(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】3Dプリント出力物の後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/379 20170101AFI20240328BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240328BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240328BHJP
【FI】
B29C64/379
B33Y40/20
B33Y80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565127
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 KR2021008688
(87)【国際公開番号】W WO2022225097
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0052197
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520456114
【氏名又は名称】株式会社グラフィー
【氏名又は名称原語表記】GRAPHY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】シム ウンソップ
(72)【発明者】
【氏名】キム フン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL55
4F213WW32
4F213WW33
4F213WW38
(57)【要約】
本発明は、3Dプリント出力物の後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置に関するものであって、3Dプリントを通じて製造された出力物の残存レジンを除去し、後硬化工程により硬化速度を向上させることで、硬化時間が短縮し、強度が向上し、透明性が高くなった出力物の製造が可能である。また、透明歯牙矯正装置の製造時に、後硬化工程を通じて、表面のレジンが除去され、強度が向上し、透明性に優れているだけでなく、未反応単量体を除去することができ、熱が提供されることによって透明歯牙矯正装置の初期出力された形状に復元される形状記憶特性を示すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)3Dプリンターを用いた出力物を回転体内に入れて洗浄するステップと、
2)前記洗浄された出力物は、非活性ガス環境内で第1後硬化するステップと、
3)前記第1後硬化した出力物は、オイル類に浸漬させた後、第2後硬化するステップと、
4)前記第2後硬化した出力物を熱湯処理するステップと、を含む、
3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項2】
前記3Dプリンターは、DLP方式またはSLA方式である、
請求項1に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項3】
前記1)ステップは、出力物に残った残余レジンを除去することである、
請求項1に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項4】
前記2)ステップの非活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン及びこれらの混合からなる群より選択されるものである、
請求項1に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項5】
前記3)ステップのオイル類は、グリセロール(Glycerol)、食用オイル、キャスターオイル、非反応性シリコーンオイル及びこれらの混合からなる群より選択される、
請求項1に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項6】
前記4)ステップは、80乃至100℃の熱水で処理することである、
請求項1に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の3Dプリント出力物の後硬化方法によって製造された、
透明歯牙矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリント出力物の後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置に関するものであって、具体的に3Dプリントを通じて出力された出力物を後硬化して製品の品質を向上させることができる後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、3次元の立体形状を有する成型品を製作するためには、図面に依存して手作業によって行われるモックアップ(Mock up)製作方式と、CNC工作機械による数値制御式自動製作方式などがある。
【0003】
しかし、モックアップ(Mock up)製作方式は、手作業によるので、精巧な形状加工が難しく多くの時間がかかり、CNC工作機械による製作方式は、精巧な数値制御が可能であるが、工具干渉によって加工可能な形状に制約がある。
【0004】
そこで、最近には、製品のデザイナーまたは設計者が3次元モデリングツールを通じて設計した3D設計図面データを保存したコンピューターを用いて、3次元立体形状の成型品を製作する3Dプリンターが登場した。
【0005】
前記3Dプリンターを用いると、製作費用と製造時間を大幅に短縮することができ、個人用オーダーメイドが可能であり、複雑な立体形状も簡便に製造することができるというメリットがある。
【0006】
前記3Dプリンターは、光硬化性樹脂にレーザーを走査し、走査された部分が硬化するようにするSLA(Stereo Lithography Apparatus)方式、光硬化性樹脂が貯蔵された貯蔵槽の下部に光を照射して硬化させるDLP(Digital Light Processing)方式、UV光源とLCDパネルを用いてビルドプレートの上部に樹脂成型品を積層し続けるLCD方式、機能性高分子または金属粉末を用いて焼結させるSLS(Selective Laser Sintering)方式、溶融樹脂を圧出して造形するFDM(Fused Deposition Modeling)方式、高出力レーザービームで金属を直接成形するDMT(Laser-aid Direct Metal Tooling)方式、機械接合造形方式であるLOM(Laminated Object Manufacturing)方式などがある。
【0007】
この中で光硬化性樹脂を用いるSLA、DLP、LCD方式では、成型品を製造した後、これを洗浄し、別途の硬化工程を経ることで、所望とする強度と色相を得ることができる。
【0008】
前記後硬化工程に用いられる装置を、一般的に「後硬化機」といい、後硬化機としては、UV(Ultra Violet)後硬化機、UVLED(Light Emitting Diode)を用いた後硬化機などがある。
【0009】
後硬化機を用いずに、自然状態で出力物を硬化させる場合、出力物の大きさが変形するか、強度が低くなるという問題が発生し得る。
【0010】
また、3Dプリンターで、プリンターの光源のみで出力物を硬化させる場合、出力物の大きさが変形するか、強度が低くなり、洗浄後の光硬化レジンの未反応によるべたつきなど多くの問題が発生し得る。
【0011】
このような問題を防止するため、後硬化機を用いているが、単にUV硬化のみを行う場合に、出力物の強度及び透明性を向上させることができないという問題がある。
【0012】
また、後硬化工程を行うためには、後硬化機の使用に先立って、ユーザーが直接出力物に残存する洗浄物を除去しなければならない煩わしさが存在した。
【0013】
このような問題を防止するための工程の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0054856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、3Dプリント出力物の後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、3Dプリントを通じて製造された出力物の残存レジンを除去し、後硬化工程により硬化速度が向上することで、硬化時間が短縮し、強度が向上し、透明性が高くなった出力物の製造が可能な3Dプリント出力物の後硬化工程及びその装置を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、透明歯牙矯正装置の製造時、後硬化工程を通じて、表面のレジンが除去され、強度が向上し、透明性に優れているだけでなく、未反応単量体を除去することができ、熱が提供されることによって透明歯牙矯正装置の初期出力された形状に復元される形状記憶特性を示す透明歯牙矯正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例に係る3Dプリント出力物の後硬化方法は、1)3Dプリンターを用いた出力物を回転体内に入れて洗浄するステップと、2)前記洗浄された出力物は、非活性ガス環境内で第1後硬化するステップと、3)前記第1後硬化した出力物は、オイル類に浸漬させた後、第2後硬化するステップと、4)前記第2後硬化した出力物を熱湯処理するステップと、を含んでもよい。
【0019】
前記3Dプリンターは、DLP方式またはSLA方式である。
【0020】
前記1)ステップは、出力物に残った残余レジンを除去することである。
【0021】
前記2)ステップの非活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン及びこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0022】
前記3)ステップのオイル類は、グリセロール(Glycerol)、食用オイル、キャスターオイル、非反応性シリコーンオイル及びこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0023】
前記4)ステップは、80乃至100℃の熱水で処理してもよい。
【0024】
本発明の他の一実施例に係る透明歯牙矯正装置で、前記3Dプリント出力物の後硬化方法によって製造されてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、3Dプリントを通じて製造された出力物の残存レジンを除去し、後硬化工程により硬化速度が向上することで、硬化時間が短縮し、強度が向上し、透明性が高くなった出力物の製造が可能である。
【0026】
また、透明歯牙矯正装置の製造時、後硬化工程を通じて、表面のレジンが除去され、強度が向上し、透明性に優れているだけでなく、未反応単量体を除去することができ、熱が提供されることによって透明歯牙矯正装置の初期出力された形状に復元される形状記憶特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る透明歯牙矯正装置に対する透明性比較実験結果である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る透明歯牙矯正装置の気泡発生に対する実験結果である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る透明歯牙矯正装置の損失/貯蔵モジュラス変化に対する結果である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る透明歯牙矯正装置のMMA溶出実験結果である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る透明歯牙矯正装置の未反応有機物検出に対するGC分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、1)3Dプリンターを用いた出力物を回転体内に入れて洗浄するステップと、2)前記洗浄された出力物は、非活性ガス環境内で第1後硬化するステップと、3)前記第1後硬化した出力物は、オイル類に浸漬させた後、第2後硬化するステップと、4)前記第2後硬化した出力物を熱湯処理するステップと、を含む3Dプリント出力物の後硬化方法に関するものである。
【0029】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施するように本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0030】
本発明のDLP方式(Digital Light Processing)は、光硬化樹脂が貯蔵された貯蔵槽の下部に光を照射し、光が照射された部分のみ硬化する原理を用いたものであって、SLA方式(Stereo Lithography Apparatus)は、光硬化樹脂にレーザー光を走査し、走査された部分が硬化する原理を用いることである。
【0031】
前記DLP方式及びSLA方式の場合、光硬化性高分子に光を照射し、光の照射によって光硬化性高分子樹脂が硬化して、出力物を製造することである。
【0032】
光硬化性高分子樹脂を硬化させて出力物を製造することによって、3Dプリンターを用いて出力物を製造すると、出力物の外表面にレジンが残存し、表面に突出面などが残り、表面を滑らかでかつきれいに管理するための工程がさらに必要である。
【0033】
従来では、このような後工程を行うために、ユーザーが道具を用いて直接突出面を除去すると共に溶媒を用いてレジン除去作業を行った。
【0034】
このような工程自体は、ユーザーが作業を直接行うことによって煩わしいという問題だけでなく、完璧な作業が難しいという問題がある。
【0035】
また、光硬化性高分子樹脂を硬化させた出力物は、出力物に製造する過程上で完全に硬化していない未反応性高分子樹脂を含み、これにより物理的な特性が低下するか、透明性が低いという問題がある。前記の問題を改善するため、後硬化工程を必須に行うことになる。
【0036】
従来の後硬化方法は、ユーザーが道具を用いて表面の突出面を除去するか、溶媒を用いてレジンを除去する程度に過ぎなかった。
【0037】
すなわち、出力物の物理的な特性を強化させるか、透明性を改善するための別途の後硬化方法が導入されなかった。
【0038】
本発明の一実施例に係る3Dプリント出力物の後硬化方法は、1)3Dプリンターを用いた出力物を回転体内に入れて洗浄するステップと、2)前記洗浄された出力物は、非活性ガス環境内で第1後硬化するステップと、3)前記第1後硬化した出力物は、オイル類に浸漬させた後、第2後硬化するステップと、4)前記第2後硬化した出力物を熱湯処理するステップと、を含んでもよい。
【0039】
前記1)ステップは、出力物の表面に突出面または残存レジンを除去することである。
【0040】
具体的に、円柱形状の回転体に入れ、残存するレジンの除去工程を行う。前記円柱形状の回転体は、より具体的に脱水器であるが、前記例示に限定されず、回転力によって出力物に残存するレジン除去が可能な装置はいずれも使用可能である。
【0041】
前記のような装置を用いて洗浄工程を行うと、容易にレジン除去が可能であるだけでなく、表面に形成された突出部を容易に除去することが可能になる。
【0042】
脱水器は、円筒状の脱水部を含む装置であって、脱水部が一定の方向に回転すると、内部に含まれた出力物に脱水部の回転による遠心力が作用することになり、レジン除去を可能にする。
【0043】
前記レジンは、表面に付いている残存高分子であって、容易に除去可能であり、突出面の場合にも、脱水部との摩擦によって容易に除去が可能になる。
【0044】
このような工程を通じて、容易にレジン除去及び表面加工を可能にする。
【0045】
前記1)ステップ以後は、後硬化するステップであって、第1後硬化するステップ及び第2後硬化するステップの順に行われる。
【0046】
具体的に、2)非活性ガス環境内で第1後硬化するステップは、3Dプリント出力物にUVを照射し、硬化を促進させて出力物の変形を防止し、強度を向上させて外力による損傷を防止することができる。
【0047】
非活性ガス環境内で硬化工程を行うと、3Dプリント出力物の硬化速度が向上するだけでなく、強度も向上し、より高い水準の衝撃によっても容易に変形が発生しなくなる。
【0048】
すなわち、UVを単に照射して硬化工程を行うときより、非活性ガス環境内でUVを照射して硬化工程を行うと、非活性ガスによって、硬化速度が促進され、出力物の強度を向上させることができる。また、非活性ガス環境内で後硬化工程を行うと、透明な出力物の場合、透明性がさらに向上することになる。
【0049】
DLP方式またはSLA方式の3Dプリンターを用いて出力物を製造し、このとき、染料を含まない光硬化性高分子樹脂を用いると、透明な出力物が得られる。
【0050】
前述のように、DLP方式またはSLA方式の3Dプリンターを用いて出力物を製造すると、前記出力物内に未反応性高分子樹脂が残存することになる。前記未反応性高分子樹脂は、追加的な硬化が必要な状態で、後硬化工程を行うことになる。ただ、前記後硬化工程を行う過程で、出力物が大気中に露出すると、出力物内の光開始剤が酸素と接触してラジカルを発生させることになり、前記発生されたラジカル消去によって光硬化挙動が抑制される。
【0051】
すなわち、これにより出力物が酸素と接触することを防止する必要があり、このために、本発明で第1後硬化工程を行うとき、非活性ガス環境内でUVを照射して後硬化して、酸素との接触を遮断する。
【0052】
前記透明な出力物は、後硬化工程まで行うと、僅かに黄色をたたえており、完全透明な出力物への製造は難しいと言える。
【0053】
特に、透明矯正装置のように、歯牙にはめて用いる矯正装置の場合、見掛け上大きい影響を及ぼさないために透明性に優れていなければならない。
【0054】
前記透明矯正装置を、3Dプリントを用いて個人用オーダーメイドの出力物に製造し、矯正装置に用いるとき、透明性に優れておらず、黄色味が少しでも現れる場合には、ややもすると歯牙の状態が不良であると誤認される余地があって、ユーザーの美観に否定的な影響を及ぼすことがある。
【0055】
このような問題を防止するためには、3Dプリント出力物自体が完全透明な程度を示さなければならない。
【0056】
従来のDLP方式またはSLA方式のプリンターを用いて出力物を製造し、これを後硬化工程を通じて製品を製造すると、光硬化性高分子樹脂の種類によって一部の相違が生じることもあるが、通常、黄色味をたたえており、完全透明な矯正装置への提供は不可能である。
【0057】
一方、本発明の場合、後硬化工程上、非活性環境でUVを照射すると、UVの照射によって、硬化速度が向上し、強度が向上するだけでなく、出力物の透明性が向上する。
【0058】
すなわち、本発明の後硬化工程を用いると、完全に透明な透明矯正装置への提供を可能にする。
【0059】
これは、非活性ガス環境内でUVを用いて後硬化工程を用いることになるとき、硬化速度が向上することによって最終製品の生産速度が向上し、強度に優れて外力による変形が発生しやすくならない。
【0060】
前記2)ステップの非活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン及びこれらの混合からなる群より選択されるものであり、好ましくは窒素であるが、前記例示に限定されず、非活性ガスとして出力物の酸素接触を遮断することができるガスは制限なくいずれも使用可能である。
【0061】
本発明は、前記第1後硬化工程以後、第2後硬化工程を行うことを特徴とする。
【0062】
具体的に、前記第2後硬化工程は、第1後硬化工程が行われた出力物をオイル類に完全に浸漬させた後、UVを照射して後硬化することである。
【0063】
前記第2後硬化工程を行わずに、第1後硬化工程を常温で、非活性ガス環境内で追加的に行っても、出力物の形状記憶特性は発現されない。
【0064】
後述するように、本発明の光硬化性組成物を用いて出力物を製造し、これを前記のステップに従って後硬化工程を行うと、60℃以上の熱を供給するとき、出力物が初期出力された形状に復元される形状記憶特性を示すことを特徴とする。
【0065】
ただ、このような形状記憶特性は、本発明の後硬化工程により発現されることであり、第2後硬化工程を行わずに、第1後硬化工程のみを行うか、第2後硬化工程を先行し、第1後硬化工程を行う方式に手順が変更される場合にも、出力物の特性が発現されない。
【0066】
本発明の第2後硬化工程は、オイル類に第1後硬化工程が行われた出力物を完全に浸漬させ、UVを照射して後硬化工程を行うことである。
【0067】
前記のように、オイル類に出力物を浸漬させてUVを照射すると、後硬化工程により、高い硬化密度及び出力物に十分な熱エネルギーを供給することができる。
【0068】
すなわち、オイル類に浸漬させるによって酸素を遮断すると共に、オイル類がUVによる熱エネルギーを吸収し、これを出力物に均一に伝達することができる。前記特性により、第2後硬化工程上で出力物に均一な温度で伝達され、出力物の流動性の特性を示すことができる。
【0069】
前記第1後硬化工程及び第2後硬化工程は手順が重要であるので、手順を変更して行うと、オイル類によって出力物の表面に気泡が発生して硬化欠点が発生するという問題がある。前記の問題を防止するためには、本発明の後硬化工程の順に行うことが好ましい。
【0070】
前記3)ステップのオイル類は、グリセロール(Glycerol)、食用オイル、キャスターオイル、非反応性シリコーンオイル及びこれらの混合からなる群より選択されるものであり、好ましくはグリセロールであるが、前記例示に限定されず、出力物と非反応性を示し、酸素との接触を遮断し、熱を吸収して出力物に均一に伝達することができるオイル類は制限なくいずれも使用可能である。
【0071】
前記後硬化工程以後、熱湯処理工程を行うことになる。前記4)ステップは、80乃至100℃の熱水で処理することで、熱水処理によって、出力物内に残存する未反応単量体を除去することができる。
【0072】
本発明の他の一実施例に係る透明歯牙矯正装置は、前記3Dプリント出力物の後硬化方法によって製造されるものである。
【0073】
前記透明歯牙矯正装置は、患者の歯牙にはめられた状態で、所望とする歯牙の位置に矯正するために用いられるものである。
【0074】
前記本発明の透明歯牙矯正装置は、前述した後硬化方法によって製造され、透明性に優れ、物理的特性に優れており、熱により最初出力された形状に復元される形状記憶特性を示すことができる。
【0075】
前記透明歯牙矯正装置は、後述する光硬化性組成物を用いて3Dプリンターで出力され、これを後硬化工程により製造するものである。
【0076】
本発明の一実施例に係る3Dプリンター用光硬化性組成物は、光硬化性オリゴマーと、反応性モノマーと、光開始剤と、ナノクレイと、を含み、前記ナノクレイは、反応性モノマーと電気的引力の相互作用によって、3Dプリンティングによって出力された出力物の機械的物性を強化することができる。
【0077】
前記ナノクレイは、セピオライト(Sepiolite)であることを特徴とするが、前記ナノクレイはセピオライトに限定されず、3Dプリンター用光硬化型組成物に含まれ、機械的物性を強化することができるナノクレイは制限なくいずれも使用可能である。
【0078】
3Dプリンティング材料が有する機械的強度の限界を克服するために、高分子複合技術を適用することができる。ただ、前記複合材料を3Dプリンティングに適用するにはいくつかの問題がある。最も重要な問題は、複合材料に用いられる添加剤の大きさである。前記添加剤の大きさが大きくなるにつれて、プリンティングギャップ(gap)の大きさも増加し、結果的に印刷解像度が低くなるという問題が発生し得る。
【0079】
前記問題を防止するために、ナノ大きさの物質を添加剤として用いることができる。従来のナノ大きさの材料として知られたグラフェン、炭素ナノチューブ(CNT)などの場合、価格競争力が問題になり得る。一方、ナノクレイは合理的な価格を有しており、産業適用により適している。ナノクレイのうち、セピオライト(Sepiolite)は、Mg8Si12O30(OH)4・12H2Oの半分単位セル公式を有する水化したケイ酸マグネシウムである。
【0080】
前記セピオライトは、
図2のような断面の化学構造及び
図3のような格子(lattice)結晶の形状をなしている。より具体的に、繊維方向に平行な複数のブロックとトンネルとで構成された針状または繊維状の形状である。各構造ブロックには、二つの四面体シリカ(SiO
4)シートが挟まれた中央八面体マグネシウム(MgOH
6)シートが含まれている。単一セピオライト繊維は、長さが0.2乃至4μm、幅が10乃至30nm、厚さが5乃至10nmである。
【0081】
セピオライトをナノクレイで含むと、光硬化型組成物内で3Dプリンティングが可能な粘度を維持し、出力された出力物に対する高い機械的強度を示すことができる。
【0082】
すなわち、ナノクレイを多量含むとき、光硬化型組成物の粘度が大きくなり、粘度が大きくなると、前記組成物が3Dプリンターを通じて出力物への製造が不可能になるという問題がある。ナノクレイを一定量以上で含むとき、出力物の機械的強度が増加することがあるが、3Dプリンティングのためには、高い粘度の組成物は利用不可能である問題によって、光硬化型組成物の粘度も一定の範囲内で含まれることが好ましい。
【0083】
これにより、前記光硬化型組成物は、UVレジン100重量部に対して、ナノクレイ0.5乃至5重量部及び光開始剤1重量部で含んでもよい。前記UVレジンは、光硬化性オリゴマー及び反応性オリゴマーを含むものである。前記範囲内で混合して使用するとき、3Dプリンターを用いて出力物に製造可能であるだけでなく、製造された出力物が優れた機械的強度を示すことができる。より具体的に、前記3Dプリンターは、DLP方式の3Dプリンターである。
【0084】
前記光硬化性オリゴマーは、下記の化学式1で表される化合物であってもよい。
【0085】
【化1】
【化2】
【化3】
ここで、
nは、1乃至1,000の整数であり、
Aは、前記化学式2または化学式3で表される化合物であり、
*は、結合される部分を意味し、
【0086】
R1乃至R6は互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、置換または非置換された炭素数1乃至30のアルキル基、置換または非置換された炭素数1乃至20個のシクロアルキル基、置換または非置換された炭素数2乃至30のアルケニル基、置換または非置換された炭素数2乃至24のアルキニル基、置換または非置換された炭素数7乃至30のアラルキル基、置換または非置換された炭素数6乃至30のアリール基、置換または非置換された炭素数5乃至60のヘテロアリール基、置換または非置換された炭素数6乃至30のヘテロアリールアルキル基、置換または非置換された炭素数1乃至30のアルコキシ基、置換または非置換された炭素数1乃至30のアルキルアミノ基、置換または非置換された炭素数6乃至30のアリールアミノ基、置換または非置換された炭素数6乃至30のアラルキルアミノ基、置換または非置換された炭素数2乃至24のヘテロアリールアミノ基、置換または非置換された炭素数1乃至30のアルキルシリル基、置換または非置換された炭素数6乃至30のアリールシリル基及び置換または非置換された炭素数6乃至30のアリールオキシ基からなる群より選択され、
【0087】
前記置換されたアルキレン基、置換されたアリレン基、置換されたヘテロアリレン基、置換されたシクロアルキレン基、置換されたアルキル基、置換されたシクロアルキル基、置換されたアルケニル基、置換されたアルキニル基、置換されたアラルキル基、置換されたアリール基、置換されたヘテロアリール基、置換されたヘテロアリールアルキル基、置換されたアルコキシ基、置換されたアルキルアミノ基、置換されたアリールアミノ基、置換されたアラルキルアミノ基、置換されたヘテロアリールアミノ基、置換されたアルキルシリル基、置換されたアリールシリル基及び置換されたアリールオキシ基は、水素、重水素、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、炭素数1乃至30のアルキル基、炭素数1乃至20個のシクロアルキル基、炭素数2乃至30のアルケニル基、炭素数2乃至24のアルキニル基、炭素数7乃至30のアラルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、核原子数5乃至60のヘテロアリール基、炭素数6乃至30のヘテロアリールアルキル基、炭素数1乃至30のアルコキシ基、炭素数1乃至30のアルキルアミノ基、炭素数6乃至30のアリールアミノ基、炭素数6乃至30のアラルキルアミノ基、炭素数2乃至24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1乃至30のアルキルシリル基、炭素数6乃至30のアリールシリル基及び炭素数6乃至30のアリールオキシ基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換され、複数個の置換基で置換される場合、これらは互いに同一であるか異なる。
【0088】
具体的に、前記R1乃至R6は互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、ヒドロキシ基及び炭素数1乃至30のアルキル基からなる群より選択されてもよい。
【0089】
より具体的に、前記光硬化性オリゴマーは、前記化学式1で表される化合物であり、前記Aが化学式2で選択される化合物及び前記Aが化学式3で選択される化合物をいずれも含む。
【0090】
より具体的に、UV硬化のために、光硬化作用基が結合された高分子化合物であって、炭素間の二重結合構造を含んでおり、前記炭素-炭素二重結合によって光硬化作用を示すことができる。
【0091】
また、前記光硬化性オリゴマーは、メインチェーンとしてポーリウレタン構造を含み、前記ポーリウレタン構造に光硬化作用基が結合され、化合物内にソフト作用基及びハード作用基を含むことを特徴とする。
【0092】
前記光硬化性組成物内に含まれたソフト作用基によって、出力物はフレキシブルな性質を示し、また、ハード作用基によって、熱抵抗性(Heat resistant)を示すことができる。
【0093】
すなわち、光硬化性オリゴマーに光硬化作用基を結合させ、ソフト作用基及びハード作用基を用いることによって、常温で柔らかい性質を有する炭素骨格を用いて、フレキシブルな効果を示すことができるだけでなく、常温でハードな性質を有する炭素骨格を用いて、熱に強い性質を共に示すことができる。
【0094】
前記光硬化性オリゴマーは、ハードな性質を有する炭素骨格を含むことによって、熱的物性、強度、弾性率及び引張伸びのような物理的特性に優れており、熱により元の形状に復元することが可能な3Dプリンティング出力物を製造することができる。
【0095】
また、光硬化性オリゴマーは、ソフトな性質を有する炭素骨格を含むことによって、熱が提供された後、外力によって形状の変形が可能である。
【0096】
一般的に、3Dプリンター用組成物は、出力物の物理的な特性を高めるため、ハードな性質を有する炭素骨格のみを含み、これは出力物の物理的特性を高めることができるが、逆に、使用によって形状が変形する場合、形状復元が不可能であり、複数回使用の不可能な問題がある。
【0097】
本発明における3Dプリンター用組成物は、ハードな性質を有する炭素骨格及びソフトな性質を有する炭素骨格を含むことによって、熱的物性、強度、弾性率及び引張伸びのような物理的特性に優れているだけでなく、ソフト作用基のフレキシブルな性質を共に用いることができ、熱が提供された状態で外力によって形状を変形させると、変形された形状に固定することができ、以後に、再び熱が提供されると、元の形状に復元されることを可能にする。
【0098】
後述するように、本発明の3Dプリンター用光硬化型組成物は、透明歯牙矯正装置に用いられてもよく、前記透明歯牙矯正装置は、患者の歯牙にはめられた状態で、所望とする歯牙の位置に矯正するために用いられるものである。これにより3Dプリンターで出力された透明歯牙矯正装置は、現在患者の歯牙位置での抵抗に対して破損されない物理的特性を示さなければならず、歯牙を矯正しようとする位置に移動できる力を提供しなければならない。本発明の透明歯牙矯正装置の矯正効果及び矯正原理については後述する。ただ、前記本発明の3Dプリンター用光硬化型組成物は、光硬化性オリゴマーにソフトな作用基及びハードな作用基をいずれも含んでいて、物理的な特性に優れているだけでなく、熱が加えられた状態での形状変形が可能であるだけでなく、熱により元の形状への復元も可能な特性により、優れた矯正力を有する透明歯牙矯正装置に製造可能である。
【0099】
また、前述のように前記光硬化型組成物は、ナノクレイをさらに含んでいて、物理的特性が補完され、高い矯正力を示すことができる。
【0100】
前記反応性モノマーは、アクリレート系モノマーである。
【0101】
より具体的に、前記アクリレート系モノマーは、下記の化学式4で表される化合物、下記の化学式5で表される化合物及びこれらの混合からなる群より選択されてもよい。
【0102】
【0103】
本発明の他の一実施例に係る透明歯牙矯正装置は、前記3Dプリンター用光硬化型組成物を含んでもよい。
【0104】
本発明の透明矯正装置は、光硬化型組成物を用いて3Dプリンティングで出力されたものであって、既存の透明歯牙矯正装置は異なり、歯牙の屈曲面まで精密に再現することが可能であり、歯牙との密着力が高いため、矯正効果に優れている。
【0105】
本発明の透明歯牙矯正装置は、患者の歯牙構造に対するデータを取得し、これを出力して製造するものであって、歯牙構造との偏差が50乃至80μmとほとんど差がなく製造可能であるのに対し、従来の透明歯牙矯正装置は、患者の歯牙との偏差が200乃至300μmと密着することができず矯正力が劣る。
【0106】
本発明の透明歯牙矯正装置は、40℃以上に加熱した後、患者の歯牙にはめて歯牙と密着された形態で形状が固定され、前記歯牙に密着された透明歯牙矯正装置は、体温によって元の形状に復元され、歯牙を矯正するものである。
【0107】
前記本発明の透明歯牙矯正装置は、加熱された水の中に入れてから取り出すと、形状の変形が可能である。熱を加えると一定の時間柔軟性が現われ、形状の変形が可能になるが、このような性質を用いて透明歯牙矯正装置を患者の歯牙にはめる前に60乃至100℃の水に浸し、取り出して歯牙にはめた後、手で簡単に押すと、歯牙に密着する形態に形状が変形する。
【0108】
以後、口腔内の体温によって透明歯牙矯正装置に熱が提供されると、元の出力された形態への復元が起きる。
【0109】
すなわち、60乃至100℃の水に浸した後、歯牙にはめて、形態を歯牙と同一の形態に変形させると、本発明の透明歯牙矯正装置は、現在患者の歯牙構造に合わせて形状が変形するようになり、以後、体温により熱が提供されると、元の出力された形態に徐々に復元されるようになり、このとき、透明歯牙矯正装置が元の形状に復元しようとする力によって、歯牙を矯正しようとする位置に移動させることになる。
【0110】
すなわち、従来の歯牙矯正装置は、患者の歯牙構造から取得された情報から、段階的に矯正しようとする歯牙の位置に合わせて透明歯牙矯正装置に製造した後、歯牙にはめて、硬質素材の性質によって歯牙を移動させることになる。前述のように、従来の透明歯牙矯正装置は、素材の性質によって歯牙を移動させるもので、歯牙内の均一な力が提供できず、歯牙矯正効果が劣る。
【0111】
一方、本発明の透明歯牙矯正装置は、前述のように、透明歯牙矯正装置が、最初使用時に歯牙の構造と同一の状態に変形された状態であるが、体温により熱が提供されると、透明歯牙矯正装置が元の形状に復元され、歯牙に力が伝達されるもので、歯牙に伝達される力が矯正装置の素材による力ではなく、形状の復元による力の発生及び伝達である点で、歯牙全体に均一な力が提供され、歯牙が全体に移動できるようになる。
【0112】
製造例1
下記の化学式4及び化学式5で表されるモノマーを1:1の重量の割合で混合し、セピオライトを添加した後、チップ超音波処理器を用いて、750w出力で1分間粉砕及び分散した。以後、60℃のオーブンで12時間加熱して流動性が確保された光硬化性オリゴマーを混合した。前記光硬化性オリゴマーは、下記の化学式1で表される化合物であり、Aが化学式2で選択される化合物及びAが化学式3で選択される化合物をいずれも含み、化学式2で選択される化合物及び化学式3で選択される化合物を1:1.5の重量の割合で含む。以後、下記の化学式6で表される光開始剤を混合し、ペーストミキサーを用いて混合及び脱泡した。
【0113】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
ここで、
nは、1乃至1,000の整数であり、
*は、結合される部分を意味し、
R
1乃至R
6は、メチル基である。
【0114】
前記光硬化型組成物に対する重量の割合は、UVレジン100重量部に対して光開始剤1重量部及びセピオライト2重量部で含む。ここで、UVレジンは、光硬化性オリゴマー及びモノマーを含むものであり、化学式1のAが化学式2で選択される化合物、化学式3で選択される化合物、化学式4で表されるモノマー及び化学式5で表されるモノマーを1:1.5:1:1の重量割合で含むものである。
【0115】
実施例1
透明歯牙矯正装置の製造
前記光硬化性組成物をDLP方式の3Dプリンターに入れ、透明矯正装置を出力した。製造された透明矯正装置は後硬化工程を行った。具体的に、残存するレジンの除去及び突出面の除去のために、脱水器を用いて洗浄する過程を同様に行った。
【0116】
以後、ボックス内に矯正装置を入れ、窒素雰囲気下で酸素を完全に遮断した後、25分間UV照射した。矯正装置を、グリセロールを入れた浴槽内に浸漬させ、25分間UV照射して2次後硬化工程を行った。2次後硬化した矯正装置は80乃至100℃の熱湯で処理して後硬化工程を完了した。
【0117】
比較例1
DLP方式の3Dプリンターから出力された透明矯正装置は、脱水器を用いて洗浄し、洗浄した透明矯正装置を50分間常温(20乃至25℃)で露出したことを除いては、実施例1と同様に製造した。
【0118】
比較例2
DLP方式の3Dプリンターから出力された透明矯正装置は、脱水器を用いて洗浄し、洗浄した透明矯正装置を25分間窒素環境下で、1次でUV照射し、以後、再び25分間同一の条件下でUV照射したことを除いては、実施例1と同様に製造した。
比較例3
【0119】
DLP方式の3Dプリンターから出力された透明矯正装置は、脱水器を用いて洗浄し、洗浄した透明矯正装置を、グリセロールを入れた浴槽内に浸漬させて25分間UV照射し、以後、窒素環境下で25分間UV照射したことを除いては、実施例1と同様に製造した。
【0120】
実験例1
透明性の確認
前記実施例1、比較例1及び比較例2で製造された透明歯牙矯正装置に対して、口腔内で使用環境と類似の条件を作るため、37℃の水を入れた水槽内に24時間浸漬させた後、透明な程度を目視で確認した。
【0121】
その結果は、
図1の通りである。
図1の(a)は、比較例1の透明歯牙矯正装置であり、(b)は、実施例1の透明歯牙矯正装置であり、(c)は、比較例2の透明歯牙矯正装置である。
【0122】
図1のように(b)が顕著に透明に現われることを確認できる。
【0123】
具体的に、空気に露出した大気での光硬化挙動は、酸素のラジカル消去によって抑制される。
図1のように大気環境で硬化した矯正装置は、24時間浸漬された後、透明度が低下することを確認できる。前記結果は、相対的に表面が低い架橋密度を形成して水気に敏感に反応するによって透明性が低下するという問題が発生する。
【0124】
また、比較例2の場合、グリセロールに浸漬せず、2回の後硬化工程を行ったものであり、これはグリセロールを用いることによって、グリセロールがUVの照射により熱エネルギーを吸収し、これを透明歯牙矯正装置内に均一に伝達することによって、高い硬化密度を示すことができ、透明性が向上する結果を示した。
【0125】
実験例2
表面気泡発生の有無
前記の比較例3のように、本発明の後硬化方法と手順を異ならせて第2後硬化工程を第1後硬化工程に先立って実施する場合に対する実験結果であり、
図2を通じて確認することができる。
【0126】
図2は、比較例3の透明歯牙矯正装置に関するものであり、窒素環境下で、硬化を先に行わずに、グリセロールに浸漬させた後に硬化工程を行うと、表面に気泡が発生することを確認できる。
【0127】
すなわち、窒素ガス(N
2)は、気体状態で物質の表面に均一に作用するが、グリセロールのようなオイル類は高粘度の流体であって、硬化物表面に濡れ性が均一ではなく、浸漬過程で気泡が発生する。
図2のように、浸漬過程で発生する気泡は、最終硬化した材料の表面に跡として残っており、このような跡は、製品欠陥に該当する。一方、実施例1の透明歯牙矯正装置は、1次で窒素雰囲気で硬化した後、グリセロール内に浸漬され、2次硬化を行うことによって気泡が発生しないことを確認した。
【0128】
実験例3
復元力評価
実施例1の透明歯牙矯正装置に対して、二重カンチレバー固定装置のAnton Paar、MCR 702のDMA(dynamic mechanical analysis、動的機械分析)モードを用いて、温度範囲内での矯正装置の損失/貯蔵モジュラスの変化を確認した。
【0129】
【0130】
60℃の付近で矯正装置のタンジェント・デルタ値が最高点を示し、これは矯正装置内に発生されている内部応力によって、元の状態に戻る形状記憶特性を発現できることを意味する。
【0131】
すなわち、本発明の透明歯牙矯正装置は、前記本発明の光硬化組成物を用いて出力され、以後、硬化工程により製造される。前記製造方法によって製造された歯牙矯正装置は、60℃以上で初期出力された形状に復元される形状記憶特性を有している。このような特性は、後硬化過程中で、光源で熱が発生して試料に伝達され、加熱された矯正装置は出力初期に硬化した状態に戻る特性が発生すると言える。
【0132】
2次硬化工程でオイル類であるグリセロールを用いる場合、酸素を遮断すると共にグリセロールが熱エネルギーを吸収して透明矯正装置に熱エネルギーを均一に伝達する。前記のような工程により製造された矯正装置は、熱により形状記憶特性を示すことができ、このような特性は、透明歯牙矯正装置の矯正力を高めるのに非常に優れた効果を発揮することができる。
【0133】
実験例4
未反応有機物の検出有無
前記実施例1の透明歯牙矯正装置は、80乃至100℃の熱水で5分間処理して洗浄することによって未反応単量体を除去するものであり、気体クロマトグラフィー・タンデム質量分析機を用いて、ISO 20798-2に基づいて実験を行った。
【0134】
実験結果は、
図4及び5の通りである。用いられた試料の検量線は、
図4の通りであり、熱湯処理された矯正装置のMMA(メチルメタクリレート)溶出は発見されなかった。
【0135】
以上より、本発明の好ましい実施例について詳細に説明しているが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も、本発明の権利範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、3Dプリント出力物の後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置に関するものであって、具体的に3Dプリントを通じて出力された出力物を後硬化して製品の品質を向上させることができる後硬化方法及びその方法によって製造された透明歯牙矯正装置に関するものである。
【国際調査報告】