(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】リグニンベースの組成物及び関連する炭化水素分離方法
(51)【国際特許分類】
C09K 8/588 20060101AFI20240328BHJP
C09K 8/582 20060101ALI20240328BHJP
C12N 1/26 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
C09K8/588
C09K8/582
C12N1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561887
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 IB2022053145
(87)【国際公開番号】W WO2022214950
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380210
【氏名又は名称】リグノソル・アイピー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デズモンド・アレクサンダー・サマーヴィル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ディーター・ワイベル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AC14
4B065CA60
(57)【要約】
炭化水素分離用途のための組成物が提供される。一部の実施形態において、組成物はリグニン、特に工業リグニン、並びにバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の菌株、及び/又はそのような細菌の少なくとも1種の単離菌株により産生されたバイオ界面活性剤を含む。炭化水素含有材料から炭化水素を分離するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有材料から炭化水素を分離するための方法であって、
リグニン、並びに少なくとも1種のバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、及び/又はバイオ界面活性剤を産生することができる少なくとも1種の細菌から産生された少なくとも1種のバイオ界面活性剤を含み、約50%以上の固体含有量を有する組成物を用意する工程と、
炭化水素含有材料を前記組成物と接触させて、これにより炭化水素含有材料から炭化水素の少なくとも一部分を分離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記炭化水素含有材料が、炭化水素含有粒状物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物と炭化水素含有材料を接触させる工程が、組成物と炭化水素含有粒状物質を混合して混合物を形成する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
混合物中に液体を導入してスラリーを形成する工程及びスラリーを少なくとも2相に分離させる工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素含有材料が、炭化水素含有液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炭化水素含有材料を前記組成物と接触させる工程が、前記組成物を通して炭化水素含有液体を流す工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リグニンが、リグニンナノ粒子及びリグニンマイクロ粒子のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リグニンがリグニン粒子を含み、リグニン粒子のうちの少なくとも20%がリグニンナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が陰極液を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物中に導入される液体が陰極液である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって炭化水素含有材料から炭化水素を分離するために好適な炭化水素分離組成物であって、リグニン、並びに少なくとも1種のバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、及び/又はバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株から産生された少なくとも1種のバイオ界面活性剤を含み、約50%以上の固体含有量を有する、組成物。
【請求項12】
リグニンが、クラフトリグニン、リグノスルホン酸塩、ソーダリグニン、オルガノソルブリグニン、水蒸気爆砕リグニン、酵素加水分解リグニン、又は加水分解されていないクラフト黒液リグニンのうちの少なくとも1種を含む工業リグニンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
リグニンが水性懸濁液中にある、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
リグニンが、リグニンナノ粒子及びリグニンマイクロ粒子のうちの少なくとも1種を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
リグニンがリグニン粒子を含み、リグニン粒子のうちの少なくとも20%がリグニンナノ粒子である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記の少なくとも1種の単離菌株が、バチルス・アミロリクエファシエンス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・プミルス、バチルス・サブティリス、及びこれらの組合せからなる群から選択されるバチルス属の少なくとも1種の単離菌株を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の単離菌株が、液体懸濁液又は凍結乾燥芽胞の形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
陰極液、特に安定化又は強化された陰極液を更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
カルボン酸又はその塩若しくはエステルのうちの少なくとも1種を更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
カルボン酸エステルがメチルエステル又はブチルエステルを含むか、或いはカルボン酸又はその塩若しくはエステルがジカルボン酸又はその塩若しくはエステルを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
カーボンブラックを更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項22】
ナノバブル及びマイクロバブルのうちの少なくとも1種を用いてガス化された、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月6日に出願した英国仮特許出願第2104865.7号及び2021年11月8日に出願した英国仮特許出願第2115987.6号に基づく優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、炭化水素含有材料からの炭化水素の分離に関する。より詳細には、本発明は、炭化水素分離用途のためのリグニンベースの炭化水素分離組成物及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な炭化水素含有材料から炭化水素を分離及び回収する技術は、粒状の炭化水素含有材料でも液体の炭化水素含有材料等でも無数に存在する。油及びガス産業において、炭化水素含有材料としては、オイルサンド、並びに天然ガス及び地下貯留層からの油が挙げられる。
【0004】
タールサンドとも呼ばれるオイルサンドは、カナダ、ベネズエラ、カザフスタン及びロシア等の国々で見られる非従来型の石油鉱床の1種である。これらの鉱床は典型的に、砂、石英結晶又は粘土等の粒状物質と、重質油、超重質油及び/又はビチューメンと、水との複雑な混合物である。
【0005】
オイルサンドから油を抽出するための様々な技術、例えば、砂を用いた低温重質油生産法(cold heavy oil production、CHOPS)、周期的水蒸気刺激法(cyclic steam stimulation、CSS)、水蒸気補助重力排油法(steam assisted gravity drainage、SAGD)、蒸気抽出法(vapour extraction、VAPEX)、トウトゥーヒール空気注入法(toe to heel air injection、THAI)、燃焼オーバーヘッド重力排油法(combustion overhead gravity drainage、COGD)、又はこれらの技術の組合せが存在する。地表近くに位置する一部のオイルサンド鉱床は地表採掘技術を使用して抽出することもあり、典型的にはその後、熱水又は温水分離プロセスが行われる。これらの技術の各々には少なくとも1つの欠点、例えば、大量の水の使用、大量のエネルギーの使用、並びに/又は環境に有害な及び/若しくは費用のかかる化学物質の使用の必要性がある。
【0006】
更に、油及びガスの抽出プロセス又はパイプラインの漏出による地盤材料及び/又は水の炭化水素汚染は重大な環境問題である。例えば、地表採掘されたオイルサンドの熱水抽出は大量のオイルサンドテーリングを生成し、これは典型的に、水、砂、石英結晶、粘土及び残留ビチューメンの混合物を含む。パイプラインの漏出は、油と土又は砂と、更にしばしば水との混合物を生成することがある。同様に、海での油流出は、油と水の混合物を生成することがある。地盤材料及び/又は水からの炭化水素の分離は、困難且つ高価でありうる。
【0007】
例えば、米国特許第9,447,329号明細書において、粒状物質から炭化水素を分離するための類似のイオン液体の使用が提案されている。しかしながら、使用された試薬は費用のかかるものであり、プロセスは経済的に実施不可能なものとなりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,447,329号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Beislら「Lignin from Micro-to Nanosize:Production Methods」Int.J.Mol.Sci.2017;18:1244
【非特許文献2】Satputeら「Methods for investigating biosurfactants and bioemulsifers:a review」Critical Reviews in Biotechnology、2010、1-18
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様において、炭化水素含有材料から炭化水素を分離するための方法であって、
- リグニン、並びに少なくとも1種のバイオ界面活性剤(biosurfactant)を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、及び/又はバイオ界面活性剤を産生することができる少なくとも1種の細菌から産生された少なくとも1種のバイオ界面活性剤を含み、約50%以上、特に約50%~約60%の固体含有量を有する組成物を用意する工程と、
- 組成物と炭化水素含有材料とを接触させて、これにより炭化水素含有材料から炭化水素の少なくとも一部分を分離する工程と
を含む、方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料は、炭化水素含有粒状物質を含む。
【0012】
一部の実施形態において、組成物と炭化水素含有材料を接触させる工程は、組成物と粒状物質を混合して混合物を形成する工程を含む。
【0013】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料は、炭化水素含有液体を含む。
【0014】
一部の実施形態において、組成物と炭化水素含有材料を接触させる工程は、組成物内に炭化水素含有液体を流す工程を含む。
【0015】
本発明の別の態様において、炭化水素含有材料から炭化水素を分離するのに好適な炭化水素分離組成物であって、リグニン、特に工業リグニン、並びに少なくとも1種のバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、及び/又はバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株から産生された少なくとも1種のバイオ界面活性剤を含み、約50%以上、特に約50%~約60%の固体含有量を有する組成物を提供する。
【0016】
一部の実施形態において、炭化水素分離組成物は陰極液を更に含む。
【0017】
一部の実施形態において、陰極液は、安定化又は改良された陰極液である。
【0018】
本発明は、炭化水素含有材料からの炭化水素の分離における、リグニン、特に工業リグニンの使用まで及ぶ。
【0019】
本発明の他の態様及び特徴は、以下の本開示の具体的な実施形態の説明を検討することにより当業者に明らかとなる。
【0020】
これより本発明を、添付の図面を参照しながら単なる例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一部の実施形態による、炭化水素含有材料から炭化水素を分離するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、一部の実施形態による、炭化水素含有材料から炭化水素を分離するための別の例示的な方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2の方法を実施することができる例示的なシステムの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、エマルションの混合後の様々な時間における、追加の水を含まない軽質油エマルションの参照試料(R)及び実験試料(X)を示す一連の写真である。
【
図5】
図5は、エマルションの混合後の様々な時間における、100質量%の追加の水を含む軽質油エマルションの参照試料(R)及び実験試料(X)を示す一連の写真である。
【
図6】
図6は、エマルションの混合後の様々な時間における、51.8質量%の追加の水を含む軽質油エマルションの参照試料(R)及び実験試料(X)を示す一連の写真である。
【
図8】
図8は、エマルションの混合後の様々な時間における、100質量%の追加の水を含む重質油エマルションの参照試料(R)及び実験試料(X)を示す一連の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
炭化水素分離用途のための本発明の炭化水素分離組成物、特にリグニンベースの炭化水素分離組成物及び関連する方法を提供する。
【0023】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料は、炭化水素含有粒状物質を含む。本明細書において使用する場合、「粒状物質」は、固体粒子を含む物質を指す。一部の実施形態において、炭化水素含有粒状物質は、比較的水を含まない。他の実施形態において、炭化水素含有粒状物質は、少なくとも一部分の水を含んでもよい。
【0024】
粒状物質は、地盤で見出される材料の固体粒子を含んでもよく、固体粒子としては、限定されるものではないが、砂、粘土、土、シルト、岩、固体鉱物、又は金属粒子等が挙げられる。他の実施形態において、粒状物質は、炭化水素の処理に関連する固体粒子、例えば掘削又はプロセス装置からの金属粒子を含んでもよい。
【0025】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料は、地下貯留層から抽出された粒状物質を含んでもよい。本明細書において使用する場合、「貯留層」は、内部に炭化水素の少なくとも1つのプール又は鉱床を含む、地層内の任意の地下領域を指す。
【0026】
一部の実施形態において、貯留層はオイルサンド貯留層である。タールサンド及びビチューメンサンドとしても知られるオイルサンドは、さらさらとした砂又は部分的に固まった砂岩中の粘性油の天然鉱床である。本明細書において使用する場合、「粘性油」は、高粘度及び高比重を有する炭化水素材料を指す。一部の実施形態において、粘性油は、重質油及び/又はビチューメンを含む。重質油は、貯留層条件下で粘度が100センチポアズ(0.1Pa/s)を超え、API比重が20°API以下である炭化水素材料と定義することができる。ビチューメンは、貯留層条件下で粘度が10,000センチポアズ(10Pa/s)を超え、API比重が10°API以下である炭化水素材料と定義することができる。
【0027】
一部の実施形態において、オイルサンド鉱石は、地表採掘プロセスによって抽出することができる。この文脈における「地表採掘」という用語は、露天掘りピット又は穴からのオイルサンド鉱石の抽出を指す。地表採掘は、地表の比較的近くに位置する粘性油鉱床に使用される。例えば、カナダ、アルバータ州のアサバスカ・オイルサンドでの地表採掘作業は、油圧又は電気ショベルを使用して鉱山ピットからオイルサンド鉱石を掘ることを典型的に含む。次に鉱石を更に処理して、例えば鉱石をより小さい粒子に破砕し、鉱石を熱水又は温水と(任意選択により場合によって苛性ソーダと)混合してスラリーを形成し、これを更なる処理へと運ぶことができる。未処理又は処理済みのオイルサンド鉱石又はオイルサンドスラリーを、本明細書に記載の方法において使用してもよい。
【0028】
他の実施形態において、粒状物質は、少なくとも1種の炭化水素で汚染された土又は他の地盤材料を含んでもよい。例えば、粒状物質は、原油又はガソリンの形態の処理済み油等のパイプライン漏出により汚染された土及び/又は砂を含んでもよい。別の例として、粒状物質は天然ガスで汚染された土及び/又は砂を含んでもよい。
【0029】
他の実施形態において、炭化水素含有材料は炭化水素含有流体を含んでもよい。一部の実施形態において、炭化水素含有流体は多相流体を含む。本明細書において使用する場合、「多相流体」は、1種を超える相、例えば液相、固相及び/又は気相を含む流体を指す。他の実施形態において、炭化水素含有流体は、固体材料及び/又は気体を比較的含まない炭化水素含有液体を含んでもよい。
【0030】
一部の実施形態において、炭化水素含有流体はエマルションを含んでもよい。例えば、流体は油-水エマルション、例えば水中油型エマルション又は油中水型エマルションを含んでもよい。一部の実施形態において、エマルションは、少なくとも一部分の粒状物質を更に含んでもよい。一例として、油中水型エマルションは、貯留層中の天然水により、原油回収中に生成しうる。このようなエマルションは、少なくとも一部分の同伴する砂、粘土等も含んでもよい。
【0031】
一部の実施形態において、炭化水素含有流体は、油回収作業からのテーリング(tailing, 尾鉱)を含む。従来のオイルサンド採掘作業では、熱水又は温水抽出を使用してオイルサンド鉱石の砂及び粘土からビチューメンを分離し、これにより大量の排水(すなわち、テーリング)が生成される。テーリング(尾鉱)は典型的に、人工の大きな尾鉱池で貯蔵される。オイルサンド地表採掘作業からの尾鉱は、残留粘性油(ビチューメン)、塩、懸濁固体並びに溶解塩、有機物及び鉱物の混合物を含みうる。
【0032】
他の実施形態において、炭化水素含有流体は、油井又はガス井の掘削からの掘削屑を含んでもよい。掘削屑は、ボアホールから除去され、掘削流体中で地表にもたらされた固体粒状物質を含んでもよい。掘削流体(「掘削泥水」とも呼ばれる)は、水、水系泥水(WBM)、油系泥水(OBM)、合成系泥水(SBM)、又は他の任意の好適な種類の泥水を含んでもよい。
【0033】
他の実施形態において、炭化水素含有流体は、1種又は複数種の炭化水素で汚染された液体を含んでもよい。例えば、炭化水素含有液体は、例えば、原油流出によって汚染された淡水又は海水、油タンカー又は貯蔵施設のすすぎから生じた油と水の混合物を含んでもよい。
【0034】
他の実施形態において、炭化水素含有材料は、他の任意の好適な材料を含んでもよく、実施形態は本明細書に記載された特定の材料に限定されない。
【0035】
本明細書において使用する場合、「リグニン」は、植物及び一部の藻類の二次細胞壁に見られる生体高分子を指す。リグニンは、高い不均一性を有する複雑な架橋フェノールポリマーである。リグニンの典型的な供給源としては、限定されるものではないが、例えば、針葉樹、広葉樹、並びに、トウモロコシ茎葉、バガス、草及び藁等の草本が挙げられる。
【0036】
一部の実施形態において、リグニンは工業リグニンを含む。本明細書において使用する場合、「工業リグニン」は、例えばパルプ及び紙の製造又はリグノセルロース系バイオリファイナリーの副生成物として、リグノセルロース系バイオマスから単離されたリグニンを指す。工業リグニンは天然リグニンと比べて改変された構造を有することがあり、抽出プロセスに応じて不純物を含有することがある。一部の実施形態において、工業リグニンは、クラフトリグニン、リグノスルホン酸塩、ソーダリグニン、オルガノソルブリグニン、水蒸気爆砕リグニン、及び酵素加水分解リグニンのうちの少なくとも1種を含む。他の実施形態において、工業リグニンは、他の任意の形態の工業リグニンを含んでもよい。
【0037】
リグニンがリグノスルホン酸塩を含む実施形態において、リグノスルホン酸塩は、塩の形態、例えば、リグノスルホン酸ナトリウム、リグノスルホン酸カルシウム、又はリグノスルホン酸アンモニウムであってもよい。
【0038】
他の実施形態において、工業リグニンは、加水分解されていないクラフト黒液の形態である。黒液は、クラフトプロセスの副生成物であり、リグニンだけでなく、ヘミセルロース、パルプ化プロセスで使用される無機化学物質、及び他の不純物を含有することがある。他の実施形態において、工業リグニンは、「ブラウンリカー(brown liquor)」(レッドリカー(red liquor)、濃厚液(thick liquor)、又は亜硫酸液(sulfite liquor)とも呼ばれる)の形態であり、これは亜硫酸法の廃液を指す。他の実施形態において、工業リグニンは、パルプ化プロセスの他の任意の廃蒸解液又は他の任意の好適なリグニンベースの副生成物の形態であってもよい。
【0039】
他の実施形態において、リグニンは、合成リグニン又は他の任意の好適な種類のリグニンであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、リグニンを加水分解する。本明細書において使用する場合、「加水分解」は、酸又は塩基加水分解を使用して、リグノセルロース系バイオマスの多糖含有分からリグニンを少なくとも部分的に分離することを指す。例えば、リグニンが黒液の形態である場合、二酸化炭素を使用して黒液からクラフトリグニンを沈殿させてもよく、次にクラフトリグニンを水酸化ナトリウムで中和してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、リグニンは水性懸濁液中にある。本明細書において使用する場合、リグニンの「水性懸濁液」は、少なくとも部分的に水を含む溶媒中に懸濁、分散及び/又は溶解したリグニンの固体粒子を指す。一部の実施形態において、溶媒は実質的に全て水を含む。他の実施形態において、溶媒は水と他の任意の好適な溶媒の組合せを含んでもよい。
【0042】
一部の実施形態において、リグニンの水性懸濁液は、約10%~約90%、又は約25%~約75%、又は約30%~約60%、又は約33%~約55%の固体含有量を有してもよい。一部の実施形態において、リグニンの水性懸濁液は、約50%~約60%の固体含有量を有してもよい。一部の実施形態において、リグニンの水性懸濁液は、約10%以上、又は約25%以上、又は約30%以上、又は約33%以上、又は約50%以上の固体含有量を有してもよい。一部の実施形態において、リグニンの水性懸濁液は、約90%以下、又は約75%以下、又は約60%以下、又は約55%以下の固体含有量を有してもよい。一部の実施形態において、水性懸濁液は約46%の固体含有量を有する。約33%~約55%の固体含有量により、組成物を流動性のものにすることができ、これは一部の用途で好ましいことがある。他の用途において、組成物をスラリーとして使用してもよく、約85%~約90%という高い固体含有量でもよい。
【0043】
一部の実施形態において、リグニンは、リグニンナノ粒子及びリグニンマイクロ粒子のうちの少なくとも1種を含む。本明細書において使用する場合、「ナノ粒子」はナノメートルサイズ範囲、例えば約1nm~約100nmの粒子を指し、「マイクロ粒子」はマイクロメートルサイズ範囲、例えば約100nm~約1000μm(1mm)の粒子を指す。一部の好ましい実施形態において、リグニン粒子は、約200nm以下又は約100nm以下のサイズを有する。一部の好ましい実施形態において、リグニン粒子の少なくとも約20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%が、約100nm以下のサイズを有するナノ粒子である。
【0044】
リグニンナノ粒子及び/又はマイクロ粒子は、任意の好適な方法によって生成することができる。例えば、リグニンナノ粒子及び/又はマイクロ粒子は、溶媒シフト;pHシフト;架橋重合;機械的処理;氷分離(ice-segregation);テンプレートベース合成;エアロゾル処理;エレクトロスピニング;及び二酸化炭素(CO2)逆溶媒処理のうちの少なくとも1つを使用して生成することができる。このような方法は、Beislら「Lignin from Micro-to Nanosize:Production Methods」Int.J.Mol.Sci.2017;18:1244に記載されており、これは参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる。
【0045】
一部の好ましい実施形態において、リグニンナノ粒子は、例えばBeislらに開示されているpHシフト法を使用して生成する。簡潔に述べると、出発リグニン材料を塩基性溶液(例えば、pH12のNaOH水溶液)に溶解させてもよく、酸(例えば、HNO3)を添加することによって溶液のpHを徐々に下げて、リグニンナノ粒子を沈殿させてもよい。次に溶液を中和して(例えば、NaOHの添加により)、ナノ粒子を再懸濁させてもよい。得られる粒子は約200nm以下又は約100nm以下のサイズを有してもよい。他の実施形態において、リグニンナノ粒子は他の任意の好適な方法によって生成してもよい。
【0046】
リグニンをリグニンナノ粒子及び/又はマイクロ粒子の形態で用意することにより、リグニンの表面積が増加し、これにより各粒子の周りの負の力も増加する。加えて、リグニンナノ粒子及び/又はマイクロ粒子は、水への溶解度が改善しうる。従来のリグニンは典型的にアルカリ性のpHの水にのみ可溶であるが、ナノ粒子及び/又はマイクロ粒子はほぼ中性の水に可溶である場合があり(Beislら)、これは一部の用途に好ましいことがある。
【0047】
一部の実施形態において、リグニンがリグニンナノ粒子の水性懸濁液を含む場合、懸濁液のゼータ電位値は、約-5~約-80mVであってもよい。一部の実施形態において、リグニンナノ粒子の水性懸濁液の比重は、約1.286~約1.7SGである。
【0048】
組成物は、バイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、及び/又はバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株から産生された少なくとも1種のバイオ界面活性剤を更に含む。
【0049】
本明細書において使用する場合、「単離された(isolated)」又は「単離する(isolate)」は、細菌の菌株に関して使用するとき、その自然環境から分離された細菌を指す。一部の実施形態において、単離菌株又は単離株は、細菌の特定の菌株の生物学的に純粋な培養物である。本明細書において使用する場合、「生物学的に純粋な」は、他の生物を実質的に含まない培養物を指す。
【0050】
本明細書において使用する場合、「バイオ界面活性剤」(バイオサーファクタント)は、細菌細胞表面で産生され、及び/又は細菌細胞から分泌され、表面張力及び/又は界面張力を低下させるように機能する化合物を指す。バイオ界面活性剤の非限定的な例としては、例えば、リポペプチド、サーファクチン、糖脂質、ラムノリピド、メチルラムノリピド、及びビスコシンが挙げられる。単離菌株は、1つ又は複数の種類のバイオ界面活性剤を産生することが可能でありうる。
【0051】
一部の実施形態において、単離菌株は、1種又は複数種の追加の活性化合物を産生することができる。例えば、単離菌株は、バイオポリマー、溶媒、酸、エキソ多糖等を産生することができる。
【0052】
一部の実施形態において、細菌の少なくとも1種の単離菌株は、バチルス属(Bacillus)の菌株を含む。他の実施形態において、少なくとも1種の単離菌株は、バイオサーファクタントを産生することができ、非病原性である細菌の菌株を含む。好適な菌株の非限定的な例は、Satputeら「Methods for investigating biosurfactants and bioemulsifers:a review」Critical Reviews in Biotechnology、2010、1-18に挙げられている。例えば、バチルス属の少なくとも1種の単離菌株は、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、又はこれらの組合せ、特にバチルス・リケニフォルミスであってもよい。
【0053】
一部の実施形態において、組成物のpHは、単離菌株に好適なpHをもたらすように選択又は調節してもよい。一部の実施形態において、組成物は、細菌の増殖を補助するための1種又は複数種の栄養素、例えば、アセテート、1種又は複数種のビタミン等を更に含んでもよい。
【0054】
一部の実施形態において、単離菌株は生存可能形態である。例えば、一部の実施形態において、単離菌株は液体懸濁液の形態であってもよい。一部の実施形態において、単離菌株は、バイオ界面活性剤の少なくとも一部分が細菌懸濁液中に分泌され、したがって組成物中に組み込まれうるように、組成物中への組込みの前に好適な期間インキュベートしてもよい。例えば、細菌を約1日~約6か月以上の間、インキュベートする/発酵させることができる。単離菌株は、栄養源の存在下、好適な条件(例えば、温度、撹拌等)でインキュベートして、バイオ界面活性剤を産生させてもよい。
【0055】
他の実施形態において、単離菌株は凍結乾燥形態であってもよい。一部の実施形態において、凍結乾燥形態は凍結乾燥芽胞を含む。
【0056】
一部の実施形態において、単離菌株が液体懸濁液の形態又は凍結乾燥形態である場合、組成物は、約400億CFU(コロニー形成単位)を含んでもよく、少なくとも約1gのリグニン及び最大数トンのリグニンと組み合わせてもよい。
【0057】
他の実施形態において、単離菌株は非生存形態であってもよい。例えば、単離菌株は、加熱殺菌された細胞又は細胞溶解物の形態であってもよい。これらの実施形態において、単離菌株の細菌は、組成物中への組込みに十分な量のバイオ界面活性剤が細菌懸濁液中に分泌されるように、生存能の損失(例えば、加熱殺菌又は溶解)の前に好適な期間インキュベートしてもよい。例えば、生存能の損失前に少なくとも1週間細菌をインキュベートしてもよい。
【0058】
他の実施形態において、細菌の液体懸濁液をインキュベートしてバイオ界面活性剤を産生させてもよく、バイオ界面活性剤を含有する上清を細菌細胞から分離し、組成物において使用してもよい。
【0059】
理論に限定されるものではないが、リグニンと単離菌株によって産生されるバイオ界面活性剤との組合せは、バイオ界面活性剤産生菌株の自然の生息環境を模倣するように作用すると考えられる。リグニンは、必要に応じて組成物に添加してもよい追加のアセテート及び金属ビタミンを除いて、細菌の増殖を補助するための必要な栄養素(炭素及びフルクトース)を含有する増殖基質として機能しうる。
【0060】
加えて、一連の液滴崩壊試験を行って、本発明の組成物中でリグニンと好適なバイオ界面活性剤とを組み合わせることの追加の利益を評価した。特に、試験を行って、水及び他の液体の表面張力を低下させることにおける本発明の組成物の有効性を決定した。その結果により、本発明の組成物中でリグニンとバイオ界面活性剤を組み合わせることでの更なる利点は、バイオ界面活性剤の濃度が約10ppm~300ppmでの表面張力の有意な低下であり、これが炭化水素含有材料を通り抜ける組成物の能力を著しく助けることが示された。
【0061】
一部の実施形態において、本発明のリグニンベース分離組成物は、陰極液を更に含む。本明細書において使用する場合、「陰極液」は、電気化学反応で生成された活性化溶液であり、電気化学セルの陰極に隣接する電解質溶液の一部である。これは、例えば0.05%~1%の塩ブライン(NaCl又はKCl)から生成することができ、10.0~13.0の範囲のpH、及び約-800mV未満、典型的には-900~-950mVのオーダーのORP/レドックス値を有する。NaCl出発溶液の場合、活性成分は高活性で典型的に不安定なNaOHである。
【0062】
本発明の分離組成物は、約1体積%~約75体積%の陰極液を含むことができる。
【0063】
一部の実施形態において、組成物は、カルボン酸又はその塩若しくはエステルのうちの少なくとも1種を更に含む。一部の実施形態において、カルボン酸はジカルボン酸又はその塩若しくはエステルである。カルボン酸又はその塩/エステルは、例えば組成物の様々な成分の安定なエマルションの形成を促進することにより、溶媒として機能しうる。一部の実施形態において、組成物はカルボン酸エステルを含む。一部の実施形態において、カルボン酸エステルはメチルエステル又はブチルエステルを含む。一部の実施形態において、ブチルエステルは生化学的メタセシスにより生成する。一部の実施形態において、ブチルエステルは4-オキソペンタン酸n-ブチルを含む。一部の実施形態において、メチルエステルは不飽和C10又はC12メチルエステルを含む。一部の実施形態において、メチルエステルは9-デセン酸メチル又は9-ドデセン酸メチルを含む。一部の実施形態において、メチルエステルは植物油供給原料から生成する。
【0064】
一部の実施形態において、組成物はカーボンブラックを更に含む。カーボンブラックは導電性カーボンブラックであってもよく、カーボンブラックは組成物の伝導度を増加させるように機能しうる。一部の実施形態において、カーボンブラックは伝導性、超伝導性、エクストラ伝導性(extraconductive)、又はウルトラ伝導性(ultraconductive)のカーボンブラックであってもよい。一部の実施形態において、カーボンブラックは、カーボンブラックビーズ、マイクロ粒子、及び/又はナノ粒子の形態であってもよい。例えば、カーボンブラックはOrion Engineered Carbons(商標)社のPrintex(商標)XE2 B Beadsを含んでもよい。一部の実施形態において、組成物は約0.5体積%~約10体積%のカーボンブラックを含んでもよい。一部の実施形態において、カーボンブラックの添加により組成物の負のゼータ電位が増加し、これによりその電気安定性が増加しうる。他の実施形態において、組成物は他の任意の高伝導性マイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含んでもよい。
【0065】
一部の実施形態において、組成物は約1体積%~約30体積%、又は約1体積%~約20体積%、又は約1体積%~10体積%のジカルボン酸及び/又はブチルエステルを含んでもよい。
【0066】
一部の実施形態において、組成物は、ガスを用いてガス化される。本明細書において使用する場合、「ガス化」は、ガスの気泡が中で浮遊するように組成物中にガスを導入することを指す。「通気」という用語は、空気又は酸素を用いてガス化することを指す。ガスは、組成物中に組み込まれた単離菌株の好気性又は嫌気性の性質に基づいて選択することができる。一部の実施形態において、ガスは少なくとも部分的に酸素を含む。例えば、ガスは空気又は比較的純粋な酸素であってもよい。一部の実施形態において、ガスは少なくとも部分的に二酸化炭素及び/又は窒素を含んでもよい。ガス化は、単離菌株の細菌細胞に直接又はごく近接して酸素及び/又は他の好適なガスを供給するように機能することができる。ガス化により、細菌細胞の増殖が促進され、組成物を長期間使用又は貯蔵することが可能となりうる。一部の実施形態において、通気された組成物は約20~30日の半減期を有することができる。
【0067】
一部の実施形態において、組成物は、ガスのナノバブル及び/又はマイクロバブルを用いてガス化する。本明細書において使用する場合、「ナノバブル」はナノメートルの範囲の気泡を指し、「マイクロバブル」はマイクロメートルの範囲の気泡を指す。ナノバブル及び/又はマイクロバブルは、任意の好適な手段、例えばマイクロ若しくはナノバブルノズル又はベンチュリ管により組成物中に導入してもよい。
【0068】
安定化又は改良された(そうでなければ対照的に不安定である)陰極液を使用することにより、本発明の組成物の作用が強化されることが意外なことに発見された。したがって、一部の実施形態において、本発明の組成物に組み込むため、陰極液中に窒素ガスを、特にナノ及び/又はマイクロバブルの形態で導入するように設計されたシステムで、陰極液を前処理する。
【0069】
したがって、一部の実施形態において、陰極液は、分離組成物の他の成分とブレンドする前に改良される。
【0070】
本明細書において開示される組成物は、炭化水素の回収及び/又は処理における様々な分離用途、例えば、炭化水素の分離、水中油型エマルションの解乳化、及び粒状物質からの分離に有用でありうる。組成物の実施形態は、室温(例えば、約2℃~約25℃)で使用することができ、回転障壁反発機構により機能しうる。
【0071】
一部の実施形態において、組成物は他の任意の好適な成分を含んでもよい。例えば、一部の実施形態において、組成物は、単離菌株の生細菌のための少なくとも1種の栄養源を更に含んでもよい。
【0072】
したがって、一部の実施形態において、比較的無毒性で不活性であり、炭化水素分離のための持続可能な組成物が提供される。組成物は比較的低コストである場合があり、これはリグニンが、典型的に捨てられる紙パルプ事業の廃棄物だからである。
【0073】
図1は、一部の実施形態による、炭化水素含有材料から炭化水素の少なくとも一部分を分離するための例示的な方法100のフローチャートである。
【0074】
ブロック102において、リグニン、及びバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株を含む組成物を用意する。組成物は、上記の組成物の任意の実施形態であってもよい。この文脈における「用意する」という用語は、組成物を作製すること、受け取ること、購入すること、又は他の方法で得ることを指しうる。
【0075】
ブロック104において、組成物と炭化水素含有材料を接触させる。この文脈における「接触」という用語は、組成物を炭化水素含有材料と接触させることができる任意の手段を指しうる。一部の実施形態において、組成物を炭化水素含有材料中に導入してもよい。他の実施形態において、炭化水素含有材料を組成物中に導入してもよい。一部の実施形態において、例えば、混合、ブレンド、均質化、注入、又は他の任意の好適な手段により、組成物と炭化水素含有材料を組み合わせてもよい。
【0076】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料が炭化水素含有流体を含む場合、組成物と流体を接触させることは、組成物内に流体を流すことを含んでもよい。一部の実施形態において、組成物を固体担体上に固定化してもよい。一例として、パイプ又は他の流体導管の内表面上に組成物をコーティングしてもよく、パイプに炭化水素含有流体を流して組成物と接触させてもよい。一部の実施形態において、パイプは、組成物と流体の接触が増加するように大きな表面積を有してもよい。
【0077】
別の例として、組成物を濾過媒体と連結してもよく、濾過媒体に流体を流してもよい。一部の実施形態において、組成物を濾過媒体中に埋め込むか、又はそれに結合してもよい。他の実施形態において、例えば機械的混合物として、組成物を濾過媒体とゆるく連結するのみとしてもよい。濾過媒体の非限定的な例としては、バイオ炭、ゼオライト、砂、珪藻土等が挙げられる。一部の実施形態において、濾過媒体を固体担体、例えば分離カラム又は充填床中に保持させてもよい。次に、流体と組成物の間の接触を促進するのに好適な流量で、固体担体中の濾過媒体に流体を通してもよい。他の実施形態において、濾過媒体と流体を好適な容器内で組み合わせてもよく、好適な期間後、濾過媒体を残留流体から分離してもよい。濾過媒体は、沈殿、圧縮、ふるい分け、遠心分離、又は他の任意の好適な分離方法によって、流体から分離してもよい。
【0078】
一部の実施形態において、組成物と材料を短時間接触させてもよい。例えば、比較的高速度で組成物に流体を流してもよい。他の実施形態において、組成物と材料を所望の滞留時間接触させてもよい。例えば、滞留時間は少なくとも1時間、1日、又は1週間であってもよい。滞留時間が長くなると、組成物中の細菌が増殖してバイオ界面活性剤を分泌することが可能になることができ、これにより、バイオ界面活性剤の産生が多くなり、バイオ界面活性剤と炭化水素含有材料の間の接触が多くなる。
【0079】
一部の実施形態において、比較的低温、例えば、100℃未満、50℃未満、25℃未満又はそれより低い温度で、組成物と材料を接触させてもよい。一部の実施形態において、温度は室温、すなわち熱の入力を伴わない周囲環境の温度であってもよい。他の実施形態において、例えば炭化水素含有材料の粘度を下げるように、温度を上げてもよい。温度は、電気加熱、電磁加熱、マイクロ波加熱、又は他の任意の好適な加熱手段によって上げることができる。
【0080】
一部の実施形態において、組成物の炭化水素含有材料に対する比は、約50:1である。一部の実施形態において、組成物は、組み合わされた組成物と炭化水素含有材料の混合物のうちの約1質量%~約50質量%を占める。一例として、約98質量%の炭化水素含有材料を約2質量%の組成物と組み合わせてもよい。他の実施形態において、他の任意の好適な比を使用してもよい。
【0081】
一部の実施形態において、組成物は陰極液、特に安定化又は強化された陰極液を更に備える。
【0082】
一部の実施形態において、炭化水素含有材料は、材料と組成物を接触させる前に分析してもよい。例えば、材料を分析して炭化水素含有量、水含有量、固体含有量、pH、導電率等を決定してもよい。材料の分析を用いて、組成物の好適な投入量、及び/又は材料の更なる処理が望ましいかどうかを決定してもよい。例えば、投入プロトコルをIFT(界面張力)、剪断角及び動力学的な別の実験室テストによって規定してもよい。
【0083】
一部の実施形態において、材料は、材料と組成物を接触させる前に処理してもよい。一例として、例えば水の添加又は水の除去(例えば、蒸発による)によって、材料の水含有量を調節してもよい。別の例として、例えば遠心分離によって材料を濃縮してもよい。別の例として、比較的大きな粒子を含有する炭化水素含有粒状物質を破砕してより細かい形態にしてもよい。
【0084】
図2は、炭化水素含有材料から炭化水素の少なくとも一部分を分離するための別の例示的な方法200のフローチャートである。方法200は、上記の炭化水素含有粒状物質又は多相流体に使用してもよい。
【0085】
ブロック202において、リグニン、及びバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株を含む組成物を用意する。ブロック202の工程は、上記の方法100のブロック102の工程と同様であってもよい。
【0086】
ブロック204において、組成物を炭化水素含有材料と混合して混合物を形成する。組成物と混合物は、撹拌、通気、かき混ぜ、反転、ブレンド、均質化、又は他の任意の好適な方法によって混合してもよい。
【0087】
一部の実施形態において、組成物と材料は、以下でより詳細に説明する、混合装置で混合する。他の実施形態において、組成物と材料は、例えばかき混ぜ又は撹拌により、手動で混合してもよい。
【0088】
ブロック206において、混合物中に液体を導入してスラリーを形成する。一部の実施形態において、液体は水を含んでもよい。水は、例えば、淡水、塩水、ブライン、生成した地下水、又は他の任意の好適な種類の水を含んでもよい。他の実施形態において、液体は別の好適な溶媒を含んでもよい。一部の実施形態において、液体は前述の陰極液を含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、混合物に液体を添加する。他の実施形態において、液体に混合物を添加する。一部の実施形態において、例えば上のブロック204で記載した混合技術のうちのいずれかを使用して、液体と混合物を一緒に混合してもよい。
【0090】
一部の実施形態において、(材料が固有の水をほとんど~全く含まない場合)、約25質量%~約100質量%の液体を混合物に添加してもよい。一部の実施形態において、約50質量%の液体を混合物に添加してもよい。他の実施形態において、他の任意の好適な量の液体を使用してもよい。
【0091】
液体を導入する前に組成物と材料を組み合わせることにより、液体中で組成物が希釈されることが避けられ、これにより材料とリグニンと組成物のバイオ界面活性剤との間の接触を最大にすることができる。しかしながら、工程の代替の順序も可能である。例えば、一部の実施形態において、材料と組成物を混合する前に液体を導入してもよい。或いは、液体を組成物自体に添加してもよく、組成物/液体混合物を炭化水素含有材料と混合してもよい。更に、炭化水素含有材料が比較的高い水含有量を既に有する実施形態において、ブロック206の工程を全体的に省いてもよく、液体の更なる添加が必要ではないことがある。
【0092】
ブロック208において、スラリーを少なくとも2相に分離させてもよい。一部の実施形態において、重力下でスラリーを分離させてもよい。一部の実施形態において、以下でより詳細に記載する分離容器でスラリーを分離させてもよい。
【0093】
一部の実施形態において、かき混ぜ、撹拌等によって分離を促進してもよい。他の実施形態において、遠心分離によってスラリーの分離を促進してもよい。他の実施形態において、超音波分離技術によってスラリーの分離を促進してもよい。
【0094】
2つ以上の相は、例えば液体炭化水素(油)相、水性相及び固体粒子相を含んでもよい。組成物のリグニン及び細菌は、水性相に移動すると予想される。一部の炭化水素含有材料は、エマルション相、気相等になることもある。一部の実施形態において、2つ以上の相は、2つ以上の比較的明確な層として存在する。2つ以上の層は典型的に境界で分離していることがあるが、層は明確な境界なしで存在することもありうる。
【0095】
一例として、2つ以上の層は、上層、中層及び下層を含んでもよい。上層は炭化水素を主として含んでもよく、中層は水を主として含んでもよく、下層は粒状物質を主として含んでもよい。この配置は炭化水素の密度が水よりも低いときに生じることがあり、これは上記の炭化水素含有材料の大半で予想される。しかしながら、炭化水素の密度が水よりも高い場合、上層が水を主として含んでもよく、中層が炭化水素を主として含んでもよい。
【0096】
他の実施形態において、2つ以上の相が両方ともに層を形成せずに存在することがある。例えば、炭化水素(油)の液滴が水性相中に存在することがある。
【0097】
一部の実施形態において、方法200は、ブロック208の工程に続き、分離した相のうちの1つ又は複数を少なくとも部分的に除去する工程を更に含む。この文脈における「除去する」という用語は、1つの相からの物質を、別の相の物質から単離、分離、隔離又は隔絶することを指しうる。例えば、上層の炭化水素の少なくとも一部分を、分離した混合物の頂部からすくい取ってもよい。別の例として、粒状物質の少なくとも一部分を、分離した混合物の底部から抜き出してもよい。
【0098】
一部の実施形態において、分離した相を2段階以上で除去してもよい。例えば、分離した相のうちの1つ又は複数を混合物から少なくとも部分的に除去してもよく、混合物の残りを第2の分離工程にかけてもよい。第2の分離工程は、例えば、更なる重力分離、デカンテーション、蒸留、蒸発、遠心分離、又は他の任意の好適な分離技術を含んでもよい。
【0099】
一部の実施形態において、分離した相のうちの1つ又は複数を少なくとも部分的に除去した後、混合物を再度分離させてもよい。一部の実施形態において、混合物をまず撹拌するか又はかき混ぜを行って、分離した相を再び組み合わせ、次に再度分離させてもよい。
【0100】
一部の実施形態において、除去した物質を更なる処理、使用及び/又は処分に供してもよい。好ましくは、混合物から除去した炭化水素を商業的な炭化水素製品、例えばビチューメン、重油燃料油、精製用供給原料等として使用してもよい。
【0101】
一部の実施形態において、粒状物質を処分する(例えば、環境に戻す)か、又は他の目的で使用してもよい。一部の実施形態において、処分又は使用の前に粒状物質を清浄にしてもよい。粒状物質は、任意の好適な技術、例えば水での洗浄及び/又は微生物分解によって清浄にしてもよい。
【0102】
同様に、水を処分又は使用してもよい。一部の実施形態において、処分又は使用の前に水を清浄にしてもよい。水は、濾過、微生物分解、又は他の任意の好適な技術によって清浄にしてもよい。一部の実施形態において、上記のブロック206の液体として水を再使用してもよい。他の実施形態において、回収した炭化水素と水を組み合わせてこれらの粘度を下げる、及び/又は回収した炭化水素を下流に移動させる(例えば、回収した炭化水素をパイプラインで製油所に移動させる)ことができる。一部の実施形態において、リグニン及び/又は単離菌株の細菌の少なくとも一部分を再使用又は処分のために水から回収してもよい。
【0103】
したがって、方法100及び200により、毒性があり高価な可能性がある化学物質を使用することなく、炭化水素含有材料から炭化水素の少なくとも一部分を分離することが可能になりうる。組成物のリグニン/細菌は水性相に自動的に移動するため、炭化水素のレオロジーは本明細書に記載の方法の実施形態によって変わらない。加えて、ブロック206で添加する水は回収及び再使用することができるので、方法100及び200は実質的な水の使用を必要としないことができる。更に、方法100及び200は熱を加えずに行うことができ、したがってエネルギー必要量は比較的少なくなりうる。
【0104】
図3は、上記の方法100及び200の1つ又は複数の実施形態を実施することができる例示的なシステム300を示している。
【0105】
システム300は、混合装置302及び分離装置304を備えてもよい。好適な混合装置の非限定的な例としては、タンブラーミキサー、撹拌機、ドラムミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー、ホモジナイザー、又は他の任意の好適な混合装置が挙げられる。
【0106】
リグニン、及びバイオ界面活性剤を産生することができる細菌の少なくとも1種の単離菌株、並びに使用する場合は陰極液を含む組成物と、上記の炭化水素含有材料とを混合装置302に入れてもよい。組成物及び材料をそこで混合して混合物を生成してもよい。
【0107】
分離装置304は、その中に混合物及び好適な液体を受け入れて、混合物を2相以上に分離するように構成されていてもよい。一部の実施形態において、分離装置304は、混合物が重力下で分離しうる容器である。他の実施形態において、分離装置304は、重力分離を加速又は促進するように構成されていてもよい。一部の実施形態において、分離装置304は、従来の砂洗浄プラントを備えてもよい。他の実施形態において、分離装置304は、遠心分離機、超音波分離機、又は他の任意の好適な種類の分離装置であってもよい。
【0108】
図3に示されているように、この実施例では、分離装置304において、混合物が上相306、中相308及び下相310に分離する。例えば、上相306は炭化水素を含んでもよく、中相308は水又は廃陰極液等を含んでもよく、下相は砂又は他の粒状物質を含んでもよい。一部の実施形態において、分離装置304は、相306、308、310のうちの1つ又は複数からの物質の除去を可能にするように、1つ又は複数の出口(示さず)を有する。
【0109】
一部の実施形態において、システム300は、第2の分離装置(図示せず)を更に備えてもよい。第2の分離装置は、分離装置304から除去された物質を受け入れて、除去された物質を2相以上に更に分離させるように構成されていてもよい。一部の実施形態において、第2の分離装置は、油/水分離機を備えてもよい。油/水分離機は、上相306及び/又は中相308の少なくとも一部分を受け入れて、混合物の炭化水素及び水の含有分を更に分離するように構成されていてもよい。他の実施形態において、第2の分離装置は、デカンター、蒸留塔、圧力分離器、遠心分離機、開放タンク、又は混合物を分離するための当技術分野で公知の他の分離機を備えてもよい。
【0110】
他の実施形態において、単一の装置が、混合装置304及び分離装置306の機能を組み合わせてもよい。他の実施形態において、混合装置304を省いてもよく、組成物と炭化水素含有材料を分離装置306又は別の容器内において手動で混合してもよい。他の変形も可能である。
【実施例】
【0111】
これより本発明を、以下の非限定的な実施例を参照しながら単なる例として更により詳細に記載する。
【0112】
(実施例1)-室温における炭化水素/水/砂エマルションの相分離
室温での炭化水素/水/砂エマルションの分離における、例示的組成物の性能を調べた。エマルションは、軽質油及び重質油の試料を使用して作成した。試験したもう一方の変数は、エマルションの水/油の比であった。
【0113】
例示的組成物は「ActiVata X」というラベル表示をし、40~55%液体リグノスルホン酸ナトリウム(分子式:C20H24Na2O10S2、CAS番号:8061-51-6)及びバイオ界面活性剤産生細菌の単離菌株の組合せを含んでいた。
【0114】
この実施例の全ての実験は、Heriot-Watt大学のHydrates,Flow Assurance&Phase Equilibriaグループの研究室で行った。
【0115】
実験の材料及び方法
実験を行うため、以下の物質:砂、軽質油試料、重質油試料、蒸留水、及びActiVata Xを使用してエマルションを調製した。
【0116】
油/水/砂のエマルションからの炭化水素の分離におけるActiVata Xの性能を、静的エマルション安定性測定法を使用して調べた。異なる油試料を使用し、2種の水/油比で調製したエマルションに対して試験を行った。より正確な結論を得るため、各場合において、ActiVata Xを含有する試料(「実験試料」と呼ぶ)を、この添加剤を含まない同様の試料(「参照試料」と呼ぶ)と比較した。したがって、下記の手順を用いて、実験試料及び参照試料を調製した。
【0117】
参照試料調製:参照試料を調製するため、分散ユニット(IKA社 T18 basic-ULTRA TURRAX)を使用して、ビーカー内で油40質量%、水40質量%及び砂20質量%を混合した。混合プロセスは、軽質油試料については10000rpm、重質油試料については6000rpmで、5分間続けた。
【0118】
実験試料調製:実験試料は、油39質量%、水39質量%、ActiVata X 2質量%及び砂20質量%を混合することにより作製した。参照試料の調製と同様に、次に混合物を、軽質油試料については10000rpm、重質油試料については6000rpmで5分間混合した。
【0119】
参照試料及び実験試料を使用して、下記のように水の含有量を変化させてエマルションを調製した。
【0120】
軽質油のエマルション(水なし):参照試料及び実験試料を、軽質油を用いて上記のように調製した。試料には、最終混合前に追加の水を添加しなかった。
【0121】
軽質油のエマルション+100質量%の水:参照エマルション及び実験エマルションを、軽質油を用いて調製した。最終混合の前に100質量%の水を添加した。最終の参照及び実験エマルションを観察して、あらゆる相変化を確認した。
【0122】
軽質油のエマルション+51.8%の水:参照試料及び実験試料を、軽質油を用いて調製した。最終混合の前に51.8質量%の水を添加した。
【0123】
重質油のエマルション+100質量%の水:参照エマルション及び実験エマルションを、重質油を用いて調製した。試料に100質量%の水を添加し、次に試料を6000rpmで5分間混合した。最終の参照及び実験エマルションを経時的に観察して、あらゆる相変化を確認した。
【0124】
砂試料:軽質油エマルションから分離した油中に懸濁した砂の量を確認するため、51.8質量%の追加の水を含む実験軽質油エマルション中の油相から試料を取った。次に、濾紙で純粋なデカンを使用して油試料を数回洗浄して、砂粒から油を洗い流した。51.8質量%の追加の水を含む参照軽質油エマルションから取った試料に対し、同様の手順を同時に行った。
【0125】
実験結果及び考察
実験の結果は、エマルションの調製に使用した油の種類及び最終エマルションの油/水比に基づいて分類することができる。
【0126】
追加の水を含まない軽質油:これらの測定の結果は
図4に示されている。参照試料については相分離が非常に遅かったが、実験試料(
図4で「X」とラベル表示されている)については油相分離がはるかに速く起こった。実験試料について、異なる時間で分離した水の百分率が表1に示されている。72時間後に参照試料から分離した水の総体積は3%未満であった。
【0127】
【0128】
100%の水を含む軽質油:
図5からわかるように、参照試料において、相分離は非常に急速に始まった。時間が経つにつれ、エマルションから水及び砂が分離し、懸濁した砂粒がメスシリンダーの底に沈殿した。これにより、分離した水がより透き通って透明になった。参照試料と比較して、2質量%のActiVata Xを含有する実験試料は安定なエマルションであるように見え、数日後でさえも相分離は観察されなかった。
【0129】
51.8質量%の水を含む軽質油:
図6に示されているように、実験と参照の両方の試料について、相分離が観察された。
図7は、13日後の実験試料を示している。
図7に示されているように、ビーカーの底に沈殿した清浄な砂(S)粒の層を観察することができる。底から頂部に向けて、第2の層は分離した水(W)のカラムであるが、ActiVata Xの暗色により、水もActiVata Xと同じ色である。水の上の次の層はエマルション(E)であり、より明るい色を有する。時間が経つにつれ、水、油、及び砂の分離に伴ってこの層の厚さが減った。最後に、ビーカー内の混合物の頂部に油(O)の厚い層を見ることができる。加えて、通常の目視検査に基づき、ActiVata Xを含有するビーカー内の沈殿した砂は、参照試料の沈殿した砂粒よりも清浄であるように見える。
【0130】
100%の水を含む重質油:
図8に示されているように、試料の調製後数分で、ActiVata Xを含有する実験試料で相分離が起こった。
【0131】
分離した油の砂含有量:51.8質量%の水が存在する軽質油エマルションの参照試料及び実験試料から取った試料中の砂の質量百分率の比較により、エマルション中のActiVata Xの存在下で砂の濃度がより低いことが示されている。参照試料では、砂の質量%は6.6%であることが見出された。しかしながら、ActiVata Xを含有する試料中で測定された砂含有量は5.4%であった。
【0132】
考察:上記のように、100質量%の追加の水を含む軽質油試料を使用して調製したエマルションでは、ActiVata Xの存在は相分離の改善において効果的ではなかった。参照エマルションで相分離は速く起こったが、実験試料において、分離した相が全くない安定なエマルションが観察された。
【0133】
51.8質量%の追加の水を含む軽質油エマルションでは、参照と実験の両方の試料で相分離が観察された。したがって、ActiVata Xは軽質油に対して効果的な解乳化剤ではない可能性がある。しかしながら、油相中の砂含有量の測定の結果から、ActiVata Xを含有する試料において油相中に存在する砂がより少ないことが示された。
【0134】
軽質油試料と対照的に、重質油のエマルション中のActiVata Xの存在は、エマルションの相分離に効果的であった。また、ActiVata Xの存在する重質と軽質の両方の試料で、油中で検出可能な変化は観察されなかった。
【0135】
本明細書において開示される概念から逸脱することなく、既に記載されたものの他に様々な改変が可能である。更に、本開示の解釈において、全ての用語は、文脈と矛盾しない可能な最も広い様式で解釈すべきである。特に、「含む(本願の外国語明細書及び外国語特許請求の範囲の中のcomprises及びcomprising)」という用語は、非排他的に要素、成分又は工程を指すと解釈すべきであり、これは、言及された要素、成分又は工程が、明示的に言及されていない他の要素、成分又は工程と共に存在するか若しくは利用されてもよく、又はそれらと組み合わされてもよいことを示す。
【0136】
特定の実施形態を示して説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変がなされうることが当業者に理解される。前述の明細書で使用した用語及び表現は、本明細書において説明の用語として使用したものであり、限定するものではなく、このような用語及び表現の使用において、示して説明した特徴又はその一部の均等物を除外する意図はない。
【符号の説明】
【0137】
300 システム
302 混合装置
304 分離装置
306 上相
308 中相
310 下相
【国際調査報告】