(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】官能化生体触媒組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240328BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240328BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240328BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20240328BHJP
A61K 31/77 20060101ALI20240328BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240328BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240328BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K38/02
A61K38/38
A61K31/77
A61K39/395 V
A61K39/395 Y
A61K47/42
A61K47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564674
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060562
(87)【国際公開番号】W WO2022223699
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523396901
【氏名又は名称】ペルセオ ファーマ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラプレヴォット, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】デュダル, イヴ ヴィクトール ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ブリオン, マノン
(72)【発明者】
【氏名】カルリーニ, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】シャハガルディアン, パトリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076DD29
4C076DD29A
4C076EE41Q
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA03
4C084DA37
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA33
4C085BB42
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素と、酵素を包埋することによって、酵素を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む、組成物。
【請求項2】
組成物が対象に投与される場合、保護層の表面に固定化されている機能性成分が、i)組成物の食作用を減少させ、ii)組成物の循環時間を増加させ、かつ/またはiii)腫瘍を標的とし、かつ/もしくは組成物の腫瘍細胞への内部移行を促進する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
保護層の表面に固定化されている機能性成分が、両親媒性薬物、アミノ酸、ペプチド、タンパク質またはその断片、シラン共重合体、ならびにタンパク質またはその断片とシラン共重合体との組み合わせからなる群から選択され、ただし、タンパク質またはその断片が、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片ではない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
機能性成分が、共有結合によって保護層の表面に固定化されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
機能性成分が、血清アルブミンまたはその断片;血清アルブミンまたはその断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;ポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFc断片;ならびに免疫グロブリンのFc断片および架橋剤からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
機能性成分が、ポリエチレングリコール/シラン共重合体、好ましくはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDaである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
機能性成分が、血清アルブミンまたはその断片である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
機能性成分が、ペプチド;ペプチドおよび架橋剤;免疫グロブリンまたはその断片;ならびに免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
酵素またはその断片が、ヒドロラーゼまたはその断片である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
酵素またはその断片が、アスパラギナーゼ(aspariginase)またはその断片である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
保護層が、固体担体を包埋し、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片を包埋する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
保護層の表面に固定化されている機能性成分が、保護層によって包埋されていない、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、キレート剤をさらに含み、キレート剤が、任意選択的に、放射性標識または発光性標識を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
対象におけるがんを予防、進行の遅延または処置する方法において使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物であって、方法が、前記組成物を対象に投与することを含み、組成物が、対象を処置するのに十分な量で投与される、組成物。
【請求項16】
対象における組成物の分布を測定する方法において使用するための、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
組成物を生成する方法であって、組成物が、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含み、方法が、以下の工程:
(a)固体担体を提供する工程と、
(b)酵素またはその断片を固体担体に固定化する工程と、
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体に固定化されている酵素またはその断片を保護する工程と、
(d)保護層の表面に機能性成分を固定化する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素などのタンパク質は、例えば工業用途、診断、または治療的使用で頻繁に必要とされる。タンパク質を安定化するために、かつ/または様々なタイプのストレスに対する耐性を提供するために、タンパク質を担体の表面に固定化し、それらを保護材料の層で保護することが先行技術において示唆されている。そのような手法は、例えば、固体担体、酵素および酵素を包埋することによって、酵素を保護するための保護層を含む生体触媒組成物、ならびにそのような生体触媒組成物を生成する方法を開示する国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されている。しかしながら、例えば国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているような生体触媒組成物は、それらの生体適合性およびバイオアベイラビリティの欠如のために治療用途に使用することができない。したがって、治療用途に適合し、有用な生体触媒組成物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物を提供する。
【0004】
本発明はまた、
固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む前記組成物を生成する方法であって、方法が以下の工程:
(a)固体担体を提供する工程と、
(b)酵素またはその断片を固体担体に固定化する工程と、
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体に固定化されている酵素またはその断片を保護する工程と、
(d)保護層の表面に機能性成分を固定化する工程と、を含む、方法を提供する。
【0005】
驚くべきことに、本出願の発明者らは、治療的に適用された場合、本発明によって提供される組成物が、免疫原性が低いまたは免疫原性がないことを示唆する予想外の低い抗酵素抗体応答を有し、低い細胞傷害性を示し、溶血性ではなく、血液中で速いクリアランスを示し、したがって治療的使用に極めて有望であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の組成物を生成するプロセスの概略図である:a)酵素または断片は、固体担体に固定化される;b)およびc)固定化酵素またはその断片を包埋する保護層が固定化酵素またはその断片の周囲に成長する;d)保護層の表面に機能性成分が固定化される。
【
図2】PEGによるナノ粒子の官能化を示す図である。遮蔽ナノ粒子(NP-1)を、400rpmで撹拌しながら20℃で1時間、シラン-PEG-FITCと反応させた。ヒストグラムは、遮蔽ナノ粒子および反応ナノ粒子の蛍光強度(lex:489nm;lem:515nm)を表す。
【
図3】ヒト血清アルブミン(HSA)によるナノ粒子の官能化を示す図である。 遮蔽ナノ粒子を、400rpmで撹拌しながら20℃で1時間、HSAとインキュベートした。ヒストグラムは、HSAの初期溶液と比較した、反応後のナノ粒子の上清中のHSAのローリータンパク質定量化を表す。
【
図4】クリックケミストリーによるナノ粒子の官能化を示す図である。 エチニルナノ粒子を、400rpmで撹拌しながら20℃で6時間、N3-FITCとインキュベートした。 ヒストグラムは、ナノ粒子に固定化されている遊離N3-FITCおよびN3-FITCの蛍光偏光を表す(lex:489nm;lem:515nm)。
【
図5】遊離酵素と比較したNP-1の持続的な活性を示す図である。NP-1について酵素活性を測定し、13週間の期間にわたって等価量の遊離酵素と比較した。データ値を0日目の対照のパーセンテージとして表す。
【
図6】生体液中のNP-1の持続的な活性を示す図である。生体液中のNP-1の酵素活性を評価し、リン酸バッファー中のその活性と比較した。活性データ値は、リン酸バッファー中の対照のパーセンテージとして表す。
【
図7】NP-1に対するより低いAb-酵素結合を示す図である。ELISAを、ナノ粒子の発達の異なる段階で評価した。ELISAデータを酵素濃度(mg/mL)として表す。
【
図8】タンパク質分解酵素に対する耐性を示す図である。NP-1、部分的に遮蔽された酵素および遊離酵素をプロテアーゼ(10mg/mL)に20時間曝露した。酵素活性データ値は、t0での対照のパーセンテージとして表す。
【
図9】LDHアッセイによるNP-1の細胞傷害性評価を示す図である。HepG2を、漸増濃度の酵素不活性化ナノ粒子に48時間曝露した。乳酸脱水素酵素(LDH)アッセイを使用して、細胞損傷を評価した。NP-1の細胞傷害性データ値を、トリトン(1mg/mL)で処理した対照細胞のパーセンテージとして表す。
【
図10A-B】NP-1の溶血評価を示す図である。全血を漸増濃度のNP-1と37℃で3時間インキュベートし、試料を30分ごとに混合した。(A)写真は、800gで15分間遠心分離した後の試料を示す。(B)ヒストグラムは、総血中ヘモグロビン(hemoglobine)と比較したナノ粒子処理試料の溶血のパーセンテージを表す:トリトン(10mg/mL)およびPBSをそれぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。
【
図11A-B】ナノ粒子の生体内分布を示す図である。NP-1-D(A-C)およびNP-2-D(B-D)を動物に静脈内注射した。臓器/組織(C-D)中の血液(A~B)中に回収されたIDのパーセント(% ID/g)を異なる最終時点で計算した。
【
図11C-D】ナノ粒子の生体内分布を示す図である。NP-1-D(A-C)およびNP-2-D(B-D)を動物に静脈内注射した。臓器/組織(C-D)中の血液(A-B)中に回収されたIDのパーセント(% ID/g)を異なる最終時点で計算した。
【
図12A】NP-2の抗腫瘍効果を示す図である。(A)PANC-1、MDA-MB-231およびJHH-5細胞を、漸増濃度の遊離アスパラギナーゼ、NP-2および不活性化NP-2に48時間曝露した。細胞生存率を、MTTアッセイを使用して評価した。生存率データは、トリトン(1mg/mL)で処理した対照細胞のパーセンテージとして表す。
【
図12B】NP-2の抗腫瘍効果を示す図である。(B)酵素活性を、遊離アスパラギナーゼおよびNP-2について48時間にわたって測定した。ネスラー反応を使用して活性を測定した。
【
図13】PBMCの増殖を示す図である。新鮮分離したPBMCをCFSEで標識し、漸増濃度のNP-1およびNP-2(0~1000ug/mL)またはPHA(10ug/mL)に72時間曝露した。ヒストグラムは、フローサイトメトリーによって決定された増殖細胞のパーセンテージを示す。
【
図14】がん細胞標的化ナノ粒子の抗腫瘍効果を示す図である。(A)RAJI細胞を蛍光性NP-1または蛍光性NP-5と氷上で30分間インキュベートした。 がん細胞上のNP-1およびNP-5それぞれの特異的結合をフローサイトメトリーによって評価した。ヒストグラムは、細胞の蛍光強度を表す。(B)RAJI細胞を、漸増濃度の遊離アスパラギナーゼ、NP-1、NP-1不活性化またはNP-5に48時間曝露した。細胞生存率を、MTTアッセイを使用して評価した。生存率データは、トリトン(1mg/mL)で処理した対照細胞のパーセンテージとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物に関する。
【0008】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆も同様である。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0009】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程のうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。
【0010】
「含む(comprise)」という用語およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、一般に、含むという意味で、すなわち「含むが限定されない」、すなわち1つ以上の特徴または構成要素の存在を可能にするものとして使用される。
【0011】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0012】
「約」という用語は、指定された値の±10%の値の範囲を指す。例えば、「約200」という語句は、200の±10%、または180~220を含む。
【0013】
本明細書で使用される「固体担体」という用語は、通常、粒子を指す。好ましくは、固体担体は、単分散粒子または多分散粒子であり、より好ましくは単分散粒子である。固体担体は、通常、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己集合性有機粒子、シリカ粒子、金粒子、チタン粒子を含み、好ましくはシリカ粒子、より好ましくはシリカナノ粒子(SNP)である。固体担体の粒径は、通常1nm~1000μm、好ましくは10nm~100μm、特に約50nmである。
【0014】
本明細書で同義的に使用される「リンカー」または「架橋剤」という用語は、特定の官能基(例えば、第一級アミン、スルフヒドリルなど)に結合することができる基を含有する任意の連結試薬を指す。本発明の文脈におけるリンカーは、通常、固体担体の表面を酵素と接続する。例えば、リンカーを固体担体の表面、例えば担体材料としてのシリカ表面に固定化し、次いで酵素をリンカーの非占有結合部位に結合させ得る。あるいは、リンカーは、最初に酵素に結合し、次いで酵素に結合したリンカーは、その非占有結合部位で固体担体に結合し得る。様々なタイプのリンカーが当技術分野で既知であり、これらには、タグとして当技術分野で既知の直鎖または分岐鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、ペプチドリンカー、ポリエーテルリンカーおよびリンカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される「保護層」という用語は、固体担体の表面に固定化されている酵素の機能的特性を保護するための層を指す。本発明の保護層は、通常、ビルディングブロックを用いて構築され、その少なくとも一部は、通常、共有結合によって互いに相互作用することができるモノマーであり、通常、非共有結合によって固定化酵素と相互作用することができるモノマーである。保護層は、通常、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の酵素またはその(therof)断片が保護層に包埋された均一な層である。
【0016】
「酵素またはその断片」という用語は、天然に存在する酵素またはその断片を含み、人工的に操作された酵素またはその断片も含む。人工的に操作された酵素またはその断片は、例えば、酵素のバリアントまたは機能的に活性な断片である。本発明の酵素に関して「そのバリアントまたは機能的に活性な断片」とは、断片またはバリアント(アナログ、誘導体または変異体など)が酵素と同じ生理的機能を発揮することができることを意味する。そのようなバリアントには、天然に存在する対立遺伝子バリアントおよび天然に存在しないバリアントが含まれる。修飾が断片またはバリアントの機能活性の喪失をもたらさない限り、アミノ酸のうちの1つ以上の付加、欠失、置換および誘導体化が企図される。好ましくは、機能的に活性な断片またはバリアントは、酵素の関連部分に対して少なくとも約80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも約98%の配列同一性を有する。
【0017】
本明細書において、「部分的に酵素が包埋されている」とは、保護層によって酵素が完全に覆われておらず、したがって、保護層に酵素が完全に包埋されていないことを意味するものとする。一実施形態では、目的の酵素の50%未満が保護層によって覆われるが、典型的には少なくとも70%以上が覆われ、したがって酵素の保護が改善される。好ましい実施形態では、目的の酵素の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が保護層によって覆われている。別の好ましい実施形態では、目的の酵素の約70%~約95%、より好ましくは約80%~約95%、さらにより好ましくは約90%~約95%、最も好ましくは約90%~約95、96、97、98または99%が保護層によって覆われている。特に好ましい実施形態では、目的の酵素の約70%、特に約80%、より具体的には約90%、最も具体的には約95%が保護層によって覆われている。より特に好ましい実施形態では、目的の酵素の約70%、特に約80%、より特に約90%、最も特に約95%が保護層によって覆われており、活性部位は覆われていない。
【0018】
本明細書で使用される「完全に包埋された酵素」という用語は、本発明による目的の酵素が完全に、すなわち保護層によって100%覆われていること、すなわち活性部位も覆われていることを意味するものとする。
【0019】
本明細書で使用される「少なくとも部分的に包埋された酵素」という用語は、酵素が少なくとも部分的に包埋され、保護層によって完全に包埋され得ることを意味するものとする。したがって、「少なくとも部分的に包埋された酵素」は、保護層が酵素またはその(therof)断片の約30%~100%、好ましくは約50%~約100%、より好ましくは約80%~約100%、さらにより好ましくは約90%~約100%、最も好ましくは約95%~約100%を覆い、活性部位が好ましくは覆われていることを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「機能性成分」という用語は、保護層の表面に固定化された後、その特性、機能的特性を保持する成分を指す。本発明の意味における機能性成分は、例えば、両親媒性薬物、アミノ酸、ペプチド、タンパク質もしくはその断片、シラン共重合体またはタンパク質もしくはその断片とシラン共重合体との組み合わせであり得るが、ただし、タンパク質またはその断片は、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片ではない。
【0021】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された一連のアミノ酸残基を示し、通常、少なくとも10個のアミノ酸と100個以下のアミノ酸との間を含むアミノ酸配列を有する。
【0022】
本明細書で使用される「タンパク質またはその断片」という用語は、通常100~1500個のアミノ酸、好ましくは100~800個のアミノ酸、より好ましくは100~500個のアミノ酸を含有する。本明細書で定義されるタンパク質の断片は、通常、それが由来するタンパク質と同じ機能的特性を有する。
【0023】
「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」とも同義的に呼ばれ、一般に、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含み、したがって、多量体タンパク質またはその等価なIgホモログ(例えば、重鎖または軽鎖のいずれかに由来し得る重鎖単一ドメイン抗体(dAb)のみを含むラクダ科のナノボディ)であり;完全長機能性変異体、そのバリアントまたは誘導体(限定されないが、Ig分子の必須エピトープ結合特徴を保持するマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体を含み、デュアル特異性免疫グロブリン、二重特異性免疫グロブリン、多重特異性免疫グロブリンおよび二重可変ドメイン免疫グロブリンを含む)を含み;免疫グロブリン分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)またはサブクラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAlおよびIgA2)ならびにアロタイプであり得る。
【0024】
本明細書で使用される「免疫グロブリン断片」は、単独または任意の組み合わせで、(i)可変軽鎖(VL)、可変重鎖(VH)、定常軽鎖(CL)および定常重鎖1(CHI)ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHand CH1ドメインからなるFab(Fa)断片の重鎖部分;(iv)抗体の単一アームのVLand VHドメインからなる可変断片(Fv)断片、(v)単一可変ドメインを含むドメイン抗体(dAb)断片;(vi)分離された相補性決定領域(CDR);(vii)一本鎖Fv断片(scFv);(viii)VHand VLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによってドメインを別の鎖の相補性ドメインとペアリングさせ、2つの抗原結合部位を作り出す二価二重特異性抗体であるダイアボディ;ならびに(ix)相補性軽鎖ポリペプチドと一緒になって、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む直鎖状抗体;(x)ナノボディならびに(xi)免疫グロブリン重鎖および/もしくは軽鎖の他の非完全長部分、またはその変異体、バリアントもしくは誘導体、を含むが、これらに限定されない、完全長ではない抗体に由来する少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子に関する。好ましい免疫グロブリンは、抗CD19抗体、特にヒトモノクローナル抗CD19抗体である。
【0025】
第1の態様では、本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物を提供する。
【0026】
酵素は、非共有結合または共有結合によって固体担体の表面に固定化することができる。非共有結合には、p-p(芳香族)相互作用、ファンデルワールス相互作用、H結合相互作用、およびイオン相互作用が含まれる。好ましくは、酵素は、共有結合またはリンカーを介した共有結合によって固体担体の表面に固定化される。
【0027】
一実施形態では、固体担体は、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己集合性有機粒子、シリカ粒子、金粒子、チタン粒子の群から選択され、好ましくはシリカ粒子、より好ましくはシリカナノ粒子(SNP)である。粒径は、通常、粒子の直径を測定することによって測定され、通常、1nm~1000nm、好ましくは10nm~100nm、特に約50nmである。固体担体が単分散粒子である場合、サイズは、通常、1nm~1000nm、好ましくは10nm~100nm、特に約50nmである。固体担体が多分散粒子である場合、サイズは、通常、1nm~1000μm、好ましくは10nm~100μm、特に50nm~50μmである。
【0028】
通常、単分散粒子または多分散粒子、好ましくは単分散粒子が本発明における固体担体として使用される。好ましい実施形態では、単分散粒子は、球状単分散粒子である。さらに好ましい実施形態では、多分散粒子は、非球状多分散粒子である。
【0029】
固体担体は、通常、懸濁状態で提供される。固体担体の懸濁液は、例えば、水、バッファーもしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物、好ましくは水と非イオン性界面活性剤との混合物であり得る。本発明の方法において使用され得るバッファーは、ホスフェート、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸、N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、ジグリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸である。
【0030】
一実施形態では、固体担体の表面は、アンカーポイントとして、すなわち酵素または酵素を固体担体に接続するリンカーのアンカーポイントとして分子または官能性化学基を導入するように修飾される。好ましくは、前記アンカーポイントは、アミン官能性化学基または部分である。非限定的な例として、固体担体のアミノ修飾表面、例えばアミノ修飾シリカ表面は、修飾固体担体として使用され得る。固体担体のこのようなアミノ修飾表面は、シリカ表面を有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られ得る。したがって、好ましい実施形態では、固体担体は、アミノ修飾表面を有するシリカ表面を有する固体担体、より好ましくはシリカ表面を有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られる固体担体である。そのような修飾担体は、担体材料の表面で酵素とアミン基との間にアミド結合を形成してもよく、または担体材料の表面でリンカーとアミン基との間にアミド結合を形成してもよい。一実施形態では、アンカーポイントとして導入された分子または官能性化学基は、固体担体の表面上に均一に分配されている。好ましくは、固体担体の表面は、部分的にのみアミノ修飾されている。したがって、好ましい実施形態では、固体担体は、アミノ修飾表面を有するシリカ表面を有する固体担体、より好ましくはシリカ表面を有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られる固体担体、さらにより好ましくはシリカ表面を部分的に有する固体担体をアミノシラン、例えばAPTESと反応させることによって得られる固体担体である。
【0031】
いくつかの実施形態では、保護層は、約1~約200nm、通常1~約100nm、好ましくは約1~約50nm、より好ましくは約1~約25nm、さらにより好ましくは約1~約20nm、特に約1~約15nmの規定の厚さを有する。最も好ましい規定の厚さは、約1~約15nmである。いくつかの実施形態では、層は、約5~約100nm、好ましくは約5~約50nm、より好ましくは約5~約25nm、さらにより好ましくは約5~約20nm、特に約5~約15nmの規定の厚さを有する。最も好ましい規定の厚さは、約5~約15nmである。保護層は、通常、多孔質であり、孔径は、1~100nm、好ましくは1~20nmである。
【0032】
一実施形態では、酵素またはその断片は、保護層によって部分的に包埋される。別の実施形態では、酵素またはその断片は、保護層によって完全に包埋される。好ましい実施形態では、酵素またはその断片は、保護層によって少なくとも部分的に包埋される。
【0033】
一実施形態では、保護層は、固体担体を包埋し、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片を包埋する。一実施形態では、保護層の表面に固定化されている機能性成分は、保護層に包埋されない。好ましくは、保護層は、固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片を完全に包埋する。より好ましくは、保護層は、固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片を完全に包埋し、保護層の表面に固定化されている機能性成分は、保護層に包埋されない。保護層が固体担体を完全に包埋し、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片を完全に包埋する場合、酵素は完全に、すなわち保護層によって100%覆われ、その結果、活性部位も覆われ、固体担体は、完全に、すなわち保護層によって100%覆われる。
【0034】
一実施形態では、本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物であって、保護層の表面に固定化されている機能性成分が、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片とは異なる、組成物を含む。一実施形態では、本発明は、固体担体と、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片と、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層と、保護層の表面に固定化されている機能性成分とを含む組成物であって、保護層の表面に固定化されている機能性成分が、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片ではない、組成物を含む。
【0035】
一実施形態では、酵素またはその断片は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスペプチダーゼもしくはリガーゼ、またはそれらの断片およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましいのは、ヒドロラーゼまたはその断片、より具体的には、デアミナーゼまたはその断片、グルクロニダーゼまたはその断片およびペプチダーゼまたはその断片からなる群から選択されるヒドロラーゼまたはその断片、さらにより具体的には、ペプチダーゼまたはその断片、好ましくはシステイナーゼ、メチオニナーゼアルギナーゼおよびアスパラギナーゼ(aspariginase)またはその(therof)断片からなる群から選択されるペプチダーゼまたはその断片、最も具体的にはアスパラギナーゼ(aspariginase)またはその断片である。
【0036】
保護層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、光散乱法などの顕微鏡を使用することによって、またはエリプソメトリーによって測定することができる。
【0037】
本発明の組成物は、通常、反応器のような反応器中で生成される。保護層の形成は、通常、ビルディングブロックによってそれぞれの保護層を形成することによって行われ、ビルディングブロックは、重縮合反応で保護層を構築する。重縮合は、異なる溶媒中、好ましくは水溶液中で行うことができる。重縮合を容易に制御し、必要に応じて停止することができ、保護層の規定の厚さの達成を可能にする。保護層を構築するために使用することができるビルディングブロックの選択肢は、最適かつ/または所望のパラメータに従って保護層の親和性を適合させるために、酵素の既知の構造に依存し得る。保護層のビルディングブロックとして、通常、構造ビルディングブロックおよび保護ビルディングブロックが、保護層を構築するために使用される。使用することができる構造ビルディングブロックは、例えばオルトケイ酸テトラエチル(本明細書では「TEOS」または「T」と示される)である。使用することができる保護ビルディングブロックは、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(本明細書では「APTES」または「A」と示される)、プロピルトリエトキシシラン(本明細書では「PTES」または「P」と示される)、イソブチルトリエトキシシラン(「IBTES」と示される)、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン(本明細書では「HTMEOS」またはHと示される)、ベンジルトリエトキシシラン(本明細書では「BTES」と示される)、ウレイドプロピルトリエトキシシラン(「UPTES」と示される)、またはカルボキシエチルトリエトキシシラン(本明細書では「CETES」と示される)である。構造ビルディングブロックは、通常、形成された層に4つの共有結合を形成することができる無機シリカの前駆体である。保護ビルディングブロックは、通常、酵素と相互作用する能力を備えた有機部分を有するオルガノシランである(例えば、酵素)。好ましい構造ビルディングブロックは、四価シラン、特にテトラアルコキシシランである。好ましい保護ビルディングブロックは、三価シラン、特にトリアルコキシシランである。より好ましい構造ビルディングブロックは、四価シランと三価シランとの混合物、特にテトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとの混合物である。さらにより好ましい構造ビルディングブロックは、オルトケイ酸テトラエチル、テトラ-(2-ヒドロキシエチル)シラン、およびオルトケイ酸テトラメチルからなる群から選択される。さらにより好ましい保護ビルディングブロックは、カルボキシエチルシラントリオール、ベンジルシラン、プロピルシラン、イソブチルシラン、n-オクチルシラン、ヒドロキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルシラン、アミノプロピルシラン、ウレイドプロピルシラン、(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルシラン、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリエトキシシランからなる群から選択され、特に、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランから選択されるか、またはベンジルトリメトキシシラン(benzyltrimethoxysflane)、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ヒドロキシルネチルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アルニノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランから選択されるか、またはベンジルトリヒドロキシエトキシシラン、プロピルトリヒドロキシエトキシシラン、イソブチルトリヒドロキシエトキシシラン、n-オクチルトリヒドロキシエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリヒドロキシエトキシシラン(hydroxymefilyltrihydroxyethoxysilane)、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリヒドロキシエトキシシラン、アミノプロピルトリヒドロキシエトキシシラン、ウレイドプロピルトリヒドロキシエトキシシラン、(N-アセチルグリシル)-3-アミノプロピルトリヒドロキシメトキシシランから選択される。
【0038】
特に好ましいビルディングブロックは、構造ビルディングブロックとしてTEOS、ならびに保護ビルディングブロックとしてAPTES、PTESおよび/またはHTMEOS、好ましくはAPTESである。特に、構造ビルディングブロックとしてのTEOSおよび保護ビルディングブロックとしてのAPTESが、保護層を構築するために使用される。
【0039】
ビルディングブロックと固体担体との反応時間は、リンカーが使用される場合、リンカーの長さ、および酵素のサイズに依存する。反応は、通常、0.5~10時間、好ましくは1~5時間、より好ましくは1~4時間、さらにより好ましくは2~4時間、好ましくは水溶液中で、好ましくは約5~約25℃または約20℃の室温で行われる。保護層の形成は、重縮合反応を能動的に停止させることによって、例えば未反応のビルディングブロックを、例えば洗浄工程によって除去することによって、または限られた量のビルディングブロック(buidling block)によって引き起こされる重縮合反応の自己停止によって、停止させることができる。
【0040】
さらにより好ましい実施形態では、酵素は、酵素について上に記載されるように分子をアンカーポイントとして導入することによって、ならびにリンカー、好ましくはアンカーポイントおよび酵素に結合する架橋剤を使用することによって、固体担体の表面を少なくとも部分的に修飾することによって、固体担体に固定化される。
【0041】
一実施形態では、アンカーポイントとして導入された分子および/またはリンカーは、固体担体の表面上に均一に分配されている。
【0042】
好ましい実施形態では、架橋剤は、グルタルアルデヒド、酒石酸ジスクシンイミジル、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、ジメチルアジピミダート、ジメチルピメリミデート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、活性化スルフヒドリル、スルフヒドリル反応性2-ピリジルジチオール、BSOCOES(ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン)、DSP(ジチオビス[スクシンイミジル]プロピオネート])、DTSSP(3,3’-ジチオビス[スルホスクシンイミジル]プロピオネート)、DTBP(ジメチル3,3’-ジチオビスプロピオニミダート・2HCl)、DST(ジスクシンイミジルタルタレート)、スルホ-LC-SMPT(4-スルホスクシンイミジル-6-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、LC-SPDP(スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)ヘキサノエート)、SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-a-[2-ピリジルジチオ]トルエン)、DPDPB(1,4-ジ-[3’-(2’-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン)、DTME(ジチオ-ビスマレイミドエタン)、BMDB(1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン)、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)およびアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)からなる群から選択される。より好ましくは、架橋剤は、グルタルアルデヒド、ジスクシンイミジルタルトレート、スベリン酸ジスクシンイミジル、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、ジメチルアジピミダート、ジメチルピメリミデート、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、活性化スルフヒドリル(例えば、スフルヒドリル反応性2-ピリジルジチオ)、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)およびアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)から選択される。グルタルアルデヒド、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)およびアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)が特に好ましい。グルタルアルデヒドが最も好ましい。例えば、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)およびアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)のような上記の架橋剤のいくつかの化合物は、それぞれ、例えば、in situで、例えば、「クリックケミストリー」反応(銅触媒アジド-アルキン環化付加、例えば、Kolb et al.(2001)Angew.Chem.40(11)2004-2021参照)で互いに反応することによって架橋剤を形成し、例えば、ジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)は、保護層の表面に結合することができ、アジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)は、機能化(functionlisation)成分、例えば、免疫グロブリンに結合することができ、保護層の表面に結合したジベンゾシクロオクチルマレイミド(DBCO-マレイミド)と機能化(functionlisation)成分に結合したアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)とを、in situでクリックケミストリーによって反応させて、架橋剤を介して保護層の表面に固定化されている機能性成分を含む組成物を形成し、架橋剤は、アジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)と反応したジベンゾシクロオクチルマレイミド(DBCO-マレイミド)から構成される。したがって、好ましい実施形態では、架橋剤は、クリックケミストリーによって反応させた2つの化合物から構成され、より好ましくは、架橋剤は、アジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)と反応させたジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)から構成される。
【0043】
保護層が形成された後、酵素および保護層を含む固体担体を保存することができる。保存は、通常、例えば形成された組成物を例えばバッファーで洗浄し、所望の期間そのバッファーに懸濁または溶解させて保存することによって実現される。好ましい実施形態では、酵素および保護層を含む固体担体は、2~25℃の一定温度で保存される。さらに好ましい実施形態では、酵素および保護層を含む固体担体は、5~48時間、好ましくは10~30時間保存される。より好ましくは、酵素および保護層を含む固体担体は、2~25℃の一定温度、好ましくは室温で10~30時間保存される。
【0044】
一実施形態では、本発明の組成物が対象に投与される場合、機能性成分は、i)組成物の食作用を減少させ、ii)組成物の循環時間を増加させ、かつ/またはiii)腫瘍を標的とし、かつ/もしくは組成物の腫瘍細胞への内部移行を促進する、好ましくは、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/もしくは組成物の循環時間を増加させ、または腫瘍を標的とし、かつ/もしくは組成物の腫瘍細胞への内部移行を促進する。
【0045】
一実施形態では、機能性成分は、両親媒性薬物、アミノ酸、ペプチド、タンパク質またはその(therof)断片、シラン共重合体、およびタンパク質またはその(therof)断片とシラン共重合体との組み合わせからなる群から選択されるが、ただし、タンパク質またはその断片は、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片ではない。両親媒性薬物は、好ましくはカチオン性両親媒性薬物である。特徴的には、カチオン性両親媒性薬物は、非極性環系からなる疎水性部分および生理的pHで正味の正電荷を有することができる1つ以上の窒素基を有する親水性基を含有する。より好ましくは、両親媒性薬物は、フルオキセチン、チロダジン、プロマジン、マプロチリン、ロラタジン、イミプラミン、ドキセピン、デシプラミン、クロザピン、クロミプラミン、クロプロマジン、クロロキン、ラベタロール、ダポキセチン、フルボキサミン、インダルピン、パロキセチン、ジメリジン、セルタリンおよびプロパノールならびにそれらの塩、代謝産物およびプロドラッグからなる群から選択されるカチオン性両親媒性薬物である。好適なカチオン性両親媒性薬物のさらなる例としては、フルフェナジン、ハロペリドール(Haldol、Serenace)、プロクロルペラジン、メソリダジン、ロキサピン、モリドン(Moban)、ペルフェナジン(Trilifon)、チオチキセン(Navane)、トリフルオロペラジン(Stelazine)、フルフェナジン(Prolixin)、ドロペリドール、ズクロペンチキソール(Clopixol)、ペリシアジン、トリフルプロマジン、オランザピン、クエチアピン、アセナピン、スルピリド、アミスルピリド、レモキシプリド、メルペロン、ロペリドン、パリペリドン、リスペリドン、ペロスピロン、ジプラシドン、セルチンドール、アリピプラゾール、フルボキサミン(Luvox)、パロキセチン(Paxil)、セルトラリン(Zoloft)、デスベンラファキシン(Pristiq)、デュロキセチン(Cymbalta)、ミルナシプラム(Ixel)、ベンラファキシン(Effexor)、ミアンセリン(Tolvon)、ミルタザピン、アトモキセチン(Strattera)、マジンドール(Mazanor、Sanorex)、レボキセチン(Edronax)、ビロキサジン(Vivalan)、ブプロピオン、チアネプチン、アゴメラチン、アミトリプチリン(Elavil、Endep)、クロミプラミン(Anafranil)、ドキセピン(Adapin、Sinequan)、イミプラミン(Tofranil)、トリミプラミン(Surmontil)、ノルトリプチリン(Pamelor、Aventyl)、プロトリプチリン(Vivactil)、モクロベミド(Aurorix、Manerix)、トラニルシプロミン(Parnate)、ブスピロン(Buspar)、ゲピロン(Ariza)、ネファゾドン(Serzone)、タンドスピロン(Sediel)、トラゾドン(Desyrel)、ドスレピン、エトペリドン、フェモキセチン、ロフェプラミン、マジンドール、ミルナシプラン、ネファゾドン、ニソキセチン、ノミフェンシン、オキサプロチリン、プロトリプチリン、ビロキサジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、デスロラタジン、メクリジン、クエチアピン、フェキソフェナジンフェニラミン、セチリジン、プロメタジン、クロロフェニラミン、レボセチジン、シメチジン、ファメジン、ラニチジン、ニザチジン、ロキサチジン、ラフチジン、A-349,821、ABT-239、シプロキシファンクロベンプロピット、チオペラミド、チオペラミド、JNJ 7777120、VUF-6002、アルプレノロール、ブシンドロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、セリプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロールおよびブタキサミンのような上記の薬物、ならびにその塩、代謝産物およびプロドラッグが含まれる。さらにより好ましくは、両親媒性薬物は、クロロキンまたはクロルプロマジンである。アミノ酸は、通常、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群より選択され、好ましくはリジンである。ペプチドは、通常、ペネトラチン(DOI:10.1038/ncomms1952:Kondo E et al.,Nat commun,2012;Derossi D et al.,J.Biol.Chem.1994;269:10444-10450)ならびにRGD(アルギニン、グリシンおよびアスパラギン酸からなるトリペプチド)のような細胞透過性ペプチドからなる群から選択され、好ましくはRGDである。タンパク質またはその(therof)断片は、通常、血清アルブミンまたはその(therof)断片および免疫グロブリンまたはその断片からなる群から選択され、好ましくは血清アルブミンまたはその(therof)断片であり、より好ましくはヒト血清アルブミンまたはその(therof)断片である。免疫グロブリンまたはその断片は、通常、免疫グロブリンのFcまたはFab断片、免疫グロブリンのFcまたはFab断片および架橋剤、モノクローナル抗体およびナノボディからなる群より選択され、好ましくは免疫グロブリンのFc断片または免疫グロブリンのFc断片および架橋剤である。シラン共重合体は、通常、ポリエチレングリコール/シラン共重合体およびポリソルベート/シラン共重合体からなる群から選択され、好ましくはシランPEG(PEG-Si)、より好ましくはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDaである。
【0046】
好ましい実施形態では、機能性成分は、血清アルブミンまたはその(therof)断片;血清アルブミンまたはその(therof)断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;ポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFc断片;ならびに免疫グロブリンのFc断片および架橋剤からなる群から選択される。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、機能性成分は、保護層の表面に結合する血清アルブミンまたはその(therof)断片;ポリエチレングリコール/シラン共重合体の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の一部(端部)が、血清アルブミンまたはその(therof)断片に結合する血清アルブミンまたはその断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;保護層の表面に結合するポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFcまたはFab断片;ならびに、架橋剤の一方の部分(末端)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(末端)が、免疫グロブリンのFcまたはFab断片に結合する免疫グロブリンのFcまたはFab断片および架橋剤からなる群から選択される。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、機能性成分は、ポリエチレングリコール/シラン共重合体、好ましくはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDaであり、ポリエチレングリコール/シラン共重合体は、保護層の表面に結合する。
【0049】
より好ましい実施形態では、機能性成分は、血清アルブミンまたはその(therof)断片;血清アルブミンまたはその(therof)断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;ポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFc断片;ならびに免疫グロブリンのFc断片および架橋剤からなる群から選択され、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/または組成物の循環時間を増加させる。
【0050】
さらにより好ましい実施形態では、機能性成分は、血清アルブミンまたはその(therof)断片、好ましくは保護層の表面に結合する血清アルブミンまたはその(therof)断片;ポリエチレングリコール/シラン共重合体の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、血清アルブミンまたはその(therof)断片に結合する血清アルブミンまたはその(therof)断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;保護層の表面に結合するポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFcまたはFab断片;ならびに、架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、免疫グロブリンのFcまたはFab断片に結合する免疫グロブリンのFcまたはFab断片および架橋剤からなる群から選択され、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/または組成物の循環時間を増加させる。
【0051】
さらにより好ましい実施形態では、機能性成分は、血清アルブミンまたはその(therof)断片、好ましくは血清アルブミンである。好ましくは、血清アルブミンまたはその(therof)断片は、保護層の表面に結合する。本明細書で機能性成分として使用される血清アルブミンまたはその(therof)断片は、好ましくはヒトおよび/もしくは組換え血清アルブミンまたはその(therof)断片であり、より好ましくはヒト血清アルブミンまたはその(therof)断片である。
【0052】
さらにより好ましい実施形態では、機能性成分は、血清アルブミンまたはその(therof)断片、好ましくは血清アルブミンであり、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/または組成物の循環時間を増加させる。
【0053】
さらにより好ましい実施形態では、機能性成分は、ポリエチレングリコール/シラン共重合体、好ましくはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDaであり、ポリエチレングリコール/シラン共重合体は、保護層の表面に結合する。
【0054】
さらにより好ましい実施形態では、機能性成分は、ポリエチレングリコール/シラン共重合体、好ましくはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDaであり、ポリエチレングリコール/シラン共重合体は、保護層の表面に結合し、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/または組成物の循環時間を増加させる。
【0055】
一実施形態では、機能性成分は、ペプチド;ペプチドおよび架橋剤;免疫グロブリンまたはその断片;ならびに免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤からなる群より選択される。
【0056】
好ましい実施形態では、機能性成分は、保護層の表面に結合するペプチド;架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、ペプチドに結合するペプチドおよび架橋剤;保護層の表面に結合する免疫グロブリンまたはその断片;ならびに、架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、免疫グロブリンまたはその断片に結合する免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤からなる群から選択される。
【0057】
より好ましい実施形態では、機能性成分は、保護層の表面に結合するペプチド;架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、ペプチドに結合するペプチドおよび架橋剤;保護層の表面に結合する免疫グロブリンまたはその断片;ならびに、架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、免疫グロブリンもしくはその断片に結合し、ペプチドおよび免疫グロブリンもしくはその断片が、腫瘍を標的とし、かつ/または組成物の腫瘍細胞への内部移行を促進する免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤からなる群から選択される。
【0058】
好ましい実施形態では、機能性成分は、タンパク質またはその断片、好ましくは血清アルブミンまたはその(therof)断片;シラン共重合体、好ましくはポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンまたはその断片、好ましくは抗体またはその断片;ならびに免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片およびクリックケミストリーによって反応させた2つの化合物から構成される架橋剤からなる群から選択される。
【0059】
好ましい実施形態では、機能性成分は、タンパク質またはその断片、好ましくは血清アルブミンまたはその(therof)断片;シラン共重合体、好ましくはポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンまたはその断片、好ましくは抗体またはその断片;ならびに免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片およびクリックケミストリーによって反応させた2つの化合物から構成される架橋剤からなる群から選択され、機能性成分は、組成物の食作用を減少させ、かつ/または組成物の循環時間を増加させ、かつ/または腫瘍を標的とし、かつ/または組成物の腫瘍細胞への内部移行を促進する、好ましくは機能性成分は、組成物の循環時間を増加させ、腫瘍を標的とする。
【0060】
一実施形態では、保護層の表面は、固定化されている機能性成分によって部分的にのみ覆われる。好ましくは、保護層の表面の約0.1%~約100%が、固定化されている機能性成分によって覆われる。より好ましくは、保護層の表面の約5%~約80%、さらにより好ましくは約10%~約50%、最も好ましくは約20%が、固定化されている機能性成分によって覆われる。
【0061】
一実施形態では、機能性成分は、結合、好ましくは共有結合によって保護層の表面に固定化される。
【0062】
保護層の表面への機能性成分の固定化は、通常、例えば、水、バッファーもしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物中、好ましくは水と非イオン性界面活性剤との混合物中で、上記の保護層に包埋された酵素を担持する固体担体を懸濁することによって、反応器のような反応器中で担持される。次いで、機能性成分を懸濁液に添加し、通常は撹拌下で保護層の表面と反応させて、機能性成分を保護層の表面に固定化する。有用には、そのような得られた組成物を洗浄し、水、バッファーもしくは非イオン性界面活性剤またはそれらの混合物に再懸濁する。使用される機能性成分に応じて、例えばPEGシランが機能性成分として使用される場合には重縮合によって、または例えばタンパク質が機能性成分として使用される場合には共有結合によって、固定化が起こる。機能性成分はまた、例えば「click chemistry」(Copper-catalysed azide-alkyne cycloaddition、例えば、Kolb et al.(2001)Angew.Chem.40(11)2004-2021参照)を使用して保護層の表面および機能性成分を化学的に修飾することによって固定化され得るが、上記のように保護層に包埋された酵素を担持する固体担体は、最初にエチニル化合物のような反応性化合物と反応し、機能性成分は、反応性化合物、例えばアジド残留物を添加することによって修飾され、次いで両方の成分を反応させて、保護層の表面に機能性成分を固定化する。
【0063】
さらなる実施形態では、組成物は、キレート剤をさらに含み、キレート剤は、任意選択的に、放射性標識または発光性標識を含む。好ましくは、キレート剤は、DOTA、DTPA、NOTA、TETA、AAZTA、TRAP、NOPOおよびHEHAからなる群から選択される。より好ましくは、DOTAまたはHEHAが使用される。さらにより好ましくは、放射性標識または発光性標識を含むキレート剤が使用され、特にp-SCN-Bn-DOTAまたはルテチウム-177-放射性標識-DOTAが使用される。組成物がキレート剤をさらに含む場合、保護層に包埋された酵素を担持する固体担体は、通常、キレート剤で前処理され、放射性標識または発光性標識を含む異なるキレート剤がそのような前処理された組成物に添加される。
【0064】
好ましくは、放射性標識、より好ましくはランタニドファミリーの化合物、さらにより好ましくはガドリニウム、ルテチウムまたはユーロピウムが使用される。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、医薬として使用するための上記の組成物を提供する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるがんを予防、進行の遅延または処置する方法に使用するための組成物を提供し、方法は、前記組成物を対象に投与することを含み、組成物は、対象を処置するのに十分な量で投与される。また、対象におけるがんの予防、進行の遅延または処置のための医薬を製造するための本明細書に記載の組成物の使用も提供される。また、対象におけるがんの予防、進行の遅延または処置のための本明細書に記載の組成物の使用も提供される。また、対象におけるがんの予防、進行の遅延または処置のための方法であって、治療的有効量の本明細書に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法も提供される。対象におけるがんの予防、進行の遅延または処置のための方法において、本発明の組成物における保護層の表面に固定化されている機能性成分は、好ましくは、両親媒性薬物、アミノ酸、ペプチド、タンパク質またはその断片、シラン共重合体およびタンパク質またはその断片とシラン共重合体との組み合わせからなる群から選択されるが、ただし、タンパク質またはその断片は、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片ではなく;より好ましくは、保護層の表面に結合する血清アルブミンまたはその(therof)断片;ポリエチレングリコール/シラン共重合体の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、血清アルブミンまたはその(therof)断片に結合する血清アルブミンまたはその(therof)断片およびポリエチレングリコール/シラン共重合体;保護層の表面に結合するポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンのFcまたはFab断片;ならびに、架橋剤の一方の部分(端部)が、保護層の表面に結合し、他方の部分(端部)が、免疫グロブリンのFcまたはFab断片に結合する免疫グロブリンのFcまたはFab断片および架橋剤;さらにより好ましくは、血清アルブミンもしくはその(therof)断片、またはポリエチレングリコール/シラン共重合体、特に、血清アルブミンまたはmシラン-PEG 2kDaまたはmシラン-PEG 5kDa、より具体的にはヒトおよび/もしくは組換え血清アルブミンもしくはその(therof)断片、またはmシラン-PEG 2kDaもしくはmシラン-PEG 5kDa、さらにより具体的にはヒト血清アルブミンもしくはその(therof)断片、またはmシラン-PEG 2kDaもしくはmシラン-PEG 5kDa、さらにより具体的にはタンパク質またはその断片、好ましくは血清アルブミンまたはその(therof)断片;シラン共重合体、好ましくはポリエチレングリコール/シラン共重合体;免疫グロブリンまたはその断片、好ましくは抗体またはその断片;ならびに免疫グロブリンまたはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片および架橋剤、好ましくは抗体またはその断片およびクリックケミストリーによって反応させた2つの化合物から構成される架橋剤からなる群から選択される。
【0067】
本明細書で使用される「処置」/「処置すること」という用語は、(1)病態、障害もしくは状態に罹患しているか、またはかかりやすいが、病態、障害または状態の臨床症状または不顕性症状をまだ経験または示していない動物、特に哺乳動物、特にヒトにおいて発症する病態、障害または状態の臨床症状の出現を遅延させること;(2)病態、障害または状態を阻害すること(例えば、少なくとも1つのその臨床的または不顕性の症状の、疾患の発症、または維持処置の場合にはその再発を制止させること、減少させること、もしくは遅延させること);および/または(3)状態を軽減すること(すなわち、病態、障害もしくは状態、またはその臨床的もしくは不顕性の症状のうちの少なくとも1つの後退を引き起こす)を含む。処置される患者に対する利益は、患者または医師にとって統計的に有意であるか、または少なくとも知覚可能である。しかしながら、疾患を処置するために医薬が患者に投与される場合、その結果は必ずしも有効な処置であるとは限らないことが理解されよう。
【0068】
本明細書で使用される場合、「進行の遅延」は、がんの症状もしくはがんに関連するマークが出現するまでの時間を増加させること、またはがんの症状の重症度の増加を遅らせることを意味する。さらに、本明細書で使用される「進行の遅延」は、疾患進行の逆転または阻害を含む。対象における疾患進行または疾患合併症の「阻害」は、対象における疾患進行および/または疾患合併症を予防または低減することを意味する。
【0069】
防止処置は、予防処置を含む。防止用途では、本発明の医薬組み合わせは、がんを有することが疑われるか、またはがんを発症するリスクがある対象に投与される。治療用途では、医薬組み合わせは、疾患の症状を治癒または少なくとも部分的に制止させるのに十分な量で、既にがんに罹患している患者などの対象に投与される。この使用に有効な量は、疾患の重症度および経過、以前の治療、対象の健康状態および薬物に対する応答、ならびに処置する医師の判断に依存する。
【0070】
対象の状態が改善しない場合、本発明の医薬組み合わせは、対象の疾患または状態の症状を改良するか、そうでなければ制御するか、または制限するために、対象の寿命の全期間を含む長期間にわたって慢性的に投与され得る。
【0071】
対象の状態が改善する場合、医薬組み合わせは、連続的に投与され得、あるいは、投与される薬物の用量を一時的に減少させるか、または一定の長さの時間(すなわち、「休薬期間」)一時的に中断され得る。患者の状態の改善が起こると、本発明の医薬組み合わせの維持量が必要に応じて投与される。その後、投与量もしくは投与頻度、またはその両方を、症状の関数として、改善された疾患が保持されるレベルまで任意選択的に減少させる。
【0072】
本明細書で使用される「有効量」または「治療的有効量」という表現は、本発明の組み合わせを受けている対象において以下の効果のうちの1つ以上をもたらすことができる量を指す:(i)腫瘍増殖速度を低下させることまたは完全増殖制止を引き起こすことを含む腫瘍増殖の阻害または制止;(ii)完全な腫瘍縮小;(iii)腫瘍サイズの縮小;(iv)腫瘍数の減少;(v)末梢臓器への腫瘍細胞浸潤の転移の阻害(すなわち、減少、減速または完全停止);(vi)腫瘍の退縮または排除をもたらし得るが、そうでなくてもよい抗腫瘍免疫応答の増強;(vii)がんに関連する1つ以上の症状のある程度の軽減;(viii)組み合わせを受けている対象の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)の延長。
【0073】
治療的有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。いくつかの実施形態では、治療的有効量は、(i)がん細胞の数を減少させる;(ii)腫瘍サイズを縮小させる;(iii)末梢臓器へのがん細胞の浸潤を阻害、遅滞、ある程度遅らせる、好ましくは停止する;(iv)腫瘍転移を阻害する(例えば、ある程度遅く、好ましくは停止する);(v)腫瘍増殖を阻害する;(vi)腫瘍の発生および/または再発を遅延させる;かつ/または(vii)がんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減することができる。様々な実施形態では、その量は、がんの症状のうちの1つ以上を改良する、和らげる、緩和する、かつ/または遅延させるのに十分である。
【0074】
一実施形態では、がんは、固形腫瘍である。さらなる実施形態では、がんは、血液学的悪性腫瘍である。好ましい実施形態では、がんは、白血病である。より好ましい実施形態では、がんは、リンパ芽球性がん、より好ましくはバーキットリンパ腫またはT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)からなる群から選択されるリンパ芽球性がんである。
【0075】
さらなる態様では、本発明は、対象における組成物の分布を測定する方法に使用するための上記の組成物を提供する。一実施形態では、対象における組成物の分布を測定するための方法は、固体担体、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層、および保護層の表面に固定化されている機能性成分を含み、放射性標識または発光性標識を含むキレート剤をさらに含む組成物を対象に投与することと、放射性放出または発光性放出を分析することと、を含む。
【0076】
本発明はまた、対象における組成物の分布を測定する方法であって、固体担体、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片、酵素またはその断片を包埋することによって、酵素またはその断片を保護する保護層、および保護層の表面に固定化されている機能性成分を含み、放射性標識または発光性標識を含むキレート剤をさらに含む組成物を対象に投与することと、放射性放出または発光性放出を分析することと、を含む、方法を提供する。
【0077】
さらなる態様では、本発明は、上記の組成物、例えば、組成物、固体担体、固体担体の表面に固定化されている酵素またはその断片、酵素またはその断片を包埋することによって酵素またはその断片を保護する保護層、および保護層の表面に固定化されている機能性成分を生成する方法であって、方法が、以下の工程:
(a)固体担体を提供する工程と、
(b)酵素またはその断片を固体担体に固定化する工程と、
(c)固体担体の表面に保護層を形成して、固体担体に固定化されている酵素またはその断片を保護する工程と、
(d)保護層の表面に機能性成分を固定化する工程と、を含む、方法を提供する。
【0078】
工程(a)は、通常、固体担体を水またはバッファー中に懸濁させて提供することによって行われる。懸濁液は、例えば400rpm、20℃で30分間撹拌することができる。本方法の工程b)における固体担体への酵素の固定化は、通常、固体担体の懸濁液に酵素の溶液を添加することによって行われる。好ましい実施形態では、固体担体上の酵素の固定化は、固体担体の懸濁液を提供し、酵素の溶液を添加することによって行われ、酵素の添加溶液を含む懸濁液は、酵素が固体担体の表面に結合することを可能にするためにインキュベートされる。好ましい実施形態では、固体担体の表面は、固体担体上の酵素の固定化を改善するために、少なくとも部分的に修飾される。特に、固体担体の表面は、酵素が固定化される前に少なくとも部分的に修飾される。固体担体の表面は、上記のように、酵素のアンカーポイントとして分子を固体担体の表面に導入することによって少なくとも部分的に修飾することができる。本方法の工程(c)による保護層の形成は、通常、ビルディングブロックを用いてそれぞれの保護層を形成することによって行われ、ビルディングブロックは、上記のように重縮合反応で保護層を構築する。本方法の工程(d)による保護層の表面への機能性成分の固定化は、通常、上記のようにして行われる。
【0079】
一実施形態では、保護層は、ビルディングブロックによって形成され、ビルディングブロックとして、構造ビルディングブロックおよび保護ビルディングブロックは、保護層を形成するために使用され、構造ビルディングブロックは、形成された層に4つの共有結合を形成することができる無機シリカの前駆体であり、保護ビルディングブロックは、オルガノシランである。
【0080】
一実施形態では、保護層は、酵素の約30%~約100%を包埋する。
【0081】
一実施形態では、固体担体は、有機粒子、無機粒子、有機-無機粒子、自己組織化有機粒子、シリカ粒子、金粒子、磁性粒子およびチタン粒子の群から選択される。
【実施例】
【0082】
試薬:
オルトケイ酸テトラエチル99%(TEOS)、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTES)、アンモニウム水酸化物(ACSグレード、28~30%)、エタノール(ACSグレード、無水)、グルタルアルデヒド(グレードI、水中25%)、硫酸銅、アスコルビン酸ナトリウム、Chelex(登録商標)100ナトリウム形態、アスパラギナーゼ(EC3.5.1.1)、L-アスパラギン、トリクロロ酢酸、ネスラー試薬、エタノールアミン、tween 20、ヘモグロビン標準液、ドラブキン溶液、Triton X、ジギトニンおよびジベンゾシクロオクチン-マレイミド(DBCO-マレイミド)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0083】
p-SCN-Bn-DOTAは、Macrocyclicsから購入した。
【0084】
トリエトキシエチニルシラン(ETES)は、Toronto Research Chemicalsから購入した。
【0085】
様々な分子量を有するメトキシPEGシラン(PEGシラン)、シラン-PEG-フルオレセインイソチオシアネート(シラン-PEG-FITC)およびアジドPEGマレイミド(N3-PEG-マレイミド)は、Nanocsから購入した。
【0086】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、Fitzgeraldから購入した。
【0087】
ポリクローナル抗アスパラギナーゼ抗体(LS-C147330)は、Fitzgerald製のLS-BioおよびHRPコンジュゲート化ヤギ抗ウサギ抗体(43R-IG036hrp)から購入した。アミン反応性96ウェルプレート(NHS基を有する)は、Interchimから購入した。HRP発色基質3,3,5,5-テトラメチルベンジジン(TMB)およびダルベッコのホスフェート緩衝生理食塩水(DPBS)は、Thermo Scientificから購入した。
【0088】
LDH活性アッセイキットは、Biovisionで購入した。
【0089】
ジメチルスルホキシド(DMSO)、MTT((3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5ジフェニルテトラゾリウム臭化物)、PHA(フィトヘマグルチニン)は、Sigmaから購入した。
【0090】
RAJI、PANC-1およびMDA-MB-231細胞は、LGCから購入した。
【0091】
JHH5細胞は、TebuBioから購入した。
【0092】
CFSE(カルボキシフルオレセインジアセテート、スクシンイミジルエステル)は、Thermo Fischer Scientificから購入した。
【0093】
バフィーコートは、Basel献血センター(Blutspendezentrum SRK Beider Basel)から入手した。
【0094】
ヒトCD19抗体(抗CD19抗体)は、Bio-Techneから購入した。
【0095】
炭酸ナトリウム(≧99.5%、Ph.Eur.、USP、BP、無水)および炭酸水素ナトリウム(≧99.5%、CELLPURE(登録商標))は、Carl Rothから購入した。
【0096】
合成シリカナノ粒子:
50nm粒径のシリカナノ粒子は、国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されている元のStoberプロセスに従って合成されている。簡潔には、エタノール、蒸留水(6M)およびアンモニウム水酸化物(0.13M)を混合し、400rpmで1時間撹拌した。TEOS(0.28M)を添加し、溶液を400rpm、20℃で22時間撹拌した。次いで、溶液を20000gで20分間遠心分離し、エタノールおよび水で連続的に洗浄した。画像解析ソフトウェアOlympus stream motionを使用して、150000xの倍率で取得したSEM顕微鏡写真に対して粒径測定を行った。
【0097】
酵素遮蔽:
水-ポリソルベート80(8mg/L)中のシリカナノ粒子を、撹拌下(400rpm)、20℃で30分間、APTES(2.75mM)と反応させた。未反応試薬を、300kDaのNMWL、Biomaxポリエーテルスルホン限外濾過ディスクを有するアミコン撹拌細胞を使用してナノ粒子懸濁液から除去し、ナノ粒子懸濁液を氷上で62.5ワットで5分間超音波処理した(以下、「洗浄工程」と呼ぶ)。次いで、ナノ粒子を、撹拌下(400rpm)、20℃で30分間、0.1%(v/v)のグルタルアルデヒド水溶液とインキュベートした。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁し、撹拌下(400rpm)、20℃で1時間、アスパラギナーゼ(20μg/mL)と反応させた。ナノ粒子を洗浄し、TEOS(42.5mM)を添加し、撹拌下(400rpm)、20℃で1時間反応させた。その後、APTES(4.5mM)を反応混合物に添加した。シラン重縮合は、ナノ粒子懸濁液を洗浄することによって21時間後に停止した。シラン重縮合後に得られるシリカナノ粒子は、重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されている酵素アスパラギナーゼを含む。国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたこれらのナノ粒子は、本明細書では「遮蔽ナノ粒子」、「酵素遮蔽ナノ粒子」、「ナノ粒子1」または「NP-1」とさらに称される。画像解析ソフトウェアOlympus stream motionを使用して、150000xの倍率で取得したSEM顕微鏡写真に対して粒径測定を行った。
【0098】
ナノ粒子の不活性化
上記の「酵素遮蔽」の項に従って生成された酵素遮蔽ナノ粒子は、ナノ粒子を95℃で20分間加熱することによって熱的に不活性化され、本明細書では以下「酵素不活性化NP」または「不活性化NP」と称される。
【0099】
ナノ粒子の官能化:
-PEGによる官能化:
上記の「酵素遮蔽」の項に従ってポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6、2)中で生成された酵素遮蔽ナノ粒子を、撹拌(strirring)(400rpm)下、20℃で1時間、PEGシラン5000またはPEG-シラン-FITC(1mg/mL)と反応させた。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁した。PEGによる官能化後に得られたシリカナノ粒子は、重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されている酵素アスパラギナーゼを含み、保護層の表面に固定化されている機能性成分としてPEGシランをさらに含む。PEGシラン5000で官能化されたこれらのナノ粒子は、本明細書では「ナノ粒子2」または「NP-2」とさらに称される。
【0100】
-ヒト血清アルブミンによる官能化::
上記の「酵素遮蔽」の項に従ってMESバッファー(10mM、pH6.2)中で生成された酵素遮蔽ナノ粒子を、撹拌(strirring)(400rpm)下、20℃で1時間、HSA(20μg/mL)と反応させた。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁した。PEGによる官能化後に得られたシリカナノ粒子は、重縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカ粒子の表面に固定化されている酵素アスパラギナーゼを含み、保護層の表面に固定化されている機能性成分としてHSAをさらに含む。HSAで官能化されたこれらのナノ粒子は、本明細書では「ナノ粒子3」または「NP-3」とさらに称される。
【0101】
-クリックケミストリーを使用した官能化:
上記の「酵素遮蔽」の項に従ってポリソルベート80(8mg/L)を含むボレートバッファー(50mM、pH8、5)中で生成された酵素遮蔽ナノ粒子を、撹拌(strirring)(400rpm)下、20℃で1時間、ETES(80mM)と反応させた。洗浄工程後、エチニルナノ粒子をMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁し、アスコルビン酸ナトリウム(4μM)および硫酸銅(0.4μM)の存在下でN3修飾化合物を添加し(40μM)、撹拌下(400rpm)、20℃で6時間反応させた。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁した。PEGによる官能化後に得られたシリカナノ粒子は、シリカ粒子の表面に固定化され、重縮合シランの保護層によって完全に包埋された酵素アスパラギナーゼを含み、保護層の表面に固定化されている機能性成分としてN3-FITCなどのN3修飾化合物をさらに含む。N3修飾化合物で官能化されたこれらのナノ粒子は、本明細書では「ナノ粒子4」または「NP-4」とさらに称される。
【0102】
-抗体による官能化
DPBSバッファー(10mM、pH7.4)中の抗CD19抗体(64μL、1mg/mL)に、26μLの炭酸塩バッファー(50mM、pH9.2)を添加した。次いで、滅菌水中のN3-PEG-マレイミド(2.56μL、100μg/mL)を抗CD19抗体溶液に添加し、撹拌下(400rpm)、20℃で1時間反応させてアジド抗CD19抗体を得た。
【0103】
上記の「酵素遮蔽」の項に従ってポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6、2)中で生成された酵素遮蔽ナノ粒子(600μL、10mg/mL)を、炭酸塩バッファー(50mM、pH9.2)に再懸濁し、続いて撹拌(400rpm)下、20℃で1時間DBCO-マレイミド(1.82μL、100μg/mL)と反応させて、DBCO酵素遮蔽ナノ粒子を得た。洗浄工程後、DBCO酵素遮蔽ナノ粒子をDPBSバッファー(10mM、pH7.4)に再懸濁し、撹拌下(400rpm)、20℃で5時間アジド抗CD19抗体と反応させた。洗浄工程後、ナノ粒子をDPBSバッファー(10mM、pH7.4)に再懸濁した。抗CD19抗体による官能基化後に得られたシリカナノ粒子は、縮合シランを含む保護層によって完全に包埋されたシリカナノ粒子の表面に固定化されている酵素アスパラギナーゼを含み、保護層の表面に固定化されている機能性成分として抗CD19抗体をさらに含む。抗CD19抗体で官能化されたこれらのナノ粒子は、本明細書では「ナノ粒子5」または「NP-5」とさらに称される。
【0104】
ナノ粒子の標識化:
上記の「酵素遮蔽」の項に従って生成された酵素遮蔽ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むリン酸バッファー(0.1M、pH7.4)に再懸濁し、Chelex(登録商標)で前処理し、p-SCN-Bn-DOTA(1mg/mL)を添加し、撹拌下(400rpm)、20℃で1時間反応させた。洗浄工程後、ナノ粒子を、ポリソルベート80(8mg/L)を含むMESバッファー(10mM、pH6.2)に再懸濁した。これらの粒子を、45℃で12時間2800μCiの177-ルテチウムとインキュベートし、注射前にさらに洗浄する。
【0105】
タンパク質定量:
HSAの固定収率を、間接的Lowryタンパク質定量法を使用して定量した。既知濃度のタンパク質を用いた標準回帰曲線を、ウシ血清アルブミン標準を使用して構築した。HSA固定化後の酵素遮蔽ナノ粒子(HSA固定化は、上記の「ヒト血清アルブミンを用いた官能化」の項に従って実行した)の上清を採取し、20krcfで3分間遠心分離した。次いで、1mLのLowry溶液を200μLの試料および標準物に添加し、ボルテックスし、室温で15分間インキュベートした。その後、ボルテックスしながらフォリン試薬1Nを100μL添加し、室温で30分間インキュベートした。最後に、Biotek Synergy H1リーダーを使用して吸収度を750nmで読み取った。
【0106】
アスパラギナーゼ活性アッセイ:
遊離アスパラギナーゼまたは遮蔽ナノ粒子-アスパラギナーゼ(0.1~1μg/mL)を、リン酸バッファー(0.5M、pH7.4)、アルブミン(40mg/mL)または全血中の10mM L-アスパラギンと200μLの最終容量まで混合し、酵素反応のために37℃で30分間インキュベートした。反応を50μlの1.5Mトリクロロ酢酸で停止させ、遠心分離した。200マイクロリットルの混合物上清を等容積の蒸留水と混合した後、100μLのネスラー試薬を添加した。吸収度を436nmで測定した。ネスラー試薬によって得られたアンモニアの標準曲線に基づいて酵素活性を定量した。
【0107】
ELISA手順:
アミン反応性プレートのウェルを、室温(RT)で2時間、100μlのPBS中、0~50μg/mlの遮蔽ナノ粒子-アスパラギナーゼまたは遊離アスパラギナーゼでコーティングした。次いで、NHS機能を、エタノールアミン(100mM、pH7)を使用して室温で30分間クエンチし、PBS中5%ミルクを用いて室温で1時間ウェルをブロックした。抗体希釈バッファー(PBS-ミルク1%、0.1%(v/v)Tween 20)中の抗アスパラギナーゼ抗体(1μg/mL)とRTで2時間のインキュベーション後、抗体希釈バッファー中のHRPコンジュゲート化ヤギ抗ウサギIgG(1:10,000)をRTで1時間添加した。最後に、50μl(TMB)を30分間添加することによって反応を可視化した。50μlのH2SO4 2Mで反応を停止し、吸収度を450nmで読み取った。各工程後、プレートを洗浄バッファー(0.1%(v/v)Tween 20を含有するPBS)で5回洗浄した。
【0108】
プロナーゼに対する遮蔽ナノ粒子-アスパラギナーゼ保護:
遊離アスパラギナーゼ、部分的に遮蔽されたアスパラギナーゼまたは遮蔽ナノ粒子-アスパラギナーゼ(15~20μg/ml)を、10μg/mlのプロナーゼで処理し、リン酸バッファー(0.5M、pH7.4)中で300rpmでの振盪下、37℃で異なる時間(1~19時間)インキュベートした。インキュベーション後、酵素活性を前述のように測定した。「部分的に遮蔽されたアスパラギナーゼ」は、国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子に対応し、酵素アスパラギナーゼの約25%が保護層によって包埋される。「遮蔽ナノ粒子-アスパラギナーゼ」は、国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子に対応し、酵素アスパラギナーゼは、保護層によって完全に包埋される。
【0109】
細胞培養:
ヒト肝細胞がん細胞株HepG2をCLSから入手した(300198)。細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L-グルタミンおよび100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI1640中で37℃および5%CO2で培養した。すべての培地および試薬は、Thermo Scientificから購入した。PANC-1(ヒト膵臓がん細胞株)およびMDA-MB-231(ヒト乳がん細胞株)細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1%非必須アミノ酸および100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で培養した。JHH5(ヒト肝細胞がん細胞株)細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1%非必須アミノ酸および100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI中で培養した。RAJI(ヒトバーキットリンパ腫細胞株)細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1%非必須アミノ酸および100U/mLペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI中で培養した。
【0110】
細胞傷害性アッセイ:
HepG2細胞株を2×104細胞/ウェルの密度で96ウェル平底細胞培養プレートに播種した。24時間後、培養培地を交換し、細胞を漸増濃度のナノ粒子(0~1000μg/mL)またはジギトニン(30μg/mL)で48時間処理した。細胞を含まないナノ粒子の複製物をブランクとして使用した。
【0111】
LDH活性アッセイを、市販のキットを使用して実行した。試薬を製造業者の指示に従って調製した。ポジティブコントロールを0.1% Triton-X-100で処理し、室温で10分間インキュベートした。次いで、プレートを450gで5分間遠心分離した。50マイクロリットルの細胞上清をアッセイプレートに移し、等容積の混合検出キット試薬と混合した。20分間のインキュベーション後、Synergy H1マルチモードマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments)を使用して490nmで吸収度を測定した。
【0112】
最後に、LDH漏出を細胞傷害性のパーセンテージ[(試料吸収度-無細胞試料ブランク)/(Triton-Xポジティブコントロール吸収度-培地対照吸収度)]として表した。
【0113】
溶血アッセイ:
ヒト血液試料を、Basel(Blutspendezentrum SRK beider Basel)の献血センターで健康な成人ボランティアから新たに入手した。抗凝固剤としてリチウムヘパリンを含有するバキュテーナーチューブに血液を採取した。溶血測定のために、希釈した全血(10±2mg/mLの総血中ヘモグロビンを含有する)を、37℃で3時間、漸増濃度のナノ粒子(0~1000μg/mL)に曝露し、30分ごとにチューブを混合した。トリトン(10mg/mL)およびPBSをそれぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。曝露後、血液懸濁液を遠心分離し(800g、15分)、CHR試薬(シアン化物を含有するDrabkin溶液)を添加して、Synergy H1マルチモードマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments)を使用して540nmで分光光度的に上清中のヘモグロビンの安定形態を検出した。
【0114】
溶血時に放出されたヘモグロビンの量を、Drabkinの試薬の較正曲線および市販のヒトヘモグロビンからの品質管理を使用して分析した。
【0115】
生体内分布:
Sprague DawleyラットまたはCD-1マウスに、50mg/kgの177Lu-DOTA-ナノ粒子を側尾静脈内または眼窩後部に静脈内注射した。終了時点で、ケタミン塩酸塩(50mg/kg)とキシラジン塩酸塩(10mg/kg)との混合物の腹腔内注射によって動物を麻酔し、次いで、それらを心内穿刺による失血によって動物を迅速に屠殺した。
【0116】
目的の器官を切除し、生理的血清ですすぎ、精密天秤を使用して秤量した。組織放射能のカウントは、ルテチウム-177放射性核種(効率:13.8%;LLOQ:500cpm)について較正された自動ガンマカウンター(Wallace Wizard2470-Perkin Elmer)で実行した。サンプリングした組織中の放射能を、組織1グラム当たりのIDのパーセンテージ(%ID/g)として表した。
【0117】
抗腫瘍効果アッセイ:
細胞を、5×104細胞/ウェルの密度で96ウェル平底細胞培養プレートに播種した。24時間後、培地を交換し、細胞を漸増濃度の遊離アスパラギナーゼ、NP-1、不活性化NP-1、NP-2、不活性化NP-2またはNP-5(0~2000mU/mL)で48時間処理した。細胞単層を培地ですすぎ、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物)溶液(1mg/mL)を各ウェルに添加した。細胞培養物を37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション期間中に生成されたホルマザン結晶をDMSOに溶解した。完全な可溶化後、Synergy H1マルチモードマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments)を使用して570nmおよび680nm(参照波長)で吸収度を測定した。最後に、MTT結果を生存率のパーセンテージとして表した:[(試料吸収度-無細胞試料ブランク)×100/(未処理試料吸収度-無細胞試料ブランク)]。無処理対照細胞の生存率を任意に100%とした。
【0118】
PBMC(末梢血単核細胞)に対する増殖アッセイ:
Ficoll勾配による分離後、健常ドナー由来のPBMCを、製造業者の指示に従って、37℃で10分間、1μM CFSEで直ちに標識し、PBSで洗浄した。標識細胞を、漸増濃度のNP-1もしくはNP-2(0~1000ug/mL)を有する完全培地またはポジティブコントロールとしてのPHA(10ug/mL)で72時間培養した。すべての実験において、CFSE希釈をフローサイトメトリーによって分析した。
【0119】
がん細胞標的化:
蛍光性NP-1および蛍光性(flurorescent)NP-5(50μg)を、PBS-FBS1%中、氷上で30分間、RAJI細胞とインキュベートした。洗浄およびPBS中での再懸濁後、RAJI細胞上のナノ粒子の結合をフローサイトメトリーによって評価し、ソフトウェアFlowJoを使用して分析した。
【0120】
結果:
実施例1:PEG官能化
遮蔽ナノ粒子(ナノ粒子1、NP-1)の表面にPEGを取り込む能力を評価するために、シラン-PEG-FITC(NP-2)が使用されている。
図2に示されるように、遮蔽ナノ粒子NP-1(それぞれ6518対343)と比較して、反応したナノ粒子(ナノ粒子-PEG-FITC、NP-2)に対する重縮合の反応後の蛍光の増加は、ナノ粒子の表面でのPEG-FITCの固定化を実証する。この結果は、PEGでナノ粒子を官能化する戦略を検証する。
【0121】
実施例2:アルブミン官能化
HSAによる遮蔽ナノ粒子(ナノ粒子1、NP-1)の表面官能化を、HSAとの反応後のナノ粒子(ナノ粒子3)の上清中のタンパク質定量化によって評価した。ナノ粒子の表面でのHSAの固定化を示す
図3に示されるように、ナノ粒子の上清中のタンパク質濃度は、HSAの初期溶液と比較して劇的に減少した(それぞれ0.1対20μg/mL)。この結果は、タンパク質で遮蔽ナノ粒子を官能化する能力を示す。
【0122】
実施例3:クリックケミストリー官能化
クリックケミストリーを使用して遮蔽ナノ粒子(ナノ粒子1、NP-1)の表面官能化を評価するために、エチニル修飾ナノ粒子をアジド-FITC(N
3-FITC)と反応させて、ナノ粒子4を得た。
図4に示される反応後の遊離N
3-FITCとナノ粒子との蛍光強度の比較は、蛍光偏光の増加を示す(それぞれ84対238)。この結果は、クリックケミストリーによるナノ粒子の表面でのN
3-FITCの固定化を実証し、さらなるアジド修飾化合物でナノ粒子を官能化するこのプロセスを検証する。
【0123】
実施例4:アスパラギナーゼ活性アッセイ:遊離酵素と比較した、国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子の安定性
遮蔽ナノ粒子(ナノ粒子1、NP-1)に対する生体触媒活性の安定性を、ネスラー反応を使用して評価し、37℃で13週間にわたって遊離酵素と比較した。
図5に示される結果は、遊離酵素と比較してNP-1に対する酵素活性の半減期の増加を示し(それぞれ74日間対10日間)、NP-1に対する生体触媒活性の安定化に対するオルガノシランの保護層の利点を強調している。
【0124】
実施例5:国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生体液中で生成されたナノ粒子のアスパラギナーゼ活性アッセイ
ヒト血清アルブミン(40mg/mL)および全血中のNP-1の酵素活性を、ネスラー反応を用いて測定し、リン酸バッファー中の酵素活性と比較した。
図6に示される結果は、生体液中のNP-1の持続的な酵素活性を示す。
【0125】
実施例6:ELISA:国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子の抗アスパラギナーゼ抗体応答
NP-1上の遮蔽酵素への抗体アクセスをELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって評価した。それらの発達の異なる段階におけるナノ粒子および最終NP-1を抗アスパラギナーゼ抗体とインキュベートした。ナノ粒子前駆体(固定化酵素および部分的に遮蔽された酵素)の場合、抗アスパラギナーゼ抗体の有意な結合が観察される。しかしながら、
図7に示されるように、アスパラギナーゼが完全に遮蔽されると(NP-1)、抗アスパラギナーゼ抗体による酵素の認識が劇的に低下する。この抗体認識の欠如は、NP-1上の酵素への抗体アクセスの防止を実証する。
【0126】
実施例7:アスパラギナーゼ活性アッセイ:国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子のプロナーゼに対する保護
外部ストレスに対するNP-1の耐性を評価するために、遊離酵素、部分的に遮蔽された酵素および完全に遮蔽された酵素(NP-1)を20時間プロテアーゼに曝露し、ネスラー反応を使用して残りの酵素活性を評価した。予想通り、プロナーゼとのインキュベーション後、遊離アスパラギナーゼについては活性が測定されず、
図8に示されるように、部分的に遮蔽された酵素については活性の85%の喪失が測定された。ナノ粒子1の場合、生体触媒活性の25%の喪失が報告され、固定化および遮蔽酵素の利用可能性がプロテアーゼ消化を妨げたことが示唆された。
【0127】
実施例8:細胞毒性アッセイ:国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成された酵素不活性化ナノ粒子のLDH-48時間
ナノ粒子の生体適合性を評価するために、肝細胞がん細胞(HepG2)を漸増濃度の酵素不活性化NP-1(5~1000μg/mL)で48時間処理した。細胞損傷を、上清中の乳酸脱水素酵素(LDH)の放出の測定によって評価した。
図9に示される結果は、NP-1がHepG2細胞の生存率に影響を及ぼさないことを示している。
【0128】
実施例9:国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているように生成されたナノ粒子の溶血アッセイ
NP-1の潜在的溶血活性を評価するために、漸増量の酵素不活性化NP-1を37℃で3時間全血に添加した。インキュベーション後、
図10に示すように、いずれの条件でも溶血は観察されず、NP-1の生体適合性を指摘した。
【0129】
実施例10:体内分布(比較実験)
組織生体内分布に対する遮蔽ナノ粒子の官能化の影響を評価するために、ルテチウム-177-放射性標識-DOTA(177Lu-DOTA)遮蔽ナノ粒子(NP-1-D)(
図11A/C)およびペグ化遮蔽ナノ粒子(NP-2-D)(
図11B/D)を50mg/kgで動物に注射した。組織および血液の放射能を異なる時点(0~7日)で実行した。結果は、ナノ粒子が注射の10分後に血流から急速に取り除かれたことを示している(
図11A/B)。しかしながら、ペグ化ナノ粒子(NP-2-D)の量は、血液循環中の非修飾のナノ粒子(NP-1-D)よりも10倍多いようである。両方の場合において、肝臓および脾臓が、血液からの177Lu-DOTA-ナノ粒子の除去の主要な部位であった(
図11C/D)。ナノ粒子の両方の製剤の%ID/gの比較は、生物体におけるペグ化ナノ粒子(NP-2-D)の保持がNP-1-Dよりも高いことを示す。全体として、これらのin vivoデータは、PEGによるナノ粒子の表面修飾が生物学的答えの調節を可能にすることを明らかにし、それらの表面を調節することによって注入されたナノ粒子の運命を制御する可能性を示唆する。
【0130】
実施例11:NP-2の抗腫瘍効果
NP-2の抗腫瘍効果を評価するために、生存率アッセイを異なるヒトがん細胞に対して実行した。細胞を、漸増濃度のNP-2もしくは遊離アスパラギナーゼ(1~2000mU/mL)またはネガティブコントロールとしての等量の不活性化NP-2に曝露した。
図12Aは、3つのがん細胞株における遊離アスパラギナーゼと比較したNP-2のより効率的な抗腫瘍効果を示す。アスパラギナーゼは、腫瘍環境においてアスパラギンを枯渇させることによってその抗腫瘍効果を発揮する。NP-2および遊離アスパラギナーゼの抗腫瘍効果において観察された差異を説明するために、本発明者らは、これらの2つの化合物の酵素活性を評価した。驚くべきことに、結果は、試験した範囲でNP-2と比較して遊離酵素のより高い酵素活性を示し(
図12B)、これは化合物の抗腫瘍活性と逆相関している。この結果は、NP-2などの官能化ナノ粒子の抗腫瘍効果の増強が、官能化ナノ粒子によって誘導される長期の代謝制限に関連すると思われることを示している。
【0131】
実施例12:PBMC増殖(比較実験)
国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているナノ粒子(NP-1)および本発明によるナノ粒子(上記の「PEGによる官能化」の項に記載されているNP-2)の免疫安全性を、ヒトリンパ球増殖を誘導するナノ粒子の能力を測定することによって評価した。新鮮分離した(Freshy isolated)PBMCをCFSEで標識し、ナノ粒子を含まない完全培地(ネガティブコントロール、未処理条件)、漸増濃度のNP-1およびNP-2(100~1000ug/mL)、またはPHA(ポジティブコントロール)に72時間曝露した。リンパ球の増殖をフローサイトメトリーによって評価した。
図13は、NP-1によって誘導されたリンパ球増殖を示し、NP-1によって誘導された免疫応答(リンパ球増殖)を実証するが、NP-2は、リンパ球増殖を促進しない(未処理条件と比較して)。この結果は、免疫安全性に関して国際公開第2015/014888号パンフレットに記載されているナノ粒子と比較して、本発明のナノ粒子の驚くべき顕著な利益を実証する。
【0132】
実施例13:NP-5の抗腫瘍効果(比較実験)
官能化ナノ粒子によるがん細胞の特異的な標的化およびそれらの治療用途を評価するために、抗CD19抗体をナノ粒子の表面に固定化された。蛍光性NP-5をRAJI細胞と共インキュベーションした後、がん細胞に対するそれらの結合をフローサイトメトリーによって評価した。結果は、抗CD19抗体によるナノ粒子の官能化ががん細胞の標的化を誘導するが、非修飾のナノ粒子(NP-1)は、細胞と相互作用しないことを示す(
図14A)。この相互作用の治療的影響を生存率アッセイによって評価した。RAJI細胞を、37℃で15分間、漸増濃度のNP-5、NP-1または不活性化NP-1(200~2000mU/mL)に曝露し、次いで、未結合ナノ粒子を洗浄によって除去した。生存率アッセイを、ポジティブコントロールとして遊離アスパラギナーゼを用いて48時間実行した。
図14Bは、NP-5の抗腫瘍効果を示すが、非官能化ナノ粒子(NP-1)は、いかなる細胞毒性も誘発せず、これは、NP-1がこのアッセイにおいて細胞生存率に対する効果を有するはずの活性アスパラギナーゼを担持するので予想外であった。さらに、NP-5は、遊離アスパラギナーゼと比較して、RAJI細胞に対してより効率的な抗腫瘍効果を示す。全体として、これらの結果は、ナノ粒子の表面官能化によって促進されたがん細胞の特異的標的化が、がん細胞とナノ粒子との間の強い相互作用を可能にし、驚くほど増強された抗腫瘍効果をもたらすことを実証している。
【国際調査報告】