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特表2024-515063液圧式の操作システム用の3ポート2位置弁コンセプト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】液圧式の操作システム用の3ポート2位置弁コンセプト
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/02 20060101AFI20240328BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240328BHJP
   B60T 17/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B60T17/02
B60T17/18
B60T17/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561908
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022052023
(87)【国際公開番号】W WO2022214226
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202021105880.3
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509159159
【氏名又は名称】アイピーゲート・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】IPGATE AG
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 160b, 8808 Pfaeffikon, Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】523351759
【氏名又は名称】ハインツ ライバー
【氏名又は名称原語表記】Heinz Leiber
【住所又は居所原語表記】Theodor-Heuss-Strasse 34, 71739 Oberriexingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ライバー
(72)【発明者】
【氏名】アントン ファン ザンテン
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049BB03
3D049HH12
3D049HH20
(57)【要約】
本発明は、特にブレーキシステムの形態の液圧システム用の液圧式の操作システムであって、特に液圧操作式のホイールブレーキの形態の少なくとも1つの液圧式の消費器を備えた少なくとも1つの液圧系統(BK)と、この少なくとも1つの液圧系統(BK1,BK2)内での圧力制御もしくは圧力調整、特に増圧(pauf)および減圧(pab)のために用いられる、特にピストンポンプの形態のポンプを有する少なくとも1つの圧力発生装置(DV)とを有する、液圧式の操作システムにおいて、圧力発生装置(DV)は、制御される少なくとも1つの3ポート2位置弁(PD1,PD2)によって選択的に貯蔵容器(VB)に接続可能である、または貯蔵容器(VB)から切離し可能であることを特徴とする、液圧式の操作システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にブレーキシステムの形態の液圧システム用の液圧式の操作システムであって、
特に液圧操作式のホイールブレーキの形態の少なくとも1つの液圧式の消費器を備えた少なくとも1つの液圧系統(BK)と、
前記少なくとも1つの液圧系統(BK1,BK2)内での圧力制御もしくは圧力調整、特に増圧(pauf)および減圧(pab)のために用いられる、特にピストンポンプの形態のポンプを有する少なくとも1つの圧力発生装置(DV)と
を有する、液圧式の操作システムにおいて、
前記圧力発生装置(DV)は、制御される少なくとも1つの3ポート2位置弁(PD1,PD2)によって選択的に貯蔵容器(VB)に接続可能である、または貯蔵容器(VB)から切離し可能であることを特徴とする、液圧式の操作システム。
【請求項2】
前記圧力供給装置(DV)は、特にプランジャピストンまたは複動式ピストンと少なくとも1つの作業室(KV,KH)とを備えたピストンポンプを有し、1つの第1の前記作業室(KV)に、制御される第1の3ポート2位置弁(PD1)が割り当てられており、該制御される第1の3ポート2位置弁(PD1)によって、前記第1の作業室(KV)は、第1の液圧系統(BK1)または前記貯蔵容器(VB)に接続可能であることを特徴とする、請求項1記載の液圧式の操作システム。
【請求項3】
前記圧力発生装置(DV)は、前記1つの第1の作業室(KV)と1つの第2の前記作業室(KH)とを互いに密封して分離する複動式ピストン(DHK)を有し、前記1つの第2の作業室(KH)に、制御される第2の3ポート2位置弁(PD2)が割り当てられており、該制御される第2の3ポート2位置弁(PD2)によって、前記第2の作業室(KH)は、第2の液圧系統(BK2)または前記貯蔵容器(VB)に接続可能であることを特徴とする、請求項2記載の液圧式の操作システム。
【請求項4】
1つの第2の前記作業室(KR)に、2ポート2位置弁である制御される第2の切換弁(PD2s)が割り当てられており、該第2の切換弁(PD2s)を介して、前記第2の作業室(KH)は、選択的に第2の前記液圧系統(BK2)に接続可能である、または第2の前記液圧系統(BK2)から切離し可能であることを特徴とする、請求項2記載の液圧式の操作システム。
【請求項5】
両方の前記液圧系統(BK1,BK2)を選択的に液圧的に接続または分離するための系統分離弁(KTR)であって、特に、両方の前記液圧系統(BK1,BK2)を互いに接続する液圧管路(HL1-2)を開放もしくは遮断するために用いられる系統分離弁(KTR)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項6】
前記液圧管路(HL1-2)に、前記系統分離弁(KTR)に対して直列に別の系統分離弁(KTRs)が配置されていることを特徴とする、請求項5記載の液圧式の操作システム。
【請求項7】
前記圧力発生装置(DV)は、1つの第1の作業室(KV)と1つの第2の作業室(KH)とを互いに密封して分離する複動式ピストン(DHK)を有し、前記圧力発生装置(DV)の両方の前記作業室(KV,KH)のうちの少なくとも一方の作業室は、制御される3ポート2位置弁(PD1)によって常に貯蔵容器(VB)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載の液圧式の操作システム。
【請求項8】
前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の中間位置において、前記圧力発生装置(DV)の両方の作業室(KV,KH)は、同時に前記貯蔵容器(VB)に接続されていることを特徴とする、請求項7記載の液圧式の操作システム。
【請求項9】
前記圧力発生装置(DV)は、前記両方の作業室(KV,KH)を互いに密封して分離する複動式ピストン(DHK)を有し、第1の液圧管路(HL1)が、前記1つの第1の作業室(KV)を、前記制御される3ポート2位置弁(MV)の第1の弁ポート(AN1)に接続しており、第2の液圧管路(HL2)が、前記1つの第2の作業室(KV)を、前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の第2の弁ポート(AN2)に接続しており、前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の第3の弁ポート(AN3)が、第3の液圧管路(HL3)を介して前記貯蔵容器(VB)に接続されていることを特徴とする、請求項7または8記載の液圧式の操作システム。
【請求項10】
前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の第1の弁位置では、前記第1の弁ポート(AN1)だけ前記第3の弁ポート(AN3)に液圧的に接続されており、前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の第2の、特に通電されている弁位置では、前記第2の弁ポート(AN2)だけ前記第3の弁ポート(AN3)に液圧的に接続されていることを特徴とする、請求項9記載の液圧式の操作システム。
【請求項11】
前記第1の弁位置と前記第2の弁位置との間の位置では、前記制御される3ポート2位置弁(PD1)の3つの全ての弁ポート(AN1,AN2,AN3)が互いに液圧的に接続されていることを特徴とする、請求項10記載の液圧式の操作システム。
【請求項12】
制御される第1の切換弁(PD1s)が、第1の液圧管路(HL1)もしくは前記第2の作業チャンバ(KH)を第1の液圧系統(BK1)に選択的に液圧的に接続するために用いられ、特に、前記第1の液圧管路(HL1)は、第4の液圧管路(HL4)を介して前記第1の液圧系統(BK1)に接続されており、前記制御される第1の切換弁(PD1s)は、前記第4の液圧管路(HL4)を選択的に遮断または開放するために用いられることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項13】
制御される第2の切換弁(PD2s)が、第2の液圧管路(HL2)もしくは前記第1の作業チャンバ(KV)を第2の液圧系統(BK2)に選択的に液圧的に接続するために用いられ、特に、前記第2の液圧管路(HL2)は、第5の液圧管路(HL5)を介して前記第2の液圧系統(BK2)に接続されており、前記制御される第2の切換弁(PD2s)は、前記第5の液圧管路(HL5)を選択的に遮断または開放するために用いられることを特徴とする、請求項7から12までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項14】
両方の液圧系統(BK1,BK2)は、制御される第3の切換弁(KTV)を介して液圧的に互いに接続可能であるかもしくは互いに分離可能であることを特徴とする、請求項13または14記載の液圧式の操作システム。
【請求項15】
前記圧力発生装置(DV)は、作動媒体を貯蔵容器(VB)もしくは前記貯蔵容器(VB)から少なくとも1つの吸込み弁(SV1,SV2)を介して少なくとも1つの作業チャンバ(KV,KH)内に吸い込むことができることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項16】
複動式ピストン(DHK)によって、往動行程時にも復動行程時にも、圧力またはピストン位置が同調可能である、または調整可能であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項17】
前記貯蔵容器(VB)に弁(MV)を接続する接続管路()に、特に前記弁(MV)の誤機能時かつ/または漏れ時に貯蔵容器(VB)と弁(MV)との間の液圧的な接続を分離する、特に常時開の安全遮断弁(MVs)が配置されていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の液圧式の操作システム。
【請求項18】
それぞれ液圧的に作用する少なくとも1つのホイールブレーキが配置された少なくとも1つのブレーキ系統(BK1,BK2)を備える、請求項1から17までのいずれか1項記載の液圧式の操作システムを備えるブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にブレーキシステムの形態の液圧システム用の液圧式の操作システムであって、特に液圧操作式のホイールブレーキの形態の少なくとも1つの液圧式の消費器を備えた少なくとも1つの液圧系統と、この少なくとも1つの液圧系統内での圧力制御もしくは圧力調整、特に増圧および減圧のためのピストンポンプまたは回転ポンプを備えた少なくとも1つの圧力発生装置とを備える、液圧式の操作システムに関する。
【0002】
このような液圧式の操作システムは十分に公知である。独国特許出願公開第102017000472号明細書に開示されているように、3ポート2位置弁は自動車技術において広範に使用されている。同明細書では、3ポート2位置弁が、ブレーキ系統を圧力供給ユニットまたはタンデム型マスタブレーキシリンダに選択的に接続するために用いられている。3ポート2位置弁の使用によって、有利には、以前であれば2ポート2位置弁しか使用されなかった場合に弁を省略することができる。
【0003】
多くの弁用途において、弁故障に対する安全要求は高い。なぜならば、安全要求がブレーキ作用およびペダル特性に影響を与えることがあるからである。
【0004】
発明の課題
本発明の課題は、冒頭に記載した、特にブレーキシステム用の液圧式の操作システムを欠陥に対してより安全であると共により廉価に形成することである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する液圧式の操作システムによって解決される。請求項1記載の操作システムの更なる有利な構成は、従属請求項の特徴によって明らかである。
【0006】
本発明に係る操作システムによって、有利には、圧力を極めて正確に調整もしくは制御することができる。
【0007】
圧力発生装置は、有利には、ピストンポンプを有していてもよい。自動車技術には、本発明に係る操作システムに対して大きな用途範囲が存在している。回転ポンプと比べて、プランジャピストンまたは複動式ピストンを備えた電動モータ運転式のピストンシリンダシステムは、連続的な媒体圧送7時、または例えばピストンの変位の制御もしくは調整により完全に規定の体積の作動媒体が移動させられる際のピストンストローク測定または圧力測定による制御された体積圧送時に大きな利点を提供する。これによって、例えば、圧力/体積特性線に基づき、予め設定された圧力を生じさせることができるかもしくは調整することができる。
【0008】
しかしながら、圧力発生装置が複動式ピストンを有しており、これによって、往動行程および復動行程において作動媒体を圧送することができ、圧力発生装置の各々の作業室が、特にこの作業室に割り当てられた3ポート2位置弁を介して貯蔵容器に接続可能であると特に有利である。この前述した弁回路によって、例えば、目下要求されているブレーキシステムの各々の機能をピストンによって実現することができるかもしくは生じさせることができる。こうして、とりわけ特に、作動媒体を圧送することなく、圧力発生装置の複動式ピストンを変位させることも可能となる。このことは、一般的に、液圧系統もしくはブレーキ系統に対する体積圧送の空行程とも呼ばれる。
【0009】
しかしながら、複動式ピストンポンプの使用に際して、一方の作業室もしくはブレーキ系統にだけ3ポート2位置弁を割り当て、他方の作業室には2ポート2位置弁しか割り当てないことも可能である。この場合、この配置形態では、作動媒体を貯蔵容器内に流出させるかもしくは貯蔵容器から受け入れるために、1つのブレーキ系統を貯蔵容器に接続することしか可能とならない。
【0010】
別の可能な実施形態では、圧力発生装置の両方の作業室が、ただ1つの3ポート2位置弁を介して貯蔵容器に接続されてもよい。この場合には、常に少なくとも1つの作業室が貯蔵容器に液圧的に接続されている。3ポート2位置弁を電磁石駆動装置によって中間位置に保持することができる場合には、圧力発生装置のピストンシリンダユニットの両方の作業室を同時に貯蔵容器に液圧的に接続することも可能となる。
【0011】
複動式ピストンを備えた本発明に係る液圧式の操作システムが、ブレーキシステムの圧力調整のために使用される場合には、本発明に係る液圧式の操作システムが、作動媒体を往動行程でも復動行程でも両方のブレーキ系統に圧送することができる。一方のブレーキ系統の故障(系統故障)時には、有利な弁回路によって、さらに、操作システムを用いて、まだ無傷の他方のブレーキ系統における圧力調整を行うことができる。
【0012】
ブレーキシステムは、有利には、タンデム型マスタブレーキシリンダまたはシングル型マスタブレーキシリンダとして形成されたマスタブレーキシリンダを有していてもよい。したがって、このマスタブレーキシリンダは少なくとも1つの作業室を有している。この作業室は、3ポート2位置弁を介して、フォールバックレベルにおいて一方のブレーキ系統に接続可能である、または通常事例において、ペダルフィーリングを調整するためのストロークシミュレータに接続可能である。マスタブレーキシリンダが、2つの作業室を備えたタンデム型マスタブレーキシリンダとして形成されている場合には、マスタブレーキシリンダの一方の作業室が、前述したように、3ポート2位置弁を介してブレーキ系統とストロークシミュレータとに接続可能となり、他方の作業室は、2ポート2位置弁によって他方のブレーキ系統から切離し可能となる、またはフォールバックレベルにおいて他方のブレーキ系統に接続可能となる。
【0013】
すでに説明したように、いわゆる2系統用の複動式ピストン(DHK)での圧力供給によって、連続的な体積圧送が可能となる。交互に1系統に圧送する複動式ピストンは、本発明による弁回路を用いてピストン往動行程およびピストン復動行程によって体積を両方のブレーキ系統に分配することができる。同時に、両方のブレーキ系統を互いに接続する系統分離弁を介して、その開放位置において、両方のブレーキ系統の間の圧力補償を行うことができる。
【0014】
複動式ピストンは、有利には、ピストン往動行程およびピストン復動行程において、2つの異なるサイズの作用面を有していてもよい。通常、ピストン復動行程での有効ピストン面積は、ピストン往動行程時の有効ピストン面積の50%でしかなく、これによって、作用面に加えられる圧力が等しい場合、ピストン復動行程では、ピストン力ひいては例えばスピンドル駆動装置を介したモータトルクが、ピストン往動行程のピストン力の50%でしかないという利点が得られる。このことは、有利には、ピストン復動行程の際、等しい最大のモータトルクによって2倍の最大圧、例えば最大200barまでの圧力を達成するために利用される。これに対して、ピストン往動行程の際には100barまでの圧力でしかない。これによって、0~200barの全圧力範囲内での増圧および減圧が、ピストンの各々の位置でのピストン往動行程およびピストン復動行程による正確な圧力調整によって可能となるという主要な要求が満たされている。
【0015】
複動式ピストンが、動特性および作動精度に関して妥協することなく、有利には約20種類の操作を実施したい場合には、これらの操作のために、複動式ピストンを本発明による弁回路によって使用することができる。DE1020110830312または独国特許出願公開第102018221783号明細書に基づき公知の複雑な弁回路と異なり、本発明に係る液圧式の操作システムの本発明による弁回路は、著しく簡単かつ廉価であると共に小型の構造である。
【0016】
一方の液圧系統が故障しても、本発明に係る操作システムでは、他方の回路がまだ使用可能状態にある。また、冗長的なモータ巻線を設けることによって、駆動装置の故障に対するより高い安全性が達成される。さらに、本発明による弁回路は臨機応変に使用可能であり、ABS、ESPおよびその他のアシスト機能における液圧ユニットの種々異なる要求に対しても使用することができる。
【0017】
安全性を高めるために、圧力供給ユニットを貯蔵容器に接続しかつ3ポート2位置弁が配置された接続管路に、さらに付加的に、特に3ポート2位置弁の誤機能時かつ/または漏れ時に貯蔵容器と3ポート2位置弁との間の液圧的な接続を分離する、特に常時開の安全遮断弁が配置されていてもよい。これによって、有利には、3ポート2位置弁に漏れがある場合でも、付加的な安全遮断弁の閉鎖によって、さらに、圧力供給ユニットを用いて少なくとも1つのホイールブレーキにおける圧力を増加または変化させることができる。
【0018】
以下に、本発明に係る液圧式の操作システムおよびその機能形態を図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ブレーキシステム用の圧力供給ユニットのための液圧式の操作システムの1つの可能な実施形態を示す図である。
図1a】2つの3ポート2位置弁を備えた圧力発生装置の部分拡大図である。
図1b】ただ1つの3ポート2位置弁を備えた圧力発生装置の部分拡大図である。
図2a】非通電状態における本発明による3ポート2位置弁の概略図である。
図2b】通電状態における本発明による3ポート2位置弁の概略図である。
図3図1aに示した操作システムの概略図である。
図4】ピストン往動行程における増圧時の図1aに示した操作システムの概略図である。
図5】ピストン復動行程における減圧時の図1aに示した操作システムの概略図である。
図6】圧力発生装置の一方の作業室を常に貯蔵容器に液圧的に接続するただ1つの3ポート2位置弁を備えた本発明に係る液圧式の操作システムの第2の可能な実施形態を示す図である。
図7図6に示した操作システムの概略図である。
図8】マスタブレーキシリンダを備えたブレーキシステムでの図6に示した操作システムの使用を示す図である。
図9】本発明による3ポート2位置弁の1つの可能な実施形態の横断面図である。
【0020】
図1には、マスタブレーキシリンダHZ、例えば、1つの作業室R1を備えたシングル型マスタブレーキシリンダSHZまたは2つの作業室R1,R2を備えたタンデム型マスタブレーキシリンダTHZと、貯蔵容器VBと、ペダルストロークセンサ2とを備えたシステムが示してある。シングル型マスタブレーキシリンダSHZの事例では、液圧管路L1が、3ポート2位置弁MVを介して圧力供給ユニットDVとブレーキ系統BK1とに通じている。3ポート2位置弁MVを介して、作業室R1は、選択的に液圧管路L3を介してストロークシミュレータWSに接続されている、または非通電の標準位置でブレーキ系統BK1に接続されている。液圧管路L4は、直接3ポート2位置弁PD2に通じていると共に系統分離弁KTVを介してブレーキ系統BK2に通じている。圧力発生装置DVの作業室KVは、3ポート2位置弁PD1を介して第2のブレーキ系統BK2に接続されている、または戻し管路Rを介して貯蔵容器に接続されている。3ポート2位置弁PD1,PD2は、図3図5で詳細に説明する複動式ピストンDHKの主構成要素である。圧力供給ユニットDVの両方の系統は、圧力供給ユニットDVから圧力が供給されるABS、ESPおよびアシスト機能用の液圧ユニットHCUに通じている。圧力発生装置は、増圧のためだけでなく、減圧のためにも使用されてもよい。
【0021】
図1aには、図1に示した操作システムが単独で示してある。図1aでは、各々の作業室KV,KHにそれぞれ1つの3ポート2位置弁が割り当てられている。貯蔵容器VBに通じる戻し管路Rには、非通電時に閉鎖されている2ポート2位置遮断弁MVsが配置されている。この2ポート2位置遮断弁MVsは常時開であり、弁PD1,PD2のうちの一方の弁の弁座Seに漏れがある欠陥発生時に有効となる。この欠陥発生時に弁MVsが閉鎖される。これは、非通電状態で弁PD1;PD2に漏れ流が発生し、戻し管路Rに流入する場合の事例である。このことは、例えば、ブレーキ系統BK2;BK1の付加的な体積取込みを介してpV特性線によって認識することができる、またはブレーキ系統BK2;BK1における不本意な圧力変化を介して認識することができる。弁MVsは、設けられてもよいが、必ずしも設けられる必要はない。
【0022】
図1bには、代替的な実施形態が示してある。この代替的な実施形態では、第2の3ポート2位置弁PD2が2ポート2位置弁に交換されており、これによって、作業室KHがもはや貯蔵容器VBに接続不能となっている。
【0023】
図2aには、本発明に係るブレーキシステム用の本発明による3ポート2位置弁MVの1つの可能な実施形態の概略図が示してある。3ポート2位置弁MVは励磁巻線5を有している。この励磁巻線5はソレノイドヨーク6を取り囲むように配置されている。このソレノイドヨーク6内では、ソレノイドアーマチュア4がピン7,7aに対する軸線方向で変位可能である。ソレノイドアーマチュア4の左側の端部には、当接要素4aが配置されている。この当接要素4aは、図2aに示した弁MVの非通電の第2の切換状態でソレノイドヨーク6の内壁に突き当たっている。結合ピン7,7aの右側の端部には、結合ピン端部7aに固く結合された第1の弁閉鎖体VSK1が配置されている。この第1の弁閉鎖体VSK1は、ソレノイドヨーク6の構成要素であってもよい第1の弁座VS1と協働する。ソレノイドヨーク6は、ピン区分7aの領域に第1の弁室K1を形成している。この第1の弁室K1は、液圧的な通路を介して、ブレーキ系統BK1を接続するための第1の弁ポートAN1に接続されている。
【0024】
3ポート2位置弁MVは、さらに、第2の弁室K2を有している。この第2の弁室K2内には、弁ばねVFと第2の弁閉鎖体VSK2とが配置されている。第2の弁室K2は、液圧的な通路を介して、ストロークシミュレータWSが接続された第2の弁ポートAN2に接続されている。第2の弁室K2はその左側の面に弁MVの第2の弁座VS2を形成している。この第2の弁座VS2は第2の弁閉鎖体VSK2と協働する。両方の弁座VS1,VS2の間には、第3の弁室K3が配置されている。この第3の弁室K3は、マスタブレーキシリンダSHZ;THZ用の第3の弁ポートAN3に接続されている。第1の弁閉鎖体VSK1の、ピン7,7aと反対側の面には、プランジャSTが一体成形されている、または取り付けられている。このプランジャSTの長さは、プランジャSTが第1の弁座VS1と第3の弁室K3とを通り抜け、3ポート2位置弁MVの通電状態において、プランジャSTの自由端部で第2の弁閉鎖体VSK2に作用することができるように寸法設定されている。図面では、圧力供給装置は第2のブレーキ系統BK2に接続されている。
【0025】
図2bには、電磁弁MVの「通電」状態が示してある。この「通電」状態では、アーマチュアが、励磁コイルの磁場によって右向きに変位させられている。これによって、第1の弁閉鎖体VSK1が、プランジャSTによって第2の弁閉鎖体VSK2を右向きに押圧し、この第2の弁閉鎖体VSK2を弁ばねVFのばね力に抗して第2の弁座VS2から離れる方向に押圧している。これによって、圧力供給装置DVが貯蔵容器VBに接続されている。この場合、第1の弁室K1と第3の弁室K3との間の液圧的な接続HV1が開放されている。これによって、圧力発生装置DVの作業室が貯蔵容器VBに接続されており、ブレーキ系統が切り離されている。
【0026】
弁ばねVFの寸法設定によって、例えば第1のブレーキ系統または圧力供給装置DZの故障時のフォールバックレベルにおける開放圧が規定される。本明細書では、立法機関によって、ブレーキペダル1を500Nの力で踏むことで0.24gの車両減速が発生可能であることが要求されている。弁ばねをマスタブレーキシリンダ内の75barの開放圧に合わせて寸法設定することで、ほぼ3倍の減速値を達成することができる。
【0027】
弁ばねVFは、ソレノイドアーマチュア4を確実に戻すと共に弁閉鎖体VSKを第1の弁座VS1に押圧して確実に密封するように寸法設定されていることが望ましい。
【0028】
図3には、複動式ピストンDHKへの2つの3ポート2位置弁PD1,PD2の接続形態が示してある。図示の非通電の休止位置では、両方の3ポート2位置弁PD1,PD2において、弁閉鎖体VSK11,VSK21が各々の弁座VS11,VS21に向かって押圧される。これによって、ポートAN11,AN13同士もしくはポートAN21,AN23同士の間の液圧的な接続が閉鎖されている。ブレーキ系統BK1もしくはブレーキ系統BK2内の圧力において、弁閉鎖体VSK11,VSK21に作用する作動媒体によって、付加的な力が閉鎖方向で作用する。
【0029】
ピストン往動行程において作用する室KVは、液圧管路HL2を介して第1の3ポート2位置弁PD1の中央の第3の弁ポートAN13に接続されており、これに対して、ピストン復動行程において作用する室KHは、液圧管路HL1を介して第2の3ポート2位置弁PD2の中央の第3の弁ポートAN23に接続されている。
【0030】
各々の第2の弁ポートAN12,AN22はブレーキ系統BK2,BK1に接続されている。ブレーキ系統BK1,BK2は、非通電状態で開放している系統分離弁KTVによって互いに接続されているかもしくは通電状態で互いに分離されている。増圧および減圧のためには、複動式ピストンDHKが、往動行程または復動行程で運動させられる。この場合、管路/弁内で有効な圧力が、両方の弁座での弁開放をアシストする。
【0031】
系統分離弁KTVは、ブレーキ系統BK1;BK2の故障時に閉鎖される。一方のブレーキ系統BK1;BK2が故障すると同時に系統分離弁KTVが故障する場合の二重欠陥を防ぐために、系統分離弁KTVは、冗長的に、例えば、直列に接続された別の系統分離弁KTVによって形成されてもよい。
【0032】
図4には、ピストン往動行程時の複動式ピストンDHKによる増圧機能における配置形態が示してある。この場合には、ピストンが図面で見て上向きに運動させられ、体積流が、開放した弁座VS22と、閉鎖された弁座VS12とを備えた通電されている3ポート2位置弁PD1を介してブレーキ系統BK2内に案内されると共に系統分離弁KTVを介してブレーキ系統BK1内に案内される。ピストン往動行程運動時には、複動式ピストンが、貯蔵容器VBから、弁PD2の開放した弁座VS21と、吸込み弁SV2とを介して体積を吸い込む。
【0033】
図5には、弁座VS12が開放している場合の複動式ピストンDHKの復動行程時の減圧形態が示してある。図5でも、やはり、両方のブレーキ系統BK1,BK2の間の圧力補償が系統分離弁KTVを介して作用する。弁座VS12,VS22には、減圧速度によって動圧が作用する。この動圧は、モータトルクまたは圧力発生器の電流または圧力を介して測定され、調整または制御されてもよい。
【0034】
複動式ピストン復動行程前のこのピストン位置から、例えば200barまでの高い圧力範囲への増圧を調整することもできる。この場合には、3ポート2位置弁PD2が通電される。これによって、弁座VS21が閉鎖され、弁座VS22が開放される。これによって、ブレーキ系統BK1内の圧力が上昇し、系統分離弁KTVを介してブレーキ系統BK2内の圧力も上昇する。ピストン復動行程運動時には、複動式ピストンが、貯蔵容器VBから、開放した弁座VS1と、吸込み弁SV1およびPD1のVS11とを介して体積を吸い込む。
【0035】
図6には、本発明に係る操作システムの別の可能な実施形態が示してある。図6では、ただ1つの3ポート2位置弁PD1しか設けられていない。この3ポート2位置弁PD1によって、第1の作業室KVまたは第2の作業室KHが、液圧管路HL3を介して貯蔵容器VBに接続される。制御される切換弁PD1sは、第1の液圧管路HL1もしくは第2の作業チャンバKHを第1の液圧系統BK1に選択的に液圧的に接続するために用いられる。制御される第2の切換弁PD2sは、第2の液圧管路HL2もしくは第1の作業チャンバKVを第2の液圧系統BK2に選択的に液圧的に接続するために用いられる。特に、第2の液圧管路HL2は、第5の液圧管路HL5を介して第2の液圧系統BK2に接続されている。この場合、制御される第2の切換弁PD2sは、第5の液圧管路HL5を選択的に遮断または開放するために用いられる。制御される第3の系統分離弁KTVを介して、両方の液圧系統BK1,BK2が互いに液圧的に接続または分離されてもよい。
【0036】
図7には、図6に示した系統の概略的な構造が示してある。
【0037】
図8には、ただ1つの作業室R1を備えたシングル型マスタブレーキシリンダSHZまたは2つの作業室R1,R2を備えたタンデム型マスタブレーキシリンダTHZとして形成されていてもよいマスタブレーキシリンダを備えたブレーキシステムにおいて使用される、図6および7に示した本発明に係る操作システムが示してある。図8では、マスタブレーキシリンダのポートが、図1で説明したポートに実質的に相当している。
【0038】
図9には、3ポート2位置弁の1つの可能な構造上の構成が示してある。図9では、ソレノイドアーマチュア4と、励磁コイル5と、ソレノイドヨーク6とから成る上側の部分が、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の標準2ポート2位置入口弁の構成に相当している。この理由から、図9では詳細な説明を省略し、2ポート2位置弁を3ポート2位置弁に変換した下側の部分だけを詳しく説明する。
【0039】
ソレノイドヨーク6は、第1の弁閉鎖体VSK1に結合されたピン7,7a用のガイドのために用いられる。ピン7は、2ポート2位置入口弁の標準構成と比較して、より小さな直径で形成されてもよい。このことは、有効磁極面積を拡大する。これによって、図6で説明したように、戻しばねVFを力アシストするために、ヨーク6内への永久磁石PMの組込みが可能となり、その結果、より小さな損失出力が達成される。第1の弁閉鎖体VSK1は第1の弁座VS1と協働し、確実な封止作用を達成するかもしくは保証するために、半球形に形成されている。第1の弁座VS1はソレノイドヨーク6に配置されている。しかしながら、第1の弁座VS1は、ソレノイドヨーク6に一体化されてもよいし、縁曲げにより掛け込まれたプレートを介して形成されてもよい。プランジャSTは、第1の弁閉鎖体VSK1に一体成形されている、またはピン7aに結合されている。プランジャは第1の弁座VS1を通り抜けて、第2の弁閉鎖体VSK2に作用する。この第2の弁閉鎖体VSK2はボールとして形成されていて、第2の弁座VS2と協働する。
【0040】
図示のように、第2の弁座VS2は、ボールVSK2および弁ばねVFと一緒に別個のハウジング内に構成ユニットとしてまとめられてもよい。このことは、事前組立ておよび弁調整における利点を提供する。このためには、構成ユニットがヨークハウジング内に圧入される。プランジャ行程を測定するために、ボールストッパが孔を有しており、これによって、測定ピンを介してボールのストロークが検出される。構成ユニットをソレノイドヨークに確実に結合するためには、給電が提供される。弁座VS1,VS2を保護するためには、ブレーキ系統、マスタブレーキシリンダおよびストロークシミュレータへの全ての接続路が、フィルタF1,F2,F3によって保護されている。
【0041】
弁調整は、プランジャSTがボールVSK2に対して小さな間隔を有するように行われる。
【0042】
コイル加熱を減じるためには、励磁巻線5がソレノイドハウジング9によって注封されてもよい。付加的には、リブを備えた冷却体10が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ペダル
2 貯蔵容器
3 ピストンプランジャ
4 ソレノイドアーマチュア
4a ソレノイドアーマチュア4のストッパ
5 励磁巻線
6 ソレノイドヨーク
7,7a ピン
7,7a ピン
AN1,AN2,AN3 弁ポート
BK1,BK2 第1および第2のブレーキ系統
BP1,BP2 分離弁
DV 圧力供給装置
F1,F2,F3 フィルタ
液圧による力
H ソレノイドアーマチュアの行程
HV1 第1の液圧接続路
HV2 第2の液圧接続路
K1,K2,K3 弁室
HLi 液圧管路
MV,PD1,PD2 3ポート2位置弁
PD1s,PD2s 分離弁
R1,R2 マスタブレーキシリンダの作業室
SHZ/THZ シングルもしくはタンデム型マスタブレーキシリンダ
VF 弁ばね
VS1,VS11 第1の弁座
VS2,VS22 第2の弁座
VSK11,VSK22 弁閉鎖体
WS ストロークシミュレータ
MVs 遮断弁
図1
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】