IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガンマデルタ セラピューティクス リミティッドの特許一覧

<>
  • 特表-新規方法 図1
  • 特表-新規方法 図2
  • 特表-新規方法 図3
  • 特表-新規方法 図4
  • 特表-新規方法 図5
  • 特表-新規方法 図6
  • 特表-新規方法 図7
  • 特表-新規方法 図8
  • 特表-新規方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】新規方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240328BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240328BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20240328BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240328BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240328BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240328BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240328BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20240328BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240328BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
C12N7/01
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561909
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 GB2022050886
(87)【国際公開番号】W WO2022214825
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】2105113.1
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519391608
【氏名又は名称】ガンマデルタ セラピューティクス リミティッド
【氏名又は名称原語表記】GAMMADELTA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】1 Kingdom Street, W2 6BD London, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ハットン、アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コヴァックス、イストヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー、オリヴァー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA97X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087DA31
4C087NA05
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、γδ T細胞を増大させるための方法であって、γδ T細胞が濃縮された組成物を調製することと、フィーダー細胞の存在下で組成物を培養することと、を含む方法に関する。また、γδ T細胞を改変するための方法であって、γδ T細胞が濃縮された組成物を調製することと、組成物を形質導入して腫瘍関連抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることと、形質導入された組成物を培養して改変されたγδ T細胞を増大させることと、を含む方法も提供される。また、養子T細胞療法、キメラ受容体療法などにおいて有用である、本明細書に記載の方法に従って生成される、増大した及び改変されたγδ T細胞も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
γδ T細胞を増大させるための方法であって、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で前記組成物を培養するステップであって、前記フィーダー細胞が少なくとも4:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する前記ステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
γδ T細胞を増大させるための方法であって、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞及びIL-15とIL-21とを含む培地の存在下で前記組成物を培養するステップであって、前記フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する前記ステップと、
を含む、前記方法。
【請求項3】
γδ T細胞を増大させるための方法であって、
(i)αβ T細胞の枯渇によりγδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で前記組成物を培養するステップであって、前記フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する前記ステップと、
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記フィーダー細胞が、少なくとも4:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィーダー細胞が、少なくとも10:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィーダー細胞が、約10:1~約99:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィーダー細胞が、αβ T細胞を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記αβ T細胞が、CD4 T細胞を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フィーダー細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞を更に含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィーダー細胞が、照射されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィーダー細胞が、非造血組織に由来する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記フィーダー細胞が、皮膚に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィーダー細胞が、単一のドナーに由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィーダー細胞が、複数のドナーに由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記γδ T細胞が、単一のドナーに由来する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記γδ T細胞が、複数のドナーに由来する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィーダー細胞及び前記γδ T細胞が、同じドナー(複数可)に由来する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィーダー細胞及び前記γδ T細胞が、異なるドナー(複数可)に由来する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
αβ T細胞の枯渇により、前記増大したγδ T細胞から前記フィーダー細胞を除去することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
γδ T細胞の陽性選択により、前記増大したγδ T細胞から前記フィーダー細胞を除去することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
γδ T細胞を改変するための方法であって、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)TCR刺激の非存在下で前記組成物を形質導入して腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現させるステップと;
(iii)前記形質導入された組成物を培養して前記改変されたγδ T細胞を増大させるステップと、
を含み、ステップ(ii)及び(iii)が、順にまたは同時にのいずれかで実施することができる、前記方法。
【請求項22】
ステップ(ii)が、ステップ(iii)の前に実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(ii)が、ステップ(iii)と同時に実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用して形質導入される、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスベクターが、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)またはモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)などのガンマレトロウイルスベクターである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスベクターが、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)以外のエンベロープ、例えば、ヒヒ内在性ウイルス(BaEV)またはRD114などのベータレトロウイルスエンベロープでシュードタイプ化されている、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(ii)が、1×10TU/mlのウイルスベクターを使用して実施される、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍抗原が、対象組織の正常体細胞では発現されない腫瘍特異的抗原である、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍抗原が、健常体細胞と比較してがん細胞で優先的に過剰発現される腫瘍関連抗原である、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍抗原が、酸化ストレス、DNA損傷、UV放射、EGF受容体刺激などのストレス事象に関連して発現される抗原である、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記腫瘍抗原が、固形腫瘍に関連する抗原である、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記固形腫瘍が、メソテリン腫瘍である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記腫瘍関連抗原が、メソテリンである、請求項21~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(iii)が、前記形質導入された組成物をフィーダー細胞の非存在下で培養することを含む、請求項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(iii)が、前記形質導入された組成物をフィーダー細胞の存在下で培養することを含む、請求項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法のステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(i)が、出発試料から得られた混合細胞集団からのαβ T細胞の枯渇を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(i)が、出発試料から得られた混合細胞集団からのγδ T細胞の陽性選択を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記出発試料が、ヒト組織である、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記出発試料が、非造血組織である、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記出発試料が、皮膚である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、IL-15またはIL-21を含む培地中で培養される、請求項1または3~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記培地が、IL-15及びIL-21を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記培地が、IL-2及び/またはIL-4を更に含む、請求項42または43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物を7~21日間培養することを含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物を約10、11、12、13、または14日間培養することを含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
γδ T細胞の集団を増大させることにより、少なくとも5倍、とりわけ少なくとも10倍、特に少なくとも20倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍の数のγδ T細胞がもたらされる、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記増大したγδ T細胞を凍結することを含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
請求項1~20または36~48のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、例えば得られた、増大したγδ T細胞集団。
【請求項50】
請求項21~48のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、例えば得られた、改変されたγδ T細胞集団。
【請求項51】
請求項48に記載の増大したγδ T細胞集団または請求項50に記載の改変されたγδ T細胞集団を含む、医薬組成物。
【請求項52】
薬剤として使用するための、請求項49に記載の増大したγδ T細胞集団、請求項50に記載の改変されたγδ T細胞集団、または請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
がんの治療に使用するための、請求項49に記載の増大したγδ T細胞集団、請求項50に記載の改変されたγδ T細胞集団、または請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項53に記載の使用のための増大したγδ T細胞集団、改変されたγδ T細胞集団、または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γδ T細胞を増大させるための方法に関し、前記方法は、γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと、フィーダー細胞の存在下で前記組成物を培養するステップと、を含む。また、γδ T細胞を改変するための方法も提供され、前記方法は、γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと、組成物を形質導入して腫瘍関連抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現させるステップと、形質導入された組成物を培養して改変されたγδ T細胞を増大させるステップと、を含む。そのようなγδ T細胞には、非Vδ2細胞、例えば、Vδ1、Vδ3、及びVδ5細胞が含まれる。本明細書に記載の方法に従って生成される、増大した及び改変されたγδ T細胞は、養子T細胞療法、キメラ受容体療法などにおいて有用である。本発明はまた、本明細書に記載の方法により生成される個々の細胞及び細胞集団の両方に関する。
【背景技術】
【0002】
がんに対するT細胞免疫療法への高まりつつある関心は、特にPD-1、CTLA-4、及び他の受容体により及ぼされる抑制経路の臨床的に媒介される拮抗作用によって抑制解除された場合に、がん細胞を認識し、宿主防御的な機能的潜在能力を媒介する、CD8及びCD4 αβ T細胞のサブセットの明白な能力に注目してきた。しかしながら、αβ T細胞はMHC拘束性であり、これは、同種環境においては移植片対宿主病を引き起こし得る。
【0003】
養子細胞療法によるがんの治療は、循環中の患者由来自家改変αβ T細胞に基づくプラットフォームに主に限定されている。このアプローチは、一部の血液悪性腫瘍では成功しているが、付随する毒性、生産コストの高さ、及び同種環境で使用する場合に移植片対宿主病を回避するために細胞を遺伝子編集する必要性などの課題が伴う。改変αβ T細胞は血液悪性腫瘍において治療活性を示しているが、固形腫瘍における臨床活性については困難である。
【0004】
ガンマデルタT細胞(γδ T細胞)とは、その表面に独特で決定的なγδ T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞のサブセットを意味する。このTCRは、1つのガンマ(γ)鎖及び1つのデルタ(δ)鎖で構成される。ヒトγδ TCR鎖は、3つの主要なδ鎖であるVδ1、Vδ2、及びVδ3ならびに6つのγ鎖から選択される。ヒトγδ T細胞は、そのTCR鎖に基づいて大まかに分類することができる。これは、特定のγ及びδタイプが1種以上の組織タイプの細胞により一般的に見られる(但し、それのみに見られるわけではない)ためである。例えば、血液常在γδ T細胞の大部分はVδ2 TCR、例えばVγ9Vδ2を発現するが、これは、組織常在γδ T細胞(皮膚ではVδ1、腸ではVγ4をより頻繁に用いる)ではそれほど一般的ではない。
【0005】
したがって、αβ T細胞とは対照的に、Vδ1 γδ T細胞は、Vδ1鎖と対になったγ鎖から構成されるT細胞受容体の発現によって定義される、自然T細胞のサブセットである。マウスでは、Vδ1 γδ T細胞は主に組織常在性であり、そこでそれらはパターン及び天然の細胞傷害性受容体認識を介して抗腫瘍応答を媒介することにより、広範囲の癌腫を高度に防御する。同様に、ヒトでは、Vδ1 γδ T細胞は主に上皮組織内に常在し、MHC拘束性ではない標的細胞認識を媒介し、かつアロHLA反応性ではない。したがって、γδ T細胞養子細胞療法には、患者のHLA一致は必要とされない。抗原非依存性の腫瘍認識、HLA一致の必要性がないこと、ならびにヒト組織への固有の遊走及び常在を可能にする生来のVδ1 γδ T細胞の生物学的性質により、Vδ1 γδ T細胞は細胞療法にとって魅力的なプラットフォームとなっている。
【0006】
したがって、γδ T細胞を効率的に増大させ、それを療法、例えば養子T細胞療法として適応させる方法、及び同種「既製」キメラ抗原受容体発現γδ T細胞療法(例えば固形腫瘍の治療用)を提供する可能性を有する方法が必要とされている。
【0007】
WO2017072367及びWO2018202808は、少なくともインターロイキン-2(IL-2)及び/またはインターロイキン-15(IL-15)の存在下で非造血組織から得られたリンパ球を培養することにより、非造血組織常在γδ T細胞をインビトロで増大させる方法に関する。WO2015189356には、IL-2、IL-15、及びIL-21から選択される少なくとも2種類のサイトカインを含む、アフェレーシスによって得られた試料から得られたリンパ球を増大させるための組成物が記載されている。
【0008】
したがって、これらの開示は、上述した問題の解決に向けていくらかの助けになるが、皮膚などに由来するγδ T細胞を増大させる及び改変する方法であって、そのようなγδ T細胞を療法において使用する能力を提供する方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも4:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞及びIL 15とIL-21とを含む培地の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)αβ T細胞の枯渇によりγδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0012】
本発明のその上更なる態様によれば、γδ T細胞を改変するための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)TCR刺激の非存在下で組成物を形質導入して腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現させるステップと;
(iii)形質導入された組成物を培養して改変されたγδ T細胞を増大させるステップと、を含み、
ここで、ステップ(ii)及び(iii)は、順にまたは同時にのいずれかで実施することができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の方法により得ることができる、例えば得られた増大したγδ T細胞集団が提供される。更なる態様によれば、本明細書に記載の方法により得ることができる、例えば得られた改変されたγδ T細胞集団が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団または改変されたγδ T細胞集団を含む医薬組成物が提供される。
【0015】
本発明のその上更なる態様によれば、薬剤として使用するための、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団、改変されたγδ T細胞集団、または医薬組成物が提供される。別の態様では、固形腫瘍の治療などのがんの治療に使用するための、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団、改変されたγδ T細胞集団、または医薬組成物が提供される。
【0016】
また、γδ T細胞を増大させるための方法も提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が、少なくとも1:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)、とりわけ少なくとも1:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)、特に少なくとも2:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)、例えば少なくとも3:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0017】
γδ T細胞を増大させるための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞及びIL-15とIL-21とを含む培地の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも1:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)、例えば少なくとも1:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0018】
γδ T細胞を増大させるための方法が加えて提供され、前記方法は、
(i)αβ T細胞の枯渇によりγδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも1:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)、例えば少なくとも1:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】γδ T細胞増大用フィーダー細胞の様々な供給源の比較。γδ T細胞を皮膚から単離し、αβ T細胞を枯渇させ、次の照射細胞:同種末梢血リンパ球(PBL)、同種末梢血単核細胞(PBMC)、抗CD3 CD28活性化同種PBMC(Act PBMC)、または同種皮膚単離培養物(皮膚αβ/皮膚単離細胞)と、対照(4CK)と比較して7日間共培養した。A)Ki67マーカーを使用して増殖を示しており、BにVδ1細胞の総数を示す。
図2】γδ T細胞を初期集団から陽性選択し、様々な割合でフィーダー細胞の残りの集団に戻し加えた場合のγδ細胞の増大。A)γδ T細胞の陽性選択後に、γδ T細胞の増大倍数を、フィーダー細胞の存在下で(0日目時点の1%、5%、10%、20%、または40%のγδ T細胞濃縮、非αβ細胞含有物であり、培養物の残部が自家フィーダー細胞で構成される)、示している培養日数後に決定した。B)フィーダー細胞の非存在下でのAと同様。
図3】αβ細胞を初期集団から枯渇させ、様々な割合でフィーダー細胞として戻し加えた場合のγδ細胞の増大。A)γδ T細胞の増大倍数を、フィーダー細胞の存在下で(0日目時点の1%、5%、10%、20%、または40%の非αβ細胞含有物であり、培養物の残部が自家フィーダー細胞で構成される)、示している培養日数後に決定した。B)フィーダー細胞の非存在下でのAと同様。
図4】CD19 CAR γδ T細胞は、NALM6標的細胞に対して細胞傷害活性を示す。αβフィーダー細胞を含むγδ T細胞の組成物をCD19 CARで形質導入し、続いてαβ T細胞の枯渇により増大したγδ T細胞からフィーダー細胞を除去した。次いで、形質導入γδ T細胞を、CD19を発現するNALM6標的細胞と示している比でインキュベートし、殺傷量を測定した。
図5】凍結保存した形質導入γδ T細胞は生存可能であり、CAR発現は安定しており、細胞傷害活性は解凍後に保持されている。A)凍結前の増大14日目のCAR発現レベル。B)Aと同様に、CD19 CAR細胞の割合を解凍の7日後に測定したところ、凍結及び回復後であっても良好なレベルの発現が示された。
図6】αβ T細胞の枯渇によりフィーダー細胞を除去した解凍後のCD19 CAR形質導入γδ T細胞を、CD19を発現するNALM6標的細胞と示している比でインキュベートし、殺傷量を測定した。
図7】出発γδ T集団のαβを枯渇させ、次いで記載のとおりに形質導入及び培養したメソテリン-CAR形質導入γδ T細胞により、40%超がメソテリンCARであるγδ T細胞集団が得られた。
図8】メソテリン-CARで形質導入したγδ T細胞は、メソテリン陽性がん細胞株に対して細胞傷害性を示す。A)解凍後の模擬細胞及び形質導入細胞の生存率、B)Hela細胞に対する細胞傷害性、C)SCOV-3細胞に対する細胞傷害性。
図9】陰性選択したγδ T細胞を、皮膚常在CD4 αβ T細胞(「CD4フィーダー」)、皮膚常在CD8 αβ T細胞(「CD8フィーダー」)、CD4 αβ T細胞とCD8 αβ T細胞の両方(「αβフィーダー」)のいずれかとともに、または代替的に更にフィーダー細胞を添加せずに(「γδのみ」)培養した。次いで、培養物を14日間(左のグラフ)または21日間(右のグラフ)のいずれかで増大させてから培養物を収集し、γδ増大率を算出した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
照射人工抗原提示細胞(aAPC)をフィーダーとして使用してγδ T細胞の集団を臨床スケールに増大させることができることが、これまでに報告されている(Deniger et al.,Clin.Cancer Res.,2014;20(22):5708-5719)。そのようなaAPCはK562腫瘍細胞に由来し、IL-2及びIL-21の存在下でポリクローナルγδ T細胞集団の活性化及び増殖をもたらすCD137Lを発現する。しかしながら、そのような方法は、K562腫瘍細胞がaAPCとして機能しかつγδ T細胞の増大及び活性化を支援するために、K562腫瘍細胞の遺伝子修飾が必要であり、加えてこれらの腫瘍由来aAPCの増殖を停止するための照射も必要である。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも4:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0022】
本明細書に記載の方法は、ヒトまたは動物の身体の外側で実施される。すなわち、方法はインビトロ及び/またはエクスビボである。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の方法はインビトロ法である。更なる実施形態では、本明細書に記載の方法はエクスビボ法である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「増大した」、「増大した集団」、または「増大したγδ T細胞」への言及には、非増大集団よりも大きい、またはより多数の細胞を含有する細胞の集団が含まれる。そのような集団は、数が多い場合もあれば少ない場合もあり、または集団内の割合もしくは特定の細胞タイプが増大した混合集団である場合もある。「増大ステップ」という用語は、増大または増大した集団を生じさせるプロセスを指すことが理解されよう。したがって、増大または増大した集団は、増大ステップが実施されていない集団、またはあらゆる増大ステップの前の集団と比較して、数がより多いか、またはより多数の細胞を含有し得る。増大を示すために本明細書に示される任意の数値(例えば、増加倍数または増大倍数)は、細胞集団の数もしくはサイズまたは細胞数の増加を説明するものであり、かつ増大の量を示すものであることが更に理解されよう。
【0024】
γδ T細胞の組成物の培養は、γδ T細胞の増大した集団を生成するのに有効な期間で実施されることが理解されよう。一実施形態では、γδ T細胞の増大した集団を生成するのに有効な期間は、少なくとも7日である。したがって、一実施形態では、γδ T細胞の組成物は、少なくとも7日間培養される。更なる実施形態では、組成物は、7~21日間、例えば9~15日間培養される。その上更なる実施形態では、組成物は、約10、11、12、13、または14日間培養される。
【0025】
なお更なる実施形態では、γδ T細胞の増大した集団を生成するために、組成物は、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、または少なくとも21日間、例えば、約14日間または約21日間培養される。一実施形態では、γδ T細胞の増大した集団を生成するために、組成物は、約10、11、12、13、または14日間培養される。
【0026】
γδ T細胞の集団を適切に増大させることにより、少なくとも5倍、とりわけ少なくとも10倍、特に少なくとも20倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍の数のγδ T細胞がもたらされる。
【0027】
一実施形態では、本方法は、増大したγδ T細胞を凍結することを含む。そのような凍結した増大したγδ T細胞は、その後、後続の処理または使用(例えば、治療的使用)のために解凍することができる。凍結は、増大したγδ T細胞の容易な輸送及び長期保存を可能にし、当該技術分野で公知である。したがって、凍結及び解凍後に良好な生存率及び活性を示す細胞をもたらす方法が有利であり、全ての増大方法でそのような細胞が得られるわけではない(データは示さず)。
【0028】
少なくとも4:1のフィーダー細胞:γδ T細胞の比は、培養物中の少なくとも80%のフィーダー細胞対20%以下のγδ T細胞の割合に等しい。フィーダー細胞:γδ T細胞のこのような比により、フィーダー細胞の非存在下で培養したγδ T細胞集団と比較して、培養物中のγδ T細胞集団の増大が大幅に強化される(図2~3)。更に、これらの培養物内のCD45集団におけるγδ T細胞の純度は、最も高いレベルでフィーダー細胞を添加しても増加する(データは示さず)。これらの有利な効果は、培養中の全ての時点で、特に培養14日目及び21日目に見られる。
【0029】
したがって、一実施形態では、培養物は、少なくとも80%のフィーダー細胞を含む。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、約10:1~約99:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する。一実施形態では、フィーダー細胞は、少なくとも10:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する。したがって、更なる実施形態では、培養物は、少なくとも90%のフィーダー細胞を含む。更なる実施形態では、フィーダー細胞は、少なくとも20:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する。したがって、一実施形態によれば、培養物は、少なくとも95%のフィーダー細胞を含む。その上更なる実施形態では、フィーダー細胞は、少なくとも50:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する。したがって、一実施形態では、培養物は、少なくとも98%のフィーダー細胞を含む。なお更なる実施形態では、フィーダー細胞は、少なくとも99:1(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在する。したがって、更なる実施形態では、培養物は、少なくとも99%のフィーダー細胞を含む。本明細書において試験した全ての比では、フィーダー細胞なしで培養したγδ T細胞集団と比較して、培養物中のγδ T細胞集団の増大が大幅に強化され(図1)、フィーダー細胞が約10:1の比で存在する場合、すなわち培養物が約90%のフィーダー細胞を含む場合には、γδ T細胞の収率及び純度は特に良好である。
【0030】
本発明によるフィーダー細胞は、未修飾の自家または同種の非γδ T細胞であってよく、すなわちそれらは、γδ T細胞が濃縮された組成物と同じまたは異なるドナーに由来する細胞である。そのようなフィーダー細胞には、γδ T細胞が濃縮された組成物と同じ組織または同じ組織タイプに(同じ/単一のドナーまたは異なるドナーのいずれに由来するかには無関係に)由来するαβ T細胞及び任意選択でナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。例えば、γδ T細胞が皮膚などの非造血組織から単離される場合、フィーダー細胞は、同じく前記非造血組織(例えば皮膚)から単離された非γδ T細胞であってよい。αβ T細胞を含むそのようなフィーダー細胞は、最初に造血組織から単離することもできるが、その後細胞培養または遺伝子操作を通じて修飾して、通常では造血組織中に大量に見られない組織常在性αβ T細胞またはメモリーαβ T細胞の表現型及び生物学的性質に類似させることもできる。したがって、一実施形態では、フィーダー細胞及びγδ T細胞が濃縮された組成物は、単一のドナーに由来する。別の実施形態では、フィーダー細胞及びγδ T細胞が濃縮された組成物は、異なるドナーに由来する。
【0031】
一実施形態では、γδ T細胞の組成物は、単一のドナーに由来する。代替実施形態では、組成物は複数のドナーに由来する、すなわち、組成物は「プールされた」組成物である。更なる実施形態では、フィーダー細胞は、単一のドナーに由来する。別の実施形態では、フィーダー細胞は複数のドナーに由来する、すなわち、フィーダー細胞は「プール」されている。したがって、一実施形態では、フィーダー細胞は複数のドナーから得られ、γδ T細胞が濃縮された組成物は単一のドナーから得られる。別の実施形態では、フィーダー細胞は単一のドナーから得られ、γδ T細胞が濃縮された組成物は複数のドナーから得られる。
【0032】
一実施形態では、単一または複数のドナーには、本発明の細胞集団または組成物で治療される対象が含まれ得る。あるいは、単一または複数のドナーには、本発明の細胞集団または組成物で治療される対象は含まれない。
【0033】
いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、αβが豊富なT細胞の集団を含む。更なる実施形態では、フィーダー細胞は、αβ T細胞を含む。一実施形態では、αβ T細胞は、CD4 T細胞及び/またはCD8 T細胞を含む。「CD4 T細胞」または「CD4 T細胞」への言及は、CD4表面タンパク質を発現するT細胞のタイプを指すことが理解されよう。同様に、「CD8 T細胞」または「CD8 T細胞」への言及は、CD8表面タンパク質を発現するT細胞のタイプを指す。特定の実施形態では、フィーダー細胞は、CD4 T細胞を含む。更なる実施形態では、フィーダー細胞は、CD4 T細胞からなる。
【0034】
その上更なる実施形態では、フィーダー細胞は、αβ T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞との混合集団を含む。したがって、一実施形態では、フィーダー細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を更に含む。
【0035】
本明細書に記載のフィーダー細胞は、天然の抗原提示能力及び共刺激能力をもたらすものであり、抗原提示細胞として機能するように遺伝子修飾されておらず、したがってaAPCではないことが理解されよう。更に、それらは腫瘍細胞に由来するものではないため、照射またはマイトマイシン-C処理などによってフィーダー細胞の増殖を停止する必要はない。但し、別の実施形態では、フィーダー細胞の増殖は停止されている。増殖停止の方法は当該技術分野で公知であり、それらとしては、限定するものではないが、複製は不可能であるが代謝活性を維持しているフィーダー細胞を生じさせ、それによりγδ T細胞に対し十分な増殖上の支援を提供する、照射(例えばγ線照射)及びマイトマイシン-C処理が挙げられる。フィーダー細胞の増殖を停止することにより、γδ T細胞と比較して多数/高い割合で存在する場合、これらの細胞を成長させずにγδ T細胞を長期間培養することが可能になる。したがって、更なる実施形態では、フィーダー細胞は照射されている。代替実施形態では、フィーダー細胞はマイトマイシン-Cで処理されている。
【0036】
一実施形態では、フィーダー細胞は非造血組織から得られる。更なる実施形態では、フィーダー細胞は皮膚から得られる。そのような非造血組織及びその調製方法の例は、WO2020095058及びWO2020095059に見出すことができ、それらの開示はその全体が組み込まれる。
【0037】
他の実施形態では、γδ T細胞が濃縮された組成物は、NK細胞を含む。したがって、一実施形態では、ステップ(i)は、αβ T細胞の枯渇を含む。すなわち、γδ T細胞が濃縮された組成物は、αβ T細胞の枯渇により調製される。更なる実施形態では、ステップ(i)に従ってγδ T細胞が濃縮された組成物を調製することは、前述した非血液組織などの出発試料から得られた混合細胞集団からαβ T細胞を枯渇させることを含む。組成物中にNK細胞が存在することは、これらの細胞もまた効果的な細胞傷害性細胞であるため、有利である。したがって、NK細胞を更に含むγδ T細胞の組成物は、γδ T細胞単独の組成物と比較して強化された細胞傷害特性を有し得る。
【0038】
NK細胞(大顆粒リンパ球(LGL)としても知られる)は、自然免疫系の細胞傷害性リンパ球である。NK細胞は、標的細胞の表面でのMHC発現とは無関係に、例えばウイルス感染細胞及び腫瘍細胞に対して迅速な応答をもたらす。したがって、γδ T細胞と同様に、NK細胞による標的細胞の認識はMHC拘束性ではなく、かつNK細胞はアロHLA反応性ではない。これは、NK細胞ベースの療法には患者のHLA一致が必要とされないことを意味する。
【0039】
したがって、本発明の別の態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)αβ T細胞の枯渇によりγδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0040】
したがって、特定の実施形態では、培養物は、少なくとも60%のフィーダー細胞を含む。他の実施形態では、培養物は、少なくとも66%のフィーダー細胞、例えば少なくとも70%のフィーダー細胞を含む。
【0041】
別の実施形態では、ステップ(i)は、出発試料から得られた混合細胞集団からのγδ T細胞の陽性選択を含む。
【0042】
特定の実施形態では、出発試料は、ヒト組織である。更なる実施形態では、出発試料は、前述したものなどの非造血組織である。特定の実施形態では、出発試料は、皮膚である。
【0043】
特定の実施形態では、本方法は、αβ T細胞の枯渇により、増大したγδ T細胞からフィーダー細胞を除去することを含む。αβ T細胞の枯渇によるそのような除去により、本明細書に記載の方法により生成され、更にNK細胞を含む増大したγδ T細胞の集団が得られる。前述したように、NK細胞は、γδ T細胞と同様に、MHC拘束性でもなくアロHLA反応性でもない良好なエフェクター細胞である。したがって、特定の実施形態では、増大したγδ T細胞の集団は、NK細胞を含む。代替実施形態では、本方法は、γδ T細胞の陽性選択により、増大したγδ T細胞からフィーダー細胞を除去することを含む。そのようなγδ T細胞の陽性選択により、他の/追加の細胞タイプを含む集団と比較して、後続の処理または療法における使用により適し得る、高度に精製されたγδ T細胞集団が得られる。
【0044】
一実施形態では、組成物は、IL-15を含む培地中で培養される。更なる実施形態では、組成物は、IL-21を含む培地中で培養される。したがって、いくつかの実施形態では、培地は、IL-15及びIL-21を含む。その上更なる実施形態では、培地は、IL-2を更に含む。なお更なる実施形態では、培地は、IL-4を更に含む。したがって、いくつかの実施形態では、培地は、IL-2及びIL-4を更に含む。更なる実施形態では、培地は、IL-15、IL-21、IL-2、及びIL-4を含む。
【0045】
特定の実施形態では、γδ T細胞が濃縮された組成物は、ステップ(ii)において、IL-15及びIL-21を含む培地の存在下で培養される。更なる実施形態では、ステップ(ii)は、WO2017072367及びWO2018202808に開示されているγδ T細胞を増大させるための条件及び/または方法を含み、その内容はその全体が組み込まれる。
【0046】
したがって、本発明の別の態様によれば、γδ T細胞を増大させるための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)フィーダー細胞及びIL-15とIL-21とを含む培地の存在下で組成物を培養するステップであって、フィーダー細胞が少なくとも3:2(フィーダー細胞:γδ T細胞)の比で存在するステップと、を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「IL-15」とは、1種以上のIL-15受容体(IL-15R)サブユニットのアゴニストとして機能する天然または組換えIL-15またはそのバリアント(例えば、その変異体、変異タンパク質、類似体、サブユニット、受容体複合体、フラグメント、アイソフォーム、及びペプチド模倣物)を指す。IL-15は、IL-2と同様に、IL-2依存性細胞株CTLL-2の増殖を支援することができる既知のT細胞増殖因子である。IL-15は、Grabstein,et al.(Grabstein,et al.Science 1994.264.5161:965-969)によって114アミノ酸の成熟タンパク質として最初に報告された。本明細書で使用される「IL-15」という用語は、天然または組換えIL-15及びその変異タンパク質、類似体、サブユニット、またはその複合体(例えば、受容体複合体、例えば、WO2007/046006に記載のスシペプチド)を意味し、その各々はCTLL-2細胞の増殖を刺激することができる。CTLL-2増殖アッセイでは、組換えにより発現した成熟型IL-15の前駆体及びインフレーム融合体をトランスフェクトした細胞の上清は、CTLL-2細胞の増殖を誘導することができる。
【0048】
ヒトIL-15は、Grabsteinらにより記載された手順に従って、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって得ることができる。ヒトIL-15 cDNAは1993年2月19日にATCC(登録商標)に寄託され、アクセッション番号69245が割り当てられた。
【0049】
ヒトIL-15のアミノ酸配列(遺伝子ID3600)は、GenbankのアクセッションロケータNP000576.1 GI:10835153(アイソフォーム1)及びNP_751915.1 GI:26787986(アイソフォーム2)に見出される。マウス(Mus musculus)IL-15アミノ酸配列(遺伝子ID16168)は、GenbankのアクセッションロケータNP_001241676.1 GI:363000984に見出される。
【0050】
IL-15は、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、及びマウスを含む様々な哺乳動物種に由来するIL-15も指す場合がある。本明細書で言及されるIL-15「変異タンパク質」または「バリアント」は、天然哺乳動物IL-15の配列と実質的に相同であるが、アミノ酸の欠失、挿入、または置換により天然哺乳動物IL-15ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。バリアントは、保存的に置換された配列を含む場合があり、これは、所与のアミノ酸残基が同様の生理化学的特徴を有する残基によって置換されていることを意味する。保存的置換の例としては、ある脂肪族残基の別の脂肪族残基での置換(例えば、Ile、Val、Leu、もしくはAlaの相互の置換)、またはある極性残基の別の極性残基での置換(例えば、LysとArg、GluとAsp、もしくはGlnとAsnとの間の置換)が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、同様の疎水性特徴を有する領域全体の置換が周知である。天然に存在するIL-15バリアントも、本発明に包含される。そのようなバリアントの例は、交互mRNAスプライシング事象またはIL-15タンパク質のタンパク質分解切断から生じるタンパク質であって、IL-15結合特性が保持されているものである。mRNAの交互スプライシングにより、トランケートされているが生物学的に活性であるIL-15タンパク質が生成され得る。タンパク質分解に起因する変異としては、例えば、IL-15タンパク質からの1つ以上の末端アミノ酸(通常1~10アミノ酸)のタンパク質分解除去による、異なるタイプの宿主細胞中での発現時のN末端またはC末端の相違が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えばポリエチレングリコールなどの化学基を用いて、タンパク質の末端を修飾してその物理的特性を変化させることができる(Yang,et al.Cancer 1995.76:687-694)。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端または内部を追加のアミノ酸で修飾することができる(Clark-Lewis,et al.PNAS 1993.90:3574-3577)。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-15を、典型的には少なくとも0.1ng/mL、例えば少なくとも10ng/mL(例えば、0.1ng/mL~10,000ng/mL、1.0ng/mL~1,000ng/mL、5ng/mL~800ng/mL、10ng/mL~750ng/mL、20ng/mL~500ng/mL、50ng/mL~400ng/mL、または100ng/mL~250ng/mL、例えば、0.1ng/mL~1.0ng/mL、1.0ng/mL~5.0ng/mL、5.0ng/mL~10ng/mL、10ng/mL~20ng/mL、20ng/mL~100ng/mL、20ng/mL~50ng/mL、40ng/mL~70ng/mL、50ng/mL~100ng/mL、50ng/mL~60ng/mL、100ng/mL~200ng/mL、200ng/mL~500ng/mL、または500ng/mL~1,000ng/mL)の濃度で含む。更なる実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-15を、典型的には500ng/mL未満、例えば100ng/mL未満の濃度で含む。いくつかの実施形態では、IL-15の濃度は、約50ng/mLである。別の実施形態では、IL-15の濃度は、約55ng/mLである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「IL-21」とは、1種以上のIL-21受容体(IL-21R)サブユニットのアゴニストとして機能する天然または組換えIL-21またはそのバリアント(例えば、その変異体、変異タンパク質、類似体、サブユニット、受容体複合体、フラグメント、アイソフォーム、及びペプチド模倣物)を指す。そのような作用物質は、ナチュラルキラー(NK)T細胞及び細胞傷害性(CD8)T細胞の増殖を支援することができる。成熟ヒトIL-21は、133アミノ酸の配列として存在する(追加の22個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)。IL-21変異タンパク質は、米国特許第9,388,241号に記載されているものなどの、IL-21Rαに結合する能力を保持しながらインターロイキン-21タンパク質に対する特異的置換が行われたポリペプチドである。IL-21変異タンパク質は、天然IL-21ポリペプチド鎖内またはそのポリペプチド鎖の他の残基における1つ以上の部位におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換、及び修飾によって特徴付けることができる。本開示によれば、そのような挿入、欠失、置換、及び修飾はいずれも、IL-21R結合活性を保持するIL-21変異タンパク質を生じさせる。例示的な変異タンパク質には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるアミノ酸の置換が含まれ得る。
【0053】
ヒトIL-21をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって得ることができる。ヒトIL-21のアミノ酸配列(遺伝子ID59067)は、GenbankのアクセッションロケータNC_000004.12に見出される。マウス(Mus musculus)IL-21アミノ酸配列(遺伝子ID60505)は、GenbankのアクセッションロケータNC_000069.6に見出される。
【0054】
IL-21は、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、及びマウスを含む様々な哺乳動物種に由来するIL-21も指す場合がある。バリアントは、保存的に置換された配列を含む場合があり、これは、所与のアミノ酸残基が同様の生理化学的特徴を有する残基によって置換されていることを意味する。保存的置換の例としては、ある脂肪族残基の別の脂肪族残基での置換(例えば、Ile、Val、Leu、もしくはAlaの相互の置換)、またはある極性残基の別の極性残基での置換(例えば、LysとArg、GluとAsp、もしくはGlnとAsnとの間の置換)が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、同様の疎水性特徴を有する領域全体の置換が周知である。天然に存在するIL-21バリアントも、本発明に包含される。そのようなバリアントの例は、交互mRNAスプライシング事象またはIL-21タンパク質のタンパク質分解切断から生じるタンパク質であって、IL-21結合特性が保持されているものである。mRNAの交互スプライシングにより、トランケートされているが生物学的に活性であるIL-21タンパク質が生成され得る。タンパク質分解に起因する変異としては、例えば、IL-21タンパク質からの1つ以上の末端アミノ酸(通常1~10アミノ酸)のタンパク質分解除去による、異なるタイプの宿主細胞中での発現時のN末端またはC末端の相違が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えばポリエチレングリコールなどの化学基を用いて、タンパク質の末端を修飾してその物理的特性を変化させることができる(Yang,et al.Cancer 1995.76:687-694)。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端または内部を追加のアミノ酸で修飾することができる(Clark-Lewis,et al.PNAS 1993.90:3574-3577)。
【0055】
更なる実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-21を、典型的には少なくとも0.1ng/mL、例えば少なくとも1.0ng/mL(例えば、0.1ng/mL~1,000ng/mL、1.0ng/mL~100ng/mL、1.0ng/mL~50ng/mL、2ng/mL~50ng/mL、3ng/mL~10ng/mL、4ng/mL~8ng/mL、5ng/mL~10ng/mL、6ng/mL~8ng/mL、例えば、0.1ng/mL~10ng/mL、1.0ng/mL~5ng/mL、1.0ng/mL~10ng/mL、1.0ng/mL~20ng/mL)の濃度で含む。更なる実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-21を、典型的には100ng/mL未満、例えば50ng/mL未満の濃度で含む。いくつかの実施形態では、IL-21の濃度は、約6ng/mL、例えば約6.25ng/mLである。
【0056】
本明細書で使用される場合、「IL-2」とは、1種以上のIL-2受容体(IL-2R)サブユニットのアゴニストとして機能する天然または組換えIL-2またはそのバリアント(例えば、その変異体、変異タンパク質、類似体、サブユニット、受容体複合体、フラグメント、アイソフォーム、及びペプチド模倣物)を指す。そのような作用物質は、IL-2依存性細胞株であるCTLL-2(33;American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))TIB 214)の増殖を支援することができる。成熟ヒトIL-2は、Fujita,et al.Cell 1986.46.3:401-407に記載されているように、133アミノ酸の配列として存在する(追加の20個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)。IL-2変異タンパク質は、US2014/0046026に記載されているものなどの、IL-2Rβに結合する能力を保持しながらインターロイキン-2タンパク質に対する特異的置換が行われたポリペプチドである。IL-2変異タンパク質は、天然IL-2ポリペプチド鎖内またはそのポリペプチド鎖の他の残基における1つ以上の部位におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換、及び修飾によって特徴付けることができる。本開示によれば、そのような挿入、欠失、置換、及び修飾はいずれも、IL-2Rβ結合活性を保持するIL-2変異タンパク質を生じさせる。例示的な変異タンパク質には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるアミノ酸の置換が含まれ得る。
【0057】
ヒトIL-2をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって得ることができる。ヒトIL-2のアミノ酸配列(遺伝子ID3558)は、GenbankのアクセッションロケータNP_000577.2 GI:28178861に見出される。マウス(Mus musculus)IL-2アミノ酸配列(遺伝子ID16183)は、GenbankのアクセッションロケータNP_032392.1 GI:7110653に見出される。
【0058】
IL-2は、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、及びマウスを含む様々な哺乳動物種に由来するIL-2も指す場合がある。バリアントは、保存的に置換された配列を含む場合があり、これは、所与のアミノ酸残基が同様の生理化学的特徴を有する残基によって置換されていることを意味する。保存的置換の例としては、ある脂肪族残基の別の脂肪族残基での置換(例えば、Ile、Val、Leu、もしくはAlaの相互の置換)、またはある極性残基の別の極性残基での置換(例えば、LysとArg、GluとAsp、もしくはGlnとAsnとの間の置換)が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、同様の疎水性特徴を有する領域全体の置換が周知である。天然に存在するIL-2バリアントも、本発明に包含される。そのようなバリアントの例は、交互mRNAスプライシング事象またはIL-2タンパク質のタンパク質分解切断から生じるタンパク質であって、IL-2結合特性が保持されているものである。mRNAの交互スプライシングにより、トランケートされているが生物学的に活性であるIL-2タンパク質が生成され得る。タンパク質分解に起因する変異としては、例えば、IL-2タンパク質からの1つ以上の末端アミノ酸(通常1~10アミノ酸)のタンパク質分解除去による、異なるタイプの宿主細胞中での発現時のN末端またはC末端の相違が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えばポリエチレングリコールなどの化学基を用いて、タンパク質の末端または内部を修飾してその物理的特性を変化させることができる(Yang,et al.Cancer 1995.76:687-694)。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端または内部を追加のアミノ酸で修飾することができる(Clark-Lewis,et al.PNAS 1993.90:3574-3577)。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-2を、典型的には少なくとも10IU/mL、例えば少なくとも100IU/mL(例えば、10IU/mL~1,000IU/mL、20IU/mL~800IU/mL、25IU/mL~750IU/mL、30IU/mL~700IU/mL、40IU/mL~600IU/mL、50IU/mL~500IU/mL、75IU/mL~250IU/mL、または100IU/mL~200IU/mL、例えば、10IU/mL~20IU/mL、20IU/mL~30IU/mL、30IU/mL~40IU/mL、40IU/mL~50IU/mL、50IU/mL~75IU/mL、75IU/mL~100IU/mL、100IU/mL~150IU/mL、150IU/mL~200IU/mL、200IU/mL~500IU/mL、または500IU/mL~1,000IU/mL)の濃度で含む。特定の実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-2を、典型的には1,000IU/mL未満、例えば500IU/mL未満の濃度で含む。いくつかの実施形態では、IL-2の濃度は、約100IU/mLである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「IL-4」とは、1種以上のIL-4受容体(IL-4R)サブユニットのアゴニストとして機能する天然または組換えIL-4またはそのバリアント(例えば、その変異体、変異タンパク質、類似体、サブユニット、受容体複合体、フラグメント、アイソフォーム、及びペプチド模倣物)を指す。そのような作用物質は、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)のTh2細胞への分化を支援することができる。成熟ヒトIL-4は、129アミノ酸の配列として存在する(追加の24個のN末端アミノ酸からなるシグナルペプチドを除く)。IL-4変異タンパク質は、米国特許第6,313,272号に記載されているものなどの、IL-4Rαに結合する能力を保持しながらインターロイキン-4タンパク質に対する特異的置換が行われたポリペプチドである。IL-4変異タンパク質は、天然IL-4ポリペプチド鎖内またはそのポリペプチド鎖の他の残基における1つ以上の部位におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換、及び修飾によって特徴付けることができる。本開示によれば、そのような挿入、欠失、置換、及び修飾はいずれも、IL-2Rα結合活性を保持するIL-4変異タンパク質を生じさせる。例示的な変異タンパク質には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるアミノ酸の置換が含まれ得る。
【0061】
ヒトIL-4をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって得ることができる。ヒトIL-4のアミノ酸配列(遺伝子ID3565)は、GenbankのアクセッションロケータNG_023252に見出される。マウス(Mus musculus)IL-4アミノ酸配列(遺伝子ID16189)は、GenbankのアクセッションロケータNC_000077.6に見出される。
【0062】
IL-4は、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、及びマウスを含む様々な哺乳動物種に由来するIL-4も指す場合がある。バリアントは、保存的に置換された配列を含む場合があり、これは、所与のアミノ酸残基が同様の生理化学的特徴を有する残基によって置換されていることを意味する。保存的置換の例としては、ある脂肪族残基の別の脂肪族残基での置換(例えば、Ile、Val、Leu、もしくはAlaの相互の置換)、またはある極性残基の別の極性残基での置換(例えば、LysとArg、GluとAsp、もしくはGlnとAsnとの間の置換)が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、同様の疎水性特徴を有する領域全体の置換が周知である。天然に存在するIL-4バリアントも、本発明に包含される。そのようなバリアントの例は、交互mRNAスプライシング事象またはIL-4タンパク質のタンパク質分解切断から生じるタンパク質であって、IL-4結合特性が保持されているものである。mRNAの交互スプライシングにより、トランケートされているが生物学的に活性であるIL-4タンパク質が生成され得る。タンパク質分解に起因する変異としては、例えば、IL-4タンパク質からの1つ以上の末端アミノ酸(通常1~10アミノ酸)のタンパク質分解除去による、異なるタイプの宿主細胞中での発現時のN末端またはC末端の相違が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えばポリエチレングリコールなどの化学基を用いて、タンパク質の末端を修飾してその物理的特性を変化させることができる(Yang,et al.Cancer 1995.76:687-694)。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端または内部を追加のアミノ酸で修飾することができる(Clark-Lewis,et al.PNAS 1993.90:3574-3577)。
【0063】
更なる実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-4を、典型的には少なくとも0.1ng/mL、例えば少なくとも10ng/mL(例えば、0.1ng/mL~1,000ng/mL、1.0ng/mL~100ng/mL、1.0ng/mL~50ng/mL、2ng/mL~50ng/mL、3ng/mL~40ng/mL、4ng/mL~30ng/mL、5ng/mL~20ng/mL、10ng/mL~20ng/mL、例えば、0.1ng/mL~50ng/mL、1.0ng/mL~25ng/mL、5ng/mL~25ng/mL)の濃度で含む。更なる実施形態では、本明細書に定義される方法は、IL-4を、典型的には100ng/mL未満、例えば50ng/mL未満、特に20ng/mL未満の濃度で含む。いくつかの実施形態では、IL-4の濃度は、約15ng/mLである。
【0064】
本明細書に記載のγδ T細胞はまた、CAR-T療法などの治療特性を強化するために遺伝子改変することもできる。これには、新たな特異性、例えばモノクローナル抗体の特異性でT細胞をリプログラミングするための、キメラ抗原受容体(CAR)または改変T細胞受容体(TCR)などの改変細胞受容体の作製が含まれる。改変CARまたはTCRは、T細胞を悪性細胞に対して特異的にすることができ、したがってがん免疫療法に有用である。例えば、T細胞は、対象組織の正常体細胞では発現されない腫瘍特異的抗原、健常体細胞と比較してがん細胞で優先的に過剰発現される腫瘍関連抗原、もしくは酸化ストレス、DNA損傷、UV放射、EGF受容体刺激などのストレス事象に関連して発現される抗原などの腫瘍抗原を発現するがん細胞;またはがん性細胞と非がん性細胞とを識別するための他の手段を認識し得る。したがって、CAR修飾T細胞は、(例えばがん患者の)養子T細胞療法に使用され得る。
【0065】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載の方法は、γδ T細胞の組成物を形質導入して腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)などの目的の表面受容体を発現させることを含む。CD19または他の既知の腫瘍関連抗原を標的とするCARを含む、任意のそのようなCARを本発明で使用することができる。
【0066】
CAR-T療法のための血液常在γδ T細胞の使用が記載されている。一方で、本発明の方法によって得られる非造血γδ T細胞は、形質転換細胞を認識する生来と同様の能力を保持しながら、キメラ抗原特異的受容体で形質導入することができるため、CAR-Tアプローチにとって特に良好な媒介手段となる可能性があり、また、血液常在γδ T細胞または従来の全身性αβ T細胞のいずれよりも優れた腫瘍浸透能力及び保持能力を有する可能性がある。更に、それらにはMHC依存性の抗原提示がないため、移植片対宿主病の可能性が減少し、低レベルのMHCを発現する腫瘍を標的にすることが可能になる。同様に、それらは従来の共刺激(例えばCD28の会合を介するもの)に依存しないため、共刺激受容体のリガンドを低レベルで発現する腫瘍の標的化が強化される。
【0067】
本発明の更なる態様によれば、γδ T細胞を改変するための方法が提供され、前記方法は、
(i)γδ T細胞が濃縮された組成物を調製するステップと;
(ii)組成物を形質導入して腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現させるステップと;
(iii)形質導入された組成物を培養して改変されたγδ T細胞を増大させるステップと、を含み、
ここで、ステップ(ii)及び(iii)は、順にまたは同時にのいずれかで実施することができる。
【0068】
一実施形態では、ステップ(ii)は、ステップ(iii)の前に実施される。したがって、この実施形態によれば、組成物の形質導入は、培養物中に存在し得る任意のフィーダー細胞の非存在下で実施される。したがって、γδ T細胞のみが形質導入されるため、形質導入に使用される材料の量が減少し得る。代替実施形態では、ステップ(ii)は、ステップ(iii)と同時に実施される。この実施形態によれば、組成物の形質導入は、培養物中の任意のフィーダー細胞の存在下で実施される。したがって、ステップ(ii)がステップ(iii)の前に実施される場合と比較して、形質導入材料の量を増加させる必要があり得るものの、ハンドリングが減少し、方法全体がより簡素になり、当該ハンドリングに伴い得る損失が減少し得ることが理解されよう。
【0069】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(iii)は、フィーダー細胞の存在下で形質導入された組成物を培養することを含む。更なる実施形態では、本態様による方法は、前述のステップのいずれかを含む。
【0070】
驚くべきことに、γδ T細胞、特に非造血組織由来のγδ T細胞が濃縮された組成物は、例えばOKT-3などの抗CD3抗体、または抗Vδ1抗体などの抗γδ TCR抗体によるTCR刺激を必要とするγδ T細胞形質導入を含む従来公知のT細胞形質導入方法とは異なり、TCR(T細胞受容体)刺激を必要としないことが判明した。したがって、本明細書に記載の方法は、TCR刺激の非存在下でγδ T細胞の組成物を形質導入することを含む。
【0071】
特定の実施形態では、組成物は、ウイルスベクターを使用して形質導入される。そのようなウイルスベクターは当該技術分野で公知であり、当業者であれば、形質導入される細胞に応じて使用される適切なウイルスベクターを認識することができるであろう。一実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターである。更なる実施形態では、ウイルスベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)またはモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)などのガンマレトロウイルスベクターである。その上更なる実施形態では、ウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)以外のエンベロープ、例えば、ヒヒ内在性ウイルス(BaEV)またはRD114などのベータレトロウイルスエンベロープでシュードタイプ化されている。
【0072】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)は、1×10~1×10TU/ml、例えば、約1×10、約5×10、約1×10、約5×10、または約1×10TU/mlのウイルスベクターを使用して実施される。特定の実施形態では、ステップ(ii)は、1×10TU/mlのウイルスベクターを使用して実施される。他の実施形態では、ステップ(ii)は、0.5~50MOIのウイルスベクター、例えば、約0.5、約1、約1.5、約2.5、約5、約10、約25、約40、または約50MOIのウイルスベクターを使用して実施される。一実施形態では、ステップ(ii)は、2.5MOIのウイルスベクターを使用して実施される。別の実施形態では、ステップ(ii)は、5MOIのウイルスベクターを使用して実施される。更なる実施形態では、ステップ(ii)は、10MOIのウイルスベクターを使用して実施される。
【0073】
一実施形態では、腫瘍関連抗原は、固形腫瘍に関連する抗原である。したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍及び/またはがんは、固形腫瘍である。腫瘍壊死ファミリーのメンバーであるCD70の構成的発現は、血液癌と固形癌の両方で記載されており、それら癌において、CD70はその受容体であるCD27を通じたシグナル伝達により腫瘍微小環境内の腫瘍細胞及び制御性T細胞の生存を増加させる。したがって、更なる実施形態では、固形腫瘍はCD70腫瘍である。CD70を使用して、前記腫瘍を改変γδ T細胞の標的とすることができることが理解されよう。したがって、その上更なる実施形態では、腫瘍関連抗原はCD70である。
【0074】
代替実施形態では、腫瘍関連抗原はメソテリンである。メソテリンは、中皮細胞で発現される40kDaのタンパク質であり、中皮腫、卵巣癌、膵腺癌、肺腺癌、及び胆管癌を含むいくつかの腫瘍で過剰発現される。したがって、メソテリンは、免疫療法の標的となり得る腫瘍マーカーまたは腫瘍関連抗原として提案されている(Hassan et al.Clin.Cancer Res.,2004,10(12):3937-3942)。これらの腫瘍におけるメソテリンの発現は、細胞接着による腫瘍の生着及び腹膜播種の一因となり得る(Rump et al.,Biological Chemistry,2004,279(10):9190-9198)。
【0075】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の方法により得られる増大したγδ T細胞集団が提供される。更なる態様によれば、本明細書に記載の方法により得られる改変されたγδ T細胞集団が提供される。
【0076】
いくつかの実施形態では、増大した/改変されたγδ T細胞集団は、50%超のγδ T細胞、例えば75%超のγδ T細胞、特に85%超のγδ T細胞を含む。一実施形態では、増大した/改変された集団は、Vδ1細胞を含み、Vδ1細胞の50%未満、例えば25%未満がTIGITを発現する。一実施形態では、増大した/改変された集団は、Vδ1細胞を含み、Vδ1細胞の50%超、例えば60%超がCD27を発現する。
【0077】
本明細書に記載の方法により得られる増大した/改変されたγδ T細胞集団は、例えば養子T細胞療法のための薬剤として使用され得る。これには、本方法により得られた増大した/改変された集団を患者に移植することが含まれる。この療法は、自家であってもよく(すなわち、γδ T細胞を、それを得た同じ患者に移植し戻してもよく)、または療法は同種であってもよい(すなわち、ある人に由来するγδ T細胞を別の患者に移植してもよい)。同種移植を伴う例では、増大した/改変された集団にはαβ T細胞が実質的に含まれていない場合がある。例えば、αβ T細胞は、例えば改変後に、当該技術分野で公知の任意の適切な手段(例えば、磁気ビーズを使用する陰性選択によるものなど)を使用して、増大した/改変された集団から枯渇させることができる。治療方法には、ドナー個体から得られた非造血組織の試料を提供することと;本明細書に記載のとおりにγδ T細胞を増大させ及び/または改変して増大した/改変された集団を生成することと;増大した/改変されたγδ T細胞集団をレシピエント個体に投与することと、が含まれ得る。
【0078】
治療される患者または対象は、好ましくはヒトがん患者(例えば、固形腫瘍の治療を受けているヒトがん患者)またはウイルス感染患者(例えば、CMV感染患者またはHIV感染患者)である。いくつかの場合では、患者は、固形腫瘍を有している、及び/または固形腫瘍の治療を受けている。組織常在Vδ1 T細胞はまた、通常、非造血組織に常在するため、全身性の血液常在性の対応物よりも腫瘍塊へと向かい、腫瘍塊内で保持される可能性が高く、また、これらの細胞の養子移入は、固形腫瘍及び場合によっては他の非造血組織に関連する免疫病変を標的とする際により効果的である可能性がある。
【0079】
γδ T細胞は非MHC拘束性であるため、移植先の宿主を異質であると認識しない。これは、γδ T細胞が移植片対宿主病を引き起こす可能性が低いことを意味する。これは、γδ T細胞を「既製品」として使用することができ、例えば同種養子T細胞療法のために、任意のレシピエントに移植することができることを意味する。
【0080】
本明細書に記載の方法によって得られるγδ T細胞は、NKG2Dを発現し、悪性腫瘍と強く関連するNKG2Dリガンド(例えば、MICA)に応答する。それらはまた、あらゆる活性化の非存在下で細胞傷害性プロファイルを発現するため、腫瘍細胞の殺傷に効果的である可能性がある。例えば、本明細書に記載のとおりに得られる増大した/改変されたγδ T細胞は、あらゆる活性化の非存在下でIFN-γ、TNF-α、GM-CSF、CCL4、IL-13、グラニュライシン、グランザイムA及びB、ならびにパーフォリンのうちの1つ以上、好ましくは全てを発現し得る。IL-17Aは発現されない場合がある。
【0081】
したがって、本明細書に報告される知見は、本明細書に記載の方法により得られる増大した/改変されたγδ T細胞の「既製」免疫療法試薬としての臨床応用に対する実用性及び適合性についての説得力のあるエビデンスを提供する。これらの細胞は、生来と同様の殺傷性を有し、MHC拘束性がなく、かつ他のT細胞よりも向上した腫瘍へのホーミング及び/または腫瘍内での保持を示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、非造血組織に固形腫瘍を有する個体の治療方法は、本明細書に記載のとおりに個体由来の試料からγδ T細胞を増大させ/改変して、増大した/改変された集団を生成することと;増大した/改変されたγδ T細胞の集団を個体に投与することと、を含み得る。代替実施形態では、治療方法は、本明細書に記載のとおりに異なる個体由来の試料からγδ T細胞を増大させ/改変して、増大した/改変された集団を生成することと;増大した/改変されたγδ T細胞の集団を固形腫瘍を有する個体に投与することと、を含む。一実施形態では、個体に投与される増大した/改変されたγδ T細胞の量は、治療有効量である。
【0083】
更なる実施形態では、治療方法及び/または治療有効量は、WO2020095058(その内容はその全体が組み込まれる)に開示されているものを含む。
【0084】
医薬組成物は、本明細書に記載の増大した及び/または改変されたγδ T細胞を、1種以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含み得る。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤を含み得る。本発明の医薬組成物に使用され得る凍結保存溶液には、例えばDMSOが含まれる。組成物は、例えば静脈内投与用に製剤化され得る。
【0085】
したがって、本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団または改変されたγδ T細胞集団を含む医薬組成物が提供される。
【0086】
一実施形態では、医薬組成物は、検出可能なレベルの汚染物質、例えばエンドトキシンまたはマイコプラズマを実質的に含まない(例えば、全く存在しない)。
【0087】
本発明のその上更なる態様によれば、薬剤として使用するための、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団、改変されたγδ T細胞集団、または医薬組成物が提供される。別の態様では、がんの治療に使用するための、本明細書に記載の増大したγδ T細胞集団、改変されたγδ T細胞集団、または医薬組成物が提供される。
【0088】
本明細書に記載される全ての実施形態が、本発明の全ての態様に適用され得ることが理解されよう。
【0089】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された値より10%大きいものまで及び10%小さいものまでを含み、好適には指定された値より5%大きいものまで及び5%小さいものまでを含み、とりわけ指定された値を含む。「間」という用語には、指定された境界の値が含まれる。
【0090】
本発明の特定の態様及び実施形態を、これより、以下の実施例によって、上で説明した図を参照して例示する。
【実施例
【0091】
実施例1:フィーダー細胞を用いた皮膚由来γδ細胞の増大
皮膚常在細胞を、WO2020095058及びWO2020095059に既に記載されているように単離した。皮膚常在リンパ球を解凍し、直ちに処理してαβ T細胞フィーダー細胞を除去し、γδ T細胞濃縮培養物を得た。次いで、αβ枯渇培養物を、照射フィーダー細胞集団の存在下で増大させた。本実験では、様々なバックグラウンドからの照射フィーダー細胞(同種末梢血リンパ球(PBL)、同種末梢血単核細胞(PBMC)、抗CD3 CD28活性化同種PBMC(Act PBMC)、または同種皮膚単離培養物)を試験した。次いで、共培養物を7日間インキュベートしてから収集し、系譜マーカー及びKi67核発現についてのフロー分析を行った。γδ T細胞内の核内Ki67の発現レベル、及びウェルあたりのVδ1 γδ T細胞の総数を測定した。γδ T細胞の細胞内Ki67発現とVδ1 γδ T細胞の全体数は両方とも、フィーダー細胞として照射皮膚単離細胞で刺激した培養物で最も高く、γδ T細胞の増殖が示された。これらの結果は、皮膚由来γδ T細胞の増殖を駆動するフィーダー細胞成分として、血液系の白血球よりも皮膚常在リンパ球の方が優れていることを実証するものである(図1A~B)。
【0092】
別の実験では、皮膚常在リンパ球を解凍し、2つの異なる選択戦略を通じて直ちに処理して、γδ T細胞が濃縮されαβ T細胞が枯渇した培養物を得た。γδ T細胞の濃縮を、γδ T細胞の陽性選択(図2A~B)、またはαβ T細胞画分を陽性選択することによるγδ T細胞の陰性選択による濃縮(図3A~B)のいずれかを通じて実施した。次いで、これらの培養物を、フィーダー細胞としてのαβ T細胞の存在なしで、または自家αβ T細胞フィーダー細胞に対する非αβ T細胞集団の%として表される開始集団のセット(0日目時点の1%、5%、10%、20%、もしくは40%の非αβ細胞含有物であり、培養物の残部は自家フィーダー細胞で構成される)としてのいずれかで増大させた。陽性選択したγδ T細胞の場合、主に皮膚αβ T細胞を含有する陰性画分をフィーダー細胞層として機能させた。これらの実験ではフィーダー細胞層を照射しなかった。陰性選択したγδ T細胞の場合、陽性選択したαβ T細胞をフィーダー細胞層として機能させた。続いて、培養物を増殖性サイトカインIL-15及びIL-21の存在下で14日間増大させた。14日目の収集時に、CD45リンパ球画分のγδ T細胞のパーセンテージ、及び0日目から14日目までのγδ T細胞増殖の全体的な増加倍数を記録した。この結果は、フィーダー細胞が培養中に存在する場合、増大期間にわたりγδ T細胞の増殖倍数が増加することを明らかに示している。全ての場合において、全体的なγδ T細胞の増殖倍数に関して21日間の増大は14日間の増大よりも優れていた。0日目における陰性及び陽性の両方のγδ T細胞濃縮戦略により、フィーダー細胞培養物及びフィーダー細胞を含まない培養物の両方で成功裏に増大した。
【0093】
実施例2:CD19 CARを用いた皮膚由来γδ細胞の形質導入
皮膚常在リンパ球を解凍し、IL-15及びIL-21の存在下で7日間培養した。7日目に、全ての細胞を収集し、CD19に特異的なCARコンストラクトをコードするベクターで形質導入した。次いで、細胞をIL-15及びIL-21の存在下で更に7日間増大させた後、収集して凍結保存した。形質導入による介入は、皮膚常在γδ T細胞の増大に影響を与えなかった(データは示さず)。機能的アッセイでは、凍結保存細胞を解凍し、MACS陽性選択処理を介してαβ T細胞を選別し、陽性選択した皮膚常在αβ T細胞及び陰性選択した皮膚常在γδ T細胞を生成した。γδ T細胞またはαβ T細胞集団を、様々なエフェクター-標的比で血液腫瘍細胞株NALM6とともに共培養した。次いで、共培養物を18時間インキュベートし、フローサイトメトリーによるSYTOX(商標)(Thermofisher)染色を介して標的細胞の溶解を検出した。CARで形質導入した皮膚常在γδ T細胞は、NALM6細胞株に対して高い機能性を示した。この機能性レベルは、ドナーが一致するCAR形質導入皮膚αβ T細胞の機能性レベルに匹敵した(図4)。
【0094】
別の実験では、皮膚常在リンパ球を解凍し、直ちに処理してMACSを介したαβ T細胞の陽性選択を介してαβ T細胞を枯渇させた。αβ T細胞が枯渇しγδ T細胞が濃縮されたこれらの集団を、遺伝子改変の前にIL-15及びIL-21の存在下で2日間培養した。2日後、培養物を収集し、CD19特異的CARコンストラクトをコードするベクターで形質導入した。ドナー4名のうち2名については、ベクターの存在なしで同じ形質導入プロトコルを細胞に施す模擬形質導入培養を確立した。形質導入後、続いて細胞を更に12日間増大させた後に収集し、系譜及びCD19特異的CAR発現についてフローサイトメトリーを介して表現型解析を行い、次いで凍結保存した。結果は、形質導入γδ T細胞がCD19に特異的なCARコンストラクトを発現するのに対し、模擬形質導入対照(該当する場合)は発現しなかったことを示している(図5A)。更に、凍結保存した細胞を解凍し、IL-15及びIL-21中で更に7日間培養すると、CAR γδ T細胞のパーセンテージは安定していた(図5B)。凍結保存細胞は機能性アッセイにも使用した。細胞を解凍し、様々なエフェクター:標的比で血液腫瘍細胞株NALM6とともに18時間共培養した。結果は、試験したドナー2名において、CAR形質導入γδ T細胞が、対応する非形質導入対照と比較した場合、NAML6に対する細胞傷害性能力を向上させたことを示している(図6)。
【0095】
実施例3:メソテリン-CARを用いた皮膚由来γδ細胞の形質導入及び増大
皮膚常在リンパ球を解凍し、直ちに処理してMACSを介したαβ T細胞の陽性選択を介してαβ T細胞を枯渇させた。αβ T細胞が枯渇しγδ T細胞が濃縮されたこれらの集団を、遺伝子改変の前にIL-15及びIL-21の存在下で2日間培養した。2日目に、細胞を培養物から収集し、メソテリン特異的CARコンストラクトをコードするRD-114シュードタイプ化γ-レトロウイルスベクターで形質導入した。対照として、ベクターの存在なしで同じ形質導入プロトコルを細胞に施す模擬形質導入培養を確立した。続いて、細胞を更に12日間増大させた後に収集し、系譜及びCAR発現についてフローサイトメトリーを介して表現型解析を行い、次いで凍結保存した。形質導入細胞がCARコンストラクトを発現したのに対し、模擬形質導入対照は発現しなかった(図7)。解凍すると、模擬形質導入細胞とCAR形質導入細胞の両方が高い生存率を示した(NC250生細胞計数を介して測定)(図8A)。
【0096】
次いで、形質導入細胞及び模擬形質導入細胞を解凍し、メソテリン発現固形腫瘍(腺癌)細胞株(Hela及びSCOV-3)に対する細胞傷害性について直ちに試験した。形質導入γδ T細胞に加えて、同じ結合物質(binder)で形質導入しIL-2で増大させたドナー不一致のPBMC由来αβ T細胞も、同じ固形腫瘍標的細胞株に対する細胞傷害性について試験した。細胞を、5:1、2.5:1、1.25:1、0.625:1、0.312:1、及び0.156:1のエフェクター:標的比で培養した。細胞傷害性共培養物を18時間インキュベートしてからエンドポイント分析を行った。CellTitre GLO(登録商標)(Promega)アッセイ系を使用して生存可能な標的を計数することにより、固形腫瘍標的細胞の細胞傷害性を決定した。CAR形質導入γδ T細胞は、模擬形質導入対照と比較した場合、HeLa細胞株及びSCOV-3細胞株の両方の殺傷が向上していることを示した(図8B~C)。非形質導入γδ T細胞は腫瘍細胞株に対してある程度の活性を有するため、それらは腫瘍細胞株に対し、CAR形質導入αβ T細胞と同様の細胞傷害性を示す。しかしながら、CAR形質導入γδ T細胞は、非形質導入γδ T細胞及びCAR形質導入αβ T細胞と比較して細胞傷害性が増加していることを示す。
【0097】
実施例4:実施例1に記載したように、皮膚常在細胞を単離して凍結した。解凍後、磁気活性化細胞選別(MACS)を介した陰性選択を通じてγδ T細胞を濃縮し、続いて、陽性選択した様々な異なる自家αβ T細胞集団と共培養し、αβ T細胞との共培養がγδ T細胞の増大速度に及ぼす作用を14日間及び21日間の培養にわたり測定した。最初に、MACSを介してαβ T細胞を枯渇させることにより、γδ T細胞を凍結単離細胞から濃縮した。これにより、未処理の(すなわち、磁気標識抗体で一切標識されていない)γδ及びTCR陰性細胞の集団を得た。次いで、これらのγδ T細胞濃縮集団を、自家CD4 αβ T細胞(「CD4フィーダー」)、CD8 αβ T細胞(「CD8フィーダー」)、またはCD4 αβ T細胞とCD8 αβ T細胞の両方(「αβフィーダー」)と共培養した。全てのフィーダー細胞層を、陽性標識によるMACS選別を介して皮膚常在細胞から精製した。全ての共培養において、細胞はγδ T細胞濃縮集団が10%、培養物の残部90%が自家フィーダー細胞層で構成される比で設定し、5%同種血漿ならびに80ng/mlのIL-15及び11.25ng/mlのIL-21を補充したTexMACS培地で培養を行った。次いで、培養物を14日間または21日間増大させ、各培養設定におけるγδ T細胞の増大を各時点で記録した。培養物を、培地の50%を除去し、培養物を当初のサイトカイン濃度に戻すのに十分なサイトカインを補充した50%の培地を補給するという48時間の供給計画に供した。0日目の設定後は、フィーダー細胞を培養物に更に追加しなかった。αβフィーダー細胞を一切添加せずに増大させたγδ T細胞濃縮培養物の対照集団を確立した(「γδのみ」)。
【0098】
γδ T細胞の増大倍数は、試験したαβ T細胞フィーダー細胞培養物のいずれかと共培養した場合に増強された。濃縮CD4 αβ T細胞を利用することにより、14日間及び21日間にわたる培養の両方でγδ増大倍数の最大の増加が引き起こされた。この結果は、αβ T細胞がγδ T細胞の増大を促進する効果的なフィーダー細胞層として機能し、CD4 αβ T細胞がCD8 αβ T細胞よりも増大を駆動させることに優れていることを示している(図9)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】