利な健康上の作用を生じさせることができる。
【0066】
本願の一部の非限定的な例では、フラクショナル損傷を生じさせる皮膚表面の割合を従来の美容処置より大きくすることができる。典型的な美容フラクショナル処置は顔領域、手、又は胸部の一部のみを対象としており、その処置部分は皮膚の総表面積の約5%未満である。それとは対照的に、本願開示の非限定的な例は、皮膚の表面積の少なくとも約20%にわたってフラクショナル損傷を生じさせることを含む。フラクショナル損傷の程度の上述のような拡大は、十分に許容可能であると共に、深刻な熱傷外傷の犠牲に直面し得る不所望の健康上の問題を回避しつつ(例えば、持続的な損傷をほとんど又は全く生じさせずに、皮膚の熱損傷領域が迅速に治癒することができる等)、全体的に代謝率の上昇を生じさせるために十分な意義を持ち得るものである。美容フラクショナル処置にについていえば、対象は処置領域において軽度の日焼けに匹敵する程度の軽度の不快感を感じるか、又は、例えば時間と共に治癒するかさぶた若しくは滲出物等の他の作用を感じるに留めることができる。
【0067】
一部の非限定的な例ではフラクショナル損傷は、組織の小さい領域(例えば幅が約1mm未満かつ径が約1mm未満等)が真皮の奥まで延在する(例えば蒸発する)剥離性とすることができる。一部の事例では、上述のような剥離性フラクショナル損傷(例えば皮膚引き締め等の美容目的の損傷等)を生じさせることができるレーザ及び光学系を設けることができる。このレーザ及び光学系は、適切なパラメータ(例えばエネルギーパラメータ等)と共に、対象の代謝の上昇、対象の脂肪の減少、対象の脂肪の減少による体重障害関連の1つ又は複数の疾患(例えば肥満症、過体重等)の処置等を引き起こすように設定された所望の程度の熱剥離を生じさせることができ、上記の疾患には糖尿病、高血圧、心疾患、精神病、疼痛等が含まれる。本願開示の非限定的な例では、処置領域において照射される皮膚組織表面の局所的なフラクションを約10~30%とし、その剥離されるスポットを取り囲む皮膚表面の他の70~90%は、大幅に無損傷状態に留まる。
【0068】
一部の非限定的な例ではフラクショナル損傷は非剥離的に生じさせることができ、例えば、皮膚組織に熱損傷領域を生じさせるが組織の蒸発が無いようにすることができる。一部の事例では、上述のような小さい熱損傷領域の幅を例えば約1mm未満、約0.5mm未満等としつつ、当該熱損傷領域が真皮の奥まで及ぶようにすることができる。一部の事例では、上述のような非剥離性フラクショナル損傷を生じさせることができる本願開示のレーザ及び光学系は、美容処置で使用されるものと同様とすることができる。本願開示の非限定的な例では、非剥離性損傷される皮膚表面のフラクションを約10~30%とし、その剥離されるスポットを取り囲む皮膚表面の他の70~90%は、大幅に無損傷状態に留まる。
【0069】
一部の非限定的な例では、計算機が、本願にて開示されている所望の作用を引き起こすように所望の熱損傷を皮膚組織に形成できる1つ又は複数のパラメータに応じて処置システムを制御することができる。一部の事例では上記の1つ又は複数のパラメータは、レーザ波長(例えばエネルギー源がレーザである場合等)、エネルギー源のエネルギー、エネルギー源の強度、エネルギー源が出力するフルエンス、エネルギー源のビーム幅、各パルスの持続時間、一定の期間中にエネルギー源から皮膚組織のターゲット領域に出力されるエネルギーの総量、又はこれらの組み合わせ等を含むことができる。一部の事例では、1つ又は複数のパラメータは類似の美容処置で使用されるパラメータに相当するものとすることができる。一部の好適な事例では上記の1つ又は複数のパラメータは、十分に許容可能なものとしつつ所望の反応を引き起こすために程度のより大きな局所熱損傷を生じさせるように、より「攻撃的」な美容処置のパラメータに匹敵するものとすることができる。
【0070】
本願開示の非限定的な例では、フラクショナル損傷は皮膚の広範な領域にわたって生じることができる。例えばかかる損傷は、背中及びオプションとして臀部の大半の領域、胸部及び腹部領域、1つ又は複数の体肢(例えば脚、腕等)の表面の広範の領域等にわたって生じることができる。1回の処置のフラクショナル損傷がカバーする総面積は、総体表面積の約20%超、総体表面積の約30%超等とすることができる。
【0071】
一部の非限定的な例では、比較的短期間の後、例えば略1~2週間後(「略」とは、10パーセント未満の誤差があるという意味)に、次のフラクショナル処置を施すことができる。このような次の処置は、先の処置を施した身体の領域とは異なる1つ又は複数の領域に施すことができる。このようにして、同じ領域に複数回の処置が施されることを回避しつつ、比較的短い期間内で身体の広範囲にわたって皮膚にフラクショナル損傷を生じさせることができる。特定の非限定的な例では、上記のような処置を3回以上、比較的短い時間間隔で、好適には身体のそれぞれ異なる領域に提供することができる。
【0072】
図1は処置システム100の概略図である。処置システム100はパワー源102と、冷却システム104と、計算機106と、ユーザ入力装置108と、エネルギー源110と、を備えることができる。パワー源102を具現化できる態様は種々存在し、パワー源102は処置システム100の構成要素の一部又は全部にパワー(例えば電力等)を供給することができる。例えば、パワー源102は冷却システム104、計算機106、ユーザ入力装置108、エネルギー源110等にパワーを供給することができる。一部の事例ではパワー源102は、例えば蓄電デバイス(例えば1つ又は複数のバッテリ、スーパーキャパシタ等のコンデンサ、再充電可能バッテリ(例えばリチウムイオン電池等))、電源装置、電力コード(例えばコンセントから電力を受け取るコード等)等の電力源とすることができる。
【0073】
冷却システム104は、エネルギー源110によって対象の皮膚組織にエネルギーが印加される前、印加される間又は印加された後に当該皮膚組織を冷却することができる。一部の事例では冷却システム104は、皮膚組織から熱を吸収できる伝熱流体(例えば冷媒等)を循環させ、受熱した冷媒を蒸発器へ送ることができる蒸発冷却システムとすることができ、この蒸発器は流体から熱を除去するためのファンを備えることができる。他の事例では冷却システム104は、皮膚組織に空気を吹き付ける(blow)(例えば皮膚組織に空気を送る(direct))ことにより皮膚組織を冷却することができるファンを備えることができる。
【0074】
一部の非限定的な例では、計算機106は処置システム100の構成要素の一部又は全部と通信(例えば双方向通信等)することができる。例えば計算機106は、処置システム100の各構成要素に指令を送信するため(又は各構成要素からデータを受信するため)、パワー源102、冷却システム104、ユーザ入力装置108、エネルギー源110等と通信することができる。一部の事例では上記の指令送信は、対象の皮膚組織(及び、より一般的に身体の他の領域)に所望の反応を引き起こすために1つ又は複数のパラメータに応じてエネルギー源110が当該皮膚組織にエネルギーを送るように計算機106が制御することを含むことができる。計算機106を具現化できる態様は種々存在する。例えば計算機106は、汎用コンピュータ又は特殊用途コンピュータを含めた公知の種類の1つ又は複数のプロセッサ装置(例えばマイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラ、論理ゲート等)として具現化することができる。さらに、計算機106はメモリ、入力装置、他の出力装置等の他の演算構成要素(不図示)を備えることもできる。この点については計算機106は、メモリから読込み可能である本願に記載の処理のステップの一部又は全部を実行するように適宜構成することができる。一部の非限定的な例では、計算機106は複数の制御装置(又は制御モジュール)を含むことができ、これらの制御装置(又は制御モジュール)は1つの構成要素に統合することができ、又は複数の別個の構成要素として配設することができる。
【0075】
一部の非限定的な例では、ユーザ入力装置108はユーザから1つ又は複数のユーザ入力を受け取るように構成することができ、このユーザ入力は計算機106によって受け取られ、エネルギー源110を制御するために使用されることができる。例えば、計算機106はユーザ入力装置108から、エネルギー源の1つ又は複数の動作パラメータを示すユーザ入力を受け取り、この1つ又は複数の動作パラメータに応じて所望の反応を引き起こすために皮膚組織を熱損傷するようにエネルギー源110を制御することができる。このようにして、ユーザは所望の反応を引き起こすようにエネルギー源の動作を制御することができる。一部の事例では、ユーザ入力装置108はエネルギー源の1つ又は複数のパラメータの受け取り(その他の決定)を容易化することができる。例えば、ユーザ入力装置はエネルギー源の1つ又は複数のパラメータを示すユーザ入力を受け取ることができる。このようにして、ユーザは個別具体的に対象に応じて1つ又は複数のパラメータを手動で調整することができる。例えば、各対象の皮膚の色、皮膚の厚さ、総体表面積、総体重はそれぞれ異なり得るものであり、これらは1つ又は複数のレーザパラメータに影響し得る。よって計算機は、特定の皮膚の色の存在(若しくは不存在)、特定の皮膚の厚さの存在(若しくは不存在)、対象の総体表面積、対象の総体重等を示すことができるユーザ入力に基づき、エネルギー源の1つ又は複数のパラメータを決定することができる。
【0076】
ユーザ入力装置108を具現化できる態様は種々存在する。例えば、ユーザ入力装置108はボタン、スイッチ、レバー、スライダ、タッチスクリーン、マウス、キーボード、マイクロフォン等を含むことができる。一部の事例では、ユーザ入力装置の作動により、計算機106によって受信されて相応に使用されることができる電気信号の形態の信号を発生させることができる。一部の非限定的な例では、ユーザ入力装置108はユーザインタフェースを含むことができる。
【0077】
一部の非限定的な例では、エネルギー源110は(例えばフラクショナルパターンで)対象の皮膚組織112を熱損傷するように構成することができ、これにより皮膚組織112のターゲット領域の代謝率又は対象の基礎代謝率を上昇させることができる(また、上記の熱損傷によって例えば、皮膚組織112におけるターゲット領域以外の別の領域の代謝率を上昇させることができる)。例えば、エネルギー源110は皮膚組織112のターゲット領域に、当該皮膚組織112の少なくとも1つの無処置領域(例えば、各無処置領域は熱損傷されない)により分離された複数の処置領域(例えば、各処置領域は熱損傷される)を形成するように、当該皮膚組織112にエネルギー114を送る構成とすることができる。一部の事例では、皮膚組織112のターゲット領域の無処置領域は、当該皮膚組織112のターゲット領域の複数の処置領域間に挟まれることができる。例えば、無処置領域を一続きの領域とし、複数の処置領域がこの無処置領域を包囲することができる。一部の構成では、2つの処置領域は1ミリメートル超だけ分離することができ、一部の事例では、各処置領域を隣の処置領域によって1ミリメートル以上だけ分離することができる。このように、処置領域間に十分な広がりの無処置領域を設けることにより、より良好かつ迅速な治癒を可能にすることができる(例えば、処置領域への栄養分拡散がより良好かつ迅速になる)。
【0078】
一部の非限定的な例では、皮膚組織112のターゲット領域の複数の処置領域をアレイとすることができ、又はランダムなパターンとすることができる。例えば、アレイは複数の行と複数の列とを含むことができ、上記の複数の処置領域を複数の行内に配すると共に、当該複数の処置領域を複数の列内に配することができる。とりわけ、少なくとも2つの処置領域を並べて上記アレイの第1の行に配し、少なくとも2つの他の処置領域を並べて、第1の行とは異なる当該アレイの第2の行に配することができる。同様に、少なくとも2つの処置領域を並べて上記アレイの第1の列に配し、少なくとも2つの他の処置領域を並べて、第1の列とは異なる当該アレイの第2の列に配することができる。他の構成では、ターゲット領域全体にわたって処置領域をランダム分布させる(例えばフラクショナルレーザパターンから形成する)ことができる。一部の構成では、各処置領域の幅(例えば径)を1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、0.5ミリメートル以下、0.25ミリメートル以下等とすることができる。このように、処置領域の幅を比較的小さくすること(例えば略1ミリメートル径等にすること)により、処置領域がより迅速に治癒すると共に損傷の持続(例えばかさぶた等)がより短期化する可能性が高くなる。一部の事例では、各1つの処置領域は皮膚組織112のターゲット領域のMTZ(microscopic treatment zone)とすることができる。一部の構成では、各1つの処置領域は熱損傷部位、皮膚損傷部位として定義することができる。一部の構成では、各1つの処置領域は熱処置部位として定義することができる。
【0079】
一部の非限定的な例では、エネルギー源110は皮膚組織112の複数のターゲット領域にエネルギーを送ることができ、これら複数のターゲット領域は(例えば他のフラクショナル構成とは異なり)対象の皮膚組織の全体表面積の大半の領域に及ぶことができ、皮膚組織表面積のうち皮膚組織112のターゲット領域が及ぶ領域は、従来のフラクショナルレーザと比較して格段に大きくすることができる。例えば、皮膚組織におけるエネルギー114(例えば、レーザエネルギー等のエネルギーの1つのパルス、レーザの1つのCAN、フラクショナルレーザパターンの1回の印加等)を受け取るターゲット領域は10cm2超とすることができ、これはフラクショナル治療の従来のアプローチとは異なるものである。例えば、フェイシャルリサーフェイシング処置のための皮膚組織のターゲット領域は、典型的には10cm2を格段に下回る(例えば顔には湾曲があるため、眼等を含めたデリケートな解剖学的構造にレーザを近付けるので、レーザの緻密な制御が必要になるという理由等による)。それとは対照的に、ここで記載されている皮膚組織112の熱処置は、当該皮膚組織112に格段に大きな範囲を有し(これは例えば、全身性代謝反応を生じさせるために必要となり得る)、特定の解剖学的構造に送る必要がないため(例えば、所望のターゲットにおいて反応を引き起こすために当該ターゲットの熱処置を行う必要はない)、かなり低敏感性の構造(例えば対象の背中、対象の胃等)に熱処置を送ることができ、そのターゲット領域を格段に大きくすることができる。よって、ターゲット領域は10cm2超、20cm2超、30cm2超、40cm2超、50cm2超等とすることができる。一部の構成では、皮膚組織112のターゲット領域は、処置システム100を移動させずにエネルギー114を受け取れる皮膚組織112の領域とすることができる(例えば、エネルギー源110はエネルギー114を送るための光ファイバ等の構成要素を備えることができる)。
【0080】
一部の非限定的な例では、複数の各処置領域は剥離性、非剥離性、又は剥離性と非剥離性との組み合わせとすることができる。例えば、各処置領域を、その箇所において組織の少なくとも一部が蒸発し得る剥離性とすることができ、又は各処置領域を、その箇所において蒸発しない非剥離性とすることができる。一部の構成では、剥離性の各処置領域(例えば剥離性処置部位)が、それぞれ対応する孔を組織に形成することができる。例えば、剥離性の各処置領域はそれぞれ、当該処置領域における皮膚組織が蒸発した孔(例えばブラインドホール等)を皮膚組織に形成することができる。一部の事例では、エネルギー114が皮膚組織112に送られたときに処置領域が剥離性になるか又は非剥離性になるかを、1つ又は複数の処置パラメータ(又は、エネルギー源110の動作波長等の特徴)が決定することができる。例えば、水の吸収係数に対するレーザの波長の一致の程度がより高くなると、組織中の水がレーザから吸収するエネルギーの量が多くなり、剥離性の組織損傷が形成される。
【0081】
一部の非限定的な例では、所望の反応を引き起こすため(例えば、対象の基礎代謝率を上昇させるため)、ターゲット領域が(又は複数のターゲット領域が合わさって)身体の非敏感領域のうち比較的広範な領域に及ぶことができる。例えば、各ターゲットエリアにおける皮膚組織112の処置領域(例えば、各ターゲット領域を定義する周を構成する複数の処置領域等)の境界により定めることができる1つのターゲット領域が対象の総体表面積のうちカバーできる割合、又は複数のターゲット領域が対象の総体表面積のうちカバーできる割合の合計を、5パーセント超とすることができる(ここで、例えば従来のフラクショナル処置がカバーできるのは、対象のうち総体表面積「BSA」の5パーセントを有意に下回る)。一部の事例では、対象の総BSAのうちターゲット領域(又は複数のターゲット領域)がカバーできる割合は少なくとも10パーセント、対象の総BSAの20パーセント、対象の総BSAの30パーセント、対象の総BSAの32パーセントである。一部の非限定的な例では、第1のターゲット領域を第2のターゲット領域から分離することができる。
【0082】
図2Aは対象の皮膚組織のターゲット領域130の概略的な上面図であり、ターゲット領域130は複数の処置領域132(例えば熱損傷された処置領域等、
図2A中、円で示されている)と無処置領域134(例えば熱損傷されない領域等、複数の処置領域132に挟まれた領域によって示されている)とを含む。皮膚組織のターゲット領域130は、皮膚組織112のターゲット領域にエネルギー114が送られたときに生じる一例の熱損傷パターン(例えばフラクショナルパターン等)である。
図2Aに示されているように、複数の処置領域132は無処置領域134によって分離されている(例えば、処置領域132は無処置領域134に散在している)。換言すると、ターゲット領域130の無処置領域134は複数の処置領域132間に広がっており、ここで無処置領域134は一続きとすることができる。一部の非限定的な例では、処置領域132がターゲット領域130全体にランダム分布している構成が示されているが、他の構成では処置領域132をアレイに配することができる。一部の事例では、無処置領域(non-treatment region)134を無処置領域(untreated region)と称することがある。
【0083】
一部の非限定的な例では、ターゲット領域130は処置領域132によって定まることができる。例えば、両端部の処置領域132がターゲット領域130の寸法(例えば幅、長さ、対角線、周長等)を決定することができる。例えば、ターゲット領域130の周にある複数の処置領域132のサブセットが当該ターゲット領域130の境界を定めることができる(例えば、周部の処置領域132に取り囲まれこれらを含むエリアがターゲット領域130となる)。
【0084】
一部の事例では、各処置領域132の寸法(例えば幅、断面積、深度、上表面積等)は互いに実質的に等しくすることができ、また、無処置領域134は処置領域132より(有意に)大きくすることができる。各処置領域132の断面は円形である構成が示されているが、他の構成では処置領域132の断面形状を他の形状(例えば楕円形等)とすることができる。一部の事例では、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータは処置領域の特定の断面形状を表すものとすることができる。例えばエネルギー源110がレーザである場合、1つ又は複数のパラメータはレーザのレイリー長を含むことができ、これは、レーザビームがどの程度発散するかを表すことができるので、これにより(例えばレーザビームが皮膚組織と相互作用するときの)レーザビームの幅を表すことができ、ひいては処置領域の幅を表すことができる。
【0085】
一部の非限定的な例では、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータは、無処置領域134に対する処置領域132の相対密度、又は皮膚組織のターゲット領域130の総表面積に対する処置領域132の相対密度を決定することができる。例えば、各処置領域132はそれぞれ処置面(例えば各処置領域における熱損傷された上表面の全部)を有することができ、また、各無処置領域134はそれぞれ無処置面(例えば各無処置領域134における熱損傷されない上表面の全部)を有することができる。一部の事例では、ターゲット領域130の総処置面積は、複数の処置領域132の全ての処置面によって定義することができ、また、ターゲット領域130の総無処置面積は無処置領域134の無処置面によって定義することができる。一部の事例では、ターゲット領域130の総表面積に対する当該ターゲット領域130の総処置面積の割合は10パーセント以上、15パーセント以上、20パーセント以上、30パーセント以上、32パーセント以上等とすることができる。これに応じて一部の事例では、ターゲット領域130の総表面積に対する当該ターゲット領域130の総無処置面積は68パーセント以下、70パーセント以下、80パーセント以下、90パーセント以下等とすることができる。
【0086】
一部の非限定的な例では、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータは対象の絶対的な処置面積を決定することができる。例えば対象の絶対的な処置面積は、当該対象の全体表面積に対する各ターゲット領域の処置面積の合計の割合とすることができる。一部の事例では、対象の総体表面積に対する絶対的な処置面積の割合を1パーセント以上、2パーセント以上、3.6パーセント以上、6.3パーセント以上等とすることができる。一部の事例では、処置される対象の面積が大きいほど(例えば1パーセント超等)、より大きな代謝反応を引き起こすことができる。
【0087】
図2Bは、
図2Aの線2B-2Bに沿った
図2Aのターゲット領域130の断面図である。
図2Bに示されているように、同一行内の複数の各処置領域132がそれぞれ、皮膚組織のターゲット領域130の表皮136と真皮138とを通る。一部の事例では、各処置領域132は表皮136及び真皮138のみを通る。換言すると、各処置領域132は浅層組織140(例えば浅層脂肪を含む組織)内には及ばない。このように、浅層組織140への熱損傷を回避することによって、ターゲット領域130における皮膚組織に不所望の持続性のある損傷(例えば傷の不完全治癒、かさぶた等)を防止することができる。一部の事例では、各処置領域132はそれぞれターゲット領域130の真皮138の真皮深層内に及ぶことができる。これは、より大きな反応を生じさせるものと考えることができる(例えば、熱損傷が真皮138内に深く入り込むほど、引き起こされる反応が大きくなる)。一部の事例では、真皮深層は真皮下半分、真皮を三等分したときの下の層等とすることができる。一部の事例では、各処置領域132は表皮を全く通らないことが可能である。例えばエネルギー源110が超音波トランスデューサである場合、エネルギー114(例えば超音波エネルギー等)を表皮より下方に合焦することができる。このようにして、処置領域132が治癒したときに処置領域132をより視認しにくくすることができる(例えば外表面から見たとき、例えば対象の処置後の皮膚組織112を別の人が見たときに、処置領域132をより視認しにくくすることができる)。
【0088】
一部の非限定的な例では上記の1つ又は複数のパラメータは、各処置領域132が皮膚組織内に延在する深度(例えば処置領域132の深度又は長さ等)を表すものとすることができる。例えば、処置領域132に送られる総エネルギー(例えばレーザのパルスエネルギー等)が処置領域132の深度(例えば、皮膚組織内への処置領域132の最大深度等)を決定することができる。よって一部の事例では、処置領域が皮膚組織内に延在する深度を示唆することができるエネルギーの送られた量が所望の量になった場合、計算機106がエネルギー源110にエネルギー114の送出の停止をさせることができる。換言すると、計算機106は、処置領域に送られた総エネルギーが最大エネルギーレベル(例えば、相応の最大深度に関連付けられたエネルギーレベル等)を超えるか否かを判定し、総エネルギーが最大エネルギーレベルを満たす又はこれを超える場合、計算機106はエネルギー源110がエネルギー114を送ることを停止することができる。
【0089】
図2Cは、処置を受けた後の複数のターゲット領域を有する対象の一例を示す図である。例えば対象の胸部は、複数の処置領域を有する第1のターゲット領域(例えば
図2C中に線として示されているもの)と、第1のターゲット領域から分離していると共に同様に複数の処置領域を含む第2のターゲット領域と、を有する。
【0090】
図2Dは、処置を受けた後の大きなターゲット領域を有する対象の一例を示す図であり、
図2Eは、処置を受けた後の他の大きなターゲット領域を有する対象の一例を示す図である。例えば
図2Dでは、複数の処置領域147を有するターゲット領域145(例えば
図2D中斜線で示されている)が対象の胸部に配されている。
図2Eに関しては、複数の処置領域151を有するターゲット領域149(例えば
図2E中斜線で示されている)が対象の背中に配されている。
【0091】
再度
図1を参照すると、パターン(例えば熱損傷のアレイ、フラクショナル熱損傷パターン、ランダムパターン等)に従って皮膚を熱損傷するためにエネルギー114を送るためのエネルギー源110を具現化できる態様は、種々多数存在する。例えばエネルギー源110は、パワー源102からのエネルギーを、エネルギー114として当該エネルギー源110から出力するための別の形態に変換できる1つ又は複数のトランスデューサを備えることができる。より具体的な一例として、トランスデューサは複数の光ビーム(例えばレーザビーム等)を出力するように構成された光源(例えばレーザ等)とすることができ、これら複数の各光ビームはそれぞれ、皮膚組織112のターゲット領域に処置領域を形成する。一部の事例では複数の光ビームを同時に送ることができるが、他の事例では、複数の光ビームを個別に、別個に、1つずつ、一度に複数送る等が可能である。例えば、光ビームを1行ずつ、複数行ずつ(例えば隣り合う複数の行等)、1列ずつ、複数行ずつ(例えば隣り合う複数の列等)送ること等が可能である。一部の事例では上述のような送出は、1つ又は複数の孔(例えば、細長いスロット等のスロット)を有する可動のマスクを用いて実現することができ、このマスクの孔は、(例えば複数の処置領域を形成するため)当該マスクの1つ又は複数の孔に1つ又は複数の光ビームを通して皮膚組織112に送ることができるものであり、マスクはさらに、1つ又は複数の光ビームが当該マスクを通過して皮膚組織112に達することをブロックする(例えばこれにより、ブロックされた1つ又は複数の光ビームによって皮膚が熱損傷しないようにする)。その後、マスクを(例えばアクチュエータ等により)移動させて1つ又は複数の別の光ビームがマスクの1つ又は複数の孔に通過できるようにし、またマスクは、1つ又は複数の別の光ビームが当該マスクを通過して皮膚組織112に達することをブロックすることができる。このようにして、処置領域の各行、各列を個別に1つずつ(又は複数ずつ)形成することができる。一部の事例では、処置領域の行、列等を個別に形成することにより、処置システム100の構成要素(例えば、エネルギー源110がレーザである等の場合にはエネルギー源110)を小型化できるという利点が奏され、これにより処置システム100がユーザにとって扱いやすくなり、(例えば処置システム100を移動させる際等)比較的軽量化することができ、(例えば処置システム100のコスト削減を達成するため)より小さい構成要素を採用することが可能になる。
【0092】
他の具体的な一例としてエネルギー源110は、超音波トランスデューサである1つ又は複数のトランスデューサを備えることができ、各超音波トランスデューサは治療用超音波エネルギーを出力するように構成することができる。よってエネルギー114は、皮膚組織112のターゲット領域に複数の処置領域を形成できる治療用超音波エネルギーとすることができる。一部の事例では、超音波トランスデューサは高密度焦点式超音波(「HIFU」)を放出する構成とすることができる。一部の非限定的な例では、エネルギー源110は電気発生器(例えば波形発生器、電気信号発生器等)を備えることができ、処置システム100は、当該電気発生器に電気的に接続された1つ又は複数の電極(例えば電極のアレイ等)を備えることができ、各電極はニードル(例えばマイクロニードル等)とすることができる。一部の事例では、電極を電気的に励起して皮膚組織112に穿刺すると、当該電極が皮膚組織112にエネルギー110の領域を送って処置領域を形成することができる。一部の事例では、計算機106が(例えば各対応する電気的スイッチを開閉すること等により)電気発生器からの電気信号を選択的にルーティングして、どの(1つ又は複数の)電極が電気エネルギーを受け取って、どの(1つ又は複数の)電極が電気エネルギーを受け取らないかを選択することができる(例えば、電気エネルギーを受け取らない電極は無処置領域に対応する)。一部の非限定的な例では、電極の穿刺深度と、電極に送られる総エネルギーとが(例えば電極の寸法の他にさらに)、処置領域の深度を表すことができる。よって一部の事例では、処置システム100はエネルギー114を高周波エネルギー(「RF」)として送ることができる。
【0093】
一部の非限定的な例では、皮膚組織112に穿刺することに代えて、処置システム100は複数のピンを備えることができ(例えば、各ピンは金属から形成することができる)、各ピンはエネルギー源110の電気発生器から電気信号を受け取ることができる。電気信号を受け取る各ピンは、格段に高いRF電圧に充電することができる。その後、上記の複数のピンを皮膚組織112のターゲット領域に近付けると、周囲環境(例えば大気等)でプラズマを形成することができ、プラズマを皮膚組織112に送って複数の処置領域を形成することができる。一部の事例では、上記の電極の構成と同様、計算機106が(例えば各対応する電気的スイッチを開閉すること等により)電気発生器からの電気信号を選択的にルーティングして、どの(1つ又は複数の)ピンが電気エネルギーを受け取って(これは例えば処置領域の形成に相当する)、どの(1つ又は複数の)ピンが電気エネルギーを受け取らないかを選択することができる(例えば、電気エネルギーを受け取らないピンは無処置領域に対応する)。一部の非限定的な例では、ピンに供給される電圧、ピンの充電持続時間、皮膚組織112からピンまでの距離、ピンからの電圧の放電持続時間(これは例えば、ピンから皮膚組織112に送られて処置領域を形成する総エネルギーに相当する)等が、処置領域の寸法(例えば深度、幅等)を決定することができる。よって一部の事例では、処置システム100はフラクショナル・マイクロプラズマ高周波でエネルギー114を送ることができる。
【0094】
一部の非限定的な例では、処置システム100は熱エネルギー(例えば、熱機械的皮膚若返りシステム(thermal mechanical skin rejuvenation system)に類するもの等)を送ることができ、これは、レーザを用いたり皮膚組織112を剥離することなく実施可能である。例えば、処置システム100は複数の熱伝導チップ(tip、先端)を(例えばアレイで)備えることができ、これらの熱伝導チップは他の構成と同様、(例えば各チップが1つ又は複数のヒータと熱のやりとりを行うことにより)選択的に加熱されることができる(上記のヒータは抵抗加熱器とすることができる)。チップを加熱して皮膚組織112に接触させると、処置領域が形成される。これに対応して、加熱されずに皮膚組織112と接触するチップは、皮膚組織の無処置領域に相当する。一部の非限定的な例では、チップと皮膚組織112との接触の程度が処置領域の深度、断面積等を決定することができる。さらに、チップの温度(例えば、エネルギー源110がチップを加熱し、例えば電気加熱等することによって生じる温度等。これは、電気ヒータに供給される電気信号に依存し得る)も、処置領域の深度、断面積等を決定することができる。
【0095】
一部の非限定的な例では、皮膚組織を穿刺することなく本願に記載の処置領域を形成できる態様は種々存在し、このように穿刺無しで形成することが有利であり、そうでないと表皮の完全性が不所望に損なわれて感染の可能性が高くなってしまう。
【0096】
図3Aは処置システム150の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム150は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム150は、エネルギーを放出して皮膚組織のターゲット領域の複数の処置領域と、皮膚組織の無処置領域と、を形成する構成とすることができる。処置システム150はハウジング152と、レーザ154と、レーザ154からのレーザビームを複数の別個のレーザビームに分割するように構成されたレンズ156と、を備えることがでる。例えばレンズ156は、レーザ154から放出されたレーザビームを複数の個々のレーザビームに分割可能な画素ビーム分割レンズとすることができる。かかる構成により、各個々のレーザビーム(例えば初期のレーザビームを分割したもの等)が皮膚組織のターゲット領域にそれぞれ処置領域を形成することができる。
【0097】
図3Bは、皮膚組織162のターゲット領域160についての処置システム150の断面図である。一部の構成では処置システム150は、レンズ156に光学的に結合された集束レンズ158を備えることができ、この集束レンズ158は、分割後の個々のレーザビームを集束させることができる。
図3Bに示されているように、レーザ154はレンズ156に向けてレーザビーム164を放出することができ、レンズ156はこのレーザビーム164を複数のレーザビーム166に分割することができる。レーザビーム164は集束レンズ158によって集束されて皮膚組織162に送られることができ、各レーザビーム164はそれぞれ皮膚組織162のターゲット領域160に処置領域を形成する。一部の事例では、上記のように、周部の処置領域がターゲット領域160の境界を定めることができる。これに対応して、周部のレーザビーム(例えばレーザビーム166等)は、ターゲット領域160にアライメントした処置野の周を定めることができる。
【0098】
一部の非限定的な例では、処置システム150が単一のレーザ154を有する構成について説明したが、他の構成では処置システム150は複数のレーザを備え、これらのレーザを(例えば計算機等により)選択的に作動させて複数の異なるレーザビームを選択的に放出させ、複数の異なる時点でそれぞれ異なる処置領域を選択的に形成することができる。このようにして処置システム150は、(例えばラスタ走査と同様に)皮膚組織162の処置領域を順次(例えば行ごと、列ごと等)走査することができる。この走査構成を具現化できる態様は種々存在する。例として、
図3Cはシールド168を示しており、このシールド168はスロット170と、当該シールド168に結合されたアクチュエータ172(例えばリニアアクチュエータ等)と、を備えることができる。
図3Cに示されているように、スロット170は一部のレーザビーム166を通すと共に、他のレーザビーム174(例えば、同様にレーザビーム164を分割したもの等)が当該シールド168を通過するのをブロックする。その後、レーザビーム166を用いて処置領域が形成された後、シールド168をアクチュエータ172によって移動させ(例えば、スロット170の長手方向に対して実質的に垂直な方向に直進移動させ)、ブロックされていた他のレーザビーム174を孔168に通過させると共に、レーザビーム166をブロックすることができる。このようにして、処置システム150(例えば計算機等)はアクチュエータにレーザビームを皮膚組織162のターゲット領域160において掃引させて、皮膚組織162の処置領域を効果的に走査することができる。他の一例として、皮膚組織162の複数の異なる領域にそれぞれ異なるレーザビームを集束可能な複数の異なる光学部品を用いて、上記の掃引を実現することができる。例えば、アクチュエータが上記の複数の異なるレーザビーム166の経路上にそれぞれ異なるレンズ(又は、プリズム、ミラー等の他の光学部品)を入れたり出したりして、レーザビーム166を皮膚組織の異なる領域に送ることにより、皮膚組織162のターゲット領域160上に処置領域を走査することができる。さらに他の一例として、代替的な一構成では処置システム150は第1の光ファイバと、当該光ファイバに光学的に結合された光ファイバスプリッタと、上記の光ファイバに光学的に結合された複数の光ファイバと、を備えることができる。かかる構成により、レーザ154は第1の光ファイバに沿ってレーザビーム164を送り、その後にレーザビーム164が光ファイバスプリッタによって分割されて複数のレーザビームが複数のファイバの各光ファイバに沿って伝播し、皮膚組織162のターゲット領域160に送られることができる。このようにして、複数の処置領域が作製完了するまで処置システム150を(例えばアクチュエータ等によって)直進移動させることができる。
【0099】
図4は処置システム200の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム200は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム200は治療用超音波システムとすることができ、この治療用超音波システムは1つ又は複数の超音波トランスデューサ(例えば圧電トランスデューサ等)を備えることができ、各超音波トランスデューサは、処置ターゲットにおいて1つ又は複数の処置領域を形成するための治療用超音波エネルギーを出力するように構成することができる。例えば上記の1つ又は複数の超音波トランスデューサは、皮膚組織のターゲット領域に治療領域(例えば1つの治療領域)を形成するための治療用超音波エネルギーを出力する少なくとも1つの超音波トランスデューサ(又は複数の超音波トランスデューサ)を含む複数の超音波トランスデューサ(例えばアレイ等)とすることができる。
図4に示されているように、治療用超音波エネルギーの周波数(例えば、超音波トランスデューサを駆動するために使用される電気信号の周波数等)が、皮膚組織内に延在する処置領域の深度を表すことができる。例えば、周波数が4メガヘルツ(「MHz」)の治療用超音波を放出する超音波トランスデューサは、処置領域が浅層組織内に延在する(例えば4.5ミリメートルの深度まで延在する)ようにすることができる。よって、処置システム200の計算機は、各超音波トランスデューサをそれぞれ4MHz超の周波数で動作させることができる(その理由は例えば、周波数の上昇が処置領域の深度と逆の関係にあり、周波数が低いほど処置領域の深度が深くなり、またその逆であるからである)。
【0100】
一部の非限定的な例では、治療用超音波システムはMHz域の周波数の高周波超音波を送り、0mm~4mmの範囲内の真皮組織の集束を行うことができる。HIFUトランスデューサによって生成される焦点領域の寸法は動作周波数に逆の関係で依存し、周波数が高いほど焦点領域が小さくなる。一部の事例では、HIFU処置が皮膚科学において高信頼性となるためには、ターゲットの目的と所望の介入とに依存して表皮、真皮又は皮下組織内に高精度で、焦点領域を位置決めして閉じ込める必要がある。試験で示されたように、皮膚ターゲットにおいて高精度を実現するためには、約4~20MHzの動作周波数が必要となり得る。
【0101】
図5は処置システム210の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム210は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム210は熱機械的フラクショナル外傷(thermo-mechanical fractional injury、「TFMI」)装置とすることができ、これは非レーザ式、フラクショナル、非剥離性の熱機械的皮膚若返りシステムであり、熱エネルギーと運動とを組み合わせたものである。処置システム210は計算機212と、エネルギー源214と、複数のチップ218(例えば熱伝導チップ等)を備えた基板216と、複数の電気ヒータ220(又は1つの電気ヒータ)と、を備えることができる。複数のチップ218は2種類のチップを含むことができ、これらの2種類のチップは、81個(9×9)又はその他の個数の微小なチタン角錐体を有する標準的なチップと、24個(6×4)の微小角錐体を有する小さいチップ(「ペリオービタル(periorbital)チップ」との呼称でも知られている)とすることができる。各チップ218の形状は角錐状とすることができ、また比較的小型(例えば長さ1000μm未満等)とすることができる。チップの根元をハンドピース内の温度(例えば400℃等)に加熱することができ、これを皮膚表面に向かって素早く移動させて接触させて組織を凝固させ、蒸発及び乾燥によりマイクロクレータを形成することができる。皮膚に送られる熱エネルギーの量は、チップ218が実際に皮膚組織222と接触して熱エネルギーを送るパルス持続時間(PD:5~18ミリ秒の範囲)によって決定することができ、突出距離又は突出深度(100~1000μm)は、チップ218と皮膚組織222とが接触する表面積の大きさとすることができる(例えば、突出距離は、1回の作動で加熱されたチップがハンドピースゲージの縁部から突出する距離である)。換言すると、基板216と皮膚組織222との間の軸方向距離を突出距離とすることもできる(例えば、軸方向距離が小さいほど大きな熱損傷が生じて熱損傷の深度が深くなり、またその逆である)。よって、突出距離が大きいほど皮膚とチタン角錐体との接触の程度が大きくなり、エアギャップが小さくなり、熱移動が大きくなる。ここで重要なのは、TMFI技術における熱移動は、表皮のいかなる機械的貫通も伴わないことである。一部の事例では、処置システム210は、複数のチップ218を皮膚組織222に選択的に接触させるため(及び当該接触から離すため)に基板216に結合されたアクチュエータを備えることができる。
【0102】
一部の非限定的な例では、計算機212はエネルギー源214(例えば電気発生器等)に、それぞれ対応するチップ218と熱のやりとりを行う複数のヒータ220のうち特定のヒータ220(例えば抵抗加熱器等)を選択的にオンさせることができる。このようにして、上記のオン切換に従い熱損傷のパターンを実現することができる。さらに、加熱された各チップはそれぞれ、皮膚組織222に処置領域を形成することができる。
【0103】
図6は処置システム230の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム230は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム230はRF装置とすることができ、また、計算機232とエネルギー源234と基板236と複数のニードル238(例えば、ニードルの複数の行とニードルの複数の列とを有するニードルの二次元アレイ等)とを備えることができる。複数のニードル238はそれぞれ一対の電極を含むことができる。
図6に示されているように、(例えばアクチュエータ等を用いて)ニードル238が皮膚組織240を貫通するまで基板236を皮膚組織240に近付けることができる。その後、エネルギー源234(例えば電気発生器等)がニードル238の各電極を充電するための電気信号を発生させることができる。この電気信号は3kHz~300MHzの範囲とすることができるが、他の事例では電気信号を0.5MHz~40MHzの範囲とすることができる。一部の事例では、RF装置の電気信号の周波数は処置領域の形成の貫通深度に反比例することができる。例えば、周波数が低いほど貫通速度を高くすることができ、またその逆が可能である。処置システム210と同様、電気的に励起された各ニードル238はそれぞれ、皮膚組織222に処置領域を形成することができる。一部の構成では、皮膚組織240における処置領域の形成に関し得るパラメータはニードル貫通深度、導通時間、電極に送られるエネルギーレベル(例えば電極両端に印加される電圧、電圧のパルス幅等)とすることができ、これらはそれぞれが、皮膚の凝固に有意な影響を与え得る。
【0104】
一部の非限定的な例では、処置システム230はフラクショナル・マイクロプラズマRF装置とすることもできる。この場合、ニードル238は処置領域を形成するためのエネルギーを送るために皮膚組織240を貫通する必要は無く、むしろ、各ニードル238に代えてピンをそれぞれ設け、電気信号を用いて各ピンに充電することができる。基板236を皮膚組織240に向かって移動させ、ピンを皮膚組織240に接触させることなく、充電されたピンの放電を(例えばプラズマ放電等により)行って、(例えば、充電された各ピンが皮膚組織240にそれぞれ処置部分を形成することにより)処置領域を形成することができる。
【0105】
図1を再度参照すると、処置システム100は1つ又は複数のシールド120を備えることができ、このシールド120は、敏感領域の組織の熱損傷を防止するために当該敏感領域を覆う構成とすることができる。例えばシールドは、敏感領域(例えば眼、鼠径部等)を覆うことができるアイウェア(例えば眼鏡、ゴーグル等)、衣服(例えば防護服(clothes)等)とすることができる。一部の事例では、シールド120を敏感領域に被せ、シールド120がエネルギー114を吸収、反射等して、シールド120の下の皮膚組織が熱損傷されるのを回避することができる。
【0106】
一部の非限定的な例では処置システム100は、特定のターゲット(例えば敏感領域等)に処置が施されるのを回避するため、又は所望のターゲット領域が処置完了することを保証するため、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータを決定するために使用可能な1つ又は複数のセンサ116、1つ又は複数のイメージングシステム118等を備えることができる。センサ116及びイメージングシステム118は計算機106と通信することができる。一部の非限定的な例では、センサ116は距離センサ(例えばタイム・オブ・フライト・センサ等)、撮像センサ(例えばカメラ等)等を備えることができる。例えば、距離センサはエネルギー源110と皮膚組織112との間の現在の距離を受け取ることができ、この現在の距離はエネルギー源110の1つ又は複数のパラメータを調整するために用いることができる。例えばエネルギー源110がレーザである場合、エネルギー源110から皮膚組織112までの距離が遠いほど、処置領域を形成するために皮膚組織112に送ることができるパワーが小さくなる。よって、エネルギー源110のパワーを増加するため(又は減少するため)距離を使用することができる。他の一例として、撮像センサが皮膚組織112の(例えばターゲット領域等の)画像を取得することができ、これはエネルギー114を送る前とすることができる。このようにして、計算機106は皮膚組織112の(例えばターゲット領域の)皮膚の色(又はメラニン含有量)を特定し、対象の皮膚の色を補償することができる。例えば、表皮のメラニンはより多くのレーザエネルギーを吸収する発色団として働き、これにより、顔貌の色が濃い個体の場合、表皮が損傷するリスクが上昇し得る。よって、1つ又は複数のパラメータを調整して皮膚の色を補償することができ、これには、(レーザエネルギーの短いパルスより)レーザエネルギーのパルス長を長くし、長いパルスの振幅を短いパルスより小さくすることにより、より制御されたエネルギーを皮膚組織に送ることを含むことができる。1つ又は複数のパラメータはさらに、皮膚の色が濃い場合には(高いフルエンスと比較して)フルエンスを低くし、また、皮膚の色が濃い場合には(熱領域の密度を高くするのではなく)熱領域の密度を低くすることができる。
【0107】
一部の非限定的な例ではイメージングシステム118は、皮膚組織112からイメージングデータを取得し、当該イメージングデータを用いて皮膚の厚さ(例えば表皮の厚さ等)を求めることができる超音波イメージングシステム(例えば超音波イメージングデバイス等)、光コヒーレンストモグラフィイメージングシステム、光音響イメージングシステム等とすることができる。その後、計算機106はこの皮膚の厚さに基づいてエネルギー源110の1つ又は複数のパラメータを決定する(又は変化させる)ことができる。例えば、皮膚の厚さを決定することにより、皮下組織に処置領域が達することがないことを保証することができ、また、各処置領域に送られるエネルギーを皮膚の厚さに基づいて決定することができる。例えば、表皮が厚い場合にはレーザパワー(例えば処置領域に送られるエネルギー等)を増大し、エネルギー源110と皮膚組織112との間の距離を縮小すること(またその逆)等が必要である。このようにして、処置領域が真皮内の所望の深度まで延在することを保証することができる。
【0108】
一部の非限定的な例では、イメージングシステム118は撮像センサ(例えば、CCD等とすることができるカメラの一部としての撮像センサ、3Dカメラ等)とすることができる。撮像センサは対象の1つ又は複数の画像を取得することができ、計算機106は対象の3Dボリュームを生成することができる。その後、計算機106は3Dボリューム上で回避すべき敏感領域(例えば鼠径部等)を位置特定し、3Dボリューム上でターゲットとすべきエリアを位置特定することができる。例えば、計算機106はユーザ入力装置108からユーザ入力を受け取ってターゲットとすべき3Dボリューム上の1つ又は複数のエリアをマーキングすると共に、3Dボリューム上で回避すべき1つ又は複数のエリアをマーキングすることができる。その後、計算機106は(例えば、エネルギー源110の座標系をイメージングシステム118の座標系にレジストレーションすることにより)対象の3Dボリュームをエネルギー源110にレジストレーションし、3Dボリュームのターゲットとされた領域がエネルギー114によって処置されると共に、回避すべき1つ又は複数のエリアがエネルギー114によって処置されないことを保証することができる。一部の事例では、対象の3Dボリュームについて説明したが、3Dボリュームに代えて対象の二次元ビューを用いることができる。一部の非限定的な例では、ユーザ入力装置108からの1つ又は複数のユーザ入力は、センサ116又はイメージングシステム118からのデータを表すものとすることができる。例えば、計算機106は、対象の皮膚の色、対象の皮膚の厚さ(例えば、対象の真皮の厚さを含む)等のうち少なくとも1つを表すユーザ入力を受け取ることができる。
【0109】
一部の非限定的な例では、ターゲット領域が特定された後、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータが決定された後、対象にシールド120が配置された後等を含めて、計算機106はエネルギー源110に、皮膚組織112へエネルギー114を送らせて、ターゲット領域に複数の処置領域を形成することができる。一部の事例では、計算機106は(例えばエネルギー114の領域をバーストとして用いることにより)複数の処置領域を順次形成することができる。例えば、エネルギー114の第1の領域を送ることにより複数の処置領域の第1のサブセットを形成し、その後、エネルギー114の第2の領域を送ることにより複数の処置領域の第2のサブセットを形成し、ターゲット領域全部が走査完了するまで上記を繰り返すことができる。
【0110】
一部の非限定的な例では、エネルギー114は対象の皮膚組織112の1つのターゲット領域を処置することができる。しかし他の事例では、処置システム100は複数の異なるターゲット領域を処置することができる。例えば、皮膚組織112の第1のターゲット領域に複数の処置領域を形成するために皮膚組織112にエネルギー114を送った後、処置システム100を別の位置に移動させ(例えば、ロボットアーム等によってエネルギー源110を移動させることができる)、皮膚組織112の第2のターゲット領域(例えば、第1のターゲット領域とは異なる領域)に複数の処置領域を形成するために、エネルギー源110から他のエネルギーを出力することができる。
【0111】
一部の非限定的な例では、エネルギー源110の1つ又は複数のパラメータは皮膚組織112の1つ又は複数のターゲット領域において、対象に反応を引き起こすことが可能な複数の処置領域を形成することができる。一部の事例では上記の反応は、1つ若しくは複数のターゲット領域における皮膚組織の代謝の上昇(例えば代謝の有意な上昇等)、又は処置領域を含まない皮膚組織112の別の領域(例えば、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる体肢、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる側等)における皮膚組織の代謝の上昇とすることができる。一部の事例では上記の反応は、対象の基礎代謝率の(有意な)上昇とすることができる。一部の非限定的な例では上記反応は、1つ又は複数のターゲット領域の脂肪(例えば白色脂肪組織等)の量の減少、又は処置領域を含まない皮膚組織112の別の領域(例えば、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる体肢、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる側等)の脂肪(例えば白色脂肪組織等)の量の減少とすることができる。一部の事例では上記反応は、1つ又は複数のターゲット領域の脂肪の厚さの(有意な)減少、又は処置領域を含まない皮膚組織112の別の領域(例えば、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる体肢、1つ又は複数のターゲット領域とは異なる側等)の脂肪の厚さの(有意な)減少とすることができる。一部の事例では、上記の反応は対象の脂肪の総量の(有意な)減少とすることができる。一部の事例では、上記の反応は対象の総体重の(有意な)減少とすることができ、これは、対象の総非脂肪量を(有意に)減少させずに行うことができる。一部の非限定的な例では、上記の反応は1つ又は複数の白色脂肪細胞(例えば、皮膚組織112のターゲット領域における白色脂肪細胞、又は処置領域を含まない皮膚組織の領域の白色脂肪細胞)をベージュ脂肪細胞又は褐色脂肪細胞に変換するものとすることができる。一部の事例では、上記の反応は対象におけるホルモンの濃度の(実質的な)増加であり、このホルモンはノルアドレナリンとすることができる。一部の事例では上記反応は、免疫調整成分(immune modulator)の濃度、免疫系タンパク質の濃度、炎症性タンパク質の濃度、サイトカインの(有意な)上昇とすることができ、サイトカインはIL-6とすることができる。
【0112】
一部の非限定的な例では上記の反応は、体重障害に関連する1つ又は複数の疾患(例えば肥満症、過体重等)の処置、緩和、改善等とすることができる。例えば、体重障害は1つ又は複数の疾患を引き起こす原因となり得る。よって、体重障害の(有意な)改善により1つ又は複数の疾患を改善することができる。例えば、上記の1つ又は複数の疾患は糖尿病(例えば2型糖尿病等)、インシュリン抵抗性、高血圧、心疾患、精神病、疼痛(例えば過体重又は肥満症による1つ若しくは複数の関節の疼痛等)、コレステロールの高いレベル、高トリグリセリドレベル等であり得る。よって、体重障害が(例えば脂肪の総量の減少等により)改善されると、体重障害に起因する1つ又は複数の疾患を改善することができる。
【0113】
図7は処置システム250の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム250は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム250は対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。例えば、処置システム250はロボットアーム252を備えることができ、このロボットアーム252は1つ又は複数の自由度(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7の自由度等)を有する多軸ロボットとすることができる。一部の事例では、自由度の数が特定のポイント(例えば6つの自由度等)まで増加すると、ロボットアーム252の操作性が向上し、ロボットアーム252が対象のより多くの皮膚領域に達することができる。ロボットアーム252は支持構造254(例えば、対象に対してロボットアーム252を相対的に支持することができる)と、回転可能なベース256と、当該ベース256に回転可能に結合されたアーム258と、アーム258に回転可能に結合されたアーム260と、アーム260に回転可能に結合されたアーム262と、アーム262に結合されたエンドエフェクタ264(例えばアーム262の反対側の端部に設けられている)と、を備えることができる。
【0114】
図7に示されているように、処置システム250は、エンドエフェクタ264に結合可能な(あるいは、例えば他の態様でエンドエフェクタ264に統合された)エネルギー源266を備えることができる。しかし他の代替構成では、エネルギー源266をロボットアーム252の別の箇所に結合することもできる。テーブル270上で対象268を支持することができ、このテーブル270はロボットアーム252の隣とすることができる。一部の非限定的な例では、処置システム250の計算機が対象268の皮膚組織にエネルギーを送るようにロボットアーム252とエネルギー源266とを制御することができる。例えば計算機は、(例えば走査ルーティンに従って)対象268の皮膚組織の1つ又は複数のターゲット領域を処置するための走査ルーティン(例えば上記の走査ルーティン)を決定すること、受け取ること等が可能である。かかる構成によって計算機は、走査ルーティンに従って対象268の皮膚組織における複数の処置領域を形成するための当該走査ルーティンを実現することができる。これには例えば、計算機がロボットアーム252とエネルギー源266(例えばロボットアーム252に結合されたエネルギー源266等)とを第1のターゲット領域に移動させることと、第1のターゲット領域においてロボットアーム252を停止させることと、(例えばロボットアームが停止した状態で)エネルギー源266からエネルギー272を第1のターゲット領域に送ることと、ロボットアーム252とエネルギー源266とを(例えば第1のターゲット領域と異なる)第2のターゲット領域に移動させることと、第2のターゲット領域においてロボットアーム252を停止させることと、(例えばロボットアームが停止した状態で)エネルギー源266からエネルギー272を第2のターゲット領域に送ることと、を有することができ、対象268の所望のターゲット領域全ての処置が完了するまで上記を繰り返すことができる。
【0115】
図8は処置システム300の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム300は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム300も対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。処置システム300は支持構造304と、当該支持構造304に結合された(例えば、支持構造304の一端に結合された)エネルギー源302と、を備えることができる。支持構造304はベース306(これは例えば、ケーブル308又は光ファイバ等を介してエネルギー源302にパワーを供給するためのパワー源を備えることができる)と、複数のリンケージと、を備えることができ、これらのリンケージはロック可能とすることができる。例えば、各リンケージ310がそれぞれロック(例えば、回転してリンケージの回転をロックすることができ、また、逆方向に回転してリンケージの回転を許容するロック等)を備えることができる。かかる構成により、ユーザはリンケージがロック解除した状態でエネルギー源304を所望の位置に動かし、その後、リンケージ310をロックして、エネルギー源304の上記の所望の位置をロックすることができる。
【0116】
図9は処置システム350の概略図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム350は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム350も対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。処置システム300と同様に、処置システム350は支持構造352と、当該支持構造352に結合されたエネルギー源354と、を備えることができる。支持構造352はベース356と、当該ベース356に結合可能なユーザ入力装置358(例えばタッチスクリーン等)と、患者に対して相対的にエネルギー源354を支持するためにロック可能とすることができる複数のリンケージ360と、を備えることができる。一部の事例では支持構造352は、対象に対して支持構造352を相対移動するための1つ又は複数のホイール、スライド等を備えることができる。
【0117】
図10Aは処置システム400の概略図の側面図であり、
図10Bは処置システム400の概略図の正面図である。処置システム400は処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム400は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム400も対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。処置システム400は、対象404を支持可能なテーブル402と、スライド406と、当該スライド406に結合されたエネルギー源408と、スライド406(及びテーブル402)に結合されたアクチュエータ410と、を備えることができる。アクチュエータ410は回転アクチュエータ(例えばモータ等)、リニアアクチュエータ等とすることができ、テーブル402に沿って第1の方向と、当該第1の方向とは逆の第2の方向とにスライド406(ひいてはエネルギー源408)を移動させる構成とすることができる。かかる構成により、エネルギー源408を対象404の複数の異なる領域とアライメントさせて、エネルギー源408からのエネルギー412を対象の異なる領域に送ることができる。
図10Bに示されているように、スライド406の移動の第1の方向と第2の方向とに実質的に垂直な方向414に沿ってエネルギー412を対象に向けて放出することができる。一部の事例では、
図10A及び
図10Bのスライド406の構成は対象の側面をターゲットとすることができ(例えば、対象が仰向けに横たわっている場合等)、又は対象の別のポジションで他の表面をターゲットとすることができる。
【0118】
図11Aは、スライド406の他の一代替構成の正面概略図である。この構成ではスライド406は、長手方向に第1の方向(例えばスライド406の移動方向に対して実質的に垂直な方向等)に沿って延在する第1の領域416と、長手方向に第2の方向(例えば、スライドの移動方向に対して実質的に垂直であると共に、第1の領域416の長手方向の延在方向に対して実質的に垂直な方向等)に沿って延在する第2の領域418であって第1の領域416に結合された第2の領域418と、を有する。
図11に示されているように、エネルギー源420を第2の領域418に結合することができる。かかる構成により、第2の領域418及びエネルギー源420を対象の上方に位置決めして、エネルギー源420から出力されたエネルギー422を対象に向けて下方向に、方向424(例えば、スライド406の移動方向に対して実質的に垂直な方向等)に沿って送ることができる。
【0119】
図12は処置システム450の概略図の側面図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム450は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム450も対象の大きな範囲をカバーすることができ、これは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得るものである。処置システム450は台部と、レーザその他の光エネルギー源と、台部上に横たわる対象に光エネルギーを送るように構成された光学配置体と、を備えることができる。
【0120】
台部の少なくとも一部は、例えばガラス又は特定のプラスチック等の光学的に透明な物質により作製することができる。使用の際には、対象は台部上に横たわることができる。光学配置体は、台部の光学的に透明な領域に光エネルギーの複数のビームを通して対象の背中の領域に送る構成とすることができる。かかるエネルギーは、対象の皮膚に熱損傷又は剥離のフラクショナルパターンを生じさせるために送ることができる。
【0121】
一部の非限定的な例では、台部と対象の皮膚との間にグリセリン等の光透過物質を設けることができる。この物質は台部上に設けることができ、又は処置前に処置領域に局所的に適用することができる。かかる物質が存在することにより、屈折率の不整合や変化を低減することができ、これにより光学配置体と皮膚との間の光路を改善することができる。例えば、送られる光エネルギーの反射及び/又は散乱を低減して、光エネルギーがより集束した状態に留め、表面散乱等の現象で失われるエネルギーを減少することができる。
【0122】
一部の非限定的な例では、上記の物質は鎮痛性、麻痺性、又はアナルジェシック(analgesic、痛み緩和)化合物を含むことができる。このような化合物は、光エネルギーが対象に印加される間に知覚され得る疼痛又は不快感の程度を低減することができる。
【0123】
他の非限定的な例では、照射されている皮膚領域の冷却又は事前冷却を設けることができる。かかる冷却は例えば、レーザ露光前に冷却された物体(例えば事前冷却又はアクティブ冷却されたプレート又は材料のブロック等)に皮膚表面を接触させること、及び/又はスプレー冷却等によって実現することができる。
【0124】
非限定的な一例では光学配置体は、離隔した複数の光ファイバの1つ又は複数の行を備えることができ、かかるファイバの端部を、台部上に横たわる対象の皮膚に向けることができる。かかるファイバを用いて、これを導光体として働かせて、レーザ又は光エネルギー源から皮膚に光エネルギーを送ることができる。オプションとして小さいレンズを使用して、ビーム径を約1mm以下の幅に削減することができる。
【0125】
一部の非限定的な例では、光学配置体に直進構成体を設けて、台部に沿った1つ又は2つ方向であって台部の下表面に対して平行な1つ又は2つの方向に光学配置体を走査することができる。例えば、配置体の1つ又は複数の行の光ファイバへのエネルギーはパルス波形とすることができ、かかるパルス波形のエネルギーを送る間に(例えば各パルス間で)光学配置体を直進移動させて、対象の皮膚に印加される光エネルギーのフラクショナルパターンを生成することができる。
【0126】
一部の非限定的な例では、対象の特定の領域にわたって光学配置体をx方向及び/又はy方向に複数回直進移動させることにより、所望の密度又はフラクショナル表面カバレッジを有する送出エネルギーのフラクショナルパターンを生成することができる。
【0127】
他の非限定的な例では、対象の皮膚の領域にわたって1つのシングルレーザスポットをパルスとして走査することによりフラクショナル損傷パターンを生成することができるが、かかるシングルスポットの直進移動は、複数の光ファイバ又は他の導光体を用いてエネルギーを同時に印加する場合と比較して処置時間が長くなることがある。
【0128】
さらに他の非限定的な一例では、台部は1つ又は複数の切欠領域(例えば1つ又は複数の孔等)を有することができ、また、光学配置体がこの切欠領域の中で対象の皮膚表面に直接接触するように構成することができる。その際にも、光学配置体は1つのシングルパルスエネルギービーム、又はビームの一次元若しくは二次元アレイを用いることができ、このアレイは複数の導光体によって生成することができる。
【0129】
かかる非限定的な一例により、対象を横向き又はうつ伏せに配して、皮膚表面の他の領域を光エネルギーによって処置して、皮膚の大きな領域にわたって熱損傷及び/又は剥離のフラクショナルパターンを生じさせることができる。
【0130】
さらに他の非限定的な一例では、ここで記載されている光学配置体を対象の上下両方に同時に設けて、身体の正面及び背面の領域にエネルギーのフラクショナルパターンを同時に照射可能とすることができる。また、身体の2以上の別個の領域を同時に処置する場合、個々の損傷領域の間隔は、美容フラクショナル処置において通常設けられる間隔より大きくすることができる。例えば、処置中に順次又は同時に生成される複数の熱外傷スポット間の間隔は約0.5cm又は1センチメートルとすることができる。このような間隔の損傷は十分に許容可能であり、同時又は略同時の損傷部位を互いに格段に近付けて生成するフラクショナル処置と比較して疼痛の程度を小さくすることができる。例えば、美容フラクショナル処置の施術中、典型的には約1mm未満離隔した同時損傷部位が形成される。1つの領域においてフラクショナル損傷を複数回繰り返し行うことにより、局所的な面積カバレッジを大きく達成することができる。熱損傷技術を用いる非限定的な例では、個々のスポット間の間隔を広幅にすることにより、より局所化した冷却を容易にし、同一領域において行われる次回以降の繰り返しの前に皮膚組織の熱的な回復を容易にすることもできる。このようにして、不所望な熱発生を回避して処置領域における損傷を回避しつつ、疼痛及び不快感を軽減することができる。
【0131】
図13は処置システム460の概略図の側面図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム460は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム460も対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。処置システム460は剛性又は半剛性のスリーブ構成体と、レーザその他の光エネルギー源と、光学配置体と、を備えることができる。このスリーブは2以上の丸みを帯びたセクションを有することができ(例えば、これらのセクションは互いに回転可能に結合されている)、これらのセクションは、対象の体肢(例えば腕又は脚等)、胴部等を含めた対象の領域まわりを少なくとも部分的に囲うように構成されている。スリーブにはヒンジ及び固定具(例えばフレキシブル又は調整可能な固定具等)を設けることができ、これにより腕又は脚の少なくとも一領域にスリーブを被せて取り付けられるように(例えば、脚をスリーブの内側に入れた状態で、固定具を用いてスリーブをロックできるように)することができる。スリーブの少なくとも一部は、例えばガラス又は特定のプラスチック等の光学的に透明な物質により作製することができる(又は、光学配置体若しくは光エネルギー源を受けるための孔をスリーブの領域に開けることができる)。一部の非限定的な例では、体肢の寸法及び/又は形状によりフィットするように、スリーブの少なくとも一領域を曲げ可能又はフレキシブルとすることができる。
【0132】
使用の際には、スリーブは対象の体肢の少なくとも一領域に被せられて固定されることができる。光学配置体は、スリーブの光学的に透明な領域に光エネルギーの複数のビームを通して対象の体肢の領域に送る構成とすることができる。かかるエネルギーは、対象の皮膚に熱損傷又は剥離のフラクショナルパターンを生じさせるために送ることができる。
【0133】
スリーブと対象の皮膚との間にグリセリン等の光透過物質を設けることができ、これにより、上記のように光学配置体と皮膚との間の光路を改善することができる。一部の非限定的な例では上記の物質は、施術中に知覚され得る不快感の程度を低減するための鎮痛性、麻痺性、又はアナルジェシック化合物を含むことができる。
【0134】
一部の非限定的な例では、光学配置体は光ファイバその他の光放出要素の一次元又は二次元アレイを含むことができる。かかる配置体は例えば、スリーブの外表面にフィットするように円柱形状を凹にへこませた断面を有するように構成することができる。より一般的には、光学配置体はスリーブの少なくとも一領域において長手方向及び/又は回転方向に直進移動する構成とすることができる。光エネルギー源からのパルス光と直進速度及びパターンと、光放出要素間の離隔とを組み合わせることにより、処置される体肢の皮膚において熱損傷又は剥離のフラクショナルパターンを生じさせることができる。オプションとして、皮膚の1つの領域において光学配置体を複数回直進移動させることにより、照射される組織のより大きな表面フラクションを有する損傷のより高密度なパターンを生成することができる。
【0135】
一部の非限定的な例では、光学配置体の方向を特定の経路に沿わせるために、スリーブに長手方向及び/又は周方向ガイド又はトラックを設けることができる。かかるガイド又はトラックによって、長手方向及び/又は周方向に光学配置体を一様に直進移動させやすくし、生成されるフラクショナル照射パターンの制御性の向上を図ることができる。
【0136】
他の非限定的な例では、対象の体肢の領域にわたって1つのシングルレーザスポットをパルスとして走査することによりフラクショナル損傷パターンを生成することができるが、ここでも、かかるシングルスポットの直進移動は、複数の光ファイバ又は他の導光体を用いた場合と比較して処置時間が長くなることがある。
【0137】
さらに他の非限定的な例では光学配置体は、スリーブの少なくとも1つの領域において手で直進移動されるハンドヘルド装置であって輪郭にフィットする形状の(contoured)ハンドヘルド装置として設けることができる。このようにして、かかる直進移動中に光学配置体を介して皮膚にパルスエネルギーを送ることにより、照射のフラクショナルパターンを生成することができる。
【0138】
一部の非限定的な例では、スリーブを省略して、対象の皮膚の複数の異なる領域において光学配置体を手動で直進移動させやすくするための輪郭にフィットする形状の又はフレキシブル面を光学配置体に設けることができる。
【0139】
上記のいずれかの非限定的な例では、光学配置体に方向センサ、位置センサ、速度(speed)センサ及び/又は速さ(velocity)センサを設けることができ、かかるセンサは、対象の皮膚に対する光学配置体の相対的な方向、位置及び/又は速度を検出する構成とすることができる。かかるセンサは、光エネルギー源の制御構成体に結合することができる。例えば、光エネルギー源から出力されるパルスレート及び/又はパルスエネルギーの少なくとも一部を、検出した速度又は位置変化によって制御することができる。かかる構成により、光学配置体を手動で直進移動させ、その直進移動速度/方向が正確に一定でなくても、皮膚の領域にわたって実質的に一様なパターン又は密度の熱損傷を生成することができる。皮膚の特定の領域において光学配置体を複数回直進移動させる際に、上記のようなセンサを用いて適切なパルス持続時間及びパルス間隔を提供することもできる。処置対象でない領域(例えば口唇、眼、着色領域等)を検出するために、撮像及び/又は位置センサを設けることもできる。装置のユーザがグラフィカルインタフェースを介して特定の処置領域(及び/又は処置対象でない領域)を指定できるように、またオプションとして、既に処置された領域の所望のレベルの再処置を行いやすくするため、オプションのコントロールシステム及びインタフェースを設けることもできる。
【0140】
さらに他の非限定的な例では、発色団を用いて、皮膚に対するフラクショナル損傷を生じさせることができる。かかる非限定的な例では、皮膚組織の領域に発色団のフラクショナルパターンを適用することができる。この発色団の適用後、全領域を適切な波長の光に露光することができる。かかる光は発色団を含む箇所に選択的に吸収されることができ、これにより発色団処置されたスポットに熱損傷を生じさせると共に、かかるスポット間の皮膚領域の健康な組織は比較的無損傷に維持することができる。生体組織に光を選択的に吸収させるために発色団と光エネルギーとを併用する一般的な使用は従来技術において公知であり、かかるシステムを本願開示の非限定的な例において使用することができる。
【0141】
他の非限定的な例では、身体の領域に超音波エネルギーのパターンを、不連続又はフラクショナルパターンで印加することができる。超音波をこのように印加することにより、無損傷の健康な組織に包囲された熱損傷を受けた組織の小さい領域を生成することができる。
【0142】
一部の非限定的な例では、皮膚へのフラクショナル損傷を機械的に生じさせることができる。例えば、ニードルのアレイを皮膚に繰り返し貫通させて、影響を受けない組織により包囲された小さい別個の負傷した領域を生じさせることができる。ニードルは中実のニードル又は中空の「芯抜き」ニードルのいずれかとすることができ、この芯抜きニードルはさらに皮膚組織の小領域を除去することもできる。
【0143】
さらに他の非限定的な例では、1本のニードル又はニードルのアレイに高周波(「RF」)エネルギーを印加して用いることにより、皮膚組織にフラクショナル組織損傷を生じさせることができる。かかる非限定的な例では、ニードルは電極として働くことができ、ニードルに隣接する組織に送られたRFエネルギーはこの局所組織に熱損傷を引き起こすことができる。組織に損傷を生じさせるためにニードルにより送られるRFエネルギーの一般的な使用は従来技術において公知であり、所望の程度の局所的な組織損傷を生じさせるために必要なRFエネルギーパラメータは周知で確立されている。
【0144】
図14は処置システム470の概略図の側面図であり、これは処置システム100の特殊な一実施態様となり得る。よって、処置システム470は処置システム100に関連するもの(及びその逆)である。処置システム470も対象の大きな範囲をカバーすることができ、このことは、所望の代謝反応又は対象の代謝機能に関連する反応を引き起こすために重要となり得る。処置システム470はハウジング472と、当該ハウジング472に結合されたハンドル474(あるいはハウジング472に結合された把持部)と、ハウジング472に結合されたエネルギー源476と、ハウジング472に結合されたユーザ入力装置478と、を備えることができる。一部の非限定的な例では、ユーザはハンドル474によってエネルギー源476を対象の複数の異なる箇所に移動させて、皮膚組織の複数の異なる領域を処置することができる。このようにして、ユーザがエネルギー源476を複数の異なる箇所に移動させることができるように処置システム470を扱うことができる。さらに、処置システム470がユーザ入力装置478からユーザ入力を受け取ると、エネルギー源476はエネルギーを送って皮膚組織に複数の処置領域を形成することができる。
【0145】
一部の非限定的な例では、処置によりカバーされる総皮膚面積の割合は、いわゆる「9の法則」を用いて推定することができ、この9の法則はしばしば、熱傷被害により生じた皮膚損傷の程度を推定するために使用されるものである。
図15に9の法則をグラフィックで示している。例えば、頭部及び頸部全部の面積は総体表面積の約9%を占める。他の部位の割合は、右腕全部又は左腕全部はそれぞれ約9%、胴部前側(frontal/anterior)全部は約18%、胴部背側(rear/posterior)全部は約18%、右脚又は左脚全部はそれぞれ約18%、鼠径部面積は約1%である。
【0146】
よって、これらの近似的な割合に基づくと、最大でも顔及び頸部の部分をカバーする典型的な美容フラクショナルリサーフェイシング処置が総皮膚面積のうち処置する部分は約5%未満となることが分かる。それとは対照的にフラクショナル損傷処置は、例えば胴部前側全部、胴部の背中全部、両腕、片方の脚、両足の前側、又は両脚の背側等を処置することにより、総皮膚面積の約20%超に及ぶことができる。美容処置で用いられる処置領域より格段に大きい上記の処置領域は、ここで記載されている総組織損傷に対する全身性反応を生じさせるために必要とされる。
【0147】
よって本願では、対象の皮膚の大きい領域、例えば総皮膚面積の約20%超において機械的損傷、熱損傷及び/又は剥離のフラクショナルパターンを生じさせることができる方法例及び装置例を開示している。使用する具体的なモダリティに依存して、上述のような組織損傷は皮膚表面から皮膚組織内部まで延在することができ、又は、(例えば超音波又は非剥離性集束光エネルギーを用いる場合)損傷の大半又は全部が皮膚表面の下方に存在することができる。処置対象の領域は美容フラクショナル処置で処置される領域より格段に大きくすることができ、また、身体の例えば胴部や体肢等の複数の異なる部分において実施することができる。
【0148】
このような大きい規模のフラクショナル処置によって代謝率の強化を実現することができると共に、身体において多くの所望の変化を生じさせることができ、例えばインシュリン抵抗性の改善、メタボリックシンドローム状態の改善(例えば血圧低下、高血糖の低減、コレステロール及び/又はトリグリセリドレベルの改善等)、ウェスト周りの減少、認知機能の改善等を生じさせることができ、なおかつ、一般に深刻な熱傷に起因する外傷や合併症を回避することができる。主な効果として、上述のような高代謝状態により、集中的な運動や食事制限法を要することなく順調に体重減少を実現することができる。
【0149】
図16は、対象の代謝の上昇、対象の体重障害の改善、体重障害に関連する1つ又は複数の疾患の改善、対象の脂肪の総量の減少、対象の総重量の減少等のうち少なくとも1つのプロセス500のフローチャートである。プロセス500は、適宜上記のいずれかの処置システムを用いて実現することができる。さらに、プロセス500は適宜、1つ又は複数の計算機を用いて実現することもできる。
【0150】
プロセス500は502において、計算機がユーザ入力装置から、(例えば処置を実施しようとしているユーザから)1つ又は複数のユーザ入力を受け取ることを含むことができる。一部の事例では、ユーザ入力は対象の1つ又は複数のパラメータを示すものとすることができ、この1つ又は複数のパラメータには、使用されるエネルギー源の種類(例えば光源、超音波源、RF源、熱機械的源等)、ターゲット領域の数、各ターゲット領域の対応する位置、処置領域の密度(例えば、1つのターゲット領域の総表面積に対する当該1つのターゲット領域の全ての処置領域の総処置面積等)、各処置領域の寸法(例えば幅、深度等)、1つのターゲット領域の表面積、全てのターゲット領域を合わせた表面積(例えば、対象のBSAの領域に対応する)、対象における回避すべき皮膚組織の領域(例えば対象の敏感領域)等が含まれ得る。
【0151】
504において、プロセスは、計算機が1つ又は複数のセンサからセンサデータを受け取ること、1つ又は複数のイメージングデバイス(又はイメージングシステム)からイメージングデータを受け取ること等を含む。一部の事例ではこれは、距離センサからのエネルギー源と皮膚組織との間の距離を含むことができる。一部の事例では、これはイメージングデータを含むことができ、計算機はこのイメージングデータを用いて、(例えば対象の表面積を求めるために)対象の3Dボリュームを生成することがえできる。一部の構成では、これは(例えばカメラ等の)撮像センサから画像を受け取ることを含むことができ、計算機はこの画像を用いて対象の皮膚の色を求めること、(例えば所望のターゲット領域における)体毛の密度を求めること、(例えば所望のターゲット領域における)体毛の粗さ(coarseness)を求めること等が可能である。一部の非限定的な例ではこれは、計算機がイメージングデータ(例えば超音波イメージングデータ等)を受け取ることと、このイメージングデータを用いて皮膚の厚さを求めることと、を含むことができる。
【0152】
プロセス500は506において、計算機がエネルギー源(又は処置システム)の1つ又は複数のパラメータを決定することを含むことができる。一部の事例では、1つ又は複数のパラメータは1つ又は複数の所望の特徴に基づいて決定することができ、この1つ又は複数の特徴には例えば、使用されるエネルギー源の種類(例えば光源、超音波源、RF源、熱機械的源等)、ターゲット領域の数、各ターゲット領域の対応する位置、処置領域の密度(例えば、1つのターゲット領域の総表面積に対する当該1つのターゲット領域の全ての処置領域の総処置面積等)、各処置領域の寸法(例えば幅、深度等)、1つのターゲット領域の表面積、全てのターゲット領域を合わせた表面積(例えば、対象のBSAの領域に対応する)、対象における回避すべき皮膚組織の領域(例えば対象の敏感領域)等が含まれ得る。例えば、計算機は上記の1つ又は複数の所望の特徴を(例えば1つ又は複数の対応する入力等として)受け取り、この1つ又は複数の所望の特徴に基づいて1つ又は複数のパラメータを決定することができる。一部の事例では上記の1つ又は複数のパラメータは、エネルギー源から送られるエネルギー(例えばレーザのパルスのパルス幅、パルスの振幅等)、1つのレーザビームを分割して得るべきレーザビームの数(例えば、各レーザビームは各処置領域に対応する)、エネルギー源と皮膚組織との間の距離、レーザのフルエンス、各個別のレーザのビーム幅、エネルギー(例えばレーザビーム等)の印加持続時間、レーザのレイリー範囲、焦点サイズ、エネルギー(又はエネルギー源に供給される電気信号)の波長、(例えば、特定のピン、電極を電気的に励起することにより、特定のピンを電気加熱することにより、又は特定のレーザビームをブロックして他のレーザビームを通すこと等により)送られるエネルギーのパターン、レーザの波長等、とすることができる。
【0153】
一部の非限定的な例では、計算機は画像を用いて対象の1つ又は複数の皮膚特徴を決定することができ、この皮膚特徴は、体毛の密度、体毛の粗さ等を含むことができ、また計算機は、1つ又は複数の皮膚特徴に基づいて1つ又は複数のパラメータ(例えば皮膚組織に送られるエネルギーの量等)を決定することができる。例えば、体毛量の密度が高く、体毛が粗いほど、(例えば体毛は皮膚組織と比較してエネルギーの一部を吸収するため)各処置領域を形成するために必要なエネルギーが多くなることがあり、またその逆もあり得る。一部の事例では、計算機は対象の総表面積を求め、この対象の総表面積を用いて所望の総処置面積を決定することができる。例えば、対象の3Dボリュームを使用して総表面積を求めることができ、又は例えば対象の体重を受け取り、当該対象の体重を用いて総表面積を求めること等によって方程式(例えばMeeh方程式等)を用いることができる。一部の事例では、計算機は求めた総表面積(又は、例えばユーザ入力等から受け取った総表面積)に基づき、例えば総表面積に所望の乗数(例えば20パーセント、30パーセント等)を乗じること等により、所望の総処置面積を決定することができる。その後計算機は、例えば所望の位置を示すユーザ入力等を用いて(例えば、ユーザは1つ又は複数のターゲット領域の位置を選択することができる)、所望の総処置面積を満足する1つ又は複数のターゲット領域を特定することができる。
【0154】
プロセス500は508において、計算機がエネルギー源を対象の皮膚組織のターゲット領域に移動させることを含むことができる。一部の事例ではこれは、計算機が対象の皮膚組織のターゲット領域に、又はこれらの付近等に、エネルギー源を移動させることをロボットアームにさせることができる。
【0155】
プロセス500は510において、計算機がエネルギー源を用いて1つ又は複数のパラメータに応じてエネルギーをターゲット領域に送ることにより、皮膚組織のターゲット領域に複数の処置領域を形成することができる。一部の事例では、これはエネルギー源が静止している間(例えばブロック508で移動した後等)に行うことができ、例えばエネルギー源は、皮膚組織のターゲット領域に全ての複数の処置領域を同時に形成するようにエネルギーを送る。他の事例では、皮膚組織にターゲット領域の処置領域の一サブセットを形成した後に、エネルギー源508を移動させることができる。例えば、計算機はエネルギー源を第1の箇所に移動させ、当該エネルギー源が静止した状態で皮膚組織のターゲット領域に複数の処置領域の第1のサブセットを形成するようにエネルギー源に第1のエネルギーを送らせ(例えばこれにより処置領域の第1の行を形成する)、エネルギー源を第2の箇所に移動させ、当該エネルギー源が静止した状態で皮膚組織のターゲット領域に複数の処置領域の第2のサブセットを形成するようにエネルギー源に第2のエネルギーを送らせ(例えばこれにより処置領域の第2の行を形成する)、皮膚組織のターゲット領域に全ての所望の処置領域が形成完了するまで上記を繰り返すことができる。
【0156】
プロセス500は512において、全てのターゲット領域が処置完了したか否かを計算機が判定することを含むことができる。ブロック512において全てのターゲット領域が処置完了したと計算機が判定した場合、プロセス500はブロック514に進むことができる。しかし、全てのターゲット領域が処置完了していないと計算機が判定した場合、プロセス500はブロック508に戻ってエネルギー源を他のターゲット領域(例えば別の処置領域等)に移動させ、その後当該他のターゲット領域にエネルギーを送ることができる。
【0157】
プロセス500は514において、処置が完了したことを含むことができる。一部の非限定的な例ではプロセス500は、対象の代謝の上昇(例えば対象の基礎代謝率の上昇、対象の皮膚組織の代謝の上昇等)、対象の体重障害の改善(例えば対象の脂肪の総量の減少、対象の皮下領域を含む1つ又は複数の領域の脂肪の減少、対象の皮下領域を含む1つ又は複数の領域の脂肪の厚さの減少等)、体重障害に起因する1つ又は複数の疾患の改善(例えばインシュリン抵抗性の減少、血圧低下、血糖値低下、コレステロールレベルの減少、トリグリセリドレベルの低下、心疾患の改善、精神病障害の改善、疼痛の減少(例えば対象の1つ又は複数の関節等の疼痛の減少等)を含み得る。
【0158】
一部の非限定的な例では、プロセス500を数日後(例えば1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後等)に繰り返すことができる。例えば、数日後(例えば3日後、7日後等)に処置領域が治癒し、(例えばこの処置領域が治癒したこと等により)代謝率(例えば基礎代謝率等)の一時的な上昇が沈静化した。他の非限定的な例では、代謝率の上昇がピークを迎えて減少し始める数時間後(例えば10時間後、12時間後等)に、プロセス500を繰り返すことができる。例えば、プロセス500の次の繰り返しは別のターゲット領域をターゲットとすることができる。換言すると、プロセス500の最初の実施のターゲット領域は全て、プロセス500の2回目の繰り返し実施のターゲット領域のいずれとも異なることができる。このようにして、過度に間を置かずに同じターゲット領域を何回もターゲット領域とすることがなくなる。そうしないと、これにより当該同じターゲット領域における処置領域の適度な治癒の妨げとなり得る。
【0159】
<実施例>
下記の実施例は、本願開示の態様をさらに詳細に説明するために示したものであり、本願開示の範囲の如何なる限定も意図していない。下記の実施例は本願開示の例であることを意図したものであり、これら(及び本願開示の他の側面)は理論的に拘束されるべきものではない。
【0160】
[実施例1]
皮膚の大面積(例えば、対象の総体表面積の30%以上等)をフラクショナルレーザにより露光すると、代謝上昇及び体重減少が生じる。大面積露光を実現するための装置は、ベッド(例えば日焼け用ベッドに類するもの等)に統合されたレーザ、体肢を包囲する装置、胴部を包囲する装置等を備えている。これらの装置は種々のレーザ送光システムとして構成することができ、これらのレーザ送光システムには、身体まわりでレーザ光源を物理的に(例えばロボット等により)移動させる走査レーザ、又は、複数の小さい走査パターン若しくは数百個のファイバを有する多重ファイバレーザ(multiplexed fiber lasers)であって、各ファイバがそれぞれ露光用の1つのレーザビームを提供し、レーザ光源がエネルギーを送るために使用するファイバを交互に変える多重ファイバレーザが含まれるが、これらに限定されない。重度の熱傷を受けた患者に回復中に生じる体重減少は、傷の治癒により生じる代謝上昇に起因する可能性があるとの認識が得られている。フラクショナルレーザは小さい微小傷を生じさせ、本願の非限定的な例は、広範な組織損傷や重度の熱傷患者に見られるようなネガティブな全身性反応を引き起こすことなく全体的な代謝率の上昇を実現するための改良した傷治癒環境を創出することができる。皮膚の大きな面積をフラクショナル処置で露光して代謝に作用を及ぼすことや、そのように動作するよう設計された装置は、これまで創出されていなかったと考えられる。例えば、従来のフラクショナル処置は一般的に、顔を含めた身体の格段に小さい領域に適用されるものであり、総皮膚面積の10%以下を含む瘢痕領域がフラクショナルレーザ処置で露光される。ここでの研究により、皮膚の略30%以上をフラクショナルレーザに露光させると、脂肪中のUCP-1信号により証明されるように代謝上昇を達成することができると共に、ノルアドレナリンレベルの上昇も実現することができ、また、(例えば、筋肉塊を含めた非脂肪塊(lean mass)をターゲットとすることなく)体重減少も実現できることが判明した。皮膚の30%以上をフラクショナルレーザに露光することにより体重減少を引き起こしたり代謝を調整する等の方法は、従来知られておらず、また実現等もされていないと考えられる。このような皮膚の大面積露光を実現できる装置には、レーザ露光のフラクショナルパターンを与えるために身体まわりを移動できるロボティックレーザ、レーザが統合された日焼け用ベッドに類する装置を含むことができ、上記の統合されるレーザは、装置内部を動き回って皮膚の大面積にフラクショナルレーザを印加するファイバレーザを含むことができるが、これに限定されない。
【0161】
新たな研究は、マウスの体重減少のために設計されたものであった。その第1の目的は、大面積フラクショナルレーザ治療によるマウスの体重減少を示すことであり、第2の目的は効果の程度を評価するために線量測定法で調査することであった。マウスモデルC57BL/6のマウスに高脂肪食を4週間与えて、研究用の過体重のマウスを準備した。以下のパラメータは、8匹の対照マウスに係る体面積カバレッジ、レーザ密度を含む試験した各種パラメータと、剥離性と非剥離性との比較である。
【0162】
[実施例2]
図17は、融合性レーザ処置及びフラクショナルレーザ処置のコンセプトを示すグラフィック表現図である。濃い色のゾーンは熱損傷されたエリアを示す。いずれの場合にも、レーザ処置によりカバーされる総面積は同じ(25%)であるが、処置の結果は顕著に異なることが見込まれる。レーザ設定が同じであるが影響を受けない組織を間に挟んだパターンを使用するフラクショナル光加熱分解(右)は、副作用が低減し、かさぶたや線維症を形成することなく傷治癒を引き起こす。
【0163】
以下の実施例では、マウスに処置を行った。例として、生後22週のオスのC57BL/6Jマウス(N=5+3)を使用した。CO2レーザを使用して各マウスの背中に剥離フラクショナル光加熱分解(「aFP」)を提供した。これは、各マウスの体表面積の約30%をカバーし、各処置領域に送られたエネルギーは20mJ、処置領域の密度は10%であった。5日間のモニタ期間を設け、Δ体重(すなわち体重変化)を分析し、IL-6マーカを分析して、カテコールアミンレベルを分析し、各マウスの肝臓を評価した。
【0164】
【0165】
本実施例では、生後16週及び22週のオスのC57BL/6Jマウス(N=8+8)に対し、その特異群に従って処置を行った。CO2レーザを用いて各マウスの背中にaFP露光を行い、これはBSAの約30%をカバーするものであった(E=17mJ、10%)。EchoMRI(米国テキサス州ヒューストン)を用いて、NMR支援体組成分析を行った。げっ歯類分析用のプロメシオン高精細多重化呼吸測定システム(Promethion High-Definition multiplexed respirometry system、米国ネバダ州ラスベガス、Sable Systems社より販売)を用いた6日間のモニタ期間を設けた。上記のプロメシオン(Sable Systems社)を用いて代謝定量化を行った。
【0166】
図19は、処置領域あたり35mJかつ11%の(処置領域の)密度で対象の片方の脚に非剥離FP(「nFP」)を施したものと、処置領域あたり20mJかつ15%の(処置領域の)密度で当該対象のもう片方の脚に剥離FP(「aFP」)を施したものの写真である。この写真は、処置後2日目に撮影されたものである。
【0167】
図20は、
図19の対象の両脚の陽電子放出断層撮影(「PET」)画像である。
【0168】
本実施例にて示すように、nFP及びaFPは皮膚のベースライン代謝率(「BMR」)を強化することができ、FPにより皮膚のベースライン代謝率を変化させることができる。大面積FPは、体重管理のためのアジュバントとなる可能性を有する。
【0169】
[実施例2]
下記の実施例は、マウスの代謝に対する大面積フラクショナル光加熱分解処置の効果を示すものである。
【0170】
本実施例では、生後22週のオスのC57BL/6Jマウスを使用した。これら8匹のマウスの大きな体表面積(≒30%)にフラクショナルレーザ処置を行った。処置領域の密度は10%密度であり、1パルスあたり17mJを送った(例えば、各処置領域を形成するために各個々のレーザビームは17mJであった)。無処置マウスとして8匹のマウスを使用した。本実施例の結果において代謝の上昇が見られ、これはプロメシオンシステムを用いて測定された。
【0171】
本実施例の各図から、4~7日間にわたって正規化したレーザ処置後12~約72時間経過後のエネルギー使用に明らかな違いが生じ、体重や体組成に有意な変化は無かったことが分かる。
【0172】
[実施例3]
図21は、体重に対する体表面積(「BSA」)に対する体重のグラフであり、(例えばMeeh方程式等を用いて)フィッティングされた関数を共に示す。Meeh方程式は以下の通りである:
BSA=k*体重
0.667 (1)
【0173】
Meeh方程式中、kは各種ごとに経験的に求められるものであり、BL6マウスの場合にはk=10である。よって、体重30gのマウスのBSAは95cm
2となる。10%の密度で処置領域は20cm
2となった(例えば、95cm
2のうちの20cm
2は、21%の処置領域となる。10%の密度では、絶対的な処置面積(「ATSA」)は2.1%である。
表2は実験スケジュールを示す。
【表1】
【0174】
表2は、各種実験の実験スケジュールを示しており、その結果は以下の各図に示されている。
【0175】
図22は、6つのグループにおけるエネルギー総消費量のグラフと、当該6つのグループにおける水総消費量のグラフと、を示す図である。
【0176】
図23は、6つのグループにおけるエネルギー総消費量のグラフと、当該6つのグループにおける水総消費量のグラフと、を示す図である。
【0177】
図24は、6つのグループの処置前及び処置後における1日の平均エネルギー消費量のグラフである。
【0178】
図25は、6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【0179】
図26は、6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【0180】
図27は、6つのグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【0181】
図28は、6つのグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【0182】
図29は、6つのグループの第1のセット及び6つのグループの第2セットの1日の平均のエネルギー消費量の棒グラフである。左側の棒は6つのグループの第1のセット(「1」で示す)に対応し、右側の棒は6つのグループのうち第2のセット(「2」で示す)に対応する。
【0183】
図30は、6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【0184】
図31は、6つのグループのエネルギー消費量の時間推移のグラフである。
【0185】
図32は、10のグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【0186】
図33は、10のグループのエネルギー総消費量の棒グラフである。
【0187】
図34は、7つのグループにおいてEchoMRIを用いた脂肪減少の棒グラフと、当該7つのグループにおいてEchoMRIを用いた体重減少の棒グラフと、を示す図である。
【0188】
図35は、7つのグループにおいてEchoMRIを用いた脂肪減少の棒グラフと、当該7つのグループにおいてEchoMRIを用いた体重減少の棒グラフと、を示す図である。
【0189】
図36は、剥離性FPグループのマウスの写真である。
【0190】
図37は、非剥離性FPグループのマウスの写真である。
【0191】
図38は、複数の異なる処置グループの白色脂肪組織の画像である。
【0192】
図39は、剥離性レーザグループのノルアドレナリン濃度のグラフと、非剥離性レーザグループのノルアドレナリン濃度のグラフとを示す図である。
【0193】
図40は、剥離性レーザグループのIL-6濃度のグラフと、非剥離性レーザグループのIL-6濃度のグラフとを示す図である。
【0194】
熱傷、切開又は鈍器により皮膚に発生した創傷は、免疫反応を引き起こす。この免疫反応は、創傷の因果関係に特有のものと考えられる。皮膚外傷は炎症反応を引き起こし、この炎症反応は例えばIL-6等の炎症性サイトカインのアップレギュレーションを引き起こす。IL-6は熱傷したマウスの創傷部位と血中とで検出され、ポジティブな治癒反応に繋がるものであった。このポジティブな治癒反応は、コラーゲン堆積の強化、肉芽組織形成、及び新生血管形成を含む。IL-6は熱傷後の創傷治癒機能の他にさらに、白色脂肪組織(WAT)の褐色化及び代謝亢進の仲介も行う。褐色脂肪細胞組織(BAT)がWATと区別される点は、ミトコンドリアが高品質であることと、褐色化マーカである脱共役タンパク質1(UCP1)の出現である。
【0195】
フラクショナルレーザは熱傷のMTZのアレイを形成するので、かかる熱傷を評価することにより、当該熱傷がIL-6のレベルを上昇させたか否かを調べた。シャム対照マウスと比較して、レーザにより処置された全てのマウスの血清中にIL-6のレベルの上昇が見られた。脂肪細胞の褐色化は、UCP1の免疫組織化学(IHC)により特定された。1回のレーザ処置後7日目に、シャムと比較して全てのレーザ処置されたグループにUCP1上昇の出現が見られた。この結果は、脂肪細胞の褐色化を、マウスにおける大面積のフラクショナル処置後の高いIL-6レベルに結び付けるものである。
【0196】
熱傷後には持効性のアドレナリンストレスが生じ、これはノルアドレナリンの上昇により測定される。カテコールアミンの全身性上昇により、β3アドレナリン受容体が活性化してUCP1の出現によるWATの褐色化が引き起こされ、その結果、脂肪分解率の上昇が生じる。ノルアドレナリンレベルを測定することにより、マウスの大面積のレーザ処置がアドレナリン反応をトリガするか否かを調べた。レーザ処置されたマウスにおいて、全ての選択されたBSAから、ノルアドレナリンのレベルが上昇し、これは特に剥離型のレーザで見られた。非剥離性レーザ処置されたマウスにおけるノルアドレナリンのレベルは、BSAの20%及び25%で処置されたマウスにおいて僅かに上昇した。
【0197】
ここで示されているように、脂肪量及び過体重の減少と、UCP1、ノルアドレナリン及びIL-6等のバイオマーカのアップレギュレーションが見られた。また、脂肪細胞の褐色化、炎症、及び創傷治癒活性等の機械的作用の上昇も見られた。
【0198】
本願明細書には、好適な1つ以上の非限定的な例が記載されており、明示的に記載された態様以外にも多くの均等態様、代替態様、変形態様及び改良態様が可能であり、本発明の範囲に属することが明らかである。
【0199】
本願開示はその適用の際に、添付の明細書に記載され又は添付の図面に示された構成要素の構成や配置の詳細に限定されるものではないと解すべきである。本願開示は他の非限定的な例が可能であり、また、本願開示は種々の態様で実用化又は実施することが可能である。また、本願明細書で使用されている文言及び用語用法は説明のためのものであり、本発明を限定するものとみなすべきものではない。本願において「含む」、「備える」又は「有する」との用語及びその変形を用いた場合、当該用語に係る項目及びその均等物並びに他の項目を含むという意味である。別段の指定又は限定が無い限り、「取り付けられている」、「接続されている」、「支持されている」及び「結合されている」との用語並びにその変形は広い意味で用いられており、直接的及び間接的両方の取り付け、接続、支持及び結合を含む。さらに、「接続されている」及び「結合されている」とは、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されるものではない。
【0200】
本願において別段の限定又は定義が無い限り、特定の方向についての記載はあくまで、特定の非限定的な例又は関連説明についての例示である。例えば「上」、「前」又は「後」の構成についての記載は、一般に特定の例又は説明の基準系に対する当該構成の方向のみについての記載であることを意図したものである。よって、例えば「上」にある構成は、一部の配置又は非限定的な例では、「下」にある構成の下に位置することがある(その他についても同様)。 さらに、特定の回転運動その他の運動(例えば反時計回りの回転等)についての記載は一般に、特定の具体例の基準系に対する運動についてのみの記載であることを意図したものである。
【0201】
一部の非限定的な例では、本願開示の方法のコンピュータ実施を含めた本願開示の各側面は、処理装置(例えば汎用又は特殊なシリアルプロセッサチップ又はパラレルプロセッサチップ、シングルコアチップ、マルチコアチップ、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、制御部、論理演算部、及びプロセッサレジスタの任意の種々の組み合わせ等)、コンピュータ(例えば処理装置をメモリに動作可能に結合したもの等)その他電子的に動作するコントローラを制御して本願に詳細に記載されている各側面を実施するためのソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの任意の組み合わせを製造するための標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を用いるシステム、方法、装置又は製品として具現化することができる。よって、例えば本願開示の非限定的な例は、処理装置が非一時的なコンピュータ可読媒体から命令を読み込んだ際に当該命令を実行できるように当該コンピュータ可読媒体に有形に具現化された命令のセットとして実施することができる。本願開示の一部の非限定的な例は、下記の説明に矛盾しないオートメーション装置、種々のコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア等を含めた特殊用途若しくは汎用コンピュータ等の制御装置を備える(又は使用する)ことができる。具体例として制御装置は、プロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラ、論理ゲート、その他適切な機能を実現するための従来公知の典型的な構成要素(例えばメモリ、通信システム、パワー源、ユーザインタフェースその他入力部等)を備えることができる。
【0202】
本願明細書中でいう「製品」との用語は、任意のコンピュータ可読装置、キャリア(例えば非一時的な信号等)又は媒体(例えば非一時的な媒体等)からアクセス可能なコンピュータプログラムを含むことを意図したものである。例えばコンピュータ可読媒体は、磁気記憶装置(例えばハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ)、光学ディスク(例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)等)、スマートカード、及びフラッシュメモリデバイス(例えばカード、スティック等)を含み得るが、これらに限定されない。さらに、搬送波を用いて、電子メールの送受信又はインターネット若しくはローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークへのアクセスで用いられるコンピュータ可読電子データ等のコンピュータ可読電子データを搬送することも可能であることが明らかである。当業者であれば、特許請求の範囲に記載の発明の範囲又は思想から逸脱することなく上記の構成に多くの改良を行うことができると認識することができる。
【0203】
本願開示の方法の特定の動作又は当該動作を実行するシステムの特定の動作を、各図において概略的に示し、又はその他の態様で記載していることがある。別段の指定又は限定が無い限り、特定の空間的順序における特定の動作の各図の表現は、当該特定の空間的順序に即した特定の順序で当該動作を行うことを要件とするものでは必ずしもない場合がある。よって、図面に示され又は他の態様で本願に開示されている特定の動作は、本願開示の特定の非限定的な例に合わせて適宜、明示的に図示又は記載されたものとは異なる順序で実施することができる。さらに、一部の非限定的な例では特定の動作は、専用の並列処理装置、又は上位システムの一部として相互動作するように構成された別個の計算機を用いた実行を含めて、並列実行することができる。
【0204】
本願においてコンピュータ実装の文脈において、別段の指定又は限定が無い限り、「構成要素」、「システム」、「モジュール」等の用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、又は実行ソフトウェア(software in execution)を含むコンピュータ関連システムの一部又は全部を含むことを意図したものである。例えば構成要素は、処理装置、処理装置により実行される(又は実行可能な)プロセス、オブジェクト、実行可能ファイル、実行のスレッド、コンピュータプログラム、又はコンピュータとすることができるが、これらに限定されない。例えば、コンピュータ上で実行されるアプリケーション及びそのコンピュータは両方とも構成要素となり得る。1つ又は複数の構成要素(又はシステム、モジュール等)はプロセス又は実行のスレッド内に存在することができ、1つのコンピュータ上にローカルに設けることができ、2以上のコンピュータその他処理装置に分散することができ、又は他の構成要素(はシステム、モジュール等)に包含することができる。
【0205】
一部の実施態様では、本願に開示されている装置又はシステムは、本願開示の各側面を具現化する方法を用いて使用又は設置することができる。よって、装置又はシステムの特定の構成、能力又は意図された目的についての本願での記載は一般に、上記の構成を上記の意図された目的のために使用する方法、上記の能力を実施する方法、及び上記の目的又は能力をサポートするために本願に開示された(又は他の態様で知られている)構成要素を設置する方法を内在的に含むことを意図したものである。任意の製造方法、又は装置若しくはシステムの設置を含めた特定の装置若しくはシステムを使用する任意の方法についての本願での記載についても同様に、別段の記載又は限定が無い限り、当該装置又はシステムの使用される構成及び実行される能力の開示を、その開示の非限定的な例として内在的に含むことを意図している。
【0206】
別段の定義又は限定が無い限り、本願における序数は参照の便宜上の理由により、一般に本願開示の関連箇所において特定の構成要素が提示される順序に基づいて使用されているものである。この点については例えば、「第1」、「第2」等の指定があった場合、一般的にはその構成要素が記載のために紹介される順序を示しているに過ぎず、特定の空間的配置、機能的又は構造的な優位度又は順序を示したり要件とするものではない。
【0207】
本願において、別段の定義又は限定が無い限り、方向の記載は特定の図又は特定の例について記載するために参照の便宜上用いられているものである。例えば下方向(若しくはその他の方向)又は上方の位置(若しくはその他の位置)といった場合、これは特定の例又は特定の図の態様を説明するためのものである場合があるが、必ずしも全ての設置又は構成において同様の方向又は幾何学的態様を要件とするものではない。
【0208】
上記の説明は、当業者が本願開示の非限定的な例を生産及び使用できるようにするために提示したものである。当業者であれば、ここで示されている例に対する種々の改良を容易に理解することができ、本願開示の一般的原理は、本願開示の原理から逸脱することなく、他の例や用途に適用することができる。よって、本願開示の非限定的な例は、本願に示されている非限定的な例に限定されるものではなく、本願開示の原理及び構成と下記の特許請求の範囲とに一致する最も広い範囲に即したものである。添付の詳細な説明は各図を参照して読むべきものであり、異なる図において同様の要素には同様の符号が付されている。各図は必ずしも実寸の比率通りではなく、各図は選択された例を示しており、本願開示の範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、本願にて提供された例は、本願開示の範囲に属する多くの有用な代替態様を有することを認識することができる。
【0209】
また、本願では別段の限定又は定義が無い限り「又は」との記載は、互いの代替要素としてしか存在し得ない構成要素の排他的な列挙を示すものではなく、任意の種々の組み合わせで存在し得る構成要素又は動作の非排他的な列挙を示す記載である。例えば、「A、B又はC」と列挙する記載は、A,B,Cの組み合わせと、A,Bの組み合わせと、A,Cの組み合わせと、B,Cの組み合わせと、A単独、B単独、C単独の選択肢を示唆するものである。よって、「又は」との用語は本願では、排他的な用語と共に用いられる場合のみ排他的な代替態様を示すことを意図したものであり、上記の排他的な用語は例えば「いずれか(either)」、「~のうち1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちちょうど1つ」等である。 さらに、「1つ又は複数」(及びその変形)との記載が先行すると共に、列挙事項の間に「又は」との記載がある列挙記載は、列挙された要素のいずれか又は全部の1つ又は複数の選択肢を示唆するものである。例えば「A,B又はCのうち1つ又は複数」との文言と、「A,B又はCのうち少なくとも1つ」との文言は、1つ又は複数のA、1つ又は複数のB、1つ又は複数のC、1つ又は複数のA及び1つ又は複数のB、1つ又は複数のB及び1つ又は複数のC、1つ又は複数のA及び1つ又は複数のC、並びに1つ又は複数の各A,B及びCの選択肢を示すものである。「複数の」との記載(及びその変形)が先行すると共に、列挙事項の「又は」との記載がある列挙記載は、列挙事項の間に列挙された要素のいずれか又は全部の複数の物の選択肢を示唆するものである。例えば、「A,B又はCのうち複数」及び「A,B又はCのうち2つ以上」との記載は、A及びB、BoC、A及びC、並びにA,B及びCの選択肢を示すものである。一般的に、「又は」との用語は本願では、排他的な用語と共に用いられる場合のみ排他的な代替態様(例えば「一方又は他方であって両方ではない」等)を示すものであり、上記の排他的な用語は例えば「いずれか(either)」、「~のうち1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちちょうど1つ」等である。
【0210】
本願開示の種々の構成及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の対象の脂肪を減少するための美容方法であって、
前記対象に、熱損傷された皮膚組織の複数のターゲット領域を生成すること
を含み、
前記複数のターゲット領域のうち少なくとも1つのターゲット領域の面積は10cm
2
超であり、
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも10%であり、
前記各ターゲット領域における前記熱損傷された皮膚組織は、無損傷組織により包囲された熱損傷の複数の処置領域を含み、
1つの前記ターゲット領域における前記複数の処置領域の総表面積は、当該1つのターゲット領域の総皮膚表面積の少なくとも10%であり、
前記各ターゲット領域の幅は1mm未満であり、
前記各処置領域の深度は真皮の少なくとも上層内に及び、
前記複数の処置領域の総表面積は前記対象の総皮膚表面積の少なくとも2%である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記各処置領域の幅は0.5mm未満である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱損傷は、剥離性レーザ又は非剥離性レーザのうち少なくとも1つを用いて生成される、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記熱損傷は高周波エネルギーを用いて生成される、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記皮膚組織を穿刺するように構成された電極ニードルのアレイを用いて、前記高周波エネルギーを送る、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚組織を穿刺しないように構成されたピンのアレイを用いて、前記高周波エネルギーを送る、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記熱損傷は超音波エネルギーを用いて生成される、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記熱損傷は熱機械的フラクショナル外傷装置を用いて生成される、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも20%である、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも30%である、
請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記複数の処置領域の総表面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも3.6%である、
請求項1記載の方法。
【請求項12】
美容処置システムであって、
対象に、熱損傷された皮膚組織の複数のターゲット領域を生成するように構成されたエネルギー源を備えており、
前記複数のターゲット領域のうち少なくとも1つのターゲット領域の面積は10cm
2
超であり、
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも10%であり、
前記各ターゲット領域における前記熱損傷された皮膚組織は、無損傷組織により包囲された熱損傷の複数の処置領域を含み、
1つの前記ターゲット領域における前記複数の処置領域の総表面積は、当該1つのターゲット領域の総皮膚表面積の少なくとも10%であり、
前記各ターゲット領域の幅は1mm未満であり、
前記各処置領域の深度は真皮の少なくとも上層内に及び、
前記複数の処置領域の総表面積は前記対象の総皮膚表面積の少なくとも2%である
ことを特徴とする美容処置システム。
【請求項13】
前記各処置領域の幅は0.5mm未満である、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項14】
前記エネルギー源は、剥離性レーザ又は非剥離性レーザのうち少なくとも1つを備えている、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項15】
前記エネルギー源は高周波エネルギー構成体を備えている、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項16】
前記高周波エネルギー構成体は、前記皮膚組織を穿刺するように構成された電極ニードルのアレイを用いて前記皮膚組織に高周波エネルギーを送るように構成されている、
請求項15記載の美容処置システム。
【請求項17】
前記高周波エネルギー構成体は、前記皮膚組織を穿刺しないように構成されたピンのアレイを用いて前記皮膚組織に高周波エネルギーを送るように構成されている、
請求項15記載の美容処置システム。
【請求項18】
前記エネルギー源は超音波エネルギー源を備えている、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項19】
前記エネルギー源は熱機械的フラクショナル外傷装置を備えている、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項20】
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも20%である、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項21】
前記複数のターゲット領域の総面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも30%である、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項22】
前記複数の処置領域の総表面積は、前記対象の総皮膚表面積の少なくとも3.6%である、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項23】
前記エネルギー源から前記複数の処置領域にエネルギーを送るように構成された走査構成体をさらに備えている、
請求項12記載の美容処置システム。
【請求項24】
前記走査構成体は、前記エネルギー源に結合された多軸ロボットアームを備えており、
前記ロボットアームはベースに回転可能に結合されている、
請求項23記載の美容処置システム。
【請求項25】
前記走査構成体はアクチュエータと台部とを備えており、
台部は前記対象を支持するように構成されており、
前記アクチュエータは、前記対象に対してエネルギー源を相対移動させるように構成されている、
請求項23記載の美容処置システム。
【国際調査報告】