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特表2024-515106c-MET阻害剤を使用した癌の診断および処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】c-MET阻害剤を使用した癌の診断および処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240328BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20240328BHJP
   C12Q 1/6809 20180101ALN20240328BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALN20240328BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALN20240328BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20240328BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240328BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K31/5025
C12Q1/6809 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6816 Z
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564173
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 US2022025727
(87)【国際公開番号】W WO2022226168
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,941
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520509029
【氏名又は名称】アポロミクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】レドゥカ,サンジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,グォリャン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR56
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示は、対象における癌を処置する方法を提供する。ある実施形態において、方法は、対象由来の試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それにより、試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、トランスクリプトーム全体の少なくとも95%より大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、トランスクリプトーム全体の少なくとも95%より大きいことを決定すること;およびc-Met阻害剤を対象に投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する対象を処置する方法であって、
対象由来の試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それによって、試料のトランスクリプトーム全体の各遺伝子の発現レベルを測定すること;
HGFの発現レベルがトランスクリプトーム全体の全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;
c-Metの発現レベルがトランスクリプトーム全体の全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および
治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記HGFまたはc-Metの発現レベルが、前記トランスクリプトーム全体の全ての遺伝子の少なくとも96%、97%、98%、または99%より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HGFまたはc-Metの発現レベルが、前記トランスクリプトーム全体の全ての遺伝子の閾値パーセンテージよりも大きいことを決定する前に、前記トランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルをランク付けすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、c-Met遺伝子に変異を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料がc-Met遺伝子に発癌性変異を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、肺癌、黒色腫、腎癌、肝癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵癌、甲状腺癌、血液癌、白血病および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌または肝細胞癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が組織または血液である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA転写産物が、ハイスループットシーケンシングを使用して検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記c-Met阻害剤が、クリゾチニブ、カボザンチニブ、APL-101(CBT-101、PLB1001、ボジチニブ)、SU11274、PHA665752、K252a、PF-2341066、AM7、JNJ-38877605、PF-04217903、MK2461、GSK1363089(XL880、フォレチニブ)、AMG458、チバンチニブ(ARQ197)、INCB28060(INC280、カプマチニブ)、E7050、BMS-777607、サボリチニブ(ボリチニブ)、テポチニブ、HQP-8361、メレスチニブ、ARGX-111、オナルツズマブ、リロツムマブ、エミベツズマブ、およびXL184からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記c-Met阻害剤が、以下の式
【化1】
の化合物であり、
式中:
およびRは独立して水素またはハロゲンであり;
XおよびXは独立して水素またはハロゲンであり;
AおよびGは独立してCHもしくはNであるか、またはCH=Gが硫黄原子で置換されており;
EはNであり;
JはCH、SまたはNHであり;
MはNまたはCであり;
Arは、場合によりC1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、-CONR、-NHCOR、-SONR、C1~6アルコキシ-、C1~6アルキル-、アミノ-C1~6アルキル-、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリル-C1~6アルキル-より独立して選択される1~3個の置換基で置換された、アリールもしくはヘテロアリールであるか、または2つの連結した置換基が、それらが結合する原子とともに、該アリールもしくはヘテロアリールと融合した4~6員ラクタムを形成し;
は水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロゲン、アミノ、または-CONH-C1~6アルキル-ヘテロシクリルであり;
およびRは独立して水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヘテロシクリル-C1~6アルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合するNとともにヘテロシクリルを形成し;
はC1~6アルキルまたはC3~7シクロアルキルであり;ならびに
およびRは独立して水素またはC1~6アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、以下の式
【化2】
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記c-Met阻害剤が抗c-Met抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある癌を有する対象を同定するための方法であって、
対象から試料を得ること;
前記試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それによって、前記試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;
HGFの発現レベルが、前記トランスクリプトーム全体の少なくとも95%より大きいことを決定すること;
c-Metの発現レベルが、前記トランスクリプトーム全体の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および
対象がc-Met阻害剤による処置に応答する見込みがあることを決定すること
を含む、方法。
【請求項15】
治療有効量のc-Met阻害剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
癌を有する対象を処置する方法であって、
対象由来の試料中に発現された一組のバイオマーカー遺伝子のRNA転写産物を検出し、それによって、試料の一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定することであって、一組のバイオマーカー遺伝子が、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKを含む、測定すること;
HGFの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも70%より大きいことを決定すること;
c-Metの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および
治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項17】
前記HGFの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%より大きいか、または前記c-Metの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも96%、97%、98%、99%もしくは100%より大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記HGFまたはc-Metの発現レベルが、前記一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の閾値パーセンテージより大きいことを決定する前に、前記一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルをランク付けすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、c-Met遺伝子に変異を有さない、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、c-Met遺伝子に発癌性変異を有さない、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記癌が、肺癌、黒色腫、腎癌、肝癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵癌、甲状腺癌、血液癌、白血病および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌または肝細胞癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が組織または血液である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記RNA転写産物が、ハイスループットシーケンシングを使用して検出される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記c-Met阻害剤が、クリゾチニブ、カボザンチニブ、APL-101(CBT-101、PLB1001、ボジチニブ)、SU11274、PHA665752、K252a、PF-2341066、AM7、JNJ-38877605、PF-04217903、MK2461、GSK1363089(XL880、フォレチニブ)、AMG458、チバンチニブ(ARQ197)、INCB28060(INC280、カプマチニブ)、E7050、BMS-777607、サボリチニブ(ボリチニブ)、テポチニブ、HQP-8361、メレスチニブ、ARGX-111、オナルツズマブ、リロツムマブ、エミベツズマブ、およびXL184からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記c-Met阻害剤が、以下の式
【化3】
の化合物を含み、
式中:
およびRは独立して水素またはハロゲンであり;
XおよびXは独立して水素またはハロゲンであり;
AおよびGは独立してCHもしくはNであるか、またはCH=Gが硫黄原子で置換されており;
EはNであり;
JはCH、SまたはNHであり;
MはNまたはCHであり;
Arは、場合によりC1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、-CONR、-NHCOR、-SONR、C1~6アルコキシ-、C1~6アルキル-、アミノ-C1~6アルキル-、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリル-C1~6アルキル-より独立して選択される1~3個の置換基で置換された、アリールもしくはヘテロアリールであるか、または2つの連結した置換基が、それらが結合する原子とともに、該アリールもしくはヘテロアリールと融合した4~6員ラクタムを形成し;
は水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロゲン、アミノ、または-CONH-C1~6アルキル-ヘテロシクリルであり;
およびRは独立して水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヘテロシクリル-C1~6アルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合するNとともにヘテロシクリルを形成し;
はC1~6アルキルまたはC3~7シクロアルキルであり;ならびに
およびRは独立して水素またはC1~6アルキルである、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物が、以下の式
【化4】
を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記c-Met阻害剤が抗c-Met抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある癌を有する対象を同定するための方法であって、
対象から試料を得ること;
試料中に発現された一組のバイオマーカー遺伝子のRNA転写産物を検出し、それにより試料の一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定することであって、一組のバイオマーカー遺伝子が、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKを含む、測定すること;
HGFの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも70%より大きいことを決定すること;
c-Metの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および
対象がc-Met阻害剤による処置に応答する見込みがあることを決定すること
を含む、方法。
【請求項30】
治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により開示が本明細書に組み込まれている、2021年4月21日に出願した米国仮特許出願第63/177,941号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、全体的に、癌処置に関する。具体的には、本発明は、患者がHGFおよびc-Metの過剰発現を有する場合に、c-Met阻害剤を使用して癌患者を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
c-Metは、肝細胞増殖因子受容体としても公知であり、増殖、運動性、移動性および浸潤に関与するものを含む、広範囲の種々の細胞シグナル伝達経路を調節する受容体チロシンキナーゼである。発癌および癌の進行において重要な細胞プロセスにおける多面的な役割のため、c-Met異常は小細胞肺癌(SCLC)およびNSCLC等の様々な悪性腫瘍に関与することが示されている(Olivero et al.,Br J Cancer,74:1862-8(1996)およびIchimura et al.,Jpn J Cancer Res,87:1063-9(1996))。結果として、c-Metは抗癌剤治療の重要な標的と考えられている。
【発明の概要】
【0004】
特異的にc-Metに対する阻害剤は、魅力的な新しい標的治療手段を代表する。例えば、c-Metの新しい小細胞特異的阻害剤、SU11274の有効性は、Sattler,et al.(Pfizer;以前はSugen)によって、モデルとしての発癌性Tpr-Metによって形質転換された細胞において、およびSCLCにおいて最初に報告された(Sattler,et al.,Cancer Res,63,(17),5462-9(2003))。最近、APL-101(アポロミクス;ボジチニブ、ベブレルチニブおよびPLB-1001としても公知である)、カプマチニブ〔capmatilib〕(Novartis)、テポチニブ(Merck)およびサボリチニブ(AstraZeneca)等のc-Metの低分子阻害剤が、肺癌および脳腫瘍に対する臨床試験において有望な効能を示している。しかしながら、臨床データから、多くの癌患者がc-Met阻害剤に応答性がないことが示され、c-Met阻害剤の効能は限定される。したがって、c-Met阻害剤を使用して癌患者を処置するための新しい方法を開発することが急務である。
【0005】
ある態様における本開示は、c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある癌を有する対象を同定するための方法を提供する。ある実施形態において、該方法は、対象から試料を得ること;試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それによって試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の第1の閾値パーセンテージ(例えば、少なくとも95%)より大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の第2の閾値パーセンテージ(例えば、少なくとも95%)より大きいことを決定すること;対象がc-Met阻害剤による処置に応答する見込みがあることを決定することを含む。
【0006】
別の実施形態において、c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある、癌を有する対象を同定するための方法は、対象から試料を得ること;試料中に発現された一組のバイオマーカー遺伝子のRNA転写産物を検出し、それにより試料の一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定することであって、一組のバイオマーカー遺伝子が、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKを含む、測定すること;HGFの発現レベルが第1の閾値パーセンテージ、例えば、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも75%大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが第2の閾値パーセンテージ、例えば、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも95%大きいことを決定すること;ならびに対象がc-Met阻害剤による処理に応答する見込みがあることを決定することを含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、癌を有する対象を処置する方法を提供する。ある実施形態において、該方法は、対象由来の試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それにより、試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の第1の閾値パーセンテージ(例えば、少なくとも95%)よりも大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の第2の閾値パーセンテージ(例えば、少なくとも95%)よりも大きいことを決定すること;および治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与することを含む。
【0008】
別の実施形態において、癌を有する対象を処置する方法は、対象由来の試料中に発現された一組のバイオマーカー遺伝子のRNA転写産物を検出し、それによって、試料の一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定することであって、一組のバイオマーカー遺伝子が、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKを含む、測定すること;HGFの発現レベルが第1の閾値パーセンテージ、例えば、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも70%大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが第2の閾値パーセンテージ、例えば、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての他の遺伝子の少なくとも95%大きいことを決定すること;および治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1または第2の閾値パーセンテージは、トランスクリプトーム全体の少なくとも96%、97%、98%または99%である。いくつかの実施形態において、第1または第2の閾値パーセンテージは、一組のバイオマーカー遺伝子の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0010】
いくつかの実施形態において、方法は、HGFまたはc-Metの発現レベルが、トランスクリプトーム全体または一組のバイオマーカー遺伝子の全ての遺伝子の閾値パーセンテージより大きいことを決定する前に、トランスクリプトーム全体または一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルをランク付けすることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、試料は、c-Met遺伝子に変異を有さない。ある実施形態において、試料は、c-Met遺伝子における発癌性変異を有さない。ある実施形態において、c-Met遺伝子における発癌性変異は、c-Metの膜近傍ドメインをコードする、エクソン14を欠いたより短いタンパク質をコードする選択的スプライシングを生じる点変異;酵素を恒常的活性型にするキナーゼドメインの点変異;または恒常的c-Met発現につながる、Cb1結合部位を不活性化するY1003変異である。ある実施形態において、c-Met遺伝子における変異は、c-Met融合遺伝子を生成する。ある実施形態において、c-Met遺伝子における変異は、参照により本明細書に組み込まれるPCT/CN2020/094824に開示される。
【0012】
いくつかの実施形態において、癌は、肺癌、黒色腫、腎癌、肝癌、骨髄腫、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵癌、甲状腺癌、血液癌、白血病および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、癌は非小細胞肺癌(NSCLC:non-small cell lung cancer)、腎細胞癌または肝細胞癌である。
【0013】
いくつかの実施形態において、c-Met阻害剤は、クリゾチニブ、カボザンチニブ、APL-101(別名CBT-101、PLB1001、ボジチニブ、ベブレルチニブ)、SU11274、PHA665752、K252a、PF-2341066、AM7、JNJ-38877605、PF-04217903、MK2461、GSK1363089(別名XL880、フォレチニブ)、AMG458、チバンチニブ(別名ARQ197)、INCB28060(別名INC280、カプマチニブ)、E7050、BMS-777607、サボリチニブ(別名ボリチニブ)、テポチニブ、HQP-8361、メレスチニブ、ARGX-111、オナルツズマブ、リロツムマブ、エミベツズマブ、およびXL184からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、c-Met阻害剤は、以下の式
【0015】
【化1】
の化合物を含み、
式中:
およびRは独立して水素またはハロゲンであり;
XおよびXは独立して水素またはハロゲンであり;
AおよびGは独立してCHもしくはNであるか、またはCH=Gが硫黄原子で置換されており;
EはNであり;
JはCH、SまたはNHであり;
MはNまたはCHであり;
Arは、場合によりC1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、-CONR、-NHCOR、-SONR、C1~6アルコキシ-、C1~6アルキル-、アミノ-C1~6アルキル-、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリル-C1~6アルキル-より独立して選択される1~3個の置換基で置換された、アリールもしくはヘテロアリールであるか、または2つの連結した置換基が、それらが結合する原子とともに、該アリールもしくはヘテロアリールと融合した4~6員ラクタムを形成し;
は水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロゲン、アミノ、または-CONH-C1~6アルキル-ヘテロシクリルであり;
およびRは独立して水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヘテロシクリル-C1~6アルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合するNとともにヘテロシクリルを形成し;
はC1~6アルキルまたはC3~7シクロアルキルであり;ならびに
およびRは独立して水素またはC1~6アルキルである。
【0016】
いくつかの実施形態において、化合物は、以下の式:
【0017】
【化2】
を有するAPL-101である。
【0018】
いくつかの実施形態において、c-Met阻害剤は、抗c-Met抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】IHCによって決定された患者003-019のc-MET過剰発現を示す図である。
図2】METとHGFの両方の遺伝子発現レベルが、患者003-019のトランスクリプトーム全体において異常に高いことを示す図である。
図3】METとHGFの両方の遺伝子発現レベルが、93の独特な腫瘍タイプおよび適合した30の組織タイプによって調査されたダイナミックレンジと比較して、患者003-019において異常に高いことを示す図である。
図4】SA4097肉腫PDXモデルにおける40の癌遺伝子シグネチャーの中でランク付けされたMETおよびHGF遺伝子発現のパーセンタイルを示す図である。
図5】KP4ヒト膵臓癌細胞株における40の癌遺伝子シグネチャーの中でランク付けされたMETおよびHGF遺伝子発現のパーセンタイルを示す図である。
図6】SA10199肉腫PDXモデルにおける40の癌遺伝子シグネチャーの中でランク付けされたMETおよびHGF遺伝子発現のパーセンタイルを示す図である。
図7】c-Met阻害剤APL-101およびカプマチニブがSA4097肉腫PDXモデルにおいて腫瘍増殖を阻害したことを示す図である。
図8】c-Met阻害剤APL-101、カプマチニブ、テポチニブおよびサボリチニブが、KP4ヒト膵癌細胞株異種移植片モデルにおいて腫瘍増殖を阻害したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示をより詳細に説明する前に、本開示は記載される特定の実施形態に限定されず、それゆえに勿論変化し得ることが理解されるべきである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書中で使用される用語法もまた、特定の実施形態だけを説明する目的であり、限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。
【0021】
他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似した、または同等な任意の方法および材料もまた、本開示の実行または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料をここに記載する。
【0022】
本明細書中で引用される全ての刊行物および特許は、各それぞれの刊行物または特許が特異的かつそれぞれに参照により組み込まれていると示されているかのように本明細書中に参照により組み込まれており、関連して刊行物が引用される方法および/または材料を開示および記載するように参照により組み込まれている。任意の刊行物の引用は、出願日以前の開示についてであって、本開示が先の開示によってかかる刊行物より日付が前である権利を与えることを認めることとして解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の公開日と異なり得る。
【0023】
本開示を読む際に当業者に明白であるように、本明細書中に記載および例証されるそれぞれの実施形態の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離または組み合わされ得る別々の成分および特徴を有する。任意の引用される方法は、引用される事象の順で、または論理的に可能な任意の他の順序で行い得る。
【0024】
定義
以下の定義は、読者を手伝うために提供される。他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての技術の用語、表記法および他の科学用語もしくは医学用語または用語法は、化学および医学の当業者に一般に理解される意味を有するよう意図される。いくつかの場合において、一般に理解される意味を有する用語が、明確さおよび/または即時参照のために本明細書中で定義され、本明細書中にかかる定義を含むことは、必ずしも当該分野で一般に理解される用語の定義に対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によって他に明らかに示されなければ、複数の参照を含む。
【0026】
本発明中で使用される場合、「抗体」は、天然に発生する免疫グロブリン、ならびに例えば単鎖抗体、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、およびヘテロ共役抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む天然に発生しない免疫グロブリンを包含する。抗体の断片としては、抗原に結合するもの、(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、およびrIgG)が挙げられる。例えば、Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.、Rockford、Ill.);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York(1998)も参照。用語、抗体はまた、二価または二重特異性分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体〔triabodies〕、および四重特異性抗体〔tetrabodies〕を含む。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方をさらに含む。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「投与すること」は、対象に医薬剤または医薬組成物を提供することを意味し、限定されないが、医療従事者および自己投与によって投与することを含む。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「抗血管新生剤」は、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害剤および内皮細胞遊走の阻害剤等の、新しい血管増殖を減少または阻害する物質を意味する。抗血管新生剤には、限定されないが、2-メトキシエストラジオール、アンジオスタチン、ベバシズマブ、軟骨由来血管新生阻害因子、エンドスタチン、IFN-α、IL-12、イトラコナゾール、リノミド、血小板因子-4、プロラクチン、SU5416、スラミン、タスキニモド、テトコガラン、テトラチオモリブデート、サリドマイド、トロンボスポンジン、トロンボスポンジン、TNP-470、ジブ-アフリベルセプト、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「癌」は、異常な細胞増殖を伴う任意の疾患をいい、体内の任意の組織、器官または細胞を冒す疾患の全てのステージおよび全ての形態を含む。該用語は、悪性、良性、軟部組織、または固形のいずれに特徴づけられるものであろうと全ての公知の癌および新生物病態、ならびに転移前および転移後の癌を含む全ての段階および悪性度の癌を含む。一般に、癌は、癌が位置する、または開始する組織または器官、ならびに癌性の組織および細胞の形態に従って分類され得る。本明細書中で使用される場合、癌のタイプとしては、急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、肛門癌、星状細胞腫、小児小脳または大脳、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍、脳癌、乳癌、バーキットリンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、気腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング腫瘍、ユーイング肉腫、胃〔gastric〕(胃〔stomach〕)癌、神経膠腫、頭頚部癌、心臓癌、ホジキンリンパ腫、膵島細胞癌(膵島)、カポジ肉腫、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病、肝癌、肺癌、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵癌、咽頭癌〔pharyngeal cancer〕、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎癌)、網膜芽細胞腫、皮膚癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌〔throat cancer〕、甲状腺癌、膣癌、視経路および視床下部神経膠腫が挙げられる。
【0030】
用語「癌試料」としては、生体試料、または1つもしくは複数の癌細胞を含む生物源由来の試料が挙げられる。生体試料としては、体液、例えば血液、血漿、血清、もしくは尿由来の試料、または、例えば細胞、組織もしくは器官、好ましくは癌細胞を含むか、もしくは本質的に癌細胞からなる疑いのある腫瘍組織に由来する生検によって得られた試料が挙げられる。
【0031】
用語「c-Met」は、肝細胞増殖因子受容体(HGFR:hepatocyte growth factor receotor)として公知のタンパク質をコードする癌原遺伝子をいう。c-Metタンパク質は、c-Metの前駆体(プロc-Met)を切断することによって生じるα鎖およびβ鎖で構成され、ジスルフィド結合によって二量体を形成する。c-Metは細胞膜を貫通する受容体であり、完全なα鎖およびβ鎖の一部が細胞外に存在する(例えば、Mark et al.,The Journal of Biological Chemistry(1992)267:26166-71;Ayumi I,Journal of Clinical and Experimental Medicine(2008)224:51-55参照)。ヒトc-Metならびにそのα鎖およびβ鎖については、GenBank受託番号:NP_000236.2も参照のこと。癌における異常なc-Met活性化が予後不良と相関し、ここで異常に活性のあるc-Metが腫瘍増殖、腫瘍に栄養分を供給する新しい血管の形成、および癌の拡散または他の器官の引き金となることが示されている。
【0032】
「c-Met阻害剤」は、本明細書中で使用される場合、c-Metタンパク質の発現または活性を抑制し得る薬剤をいう。c-Met阻害剤の例としては、限定されないが、クリゾチニブ、カボザンチニブ、テポチニブ、AMG337、APL-101(別名PLB1001、ボジチニブ)、SU11274、PHA665752、K252a、PF-2341066、AM7、JNJ-38877605、PF-04217903、MK2461、GSK1363089(別名XL880、フォレチニブ)、AMG458、チバンチニブ(ARQ197)、INCB28060(別名INC280、カプマチニブ)、E7050、BMS-777607、サボリチニブ(別名ボリチニブ)、HQP-8361、メレスチニブ、ARGX-111、オナルツズマブ、リロツムマブ、エミベツズマブXL184およびUS20150218171に開示されている化合物が挙げられる。
【0033】
用語「決定する」、「評価する」、「測定する」および「検出する」は、互換的に使用し得、定量的および半定量的決定の両方をいう。定量的および半定量的決定のいずれかが意図される場合、目的のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの「レベルを決定する」または目的のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドを「検出する」という語句を使用し得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、任意の障害または疾患の症状および/または基礎原因を予防、処置、減少および/または改善するのに十分な薬剤の量、あるいは細胞に所望の効果をもたらすのに十分な薬剤の量を意味する。ある実施形態において、「治療有効量」は、疾患の症状を減少または除去するのに十分な量である。別の実施形態において、治療有効量は、疾患自体を克服するのに十分な量である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、遺伝子の「発現レベル」という用語は、遺伝子から発現される産物、例えばRNAまたはタンパク質の量を意味する。ある実施形態において、遺伝子の発現レベルは、その遺伝子から発現されるRNA転写産物の量をいう。ある実施形態において、遺伝子の発現レベルは、ハイスループットシーケンシングアッセイ(例えば、RNA-seq)において測定される。このような場合、各読み取りは、まず、参照転写産物の注釈にマッピングされ、読み取りがどの遺伝子に属するかを決定する。次いで、各遺伝子にマッピングされた読み取りの数をカウントすることによって、発現レベルを定量する。転写産物発現が同じである場合、より長い遺伝子はより短い遺伝子よりも多くの断片/読み取り/カウントを有するため、いくつかの実施形態において、発現レベルは、読み取りの数を遺伝子(mRNA)の長さで割ることによって調整される。いくつかの実施形態において、発現レベルは、100万あたりの倍率(100万あたりの転写産物、TPM)によってさらに正規化される。
【0036】
本発明において、用語「免疫調節剤」は、免疫系が抗体を産生する能力を増強または減少させることによって免疫応答を変化させる、またはそれらの産生を開始した抗原を認識し、それと反応する細胞を感作させる物質を意味する。免疫調節剤は、組換え、合成、または天然の調製物があり、サイトカイン、コルチコステロイド、細胞毒性剤、チモシン、および免疫グロブリンが含まれ得る。一部の免疫調節剤は、体内に自然に存在し、これらのいくつかは薬理学的調製物として利用することができる。ある実施形態において、免疫調節剤は、免疫チェックポイントの調節剤である。免疫調節剤の例は、限定されないが、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、細菌由来のイミキモドおよび細胞膜画分、IL-2、IL-7、IL-12、CCL3、CCL26、CXCL7、および合成シトシンリン酸-グアノシン(CpG)が挙げられる。
【0037】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらのアナログのいずれでも、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態をいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、既知または未知の任意の機能を果たし得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、shRNA、一本鎖の短いまたは長いRNA〔single-stranded short or long RNAs〕、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。核酸分子は、線状または環状であり得る。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「光活性治療剤」は、光に曝露されると活性になる化合物および組成物を意味する。光活性治療剤のある例は、例えば、米国特許出願公開第2011/015223号に開示されている。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「放射線増感剤」は、放射線療法に対して腫瘍細胞をより感受性にする化合物を意味する。放射線増感剤の例としては、ミソニダゾール、メトロニダゾール、チラパザミン、およびトランスクロセチン酸ナトリウムが挙げられる。
【0040】
癌治療に対する患者の応答の文脈において使用される用語「応答性」、「臨床応答」、「陽性臨床応答」等は、互換的に使用され、好ましくない応答、すなわち有害事象とは対照的に、処置に対する良好な患者の応答をいう。患者において、有利な応答は、おそらく腫瘍の退縮もしくは排除をもたらす、検出可能な腫瘍の喪失(完全奏効、CR)、腫瘍サイズおよび/または癌細胞数の減少(部分奏効、PR)、腫瘍増殖停止(不変、SD)、抗腫瘍免疫応答の促進;腫瘍と関連する1つまたは複数の症状のある程度までの緩和;処置の後の生存の長さの増大;および/または処置の後の所定の時点での死亡率の減少を含む、多数の臨床パラメータの点から表し得る。腫瘍サイズおよび/もしくは癌細胞数の継続的な増大ならびに/または腫瘍転移は、処置に対する有利な応答の欠如を示す。集団において、薬物の臨床的有用性、すなわち、その効能は、1つまたは複数の評価項目に基づいて評価することができる。例えば、全奏効率(ORR)の分析は、薬物による処置後にCRまたはPRを経験した患者を応答者として分類する。疾患管理(DC)の分析は、薬物による処置後にCR、PRまたはSDを経験した患者を応答者として分類する。陽性の臨床応答は、限定されないが、(1)減速および完全な増殖停止を含む、ある程度までの腫瘍増殖の阻害;(2)腫瘍細胞数の減少;(3)腫瘍サイズの減少;(4)腫瘍細胞の隣接する末梢器官および/もしくは組織への浸潤の阻害(すなわち、減少、減速もしくは完全な停止);(5)転移の阻害;(6)腫瘍の退縮もしくは排除をもたらす可能性がある、抗腫瘍免疫応答の増強;(7)腫瘍に関連する1つもしくは複数の症状のある程度までの緩和;(8)処置後の生存の長さの増大;および/または(9)処置後の所定の時間点での死亡率の低下を含む、患者に対する有用性を示す任意の評価項目を用いて評価することができる。陽性の臨床応答はまた、反応は、臨床転帰の様々な尺度の観点から表すことができる。陽性の臨床転帰はまた、同等の臨床診断を有する患者集団の転帰と比較した個人の転帰という文脈において考慮することができ、無再発期間(RFI)の増加、集団における全生存(OS)と比較した生存期間の増加、無病生存期間(DFS)の増加、遠隔無再発期間(DRFI)の増加等の様々な評価項目を用いて評価することができる。追加の評価項目には、いずれの事象(AE)もない生存の可能性、転移性再発(MR)のない生存(MRFS)の可能性、無病生存(DFS)の可能性、無再発生存(RFS)の可能性、最初の増悪(FP)の可能性、および遠隔無転移生存(DMFS)の可能性が含まれる。陽性臨床応答の可能性の増加は、癌の再発〔recurrence〕または再発〔relapse〕の可能性の低下に対応する。
【0041】
本明細書中で使用される「試料」という用語は、対象から得られ、RNA転写産物、ゲノムDNA、および/またはタンパク質を含有する生体試料をいう。試料の例としては、限定されないが、細胞、例えば、癌細胞、組織、例えば、生検組織(例えば、生検骨組織、骨髄、乳房組織、消化管組織、肺組織、肝組織、前立腺組織、脳組織、神経組織、髄膜組織、腎組織、子宮内膜組織、子宮頸部組織、リンパ節組織、筋組織、または皮膚組織)、およびパラフィン包埋組織、ならびに体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、膣液、子宮または膣の洗浄液、胸水、腹水、脳脊髄液、唾液、汗、涙、痰、気管支肺胞洗浄液等が挙げられる。ある実施形態において、試料は癌細胞を含む生体試料であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、例えば腫瘍生検または穿刺吸引によって腫瘍から得られた、新しい、または保管された試料である。試料はまた、癌細胞を含む任意の生体体液であり得る。対象からの試料の収集は、通常生検の間等に病院または診療所によって追跡されて、標準的なプロトコルに従って行われる。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長動物)をいう。ヒトとしては、出生前および出生後の形態が挙げられる。多くの実施形態において、対象は人間である。対象は患者であり得、これは疾患の診断または処置のために医療提供者に出向いたヒトをいう。用語「対象」は、本明細書中で、「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に悩まされていてもよく、またはかかりやすい、疾患または障害の症状を呈していてもいなくてもよい。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「毒素」は、植物または動物由来の抗原毒もしくは毒物を意味する。例は、ジフテリア毒素またはその一部である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「トランスクリプトーム」は、試料、例えば、個々の細胞または細胞の集団中の全てまたは実質的に全てのRNA転写産物のセットを意味する。いくつかの実施形態において、トランスクリプトームは、試料中の全てのmRNA転写産物をいう。いくつかの実施形態において、トランスクリプトームは、全てのタンパク質のコードおよび非コードRNA転写産物を含む。
【0045】
用語「処置」「処置する〔treat〕」、または「処置する〔treating〕」は、癌(例えば、乳癌、肺癌、卵巣癌等)の効果または癌の症状を減少させる方法をいう。よって、開示される方法において、処置は、癌の重症度または癌の症状の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少をいい得る。例えば、疾患を処置する方法は、対照と比較して、対象において疾患の症状の1つまたは複数に10%の減少がある場合に、処置であると考えられる。よって、減少は、天然または対照のレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または10~100%の間の任意のパーセントの減少であり得る。処置は必ずしも疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な消失をいわないことが理解される。
【0046】
トランスクリプトーム分析
ある態様における本開示は、c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある癌を有する対象を同定するための方法を提供する。ある実施形態では、該方法は、対象から試料を得ること;試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それによって、試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;対象がc-Met阻害剤による処置に応答する見込みがあることを決定することを含む。
【0047】
別の実施形態において、c-Met阻害剤による処置に応答する見込みがある癌を有する対象を同定するための方法は、HGFおよびc-Metの発現レベルを、全ての癌患者において一般的に変化する一組のバイオマーカー遺伝子と比較することを含む。ある実施形態において、該方法は、対象から試料を得ること;試料中に発現された一組のバイオマーカー遺伝子のRNA転写産物を検出し、それにより、試料の一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも75%より大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における他の遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および対象がc-Met阻害剤による処置に応答する見込みがあることを決定することを含む。ある実施形態において、一組のバイオマーカー遺伝子は、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKを含む。
【0048】
癌原遺伝子c-METは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK:receptor tyrosine kinase)c-Metをコードする。上皮-内皮由来の細胞は、c-METを幅広く発現し、これは胚発生および組織修復に必須である。肝細胞増殖因子受容体(HGF:hepatocyte growth factor)はc-Met受容体の唯一の公知のリガンドであり、主に間葉系由来の細胞において発現される。通常の条件下で、c-Metは二量体化し、リガンド結合の際に自己リン酸化し、次に活性のある、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK:mitogen-activated protein kinase)、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K:phosphatidylinositol 3-kinase)-AKT、v-src肉腫ウイルス発癌遺伝子(SRC)、シグナル伝達性転写因子(STAT:signal transducer and activator of transcription)シグナル伝達経路の活性化につながる下流のシグナル伝達を媒介するタンパク質への活性ドッキング部位を生じる。かかる活性化は、増大した細胞増殖、拡散および運動性、浸潤、アポトーシスからの保護、分枝形態形成、ならびに血管新生につながる様々な多面的な生物反応を引き起こす。しかしながら、病態下では、c-Metの不適当な活性化が、癌細胞の増殖、生存および浸潤/転移能力を与え得る。
【0049】
調節解除および結果として生じるc-Metの異常なシグナル伝達が、遺伝子増幅および活性化突然変異を含む種々のメカニズムで起こり得る。肺、乳房、卵巣、腎臓、結腸、甲状腺、肝臓および胃癌を含む様々な癌腫においてc-Metが過剰発現されていることが報告されている。かかる過剰発現は、転写活性化、低酸素誘導過剰発現の結果であり得、またはc-Met遺伝子増幅の結果としてあり得る。遺伝子増幅は、c-Metの頻繁な遺伝的改変であり、NSCLC、結腸直腸癌および胃癌における予後不良と関連すると報告されており、c-Met遺伝子上の発癌性変異は、非遺伝性の癌の患者にはめったに見られない。c-Metの潜在的な発癌性変異は、主に、c-Metの膜近傍ドメインをコードする、エクソン14を欠いたより短いタンパク質をコードする選択的スプライシングを生じる点変異;酵素を恒常的活性型にするキナーゼドメインの点変異;および恒常的c-Met発現につながる、Cb1結合部位を不活性化するY1003変異を伴う。
【0050】
本開示において、本発明者らは驚くべきことに、c-Metシグナル伝達経路における複数の成分、例えば、HGFおよびc-Metの過剰発現が、c-Met阻害剤の処置に対する患者の応答性を示すことを見出した。特に、c-Metシグナル伝達経路における遺伝子の過剰発現は、トランスクリプトーム分析に基づいて測定される。
【0051】
本明細書に記載されるトランスクリプトームは、所定の生物または生体試料中に存在する全てのRNA転写産物を包含する。ある実施形態において、トランスクリプトームは、生体試料中の全てのRNAをいう。ある実施形態において、トランスクリプトームは、生体試料中の全てのmRNAをいう。ある実施形態において、トランスクリプトームは、生体試料中の全てのタンパク質コードRNAをいう。ある実施形態において、トランスクリプトームは、全てのタンパク質コードRNAおよび非コードRNAを包含する。
【0052】
生体試料のトランスクリプトームは、限定されないが、マイクロアレイ、ハイブリダイゼーションベースのアッセイ、およびRNA-seq、シーケンシングベースのアッセイを含む、当該分野において公知である適切な方法によって測定することができる。
【0053】
試料調製
本明細書中で提供される方法を行うのに適した任意の生体試料は、対象から得ることができる。ある実施形態において、試料は、トランスクリプトームを測定するための望ましい方法によってさらに加工することができる。
【0054】
ある実施形態において、試料調製の方法は、対象から得られる生体体液試料(末梢血試料等)または組織試料から癌細胞(循環腫瘍細胞等)を単離または抽出することを含む。癌細胞は、Immunicon(Huntingdon Valley、Pa.)から入手可能なもの等の免疫磁気分離技術によって分離し得る。
【0055】
ある実施形態において、方法は、試料から核酸、例えばRNAを単離することをさらに含む。フェノールおよびクロロホルム抽出、ならびに例えばAusubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology(1997)John Wiley & SonsおよびSambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.(2001)に記載されるような種々の他の方法等、細胞または組織からDNAまたはRNAを単離するのに、種々の抽出の方法が適している。ある実施形態において、試料から単離されたRNAは、マイクロアレイまたはシーケンシングに供する前に、cDNAに逆転写することができる。
【0056】
マイクロアレイ
核酸ハイブリダイゼーションアッセイは、標的核酸にハイブリダイゼーションするようプローブを使用し、それによって標的核酸の検出が可能になる。マイクロアレイは、RNA、DNA、mRNAから逆転写されたcDNA、または染色体DNAであり得る多数の標的核酸分子のレベルを同時測定するための方法を提供するハイブリダイゼーションベースのアッセイである。本明細書中で使用される場合、標的核酸、例えば、RNA、またはmRNAから逆転写されたcDNAは、基板表面の1平方センチメートルあたり最大数百万個のプローブの密度で整列した多数の固定化された核酸プローブを有する基板を含むマイクロアレイにハイブリダイズさせることができる。試料中のRNAまたはDNAは、アレイ上の相補的なプローブにハイブリダイゼーションし、次いでレーザースキャンによって検出される。アレイ上の各プローブのハイブリダイゼーション強度が測定され、RNAまたはDNAの相対レベルを表す定量値に変換される。米国特許第6,040,138号、第5,800,992号および第6,020,135号、第6,033,860号、および第6,344,316号参照。
【0057】
機械的合成方法を使用したこれらのアレイの合成のための技術は、例えば、米国特許第5,384,261号に記載されている。平面状のアレイ表面がしばしば採用されるが、アレイは、実質的に任意の形状の表面または多数の表面上にも加工し得る。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、ファイバーオプティックス等の繊維、ガラスまたは任意の他の適当な基板上の核酸であり得、米国特許第5,770,358号、第5,789,162号、第5,708,153号、6,040,193号および5,800,992号参照。アレイは、診断または包括的な装置の他の操作を可能にするように包装し得る。有用なマイクロアレイはまた、市販されており、例えば、Affymetrixのマイクロアレイ、NanoString Technologiesのマイクロアレイ、PanomicsのQuantiGene 2.0 Multiplex Assayである。
【0058】
シーケンシング方法
生体試料中のトランスクリプトームの測定に有用なシーケンシング方法は、ハイスループットシーケンシング(次世代シークエンシング)であり得る。サンガーシーケンシング等の伝統的な方法と区別される方法を使用することによるハイスループットシーケンシング、または次世代シーケンシングは、高度にスケーラブルであり、ゲノムまたはトランスクリプトーム全体を一度にシーケンシングすることができる。ハイスループットシーケンシングは、(Margulies〔Marguiles〕 et al.,Nature 437(7057):376-80(2005)に記載されるような)合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、およびウルトラディープシーケンシングを伴う。合成によるシーケンシングは、ポリメラーゼ増幅において標識されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを取り込むことによって、標的核酸の相補鎖を合成することを伴う。標的ヌクレオチドの取り込みの成功の直後、または取り込みの成功の際に、標識のシグナルが測定され、ヌクレオチドの正体が記録される。取り込まれたヌクレオチド上の検出可能な標識は取り込みの前に除去され、検出および同定ステップが繰り返される。合成によるシーケンシングの方法の例は当該分野で公知であり、例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,056,676号、米国特許第8,802,368号および米国特許第7,169,560号に記載されている。合成によるシーケンシングは、フォールドバックPCRおよびアンカードプライマーを使用して、固体表面(またはマイクロアレイもしくはチップ)上で行い得る。標的核酸断片は、アンカードプライマーにハイブリダイゼーションすることによって固体表面に付着させ、ブリッジ増幅し得る。この技術は、例えば、Illumina(登録商標)シーケンシングプラットフォームにおいて使用される。
【0059】
パイロシーケンシングは、標的核酸領域をプライマーにハイブリダイゼーションさせること、ならびにポリメラーゼの存在下でA、C、G、およびT(U)塩基に対応するデオキシヌクレオチド三リン酸を順次取り込むことによって新しい鎖を伸長させることを伴う。各塩基取り込みは、スルフリラーゼによってATPに変換され、オキシルシフェリンの合成および可視光の放出を駆動する、ピロリン酸の放出を伴う。ピロリン酸放出は取り込まれた塩基の数と等モルなので、発せられた光は任意の1つのステップにおけるヌクレオチド付加の数に比例する。該プロセスは、配列全体が決定されるまで繰り返される。
【0060】
ある実施形態において、本明細書に記載されるトランスクリプトームは、トランスクリプトーム全体のショットガンシーケンシング(RNAシーケンシング)によって測定される。RNAシーケンシングの方法が記載されている(Wang Z,Gerstein M and Snyder M,Nature Review Genetics(2009)10:57-63;Maher CA et al.,Nature(2009)458:97-101;Kukurba K & Montgomery SB,Cold Spring Harbor Protocols(2015)2015(11):951-969参照)。
【0061】
発現レベルの測定およびランク付け
マイクロアレイおよびハイスループットシーケンシングは、生体試料中の全ての(または実質的に全て、すなわち、アッセイの感度に依存して、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の)遺伝子の発現レベルの測定を提供する。
【0062】
マイクロアレイアッセイにおいて、遺伝子の発現レベルは、RNAまたはcDNAに結合した色素(例えば、発蛍光団)の強度によって表した場合、マイクロアレイ上のプローブとハイブリダイズしたRNAまたはcDNAの量に基づいて測定することができる。
【0063】
ハイスループットシーケンシングアッセイ(例えば、RNA-seq)において、各読み取りは、まず、参照転写産物の注釈にマッピングされ、読み取りがどの遺伝子に属するかを決定する。次いで、各遺伝子にマッピングされた読み取りの数をカウントすることによって、発現レベルを定量する。転写産物発現が同じである場合、より長い遺伝子はより短い遺伝子よりも多くの断片/読み取り/カウントを有するため、いくつかの実施形態において、発現レベルは、読み取りの数を遺伝子(mRNA)の長さで割ることによって調整され、100万あたりの倍率(100万あたりの転写産物、TPM)によって正規化される。いくつかの実施形態において、発現レベルは、マッピングされた断片100万個あたりの遺伝子のエクソンの長さ(マッピングされた断片100万個あたりのエクソンのキロベースあたりの断片、FPKM)により、断片の数を正規化することによって調整される。
【0064】
いくつかの実施形態において、トランスクリプトームまたは一組のバイオマーカー遺伝子における各遺伝子の発現レベルを測定した後、遺伝子は、それらの発現レベルに従ってランク付けされる。いくつかの実施形態において、次いで、トランスクリプトーム全体または一組のバイオマーカー遺伝子と比較して、c-Metシグナル伝達経路に関与する遺伝子、例えば、HGFおよびc-Metの相対的発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、c-Metシグナル伝達経路の複数の成分がトランスクリプトームまたは一組のバイオマーカー遺伝子において最も高度に発現された遺伝子に属する場合、対象は、c-Met阻害剤の処置に応答する見込みがあるものとして同定される。いくつかの実施形態において、生体試料におけるHGFとc-Metの両方の発現レベルが、トランスクリプトームの全ての遺伝子の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%より高い場合、対象は、c-Met阻害剤の処置に応答する見込みがあるものとして同定される。いくつかの実施形態において、HGFの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての遺伝子の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高く、生体試料におけるc-Metの発現レベルが、一組のバイオマーカー遺伝子における全ての遺伝子の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%より高い場合、対象は、c-Met阻害剤の処置に応答する見込みがあるものとして同定される。
【0065】
c-Met阻害剤での処置
別の態様において、本開示は、癌を有する対象を処置する方法を提供する。ある実施形態において、該方法は、対象由来の試料中に発現された実質的に全てのRNA転写産物を検出し、それにより、試料のトランスクリプトーム全体における各遺伝子の発現レベルを測定すること;HGFの発現レベルが、第1の閾値パーセンテージ、例えば、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;c-Metの発現レベルが、第2の閾値パーセンテージ、例えば、トランスクリプトーム全体における全ての遺伝子の少なくとも95%より大きいことを決定すること;および治療有効量のc-Met阻害剤を対象に投与することを含む。
【0066】
本明細書中で使用される「c-Met阻害剤」は、c-Metタンパク質の発現または活性を抑制することができる薬剤をいう。ある実施形態において、c-Met阻害剤は、クリゾチニブ、カボザンチニブ、テポチニブ、AMG337、APL-101(別名PLB1001、ボジチニブ、ベブレルチニブ)、SU11274、PHA665752、K252a、PF-2341066、AM7、JNJ-38877605、PF-04217903、MK2461、GSK1363089(別名XL880、フォレチニブ)、AMG458、チバンチニブ(別名ARQ197)、INCB28060(別名INC280、カプマチニブ)、E7050、BMS-777607、サボリチニブ(別名ボリチニブ)、HQP-8361、メレスチニブ、ARGX-111、オナルツズマブ、リロツムマブ、エミベツズマブ、およびXL184からなる群より選択される。
【0067】
ある実施形態において、c-Met阻害剤は、以下の式
【0068】
【化3】
式中:
およびRは独立して水素またはハロゲンであり;
XおよびXは独立して水素またはハロゲンであり;
AおよびGは独立してCHもしくはNであるか、またはCH=Gが硫黄原子を置換しており;
EはNであり;
JはCH、S、またはNHであり;
MはNまたはCであり;
Arは、場合によりC1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロC1~6アルコキシ、C3~7シクロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、-CONR、-NHCOR、-NHCOR、-SONR、C1~6アルコキシ-、C1~6アルキル-、アミノ-C1~6アルキル-、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリル-C1~6アルキル-より独立して選択される1~3個の置換基で置換された、アリールもしくはヘテロアリールであるか、または2つの連結した置換基が、それらが結合する原子とともに、アリールもしくはヘテロアリールと融合した4~6員ラクタムを形成し;
は水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、ハロC1~6アルキル、ハロゲン、アミノ、または-CONH-C1~6アルキル-ヘテロシクリルであり;
およびRは独立して水素、C1~6アルキル、C3~7シクロアルキル、ヘテロシクリル-C1~6アルキルであるか、またはRおよびRは、それらが結合するNとともにヘテロシクリルを形成し;
はC1~6アルキルまたはC3~7シクロアルキルであり;ならびに
およびRは独立して水素またはC1~6アルキルである、
化合物を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、c-Met阻害剤は、
【0070】
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【化4-5】
【化4-6】
からなる群より選択される。
【0071】
ある実施形態において、c-Met阻害剤は、以下の式:
【0072】
【化5】
を有する、APL-101(以前はCBT-101と称された。参照により全体が本明細書に組み込まれているUS20150218171参照)である。
【0073】
ある実施形態において、c-Met阻害剤は、薬学的に許容され得る担体とともに製剤化され得る。担体は、存在する場合、c-Met阻害剤および担体の総体積または重量に基づいて担体の5重量%~95重量%の量等の任意の適した量でc-Met阻害剤と混合され得る。いくつかの実施形態において、担体の量は、5%、10%、12%、15%、20%、25%、28%、30%、40%、50%、60%、70%または75%のいずれかの下限、および下限より高い、20%、22%、25%、28%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%のいずれかの上限を有する範囲にあり得る。特定の実施形態における担体の量は、製剤分野の当業者に公知のように、特定の投薬形態、c-Met阻害剤の相対量、担体を含む組成物の総重量、担体の物理的および化学的性質、ならびに他の要因を考慮して決定し得る。
【0074】
c-Met阻害剤は、経口消化のため、または目への局所投与のための軟膏もしくは液滴として、または腹腔内、皮下、局所、皮内、吸入、肺内、直腸内、膣内、舌下、筋肉内、静脈内、動脈内、脊髄内、もしくはリンパ内等の任意の適当な様式の非経口もしくは他の投与のための、任意の所望の、および効果的な様式で投与し得る。さらに、c-Met阻害剤は、他の処置と組み合わせて投与し得る。c-Met阻害剤は、所望される場合、カプセル化してもよく、またはそうでなければ胃液もしくは他の分泌物に対して保護してもよい。
【0075】
本明細書中に開示されるc-Met阻害剤の投与量の適した非限定的な例は、1日あたり約1mg/kg~約100mg/kgを含む、1日あたり約1mg/kg~約1200mg/kg、1日あたり75mg/kg~1日あたり約300mg/kg等の、1日あたり約1mg/kg~約2400mg/kgである。かかる薬剤の、他の代表的な投与量としては、1日あたり約1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、1500mg/kg、1600mg/kg、1700mg/kg、1800mg/kg、1900mg/kg、2000mg/kg、2100mg/kg、2200mg/kg、および2300mg/kgが挙げられる。いくつかの実施形態において、ヒトにおけるc-Met阻害剤の投与量は、12時間毎に与えられる約400mg/日である。いくつかの実施形態において、ヒトにおけるc-Met阻害剤の投与量は300~500mg/日、100~600mg/日または25~1000mg/日の範囲である。有効量の、本明細書中に開示されるc-Met阻害剤は、1日中適当な間隔で別々投与される2、3、4、5、6回以上のサブ用量として投与し得る。
【0076】
ある実施形態において、該方法は、さらに、免疫チェックポイントの調節剤、細胞毒性剤、毒素、放射性核種、免疫調節剤、光活性治療剤、放射線増感剤、ホルモン、抗血管新生剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの追加の治療剤を投与することを含む。
【0077】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫チェックポイント」または「癌免疫チェックポイント」とは、免疫応答のシグナル(すなわち、共刺激分子)をターンアップするか、またはシグナル(すなわち、抑制分子)をターンダウンする免疫系の分子をいう。ある実施形態において、免疫チェックポイントは、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-1、CTLA-4、VISTA、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、284、ICOS、HVEM、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-4、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、284(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGITおよびA2aRからなる群より選択される。
【0078】
ある実施形態において、免疫チェックポイントの調節剤は、免疫チェックポイントに対するモノクローナル抗体である。ある実施形態において、免疫チェックポイントはPD-1またはPD-L1である。ある実施形態において、抗PD-1抗体は、全体が参照により組み込まれる、PCT出願公開番号WO2016/014688に開示されたものから選択される。ある実施形態において、抗PD-1抗体は、APL-501(以前にCBT-501として命名、WO2016/014688参照)、GB226またはゲノリムズマブである。ある実施形態において、抗PD-L1抗体は、全体が参照により組み込まれる、PCT出願公開番号2016/022630に開示されたものから選択される。ある実施形態において、抗PD-L1抗体は、APL-502(以前にCBT-502として命名、WO2016/022630参照)またはTQB2450である。
【0079】
c-Met阻害剤以外の抗癌剤
本開示の方法はまた、対象がc-Met阻害剤に応答する見込みがなさそうであると決定した後に、対象にc-Met阻害剤以外の抗癌剤を投与することを伴う。これらの抗癌剤としては、限定されないが:シクロホスファミド(CTX;例えばシトキサン(登録商標))、クロラムブシル(CHL;例えばロイケラン(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えばプラチノール(登録商標))ブスルファン(例えばミレラン(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンC等のアルキル化剤またはアルキル化作用のある薬剤;メトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16;例えばベプシド(登録商標))、6-メルカプトプリン(6MP)、6-チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara-C)、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(例えばゼローダ(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)等の代謝拮抗薬;アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例えばアドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン等の抗生物質;ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチン等のビンカアルカロイド等のアルカロイド;ならびにパクリタキセル(例えばタキソール(登録商標))およびパクリタキセル〔pactitaxel〕誘導体等の他の抗腫瘍剤、細胞分裂阻害剤、デキサメタゾン(DEX;例えばデカドロン(登録商標))等のグルココルチコイドならびにブレドニゾン等の副腎皮質ステロイド、ヒドロキシウレア等のヌクレオシド酵素阻害剤、アルパラギナーゼ等のアミノ酸枯渇酵素、ロイコボリン、フォリン酸、ラルチトレキセド、および他の葉酸誘導体、ならびに同様の多様な抗腫瘍剤が挙げられる。以下の薬剤もまた、さらなる薬剤として使用し得る:アミフォスチン〔arnifostine〕(例えばエチオール(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン〔lornustine〕(CCNU)、ドキソルビシンリポ〔doxorubicin lipo〕(例えばドキシル(登録商標))、ゲムシタビン(例えばジェムザール(登録商標))、ダウノルビシンリポ〔daunorubicin lipo〕(例えばダウノキソーム(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばタキソテール(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10-ヒドロキシ7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、ミトキサントロン、トポテカン、リュープロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、およびクロラムブシル。
【0080】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は、抗ホルモン剤である。本明細書中で使用される場合、用語「抗ホルモン剤」は、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するよう作用する、天然または合成の有機またはペプチド化合物を含む。
【0081】
抗ホルモン剤としては、例えば:ステロイド受容体アンタゴニスト、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、他のアロマターゼ阻害剤、42-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびトレミファン(例えばフェアストン(登録商標))等の抗エストロゲン薬;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリン等の抗アンドロゲン薬;ならびに上述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩、酸または誘導体;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)およびLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)等の糖タンパク質ホルモンのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト;ゾラデックス(登録商標)(AstraZeneca)として市販されているLHRHアゴニストゴセレリン酢酸塩:LHRHアンタゴニストD-アラニンアミドN-アセチル-3-(2-ナフタレニル)-D-アラニル-4-クロロ-D-フェニルアラニル-3-(3-ピリジニル)-D-アラニル-L-セリル-N6-(3-ピリジニルカルボニル)-L-リジル-N6-(3-ピリジニルカルボニル)-D-リジル-L-ロイシル-N6-(1-メチルエチル)-L-リジル-L-プロリン(例えばアンタイド(登録商標)、Ares-Serono);LHRHアンタゴニストガニレリクス酢酸塩;ステロイド系抗アンドロゲン薬酢酸シプロテロン(CPA)、およびメゲース(登録商標)(Bristol-Myers Oncology)として市販されている酢酸メゲストロール;ユーレキシン(登録商標)(Schering Corp.)として市販されている非ステロイド系抗アンドロゲン薬フルタミド(2-メチル-N-[4,20-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド);非ステロイド系抗アンドロゲン薬ニルタミド、(5,5-ジメチル-3-[4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル-4’-ニトロフェニル)-4,4-ジメチル-イミダゾリジン-ジオン);ならびに、RAR、RXR、TR、VDR等のアンタゴニスト等の、他の非許容受容体のアンタゴニストが挙げられる。
【0082】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は血管新生阻害剤である。抗血管新生薬としては、例えば:SU-5416およびSU-6668(South San Francisco、Calif.、USAのSugen Inc.)等または、例えば国際出願番号WO99/24440、WO99/62890、WO95/21613、WO99/61422、WO98/50356、WO99/10349、WO97/32856、WO97/22596、WO98/54093、WO98/02438、WO99/16755、およびWO98/02437、ならびに米国特許第5,883,113号、第5,886,020号、第5,792,783号、第5,834,504号および第6,235,764号に記載されているような、VEGFR阻害剤;IM862(Kirkland、Wash.、USAのCytran Inc.)等のVEGF阻害剤;アンギオザイム、Ribozyme(Boulder、Colo.)およびChiron(Emeryville、Calif.)の合成リボザイム;ならびにベバシズマブ(例えばアバスチン(商標)、Genentech、South San Francisco、Calif.)、VEGFに対する組換えヒト化抗体等の、VEGFに対する抗体;αβ、αβおよびαβインテグリン、ならびにそれらのサブタイプに対する等の、インテグリン受容体アンタゴニストおよびインテグリンアンタゴニスト、例えばシレンジタイド(EMD 121974)、または、例えばαβ特異的ヒト化抗体(例えばビタキシン(登録商標))等の抗インテグリン抗体;IFN-α(米国特許第4,530,901号〔41530,901〕、第4,503,035号、および第5,231,176号)等の因子;アンギオスタチンおよびプラスミノーゲン断片(例えばクリングル14、クリングル5、クリングル1~3(O’Reilly,M.S.et al.(1994)Cell 79:315-328;Cao et al.(1996)J.Biol.Chem.271:29461-29467;Cao et al.(1997)J.Biol.Chem.272:22924-22928);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.et al.(1997)Cell 88:277;および国際特許公開番号WO97/15666);トロンボスポンジン(TSP-1;Frazier、(1991)Curr.Opin.Cell Biol.3:792);血小板因子4(PF4);プラスミノーゲン活性化因子/ウロキナーゼ阻害剤;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;ヘパリナーゼ;TNP-4701等のフマギリンアナログ;スラミンおよびスラミンアナログ;血管新生ステロイド;bFGFアンタゴニスト;flk-1およびflt-1アンタゴニスト;MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤およびMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤等の抗血管新生剤が挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤の例は、国際特許公開番号WO96/33172、WO96/27583、WO98/07697、WO98/03516、WO98/34918、WO98/34915、WO98/33768、WO98/30566、WO90/05719、WO99/52910、WO99/52889、WO99/29667、およびWO99/07675、欧州特許公開第818,442号、第780,386号、第1,004,578号、第606,046号、および第931,788号;英国特許公開第9912961号、ならびに米国特許第5,863,949号および第5,861,510号に記載されている。好ましいMMP-2およびMMP-9阻害剤は、MMP-1を阻害する活性を少ししか有さないか、全く有さないものである。より好ましいのは、他のマトリックスメタロプロテアーゼ(すなわちMMP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP-7、MMP-8、MMP-10、MMP-11、MMP-12、およびMMP-13)と比較してMMP-2および/またはMMP-9を選択的に阻害するものである。
【0083】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は腫瘍細胞アポトーシス促進剤またはアポトーシス刺激剤である。
【0084】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤はシグナル伝達阻害剤である。シグナル伝達阻害剤としては、例えば:有機分子等のerbB2受容体阻害剤、またはerbB2受容体に結合する抗体、例えばトラスツズマブ(例えばハーセプチン(登録商標));他のタンパク質チロシンキナーゼの阻害剤、例えばイマチニブ〔imitinib〕(例えばグリベック(登録商標));ras阻害剤;raf阻害剤;MEK阻害剤;mTOR阻害剤;サイクリン依存性キナーゼ阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤;およびPDK-1阻害剤(かかる阻害剤の数例の説明、および癌の処置についての臨床試験におけるそれらの使用については、Dancey,J.and Sausville,E.A.(2003)Nature Rev.Drug Discovery 2:92-313参照);GW-282974(Glaxo Wellcome plc);AR-209(The Woodlands、Tex.、USAのAronex Pharmaceuticals Inc.)および2B-1(Chiron)等のモノクローナル抗体;ならびに国際公開番号WO98/02434、WO99/35146、WO99/35132、WO98/02437、WO97/13760、およびWO95/19970、ならびに米国特許第5,587,458号、第5,877,305号、第6,465,449号および第6,541,481号に記載されているもの等のerbB2阻害剤が挙げられる。
【0085】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は、免疫チェックポイント阻害剤に特異的に結合する抗体等の癌免疫療法剤である。免疫チェックポイント阻害剤としては、例えば:A2AR、B7.1、B7.2、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BTLA、CD48、CD160、CD244、CTLA-4、ICOS、LAG-3、LILRB1、LILRB2、LILRB4、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、SIRPアルファ(CD47)、TIGIT、TIM-3、TIM-1、TIM-4、およびVISTAが挙げられる。
【0086】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は抗増殖剤である。抗増殖剤としては、例えば:米国特許第6,080,769号、第6,194,438号、第6,258,824号、第6,586,447号、第6,071,935号、第6,495,564号、6,150,377号、第6,596,735号および第6,479,513号、ならびに国際特許公開WO01/40217に開示および特許請求される化合物を含む、酵素ファルネシルタンパク質転移酵素の阻害剤ならびに受容体型チロシンキナーゼPDGFRの阻害剤が挙げられる。
【0087】
ある実施形態において、c-Met阻害剤以外の抗癌剤は細胞毒性剤である。本発明による細胞毒性剤には、DNA損傷剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、抗生物質剤等が含まれる。DNA損傷剤には、アルキル化剤、白金系薬剤、挿入剤、およびDNA複製の阻害剤が含まれる。DNAアルキル化剤の非限定的な例としては、シクロホスファミド、メクロレタミン、ウラムスチン、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、テモゾロミド、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。白金系薬剤の非限定的な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、四硝酸トリプラチン、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。挿入剤の非限定的な例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。DNA複製の阻害剤の非限定的な例としては、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。代謝拮抗剤には、メトトレキサートおよびペメトレキセド〔premetrexed〕等の葉酸アンタゴニスト、6-メルカプトプリン、ダカルバジンおよびフルダラビン等のプリンアンタゴニスト、ならびに5-フルオロウラシル、アラビノシルシトシン、カペシタビン、ゲムシタビン、デシタビン等のピリミジンアンタゴニスト、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが含まれる。抗微小管剤には、限定されないが、ビンカアルカロイド、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、およびイキサベピロン(イクセンプラ(登録商標))が含まれる。抗生物質剤には、限定されないが、アクチノマイシン、アントラサイクリン、バルルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、それらの薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0088】
以下の実施例は、特許請求される発明をより良く説明するために提供され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。下記の全ての特定の組成物、材料、および方法は、全体的または部分的に、本発明の範囲内に含まれている。これらの特定の組成物、材料、および方法は、本発明を限定するよう意図されないが、単に本発明の範囲内に含まれる特定の実施形態を説明しているに過ぎない。当業者は、創作能力を発揮することなく、かつ本発明の範囲から逸脱することなく、同等の組成物、材料、および方法を開発し得る。本明細書中に記載される手順には多くの変化を為し得るが、依然として本発明の範囲内であることが理解されよう。かかる変化が本発明の範囲内に含まれることを本発明者らは意図している。
【実施例
【0089】
[実施例1]
この実施例は、HGFとc-Metの両方の過剰発現を有する癌患者がc-Met阻害剤に応答したことを示す。
【0090】
材料および方法
患者(003-019)が転移性神経鞘腫と診断され、選択的1b型c-Metキナーゼ阻害剤であるAPL-101の臨床試験への登録に同意した。臨床試験は、APL-101の安全性および忍容性を評価し、推奨される第II相用量(RP2D)および用量制限毒性を決定し、c-Met調節障害の進行性固形腫瘍の対象における予備的な効能を得るための非盲検第1相試験であった。患者は、Caris Life Sciences(4610 S 44th Place,Phoenix,AZ,85040)における患者の腫瘍組織試料のc-Met免疫組織化学(IHC)分析によって検出した場合、高レベルのc-Metタンパク質発現に基づいて登録された(図1)。第I相試験は17人の対象を登録し、100mg、200mg、300mg、および400mg/日の用量を漸増する4群に1日2回経口投与(BID)することにより処置を完了した。安全性およびPKの結果に基づき、RP2DはBIDスケジュールによって、400mg/日であると決定された。患者003-019は、BID300mgのAPL-101で499日間(15.8ヵ月間)処置した。患者の腫瘍試料は、Caris Life ScienceのMIトランスクリプトームシーケンシングアッセイによってさらに分析し、患者の癌がトランスクリプトーム全体をカバーする転写レベルで有する遺伝子変化および異常遺伝子発現のプロファイルを調べた。患者の血液試料をベースライン時および処置終了時に回収し、Archer Clinical Service(15000 W 6th Ave,Suite 150,Golden,CO 80401)のArcherDx LiquidPlexによって、循環腫瘍DNA(ctDNA)におけるDNAレベルでの遺伝子変化のプロファイルを調べた。
【0091】
結果
患者003-019の疾患は、RECIST基準1.1に基づいて、2回の投薬サイクルごとのプロトコルで定義されたスケジュールに従って、X線撮影評価により評価した。患者は、APL-101処置の2投薬サイクル後に初めて疾患制御を経験し、APL-101の8用量サイクルの安定した疾患による処置から継続的に利益を得、次いで、10投薬サイクル後に部分奏効を経験した。患者は、処置終了時に疾患が進行するまでAPL-101に応答し続けた。患者は、499日間(15.8ヵ月)、APL-101による臨床的有用性の持続期間を経験した。
【0092】
APL-101処置に対する患者の臨床応答に関連する潜在的な予測バイオマーカーを明らかにするために、患者の腫瘍および血液試料を分析して、ctDNAのNGSおよびトランスクリプトーム全体のRNA転写産物によって捕捉された遺伝子変化のプロファイルを調べた。ArcherDx LiquidPlex ctDNAパネルは、異常バリアントおよびコピー数変化を検出するために、AKT1、ALK、AR、BRAF、CDK6、CTNNB1、EGFR、ERBB2、ERBB3、ESR1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、HRAS、IDH1、IDH2、KIT KRAS、MAP2K1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PIK3CA、RET、ROS1、およびTP53を含む、METゲノム領域と28の他のドライバー発癌遺伝子の公知のホットスポットを100%カバーする。Caris MIトランスクリプトーム試験は、転写産物上の遺伝子発現および異常バリアントを検出するためのトランスクリプトーム全体をカバーする。
【0093】
投薬前ベースラインおよび処置終了時の血液試料のctDNA分析では、公知の実行可能なドライバー発癌性バリアントは検出されなかった(表1)。
【0094】
【表1】
【0095】
トランスクリプトーム全体のプロファイリングの結果は、転写産物レベルでの公知の実行可能なドライバー発癌性バリアントを検出しなかった。しかしながら、METとHGF(TPMとして測定される)の両方の遺伝子発現レベルは、異常に高いことが同定され、図2に示されるように、転写産物レベルが検出限界を超える20366遺伝子のうちそれぞれ99.4%および98.6%パーセンタイルにランク付けされた。多腫瘍多組織検証セットと比較した場合、対象003-019におけるHGFおよびc-Met発現レベルは、30の腫瘍タイプおよび93の固有試料の適合した組織タイプ検証セットによって調査されたダイナミックレンジよりも有意に高い(図3)。これらの結果は、APL-101に例示されるように、c-Met阻害剤から恩恵を受ける可能性のある、異常な高レベルのc-METおよびHGFの同時に発生する遺伝子発現を有する野生型c-MET遺伝子を有する患者を同定する見込みのある方法を支持した。
【0096】
[実施例2]
この実施例は、実世界で発生する広範囲の癌タイプにわたって、一般的に異常な遺伝子の選択セットの遺伝子発現のRNAシーケンシング分析によって、高レベルのMETおよびHGFの同時発現を伴う野生型METを有する癌患者、腫瘍細胞株、または患者由来腫瘍モデル(PDX)を同定する方法を例示する。この実施例はさらに、このようなMETおよびHGFバイオマーカー法によって同定された癌細胞が、c-MET発癌経路に依存し、APL-101を含むc-Met阻害剤による処置に応答し、有益である見込みがあるかどうかを検証する。
【0097】
材料および方法
Genospace(Sarah Cannnon Real-world evidence(RWE)癌ゲノミクスデータベース)におけるNGSプロファイリングを有する全ての癌患者における40の一般的に変化した遺伝子は、MET/HGF同時発現バイオマーカー決定のための癌遺伝子シグネチャーセットとするために集められる。40の遺伝子は、ABL1、ALK、ATM、ATR、AXL、BAP1、BRAF、BRCA1、BRCA2、CHEK2、DDR2、EGFR、ERBB2、ERBB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、FLT4、HGF、HRAS、KDR、KIT、KRAS、MERTK、MET、MYC、NF1、NRAS、NTRK1、NTRK2、NTRK3、PDGFRA、PDGFRB、PIK3CA、PTEN、RAF1、RET、ROS1、TEKである。
【0098】
癌シグネチャーセットにおける各遺伝子の遺伝子発現レベルは、トランスクリプトームのRNAシーケンシングによって決定される。この遺伝子セットにおけるMETおよびHGF発現のパーセンタイルは、所定のRNAシーケンシング方法(例えば、TPMまたはFPKM(マッピングされた断片の100万個あたりのエクソンのキロベースあたりの断片))の単位によって定量されるように、遺伝子発現レベルの順位(パーセンタイル)によって決定される。
【0099】
さらに、主要な発癌性ドライバー変異の同時発生は、DNAベースのエキソームシーケンシングによって調べられる。ドライバー変異分析の主要な遺伝子は、MET、KRAS、BRAF、EGFR、ERBB2、ERBB3、PIK3CAである。
【0100】
MET/HGF同時発現バイオマーカーとc-MET阻害剤(複数可)による処置に対する応答との関係を明らかにするために、腫瘍細胞株異種移植片モデル(XenoBase(登録商標)、Crown Bioscience、CA)およびPDX腫瘍モデル(HuBase(登録商標)、Crown Bioscience、CA)をスクリーニングし、異なるレベルのMET/HGFの同時発現および異なる同時発生の発癌性ドライバー変異を有する野生型METを有する腫瘍モデルを同定した。APL-101およびFDA承認c-Met阻害剤カプマチニブを含む選択されたc-MET阻害剤のインビボでの抗腫瘍効果がこのようなモデルにおいて調査された。
【0101】
結果
1つの腫瘍細胞株異種移植片モデル、2つのPDX腫瘍モデルをXenoBase(登録商標)およびHuBase(登録商標)から、MET/HGF同時発現が高~中程度の野生型METを有していることを同定し、インビボでの抗腫瘍評価のために選択した。40の癌遺伝子シグネチャー遺伝子の間の組織学的特徴ならびにMETおよびHGF発現レベルを表2および表3に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
これら3つの腫瘍モデルにおいて、DNAベースのエキソームシーケンシングによって、主要な発癌性ドライバー変異の同時発生を調べる(表4)。3つのモデルはいずれも野生型METを有する。KP4は、公知の発癌性KRAS変異G12Dおよび他の5つの主要な発癌性ドライバー遺伝子についての野生型を有し、他の2つのモデルは、6つの主要な発癌性ドライバー遺伝子全てについて野生型である。
【0105】
【表4】
【0106】
40の癌遺伝子シグネチャーの中でランク付けされたMETおよびHGF遺伝子発現のパーセンタイルを図4、5および6に示す。
【0107】
METおよびHGFのパーセンタイルはKP4およびSA10199において最高である。しかしながら、SA4097では、METのパーセンタイルはSA4097において最高であるが、HGFのパーセンタイルは中位74パーセンタイルである。
【0108】
METと同時発現させた場合のHGFのより低い閾値がc-Met発癌経路への依存性を付与し得るかどうかを理解するために、SA4097を有するマウスをAPL-101および承認済みのc-Met阻害剤であるカプマチニブを10mg/kg QDでインビボにて処置したことにより、薬理学的研究において両方の阻害剤に対して治療的に活性な用量であることが示された。APL-101およびカプマチニブは、SA4097の強い腫瘍増殖阻害を示した(図7)。この結果は、さらに、実施例1において提示されるように患者003-019の臨床症例ストーリーから生成された初期バイオマーカー仮説を支持し、APL-101およびカプマチニブで例示されるように、METおよびHGFの同時発現レベルのどの閾値がc-MET阻害剤に対する処置応答を付与し得るかの理解を拡大する。
【0109】
同時に発生する発癌性ドライバー変異が高レベルMETとHGFの両方を有する野生型METを有する腫瘍に対して初期耐性を付与するかどうかを理解するために、KP4腫瘍異種移植片を有するマウスをAPL-101で処置し、さらに3つの承認済みのc-Met阻害剤であるカプマチニブ、テポチニブおよびサボリチニブを7mg/kg QDのインビボで処置した。これもまた薬理試験においてこれらの阻害剤の治療的に活性な用量であることを示した(図8)。全てのc-Met阻害剤は部分的な腫瘍増殖阻害を示し、APL-101およびカプマチニブは他の2つのc-Met阻害剤よりも数値的に強い抗腫瘍効果を示した。この結果は、KRAS等の同時に発生する発癌性変異が、MET野生型遺伝的背景におけるMETおよびHGFの高レベルのために、そうでなければMET経路に依存する見込みがある腫瘍に対するc-Met阻害剤の抗腫瘍効果を減弱させ得ることを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】