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特表2024-515099加熱制御方法および装置、ならびに電磁加熱式調理器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】加熱制御方法および装置、ならびに電磁加熱式調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
H05B6/12 328
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564124
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 IB2021061351
(87)【国際公開番号】W WO2022229695
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110482564.3
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110866515.X
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515264436
【氏名又は名称】ゼァージアン スーポア エレクトリカル アプライアンス マニュファクチャリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュンション ジュー
(72)【発明者】
【氏名】ゾーヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジエンホワ チェン
(72)【発明者】
【氏名】カイ カオ
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151CA01
(57)【要約】
加熱制御方法および装置、ならびに電磁加熱式調理器。本方法は、次のステップを備える。すなわち、電磁加熱式調理器具の目標出力を取得するステップ、目標出力が閾値出力よりも低いかどうかを判定するステップ、そうである場合、各制御サイクルにおいて起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように調理器を制御するステップ。起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2を含む駆動電流をトランジスタに供給するステップ、同時に、トランジスタの駆動端子における電圧値を取得するステップ、ならびに、この電圧値に基づいて、第一の駆動電流I1から第二駆動電流I2に切り替えるように駆動電流を制御するステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振加熱回路と、パワースイッチ・トランジスタとを備える電磁加熱式調理器に使用されるための加熱制御方法であって、次のステップ、すなわち、
前記電磁加熱式調理器の目標出力を取得するステップと、
前記目標出力が閾値出力よりも低いかどうかを判定するステップと、
前記目標出力が前記閾値出力よりも低い場合、各制御サイクルにおいて起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように、前記電磁加熱式調理器を制御するステップであって、前記起動フェーズでは、
前記パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2を含む駆動電流を前記パワースイッチ・トランジスタに提供するステップと、
前記パワースイッチ・トランジスタの駆動端子における電圧値を取得するステップと、 前記駆動端子の前記電圧値に基づいて、前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えるように前記駆動電流を制御するステップと
を含む、ステップと
を備えることを特徴とする、加熱制御方法。
【請求項2】
前記駆動端子の前記電圧値に基づいて、前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えるように前記駆動電流を制御するステップは、
前記駆動端の前記電圧値が、前記パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧よりも高い、第一の電圧閾値よりも高いかどうかを判定するステップと、
前記駆動端子の前記電圧値が前記第一の電圧閾値よりも高い場合、前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えるように前記駆動電流を制御するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の加熱制御方法。
【請求項3】
前記駆動電流が前記第二の駆動電流I2に切り替えられた後、前記駆動端子の前記電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定するステップと、
前記ミラー・プラトーが終了している場合、前記駆動端子の前記電圧値が第二の電圧閾値よりも高いかどうかを判定するステップと、
前記駆動端子の前記電圧値が前記第二の電圧閾値よりも高い場合、前記パワースイッチ・トランジスタの駆動モードを電流駆動から電圧駆動に切り替え、前記パワースイッチ・トランジスタに第一の駆動電圧Vaを供給することにより、飽和したオン状態で動作するように前記パワースイッチ・トランジスタを駆動するステップと
をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の加熱制御方法。
【請求項4】
前記駆動端子の前記電圧値に基づいて、前記ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定するステップは、
前記駆動電流が前記第二の駆動電流I2に切り替わって以降、第一の所定時間Tmが経過した時点から、前記駆動端子の前記電圧値が第二の所定時間Tp中に上昇を継続する場合、前記ミラー・プラトーが終了していると判定するステップ
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の加熱制御方法。
【請求項5】
前記加熱フェーズでは、前記パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクル中、第一の駆動電圧Vaが前記パワースイッチ・トランジスタに供給されことにより、飽和ターンオン状態で動作するように前記パワースイッチ・トランジスタを駆動させ、
前記停止フェーズでは、前記パワースイッチ・トランジスタが動作しないようにされる
ことを特徴とする、請求項1に記載の加熱制御方法。
【請求項6】
前記電磁加熱式調理器に電力を供給するために交流電源が使用されており、
AC電源の電圧ゼロクロス信号を取得するステップと、
前記電圧ゼロクロス信号に基づいて、前記起動フェーズの開始点を決定するステップと
をさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし5の何れか一つに記載の加熱制御方法。
【請求項7】
前記電圧ゼロクロス信号に基づいて、前記起動フェーズの開始点を決定するステップは、
前記電圧ゼロクロスの時点よりも前に、オフセット継続時間TOだけオフセットされる時点を前記起動フェーズの前記開始点として決定するステップであって、前記起動フェーズは、前記電圧ゼロクロスの時点の後に、n回目のチョッピング周期の終了点まで持続し、nは非負の整数である、ステップ
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の加熱制御方法。
【請求項8】
前記オフセット継続時間T0は、500μs≦T0≦5msを満たし、および/またはnは、1または0に等しいことを特徴とする、請求項7に記載の加熱制御方法。
【請求項9】
前記第一の駆動電流I1は、10mA≦I1≦80mAを満たし、および/または
前記第二の駆動電流I2は、5mA≦I2≦60mAを満たす
ことを特徴とする、請求項1ないし5の何れか一つに記載の加熱制御方法。
【請求項10】
前記第一の駆動電圧Vaは、15V≦Va≦22Vを満たすことを特徴とする、請求項3ないし5の何れか一つに記載の加熱制御方法。
【請求項11】
共振加熱回路を備える電磁加熱式調理器に使用される加熱制御式デバイスであって、
前記共振加熱回路の共振動作を制御するためのパワースイッチ・トランジスタであって、駆動端子を備える、パワースイッチ・トランジスタと、
電圧検出モジュールであって、一方の端部が前記パワースイッチ・トランジスタの前記駆動端子に電気的に接続されることにより、前記駆動端子の電圧値を検出する、電圧検出モジュールと、
電圧源および可変電流源を備え、前記パワースイッチ・トランジスタの前記駆動端子に電気的に接続され、前記電圧検出モジュールの他方の端部に電気的に接続されることにより、前記駆動端子の前記電圧値に基づいてパワースイッチ・トランジスタを駆動する、駆動制御モジュールと
を備え、
前記駆動制御モジュールは、次の動作、すなわち、
前記電磁加熱式調理器の目標出力を取得することと、
前記目標出力が閾値出力よりも低いかどうかを判定することと、
前記目標出力が閾値出力よりも低い場合、各制御サイクルにおいて、前記駆動制御モジュールは、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように前記電磁加熱式調理器を制御することであって、起動フェーズでは、
前記パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、前記駆動制御モジュールは、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2を含む駆動電流を前記パワースイッチ・トランジスタに供給することと、
前記駆動制御モジュールは、前記パワースイッチ・トランジスタの前記駆動端子の前記電圧値を取得することと、
前記駆動制御モジュールは、前記駆動端子の電圧値に基づいて、前記駆動電流を前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えることと
を含む、ことと
を実行することを特徴とする、加熱制御式デバイス。
【請求項12】
前記駆動端子の前記電圧値に基づいて、前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えるように前記駆動電流を制御する前記駆動制御モジュールは、
前記駆動端子の前記電圧値が、前記パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧よりも高い、第一の電圧閾値よりも高いかどうかを判定することと、
前記駆動端子の前記電圧値が前記第一の電圧閾値よりも高い場合、前記第一の駆動電流I1から前記第二の駆動電流I2に切り替えるように前記駆動電流を制御することと
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項13】
前記駆動電流が前記第二の駆動電流I2に切り替えられた後、前記駆動制御モジュールは、前記駆動端子の電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定し、
前記ミラー・プラトーが終了している場合、前記駆動制御モジュールは、前記駆動端子の前記電圧値が第二の電圧閾値よりも高いかどうかを判定し、
前記駆動端子の前記電圧値が前記第二の電圧閾値よりも高い場合、前記パワースイッチ・トランジスタの駆動モードは、電流駆動から電圧駆動に切り替えられ、前記駆動制御モジュールは、第一の駆動電圧Vaを前記パワースイッチ・トランジスタに供給し、飽和ターンオン状態で動作するように前記パワースイッチ・トランジスタを駆動する
ことを特徴とする、請求項12に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項14】
前記駆動端子の電圧値に基づいて、前記ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定する前記駆動制御モジュールは、
前記駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替わって以降、第一の所定時間Tmが経過した時点から、前記駆動端子の前記電圧値が第二の所定時間Tp中に上昇を継続する場合、前記ミラー・プラトーが終了していると判定すること
を含むことを特徴とする、請求項13に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項15】
前記加熱フェーズでは、前記パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクル中に、前記駆動制御モジュールが、第一の駆動電圧Vaを前記パワースイッチ・トランジスタに供給することにより、飽和ターンオン状態で動作するように前記パワースイッチ・トランジスタを駆動し、
前記停止フェーズでは、前記パワースイッチ・トランジスタは、動作しないようにされる
ことを特徴とする、請求項11に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項16】
前記電磁加熱式調理器に電力を供給するためにAC電源が使用され、前記加熱制御式デバイスが、前記AC電源の電圧ゼロクロス信号を検出するための電圧ゼロクロス検出モジュールをさらに備え、前記駆動制御モジュールは、前記AC電源の前記電圧ゼロクロス信号を取得し、前記電圧ゼロクロス信号に基づいて前記起動フェーズの開始点を決定することを特徴とする、請求項11ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項17】
前記駆動制御モジュールは、前記電圧ゼロクロスの時点の前に、オフセット継続時間T0だけオフセットされる時点を、前記起動フェーズの前記開始点として決定し、前記起動フェーズは、前記電圧ゼロクロスの時点の後に、n回目のチョッピング周期の終了点まで持続し、nは非負の整数であることを特徴とする、請求項16に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項18】
前記オフセット継続時間T0は、500μs≦T0≦5msを満たし、および/または
nが1または0に等しい
ことを特徴する、請求項17に記載の加熱制御式デバイス。
【請求項19】
前記第一の駆動電流11は、10mA≦11≦80mA を満たし、および/または
前記第二の駆動電流I2は、5mA≦I2≦60mAを満たす
ことを特徴とする、請求項11ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項20】
前記第一の駆動電圧Vaは、15V≦Va≦22Vを満たすことを特徴とする、請求項13ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項21】
前記駆動制御モジュールは、
前記電圧源および前記可変電流源を備え、前記パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合されることにより、前記パワースイッチ・トランジスタを駆動する駆動モジュールと、
電圧検出モジュールに電気的に結合されることにより、前記駆動端子の前記電圧値を取得し、前記駆動モジュールに電気的に結合されて、前記駆動端子の前記電圧値に基づいて前記パワースイッチ・トランジスタを駆動する制御モジュールと
を含むことを特徴とする、請求項11ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項22】
前記駆動制御モジュールは、
前記電圧源および前記可変電流源を含み、前記パワースイッチ・トランジスタの前記駆動端子に電気的に結合されることにより、前記パワースイッチ・トランジスタを駆動し、前記電圧検出モジュールに電気的に結合されて、前記駆動端子の前記電圧値を取得する駆動モジュールと、
前記駆動モジュールに電気的に結合され、前記駆動端子の前記電圧値に基づいて前記パワースイッチ・トランジスタを駆動するように、前記駆動モジュールを制御する制御モジュールと
を含むことを特徴とする、請求項11ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項23】
前記駆動制御モジュールは、
前記目標出力を取得するための主制御モジュールと、
前記電圧源および前記可変電流源を備え、前記パワースイッチ・トランジスタの前記駆動端子に電気的に結合されることにより、前記パワースイッチ・トランジスタを駆動し、前記電圧検出モジュールに電気的に結合されることにより、前記駆動端子の前記電圧値を取得する駆動モジュールと、
前記主制御モジュールに電気的に結合されることにより、前記目標出力を受信し、前記駆動モジュールに電気的に結合される加熱制御モジュールであつて、前記目標出力が前記閾値出力よりも低いかどうかを判定し、前記駆動端子の電圧値に基づいて前記パワースイッチ・トランジスタを駆動するように前記駆動モジュールを制御する加熱制御モジュールと
を含むことを特徴とする、請求項11ないし15の何れか一つに記載の加熱制御式デバイス。
【請求項24】
請求項11ないし23の何れか一つに記載の加熱制御式デバイスを備えることを特徴とする、電磁加熱式調理器。
【請求項25】
前記電磁加熱式調理器は、電磁コンロ、電磁加熱式炊飯器、または電磁加熱式圧力釜であることを特徴とする、請求項24に記載の電磁加熱式調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、調理器具(cooking utensils)の技術分野に関し、特に、電磁加熱式調理器具(electromagnetic heating cooker)および電磁加熱式調理器(electromagnetic heating cooking utensil)における加熱制御のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式加熱(electromagnetic induction heating)(またはIHヒーティング(IH heating)または電磁加熱(electromagnetic heating)として知られる)調理器は、一般に、共振加熱回路(resonant heating circuit)(またはLC発振回路(oscillating circuit)として知られる)を備えており、それらのオンおよびオフは、一般に、IGBTパワースイッチ・トランジスタ(power switch transistor)を使用することによって制御される。
【0003】
現在のIH調理器は、調理結果を保証するため、調理プロセス中に低出力(low power)で加熱し、正確な火力制御(firepower control)および調理を達成する必要があることが度々ある。必要とされる低出力を提供するために、以下のように列挙される、通常使用される幾つかの解決策がある。
【0004】
第一の解決策では、出力を調整するという目的を達成するために、駆動パルス(driving pulse)の幅が調整される。パルス幅を小さくすれば、出力(power)が低下する。パルス幅を大きくすれば、出力が上昇する。しかしながら、この方法によると、最大範囲(full-range)の低出力を達成することができない。例えば、1,200Wの公称出力(nominal power)によると、調整されたパルス幅では、400Wに到達することができない。これは、IGBTが低出力の条件下でハードターンオン現象(hard turn-on phenomenon)を引き起こし、IGBTの焼損(burn out)を容易に生じさせるためである。例えば、図1を参照すると、出力が1,200Wから300Wに徐々に低下するとき、(図3において、相違する駆動電圧下のパワースイッチ・トランジスタIGBTにおけるC極電圧およびC極電流間の関係を示す模式図を参照すると)パワースイッチ・トランジスタのスイッチオン電圧(switch-on voltage)が上昇し、起動電流(starting current)を増加させるため、IGBTの焼損を容易にもたらすことができる。
【0005】
第二の解決策では、より低い出力を達成するために、公称出力のデューティ比(duty ratio)が調整される。例えば、1,200Wの公称出力、および6秒/4秒のデューティ比(6秒間の加熱および4秒間の停止、周期は10秒である)によると、720W(1,200W×6/10)の平均出力が得られる(図2を参照のこと)。この方法を使用する場合、加熱サイクルが長ければ、調理結果は、影響を受けることになる。加熱サイクルが短ければ、これは、IGBTのハード・スイッチオン(hard switch-on)を引き起こし、そのためにIGBTの焼損を生じさせることになる。
【0006】
第三の解決策は、AC端子のゼロクロス・チョッピング(zero crossing chopping)によって構成され、例えば、サイリスタ(thyristor)を追加して、ゼロクロス波(zero crossing wave)の損失を制御する。この方法によると、高出力スイッチ制御(high power switch control)が追加されることになり、そのためにコストおよび構造スペースを増大させ、信頼性(reliability)を低下させる。
【0007】
第四の解決策では、変圧ユニット(transformer unit)が追加されることにより、初期フェーズでは、低電圧パルスが駆動するために使用されるが、加熱フェーズでは、高電圧パルスが駆動するために使用されるため、これは、起動パルスの電流を抑制し、低出力を達成することを可能にする。しかしながら、この方法は、低い信頼性しか有することなく、パワー素子(power devices)に損傷を容易に生じさせる可能性がある。さらに、回路の損失が著しく、適時性の要件(timeliness requirements)とパワー素子の整合性の要件(consistency requirements)とが高くなるため、駆動電圧を自動的に適合させることができない。
【0008】
したがって、上述される課題を少なくとも部分的に解決するために、電磁加熱式制御方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
本出願の概要では、一連の簡略化された概念(concepts)を導入するが、これについては、「実施形態の詳細な説明(Detailed Description of the Embodiments)」の項においてさらに詳細に記述することになる。本出願におけるこの「概要(Summary)」は、主張される技術的解決策の重要な特徴および必須の技術的特徴の定義を試みることを意図することなく、これは、主張される技術的解決策の保護範囲の定義を試みることを意図することもない。
【0010】
「背景(Background)」の項における課題を少なくとも部分的に解決するために、本出願の第一の態様は、共振加熱回路およびパワースイッチ・トランジスタを備える電磁加熱式調理器の加熱制御方法を提供しており、この加熱制御方法は、以下のステップを備える。すなわち、
-電磁加熱式調理器の目標出力(target power)を取得するステップ、
-この目標出力が閾値出力(threshold power)よりも低いかどうかを判定するステップ、ならびに
-この目標出力が閾値出力よりも低い場合、各制御サイクルにおいて、起動フェーズ(starting phase)、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように、電磁加熱式調理器を制御するステップであって、起動フェーズでは、
-パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2を含む駆動電流を、パワースイッチ・トランジスタに供給するステップ、
-パワースイッチ・トランジスタの駆動端子における電圧値を取得するステップ、および
-駆動端子の電圧値に基づいて、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動電流を制御するステップ
を含む、ステップ。
【0011】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、低出力加熱モード(low power heating mode)の際に、電磁加熱式調理器は、各制御サイクルにおいて、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように制御され、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタをオンに切り替えるために使用され、マルチセグメント(multi-segment)の駆動電流が使用され、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子における電圧を監視することによって駆動電流が制御されるため、これにより、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオン(hard switching on)が効果的に防止される。
【0012】
任意選択として、駆動端子の電圧値に基づいて、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動電流を制御するステップは、以下のステップを含む。
-駆動端子の電圧値が、パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧よりも高い、第一の電圧閾値よりも高いかどうかを判定するステップ、および
-駆動端子の電圧値が第一の電圧閾値よりも高い場合、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動電流を制御するステップ。
【0013】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、低出力加熱モードの際に、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子からフィードバックされる電圧値に基づいて駆動電流が調整されて、カットオフ領域(cut-off region)、増幅領域(amplification region)、および飽和領域(saturation region)において順次動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動し、ミラー・プラトー領域(Miller plateau region)におけるパワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧を、パワースイッチ・トランジスタがオンに切り替えられる際の設定範囲に制限することより、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時点で、パワースイッチ・トランジスタを通過するスイッチング電流(switching current)を制限するため、これは、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを防止し、ミリ秒単位に関するデューティ比の低出力を用いて、確実な連続加熱と、可変出力による加熱とを達成し、これによって調理効果およびユーザー体験を改善させる。さらに、本出願に係る電磁加熱式制御方法は、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタに自動的に適合させ、電磁加熱を起動することによって生成される電磁干渉(electromagnetic interference)および雑音(noise)を低減しつつ、コストまたは構造スペースを増加させることなく、ソフトスタート(soft start)を達成することができる。
【0014】
任意選択として、本加熱制御方法は、さらに以下のステップを備える。すなわち、
-駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替えられた後、駆動端子の電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定するステップ、
-ミラー・プラトーが終了している場合、駆動端子の電圧値が第二の電圧閾値よりも高いかどうかを判定するステップ、ならびに
-駆動端子の電圧値が第二の電圧閾値よりも高い場合、パワースイッチ・トランジスタの駆動モードを電流駆動から電圧駆動に切り替えるステップ、およびパワースイッチ・トランジスタに第一の駆動電圧Vaを供給することにより、パワースイッチ・トランジスタを駆動して、飽和ターンオン状態(saturated turned-on state)で動作させるステップ。
【0015】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタのミラー期間が終了した後、電圧駆動モードが、パワースイッチ・トランジスタを飽和ターンオン状態で動作させるために使用され、このとき、パワースイッチ・トランジスタのC極およびE極間のターンオン電圧が低下し、パワースイッチ・トランジスタの熱損失が低減されるため、これにより、LC発振回路によるエネルギー蓄積(energy accumulation)を達成しつつ、パワースイッチ・トランジスタを保護することが可能になる。
【0016】
任意選択として、駆動端子の電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定するステップは、以下のステップを含む。すなわち、
-駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替わって以降、第一の所定時間Tmが経過した時点から、第二の所定時間Tp中に駆動端子の電圧値の上昇が持続する場合、ミラー・プラトーが終了していると判定するステップ。
【0017】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、パワースイッチ・トランジスタにおけるG極の電圧を監視することにより、この方法は、ミラー期間が終了しているかどうかを効果的に判定することができ、パワースイッチ・トランジスタにおけるC極の電圧を監視するための追加部品(additional part)を設けることが回避される。
【0018】
任意選択として、加熱フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクル中に、第一の駆動電圧Vaが、パワースイッチ・トランジスタに供給されることにより、飽和ターンオン状態で動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動する。停止フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタは、動作しないようにされる。
【0019】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、加熱フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタを飽和ターンオン状態で動作させるために電圧駆動モードが使用され、このとき、パワースイッチ・トランジスタにおけるC極およびE極間のターンオン電圧が低下し、パワースイッチ・トランジスタの熱損失が低減されるため、これは、LC発振回路によるエネルギー蓄積を達成しつつ、パワースイッチ・トランジスタを保護することを可能にする。停止フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタが動作しないようにされ、そのために相違する加熱のデューティ比を達成することができる。
【0020】
任意選択として、電磁加熱式調理器に電力を供給するためにAC電源が使用され、本加熱制御方法は、以下のステップをさらに備える。すなわち、
-AC電源の電圧ゼロクロス信号(voltage zero-crossing signal)を取得するステップ、および
-電圧ゼロクロス信号に基づいて、起動フェーズの開始点を決定するステップ。
【0021】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、AC電源の電圧ゼロクロス点に基づいて、起動フェーズの開始点が決定されるため、これは、信号干渉をより大幅に回避し、これによってより精密な制御を達成することを可能にする。
【0022】
任意選択として、電圧ゼロクロス点に基づいて、起動フェーズの開始点を決定するステップは、以下のステップを含む。すなわち、
-電圧ゼロクロスの時点の前にオフセット継続時間(offset duration)T0だけオフセットされる時点を、起動フェーズの開始点として決定するステップであって、起動フェーズは、電圧ゼロクロスの時点の後、n回目のチョッピング周期(chopping cycle)の終了点まで持続するが、ここで、nは非負の整数である、ステップ。
【0023】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時に、十分な放電時間がパワースイッチ・トランジスタに与えられるため、これは、パワースイッチ・トランジスタがオンになる時に、C極の電流が過大になることを防止する。
【0024】
任意選択として、オフセット継続時間T0は、500μs≦T0≦5msを満たし、および/またはnは、1または0に等しい。
【0025】
任意選択として、第一の駆動電流I1は、10mA≦I1≦80mAを満たし、および/または第二の駆動電流I2は、5mA≦I2≦60mAを満たす。
【0026】
任意選択として、第一の駆動電圧Vaは、15V≦Va≦22Vを満たす。
【0027】
本出願に係る電磁加熱式制御方法によると、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタの性能に適合するために、比較的広い制御パラメータ範囲(control parameter range)を設定することができる。
【0028】
本出願の第二の態様は、共振加熱回路を備える電磁加熱式調理器用の加熱制御式デバイスを提供し、本加熱制御式デバイスは、以下の要素を備える。すなわち、
-共振加熱回路の共振動作を制御するためのパワースイッチ・トランジスタであって、駆動端子を含む、パワースイッチ・トランジスタ、
-電圧検出モジュールであって、一方の端部が、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合されることによって、駆動端子の電圧値を検出する、電圧検出モジュール、ならびに
-電圧源および可変電流源を含み、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合され、電圧検出モジュールにおける他方の端部に電気的に結合されることにより、駆動端子の電圧値に基づいて、パワースイッチ・トランジスタを駆動する、駆動制御モジュール。
ここで、駆動制御モジュールは、以下の動作を実行する。すなわち、
-電磁加熱式調理器の目標出力を取得すること、
-目標出力が閾値出力よりも低いかどうかを判定すること、ならびに
-目標出力が閾値出力よりも低い場合、各制御サイクルにおいて、駆動制御モジュールは、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように、電磁加熱式調理器を制御することであって、起動フェーズでは、
-パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、駆動制御モジュールは、第一の駆動電流I2および第二の駆動電流I2を含む駆動電流を、パワースイッチ・トランジスタに供給し、
-駆動制御モジュールは、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧値を取得し、
-駆動制御モジュールは、駆動端子の電圧値に基づいて、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に駆動電流を切り替える、
こと。
【0029】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、低出力加熱モードの際に、各制御周期において、電磁加熱式調理器は、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように制御され、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタをオンにさせるためにマルチセグメントの駆動電流が使用され、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧を監視することによって駆動電流が制御されるため、これにより、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを効果的に防止することが可能になる。
【0030】
任意選択として、駆動端子の電圧の値に基づいて、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動電流を制御する駆動制御モジュールは、以下を含む。
-駆動制御モジュールは、前記駆動端子の電圧値が、パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧よりも高い、第一の電圧閾値よりも高いかどうかを判定すること、および
-駆動端子の電圧値が第一の電圧閾値よりも高い場合、駆動制御モジュールは、第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように、駆動電流を制御すること。
【0031】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、低出力加熱モードの際、起動フェーズにおいて、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子からフィードバックされる電圧値に基づいて駆動電流が調整されて、カットオフ領域、増幅領域、および飽和領域において順次動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動し、ミラー・プラトー領域におけるパワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧を、パワースイッチ・トランジスタがオンに切り替えられる際の設定範囲に制限することにより、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時点で、パワースイッチ・トランジスタを通過するスイッチング電流を制限するため、これは、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを防止し、ミリ秒単位に関するデューティ比の低出力を用いて、確実な連続加熱と、可変出力による加熱とを達成し、これによって調理効果およびユーザー体験を改善させる。さらに、本出願に係る電磁加熱式制御方法は、ソフトスタートを達成することができ、電磁加熱を起動することによって生成される電磁干渉および雑音を低減しつつ、コストまたは構造スペースを増加させることなく、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタに自動的に適合させることができる。
【0032】
任意選択として、駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替えられた後、駆動制御モジュールは、駆動端子の電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定し、
ミラー・プラトーが終了している場合、駆動制御モジュールは、駆動端子の電圧値が第二の電圧閾値よりも高いかどうかを判定し、
駆動端子の電圧値が第二の電圧閾値よりも高い場合、パワースイッチ・トランジスタの駆動モードが、電流駆動から電圧駆動に切り替えられ、駆動制御モジュールは、第一の駆動電圧Vaをパワースイッチ・トランジスタに供給することにより、飽和ターンオン状態で動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動する。
【0033】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスでは、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタのミラー期間が終了した後、パワースイッチ・トランジスタを飽和ターンオン状態で動作させるために電圧駆動モードが使用され、このとき、パワースイッチ・トランジスタのC極およびE極間のターンオン電圧が低下し、パワースイッチ・トランジスタの熱損失が低減されるため、これは、LC発振回路によるエネルギー蓄積を達成しつつ、パワースイッチ・トランジスタを保護することを可能にする。
【0034】
任意選択として、駆動端子の電圧値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定する駆動制御モジュールは、以下を含む。すなわち、
-駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替わって以降、第一の所定時間Tmが経過した時点から、第二の所定時間Tp中に、駆動端子の電圧値の上昇が持続する場合、ミラー・プラトーが終了していると判定すること。
【0035】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、パワースイッチ・トランジスタにおけるG極の電圧を監視することにより、このデバイスは、ミラー期間が終了しているかどうかを効果的に判定することができ、パワースイッチ・トランジスタにおけるC極の電圧を監視するための追加部品を設けることが回避される。
【0036】
任意選択として、加熱フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクル中に、駆動制御モジュールは、パワースイッチ・トランジスタに第一の駆動電圧Vaを供給することにより、飽和ターンオン状態で動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動する。停止フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタは、動作しないようにされる。
【0037】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、加熱フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタを飽和ターンオン状態で動作させために電圧駆動モードが使用され、このとき、パワースイッチ・トランジスタにおけるC極およびE極間のターンオン電圧が低下し、パワースイッチ・トランジスタの熱損失が低減されるため、これは、LC発振回路によるエネルギー蓄積を達成しつつ、パワースイッチ・トランジスタを保護することを可能にする。停止フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタは、動作しないようにされ、そのために異なる加熱デューティ比を達成することができる。
【0038】
任意選択として、電磁加熱式調理器に電力を供給するためにAC電源が使用され、本加熱制御式デバイスは、AC電源の電圧ゼロクロス信号を検出するための電圧ゼロクロス検出モジュールをさらに含み、駆動制御モジュールは、AC電源の電圧ゼロクロス信号を取得し、電圧ゼロクロス信号に基づいて起動フェーズの開始点を決定する。
【0039】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、起動フェーズの開始点は、AC電源の電圧ゼロクロス点に基づいて決定されるため、これは、信号干渉をより大幅に回避して、これによってより精密な制御を達成することを可能にする。
【0040】
任意選択として、駆動制御モジュールは、電圧ゼロクロスの時点の前にオフセット継続期間T0だけオフセットされる時点を起動フェーズの開始点として決定し、起動フェーズは、電圧ゼロクロスの時点の後、n回目のチョッピング周期の終了点まで持続するが、ここで、nは非負の整数である。
【0041】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時に、パワースイッチ・トランジスタに十分な放電時間が与えられるため、これは、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時に、C極の電流が過大になることを防止する。
【0042】
任意選択として、オフセット継続時間T0は、500μs≦T0≦5msを満たし、および/またはnは、1または0に等しい。
【0043】
任意選択として、第一の駆動電流I1は、10mA≦I1≦80mAを満たし、および/または第二の駆動電流I2は、5mA≦I2≦60mAを満たす。
【0044】
任意選択として、第一の駆動電圧Vaは、15V≦Va≦22Vを満たす。
【0045】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタの性能に適合するために、比較的広い制御パラメータ範囲を設定することができる。
【0046】
任意選択として、駆動制御モジュールは、以下の要素を含む。すなわち、
-電圧源および可変電流源を含み、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合されることにより、パワースイッチ・トランジスタを駆動する駆動モジュール、および
-電圧検出モジュールに電気的に結合されることにより、駆動端子の電圧値を取得し、駆動モジュールに電気的に結合されて、駆動端子の電圧値に基づいて、パワースイッチ・トランジスタを駆動するように駆動モジュールを制御する制御モジュール。
【0047】
任意選択として、駆動制御モジュールは、以下の要素を含む。すなわち、
-電圧源および可変電流源を含み、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合されることにより、パワースイッチ・トランジスタを駆動し、電圧検出モジュールに電気的に結合されることにより、駆動端子の電圧値を取得する駆動モジュール、および
-駆動モジュールに電気的に結合され、駆動端子の電圧値に基づいてパワースイッチ・トランジスタを駆動するように駆動モジュールを制御するために使用される制御モジュール。
【0048】
任意選択として、駆動制御モジュールは、以下の要素を含む。すなわち、
-目標出力を取得する主制御モジュール、
-電圧源および可変電流源を含み、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に電気的に結合されることにより、パワースイッチ・トランジスタを駆動し、電圧検出モジュールに電気的に結合されることにより、駆動端子の電圧値を取得する駆動モジュール、および
-主制御モジュールに電気的に結合されることにより、目標出力を受信し、駆動モジュールに電気的に結合される加熱制御モジュールであって、目標出力が閾値出力よりも低いかどうかを判定し、駆動端子の電圧値に基づいて、パワースイッチ・トランジスタを駆動するように駆動モジュールを制御する、加熱制御モジュール。
【0049】
本出願に係る電磁加熱式制御デバイスによると、制御ユニットおよび駆動ユニットの具体的な規定(provisions)が種々のハードウェア構造の形態を取ることができるため、ユーザーは、具体的な必要性(needs)に基づいてこの規定を柔軟に設定することができる。
【0050】
本出願の第三の態様は、上述される電磁加熱式調理器用の加熱制御式デバイスを備える、電磁加熱式調理器を提供する。
【0051】
本出願に係る電磁加熱式制御調理器によると、低出力加熱モードの際に、各制御細サイクルにおいて、本電磁加熱式調理器は、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行し、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタをオンにさせるためにマルチセグメントの駆動電流が使用され、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧を監視することによって駆動電流が制御されるため、これにより、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを効果的に防止することが可能になる。
【0052】
本出願に係る電磁加熱式調理器によると、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子からフィードバックされる電圧値に基づいて駆動電流が調整されて、カットオフ領域、増幅領域、および飽和領域において順次動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動し、ミラー・プラトー領域におけるパワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧を、パワースイッチ・トランジスタがオンに切り替えられる際の設定範囲に制限することにより、パワースイッチ・トランジスタがオンにされる時点で、パワースイッチ・トランジスタを通過するスイッチング電流を制限するため、これは、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを防止し、ミリ秒単位に関するデューティ比の低出力を用いて、確実な連続加熱と、可変出力による加熱とを達成し、これによって調理効果およびユーザー体験を改善させる。さらに、本出願に係る電磁加熱式調理器は、電磁加熱を起動することによって生成される電磁干渉および雑音を低減しつつ、コストまたは構造スペースを増加させることなく、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタに自動的に適合することによって、ソフトスタートを達成することができる。
【0053】
任意選択として、電磁加熱式調理器は、電磁コンロ(electromagnetic cooktop)、電磁炊飯器(electromagnetic rice cooker)、または電磁圧力釜(electromagnetic pressure cooker)である。
【0054】
本出願に係る電磁加熱式デバイスは、種々の電磁加熱式調理器に広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下に列挙される本出願の添付図面は、本明細書において本出願の一部を構成し、本出願を理解するために使用される。添付図面には、本出願の原理を説明するために使用される、本出願の具体的な実現形態(modes of realization)およびそれらの説明が示されている。
【0056】
添付の図面では、次の通りである。
図1】「背景(Background)」の項において言及される、パワースイッチ・トランジスタIGBTのターンオン波形(turn-on waveform)を示す模式図である。
図2】「背景(Background)」の項において言及される、デューティ比の出力調整波形を示す模式図である。
図3】異なる駆動電圧下におけるパワースイッチ・トランジスタIGBTにおけるC極電圧およびC極電流間の関係を示す模式図である。
図4】本出願の好適な実現形態に係る電磁加熱式調理器の電磁加熱式デバイスを示す模式的なブロック図である。
図5a】本出願の好適な実現形態に係る電磁加熱式調理器の電磁加熱式デバイスを示す動作フローチャートである。
図5b図5aのステップS30における電圧値に基づいて、駆動電流の切り替えを制御するための好適な実現形態を示す動作フローチャートである。
図6】本出願に係る電磁加熱式制御方法の実現形態が低出力で動作する場合を示す波形図である(加熱のデューティ比4/5の場合)。
図7】本出願に係る電磁加熱式制御方法の別の実現形態が低出力で動作する場合を示す波形図である(加熱のデューティ比3/5の場合)。
図8】本出願に係る電磁加熱式制御方法のさらに別の実現形態が低出力で動作する場合を示す波形図である(加熱のデューティ比2/5の場合)。
図9a】が本出願の好適な実現形態に係る電磁加熱式制御方法が使用される場合において、起動フェーズ中にパワースイッチ・トランジスタがオンにされている際の、C極電流Ic、C極電圧、およびG極電圧Vを示すタイミング図である。
図9b】パワースイッチ・トランジスタのG極が定電圧駆動制御方式を採用する場合において、起動フェーズ中にパワースイッチ・トランジスタがオンにされている際の、C極電流I、C極電圧、およびG極電圧Vを示すタイミング図である。
図10】本出願の別の実現形態に係る電磁加熱式調理器の電磁加熱式デバイスを示す模式的なブロック図である。
図11】本出願のさらに別の実施形態に係る電磁加熱式調理器の電磁加熱式デバイスを示す模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[実施形態の詳細な説明]
以下の説明では、本出願に関してより完全な理解を提供するように、多くの詳細が与えられる。しかしながら、本出願の実現形態が、それらの詳細のうちの一つまたは複数が無くても、実現することができることは、当業者にとっては明らかである。本出願の実現態様との混同(confusion)を避けるために、当該技術分野において周知の幾つかの技術的特徴については説明されない。
【0058】
本出願の実現形態を完全に理解するために、以下の説明において詳細なプロセスを説明する。明らかに、本出願の実現形態の実施態様は、当業者に周知の具体的な詳細に限定されない。
【0059】
本出願は、まず、電磁加熱式調理器用の電磁加熱式制御デバイス、および同様の加熱制御のための方法を提供して、低出力時における連続加熱と、可変出力時における加熱とを達成し、そのために調理結果及びユーザー体験を改善させる。
【0060】
本出願の好適な実現形態において、電磁加熱式デバイスは、例えば、電磁加熱式炊飯器(またはIH炊飯器と呼ばれる)である電磁加熱式調理器に適用される。電磁加熱式炊飯器は、通常、蓋(lid)と、蓋に覆われると調理空間(cooking space)を形成する内釜(inner pot)が内部に設けられる調理器(cooker)とを備える。電磁加熱式調理器の電磁加熱式デバイスは、通常、調理器において、例えば、内釜の下方に配置され、内釜を加熱するために使用される。
【0061】
図4に示されるように、本出願の好適な実現形態において、電磁加熱式調理器の加熱制御式デバイスは、AC電源によって給電される。このデバイスは、電磁適合性(electromagnetic compatibility)(EMC)モジュール10、整流フィルタ抽出モジュール(rectification filtering module)20、LC共振モジュール30、スイッチモジュール40、電圧検出モジュール50、駆動モジュール60、制御モジュール70、およびゼロクロス検出モジュール80を備える。
【0062】
EMCモジュール10は、AC主電源に結合され、干渉信号のフィルタ抽出に使用される。整流フィルタ抽出モジュール20は、干渉信号がEMCモジュール10によってフィルタ抽出された後、AC主電源に対して整流フィルタ抽出を実行した後に、LC共振モジュール30にDC電源を供給する。スイッチモジュール40は、LC共振モジュールが共振振動(resonance oscilating)によって動作するように制御するために使用され、ゲートG(駆動端子)、コレクタC、およびエミッタEを含むパワースイッチ・トランジスタIGBTを含む。LC共振モジュール30は、IGBTのコレクタに接続される。ゼロクロス検出モジュール80は、干渉信号がEMCモジュール10によってフィルタ抽出された後、AC主電源の電圧ゼロクロス信号を検出するために使用される。駆動モジュール60は、IGBTの駆動端子に電気的に結合される。この駆動モジュール60は、電圧源および可変電流源の機能を同時に有し、IGBTへの駆動電圧だけでなく、IGBTへの駆動電流も出力することができる。電圧検出モジュール50における一方の端部は、IGBTの駆動端子に電気的に結合され、他方の端部は、IGBTの駆動端子の電圧値を検出し、その電圧値を制御モジュール70にリアルタイムで送信するための制御モジュール70に電気的に結合される。この制御モジュール70は、駆動モジュール60の動作を制御する。具体的には、制御モジュール70は、復帰した(returned)IGBTの駆動端子の電圧値に基づいて、パワースイッチ・トランジスタIGBTを駆動するように駆動モジュール60を制御する。また、制御モジュール70は、電圧ゼロクロスモジュール80によって検出される電圧ゼロクロス信号を受信する。
【0063】
図5aは、図4に示される電磁加熱式調理器の加熱制御式デバイスに関する好適な動作プロセスを示している。この動作プロセスは、以下のステップを備える。すなわち、
S10:制御モジュール70は、電磁加熱式調理器具の目標出力Ptを取得し、次いで、ステップS20を実行する。
【0064】
このステップでは、目標出力Ptは、電磁加熱式調理器によって現在のフェーズにおいて達成されるべき加熱出力である。例えば、ユーザーがおかゆ(porridge)を作りたい場合、ユーザーは、電磁加熱式調理器の対話モジュールにおいて、おかゆ作り機能(porridge making function)を選択することができ、電磁加熱式調理器具は、自動的におかゆ作りモード(porridge making mode)に移行する。このモードでは、電磁加熱式調理器具は、600Wの出力で加熱を実行することができる。その場合、目標出力は、600Wである。任意選択として、電磁加熱式調理器の目標出力は、0~2500Wの範囲にあり、すなわち0W≦Pt≦2500Wである。
【0065】
S20:制御モジュール70は、目標出力Ptが閾値出力Pdよりも低いかどうかを判定する。そうである場合、ステップS30が実行され、そうでない場合、ステップS40が実行される。
【0066】
このステップでは、閾値出力Pdは、予め設定される閾値である。目標出力Ptが閾値Pd以上である場合、電磁加熱式調理器が高出力加熱モード(high power heating mode)にあり、従来通りの加熱を行うことができると判定され、ステップS40が実行される。目標出力Ptが閾値出力Pdよりも低い場合、電磁加熱式調理器が低出力加熱モード(low power heating mode)にあると判定され、ステップS30が実行される。
【0067】
好ましくは、閾値出力Pdおよび公称出力Pは、500W≦Pd≦2,200W、かつ(P-600W)≦Pd≦(P-100W)を満たす。
【0068】
S30:各制御サイクルにおいて、制御モジュール70は、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように電磁加熱式調理器を制御する。このステップでは、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタIGBTの駆動サイクルにおいて、制御モジュール70は、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2を含む駆動電流を、駆動モジュール60を通してパワースイッチ・トランジスタIGBTに供給する。同時に、電圧検出モジュール50は、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子の電圧Vの値を監視して取得する。この電圧Vの値は、制御モジュール70にフィードバックされるため、この制御モジュール70は、電圧値に基づいて、駆動電流を第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動モジュール60を制御する。
【0069】
S40:制御モジュール70は、高出力加熱モジュールにおいて動作するように調理器具を制御する。
【0070】
例えば、電圧駆動モードは、飽和ターンオン状態で動作するように、すなわちIGBTが正常にオンにされるように、IGBTを駆動するために使用される。
【0071】
ステップS30では、好ましくは、図5bを参照すると、IGBTの駆動端子の電圧値に基づいて、駆動電流を第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動モジュール60を制御する制御モジュール70は、次のステップを含む。すなわち、
S31:制御モジュール70は、駆動端子の電圧Vの値が第一の電圧閾値V1よりも高いかどうかを判定する。そうである場合、ステップS32が実行され、そうでない場合、VがV1よりも高くなるまで、Vの監視を継続する。
【0072】
好ましくは、Vth<V1≦Vth+4Vであり、ここで、Vthは、パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧であり、通常、4Vから8Vまでの間にある。異なるモデルまたは異なる製造業者のIGBTにおけるVthの値は、相違することになる。好ましくは、V1は7.5Vである。
【0073】
IGBTの駆動端子の電圧VがIGBTの閾値電圧Vthよりも高い場合、IGBTは、カットオフ領域(カットオフ状態)から増幅領域(増幅状態)および飽和領域(飽和ターンオン状態)に移行し、ミラー効果(Miller effect)に起因して、駆動端子の電圧は、プラトー領域(ミラー・プラトー(Miller plateau))を形成する。ミラー・プラトー期間またはミラー期間が終了した後、IGBTは、飽和領域に移行する。ミラー・プラトーは、IGBTが増幅領域にあるという典型的な指標(indicator)である。増幅領域では、IGBTは、比較的高いインピーダンスを有しており、このときIGBTのC極電流が比較的大きい場合、IGBTは、容易に焼損することがある。
【0074】
電圧Vの値がV1以下であるならば、プロセスは戻って、駆動端子の電圧Vの値の監視(取得)を継続し、VがV1よりも高いかどうかの判定を継続する。
【0075】
S32:制御モジュール70は、駆動電流を第一の駆動電流I1から第二の駆動電流I2に切り替えるように駆動モジュール60を制御し、次いで、ステップS33を実行する。
【0076】
好ましくは、10mA≦I1≦80mA、かつ5mA≦I2≦60mAである。
【0077】
起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおいて、駆動電流が第二の駆動電流I2に切り替えられた後、本出願に係る電磁加熱式調理器の加熱制御式デバイスは、以下のステップをさらに実行する。すなわち、
S33:制御モジュール70は、駆動端子の電圧Vの値に基づいて、ミラー・プラトーが終了しているかどうかを判定し、そうである場合、ステップS34を実行し、そうでない場合、ミラー・プラトーが終了するまで、Vの監視を継続する。
【0078】
S34:制御モジュール70は、駆動端子の電圧Vの値が第二の電圧閾値V2よりも高いかどうかを判定し、そうである場合、ステップS35を実行し、そうでない場合、VがV2より高くなるまで、Vを監視することを継続する。
【0079】
好ましくは、V2は10.5Vである。
【0080】
S35:パワースイッチ・トランジスタの駆動モードが電流駆動から電圧駆動に切り替えられ、制御モジュール70は、駆動モジュール60を用いてパワースイッチ・トランジスタに第一の駆動電圧Vaを供給することにより、飽和ターンオン状態で動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動する。
【0081】
好ましくは、15V≦Va≦22Vであり、好ましくは、Va=18Vである。
【0082】
駆動端子の電圧Vの値がV2以下であるならば、プロセスは戻って、Vの取得を継続し、VがV2よりも高いかどうかの判定を継続する。
【0083】
以下に、本出願に係る電磁加熱式調理器の上述される加熱制御式デバイスのパワースイッチ・トランジスタの駆動サイクルにおける加熱制御方法について、図6を参照して詳細に説明する。
【0084】
図6における各種波形は、上から下への順に、AC主電源の波形、低出力時のIGBTにおけるC極電圧Vの波形、低出力時のIGBTにおけるG極駆動レベルの模式図、低出力時のIGBTの駆動サイクルにおけるIGBTのG極電流Iの波形、および低出力時のIGBTの駆動サイクルにおけるIGBTのG極電圧Vの波形である。
【0085】
図4に示される電磁加熱式デバイスを使用する場合、IGBTがオンにされるように駆動される期間中に、Vが振動波形を示し、IGBTがオンにされないように駆動される期間中に、Vが最終的に安定した高レベル(例えば、305~310V)、すなわち(低出力時のIGBTのC極電圧Vの波形によって示される)整流後のDC電圧値に維持されることが、当業者であれば理解することができる。図3に示されるように、IGBTのG極駆動電圧VまたはC極電圧Vがより高いほど、C極電流Iがより大きくなる。C極電圧Vが、IGBTがターンオン・フェーズ(turn-on phase)に移行する時点における整流DC電圧値(例えば、305~310V)であれば、IGBTが飽和ターンオン状態(例えば、増幅状態)に移行する前に、C極電流Iが過大となって、IGBTを過大に発熱させ、これによってIGBTの寿命に影響を与えることを防止するように、IGBTが飽和ターンオン状態に移行する前のG極駆動電圧Vは、比較的低いレベルで制御される必要がある。すなわち、IGBTのハードスイッチオンが防止される。本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法は、この課題をある程度解決することができる。
【0086】
さらに図6を参照すると、好適な実現形態において、電磁加熱式調理器の制御サイクルは、5回のチョッピング期間から構成される。各制御サイクルにおいて、電磁加熱式調理器具は、起動フェーズ、加熱フェーズ、および停止フェーズに順次移行するように制御される。図6に示される実現形態では、起動フェーズおよび加熱フェーズでは、IGBTに駆動パルスが印加され、停止フェーズでは、駆動パルスは印加されない。
【0087】
図6に示されるように、起動フェーズでは、IGBTの駆動サイクル(例えば、図中の〇付1から〇付2までのサイクル)において、まず、IGBTの駆動端子(IGBTのG極)に第一の駆動電流I1が印加されて、IGBTの駆動端子の電圧Vを監視しつつ、IGBTを駆動するために電流駆動モードを使用する。時間が経過すると、Vは徐々に上昇する。VがIGBTの閾値電圧Vthより高くなると、IGBTはオンにされる。この後に、Vは上昇し続ける。Vが第一の電圧閾値V1よりも高くなると、第一の駆動電流I1が、第二の駆動電流I2に切り替えられる。この実現形態では、第一の電圧閾値V1は、IGBTの閾値電圧Vthよりも高い。すなわち、IGBTを駆動するために第一の駆動電流I1を使用する場合、駆動電流を第二の駆動電流I2に切り替える前に、IGBTが既にオンとされていることが保証される。
【0088】
IGBTを駆動するために第二の駆動電流I2を使用する場合、IGBTの駆動端子の電圧Vの監視は継続される。時間が経過すると、IGBTの駆動端子の電圧Vは、ミラー・プラトーを示しており、すなわちVは、もはや上昇していない。時間が経過すると、ミラー期間が終了すると(すなわち、ミラー・プラトーが終了すると)、IGBTは、飽和ターンオン状態に移行する。飽和ターンオン状態では、電圧駆動モードは、IGBTを駆動するために使用することができる。したがって、ミラー・プラトーが終了した後も、IGBTの駆動端子の電圧Vの監視は継続される。Vが第二の電圧閾値V2よりも高くなると、ここでミラー・プラトーが終了していると、決定することができる。次いで、電流駆動モードは、電圧駆動モードに切り替えられて、第一の駆動電圧Vaを用いて正常にオンになるようにIGBTを駆動することにより、IGBTは、飽和ターンオン状態で動作する。
【0089】
通常、パワースイッチ・トランジスタの閾値電圧Vthは、4Vおよび8Vの間にある。本出願の好適な実現形態では、第一の電圧閾値V1は、Vth+4V以下であり、IGBTのミラー・プラトーの電圧は、実質的にV1に等しい。したがって、本出願では、IGBTがオンにされる時点で、IGBTの駆動端子の電圧値が、実質的に12Vを超えないように(好ましくは、7.5Vに)制御することができるため、これは、IGBTのC極電流を効果的に制御し、IGBTのハードスイッチングを防止することを可能にする。
【0090】
図9aに示されるように、本出願に係る電磁加熱式調理器の加熱方法を使用する場合、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタのC極電流Iを40A未満に制御することができる。図9bに示されるように、パワースイッチ・トランジスタを駆動するために定電圧源を使用する場合、パワースイッチ・トランジスタのC極電流Iは、最大で55Aに到達することができる。図9aおよび図9bを比較することにより、本出願に係る電磁加熱式制御方法は、パワースイッチ・トランジスタがオンに切り替えられる時のC極電流を効果的に低減し、パワースイッチ・トランジスタのハードスイッチオンを防止すると、理解することができる。
【0091】
IGBTの駆動端子における電圧Vのミラー・プラトーが終了すると、Vは上昇することになると、理解することができる。したがって、Vの監視を継続することにより、ミラー期間の終了をタイムリーに発見し、この結果、電流駆動モードから電圧駆動モードにタイムリーに切り替えることができることにより、IGBTは、飽和ターンオン状態で比較的高いC極電流を有して、LC発振回路に蓄積されるエネルギーを迅速に供給する。飽和ターンオン状態では、パワースイッチ・トランジスタのC極およびE極間のターンオン電圧が低下し、パワースイッチ・トランジスタの熱損失が減少するため、これは、LC発振回路にエネルギーを蓄積しつつ、パワースイッチ・トランジスタを保護することを可能にする。
【0092】
IGBTの駆動端子の電圧Vにおけるミラー・プラトーの終了を検出するには、種々の方法があると、理解することができる。例えば、IGBTのC極電圧がその最低点まで低下していることを検出することにより、またはミラー期間の終了後のVの上昇(climbing)を検出することにより、またはV変動の二階微分(second derivative)を計算して、V変動曲線の転換点(turning point)を発見することによるなど、ミラー・プラトーが終了していると、決定することができる。図6に示されるように、本出願の好適な実現形態では、駆動電流がI2に切り替えられて以降、予め設定される第一の継続時間Tmが経過した時点から、予め設定される第二の継続時間Tp内に駆動端子の電圧Vの値が上昇し続ける(すなわち、増加し続ける)と、ミラー・プラトーが終了していると判定される。この実現形態では、Tmの値は、ミラー期間の継続時間と一致するように設定される。好ましくは、1μs≦Tm≦18μs、かつ300ns≦Tp≦10μsである。さらに、ミラー期間が終了しており、IGBTが飽和ターンオン状態に移行していることを確認するために、Vが上昇を続け、第二の閾値電圧V2に到達すると、ミラー期間が終了していると判定することができる。第二の電圧閾値V2は、好ましくは、10.5Vである。
【0093】
本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法によると、起動フェーズでは、IGBTの駆動端子からフィードバックされる電圧値を通して駆動電流が調整され、IGBTは、カットオフ領域、増幅領域、および飽和領域において順次動作するように駆動される。IGBTがオンに切り替えられた後、ミラー期間中に駆動端子の電圧Vが低レベルに制限されることにより、IGBTが増幅状態になると、IGBTのC極電流を制限するため、これは、IGBTのハードスイッチオンを防止し、ミリ秒単位に関するデューティ比の低出力を用いて確実な連続加熱を達成し、これによって調理効果およびユーザー体験を改善させる。さらに、本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法は、異なる製造業者のパワースイッチ・トランジスタに自動的に適合させられて、コストおよび構造スペースを増加させることなく、ソフトスタートを達成することができる。さらに、この方法は、電磁加熱を起動することによって生成される電磁干渉および雑音を低減することができる。
【0094】
図6に示されるように、本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法は、さらに、以下を備える。すなわち、起動フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタの駆動サイクル(例えば、図中の〇付3から〇付4までのサイクル)において、制御モジュール70は、パワースイッチ・トランジスタの駆動端子に第一の駆動電圧Vaを供給するように駆動モジュール60を制御することにより、飽和ターンオン状態において動作するようにパワースイッチ・トランジスタを駆動する。停止フェーズでは、パワースイッチ・トランジスタは、動作しないようにされており、例えば、制御モジュール70は、パワースイッチ・トランジスタに駆動電圧または駆動電流を供給しないように駆動モジュール60を制御し、または、制御モジュール70は、駆動値0を出力するように駆動モジュール60を制御する。好ましくは、15V≦Va≦22Vである。好ましくは、Va=18Vである。加熱フェーズでは、通常、パワースイッチ・トランジスタはオンにされる。
【0095】
好ましくは、本出願に係る電磁加熱式制御方法において、電磁加熱式調理器具における起動フェーズの開始点は、AC電源の電圧ゼロクロス点に基づいて決定することができる。
【0096】
図6に示されるように、AC電源の電圧ゼロクロス点の時点P0からオフセット継続時間T0だけ先にオフセットされる時点Paが、起動フェーズの開始点として決定される。起動フェーズは、AC電源の電圧ゼロクロス点の時点P0の後、n回のチョッピング周期(ACの周波数が50Hzである場合、チョッピング周期は10msである)の間、時点Pbまで持続する。換言すると、起動フェーズは、時点Paから時点Pbまでである。すなわち、起動フェーズは、AC電源の電圧ゼロクロス点の時点P0からオフセット継続時間T0だけ先にオフセットされる時点から開始し、AC電源の電圧ゼロクロス点の時点P0の後、n回目のチョッピング周期の終了まで持続する。この実現形態では、nは正の整数であり、500μs≦T0≦5msである。好ましくは、T0=2.5ms、かつn=1である。起動フェーズにおける加熱制御方法に関する上記の説明から分かるように、起動フェーズにおけるIGBTの駆動サイクルでは、ソフトスタートのプロセスは、IGBTのC極電圧の放電によって構成され、起動フェーズが1回のチョッピング周期の間持続するという事実は、完全な放電を確実にすることができる。しかしながら、異なるブランドまたはモデルのIGBTの性能に基づいて、n=0、すなわち放電継続時間がT0だけであることを提供することができる。
【0097】
図6に示されるタイミングでは、完全な制御サイクルは、5回のチョッピング周期によって構成され、起動フェーズは、ほぼ1回のチョッピング周期を有し、加熱フェーズは、3回のチョッピング周期を有し、停止フェーズは、ほぼ1回のチョッピング周期を有する(前回の制御サイクルの停止フェーズと、次回の制御サイクルの起動フェーズとは、併せて2回のチョッピング周期である)。IGBTは、起動フェーズおよび加熱フェーズ中にオンにされる。したがって、図6は、加熱のデューティ比が4/5である場合を示している。起動フェーズでは、IGBTの駆動サイクルにおいて、IGBTが、順次ソフトスタートし、正常にオンになる。したがって、起動フェーズは、半駆動フェーズ(half driving phase)とも呼ばれる。加熱フェーズでは、IGBTは、正常にオンにされる。したがって、加熱フェーズは、完全駆動フェーズ(full driving phase)とも呼ばれる。本明細書において使用されるように、起動フェーズのチョッピング周期の回数nは、起動チョッピング周期番号(starting chopping number)nとも呼ばれる。
【0098】
本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法において、AC電源の電圧ゼロクロス点は、起動フェーズの開始点を決定するために使用されるだけでなく、起動フェーズおよび加熱フェーズ間の切換点(switching point)、ならびに加熱フェーズおよび停止フェーズ間の切換点としても使用されることは、留意されるべきである。図6に示されるように、起動フェーズは、ほぼ1回のチョッピング周期の間持続し、AC電源の電圧ゼロクロス点で終了し、加熱フェーズは、AC電源の電圧ゼロクロス点から開始し、同じくAC電源の電圧ゼロクロス点で終了し、3回のチョッピング周期の間持続する。AC電源の電圧ゼロクロス点に基づいて、種々のフェーズの開始点を決定することにより、干渉信号をより大幅に排除することができ、電磁加熱式調理器の精密な制御を達成することがさらに容易になる。
【0099】
図7および8は、本出願に係る電磁加熱式制御方法の他の実現形態の模式的なタイミング図を示している。図7および8に示される実現形態は、加熱フェーズおよび停止フェーズの継続時間が異なる点においてのみ、図6に示される実現形態と異なる。図7に示される実現形態では、完全な制御サイクルは、5回のチョッピング周期によって構成されるが、加熱フェーズの継続時間は、2回のチョッピング周期である。したがって、図7に示される実現形態は、加熱のデューティ比が3/5である場合に対応する。図8に示される実現形態では、完全な制御サイクルは、5回のチョッピング周期によって構成されるが、加熱フェーズの継続時間は、1回のチョッピング周期である。したがって、図8に示される実現形態は、加熱のデューティ比が2/5である場合に対応する。
【0100】
したがって、本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱制御のための方法は、低出力時に連続加熱を達成するだけでなく、起動フェーズおよび加熱フェーズのデューティ比を調整することによって、可変低出力における加熱を達成することができる。
【0101】
図6ないし8は、本出願に係る電磁加熱式制御方法の実現形態に関する単なる模式的なタイミング図に過ぎないことは、留意されるべきである。それらの図における種々のパラメータの波形の振幅および継続時間の描写は、単に課題の説明を容易にするためであり、種々のパラメータの波形の振幅もしくは継続時間、またはそれらの間の関係を制限することが意図されることはない。例えば、図6ないし8における第二の駆動電流I2の振幅は、I1よりも小さいが、これは、第一の駆動電流I1よりも必然的に小さくなるように第二の駆動電流I2を制限するためではなく、単に第二の駆動電流I2が第一の駆動電流I1と異なることを例証するために用いられているに過ぎない。例えば、第二の駆動電流I2は、第一の駆動電流I1よりも大きくすることができる。さらに、異なる駆動サイクルにおいて、I1およびI2のそれぞれの振幅は、同じであったり、または異なったりとすることができる。図6ないし8に示されるように、各チョッピング周期(AC電源の周波数が50Hzである場合、チョッピング周期は10msである)には、複数の駆動サイクルが含まれる。ミリ秒単位のサイクル制御の下、一つの同じ駆動サイクルにおいて、第一の駆動電流I1および第二の駆動電流I2の振幅は、実質的に一定である。
【0102】
図10は、本出願に係る電磁加熱式調理器における加熱デバイスの別の実現形態を示している。この実現形態では、図4に示される実現形態とは異なり、電圧検出モジュール50における一方の端部は、IGBTの駆動端子に電気的に結合され、他方の端部は、IGBTの駆動端子の電圧値を検出し、その電圧値を駆動モジュール60にリアルタイムで送信するために、駆動モジュール60に電気的に結合される。制御モジュール70は、IGBTの駆動端子の電圧値に基づいて、パワースイッチ・トランジスタを駆動するように駆動モジュール60を制御する。
【0103】
図11は、本出願に係る電磁加熱式調理器におけるの加熱装置のさらに別の実現形態を示している。この実現形態では、図10に示される実現形態とは異なり、制御ユニットは、加熱制御モジュール70Aおよび主制御モジュール70Bから構成される。ゼロクロス検出モジュール80は、AC電源の電圧ゼロクロス信号を加熱制御モジュール70Aに送信する。主制御モジュール70Bは、加熱制御モジュール70Aに制御信号を送信し、加熱制御モジュール70Aからリアルタイムでフィードバックされる情報に基づいて、対応する調整を行う。主制御モジュール70Bは、電磁加熱式調理器の目標出力Ptを取得し、目標出力Pt、閾値出力Pd、オフセット継続時間T0、および開始チョッピング周期回数nを加熱制御モジュール70Aに送信する。加熱制御モジュール70Aは、目標出力Ptが閾値出力Pdよりも低いかどうかを判定する。そうである場合、加熱制御モジュール70Aは、駆動端子の電圧値および電圧ゼロクロス信号に基づいて、パワースイッチ・トランジスタを駆動するように駆動モジュール60を制御する。
【0104】
図4および10における駆動モジュール60および制御モジュール70は、併せて駆動制御モジュールと呼ぶことができる。また、図11における駆動モジュール60、加熱制御モジュール70A、および主制御モジュール70Bは、併せて駆動制御モジュールと呼ぶこともできる。
【0105】
また、本出願は、上述される電磁加熱式調理器用の加熱制御式デバイスを備え、上述される電磁加熱式制御方法を使用する、電磁加熱式調理器を提供する。
【0106】
本出願に係る電磁加熱式調理器は、電磁加熱式コンロ(electromagnetic heating cooktop)、電磁加熱式炊飯器、電磁加熱式圧力釜などの、調理器とすることができる。
【0107】
明らかに、上記の電磁加熱式調理器は、上記の加熱制御式デバイスにおける種々の特徴を含むことができ、対応する技術的課題を解決し、対応する効果を有することができる。
【0108】
特に定義しない限り、本明細書に使用される技術用語および科学用語は、本出願の技術分野における当業者によって、一般的に理解されることと同じ意味を有する。本明細書に使用される用語は、具体的な実施態様を説明する目的のためであり、本出願を限定することはない。
【0109】
本明細書に現れる「第一(first)」および「第二(second)」などの用語は、単に説明のために使用されるに過ぎないのであり、技術的特徴の個数または相対的重要性を限定するものとして理解することはできない。本明細書に現れる「部材(member)」などの用語は、単一の部品を意味するだけでなく、複数の部品の組み合わせを意味することもある。本明細書に現れる「接続する(connect)」、「取り付ける(mount)」、および「提供する(provide)」などの用語は、部品が他の部品に直接取り付けられることを意味するだけでなく、部品が中間部品を介して他の部品に取り付けられることを意味することもある。本明細書における実現形態に記載される特徴は、その特徴が当該別の実現形態において適用不可能である場合、または別段の指示がない限り、別個に、または他の特徴と組み合わせて、別の実現形態に適用することができる。
【0110】
本出願は、上述される実現形態を通して説明されている。しかしながら、上述される実現形態は、記載される実現形態の範囲に本発明を限定することが意図されることはなく、単に例証および説明のために過ぎないと、理解されるべきてある。本出願の教示に従って、より多くの変形および修正を行うことができ、本出願によって主張される保護範囲に入ることができると、当業者であれば理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
【国際調査報告】