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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】連続流中の正浸透膜の完全性の評価
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
A61M1/16 163
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561888
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022058922
(87)【国際公開番号】W WO2022214446
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,853
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2150992-2
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501473877
【氏名又は名称】ガンブロ・ルンディア・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルティア, クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC08
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH20
4C077LL02
4C077LL05
(57)【要約】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための制御装置(10)、溶液生成装置(1)および方法。透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成されるFOデバイス(2)。FO膜(2c)は、FOデバイス(2)の第1側(2a)を第2側(2b)から分離する。方法は、電解質溶液を第1側(2a)に通過させること(S1)と、低電解質溶液を第2側(2b)に通過させること(S2)と、を含む。方法は、第2側(2b)から生成される溶液の導電率を測定すること(S3)と、測定された導電率が導電率基準を満たすか否かに基づいてFO膜(2c)の完全性を評価すること(S6)と、をさらに含み、導電率基準は、無傷または完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて第2側(2b)から生成された溶液の導電率を含むか、または、定義する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための方法であって、前記FOデバイス(2)は、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成され、前記FO膜(2c)は、FOデバイス(2)の第1側(2a)と第2側(2b)とを分離し、前記方法は、
前記第1側(2a)に電解質溶液を通過させること(S1)と、
前記第2側(2b)に低電解質溶液を通過させること(S2)と、
前記第2側(2b)から生成される溶液の導電率を測定すること(S3)と、
測定された前記導電率が導電率基準を満たすか否かに基づいて、前記FO膜(2c)の完全性を評価すること(S6)であって、前記導電率基準は、完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて前記第2側(2b)から生成された溶液の導電率を含む、ことと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記完全性の評価(S6)は、測定された前記導電率が前記低電解質溶液の導電率から閾値よりも大きい導電率の変化を示すと、前記FO膜の完全性の欠如と判定することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記閾値は、前記低電解質溶液の導電率および前記FOデバイス(2)中の前記低電解質溶液の所定の希釈比に基づく、方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、前記第2側(2b)における静水圧よりも低い静水圧で前記第1側(2a)に前記電解質溶液を通過させること(S1)を含み、それによって前記第1側(2a)から前記第2側(2b)への溶質移動を不能にし、それによって、判定された前記FO膜の完全性の欠如は、前記FO膜の溶質拡散エラーを示す、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記第2側(2b)における前記静水圧よりも高い静水圧で前記第1側(2a)に前記電解質溶液を通過させること(S4)と、前記第2側(2b)から生成される前記溶液の導電率を測定すること(S5)と、測定された前記導電率が前記第1側(2a)においてより低い前記静水圧で検出された導電率変化よりも大きい導電率変化を示すと、前記FO膜の完全性の前記欠如が、前記FO膜におけるリークに起因すると判定すること(S6)と、を含む、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法であって、(i)前記第1側(2a)から前記第2側(2b)への拡散水輸送を可能にする、前記第1側(2a)の浸透圧よりも高い前記浸透圧で前記第2側(2b)に低電解質溶液を通過させること(S2)、または、(ii)前記第2側(2b)から前記第1側(2a)への拡散水輸送を可能にする、前記第1側(2a)の浸透圧よりも低い前記浸透圧で前記第2側(2b)に低電解質溶液を通過させること(S2)を含む、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法であって、前記低電解質溶液は、グルコース溶液である、方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法であって、前記低電解質溶液は、水である、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法であって、前記電解質溶液は、透析治療からの排出液である、方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法であって、前記電解質溶液は、希釈された電解質濃縮液である、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法であって、前記低電解質溶液は、0から0.5mS/cmの範囲の導電率を有し、任意で、0.1mS/cm未満の導電率を有する、方法。
【請求項12】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための制御装置(10)であって、前記FOデバイス(2)は、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成され、前記FO膜(2c)は、前記FOデバイス(2)の第1側(2a)と第2側(2b)とを分離し、前記制御装置(10)は、
電解質溶液の流れを提供するように構成された排出液ポンプ(3)と、
低電解質溶液の流れを提供するように構成された濃縮液ポンプ(5)と、
前記第2側(2b)から生成される溶液の導電率をセンシングするように構成された導電率センサ(7)と、を備え、
前記制御装置(10)は、
前記排出液ポンプ(3)を使用して、前記第1側(2a)に電解質溶液を通過させ、
前記濃縮液ポンプ(5)を使用して、前記第2側(2b)に低電解質溶液を通過させ、
前記導電率センサ(7)を使用して、前記第2側(2b)から生成される溶液の導電率を測定し、
測定された前記導電率が導電率基準を満たすか否かに基づく前記FO膜(2c)の完全性を評価であって、前記導電率基準は、完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の溶液を用いて前記第2側(2b)から生成された溶液の導電率を含む、完全性の評価をするように構成される、制御装置。
【請求項13】
透析液を生成するための溶液生成装置(1)であって、前記装置は、正浸透(FO)デバイス(2)であって、前記FOデバイス(2)の第1側(2a)と第2側(2b)とを分離するFO膜(2c)を含むFOデバイス(2)を備え、前記装置は、請求項12に記載の制御装置(10)をさらに備える、溶液生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透析の分野および正浸透膜の完全性テストに関し、特に、透析液生成装置に配された正浸透膜の完全性を評価することに関する。
【背景技術】
【0002】
透析は、腎不全を患う患者を治療するために一般に使用される。血液透析(HD)、腹膜透析(PD)および持続的腎代替療法(CRRT)などの複数タイプの透析治療が存在する。典型的には、透析液が、治療に使用され、透析液は、バッグ内の既成としてデリバリされるか、または、濃縮液と水とを混合することによって使用時に生成される。
【0003】
正浸透(FO)は、水消費を低減するポテンシャルを有するため、透析液を生成するための選択肢として持ち上がってきた。FO膜は、典型的には水分子に対して多かれ少なかれ選択的であるように設計され、これによって、FO膜は、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。しかしながら、検出されない完全性の問題は、FO膜を横切る水以外の成分の輸送を可能にしうる。
【0004】
したがって、生成された透析液が損なわれないように、このような完全性の問題を検出する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示のFO膜は、透析液を調製するために使用される。FO膜は、1つの実施形態において、水分子に対して多かれ少なかれ選択的であり、これによって、FO膜は、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。FO膜によって分離された、供給液(例えば、透析治療からの水または排出液)と、引出液(透析濃縮液)と、の間の浸透圧差が、供給液から透析濃縮液へ純水を抽出するために使用され、それによって透析濃縮液を希釈する。希釈された透析濃縮液は、その後、透析液を生成するために使用される。本開示の制御装置および方法は、FO膜の完全性の問題を検出し、FO膜を横切る水以外の成分の輸送によって生成される透析液の組成の変化を抑制することを可能にする。
【0006】
したがって、本開示の目的は、正浸透膜の完全性を評価するためのシンプルかつ信頼性がある方法を提供することである。さらなる目的は、オンラインまたは透析液の調製中に、正浸透膜の完全性を評価するための方法を提供することである。
【0007】
これらの目的および他の目的は、独立請求項による方法、制御装置および透析液生成装置によって、および、従属請求項による実施形態によって、少なくとも部分的に達成される。
【0008】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる第1態様によると、本開示は、透析液生成装置における正浸透(FO)デバイスのFO膜の完全性を評価するための方法に関する。FOデバイスは、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成される。FO膜は、FOデバイスの第1側を第2側から分離する。方法は、電解質溶液をFO膜の第1側に通過させ、低電解質溶液をFO膜の第2側に通過させることを含む。方法は、第2側から生成される溶液の導電率を測定することと、測定された導電率が導電率基準を満たすか否かに基づいてFO膜の完全性を評価することであって、導電率基準は、無傷または完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて第2側から生成された溶液の導電率を含むか、または、定義する、ことと、をさらに含む。
【0009】
提供される方法は、FO膜の完全性を簡単かつ信頼できる方法で評価するもので、同等な、したがって、同じ溶液と完全性を有するFO膜とを用いて、第2側から生成される溶液の導電率が、第2側から生成される溶液の予想される導電率にどの程度対応するかを評価する。方法は、使用のためにFO膜が設置された同じ装置を用いて行われてもよく、それによって、FO膜の完全性は、ほぼいつでも同じ装置、したがって、オンラインでテストされてもよい。また、製造のために後で使用されるものと同じ液体が、方法において使用されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態によると、完全性を評価することは、測定された導電率が低電解質溶液の導電率から閾値よりも大きい導電率の変化を示すと判定した場合に、FO膜の完全性の欠如と判定することを含む。したがって、低電解質溶液の導電率をベースラインとして使用することによって、健全な完全性テストを行うことができる。
【0011】
いくつかの実施形態によると、閾値は、低電解質溶液の導電率およびFOデバイス中の低電解質溶液の所定の希釈比に基づく。したがって、閾値は、FO膜上の予想される溶質拡散に基づく。
【0012】
いくつかの実施形態によると、方法は、第2側における静水圧よりも低い静水圧で第1側に電解質溶液を通過させることを含み、それによって第1側から第2側への溶質移動を不能にし、それによって、判定されたFO膜の完全性の欠如は、FO膜の溶質拡散エラーを示す。これによって、完全性エラーの原因が、さらに特定されうる。
【0013】
いくつかの実施形態によると、方法は、第2側における静水圧よりも高い静水圧で第1側に電解質溶液を通過させることと、第2側から生成される溶液の導電率を測定することと、測定された導電率が第1側においてより低い静水圧で検出された導電率変化よりも大きい導電率変化を示すと判定したときに、FO膜の完全性の欠如がFO膜におけるリークを示すと判定することと、を含む。これによって、完全性エラーの1つ以上原因が、さらに特定されうる。
【0014】
いくつかの実施形態によると、方法は、第1側から第2側への拡散水輸送を可能にする、低電解質溶液を第1側の浸透圧よりも高い浸透圧で第2側に通過させることを含む。したがって、両側の浸透圧差は、透析液生成中の実際の条件を模倣することができ、より現実的な条件下での完全性テストを可能にする。
【0015】
いくつかの実施形態によると、方法は、第2側から第1側への拡散水輸送を可能にする、低電解質溶液を第1側の浸透圧よりも低い浸透圧で第2側を通過させることを含む。したがって、グルコースなどの他の低電解質溶液よりも安価な溶液である水などの低電解質溶液が使用されうる。
【0016】
いくつかの実施形態によると、低電解質溶液は、グルコース溶液である。したがって、導電率がゼロに近い容易に利用可能な溶液が使用され、それによって、低電解質溶液と混合する任意の電解質溶液が、導電率センシングによって容易に検出される。
【0017】
いくつかの実施形態によると、低電解質溶液は、水である。したがって、低導電率の容易に利用可能な低コストの液体が使用され、それによって、低電解質溶液と混合する任意の電解質溶液が、導電率センシングによって容易に検出される。
【0018】
いくつかの実施形態によると、電解質溶液は、透析治療からの排出液である。したがって、容易に利用可能な電解質溶液が使用されうる。
【0019】
いくつかの実施形態によると、電解質溶液は、希釈された電解質濃縮液である。したがって、容易に利用可能な電解質溶液が使用されうる。
【0020】
いくつかの実施形態によると、低電解質溶液は、0から0.5mS/cmの範囲の導電率を有し、1つの実施形態において0.1mS/cm未満の導電率を有する。したがって、低電解質溶液と混合する任意の電解質溶液は、導電率センシングによって容易に検出される。
【0021】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる第2態様によると、本開示は、透析液生成装置における正浸透(FO)デバイスのFO膜の完全性を評価するための制御装置に関する。FOデバイスは、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成され、FO膜は、FOデバイスの第1側を第2側から分離する。制御装置は、電解質溶液の流れを提供するように構成された排出ポンプと、低電解質溶液の流れを提供するように構成された濃縮ポンプと、第2側から生成される溶液の導電率をセンシングするように構成された導電率センサとを備える。制御装置は、排出ポンプを使用して第1側に電解質溶液を通過させ、濃縮ポンプを使用して第2側に低電解質溶液を通過させるように構成される。制御装置は、導電率センサを使用して、第2側から生成される溶液の導電率を測定するように、さらに構成される。制御装置は、測定された導電率が導電率基準を満たすか否かに基づくFO膜の完全性の評価であって、導電率基準は、無傷または完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて第2側から生成された溶液の導電率を含むか、または、定義する、完全性の評価をするように、さらに構成される。
【0022】
いくつかの実施形態によると、制御装置は、第1態様による本明細書に記載された任意の実施形態を実行するように構成される。
【0023】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる第3態様によると、本開示は、透析液を生成するための溶液生成装置に関する。装置は、正浸透デバイスの第1側と第2側とを分離するFO膜を備えるFOデバイスを備える。装置は、第2態様による制御装置をさらに備える。
【0024】
第4態様によると、本開示は、第1態様による方法を第2態様による制御装置に実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0025】
第5態様によると、本開示は、第4態様のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態によるFOデバイスの概略図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による透析液生成装置の例を示す。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態によるFOデバイスのFO膜の完全性を評価するための方法を示す。
図4図4は、図3に示される方法の実施から取得されるテスト結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、正浸透(FO)膜の完全性を評価するための方法が説明される。FO膜は、透析液を生成するための透析液生成装置のFOデバイスに用いられ、その後、透析液を生成するために用いられる。膜の完全性は、完全なコンディションにおける完全な膜の品質または状態として定義されうる。したがって、完全性を有するFO膜は、無傷であり、いかなる形でも損傷または障害はない。FO膜は、例えば、製造エラーまたは摩耗に起因して、損なわれた完全性を経験する。損なわれた完全性は、リーク(溶質移動)または選択性の低下などの完全性の問題の原因になりえ、これは、FO膜を通る拡散溶質輸送(溶質流動)の速度の上昇の原因になる。検出されなかった完全性の問題は、FO膜を横切る水以外の成分の輸送を可能にすることによって、生成された透析液の組成を変化させる可能性がある。例えば、リークは、供給側(排出液または水道水)から引出側(混合側)への微生物の輸送を可能にし、例えばPDの場合に腹膜炎のリスクを増加させうる。さらに、リークは、供給側(排出液または水道水)から引出側(混合側)への溶質(電解質、グルコース、尿素など)の輸送を可能にし、それによって生成される透析液の組成を変化させうる。また、拡散電解質輸送の速度の上昇は、溶質(電解質、グルコース、尿素など)が生成された透析液の組成を著しく変更させる速度で、一方向または両方向にFO膜を横切って拡散するリスクを示しうる。
【0028】
本開示に記載されるように、適切な供給溶液および引出溶液を使用することによって、および、生成される溶液の導電率の測定に基づいて、FO膜が透析流体生成装置に設置された後に、そのような完全性の問題を検出することが可能であることが見出された。どの溶液が使用されるかに応じて、通常、引出側と呼ばれる側は、代わりに供給側であってもよい。したがって、以下ではFOデバイスの両側は、第1側および第2側と呼ばれ、生成される溶液は、第2側から生成される溶液である。第2側に低電解質溶液を有することによって、第2側への拡散溶質輸送の小さなリークまたは小さな上昇速度もまた、生成される溶液の導電率測定によって検出されえ、それは、同じ動作条件で完全性を有するFO膜を使用して、生成される溶液が何れの導電率を有するべきかを予め決定するためである。第1側から第2側への対流的な液の流れ(生成中の供給側から引出側への流れ)は、例えば、患者の排出液を液体生産側へ運ぶ危険性をもたらし、それによって、生成された液体の組成を変化させるため、重要である。反対方向の対流的な液の流れは、生成された液体の組成を変化させないため、それほど重要ではない。リークが逆流バルブとして作用し、一方向にしかリークを許容しない可能性に起因して、リークの検出方法は、最も関心のある方向(供給側から引出側)のリークをテストすることが望ましい。したがって、第2側から生成される溶液の導電率が、ここではテストされる。
【0029】
一般に、水および溶質の拡散輸送は、溶質の濃度差、すなわち、第1側と第2側との間の濃度差によって駆動される。溶質移動(リークによって引き起こされる)は、膜間圧力差(TMP)、すなわち、第1側と第2側との間の圧力差によって駆動される。
【0030】
いくつかの実施形態において、評価は、透析液の生成に使用される既存の技術および濃縮液に依拠する。例えば、透析液の生成中に、第2側から生成される溶液の導電率をセンシングするための導電率センサが既に存在し、その同じセンサが、本評価のために使用されうる。第2側を通過する溶液は、例えば、透析液生成装置に既に接続されているグルコース溶液または純水である。第1側の溶液は、例えば、排出液容器において容易に利用可能でありうる透析治療からの排出液であり、または、通常の透析治療中に直接患者から採取されうる。代わりに、第1側の溶液は、緩衝溶液とも呼ばれる希釈された電解質溶液である。次いで、希釈された電解質溶液は、第2側における溶液の容積浸透圧モル濃度を実質的に下回る容積浸透圧モル濃度に希釈されうる。
【0031】
以下、本開示の実施形態が、図1から図4を参照して説明される。図1は、いくつかの実施形態による、単独のFOデバイス2の概略図である。FOデバイス2は、第1側2a、例えば供給側と、FO膜2cによって分離された第2側部2b、例えば引出側と、を備える。側面は、本明細書ではコンパートメントまたはチャンバとも呼ばれうる。FOデバイス2は、典型的に、第1側2a、第2側2b、および、FO膜2cを囲むカートリッジを含む。FO膜2cの形状は、フラットシートまたは管状または中空繊維でありうる。FO膜2cは、水透過性膜である。FO膜2cは、浸透水分子に対して多かれ少なかれ選択的であるように設計され、これによって、FO膜2cは、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。FO膜2cは、典型的には、ブロックされることが意図される溶質に応じて、ナノメートル(nm)の範囲、例えば、0.5から5nm以下の孔径を有する。使用中、FO膜2cは、供給側の溶液(典型的には供給溶液)と第2側の溶液(典型的には引出溶液)とを分離する。これら両側の液体は、典型的には、向流で流れるが、代わりに、並流で流れてもよい。1つの実施形態において、流れは、連続的な流れであり、したがって、流れは、中断されずに流れる。第1側2aは、溶液が第1側2aに入る入口ポートEinと、溶液が第1側2aから出る出口ポートEoutと、を有する。第2側2bは、他の溶液が第2側2bに入る入口ポートLinと、他の溶液が第2側2bから出る出口ポートLoutと、を有する。一方の溶液は、脱水され、他方の溶液は、溶液間の浸透圧差に応じて希釈される。FOデバイス2に適したFOデバイスは、例えば、AquaporinTM、AsahiKASEITM、BerghofTM、CSMTM、FTSHTM、Koch Membrane SystemsTM、PoriferaTM、ToyoboTMおよびTorayTMによって提供されてもよい。
【0032】
透析液を生成するために、水は、浸透圧差によって、第1側2aの供給溶液から第2側2bの引出溶液へと抽出される。供給溶液は、例えば、水または排出液である。いくつかの実施形態において、排出液は、約8bar(116psig)の浸透圧を有する。引出溶液は、例えば、透析濃縮液であり、抽出された水は、透析濃縮液を、「希釈された透析濃縮液」、「中間透析液」または単に「透析液」とも呼ばれうる透析液に希釈する。本開示において、透析濃縮液は、電解質溶液と呼ばれることがあり、希釈された透析濃縮液は、希釈された電解質溶液と呼ばれることがある。透析濃縮液は、例えば、複数のNaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、HAc、グルコース、乳酸塩および重炭酸塩のうちの少なくとも1つを含む濃縮液である。例えば、透析濃縮液は、NaCl、CaCl2、MgCl2およびNa-乳酸塩を含みうる。
【0033】
いくつかの実施形態において、透析濃縮液は、約70bar(1015psig)の浸透圧を有する。透析液は、PD、HD、CRRTまたは透析液を治療液または置換液として使用する他の任意の透析治療(例えば、濾過後の血液を希釈するため)に使用されうる。
【0034】
本開示において、電解質溶液は、FO膜の完全性が損なわれた場合に、第2側で有意な導電性の応答をもたらすのに十分な高濃度の電解質を有する溶液である。例えば、電解質の濃度は、300から500ミリモル(mM)であり、これは、低電解質溶液中の電解質の濃度よりも少なくとも20倍大きい。そのような電解質溶液は、例えば、透析治療からの排出液または希釈された電解質溶液である。排出液は、ここではPD中の患者排出液および/またはHD中の使用済みの透析液を含みうる。低電解質溶液は、非常に低濃度の電解質を有する溶液である。いくつかの実施形態において、低電解質溶液は、0から0.5mS/cmの範囲の導電率を有し、1つの実施形態において0.1mS/cm未満の導電率を有する。したがって、低電解質溶液の導電率は、非常に低い。低電解質溶液は、例えば、グルコース溶液または純水である。
【0035】
純水は、典型的には注射用水(WFI)または透析用水(WFD)としての品質を有する。WFIは、最大500ppgの全有機体炭素(TOC)、25℃において1.3μS/cm未満の導電率、および、0.25EU/ml未満の細菌内毒素を有する。WFDは、100CFU/ml未満のコロニー形成単位(CFU)、および、0.25EU/mL未満のエンドトキシン単位を有する。例えば、ISO 26722:2009、ISO 22519:2019を参照されたい。
【0036】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、透析液生成装置1(以下、「装置1」)を示す。装置1は、図1を参照して説明したFOデバイス2を備える。装置1はまた、以下で「ライン」と呼ばれる複数の液体ライン20a~20nを備える流路20を備える。装置1は、制御装置30をさらに備える。制御装置30は、排出液ポンプ3、ドレーンポンプ4、濃縮液ポンプ5、および、希釈電解質ポンプ6を備える。本明細書のポンプのいずれかは、例えば、流量センサ(図示せず)からの流量フィードバックを有する容積ポンプ(ピストンポンプなど)または非容積ポンプ(例えば、ギアポンプ)であってもよい。排出液ポンプ3は、バルブの状態に応じて、患者からの排出液を排出液容器35に送り込むように構成される。排出液ポンプ3は、バルブの状態に応じて、排出液容器35または入口コネクタPから第1側2aへ、および、第1側2aからドレーン(図示せず)への排出液の流れを提供するように構成される。濃縮液ポンプ5は、バルブの状態に応じて、電解質溶液容器31、純水容器33または液体容器34のいずれかから第2側2bへの溶液の流れを提供するように構成される。電解質溶液容器31は、電解質溶液を含む。純水容器33は、純水を含む。液体容器34は、低電解質溶液、例えば、グルコースを含む。制御装置30はまた、第2側2bから生成される溶液の導電率をセンシングするように構成された導電率センサ7を備える。導電率センサ7は、1つの実施形態において、0.01から40mS/cmの範囲の導電率をセンシングするように構成される。導電率センサはまた、センシングされた導電率の値を補償するための温度センサ(図示せず)を含んでいてもよい。希釈電解質ポンプ6は、バルブの状態に応じて、メインライン20fに液体の流れを提供するように構成される。希釈電解質ポンプ6は、例えば、純水容器33または液体容器34からライン20gを介して導電率センサ7に液体の流れを提供するように構成される。これは、低電解質溶液のベースラインの導電率を測定できるように行われる。制御装置30はまた、複数のバルブ10a~10mを備えるバルブ装置10を備える。一般に、ラインに接続されたバルブは、ライン内の液体の流れが許容される開と、ライン内の液体の流れが停止される閉と、に構成することができる。バルブは、例えば、オン/オフバルブであってもよく、オン状態は、ライン内の液体の流れが許容されるときの状態を画定し、オフ状態は、ライン内の液体の流れが停止される状態である。制御装置30は、少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを備える制御ユニット50をさらに備える。制御装置30は、透析液を提供する、洗浄プロセスまたはプライミングプロセスを実行するなど、複数の異なるプロセスを実行するために、ポンプ3~6およびバルブ装置10のバルブ10a~10mを制御するように構成される。制御装置30はまた、導電率センサ7から導電率の測定値を受け取るように構成される。制御装置30は、圧力センサ8から圧力の測定値を受け取るようにさらに構成される。具体的には、制御装置30は、図3に示される方法に従って、装置1におけるFO膜2cの完全性を評価するように構成される。そのために、少なくとも1つのメモリは、FO膜2cの完全性を評価するための命令を含む。命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、制御装置30は、以下で説明されるFO膜2cの完全性を評価するための方法を実行する。方法は、制御装置30によって実行され、少なくとも1つのメモリ上のコンピュータ命令を含むコンピュータプログラムとして記憶されてもよい。
【0037】
しかしながら、まず、図2の装置1が、より詳細に説明される。図2において、入口コネクタPと入口ポートEinとを接続するために、第1排出液入口ライン20aが、入口コネクタPと第1側2aの入口ポートEinとの間に配される。入口コネクタPは、例えば、PD患者のカテーテル、または、HD装置またはCRRT装置の排出液ラインに接続可能である。第1排出液入口バルブ10aが、第1排出液入口ライン20aに接続される。第1排出液入口ライン20aと排出液容器35とを接続するために、第2排出液入口ライン20bが、第1排出液入口ライン20aと排出液容器35との間に配される。排出液ポンプ3は、第2排出液入口ライン20bにおける排出液の流れを提供するように配される。第2排出液入口バルブ10bが、第2排出液入口ライン20bに接続される。第1排出液入口ライン20aと第2排出液入口ライン20bとを接続するために、第3排出液入口ライン20cが、第1排出液入口ライン20aと第2排出液入口ライン20bとの間に配される。第3排出液入口バルブ10cが、第3排出液入口ライン20cに接続される。第4排出液入口バルブ10dが、第2排出液入口ライン20bと第3排出液入口ライン20cとの間の第1排出液入口ライン20aに接続される。排出液は、第1排出液入口バルブ10aおよび第2排出液入口バルブ10bを開き、第3排出液入口バルブ10cおよび第4排出液入口バルブ10dを閉じ、排出液ポンプ3を用いて容器35に排出液を送り込むことによって、排出液容器35に収集されうる。その後、排出液は、第2排出液入口バルブ10bおよび第4排出液入口バルブ10dを開き、第1排出液入口バルブ10aおよび第3排出液入口バルブ10cを閉じることによって、排出液容器35から第1側2aへの排出液ポンプ3で送り込むことができる。代わりに、排出液は、第1排出液入口バルブ10aおよび第3排出液入口バルブ10cを開き、第2排出液入口バルブ10bおよび第4排出液入口バルブ10dを閉じ、第1排出液入口ライン20a、第2排出液入口ライン20bおよび第3排出液入口ライン20cを通り、入口コネクタPから排出液ポンプ3で排出液を送り込むことによって、直接、第1側2aに送り込まれてもよい。圧力センサ8が、第1排出液入口ライン20a内の圧力をセンシングするように配される。圧力センサ8からセンシングされた圧力は、第1側2aの圧力を表す。
【0038】
排出液出口ライン20dは、第1側2aの出口コネクタEoutとドレーンとの間に配され、第1側2aの出口コネクタEoutをドレーンに接続する。排出液出口バルブ10eが、排出液出口ライン20dに接続される。ドレーンポンプ4は、排出液出口ライン20dに流れを提供し、第1側2aの静水圧を制御するように配される。排出液は、排出液出口バルブ10eを開き、ドレーンポンプ4で送り込むことによって、出口コネクタEoutからドレーンに送り込まれてもよい。排出液ポンプ3およびドレーンポンプ4は、したがって、所望の静水圧で、第1側2aにおける排出液の所望の流速を提供するように、共同で送り込むことができる。第1側2aの圧力は、圧力センサ8で測定され、ドレーンポンプ4の速度は、圧力センサ8で測定された圧力に基づいて、第1側2aの所望の静水圧を達成するように制御される。第2側2bの圧力は、一定であり、大気圧に近い、例えば、1013hPaであると仮定される。いくつかの実施形態において、第2側2bの圧力が、別の圧力センサ(図示せず)で測定される。代わりに、ドレーンポンプ4のみが、第1側2aで排出液の流れを提供するために使用される。次いで、第2排出液入口バルブ10b、第3排出液入口バルブ10cおよび排出液出口バルブ10eが開き、排出液ポンプ3が停止し、第4排出液入口バルブ10dが閉じられる。
【0039】
また、電解質溶液容器31と第2側2bの入口ポートLinとを接続するために、電解質溶液ライン20eが、電解質液容器31と第2側2bの入口ポートLinとの間に配される。電解質溶液バルブ10fが、電解質溶液ライン20eに接続される。また、濃縮液ポンプ5が、電解質溶液ライン20eに流れを提供するように配される。メインライン20fが、電解質溶液ライン20eと混合ユニット9との間に配され、電解質溶液ライン20eと混合ユニット9とを接続する。混合ユニット9は、混合ユニット9下流のライン20mにおいて得られる流量を制御するメインポンプ、低電解質溶液の流れを提供する低電解質溶液ポンプ、導電率センサ、ヒータおよび混合チャンバ(これらの特徴は明示的に示されていない)などの液体混合機能を含む。メインライン20fは、電解質溶液バルブ10fと濃縮液ポンプ5との間の電解質溶液ライン20eに接続されている。希釈電解質容器32とメインライン20fとを接続するために、希釈電解質容器ライン20gが、希釈電解質容器32とメインライン20fとの間に配される。希釈電解質容器32は、FOセッションで希釈された後に電解質液を蓄積するために使用される。希釈電解質容器ライン20g内の液体の導電率をセンシングするために、希釈電解質容器ライン20gに、導電率センサ7が接続されている。希釈電解質容器バルブ10gが、希釈電解質容器ライン20gに接続されている。第2側2bの出口ポートLoutと希釈電解質容器ライン20gとを接続するために、第1接続ライン20hが、第2側2bの出口ポートLoutと希釈電解質容器ライン20gとの間に配される。メインライン20fと電解質溶液ライン20eとの接続点と、希釈電解質容器ライン20gとメインライン20fとの接続点と、の間のメインライン20fに、第1メインバルブ10hが接続されている。電解質溶液バルブ10fを開き、濃縮液ポンプ5を用いて送り込み、希釈電解質容器バルブ10gおよび第1主バルブ10hを閉じることによって、電解質容器31から第2側2bを介して希釈電解質容器32に電解質溶液を送り込むことができる。同時に、排出液は、第1側2aを通過、つまり、送り込まれてもよい。次いで、純水は、浸透圧によって、第1側2aの排出液から第2側2bの電解質溶液に抽出される。したがって、電解質溶液は、希釈されて中間透析液を形成し、希釈電解質容器32に収集される。この手順は、FOセッションと呼ばれうる。したがって、FOデバイス2は、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液(電解質溶液)を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成される。
【0040】
第3接続ライン20pが、希釈電解質容器ライン20gと第3排出液入口液20cとの間に配され、希釈電解質容器ライン20gと第3排出液入口液体ライン20cとを接続する。第3接続ライン20pは、導電率センサ7と希釈電解質容器バルブ10gとの間の希釈電解質容器ライン20gに接続されている。第3接続ライン20pは、第3排出液入口バルブ10cと第1排出液入口ライン20aへのその接続との間で第3排出液入口液体ライン20cに接続される。バルブ10pが、第3接続ライン20pに接続されている。液体容器34と混合ユニット9とを接続するために、液体ライン20iが、液体容器34と混合ユニット9との間に配される。溶液バルブ10iが、液体ライン20iに接続される。液体ライン20iとメインライン20fとを接続するために、第2接続ライン20jが、液体ライン20iとメインライン20fとの間に配される。三方バルブ10jが、第2接続ライン20jに接続されている。ミドルライン20kが、三方バルブ10jとメイン液体ライン20fとの間に配され、三方バルブ10jとメイン液体ライン20fとを接続する。第2メインバルブ10kが、希釈電解質溶液ポンプ6と混合部9との間でメインライン20fに接続されている。純水容器33と混合ユニット9とを接続するために、水ライン20nが、純水容器33と混合ユニット9との間に配される。混合ユニット9と出口コネクタPとを接続するために、出口ライン20mが、混合ユニット9と出口コネクタPとの間に配される。出口コネクタPは、例えば、PD患者のカテーテル、または、HD装置またはCRRT装置の透析液ラインに接続されうる。出口バルブ10mが、出口ライン20mに配される。
【0041】
透析液を混合するために、希釈電解質容器バルブ10g、第2メインバルブ10kおよび出口バルブ10mを開き、希釈電解質ポンプ6を用いて送り込むことによって、希釈電解質容器32内の希釈電解質溶液が、混合ユニット9に送り込まれる。同時に、溶液バルブ10iを開き、低電解質溶液ポンプ(図示せず)を用いて送り込むことによって、グルコースなどの低電解質溶液が、混合ユニット9に送り込まれる。純水は、水ライン20nを介して混合ユニット9に流れる。メインポンプ(図示せず)は、混合ユニット9下流のライン20mにおいて得られる透析液の所望の流量を提供する。混合ユニット9の導電率センサ(図示せず)は、混合ユニット9から得られる透析液の導電率を測定する。希釈電解質ポンプ6および低電解質溶液ポンプは、生成された液体の導電率、希釈電解質溶液の導電率、および、生成された液体の流量に基づく、得られた透析液の所望の所定の濃度を達成するために、特定の速度に制御される。混合ユニット9において、希釈電解質溶液、低電解質溶液および純水は、透析液を形成するために混合チャンバ内で混合され、任意で加熱されてもよい。その後、透析液は、出口ライン20mを介して、出口コネクタPにおいて、所望の送り先(例えば、貯蔵容器または透析装置)にデリバリされる。
【0042】
次いで、FO膜の完全性を評価するための方法が、図3のフローチャートを参照して説明される。この方法は、例えば、図2の制御ユニット50によって実施される。FO膜は、例えば、図2の装置1におけるFOデバイス2のFO膜2cである。この方法は、治療が開始される前、治療が停止した後、または、その両方で実施されうる。いくつかの実施形態において、方法は、低電解質溶液の導電率を測定することS0を含む。測定S0は、導電率センサ7を用いて導電率を測定することを含んでいてもよい。次に、測定S0は、低電解質溶液のサンプルを導電率センサ7に送り込むことを含む。例えば、低電解質溶液がグルコース溶液である場合、方法は、三方バルブ10jをメインライン20fに向かって下方に開き、希釈電解質容器バルブ10gを開き、希釈電解質ポンプ6を逆方向に用いて、液体容器34から導電率センサ7にグルコース溶液を送り込むことを含みうる。代わりに、低電解質溶液の導電率は、既知、取得済み、測定済み、または、推定値である。例えば、低電解質溶液が純水である場合、導電率はゼロであると仮定される。この導電率は、第2側2bから生成される溶液の導電率の基準(ベースライン)として使用されうる。
【0043】
方法は、第1側2aに電解質溶液を通過させることS1をさらに含む。換言すると、方法は、第1側2aに電解質溶液の流れを提供することを含む。したがって、電解質溶液は、特定の流量で入口ポートEinに提供され、入口ポートEinから、FO膜2cを通る浸透圧交換のために第1側2aを通って、溶液がFOデバイス2を離れる出口ポートEoutに流れる。電解質溶液は、例えば、排出液または希釈された電解質濃縮液である。電解質溶液が排出液である場合、通過S1は、排出液ポンプ3および/または排水ポンプ4を使用し、および、適切なバルブを開閉し、排出液容器35、患者または入口コネクタPiに流体接続された他の供給源から、さらに、第1側2aの入口ポートEinに、排出液を送り込むことを含む。電解質溶液が希釈された電解質濃縮液である場合、送り込みは、予め調製された希釈された電解質濃縮液を希釈電解質容器32から排出液容器35への送り込みS1を含む。次いで、送り込みは、排出液ポンプ3を使用して実施され、バルブ10p、10d、10bを開き、および、バルブ10c、10aを閉じ、希釈された電解質濃縮液をライン20p、20c、20a、20b、を通して送り込む。次いで、排出液容器35は、空であるか、そうでない場合、排出液容器35は次にドレーンのために空にされる。通過S1は、さらに、排出液ポンプ3および/または排水ポンプ4を使用し、バルブ10b、10dを開き、バルブ10a、10c、10pを閉じて、希釈された電解質濃縮液または排出液を排出液容器35から第1側2aの入口ポートEinに送り込むことを含む。通過S1は、さらに、電解質溶液を、第1側2aの入口ポートEinに送り込み、第1側2aを通り、第1側2aの出口ポートEoutからドレーン(図示せず)に排出し、バルブ10eを開くことを含む。両側2a、2bの静水圧は、大気圧に近くてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、方法は、第1側2aにおいて、第2側2bにおける静水圧よりも低い静水圧で電解質溶液を通過させることS1を含む。これによって、第1側2aから第2側2bへの溶質移動が不能になり、完全性エラーに対する発生源のより正確な評価が可能になる。換言すると、本実施形態は、第1側2aの静水圧P1が第2側2bの静水圧P2よりも低くなるように構成することを含む。この構成は、例えば、圧力センサ8を用いて第1側2aの静水圧P1を測定し、静水圧P1がより低い静水圧に等しくなるように、センシングされた圧力に基づいてドレーンポンプ4の速度を制御することによって実施される。出口ポートLoutが希釈電解質容器32を介して大気圧に開放されているため、第2側2bにおける静水圧は、典型的には一定である。したがって、第1側2aにおける静水圧P1を変化させることによって、第1側2aと第2側2bとの間の膜間圧力差(TMP)は、所望のTMPに変化させることができる。
【0045】
方法は、第2側2bに低電解質溶液を通過させることS2をさらに含む。低電解質溶液の通過S2は、第1側2aに電解質溶液を通過させS1ながら行われる。換言すると、方法は、第2側2bに電解質溶液の流れを提供することを含む。したがって、低電解質溶液は、特定の流量で入口ポートLinに提供され、入口ポートLinから、FO膜2cを通る浸透圧交換のために第2側2bを通って、溶液がFOデバイス2を離れる出口ポートLoutに流れる。低電解質溶液は、例えば、グルコース溶液または純水である。グルコース溶液の場合、通過S2は、濃縮液ポンプ5を使用し、バルブ10j、10hを開き、バルブ10i、10k、10g、10fを閉じて、液体容器34から第2側2bの入口ポートLinにグルコース溶液を送り込むことを含む。純水の場合、通過S2は、濃縮液ポンプ5および任意に希釈電解質ポンプ6を使用し、バルブ10k、10hを開き、バルブ10i、10m、10j(ライン20jを閉じて)、10g、10fを閉じて、純水容器33から第2側部2bの入口ポートに純水を送り込むことを含む。純水は、まず、混合ユニット9に送り込まれ、さらに、入口ポートLinに送り込まれる。通過S2は、さらに、低電解質溶液を、第2側2bの入口ポートLinに、第2側2bを通り、第2側2bの出口ポートLoutから排出することを含む。その後、低電解質溶液は、希釈電解質容器32に送り込まれ、導電率は、導電率センサ7によってセンシングされる。第1ステップおよび第2ステップは、テスト中に連続的かつ同時に実行されうり、したがって、通過は、第1側2aおよび第2側2bにおいて同時に連続的な流れを提供することを含む。通過S1、S2は、電解質溶液が第1側2aに流れるときに特定の流量を提供するように行われ、これは、第2側2bの低電解質溶液の特定の流量とともに、FO膜が無傷または完全性を有する場合に、第2側2bから生成される液体の所定の導電率をもたらす。
【0046】
第1側2aの電解質溶液と第2側2bの低電解質溶液との間の浸透圧差に応じて、一方の溶液は脱水され、他方の溶液は希釈される。電解質溶液は、典型的には、約8bar(116psig)の浸透圧を有する。低電解質溶液が十分な濃度のグルコースを含むグルコース溶液である場合、第2側2bにおける浸透圧は、第1側2aよりも高くなる。6%のグルコース(残りの94%は典型的には純水)を含むグルコース溶液は、約8bar(116psig)の浸透圧を有する。グルコース溶液は、したがって、6%を超える、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、最大50%のグルコースを含みうる。したがって、グルコース溶液は、十分な濃度のグルコースを有するために、10%から50%のグルコースを含みうる。完全性を有するFO膜2cの場合、水は次いで、第1側2aの電解質溶液から第2側2bのグルコース溶液に拡散し、したがって、グルコース溶液を希釈する。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、第1側2aから第2側2bへの拡散水輸送を可能にする、第1側2aの浸透圧よりも高い浸透圧で第2側2bに低電解質溶液を通過させることS2を含む。これは、患者の排出液または水が第1側2aにあり、透析濃縮液が引出側2bにある、FO水抽出セッションの実際の動作を模倣する。低電解質溶液が純水である場合、第2側2bにおける浸透圧は、第1側2aよりも低くなる。純水の浸透圧は、典型的にはゼロである、または、ゼロに近い。完全性を有するFO膜2cの場合、水は次いで、第2側2bの純水から第1側2aの電解質溶液に拡散し、したがって、電解質溶液を希釈する。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、第2側2bから第1側2aへの拡散水輸送を可能にする、第1側2aの浸透圧よりも低い浸透圧で第2側に低電解質溶液を通過させることS2を含む。リークまたは異常拡散などの完全性の問題の場合、電解質は第2側2bに輸送され、第2側2bから生成される溶液の導電率は増加する。例えば、FO膜2cの拡散エラーの場合、電解質は、第1側2aから第2側2bに拡散しうり、これによって、第2側2bにおける溶液の導電率が増加する。FO膜2cにリークが生じた場合、第1側2aから第2側2bに電解質がリークし、これによって、第2側2bにおける溶液の導電率が増加する。したがって、FO膜2cの完全性は、第2側2bから排出される低電解質溶液の導電率を測定することによって評価される。したがって、方法は、第2側2bから生成される溶液の導電率を測定することS3を含む。導電率の測定S3は、導電率が安定するまでの期間、導電率をモニタすることを含みうる。導電率の測定S3は、典型的には、導電率センサ7を用いて行われる。したがって、方法は、第2側2bから生成される溶液を導電率センサ7に送り込むことと、導電率を測定することと、希釈電解質容器32に溶液をさらに送り込むこととを含む。
【0047】
方法は、測定された導電率が1つ以上の導電率基準を満たすか否かに基づいて、FO膜2cの完全性を評価することS6をさらに含み、導電率基準は、完全性を有する無傷のFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて第2側から生成された溶液の導電率を含むか、または、定義する。したがって、方法は、同じ動作点で同じ同等物の液体を用いて、完全性を有する同じ種類のFO膜を有する第2側2aから生成される溶液の予想される結果としての導電率に基づいて、FO膜2cが完全性を有するか否かを評価することを含む。導電性基準は、第2側2bから生成される液体の導電率のための1つ以上の閾値を含みうる。1つ以上の閾値は、使用される同じ溶液を用いた完全性を有する同じタイプのFO膜を使用する、以前の実験に基づいてもよく、導電率の許容される閾値は、FO膜2c上の予想されるおよび許容される電解質の拡散の知識に基づいて決定される。代わりにまたは組み合わせて、1つ以上の閾値は、低電解質溶液の導電率に基づいてもよい。例えば、1つ以上の閾値は、低電解質溶液の導電率からの許容される変化、例えば、増加を定義してもよい。導電率の変化が、記憶された閾値変化よりも大きい場合、完全性を欠くFO膜と判定することができる。したがって、いくつかの実施形態において、完全性の評価S6は、測定された導電率が低電解質溶液の導電率から閾値よりも大きい導電率の変化を示すと、FO膜2cの完全性の欠如と判定することを含む。したがって、そのような実施形態において、完全性の評価S6は、低電解質溶液の導電率から第2側2bから生成される溶液の測定された導電率への導電率の変化を計算することと、導電率の変化を閾値と比較することと、を含みうる。第2側2bで生成される溶液の導電率の閾値はまた、低電解質溶液の特定のタイプおよび導電率について、制御部50のメモリに記憶された、予め定義された表の導電率値によって与えられてもよい。
【0048】
予想される許容可能な電解質の拡散は、第2側2bにおける低電解質溶液の所定の希釈比として表されうる。したがって、いくつかの実施形態において、閾値は、低電解質溶液の導電率およびFOデバイス2中の低電解質溶液の所定の希釈比に基づく。希釈比は、使用される溶液、流量、および、FO膜2cの特性に依存する。希釈比は、第2側2bから生成される溶液の体積/流量と比較した、第2側2bへの低電解質溶液の体積/流量として定義されうる。希釈比は、FOデバイス2の現在の動作点(例えば、側2a、2bへの流量)、および、電解質溶液の組成および低電解質溶液の組成(例えば、それらの浸透圧)についての仮定/知識に基づいて評価されうる。次いで、実際の導電率の変化、例えば、増加または増大が、この閾値と比較されうり、FO膜2cの電解質選択性の状態に関して結論が下されうる。第2側2bにグルコースがある場合の希釈比は、完全性を有するFO膜2cで、第1側2aに特定の電解質溶液のうちの1つがある場合に、1:2から1:10の間、より正確には1:4から1:7の間であると予想される。第2側2bに水がある場合の希釈比は、完全性を有するFO膜2cで、第1側2aに特定の電解質溶液のうちの1つがある場合に、1:0から1:1の間、より正確には1:0から1:0.5の間であると予想される。水の希釈は、第2側2bの純水から水分子が第1側2aに拡散し、したがって、純水が濃縮するか、または、少なくとも純水の流量が減少するために起こる。
【0049】
上述に基づいて、FO膜2cの完全性の一般的な欠如が判定されうる。しかしながら、完全性エラーの原因をより詳細に理解するために、方法は、第1側2aと第2側2bとの間に静水圧差を構成することを含みうる。それによって、完全性エラーが、FO膜2cの溶質移動エラーおよび/または拡散エラーに起因するものであるかどうかを判定することができる。したがって、通過S1が、第2側2bにおける静水圧P2よりも低い静水圧P1で第1側2aで低電解質溶液を通過させることを含む場合、その結果判定されるFO膜2cの完全性の欠如は、FO膜2cの溶質の拡散エラーを示す。したがって、第1側2aで静水圧P1がより低くなるため、第1側2aから第2側2bへの溶質移動が不能になる。次いで、正のTMP差(P2マイナスP1)が、第2側2bから第1側2aに確立される。TMP差は、少なくとも80mmHg(1.5psig)であり、いくつかの実施形態において、200または300mmHg(3.9から5.8psig)を超える。第2側2bで生成される溶液の導電率の上昇は、第1側2aから第2側2bへの拡散電解質輸送の結果である。それによって、完全性の損失につながる1つのエラーの原因、したがってリーク、が除去される。完全性の場合、水は、容積浸透圧モル濃度の差に応じて、第2側2bから第1側2aに、または、第1側2aから第2側2bに拡散することが予想される。溶質拡散エラーが存在する場合、電解質は、第1側2aから第2側2bに拡散し、それによって、第2側2bから生成される溶液の導電率が増加する。このような評価は、拡散テストと呼ばれることがある。
【0050】
しかしながら、完全性エラーは、溶質移動エラー、したがってリークも含みうる。このような誤差を検出するために、方法は、(i)第1側2aにおいて、電解質溶液を第2側2bの静水圧よりも低い静水圧で通過させS1、第2側2bから生成される溶液の導電率を測定S3した後に、(ii)第2側2bにおける静水圧よりも高い静水圧で第1側2aに電解質溶液を通過させることS4、を含む。低電解質の流れは、ステップS3で先に説明されたように提供され、第2側2bに存在する。したがって、方法、第1側2aの静水圧P1が第2側2bの静水圧よりも高くなるように構成することを含む。この構成は、例えば、圧力センサ8を用いて第1側2aの静水圧P1を測定し、静水圧P1が所望のより高い静水圧に等しくなるように、センシングされた圧力に基づいてドレーンポンプ4の速度を制御することによって実施される。例えば、構成は、P1がP2よりも高くなるように(P1>P2)、ドレーンポンプ4の速度を低下させることを含む。説明されるように、出口ポートLoutが希釈電解質容器32を介して大気圧に開放されているため、第2側2bにおける静水圧P2は、典型的には一定である。したがって、第1側2aにおける静水圧P1を変化させることによって、第1側2aと第2側2bとの間の膜間圧力差(TMP)は、所望のTMPに変化させることができる。方法のステップS4は、したがって、TMP勾配が反転されるように、方法のステップS1と比較して圧力を変更することを含んでもよい。したがって、方法は、第2側2bから生成される溶液の導電率を測定することS5を含む。導電率の測定S5は、導電率が安定するまでの期間、導電率をモニタすることを含みうる。したがって、導電率は、ステップS3における以前の導電率の測定中とは異なる静水圧差を有する液体を通過させながら、再度測定される。リークが存在する場合、電解質溶液は、第1側2aから第2側2bへリークを通り流れることができる。したがって、静水圧が第1側2aよりも第2側2bでより低くなるため、リークが存在する場合、第1側2aから第2側2bへの溶質移動が可能である。リークの場合、第1側2aから第2側2bに流入する電解質溶液は、第2側2bから生成される溶液の導電率を、ステップS3で以前に測定された導電率と比較して増加させる。したがって、導電率の変化はより大きくなる。したがって、方法は、ステップS3における導電率測定に基づいて導電率の変化を判定することと、ステップS5における導電率の変化に基づいて導電率の変化を判定することと、変化を比較することと、を含みうり、ステップS5における導電率に基づいて導電率の変化がステップS3における導電率に基づいて判定されたものよりも大きい場合に、リークは、第1側2aから第2側2bへの対流的な電解質輸送の結果であると判定される。換言すると、いくつかの実施形態において、方法は、測定された導電率が第2側2bにおけるより高い静水圧で検出された導電率変化よりも大きい導電率変化を示すと、FO膜2cの完全性の欠如がFO膜2cにおけるリーク(溶質移動)によるものであると判定することS6を含む。導電率の変化は、同じ基準から決定される。本明細書でテストされる溶質移動(リーク)の流れの方向は、第1側2aから第2側2bであり、これは、透析濃縮液/透析液が流れるべき第2側2bの排出液成分の汚染のリスクに起因して、リスクの観点から最も重要である。この種の評価は、溶質移動テストと呼ばれることがある。
【0051】
結果は、制御装置10のユーザインターフェース(図示せず、制御ユニット50と通信する)を介してユーザに連絡されてもよく、および/または、完全性エラーが検出された場合に、アラームが起動されてもよい。次いで、ユーザは、完全性エラーがあった場合に、FOデバイスを交換するなどの適切なアクションをとることができる。
【0052】
低電解質溶液の導電率が電解質溶液の添加によってどのように変化するかを評価するために、テストが行われた。100mlのグルコース濃縮液と500mlの純水とを混合することによって、低電解質溶液を作製し、これは、この方法で使用されるグルコース濃縮液の予想される希釈度を表している。10mlの緩衝濃縮液を150mlのELIX(登録商標)水(Merck製)と混合することによって電解質溶液を作製し、これは、この方法で使用される電解質濃縮液の典型的な希釈度を表す。電解質溶液を低電解質溶液に対して段階的に分割して添加して混合し、混合物の導電率を測定し、電解質溶液の添加割合と、低電解質溶液のボリュームおよび導電率と、の関係を調べた。結果が図4に示され、一方の軸は混合物の導電率をmS/cmで示し、他方の軸は混合物の全体に占める電解質溶液の割合(汚染のボリュームの割合)を示す。0.06mS/cmのベースライン導電率は、電解質溶液を添加しない低電解質溶液の導電率に起因する。このような導電率は、塩酸の低電解質の含有量に由来する。図から分かるように、電解質溶液の添加された割合/ボリュームで、導電率の明確な増加が観察された。
【0053】
また、完全性を有するFO膜(無傷の膜)を用いて、その後、同じ膜で1本の繊維が破断したもの(1本の破断を有する膜)を用いて、本方法を用いた試験が行われた。使用されたFO膜は、AquaporinTM製のモデルHFFO2(Hollow Fiber Forward Osmosis 2)である。テストの結果が、表1に示される。
【0054】
【表1】
【0055】
低電解質溶液は、50%のグルコース濃縮液および50%の水を有するグルコース溶液であった。電解質溶液は、水で1:19に希釈された電解質濃縮液を含む緩衝溶液であった。膜間圧力差TMPは、P2マイナスP1として測定した。テストを通して同じFO膜が使用された。
【0056】
表1の2つの最初のテストは、無傷のFO膜を用いて行われた。第2側2bから生成される溶液の導電率は、元のグルコース溶液の導電率(0.06mS/cm)と比較して上昇しており、電解質が第1側2aから第2側2bに輸送されたことを示唆している。導電率の上昇がTMPによってほとんど影響を受けないという事実は、導電率の上昇が溶質移動ではなく膜を横切る電解質の拡散輸送の結果であることを示している。
【0057】
表1の最後の2つの試験は最初の試験の間に使用されたのと同じFO膜を用いて実施されたが、1本の繊維が破断している。TMPが正の符号を有する場合(したがって、第1側2aから第2側2bへの溶質移動を不能にする)、第2側2bで生成される溶液の導電率は、無傷の膜で観察されたものと同様であった(実際にはいくぶん低い)。TMPが負に変化すると(したがって、第1側2aから第2側2bへの溶質移動が可能になると)、第2側2bで生成される溶液の導電率は、溶質移動が発生していることを示す他のすべての試験よりも著しく高くなった。したがって、破断した繊維を検出することができた。
【0058】
テスト1および2(無傷のFO膜)の間にTMPを82mmHgから-180mmHgに変化させると、膜を横切る拡散性の水輸送の駆動力が増加したために、Loutからの流量が4.2ml/min増加した。試験3および4(繊維破断を有するFO膜)の間に、ほぼ同じTMP変化が導入されたため、Loutからの流量が11.6ml/min増加した。TMP駆動の拡散性の水輸送の速度の増分が、無傷の膜と破断した膜との間で同一であると仮定すると、増分の差(11.6-4.4=7.2ml/min)は、第2側2bへの電解質溶液の溶質移動である。これは、第2側2bから生成される液体が、8.3%の供給液を含んでいたことを意味する。溶質移動テスト中に-180mmHgよりもはるかに低いTMPを使用することによって、方法の感度が高められうる。
【0059】
本開示はまた、透析液生成装置1におけるFOデバイス2の正浸透(FO)膜2cの完全性を評価するための制御装置10を含む。FOデバイス2は、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成される。したがって、FOセッションは、透析濃縮液を希釈することを指す。FO膜2cは、FOデバイス2の第1側2aを第2側2bから分離する。制御装置10は、電解質溶液の流れを提供するように構成された排出液ポンプ3を備える。制御装置10は、低電解質溶液の流れを提供するように構成された濃縮液ポンプ5をさらに備える。制御装置10はまた、第2側2bから生成される溶液の導電率をセンシングするように構成された導電率センサ7を備える。制御装置10は、排出液ポンプ3を使用して、第1側2aに電解質溶液を通過させるように構成される。制御装置10はまた、濃縮液ポンプ5を使用して、第2側2bに低電解質溶液を通過させるように構成される。制御装置10は、導電率センサ7を使用して、第2側2bから生成される溶液の導電率を測定するように、さらに構成される。制御装置10はまた、測定された導電率が導電率基準を満たすか否かに基づいてFO膜の完全性を評価するように、さらに構成され、導電率基準は、無傷または完全性を有するFO膜を使用して、同等の電解質溶液および同等の低電解質溶液を用いて第2側から生成された溶液の導電率を含むか、または、定義する。
【0060】
制御装置10は、測定された導電率が低電解質溶液の導電率から導電率変化の閾値よりも大きい導電率変化を示すと判定した場合に、FO膜2cの完全性の欠如と判定するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態において、制御装置10は、第1側2aにおける静水圧よりも低い静水圧で第2側2bの低電解質溶液を通過させ、それによって、第1側2aから第2側2bへの溶質移動を不能にするように構成される。FO膜2cの完全性の判定された欠如は、FO膜2cの溶質の拡散エラーを示す。
【0062】
いくつかの実施形態において、制御装置10は、(i)第2側2bにおいて、低電解質溶液を第1側2aの静水圧よりも高い静水圧で通過させ、(ii)導電率センサ7を使用して、第2側から生成される溶液の導電率を測定し、(iii)測定された導電率が第2側でのより高い静水圧で生成された導電率変化よりも大きい導電率変化を示すと判定すると、FO膜2cの完全性の欠如がFO膜2cのリークに起因すると判定するように構成される。
【0063】
いくつかの実施形態において、制御装置10は、第1側2aにおける浸透圧よりも高い浸透圧で第2側2bに低電解質溶液を通過させ、それによって、第1側2aから第2側2bへの拡散水輸送を可能にするように構成される。または、制御装置10は、第1側2aにおける浸透圧よりも低い浸透圧で第2側に低電解質溶液を通過させ、それによって、第2側2bから第1側2aへの拡散水輸送を可能にするように構成される。
【0064】
いくつかの実施形態において、制御装置10は、ドレーンポンプ4を使用して静水圧を制御するように構成される。制御装置10は、本明細書に記載の態様、実施形態または実施例のいずれか1つを実行するように構成されうる。
【0065】
本発明は、現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関連して説明されてきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる種々の変形および等価な構成を包含することが意図されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】