(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子の製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240328BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240328BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240328BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240328BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240328BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240328BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240328BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240328BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240328BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K9/51
A61K9/127
A61K48/00
A61K31/713
A61K47/24
A61K47/34
A61K47/28
A61K47/22
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563237
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 KR2022005796
(87)【国際公開番号】W WO2022225368
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0052233
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0050159
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC35
4C076DD59
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA13
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA13
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、脂質ナノ粒子の製造方法およびその製造装置に関するものであって、製造された脂質ナノ粒子を選別するための別途の工程を要しないため、後段の除菌ろ過工程などでの生産収率を高めることができる。また、従来の最適の薬物および脂質の割合から外れ、体内注入時に毒性が問題となるイオン化脂質の含有量を下げ、均一な大きさの脂質ナノ粒子の製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含む水相溶液を製造するステップと、
イオン化脂質(Ionizable lipid)を有機溶液に溶解して第1油相溶液を製造するステップと、
非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を有機溶液に溶解して第2油相溶液を製造するステップと、
前記水相溶液を第1チャンネルに注入して流すステップと、
前記第1油相溶液を第2チャンネルに注入して流すステップと、
前記水相溶液および前記第1油相溶液が交差して第1混合溶液として撹拌チャンネルを流れるステップと、
前記撹拌チャンネルに連結された第3チャンネルに前記第2油相溶液を流して、前記第1混合溶液と交差して第2混合溶液として混合するステップと、
前記第2混合溶液が前記撹拌チャンネル内の撹拌部を通過して核酸を含む脂質ナノ粒子を形成するステップと、を含む、脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記撹拌チャンネルは、撹拌部および非撹拌部の混合モジュールを含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記混合モジュールは、前記撹拌チャンネル内で複数形成され、
前記撹拌チャンネルの流体の流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、
前記第n混合モジュールは、前記撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味する、請求項2に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に交差点を形成して、前記撹拌チャンネルと結合し、前記第1混合溶液と前記第2油相溶液とが交差して層流(Laminar flow)を形成させる、請求項3に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記脂質ナノ粒子は、均一な球状であり、多分散指数(Polydispersity index)が0.2以下である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記イオン化脂質は、前記脂質ナノ粒子内の脂質の総重量に対して10ないし30mol%で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記イオン化脂質および前記核酸の重量の割合が3:1ないし50:1である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記核酸は、RNA、DNA、siRNA(short interfering RNA)、mRNA(messenger RNA)、アプタマー(aptamer)、アンチセンスODN(antisense oligodeoxynucleotide)、アンチセンスRNA(antisense RNA)、リボザイム(ribozyme)、ディーエヌエーザイム(DNAzyme)およびこれらの混合からなる群より選択される、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記非イオン化脂質は、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、DOPE(dioleolphosphatidyl ethanolamine)、DPPE(bis(diphenylphosphino)ethane)、ジアシルホスファチジルコリン(diacyl phosphatidylcholine)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(diacylphosphatidylethanolamine)、ジアシルホスファチジルセリン(diacylphosphatidylserine)およびこれらの混合からなる群より選択される、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記中性脂質は、ポリエチレングリコール2000ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG(2000)DSPE)、DMG-PEG、PEG-DMPE、DPPE-PEG、DPG-PEG、PEG-DOPEおよびこれらの混合からなる群より選択される、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記融合性脂質は、リン脂質、コレステロール、トコフェロールおよびこれらの混合からなる群より選択される、請求項1に記載の脂質ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、脂質ナノ粒子。
【請求項13】
核酸を含む水相溶液を流す第1チャンネルと、
イオン化脂質(Ionizable lipid)を含む第1油相溶液を流す第2チャンネルと、
非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を含む第2油相溶液を流す第3チャンネルと、
撹拌チャンネルと、を含み、
前記第1チャンネルおよび前記第2チャンネルは第1交差点を形成し、前記第1交差点は前記撹拌チャンネルに連結され、
前記撹拌チャンネルは、撹拌部および非撹拌部の混合モジュールを含む、脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項14】
前記混合モジュールは、前記撹拌チャンネル内で複数形成され、
前記撹拌チャンネルの流体の流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、
前記第n混合モジュールは、前記撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味する、請求項13に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項15】
前記撹拌チャンネル内に前記混合モジュールを3個ないし70個で含む、請求項14に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項16】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に交差点を形成して、前記撹拌チャンネルと結合されている、請求項14に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項17】
前記混合モジュールの長さは、前記撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に1ないし5mmである、請求項13に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項18】
前記撹拌部および前記非撹拌部の長さ割合は、前記撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に45:1ないし5:0.3である、請求項13に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項19】
前記撹拌部は、流入する流体を混合するために、グルーブ(groove)が形成されている、請求項13に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項20】
前記撹拌部のグルーブは、前記撹拌チャンネル内の層流(Laminar flow)の混合効率を高めるために、カオス混合を生じさせている、請求項19に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【請求項21】
前記グルーブの形象は、四角形、半円または三角形である、請求項19に記載の脂質ナノ粒子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ナノ粒子(LNP)の製造方法およびその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子(LNP)は、細胞不透過性である治療用核酸、タンパク質、およびペプチドのような生物学的活性化合物に対する効果的な薬物伝達システムである。
【0003】
通常、ワクチンは、「1世代」、「2世代」および「3世代」ワクチンに細分され、遺伝子ワクチン、すなわち、遺伝子ワクチンの接種のためのワクチンは、通常「3世代」ワクチンとして理解される。遺伝子ワクチンは典型的に、生体内で病原体または腫瘍抗原に対して特徴的なペプチドまたはタンパク質(抗原)断片の発現を可能にする遺伝子組み換え核酸分子からなる。遺伝子ワクチンは、患者に投与時に標的細胞による吸収後に発現する。投与された核酸の発現は暗号化したタンパク質の生産を招く。このようなタンパク質が患者の免疫係によって異物として認識される場合、免疫反応が触発する。
【0004】
遺伝子ワクチンの接種の観点から、DNAだけでなくRNAも投与のための核酸分子として用いることができる。DNAは、相対的に安定的で扱いやすいと知られている。
【0005】
しかし、DNAの利用は、損傷した遺伝子の機能喪失のような突然変異誘発性事件を潜在的にもたらす投与されたDNA断片の患者のゲノム内への望まない挿入危険を抱いている。
【0006】
遺伝子ワクチンの接種のために、DNAの代わりにRNAを用いることによって、望まないゲノム統合および抗-DNA抗体の生成危険は最小化するか防止される。しかし、RNAは偏在するRNアーゼによって容易に分解できてかなり不安定であり、不透過性、脆弱性および免疫源性の問題を有する。
【0007】
ここ数年間、多くの発展が行われたにもかかわらず適応免疫反応を誘発し得るmRNAワクチンの接種のための効率的な方法として、脂質ナノ粒子製剤を用いた。
【0008】
前記脂質ナノ粒子製剤は、生体内核酸の伝達を改善することができる。
【0009】
前記脂質ナノ粒子を用いた薬物伝達システムは、イオン化脂質、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を含む多成分製剤である。アニオン性のイオン化脂質は、カチオン性核酸に結合するのに対し、他の成分は脂質ナノ粒子の安定した自己組立をサポートする。
【0010】
前記脂質ナノ粒子は、最適の薬物:脂質の割合で製造され、血清で分解および除去されることから核酸を保護して、全身または局所への伝達に適し、核酸の細胞内の伝達を提供することができる。
【0011】
前記脂質ナノ粒子は、従来の製造方法で製造するとき、製造された粒子の大きさが均一でなく、別途の分類工程を要するなどの生産効率が低下されるという問題がある。
【0012】
このような問題を解決し、生産効率を高めるために、直径が均一な脂質ナノ粒子の製造工程の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0093816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、脂質ナノ粒子の製造方法およびその製造装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、製造された脂質ナノ粒子を選別するための別途の工程を要しないため、後段の除菌ろ過工程などでの生産収率を高めることができる脂質ナノ粒子の製造装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、従来の最適の薬物および脂質の割合から外れ、体内注入時に毒性が問題となるイオン化脂質の含有量を下げ、均一な大きさの脂質ナノ粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、脂質ナノ粒子の製造方法に関するものであって、核酸を含む水相溶液を製造するステップと、イオン化脂質(Ionizable lipid)を有機溶液に溶解して第1油相溶液を製造するステップと、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を有機溶液に溶解して第2油相溶液を製造するステップと、前記水相溶液を第1チャンネルに注入して流すステップと、前記第1油相溶液を第2チャンネルに注入して流すステップと、前記水相溶液および第1油相溶液が交差して第1混合溶液として撹拌チャンネルを流れるステップと、前記撹拌チャンネルに連結された第3チャンネルに第2油相溶液を流して、前記第1混合溶液と交差して第2混合溶液として混合するステップと、前記第2混合溶液が撹拌チャンネル内の撹拌部を通過して核酸を含む脂質ナノ粒子を形成するステップと、を含んでもよい。
【0018】
前記撹拌チャンネルは、撹拌部および非撹拌部の混合モジュールを含んでもよい。
【0019】
前記混合モジュールは、撹拌チャンネル内で複数形成され、前記撹拌チャンネルの流体流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、前記第n混合モジュールは、撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味してもよい。
【0020】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に交差点を形成して、撹拌チャンネルと結合し、第1混合溶液と第2油相溶液とが交差して層流(Laminar flow)を形成させてもよい。
【0021】
前記脂質ナノ粒子は、均一な球状であり、多分散指数(Polydispersity index)が0.2であってもよい。
【0022】
前記イオン化脂質は、脂質ナノ粒子内の脂質の総重量に対して10ないし30mol%で含んでもよい。
【0023】
前記イオン化脂質および核酸の重量の割合が3:1ないし50:1であってもよい。
【0024】
前記核酸は、RNA、DNA、siRNA(short interfering RNA)、mRNA(messenger RNA)アプタマー(aptamer)、アンチセンスODN(antisense oligodeoxynucleotide)、アンチセンスRNA(antisense RNA)、リボザイム(ribozyme)、ディーエヌエーザイム(DNAzyme)およびこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0025】
前記非イオン化脂質は、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、DOPE(dioleolphosphatidyl ethanolamine)、DPPE(bis(diphenylphosphino)ethane)、ジアシルホスファチジルコリン(diacyl phosphatidylcholine)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(diacylphosphatidylethanolamine)、ジアシルホスファチジルセリン(diacylphosphatidylserine)およびこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0026】
前記中性脂質は、ポリエチレングリコール2000ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG(2000)DSPE)、DMG-PEG、PEG-DMPE、DPPE-PEG、DPG-PEG、PEG-DOPEおよびこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0027】
前記融合性脂質は、リン脂質、コレステロール、トコフェロールおよびこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0028】
本発明の他の一実施例に係る低濃度のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子は、前記製造方法で製造されたものであってもよい。
【0029】
本発明の他の一実施例に係る低濃度のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子の製造装置は、核酸を含む水相溶液を流す第1チャンネルと、イオン化脂質(Ionizable lipid)を含む第1油相溶液を流す第2チャンネルと、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を含む第2油相溶液を流す第3チャンネルと、撹拌チャンネルと、を含み、前記第1チャンネルおよび第2チャンネルは第1交差点を形成し、前記交差点は撹拌チャンネルに連結され、前記撹拌チャンネルは、撹拌部および非撹拌部の混合モジュールを含んでもよい。
【0030】
前記混合モジュールは、撹拌チャンネル内で複数形成され、前記撹拌チャンネルの流体流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、前記第n混合モジュールは、撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味してもよい。
【0031】
前記撹拌チャンネル内に混合モジュールを3個ないし70個で含んでもよい。
【0032】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に交差点を形成して、撹拌チャンネルと結合されてもよい。
【0033】
前記混合モジュールの長さは、撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に1ないし5mmであってもよい。
【0034】
前記撹拌部および非撹拌部の長さ割合は、撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に45:1ないし5:0.3であってもよい。
【0035】
前記撹拌部は、流入する流体を混合するために、グルーブ(groove)が形成されてもよい。
【0036】
前記撹拌部のグルーブは、撹拌チャンネル内の層流(Laminar flow)の混合効率を高めるために、カオス混合を生じさせてもよい。
【0037】
前記グルーブの形象が、四角形、半円または三角形であってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、製造された脂質ナノ粒子を選別するための別途の工程を要しないため、後段の除菌ろ過工程などでの生産収率を高めることができる。
【0039】
また、従来の最適の薬物および脂質の割合から外れ、体内注入時に毒性が問題となるイオン化脂質の含有量を下げ、均一な大きさの脂質ナノ粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る製造装置に対する図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る従来の脂質ナノ粒子を製造するための製造装置に対する図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る製造装置に対する写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例によって製造された脂質ナノ粒子のPDI測定結果である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る脂質ナノ粒子に対するCryo-EM写真である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る水相溶液と第1油相溶液との流量比による混合割合指数(mixing index rate、%)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、核酸を含む水相溶液を製造するステップと、イオン化脂質(Ionizable lipid)を有機溶液に溶解して第1油相溶液を製造するステップと、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を有機溶液に溶解して第2油相溶液を製造するステップと、前記水相溶液を第1チャンネルに注入して流すステップと、前記第1油相溶液を第2チャンネルに注入して流すステップと、前記水相溶液および第1油相溶液が交差して第1混合溶液として撹拌チャンネルを流れるステップと、前記撹拌チャンネルに連結された第3チャンネルに第2油相溶液を流して、前記第1混合溶液と交差して第2混合溶液として混合するステップと、前記第2混合溶液が撹拌チャンネル内の撹拌部を通過して核酸を含む脂質ナノ粒子を形成するステップと、を含む脂質ナノ粒子の製造方法に関するものである。
【0042】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0043】
mRNAは、伝令リボ核酸(messenger RiboNucleic Acid)の略語であり、遺伝情報を有するDNAがmRNAになり、これを用いてタンパク質が合成される過程でDNAとタンパク質とを繋ぐ中間体である。
【0044】
新型コロナウイルス感染症によりmRNAワクチンへの関心および開発が集中している。mRNAワクチンは、他の類型のワクチンに比べていくつかの利点がある。mRNAワクチンの最も大きな長所は、mRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)がプラットホーム技術に該当して、新型コロナウイルス感染症のように、変異が多く発生するウイルスに対抗して、早い技術開発が可能であるということである。
【0045】
具体的に、保護タンパク質抗原(protective protein antigen)を識別し、前記抗原に対する遺伝子をシクォンシングして、mRNAを製造することができる。このような方式を用いて、新規mRNAを製造し、従来のmRNAワクチンの剤形設計および製造工程を用いる場合、迅速なmRNAワクチンの製造が可能である。これは互いに異なる抗原をコーディングするmRNAが化学的、物理的に非常に類似しているため、新しいmRNAワクチンの剤形設計および製造工程は、従来のmRNAワクチンの剤形および製造工程と同様のステップで行えることを意味する。
【0046】
リン酸塩グループの負電荷のため、mRNAは一般的に非経口用に用いられるpH範囲で多価カチオン性巨大分子である。前記のように、負電荷を帯びるmRNAの電気的な性質を用いて、正電荷を帯びるイオン化脂質(ionisable lipidまたはcationic lipid)を用いて脂質ナノ粒子を製造することができる。具体的に、イオン化脂質は、正電荷を帯びる脂質であり、負電荷を帯びるmRNAと電気的な引力によって互いに強く結合することになる。前記イオン化脂質以外に、さらに非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を含んで脂質ナノ粒子を形成することになる。
【0047】
米国特許第9364435号明細書の核酸-脂質粒子は、(a)核酸、(b)アニオン性脂質、(c)非アニオン性脂質および(d)融合性脂質を含み、粒子内の脂質の総含有量を基準に、前記アニオン性脂質を50mol%ないし85mol%で含み、前記非アニオン性脂質を13mol%ないし49.5mol%で含み、融合性脂質を0.5mol%ないし2mol%で含むものと開示している。
【0048】
また、欧州特許第2279254号明細書の核酸-脂質粒子は、粒子内の脂質の総含有量を基準に、前記アニオン性脂質を50mol%ないし65mol%で含み、前記非アニオン性脂質を49.5mol%以下で含み、コレステロールまたはその誘導体を30mol%ないし40mol%で含み、融合性脂質を0.5mol%ないし2mol%で含むものと開示している。
【0049】
前記のように、mRNAを含むナノ脂質粒子は、イオン化脂質(アニオン性脂質)を粒子内で多量含むものと確認されている。
【0050】
ただ、前記のように、mRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)は、体外および体内毒性による治療用安全性に対する憂慮は一部依然として残っている。このような毒性は主に非特異的な電荷相互作用に基づいて発生する。すなわち、正電荷を帯びるイオン化脂質の毒性問題がイシューとなっており、これを補完するための研究が持続している。
【0051】
アニオン性のイオン化脂質の使用量を減らす試みが最も直観的であるが、限界点以下である低濃度のイオン化脂質を用いる場合、製造された脂質ナノ粒子(LNP)の大きさが均一でないという問題がある。均一でない大きさの脂質ナノ粒子(LNP)を製造する場合、望まない大きさの脂質ナノ粒子(LNP)を除去するための工程がさらに必要となり、後段で行う除菌ろ過工程などでも大きい損失に繋がる。これは、mRNAを含む脂質ナノ粒子の生産収率を大きく低下させる原因になる。
【0052】
本発明は、核酸を含む脂質ナノ粒子の製造方法に関するものであって、粒子の大きさが均一な脂質ナノ粒子を製造可能な製造方法を提供しようとする。
【0053】
また、先に説明したように、毒性が問題となるイオン化脂質の含有量を下げながらも均一な直径を有する脂質ナノ粒子を製造することを特徴とする。従来の脂質ナノ粒子を製造するための脂質等の含有量範囲内であるか、イオン化脂質の含有量範囲を下げる場合にも、従来の製造方法と異なる方法を用いるによって、直径が均一な粒子への製造が可能なことを特徴とする。
【0054】
具体的に、核酸を含む水相溶液を製造するステップと、イオン化脂質(Ionizable lipid)を有機溶液に溶解して第1油相溶液を製造するステップと、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を有機溶液に溶解して第2油相溶液を製造するステップと、前記水相溶液を第1チャンネルに注入して流すステップと、前記第1油相溶液を第2チャンネルに注入して流すステップと、前記水相溶液および第1油相溶液が交差して第1混合溶液として撹拌チャンネルを流れるステップと、前記撹拌チャンネルに連結された第3チャンネルに第2油相溶液を流して、前記第1混合溶液と交差して第2混合溶液として混合するステップと、前記第2混合溶液が撹拌チャンネル内の撹拌部を通過して核酸を含む脂質ナノ粒子を形成するステップと、を含んでもよい。
【0055】
具体的に、核酸を溶媒に混合して水相溶液を製造する。前記溶媒は、クエン酸溶液であり、pH3.0であるものや、前記例示に制限されず、核酸を混合して、脂質ナノ粒子を製造可能な溶媒は制限なくいずれも使用可能である。
【0056】
前記核酸は、RNA、DNA、siRNA(short interfering RNA)、mRNA(messenger RNA)アプタマー(aptamer)、アンチセンスODN(antisense oligodeoxynucleotide)、アンチセンスRNA(antisense RNA)、リボザイム(ribozyme)、ディーエヌエーザイム(DNAzyme)およびこれらの混合からなる群より選択されてもよく、好ましくはmRNAや、前記例示に限定されない。
【0057】
前記核酸は、疾病を予防または治療するための用途であり、一例示として、新型コロナウイルス感染症ワクチンのように、新型コロナウイルス感染症ウイルスに対抗するためのスパイクタンパク質を合成するようにする。前記例示に限定されず、疾病の予防または治療のための核酸はいずれも使用可能である。
【0058】
以後、イオン化脂質を有機溶液に溶解して第1油相溶液を製造する。前記イオン化脂質は、ALC-0315(Genevant)、ALC-0159(Genevant)、DLinDAP、Dlin-MC3-DMAまたはSM102(Arbutus)などを用いてもよい。前記イオン化脂質は例示に限定されず、脂質ナノ粒子の製造に用いられるイオン化脂質は制限なくいずれも使用可能である。
【0059】
前記有機溶液はアルコールであり、具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールなどであってもよいが、好ましくはエタノールであるが、前記例示に限定されず、イオン化脂質を均一に溶解可能な有機溶媒は制限なくいずれも使用可能である。
【0060】
非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を有機溶液に溶解して第2油相溶液を製造する。
【0061】
前記非イオン化脂質は、融合性脂質と共に脂質ナノ粒子の安全性を高めるために含まれてもよい。脂質ナノ粒子は、目的とする組職や機関に核酸を到逹するようにするためのものであるが、体内注入後、目的とする組職や機関に到逹する前に破壊されるという問題がある。このような問題を防止するために、非イオン化脂質および融合性脂質を含んでもよい。具体的に、前記非イオン化脂質は、DSPC(distearoylphosphatidylcholine)、DOPE(dioleolphosphatidyl ethanolamine)、DPPE(bis(diphenylphosphino)ethane)、ジアシルホスファチジルコリン(diacyl phosphatidylcholine)、ジアシルホスファチジルエタノールアミン(diacylphosphatidylethanolamine)、ジアシルホスファチジルセリン(diacylphosphatidylserine)およびこれらの混合からなる群より選択され、好ましくはDSPCであるが、前記例示に限定されない。
【0062】
前記融合性脂質は、コレステロール、トコフェロールおよびこれらの混合からなる群より選択されてもよく、好ましくはコレステロールや前記例示に限定されない。
【0063】
前記中性脂質は粒子の大きさを調節し、保管中の凝集を防止する立体障壁の役目を果たすために含まれるものであって、具体的にポリエチレングリコール2000ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG(2000)DSPE)、DMG-PEG、PEG-DMPE、DPPE-PEG、DPG-PEG、PEG-DOPEおよびこれらの混合からなる群より選択されてもよく、好ましくはDMG-PEGであるが、前記例示に限定されない。
【0064】
前記第2油相溶液を製造するために用いられる有機溶液はアルコールであり、具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールなどであってもよいが、好ましくはエタノールであるが、前記例示に限定されず、イオン化脂質を均一に溶解可能な有機溶媒は制限なくいずれも使用可能である。
【0065】
前記製造された水相溶液および第1油相溶液は、第1チャンネルおよび第2チャンネルに注入して流す。前記第1チャンネルおよび第2チャンネルは、後述するように、交差点を形成し、撹拌チャンネルに連結される。
【0066】
前記第1チャンネルおよび第2チャンネルに各々注入した水相溶液および第1油相溶液は交差点で層流(laminar flow)を形成して、撹拌チャンネルを流れるようになる。
【0067】
一般的に、脂質ナノ粒子を製造する工程は、核酸が溶解された水相溶液と4種の脂質とがいずれも溶解された油相溶液を各チャンネルに注入して、チャンネル内に注入した水相溶液と油相溶液とが交差点で層流を形成して、撹拌チャンネルを流れるようになる。前記撹拌チャンネルに注入した水相溶液と油相溶液とが混合され、水相溶液内の核酸、油相溶液内のイオン化脂質、非イオン化脂質、中性脂質および融合性脂質が静電気的引力によって結合され、脂質ナノ粒子を形成することになる。
【0068】
すなわち、水相溶液と油相溶液とを混合して脂質ナノ粒子を製造し、前記油相溶液には4種の脂質がいずれも混合された状態を用いる。
【0069】
一方、本発明の低濃度のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子の製造方法は、油相溶液を第1油相溶液および第2油相溶液に分類して、前記第1油相溶液にはイオン化脂質だけ含み、第2油相溶液に残りの脂質を含むことを特徴とする。
【0070】
前記のように、第1チャンネルでは水相溶液が流れるようになり、第2チャンネルでは第1油相溶液が流れるようになり、前記水相溶液内の核酸と第1油相溶液内のイオン化脂質とが静電気的引力によって優先的に結合することになる。
【0071】
前記水相溶液内の核酸と第1油相溶液内のイオン化脂質とが静電気的引力によってより容易に結合されるようにするために、撹拌チャンネル内の撹拌部を通過させる。
【0072】
前記撹拌チャンネルは、具体的に撹拌部および非撹拌部を含む混合モジュールを複数含むことを特徴とする。
【0073】
前記混合モジュールは、前記撹拌チャンネルの流体流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、前記第n混合モジュールは、撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味する。
【0074】
具体的に、第1混合モジュールは、撹拌チャンネルの流体流れ方向を基準に一番前に形成されたものであり、その後、第2混合モジュール、第3混合モジュールなどが形成されてもよい。
【0075】
前記混合モジュールは、撹拌部および非撹拌部を含むことを特徴とする。後述するように、撹拌部は水相溶液および第1油相溶液が上手く混合されるようにするために、グルーブ(groove)が形成されたことを特徴とする。前記水相溶液および第1油相溶液が層流を形成して流れ、撹拌部でカオス混合(chaotic mix)となり、前記混合過程によって核酸とイオン化脂質とが結合することになる。
【0076】
前記核酸は、具体的にmRNAであり、mRNAは先に説明したようにカチオン性であり、イオン化脂質はアニオン性であり、相互間の静電気的引力によって結合されるようになる。
【0077】
前記水相溶液および第1油相溶液が撹拌チャンネルを通過して混合工程が行われ、第1混合溶液として撹拌チャンネルを流れるようになると、順次に第2混合溶液が第3チャンネルに注入され、撹拌チャンネル内の第1混合溶液と混合することになる。
【0078】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に撹拌チャンネルと交差点を形成して結合することになる。具体的に、前記第3チャンネルは、第2混合モジュールないし第4混合モジュールの間で撹拌チャンネルと交差点を形成して結合することになり、より好ましくは、第3混合モジュール内の非撹拌部で撹拌チャンネルと交差点を形成して結合することになる。
【0079】
前記のように、第3チャンネルの結合部分は、第2油相チャンネルが第1混合溶液と層流を形成して混合するに先立って、前記第1混合溶液内で核酸とイオン化脂質とを完全に結合させた以後、第2油相チャンネルの非イオン化脂質、中性脂質および融合性脂質を結合させるために、核酸とイオン化脂質との結合程度を考慮して決めた。
【0080】
具体的に、第1チャンネルおよび第2チャンネルを用いて水相溶液と第1油相溶液とを交差させて層流を形成させた後、撹拌チャンネルを流れるようにした後、混合モジュールを通過するようにする場合、第3混合モジュール内の撹拌部を通過すると、水相溶液内の核酸と第1油相溶液内のイオン化脂質とが混合され、80%以上の混合率(mixing rate)を示すことを確認した。
【0081】
具体的に、第1チャンネルに注入する水相溶液および第2チャンネルに注入する第1油相溶液の流量比が1:1ないし10:1であり、3:1ないし9:1であってもよい。前記範囲内で混合して用いるとき、粒子の大きさが均一な脂質ナノ粒子への製造が可能である。より具体的に、前記範囲未満で含む場合、後工程の進行時にエタノールの含有量が多く脂質ナノ粒子の形態の維持が困難な問題があり、前記範囲を超過して含む場合、水相溶液が多量含まれることによって、水相溶液内の脂質粒子の動きが制限され、直径が過度に小さい粒子を形成するという問題がある。
【0082】
これにより、本発明では、第3チャンネルの撹拌チャンネルとの結合位置は、核酸とイオン化脂質との結合程度を考慮して決めたものであって、前記第1混合モジュール内の非撹拌部、第2混合モジュール内の非撹拌部、第3混合モジュール内の非撹拌部、第4混合モジュール内の非撹拌部、または、第5混合モジュール内の非撹拌部に結合させ、第2油相溶液が第1混合溶液と層流を形成し、以後、撹拌モジュールを通過して第2油相溶液と第1混合溶液が混合され、第2混合溶液を形成し、前記第2混合溶液内で核酸およびイオン化脂質が結合された粒子と非イオン化脂質、中性脂質および融合性脂質が結合して核酸を含む脂質ナノ粒子を形成するようにする。
【0083】
従来とは異なり、脂質ナノ粒子を製造するために、核酸、イオン化脂質、非イオン化脂質、中性脂質および融合性脂質を一度で混合する場合に比べて、本発明のように、段階的に結合を誘導して脂質ナノ粒子を形成する場合、より均一な脂質ナノ粒子に製造することができる。
【0084】
前記本発明で製造された脂質ナノ粒子は、均一な球状であり、多分散指数(Polydispersity index)が0.2以下であり、0.01ないし0.2であり、0.05ないし02であり、0.1ないし0.2であってもよい。前記範囲内で多分散指数を満足する脂質ナノ粒子は、非常に均一な大きさを有する脂質ナノ粒子として提供されることを意味する。前記のように、均一な大きさを有する脂質ナノ粒子を製造する場合、特定の大きさを有する脂質ナノ粒子を分類するための別途の作業を要しないため、脂質ナノ粒子をワクチンまたは治療剤として提供するための混合工程以後の後段の工程で生産収率を極大化することができる。
【0085】
また、前記本発明の核酸を含む脂質ナノ粒子は、前記イオン化脂質を脂質ナノ粒子内の脂質の総重量に対して10ないし30mol%であってもよい。また、前記イオン化脂質を脂質ナノ粒子内の脂質の総重量に対して15ないし19.9mol%で含んでもよい。前記のように、イオン化脂質を20mol%以上に含む場合にも、従来の脂質ナノ粒子の製造方法に比べて、均一な直径を有する脂質ナノ粒子に製造が可能であり、前記イオン化脂質の含有量範囲は、先に検討した先行特許のみならず、商品化しているmRNAワクチンに比べて、低濃度で含まれる場合にも、製造した脂質ナノ粒子は、均一な大きさを有するように製造することができる。すなわち、毒性のイシューがあるイオン化脂質の含有量は下げ、毒性の問題を解消すると共に、製造工程上、イオン化脂質と他の脂質等を分離させて核酸と結合させ、均一な大きさを有する脂質ナノ粒子を製造し、生産収率を高めることができる。
【0086】
前記イオン化脂質および核酸の重量の割合が3:1ないし50:1であり、3.3:1ないし50:1であり、3.3:1ないし16.7:1であってもよい。また、イオン化脂質、非イオン化脂質、融合性脂質および中性脂質のmol割合は10ないし50:10ないし50:30ないし65:1ないし2.5の範囲内であってもよい。従来の技術に比べて、融合性脂質の含有量範囲を高め、イオン化脂質の含有量を下げたことを確認することができる。
【0087】
先に説明したように、従来の製造方法は、イオン化脂質の含有量を下げる場合、製造された脂質ナノ粒子の大きさが均一でなく、事実上、脂質等の含有量範囲を調整することはできないと知られている。
【0088】
ただ、本発明では、従来の製造方法と異なり、脂質をイオン化脂質と残りの脂質に分類して、これを各有機溶媒に溶解させた後、核酸と段階的に結合させることによってイオン化脂質の含有量を下げながらも均一な大きさを有する脂質ナノ粒子を製造することができる。
【0089】
本発明の他の一実施例に係る低濃度のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子は、前記製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0090】
先に説明したように、本発明の製造方法で製造された脂質ナノ粒子は、イオン化脂質を少ない含有量で含んでおり、イオン化脂質を多量含むことによる毒性問題も解消できるだけでなく、製造された粒子の大きさも均一で生産収率を高めることができる。
【0091】
本発明の他の一実施例に係る低濃度のイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子の製造装置は、核酸を含む水相溶液を流す第1チャンネルと、イオン化脂質(Ionizable lipid)を含む第1油相溶液を流す第2チャンネルと、非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質を含む第2油相溶液を流す第3チャンネルと、撹拌チャンネルと、を含み、前記第1チャンネルおよび第2チャンネルは第1交差点を形成し、前記交差点は撹拌チャンネルに連結され、前記撹拌チャンネルは、撹拌部および非撹拌部の混合モジュールを含んでもよい。
【0092】
前記混合モジュールは、撹拌チャンネル内で複数形成され、前記撹拌チャンネルの流体流れ方向を基準に順に第n混合モジュールが形成され、前記第n混合モジュールは、撹拌チャンネル内の繰り返し形成された混合モジュールの順序を意味する。
【0093】
前記撹拌チャンネル内に混合モジュールを3個ないし70個で含んでもよい。混合モジュールは、先に説明したように撹拌部および非撹拌部を含むものであって、層流として流れる水相溶液および油相溶液が撹拌部で混合できるようにするものであって、撹拌チャンネル内で撹拌部および非撹拌部が複数で繰り返されることにして、混合効率を高めることができる。
【0094】
前記撹拌チャンネル内の混合モジュールは3個ないし70個で含まれ、3個ないし50個で含まれ、3個ないし40個で含まれ、3個ないし35個で含まれ、好ましくは30個で含まれてもよい。前記範囲内で混合モジュールを含む場合、先に説明したように水相溶液内の核酸と第1油相溶液内のイオン化脂質とが完全に結合された後、第2油相溶液内の非イオン化脂質(non-Ionizable lipid)、中性脂質および融合性脂質と段階的に結合して均一な大きさを有する脂質ナノ粒子に製造することができる。
【0095】
前記第3チャンネルは、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間に交差点を形成して、撹拌チャンネルと結合されてもよい。
【0096】
前記第3チャンネルは、第2油相溶液を流して撹拌チャンネルを流れている第1混合溶液と層流を形成させるためのものであって、先に説明したように、第3チャンネルを流れる第2油相溶液内の脂質等は、核酸とイオン化脂質とが充分に混合されて粒子を形成した後、前記粒子と結合させるために、第1チャンネルおよび第2チャンネルの交差点と一定の間隔を空けて撹拌チャンネルに結合させる。
【0097】
前記第3チャンネルの結合位置は、第1混合モジュールないし第5混合モジュールの間であり、具体的に、前記第1混合モジュール内の非撹拌部、第2混合モジュール内の非撹拌部、第3混合モジュール内の非撹拌部、第4混合モジュール内の非撹拌部、または、第5混合モジュール内の非撹拌部に結合可能であり、好ましくは、第2混合モジュール内の非撹拌部、第3混合モジュール内の非撹拌部、第4混合モジュール内の非撹拌部、または、第5混合モジュール内の非撹拌部に結合可能であり、より好ましくは、第3混合モジュール内の非撹拌部に結合可能である。
【0098】
前記のように、結合位置を調整することによって、第3チャンネル内の第2油相溶液が第1混合溶液と交差される前に、第1混合溶液が第1混合モジュールの撹拌部、第2混合モジュールの撹拌部および第3混合モジュールの撹拌部を通じて混合され、水相溶液内の核酸と第1油相溶液内のイオン化脂質間の結合に十分な時間を提供することができる。
【0099】
前記混合モジュールの長さは、撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に1ないし5mmであってもよい。また、前記撹拌部および非撹拌部の長さ割合は、撹拌チャンネル内の流体の流れ方向を基準に45:1ないし5:0.3であってもよい。具体的に、撹拌部の長さは2ないし4mmであり、非撹拌部は0.1ないし0.25mmであり、撹拌部の長さは2ないし3.5mmであり、非撹拌部は0.1ないし0.20mmであり、撹拌部の長さは2ないし3mmであり、非撹拌部は0.12ないし0.20mmであってもよい。前記範囲内で撹拌部および非撹拌部が混合モジュールを構成することによって、撹拌部および非撹拌部を通過する第1混合溶液および第2混合溶液内で核酸と脂質等間の結合が容易に発生できるようにする。
【0100】
前記撹拌部は、流入する流体を混合するために、グルーブ(groove)が形成され、前記撹拌部のグルーブは、撹拌チャンネル内の層流(Laminar flow)の混合効率を高めるために、カオス混合を生じさせることができる。
【0101】
前記グルーブの形象が、四角形、半円または三角形であってもよい。前記グルーブの形態は、撹拌チャンネルを通過する流体の混合効率を高めるためのものであって、前記例示に限定されず、撹拌効率を高めることができるグルーブ形態はいずれも使用可能である。
【0102】
具体的に、
図1は、本発明の脂質ナノ粒子を製造するための製造装置に関するものである。具体的に、本発明の脂質ナノ粒子を製造するための製造装置は、第1チャンネル100、第2チャンネル200、撹拌チャンネル300および第3チャンネル400を含み、前記撹拌チャンネル300内の混合モジュール310が繰り返して形成されている。
【0103】
また、前記混合モジュール310は、撹拌部311および非撹拌部312が形成されている。
【0104】
図2は、従来の脂質ナノ粒子の製造装置に関するものであって、
図1とは異なり、撹拌チャンネル300’に第3チャンネル400’を別途に含んでいない。
【0105】
前記製造装置は、硝子基板、シリコンウエハまたは高分子フィルムからなる群より選択された素材に形成されてもよいが、前記素材の例示は、前記例示に限定されず、マイクロチャンネルの形成の可能な素材はいずれも使用可能である。
【0106】
前記高分子フィルムは、ポリイミド(Polyimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、フルオロ化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate)、ポリスルホン(Polysulfone)およびこれらの混合からなる群より選択されてもよいが、前記例示に限定されない。
【0107】
一例示として、シリコンウエハにe-beam evaporatorを用いてアルミニウムを蒸着し、フォトリソグラフィ(photolithography)技法を用いてフォトレジスト(photoresist)をアルミニウム上にパターニングする。以後、フォトレジストをマスクにして用いてアルミニウム蝕刻(etching)し、フォトレジストを除去した後、アルミニウムをマスクにしてシリコンをDRIE(deep ion reactive etching)にエッチングして、アルミニウムの除去後、ウエハの上に硝子を両極接合して密封して製造する。
【0108】
前記の製造装置内の第1チャンネル、第2チャンネル、第3チャンネルおよび撹拌チャンネルの平均直径が180ないし220μmであり、好ましくは200μmであり、高さは60ないし100μmであり、好ましくは80μmであり、グルーブの高さは10ないし50μmであり、好ましくは30μmであるが、溶液の流れによって脂質ナノ粒子を製造可能なチャンネルの直径、高さおよびグルーブ高さは制限なくいずれも使用可能である。
【0109】
前記チャンネル内に注入する水相溶液、第1油相溶液および第2油相溶液の流量は、各々0.3ないし0.9ml/min、0.05ml/minないし0.3ml/min、および0.05ml/minないし0.3ml/minで注入した。前記範囲内で水相溶液、第1油相溶液および第2油相溶液を注入する場合、均一な大きさを有する脂質ナノ粒子に製造することができる。
【0110】
また、先に説明したように第2油相溶液が交差して第1混合溶液と混合される前に第1混合溶液で核酸とイオン化脂質とが充分に結合されなければならない。核酸とイオン化脂質との結合率(mixing index rate)を高めるためには、チャンネル内に注入する水相溶液および第1油相溶液の流量を調節しなければならず、このとき、流量比は1:1ないし10:1であり、好ましくは2:1ないし10:1であり、より好ましくは、3:1ないし9:1であってもよい。前記流量比範囲内で、第3混合モジュール内の撹拌部を通過した第1混合溶液での核酸とイオン化脂質との混合割合指数(mixing index rate)が80%以上であり、85%であってもよい。前記のように、混合割合指数値を満たす場合、核酸とイオン化脂質とが充分に結合することを意味し、以後、第3チャンネルを通じて他の脂質と結合して脂質ナノ粒子に製造することができる。
【0111】
製造例1
脂質ナノ粒子の製造装置の製造
シリコンウエハ(Silicon wafer)の表面にネガティブフォトレジスト(negative photoresist)を回転して塗布した後、65℃で0ないし3分、および95℃で6ないし9分加熱して溶媒を蒸発させた後、グルーブ(Groove)構造を除き、紫外線を照射した。以後、65℃で1ないし2分、および95℃で6ないし7分加熱することによって、フォトレジスト(photoresist)のうち紫外線に露光された部分を固形化した。
【0112】
撹拌チャンネル内のグルーブ(Groove)を形成するために、ネガティブフォトレジストをもう一度回転させて塗布した後、65℃で0ないし3分、および95℃で6ないし9分加熱して溶媒を蒸発させた後、チップのグルーブに対する部分に紫外線を照射した。以後、65℃で1ないし2分、および95℃で6ないし7分加熱することによって、フォトレジストのうち紫外線に露光された部分を固形化した。以後、デベロッパー(Developer)を用いて紫外線が露光されていない部分を除去した。
【0113】
【0114】
製造例2
脂質ナノ粒子の製造
mRNA(CleanCap(登録商標) Firefly Luciferase mRNA、~1,929 nucleotides)を10mM Citrate solution(pH3)に混合して水相溶液を製造した。
【0115】
イオン化脂質としてALC-0315をエタノールに溶解させ、第1油相溶液を製造した。以後、DSPC、コレステロールおよびDMG-PEG2000をエタノールに溶解させ、第2油相溶液を製造した。
【0116】
前記製造例1で製造した製造装置の第1チャンネルに水相溶液を注入し、第2チャンネルに第1油相溶液を注入し、第3チャンネルに第2油相溶液を注入した。
【0117】
前記水相溶液は0.6mL/minで、第1油相溶液は0.1mL/minで、第2油相溶液は0.1mLの流量で注入した。
【0118】
混合が完了し、装置外部に放出された溶液は、Dialysis(PES membrane dialysis cassette(MWCO=10,000dalton))を通じて緩衝溶液をPBSに交換して、脂質ナノ粒子を製造した。
【0119】
脂質ナノ粒子に対する構成成分の含有量は、下記の表1の通りである。
【0120】
【0121】
前記比較例は、製造装置として、
図2のように第3チャンネルのない製造装置を用いており、ALC-0315、DSPC、コレステロールおよびDMG-PEG2000をエタノールに溶解させ、油相溶液として第2チャンネルに注入したことを除き、製造例と同様に製造した。
【0122】
前記実施例3および比較例2は、mRNAをCleanCap(登録商標) Enhanced Green Fluorescent Protein mRNA(996nucleotides)を用いたことを除き、製造例2と同様に製造した。
【0123】
実験例1
粒子の粒度分布度評価
前記製造例2および比較例1で製造した脂質ナノ粒子に対して、Dynamic laser scattering装置(Malvern Zetasizer)で粒子の粒度分布度(Polydispersity index)を測定した。
【0124】
【0125】
具体的に、16.5mol%のイオン化脂質を含む場合、比較例の製造装置で製造した脂質ナノ粒子のPDIは0.25±0.08であるが、製造例の製造装置で製造した脂質ナノ粒子はPDIが0.15±0.01であり、
図5のように均一な大きさの脂質ナノ粒子を製造したことを確認した。
【0126】
また、実施例2は、イオン化脂質の含有量を高め、本発明の製造装置を用いて製造したものであり、PDI値が0.08±0.03で、0.2以下であることを確認した。
【0127】
実施例3および比較例2は、mRNAを異にして同様に製造したものであり、実施例3はPDIが0.15であり、比較例2は0.24であることが確認され、製造された粒子の直径の均一性において相違があることを確認した。
【0128】
実験例2
SHM Mixing Evaluation
水相溶液と第1油相溶液との撹拌程度を確認するため、代替実験を行った。前記実験を通じて、水相溶液内のmRNAおよび第1油相溶液内のイオン化脂質間の結合を確認した。
【0129】
具体的に、水相溶液の代わりに、DI WaterにロダミンB(Rhodamine B)を0.015w/w%で混合して水相溶液を製造し、第1油相溶液の代わりに、エタノールにロダミンB(Rhodamine B)を0.015w/w%で混合して油相溶液で製造した。
【0130】
前記水相溶液および油相溶液をそれぞれ第1チャンネルおよび第2チャンネルに注入した。前記各チャンネルへの注入時に、流量および流量比は、下記の通りである。
【0131】
【0132】
前記混合溶液を第1チャンネルおよび第2チャンネルに注入した後、流量比の相違による混合割合指数(mixing index rate、%)を測定した。
【0133】
下記のような指数(Index)イメージ分析方法を用いた。
1 撮影されたイメージファイルをImage Jを用いてGrey Scaleに変換
2 Grey Scaleに変換されたイメージ8Bitに転換
3 背景Intensityフィルタリング作業
4 下記式を用いて、ピクセル別にIntensity分析およびIndex計算
【0134】
【0135】
【0136】
水相溶液と油相溶液とを1:1の流量比で混合した場合、3回の混合モジュールを通過して、82%の混合割合指数を示しているが、1:1の割合で混合した場合、混合程度が相対的に低いため、これを、実際に脂質ナノ粒子を製造するための水相溶液および油相溶液として用いる場合、水相溶液内のmRNAと第1油相溶液のイオン化脂質とが充分に結合しない可能性があることを意味する。
【0137】
これにより、実験によっては3:1ないし9:1の流量比で水相溶液と油相溶液とを混合して製造する場合、第3混合モジュールを通過して、前記溶液の混合程度が各々87%および95%となり、高い水準で混合されることを確認した。前記実験を通じて、水相溶液と第1油相溶液とを混合するための好ましい流量比は、3:1ないし9:1であることを確認することができる。
【0138】
以上で本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も、本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、脂質ナノ粒子(LNP)の製造方法およびその製造装置に関するものである。
【符号の説明】
【0140】
100 第1チャンネル
100’ 第1チャンネル
200 第2チャンネル
200’ 第2チャンネル
300 撹拌チャンネル
300’ 撹拌チャンネル
310 混合モジュール
310’ 混合モジュール
311 撹拌部
311’ 撹拌部
312 非撹拌部
312’ 非撹拌部
400 第3チャンネル
500 流出チャンネル
500’ 流出チャンネル
【国際調査報告】