(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】電気化学分析物バイオセンサ、関連する組成物ならびにそれらの製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20240328BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G01N27/327 353Q
G01N27/416 336H
G01N27/416 336G
G01N27/416 338
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564171
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022024874
(87)【国際公開番号】W WO2022225792
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】マーク ディー.エドマンドソン
(72)【発明者】
【氏名】コーリー エー.エイブラムズ
(72)【発明者】
【氏名】ロチサ アール.ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ディー.クラウド
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エル.クリーク
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー.ドラムヘラー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム イー.ストローベン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディー.トレイラー
(72)【発明者】
【氏名】ミンホア シュイ
(57)【要約】
電気化学分析物バイオセンサは分析物を検出するように構成されている。電気化学分析物バイオセンサは、複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマー基材、作用電極として機能しそして前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔内に少なくとも部分的に含まれている導電性材料を含む導電性領域、及び、前記導電性領域に隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域を含む生体適合性電極複合材を含む。導電性材料は、ミクロ多孔質ポリマー基材上のコンフォーマル金属コーティング、又はミクロ多孔質ポリマー基材中に吸収されたナノ多孔質金属を含むことができる。ミクロ多孔質ポリマー基材は、特定の用途において組織の統合及び/又は組織の内方成長を支持することができる。電気化学分析物バイオセンサは、医療、工業、農業、環境及びその他の用途に使用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサであって、
複数の相互接続された細孔を含むミクロ多孔質ポリマー基材、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔に少なくとも部分的に含まれた導電性材料を含む導電性領域、及び、
前記導電性領域に隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域、
を含む、電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項2】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材を通る分析物の拡散を制御するように構成された1つ以上の拡散バリア領域をさらに含む、請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項3】
前記導電性材料はコンフォーマル金属コーティングである、請求項1又は2記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項4】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含み、前記コンフォーマル金属コーティングは前記ノード及び前記フィブリルを被覆している、請求項3記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項5】
前記導電性材料はナノ多孔質金属である、請求項1又は2記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項6】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含み、前記ナノ多孔質金属は前記ノードと前記フィブリルとの間の細孔内に少なくとも部分的に含まれている、請求項5記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項7】
前記ナノ多孔質金属は、数ベースの単峰性で右に歪んだナノ細孔サイズ分布を備える、請求項5又は6記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項8】
前記ナノ多孔質金属は平均サイズが約10nm~約200nmのナノ細孔を含み、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔は、ナノ多孔質金属のナノ細孔よりも大きいミクロ細孔である。請求項5~7のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項9】
前記ナノ多孔質金属は前記ミクロ多孔質ポリマー基材のノードから分離されてギャップを画定している、請求項6記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項10】
前記ナノ多孔質金属は、組織の内方成長を可能にするサイズのナノ細孔及びミクロ細孔ギャップを含む、請求項5~7のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項11】
前記固定化生体受容体領域は、酵素、アプタマー、エキソソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸又は触媒多糖を含む、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項12】
前記固定化生体受容体領域はグルコースオキシダーゼを含む、請求項11記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項13】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は延伸ポリテトラフルオロエチレン又は膨張ポリエチレンを含む、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項14】
前記導電性材料は、白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル又はそれらの組み合わせもしくは合金を含む、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項15】
前記導電性材料は第一の金属を含み、前記分析物バイオセンサは、
前記第一の金属とは異なる第二の金属を含む参照電極又は擬似参照電極、及び、
前記第一の金属とは異なる第三の金属を含むカウンター電極、
をさらに含み、
前記第二の金属及び前記第三の金属は同じか又は異なる、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの固定化生体受容体領域は前記導電性領域から分離されている、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの固定化生体受容体領域は前記導電性領域と接触している、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項18】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の細孔は、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の外面近くに位置する外側細孔、及び、
前記導電性領域の近くに位置する内側細孔、
を含み、そして、
前記外側細孔は前記内側細孔よりも大きい、先行の請求項のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項19】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサであって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワーク、
金属を含む第二の実質的に連続したネットワークであって、前記第一の連続ネットワークと少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワーク、及び、
前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域、
を含む、電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項20】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー上のコンフォーマル金属コーティングである、請求項19記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項21】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーの相互接続された細孔内に少なくとも部分的に含まれるナノ多孔質金属である、請求項19記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項22】
前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ多孔質金属は、平均サイズが約1nm~約500nmのナノ細孔を含み、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーは、前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ細孔よりも大きいミクロ細孔を含む、請求項21記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項23】
前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ多孔質金属は、組織の内方成長を可能にするサイズのミクロ多孔質ギャップをさらに含む、請求項22記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項24】
前記ミクロ多孔質ポリマーは、複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含む、請求項19~23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項25】
前記ミクロ多孔質ポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレン又は膨張ポリエチレンを含む、請求項24記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項26】
前記固定化生体受容体領域は、酵素、アプタマー、エキソソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸又は触媒多糖を含む、請求項19~25のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項27】
前記金属は、白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル又はそれらの組み合わせもしくは合金を含む、請求項19~26のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項28】
前記第一の連続ネットワークは、非導電性であり、前記第二の実質的に連続したネットワークとは区別される組織界面領域を含む、請求項19~27のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項29】
前記ミクロ多孔質ポリマーの細孔は、
前記第一の連続ネットワークの外表面の近くに位置する外側細孔、及び、
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属の近くに位置する内側細孔、
を含み、前記外側細孔は前記内側細孔よりも大きい、請求項19~28のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項30】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー内に所望のパターンで存在する、請求項19~29のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項31】
前記第二の実質的に連続したネットワークを用いて前記分析物を検出することを含む、請求項19~30のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサを使用する方法。
【請求項32】
分析物バイオセンサを生体の組織上又は組織内に配置すること、及び、
金属化されておらず、前記第二の実質的に連続したネットワークとは区別されるミクロ多孔質ポリマーの組織界面領域内に組織を内方成長させること、
をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法であって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー上に金属をコーティングして、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワークを形成すること、及び、
少なくとも1つの固定化生体受容体領域を前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接して配置すること、
を含む、方法。
【請求項34】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法であって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーに金属前駆体を吸収させること、
前記金属前駆体を金属に還元して、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワークを形成すること、及び、
少なくとも1つの固定化生体受容体領域を前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接して配置すること、
を含む、方法。
【請求項35】
前記吸収工程は制御されたパターンで実行される、請求項34記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年4月19日に出願された仮出願第63/176,653号の利益を主張し、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、電気化学分析物バイオセンサに関する。本開示はまた、電気化学分析物バイオセンサに使用されうる組成物、ならびにそのような組成物及びデバイスを製造及び使用する関連方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学分析物バイオセンサは、多種多様な生物学的サンプル又は多種多様な用途のための他のサンプル中の多種多様な標的分析物を測定するために使用されうる。医療用途において、例えば、患者の病理学的状態(例えば、虚血、低血糖、敗血症、細胞膜損傷又は脂肪分解、神経活動機能不全、血管けいれん及び高血糖)、患者の治療薬(例えば、医薬品開発中の薬物動態又は投与量、化学療法中の化学療法剤)、又は患者の毒素(例えば、違法薬物)を検出するために分析物を測定することができる。産業及び製薬用途において、バイオプロセス(例えば、細胞栄養素の取り込み、細胞代謝産物の生成、反応速度論な)の進行を監視するために分析物を測定することができる。電気化学分析物バイオセンサは農業及び環境用途にも使用できる。
【0004】
従来の電気化学分析物バイオセンサは、生体適合性の欠如、機械的、化学的又は電気化学的安定性の欠如、浸出及び/又は短寿命を含む、多くの課題を提示してきた。これらすべての課題は、電気化学分析物バイオセンサによる読み取りの不正確又は遅延につながる可能性があり、対応する用途に悪影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを提供する。電気化学分析物バイオセンサは、複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマー基材、作用電極として機能しそして前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔内に少なくとも部分的に含まれる導電性材料を含む導電性領域、及び、前記導電性領域に隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域を有する生体適合性電極複合材を含む。導電性材料は、ミクロ多孔質ポリマー基材上のコンフォーマル金属コーティング、又はミクロ多孔質ポリマー基材に吸収されたナノ多孔質金属を含むことができる。ミクロ多孔質ポリマー基材は、特定の用途において組織の統合及び/又は組織の内方成長を支持することができる。電気化学的分析物バイオセンサは、医療、工業、農業、環境及びその他の用途に使用されうる。
【0006】
本開示の例示的な実施形態によれば、分析物を検出するように構成された電気化学的分析物バイオセンサが開示され、電気化学的分析物バイオセンサは、複数の相互接続された細孔を含むミクロ多孔質ポリマー基材、前記ミクロ多孔質ポリマー基材の複数の相互接続された細孔内に少なくとも部分的に含まれる導電性材料を含む導電性領域、及び、前記導電性領域に隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域を含む。
【0007】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサが開示され、電気化学分析物バイオセンサは、複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワーク、金属を含む第二の実質的に連続のネットワーク、ここで、前記第二の実質的に連続のネットワークは前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入している、及び、前記第二の実質的に連続のネットワークに隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域を含む。
【0008】
本開示のさらに別の例示的な実施形態によれば、分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法が開示され、この方法は、複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー上に金属をコーティングして、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続のネットワークを形成すること、及び、前記第二の実質的に連続のネットワークに隣接して少なくとも1つの固定化生体受容体領域を配置することを含む。
【0009】
本開示のさらに別の例示的な実施形態によれば、分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法が開示され、この方法は、複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーに金属前駆体を吸収させること、前記金属前駆体を金属に還元して、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入した第二の実質的に連続のネットワークを形成すること、及び、前記第二の実質的に連続のネットワークに隣接して少なくとも1つの固定化生体受容体領域を配置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の電気化学分析物バイオセンサシステムの斜視図である。
【0012】
【
図2】
図2は、本開示の別の電気化学分析物バイオセンサシステムの別の斜視図である。
【0013】
【
図3】
図3は、本開示のさらに別の電気化学分析物バイオセンサシステムの別の斜視図である。
【0014】
【
図4】
図4は、電気化学分析物バイオセンサシステムの生体適合性電極複合材の断面図である。
【0015】
【
図5】
図5は、サンプルのシート抵抗を測定するために使用される装置の概略図である。
【0016】
【
図6A】
図6Aは、例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図6B】
図6Bは、例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図6C】
図6Cは、例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0017】
【
図7A】
図7Aは、例1のNPG/ePTFE複合材の別の断面SEM画像である。
【
図7B】
図7Bは、ナノ細孔サイズ分析のために処理された同画像を示す。
【0018】
【
図8】
図8は、例1のNPG/ePTFE複合材の金属相内のナノ細孔サイズ分布を示すヒストグラムである。
【0019】
【
図9】
図9は、例1のNPG/ePTFE複合材の金属相内の細孔の副軸/最小フェレットの比を示すヒストグラムである。
【0020】
【
図10】
図10は、例1のNPG/ePTFE複合材の金属相内の細孔の主軸/最大フェレットの比を示すヒストグラムである。
【0021】
【
図11A】
図11Aは、例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合材の微細構造を示すSEM画像である。
【
図11B】
図11Bは、例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合材の微細構造を示すSEM画像である。
【
図11C】
図11Cは、例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合材の微細構造を示すSEM画像である。
【
図11D】
図11Dは、例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合材の微細構造を示すSEM画像である。
【0022】
【
図12】
図12は、例6のNPG/ePTFE作用電極/銀吸収擬似参照電極のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【0023】
【
図13A】
図13Aは、例9のNPG/ePTFE材料を含むGOxベースのグルコースセンサのグルコース応答を示すグラフである。
【
図13B】
図13Bは、例9のNPG/ePTFE材料を含むGOxベースのグルコースセンサのグルコース応答を示すグラフである。
【0024】
【
図14A】
図14Aは、例9のCG/ePTFE材料を含むGOxベースのグルコースセンサのグルコース応答を示すグラフである。
【
図14B】
図14Bは、例9のCG/ePTFE材料を含むGOxベースのグルコースセンサのグルコース応答を示すグラフである。
【0025】
【
図15】
図15は、例10の電解質溶媒の表面張力に対する電気化学的表面積の依存性を示すグラフである。
【0026】
【0027】
【
図19】
図19は、例11のキャピラリーフローポロメトリーデータを示すグラフである。
【0028】
【
図20】
図20は、電気化学表面積(ECSA)試験用の電気化学セル設計の概略図である。
【0029】
【
図21】
図21は、例1のNPG/ePTFE複合材を例14の最密充填銀/ePTFE(CPS/ePTFE)複合材と比較する倍率2,000倍の断面SEM画像を含む。
【0030】
【
図22】
図22は、例1のNPG/ePTFE複合材を例14のCPS/ePTFE複合材と比較する倍率20,000倍の断面SEM画像を含み、ナノ細孔サイズ分析のために対応する画像から分離されたナノ細孔相も示す。
【0031】
【
図23】
図23は、例1のNPG/ePTFE複合材及び例14のCPS/ePTFE複合材の金属相内の数ベース及び体積ベースのナノ細孔サイズ分布を比較するヒストグラムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本開示は、限定的に読まれることを意図したものではない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の専門家がそのような用語に帰する意味の文脈で広く読まれるべきである。
【0033】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」という用語は、記載された測定値を含む測定値、及び記載された測定値に合理的に近い任意の測定値も含む測定値を指すために互換的に使用されうる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され容易に確認されるように、記載された測定値から合理的に小さな量だけ逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人的エラー、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮した性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた微調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象の不正確な調整及び/又は操作などに起因する可能性がある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合には、「約」及び「およそ」という用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味すると理解できる。
【0034】
本明細書で使用されるときに、「生体液」という語句は、限定するわけではないが、血清、血漿、尿、血液、唾液、間質液、細胞外液及びサイトゾルを含む、生物によって少なくとも部分的に生成される流体を指す。
【0035】
本明細書で使用されるときに、「分析物」という用語は、限定するわけではないが、グルコース、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、グルタミン酸、グルタミン、ペプチド、ホルモン、心臓特異的酵素、オピオイド/麻薬、及び、化学療法剤を含む、分析対象の物質を指す。分析物は、生体液中に存在することができ、及び/又は、生体液から得ることができる。
【0036】
本明細書で使用されるときに、「生体受容体」という用語は、分析物と相互作用して測定可能な効果を生み出す生物学的材料又は生体模倣材料を含む化学的物質を指す。生物学的材料又は生体模倣材料としては、限定するわけではないが、酵素、アプタマー、エキソソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸、触媒多糖などを挙げることができる。
【0037】
本明細書で使用されるときに、「分析物バイオセンサ」という語句は、分析物に関する情報、例えばその濃度を含む信号を生成するために生体受容体を利用する分析デバイスである。「電気化学分析物バイオセンサ」は、生体受容体と分析物との間の相互作用が少なくとも部分的に電気化学プロセスを介して電気信号に変換される分析物バイオセンサの一種である。
【0038】
本明細書で使用されるときに、「組織統合」という語句は、意図された使用期間にわたってデバイスの意図された性能を損なう可能性がある炎症及びカプセル化などの周囲組織における有害な反応を最小限に抑えながら、デバイスを周囲組織に暴露させることを指す。理論に拘束されることを望まないが、本質的に、デバイスは周囲の組織において生体適合性静止状態に達する。
【0039】
本明細書で使用されるときに、「組織内方成長」という語句は、組織、細胞、毛細管及び/又は他の身体構成要素が多孔質材料の全厚又は部分厚に成長することを指す。
【0040】
本明細書で使用されるときに、用語「ミクロ多孔質」は、単一細孔サイズ又は分布細孔サイズの細孔を含む材料を指す。平均細孔サイズは、約0.1μm~約50μmであることができる。ミクロ多孔質材料は、幾つかのマクロ細孔を含む、この平均サイズ範囲外にある個々の細孔を含みうることが理解されるであろう。ミクロ多孔質材料は、以下に示されるように、バブルポイント分析又は別の適切な試験によって特性化される特徴的細孔又は公称細孔サイズを有することができる。膜の平均細孔サイズは、例えば、毛細管流ポロメトリーによって測定される平均流細孔サイズによって特性化することができる。
【0041】
本明細書で使用されるときに、「ナノ多孔質」という用語は、単一細孔サイズ又は分布細孔サイズの細孔を含む材料を指す。数ベースの平均細孔サイズは、約1nm~約500nmであることができる。前記分布は、直径約1nm~約10nm、約10nm~約100nm、又は約100nm~約500nmの範囲の異なるサイズを有する細孔の複数の集団を含むことができる。ナノ多孔質材料は、幾つかのミクロ細孔を含む、これらのサイズ範囲外の個々の細孔を含みうることが理解されるであろう。細孔サイズは、以下に説明するように、定量的画像分析によって特性化されうる。
【0042】
本明細書で使用されるときに、「コンフォーマル」という用語は、下にある多孔質基材の内面をコーティングするコーティング層を指す。コーティング層が導電性材料を含む実施形態において、コンフォーマルコーティングは、コーティング層の表面を通して、及びコーティング層の表面に沿って導電性を達成することができる。
【0043】
本明細書で使用されるときに、「吸収された」という用語は、流体キャリアを使用して多孔質基材の細孔内に堆積されるが、多孔質基材がほとんど無傷のままであるように多孔質基材のマトリックスに実質的に組み込まれない材料を指す。
【0044】
本明細書で使用されるときに、「導電性」という語句は、材料の電気抵抗が所望の用途での使用に不適当にならないように、低い抵抗で電子を輸送する材料を指す。実際には、この語句は、典型的に、約1x10-3オームxcm未満の抵抗率を意味する。
【0045】
本明細書で使用されるときに、「非導電性材料」及び「電気絶縁性材料」という語句は、材料の電気伝導度が所望の用途での使用に不適当とならないような高抵抗を有する材料を指す。実際には、これらの語句は、典型的に、約1x108オームxcmより高い抵抗率を意味する。
【0046】
本明細書で使用されるときに、「結合された」又は「結合」という用語は、(a)限定するわけではないが、接着、コーティング又は他の物理的結合を含む、適切な機械的手段による物理的結合、及び(b)ある構成要素から別の構成要素への低抵抗の電気的及び/又はイオン的接続を有する電気的結合又は(c)物理的結合と電気的結合の両方の組み合わせのいずれかを指す。物理的結合がないことは、物理的分離を意味することができる。
【0047】
本明細書で使用されるときに、「拡散バリア」という語句は、特定の種が拡散によってバリアを通過することを何らかの方法で少なくとも部分的に制限又は防止する構成要素を指す。
【0048】
詳細な説明
電気化学分析物バイオセンサシステム
まず
図1を参照すると、生体適合性電極複合材200及び電子プロセッサ300を含む電気化学分析物バイオセンサシステム100の実施形態が示されている。生体適合性電極複合材200は、導電性作用電極202、以下にさらに記載されるとおりの任意選択的な導電性参照電極204又は擬似参照電極205、及び、導電性カウンター電極206を含む。電極202、204、205、206は、
図1に示されるように、単一の構造に統合されても、あるいは、別個の構造であってもよい。例えば、1つの実施形態において、電極204、205、206のうちの1つ以上は、電子プロセッサ300の外面上に配置されうる。電極202、204、205、206は、互いに約10μm~10mm又はそれ以上離されてもよい。
【0049】
使用中に、生体適合性電極複合材200は、標的分析物A(例えば、グルコース)を含む生体液Fに暴露される。生体液Fは、汚染物質又は他の成分C(例えば、酸素)を含むこともある。標的分析物Aは、以下にさらに説明するように、作用電極202に関連付けられた生体受容体と相互作用する。この事象は、作用電極202において電気信号に変換される。その変換のメカニズムには、電子の供与又は電子の受容が含まれる。電子プロセッサ300は、生体液F中の標的分析物Aの量に関連するこの電気信号を検出するように構成されている。電子プロセッサ300は、この情報を、患者、医療従事者、別のユーザ又はデバイス(例えば、バイオプロセス栄養素モニタリングデバイス)が読み取ることができる適切な出力(例えば、分析物Aの濃度)に処理することができる。グルコースバイオセンサの例において、糖尿病モニタリングのためにグルコース濃度を患者又は医療従事者に報告することができる。別の例において、グルコース濃度は、インスリンデリバリーデバイスに定期的及び/又は継続的に報告されうる。
【0050】
電気化学分析物バイオセンサシステム100のサイズ、形状、方向、コンプライアンス、柔軟性及び他の属性は変化しうる。
図1の例示の実施形態において、生体適合性電極複合材200は、電子プロセッサ300から横方向に延びる可撓性膜である。以下でさらに説明するように、可撓性生体適合性電極複合材200は、周囲の環境に基づいてそのコンプライアンスを変更するために物理的に操作されうる。
図2の例示の実施形態において、生体適合性電極複合材200’は、
図1の生体適合性電極複合材200と比較して、電子プロセッサ300’からより短い距離で横方向に延びる、より剛性の高い膜である。
図3の例示の実施形態において、生体適合性電極複合材200”及び電子プロセッサ300”は両方とも筒形であり、連続繊維又はチューブを形成する。
【0051】
電気化学分析物バイオセンサシステム100の位置も、分析すべき所望の生体液Fに応じて変化しうる。幾つかの実施形態において、生体液Fが生体(例えば、ヒト)の内部に残っているときに、電気化学分析物バイオセンサシステム100は、その生体と関連付けられ、例えば生体の皮膚の下に(すなわち、インプラント処置型デバイス)、生物の皮膚の中又は皮膚を通して(すなわち、経皮デバイス)及び/又は生物の皮膚上又はその近くに(例えば、ウェアラブルデバイス)配置されうる。他の実施形態において、生体液Fが生体から抽出されたときなどに、電気化学分析物バイオセンサシステム100は、遠隔研究室、産業施設、又は治療施設に設置されてもよい。生体適合性電極複合材200の位置は、電子プロセッサ300の位置と異なっていてもよいことが理解される。
【0052】
電気化学分析物バイオセンサシステム100は、従来のバイオセンサシステムと比較して特定の利点を有することができる。電気化学分析物バイオセンサシステム100は、生体適合性、安定性、及び、機械的、化学的及び電気化学的劣化に対する耐性を、浸出又は放出がほとんど又は全くなく示すことができる。電気化学分析物バイオセンサシステム100はまた、電極の安定性及び生物付着に対する耐性を示しうる。特定の実施形態において、電気化学分析物バイオセンサシステム100は、組織統合及び/又は組織内方成長も促進しうる。これらの特徴により、従来のバイオセンサシステムと比較したときに、電気化学分析物バイオセンサシステム100の寿命及び精度を向上させることができる。
【0053】
生体適合性電極複合材
次に
図4を参照すると、生体適合性電極複合材200の少なくとも一部が断面で示されている。例示的な生体適合性電極複合材200は、多孔質ポリマー基材210、作用電極202(
図1)として機能する導電性領域220、1つ以上の拡散バリア領域230、及び1つ以上の固定化生体受容体領域240を含む統合複合材構造である。
図4に示されるように、導電性領域220、拡散バリア領域230及び/又は固定化生体受容体領域240を多孔質ポリマー基材210に統合するのではなく、隣接する領域を層状にラミネート化又は別の方法で結合することも本開示の範囲内である。
図4には示されていないが、
図1の任意選択的な参照(又は擬似参照)電極204、205及び/又はカウンター電極206も、多孔質ポリマー基材210内に組み込まれることができる。作用電極202の導電性領域220は、第一の金属を含むことができ、任意選択的な参照(又は擬似参照)電極204、205は、第一の金属とは異なる第二の金属を含むことができ、そしてカウンター電極206は、第一の金属とは異なる第三の金属を含むことができ、ここで、第二の金属及び第三の金属は同じであっても又は異なっていてもよい。生体適合性電極複合材200の各構成要素について、以下でさらに説明する。
【0054】
生体適合性電極複合材:多孔質ポリマー基材
さらに
図4を参照すると、生体適合性電極複合材200の多孔質ポリマー基材210は、生体適合性であり、可撓性であり、化学的に不活性な材料であることができる。特定の実施形態において、多孔質ポリマー基材210は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などのフルオロポリマー、膨張ポリエチレン(ePE)などのポリオレフィン、又は別の適切なポリマーを含むことができる。多孔質ポリマー基材210の可撓性(又は曲げ剛性)は、例えば、Kawabata Pure Bending Testerを使用して測定することができる。
【0055】
図4に示されるように、多孔質ポリマー基材210は、第一の(すなわち、
図4の上側)表面212、第二の(すなわち、
図4の下側)表面214、及び、第一の表面212と第二の表面214との間に相互接続された複数の細孔216を有する。上述したように、生体適合性電極複合材200が生体と関連する実施形態において、多孔質ポリマー基材210は、組織T(例示的に、毛細管)の第一の表面及び/又は第二の表面212、214を通した細孔216中への統合及び/又は内方成長を支持する1つ以上の組織界面領域217を含むことができる。組織Tのそのような統合及び/又は内方成長は、生体適合性電極複合材200の生体適合性を高め、繊維状カプセル化又は慢性炎症などの周囲組織における有害な反応を最小限に抑え、標的分析物Aの取り込みを促進し、そして、より迅速かつより正確なセンサ読み取りのための組織Tと生体受容体領域240との間の密接な接触を促進することができる。第一の表面及び第二の表面212、214を含む組織界面領域217は、導電性領域220とは区別されることができ、そのような組織Tの統合及び/又は内方成長を促進するために導電性材料を含まないことができる(例えば、金属化されていない又はさもなければベアである)。組織界面領域217が、組織Tのそのような統合及び/又は内方成長を促進するための1つ以上の生物活性剤を含むことも、本開示の範囲内である。前記治療剤は、当該技術分野で知られている手段によって、組織界面領域217に物理的に結合されることも、共有結合されることも、物理吸着又は化学吸着されることもできる。組織界面領域217は、多孔質ポリマー基材210の統合された非ラミネート化部分であることができる。
【0056】
多孔質ポリマー基材210は、上で規定したとおりのミクロ細孔を含むことができる細孔216を画定するために協働する相互接続フィブリル219を有するノード218の微細構造を有することができる。多孔質ポリマー基材210が、協働して細孔216を画定する相互接続フィブリル219の「ノードのない」微細構造を有することも本開示の範囲内である。フィブリル219は、長さが約0.1μm~約1000μm、直径が約0.002μm~約100μmで変化することができるが、これらの寸法は異なることができる。
【0057】
特定の実施形態において、多孔質ポリマー基材210は、より小さな細孔216及びより大きな細孔216の両方の組み合わせを含むことができる。より大きな細孔216は、組織Tの統合及び/又は内方成長を促進するために、第一の表面及び/又は第二の表面212、214の近くで外向きに配置されることができ、一方、より小さい細孔216は、拡散バリア領域230及び/又は導電性領域220に隣接しうる、多孔質ポリマー基材210の中央近くで内向きに配置されることができる。
【0058】
多孔質ポリマー基材210自体は、疎水性であっても又は親水性であってもよい。親水性の実施形態において、多孔質ポリマー基材210は、水又は他の極性生体液F(例えば、血液)と混合するか、又はそれらによって湿る傾向を有することができる(
図1)。幾つかの例において、このような極性生体液Fは、標的分析物Aとともに多孔質ポリマー基材210を通過し、生体適合性電極複合材200の導電性領域220に到達することができる。より多くの流体が生体適合性電極複合材200に入るほど、より多くの分析物Aを検出することができ、その結果、より正確なセンサ読み取り値を生成することができる。
【0059】
多孔質ポリマー基材210は、生体適合性電極複合材200の所望の形状及びサイズに達するように形状及びサイズが決定されうる。例えば、多孔質ポリマー基材210は、膜、フィルム、繊維、チューブ又は別の所望の形状として成形されて、
図1~
図3に関して上述したように、同様の形状の生体適合性電極複合材200を製造することができる。多孔質ポリマー基材210はまた、周囲の環境に基づいて生体適合性電極複合材200の所望の形状及びコンプライアンスに到達するために、座屈され、微小しわが付けられ、延伸され、丸められ、折り曲げられ、切断され、又はその他の物理的操作がなされることができる。特定の実施形態において、多孔質ポリマー基材210のコンプライアンスが周囲の組織のコンプライアンスと適合する又はそれに近づくことが望ましいことがある。
【0060】
生体適合性電極複合材:導電性領域
さらに
図4を参照すると、作用電極202として機能する生体適合性電極複合材200の導電領域220は、分析物A(直接的又は中間種を介して間接的に)に電気的及び/又はイオン的に結合されることができ、そして電子プロセッサ300(
図1)に電気的及び/又はイオン的に結合されることができ、そして、上述したように、電気信号を電子プロセッサ300に送信することができる。導電性領域220に適した材料の非限定的な例としては、白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル及びそれらの組み合わせ及び合金などの導電性金属が挙げられる。導電性領域220に適した材料の他の例としては、グラファイトなどの導電性非金属が挙げられる。導電性領域220は、適切な金属化技術を使用して、多孔質ポリマー基材210に接着、熱融着、コーティング(例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング)、吸収又はその他の方法で結合されうる。
【0061】
導電性領域220の導電性材料は、多孔質ポリマー基材210の相互接続された細孔216内に少なくとも部分的に含まれる。この配置において、多孔質ポリマー基材210のノード218及びフィブリル219は第一の連続ポリマーネットワークを画定し、そして導電性領域220は、前記ポリマーネットワークに相互貫入する第二の実質的に連続の導電性ネットワークを画定することができる。このようにして、多孔質ポリマー基材210のポリマーネットワーク及び導電性領域220の導電性ネットワークは、少なくとも導電性領域220内で実質的に共連続かつ相互貫入することができる。特定の実施形態において、ナノ多孔質金属224は、所望のパターンで多孔質ポリマー基材210内に装填されることができ、ここで、パターンはx-y平面内で所望の形状を形成しうる。この所望のパターンは、多孔質ポリマー基材210の特定の領域をマスキングすることによって、又は他の適切な技術によって、インクジェット印刷又は当該技術分野で知られている他の印刷又はリソグラフィーの手段と同様に、多孔質ポリマー基材210への導電性領域220のデリバリーを制御することによって達成されうる。
【0062】
第一の実施形態において、
図4の領域R1に示されるように、導電性領域220は、多孔質ポリマー基材210上のコンフォーマル金属コーティング222を含む。1つの例において、コンフォーマル金属コーティング222は、ePTFE多孔質ポリマー基材210の個々のノード218及び個々のフィブリル219を、導電性領域220の厚さ全体にわたってコーティングするコンフォーマル金(CG)コーティングであり、それにより、その表面を通して及びその表面に沿って導電性を提供する。コンフォーマル金属コーティング222の厚さは、約0.01μm~約10μm、例えば約0.01μm~約1μm、例えば約0.1μmであることができ、この厚さは、多孔質ポリマー基材210のフィブリル219よりもノード218上で厚くてよい。コンフォーマル金属コーティング222は、導電性(例えば、少なくとも、
図11Dの面内又はx-y方向)を維持しながら組織の内方成長を可能にするために、複合材料200の表面(例えば、
図11Dの厚さ又はz方向)に露出されるギャップを有することができる。
【0063】
多孔質ポリマー基材210をコンフォーマル金属コーティング222でコーティングするために、コーティングプロセスを実行することができる。このプロセスには、(1)金属ナノ粒子の分散体を多孔質ポリマー基材210に吸収させること、及び(2)構造物を加熱して焼結させ、コンフォーマル金属コーティング222を残させることを含む。加熱工程は、構造物を約150℃~約300℃又はそれ以上の温度で、数分から数時間の適切な時間加熱することを含むことができる。
【0064】
特定の実施形態において、以下に説明するシート抵抗試験方法を使用して生体適合性電極複合材200の第一の表面212及び第二の表面214で測定したときの作用電極202のシート抵抗はほぼ同じである。例えば、第一の表面212及び第二の表面214で測定したときのシート抵抗間のパーセント差は、約50%未満、約25%未満、約10%未満又は約1%未満であることができる。特定の実施形態において、実際の差は、約0.4オーム/スクエア未満、約0.3オーム/スクエア未満、又は約0.2オーム/スクエア未満であることができる。
【0065】
第二の実施形態において、
図4の領域R3に示されるように、導電性領域220は、多孔質ポリマー基材210のマトリックスに実質的に組み込まれずに、多孔質ポリマー基材210の細孔216内に存在するナノ多孔質金属224を含む。この実施形態において、ナノ多孔質金属224のナノ細孔はポリマー金属210の細孔内部に実質的に適合する。1つの例において、ナノ多孔質金属224は、導電性を提供するナノ多孔質金(NPG)である。
【0066】
ナノ多孔質金属224は、多孔質ポリマー基材210、特に多孔質ポリマー基材210のノード218から離間し、そして実質的な接触を回避することができる。ナノ多孔質金属224とノード218との間のこれらのギャップ226はミクロ細孔であることができ、該ミクロ細孔は、組織Tの内方成長を促進し、物質輸送(例えば、分析物Aの)を改善すると同時に、ナノ多孔質金属224を介して十分な導電性を達成し、かつ多孔質ポリマー基材210からの機械的補強も維持する。これらのギャップ226は、複合材料200の表面(例えば、
図6Bの厚さ又はz方向)で露出し、導電性(例えば、少なくとも
図6Bの面内又はx-y方向)を維持しながら、そのような組織の内方成長を可能にする。
【0067】
多孔質ポリマー基材210にナノ多孔質金属224を装填するために、吸収プロセスを実行することができる。このプロセスには、(1)非水性溶媒中で金属前駆体(例えば、塩)を含む非水性湿潤溶液を生成すること、(2)多孔質ポリマー基材210に非水性湿潤溶液を吸収させること、及び、(3)吸収された構造物を加熱して非水性湿潤溶液の要素を除去し、金属前駆体を金属状態に還元し、金属を焼結させ、そしてナノ多孔質金属224を残すことを含むことができる。非水性湿潤溶液は、多孔質ポリマー基材210を完全に濡らすように調整することができる。例えば、疎水性のePTFE多孔質ポリマー基材210の場合には、非水性湿潤溶液は、米国特許第9,018,264号明細書の教示に従って、実質的に水不溶性のアルコール及び界面活性剤の湿潤パッケージを含むことができる。加熱工程は、最大約300℃又はそれ以上の1つ以上の温度で、最大数時間の適切な時間、構造物を加熱することを含むことができる。
【0068】
本開示のナノ多孔質金属224は、特定の実施形態において、単峰性で右に歪んだ数ベースのナノ細孔サイズ分布を備えることができる。当該技術分野で知られているナノ多孔質金属の幾つかの典型的な調製物において、数ベースのナノ細孔サイズ分布は単峰性かつ単分散であり、又は換言すれば、平均ナノ細孔サイズはほぼモードナノ細孔サイズである(例えば、A Pastre、“Porous Gold Films Fabricated by Wet-Chemistry Processes”、J Nanomater、vol 2016、文献ID 3536153、2016)。当該技術分野で知られている他の典型的なナノ多孔質金属の調製物において、ナノ細孔サイズ分布は多峰性かつ複雑であり、言い換えれば、複数のモードのナノ細孔サイズが存在する(例えば、Y. Ding、“Nanoporous Metals with Controlled Multimodal Pore Size Distribution”、J Am Chem Soc、vol 125、p 7772、2003)。しかしながら、本発明の実施形態において、ナノ多孔質金属224の数ベースのナノ細孔サイズ分布は単峰性であり、右に偏っており、換言すれば、平均の数ベースのナノ細孔サイズは、単一の数ベースのナノ細孔サイズよりも大きい(例えば、少なくとも75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%又は250% 大きい)。これは、多数のナノ細孔が単一モードより大きく、少数のナノ細孔のみが単一モードよりも小さい(以下の
図8及び例1を参照されたい)。ナノ多孔質金属224の単峰性で右に歪んだ数ベースのナノ細孔サイズ分布は、高表面張力流体環境、生物付着環境又は組織統合環境などの困難な環境における性能の点で利点を提供しうる。例えば、ナノ細孔サイズ分布は、複合材料200全体にわたる表面積及び物質移動のバランスをとることができる。
【0069】
右に歪んだ数ベースのナノ細孔サイズ分布は、平均細孔サイズが中央細孔サイズよりも実質的に大きい(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%大きい)ことを特徴とすることができる。
【0070】
本発明のナノ多孔質金属224は、数ベースの細孔サイズ分布の最頻値よりも実質的に大きい(例えば、少なくとも200%、500%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%又は4000%大きい)体積ベースの細孔サイズ分布の最頻値を備えることができる。
【0071】
本発明のナノ多孔質金属224は、数ベースの細孔サイズ分布の平均よりも実質的に大きい(例えば、少なくとも150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%又は600%大きい)体積ベースの細孔サイズ分布の平均を備えることができる。
【0072】
本開示のナノ多孔質金属224は、周囲の生体液Fの表面張力に関係なく、安定した電気化学的表面積を示すことができる(
図1)。インプラント処置されたバイオセンサが完全に機能するには、電極の表面全体と微細構造が生体液に接触するか、生体液によって濡れて、電極の表面積全体を分析物の検知のために活性にできるようにしなければならないことが当該技術分野で知られている。微細構造を濡らす流体の能力は、その表面張力に関係しており、生理食塩水(約72mN/m)及び血液(約50mN/m)などの高い表面張力(約50mN/mを超える)を有する流体は、疎水性基材を濡らす傾向が低い。対照的に、イソプロパノール(約23mN/m)又は生理食塩水:イソプロパノールの50:50混合物(約25mN/m)などの表面張力が低い(約30mN/m 未満)流体は、疎水性基材を濡らす傾向が高い。本開示の生体適合性電極複合材200は、ePTFEなどの疎水性多孔質ポリマー基材210を含むことができるため、高表面張力の生体液による接触又は湿潤が減少し、電気化学的表面積も減少し、及び/又は、作用電極202の分析物検出活性も減少すると予想される。疎水性多孔質ポリマー基材210の細孔216内に吸収されたナノ多孔質金属224が存在しても、作業電極202の疎水性が変化するとは予想されない。というのは、疎水性多孔質ポリマー基材210は、第一の表面及び第二の表面212、214に沿った部分を含めて過剰に存在するからである。換言すれば、ナノ多孔質金属224が吸収された疎水性多孔質ポリマー基材210を含む作用電極202自体が疎水性であり、したがって、表面張力の高い生体液による接触又は湿潤が軽減されることが予想される。しかしながら、本発明の発明者らは、驚くべきことに、吸収されたナノ多孔質金属224を有する作用電極202の電気化学的表面積が流体の表面張力による湿潤に強く依存せず、したがって作用電極202が低い表面張力又は高い表面張力の生体液で機能することを可能にすることを発見した。例えば、吸収されたナノ多孔質金属224を含む作用電極202の電気化学的表面積は、表面張力の低い生体液と高い生体液との間で、約50%以下、約25%以下、又は約10%以下で変化しうる(
図15及び以下の例10を参照されたい)。この予期せぬ湿潤挙動を利用して、吸収されたナノ多孔質金属224の高い表面積を利用することができる。
【0073】
生体適合性電極複合材: 拡散バリア領域
さらに
図4を参照すると、生体適合性電極複合材200の拡散バリア領域230は、導電性領域220の1つ以上の側に存在しうる。
図4において、拡散バリア領域230は導電性領域220から分離されているが、拡散バリア領域230が導電性領域220にオーバーラップする(例えば、コーティングする)ことは、本開示の範囲内である。拡散バリア領域230は、分析物Aの固定化生体受容体領域240への通過を制限又は防止することができる。同様に、拡散バリア領域230は、標的分析物Aが多孔質ポリマー基材210に吸収されると、導電性領域220から出るのを防ぐことができる。したがって、拡散バリア領域230は分析物Aで生体受容体領域240を圧倒することを回避し、導電性領域220で正確なセンサ読み取り値を得ることを支援する。
【0074】
生体適合性電極複合材200はまた、干渉する汚染物質又は他の成分C(例えば、アセトアミノフェン)の導電性領域220への通過を制限又は防止する干渉バリア領域(図示せず)を含むことができる。干渉バリア領域は標的分析物Aに対して選択的に透過性であるが、汚染物質又は他の成分Cが干渉バリア領域を通って多孔質ポリマー基材210に入り及び/又は出ることを妨げることができる。例えば、干渉バリア領域230は、汚染物質又は他の成分Cが多孔質ポリマー基材210を完全に貫通して、導電性領域220で生じる分析物の検知に干渉するのを防ぐことができる。したがって、干渉バリア領域は、ノイズ低減を提供することができる。
【0075】
拡散バリア領域230に使用するための拡散バリア材料として適した多くの材料が存在する。幾つかの非限定的な実施形態において、拡散バリア領域230は、作動電極202を通る拡散を制御するためにフィブリル219の非対称配置を有するePTFEを含むことができる。他の実施形態において、拡散バリア領域230は、ポリウレタン又はテトラフルオロエチレン-コ-ペルフルオロメチルビニルエーテルなどのペルフルオロエラストマーを含むことができる。拡散バリア領域230は、多孔質ポリマー基材210に接着、熱融着、コーティング(例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング)、吸収又はその他の方法で結合されうる。
【0076】
拡散バリア領域230の位置及び他の特性は様々であることができる。第一の実施形態において、
図4の領域R1に示されるように、拡散バリア領域230は、別個の層232として固定化生体受容体領域230の外側に位置される。多孔質ポリマー基材210は、拡散バリア領域230のこの別個の層232を通って延在してもよいし、又は延在しなくてもよい。第二の実施形態において、
図4の領域R3に示されるように、拡散バリア領域230は、固定化生体受容体領域230に組み込まれ、そしてコーティング234として固定化生体受容体領域230をカプセル化する。
【0077】
拡散バリア領域230は、固定化生体受容体領域230を保護しながらも不連続であることができる。
図4の領域R2に示されるように、拡散バリア領域230は、多孔質ポリマー基材210を通る透過性及び組織の内方成長を選択的に増加させるためのギャップ236を含む。
【0078】
生体適合性電極複合材:固定化生体受容体領域
さらに
図4を参照すると、生体適合性電極複合材200の固定化生体受容体領域240は、導電性領域220に隣接して存在しうる。第一の実施形態において、
図4のR1及びR3に示されるように、固定化生体受容体領域240は導電性領域220から分離されている。第二の実施形態において、
図4の領域R2に示されるように、固定化生体受容体領域240は導電性領域220と接触する。第二の実施形態は、特にアプタマーベースの実施形態に適しうる。
【0079】
固定化生体受容体領域240は、上記のとおり、複数の生体受容体242を含む。生体受容体242は、標的分析物A、又は分析物Aの所望の反応体もしくは生成物と相互作用することができる。上述したように、生体受容体242と分析物Aとの間の相互作用は、少なくとも部分的に、電気化学プロセスを介して電気信号に変換される。特定の実施形態において、生体受容体242は、分析物Aが化学反応して、導電性領域220によってより容易に変換され検出可能な少なくとも1つの成分を生成するように、導電性領域220内又はその近くで酵素反応を触媒する酵素である。様々な酵素を生体受容体242として使用することができる。酵素の選択は、例えば、使用される生体適合性電極複合材200(
図1)の種類、又は検出される特定の分析物Aに依存する。グルコースバイオセンサの1つの例において、酵素としてはグルコースオキシダーゼ(GOx)を挙げることができる。GOx酵素は、グルコースのグルコノラクトン及び過酸化水素への酸化を触媒する。次いで、触媒反応の酸素反応体及び/又は過酸化水素生成物、あるいは酸素反応体及び/又は過酸化水素生成物の濃度変化は、作用電極202の導電性領域220によって変換及び検出され、対応するグルコース読み値に変換される。
【0080】
他のタイプの生体適合性電極複合材200は、所望の分析物の読み取りのために、生体適合性電極複合材200内又はその近くでの酵素反応を促進することができる適切な酵素を使用する。生体受容体242として使用するための他の適切な酵素の例としては、限定するわけではないが、アルコール依存症及びバイオプロセス産生物モニタリングなどのエタノール検出のためのアルコールデヒドロゲナーゼ、貧血及びバイオプロセス栄養素モニタリングなどの乳酸検出のための乳酸デヒドロゲナーゼ、筋無力症などのアセチルコリン検出ためのアセチルコリンエステラーゼ、フェニルケトン尿症などのチロシン検出のためのチロシナーゼ、脂質異常症などのトリグリセリド検出のためのリパーゼ、硝酸尿症などの硝酸塩のための硝酸レダクターゼ、栄養素バイオプロセスモニタリングなどのフルクトースのためのフルクトースデヒドロゲナーゼ、栄養バイオプロセスモニタリングなどのスクロースのためのインベルターゼ及びムタロターゼ、栄養バイオプロセスモニタリングなどのL-グルタミン酸のためのグルタミナーゼ及びグルタミン酸オキシダーゼ、L-グルタミンのためのグルタミン酸オキシダーゼ及びデヒドロゲナーゼ、代謝産物バイオプロセスモニタリングなどのL-乳酸デヒドロゲナーゼ、及び、代謝産物バイオプロセスモニタリングなどのためのL-乳酸のためのL-乳酸オキシダーゼなどを挙げることができる。
【0081】
酵素がその固相又はそれ自体の別個の層でしばしば固定化される従来の分析物バイオセンサとは対照的に、本開示の生体受容体242は、多孔質ポリマー基材210上に固定化されうる。例えば、生体受容体242は、生体適合性、センサ精度、物質輸送、信号:雑音比の改善及び組織統合を促進するために、多孔質ポリマー基材210の細孔216内、ノード218上及び/又はフィブリル219上に固定化されうる。別の実施形態において、生体受容体242は、導電性領域220及び/又は拡散バリア領域240内に固定化されうる。例えば、
図4の領域Bに示され、上記に説明されたように、拡散バリア領域230のコーティング234は生体受容体242をカプセル化することができる。
【0082】
当該技術分野で周知の様々な技術、例えば、米国特許第5,897,955号明細書、米国特許第9,764,068号明細書、米国特許第8,853,287号明細書及び米国特許第8,591,932号明細書に見られる教示を使用して、生体受容体242を固定化及び/又はカプセル化することができる。1つの適切な固定化技術は、例えば米国特許第8,591,932号明細書の例7に教示されているように、生体受容体242の終点又は多点共有結合である。他の適切な固定化技術としては、例えば、G.T. Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press、第 3 版、2013 年に記載されるとおり、アフィニティータグ結合、吸着、加水分解、アミノ分解、光分解、エッチング、カルベン挿入、ナイトレン挿入及びプラズマ処理が挙げられる。
【0083】
参照電極又は擬似参照電極
図1に戻ると、電気化学分析物バイオセンサシステム100は、任意選択的な参照電極204又は擬似参照電極205をさらに含む。
【0084】
特定の実施形態において、生体適合性電極複合材200は参照電極204を含む。参照電極204は安定した電位を維持し、作用電極202の電位を監視及び制御できるようにする。参照電極204の例は、塩化カリウム内部電解質溶液と接触して配置された塩化銀コーティングを有する銀ワイヤを有する銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極である。この構成は、望ましい既知の一定の電位を提供するが、生物学的用途で使用するときに、この構成には制限がある。内部電解質溶液は、参照電極204又は作用電極202から浸出又は別の方法で喪失した場合に、生体適合性に悪影響を及ぼす可能性がある塩濃度、緩衝剤及びその他の添加剤を含む。
【0085】
他の実施形態において、生体適合性電極複合材200は擬似参照電極205を含む。インプラント可能な分析物バイオセンサの適切な機能には上述の参照電極204がしばしば必要であると当該技術分野で教示されているが、本発明の発明者らは、擬似参照電極205は、本明細書に開示される生体適合性電極複合材200において機能しうるということを発見した。擬似参照電極205は既知の一定の電位を示さず、むしろ、規定された条件内で予測可能かつ一貫して作用する変動電位を有する。擬似参照電極205及び作用電極202を有する生体適合性電極複合材200は、作用電極202で所望の反応を駆動するために必要な電気化学パラメータを確立する。
【0086】
擬似参照電極205及び作用電極202を有する生体適合性電極複合材200は、作用電極202と擬似参照電極205との間に非導電性材料を備えたオールインワン構造の設計を可能にすることができる。非導電性材料の例は、擬似参照電極205が作用電極202と同じ多孔質ポリマー基材210に組み込まれるような上述の多孔質ポリマー基材210(
図4)である。
【0087】
擬似参照電極205を含むこの生体適合性電極複合材200の他の変形も可能である。一例としては、内部電解質又は銀/塩化銀を含まない作用電極202と組み合わせた擬似参照電極205が挙げられる。別の例は、作用電極202と擬似参照電極205との間に物理的な結合が存在しないように、物理的なギャップによって作用電極202から物理的に分離された擬似参照電極205である。
【0088】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点において、図面は限定的なものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0089】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に説明するが、当業者によって適切と判断される他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0090】
非接触厚
レーザマイクロメータ(Keyence Model No.LS-7010、ベルギー、メッヘレン)を使用し、以下の技術を使用して非接触厚を測定した。金属シリンダは、シリンダの上部の第一のシャドーがレシーバ上に投影されるように、レーザマイクロメータ源とレーザマイクロメータレシーバとの間に位置合わせされた。次に、第一のシャドーの位置をレーザマイクロメータの「ゼロ」読み取り値として設定した。次に、単一層の試験品を金属シリンダの表面に重なり及びしわを付けずに掛け、レシーバ上に第二のシャドーを投影した。次に、レーザマイクロメータは、第一のシャドー及び第二のシャドーの間の位置の変化をサンプルの厚さとして示した。各厚さは3回測定され、各サンプルの平均値がとられた。
【0091】
面積あたりの質量
サンプルの面積当たりの質量は、標準ASTM D 3776(布帛の単位面積当たりの質量(重量)に関する標準試験方法、試験方法オプションC)に従って測定された。
【0092】
バブルポイント
バブルポイント圧力は、キャピラリーフローポロメータ(フロリダ州ボイントンビーチのQuantachrome Instrumentsからのモデル3Gzh)を使用し、Silwickシリコーン流体(20.1ダイン/cm;Porous Materials Inc.)を使用して、ASTM F31 6-03に従って測定された。バブルポイント圧力について示された値は、2つの測定値の平均である。
【0093】
シート抵抗
2.125インチ×0.5インチのサンプルを、試験される材料のシートから打ち抜いた。サンプルを独立気泡シリコーンスポンジシート(厚さ1/2インチ、Bellofoam #7704)上に平らに置いた。抵抗は、
図5に示されるような4点プローブを利用して、Keithley 2750デジタルマルチメータで測定した。4点プローブは、標準4点プローブ構成(すなわち、最も内側の2つの端子に電圧検出リード及び最も外側の2つの端子に入力リードが付いている)でマルチメータに接続された。測定されるサンプル上に4点プローブをそっと置いた後に、プローブが確実にサンプルに均一に接触するのを確保するように、330グラムのおもりをプローブの上に置いた。プローブとサンプルの導電相が適切に接触するように注意を払った。プローブが短絡しないように、おもりをプラスチックシートで絶縁した。Keithleyマルチメータは、「OCOMP」4線オフセット補償を有効にして4点プローブモードで動作させた。各測定では、システムを約10秒間安定させてから、抵抗値を記録した。データは平方面積あたりのオームの単位で報告される。
【0094】
金属相内の細孔サイズを測定するための定量的画像解析
細孔サイズ分析用の画像を収集するために、各サンプルの断面をブロードビームイオンミル(Illon 2、米国ガタン)を用いて作製し、その構造を保存した。スパッタコータ(208HR、英国クレシントン)を使用して薄い導電性プラチナコーティングを適用し、SEMイメージング中の電子ビーム下でのサンプルの安定性を向上させた。構造の断面画像は、少なくとも2560ピクセル x 1920ピクセルの解像度で走査型電子顕微鏡(SEM: SU8200、日本、日立)を使用して、倍率50,000倍(2.5μmの水平フィールド幅)で撮影された。
【0095】
金属相内の細孔サイズの分析は、「Fiji」ImageJ 1.53ソフトウェアを用いた断面SEM画像の定量分析によって行われた。以下の表1に示す自動マクロは、主観性を最小限に抑え、データ分析の再現性を最大限に高めるために使用された。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0096】
まず、導電性Ptコーティングによって生じるグレースケール変動を除去するために、上記表1の「Macro1_PreProcess」マクロを使用して断面SEM画像を前処理した。
【0097】
次に、前処理された画像を手動で検閲して、断面の平面内にある金属相及びその埋め込まれた多孔性を構成する領域を除くすべての領域を除去した。手動検閲は、表面テクスチャー及び遠近感などの視覚的な手がかりを特定することを含んだ。手動検閲は、上記の表 1の「Macro2_After_Segmenting_Support」マクロと「Macro3_After_Segmenting_Void」マクロを利用して実行した。
【0098】
最後に、前処理され、手動で検閲された画像を、上記の表1の「Macro4_Analysis」マクロを使用して分析した。このマクロは、画像を解析して個々の細孔を識別した。これには、複雑な細孔空間をスロートで区切られた個々の細孔に再分割することが含まれた。このマクロは、2020年6月29日時点でのhttps://imagej.nih.gov/ij/docs/menus/analyze.html#set でアクセス可能な ImageJ ドキュメント化に従って、個々の細孔の様々な測定値を表にしたデータファイルも生成した。 特に、データファイルは、以下の表2に示す細孔サイズの測定値を含んだ。
【表5】
【0099】
個々の細孔の細孔サイズは、最適適合楕円の主軸及び副軸の平均として定義した。細孔サイズ分布を示すために、データ表内のすべての細孔の細孔サイズをヒストグラムとしてプロットした。このヒストグラムでは、頻度が数ベースで計算される(つまり、体積、表面積又は他のパラメータで重み付けされていない細孔の総数の%として表される)。細孔が正しく解析されたことを確認するための質チェックも実行した。この質チェックでは、細孔が過小解析 (接続された複数の細孔が単一の細孔として定義されていることを意味する)されていないこと又は過剰解析 (単一の細孔が複数の細孔に細分化されていることを意味する) されていないことが保証される。「主軸/フェレット直径」と「副軸/最小フェレット」の比をチェックして、それらが0.5~1.2の範囲内であることを確認した。このような範囲は1に近く、データが質チェックされていることを確認する。このようにして、細孔サイズ分析用の処理画像を作成した。
【0100】
数ベースで細孔サイズ分布を決定するために、以下の手段によりヒストグラムを作成した。細孔は、0nm~1500nmで幅3nmの群に分けた(すなわち、第一の群にはすべての細孔が0nm超3nm以下、第二の群にはすべての細孔が3nm超6nm以下、など、最後の群にはすべての細孔が1497nm超1500nm以下となるまで)。各群の「細孔サイズ」は、最も近いミクロンに切り捨てられた細孔サイズ範囲の平均であった(すなわち、第一の群の細孔サイズは1nm、第二の群の細孔サイズは4nmなど、最後の群まで、最後の群のサイズは1498nm)。各群の細孔の頻度は、その群の細孔の数を細孔の総数で割ることによって決定した。細孔サイズ分布を数ベースでプロットするために、各群の細孔の頻度をy軸に割り当て、群の細孔サイズをx軸に割り当てた。
【0101】
次に、数ベースの細孔サイズ分布を使用して、体積ベースの細孔サイズ分布を計算した。各群の単位細孔体積を計算するために、各群の細孔の数ベースの頻度に、群の「細孔サイズ」の3乗を乗算した。各群の細孔体積%を計算するために、各群の単位細孔体積をすべての群の単位細孔体積の合計で割った。体積ベースで細孔サイズ分布をプロットするために、各群の細孔体積%をy軸に割り当て、群の細孔サイズをx軸に割り当てた。
【0102】
数加重平均細孔サイズは、各群の細孔サイズを数頻度で重み付けすることによって計算した。体積加重平均細孔サイズは、各群の細孔サイズを体積%で重み付けすることにより計算した。各分布の最頻値は、分布内のピークの最大値を取ることによって決定した。
【0103】
定量的画像分析試験方法をさらに詳しく説明するために、この試験方法の設計の背後にある原理をより一般的な用語で説明する。この試験方法を満たすために、細孔相を表す断面SEM画像を撮影し、断面の平面にナノ多孔質金属を示す画像の部分を分離し、それらの細孔のサイズを定量化する。画像アーティファクトを除去し、分析のために画像の適切な部分を分離するために必要な視覚的手がかり(上記で「検閲」と称した、テクスチャー及び遠近感を含む)は、当業者に容易に明らかである。分析のために解析された細孔相は、2つを視覚的に比較したときにSEM画像に対する優れた忠実性を実証するはずである(例えば、
図7A~7Cを参照されたい)。解像できる最小特徴サイズは約5ピクセルに相当する。直径/フェレット比を使用すると、個々のサイズを決定するための細孔の解析が正しく行われていることを確認する実用的なチェックが提供される。
【0104】
グルコース電流測定ベンチトップ試験
電流測定ベンチトップ試験を、以下のシステムを使用して実施した。完成した電極(直径4mmを備える)を、リン酸緩衝塩溶液(PBS)とマグネチックスターバーを含む20mLビーカーに、Ag/AgCl参照電極(Gamry)及び0.25mm白金ワイヤカウンター電極(Alfa Aesar)であって、設定電位が0.6~0.7V、オーバーサンプリングレートが5Hzのポテンシオスタットシステム(Digi-Ivy ♯DY211、又はGamry Reference 600)に接続されたカウンター電極と並べて浸漬した。作用電極の電圧は、参照(又は擬似参照)電極に対して報告される。このシステムを、300rpmで磁気撹拌しながら60分間平衡化させた。様々なマイクロリットル体積の試験溶液(D-(+)-グルコース、脱イオン水中0.4g/mL)を50~500秒ごとにPBSにピペットで移し、グルコース濃度を連続的に増加させ、電流を時間の関数として測定した。
【0105】
擬似参照電極試験
試験を行うために、ポテンシオスタット(Gamry Reference 600)をGamry Instruments Echem Analyst Software及びGamry Instruments Framework (商標)Data Acquisition Softwareと組み合わせて使用した。3電極電気化学セルの2つの変形例を組み立てた。電解質溶液は、脱イオン水中に1mMのフェリシアン化カリウム(Sigma Aldrich)を含む1Mの塩化カリウム(Sigma Aldrich)を含んでいた(>18Mオーム)。
【0106】
第一の変形例(当該技術分野で伝統的に使用されている変形例を表す)は、液絡部Ag/AgCl参照電極(Gamry)、カウンター電極としての白金ワイヤ(99.9%)、作用電極としての直径3mmの平面金電極(Alfa Aesar)及び電解質溶液からなった。作用電極と参照電極は物理的に約1cmの距離だけ離した。
【0107】
第二の変形例は、擬似参照電極としてのePTFE銀吸収フィルム、カウンター電極としての白金ワイヤ(99.9%)、作用電極としてのNPG/ePTFE膜(直径3mmの開口部を有するPTFE電気化学セル内に収容)及び電解質溶液からなった。擬似参照電極と作用電極は、物理的に約1cmの距離だけ離した。
【0108】
サイクリックボルタモグラムは、参照(又は擬似参照)電極に対して0.5Vの初期電位を使用して、-0.1Vまで走査し、続いて50mV/秒の走査速度で0.5Vまで逆走査して、上記変形例に対して生成した。
【0109】
生物付着耐性試験
生物付着試験は、ウシ血清アルブミン(BSA)などの一般的な生物付着媒体の存在下でサンプル電極の電気化学的性能を評価するために開発した。特に指定しない限り、溶液は水性である。
【0110】
フェリシアン化カリウム原液(0.1M KCl溶液中2mM)を、電気化学的性能を特性化するための小分子レドックス発生剤として使用した。BSA生物付着試験溶液のセットは、BSAをフェリシアン化カリウム原液に2mg/mL、6mg/mL、10mg/mL、15mg/mL及び25mg/mLで溶解することによって調製した。
【0111】
サンプル電極の表面を70%イソプロパノールで3~5秒間リンスし、次いでサンプル電極を0.05M硫酸溶液で満たした20mLビーカーに、Ag/AgCl参照電極及び0.25mm白金ワイヤ―カウンター電極と並べて配置し、ポテンシオスタットシステム (Digi-Ivy #DY211)に接続した。作用電極の電圧を、参照(又は擬似参照)電極に対して報告する。クリーニングCVスキャン(10サイクル、スキャン範囲:0~1.5V、スキャン速度:50mV/s)を実行して、作用電極をクリーニングした。洗浄後に、電極を硫酸試験セルから取り出し、脱イオン水ですすぎ、その後キムワイプ(登録商標)ティッシュを使用して残留水を吸収した。
【0112】
サンプル電極、Ag/AgCl参照電極及び白金ワイヤカウンター電極を、フェリシアン化カリウム原料溶液で満たされた20mLビーカーに浸漬した。連続CVスキャン(10~20サイクル、スキャン範囲:-0.2~0.6V、スキャン速度:100mV/s)を実行して、ベースラインCVデータを得た。次に、BSA生物付着試験溶液を満たした別の20mLビーカーに電極を移動し、次いで、連続CVスキャン(100サイクル、スキャン範囲:-0.2~0.6V、スキャン速度:100mV/s)を行って生物付着CVデータを得た。フェリシアン化カリウム原料溶液からのピーク電流をBSA生物付着試験溶液からのピーク電流と比較して、生物付着媒体の存在下でのサンプル電極の電気化学的性能を評価した。
【0113】
毛細管流ポロメトリー(CFP)試験
測定は、Quantachrome Porometer 3G zHを使用して行った。湿潤流体は、公称表面張力が19.78ダイン/cmのシリコーンオイルであった。圧力範囲は0.255psig~394psigであった。サンプルサイズは直径10mmであった。ランプレート設定は「2x」で、実行時間は約28分であった。「湿潤」曲線のデータのみを生成した(すなわち、「乾燥」曲線のデータは収集されなかった)。測定可能な最大流量は10リットル/分であった。
【0114】
湿式屈曲粒状化試験
この耐久性試験は、複合材料が粒子を脱落させる傾向を評価するために開発された。試験を効果的に行うためには、試験条件下で完全な曲げ運動を可能にするために、サンプルは曲げ剛性が十分に低くなければならない。試験を行うために、複合材料から2.125インチx0.5インチのサンプルを切り出した。
図16に示す形状に切断された2枚のエンジニアリングプラスチックの間に挟むことによって試験固定具にサンプルを装填した。サンプルには制御された量のたるみが与えられ、
図17に示されるようにOリングによって所定の位置に保持された。スケールのために、サンプルを曲げることができる窓のサイズは、長さ24.5mmx幅14.1mmx厚さ2.7mmである。次に、サンプルを含む試験固定具を標準の50mL遠心分離管に装填し、その後40mLのイソプロパノールで満たした。次いで、遠心分離管に蓋をし、漏れを防ぐためにテープで閉鎖した。
図18に示されるように、次いで、試験固定具の平面が回転軸と平行になるように、遠心分離管をインテリミキサー(#RM-2L)に装填した。この配向により、サンプルの屈曲が可能になる。インテリミキサーを、サンプルを20rpmで+/-99度に所望の時間(通常1~7日間)揺動するように設定した。サンプルが揺れるたびに、管内の流体力学によりサンプルも曲がった。曲げとは、試験固定具の一方の側からもう一方の側に切り替わるサンプルのたるみを意味する。所望の時間揺動した後に、管内の液体をピペットを使用して抽出し、ICP-MSを使用して分析して、複合材料から脱落した可能性のある金属の存在を確認した。
【0115】
電気化学表面積(ECSA)試験
図20に示されるように、電気化学試験を、WonATech CCK05腐食セルキット(500mL)で実施した。作用電極サンプルを、電極直径11.28mm(1cm
2)のWonATech FSH2フラット試験片ホルダに保持した。カウンター電極は、WonATech PFL5 白金プレート電極(活性領域5cm
2)又は10cmの白金ワイヤ(Sigma Aldrichの直径1.5mm、≧99.9%の微量金属ベース、349399-3.8G)のいずれかであった。参照電極は、飽和KCl溶液で満たされ、保存されたGamry 932-00018、Ag/AgClであった。このセルは、参照電極を作用電極表面に近づけるためにルギン毛細管を利用した。セルを500mLの硫酸(LabChem LC256801、0.05M)で満たした。作用電極の対照サンプルは、金箔(Sigma Aldrich 326496-1.5G、厚さ0.127mm、99.99%微量金属ベース又は同等品)であった。窒素ガスをガラスフリットを通して少なくとも10分間バブリングさせて、電解質から溶存酸素を除去した(電解質の撹拌を避けるために、サイクリックボルタンメトリー測定中は窒素パージをオフにした)。
【0116】
サンプルを、直径15.5mm~22mmの円板となるように切断又は打ち抜きし、その後、フラットサンプルホルダに装填した。サンプルホルダに装填する際には、すべてのOリングと内部部品を乾燥させ、サンプルの周囲にイオン伝導経路が存在しないように注意した。サンプルをイソプロパノールで湿らせ、次いで、電解液に浸して完全に湿らせた。当業者に理解されるように、作用電極が清浄であることを保証するために、サイクリックボルタンメトリー(CV)スキャンを使用した。
【0117】
電気化学的表面積を二重層静電容量を測定することによって決定した。というのは、ECSAは二重層静電容量に比例するためである。二重層静電容量を決定するために、次のスキャン速度:100mV/s、50mV/s、20mV/s及び10mV/sで0mV~100mVの電位(対参照電極)をスキャンすることによって、代表的なサイクリックボルタンメトリー曲線を収集した。50mVでの曲線の高さをアンペア(h)で求め、V/s単位のスウィープ速度に対してプロットした。二重層静電容量は、最適直線の傾きから決定した。幾何学的表面積に対する電気化学的表面積の比である粗さ係数を決定するために、粗さ係数が1であるように仮定される滑らかな金箔の二重層静電容量によってサンプルの二重層静電容量を正規化した。金属の比表面積を計算するに、サンプルの粗さ係数をサンプルの金属の面積当たりの質量で割った。
【実施例】
【0118】
例1:NPG/ePTFE複合材の調製
この例は、ナノ多孔質金を取り込んだePTFE膜(「NPG/ePTFE複合材料」)の調製について説明する。
【0119】
ePTFE膜(質量/面積3~5g/m2、バブルポイント1.5psi、非接触厚さ92μm、W.L. Gore & Associates)を直径4.5インチの金属フープ内に拘束し、手で引っ張ってしわを取り除いた。米国特許第9,018,264号明細書の教示に従って、溶媒中の反応性金インク(部品番号 LXPM-G2-1019、Liquid X, Inc.) を、1.0gのLXPM-G2-1019、0.05gの Tergitol(登録商標)TMN-10(Dow, Inc.)及び0.03gの1-ヘキサノールの基材湿潤パッケージと混合した。混合物を膜の表面上にピペットで移し、使い捨てピペットバルブを使用して、混合物がePTFEを濡らすまで(約30秒)均一に広げた。 キムワイプ(登録商標)ティッシュでePTFE膜の表面を拭くことにより、余分なインクを除去した。サンプルをヒートガンで乾燥し、標準対流オーブンで155℃で20分間、次に300℃で 1時間加熱して、金相を還元及び焼結し、残留インク溶媒、還元剤及び残留した基材湿潤パッケージを除去した。その結果、NPG/ePTFE複合材料を生じた。
【0120】
図6A~6Cは、NPG/ePTFE複合材の例の代表的なSEM画像を示す。
図6Aは複合材断面を示す。
図6Bは表面画像、
図6CはNPG相の断面の拡大図を示す。
【0121】
NPG/ePTFE複合材は、金属相内に約10~200nmのナノ細孔サイズ分布を有するナノ多孔質高表面積金マトリックスを含んでいた。このNPGマトリックスは、ePTFE膜のノードとフィブリルとの間のePTFE膜の内部微細構造内に吸収された。NPGは、
図6A~6Cにおいて、ePTFE膜のノードとフィブリルとの間の細孔内の明るい色の材料として見ることができる。
図6A及び6Cに示されるように、NPGマトリックスは、ePTFE膜、特にePTFE膜のノードから離間し、実質的な接触を避けて、約10μmのギャップを形成することが示された。また、NPGマトリックスは、積層界面を必要とせずに、ePTFE膜の外表面層に存在しなかった(すなわち、ベア)。NPG/ePTFE複合材は、上で説明され
図5に示される4点プローブシート抵抗試験方法に従って、測定シート抵抗が約0.3~1オーム/スクエアであった。
【0122】
NPG金属相のナノ細孔サイズ分析を
図7A~10に要約する。
図7Aは、NPG/ePTFE複合材の例の別の代表的な断面SEM画像を示し、
図7Bは、ナノ細孔サイズ分析のために処理された同画像を示す。
図7Cは、NPG/ePTFE複合材の金属相内の孤立したナノ細孔を示す。
図8は、NPG/ePTFE複合材の金属相内のナノ細孔サイズ分布を示す。
図9は、NPG/ePTFE複合材の金属相内のナノ細孔の最小フェレットに対する最適楕円の副軸の比のヒストグラムを示す。
図10は、NPG/ePTFE複合材の金属相内のナノ細孔の最大フェレットに対する最適楕円の主軸の比のヒストグラムを示す。
【0123】
例2:NPG/ePTFEベア電極の調製
この例は、NPG/ePTFE平面ディスクベア電極(「NPG/ePTFEベア電極」)の調製について説明する。
【0124】
PTFE中空ロッド(長さ1.5インチ、外径0.5インチ、内径0.25インチ)には、0.25インチの近位開口部及び3~4mmの遠位開口部が設けられていた。例1のNPG/ePTFE複合材を近位開口部を介して中空ロッドに挿入し、遠位開口部に対して平らに置き、ePTFEガスケットでシールして、NPG/ePTFEベア電極を製造した。
【0125】
例3:CG/ePTFE複合材の調製
この例は、コンフォーマル金コーティングを取り込んだePTFE膜複合材(「CG/ePTFE複合材」)の調製について説明する。
【0126】
第一のePTFE膜(「標的膜」)(質量/面積3~5g/m2、バブルポイント1.5psi、非接触厚さ92μm、W.L.Gore&Associates)を、直径4インチの金属フープに拘束し、手で張ってシワを取り除いた。第二のePTFE膜(「ポータル膜」)(質量/面積3~5g/m2、バブルポイント40psi、非接触厚さ18μm、W.L. Gore & Associates)を直径6インチの金属フープに拘束し、手で張ってシワを取り除いた。2つの膜が物理的に接触し、ほぼ同心になるようにターゲット膜の上にポータル膜を配置した。0.75mLの金ナノ粒子インク(♯UTDAu60X;UTDots, Inc.)をポータル膜の表面にピペットで移し、吸収溶液がポータル膜とターゲット膜の両方を完全に濡らすまで(30秒未満)、使い捨てピペットバルブを使用して均一に広げた。リントフリー布でポータル膜の上面を拭くことにより、余分なインクを除去した。次いで、2つの吸収された膜を、それぞれのフープを分離することによって分離した。ポータル膜は廃棄した。次に、200°Fに設定したヒートガンを使用してターゲット膜を乾燥させ、次に標準的な対流オーブンで300℃で1時間加熱した。その結果、CG/ePTFE複合材が得られた。
【0127】
CG/ePTFE複合材は、質量/面積が46g/m
2であり、上述し、
図5に示される4点プローブシート抵抗試験方法によると、シート抵抗が約0.2~0.4オーム/スクエアであった。金属がターゲット膜の厚さ全体にわたってコンフォーマルコーティングされていることを実証するために、複合材のシート抵抗は、上面で測定しても底面で測定してもほぼ同じであった(具体的には、抵抗の低い表面の約15%以内)。
【0128】
図11A~11Dは、CG/ePTFE複合材の例の代表的なSEM画像を示す。
図11Aは複合材の断面を示し、
図11Bはそのノード断面を示し、
図11Cはそのフィブリルの断面を示す。CGはePTFE膜のノードとフィブリルの周囲に見ることができる。
図11Dは、少なくとも面内又はx-y方向の導電性を維持しながら組織の内方成長を可能にし得る、厚さ又はz方向に沿ったコンフォーマル金コーティングにギャップを有する表面画像を示す。
【0129】
例4:銀を吸収したePTFE構造体の調製
この例は、銀を吸収したePTFE構造体の調製について説明する。
【0130】
ポータル膜及び標的膜を上記例3と同様に調製した。5.7gの銀ナノ粒子インク(#UTDAg60x;UTDots,Inc.)を3.3gのキシレンで希釈し、ポータル膜の表面にピペットで移し、均一に広げ、上記例3と同様に膜を完全に濡らした。上記例3と同様にポータル膜を除去して廃棄し、上記例3と同様に標的膜を加熱した。その結果、銀を吸収したePTFE構造体を得た。
【0131】
例5:CG/ePTFEベア電極の調製
この例は、CG/ePTFE平面ディスクベア電極(「CG/ePTFEベア電極」)の調製について説明する。
【0132】
PTFE中空ロッド(長さ1.5インチ、外径0.5インチ、内径0.25インチ)には、0.25インチの近位開口部及び3~4mmの遠位開口部が設けられていた。例3のCG/ePTFE複合材を近位開口部を介して中空ロッドに挿入し、遠位開口部に対して平らに置き、ePTFEガスケットでシールして、CG/ePTFEベア電極を製造した。
【0133】
例6:NPG/ePTFE作用電極及び銀を吸収したePTFE擬似参照電極を備えたバイオセンサの電気化学的挙動
この例は、作用電極としてNPG/ePTFEベア電極及び擬似参照電極として銀を吸収させたePTFE構造体を含む3電極電気化学セルの電気化学的挙動を説明する。
【0134】
上記の擬似参照電極試験方法を使用して、作用電極として例2のNPG/ePTFEベア電極を含み、擬似参照電極として例4の銀吸収ePTFE構造体を含む第一の電気化学セルを構築した(「NPG//Ag吸収RE」)。比較のために、平面金電極ディスク作用電極と液絡Ag/AgCl参照電極を備えた第二の電気化学セルを構築した(「金ディスク-Ag//Ag液絡RE」)。
【0135】
図12は、NPG//Ag吸収RE電気化学セル及び金ディスク-Ag//Ag液絡RE電気化学セルのサイクリックボルタモグラムを重ね合わせたものである。このデータの重ね合わせから判るように、サイクリックボルタモグラムはほぼ同じ電位領域に位置している。疑似参照電極が電解質と直接接触しているのに対して、液絡参照電極が飽和塩化カリウムであるときに期待される、電位のわずかな変化(166mV対124mV)が生じる。また、理解されるとおり、NPG//Ag吸収REセルのボルタモグラムのヒステリシスは、金ディスク-Ag//AgCl液絡REセルと比較して狭く、ゲインが高く、擬似参照電極を使用するNPG//Ag吸収REセルはこれらの規定された条件内で予測どおりに動作することを実証している。言い換えれば、ナノ多孔質金を含む作用電極基材としてePTFEを使用し、吸収銀を含む擬似参照電極基材としてePTFEを使用し、それらの間の物理的分離がある電極設計は、電気化学的分析物バイオセンサとして機能できる。
【0136】
例7:NPG/ePTFEベア電極の耐生物付着性
この例は、NPG/ePTFEベア電極の生物付着に対する耐性を説明する。
【0137】
例2のNPG/ePTFEベア電極を、上記の耐生物付着性試験方法に従って、生物付着性について試験した。さらに、研磨されていない金箔サンプルも同じ試験条件にさらした。
【0138】
表3は、金箔サンプルと比較したNPG/ePTFEベア電極のピーク電流を、各サンプルのベースラインに対して正規化して示している。NPG/ePTFEサンプルは、最高のBSA濃度であっても、BSA生物付着試験溶液のピーク電流のわずかな減少のみを示した。比較すると、金箔サンプルでは、BSA濃度が低い場合でもピーク電流が大幅に減少した。要約すると、NPG/ePTFEサンプルは、一般的な生物付着媒体の存在下で高い電気化学的性能を示した。
【表6】
【0139】
例8:NPG/ePTFE GOx及びCG/ePTFE GOx完成電極の調製
この例は、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含む酵素固定化完成電極の調製について説明する。特に指定しない限り、すべての溶液は水性である。
【0140】
例2のNPG/ePTFEベア電極及び例5のCG/ePTFEベア電極のそれぞれの遠位端をイソプロパノールに浸漬し、脱イオン水ですすぎ、ポリエチレンイミン(PEI)溶液(10mg/mL水、10分間、Sigma)に浸漬し、脱イオン水ですすいだ。GOx(50kU/g活性、Sigma)を500U/mLでリン酸緩衝液に溶解し、各電極の遠位開口部を介して10μLをピペットでePTFE膜表面に滴下し、空気乾燥させた。各電極の遠位端をPEI溶液に二度目の浸漬を行い、二度目のGOx溶液をピペットで移し、二度目の空気乾燥を行った。4μLのナフィオン溶液(92wt%エタノール:8wt%水中2%w/v、Sigma)を各電極の遠位開口部にピペットで移し、空気乾燥し、4℃で保管して、それぞれNPG/ePTFE GOx仕上げ電極又はCG/ePTFE GOx仕上げ電極を生成した。
【0141】
例9:NPG/ePTFE GOx及びCG/ePTFE GOx完成電極のグルコースに対する電気化学的応答
この例は、グルコースに対する例8のNPG/ePTFE GOx及びCG/ePTFE GOx完成電極の電気化学的応答を説明する。
【0142】
図13Aに示されるように、グルコースを逐次的に添加するとすぐに、NPG/ePTFE GOx完成電極の測定電流は急速に上昇し、急速に安定した。
図13Bに示されるように、NPG/ePTFE GOx完成電極は、0~400mg/dLの広範囲のグルコース濃度に応答した。比較すると、例8の手順に従って調製されたグルコースオキシダーゼが固定化された金箔は、グルコース濃度の関数として大幅に減少したシグナルを示した(図示せず)。
【0143】
図14Aに示されるように、グルコースを逐次的に添加するとすぐに、CG/ePTFE GOx完成電極の測定電流は急速に上昇し、急速に安定した。
図14Bに示されるように、CG/ePTFE GOx完成電極は、0~400mg/dLの広範囲のグルコース濃度に応答した。比較すると、例8の手順に従って調製されたグルコースオキシダーゼが固定化された金箔は、グルコース濃度の関数として大幅に減少したシグナルを示した(図示せず)。
【0144】
例10:電解質溶媒の表面張力に対する電気化学的表面積の依存性
この例は、電解質溶媒の表面張力に対する電気化学的表面積の依存性を説明する。
【0145】
例1のNPG/ePTFE複合材、例3のCG/ePTFE複合材及び金箔のそれぞれを、塩類溶液とイソプロパノールとの比率を変化させた一連の溶液に浸漬した。塩類溶液は約72mN/mの高い表面張力を持ち、イソプロパノールは約21mN/mの低い表面張力を持ち、塩類溶液:イソプロパノールの混合物は、50:50の塩類溶液:イソプロパノール混合物の表面張力は約25mN/mと低く、90:10の塩類溶液:イソプロパノール混合物の表面張力は約50mN/m又は血液とほぼ同じである。
【0146】
電解質は次のように調製した。すべての希釈には脱イオン水(>18メガオーム)を使用した。0.05M硫酸(H2SO4)の脱イオン水溶液:2.5 mLの1M H2SO4を 50mLに希釈した。1%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4と0.5mLのイソプロパノールを50mLに希釈した。5%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4及び2.5mLのイソプロパノールを 50mLに希釈した。10%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4及び5mLのイソプロパノールを50mLに希釈した。20%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4及び10mLのイソプロパノールを50mLに希釈した。30%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4及び15mLのイソプロパノールを50mLに希釈した。50%イソプロパノール中の0.05M硫酸:2.5mLの1M H2SO4及び25mLのイソプロパノールを50mLに希釈した。
【0147】
各浸漬サンプルの電気化学的表面積を測定し、測定された電気化学的表面積の絶対変化を以下の式に従って計算した。
絶対変化=abs((H-L)/H)*100%
(上式中、abs(n)は絶対値関数であり、
Lは、約25mN/mの50:50の塩類溶液:イソプロパノールを含む低表面張力溶媒中で測定された電気化学的表面積であり、そして
Hは、約72mN/mの塩類溶液を含む高表面張力溶媒中で測定された電気化学的表面積である)。
【0148】
図15に示されるように、複合材は電解質組成に応じて有意な差異を示した。CG/ePTFE複合材は、純粋な塩類溶液から50:50の塩類溶液:イソプロパノールの範囲にわたって電解質の表面張力が減少するにつれて表面積が増加するという結果を示し、電気化学的表面積はこの範囲にわたって約0.005cm
2から約1.000cm
2に増加した(又は約19,900%の絶対変化)。比較すると、NPG/ePTFE複合材は、その電気化学的表面積が電解質の表面張力にほとんど依存しないことが実証され、純粋な塩類溶液から50:50の塩類溶液:イソプロパノールまでの範囲にわたって比較的平坦な応答を生成し、ここで、電気化学的表面積は、この範囲において、5cm
2から約2.5cm
2に増加した(又は約50%の絶対変化)。上で議論したように、NPG/ePTFEのこの平坦な応答は、ベースのePTFEフィルムが疎水性であるため、濡れが制限され、結果として観察可能な電気化学的表面積が減少するときに、広い電解質表面張力にわたって、比較的に一定である(すなわち、約50%未満である)ことが期待されなかった。対照的に、非疎水性である金箔は、純粋な塩類溶液から50:50の塩類溶液:イソプロパノールの範囲にわたって、予想された比較的平坦な応答を示した。
【0149】
例11:NPG/ePTFE複合材の毛細管流ポロメトリー
この例は、上記のCFP試験方法による例1のNPG/ePTFE複合材の毛細管流ポロメトリー(CFP)データを説明する。例1で説明し、
図6A及び6Cに示されるように、NPGマトリックスとePTFE膜、特にePTFE膜のノードとの間にギャップを観察することができた。CFPデータを
図16に示す。非常に低いバブルポイント(すなわち、流れの開始点)は約5psigであり、これは、NPGマトリックスと複合材の厚さを貫通するePTFE膜との間にギャップが存在することと一致する。
【0150】
例12:NPG/ePTFE複合材の耐久性
この例は、例1の教示に従って製造されたNPG/ePTFE複合材の耐久性データを記載し、上記の湿潤曲げ粒状化試験方法に従って測定した。24時間の湿潤曲げ粒状化試験の完了時に、試験流体中に存在する金の量はICP検出限界を下回った。この結果は、NPG/ePTFE複合材から金が損失していないことと一貫し、少なくとも99.97wt%の金は複合材中に保持されていることを示した。
【0151】
例13:補強なしの薄いNPGの脆弱性
この例は、ポリマー基材で補強されていない薄いNPGを取り扱うことの困難さを示している。サイズ約1cmx1cmの12Kホワイトゴールド純金箔(L.A.金箔、厚さ0.12μm、金51%/Ag48%/Pd1%)をピンセットを使用してペトリ皿に置いた。70%HNO3(水溶液)を、NPGを完全に覆うのに十分な量でペトリ皿に加えた。金箔を室温で15分間HNO3(水溶液)中に放置し、銀をエッチングしてNPGを生成する時間を与えた。エッチング後に、サンプルはピンセットで軽く触れただけでも簡単に破損した。
【0152】
例14:CPS/ePTFE複合材の調製
最密充填銀/ePTFE複合材(CPS/ePTFE)は、W.L. Gore & Associates, Inc.のWO2019/216885号明細書の発明の名称「延伸性基材及び非延伸性基材上のフレキシブルかつ耐久性のあるプリント回路」の例1の教示に従って製造した。この材料の特性と、例1に記載の手順に従って調製したNPG/ePTFE複合材料の特性を測定し、比較した。
【0153】
図21は、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの断面SEM画像を低倍率(2,000倍)で比較し、NPG/ePTFEのベアePTFE表面層を含む各サンプルの総厚を決定できるようにする。
図22は、定量的画像分析によって決定された、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの金属相及びそれらの細孔相の拡大図を比較する。
図23は、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの細孔サイズ分布を数ベース及び体積ベースで比較している。各グラフには最頻値細孔サイズが示されており、数ベースのグラフから体積ベースのグラフへの最頻値の移行がブロック矢印で示されている。
【0154】
NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEを比較した数値データを表4~6に示す。面積当たりの体積及び体積%の値を決定するために、以下の密度が仮定された:金については19.3g/cc、銀については10.5g/cc、PTFEについては2.2g/cc。細孔サイズ分布における幾つかの重要なシフトを表7に示す。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサであって、
複数の相互接続された細孔を含むミクロ多孔質ポリマー基材、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔に少なくとも部分的に含まれた導電性材料を含む導電性領域、及び、
前記導電性領域に隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域、
を含む、電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項2】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材を通る分析物の拡散を制御するように構成された1つ以上の拡散バリア領域をさらに含む、請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項3】
前記導電性材料はコンフォーマル金属コーティングである、請求項1又は2記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項4】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含み、前記コンフォーマル金属コーティングは前記ノード及び前記フィブリルを被覆している、請求項3記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項5】
前記導電性材料はナノ多孔質金属である、請求項1又は2記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項6】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含み、前記ナノ多孔質金属は前記ノードと前記フィブリルとの間の細孔内に少なくとも部分的に含まれている、請求項5記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項7】
前記ナノ多孔質金属は、数ベースの単峰性で右に歪んだナノ細孔サイズ分布を備える、請求項
5記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項8】
前記ナノ多孔質金属は平均サイズが約10nm~約200nmのナノ細孔を含み、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の相互接続された細孔は、ナノ多孔質金属のナノ細孔よりも大きいミクロ細孔である。請求項
5記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項9】
前記ナノ多孔質金属は前記ミクロ多孔質ポリマー基材のノードから分離されてギャップを画定している、請求項6記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項10】
前記ナノ多孔質金属は、組織の内方成長を可能にするサイズのナノ細孔及びミクロ細孔ギャップを含む、請求項
5記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項11】
前記固定化生体受容体領域は、酵素、アプタマー、エキソソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸又は触媒多糖を含む、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項12】
前記固定化生体受容体領域はグルコースオキシダーゼを含む、請求項11記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項13】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材は延伸ポリテトラフルオロエチレン又は膨張ポリエチレンを含む、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項14】
前記導電性材料は、白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル又はそれらの組み合わせもしくは合金を含む、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項15】
前記導電性材料は第一の金属を含み、前記分析物バイオセンサは、
前記第一の金属とは異なる第二の金属を含む参照電極又は擬似参照電極、及び、
前記第一の金属とは異なる第三の金属を含むカウンター電極、
をさらに含み、
前記第二の金属及び前記第三の金属は同じか又は異なる、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの固定化生体受容体領域は前記導電性領域から分離されている、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの固定化生体受容体領域は前記導電性領域と接触している、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項18】
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の細孔は、
前記ミクロ多孔質ポリマー基材の外面近くに位置する外側細孔、及び、
前記導電性領域の近くに位置する内側細孔、
を含み、そして、
前記外側細孔は前記内側細孔よりも大きい、
請求項1記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項19】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサであって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワーク、
金属を含む第二の実質的に連続したネットワークであって、前記第一の連続ネットワークと少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワーク、及び、
前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接する少なくとも1つの固定化生体受容体領域、
を含む、電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項20】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー上のコンフォーマル金属コーティングである、請求項19記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項21】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は、前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーの相互接続された細孔内に少なくとも部分的に含まれるナノ多孔質金属である、請求項19記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項22】
前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ多孔質金属は、平均サイズが約1nm~約500nmのナノ細孔を含み、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーは、前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ細孔よりも大きいミクロ細孔を含む、請求項21記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項23】
前記第二の実質的に連続したネットワークのナノ多孔質金属は、組織の内方成長を可能にするサイズのミクロ多孔質ギャップをさらに含む、請求項22記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項24】
前記ミクロ多孔質ポリマーは、複数のノード及び複数の相互接続フィブリルを含む、請求項19~23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項25】
前記ミクロ多孔質ポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレン又は膨張ポリエチレンを含む、請求項24記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項26】
前記固定化生体受容体領域は、酵素、アプタマー、エキソソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸又は触媒多糖を含む、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項27】
前記金属は、白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル又はそれらの組み合わせもしくは合金を含む、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項28】
前記第一の連続ネットワークは、非導電性であり、前記第二の実質的に連続したネットワークとは区別される組織界面領域を含む、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項29】
前記ミクロ多孔質ポリマーの細孔は、
前記第一の連続ネットワークの外表面の近くに位置する外側細孔、及び、
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属の近くに位置する内側細孔、
を含み、前記外側細孔は前記内側細孔よりも大きい、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項30】
前記第二の実質的に連続したネットワークの金属は前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー内に所望のパターンで存在する、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサ。
【請求項31】
前記第二の実質的に連続したネットワークを用いて前記分析物を検出することを含む、請求項19~
23のいずれか1項記載の電気化学分析物バイオセンサを使用する方法。
【請求項32】
分析物バイオセンサを生体の組織上又は組織内に配置すること、及び、
金属化されておらず、前記第二の実質的に連続したネットワークとは区別されるミクロ多孔質ポリマーの組織界面領域内に組織を内方成長させること、
をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法であって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマー上に金属をコーティングして、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワークを形成すること、及び、
少なくとも1つの固定化生体受容体領域を前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接して配置すること、
を含む、方法。
【請求項34】
分析物を検出するように構成された電気化学分析物バイオセンサを製造する方法であって、
複数の相互接続された細孔を有するミクロ多孔質ポリマーを含む第一の連続ネットワークを提供すること、
前記第一の連続ネットワークのミクロ多孔質ポリマーに金属前駆体を吸収させること、
前記金属前駆体を金属に還元して、前記第一の連続ネットワークに少なくとも部分的に相互貫入する第二の実質的に連続したネットワークを形成すること、及び、
少なくとも1つの固定化生体受容体領域を前記第二の実質的に連続したネットワークに隣接して配置すること、
を含む、方法。
【請求項35】
前記吸収工程は制御されたパターンで実行される、請求項34記載の方法。
【国際調査報告】