(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】複合材料の成形方法における離型フィルムとしてのポリメチルペンテンフィルムの使用
(51)【国際特許分類】
B29C 70/34 20060101AFI20240328BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B29C70/34
B29C43/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564102
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060621
(87)【国際公開番号】W WO2022223733
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キー, ロス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴファン, アンヌ-リーズ
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AJ03
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FF06
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ38
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ03
4F205HA08
4F205HA25
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HT20
(57)【要約】
本発明は、複合材料を成形するための方法における離型フィルムとしての単層ポリメチルペンテンフィルムの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料を成形するための方法における離型フィルムとしての単層ポリメチルペンテンフィルムの使用であって、前記方法が、
(a)フィルム間に複合材料を収容するポケットを形成することにより、上側ポリメチルペンテンフィルムと下側ポリメチルペンテンフィルムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)前記上側ポリメチルペンテンフィルム及び前記下側ポリメチルペンテンフィルムを前記複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、前記層状構造体に熱又は力が加えられるまで前記複合材料が前記上側ポリメチルペンテンフィルムと前記下側ポリメチルペンテンフィルムとの間で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に、前記複合材料の粘度を下げるか、又は前記フィルムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内で前記層状構造体を予熱すること;
(d)隙間により隔てられた、雄型と対応する雌型とを含むプレスツール内に前記層状構造体を配置することであって、前記雄型及び前記雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有すること;
(e)前記雄型と前記雌型との間の隙間を閉じることにより、前記雄型と前記雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(f)前記層状構造体の粘度が成形形状を維持するのに十分なレベルに達するまで、前記雄型及び前記雌型を閉位置で維持すること;
を含む、使用。
【請求項2】
前記ポリメチルペンテンフィルムが、
・約205℃以上、好ましくは210℃以上の溶融温度(T
melt)、
・約10ミクロン~約200ミクロン、特には約20ミクロン~約150ミクロン、特には約30ミクロン~約80ミクロンの範囲の厚さ(t)、
・約400~約900MPa、好ましくは約550~約850MPaの範囲の弾性率(E)、
・約10~約50MPa、好ましくは約15~約30MPaの範囲の引張強さ(σ)、及び
・周囲条件で約8mm/秒の速度で縦方向又は横方向のいずれかに、約50~約550%、好ましくは110~約500%、特には約150~約450%の範囲の破断伸び(ε)、
を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
工程(e)が、前記鋳型の間により小さな隙間が形成されるように、前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を部分的に閉じることを含み、このより小さな隙間がその後特定の時間又は粘度に到達した後に閉じられる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記雄型及び前記雌型が周囲温度よりも高い温度で維持される、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記雄型及び前記雌型が100℃より高い温度に維持される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記雄型及び前記雌型が約120℃~約160℃の温度に維持される、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記雄型及び前記雌型が約150℃及び約190℃の温度に維持される、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリメチルペンテンフィルムがリサイクルフィルムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
工程(e)が、前記雄型及び前記雌型を前記複合材料の軟化点よりも高い温度に維持しながら前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を約0.7mm/秒~約400mm/秒の速度で閉じることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
工程(b)が、前記上側フィルムと前記下側フィルムとの間に少なくとも約670mbarの真空圧力を加えることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記雄型及び前記雌型が、約1分間~約60分間閉位置で維持される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記上側フィルム及び前記下側フィルムが、上部フレーム、中央フレーム、及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、この中で、
前記下側フィルムは、前記底部フレームと前記中央フレームとの間に保持されており、
前記上側フィルムは、前記中央フレームと前記上部フレームとの間に保持されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記中央フレームがアセンブリに真空源を供給する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記上側フィルム及び前記下側フィルムが、上部フレーム及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、前記下側フィルム及び前記上側フィルムの両方が前記底部フレームと前記上部フレームとの間に保持される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記層状構造体が、自動化された手段によって前記プレスツール及び任意選択的な加熱装置の中に配置される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記複合材料が、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維、及びこれらの組み合わせから選択される材料の構造繊維を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記複合材料が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択されるバインダー又はマトリックス材料を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維強化ポリマー複合材料は、多くの産業(航空宇宙、自動車、船舶、工業、建設、及び多様な消費者製品を含む)で広く使用されており、軽量でありながらも特に過酷な環境での高い強度及び耐食性を示すため、選ばれることが多い。繊維強化ポリマー複合材料は、典型的には、予め含浸された材料又は樹脂注入プロセスのいずれかから製造される。
【0002】
予め含浸された材料、又は「プリプレグ」は、一般的には硬化性マトリックス樹脂(エポキシなど)で含浸された繊維(炭素繊維など)を指す。プリプレグ中の樹脂の含有率は比較的高く、典型的には40体積%~65体積%である。プリプレグの複数のプライは積層するための大きさに切断され、その後引き続き組み立てられて成形ツールで成形され得る。プリプレグを成形ツールの形状に合わせることが簡単にはできない場合には、成形面の形状に徐々に変形させるためにプリプレグに熱がかけられる場合がある。繊維強化ポリマー複合材料は、樹脂注入技術を含む液体成形プロセスによって製造することもできる。典型的な樹脂注入プロセスでは、バインダーで結合した乾燥繊維がプリフォームとして鋳型内に配置され、その後液体マトリックス樹脂がその場で直接注入(injection、又はinfusion)される。注入(injection、又はinfusion)後、樹脂が注入されたプリフォームが硬化されることで、完成した複合物品が得られる。
【0003】
両方のタイプの材料に関して、複合材料の三次元成形(shaping)(又は成形(molding))のプロセスは、最終的に成形された製品の外観、特性、及び性能に重要である。プリフォームはハンドレイアッププロセスを使用して精緻な形状へと成形されることが依然として一般的であり、これには時間がかかり、パーツごとのばらつきが大きくなることが多い。複合材料を成形するための、他のそれほど手作業ではない方法も存在するものの(パーツ形成を助けるためにピン、ロボット、及び/又はアクチュエータを使用する場合もある真空形成法など)、そのような方法は独自の欠点及び短所を有している。加えて、そのような方法は時間がかかることが多く、複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性が考慮に入れられていない。更に、そのようなプロセスの製品は、依然として皺及びその他の欠陥を有する傾向がある。
【0004】
処理時間、部品ごとのばらつき、及び製品汚染を含む複合材料処理の潜在的な欠点を考慮して、より速く、改善された、より信頼性の高いアセンブリ及び方法を開発する必要性が依然として存在する。レオロジー挙動及び硬化特性を考慮し、可能であれば、既存の装置(例えば金属スタンプ又はプレス)を最大限に活用できる方法を提供することも望ましい。
【0005】
二重ダイヤフラム機械的熱成形プロセスを実行する複合材料の成形方法は、環境汚染物質から複合材料を隔離するためのアセンブリと、当該技術分野で公知の他の方法の欠点や欠陥に対処するだけでなく複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性も考慮し、更に既存のインフラ及び装置を使用する可能性も可能にする成形プロセスとを提供することを目標として、開発に成功した。この方法は、複雑な三次元複合構造体を自動化された方法で製造するための効果的且つ効率的な手段を提供する。したがって、三次元複合構造体は、迅速に、繰り返し、そして大規模で製造することができる。
【0006】
例えば、このようにしてこの二重ダイヤフラム成形技術は急速に進化してきており、本格的な自動車製造への使用が可能になった。
【0007】
様々な部品の軽量化の必要性がますます高まっているため、一連の自動車市場における複合材料の量は増加し続けている。同様に、航空宇宙市場とアーバンエアモビリティ(UAM)市場における複合材料の量は、今後10年間で大幅に増加すると予測されている。この需要の高まりに応えるためには、部品の製造速度を高める必要がある。したがって、相手先商標製品製造業者(OEM)は、将来の速度目標を達成するために、圧縮成形など速度に対応可能な製造技術にますます注目してきている。
【0008】
しかしながら、自動車、UAM、及び航空宇宙の市場では、技術的な特殊性、並びに具体的な速度及び性能の要件が必ずしも同じであるとは限らない。特に、航空宇宙及びUAMの市場では、硬化温度Tcureが通常約150~約190℃に含まれる、より高温硬化/高性能の樹脂化学物質が求められている。
【0009】
二重ダイヤフラム機械的プロセスを使用する方法は、ダイヤフラムを備える。この文脈では、「ダイヤフラム」という用語は、2つの異なる物理的領域を分割又は分離する任意の障壁を指す。また、外部空間及び隔離された内部空間(例えば封入ポケット内の領域と封入ポケットの外側の領域)を画定する1つ以上のダイヤフラムのアセンブリを指す「ダイヤフラム構造体」という用語も使用される。一般に、ダイヤフラムを製造するために使用される材料は特に限定されず、例えば、ゴム、シリコーン、プラスチック、熱可塑性プラスチック、又は同様の材料であってよく、或いはプラスチック層若しくは弾性層から選択されるフィルムを含むことができる。ダイヤフラムは、単一の材料から構成されていてもよく、或いは例えば層状に配置された複数の材料を含んでいてもよい。
【0010】
ダイヤフラムとして使用されるフィルムが存在し、これは1つ以上の層を含む。しかしながら、これらのフィルムは、特に航空宇宙及びUAMの市場での使用を妨げる可能性のある大きな制約や低い性能を有する場合がある。特に、これらの市場で使用するには溶融温度が低すぎて達成可能な硬化温度範囲(<150℃)が制限され、これらは熱的能力と機械的性能に限界がある。特に、これは、約150℃~約200℃に含まれる所定のTcureで複合材料部品を形成する際にフィルムの溶融及び/又は破損を引き起こす可能性がある。
【0011】
更に、多層フィルムは使用しにくい。特に、不均衡な多層組成を有する特定の既存のフィルムは、組み立て中にフィルムのカールも引き起こし、プロセスの堅牢性と使いやすさを制限する。加えて、多層フィルムの使用は、これらのフィルムのリサイクルの可能性を制限し、或いは少なくともより複雑で費用が掛かるプロセスを構成する必要がある。
【0012】
したがって、最終的な部品の熱的及び機械的性能を損なうことなしに、視覚的に良好な表面仕上げを示し、且つプロセスのタクトタイムを大幅に短縮する、複雑な構造の複合材料部品を形成するための高温二重ダイヤフラム機械的プロセスで使用される、拡張された温度範囲を示すフィルムが依然として必要とされている。
【0013】
これらの要件に加えて、これらのフィルムに望まれる特性の1つは、自己剥離能力である。しかしながら、高温では、フィルムが複合材料部品に貼り付く欠点を有する場合があり、これは特に表面仕上げの低下をもたらす可能性がある。
【0014】
本開示は、これらの欠点に対処するために、(個別に及びまとめて)複合材料を成形するための二重ダイヤフラム機械的熱成形プロセスを使用する方法における特定のフィルムの使用を提供する。
【0015】
出願人は、高温二重ダイヤフラム成形(DDF)用の離型フィルムとして、単一のポリマー、すなわち単層のポリメチルペンテン(PMP)フィルムを使用すると、複雑な構造の複合材料部品を得ることが可能になり、それが幅広い温度範囲にわたって使用することができ、そのため自動車市場と航空宇宙市場の両方でダイヤフラムとして使用できることを見出した。更に、このポリメチルペンテンフィルムは、表面の空隙や織りの歪みの兆候なく、及びフィルムの破損なしに、或いはフィルムの完全性を維持しながら、硬化後に硬化した複合材料部品の視覚的に優れた表面仕上げを提供する。
【0016】
加えて、このPMPフィルムは、自己剥離が容易であるという利点を有しており、これにより、硬化後の複合材料からフィルムへ、及び/又はフィルムから複合材料への転写及び/又は汚染がないようにすることができる。
【0017】
したがって、本発明は、複合材料を成形するための方法における離型フィルムとしての単層ポリメチルペンテンフィルムの使用に関し、前記方法は、
(a)フィルム間に複合材料を収容するポケットを形成することにより、上側ポリメチルペンテンフィルムと下側ポリメチルペンテンフィルムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)上側ポリメチルペンテンフィルム及び下側ポリメチルペンテンフィルムを複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、層状構造体に熱又は力が加えられるまで複合材料が上側ポリメチルペンテンフィルムと下側ポリメチルペンテンフィルムとの間で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に、複合材料の粘度を下げるか、又はフィルムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内で層状構造体を予熱すること;
(d)隙間により隔てられた、雄型と対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を配置することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有すること;
(e)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(f)層状構造体の粘度が成形形状を維持するのに十分なレベルに達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持すること;
を含む。
【0018】
本発明によれば、ポリメチルペンテンフィルムは自己剥離性である。すなわち、フィルムを最終的に成形された複合材料部品から容易に剥がすことができ、及び/又は成形されたアセンブリを工具から容易に剥がすことができる。これにより、工具の摩耗を低減し、成形の合間にモールドシーラー又は離型剤を塗布する必要がなくなるなど、工具を保護する上で明白な利点がもたらされ、タッチ作業及び最終部品のコストが削減され、したがって本格的な複合構造体の製造が容易になる。
【0019】
典型的には、本発明で使用されるポリメチルペンテンフィルムは、少なくとも約99重量%、特には少なくとも99.25重量%のポリ(4-メチル-1-ペンテン)を含む。ポリメチルペンテンフィルムは、熱安定剤、加工安定剤、帯電防止剤、潤滑剤などのポリマー添加剤も含み得る。
【0020】
本発明によれば、ポリメチルペンテンフィルムは、プレスを使用する複雑な複合構造体の高温二重ダイヤフラム成形(DDF)に使用される。このフィルムは、広い硬化温度範囲にわたって、すなわち硬化温度Tcureが約120~約200℃の範囲で使用できるという利点を有しており、そのため、自動車市場の仕様に対応する約120~約170℃、特に約120~約150℃の範囲と、航空宇宙及びUAMの市場の仕様に対応する約150~約190℃、特に約160~約190℃の範囲の両方を網羅することができる。
【0021】
このように、本発明において離型フィルムとして使用されるポリメチルペンテンフィルムは、特有の特性を示す。
【0022】
約120~約200℃に含まれる所定の硬化温度Tcureにおいて、フィルムは、複合材料部品の形成中の溶融及び/又は破損を確実になくすこと、及び十分な剥離性能を確保することができる。したがって、いくつかの実施形態では、ポリメチルペンテンフィルムは、約205℃以上、好ましくは210℃以上の溶融温度を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリメチルペンテンフィルムの厚さ(t)は、複合材料部品の形状に依存し、約10ミクロン~約200ミクロン、特には約20ミクロン~約150ミクロン、例えば25ミクロン~約100ミクロンの範囲である。好ましくは、フィルムは、約30ミクロン~約80ミクロンの厚さを有する。この厚さにより、フィルムの望ましい機械的性能を得ることができ、予熱中のフィルムの皺や複合材料部品の形成中の破損を防ぐことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポリメチルペンテンフィルムは、約400~約900MPa、好ましくは約550~約850MPaの範囲の弾性率(E)を有し、約10~約50MPa、好ましくは約15~約30MPaの範囲の引張強さ(σ)を有する。このことは、複合材料部品を形成する際のフィルム破損の防止に役立ち得る。
【0025】
約120~約200℃に含まれる所定のTcureでの形成中にフィルムが破損せずに望まれる部品形状を確実に達成できるようにするために、本発明で使用されるフィルムは特定の破断伸び(ε)を有する。いくつかの実施形態では、ポリメチルペンテンフィルムは、周囲条件で約8mm/秒の速度で縦方向又は横方向のいずれかに、約50~約550%、好ましくは110~約500%、特には約150~約450%の範囲の破断伸び(ε)を示し、ここでの周囲温度Tambientは、典型的には約20~約25℃である。
【0026】
複合材料部品のサイズを制限しないために、このようなフィルムは十分に大きな幅を有する。いくつかの実施形態では、ポリメチルペンテンフィルムの製品幅は約1.2m以上である。好ましくは、この製品幅は約1.5m以上である。
【0027】
したがって、好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるポリメチルペンテンフィルムは、
・約205℃以上、好ましくは約210℃以上の溶融温度(Tmelt)、
・約10ミクロン~約200ミクロン、特には約20ミクロン~約150ミクロン、特には約30ミクロン~約80ミクロンの範囲の厚さ(t)、
・約400~約900MPa、好ましくは約550~約850MPaの範囲の弾性率(E)、
・約10~約50MPa、好ましくは約15~約30MPaの範囲の引張強さ(σ)、及び
・周囲条件で約8mm/秒の速度で縦方向又は横方向のいずれかに、約50~約550%、好ましくは110~約500%、特には約150~約450%の範囲の破断伸び(ε)、
を有する。
【0028】
溶融温度を含むフィルムの熱特性は、例えばTA Instruments Q2000などの示差走査熱量計を使用することによって、ASTM D3418に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定することができる。
【0029】
引張強さ、引張弾性率、及び破断伸びなどのフィルムの機械的特性は、例えばZwick Z250試験機を使用することによって、ASTM D882-09に準拠した薄膜引張強さ及び伸び試験(ZM45)を使用して決定することができる。典型的には、ポリメチルペンテンは、ポリプロピレン及びポリエチレン用の汎用装置によって得ることができる熱可塑性ポリオレフィンである。例えば、ポリメチルペンテンは、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形、押出、及びワイヤーコーティングなどの標準的な熱可塑性加工方法を使用して加工することができる。更に、ポリメチルペンテンフィルムは、ブロー成形又は押出ラミネート技術によって得ることができる。そのようなプロセスは当業者に公知である。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ポリメチルペンテンフィルムは、本発明の特許請求される複合材料の成形方法においてリサイクルして再利用することができる。例えば、使用済みのポリメチルペンテンフィルムが最終的な複合材料から剥離された後、このフィルムが顆粒化され、その後、典型的には当該技術分野で公知の押出機を用いて押し出され、複合材料の成形方法、特に上述した方法において使用され得る新たなフィルムを得ることができる。
【0031】
本明細書において使用される「実質的に平面」という用語は、他の2つの平面よりも明らかに大きい(例えば少なくとも2、3、4、又は5倍、又はそれ以上大きい)1つの平面を有する材料を指す。いくつかの実施形態では、実質的に平面の材料は、最も大きい平面に沿って厚さの変動を有する。例えば、複合材料は、パッドアップ(すなわちプライの量の局所的な増加)又はプライドロップ(すなわちプライの量の局所的な減少)、材料の変化、及び/又は複合材料が例えば生地へ移行する領域などの強化材料を含んでいてもよい。別の実施形態では、実質的に平面の材料は、複合材料の領域に沿って最小限しか厚さの変動を示さない。例えば、実質的に平面という用語は、複合材料が、面積の90%超で+/-15%以下の全体の厚さの変動を有することを意味し得る。いくつかの実施形態では、厚さの変動は、面積の90%超で±10%以下である。実質的に平面は、完全に平らな材料を示すことを意図しておらず、凹状及び/又は凸状にわずかな変動を有する材料も含まれる。
【0032】
本発明との関係において、複合材料を成形する方法は、フレーム付きアセンブリ又はフレームレスアセンブリのいずれかを使用することができる。いくつかの実施形態では、この方法は、フレーム付きアセンブリの使用を含む。上側フィルム及び下側フィルムは、上部フレームと、中央フレームと、底部フレームとを含む構造フレームによって一体に保持され、この中で、
下側フィルムは、底部フレームと中央フレームとの間に保持されており、
上側フィルムは、中央フレームと上部フレームとの間に保持されている。
【0033】
好ましい実施形態では、この方法はフレーム付きアセンブリの使用を含む。
【0034】
特定の実施形態では、複合材料を収容するポケットは、フィルム間に保持された複合材料を収容する構造フレームによって画定される。特定の実施形態では、実質的に平面状の複合材料は、上部フィルムと下部フィルムとの間に配置される。これによって、フィルム間に複合材料を収容するポケットが形成される。例えば、上面と下面とを有する下側フィルムは、その下面が底部フレームの周囲の上に接触するように配置することができる。その後、複合材料を下側フィルムの上に敷き、次いで中央フレームを下側フィルムの上面に配置し、続いて上側フィルムを配置し、最後に上側フィルムに対して上部フレームを配置することができる。この配置は、複合材料層を収容する下側フィルムと上側フィルムとの間のポケットを形成する。いくつかの実施形態では、中央フレームは除かれてもよい。そのような上部、中央(存在する場合)、及び底部のフレームは、例えばクランプ又は他の固定手段を周囲に所定の間隔で配置することによって、ポリメチルペンテンフィルムの形状を維持する周囲を画定する。そのような上部、中央、及び底部のフレームは、成形される複合材料のサイズ及び形状に基づいて製造することができる。任意選択的には、従来の金属又は複合プレスツール(例えばLangzauner又はSchubertなどの製造業者からのもの)で使用するための予め製造された構造支持フレームが当該技術分野で公知である。
【0035】
いくつかの実施形態では、中央フレームは、空気を除去するための手段、例えば真空口又は他のバルブを含んでいてもよい。真空口(存在する場合)は、真空源(例えば真空ポンプ)に接続される。いくつかの実施形態では、複合材料を収容するポケットは、封入ポケット、例えば気密封入ポケットであってもよく、それによって構造フレームは複合材料の周囲全体に配置され、空気又は汚染物質がポケットに入ることを妨げる。
【0036】
上側フィルムと下側フィルムは複合材料と密着して層状構造を形成する。これは、例えば上側フィルムと下側フィルムとの間に真空圧力を加えることにより達成することができる。別の実施形態では、これは、空気を除去するために、上側及び/又は下側のフィルムに物理的に圧力を加えることによって(例えば手で又は機械的手段によって)達成することができる。真空圧力は、例えば、成形性能を妨げる可能性のある残留空気の大部分を抜き取り、その結果複合材料(又はその構成要素)又はフィルムの変形又は皺を最小限に抑えるために、特定の場合では望ましいことがある。また、真空は、フィルムの皺も防止し、アセンブリ全体の安定性も高める。真空圧力の使用は、繊維の整列の維持を支援すること、処理中及び成形中の材料を支持すること、並びに/又は高温において望まれる厚さを維持することも補助することができる。本明細書で使用される「真空圧力」という用語は、1気圧未満(又は1013mbar未満)の真空圧力を指す。いくつかの実施形態では、フィルム間の真空圧力は、約1気圧未満、約800mbar未満、約700mbar未満、又は約600mbar未満に設定される。いくつかの実施形態では、フィルム間の真空圧力は約670mbarに設定される。この時点で、真空によってであるか例えば機械的手段などの他の手段によってであるかに関わらず、複合材料はフィルム間にしっかりと保持され、その結果熱又は力が加えられるまで動かない状態にされる。そのような動かない状態の層状構造体は、例えば層状構造体内に保持された複合材料がX軸及びY軸を横切って十分な張力を有するその位置で動かない状態で維持されるだけでなく、インデックス付けもされるため、有利な場合がある。すなわち、複合材料は、動かない状態の層状構造体内のフィルム間の特定の位置に(例えば自動化された手段によって)配置されてもよい。その後、このインデックス付けされた動かない状態の層状構造体は、プレスツールが複合材料の所定の領域に一貫してはめ込まれるように、プレスツール(本明細書の以下でより詳細に説明される)の特定の位置に(例えば自動化された手段により)配置することができる。そのため、各複合材料の隙間を個別にインデックス付けする必要なく成形製品の複数のコピーを製造するために、動かない状態の層状構造体を信頼性高く使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、複合材料は工程(a)の前にパターンに応じて機械加工されてもよい。
【0038】
層状構造体は、場合によっては加熱装置内で予熱されてもよい。層状構造体は、手作業で、又は例えば自動化されたシャトルを使用するなどの自動化された手段によって、加熱装置内に配置することができる。この加熱装置は、金属又は複合材料製品の形成又は成形に使用できる任意のヒーター、例えば接触式ヒーター又は非接触式ヒーター(すなわちセラミック又は赤外線(IR)ヒーター)であってもよい。場合によっては、この予熱により、上側フィルム及び下側フィルムが軟化し、例えばその結果最終的に成形された製品の形成中にこれらがより柔軟になる。場合によっては、この予熱によって層状構造内に保持された複合材料が望まれる粘度又は温度になり、平坦な最初のレイアップから複雑な形状を形成できるようになる。予熱は、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、190℃を超える温度に加熱された加熱装置内で行うことができる。この温度は、例えば複合材料中の成分が何であるかに応じて調整することができる。そのような予熱は、例えば、プレスツールの加熱を最小化すること、及び/又は層状構造体がプレスツール内にある時間を最小化することが望まれる場合に有利である。
【0039】
最終成形製品を形成するために、層状構造体はプレスツール内に配置される。いくつかの実施形態では、プレスツールのどの部分にも真空圧力は加えられない。別の実施形態では、例えば層状構造体とツールとの間に閉じ込められている空気を除去するために、ツール表面が局所的に真空にされる。しかしながら、そのような実施形態では、真空は典型的には最終的に成形された製品の形状を形成するための力としては使用されない。層状構造体は、手作業で、又は例えば自動化されたシャトルを使用するなどの自動化された手段によって、プレスツールに配置することができる。このプレスツールは、通常雄型と雌型とを含み、これらは隙間によって隔てられている。各鋳型は、非平面状の成形面を有する。いくつかの実施形態では、雄型、雌型、又はその両方に離型剤が添加され得る。そのような離型剤は、例えば、まだ周囲温度を超える温度にある間に成形されたパーツを鋳型から取り出すのに有用な場合がある。いくつかの実施形態では、離型剤は必要とされない。成形面は固定されている。すなわち、これは再構成可能ではない。成形面も典型的には一致している。すなわち、雄型は雌型の逆にほぼ対応しており、いくつかの実施形態では完全に一致することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、閉じた際にこれらの間の厚さが変化するようにされている。特定の実施形態では、層状構造体は、雄型と雌型との間が特定の所定の距離で隙間に配置される。
【0040】
その後、層状構造体は、鋳型の間の隙間を閉じることによって、雄型と雌型との間で圧縮される(工程(e))。いくつかの実施形態では、これは、雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じて、鋳型の間により小さい隙間を形成することによって達成される。このより小さい隙間は、その後特定の時間又は粘度に達した後に閉じられる。「隙間を閉じる」は、Z軸に沿って所定の最終キャビティ厚が鋳型間で得られるように鋳型を圧縮することを意味すると理解される。最終キャビティ厚は、例えば鋳型が互いに対して停止する場所を制御することによって調整することができ、厚さの選択は鋳型を操作する者が行うことができ、これは最終的に成形された製品の性質に依存する。いくつかの実施形態では、最終的な空洞の厚さは実質的に均一である。すなわち、プロセスにより、厚さが5%未満しか変化しない両面が成形された最終製品が製造される。いくつかの実施形態では、プロセスにより、約4%未満、例えば、約3%未満、約2%未満、更には約1%未満で変動する厚さを有する最終的に成形された製品が製造される。別の実施形態では、雄及び雌のツールは、X軸及びY軸を横切って意図的に変化するキャビティ厚を与えるように構成されていてもよい。
【0041】
特定の実施形態では、雄型及び雌型は周囲温度よりも高い温度で維持される。例えば、それらは、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃、更にはそれ以上の温度、特に例えば約120℃~200℃の温度に維持され得る。この温度は、複合材料内の成分が何であるか(並びに粘度及び反応性)に応じて調整することができる。鋳型は、例えば複合材料で使用されるバインダー又はマトリックス材料の軟化点を超える温度で維持することができる。いくつかの実施形態では、複合材料は熱硬化性材料を含み、鋳型は約100℃~200℃の温度に維持される。複合材料中のバインダー又はマトリックス材料は、周囲温度(20℃~25℃)では固相であるが、加熱すると軟化する。この軟化により、プレスツール内で複合材料を成形し、平坦なプリフォームを最終的な部品の形状に一致させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、特に自動車市場向けの硬化複合材料部品については、鋳型は約120℃~160℃の温度に維持される。いくつかの別の実施形態では、特にUAM及び航空宇宙の市場向けの硬化複合材料については、鋳型は約150℃~約190℃の温度に維持される。
【0043】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、成形された構造体を形成するために、所定の時間、閉位置で維持される。例えば、いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、望まれる粘度又は温度に到達するまで閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、複合材料の粘度が約
1.0×108mPa未満になるまで鋳型は閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、バインダー又はマトリックス材料の架橋が開始するまで閉位置で維持される。別の実施形態では、鋳型は加熱されないが、材料が成形された形状を維持するのに十分な時間閉位置で維持される。鋳型は、例えば約1分間~約60分間、例えば約5分間~約20分間、又は例えば約1分間~約10分間、閉位置に維持することができる。鋳型が閉位置で維持される時間の長さは、複合材料の素材が何であるか、及び鋳型の温度などの多くの因子に依存する。
【0044】
特定の実施形態では、雄型は層状構造体を通って動かされ、雌型は動かないままである。別の特定の実施形態では、雌型は層状構造体を通って動かされ、雄型は動かないままである。別の実施形態では、雌型は動かないままではなく、雄型よりも遅い速度で移動する(雄型が依然として主に形成面として機能するように)。また別の実施形態では、両方の鋳型がほぼ同じ速度で移動して、鋳型間の隙間を閉じる。鋳型は、複合材料を望みの形状に変形/成形するのに十分な速度及び最終圧力で動かされる。例えば、鋳型は、約0.4mm/秒~約500mm/秒、特に約0.7mm/秒~約400mm/秒、特に約1mm/秒~約350mm/秒、例えば約5mm/秒~350mm/秒又は約50mm/秒~300mm/秒の速度で動かされてもよい。更に、鋳型は、約30psi~約1000psi、特に約100psi~約800psi、又は約250psi~約750psiの最終圧力まで動かされてもよい。いくつかの実施形態では、鋳型は、皺の形成及び構造繊維の歪みを回避しながら最終的に成形された製品の厚さを制御するために選択された速度及び最終圧力で動かされる。更に、鋳型は、最終的に成形されたパーツの迅速な形成を可能にするために選択された速度及び最終圧力まで動かされてもよい。
【0045】
その後、雄型と雌型の間の隙間が開かれる。成形された構造体がプレスツール上に残っている間、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料のガラス転移温度未満まで冷却することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料のガラス転移温度未満に冷却される前にプレスツールから取り出される。本発明のポリメチルペンテン離型フィルムの使用のため、成形された構造体はプレスツールからいっそう容易に除去される。バインダー又はマトリックス材料がガラス転移温度未満に冷却されると、バインダー又はマトリックス材料は固相に戻り、複合材料は新しく形成された形状を保持する。複合材料がプリフォームの場合、そのようなプリフォームは、その後の樹脂注入のためにその望ましい形状を保持する。
【0046】
成形された構造体が得られた後、クリップ及び/又は留め具が外され、様々なフレームがフィルムから取り外される。その後、フィルム及び硬化複合材料部品が取り出され、フィルムが硬化複合材料部品から剥離される。
【0047】
本発明によれば、ポリメチルペンテンフィルムは自己剥離性である。したがって、フィルムを最終成形部品から容易に剥離することで、表面の空隙や織りの歪みの兆候なしに、硬化後の成形された複合材料部品の視覚的に優れた表面仕上げを得ることができる。その一方で、フィルムはリサイクルして、二重ダイヤフラム機械的熱成形プロセスのその後のサイクルで再利用することができる。
【0048】
更に、必要に応じて、最終的に成形された製品上にフィルムが一時的に保持されてもよい。例えば、更なる処理、すなわち仕上げ/塗装などの前に、例えば汚染などの環境から部品を保護するために、一時的なフィルムが望まれる場合がある。
【0049】
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、構造繊維とバインダー又はマトリックス材料との集合体を指す。構造繊維は、有機繊維、無機繊維、又はそれらの混合物であってもよく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えばケブラー)、高弾性ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維、ポリp-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、他のセラミック繊維、玄武岩、天然繊維、及びこれらの混合物などの市販の構造繊維が挙げられる。なお、高強度複合構造体を必要とする最終用途では、典型的には高い引張強さ(例えば≧3500MPa又は≧500ksi)を有する繊維が用いられるであろう。そのような構造繊維は、例えば、一方向テープ(ユニテープ)ウェブ、不織マット又はベール、織り生地、編み生地、ノンクリンプ生地、繊維トウ、及びこれらの組み合わせを含む、任意の従来の構成における繊維材料の1つ以上の層を含んでいてもよい。構造繊維は、複合材料の全体若しくは一部にわたる1つ若しくは複数のプライとして、又はパッドアップ若しくはプライドロップの形で、局所的な厚さの増加/減少を伴って含まれる場合があることに留意すべきである。
【0050】
繊維質材料は、バインダー又はマトリックス材料によって所定の位置で保持及び安定化され、その結果繊維質材料の配列が維持され、ほころび、ほつれ、引き裂け、座屈、皺、又はその他の繊維質材料の完全性の低下なしに、安定化された材料の保管、輸送、及び取り扱い(例えば成形又は他の変形)を行うことができる。少量のバインダー(例えば典型的には約10重量%未満)によって保持された繊維質材料は、典型的には繊維質プリフォームと呼ばれる。そのようなプリフォームは、RTMなどの樹脂注入用途に適しているであろう。繊維質材料は多量のマトリックス材料によって保持されていてもよく(マトリックスを含浸させた繊維を指す場合、一般には「プリプレグ」と呼ばれる)、そのため樹脂を更に添加せずに最終製品を形成するのに適しているであろう。特定の実施形態では、バインダー又はマトリックス材料は、少なくとも約30%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、又は少なくとも約45%の量で複合材料中に存在する。
【0051】
バインダー又はマトリックス材料は、通常、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択される。プリフォームを形成するために使用される場合、そのような熱可塑性ポリマー及び熱硬化性樹脂は、粉末、スプレー、液体、ペースト、フィルム、繊維、及び不織ベールなどの様々な形態で導入することができる。これらの様々な形態を利用するための手段は、一般的に当該技術分野で公知である。
【0052】
熱可塑性材料としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ芳香族、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート)、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料は、エポキシド又は硬化剤に対する反応性を有するアミン又はヒドロキシル基などの1つ以上の反応性末端基も含んでいてもよい。
【0053】
熱硬化性材料としては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ホルムアルデヒド縮合樹脂(ホルムアルデヒド-フェノール樹脂を含む)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、芳香族ジアミン、芳香族一級モノアミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、及びポリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物のモノ又はポリグリシジル誘導体であってもよい。エポキシ樹脂は、多官能性(例えば二官能性、三官能性、及び四官能性エポキシ)であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーと熱硬化性樹脂との組み合わせが複合材料に使用される。例えば、特定の組み合わせは、流動制御と可撓性に関して相乗効果で作用し得る。このような組み合わせでは、熱可塑性ポリマーはブレンドに対して流動制御と可撓性を付与し、典型的には低粘度で脆い熱硬化性樹脂を支配する。
【0055】
上述した特定のポリメチルペンテンフィルムの使用は、例えば、そのX軸及びY軸を横切る十分な張力で複合材料を固定位置に維持することにより、複合材料の成形を支援するだけでなく、重要な追加の機能的利点も与える。例えば、この配置は、空気中又は工具機械上の不純物などの環境汚染物質から複合材料ブランクを保護する。この保護により、二次元のプリフォームを三次元の複雑な形状に加工するために、(保護がなければ扱うことができない)従来のプレスツールを使用できるようになり、真空成形又は再構成可能なツール技術よりも大幅に複雑な三次元の形状が可能になる。更に、二重ダイヤフラム配置を使用すると、プロセス全体から離型プロセスを排除することができる。
【0056】
したがって、本明細書に記載の二重ダイヤフラム機械的熱成形プロセスは、自動化された方法で二次元の平らなプリフォームから複雑な三次元複合構造体を製造するための効果的且つ効率的な手段を提供し、これは、広い温度範囲にわたって採用することができる離型フィルムとして単層ポリメチルペンテン(PMP)フィルムを使用することによって、自動車、UAM、及び航空宇宙の市場の両方に対して、表面の空隙や織りの歪みの兆候なしに、硬化後の硬化複合材料部品の視覚的に優れた表面仕上げを提供することが可能である。三次元複合構造体は、大規模で迅速に繰り返し製造することができる。例えば、三次元複合構造体は、望まれる部品及び複合材料の素材が何であるかに応じて、1~10分サイクル、又は5~20分サイクル、又は10~30分サイクル、又は20~60分サイクルで、実質的に平面状の複合材料ブランクから形成することができる。そのような迅速で繰り返し可能なプロセスは、ボンネット、トランク、ドアパネル、フェンダー、及びホイールウェルなどの自動車部品及びパネルの製造、並びにフレーム、リブ、スパー、及びドアなどの航空宇宙/UAMの部品の製造に適している。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、例示を目的としているにすぎず、添付の請求項の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0058】
実施例1:本発明による高温PMPフィルム及びエポキシプリプレグを使用する、フレーム付き二重ダイヤフラム機械的熱成形
76ミクロンのポリメチルペンテン(PMP)フィルム製の下側可撓性ダイヤフラムを、底部フレームを保持するベッド上に配置した。このフィルムは、表1で報告されている特徴を示す。
【0059】
【0060】
炭素繊維強化エポキシ製の複合材料ブランク(Solvay、旧Cytec Industries、CYCOMTM EP2750)を下側可撓性ダイヤフラムの上に置き、続いて真空口を有する中央フレームを置いた。その後、下側可撓性ダイヤフラムと同じフィルムで作られている上側可撓性ダイヤフラムを、中央フレーム及び複合材料ブランクを覆うように配置した。上側、中央、及び下側のフレームを一緒にクランプ固定し、それにより、真空気密シールと、下側可撓性ダイヤフラム、上側可撓性ダイヤフラム、及び中央フレームで囲まれた封入ポケットとを形成した。その後、真空圧力が最低670mbarに到達するまで真空引きして、上側可撓性ダイヤフラムと下側可撓性ダイヤフラムとの間から空気を除去した。その時点で、複合材料ブランクは両方のダイヤフラムによってしっかりと支持され、動かない状態の層状構造体を形成した。
【0061】
その後、層状構造体をセラミック非接触式加熱装置の中へシャトルで動かし、そこで150℃まで加熱した。外側のフィルムの温度が最低130℃に到達した後、自動車のBピラー構造部品の形状に構成された、適合する雄型と雌型とを含むプレスツールの中にこれをシャトルで動かした。次いで、雌型を約4mm/秒(250mm/分)の速度で雄型に向かって動かした。雄型を動かないままにし、両方の鋳型を架橋が開始するまで180℃で保持した。成形された構造体をまだ熱いうちにプレスツールから取り外し、取り外し後に放冷した。複合材料ブランクを成形するプロセスは、開始から終了まで(すなわち下側可撓性ダイヤフラムの最初の配置から最終形状の形成まで)25分であった。
【0062】
長手方向ではフィルムの破損は観察されず、横方向では無視できる程度のフィルムの破損が観察された。更に、フィルムの皺は全く見られなかった。本発明によるPMPフィルムの離型性能は、冷却時に若干の自己剥離が見られるものの、非常に良好であった。更に、複合材料部品の表面仕上げは改善され、表面仕上げは光沢を有しており、フィルムから複合材料部品へ、又は複合材料部品からフィルムへの転写は観察されなかった。
【0063】
フィルムの熱特性は、示差走査熱量計TAQ2000を使用することにより示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。加熱/冷却/加熱手順を適用し、-30℃~300℃の温度範囲を10℃/分の冷却及び加熱速度でスクリーニングした。
【0064】
フィルムの機械的特性は、Zwick Z250試験機を使用してASTM D882-09に準拠して決定した。フィルムは、23℃且つ相対湿度50%の周囲条件で、約8mm/秒(500mm/分)の試験速度で縦方向及び横方向の両方で試験した。
【0065】
実施例2:比較例-高温ナイロンフィルム及びエポキシプリプレグを使用する、フレーム付き二重ダイヤフラム機械的熱成形
65ミクロンのナイロン(PA6,66)フィルム(Aerovac/Solvay、旧Cytec Industries、SV3000)製の下側可撓性ダイヤフラムを、底部フレームを保持するベッド上に配置した。
【0066】
炭素繊維強化エポキシ製の複合材料ブランク(Solvay、旧Cytec Industries、CYCOMTMEP2750)を下側可撓性ダイヤフラムの上に置き、続いて真空口を有する中央フレームを置いた。その後、下側可撓性ダイヤフラムと同じフィルムで作られている上側可撓性ダイヤフラムを、中央フレーム及び複合材料ブランクを覆うように配置した。上側、中央、及び下側のフレームを一緒にクランプ固定し、それにより、真空気密シールと、下側可撓性ダイヤフラム、上側可撓性ダイヤフラム、及び中央フレームで囲まれた封入ポケットとを形成した。その後、真空圧力が最低670mbarに到達するまで真空引きして、上側可撓性ダイヤフラムと下側可撓性ダイヤフラムとの間から空気を除去した。その時点で、複合材料ブランクは両方のダイヤフラムによってしっかりと支持され、動かない状態の層状構造体を形成した。
【0067】
その後、層状構造体をセラミック非接触式加熱装置の中へシャトルで動かし、そこで150℃まで加熱した。外側のフィルムの温度が最低130℃に到達した後、自動車のBピラー構造部品の形状に構成された、適合する雄型と雌型とを含むプレスツールの中にこれをシャトルで動かした。次いで、雌型を約4mm/秒の速度で雄型に向かって動かした。雄型を動かないままにし、両方の鋳型を架橋が開始するまで180℃で保持した。成形された構造体をまだ熱いうちにプレスツールから取り外し、取り外し後に放冷した。複合材料ブランクを成形するプロセスは、開始から終了まで(すなわち下側可撓性ダイヤフラムの最初の配置から最終形状の形成まで)25分であった。
【0068】
良好なフィルムの熱的及び機械的性能のため、フィルムの縦方向及び横方向の両方の向きで、フィルムの破損、溶融、及び/又は割れが無視できる程度であったことが観察できる。それでも、フィルムの引張強さが大きいことに起因して、部品表面に若干のフィルムの皺が見られた。しかしながら、DDF処理後、フィルムが硬化した部品表面に強い化学的接着を示したため、剥離性能は非常に劣っていた。そのため、部品表面の品質を定量化することはできなかった。
【0069】
実施例3:PMPフィルムのリサイクル
厚さ75ミクロンのポリ(4-メチル1-ペンテン)(PMP)フィルムを、3つの加熱ゾーンを備えた直径20mmのCollin単軸押出機(L/D=25/1)を通して造粒した。押出機の温度プロファイルは、ゾーン1~3について230、250、及び260℃に設定した。溶融温度は260℃であった。ロールを備えた冷却ロールに押出物を室温で通し、次いでScheer造粒機を使用して造粒した。次いで、回収した顆粒を、3つの加熱ゾーンを備えた直径30mmのCollin単軸押出機(L/D=25/1)を通して押し出す。押出機の温度プロファイルは、ゾーン1~3について230、250、及び260℃に設定した。溶融温度は260℃であった。押出物を、260℃に維持されたフィルムダイに通した後、50℃に維持されたローラー上にキャストし、続いて室温に設定された冷却ロール上にキャストした。得られたフィルムの厚さは3ミル(75μm)であった。
【0070】
フィルムの熱特性は、示差走査熱量計TAQ2000を使用することによって示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。加熱/冷却/加熱の手順を適用し、-30℃~300℃の温度範囲を10℃/分の冷却及び加熱速度でスクリーニングした。
【0071】
フィルムの機械的特性は、Zwick Z250試験機を使用してASTM D882-09に準拠して決定した。フィルムは、23℃且つ相対湿度50%の周囲条件で、約8mm/秒(500mm/分)の試験速度で縦方向及び横方向の両方で試験した。
【国際調査報告】