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特表2024-515125繊維強化プラスチックスリーブを適用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチックスリーブを適用する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240328BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K15/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565238
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2022025430
(87)【国際公開番号】W WO2022225990
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,781
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508135080
【氏名又は名称】アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】フンク,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ユング,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ,マーティン
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS44
5H615TT26
5H615TT31
5H615TT32
(57)【要約】
部品の組立体を囲む繊維強化プラスチック(FRP)スリーブに予め張力をかける方法およびシステムが開示される。本方法は、表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め張力をかけることの適用を含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立体を囲む繊維強化プラスチック(FRP)スリーブに予め張力をかける方法であって、
前記組立体を前記FRPスリーブ内に配置するステップであって、前記組立体は少なくとも2つの部品を有する、ステップと、
成形化合物を前記FRPスリーブ内の少なくとも1つの部分内へ導入して、前記組立体の前記少なくとも2つの部品のうちの1つを前記FRPスリーブの内面に向かって付勢するステップであって、前記成形化合物は所望の第1の圧力(P)、第1の温度(T)、および第1の質量流量(m)で導入される、ステップと、
前記第1の圧力を維持しながら前記成形化合物を硬化させることによって前記FRPスリーブに予め張力をかけるステップとを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記組立体は永久磁石(PM)回転子であり、前記少なくとも2つの部品は、回転子に取り付けられ、かつ前記回転子の回転軸線と同心円状の表面磁石である、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記FRPスリーブ内の前記少なくとも1つの部分は、前記成形化合物を受容する第1の空洞であり、前記第1の空洞は、周方向にあり、前記PM回転子と前記表面磁石の内面との間に位置する、方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、
前記FRPスリーブ内の別の部分は、周方向にあり、かつ前記表面磁石と前記FRPスリーブとの間に位置する第2の空洞であり、
前記成形化合物を前記第2の空洞内へ導入して、前記組立体の前記少なくとも2つの部品のうちの1つを前記FRPスリーブの内面に向かって付勢するステップであって、前記成形化合物は、所望の第2の圧力(P)、第2の温度(T)、および第2の質量流量(m)で導入される、ステップと、
前記第2の圧力を維持しながら前記成形化合物を硬化させるステップとを含む、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記FRPスリーブ内の前記少なくとも1つの部分は、前記成形化合物を受容する第1の空洞であり、前記第1の空洞は周方向にあり、前記表面磁石の外面と前記FRPスリーブの内面との間に位置する、方法。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の方法であって、前記予張力は、前記PM回転子の回転速度に基づいて前記表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である、方法。
【請求項7】
請求項1から3、5および6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記組立体および前記FRPスリーブを固定具に配置するステップであって、前記固定具は、前記少なくとも1つの部分への導管を設けるように構成され、前記成形化合物の導入前に前記スリーブと前記固定具との間に周方向の間隙を設けるように構成される、ステップと、
前記成形化合物の硬化後に前記固定具から前記組立体を取り外すステップと、
前記少なくとも1つの部分からスプルーを外すステップとを含む、方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法であって、
前記組立体および前記FRPスリーブを固定具に配置するステップであって、前記固定具は、前記第1の空洞への第1の導管および前記第2の空洞への第2の導管を設けるように構成され、前記成形化合物の導入前に前記FRPスリーブと前記固定具との間の周方向の間隙を備える、ステップと、
前記成形化合物の硬化後に前記固定具から前記組立体を取り外すステップと、
第1のスプルーを前記第1の空洞から外すステップと、
第2のスプルーを前記第2の空洞から外すステップと、含み、
前記予張力は、前記PM回転子の回転速度に基づいて前記表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、前記成形化合物は、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックからなる群から選択される、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、前記成形化合物は、非強化成形化合物、短繊維強化成形化合物、長繊維強化成形化合物、およびこれらの組合せからなる群から選択される、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記成形化合物は、射出成形および樹脂射出からなる群から選択される工程によって導入される、方法。
【請求項12】
請求項2から11のいずれか一項に記載の方法であって、トルクが、回転子軸と少なくとも1つの表面磁石または成形化合物との間の、力嵌合、正の接続、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって、前記表面磁石から回転子の軸へ伝達される、方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法であって、前記FRPスリーブは、0.1mmから2mmの間の肉厚を有する、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法であって、前記FRPスリーブは、50%から75%の繊維体積含有率を有する、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法であって、前記FRPスリーブは、前記スリーブの長手方向軸線に対して80度から90度の角度で配置される連続繊維を備えたマトリクス材料を含む、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法であって、前記回転子軸は金属材料を含む、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法であって、前記成形化合物は、前記組立体の端面、前記表面磁石の上方、前記表面磁石の下方、および前記FRPスリーブの外側面上からなる群から選択される前記組立体の追加部分に配置される、方法。
【請求項18】
永久磁石(PM)回転子と、
前記PM回転子上の少なくとも1つの表面磁石と、
繊維強化プラスチック(FRP)スリーブであって、前記PM回転子および前記少なくとも1つの表面磁石は前記FRPスリーブ内に配置される、FRPスリーブと、
成形化合物と、を備え、
前記成形化合物は前記FRPスリーブにおいて予張力を誘起する、永久磁石回転子組立体。
【請求項19】
請求項18に記載の永久磁石回転子組立体であって、前記予張力は、前記PM回転子の回転速度に基づいて前記表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である、永久磁石回転子組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/178,781号の優先権を主張する。上述の出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、繊維強化プラスチック(FRP:fiber-reinforced plastic)スリーブを適用する方法に関する。特に、本方法は、永久磁石回転子などの部品の組立体にFRPスリーブを予張力下で適用することを含む。
【背景技術】
【0003】
表面磁石を備えた永久磁石(PM:permanent magnet)回転子は、高速機械の回転子の分野で確立された。表面磁石は希土類永久磁石であり、通常、接着によって回転子軸に適用される。このような回転子の速度範囲は、毎分10,000回転を超える高速になる場合がある。
【0004】
高速PM回転子の機能を確実にするために、繊維強化プラスチック(FRP)スリーブは、とりわけ、磁石に径方向の圧縮力を加えるために使用され、磁石が高速で外れるのを抑制する傾向がある。スリーブの径方向圧縮力または予張力は、スリーブを押すか、または表面磁石に予応力下で繊維を巻くことによって達成される。ほとんどの用途では、このようなFRPスリーブは材料に合わせて設計される。すなわち、連続繊維は周方向にあり、その結果、回転子の動作中に生じる接線方向応力がスリーブによって効果的に吸収される。FRPスリーブの肉厚は、スリーブが表面磁石に押し付けられたときに、作用する接線方向応力および軸方向に作用する圧縮力に依存する。接線方向の繊維配向により、FRPスリーブは、低い軸方向の圧縮強度を有する場合があり、これは、薄肉のスリーブを押すのが困難であることを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、組立体を囲む繊維強化プラスチック(FRP)スリーブに予め張力をかける方法に関する。本方法は、組立体をFRPスリーブ内に配置するステップであって、組立体は少なくとも2つの部品を有する、ステップと、成形化合物をFRPスリーブ内の少なくとも1つの部分内へ導入して、組立体の少なくとも2つの部品のうちの1つをFRPスリーブの内面に向かって付勢するステップであって、成形化合物は所望の第1の圧力(P)、第1の温度(T)、および第1の質量流量(m)で導入する、ステップと、第1の圧力を維持しながら成形化合物を硬化させることによってFRPスリーブに予め張力をかけるステップとを含む。
【0006】
ある実施形態では、組立体は永久磁石(PM)回転子であり、少なくとも2つの部品は、回転子に取り付けられ、かつ回転子の回転軸線と同心円状の表面磁石である。
【0007】
ある実施形態では、FRPスリーブ内の部分は、成形化合物を受容する第1の空洞であり、第1の空洞は、周方向にあり、PM回転子と表面磁石の内面との間に位置する。
【0008】
いくつかの実施形態では、FRPスリーブ内の別の部分は、周方向にあり、かつ表面磁石とFRPスリーブとの間に位置する第2の空洞であり、本方法は、成形化合物を第2の空洞内へ導入して、組立体の少なくとも2つの部品のうちの1つをFRPスリーブの内面に向かって付勢するステップであって、成形化合物は、所望の第2の圧力(P)、第2の温度(T)、および第2の質量流量(m)で導入される、ステップと、第2の圧力を維持しながら成形化合物を硬化させるステップとを含む。
【0009】
他の実施形態では、FRPスリーブ内の部分は、成形化合物を受容する第1の空洞であり、第1の空洞は周方向にあり、表面磁石の外面とFRPスリーブの内面との間に位置する。
【0010】
ある実施形態では、予張力は、PM回転子の回転速度に基づいて表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、組立体およびFRPスリーブを固定具に配置するステップであって、固定具は、少なくとも1つの部分への導管を設けるように構成され、成形化合物の導入前にスリーブと固定具との間に周方向の間隙を設けるように構成される、ステップと、成形化合物の硬化後に固定具から組立体を取り外すステップと、少なくとも1つの部分からスプルーを外すステップとを含む。
【0012】
ある実施形態では、本方法は、組立体およびFRPスリーブを固定具に配置するステップであって、固定具は、第1の空洞への第1の導管および第2の空洞への第2の導管を設けるように構成され、成形化合物の導入前にFRPスリーブと固定具との間の周方向の間隙を備える、ステップと、成形化合物の硬化後に固定具から組立体を取り外すステップと、第1のスプルーを第1の空洞から外すステップと、第2のスプルーを第2の空洞から外すステップを含み、予張力は、PM回転子の回転速度に基づいて表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である。
【0013】
さらなる実施形態では、成形化合物は、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックからなる群から選択される。
【0014】
ある実施形態では、成形化合物は、非強化成形化合物、短繊維強化成形化合物、長繊維強化成形化合物、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、成形化合物は、射出成形および樹脂射出からなる群から選択される工程によって導入される。
【0016】
ある実施形態では、トルクが、回転子軸と少なくとも1つの表面磁石または成形化合物との間の、力嵌合(force fit)、正の接続(positive connection)、およびこれらの組合せからなる群から選択される方法によって、表面磁石から回転子の軸へ伝達される。
【0017】
さらなる実施形態では、FRPスリーブは、0.1mmから2mmの間の肉厚を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、FRPスリーブは、50%から75%の繊維体積含有率を有する。
【0019】
ある実施形態では、FRPスリーブは、スリーブの長手方向軸線に対して80度から90度の角度で配置される連続繊維を備えたマトリクス材料を含む。
【0020】
ある実施形態では、回転子軸は金属材料を含む。
【0021】
他の実施形態では、成形化合物は、組立体の端面、表面磁石の上方、表面磁石の下方、およびFRPスリーブの外側面上からなる群から選択される組立体の追加部分に配置される。
【0022】
本発明はさらに、永久磁石回転子組立体に関する。永久磁石回転子組立体は、永久磁石(PM)回転子と、PM回転子上の少なくとも1つの表面磁石と、繊維強化プラスチック(FRP)スリーブと、成形化合物とを含む。PM回転子および少なくとも1つの表面磁石は、FRPスリーブ内に配置され、成形化合物はFRPスリーブに予張力を誘起する。
【0023】
ある実施形態では、予張力は、PM回転子の回転速度に基づいて表面磁石上の回転力に対抗するのに十分である。
【0024】
本発明をさらに理解させるために含まれる添付の図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。本明細書に提示された図面は、本発明の異なる実施形態を例示し、記載とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第1実施形態である。
図1B】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第1実施形態である。
図1C】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第1実施形態である。
図1D】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第1実施形態である。
図1E】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第1実施形態である。
図2A】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第2実施形態である。
図2B】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第2実施形態である。
図2C】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第2実施形態である。
図3A】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第3実施形態である。
図3B】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第3実施形態である。
図3C】表面磁石を有する永久磁石回転子を囲むFRPスリーブに予め応力をかける方法の第3実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示における用語「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は「含んでいる(including)」および「含む(includes)」を意味することができ、または、米国特許法での用語「備えている(comprising)」または「備える(comprises)」に一般に与えられる意味を有することができる。特許請求の範囲で使用されると、用語「から本質的になっている(consisting essentially of)」または「から本質的になる(consists essentially of)」は、米国特許法に属するものとされる意味を有する。本発明の他の態様は、以下の開示に記載されているか、または自明である(そして本発明の境域内にある)。
【0027】
「糸(threads)」、「繊維(fibers)」、および「紡ぎ糸(yarns)」という用語は、以下の記載では、交換可能に使用される。本明細書で使用される、「糸(threads)」、「繊維(fibers)」、および「紡ぎ糸(yarns)」は、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、撚り糸、マルチフィラメント麻屑、加工糸、編組麻屑、被覆糸、複合糸、さらには、当業者には公知である任意の材料の牽切繊維から作られた糸を指すことができる。繊維は、炭素、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維、綿、セラミック、アラミド、ポリエステル、金属、ポリエチレンガラス、および/または、所望の物理的、熱的、化学的、もしくは他の特性を呈する他の材料で作られることができる。
【0028】
「予張力」、「予張力をかける力」、「予応力」、およびその文法上の変化は、繊維強化プラスチックスリーブなどのスリーブによって、スリーブに取り囲まれた対象物に加えられる力を意味し、「圧縮性径方向力」および「求心力」を含むことができる。「圧縮性径方向力」および「求心力」という用語は、交換可能に使用されて、円形の経路で移動する物体に作用し、かつ物体の動きの中心へ向けられる力を意味する。
【0029】
「繊維強化プラスチックスリーブ」および「FRPスリーブ」という用語は、交換可能に使用されて、マトリクス化合物に埋め込まれた連続繊維などの繊維を含む管状構造を意味する。繊維強化プラスチックは、繊維強化ポリマーとしても知られている。スリーブは、本明細書に記載される薄肉スリーブを含む。
【0030】
本発明、その使用により達成される利点および目的のよりよい理解のために、本発明の非限定的な実施形態が添付の図面に図示され、対応する構成要素が同じ参照符号によって識別される添付の記述事項が参照される。
【0031】
本明細書でより詳細に説明されるように、開示された方法は、部品の組立体を囲む繊維強化プラスチックスリーブに予め張力をかけることを含み、このスリーブは部品を所望の位置に維持する。スリーブは、スリーブ内の所定の位置に成形材料を射出することによって予張力がかけられてもよい。成形材料を射出するための位置のいくつかの例には、以下を含むが、これらに限定されない。
(i)組立体の表面部分をスリーブの内面に対して付勢するための、組立体の内側部分とスリーブの内面との間、または
(ii)組立体の部品を一緒に付勢するための、組立体の外面とスリーブの内面との間、または
(iii)組立体の内側部分とスリーブの内面との間、および組立体の外面とスリーブの内面との間の両方。
成形材料は、短繊維強化、長繊維強化、もしくは非強化成形化合物のいずれか1つまたは組合せを含んでもよい。射出成形工程または樹脂射出工程は、成形材料を導入するために使用できるが、任意の知られている方法も考えられる。
【0032】
使用されてもよい成形材料の例には、熱可塑性化合物、熱硬化性化合物、あるいは所望の熱的、化学的、および/または機械的特性を有する他の化合物を含む。適切な熱可塑性化合物の例には、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフタルアミド(PPA)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。適切な熱硬化性化合物の例には、デュロプラスチック化合物、エポキシ(EP)、シアン酸エステル(CE)、ビスマレイミド、ビニルエステルを含む。
【0033】
予め張力がかけられたスリーブは、組立体の部品を所望の位置に保つために力を加えることができる。スリーブは、マトリクス材料に埋め込まれた連続繊維で構成できる。マトリクス材料は、プラスチック材料を含んでもよく、これは、スリーブのプラスチック材料、および成形品のプラスチック材料ならびに繊維とは異なる場合があるが、熱硬化性もしくは熱可塑性材料またはそれらの組合せを含むことができる。適切な熱硬化性材料の例には、エポキシ(EP)、シアン酸エステル(CE)、ビスマレイミド、およびビニルエステルを含む。適切な熱可塑性材料の例には、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフタルアミド(PPA)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。連続繊維は、単一繊維、または、例えば、スリーブの長手方向軸線に対して80度から90度の角度で発生する繊維の束であってもよい。連続繊維は、切り刻み繊維または破断伸張炭素繊維などの不連続繊維とは対照的である。スリーブにおける連続繊維は、スリーブの長手方向軸線に対して80度から90度の角度で配置されてもよい。スリーブは、0.1mmから2mmの間の肉厚を有することができる。他の実施形態では、スリーブは、45%~75%の繊維体積含有率を有してもよい。
【0034】
特定の用途では、本開示は、1つまたは複数の表面磁石を有する永久磁石回転子組立体にFRPスリーブを適用する方法を提供する。スリーブは、表面磁石を回転子上の所望の位置に維持するために力を加えるように予め張力がかけられる。スリーブに予め張力をかける力は、射出される成形品の量および圧力によって調整できる。予め張力がかけられたスリーブは、動作中に表面磁石上の回転力を打ち消すのに十分な求心力を加え、表面磁石を回転子上の所望の位置に維持できる。
【0035】
本開示は、表面磁石を有する永久磁石回転子組立体に適用されるような例示的実施形態に基づいて以下により詳細に説明される
【0036】
図1A図1Eは、少なくとも1つの表面磁石112を有する永久磁石回転子100(回転子)を囲むFRPスリーブ110に予め応力をかける本発明の方法の実施のステップを示す。永久磁石回転子は、回転子軸102を含む。回転子および表面磁石は、回転軸線120を中心に同心円状であってもよく、回転軸線はスリーブの長手方向軸線と合致する。
【0037】
図1Aは、FRPスリーブ110が永久磁石回転子100および少なくとも1つの表面磁石112を囲むように配置されてもよい第1の方法ステップを示す。スリーブは、中空で、回転軸線を中心に実質的に同心円状であることができる。スリーブは、プラスチック材料に埋め込まれた繊維で構成できる。典型的には、繊維は連続してもよい。回転子および磁石を備えたFRPスリーブは、回転子および磁石を備えたFRPスリーブを保持するように適応された成形固定具116に配置される。成形固定具116は、FRPスリーブ110の外面136と成形固定具116との間の少なくとも1つの周方向間隙118、および少なくとも1つの周方向導管114を設けるように設計される。導管114は、回転子と表面磁石112の内面134との間に位置する周方向空洞122へのアクセスを行うことができる。
【0038】
図1Bは、矢印130によって示されるように、成形化合物128が圧力(P)および温度(T)下で規定された質量流量(m)によって、導管114を通して成形固定具116内へ導入されることができる第2の方法ステップを示す。成形化合物の流頭126は、成形化合物128が導入されると導管を通って進む。成形化合物128は、熱可塑性、熱硬化性化合物(デュロプラスチック化合物など)または所望の熱的、化学的、および/または機械的特性を有する他の化合物であってもよい。
【0039】
図1Cは、成形化合物128が、導管114、および回転子と表面磁石112との間の充填空洞122を通って進んだ第3の方法ステップを示す。成形化合物の圧力Pにより、表面磁石112を外方に付勢して、空洞122の幅を増加させ、かつ間隙118の幅を低減させることができる。成形化合物の圧力により、表面磁石をFRPスリーブに押し付けることができる。そのように、スリーブは、予め張力がかけられ、表面磁石112に作用する径方向の圧縮力を加えることができる。予め応力がかけられた状態では、成形化合物の硬化は圧力P下で生じることができる。このようにして、予張力は成形化合物の硬化状態内に残ってもよい。「硬化」は、「セッティング」、「冷却」、および導入される成形化合物の化学的、熱的、かつ機械的特徴に応じて使用されてもよい他のそのような用語を含む。成形化合物の「導入」は、任意の知られている手段によって化合物を射出することを含む。
【0040】
図1Dは、永久磁石回転子100が成形固定具116から取り外され、導管114に成形化合物128の突出スプルー124を有する第4の方法ステップを示す。図1Eは、突出スプルーが取り外され、FRPスリーブ110によって予め張力がかけられた表面磁石112を備えた、結果として得られる永久磁石回転子100がさらなる工程ステップに利用可能である第5の方法ステップを示す。
【0041】
図2A図2Cは、少なくとも1つの表面磁石112を有する永久磁石回転子100(回転子)を囲むFRPスリーブ110に予め応力をかける本方法の別の実施のステップを示す。永久磁石回転子は、回転子軸102を有する。回転子および表面磁石は、回転軸線120を中心に同心円状であってもよい。
【0042】
図2Aは、FRPスリーブ110が永久磁石回転子100および少なくとも1つの表面磁石112を囲むように配置される第1の方法ステップを示す。スリーブは、中空で、回転軸線を中心に実質的に同心円状であることができる。スリーブは、プラスチック材料に埋め込まれた繊維で構成できる。典型的には、繊維は連続してもよい。回転子および磁石を備えたFRPスリーブは、回転子および磁石を備えたFRPスリーブを保持するように適応された成形固定具116に配置される。成形固定具116は、FRPスリーブ110と成形固定具116との間の少なくとも1つの周方向間隙118、および少なくとも1つの周方向導管214を設けるように設計される。導管214は、表面磁石112の外面236とスリーブの内面132との間の周方向空洞222へのアクセスを行うことができる。
【0043】
図1Bに関して上述したものと同様に、成形化合物204が、圧力(P)および温度(T)下で規定された質量流量(m)によって、導管214を通して成形固定具116内へ導入されることができる第2の方法ステップが行われてもよい。成形化合物204は、熱可塑性、熱硬化性化合物(デュロプラスチック化合物など)、または所望の熱的、化学的、および/もしくは機械的特性を有する他の化合物であってもよい。
【0044】
図1Cに関して上述したものと同様に、成形化合物204が、導管214を通って進み、かつ表面磁石112の外面236とスリーブ110の内面132との間の空洞222を充填する第3の方法ステップが行われてもよい。成形化合物204の圧力Pは、スリーブ110を外方に付勢し、スリーブを拡張し、間隙118の幅を低減できる。そのように、スリーブの拡張により、スリーブに予め張力をかけ、表面磁石112に作用する径方向の圧縮力を加えることができる。予め応力がかけられた状態では、成形化合物の硬化は圧力P下で生じることができる。このようにして、予張力は成形化合物の硬化状態内に残ってもよい。
【0045】
図2Bは、永久磁石回転子100を成形固定具116から取り外され、導管214に成形化合物204の突出スプルー224を有する第4の方法ステップを示す。図2Cは、突出スプルーが取り外され、FRPスリーブ110によって予め張力がかけられた表面磁石112を備えた、結果として得られる永久磁石回転子100をさらなる工程ステップに利用可能である第5の方法ステップを示す。
【0046】
図3A図3Cは、少なくとも1つの表面磁石112を有する永久磁石回転子100(回転子)を囲むFRPスリーブ110に予め応力をかける本方法の別の実施のステップを示す。永久磁石回転子は、回転子軸102を有する。回転子および表面磁石は、回転軸線120を中心に同心円状であってもよい。
【0047】
図3Aは、FRPスリーブ110が永久磁石回転子100および少なくとも1つの表面磁石112を囲むように配置される第1の方法ステップを示す。スリーブは、中空で、回転軸線を中心に実質的に同心円状であることができる。スリーブは、プラスチック材料に埋め込まれた繊維で構成できる。典型的には、繊維は連続してもよい。回転子および磁石を備えたFRPスリーブは、回転子および磁石を備えたFRPスリーブを保持するように適応された成形固定具116に配置される。成形固定具116は、FRPスリーブ110と成形固定具116との間の少なくとも1つの周方向間隙118、および少なくとも2つの周方向導管302A、302Bを設けるように設計される。導管302Aは、表面磁石112の外面236とスリーブ110の内面132との間の空洞322Aへのアクセスを行うことができる。導管302Bは、表面磁石134の内面と回転子100との間の空洞322Bへのアクセスを行うことができる。
【0048】
図1Bに関して上述したものと同様に、成形化合物304が圧力(P)および温度(T)下で規定された質量流量(m)によって導管302A、302Bを通して成形固定具116内へ導入されることができる第2の方法ステップが行われてもよい。成形化合物304は、熱可塑性、熱硬化性化合物(デュロプラスチック化合物など)、または所望の熱的、化学的、および/もしくは機械的特性を有する他の化合物であってもよい。
【0049】
図1Cに関して上述したものと同様に、成形化合物304が導管302A、302Bを通って進み、表面磁石112の外面236とスリーブ110の内面132との間の空洞322A、および表面磁石112の内面134と回転子100との間の空洞322Bを充填する第3の方法ステップが行われてもよい。成形化合物の圧力Pにより、磁石112およびスリーブ110を外方に付勢し、スリーブを拡張し、間隙118の幅を低減できる。そのように、スリーブの拡張により、予め張力をかけ、表面磁石112に作用する径方向の圧縮力を加えることができる。予め応力がかけられた状態では、成形化合物の硬化は圧力P下で生じることができる。このようにして、予張力は成形化合物の硬化状態内に残存してもよい。
【0050】
図3Bは、永久磁石回転子100が成形固定具116から取り外され、導管302A、302Bに成形化合物304の突出スプルー324A、324Bを有する第4の方法ステップを示す。図3Cは、突出スプルーが取り外され、FRPスリーブ110によって予め張力がかけられた表面磁石112を備えた、結果として得られる永久磁石回転子100がさらなる工程ステップに利用可能である第5の方法ステップを示す。
【0051】
図示の例示的な実施形態に加えて、さらなる有利な構成が企図される。成形化合物は、PM回転子の端面上、および/またはFRPスリーブの外側面上に任意で形成されてもよい。回転子軸は、回転子軸と成形化合物および/もしくは表面磁石との間で正の接続(positive connection)を行うために、複数の溝プロファイルおよび/または羽鍵溝および/または歯部を任意で有してもよい。トルク伝達は、例えば、回転子軸と成形化合物および/または表面磁石との間の力嵌合(force fit)などの非正接続によっても任意で達成できる。力嵌合は、例えば、回転子軸と成形化合物および/または表面磁石との間など、噛合部品間の制御された圧力を維持するように設計され、力またはトルクが接合点を介して伝達されている場合に使用されてもよい。力嵌合は、典型的には、構成要素の組立中に力を加えることによって達成される。あるいは、トルク伝達は、回転子軸と成形化合物および/または表面磁石との間の正接続および非正接続の1つまたは複数の組合せによって任意で達成されてもよい。
【0052】
回転子軸は、金属材料を含むことができる。
【0053】
実施形態のうちのいずれでも、予め張力がかけられたスリーブは、マトリクス材料で含浸させることができる。適切なマトリクス材料の例には、熱可塑性および熱硬化性化合物、例えば、エポキシ(EP)、ビスマレイミド、ポリエステル、ビニルエステル、セラミック、炭素、シアン酸エステル(CE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフタルアミド(PPA)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ならびに他のそのような材料を含む。
【0054】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】