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特表2024-515100特定のHDAC6阻害剤及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】特定のHDAC6阻害剤及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/41 20060101AFI20240328BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61K31/41
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564130
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060287
(87)【国際公開番号】W WO2022223543
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021000009926
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591279294
【氏名又は名称】イタルファルマコ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ITALFARMACO SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ フォサーティ
(72)【発明者】
【氏名】フラヴィオ レオーニ
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ サムエレ ポッツィ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベッタ ガルビアーティ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ステインクーラー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、腫瘍の免疫療法及び、HDAC6介在の一つ以上の疾患の治療において有用である、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せ。
【請求項2】
前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤は、イピリムマブ又は、トレメリムマブである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
薬剤としての使用である、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PD-L1抗体による治療により向上又は予防されやすい、いかなる疾患又は条件の治療における、請求項3に記載の使用のための組合せ。
【請求項5】
抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体による治療の中止をした患者の治療における、請求項3又は4に記載の使用のための組合せ。
【請求項6】
腫瘍の免疫療法又は、HDAC6介在の一つ以上の疾患の治療における、請求項3~5のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項7】
抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体による治療を受けていない患者の治療における、請求項6に記載の使用のための組合せ。
【請求項8】
悪性黒色腫、乳がん、腎細胞がん、非小細胞肺がん、及び結腸直腸がんから選択される一つ以上の疾患の治療における、請求項6又は7に記載の使用のための組合せ。
【請求項9】
N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤が、同時、別途又は、順次に投与されることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項10】
N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミドが、毎日、好ましくは、一日に2~3回、より好ましくは、経口経路により、そして、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤は、2~4週毎に、好ましくは、静脈注射により、患者に投与されることを特徴とする、請求項9に記載の使用のための組合せ。
【請求項11】
N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミドが、200mg~1000mgBID又は、100mg~1000mgTIDの範囲の量で、そして、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤が、2~4週毎に0.5~10mg/kg、好ましくは、2~4週毎に1~3mg/kgの範囲の量で、患者に投与されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用のための組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の免疫療法及び、HDAC6介在の一つ以上の疾患の治療において有用である、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、少なくとも一つのCTLAチェクポイント阻害剤を含む組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド(本明細書では、「ITF3756」としても示す)は、特許文献1に開示されている化合物8であり、この文献は、その合成方法、及び、HDAC6阻害剤としてのその活性、並びに、移植片拒絶、GVHD、筋炎、異常なリンパ球機能と関連する疾患、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、末梢神経障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん、神経変性病理などの治療を開示している。
【0003】
ヒトHDACクラスは、2つの群、亜鉛依存性HDACと、サーチュイン(クラスIII)としても知られるNAD依存性HDACとに分けられる、18種の酵素からなる。亜鉛依存性HDACは、4つのクラス:1)主として核に所在が確認される偏在性アイソザイムであるHDAC1、2、3、および8を含むクラスI、2)核および細胞質の両方に所在が確認されるアイソザイムであるHDAC4、5、7、および9を含むクラスIIa、3)主として細胞質に所在が確認されるHDAC6およびHDAC10を含むクラスIIb、および4)HDAC11だけを含むクラスIVにさらに分配される。クラスIIaおよびIIbは、クラスI HDACとは異なり、組織特異的に発現する。
【0004】
HDACファミリー、または特定のアイソフォーム、特にHDAC6のための選択的阻害剤は、増殖性障害およびタンパク質蓄積に関連した病理、免疫系障害、ならびに神経疾患および神経変性疾患、たとえば、卒中、ハンチントン病、ALS、アルツハイマー病の治療に特に有用となり得る。
【0005】
特にHDAC6アイソフォームについては、α-チューブリン、Hsp90(熱ショックタンパク質90)、コルタクチン、β-カテニンなどの、異なる基質が確認されている。これらタンパク質のアセチル化のHDAC6による変調は、免疫応答(非特許文献1;非特許文献2)、細胞移動および細胞-細胞相互作用を含む微小管動力学の調節(非特許文献3)、変性したタンパク質の分解などの、いくつかの重要な過程との相互関係が示されている。
【0006】
加えて、HDAC6は、アグリソームとして知られる複合体を介した、分解されたタンパク質の異化の過程にも関与する。HDAC6は、ポリユビキチン化タンパク質およびダイニンを結合し、したがって、変性したタンパク質の、微小管に沿ったアグリソームへの一種の送達を活性化することができる(非特許文献4)。
【0007】
このHDAC6細胞保護活性の変化は、変性したタンパク質の蓄積を一般的な病理学的特色とする、パーキンソン病(非特許文献5)やハンチントン病(非特許文献6)などの種々の神経変性病理との相互関係が示されている。
【0008】
さらにHDAC6は、特に、種々のタイプの白血病(非特許文献7)や多発性骨髄腫(非特許文献8)などの血液腫瘍において、多くの腫瘍学的タンパク質の調節に関与する。HDAC6によるα-チューブリンアセチル化の調節は、細胞の運動性が重要な役割を果たす、転移開始に関係している可能性もある(非特許文献9)。
【0009】
近年、HDAC6は、この酵素が、免疫チェクポイント蛋白PD-L1の発現の必須の調節剤であることが示されたことから、新規ガン免疫療法のターゲットとして関心を集めている(非特許文献10)。HDAC6は、臨床前のガン免疫療法モデルにおいて効果的であることが示され、そして、抗PD-L1抗体の活性を増強させることが示されている(非特許文献11,非特許文献12,非特許文献13)。
【0010】
CTLA4又は、CTLA-4(細胞毒性T-リンパ球-関連蛋白4)は、免疫チェクポイントとして機能し、そして、免疫応答を低減させる蛋白レセプターである。CTLA4は、制御性T細胞中で、恒常的に発現され、しかし、活性化後に、典型的なT細胞中では低減される-ガンにおいて特に注目すべき現象。抗原-存在細胞の表面上でCD80又はCD86に結合されているとき、それは「オフ」スイッチとして働く。
【0011】
(CTLA4に対するアンタゴニスト抗体を使用して)CTLA4をブロックする可能な治療上の利点に対する興味が増加している。イピリムマブは、悪性黒色腫の治療に対して、2011年3月に、米国、食品医薬品局(FDA)により承認された最初の抗CTLA4抗体である。FDAは、進行悪性黒色腫の患者に対して、抗CTLA4治療イピリムマブ3mg/kgプラス抗PD-1治療ニモルマブ1mg/kgの投与も承認している。この投与計画は、生存率を上げ、進行を抑制させ、そして、イピリムマブ単独と比較して、他覚的奏効果(objective response)を達成する患者数を増加させる(非特許文献14)。しかし、これらの利点は、グレード3/4処置関連の有害事象の高い割合を含む、毒性の増加を伴う。例えば、ニモルマブによる治療は、以下の有害事象;腎炎、肝炎、膵炎及び、肺炎に関連している(非特許文献15)。
【0012】
他の薬剤とチェクポイント阻害剤の組合せに、多くの興味が示されている。もちろん、目的は、適切な他の薬剤を見出すことである。肺がん、そして、現在は乳がん、そして、化学療法が効果的な他の疾患の世界で、研究者は、免疫チェクポイント阻害剤による治療と化学療法の組合せを探し、それらは、いくつかの成功を生み出している。
【0013】
しかしながら、組合せ治療は、ペムブロリズマブ単独に対して、プログレッションフリーサバイバルを改善する最初のプライマリーエンドポイントを欠くことから、ペムブロリズマブ(抗PD-1)のフェーズIIIトライアル、および、2018年4月に中止された、悪性黒色腫に対するインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)阻害剤、エパカドスタットのようないくつかの失敗が起きている。
【0014】
機械論的な観点からは、この組合せは、良好な結果を生じさせる感覚を与えるが、しかし、この組合せの劇的な失敗は、開発を前に進めるための組合せを精査して良い仕事をするために、どのようなことが必要かを研究者に提供する良い教訓を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2018/189340号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】J. Med. Chem. (2012), 55, 639-651
【非特許文献2】Mol. Cell. Biol. (2011), 31(10), 2066-2078
【非特許文献3】Aldana-Masangkay et al., J. Biomed. Biotechnol. (2011), 2011, 875824
【非特許文献4】Kawaguchi et al., Cell (2003) 115 (6), 727-738
【非特許文献5】Outerio et al., Science (2007), 317 (5837), 516-519
【非特許文献6】Dompierre et al., J. Neurosci. (2007), 27(13), 3571-3583
【非特許文献7】Fiskus et al., Blood (2008), 112(7), 2896-2905
【非特許文献8】Hideshima et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2005), 102(24), 8567-8572
【非特許文献9】Sakamoto et al., J. Biomed. Biotechnol. (2011), 2011, 875824
【非特許文献10】Lienlaf et al. Mol Oncol 2016 May;10(5):735-750
【非特許文献11】Ray et al., Leukemia 2018 Mar;32(3):843-846.
【非特許文献12】Keremu et al Cancer Chemother Pharmacol. 2019 Feb;83(2):255-264
【非特許文献13】Knox et al. Sci Rep. 2019 Apr 16;9(1):6136
【非特許文献14】Larkin J et al. n engl j med 381;16 2019
【非特許文献15】Kang JH et al. Trends in Immunology 42, 293, 2021
【非特許文献16】Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009
【非特許文献17】Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY-VCH, 127-133, 2008
【非特許文献18】PAPAGIANNOROS A. ET AL. IN VIVO 20:129-136, 2006
【非特許文献19】JENSEN M.M. ET AL. BMC MEDICAL IMAGING 8(16), 2008
【非特許文献20】PEARSON ET AL., 2016, JOURNAL OF AUTOIMMUNITY 66, 76-88
【非特許文献21】(ANSARI ET AL., 2003, THE JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE 198, 63-69
【非特許文献22】(RAPTOPOULOU ET AL., 2010. ARTHRITIS & RHEUMATISM 62, 1870-1880
【非特許文献23】WOOD ET AL., 2020, THE JOURNAL OF IMMUNOLOGY 204, 73.12
【非特許文献24】(ZHANG AND BRAUN, 2014, INTERNATIONAL IMMUNOLOGY 26, 407-415
【非特許文献25】(ANSARI ET AL., 2003, THE JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE 198, 63-69
【非特許文献26】Demaria et al., Clin. Cancer Res. 11, 728-734, 2005
【非特許文献27】Reilley et al., J. Immunother. Cancer 7, 323, 2019
【非特許文献28】Reilley et al., 2019; Sharma et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 116, 10453-10462, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、公知の及び承認された組合せの治療効果の維持又は向上、並び/又は、単独で投与される医薬の治療効果の維持又は向上させ、同時に、より良い毒性プロファイルを有する新規な組合せを提供することである。
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、ITF3756及び、抗CTLA4抗体を含む組合せが、単一の医薬の投与よりも、抗腫瘍効果に優れていることを示し、そして、前記組合せは相乗的な治療効果を示すことを見出した。特に、最も効能がある抗腫瘍効果は、抗CTLA4 10mg/kgと組合せたITF3756 50mg/Kgを、1日3回で得られ、それは二次的な腫瘍の増殖を予防することにもなる。
【0019】
本発明者は、驚くべきことに、本発明に従った組合せの治療は、腫瘍増殖阻害で同等の効能を維持しつつ、抗CTLA4及び抗PD-1の組合せ、又は、抗CTLA4及び抗PD-L1の組合せよりもより良好で安全なプロファイルを有し得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本発明の第一の対象は、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せである。
本発明の第二の対象は、前記組合せの薬としての使用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対するITF3756処置効果を示す。
図2図2は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対する抗CTLA4 Mabの効果を示す。
図3図3は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対する、抗CTLA4 Mabと組合せた25mg/Kg用量のITF3756の効果を示す。
図4図4は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対する、抗CTLA4 Mabと組合せた50mg/Kg用量のITF3756の効果を示す。
図5図5は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対する、抗CTLA4 Mabと組合せた50mg/Kg×3用量のITF3756の効果を示す。
図6図6は、マウスにおける、CT26腫瘍増殖に対する、抗CTLA4 Mabと組合せた50mg/Kg用量を一日3回及び、一日1回のITF3756の長期間投与の効果を示す。
図7図7は、CT26マウスモデルにおける、第二腫瘍(腫瘍チャレンジ)の増殖に対する、抗CTLA4と組合せたITF3756の前投与の効果を示す。
図8A図8Aは、CT26マウスモデルにおける、第二腫瘍(腫瘍チャレンジ)の増殖に対する、抗CTLA4(10mg/kg)と組合せたITF3756(50mg/Kgを一日1回)の前投与の効果を示す。
図8B図8Bは、CT26マウスモデルにおける、第二腫瘍(腫瘍チャレンジ)の増殖に対する、抗CTLA4(10mg/kg)と組合せたITF3756(50mg/Kgを一日1回)の前投与の効果を示す。
図9A図9Aは、CT26マウスモデルにおける、第二腫瘍の増殖に対する、抗CTLA4(10mg/kg)と組合せたITF3756(50mg/Kgを一日3回)の前投与効果を示す。
図9B図9Bは、CT26マウスモデルにおける、第二腫瘍の増殖に対する、抗CTLA4(10mg/kg)と組合せたITF3756(50mg/Kgを一日3回)の前投与の効果を示す。
図10図10は、抗PD-L1+抗CTLA4の組合せに対する、腫瘍増殖を予防するための抗CTLA4と組合せたITF3756の効果を示す。
図11図11は、雌NODマウスにおける糖尿病に対する、ITF3756単独又は、抗CTLA4と組合せたITF3756の効果を示す。
【0022】
(定義)
別段定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語、表記、および他の科学用語は、本開示特許が属する分野の技術者に一般に理解されている意味を有するものとする。いくつかの場合では、一般に理解されている意味を有する用語を、明確さのため、および/または即座に参照されるように、本明細書において定義しており、したがって、そのような定義を本明細書に含めることが、当業界で一般に理解されている定義に対する実質的な違いを表すことであると解釈されるべきでない。
【0023】
用語「生理学的に許容される賦形剤」とは、本明細書では、それ自体のいかなる薬理作用もなく、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたき、有害な反応を生じない物質を指す。生理学的に許容される賦形剤は、当業界で周知であり、たとえば、参照により本明細書に援用される非特許文献16で開示されている。
【0024】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本明細書では、塩化された化合物の生物学的有効性および特性を保持し、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたき、有害な反応を生じない塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機または有機塩である場合があり、薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、およびパラトルエンスルホン酸塩が挙げられる。薬学的に許容される塩に関するこれ以上の情報は、参照により本明細書に援用される非特許文献17において見ることができる。
【0025】
用語「同時、別途又は、順次に投与」とは、本明細書では、第一及び第二の化合物を同時に投与すること、又は、2つの化合物が患者の体内で同時に作用するように投与すること、又は、治療効果を提供するように、もう片方の化合物の後に片方の化合物の投与することを言う。いくつかの実施形態では、化合物は食事と一緒に服用される。別の実施形態では、化合物は、食後30分又は60分後のように、食後に服用される。いくつかの実施形態では、片方の化合物は、もう片方の化合物の投与に続き、一定間隔で、患者に投与される。
【0026】
用語「CTLA4チェクポイント阻害剤」又は、「抗CTLA4」又は「抗CTLA4抗体」とは、本明細書に従うと、CTLA4の生物学的活性(細胞毒性T-リンパ球-関連蛋白4)免疫チェクポイントを、部分的又は完全に阻害できるいかなる化合物を言う。
【0027】
用語「およそ」及び「約」とは、本明細書では、測定において生じるかもしれない、測定誤差の範囲を言う。
【0028】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、非排他的な用語であると理解され(「限定されないが~を含む」を意味する)、「から本質的になる(essentially consist of、essentially consisting of)」、「からなる(consist of、consisting of)」などの用語もサポートするものであると考えられる。
【0029】
用語「から本質的になる(essentially consists of、essentially consisting of)」は、本発明の新規な特徴に影響を及ぼす他の成分が含まれない(任意選択的な賦形剤は含まれる場合がある)ことを意味する、半閉鎖的な用語であると理解される。用語「からなる(consists of、consisting of)」は、限定的な用語であると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実験セクションにおいて詳細に述べるように、本発明者は、ITF3756(25mg/Kg及び50mg/Kg)+抗CTLA4(10mg/Kg)の処置(治療)組合せが、単一の医薬の投与よりもより活性を示したことを見出した。
【0031】
特に、得られたデータは、ITF3756及び、抗CTLA4の単独投与に対して、ITF3756及び抗CTLA4の組合せは相乗効果を示す。
【0032】
更に、本発明者は、最も有力な抗腫瘍効果が、抗CTLA4(10mg/kg)と組合せたITF3756(一日3回、50mg/Kg)の投与で得られたことを見出した。
【0033】
得られた結果は、処置組合せにより誘導された免疫システムの活性化を示唆する。実際、本発明の組合せは、第二腫瘍の増殖を予防することになる。
【0034】
更に、本発明者は、ITF3756が、インビトロで刺激されたヒトモノサイト中におけるPD-L1のサイトカイン誘導発現を低減させること、並びに、ITF3756(一日3回、50mg/Kg)の投与が、インビボでマウス免疫細胞中のPD-L1発現を低減させたことを見出した。抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は、抗CTLA4抗体と抗PD-1抗体若しくは抗PD-L1抗体との組合せによる、NODマウスの処置は、臨床医学の副作用として知られる、自己免疫性糖尿病の導入を強力に加速化させる。驚くべきことに、発明者は、ITF3756(一日3回、50mg/Kg)の単独又は、抗CTLA4抗体との組合せたものの何れかによる、NODマウスの処置は、自己免疫性糖尿病の導入を加速化させなかったことから、この組合せ処置は、より優れており、そして、抗PD(L)1と抗CTLA4抗体との組合せと比較したとき、より少ない自己免疫性有害事象生じさせることになる。
【0035】
したがって、本発明の第一の目的は、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤を含む組合せである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態に従うと、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤は、イピリムマブ又は、トレメリムマブから選択される。
【0037】
本発明の第二の目的は、前記組合せの薬としての使用である。
【0038】
好ましくは、組合せは、抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PD-L1抗体による治療により向上又は予防されやすい、いかなる疾患又は条件の治療において有用である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態に従うと、組合せは、抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体の治療が中止された患者の治療に有用である。特に、患者が、毒性により、抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体の治療を中止している。
【0040】
本発明の好ましい実施形態に従うと、組合せは、抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体で治療されていない患者の治療に有用である。特に、患者が、毒性が予想されるために、抗CTLA4、抗PD1及び/又は、抗PDL1抗体の治療を受けていない。
【0041】
本発明の組合せは、好ましくは、腫瘍の免疫療法及び、HDAC6介在の疾患の治療に対して有用である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態に従うと、組合せは、以下の群から選択される一つ以上の疾患の治療に有用である:副腎皮質がん、肛門がん、星細胞腫、皮膚基底細胞がん、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、原発不明がん、心臓腫瘍、子宮頸がん、胆管がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、眼内黒色腫、卵管がん、胆嚢がん、胃がん、 消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、精巣がん、頭頸部がん、肝細胞がん、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、肺がん(非小細胞がん、小細胞がん、胸膜肺芽腫、気管気管支腫瘍)、悪性黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、NUT遺伝子変化を伴う正中線管がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、神経芽腫、卵巣がん、膵がん、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、 褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性腹膜がん、前立腺がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、肉腫、皮膚の扁平上皮がん、胸腺腫および胸腺がん、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行細胞がん、子宮がん、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、ウィルムス腫瘍。好ましくは、組合せは、悪性黒色腫、乳がん、腎細胞がん、非小細胞がんの治療に有用である。
【0043】
好ましい実施形態に従って、本発明に従った使用のための組合せは、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩、及び、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤が、同時、別途又は、順次に投与されることに特徴がある。
【0044】
好ましくは、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩は、毎日、好ましくは、一日に2~3回、そして、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤は、2~4週毎に、好ましくは、最大4用量が、患者に投与される。
【0045】
好ましくは、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩は、患者に経口経路で、投与される。好ましくは、CTLA4チェクポイント阻害剤は、静脈内注射により投与される。
【0046】
より好ましくは、N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド又はそれらの薬学的に許容される塩は、患者に、200mg~1000mgBID又は、100mg~1000mgTIDの範囲の量で投与され、そして、前記少なくとも一つのCTLA4チェクポイント阻害剤は、患者に、2~4週毎に、0.5~10mg/kg、好ましくは、2~4週毎に、1~3mg/kgの範囲の量で投与される。
【0047】
ITF3756に対するヒト用量は、生理学的薬物速度論(PBPK)モデルに基づいて、ソフトウェア GastroPlus(商標)(Simulation Plus, Lancaster, CA) の使用を通じて予測された。予測用量の目標C平均は、マウスで有効性が示された投与スケジュールの後に見いだされた24時間中の平均レベルで、200ng/mLであった。
【0048】
モデリング戦略は、入手できるインビボ薬物動態データ(マウス、ラット、犬及びカニクイザル)の実験に基づいた動物種に対してモデルを最初に確立させ、そして、評価し、そして、その後、種特異的インプットを、そして、ヒト薬物動態の計画に対するインビトロからインビへのスケーリングアプローチと整合する生理学的データを使用することである。ITF3756の除去に対してつくられた仮説をサポートするために、ITF3756と除去メカニズムにおいて類似する、存在する医療データを有する化合物、ITF3757(ジビノスタット)に対して同様の研究が行われた。
【0049】
このモデルは、物理化学的特徴並びに、LogD、pkA、水及びバイオリレバント流体中の溶解性、透過性、並びに、それぞれの種に対して生じたプラズマ分布に対する蛋白結合及び血液のような、ITF3756のインビトロデータを使用して確立された。
【0050】
肝臓代謝は、種特異的な凍結保存された肝細胞とITF3756の培養後にインビトロで生じたデータから出発して研究された。腎臓及び腸の代謝は、補助因子としてのNADPH及びUDPGAと、種特異的な腎臓及び腸ミクロソームとを試験品と培養した後に収集されたインビトデータから控除された。適切なスケール係数を使用して、その後、インビトロからインビボへの推定がされた。肝臓外代謝の代わりに、全血クリアランスが使用された。組織濃度は、全ての組織は、灌流速度限定分布で良く攪拌された部分として振る舞い、そして、医薬及び組織は、プラズマ分配係数Kpで組織特異的に振る舞うと仮定して、予測された。Kp値は、一般的に、医薬の物理化学的特性及び組織組成から予想された。
【0051】
腸壁を通る吸収及び輸送は、全身PBPKモデルと一体化された、ACATモデル
(Advanced Compartmental Absorption and Transit)を使用して予測された。
【0052】
第一の工程で、静脈注射投与後の薬物動態パラメータが、各動物種において予測された。経験上のスケール係数が、肝臓外代謝に対して使用されて全身クリアランスが得られ、そして、LogDに対して使用されて分配用量が得られた。経験上のスケール係数に基づいて、低い及び高いクリアランスシナリオが見つかった。
【0053】
経口投与の後の薬物動態が、その後、モデル化され、種間の多様性により、透過性、可溶性、及び溶解性の不確実性が見つかった。8つのシナリオの概略を示し、その後、それらの中で、最悪及び最高のケースを、経口吸収のシナリオにおいて見つけることができる。
【0054】
ヒト薬物動態の計画は、その後、バイオアベイラビリティの最高及び最悪の組合せ、高い及び低いクリアランス、並び、高い及び低い容量分配に由来して、8つのシナリオを使用してつくられた。ヒト薬物動態を最高にさせるシュミレーションされたシナリオによって、目的の暴露に達すると予測される投与計画は、上記に述べるように、200mg~1000mgBID又は、100mg~1000mgTIDの範囲である。
【0055】
さらに、本発明は以下の実験セクションにより詳細に説明されることになるであろう。
【実施例
【0056】
(実験セクション)
(実施例1)
「CT26マウスモデルにおける、抗CTLA4抗体と組合せて投与されたITF3756の抗腫瘍効果」
マウス結腸癌セルラインCT26の使用に基づくマウスモデルを使用して、抗CTLA4抗体と組合せて投与されたITF3756の抗腫瘍効果が決定された。このモデルでは、CT26細胞は、同系統のマウスの皮下に移植され、そして、その効能は、腫瘍結節(tumor nodule)の容量に基づいて腫瘍増殖阻害として決定された。
【0057】
(材料および方法)
ITF3756(N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド)
ITF3756は、ITALFARMACO SPA.医薬品化学部により合成された。ITF3756、バッチ5は、粉体としてDMSO中に溶解され、そして、-20℃で保存された。投与の各日に、溶液は、HO/PEG400 1:1で希釈して、DMSO 0.5%中に、HO/PEG400 1:1の溶液、2.5及び5.0mg/mLを得た。
【0058】
溶液は、200μL(最終用量25及び50mg/Kg)の容量で、マウスに胃管栄養針を使用して経口投与された。ITF3756投与は、腫瘍結節が明白になったとき(細胞接種からおよそ10日目)に開始された。ITF3756投与は、表1に報告されるように、一日1回又は一日3回、経口投与(os)された。
【0059】
(抗CTLA4抗体)
シリアンハムスターIgG Mab抗マウスCTLA4は、BioXell (cat. BE0131, clone 9H10)から購入され、PBSで、1、0.3及び、0.1mg/mLの最終濃度に希釈され、+4℃で保存された。各マウスは、個々の溶液(最終用量10.0、3.0及び、1.0mg/Kg)を、200μLで処置された。
【0060】
抗CTLA4 Mab投与は、腫瘍結節が明白になったとき(細胞接種からおよそ10日目)に開始された。抗CTLA4は、表1に報告されているように、腹腔内(ip)に、一日おきに一日1回、合計で4処置に対して投与され、続いて、7日目にウォシュアウトされた。この処置サイクルは、研究の終了まで継続された。
【0061】
(インビボ研究)
雌6週齢BALB/cマウスは、Charles River Italiaから購入し、そして、12時間の明暗サイクル下、食餌および水は自由に与えて維持した。順化の5日後、マウスは、腫瘍細胞の注入が施された。CT26(マウスBALB/c 結腸癌、CT26.WT ATCC CRL-2638)細胞は、RPMI 1640細胞培養培地+10%ウシ胎児血清(FCS)中で増殖させた。
【0062】
細胞は、トリプシンにより、対数期の間に分離され、FCSなしの培養培地で洗浄され、最終濃度、5×10細胞/mlで懸濁させた。細胞(1×10細胞/マウス)は、200μLの容量で、マウスの右側面の鼠径部分に注入 s. c.された。
【0063】
動物の少なくとも80%で腫瘍結節が明白になったとき、以下の実験群で、無作為に選び、医薬の投与が開始された。
【0064】
【表1】
【0065】
体重は、医薬投与の第一日目から開始して、一日おきに測定された。
皮下腫瘍結節の容量は、以下の式(非特許文献18)
容量(mm)=(D×d)/2
ここで、D=結節の長径であり、d=結節の短径である。
【0066】
腫瘍結節の重量は、1.05g/mLの腫瘍密度(非特許文献19)を考慮して、腫瘍容量により決定した。
腫瘍重量が体重の10%に等しくなったとき、又は、腫瘍結節が潰瘍化(人道的エンドポイント)のとき、動物は安楽死させた。
医薬の統計的な分析は、GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用した、Dunnett’s multiple比較テストで、2-way ANOVAにより、実施された。
【0067】
(結果)
CT26腫瘍の増殖に対するITF3756の効果を、図1に要約する。
25mg/Kgの用量(一日1回)は、全体の実験的な期間を通して、腫瘍増殖の顕著な阻害を示さなかった。より高い用量(50mg/Kgを一日1回)は、24日目では検出されなかった腫瘍の増殖(9%阻害)を、21日目で34%阻害(0.88g対1.34g)するという顕著な効果を示した。
【0068】
反対に、ITF3756、50mg/Kgを一日3回の処置をした動物は、19日目から始まり24日目までで顕著な腫瘍の減少(30%阻害、1.32g対1.89g)を示し、この計画の処置は、単独の毎日の投与よりも優れた薬物動態効果を示した。
【0069】
【表2】
【0070】
抗CTLA4抗体の効果を図2に要約する。抗体の3つの用量の全ては、24日目において、同様の活性と、腫瘍阻害の最大効果(66-57%)を示した。
【0071】
【表3】
【0072】
抗CTLA4抗体の最も高い用量(10mg/Kg)と組合せた、25mg/Kgで投与されたITF3756の効果を、図3に報告する。
【0073】
【表4】
【0074】
本発明に従ったITF3756(25mg/Kg)+抗CTLA4(10mg/Kg)の処置の組合せは、単独の医薬の投与よりもより活性を示す結果を示した。更に、前記組合せは、相乗的な治療効果を示している。
【0075】
実際、24日目に、医薬の組合せは、腫瘍の増殖の82%阻害(0.39g対1.89g)を誘導したが、一方、ITF3756及び、抗CTLA4単独は、それぞれ、7%(1.76対1.89)及び、57%の阻害(0.82対1.89g)を誘導した。
【0076】
抗CTLA4抗体の最も高い用量(10mg/Kg)と組合せて、50mg/Kgで投与されたITF3756の効果を、図4に報告する。
【0077】
【表5】
【0078】
ITF3756(50mg/Kg)+抗CTLA(10mg/Kg)の処置の組合せは、単独の医薬投与よりもより活性を示す結果を示した。更に、前記組合せは、相乗的な治療効果を示している。
【0079】
実際、24日目に、医薬の組合せは、腫瘍の増殖の83%阻害(0.32g対1.89g)を誘導したが、一方、ITF3756及び、抗CTLA4単独は、それぞれ、9%(1.72対1.89)及び、57%阻害(0.82対1.89g)を誘導した。
【0080】
抗CTLA4抗体の最も高い用量(10mg/Kg)と組合せて、50mg/Kgを一日3回投与されたITF3756の効果を、図5に報告する。
【0081】
【表6】
【0082】
ITF3756(50mg/Kg×3)+抗CTLA(10mg/Kg)の処置の組合せは、単独の医薬投与よりもより活性を示す結果を示した。更に、前記組合せは、相乗的な治療効果を示している。
【0083】
実際、24日目に、医薬の組合せは、腫瘍の増殖の89%阻害(0.2g対1.89g)を誘導したが、一方、ITF3756及び、抗CTLA4単独は、それぞれ、30%(1.32対1.89)及び、57%阻害(0.82対1.89g)を誘導した。更に、24日目の処置の組合せの効果は、抗CTLA4抗体単独により与えられるものより、顕著に高かった(p<0.001)。
【0084】
両方の医薬の組合せ(抗CTLA4+ITF3756 50mg/Kgを一日1回又は3回)で処置された動物の腫瘍増殖は、24日目(コントロール群の最終実験日)にほぼ完全に終わるため、これらの2つの群に対する医薬投与は、42日まで長期になった。
【0085】
得られた結果を、図6に報告する。このグラフでは、測定できる腫瘍の平均容量を報告する。
【0086】
本発明に従った両方の医薬の組合せは、重ね合わせが可能(superimposable)で、且つ、強力な腫瘍増殖の阻害を、35日まで誘導させた。ITF3756を一日1回+抗CTLA4で処置された動物の腫瘍は、処置日から48日目まで増殖し続けたが、一方、ITF3756を一日3回+抗CTLA4で処置された動物の腫瘍は、42日目まで一定に維持され、その後、それらの容量は減少した。
【0087】
予想外に、ITF3756を一日1回+抗CTLA4で処置された群の5分の2のマウス、及び、ITF3756を一日3回+抗CTLA4で処置された群の4分の2のマウスは、腫瘍がなかった。
【0088】
更に、2つの医薬の組合せ群(抗CTLA4+ITF3756 50mg/Kgを一日1回及び、3回)は、第二の腫瘍が注入(腫瘍チャレンジ)されて、第二の腫瘍の増殖がモニターされた。
【0089】
第二の注入(1×10CT26細胞/マウス s.c.)は、49日目に、左鼠径部分中に行なわれ、そして、73日目まで、動物は無処置に維持させた。第二の注入に使用されたCT26細胞の好適な増殖のコントロールとして、5匹のナイーブマウス(naive mice)は、同日に注入された。
【0090】
得られた結果を図7に報告する。
ナイーブ動物(naive animal)(コントロール群)の左わき腹に注入されたCT26細胞は、予想された増殖示した。
【0091】
第二の腫瘍は、図8(A-B)に報告されているように、ITF3756(50mg/Kgを一日1回)+抗CTLA4(10mg/kg)で処置された5匹のマウス中の3匹(#3,5及び6)において、若干増殖した(63日目)。
【0092】
この群(ITF3756 50mg/Kgを一日1回+抗CTLA4 10mg/kg)において、48日目に、腫瘍耐性動物においてのみ、第二の腫瘍が発達したが、一方、腫瘍フリー動物(マウス#2及び4)では増殖しなかった。
【0093】
図9(A-B)に報告されているように、48日目に、第一の腫瘍の存在(マウス#6のように)又は不存在(マウス#2,4、及び5のように)に関わらず、ITF3756(50mg/Kgを一日3回)+抗CTLA4(10mg/Kg)で処置されたマウスでは、第二の腫瘍は発達しなかった。
【0094】
(結論)
得られた結果は、以下のように要約し得る。
1.抗CTLA4抗体と組合せて、25mg及び、50mg/Kgを一日1回投与されたITF3756は、単独医薬の投与よりも優れた抗腫瘍効果を示し、そして、この治療効果は、相乗的である。
【0095】
2.最も効能がある抗腫瘍効果は、抗CTLA4(10mg/Kg)と組合せたITF3756(50mg/Kgを一日3回)の投与で得られた。
【0096】
3.抗CTLA4 10mg/Kgと組合せたITF3756 50mg/Kgを一日1回又は、一日3回は、顕著な腫瘍増殖の遅れを生じさせ、そして、処置の73日後、5分の2及び、4分の4のマウスが、それぞれ腫瘍なしであった。
【0097】
4.第二の腫瘍は、発達しなかった(TF3756 50mg/Kgを一日3回+抗CTLA4 10mg/Kgで処置された群のように)、又は、5匹のマウス中3匹において、ゆっくりと発達した(ITF3756 50mg/Kgを一日1回+抗CTLA4 10mg/Kgで処置された群のように)。ITF3756及び抗CTLA4の両方は、それらの抗腫瘍効果を果たすには有効な免疫系を必要とすることから、この結果は、効果的な抗腫瘍免疫応答、第二の腫瘍の増殖を予防する応答が、処理された動物において誘導されたことを示す。
【0098】
(実施例2)
「抗PD-1+抗CTLA4の組合せに対する、腫瘍増殖を防止するための抗CTLA4と組合せたITF3756の効果」
Balb/c雌6週齢は、右側面中にCT26WT腫瘍細胞注入が注入された。約10日後、腫瘍が検出できるときは何時でも、以下のスキームに従った処置が開始された。
【0099】
1)ITF3756 50mg/kgを、os毎に、一日3回(Q3×5)+αCTLA4 10mg/kg ip 一日おきに4回、続いて6日目にウォシュアウト(本発明)
2)αPD1 3mg/kg、ip、eod+αCTLA4 10mg/kg、ipを、一日おきに4回、続いて6日目にウォシュアウト(参考例)
【0100】
腫瘍結節が動物の少なくとも80~85%において検出できるときは何時でも、処置が開始され、そして、実験は、コントロール群の腫瘍重量が、動物体重の10%に等しいとき、又は、(人道的エンドポイント)いくつかの結節が潰瘍化したとき、中止された。動物は、週2回体重を測定され、そして、腫瘍は週3回測定された。
【0101】
腫瘍結節の測定は、以下の式により計算された。
容量(mm)=(D×d)/2、ここで、D=結節の長径であり、d=結節の短径である。
【0102】
図10に報告されている結果は、腫瘍増殖阻害における2つの組合せ処置の間で、統計的有意差はなかったことを示す。
【0103】
本発明に従ったTF3756+抗CTLA4の組合せは、参考例として使用され、承認されている抗PD-1+抗CTLA4の組合せと同じような抗腫瘍活性を有する。
【0104】
(実施例3)
「糖尿病雌NODマウスにおける、ITF3756単独又は、抗CTLA4と組合せたITF3756の効果」
NODマウスは、内発的に糖尿病を発症し、そして、それらは、タイプ1型糖尿病の承認された自然発症モデルを代表する(非特許文献20)。
【0105】
プログラムされたデス-1(Programmed Death-1)(PD-1)経路は、NODマウス中の自己免疫糖尿病を制御する。PD-1又はPD-L1は、前糖尿病の10週齢マウスを、1週間未満で、誘発された糖尿病を迅速に遮断した(非特許文献21)。
【0106】
PD-1/PD-L1軸(axis)の遮断は、別の自己免疫モデルに対しても有害である。例えば、PD-1-/-マウスは、野生型マウスよりも、コラーゲン誘導関節炎(CIA)の事象を増加と、そして、症状の重症化の両方を説明している(非特許文献22)。マクロファージ上で発現されたPD-L1は、コラーゲンが誘導する関節炎がより重度の関節炎になる間、CIA及び、PD-L1のブロックから保護する(非特許文献23)。複数の硬化症の実験的自己免疫脳髄膜炎(EAE)モデルにおいて、PD-1は、重要な役割を果たし、そして、PD-L1の欠如は、病的状況の経過を悪化させる(非特許文献24)。
【0107】
HDAC6阻害は、異なる刺激にさらされた多数の細胞タイプ中で、PD-L1の発現を低減させ、それにより、免疫システムの潜在的な活性化を伴うPD-1/PD-L1軸に影響を与え得る。
【0108】
しかしながら、HDAC6阻害は、CIA及びEAEのような自己免疫病理のモデルに効果的である。更に、我々の手で、HDAC6 KOマウスは、週齢及び性別が一致するHDAC6野生型コントロールと比較して、より穏やかにEAEを発達させた。
【0109】
トータルで、これらのデータは、自己免疫反応の状況下におけるHDAC6阻害は、PD-L1発現を低減させるHDAC6阻害剤の広く知られている役割にも拘らず、保護的である。
【0110】
PD-L1上のHDAC6iの効果を考慮して、本発明者は、ITF3756で処置されたNODマウスが、抗PD-(L)1により処理したマウスのように、糖尿病を迅速に誘導し得るのか、又は、代わりに、糖尿病の誘導が影響を受けたのか、を問うた。
【0111】
抗CTLA4を持つ10-12週齢マウスの処置は、糖尿病の誘導に影響を与えなかった。しかしながら、本発明者は、抗PD-(L)1/抗CTLA-4の併用処置は、抗PD-(L)1単独と同等の効果を生じさせると予測する。
【0112】
我々の仮説は、選択的なHDAC6阻害剤ITF3756単独又は、抗CTLA-4との組合せで処置されたNODマウスは、糖尿病の経過を変更させるものではなく又は、限定された効果のみが誘導されるということである。
【0113】
(材料及び方法)
ITF3756(N-ヒドロキシ-4-((5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール-1-イル)メチル)ベンズアミド)
ITF3756は、Italfarmaco SpAの医薬品化学部により合成された。ITF3756、バッチ9は粉末としてDMSO中に溶解され、そして、-20℃で保存された。
【0114】
【表7】
【0115】
(抗体)
抗体処理は、非特許文献25に従った。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
【表10】
【0119】
【表11】
【0120】
【表12】
【0121】
【表13】
【0122】
(血糖値の測定)
血糖は、0日(開始日)から21日(終了日)の3週間、全てのマウスで評価された。血糖値は、血糖測定器 OneTouch(登録商標)Verioで測定した。血液サンプルは、針を刺して、尾静脈から抜かれた。血液一滴をテスト片中に挿入し、そして、血糖測定器が自動で血糖値を計算した。結果は、測定器のディスプレイに示された。測定器は、20~600mg/dLを測定する。20以下又は600mg/dL以上の結果は、「20以下」又は「600以上」として、装置により可視化される。
【0123】
糖尿病は、2日連続して、≧250mg/dL以上の血糖測定値により規定される。
マウスは、この間、3週間モニターされて、体重は7回測定された。
【0124】
(結果)
ICIによる処置は、臨床実践により確認されている自己免疫反応を生じさせる、内在的な可能性を与える。抗CTLA及び、抗PD-1のような2つのICIの組合せは、高い発生率の有害事象により効果的である。したがって、腫瘍免疫療法の目的は、効能を向上させて、そして、副作用を低減させ、管理可能な水準にさせることである。選択的なHDAC6阻害剤ITF3756と抗CTLA4との組合せは、抗CTLA4+抗PD-1と同等の抗腫瘍効力を有し、そして、我々のデータは、NODマウスが、優れた安全性プロファイルを有することを示。
【0125】
NODモデルで得られた結果は、抗PD-L1及び、組合せ(抗PD-L1+抗CTLA-4)の処理マウスにおいて糖尿病の劇的な誘導を示す。これらの知見は、文献的なデータと、発明者の予測、それぞれと一致している(図11)。
【0126】
糖尿病事案の増加を示した別の2つの群は、抗PD-1及び、(抗PD-1+抗CTLA4)で、21日目に、それぞれ、60%及び、50%の糖尿病事案であった。
【0127】
(ITF3756+抗CTLA4)群のマウスだけが、11日目及び、14日目の間に血糖値の一時的な上昇があったのは、著しい対照を成している。しかしながら、前記マウスは、コントロール群の平均値よりも高かったが、15日目後の全ての測定は250mg/dL以下であったことから、部分的には回復した。
【0128】
別の群では、糖尿病の誘導は検出されなかった。
抗体で処理された群で得られた結果は、NODマウスにおいてPD-1/PD-L1軸の重要な役割を記載した文献データと一致している。結果は明らかに、HDAC6阻害が糖尿病事案を増加させず、そして、選択的なHDAC6阻害剤ITF3756と抗CTLA4抗体との組合せは、糖尿病の誘導に非常に僅かな影響しか有しないことを示す。
【0129】
一方で、抗PD-1及び抗PD-L1抗体の両方と、抗CTLA4抗体との組合せは、強く糖尿病を悪化させる。
【0130】
この結果は、(抗CTLA-4+ITF3756)処置は、抗CTLA-4+抗PD-(L)1よりも、より安全なプロファイルを有し得ることを示唆する。
【0131】
(実施例4)
「4T1乳がんモデルにおける、抗CTLA4抗体と組合せて投与されたITF3756の抗腫瘍効果」
同系の腫瘍セルライン4Tトリプルネガティブ乳癌を接種したC57BL/6マウスが使用された。
【0132】
4T1腫瘍モデルは、免疫原性の低い腫瘍と考えられている(非特許文献26)。以前の実験に従って、この腫瘍の抗CTLA-4処置は、一般的な有効性を示したが、処置動物の中では変動を示し、そして、従って、4T1は、免疫療法ベースの組合せ治療を試験する良いモデルを構成している。
【0133】
ITF3756は、CT26結腸癌の処置のために同じ用量、つまり、50mg/kg(mpk)TIDが、1つの剤として、そして、抗CTLA-4抗体と組合せて使用される。後者は、1日おきに、週3回、3mpkで投与する。以前の実験では、本発明者は、両方の医薬に対して、およそ平均で40%の腫瘍増殖の減少と同等のものを観察した。抗CTLA-4は、1mpkの活性はわずかであるが、一方、3mpk及び10mpkで同等の腫瘍減少を与えた。
【0134】
腫瘍の増殖は、セルラインの皮下注入の後に誘導され、そして、マウスは少なくとも注入後少なくとも3週間モニターされる。
【0135】
(実施例5)
「B16F10悪性黒色腫モデルにおける、抗CTLA4抗体と組合せて投与されたITF3756の抗腫瘍効果」
同系の腫瘍セルラインB16F10悪性黒色腫を接種したC57BL/6マウスが使用された。
【0136】
B16F10悪性黒色腫モデルも、免疫原性の低い腫瘍と考えられており(非特許文献27)、従って、免疫療法のベースの組合せを試験するためにもう一つの良好なモデルを代表する。
【0137】
ITF3756は、CT26結腸癌の処置のために同じ用量、つまり、50mg/kg(mpk)TIDが、1つの剤として、そして、抗CTLA-4抗体と組合せて使用される。
【0138】
このモデルにおける抗CTLA-4抗体の用量に関して、本発明者は、ITF3756と組合せることが出来る好適な用量を確かめるために、予備実験を行った。文献に従って、抗CTLA-4抗体が、異なる用量、腫瘍細胞の注入後3日目に、用量200μg/マウスで、続いて、6,9及び12日目に、用量100μg/マウスで、投与され、非特許文献28が、この実験のガイドとして使用された。
【0139】
腫瘍の増殖は、セルラインの皮下注入の後に誘導され、そして、マウスは少なくとも注入後少なくとも3週間モニターされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
【国際調査報告】