(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】複数の液晶コアを有する多官能性エポキシ化合物及びそれから製造される硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/02 20060101AFI20240328BHJP
C08G 59/28 20060101ALI20240328BHJP
C07D 301/28 20060101ALI20240328BHJP
C07D 301/32 20060101ALI20240328BHJP
C07D 303/28 20060101ALI20240328BHJP
C07D 301/14 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C08G59/02
C08G59/28
C07D301/28
C07D301/32
C07D303/28
C07D301/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565296
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 KR2022005273
(87)【国際公開番号】W WO2022231172
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0054162
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520422072
【氏名又は名称】慶北大学校 産学連携財団
【氏名又は名称原語表記】KYUNGPOOK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、ヒョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チン、ティ エン
(72)【発明者】
【氏名】ク、ギョ ソン
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AD01
4J036BA03
4J036DC03
4J036DC10
4J036DC31
4J036DD05
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】
複数のサーモトロピック液晶物質を組み合わせて合成された液晶分子の末端部位に二つ以上のエポキシド官能基を修飾して得られる多官能性エポキシ化合物、及び該化合物と硬化剤とを反応させて製造された硬化物に関し、詳しくは、液晶間の相互作用が容易で熱伝導率が高いため、放熱ポリマーとして単独で使用または複合材料の形で使用可能であり、複合材料のベース樹脂として応用可能な化合物及び硬化物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I):
【化1】
(式中、nは1~30の整数である)
で表される
ことを特徴とする多官能性エポキシ化合物。
【請求項2】
下記化学式(II):
【化2】
(式中、nは1~30の整数である)
で表される
ことを特徴とする多官能性エポキシ化合物。
【請求項3】
下記化学式(III):
【化3】
(式中、nは1~30の整数である)
で表される
ことを特徴とする多官能性エポキシ化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物と硬化剤とを反応させて得られた
ことを特徴とする硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【請求項5】
請求項2に記載の化合物と硬化剤とを反応させて得られた
ことを特徴とする硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項3に記載の化合物と硬化剤とを反応させて得られた
ことを特徴とする硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【請求項7】
前記硬化物は、下記化学式(IV):
【化4】
(式中、X、Yは同一でも異なっていてもよく、前記化学式(I)の化合物~前記化合式(III)の化合物から選択される)
で表される
請求項4ないし6のいずれかに記載の硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【請求項8】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択される
請求項4ないし6のいずれかに記載の硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【請求項9】
前記硬化物は、基板、コンパウンド、接着剤、パッド、ヒートスプレッド、及びヒートシンクに使用される
請求項4ないし6のいずれかに記載の硬化したエポキシ樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のサーモトロピック液晶物質を組み合わせて合成された液晶分子の末端部位に二つ以上のエポキシド官能基を修飾して得られる多官能性エポキシ化合物、及び該化合物と硬化剤とを反応させて製造された硬化物に関し、さらに詳しくは、液晶間の相互作用が容易で熱伝導率が高いため、放熱ポリマーとして単独で使用または複合材料の形で使用可能であり、複合材料のベース樹脂として応用可能な化合物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を硬化剤と混合したときに発生するエポキシ基の開環によって形成されるネットワークポリマーからなる熱硬化性樹脂である。エポキシ樹脂は、化学成分に対する抵抗性、耐久性に優れ、硬化時の体積収縮率が低いことから、接着剤、塗料、電子/電気、土木工学/建築産業などを含む全産業分野において必須の高機能性原料として使用されている。
【0003】
現在、エポキシ樹脂の熱伝導率を高めるために最も広く使われている方法は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーを混合して複合素材を作る方法である。このように製造された複合素材は、既存のエポキシ樹脂の利点を持ちながら、比較的高い熱伝導率を示す。しかし、ある程度物性が固定されているフィラーの特性上、より高い熱伝導率を有する複合素材を製造するためには、単にフィラーの含有量を増やす以上の変化を与えることは難しく、この場合、過度に高くなるフィラーの含有量は、製造上の困難または他の物性における予期せぬ不利を引き起こす可能性がある。そこで、フィラーだけでなく、エポキシ樹脂固有の熱伝導率を高めることで、フィラー含有量を増やすことなく熱伝導率が向上した複合素材を製造する研究が進められてきた。
【0004】
広く使用されているビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA,diglydicyl ether of bisphenol A)の形態のエポキシ樹脂は、硬化後に3次元網目架橋構造を形成することが知られている。この3次元構造は、材料に優れた耐久性と耐食性を与えるという利点があるが、ポリマー(高分子)内で熱伝達の役割を果たすことが知られているフォノン(phonon)の散乱が支配的であるため、熱伝導率の面では不利である。実際、DGEBAエポキシ樹脂の硬化物は、約0.2W/mKという低い熱伝導率を示すことが知られている。そのため、このような3次元構造を、より秩序だった1次元または2次元的構造に置き換えるために液晶性エポキシ樹脂が研究されている。
【0005】
一方、このような液晶性エポキシ化合物に柔軟基を導入することで、化合物や樹脂硬化物の物性を向上させる研究も進められてきた。柔軟基を導入すると、化合物の溶解度が上がり、工程での取り扱いが容易になり、メソゲン間の相互作用を調節できて液晶性が現れる温度区間を変化させることができ、液晶状態での配列形態も変化させることができ、エポキシ基の反応性を調節して硬化速度を調節することができる。
【0006】
しかし、これらの化合物のほとんどは、化合物内部にメソゲンが存在し、その両末端にエポキシ基が存在する形態である。この場合、液晶性エポキシ化合物を導入することで達成したい熱伝導性の向上には非効率的となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、化学的修飾によりサーモトロピック液晶物質を組み合わせて液晶分子を合成し、その末端部位に二つ以上のエポキシド官能基を修飾した多官能性エポキシ化合物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、熱伝導率が高いため、放熱ポリマー及び複合材料として使用可能な前記多官能性エポキシ化合物と硬化剤とを反応させて製造した硬化物を提供することである。
【0009】
本発明が達成しようとする技術課題は、以上で言及した技術的課題に限定されるものではなく、言及されていない他の技術的課題は、本発明の記載から、当該分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、多官能性エポキシ化合物及びそれから製造される硬化物を提供する。
【0011】
本発明は、下記化学式(I)で表される多官能性エポキシ化合物を提供する。
【0012】
【0013】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0014】
本発明は、下記化学式(II)で表される多官能化エポキシ化合物を提供する。
【0015】
【0016】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0017】
本発明は、下記化学式(III)で表される多官能化エポキシ化合物を提供する。
【0018】
【0019】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0020】
本発明は、前記化学式(I)で表される多官能性エポキシ化合物と硬化剤とを反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0021】
本発明は、前記化学式(II)で表される多官能性エポキシ化合物と硬化剤とを反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0022】
本発明は、前記化学式(III)で表される多官能性エポキシ化合物と硬化剤とを反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0023】
また、本発明は、下記化学式(IV)で表される、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0024】
【0025】
(式中、X、Yは同一でも異なっていてもよく、前記化学式(I)の化合物~化学式(III)の化合物から選択される)。
【0026】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択されてもよい。
【0027】
前記エポキシ樹脂硬化物は、基板、コンパウンド、接着剤、パッド、ヒートスプレッド、ヒートシンクに使用できる。
【0028】
前記多官能性エポキシ化合物およびそれから製造された硬化エポキシ樹脂に言及されたすべての事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0029】
本発明による新規なエポキシ樹脂及びその硬化物は、液晶間の相互作用が容易で熱伝導率が向上するため、放熱ポリマーとして単独で使用または複合材料の形で使用可能である。
【0030】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されるものではなく、言及されていない他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施例1((a)、(b):EBH-4、(c)、(d):EBH-6、(e)、(f):EBH-8))の偏光顕微鏡画像である。
【
図2】本発明の実施例2((a)、(b):EIM-4、(c)、(d):EIM-6、(e)、(f):EIM-8))の偏光顕微鏡画像である。
【
図3】本発明の実施例3((a):EBP-4、(b):EBP-6、(c):EBP-7、(d):EBP-8))の偏光顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で使用されている用語は、本発明での機能を考慮しながら、可能な限り現在広く使用される一般的な用語を選択しているが、それは、当分野の当業者の意図、判例、または新たな技術の出現などによって異なりもする。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、その場合、当該発明の説明部分で、詳細にその意味を記載する。したがって、本発明で使用される用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と、本発明の全般にわたる内容とを基に定義されなければならない。
【0033】
別段の定義がない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味として解釈されない。
【0034】
数値の範囲は、前記範囲に定義された数値を含む。本明細書において与えられたすべての最大の数値制限は、低い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに低い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての最小の数値制限は、さらに高い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに高い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての数値制限は、さらに狭い数値制限が明確に述べられているように、さらに広い数値範囲内のさらに良いすべての数値範囲を含む。
【0035】
本発明は、下記化学式(I)で表される多官能化エポキシ化合物を提供する:
【0036】
【0037】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0038】
前記化学式(I)の化合物は、ビス(4-ヒドロキシフェニル)4,4’-(アルカン-1,n-ジイルビス(オキシ))ジベンゾエートを出発物質(開始物質)として製造されてもよい。
【0039】
前記化学式(I)の化合物の製造は、塩基性条件下、例えば水酸化ナトリウムの存在下で行われてもよい。
【0040】
前記化学式(I)の化合物の製造反応は、80~105℃の温度、好ましくは85~95℃の温度で行われてもよい。
【0041】
前記化学式(I)の化合物の製造時間は、0.5~4時間、好ましくは1~2時間であってもよい。
【0042】
前記化学式(I)の化合物の製造は、水またはアルコールの存在下で行われてもよく、前記アルコールの種類は、当業界で公知のものであれば特に限定されるものではない。
【0043】
本発明は、前記化学式(I)で表される多官能性エポキシ化合物を硬化剤と反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0044】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択されてもよい。
【0045】
前記エポキシ樹脂硬化物は、基板、コンパウンド、接着剤、パッド、ヒートスプレッド、ヒートシンクの分野で使用できる。
【0046】
前記化合物と硬化剤とのモル混合比は、1.5:1~4:1、好ましくは1.5:1~2:1であってもよい。
【0047】
前記硬化物の製造は、ホットプレス成形、射出成形及びロール成形等の方法を用いて行われてもよいが、これらに特に限定されない。
【0048】
前記硬化物の製造温度は、100~150℃の温度、好ましくは120~150℃の温度であってもよい。
【0049】
前記硬化物の製造時間は、0.5~1.5時間、好ましくは0.5~1時間であってもよい。
【0050】
前記硬化物のガラス転移温度は、示差走査熱量計で測定されてもよく、79~127℃の温度であってもよい。
【0051】
前記ガラス転移温度は、鎖長(チェーン長)に反比例してもよい。
【0052】
本発明は、下記化学式(II)で表される多官能性エポキシ化合物を提供する:
【0053】
【0054】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0055】
前記化学式(II)の化合物は、ビス(4-ホルミルフェニル)アルカンジオエートを出発物質(開始物質)として製造されたビス(4-(((4-ヒドロキシフェニル)イミノ)メチル)フェニル)アルカンジオエートから製造されてもよい。
【0056】
前記ビス(4-(((4-ヒドロキシフェニル)イミノ)メチル)フェニル)アルカンジオエートは、アルコールの存在下で製造されてもよく、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールおよびヘプタノールからなる群から選択されてもよい。
【0057】
前記ビス(4-(((4-ヒドロキシフェニル)イミノ)メチル)フェニル)アルカンジオエートは、50~80℃の温度、好ましくは65~75℃の温度で製造されてもよい。
【0058】
前記化学式(II)の化合物の製造は、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタクレゾール(m-クレゾール)、またはこれらの混合物などの溶媒の存在下で行われてもよい。
【0059】
前記化学式(II)の化合物の製造は、75~100℃の温度、好ましくは85~95℃の温度で行われてもよく、0.5~1.5時間、好ましくは0.5~1時間行われてもよい。
【0060】
前記化学式(II)の化合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、及びヘプタノールからなる群から選択されるアルコールで洗浄されてもよい。
【0061】
本発明は、前記化学式(II)で表される多官能性エポキシ化合物を硬化剤と反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0062】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択されてもよい。
【0063】
前記エポキシ樹脂硬化物は、基板、コンパウンド、接着剤、パッド、ヒートスプレッド、及びヒートシンクの分野で使用できる。
【0064】
前記化合物と硬化剤とのモル混合比は、1.5:1~4:1、好ましくは1.5:1~2:1であってもよい。
【0065】
前記硬化物の製造は、ホットプレス成形、射出成形及びロール成形などの方法を用いて行われてもよいが、これらに特に限定されない。
【0066】
前記硬化物の製造温度は、100~150℃の温度、好ましくは120~150℃の温度であってもよい。
【0067】
前記硬化物の製造時間は、0.5~1.5時間、好ましくは0.5~1時間であってもよい。
【0068】
前記硬化物のガラス転移温度は、示差走査熱量計で測定されてもよく、90~123℃の温度であってもよい。
【0069】
前記ガラス転移温度は、鎖長に反比例してもよい。
【0070】
本発明は、下記化学式(III)で表される多官能化エポキシ化合物を提供する:
【0071】
【0072】
(式中、nは1~30の整数である)。
【0073】
前記化学式(III)の化合物は、ビス(4’-(アリルオキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)アルカンジオエートを出発物質として製造されてもよい。
【0074】
前記化学式(III)の化合物の製造は、50~80℃の温度、好ましくは55~65℃の温度で行われてもよい。
【0075】
前記化学式(III)の化合物の製造は、クロロホルムの存在下で行われてもよい。
【0076】
前記化学式(III)の化合物の製造は、アセトン、クロロホルム、エタノール、メタノール、及び塩化メチレンからなる群から選択される溶媒の存在下で行われてもよい。
【0077】
本発明は、前記化学式(III)で表される多官能性エポキシ化合物を硬化剤と反応させて得られた、硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供する。
【0078】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択されてもよい。
【0079】
前記エポキシ樹脂硬化物は、基板、コンパウンド、接着剤、パッド、ヒートスプレッド、ヒートシンクの分野で使用できる。
【0080】
前記化合物と硬化剤とのモル混合比は、1.5:1~4:1、好ましくは1.5:1~2:1であってもよい。
【0081】
前記硬化物の製造は、ホットプレス成形、射出成形及びロール成形などの方法を用いて行われてもよいが、これらに特に限定されない。
【0082】
前記硬化物の製造温度は、160~200℃の温度、好ましくは180~200℃の温度であってもよい。
【0083】
前記硬化物の製造時間は、1~3.5時間、好ましくは1.5~2.5時間であってもよい。
【0084】
前記硬化物のガラス転移温度は、示差走査熱量計で測定されてもよく、125~150℃の温度であってもよい。
【0085】
また、前記硬化物は、下記化学式(IV)で表される、硬化したエポキシ樹脂硬化物であってもよい:
【0086】
【0087】
(式中、X、Yは同一でも異なっていてもよく、前記化学式(I)の化合物~(III)の化合物から選択される)。
【0088】
前記硬化剤は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、及びジシアンジアミド(DICY)からなる群から選択されてもよい。
【0089】
<実施例>
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明が以下の実施例によって限定されないことは自明である。
【0090】
本発明の利点及び特徴並びにこれらを達成する方法は、実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、後述する実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に実現可能であり、単にこれらの実施例は本発明の開示を完全たるものにし、且つ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範囲により定義されるものである。
【0091】
実施例1:EBH-n(Bis(4-(oxiran-2-ylmethoxy)phenyl)4,4’-(alkane-1,n-diylbis(oxy))dibenzoate)の合成
【0092】
下記反応式1は、EBH-nの合成過程を示したものである。
【0093】
【0094】
1)下記化学式1のビス(4-ヒドロキシフェニル)4,4’-(アルカン-1,n-ジイルビス(オキシ)ジベンゾエート[Bis(4-hydroxyphenyl)4,4’-(alkane-1,n-diylbis(oxy))dibenzoate);BPHn]の合成
【0095】
【0096】
A)n=4
4-ヒドロキシルフェニル-4-ヒドロキシベンゾエート(2.00g、8.67mmol)、ブタン-1,4-ジイルビス(4-メチルベンゼンスルホネート)(Tos-4)(1.38g、3.47mmol)を二口フラスコに入れ、アルゴン置換後、無水DMF30mlおよびNaH(0.40g、4.34mmol)を加えた。90℃で3日間攪拌した後、溶媒を除去し、得られた固体物質を、ヘキサン:エチルアセテート(体積比7:3)の溶液を展開液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。収率は67%であった。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=9.46(s,2H),8.05(d,J=9Hz,4H),7.12(d,J=9Hz,4H),7.04(d,J=8.5Hz,4H),6.80(d,J=9Hz,4H),4.07-4.09(m,4H),1.37-1.38(m,4H)ppm.
【0097】
B)n=6
Tos-4の代わりにTos-6を使用した以外は、A)と同様に合成した。
*Tos-n;アルカン-1-n-ジイルビス(4-メチルベンゼンスルホネート)
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=8.04(d,J=9Hz,9.46(s,2H),7.10(d,J=9Hz,4H),7.03(d,J=9Hz,4H),6.80(d,J=9Hz,4H),4.11(t,J=6Hz,4H),1.79-1.80(m,4H),1.50(s,4H).
【0098】
C)n=8
Tos-4の代わりにTos-8を使用した以外は、A)と同様に合成した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=9.46(s,2H),8.04(d,J=9Hz,4H),7.10(d,J=9Hz,4H),7.02(d,J=9Hz,4H),6.79(d,J=9Hz,4H),4.07-4.09(m,4H),1.75-1.743(m,4H),1.41-1.43(m,4H),1.37-1.38(m,4H).
【0099】
2)下記化学式2のビス(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)4,4’-(アルカン-1,n-ジイルビス(オキシ))ジベンゾエート[Bis(4-(oxiran-2-ylmethoxy)phenyl)4,4’-(alkane-1,n-diylbis(oxy))dibenzoate;EBH-n]の合成
【0100】
【0101】
D)n=4
BPH4(3.00g,5.83mmol)及びベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(0.30g)を二口フラスコに入れ、アルゴン雰囲気に置換した後、エピクロロヒドリン20mlを加えた。その後、水酸化ナトリウム(0.48g,11.66mmol)を蒸留水5mlに溶かしてフラスコに加え、90℃で1時間反応させた後、残留溶媒を真空ロータリーエバポレーター(真空回転蒸発器)で除去した。得られた固体物質をアセトンに溶かした後、蒸留水で再沈殿を2回行い精製し、白色固体の形態であるEBH-4を97%の収率で得た。
1H NMR(500MHz,CDCl 3):δ=8.14(d,J=8.5Hz,4H),7.12(d,J,=9Hz,4H),6.96(d,J=8.5Hz,8H),4.25(dd,J=3.5Hz,1.5Hz,2H),4.08(t,J=6.5Hz,4H),3.98(dd,J=6Hz,2Hz,2H),3.37-3.35(m,2H),2.93(t,J=4.5Hz,2H),2.78(m,2H),2.05(t,J=3Hz,4H)ppm.13C NMR(125MHz,CDCl 3):δ=165.19,163.24,156.16,145.01,132.29,122.63,121.93,115.38,114.28,69.28,67.71,50.13,44.72,25.87ppm.MS(+ESI):calcd for[C36H34O10+H]+:m/z627;found:m/z627.
【0102】
E)n=6
BPH4の代わりにBPH6を使用した以外は、D)と同様に合成した。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=8.13(d,J=8.5Hz,4H),7.11(d,J=9Hz,4H),6.96(d,J=8.5Hz,8H),4.24(dd,J=3Hz,1.5Hz,2H),4.08(t,J=6.5Hz,4H),3.98(dd,J=5.5Hz,2Hz,2H),3.37(m,2H),2.92(t,J=4.5Hz,2H),2.77(m,2H),1.89(t,J=6.5Hz,4H),1.59(t,J=3.5Hz,4H)ppm. 13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=165.22,163.41,156.14,145.02,132.25,122.64,121.72,115.38,114.29,69.28,68.10,50.13,44.73,29.05,25.81ppm.MS(+ESI):calcd for[C38H38O10+H]+:m/z655;found:m/z655.
【0103】
F)n=8
BPH4の代わりにBPH8を使用した以外は、D)と同様に合成した。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=8.13(d,J=9Hz,4H),7.12(d,J=9Hz,4H),6.96(d,J=8.5,8H),4.23(dd,J=3Hz,1.5Hz,2H),4.06(t,J=6.5Hz,4H),3.98(dd,J=5.5Hz,2Hz,2H),3.37(m,2H),2.92(t,J=5Hz,2H),2.77(m,2H),1.85(t,J=7Hz,4H),1.50(m,4H),1.42(m,4H)ppm.13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=165.23,163.23,156.13,145.03,132.24,122.64,121.68,115.37,114.29ppm.MS(+ESI):calcd for[C40H42O10+H]+:m/z683;found:m/z683.
【0104】
実施例2:EIM-n(Bis(4-(((4-(oxiran-2-ylmethoxy)phenyl)imino)methyl)phenyl)alkanedioate)の合成
下記反応式2は、EIM-nの合成過程を示したものである。
【0105】
【0106】
1)下記化学式3のビス(4-ホルミルフェニル)アルカンジオエート[Bis(4-formylphenyl)alkanedioate;EB-n]の合成
【0107】
【0108】
A)n=4
4-ヒドロキシフェニルベンズアルデヒド(3.05g,25.0mmol)を二口フラスコに入れ、アルゴン置換後、トリエチルアミン3.5ml、無水CH2Cl2 100mlを加え、均一な溶液になるまで撹拌した。その後、ヘキサンジオールジクロリド1.82ml(12.5mmol)を溶解した無水CH2Cl2 30mlを滴下しながら3時間還流した。得られた溶液を炭酸水素ナトリウム飽和溶液で不純物を3回抽出した後、濃縮し、クロロホルム:エチルアセテート(体積比11:1)の溶液を展開液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。3.69gのEB-4が得られ、収率は85%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=10.00(s,2H(CHO-Ar)),7.92(d,J=8.6Hz,4ArH),7.28(d,J=8.6Hz,4ArH),2,69(t,J=7.4Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-)),1.91(q,J1=3Hz,J2=4Hz,4H(-COCH2-CH
2-)).
【0109】
B)n=6
ヘキサンジオールジクロリドの代わりにオクタンジオールジクロリドを使用した以外は、A)と同様に合成した。収率は89%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=10(s,2H(CHO-Ar)),7.92(d,J=8.6Hz,4ArH),7.27(d,J=8.6Hz,4ArH),2,62(t,J=7.4Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-CH2)),1.80(quintet,J1=7.5Hz,J2=7.5Hz,4H(-COCH2-CH
2-CH2-)),1.507(quintet,J1=4Hz,J2=4,4H(-CO-CH2-CH2-CH
2-)).
【0110】
C)n=8
ヘキサンジオールジクロリドの代わりにデカンジオールジクロリドを使用した以外は、A)と同様に合成した。収率は86%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ=10(s,2H(CHO-Ar)),7.91(d,J=9Hz,4ArH),7.27(d,J=8.6Hz,4ArH),2,59(t,J=7.4Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-CH2-CH2-)),1.77(quintet,J1=7.5Hz,J2=7.5Hz,4H(-CO-CH2-CH
2-CH2-CH2-)),1.41-149(m,8H(-CO-CH2-CH2-CH
2-CH2-)),1.36-1.44(m,8H(-CO-CH2-CH2-CH2-CH
2-)).
【0111】
2)下記化学式4のビス(4-(((4-ヒドロキシフェニル)イミノ)メチル)フェニル)アルカンジオエート[Bis(4-(((4-hydroxyphenyl)imino)methyl)phenyl)alkanedioate;IM-n]の合成
【0112】
【0113】
D)n=4
1L三口丸底フラスコに4-アミノフェノール(4.80g、44mmol)を250mlの無水エタノールに溶解し、別の500ml丸底フラスコにEB-4(22mmol)と250mlの無水エタノールを加えて均一溶液を製造した。その後、両溶液を混合し、還流条件下で30分間反応させ、室温まで冷却した。得られた結晶を冷エタノールで3回洗浄した後、回収した。回収量は10.9gであり、収率は92%であった。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=9.52(s,2H(OH-Ar),8.61(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.94(d,J=9Hz,4ArH),7.27(d,J=8.6Hz,4ArH),7.20(d,J=9Hz,4ArH),6.80(d,J=8.6Hz,4ArH),2.70(t,J=6Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-)),1.74-1.82(m,4H(-CO-CH2-CH
2-)).
【0114】
E)n=6
EB-4の代わりにEB-6を使用した以外は、D)と同様に合成した。収率は95%であった。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=9.55(s,2H(OH-Ar),8.61(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.94(d,J=9Hz,4ArH),7.26(d,J=8.6Hz,4ArH),7.20(d,J=8.6Hz,4ArH),6.80(d,J=9Hz,4ArH),2.64(t,J=7.5Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-CH2-)),1.65-1.73(m,4H(-CO-CH2-CH
2-CH2-)),1.41-1.48(m,4H(-CO-CH2-CH2-CH
2-)).
【0115】
F)n=8
EB-4の代わりにEB-8を使用した以外は、D)と同様に合成した。収率は94%であった。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ=9.55(s,2H(OH-Ar),8.61(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.93(d,J=9Hz,4ArH),7.25(d,J=8.6Hz,4ArH),7.20(d,J=8.6Hz,4ArH),6.80(d,J=8.6Hz,4ArH),2.61(t,J=7.5Hz,4H(-CO-CH
2-CH2-CH2-CH2-)),1.67(quintet,J1=7.3Hz,J2=7.3Hz,4H(-CO-CH2-CH
2-CH2-CH2-)),1.39-1.44(m,4H(-CO-CH2-CH2-CH
2-CH2-)),1.32-1.35(m,4H(-CO-CH2-CH2-CH2-CH
2-)).
【0116】
3)下記化学式5の(ビス(4-(((4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)イミノ)メチル)フェニル)アルカンジオエート[Bis(4-(((4-(oxiran-2-ylmethoxy)phenyl)imino)methyl)phenyl)alkanedioate;EIM-n]の合成
【0117】
【0118】
G)n=4
IM-4(4.02g,7.5mmol)、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(0.4g)を無水DMF40mlに溶解し、エピクロロヒドリン55mlを加え、90℃で1時間反応させた。室温まで冷却した後、得られた溶液を300mlのメタノールに沈殿させ、生成された白色固体物質をろ過して回収した。得られた固体をメタノール及び蒸留水で数回洗浄し、乾燥後の重量は2.04g、収率は42%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.38(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.84(d,J=8.6Hz,4ArH),7.20(d,J=9.0Hz,4ArH),7.10(d,J=9.0Hz,4ArH),7.00(d,J=8.6Hz,4ArH),4.31(dd,J1=11.0Hz,J2=3.1Hz,2H),4.02(dd,J1=11.0Hz,J2=5.8Hz,2H),3.39(ddt,J1=5.8Hz,J2=4.1Hz,J3=2.9Hz,2H),2.94(dd,J1=4.9Hz,J2=4.1Hz,2H),2.79(dd,J1=4.9Hz,J2=2.6Hz,2H),2.66(q,J1=6.1Hz,J2=4.2Hz,4H),1.88-1.94(m,4H).13C NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm):171.86(C=O),161.11(-C=N),159.70,148.51,121.73,114.80(-O-Ar-N=)149.85,130.56,129.60,122.12(ArO-),68.82(-CH2-O),49.96(オキシラン環のCH),44.61(オキシラン環のCH2),33.96(-CO-CH2-CH2-),24.29(-CO-CH2-CH2-).MS(+ESI):calcd for[C38H36N2O8+2H]2+:m/z650;found:m/z650.
【0119】
H)n=6
IM-4の代わりにIM-6を使用した以外は、G)と同様に合成した。収率は44%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.37(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.84(d,J=9.0Hz,4ArH),7.20(d,J=9.0Hz,4ArH),7.09(d,J=9.0Hz,4ArH),7.00(d,J=8.6Hz,4ArH),4.31(dd,J1=11.0,J2=3.0Hz,2H),4.01(dd,J1=11.0Hz,J2=5.7Hz,2H),3.39(ddt,J1=5.7Hz,J2=4.2Hz,J3=2.9Hz,1H),2.93(dd,J1=4.9Hz,J2=4.1Hz,1H),2.79(dd,J1=4.9Hz,J2=2.6Hz,1H),2.59(t,J=7.4Hz,2H),1.81(dq,J1=11.5Hz,J2=7.1Hz,2H),1.51(m,4H).13CNMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm):172.25(C=O),161.09(-C=N),159.69,148.57,121.71,114.79(-O-Ar-N=),149.73,130.55,129.55,122.13(ArO-),68.80(-CH2-O),49.95(オキシラン環のCH),44.58(オキシラン環のCH2),34.22(-CO-CH2-),28.68(-CO-CH2-CH2-),24.68(-CO-CH2-CH2-CH2-).MS(+ESI):calcd for[C40H40N2O8+2H]2+:m/z678;found:m/z678.
【0120】
I)n=8
【0121】
IM-4の代わりにIM-8を使用した以外は、G)と同様に合成した。収率は45%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=8.37(s,2H(Ar-CH=N-Ar)),7.84(d,J=9.0Hz,4ArH),7.19(d,J=9.0Hz,4ArH),7.09(d,J=9.0Hz,4ArH),7.00(d,J=8.6Hz,4ArH),4.31(dd,J1=11.1Hz,J2=3.1Hz,2H),4.02(dd,J1=11.0Hz,J2=5.7Hz,2H),3.39(ddt,J1=5.8Hz,J2=4.2Hz,J3=2.8Hz,2H),2.93(dd,J1=4.9Hz,J2=4.1Hz,2H),2.79(dd,J1=4.9Hz,J2=2.6Hz,2H),2.57(t,J=7.5Hz,4H),1.77(q,J=7.4Hz,4H),1.38-1.48(m,8H).13CNMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm):172.36(C=O),161.08(-C=N),159.62,148.60,121.70,114.79(-O-Ar-N=),149.74,130.54,129.59,122.13(ArO-),68.80(-CH2-O),49.95(オキシラン環のCH),44.59(オキシラン環のCH2),34.33(-CO-CH2-),29.03(-CO-CH2-CH2-),28.99(-CO-CH2-CH2-CH2-),24.87(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-).MS(+ESI):calcd for[C42H44N2O8+2H]2+:m/z706;found:m/z706.
【0122】
実施例3:EBP-n(Bis(4’-(oxiran-2-ylmethoxy)-[1,1’-biphenyl]-4-yl) alkanedioate)の合成
下記反応式3は、EBP-nの合成過程を示したものである。
【0123】
【0124】
1)下記式6のビス(4’-(アリルオキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)アルカンジオエート[Bis(4’-(allyloxy)-[1,1’-biphenyl]-4-yl) alkanedioate;ABP-n]の合成
【0125】
【0126】
A)n=4
4’-(アリルオキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-オール(3.00g,13.3mmol)を二口フラスコに入れ、アルゴン置換後、トリエチルアミン5ml、無水CHCl3 100mlを加え、均一な溶液になるまで攪拌した。その後、ヘキサンジオールジクロリド0.97ml(6.65mmol)を滴下し、60℃で5時間還流した。得られた溶液を炭酸水素ナトリウム飽和溶液で不純物を3回抽出した後、濃縮し、クロロホルム:エチルアセテート(体積比19:1)の溶液を展開液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。1.6gのABP-4が得られ、収率は43%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=8.5Hz,4ArH),7.48(d,J=9.0Hz,4ArH),7.14(d,J=8.5Hz,4ArH),6.98(d,J=9Hz,4ArH),6.08(ddt,J1=17.3,J2=10.6Hz,J3=5.3Hz,2H,CH2=CH-O-),5.44(dq,J1=17.2Hz,J2=1.7Hz,2H,CH
2=CH-O-),5.31(dq,J1=10.5,J2=1.4Hz,2H,CH
2=CH-O-),4.58(dt,J1=5.3,J2=1.6Hz,4H,Ar-O-CH
2-),2.63-2.70(m,4H,-CO-CH
2-),1.89-1.95(m,4H,-COCH2-CH
2-).
【0127】
B)n=6
ヘキサンジオールジクロリドの代わりにオクタンジオールジクロリドを使用した以外は、A)と同様に合成した。収率は46%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=8.5Hz,4ArH),7.48(d,J=9.0Hz,4ArH),7.12(d,J=8.5Hz,4ArH),6.98(d,J=9Hz,4ArH),6.08(ddt,J1=17.3,J2=10.5Hz,J3=5.3Hz,2H,CH2=CH-O-),5.44(dq,J1=17.2Hz,J2=1.6Hz,2H,CH
2=CH-O-),5.31(dq,J1=10.5,J2=1.4Hz,2H,CH
2=CH-O-),4.58(dt,J1=5.3,J2=1.6Hz,4H,Ar-O-CH
2-),2.60(t,J=7.4Hz,4H,-CO-CH
2-),1.79-1.84(m,4H,-CO-CH2-CH
2-),1.48-1.55(m,4H,-CO-CH2-CH2-CH
2-).
【0128】
C)n=7
ヘキサンジオールジクロリドの代わりにノナンジオールジクロリドを使用した以外は、A)と同様に合成した。収率は81%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=8.5Hz,4ArH),7.47(d,J=8.5Hz,4ArH),7.12(d,J=8.5Hz,4ArH),6.98(d,J=8.5Hz,4ArH),6.08(ddt,J1=17.3,J2=10.5Hz,J3=5.3Hz,2H,CH2=CH-O-),5.44(dq,J1=17.2Hz,J2=1.6Hz,2H,CH
2=CH-O-),5.31(dq,J1=10.5,J2=1.4Hz,2H,CH
2=CH-O-),4.58(dt,J1=5.3,J2=1.5Hz,4H,Ar-O-CH
2-),2.59(t,J=7.4Hz,4H,-CO-CH
2-),1.79(q,J=7.3Hz,4H,-CO-CH2-CH
2-),1.44-1.53(m,6H,-CO-CH2-CH2-CH
2-CH
2-).
【0129】
D)n=8
ヘキサンジオールジクロリドの代わりにデカンジオールジクロリドを使用した以外は、A)と同様に合成した。収率は44%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=8.5Hz,4ArH),7.48(d,J=8.5Hz,4ArH),7.12(d,J=9.0Hz,4ArH),6.98(d,J=8.5Hz,4ArH),6.08(ddt,J1=17.2,J2=10.5Hz,J3=5.3Hz,2H,CH2=CH-O-),5.44(dq,J1=17.3Hz,J2=1.7Hz,2H,CH
2=CH-O-),5.31(dq,J1=10.5,J2=1.4Hz,2H,CH
2=CH-O-),4.58(dt,J1=5.3,J2=1.5Hz,4H,Ar-O-CH
2-),2.58(t,J=7.5Hz,4H,-CO-CH
2-),1.78(q,J=7.4Hz,4H,-CO-CH2-CH
2-),1.38-1.46(m,8H,-CO-CH2-CH2-CH
2-CH
2-).
【0130】
2)下記化合式7のビス(4’-(オキシラン-2-イルメトキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)アルカンジオエート[Bis(4’-(oxiran-2-ylmethoxy)-[1,1’-biphenyl]-4-yl)alkanedioate;EBP-n]の合成
【0131】
【0132】
E)n=4
500mlの三口丸底フラスコにABP-4(2.0g,3.56mmol)を入れ、無水CHCl3 100mlを加えて攪拌して均一溶液を製造した。次に、m-CPBA 4.92gを加えた後、10時間還流した。有機相をNaHSO3およびNaHCO3飽和水溶液でそれぞれ3回ずつ洗浄した後、濃縮し、得られた固体を、クロロホルム:エチルアセテート(体積比13:1)の溶液を展開液とするシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。1.28gのEBP-4が得られ、収率は60%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=8.5Hz,4ArH),7.49(d,J=9Hz,4ArH),7.14(d,J=9.0Hz,4ArH),6.99(d,J=8.5Hz,4ArH),4.26(dd,J1=11.0Hz,J2=3.2Hz,2H,ArO-CH
2),4.01(dd,J1=11.0Hz,J2=5.6Hz,2H,ArO-CH
2),3.38(ddt,J1=5.8,J2=4.1Hz,J3=2.9Hz,2H,オキシラン環のCH),2.93(dd,J1=4.9Hz,J2=4.1Hz,2H,オキシラン環のCH
2),2.78(dd,J1=4.9Hz,J2=2.7Hz,2H,オキシラン環のCH
2),2.63-2.71(m,4H,-CO-CH
2-),1.92(q,J=3.7Hz,4H,-CO-CH2-CH
2-).
【0133】
F)n=6
ABP-4の代わりにABP-6を使用した以外は、E)と同様に合成した。収率は62%であった。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)=7.53(d,J=9.0Hz,4ArH),7.48(d,J=8.5Hz,4ArH),7.12(d,J=8.5Hz,4ArH),6.99(d,J=8.5Hz,4ArH),4.26(dd,J1=11.0Hz,J2=3.2Hz,2H,ArO-CH
2),4.01(dd,J1=11.0Hz,J2=5.6Hz,2H,ArO-CH
2),3.38(ddt,J1=5.8,J2=3.8Hz,J3=2.7Hz,2H,オキシラン環のCH),2.93(dd,J1=4.9Hz,J2=4.1Hz,2H,オキシラン環のCH
2),2.78(dd,J1=4.9Hz,J2=2.6Hz,2H,オキシラン環のCH
2),2.60(t,J=7.5Hz,4H,-CO-CH
2-),1.48-1.55(m,8H,-CO-CH2-CH
2-CH
2-).
【0134】
試験例1-相転移特性
PerkinElmer社のDSC4000示差走査熱量計とOlympus社のBX53-P偏光顕微鏡を用いて相転移現象を調査した。
【0135】
表1~表3は、それぞれEBH-n、EIM-n、EBP-nのDSC測定結果であり、これらを参照すると、加熱、冷却の両方で典型的なサーモトロピック液晶の相転移現象を示し、EBP-7を除き、鎖長が長いほど転移温度が低くなる結果を示した。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
製造例1-実施例1のEBH-n硬化物の製造
【0140】
【0141】
エポキシ樹脂と硬化剤4,4’-ジアミノジフェニルメタンとのモル混合比を2:1に設定してエポキシド当量とアミン当量とを等しくし、室温で固体状態の2つの物質を粉砕して混合した後、ホットプレス成形法(hot press molding)を用いて硬化物を製造した。硬化温度は130℃、硬化時間は1時間であった。
【0142】
試験例2-EBH-n硬化物の物性
硬化物のガラス転移温度を示差走査熱量計で、分解温度をTA社のQ500熱重量分析器で、熱伝導率をHotdisk社のTPS2500S熱伝導率測定器で調べ、測定結果を表4に示した。硬化物のガラス転移温度は79~127℃の範囲であり、鎖長(チェーン長)が長くなるにつれて低くなる傾向が見られた。5%重量減少温度は329~337℃の範囲であり、10%重量減少温度は339~346℃の範囲であり、大きな差はないが、鎖長が長くなるにつれてやや増加した。熱伝導率は0.38~0.48W/m・Kの範囲で確認され、特別な傾向は見られなかったが、モノマー(単量体)の液晶温度範囲から硬化温度で液晶相を有するEBH-8で最も高い熱伝導率が確認され、液晶相の形成と熱伝導率の値とに相関関係があることが確認された。
【0143】
【0144】
製造例2-実施例2のEIM-n硬化物の製造
【0145】
【0146】
エポキシ樹脂と4,4’-ジアミノジフェニルメタンとのモル混合比を2:1に設定してエポキシド当量とアミン当量とを等しくし、室温で固体状態の2つの物質を粉砕して混合した後、ホットプレス成形法を用いて硬化物を製造した。硬化温度は130℃、硬化時間は1時間であった。
【0147】
試験例3-EIM-n硬化物の物性
硬化物のガラス転移温度を示差走査熱量計で、分解温度を熱重量分析器で、熱伝導率を熱伝導率測定器で調べ、測定結果を表5に示した。硬化物のガラス転移温度は90~123℃の範囲であり、鎖長が長くなるにつれて低くなる傾向が見られた。5%重量減少温度は290~307℃の範囲にあり、10%重量減少温度は333~355℃の範囲であり、大きな差はないが、鎖長が長くなるにつれてやや増加した。熱伝導率は0.33~0.53W/m-Kの範囲で確認され、鎖長が長くなるにつれて熱伝導率が減少することが確認された。最も低い液晶転移温度を有するEIM-8で最も高い熱伝導率が確認された。
【0148】
【0149】
製造例3-実施例3のEBP-n硬化物の製造
【0150】
【0151】
エポキシ樹脂と4,4’-ジアミノジフェニルスルホンとのモル混合比を2:1に設定してエポキシド当量とアミン当量とを等しくし、室温で固体状態の2つの物質を粉砕して混合した後、ホットプレス成形法を用いて硬化物を製造した。硬化温度は190℃、硬化時間は2時間であった。
【0152】
試験例4-EBP-n硬化物の物性
EBP-n/DDS硬化物のガラス転移温度を示差走査熱量計で、分解温度を熱重量分析計で、熱伝導率を熱伝導率測定器で調べ、測定結果を表6に示した。硬化物のガラス転移温度は125~150℃の範囲で観察され、EBP-7を除き、鎖長が長くなるにつれて低くなる傾向が見られた。5%重量減少温度は349~361℃の範囲であり、10%重量減少温度は368~380℃の範囲であり、剛直なビフェノール構造の影響でかなり高いレベルの熱安定性を有することが確認された。熱伝導率は0.40~0.55W/m-Kの範囲で確認され、液晶相発現温度と硬化温度が最もよくマッチしたEBP-6で最も高い熱伝導率が得られた。
【0153】
【0154】
比較例1
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル硬化物の製造
2官能性エポキシ樹脂であるビスフェノールAのジグリシジルエーテルとしては、Kukdo Chemical(韓国)のYD-128製品を購入して使用した。エポキシ当量(EEW)は187g/eqであり、アミン当量を等しくし、室温で2つの物質を混合した後、汎用コンベクションオーブンで加熱して試験片を作製した。DDMを硬化剤として使用したシステムの硬化温度は130℃、硬化時間は1時間、DDSを硬化剤として使用したシステムの硬化温度は190℃、硬化時間は2時間であった。
【0155】
試験例5-ビスフェノールAのジグリシジルエーテル硬化物の物性
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル硬化物2種類のガラス転移温度を示差走査熱量計で、分解温度を熱重量分析器で、熱伝導率を熱伝導率測定器で調べ、測定結果を表7に示した。4,4’-ジアミノジフェニルメタン硬化物のガラス転移温度は144℃、10%重量減少温度は364℃、熱伝導率は0.24W/m-K、DDS硬化物のガラス転移温度は174℃、10%重量減少温度は404℃、熱伝導率は0.27W/m-Kであった。実施例1~3と比較して、比較例1の硬化物は、ガラス転移温度がやや高く、分解温度には大きな差はないが、熱伝導率がかなり低いことが確認できた。
【0156】
【0157】
比較例2
4,4’-ジグリシジルオキシビフェニル硬化物の製造
ビフェノールを出発物質として、塩基の存在下でエピクロロヒドリンとの反応により4,4’-ジグリシジルオキシビフェニルエポキシを合成した。塩基当量を調節することによりオリゴマーの形で製造され、エポキシ当量は190g/eqであった。合成した4,4’-ジグリシジルオキシビフェニルエポキシは、アミン当量を等しくし、室温で固体状態の2つの物質を粉砕混合した後、ホットプレス成形法を用いて硬化物を製造した。4,4’-ジアミノジフェニルメタンを硬化剤として使用したシステムの硬化温度は130℃、硬化時間は1時間、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを硬化剤として使用したシステムの硬化温度は190℃、硬化時間は2時間であった。
【0158】
試験例6-4,4’-ジグリシジルオキシビフェニル硬化物の物性
2種類の4,4’-ジグリシジルオキシビフェニル硬化物のガラス転移温度を示差走査熱量測定で、分解温度を熱重量分析で、熱伝導率を熱伝導率測定で調べ、結果を表8に示した。DDM硬化物のガラス転移温度は160℃、10%重量減少時の分解温度は356℃、熱伝導率は0.30W/m・K、DDS硬化物のガラス転移温度は208℃、10%重量減少時の分解温度は393℃、熱伝導率は0.34W/m・Kであった。比較例1の硬化物は、実施例1~3と比較して、剛直な構造のためガラス転移温度が高く、分解温度もやや高いが、熱伝導率に大きな差があった。
4,4’-ジグリシジルオキシビフェニル硬化物2種類のガラス転移温度を示差走査熱量計で、分解温度を熱重量分析器で、熱伝導率を熱伝導率測定器で調べ、測定結果を表8に示した。DDM硬化物のガラス転移温度は160℃、10%重量減少温度は356℃、熱伝導率は0.30W/m・K、DDS硬化物のガラス転移温度は208℃、10%重量減少温度は393℃、熱伝導率は0.34W/m・Kであった。実施例1~3と比較して、比較例1の硬化物は、剛直な構造のためガラス転移温度が高く、分解温度もやや高いが、熱伝導率にはかなりの差があることが確認された。
【0159】
【0160】
以上の説明から、本発明に属する技術分野の当業者は、本発明の技術思想や本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解できるであろう。これに関連して、以上で技術した実施例は、すべての点において例示的なものであり、限定的なものではない。
【国際調査報告】