(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】イヤホンキャリブレーションのための信号調整システム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
H04R 29/00 20060101AFI20240328BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240328BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H04R29/00 310
H04R3/00 310
H04R1/10 104E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561910
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 CA2022050522
(87)【国際公開番号】W WO2023019345
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514146737
【氏名又は名称】エコール ドゥ テクノロジー スペリウール
【氏名又は名称原語表記】ECOLE DE TECHNOLOGIE SUPERIEURE
【住所又は居所原語表記】1100 rue Notre-Dame Ouest Montreal, Quebec H3C 1K3 (CA)
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】ナドン ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワ ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ドレース エリオット
【テーマコード(参考)】
5D005
5D220
【Fターム(参考)】
5D005BB01
5D220AB01
(57)【要約】
オーディオウェアラブルデバイスの取得システムに必要なダイナミックレンジを低減するために、チャープや対数チャープなどの広帯域キャリブレーション刺激を調整するシステム、装置、及び方法。刺激のダイナミックレンジは、時間エンベロープとデジタルフィルタを使用して圧縮され、大きな共鳴ピークによるレスポンス信号のクリッピングや飽和を防止することができる。オーディオウェアラブルデバイスのキャリブレーションのためのそのような事前調整方法によれば、低深度又は低解像度の取得システムを使用して測定を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホンのキャリブレーションを行う方法であって、
少なくとも1つのラウドスピーカのテブナン等価インピーダンスを算出し、
外耳道の基準面における負荷インピーダンスを推定した前記テブナン等価インピーダンスの関数として算出し、
前記算出された負荷インピーダンス及び測定された音圧レベルに基づいて、前記基準面において前記ラウドスピーカが発する前方圧力(Pforward)を推定し、
前記推定された前方圧力レベルに基づいて、前記ラウドスピーカに適用される補正値を算出する、イヤホンのキャリブレーションを行う方法。
【請求項2】
前記テブナン等価値の前記算出は、前記テブナン等価インピーダンス(Zs)及び音圧(Ps)の算出を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負荷インピーダンスの前記算出は、前記基準面において外耳道内の音圧(Pl)を測定し、以下の式を用いて基準面におけるインピーダンス(Zl)を算出する、請求項2に記載の方法。
【数1】
【請求項4】
前記ラウドスピーカによって発せられた前記推定圧力レベルの前記推定には、以下の式を用いる、請求項3に記載の方法。
【数2】
【請求項5】
前記ラウドスピーカに適用される前記補正値の前記算出は、ゲインテーブルを用いることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ラウドスピーカのテブナン等価値を推定する方法であって、
適用される前記補正値の前記算出は、特定の周波数における音圧の目標値と前記Pforward値との差を見つけることを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ラウドスピーカのテブナン等価値を推定する方法であって、
異なる周波数における音圧(P)を測定するためのキャビティを有するキャリブレーション装置を用い、
前記キャビティインピーダンス(Zc)の理想式を導出し、
前記キャビティインピーダンスの前記導出された理想式に基づいてテブナン等価値を推定する、ラウドスピーカのテブナン等価値を推定する方法。
【請求項8】
前記キャビティインピーダンス(Zc)の前記理想式の導出は、
第1及び第2刺激信号を生成し、
前記第1信号を処理し、
前記第2信号を事前調整し、
前記第1及び第2信号を前記キャリブレーション装置のキャリブレーション管内に交互に放出し、
インイヤマイク(IEM)を用いて前記キャリブレーション管内の前記音圧を捕捉し、
前記捕捉したIEM信号に基づいて、前記音圧周波数レスポンスを推定することを更に含む、請求項7に記載のラウドスピーカのテブナン等価値を推定する方法。
【請求項9】
前記第1信号は正弦波信号である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1信号の前記処理は、前記第1信号の音響波形とデジタル波形を同期させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1信号の同期は、前記第1信号を第1エンベロープでウィンドウ処理することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1信号の前記処理は、前記第1信号の前記待ち時間を推定することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1信号の前記待ち時間によって決められたサンプルインデックスで開始する前記第2信号の時間平均化を実施することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2信号は、対数チャープ信号又は任意の広帯域刺激信号である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記第2信号の前記事前調整は、前記第2信号のフィルタリングを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記フィルタリングは、直列接続された1つ以上の無限インパルスレスポンス(IIR)ノッチフィルタを前記第2信号に適用することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2信号の前記事前調整は、前記第2信号のウィンドウ処理を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記ウィンドウ処理は、各サイクルの最初の所定数のサンプルと最後の所定数のサンプルにわたってフェードイン/フェードアウト関数エンベロープを使用することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記第2信号の時間平均化を実施することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記音圧周波数レスポンスの前記推定は、前記ラウドスピーカに送信された前記事前処理された(デジタル)信号と前記捕捉されたIEM信号に対し高速フーリエ変換(FFT)を行うことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記音圧周波数レスポンスの前記推定は、伝達関数を使用して、前記2つのFFT値の比を算出することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
ラウドスピーカのテブナン等価値を推定するキャリブレーション装置であって、
2つの刺激信号を生成するよう構成されたラウドスピーカと、
可変容積を有するキャビティと、
前記キャビティ内で前記ラウドスピーカによって発せられた前記音圧を測定するキャプチャデバイスと、
前記ラウドスピーカに接続され、前記刺激信号を処理するように構成されたシグナルプリプロセッサと、
前記キャビティ内で2つの刺激信号のうちの1つを放出するシグナルセレクタと、
キャプチャデバイスに接続され、前記捕捉された音圧に基づいて、前記キャビティ周波レスポンスを推定するように構成された、シグナルポストプロセッサと、を備えるラウドスピーカのテブナン等価値を推定するキャリブレーション装置。
【請求項23】
前記キャビティの前記容積を変えることのできるスライド可能なピストンを更に備える、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項24】
前記キャプチャデバイスは、インイヤマイクである、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項25】
前記プリプロセッサは、直列接続された1つ以上の無限インパルスレスポンス(IIR)ノッチフィルタを備え、前記第2刺激信号のフィルタリングを行うように構成されている、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項26】
前記プリプロセッサは、各サイクルの最初の所定数のサンプルと最後の所定数のサンプルにわたるフェードイン/フェードアウト関数エンベロープを備える、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項27】
前記事前処理された刺激信号と前記捕捉された信号に接続された待ち時間推定器を更に備える請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項28】
前記ポストプロセッサは、前記ラウドスピーカに送信された前記事前処理された(デジタル)信号と前記捕捉されたIEM信号に対し高速フーリエ変換(FFT)を行うように構成されている、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項29】
前記ポストプロセッサは、伝達関数を使用して、前記2つのFFT値の比を算出するように構成されている、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項30】
前記キャビティは、金属管である、請求項22に記載のキャリブレーション装置。
【請求項31】
前記キャリブレーション装置は、異なる長さを有する5つの金属管を備える、請求項30に記載のキャリブレーション装置。
【請求項32】
前記金属管は、真鍮からなる請求項30に記載のキャリブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は2021年4月6日に出願された米国特許出願第63/171,147号「SYSTEM, DEVICE AND METHOD OF SIGNAL CONDITIONING FOR EARPIECE CALIBRATION」の優先権を主張し、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、イヤホンキャリブレーションのための信号調整システム、装置、及び方法に関する。より詳細には、本発明は、取得システムに必要なダイナミックレンジを低減する目的で広帯域キャリブレーション刺激を調整するシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
聴覚保護プログラムがあるにもかかわらず、騒音誘発性難聴(NIHL)は、引き続き、職場での過度の騒音暴露による職業上の主要な問題となっている。音の知覚が失われると、コミュニケーションの問題、孤立、うつ病につながる可能性があるため、従業員や労働者の健康状態を定期的に評価し、厳格なフォローアップを行うことが引き続き重要である。
【0004】
本来、加齢によるものであるにもかかわらず、最近の研究では、若い頃の騒音暴露が時間の経過とともに悪化することがわかっており、騒音暴露が主な危険因子であることが示されている。過度の騒音暴露レベルは、音響刺激による電気神経信号の生成を担う器官である蝸牛の有毛細胞を損傷する可能性がある。したがって、蝸牛の外有毛細胞(OHC)の大まかな健康状態の測定は、客観的な測定であり、個人の聴覚の大まかな健康状態を評価する最も正確な方法の1つである。この方法は、聴覚刺激を受けたときの個人の主観的な反応に依存する従来の検査に比べ、より信頼性の高いものである。OHCの大まかな健康状態を判断するために、耳音響放射(OAE)として知られる低振幅の音響信号を測定する方法が開発されている。耳音響放射は、外耳道内の小型スピーカから発せられた外部刺激に蝸牛が晒されたときに発生する可能性がある。臨床では、イヤホン内の小型スピーカを使用して2つの純音音響刺激信号を外耳道に送信することでOAEを誘発することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のOAE測定は、外耳道内に配された高感度のインイヤマイクを用いて行われる。この測定は、客観的かつ迅速であり、被験者の積極的な参加を必要としない。
【0006】
騒音に暴露されている間、個人のOAEの絶対値をモニタリングすることによって、暴露によって引き起こされる一時的な超過状態の変化を更に特定することができる。既知のOAE測定技術によれば、作業者の聴覚の健康状態を高い信頼性をもって評価することができるが、従来のOAE測定装置とその検査期間では、工場などの職場において蓄積された聴覚疲労を継続的にモニタリングすることができない。その代わりに、作業者は、時々聴力検査を受けるのだが、一度発生すると回復不可能である聴覚障害がその聴覚検査で判明することがよくある。
【0007】
設計通りの信頼性の高いOAEの絶対値を得るためには、外耳道内の小型ラウドスピーカレスポンスを補償するためのOAE測定用のイヤホンの正確なキャリブレーションが必要となる。ただし、外耳道の形状は個人個人で異なり、イヤホンの挿入深さも異なるため、基本的なキャリブレーション方法では、イヤホン先端の位置と鼓膜との間の音圧差を正確に補正することができない。
【0008】
小型スピーカのテブナン推定を使用した、より精巧なキャリブレーション方法が、OAE刺激キャリブレーションに使用されているが、この方法では、正確なテブナン推定のために歪を最小限に抑える必要があり、キャリブレーション信号を取得するための高性能なハードウェアが必要とされる。
【0009】
したがって、適切なNIHLリスク評価のために、必要な騒音測定基準を測定し、騒音暴露中に短い間隔で聴覚の健康状態を検査する装置用に、費用対効果が高く、実用的かつ信頼性の高いOAEキャリブレーション方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来技術の問題点は、大抵、イヤホンのキャリブレーションを行う方法によって軽減される。この方法は、少なくとも1つのラウドスピーカのテブナン等価インピーダンスを算出し、推定した前記テブナン等価インピーダンスの関数として、外耳道の基準面における負荷インピーダンスを算出し、算出した前記負荷インピーダンスと測定した音圧レベルに基づいて、前記基準面において前記ラウドスピーカから発せられた前方圧力(Pforward)を推定し、前記推定された前方圧力レベルに基づいて、前記ラウドスピーカに適用される補正値を算出することを含む。
【0011】
前記手ブラン等価値の前記算出は、前記テブナン等価インピーダンス(Zs)及び前記音圧(Ps)を算出することを更に含むことができ、前記負荷インピーダンスの前記算出は、前記基準面における前記外耳道内の音圧(Pl)を測定し、前記基準面における前記インピーダンス(Zl)を以下の式によって算出することを更に含むことができる。
【数1】
【0012】
同様に、ラウドスピーカによって発せられた前記推定された圧力レベルの前記推定は、以下の式を用いて行ってもよい。
【数2】
【0013】
前記ラウドスピーカに適用される前記補正値の算出は、ゲインテーブルを使用し、ゲインテーブル内の特定の周波数における圧力レベルの目標値とPforward値との差を見つけることを更に含んでいてもよい。
【0014】
本発明の別の態様として、異なる周波数で音圧(P)を測定するキャビティを有するキャリブレーション装置を使用し、キャビティインピーダンス(Zc)の理想式を導出し、前記導出されたキャビティインピーダンスの前記理想式に基づいて前記テブナン等価値を推定することを含む、ラウドスピーカのテブナン等価値を推定する方法が開示されている。
【0015】
前記キャビティインピーダンス(Zc)の前記理想式の前記導出は、第1及び第2刺激信号を生成し(第1信号は正弦波信号であってもよい)、第1信号を処理し、第2信号を事前調整し、第1及び第2信号を前記キャリブレーション装置のキャリブレーション管内交互に放出し、インイヤマイク(IEM)を使用して前記キャリブレーション管内の前記音圧を捕捉し、前記補足したIEM信号に基づいて前記音圧周波数レスポンスを推定することを更に含んでいてもよい。
【0016】
前記第1信号の前記処理は、前記第1信号の音響波形とデジタル波形を同期し、前記第1信号を第1エンベロープでウィンドウ処理し、前記第1信号の待ち時間を推定することを更に含んでいてもよい。
【0017】
更に、前記第2信号は、対数チャープ信号又は任意の広帯域刺激信号であってもよく、前記第2信号の前記事前処理は、前記第2信号のフィルタリング、直列接続された1つ以上の無限インパルスレスポンス(IIR)ノッチフィルタを前記第2信号に適用し、各サイクルの最初の所定数のサンプルと最後の所定数のサンプルにわたってフェードイン/フェードアウト関数エンベロープを使用して、前記第2信号をウィンドウ処理することを含んでいてもよい。
【0018】
本方法は、前記第2信号の時間平均化を行うことを更に含んでいてもよく、前記音圧周波数レスポンスの前記推定は、前記ラウドスピーカに送信された前記事前処理された(デジタル)信号及び前記捕捉されたIEM信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を行い、伝達関数を使用して2つのFFT値の比を算出することを含んでいてもよい。
【0019】
本発明の別の態様として、ラウドスピーカのテブナン等価値を推定するキャリブレーション装置を提供することができる。前記キャリブレーション装置は、2つの刺激信号を生成するように構成されたラウドスピーカと、可変容積を有するキャビティと、前記キャビティ内で前記ラウドスピーカによって発せられる前記音圧を測定するキャプチャデバイスと、前記ラウドスピーカに接続され、前記刺激信号を処理するように構成されたシグナルプロセッサと、前記2つの刺激信号のうちの1つを前記キャビティ内に放出するシグナルセレクタと、前記キャプチャデバイスに接続され、前記補足された音圧に基づいて前記キャビティ周波数レスポンスを推定するように構成されたシグナルポストプロセッサを備える。
【0020】
前記キャリブレーション装置は、前記キャビティの容積を変えるためのスライド可能なピストンを更に備えていてもよい。前記キャプチャデバイスは、インイヤマイクであってもよく、前記プリプロセッサは、直列接続され、前記第2刺激信号をフィルタリングするように構成された1つ以上の無限インパルスレスポンス(IIR)ノッチフィルタを備えていてもよい。
【0021】
前記プリプロセッサは、各サイクルの最初の所定数のサンプルと最後の所定数のサンプルにわたるフェードイン/フェードアウト関数エンベロープを備えていてもよい。前記キャリブレーション装置は、前記事前処理された刺激信号及び前記捕捉された信号に接続された待ち時間推定器を備えていてもよく、前記ポストプロセッサは、前記ラウドスピーカに送信された前記事前処理された(デジタル)信号及び前記捕捉されたIEM信号に対して高速フーリエ変換(FFT)を行うように構成されていてもよい。前記ポストプロセッサは、伝達関数を使用して2つのFFT値の比を算出するように構成されていてもよい。
【0022】
前記キャビティは、真鍮などからなる金属管であってもよく、キャリブレーション装置は、異なる長さを有する5つの金属管を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るイヤホンを備えるオーディオウェアラブルデバイスの一実施形態を示す図であり、イヤホンは着用者の外耳道入口に配されている。
【
図2】一実施形態としての
図1のオーディオウェアラブルデバイスを示す図であり、オーディオウェアラブルデバイスは、波動成分と共に示されている。
【
図3】
図1のオーディオウェアラブルデバイスのラウドスピーカのテブナン等価回路を示す図である。
【
図4】本発明に係るスピーカ音圧レベルに適用する補正値を算出する方法の一実施形態のブロック図である。
【
図5】キャリブレーション装置内の信号の大きさ(dB)を周波数(Hz)の関数として示す図である。
【
図6】本発明に係るキャリブレーション装置の写真である。
【
図7】一実施形態としての
図6のキャリブレーション装置を示す図である。
【
図8】本発明に係るイヤホンから発せられる信号を調整する方法を示すブロック図である。
【
図9】本発明に係るスピーカのテブナン等価値を推定するために、キャリブレーション装置内で生成される刺激を事前に調整する方法を示す概略図である。
【
図10】本発明に係る捕捉されたレスポンス及び事前処理された信号とも言われる放出されたレスポンスの大きさ(dB)を周波数(Hz)の関数として示すグラフである。
【
図11】異なるキャリブレーション方法によって捕捉されて補償されたレスポンス信号の大きさ(dB)を周波数(Hz)の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
イヤホンキャリブレーションのための信号処理のシステム、装置、及び方法について以下に説明する。システム、装置、及び方法は、特定の例示的な実施形態に関して記載されているが、本明細書に記載されている実施形態は単なる例に過ぎず、システム、装置、及び方法の範囲はそれによって限定されることを意図していないことを理解されたい。
【0025】
OAEレスポンス周波数は、刺激信号のスペクトルに基づいて、又は、周波数f1及びf2の2つの純音音響刺激信号を使用して算出される。
【0026】
図1に示すように、耳10内では、蝸牛11が捕捉された音を増幅して強くし、脳が効率的に解読できるようにしている。その際に、蝸牛11は、内耳の基底膜(図示せず)に沿って自身も物理的振動を発する。耳に特定の刺激(例えば、2つの同時純音周波数)が与えられると、蝸牛11によって歪成分耳音響放射(DPOAE)がなされる可能性がある。DPOAEが蝸牛11から基底膜の上方に移動すると、DPOAEは更に、蝸牛11から逆方向に向かい、外耳道12へと到達する場合がある。外耳道12内にDPOAEが確認された場合、蝸牛11(より詳しくは蝸牛の増幅機能)が正常に機能していることを示す。DPOAEが確認されない場合は、蝸牛11が機能していないか、機能不全に陥っており、難聴が生じている可能性を示す。このように、蝸牛11により副産物として生成され、外耳道12内で測定されたDPOAEは、蝸牛11の完全性を確認する有効な手段である。
【0027】
従来技術の装置では、イヤホンは、プローブマイクを備えていることが一般的であり、鼓膜14においてOAE又はDPOAEを直接測定し、直接測定値を得る。本発明のイヤホン102は、鼓膜14で生じたOAE又はDPOAEの直接測定値を得るために鼓膜14に配置されるプローブを必要としないことが理解されよう。その代わりに、
図2に示すように、イヤホン102のキャリブレーションは、外耳道12の幾何学的形状に従って実行され、前方圧力(イヤホン102から遠ざかる方向に伝播する圧力波成分192からなる)と鼓膜14から反射される後方進行波成分194とが区別される。
【0028】
様々な外耳道の形状(被験者毎に異なる)及びイヤホンの挿入深さ(被験者毎に異なる)を考慮し、本キャリブレーション方法は、DPOAEレベルの個体差による違いを最小限に抑えることを全体的な目的としている。
【0029】
イヤホンを備えるウェアラブルデバイス100の具体例が
図1に示されている。ウェアラブルデバイス100は、蝸牛11により生じ、鼓膜14によって伝達される耳音響放射(OAE)の測定に広く利用されている。ウェアラブルデバイス100は、ユーザの耳10の外耳道12内に配される。本例では、ウェアラブルデバイス100はイヤホン102を備えているが、他の実施形態として、ウェアラブルデバイス100がイヤプラグ、耳内装置、又は、ユーザの耳10の外耳道12に音や騒音が知覚されるのを防ぐための他のタイプの装置を備えていてもよい。更に、イヤホン102は、外耳道12の外側及び内側の音をそれぞれ捕捉することができるように配置及び配向された外部マイク(OEM)104及び内部マイク(IEM)106を備える。
【0030】
外部マイク(OEM)104は、イヤホン102のタイプに応じて、耳10の外側又は外耳道12の外側の音や騒音などの外耳オーディオ信号を捕捉するように構成されていてもよい。内部マイク(IEM)106は、イヤホン102のタイプに応じて、外耳道12又は耳腔内でイヤホン102の下方又は後方(外耳道の内側)の音や騒音などの内耳オーディオ信号を捕捉するように構成されていてもよい。
【0031】
イヤホン102は、外部マイク104と内部マイク106の間の防音壁として機能する。イヤホン102と内部マイク106との間を密閉するように構成されたイヤチップ103をイヤホン102が備えていてもよい。イヤチップ103は、可鍛性プラスチック、ゴム、発泡体、又は遮音性を発揮する他の適当な材料から作製することができる。
【0032】
一実施形態によれば、ウェアラブルデバイス100は、既知の周波数f1及びf2で外耳道内に純音刺激信号を放出するように配置された2つの内部ラウドスピーカ(SPK)(108a及び108b)を備える。純音刺激信号が外耳を通過すると、鼓膜14は小骨によって振動を蝸牛に11に伝える。すると、蝸牛11は音を増幅し、増幅された刺激信号は聴覚神経を介して脳に伝わる。f1及びf2刺激は、非線形蝸牛増幅処理によって増幅及び/又は圧縮され、歪み積、つまり、OAEが生じる。OAEはIEM106によって捕捉される。歪み積の周波数は、fdp = [2f1 - f2, 2f2 -f1, 3f1 - 2f2, 3f2 - 2f1, 4f1 - 3f2, …]となる。当然のことながら、他の種類の歪み積と同様に、エネルギーの大部分は一般に最初の歪み積(fdp = 2f1 - f2)に集中する。従来技術では、2つの刺激周波数間の比f2/f1 = 1.22が周波数スペクトルの大部分ではDPOAEレベルが最適となる傾向があるが、テストされたf2周波数に応じて比率を変えると、よりよい結果が得られることが示されている。
【0033】
内部ラウドスピーカ108a及び108bのうちの一方又は両方は、音源(図示せず)に接続されていてもよい。IEM106は、内部ラウドスピーカ108a及び108bによって発せられた刺激により外耳道内で生じる音波信号(すなわち、耳音響放射原音)を捕捉できるように配置される。なお、外耳道12内で生成される信号には、刺激と、その刺激に応じて耳10の蝸牛11により生じるOAEとが含まれる。反射音信号の特性は、外耳道12の形状及び容積、イヤホン102の音響特性、及びイヤホン102の密閉度合に依存する。
【0034】
図2には、ウェアラブルデバイス100を使用して耳内を伝播する波動成分が示されている。IEMで測定される総音圧レベルは、音源から遠ざかるように伝播する圧力波成分192と鼓膜から反射される後方進行波成分194とを含む前方圧力を含む。
【0035】
前方圧力成分推定処理200は、鼓膜位置(SPLterminal)における音圧レベルの測定と同等の刺激レベルについて各個人に合わせたキャリブレーションを提供することを目的としている。SPLentranceは、外耳道12内の基準面107又はキャビティの入口においてイヤホンIEM106で測定された音圧レベルである。FPLは、外耳道内の基準面107におけるIEM106から推定することができる。
【0036】
前方圧力レベル(FPL)キャリブレーション処理による前方圧力の推定によれば、基本的な音圧レベルの補償よりも鼓膜における刺激レベルのより正確な推定が可能となる。このキャリブレーションにより、波成分192と194の定常波の位相干渉による測定誤差を減少させることができる可能性がある。ひいては、より正確なキャリブレーション処理により、より高い周波数でのDPOAEの絶対値の精度が向上する。FPLは、反射された圧力レベル成分を除いた、音源の放出された圧力レベル成分の推定値である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、前方圧力成分推定方法200は、ラウドスピーカ(108a及び108b)のテブナン等価値を算出する工程210と、推定されたテブナン等価インピーダンスZsの関数として不可インピーダンスZlを算出する工程220と、外耳道12内のラウドスピーカ108によって発せられた推定圧力レベル(Pforward)を算出する工程230と、ラウドスピーカ108に適用される補正値を算出する工程240と、を含む。
図3のテブナン等価回路において、Zsはラウドスピーカ(108a又は108b)のインピーダンス、Psは音源の音圧項、Plは負荷圧力レスポンスである。
【0038】
一実施形態においては、テブナン等価値は、ウェアラブルデバイス100のプロセッサ120によって決定され、IEM106によって受信された音波信号の測定値を受信して処理するように構成されていてもよい。
【0039】
ラウドスピーカ(108a又は108b)のテブナン等価値算出工程210は、金属管をキャリブレーションキャビティとして使用し圧力(P)を測定するステップ212と、キャビティインピーダンスZcの理想式を導出するステップ214と、テブナン等価値を算出するステップ216と、を含む。
【0040】
プローブラウドスピーカインピーダンス(Zs)のテブナン等価値の算出は、キャリブレーション装置150を使用した異なる周波数での音圧(Pm)測定を含んでいるか、それに係るものであってもよい。キャリブレーション装置150は、特定の共振周波数に対する既知の長さを有し、一端が閉じた先端となっている1つ以上の金属管又は管160を備える。閉じた先端は、硬く閉じられていることが好ましい。好ましい実施形態としては、キャリブレーション装置150は5つの管160を備える。管160は、キャリブレーションキャビティとして使用される。キャビティの長さは、通常、キャビティの数及びプローブラウドスピーカ(108a又は108b)のレスポンスに基づいて決められる。好ましくは、キャビティの波長は、
図5に示すように、スピーカの周波数レスポンスの最大範囲を網羅できるよう、複数のキャビティのピーク共振及びヌルの重なりが最小限となる波長が選択される。
【0041】
図6及び
図7には、キャリブレーション装置150の管160が例示されている。上述したように、管160は、ウェアラブルデバイス100とは別個に、内部ラウドスピーカ108のテブナン等価値を推定するために使用される。キャリブレーション装置160は、容積が可変又は異なる内部音響キャビティ又はチャンバ162を備える。容積が異なることで、特定の周波数の信号に対するキャビティ162内の音圧レベルの周波数レスポンスが変化する。音圧レベルは、異なる周波数で、又は各キャビティの容積に対する周波数範囲で測定することができる。
【0042】
特定の実施形態として、キャリブレーション装置150は、それぞれが異なる容積を有する複数の共振管160を備えていてもよい。管160は、外耳道12の内径と同じかそれに近い内径を有する。管160は、円筒形であることが好ましいが、当業者であれば、他の形状を有する管160が使用されてもよいことは理解できるであろう。
【0043】
他の実施形態として、管160はピストン164を備える。好ましい実施形態では、管160は7.9mmの有効内径を有し、ピストン164は、管160の内面166に沿って密閉状態でスライドするか、ぴったり合う外径を有していてもよい。これによれば、キャリブレーション管160内のキャビティは調節可能となっており、管160内でピストン164をスライドさせることによって変えることもできる。管160及びピストン164は、真鍮などの任意の適切な材料から作製することができる。他の実施形態として、管160は機械加工されたアルミニウム、又は管160とピストン164の相対運動を可能にしつつ、管160とピストン164がぴったり嵌った状態を維持することができる任意の他の金属から作製されていてもよい。
【0044】
キャリブレーション装置150の管160のうちの1つに、デバイス100のイヤチップ103の一部又は全体が挿入されていてもよい。好ましい実施形態として、イヤチップ103は、音漏れを最小限に抑えるために密閉するように、管160内に取り付けられていてもよい。このような構成によれば、内部ラウドスピーカ108によって発せられる音は、キャリブレーション装置150の管160のうちの1つの中で共鳴する。
【0045】
キャビティインピーダンスZcの理想式の演算には、以下の方程式が使用される。
【数3】
【0046】
ここで、Z0は管160内を伝播する平面波の特性インピーダンス、Lはキャビティの長さ、kは波数である。
【0047】
特性インピーダンスは、次のように算出されることが好ましい。
【数4】
【0048】
ここで、pは空気の密度、cは音速、Aは管160の断面積である。
【0049】
空気の密度(p)及び音速(c)は、環境条件に依存する。このような定数は、キャビティ内の温度の関数として近似することができる。温度は、赤外線温度センサを使用してキャビティ内で測定することができる。テブナン等価値を及びその結果として得られるFPL推定値の最適精度を保証するためには、キャビティ内の圧力と温度の測定は、インイヤキャリブレーション処置と同日又は数時間以内に実行する必要がある。
【0050】
テブナン等価値の推定216は、各周波数について以下の方程式のPs及びZsを解くことによって行われる。
【数5】
【0051】
ここで、Zcmは上記算出したm番目のキャビティのインピーダンス、Pmはこのキャビティ内で測定された圧力である。Ps及びZsはそれぞれソース圧力とソースインピーダンスのテブナン等価値である。
【0052】
方法200は更に、推定テブナン等価インピーダンスZsを使用して負荷インピーダンスZ1を算出するステップ220を含む。負荷インピーダンスは、外耳道の基準面で測定される外耳道インピーダンスである。負荷インピーダンスZ1を算出するステップ220は、ユーザの外耳道内の音圧(P1)を測定するステップ222と、次の方程式を使用してZ1の算出をするステップ224を含む。
【数6】
【0053】
明確にするために、管160は、テブナン等価の推定216のためのみに使用される。音圧(P1)は、外耳道内に配置されたIEM106を使用して測定される。P1の測定値に基づいて、負荷インピーダンスZ1の算出をすることができる(220)。
【0054】
FPLを推定する方法は、次の方程式を使用して、外耳道内でラウドスピーカ108によって発せられる推定圧力レベル(Pforward)を算出するステップ230を更に含む。
【数7】
【0055】
ここで、Plは、外耳道12内の負荷の圧力(すなわち、全音圧)であり、Z1は、抵抗素子と反応素子の両方によって決定される負荷インピーダンスであり、P1とZ1は両方とも周波数固有である。
【0056】
図2に示すように、Pforward値は、蝸牛に向かって移動する成分192を表し、P1圧力レベルは蝸牛に向かって移動する成分192と外耳道の入口に向かって移動する成分194の組み合わせを表す。
【0057】
Pforward値は、スピーカ108に適用される補正値を算出するステップ240で使用される。いくつかの実施形態では、ゲインテーブルを使用してキャリブレーションが行われる。このように、特定の刺激周波数については、ゲインテーブルの特定の周波数における圧力の目標値とPforward値との差を見つけることによって補正値が算出される。
【0058】
異なる周波数の補正値を算出するためのゲインテーブルの例を以下に示す。
【表1】
【0059】
FPLキャリブレーション法は、5つのキャビティすべての圧力を測定するといった異なるステップやテブナン推定値の歪みを最小限に抑えるための特定のハードウェア(例えば、特別なプローブ設計や高品質サウンドカード)を必要とする。
【0060】
図8及び
図9に示すように、いくつかの実施形態では、ラウドスピーカ108のテブナン等価を推定する方法300が提供される。このような方法300は、テブナン等価値を算出するために、信号の歪みを最小限に抑え、デバイス100のIEM106信号に必要なダイナミックレンジを低減することを目的とする。この方法は、信号生成及び処理工程310、信号事前調整工程320、IEM106を使用して信号を捕捉する工程330、及び音圧周波数レスポンス推定工程350を含む。
【0061】
信号処理工程310は、第1信号、好ましくは正弦波信号を生成するステップ311を含む。処理工程310は、第1刺激信号の最初の2サイクルを使用するなど、音響波形とデジタル波形を同期させるステップ312を更に含むこともできる。小型ラウドスピーカ108による第1信号の生成ステップ311とIEM106により信号を記録するステップ314との間の僅かな遅延を考慮すると、同期が必要である。同期ステップ312は更に、例えば、
図9に示すように、エンベロープ1でウィンドウ処理された3kHzの正弦波を使用して第1信号を第1エンベロープ(すなわち、エンベロープ1)でウィンドウ処理するステップ313を含んでもよい。エンベロープは、高速ゼロクロスによって引き起こされる高周波、つまりリンキングの生成を軽減し、待ち時間の推定を強化するのに役立つ。この正弦波周波数は、閉塞されたキャビティ内の反射波による構造的な干渉の可能性を最小限に抑えるために、管160のすべてのキャビティ長に対して選択される。
【0062】
処理310は、信号の待ち時間を推定するステップ315を更に含む。待ち時間推定ステップ315は、第1(デジタル)刺激信号とIEM106で捉えられた信号との間の相互関係を使用して実行される。この待ち時間は、
図9に示すように、時間平均化アルゴリズムの遅延(D)を使用して補償され、キャビティ周波数レスポンスを推定する。
【0063】
処理310は、対数チャープ信号などの第2信号を生成するステップ316を更に含む。この処理は、第2信号を使用して管160のキャビティ内のレスポンスを識別するステップ317を更に含む。レスポンスを識別するステップ317は、広帯域周波数レスポンスの歪みを最小限に抑え、高周波レスポンスを最大にし、及び/又はスピーカ108のロールオフを補償することを目的とする。好ましくは、レスポンスを識別するステップ317は、2つの同期サイクルに続き10サイクルなど、同期サイクルに続く所定数のサイクルを使用する。
【0064】
方法300は、第2信号事前調整工程320を更に含む。事前調整工程320は、ラウドスピーカ108によって発せられる第2信号をフィルタリンスするステップ321及びウィンドウ処理するステップ322を含む。フィルタリングステップ321及びウィンドウ処理ステップ322は、ラウドスピーカ108によって発せられる第2信号の音響信号の大きさを保証することを目的とする。閉塞されたキャビティと共鳴のピークは記録されたIEM信号を飽和させず、最適なダイナミックレングを実現するために共鳴のヌルが記録システムのノイズフロアよりも上にあることを保証する。フィルタリングステップ321は、直列接続された1つ以上の無限インパルスレスポンス(IIR)ノッチフィルタを第2信号に適用することを含んでいてもよい。好ましくは、ノッチフィルタは、選択されたキャビティの共振周波数の第1高調波に中心周波数を有し、これは波長λの音響長で推定される。一例として、中心周波数が、第1のキャビティの第1のノッチフィルタについてはfcla≒2kHzに設定され、第2のノッチフィルタについてはfclb≒4.2kHzに設定される場合、放射レスポンスは、
図10のようになる。第2信号ウィンドウ処理ステップ322は、例えば、各サイクルの最初の所定数のサンプルと最後の所定数のサンプル、例えば最初と最後の約50個のサンプルにわたってフェードイン/フェードアウト関数エンベロープ(エンベロープ2)を使用することを含んでいてもよいが、これに限定されない。
【0065】
方法300は、IEM106を使用して管160内の信号M(n)を捕捉するステップ330を更に含む。
【0066】
信号処理工程310は、第2信号の時間平均化を行うステップ340を更に含む。第2信号の平均化は、待ち時間Dに同期サイクルの数を加えて示されるサンプルインデックスで開始する。
【0067】
方法300は、音圧周波数レスポンスを算出する工程350を更に含む。音圧周波数レスポンス算出工程350は、典型的には、ラウドスピーカへ送信されたデジタル信号S3(n)及び捉えられたIEM信号M(n)に対し高速フーリエ変換(FFT)を実施するステップ352を含む。音圧周波数レスポンス算出工程350は、伝達関数推定を使用して2つのFFT値の比を算出するステップ346を更に含む。
【0068】
2つの信号は、10Hzと20,000Hzの範囲の間の周波数、又は任意の他の適切な周波数範囲を有するホワイトノイズ又はチャープ、すなわちサインスイープ信号を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ホワイトノイズ又はチャープは、約10秒の継続時間、又はプロセッサが伝達関数を決定できるようにするのに十分な他の任意の継続時間を有していてもよい。
【0069】
図11には、OAE測定プローブを使用して取得された捉えられた周波数レスポンスの大きさを示す比較試験結果が示されている。
図11に示されるように、上述した方法を使用して得られた前方圧力(FPLで表される)と、鼓膜14を表すキャビティ160の反対端の音圧レベル(管補正を伴うSPLterminalで表される)との間の実質的な一致が確認できる。更に、これらの値は、基準面107、すなわち、キャリブレーション管152の入口(SPLentranceで表される)で捉えられた実際の測定値から乖離している。
【0070】
以上、本発明の現時点での好ましい実施形態を例示し、詳細に説明したが、本発明の概念はその他の方法で様々に具体化し、使用することが可能であり、添付の特許請求の範囲には、先行技術によって制限されない限り、そのような変形が含まれるものと解釈されることを理解されたい。
【国際調査報告】