(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】半導体パワーモジュール、ならびに半導体パワーモジュールおよび半導体パワーデバイスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240328BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L25/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564559
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022056135
(87)【国際公開番号】W WO2022223199
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】モーン,ファビアン
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA03
4M109CA01
4M109CA04
4M109CA21
4M109DA08
4M109DB16
4M109DB17
(57)【要約】
半導体デバイスのための半導体パワーモジュール(10)は、リードフレームまたは基板(4)と、リードフレームまたは基板(4)に結合された樹脂体とを備える。樹脂体は、少なくとも第1の樹脂要素(1)および第2の樹脂要素(2)を含み、第1の樹脂要素(1)の樹脂材料は第2の樹脂要素(2)の樹脂材料とは異なる。樹脂要素(1,2)は、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として凹み(5,6)によって部分的に分離されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パワーモジュール(10)であって、
- リードフレームまたは基板(4)と、
- 前記リードフレームまたは前記基板(4)に結合され、少なくとも第1の樹脂要素(1)および第2の樹脂要素(2)を含む樹脂体とを含み、前記第1の樹脂要素および前記第2の樹脂要素(1,2)は、前記半導体パワーモジュール(10)の横方向(B,C)に対して互いに横方向に隣接して配置され、前記第1の樹脂要素(1)の樹脂材料は前記第2の樹脂要素(2)の樹脂材料とは異なり、前記第1の樹脂要素(1)および前記第2の樹脂要素(2)は、前記第1の樹脂要素と前記第2の樹脂要素(1,2)との間に少なくとも部分的な自由空間をもたらす溝の形状である凹み(5,6)によって、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として部分的に分離されている、半導体パワーモジュール(10)。
【請求項2】
前記第1の樹脂要素(1)の前記樹脂材料または前記第2の樹脂要素(2)の前記樹脂材料のうち少なくとも1つは熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項3】
前記第1の樹脂要素(1)の前記樹脂材料または前記第2の樹脂要素(2)の前記樹脂材料のうち少なくとも1つはポッティング樹脂を含む、請求項1または項2に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項4】
前記凹みは、互いに対向する前記表面区域全体が互いから分離されるように貫通溝(5)として形成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項5】
前記貫通溝(5)または前記溝(6)のうち少なくとも1つは、前記半導体パワーモジュール(10)の横方向(B,C)に対して0.5mm以上の幅を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項6】
前記貫通溝(5)または前記溝(6)のうち少なくとも1つの内側に充填材(7)または被膜(8)のうち少なくとも1つを含む、請求項4または5に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項7】
前記樹脂体はさらに、前記第1の樹脂要素(1)または前記第2の樹脂要素(2)のうち少なくとも1つの前記樹脂材料とは異なる樹脂材料を有する第3の樹脂要素(3)を含み、前記第1の樹脂要素(1)、前記第2の樹脂要素(2)および前記第3の樹脂要素(3)はすべて、それぞれ凹みによって、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として部分的に分離されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項8】
前記リードフレームまたは前記基板(4)に結合された端子接続部(11,12)と、
前記端子接続部(11,12)のうち少なくとも1つと結合された電子機器とをさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)を製造するための方法であって、
- リードフレームまたは基板(4)を設けるステップと、
- 前記リードフレームまたは前記基板(4)に結合された樹脂体を形成するステップとを含み、前記樹脂体は、少なくとも第1の樹脂要素(1)および第2の樹脂要素(2)を含み、前記第1の樹脂要素および前記第2の樹脂要素(1,2)は、前記半導体パワーモジュール(10)の横方向(B,C)に対して互いに横方向に隣接して配置され、前記第1の樹脂要素(1)の樹脂材料は前記第2の樹脂要素(2)の樹脂材料とは異なり、前記第1の樹脂要素(1)および前記第2の樹脂要素(2)は、前記第1の樹脂要素と前記第2の樹脂要素(1,2)との間に少なくとも部分的な自由空間をもたらす溝の形状の凹み(5,6)によって、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として部分的に分離されている、方法。
【請求項10】
前記樹脂体を形成するステップは、
- モールドコンパウンド樹脂の形状の物質を供給するステップと、
- 前記供給された物質を前記リードフレームまたは前記基板(4)上に塗布することにより、トランスファー成形、射出成形および/または圧縮成形によって前記第1の樹脂要素(1)および/または前記第2の樹脂要素(2)を形成するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂体を形成するステップは、
- ポッティング樹脂の形状の物質を供給するステップと、
- 前記供給された物質を前記リードフレームまたは前記基板(4)上に塗布することにより、ポッティングによって前記第1の樹脂要素(1)または前記第2の樹脂要素(2)のうちの少なくとも1つを形成するステップとを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂体を形成するステップは、前記第1の樹脂要素(1)および前記第2の樹脂要素(2)を形成するステップの後、切断、鋸引き、またはミリングのうちの少なくとも1つによって、貫通溝(5)または溝(6)の形状の前記凹みを機械的に形成するステップを含む、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂体を形成するステップは、前記第1の樹脂要素(1)および前記第2の樹脂要素(2)を形成するステップの後、レーザ切断によって貫通溝(5)または溝(6)の形状の前記凹みを熱形成するステップを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記樹脂体を形成するステップは、前記第1の樹脂要素(1)および前記第2の樹脂要素(2)を形成するステップの後、エッチングによって、貫通溝(5)または溝(6)の形状の前記凹みを化学的に形成するステップを含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体パワーモジュールと、半導体デバイス用の半導体パワーモジュールを製造するための方法とに関する。本開示はさらに、対応する半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
文献US2013/010440A1には、はんだ付け部の疲労低減が図られた、製造が容易なパワーモジュールおよびその製造方法が開示されている。パワーモジュールは、電子部品がはんだ付けにより実装されている基板と、基板を収容し、外部機器との電気的接続のためのバスバーを含むモールドケースとを備える。
【0003】
文献US2019/157190A1は、リードフレームと、リードフレームの第1の部分上に実装された第1の封入型パワー半導体デバイスと、リードフレームの第2の部分上に実装された第2の封入型パワー半導体デバイスとを含む半導体デバイスパッケージを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低電圧用途に用いられる小型集積回路を封入するために一般に用いられる技術は、チップがリードフレームまたは基板に接合されてパッケージ本体内に封入されるトランスファー成形である。このため、互いに矛盾する可能性のある所与の要件を満たすために、十分に適合したモールドコンパウンドが選択されなければならない。この点に関して、信頼できる機能を有する機械的に安定したパワーパッケージを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、モジュール寿命の向上に寄与する信頼性できる機能を有する機械的に安定した半導体パワーモジュールに関する。本開示の実施形態はまた、対応する半導体デバイスおよびこのような半導体パワーモジュールのための製造方法に関する。
【0006】
これらの目的は独立請求項の主題によって達成される。さらなる展開例および実施形態が対応する従属請求項に記載されている。
【0007】
一実施形態に従うと、半導体デバイスのための半導体パワーモジュールは、リードフレームまたは基板と、リードフレームまたは基板に結合された樹脂体とを備える。樹脂体は、少なくとも第1の樹脂要素および第2の樹脂要素を含み、第1の樹脂要素の樹脂材料は第2の樹脂要素の樹脂材料とは異なる。第1の樹脂要素および第2の樹脂要素は、半導体パワーモジュールの横方向に対して互いに横方向に隣接して配置される。
【0008】
さらに、第1の樹脂要素および第2の樹脂要素は、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として凹みによって部分的に分離されている。このような凹みは、互いに対向する表面区域全体が互いから分離されるように樹脂要素間の貫通間隙として形成され得る。代替的には、凹みは、互いに対向する表面区域のうち予め定められた部分が互いから分離されるように溝として形成され得る。間隙および/または溝は、半導体パワーモジュールの横方向に対して0.5mm以上の幅を有し得る。
【0009】
上述した構造を用いることにより、例えば少なくとも0.5kVの電圧用の高電圧パワーモジュール用途で用いる場合であっても、信頼性できる機能およびモジュール寿命の向上を可能にする半導体パワーモジュールが実現可能である。特別に取入れられた1つ以上の凹みは、樹脂封止された半導体パワーパッケージのうち様々な樹脂材料でできたいくつかの部品同士の間に応力緩和構造を形成する。
【0010】
リードフレームまたは基板は、例えば、ダイから外部に信号を搬送するチップパッケージ内のはんだ付け可能な金属構造を実現するように構成される。リードフレームまたは基板はまた、チップ、集積回路および/または他の別個のデバイスの所与の配置のための機械的支持部として機能することができる。当該複数の樹脂要素は、半導体パワーモジュールのうち広い区域の主平面に延びるそれぞれの横方向に対して垂直な積層方向を基準としてリードフレームまたは基板の上面に形成される。
【0011】
半導体パワーモジュールの一実施形態に従うと、第1の樹脂要素または第2の樹脂要素の樹脂材料のうち少なくとも1つは熱硬化性樹脂を含む。代替的または付加的には、第1の樹脂要素または第2の樹脂要素の樹脂材料のうち少なくとも1つはポッティング樹脂を含む。
【0012】
樹脂要素は、それぞれの封入を実現することができ、上述の半導体パワーモジュールは、ベースプレートに装着されたフレームを用いて製造されてもよく、樹脂体による構造は、例えば、第1の樹脂要素および/または第2の樹脂要素を形成するために誘電体ゲルまたはポッティング樹脂で充填される。上述の半導体パワーモジュールは、例えば自動車用途に使用するのに適用可能であり、以下のうち1つ以上を含み得る。
【0013】
・辺長が最大80mmで体厚が10mmを超える大型パッケージまたは樹脂体
・厚い銅でできた電力端子
・典型的にはパッケージ本体から露出した裏面を有するヒートシンクおよび絶縁基板の封入
・高い電流および電圧(部分的に1kVよりも高い)
・液体冷却用のクーラーに対して液漏れしないように装着すること
・例えば自動車用途での過酷な環境条件
さらなる実施形態に従うと、半導体パワーモジュールは、貫通間隙または溝を充填するために、または間隙もしくは溝を制限する第1の樹脂要素および/または第2の樹脂要素の表面区域を覆うために、凹みのうちの少なくとも1つの内側に充填材または被膜のうちの少なくとも1つを備える。このような充填材または被膜は、湿気または有害ガスに対する樹脂体および半導体パワーモジュールの気密性を向上させるために、弾性材料および/または保護材料、例えば撥水性材料を含み得る。
【0014】
上述の半導体パワーモジュールの樹脂体はさらに、第1の樹脂要素または第2の樹脂要素のうちの少なくとも1つの樹脂材料とは異なる樹脂材料を含む第3の樹脂要素を含み得る。第1の樹脂要素、第2の樹脂要素および第3の樹脂要素はすべて、凹みによって、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として部分的に分離されている。
【0015】
本開示に関して、従来のパワーパッケージは、通常、単一のモールドコンパウンドから作製された均質なモールド体のトランスファー成形によって準備される封入を特徴とすることが認識されている。トランスファー成形されたパワーパッケージのサイズが比較的大きいことを考慮すると、封入材料の最良の挙動を得るために様々な局所的要件に対処することは困難であるかもしれない。このため、パワーパッケージのうちチップまたは端子の近傍などのいくつかの領域は、封入材料の機械的挙動および熱機械的挙動または絶縁耐力などの特定の要件に関して、他のパッケージ部品よりも明らかにより重要である。
【0016】
上述の半導体パワーモジュールに従うと、機械的挙動を向上させるために、樹脂体によって実現される封入は、封入のための様々な材料特性を有する2つ以上のモールドコンパウンドまたはポッティング樹脂のような他の樹脂材料を用いることによってなされる。いくつかの種類の樹脂材料は、第1の樹脂要素、第2の樹脂要素および/または第3の樹脂要素の予め定められた構成に応じて、特定の局所的要件を基準として選択することができる。
【0017】
本開示に関して、1つの大型パッケージ本体にいくつかの樹脂材料を実装することでさらなる問題が生じる可能性があることがさらに認識される。トランスファー成形またはポッティング等の他のプロセスによって2つ以上の異なるモールドコンパウンドまたは樹脂材料から大型パッケージ本体を準備する場合、例えば、これらの様々な材料の区画同士が互いに付着することとなる。特に、様々な樹脂材料またはモールド材料のうちいくつかの部分を横方向に並べて互いに付着させた場合、封止された樹脂体において強い機械的応力または熱機械的応力が存在することとなる。このような応力は、特に、様々な材料区画の境界面で生じ、結果としてパッケージ本体が大きく湾曲してしまう可能性があり、または、封入体に機械的損傷(例えば、空隙もしくは亀裂)をもたらす可能性があり、または、製造プロセス後にパッケージ内部に損傷を引起こす可能性もある。
【0018】
半導体パワーモジュールの上述の構造および意図的に取入れられた凹みを用いることにより、少なくともこれらの悪影響を防止または相殺することができる。隣接する2つの樹脂要素の間に形成される凹みは、例えば、いくつかの材料からなる大型の樹脂封止型パッケージ本体に生じる応力を抑制するかまたは少なくとも低減させることを可能にする。
【0019】
加えて、樹脂体および半導体パワーモジュールの全体としての熱機械的挙動は、例えば熱サイクル中のそのモジュール動作を考慮して改善させることができる。
【0020】
一実施形態に従うと、半導体デバイスは、リードフレームまたは基板に結合された1つ以上の端子接続部と、当該端子接続部のうちの少なくとも1つと結合された電子機器とをさらに含む上述の半導体パワーモジュールの一実施形態を含む。
【0021】
半導体パワーデバイスはさらに、動作中に熱を放散させるためにリードフレームまたは基板と結合されるヒートシンクを備え得る。さらに、半導体パワーデバイスは、上述の半導体パワーモジュールの2つ以上の実施形態を含み得る。電子機器は、チップ、集積回路および/または他の別個のデバイスを含み得る。
【0022】
一実施形態に従うと、上述した半導体パワーモジュールの一実施形態を製造するための方法は、リードフレームまたは基板を設けるステップと、リードフレームまたは基板に結合された樹脂体を形成するステップとを含み、樹脂体は、少なくとも第1の樹脂要素および第2の樹脂要素を含み、第1の樹脂要素の樹脂材料は第2の樹脂要素の樹脂材料とは異なる。第1の樹脂要素および第2の樹脂要素は、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として凹みによって部分的に分離されるように形成されている。
【0023】
樹脂体を形成するステップは、モールドコンパウンド樹脂に関する物質を供給するステップと、供給された物質をリードフレームまたは基板上に塗布することにより、成形によって第1の樹脂要素または第2の樹脂要素のうちの少なくとも1つを形成するステップとを含み得る。成形プロセスは、トランスファー成形、射出成形および/または圧縮成形を含み得る。
【0024】
代替的には、樹脂体を形成するステップは、ポッティング樹脂に関する物質を供給するステップと、供給された物質をリードフレームまたは基板上に塗布することにより、ポッティングによって第1の樹脂要素および/または第2の樹脂要素を形成するステップとを含み得る。代替的には、1つ以上の樹脂要素をポッティングによって形成することができ、他の1つ以上の樹脂要素を成形によって形成することができる。
【0025】
2つの樹脂要素間の凹みは、これらの要素間またはそれらの境界面区域間の予め定められた間隔で形成することができる。このため、例えば、樹脂要素の成形中またはポッティング中に、特定の製造ツールにより、貫通間隙または部分溝として形成される凹みを設けることができる。
【0026】
当該方法のさらなる実施形態に従うと、樹脂体を形成するステップは、少なくとも1つの凹みを形成する後続ステップを含む。このため、貫通間隙または溝により凹みを形成するステップは、第1の樹脂要素および第2の樹脂要素を形成した後に切断、鋸引きおよび/またはミリングのうちの少なくとも1つによって機械的に行なうことができる。代替的には、凹みを形成するステップは、レーザ切断によって熱的に行なうことができる。代替的には、凹みを形成するステップは、レーザ切断によって熱的に行なうことができる。代替的には、凹みを形成するステップは、エッチングによって化学的に行なうことができる。上述の形成プロセスはまた、例えば、レーザ切断によって1つの凹みを形成し、エッチングによって別の凹みを形成するステップを含み得る。
【0027】
上述した半導体パワーデバイスおよび上述した製造方法が半導体パワーモジュールの実施形態を含むかまたはこれを製造することに関するものであるため、結果として、半導体パワーモジュールについての上述の特徴および特性も半導体パワーデバイスおよびその製造方法に関して開示され、逆の場合もまた同様である。
【0028】
以下では、概略的な図面および参照番号を用いて例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】半導体パワーモジュールの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】半導体パワーモジュールの一実施形態を製造する際の製造位置を示すそれぞれの側面図である。
【
図3】半導体パワーモジュールのさらなる実施形態を示す側面図である。
【
図4】半導体パワーモジュールの一実施形態を製造するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
さらなる理解を提供するために添付の図が含まれている。図に示される実施形態が例示的に表わされたものであり、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないことを理解されたい。同じ参照番号は、同じ機能を有する要素または構成要素を示す。これらの図において要素または構成要素がそれらの機能に関して互いに対応している限り、それらの説明は添付の図ごとに繰り返さない。明確にするために、要素は、場合によってはすべての図において対応する参照符号付きで示されていない場合がある。
【0031】
図1は、半導体デバイスのための半導体パワーモジュール10の一実施形態の斜視図を示す。半導体パワーモジュール1は、リードフレームまたは基板4と、リードフレームまたは基板4に結合された樹脂体とを備える。樹脂体は、電子機器のための筐体を形成し、少なくとも第1の樹脂要素1および第2の樹脂要素2を含む。第1の樹脂要素1の樹脂材料は第2の樹脂要素2の樹脂材料とは異なり、樹脂要素1および2は、少なくとも互いに対向する表面区域を基準として凹みによって部分的に分離されるように構成されている。
【0032】
半導体パワーモジュール10はさらに、樹脂体によって埋込まれているかまたは覆われている電子機器への電気的アクセスを可能にする複数の第1の端子接続部11および第2の端子接続部12を備える。端子接続部11および12はリードフレームまたは基板4に結合される。電子機器は、チップ、集積回路および/または他の別個のデバイスを含み得る。半導体パワーモジュール10の広い区域の主平面は、互いに対して垂直な方向であるとともに積層方向Aに対して垂直な方向である横方向BおよびCに広がっている(
図2および
図3を参照されたい)。
【0033】
図2は、半導体パワーモジュール10の一実施形態を製造するための製造位置をそれぞれの側面図で示す。対応する製造方法のステップは
図4に示すようにフローチャートに追従し得る。ステップS1において、リードフレームまたは基板4が設けられる。
【0034】
ステップS2において、樹脂体が形成され、リードフレームまたは基板4に結合される。
図2に従った樹脂体は、第1の樹脂要素1、第2の樹脂要素2および第3の樹脂要素3という3つの樹脂要素を含む。全ての樹脂要素1、2、3は異なる樹脂材料を含む。
図2の上方部分に示すように、樹脂要素1、2および3は、横方向B、Cに対して互いに隣接して形成される。
【0035】
これに鑑みて、本開示については、異なる樹脂材料からなるいくつかの部分は、互いに隣接して配置される場合、互いに付着し得るとともに、封止された樹脂体に機械的応力または熱機械的応力を引き起こし得ることが認識される。このような応力は、特に、樹脂要素1、2および3のうち互いに対向する境界面または表面区域に生じる。
図2の上方部分によれば、これは、第1の樹脂要素1と第2の樹脂要素2との間、および第2の樹脂要素2と第3の樹脂要素3との間の境界面に該当するだろう。
【0036】
半導体パワーモジュール10の湾曲、または樹脂体の封入部に対する機械的損傷(例えば空隙または亀裂)さえも防止するために、ステップS3において、樹脂要素1、2および3のうち隣接する樹脂要素同士の間にそれぞれ凹みを特別に取り入れることで、接触面積を減らし、応力緩和構造を形成する。このような凹みは、第1の樹脂要素1と第2の樹脂要素2との間に示すように貫通間隙5として、または第2の樹脂要素2と第3の樹脂要素3との間に示すように溝6として、形成することができる(樹脂材料境界上の間隙5および溝6の実装概念を例示する
図2の下方部分を参照されたい)。間隙5は、互いに対向する表面区域全体が互いから分離されるように、リードフレームまたは基板4の上面にまで延在している。溝6は、互いに対向する表面区域のうち予め定められた部分が互いから分離されるように形成されている。
【0037】
加えて、ステップS4において、間隙5を所与の充填材7で充填することにより、および/または溝6を所与の被膜8で被覆することにより、機械的応力を低減させることができ、かつ、半導体パワーモジュール10の機能およびモジュール寿命を向上させることができる(
図3を参照されたい)。
【0038】
樹脂体を形成するステップS2は、モールドコンパウンド樹脂に関する物質を供給するステップと、供給された物質をリードフレームまたは基板4上に塗布することにより、成形によって第1の樹脂要素1、第2の樹脂要素2および第3の樹脂要素3のうちの1つ以上を形成するステップとを含み得る。
【0039】
代替的には、ステップS2は、ポッティング樹脂に関する物質を供給するステップと、供給された物質をリードフレームまたは基板4上に塗布することにより、ポッティングによって第1の樹脂要素1、第2の樹脂要素2および第3の樹脂要素3のうちの1つ以上を形成するステップとを含み得る。
【0040】
樹脂要素1と樹脂要素2と樹脂要素3との間に1つ以上の凹みを形成するステップS3は、切断、鋸引きおよび/またはミリングにより間隙5および/または溝6を機械的に形成するステップを含み得る。代替的または付加的には、ステップS3は、レーザ切断によって間隙5および/または溝6を熱形成するステップを含み得る。代替的または付加的には、ステップS3は、エッチングによって間隙5および/または溝6を化学的に形成するステップを含み得る。
【0041】
例えば、大型樹脂封止型パワーパッケージの封入のために、材料特性が異なる2つ以上のモールドコンパウンドまたは他の樹脂タイプの使用が取り入れられる。結果として、樹脂要素1、2および3の特定の局所的要件を基準として、いくつかの種類のモールドコンパウンドまたはポッティング樹脂のような他の種類の樹脂を選択することができる。様々なモールドコンパウンドおよび/または他の樹脂材料でできた樹脂体を有する樹脂封止型半導体パワーモジュール10の製造は、トランスファー成形および/またはポッティングなどの他の封入技術に基づく2つ以上のプロセスステップの連続製造プロセスで行なうことができる。
【0042】
異なる樹脂材料からなるいくつかの区画で構成される樹脂体に生じる機械的応力および熱機械的応力を低減するために、樹脂要素1、2および3は、少なくとも部分的に互いから機械的、熱的および/または化学的に分離されている。
【0043】
横方向に配置された別々の樹脂要素1、2および3の境界面に取り入れられた応力緩和構造として用いられる間隙5が存在し得る。これらの間隙5は、樹脂要素1、2および3のうちの2つの樹脂要素間の境界全体に沿って利用可能であり得る。代替的には、凹みを形成して溝6を実現することで、樹脂要素1、2および3のうち2つの樹脂要素の間を部分的に分離させることができる。応力緩和のために実現される間隙5の深さは樹脂体の厚さ全体に応じた深さであってもよく、または、より浅い深さが適用されてもよい。これは、実現可能な様々な製造方法によって実現され得る。
【0044】
別々の樹脂要素1、2および3は、典型的にはリードフレームまたは基板4上に横方向に配置される。代替的には、樹脂要素1、2および3は、基板上またはベースプレート上に配置することができる。樹脂要素1、2および3は、それぞれ異なる材料特性を有する熱硬化性樹脂またはポッティング樹脂を含んでもよい。結果として、樹脂要素1、2および3のいくつかは、例えばトランスファー成形ではなく他の製造プロセスによって作製されてもよい。このため、樹脂体の中央にある第2の樹脂要素2は、例えばダム・アンド・フィル(dam-and-fill)プロセスと同様のトランスファー成形によって外側の第1の樹脂要素1および第3の樹脂要素3を設けた後にポッティング樹脂から作成されてもよい。
【0045】
しかしながら、異なる材料を含むそれぞれの樹脂要素1、2および3は、意図的に実装された間隙5または溝6によって少なくとも部分的に互いから分離される。間隙5および/または溝6の幅は、横方向Bおよび/または横方向Cに0.5mm以上の範囲にわたっていてもよい。このため、間隙5または溝6はまた、例えば、積層方向Aに沿って上面図から見てL字状を形成する横方向Bおよび横方向Cに部分的に沿って延在し得る。湿度や有害ガスに対する樹脂体および半導体パワーモジュール10の気密性を向上させるために、設けられた間隙5または溝6は、弾性材料および/または保護材料、例えば撥水性材料で充填または被覆されてもよい。
【0046】
半導体パワーモジュール10の一実施形態に従うと、樹脂体および樹脂要素1、2および3は、様々なモールドコンパウンドのみまたは様々なポッティングコンパウンドのみで構成されてもよく、または、代替的には、様々な材料タイプで構成することもできる。さらに、それぞれの樹脂要素1、2または3を形成するための樹脂材料は、モールドコンパウンドおよび/または充填材料の付着性のような材料特性および機械的特性を考慮して選択することができる。バリスタ、絶縁耐力、誘電率、または比較トラッキング指数(CTI(comparative tracking index)値)による充填のように樹脂材料の電気的特性も考慮され得る。代替的または付加的には、樹脂材料は、湿度保護の改善または有害ガスもしくは化学的不活性に対する保護の改善のような保護特性を考慮して選択することができる。
【0047】
樹脂体の上述した構造および実施形態により、比較的大型の樹脂封止型半導体パワーモジュール10を作成することが可能となる。局所的要件に基づいて、意図された樹脂要素1、2および3にとって局所的に最適な樹脂材料を選択することができる。上述した応力緩和構造を実装することにより、機械的応力および熱機械的応力が低下し、結果として、樹脂体の湾曲が低減することとなる。さらに、半導体パワーモジュール10は、以下の利点のうちの1つ以上を含み得る。
【0048】
・製造プロセスにおける操作の改善
・製造プロセスにおける歩留まりの改善
・熱サイクルに対する信頼性の向上によるモジュールの動作寿命の延長
・基板またはベースプレートまたはリードフレームの湾曲の低減に起因する熱界面挙動の向上
・顧客用途向けに対応するパワーパッケージを実装する際の問題の軽減、例えば、ピンフィン・ベースプレートを用いて半導体パワーモジュール10を液体冷却用の冷却器に対して液漏れを防止しつつ装着すること。
【0049】
図1~
図4に示すかまたは上述した実施形態は、改良された半導体パワーモジュール10およびその製造方法の例示的な実施形態を表わす。したがって、これら実施形態は全ての実施形態の完全なリストを構成するわけではない。実際の配置および方法は、例えば半導体パワーモジュールに関して示される実施形態とは異なっている可能性もある。
【符号の説明】
【0050】
参照符号
1 第1の樹脂要素
2 第2の樹脂要素
3 第3の樹脂要素
4 リードフレーム/基板
5 貫通間隙
6 溝
7 充填材
8 被膜
10 半導体パワーモジュール
11 第1の端子接続部
12 第2の端子接続部
A 積層方向
B 横方向
C 横方向
S(i) 半導体パワーモジュールを製造するための方法のステップ。
【国際調査報告】