(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】燃料電池の膜加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04119 20160101AFI20240328BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240328BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240328BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240328BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/04 N
B01D63/02
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565326
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 KR2022008162
(87)【国際公開番号】W WO2022265297
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0078939
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ドウ
(72)【発明者】
【氏名】アン ナヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム インホ
【テーマコード(参考)】
4D006
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA35
4D006HA02
4D006JA13Z
4D006JA23A
4D006JA23C
4D006JA25A
4D006JA27Z
4D006JB05
4D006MC29
4D006MC39
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63
4D006PC80
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC02
5H127AC06
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB34
5H127EE17
(57)【要約】
燃料電池の運転と停止との繰り返しによるガス漏れを防止するだけではなく、相対的に低い製造コスト及び高い生産性でもって製造され、運転時に生じる振動を抑制することができる燃料電池の膜加湿器に係り、該燃料電池の膜加湿器は、外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分に加湿する加湿モジュールを含み、該加湿モジュールは、両末端が開放されており、内周面に段差が形成されたミッドケースと、ミッドケース内に配され、複数の中空糸膜を収容する少なくとも1つのカートリッジと、中空糸膜の末端がポッティングされ、ミッドケース内壁によって支持される固定層と、ミッドケースの段差によって支持され、固定層と接触するブラケットと、ミッドケースの末端が嵌め込まれる溝を有し、ブラケットと接触するパッキング部材と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される空気を、燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分に加湿する加湿モジュールと、
前記加湿モジュールの両末端にそれぞれ結合されたキャップと、を含むが、
前記加湿モジュールは、
両末端が開放されており、内周面に段差が形成されたミッドケースと、
前記ミッドケース内に配され、複数の中空糸膜を収容する少なくとも1つのカートリッジと、
前記中空糸膜の末端がポッティングされ、前記ミッドケース内壁によって支持される固定層と、
前記ミッドケースの段差によって支持され、前記固定層と接触するブラケットと、
前記ミッドケースの末端が嵌め込まれる溝を有し、前記ブラケットと接触するパッキング部材と、を含む、燃料電池の膜加湿器。
【請求項2】
前記ブラケット及び前記パッキング部材は、
前記ミッドケースの横断面形態に対応する単一閉曲線形態をそれぞれ有する、請求項1に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項3】
前記ブラケットは、
前記パッキング部材より高い硬度を有する、請求項1に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項4】
前記ブラケットは、60ないし100ショア(Shore)Aの硬度を有し、前記パッキング部材は、40ないし50ショア(Shore)Aの硬度を有する、請求項3に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項5】
前記パッキング部材は、軟質ゴムを含み、
前記ブラケットは、金属、硬質プラスチックまたは硬質ゴムを含む、請求項1に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項6】
前記パッキング部材は、シリコンゴムまたはウレタンゴムを含み、
前記ブラケットは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)またはアクリル樹脂を含む、請求項5に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項7】
前記パッキング部材は、
前記固定層とも接触する、請求項1に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項8】
前記固定層は、
前記中空糸膜の末端がポッティングされている第1固定層と、
前記第1固定層を取り囲み、前記ブラケットと接触する第2固定層と、を含む、請求項1に記載の 燃料電池の膜加湿器。
【請求項9】
前記第1固定層と前記第2固定層は、同一物質によって形成された、請求項8に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項10】
前記第1固定層と前記第2固定層は、いずれもポリウレタン(PU)樹脂を含む、請求項8に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項11】
前記加湿モジュールは、両末端が開放されたインナーケースを、前記ミッドケース内にさらに含み、
前記中空糸膜は、前記インナーケース内に配されている、請求項8に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項12】
前記インナーケースの末端は、前記第1固定層にポッティングされている、請求項11に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項13】
前記パッキング部材の内壁には、前記固定層に嵌め込まれ、前記加湿モジュール内部を流動する空気により、前記カートリッジに生じる振動を抑制する突起部材が形成される、請求項1に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項14】
外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分に加湿する加湿モジュールと、
前記加湿モジュールの両末端にそれぞれ結合されたキャップと、を含むが、
前記加湿モジュールは、
両末端が開放されており、内周面に段差が形成されたミッドケースと、
前記ミッドケース内に配され、複数の中空糸膜を収容する少なくとも1つのカートリッジと、
前記中空糸膜の末端がポッティングされ、前記ミッドケース内壁によって支持される固定層と、
前記ミッドケースの段差によって支持され、前記固定層と接触するブラケットと、
前記ミッドケースの末端が嵌め込まれる溝を有し、前記ブラケットと接触するパッキング部材と、を含み、
前記中空糸膜は、第1グループの中空糸膜、及び第2グループの中空糸膜を含み、
前記加湿モジュールは、
前記第1グループの中空糸膜が内部に配されている第1インナーケースと、
前記第2グループの中空糸膜が内部に配されている第2インナーケースと、をさらに含み、
前記固定層は、
前記第1グループの中空糸膜の末端がポッティングされている第1固定層と、
前記第2グループの中空糸膜の末端がポッティングされている第2固定層と、
前記第1固定層及び前記第2固定層を取り囲み、前記ブラケットと接触する第3固定層と、を含む、燃料電池の膜加湿器。
【請求項15】
前記パッキング部材の内壁には、前記固定層に嵌め込まれ、前記加湿モジュール内部を流動する空気により、前記カートリッジに生じる振動を抑制する突起部材が形成される、請求項14に記載の燃料電池の膜加湿器。
【請求項16】
前記第1インナーケースの末端は、前記第1固定層にポッティングされており、
前記第2インナーケースの末端は、前記第2固定層にポッティングされている、請求項14に記載の燃料電池の膜加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の膜加湿器に係り、さらに具体的には、燃料電池の運転と停止との繰り返しによるガス漏れを防止するだけではなく、相対的に低い製造コスト、及び高い生産性でもって製造され、運転時に生じる振動を抑制することができる燃料電池の膜加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、水素と酸素とを結合させて電気を生産する発電型電池である。該燃料電池は、乾電池や蓄電池のような一般化学電池と異なり、水素と酸素とが供給される限り、続けて電気を生産することができ、熱損失がなく、内燃機関より効率が2倍ほど高いという長所がある。
また、水素と酸素との結合によって生じる化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換するために、公害物質排出が少ない。従って、燃料電池は、環境にやさしいだけではなく、エネルギー消費増大による資源枯渇に対する心配を減らすことができるという長所がある。
そのような燃料電池は、使用される電解質の種類により、大きく見て、高分子電解質型燃料電池(PEMFC:polymer electrolyte membrane fuel cell)、リン酸型燃料電池(PAFC:phosphoric acid fuel cell)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:molten carbonate fuel cell、固体酸化物型燃料電池(SOFC:solid oxide fuel cell)及びアルカリ型燃料電池(AFC:alkaline fuel cell)などに分類されうる。
それらそれぞれの燃料電池は、根本的に同一原理によって作動されるが、使用される燃料の種類、運転温度、触媒、電解質などが互いに異なる。そのうち、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)は、他の燃料電池に比べ、低温で動作するという点、及び出力密度が高く、小型化が可能であるために、小規模据え置き型発電装備だけではなく、輸送システムにおいても、最も有望であると知られている。
高分子電解質型燃料電池(PEMFC)の性能を向上させるにおき、最も重要な要因のうち一つは、膜・電極組立体(MEA:membrane electrode assembly)の高分子電解質膜(PEM:polymer electrolyte membraneまたはproton exchange membrane)に一定量以上の水分を供給することにより、関数率を維持させることである。該高分子電解質膜が乾燥すれば、発電効率が急激に低下されるためである。
高分子電解質膜を加湿する方法として、1)耐圧容器に水をいっぱいにした後、対象気体をして、拡散器(diffuser)を通過させ、水分を供給するバブラ(bubbler)加湿方式、2)燃料電池反応に必要な供給水分量を計算し、ソレノイドバルブを介し、ガス流動管に直接水分を供給する直接噴射(direct injection)方式、及び3)高分子分離膜を利用し、ガス流動層に水分を供給する加湿膜方式などがある。
【0003】
それらのうちにおいても、排ガス中に含まれる水蒸気だけを選択的に透過させる膜を利用し、水蒸気を、高分子電解質膜に供給される空気に提供することにより、高分子電解質膜を加湿する膜加湿方式が、加湿器を軽量化及び小型化させることができるという点において有利である。
膜加湿方式に使用される選択的透過膜は、モジュールを形成する場合、単位体積当たり透過面積が大きい中空糸膜が望ましい。すなわち、該中空糸膜を利用して加湿器を製造する場合、接触表面積が広い中空糸膜の高集積化が可能であり、小容量でも、燃料電池の加湿が十分になされ、低価素材の使用が可能であり、燃料電池から高温で排出される排ガス(off-gas)に含まれた水分と熱とを回収し、加湿器を介し、再使用することができるという利点を有する。
図1に図示されているように、通常の膜加湿方式の加湿器1000は、外部から供給される空気と、燃料電池スタック(図示せず)から排出される排ガスとの水分交換が起こる加湿モジュール1100、及び加湿モジュール1100の両末端にそれぞれ結合されたキャップ1200を含む。
キャップ1200のうち一つは、外部から供給される空気を加湿モジュール1100に伝達し、他の一つは、加湿モジュール1100によって加湿された空気を燃料電池スタックに伝達する。
加湿モジュール1100は、排ガス流入口(off-gas inlet)1110aと排ガス排出口(off-gas outlet)1110bとを有するミッドケース(mid-case)1110、及びミッドケース1110内の多数の中空糸膜1120を含む。中空糸膜1120束の両末端は、固定層1130にポッティングされている。固定層1130は、一般的に、キャスティング(casting)方式[例えば、ディップキャスティング(dip casting)または遠心キャスティング(centrifugal casting)]を介し、液状ポリウレタン樹脂のような液状ポリマーを硬化させることによって形成される。
【0004】
外部から供給される空気は、中空糸膜1120の中空に沿って流れる。排ガス流入口1110aを介してミッドケース1110内に流入された排ガスは、中空糸膜1120の外表面と接触した後、排ガス排出口1110bを介してミッドケース1110から排出される。該排ガスが中空糸膜1120の外表面と接触するとき、該排ガス内に含有されていた水分が中空糸膜1120を透過することにより、中空糸膜1120の中空に沿って流れた空気を加湿する。
キャップ1200の内部空間は、中空糸膜1120の中空としか流体連通されず、ミッドケース1110の内部空間とは、完壁に遮断されていなければならない。そうでなければ、圧力差によるガス漏れが生じ、燃料電池の発電効率が低下される。
一般的に、
図1に図示されているように、固定層1130と共に、固定層1130とミッドケース1110との間の樹脂層1140が、キャップ1200の内部空間をミッドケース1110の内部空間から遮断する。固定層1130と類似するように、樹脂層1140は、一般的に、キャスティング方式(ディップキャスティングまたは遠心キャスティング)を介し、液状ポリウレタン樹脂のような液状ポリマーを硬化させることによって形成される。
しかし、(i)燃料電池の運転及び停止が繰り返されることにより、樹脂層1140の膨脹及び収縮が代わる代わる生じながら、ミッドケース1110と樹脂層1140との熱膨脹係数差により、樹脂層1140がミッドケース1110から分離され、それら間にギャップ(gap)が引き起こされたり、(ii)振動及び/または衝撃により、樹脂層1140とミッドケース1110との間にギャップが引き起こされたりする蓋然性が高い。樹脂層1140とミッドケース1110とのギャップは、ガス漏れを引き起こし、燃料電池の発電効率を低下させる。
【0005】
樹脂層1140とミッドケース1110とのギャップ発生によるガス漏れを防止するために、大韓民国登録特許第1697998号は、樹脂層1140側面の段差と、ミッドケース1110内面によって形成された溝とに、シーラント(液状シーリング材)を塗布した後、パッキング部材(固相シーリング材)を溝に嵌め込み、該シーラントを硬化させる方法を開示している。
しかしながら、そのような方法は、(i)溝に正確に合わせてシーラントを塗布しなければならないために、作業性が良好ではなく、(ii)シーラントを硬化させるのに、24時間以上のかなり長時間が必要となり、(iii)シーラントが硬化されるまで、加湿モジュール1100を保管するための別途の空間が要求されるという点において、低い生産性、及び高い製造コストの問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような関連技術の制限及び短所による問題点を防止することができ、燃料電池の運転と停止との繰り返しによるガス漏れを確実に防止するだけではなく、相対的に低い製造コスト、及び高い生産性でもって製造され、運転時に生じる振動を抑制することができる燃料電池の膜加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器は、
外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分に加湿する加湿モジュールと、前記加湿モジュールの両末端にそれぞれ結合されたキャップと、を含む。前記加湿モジュールは、両末端が開放されており、内周面に段差が形成されたミッドケースと、前記ミッドケース内に配され、複数の中空糸膜を収容する少なくとも1つのカートリッジと、前記中空糸膜の末端がポッティングされ、前記ミッドケース内壁によって支持される固定層と、前記ミッドケースの段差によって支持され、前記固定層と接触するブラケットと、前記ミッドケースの末端が嵌め込まれる溝を有し、前記ブラケットと接触するパッキング部材と、を含む。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記ブラケット及び前記パッキング部材は、前記ミッドケースの横断面形態に対応する単一閉曲線形態をそれぞれ有しうる。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記ブラケットは、前記パッキング部材より高い硬度を有しうる。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記ブラケットは、60ないし100ショア(Shore)Aの硬度を有し、前記パッキング部材は、40ないし50ショア(Shore)Aの硬度を有しうる。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記パッキング部材は、軟質ゴムを含み、前記ブラケットは、金属、硬質プラスチックまたは硬質ゴムを含むものでもある。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記パッキング部材は、シリコンゴムまたはウレタンゴムを含み、前記ブラケットは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)またはアクリル樹脂を含むものでもある。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記パッキング部材は、前記固定層とも接触しうる。
【0008】
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記固定層は、前記中空糸膜の末端がポッティングされている第1固定層と、前記第1固定層を取り囲み、前記ブラケットと接触する第2固定層と、を含むものでもある。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記第1固定層と前記第2固定層は、同一物質によっても形成される。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記第1固定層と前記第2固定層は、いずれもポリウレタン(PU)樹脂を含むものでもある。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記加湿モジュールは、両末端が開放されたインナーケース(inner case)を、前記ミッドケース内にさらに含み、前記中空糸膜は、前記インナーケース内にも配される。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記インナーケースの末端は、前記第1固定層にポッティングされうる。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記パッキング部材の内壁には、前記固定層に嵌め込まれ、前記加湿モジュール内部を流動する空気により、前記カートリッジに生じる振動を抑制する突起部材が形成されうる。
【0009】
また、本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器は、
外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分に加湿する加湿モジュールと、前記加湿モジュールの両末端にそれぞれ結合されたキャップと、を含むものの、前記加湿モジュールは、両末端が開放されており、内周面に段差が形成されたミッドケースと、前記ミッドケース内に配され、複数の中空糸膜を収容する少なくとも1つのカートリッジと、前記中空糸膜の末端がポッティングされ、前記ミッドケース内壁によって支持される固定層と、前記ミッドケースの段差によって支持され、前記固定層と接触するブラケットと、前記ミッドケースの末端が嵌め込まれる溝を有し、前記ブラケットと接触するパッキング部材と、を含む。前記中空糸膜は、第1グループの中空糸膜、及び第2グループの中空糸膜を含む。また、前記加湿モジュールは、前記第1グループの中空糸膜が内部に配されている第1インナーケースと、前記第2グループの中空糸膜が内部に配されている第2インナーケースと、をさらに含み、前記固定層は、前記第1グループの中空糸膜の末端がポッティングされている第1固定層と、前記第2グループの中空糸膜の末端がポッティングされている第2固定層と、前記第1固定層及び前記第2固定層を取り囲み、前記ブラケットと接触する第3固定層と、を含む。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記パッキング部材の内壁には、前記固定層に嵌め込まれ、前記加湿モジュール内部を流動する空気により、前記カートリッジに生じる振動を抑制する突起部材が形成されうる。
本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器において、前記第1インナーケースの末端は、前記第1固定層にポッティングされており、前記第2インナーケースの末端は、前記第2固定層にポッティングされうる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来技術で要求されるシーラント塗布工程及びシーラント硬化工程が省略されるために、作業性が向上されるだけではなく、製造時間が短縮されることにより、その生産性を画期的に向上させることができる。
また、シーラント硬化工程のために、半製品を保管する別途の空間が要求されないために、加湿器生産コストが節減されうる。
また、燃料電池の運転と停止との繰り返しによるガス漏れを防止するだけではなく、相対的に低い製造コスト及び高い生産性でもって製造されうる。
また、パッキング部材の内壁(または、内側面)に突起部材が形成され、運転時に生じる振動を抑制することができ、ミッドケース内部にある空気がキャップに流動することを抑制し、シーリング機能を強化させることができ、固定層形成時、固定層位置選定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来技術による燃料電池の膜加湿器が図示された分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による燃料電池の膜加湿器が図示された断面図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態によるブラケットの斜視図である。
【
図4A】本発明の第1実施形態によるパッキング部材の斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による燃料電池の膜加湿器が図示された断面図である。
【
図6A】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6B】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6C】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6D】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6E】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6F】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【
図6G】本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器製造方法について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施形態を有しうるが、特定実施形態を例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明を、特定の実施形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むと理解されなければならない。
本発明で使用された用語は、単に特定実施形態についての説明に使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に取り立てての意味ではない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下、図面を参照し、本発明の実施形態による燃料電池の膜加湿器について説明する。
図2、及び
図5ないし
図6Gの断面図は、加湿器または半製品の一端の断面図であり、その他端も、実質的に同一(または、対称である)断面を有する。
図2に図示されているように、本発明の燃料電池の膜加湿器2000は、外部から供給される空気を、燃料電池スタックから排出される排ガス内の水分によって加湿する加湿モジュール2100を含む。加湿モジュール2100の両末端それぞれは、キャップ2200に締結されている。
キャップ2200のうちいずれか一つは、ポート2210を介し、外部から空気を供給されて加湿モジュール2100に伝達し、他の一つは、加湿モジュール2100によって加湿された空気を、ポート2210を介して燃料電池スタックに伝達する。キャップ2200は、硬質プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリアミド(PA)、ポリフタルアミド(PPA)など)や金属によって形成され、単一閉曲線形態(simple closed curveshaped)(例えば、円形または多角形)の横断面(traverse section)を有しうる。
ここで、設計により、キャップ2200のうち一つは、排ガスを加湿モジュール2100に供給し、中空糸膜内部を流れるようにし、他の一つは、水分交換が行われた排ガスを外部に排出することができるということは、言うまでもない。また、その場合、後述する排ガス流入/流出のためのポート2111のうちいずれか一つを介し、外部の空気が流入され、残り一つを介し、加湿モジュール2100によって加湿された空気を、燃料電池スタックに供給させうる。外部空気の流動方向と、排ガスの流動方向は、同じ方向でもあり、あるいは互いに反対方向でもある。本発明の一実施形態による加湿モジュール2100は、外部から供給される空気と、燃料電池スタックから供給される排ガスとの水分交換が起こる装置であり、両末端が開放されており、内周面に段差2112を有するミッドケース2110;ミッドケース2110内の多数の中空糸膜2121、中空糸膜2121の末端がポッティングされている固定層2122、ミッドケース2110の段差2112によって支持され、固定層2122と接触するブラケット2130;及びミッドケース2110の末端が嵌め込まれる溝を有し、ブラケット2130と接触するパッキング部材2140と、パッキング部材2140の内壁に突設された突起部材2150と、を含む。
【0013】
ミッドケース2110は、排ガス流入/流出のためのポート2111(
図2には、一つだけ図示されている)を有する。ミッドケース2110は、硬質プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリアミド(PA)、ポリフタルアミド(PPA)など)や金属によって形成され、単一閉曲線形態(例えば、円形または多角形)の横断面を有しうる。本発明の一実施形態によれば、ミッドケース2110は、キャップ2200と同一形態の横断面を有しうる。
中空糸膜2121は、ポリスルホン樹脂、ポルリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、またはそれらのうち2以上の混合物を含むものでもある。ある1つのキャップ2200を介して外部から供給される空気は、中空糸膜2121の中空に沿って流れながら加湿された後、他のキャップ2200を介して燃料電池スタックに伝達される。
ミッドケース2110内に流入された排ガスが、中空糸膜2121の外表面と接触した後、ミッドケース2110から排出される。排ガスが、中空糸膜2121の外表面と接触するとき、その中に含有されていた水分が中空糸膜2121を透過することにより、中空糸膜2121の中空に沿って流れた空気を加湿する。
硬質または軟質のポリウレタン樹脂によって形成されうる固定層2122は、キャップ2200が中空糸膜2121としか流体連通されえないように、キャップ2200の内部空間をミッドケース2110の内部空間から遮断しなければならない。
【0014】
しかしながら、前述のように、(i)燃料電池の運転及び停止が繰り返されることにより、固定層2122の膨脹及び収縮が代わる代わる生じながら、ミッドケース2110と固定層2122との熱膨脹係数差により、固定層2122がミッドケース2110から分離され、それら間にギャップが引き起こされたり、(ii)振動及び/または衝撃により、固定層2122とミッドケース2110との間にギャップが引き起こされたりする蓋然性が高い。固定層2122とミッドケース2110とのギャップは、ガス漏れを引き起こし、燃料電池の発電効率を低下させる。
固定層2122とミッドケース2110とのギャップ発生によって引き起こされうるガス漏れは、(i)ミッドケース2110の内部空間内の排ガスが、固定層2122とミッドケース2110とのギャップ、及びキャップ2200とミッドケース2110とのギャップを順次に通過し、加湿器2000外に抜け出る外部漏れ(external leakage)、並びに(ii)ミッドケース2110の内部空間内の排ガスが固定層2122と、ミッドケース2110とのギャップ、及び固定層2122とキャップ2200とのギャップを順次に通過し、キャップ2200の内部空間に入っていく内部漏れ(internal leakage)を含む。
固定層2122とミッドケース2110とのギャップ発生によるガス漏れを防止するために、本発明の燃料電池の膜加湿器2000は、ブラケット2130とパッキング部材2140と突起部材2150とをさらに含む。
図3A及び
図3Bに図示されているように、ミッドケース2110の段差2112によって支持されるブラケット2130は、ミッドケース2110の横断面形態に対応する単一閉曲線形態を有しうる。
本発明の一実施形態によれば、ブラケット2130は、パッキング部材2140より高い硬度を有し、固定層2122と強く接着されている。
例えば、パッキング部材2140は、キャップ2200が、ボルト2310とナット2320とを介し、ミッドケース2110に締結されるとき、加えられる圧力によって圧縮されうるように、30ないし60ショア(Shore)A、さらに望ましくは、40ないし50ショア(Shore)Aの相対的に低い硬度を有し、ブラケット2130は、パッキング部材2140の硬度より高い60ないし100ショア(Shore)A、さらに望ましくは、70ないし100ショア(Shore)Aの硬度を有しうる。
【0015】
図4A及び
図4Bに図示されているように、ミッドケース2110の末端が嵌め込まれる溝Gを有するパッキング部材2140も、やはりミッドケース2110の横断面形態に対応する単一閉曲線形態を有しうる。
本発明の一実施形態によれば、パッキング部材2140は、軟質ゴム(例えば、シリコンゴムまたはウレタンゴム)を含むものでもあり、ブラケット2130は、金属、硬質プラスチック[例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)またはアクリル樹脂]、あるいは硬質ゴムを含むものでもある。
キャップ2200が、ボルト2310とナット2320とを介してミッドケース2110に締結されるとき、キャップ2200とミッドケース2110との間に配されたパッキング部材2140部分[特に、ミッドケース2110の末端が挟まれた溝に対応するパッキング部材2140部分]が、キャップ2200とミッドケース2110とによって加えられる圧力によって圧縮されることにより、パッキング部材2140とミッドケース2110との界面を介するガスの移動(すなわち、外部漏れ)を防止し、タイトな外部シーリング(external sealing)を保証することができる。
また、ブラケット2130が、ミッドケース2110の段差2112によって支持されるだけではなく、相対的に高い硬度を有するために、キャップ2200が、ボルト2310とナット2320とを介してミッドケース2110に締結されるとき、ブラケット2130がキャップ2200と共にパッキング部材2140に圧力を効果的に加えることができる。その結果、キャップ2200とブラケット2130との間に配された[すなわち、ミッドケース2110内部に位置する]パッキング部材2140部分が十分に圧縮されることにより、パッキング部材2140とブラケット2130との界面を介するガス移動(すなわち、内部漏れ)を防止し、優秀な内部シーリング(internal sealing)を保証することができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態によるブラケット2130は、固定層2122とすぐれた接着力を有することにより、ブラケット2130と固定層2122との界面を介するガス移動(すなわち、内部漏れ)を防止し、さらに強い内部シーリングを提供することができる。必要により、ブラケット2130の表面をプライマー(primer)で処理することにより、ブラケット2130と固定層2122との接着強度をさらに向上させ、内部シーリング効果を極大化させることができる。
突起部材2150は、パッキング部材2140の内壁から、固定層2122方向に突設される。突起部材2150は、パッキング部材2140の内壁を取り囲む環状形態に形成されうる。製造時、突起部材2150は、固定層2122に加圧方式で嵌め込まれうる。突起部材2150は、第2固定層2122-2に嵌め込まれうる。ここで、第2固定層2122-2を貫通し、第1固定層2122-1に嵌め込まれうるということは、言うまでもない。
突起部材2150は、固定層2122に加圧方式で嵌め込まれながら、固定層2122を圧縮させ、ミッドケース2110内部の空気が、キャップ2200側に移動することを抑制し、さらにタイトな内部シーリングを可能にする。
また、突起部材2150は、固定層2122に加圧方式で嵌め込まれながら、固定層2122を圧縮させ、加湿モジュール2100内部を流動する空気により、カートリッジ2120に生じる振動を抑制させることができる。すなわち、キャップのポート2210を介して流入される乾燥空気の流れ(
図2において、Z軸方向で表示される)により、カートリッジ2120がZ軸方向に振動することを抑制することができる。
また、突起部材2150は、ミッドケース2110の内壁から、固定層2122方向に突設されるので、製造過程において、固定層形成時、固定層の位置選定を容易にすることができる。
本発明の一実施形態によるキャップ2200は、
図2に図示されているように、パッキング部材2140の溝に嵌め込まれるミッドケース2110の末端に対応する位置に、キャップ突起2220を有しうる。キャップ突起2220は、ミッドケース2110の末端と共に、パッキング部材2140をさらに効果的に圧縮させることにより、さらにタイトな外部シーリングを可能にする。
本発明の一実施形態によるパッキング部材2140は、
図2に図示されているように、固定層2122と接触しうる。固定層2122形成に使用される液状樹脂(例えば、液状のポリウレタン樹脂)がパッキング部材2140に接触した状態で硬化されることにより、パッキング部材2140と固定層2122との接着強度を向上させ、内部シーリングを強化させることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、
図2に図示されているように、固定層2122は、中空糸膜2121の末端がポッティングされている第1固定層2122-1、及び第1固定層2122-1を取り囲み、ブラケット2130と接触する第2固定層2122-2を含むものでもある。
第1固定層2122-1と第2固定層2122-2は、ディップキャスティング方式または遠心キャスティング方式を介し、液状ポリウレタン樹脂のような液状樹脂を硬化させることにより、それぞれ形成されうる。第1固定層2122-1と第2固定層2122-2は、異なる物質によってそれぞれ形成されうるが、それら間の接着強度側面において、同一物質(例えば、ポリウレタン樹脂)によってそれぞれ形成されることが望ましいのである。
加湿モジュール2100は、
図2に図示されているように、両末端が開放されたインナーケース(inner case)2123を、ミッドケース2110内にさらに含むものでもある。その場合、中空糸膜2121は、インナーケース2123内に配される。中空糸膜2121の末端部がポッティングされている第1固定層2122-1がインナーケース2123の開放された末端(open ends)を閉鎖させる。
本発明の一実施形態によれば、インナーケース2123は、排ガス流入/流出のためのポート2111(
図2には、一つだけ図示されている)に対応する位置に、多数のホールHをそれぞれ有する。第1ポート2111を介し、ミッドケース2110内に流入された排ガスが、第1ホールHを通過した後、中空糸膜2121の外表面に沿って流れながら、水分を奪われる。続けて、反対側の第2ホールHを介し、インナーケース2133を抜けた後、第2ポート2111を介し、ミッドケース2110から排出される。
中空糸膜2121、第1固定層2122-1及びインナーケース2123は、中空糸膜カートリッジ2120を構成する。
【0018】
図2に図示されているように、インナーケース2123の末端が、第1固定層2122-1にポッティングされていることにより、中空糸膜2121とインナーケース2123との相対的位置が一定に維持されうる。
以下においては、
図5を参照し、本発明の第2実施形態による燃料電池の膜加湿器2000について説明する。
図5に図示されているように、本発明の第2実施形態による燃料電池の膜加湿器2000は、2個の中空糸膜カートリッジ2120a,2120bを含んでいるということを除いては、前述の第1実施形態と実質的に同一である。
すなわち、本発明の第2実施形態によれば、中空糸膜は、第1グループの中空糸膜2121a、及び第2グループの中空糸膜2121bを含み、加湿モジュール2100は、第1グループの中空糸膜2121aが内部に配されている第1インナーケース2123a、及び第2グループの中空糸膜2121bが内部に配されている第2インナーケース2123bを含み、固定層2122は、第1グループの中空糸膜2121aの末端がポッティングされている第1固定層2122-1a、第2グループの中空糸膜の末端2121bがポッティングされている第2固定層2122-1b、並びに第1固定層2122-1a及び第2固定層2122-1bを取り囲み、ブラケット2130と接触する第3固定層2122-2を含む。
第1グループの中空糸膜2121a、第1固定層2122-1a及び第1インナーケース2123aは、第1中空糸膜カートリッジ2120aを構成し、第2グループの中空糸膜2121b、第2固定層2122-1b及び第2インナーケース2123bは、第2中空糸膜カートリッジ2120bを構成する。
図5に図示されているように、第1インナーケース2123a及び第2インナーケース2123bの末端が、第1固定層2122-1a及び第2固定層2122-1bにそれぞれポッティングされていることにより、第1グループの中空糸膜2121aと第1インナーケース2123aとの相対的位置、及び第2グループの中空糸膜2121bと第2インナーケース2123bとの相対的位置がそれぞれ一定に維持されうる。
さらに大きい加湿容量のためには、中空糸膜2121の個数を増加させなければならない。しかしながら、1個の中空糸膜カートリッジ2120のみを含む第1実施形態の場合、中空糸膜2121が多いほど、中央に位置した中空糸膜2121に排ガスが伝達され難くなるという問題点がある。
【0019】
それに反し、本発明の第2実施形態においては、2個の中空糸膜カートリッジ2120a,2120bが互いに離隔されて配されるために、全体中空糸膜2121a,2121bの個数が増加しても、排ガスが、全体中空糸膜2121a,2121bに比較的均一に伝達されうる。すなわち、中空糸膜の個数が同一である場合、2個の中空糸膜カートリッジ2120a,2120bを含む第2実施形態の構造が、1個の中空糸膜カートリッジ2120のみを含む第1実施形態の構造に比べ、中空糸膜活用度の側面で有利である。
燃料電池の容量(または、要求される加湿容量)、加湿器の大きさ、加湿器の重さなどを全体的に考慮し、ミッドケース2110内に装着される中空糸膜カートリッジの個数を決定することができる。
以下では、
図6Aないし
図6Gを参照し、本発明の一実施形態による燃料電池の膜加湿器2000の製造方法についてさらに具体的に説明する。
まず、
図6Aに図示されているように、多数の中空糸膜2121’の末端が第1固定層2122-1’にポッティングされている中空糸膜カートリッジ2120’を準備する。
中空糸膜カートリッジ2120’は、中空糸膜2121’それぞれの少なくとも一部をインナーケース2123内に挿入した後、液状ポリウレタン樹脂のような液状樹脂を利用したディップキャスティング工程または遠心キャスティング工程を遂行することによって製造されうる。液状樹脂の硬化を介し、中空糸膜2121’の末端がポッティングされている第1固定層2122-1’が形成される。ディップキャスティング工程または遠心キャスティング工程を遂行するとき、インナーケース2123の末端も、中空糸膜2121’の末端と共に、第1固定層2122-1’にポッティングされるようにするのである。インナーケース2123は、その長手方向に沿い、互いに反対側に位置した第1グループのホールH、及び第2グループのホールHを有しうる。
続けて、
図6Bに図示されているように、両末端が開放されており、内周面に段差2112が形成されたミッドケース2110内に、中空糸膜カートリッジ2120’を挿入する。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ミッドケース2110は、開放された末端を有し、単一閉曲線形態の横断面を有する。ミッドケース2110は、その内部空間を長手方向に沿って互いに反対側に位置した排ガス流入空間と排ガス排出空間とに分ける隔壁を有し、隔壁に形成されたホールに、中空糸膜カートリッジ2120’が嵌め込まれることにより、隔壁によって支持されうる。そのとき、インナーケース2123の第1グループのホールHは、排ガス流入空間内に存在することになり、インナーケース2123の第2グループのホールHは、排ガス排出空間内に存在することになる。
その場合、排ガス流入空間に入ってきた排ガスは、第1グループのホールHを介し、インナーケース2123内に流入され、インナーケース2123内において、第2グループのホールHに向けて流れることになり、第2グループのホールHを介し、排ガス排出空間に移動し、続けて、ミッドケース2110から排出される。
続けて、
図6Cに図示されているように、ブラケット2130を、ミッドケース2110の段差2112上に装着する。前述のように、ミッドケース2110は、単一閉曲線形態の横断面を有し、ブラケット2130は、ミッドケース2110の横断面形態に対応する単一閉曲線形態を有しうる。
本発明の一実施形態によるブラケット2130は、金属、硬質プラスチック[例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)またはアクリル樹脂]、あるいは硬質ゴムによって形成されうる。選択的に(optionally)、ブラケット2130の表面をプライマーで処理した後、ミッドケース2110の段差2112上に装着することができる。
続けて、
図6Dに図示されているように、ミッドケース2110の末端に対応する溝を有するパッキング部材2140を、ミッドケース2110の末端が溝に嵌め込まれ、パッキング部材2140の一部がブラケット2130に接触するように、ミッドケース2110の末端上に装着する。パッキング部材2140も、やはりミッドケース2110の横断面形態に対応する単一閉曲線形態を有しうる。パッキング部材2140の内側面には、突起部材2150が形成される。
【0021】
続けて、
図6Eに図示されているように、ミッドケース2110、ブラケット2130及びパッキング部材2140と、中空糸膜カートリッジ2120’の末端とのギャップを埋める第2固定層2122-2’を形成する。
第2固定層2122-2’は、ミッドケース2110にポッティングキャップ(図示せず)を締結し、ポッティングキャップがミッドケース2110下に位置した状態で、ポッティングキャップに、液状ポリウレタン樹脂のような液状樹脂を入れ込んで硬化させるディップキャスティング工程を遂行し、続けて、ポッティングキャップを除去することによって製造されうる。代案として、第2固定層2122-2’は、遠心キャスティング工程を介しても形成される。
第1固定層2122-1’及び第2固定層2122-2’は、異なる液状樹脂によってそれぞれ組成されうるが、それら間の接着強度側面において、同一物質(例えば、液状ポリウレタン樹脂)によってそれぞれ形成されることが望ましいのである。
本発明の一実施形態によれば、第2固定層2122-2’形成に使用される液状樹脂(例えば、液状のポリウレタン)が、ブラケット2130、パッキング部材2140及び突起部材2150と接触した状態で硬化されることにより、それらに対する第2固定層2122-2’の接着力を向上させ、内部シーリングを強化させることができる。
本発明の一実施形態によれば、ブラケット2130が第2固定層2122-2’とすぐれた接着力を有する物質によって形成されるために、それら間の界面を介するガス移動(すなわち、内部漏れ)を防止し、さらに強い内部シーリングを提供することができる。また、前述のように、プライマーによって表面処理されたブラケット2130を利用する場合、ブラケット2130と第2固定層2122-2’との接着強度が極大化されることにより、さらにすぐれた内部シーリングが提供されうる。
続けて、
図6EのカッティングラインCLに沿い、第1固定層2122-1’、第2固定層2122-2’及び中空糸膜2121’を同時にカッティングすることにより、
図6Fに図示されているように、第2固定層2122-2によって囲まれた第1固定層2122-1にポッティングされた末端が開放された中空糸膜2121を得る。
続けて、
図6Gに図示されているように、ミッドケース2110にキャップ2200を締結するものの、キャップ2200により、パッキング部材2140が圧縮されるように、キャップ2200を締結する。
【0022】
本発明の一実施形態によるキャップ2200は、
図6Gに図示されているように、パッキング部材2140の溝に嵌め込まれるミッドケース2110の末端に対応する位置に、キャップ突起2220を有しうる。キャップ突起2220は、ミッドケース2110の末端と共に、パッキング部材2140をさらに効果的に圧縮させることにより、さらにタイトな外部シーリングを可能にする。
また、本発明の一実施形態によれば、ブラケット2130が、パッキング部材2140より高い硬度を有することにより、ミッドケース2110にキャップ2200が締結されるとき、パッキング部材2140が圧縮されうる。
すなわち、ブラケット2130が、ミッドケース2110の段差2112によって支持されるだけではなく、パッキング部材2140の硬度(30ないし60ショア(Shore)A、さらに望ましくは、40ないし50ショア(Shore)A)より高い硬度(60ないし100ショア(Shore)A、さらに望ましくは、70ないし100ショア(Shore)A)を有するために、キャップ2200が、ボルト2310とナット2320とを介し、ミッドケース2110に締結されるとき、ブラケット2130が、キャップ2200と共に、パッキング部材2140に圧力を効果的に加えることができる。その結果、キャップ2200とブラケット2130との間に配された[すなわち、ミッドケース2110内部に位置する]パッキング部材2140部分が十分に圧縮されることにより、パッキング部材2140とブラケット2130との界面を介するガス移動(すなわち、内部漏れ)を防止し、すぐれた内部シーリングを保証することができる。
【0023】
以上で説明された本発明によれば、従来技術のシーラント塗布工程及び硬化工程なしに、ブラケット2130とパッキング部材2140との機械的組み込みのみを介し、外部漏れと内部漏れとを、いずれも効果的に防止することができる。従って、本発明によれば、従来技術で要求されるシーラント塗布工程及びシーラント硬化工程が省略されるために、作業性が向上されるだけではなく、製造時間が短縮されることにより、その生産性を画期的に向上させることができる。また、シーラント硬化工程中、半製品を保管する別途の空間が要求されないために、加湿器生産コストが節減されうる。また、パッキング部材2140の内壁に突起部材2150が形成され、運転時に生じる振動を抑制することができ、ミッドケース内部にある空気がキャップに流動することを抑制し、シーリング機能を強化させることができ、固定層形成時、固定層位置選定を容易にすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明されたが、当該技術分野で通常の知識を有する者であるならば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から外れない範囲内において、構成要素の付加、変更、削除または追加などにより、本発明を多様に修正及び変更させることができるが、それらも、本発明の権利範囲内に含まれるものなのである。
【国際調査報告】