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特表2024-515132高性能連続鋳造のためのノーズチップデザイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】高性能連続鋳造のためのノーズチップデザイン
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
B22D11/06 340A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565389
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022072689
(87)【国際公開番号】W WO2022256805
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/195,731
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ロバート ワグスタッフ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ウィリアム バーカー
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004DA23
4E004SA01
4E004SA08
(57)【要約】
金属合金の連続鋳造用ノーズチップを記載する。ノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、第2の表面は第1の表面と対向する、第1の部分を含んでもよい。ノーズチップは、延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分を含んでもよい。延長された第1の表面は、第1の表面と共通の平面内にあってもよい。ノーズチップは、第3の表面を延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分を含んでもよい。円弧状表面は、延長された第1の表面からの垂直方向の距離に湾曲点を含んでもよい。垂直方向の距離は、ノーズチップと連続鋳造表面との間での、ノーズチップを使用して鋳造される液体金属に対する最大メニスカス高さを制限するように構成してもよい。12m/分を超える鋳造速度で金属合金を連続鋳造する方法も記載する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属合金の連続鋳造用のノーズチップであって、前記ノーズチップは、
第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、前記第2の表面は前記第1の表面と対向する、前記第1の部分と、
延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、前記延長された第1の表面は前記第1の表面と共通の平面内にある、前記第2の部分と、
前記第3の表面を前記延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分と、を含む、前記ノーズチップ。
【請求項2】
前記円弧状表面は湾曲点を含む、請求項1に記載のノーズチップ。
【請求項3】
前記湾曲点は前記延長された第1の表面からの垂直方向の距離であり、前記垂直方向の距離は、前記ノーズチップと連続鋳造表面との間での、前記ノーズチップを使用して鋳造される液体金属に対する最大メニスカス高さを制限するように構成されている、請求項2に記載のノーズチップ。
【請求項4】
前記第3の部分は、前記湾曲点と前記延長された第1の表面との間にカットバックを含む、請求項2に記載のノーズチップ。
【請求項5】
前記第3の部分は乱流生成メカニズムを含む、請求項1に記載のノーズチップ。
【請求項6】
前記乱流生成メカニズムは、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、または前記第1の表面、前記第2の表面、もしくは前記延長された第1の表面の表面粗さよりも大きい表面粗さから選択される少なくとも1つである、請求項5に記載のノーズチップ。
【請求項7】
前記ノーズチップは耐火材料を含む、請求項1に記載のノーズチップ。
【請求項8】
金属合金を連続鋳造する方法であって、前記方法は、
円弧状ノーズチップを用意することであって、前記円弧状ノーズチップは、
第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、前記第2の表面は前記第1の表面と対向する、前記第1の部分と、
延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、前記延長された第1の表面は前記第1の表面と共通の平面内にある、前記第2の部分と、
前記第3の表面を前記延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分と、を含む、前記用意することと、
前記円弧状ノーズチップを通して液体金属を鋳造キャビティに流して鋳造品を形成することと、を含む、前記方法。
【請求項9】
前記円弧状ノーズチップを通って流れる前記液体金属のメニスカス長さは、最大で、湾曲点から前記鋳造キャビティを部分的に画定する鋳造表面までの距離に等しい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メニスカス長さは0.5mm~2.0mmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記円弧状ノーズチップの前記第3の部分は乱流生成メカニズムをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記乱流生成メカニズムは、表面粗さ、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
磁気振動技術を使用して前記円弧状表面において前記液体金属内に乱流を生成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ノーズチップは耐火材料である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記鋳造品の表面粗さは最大で10μmである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記鋳造品の前記表面付近の組成は、参照となる従来の鋳造標準と比較して前記鋳造表面においてFe及びMnが減少する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記組成はグロー放電発光分析法によって特徴付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記鋳造品は、浸出物頻度が最大で30浸出物/cmである、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記浸出物頻度を3D画像解析によって決定する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は12m/分を超える鋳造速度をもたらす、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/195,731号(2021年6月2日に出願)に対する利益及びそれに対する優先権を主張する。なおこの文献はすべての目的に対してその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は全般的に、冶金学に関し、より具体的には、連続鋳造装置を使用した合金製品の連続鋳造に関する。
【背景技術】
【0003】
金属ストリップ、スラブ、またはプレートなどの金属ストリップ物品を製造するための技術には、連続鋳造装置を使用することが含まれる場合がある。たとえば、アルミニウム合金ストリップ製品は、連続鋳造を使用して鋳造する場合がある。ベルトキャスターなどの特定の連続鋳造装置を使用して、液体金属が連続鋳造装置の移動する冷却面の間を通るときに、これを凝固させることができる。これらのシステムは通常、許容できる表面品質を達成しながら金属ストリップをどのくらい速く連続鋳造できるかには限界がある。
【発明の概要】
【0004】
用語実施形態及び同様の用語は、本開示の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものでも、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないと理解すべきである。本明細書で扱われる本開示の実施形態は、この発明の概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって規定される。この発明の概要は、本開示の種々の態様の大まかな概略であり、下記の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明する考え方の一部を紹介している。この発明の概要は、特許請求の範囲に記載された主題の重要または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体、いずれかまたは全ての図面、各請求項の適切な部分を参照することによって理解すべきである。
【0005】
一態様では、金属合金の連続鋳造用ノーズチップを記載する。この態様のノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分を含んでもよい。第2の表面は第1の表面と対向してもよい。ノーズチップは、延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分を含んでもよい。延長された第1の表面は、第1の表面と共通の平面内にあってもよい。ノーズチップは、第3の表面を延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分を含んでもよい。
【0006】
例では、円弧状表面は湾曲点を含んでもよい。湾曲点は、延長された第1の表面からの垂直方向の距離であってもよい。垂直方向の距離は、ノーズチップと連続鋳造表面との間での、ノーズチップを使用して鋳造される液体金属に対する最大メニスカス高さを制限するように構成してもよい。
【0007】
例では、ノーズチップの第3の部分は、乱流生成メカニズムを含んでもよい。乱流生成メカニズムは、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、または第1の表面、第2の表面、もしくは延長された第1の表面の表面粗さよりも大きい表面粗さから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0008】
例では、ノーズチップは耐火材料を含んでもよい。場合によっては、ノーズチップは、窒化ホウ素(BN)などの非湿潤物質でコーティングされた材料を含んでもよい。
【0009】
別の態様では、金属合金を連続鋳造する方法を記載する。この態様の方法は、円弧状ノーズチップを用意することを含んでもよい。円弧状ノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、第2の表面は第1の表面と対向する、第1の部分と、延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、延長された第1の表面は第1の表面と共通の平面内にある、第2の部分と、第3の表面を延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分と、を含んでもよい。本方法は、円弧状ノーズチップを通して液体金属を鋳造キャビティに流して、鋳造品を形成することを含んでもよい。
【0010】
例では、本方法は、円弧状ノーズチップを通って流れる液体金属のメニスカス長さが、最大で、湾曲点から鋳造キャビティを部分的に画定する鋳造表面までの距離に等しいことを含んでもよい。いくつかの例では、メニスカス長さは0.5mm~2.0mmであってもよい。
【0011】
例では、円弧状ノーズチップの第3の部分は、乱流生成メカニズムをさらに含んでもよい。乱流生成メカニズムは、表面粗さ、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0012】
例では、本方法は、磁気振動技術を使用して円弧状表面において液体金属内に乱流を生成することをさらに含んでもよい。
【0013】
本方法の例では、ノーズチップは耐火材料を含んでもよい。
【0014】
例では、鋳造品の表面粗さは最大で10μmであってもよい。表面粗さを、たとえば3D画像解析によって測定してもよい。鋳造品の表面付近の組成は、参照となる従来の鋳造標準と比較して鋳造表面においてFe及びMnが減少してもよい。組成はグロー放電発光分析法によって特徴付けられてもよい。鋳造品は、浸出物頻度が最大で30浸出物/cmであってもよい。浸出物頻度を、たとえば3D画像解析によって決定してもよい。
【0015】
例では、開示した方法は、12m/分を超える速度で鋳造するのに有用である。
【0016】
他の目的及び利点は、以下の非限定的な例の詳細な説明から明らかである。
【0017】
本明細書は以下の添付図を参照する。添付図では、異なる図において同様の参照数字を使用した場合、同様または類似の構成要素を例示することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】連続鋳造構成のための液体金属メニスカス及び船首状部(prow)を有するノーズチップ例の概略図である。
図2】改善されたノーズチップを有するベルト鋳造装置の概略図である。
図3図2の改善されたノーズチップの詳細な概略図である。
図4A】滑らかな物体面に対する層流の概略図である。
図4B】窪みなどの乱流メカニズムを有する物体に対する乱流の概略図である。
図5】乱流生成メカニズムを含む改善されたノーズチップの概略図である。
図6】カットバックを含む改善されたノーズチップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書では、連続鋳造用のノーズチップを記載する。ノーズチップは、円弧状表面と、随意に、乱流メカニズムとを含む。また本明細書では、ノーズチップを使用して鋳造する方法、及びノーズチップを使用して鋳造されたアルミニウム合金から形成された生産物も記載する。開示したノーズチップは、本明細書では同じ意味で円弧状ノーズチップとも言う。開示したノーズチップは、メニスカスが延びることができる最大高さ(またはベルトからの距離)を規定する湾曲点を備えた円弧状表面を含む。開示したノーズチップは、図1に示すノーズチップ100などのノーズチップを改良したものである。図1では、ノーズチップ100は、カットバックを有する船首状部を含む部分断面概略図に示している。開示した円弧状ノーズチップによって、メニスカス高さが減少し、それによって液体アルミニウムの流れの安定性が高まる。流れの安定性を高めることによって、鋳造品での表面欠陥が減少し、より高い鋳造速度が達成され得る。鋳造中に生じるメニスカス振動の振幅を減少させて、熱除去を向上させることができる。熱除去における一貫性が良くなると、表面欠陥が少なくなる。鋳造速度の増加は、不安定なメニスカス振動領域を発生させることなく表面欠陥を制限することによってもたらされる。
【0020】
図1に示したように、連続鋳造機用のノーズチップ例100は船首状部120を含む。液体金属152は船首状部においてノーズチップ100から分離し、そこで気体/液体界面メニスカス150が形成される。船首状部120は、ベルトBに垂直な垂直線Lに対して角度をなすカットバックを含むことで、メニスカスが定常的な間隔で振動し、ノーズチップ100の面に断続的に付着することがなくなることを確実にする。この付着によって、ノーズチップ材料/酸化物反応及び不均一な表面外観が生じる可能性がある。カットバックによって単一の接触点が得られ、メニスカス高さは船首状部先端まで延びる。液体金属メニスカス150は鋳造中に形成され、船首状部の高さHまで延びる。方向Dは、ノーズチップ100とベルトBとの間を通る、分解した剥離剤が逃げる方向を示す。
【0021】
従来の連続鋳造装置では、鋳造金属物品の望ましい表面を製造することが難しい可能性がある。表面欠陥があると、無駄(たとえば、鋳造金属物品が使用できない場合)またはさらなる下流処理(たとえば、任意の修正可能な表面欠陥を修正または軽減するため)の必要性が生じる可能性がある。また従来の構成は、鋳造速度も制限される。たとえば、従来の鋳造速度は最大で12m/分に制限される。鋳造速度が12m/分であるとは、鋳造品が鋳造装置を鋳造方向に鋳造品の毎分12mの速度で出て行くことを指す。本開示のノーズチップは、メニスカス高さを減少させることによって鋳造中の安定性を高めて、欠陥が少ない金属物品、より均一な熱除去、より速い鋳造速度、より大きな生産スループットをもたらすことができる。
【0022】
定義及び説明
本明細書で使用する場合、用語「発明」、「その発明」、「この発明」、及び「本発明」は、この特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定するものでも、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないことを理解すべきである。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「上部」及び「下部」は、連続鋳造装置が水平方向に鋳造しているときの垂直位置に関連付けることができる。しかし、場合によっては、連続鋳造装置を非水平方向で使用する場合があり、この場合、用語「上部」及び「下部」は、連続鋳造装置の鋳造方向に垂直な平面内の位置を指す場合がある。
【0024】
連続鋳造機または連続鋳造装置は、一対の対向する冷却アセンブリ(それらの間に鋳造キャビティを形成する)を含むことができる。場合によっては、サイドダムなどのさらなる特徴部によって、鋳造キャビティの範囲をさらに画定することができる。各冷却アセンブリは、鋳造キャビティ内の液体金属から熱を抽出するための少なくとも1つの冷却面、ならびに冷却面または冷却アセンブリの動作に関連するさらなる機器(たとえば、冷却パッド、モータ、冷媒配管、センサ、及び他の同様の機器)を含むことができる。
【0025】
ベルトキャスターなどのいくつかの連続鋳造機は、液体金属を供給できる鋳造キャビティをサイドダムとともに形成する2つの逆回転ベルト(たとえば、対向する冷却面)を含むことができる。ベルトは、水冷式(たとえば、脱イオン水で冷却)とすることもでき、他の流体を使用して冷却することもできる。鋳造キャビティの入口から鋳造キャビティに入った液体金属は、鋳造キャビティの出口に向かって遠位に移動するにつれて、冷却されたベルトを介した熱抽出を通して凝固することができ、出口で、凝固した金属(たとえば、連続鋳造物品)として出る。金属は、ベルトの移動速度とほぼ同じ速度で鋳造装置を通って移動することができるため、凝固しつつある金属とベルトとの間の剪断力が最小限になるかまたは排除される。冷却パッドは、鋳造の制御に利用できる。冷却パッドは、冷却パッドの表面に沿って配置され、六角形または他のパターンなどのパターンで配列された複数のノズルを含んでもよい。場合によっては、冷却パッドは、冷却パッドの幅にわたって及び/または実質的もしくは完全に鋳造キャビティの幅にわたって延びる少なくとも1つの線形ノズルを含むことができる。
【0026】
この説明では、「系」または「7xxx」などのAA番号及び他の関連する名称によって特定される合金に言及する。アルミニウム及びその合金を命名及び特定するときに最も一般的に使用される番号指定システムを理解するためには、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(両方ともThe Aluminum Associationより刊行)を参照されたい。
【0027】
本明細書で使用する場合、プレートは全般的に厚さが約15mm超である。たとえば、プレートは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、または約100mm超のアルミニウム製品を指す場合がある。
【0028】
本明細書で使用する場合、シェート(シートプレートとも言う)は全般的に、厚さが約4mm~約15mmである。たとえば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmであってもよい。
【0029】
本明細書で使用する場合、シートは全般的に、厚さが約4mm未満であるアルミニウム製品を指す。たとえば、シートは、厚さが約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満(たとえば、約0.2mm)であってもよい。
【0030】
本明細書で使用する場合、「鋳造アルミニウム合金製品」、「鋳造品」、「鋳造アルミニウム合金製品」、「鋳造物品」などの用語は、交換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)もしくは半連続鋳造、連続鋳造、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造法によって製造された製品を指すことができるが、本明細書では特に、連続鋳造(たとえば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)によって製造された製品を指す。本明細書に記載の鋳造物品は、当業者に知られた任意の手段によって処理することができる。このような処理ステップには、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、及び随意の予備時効ステップが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書に記載の円弧状ノーズチップを用いた連続鋳造機を使用して形成されたストリップ、スラブ、シート、シェート、またはプレートを含むアルミニウム合金製品は、自動車用途及び他の輸送用途(航空機用途及び鉄道用途を含む)で使用することができる。たとえば、開示したアルミニウム合金製品を使用して、自動車の構造部品及び成形部品、たとえば、バンパ、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(たとえば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルを調製することができる。また本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法を、航空機用途または鉄道車両用途で使用して、たとえば、アウターパネル及びインナーパネルを調製することもできる。
【0032】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法を、電子機器の用途で使用することもできる。たとえば、本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法を使用して、携帯電話及びタブレットコンピューターを含む電子デバイス用のハウジングを調製することができる。いくつかの例では、アルミニウム合金製品を使用して、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、タブレットボトムシャーシ、及び他のポータブルエレクトロニクスの外部ケーシング用のハウジングを調製することができる。
【0033】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品及び方法は、任意の他の所望の用途で使用することができる。
【0034】
本明細書で開示したすべての範囲は、そこに包含されるすべての部分範囲を包含すると理解すべきである。たとえば、提示範囲「1~10」は、最小値1及び最大値10(及びこれらを含む)の間のすべての部分範囲を含むと考えるべきである。すなわち、すべての部分範囲は、1以上(たとえば、1~6.1)の最小値から始まり、10以下(たとえば、5.5~10)の最大値で終わる。他に記載がない限り、表現「最大で」は、要素の組成量を指すとき、要素は随意であり、その特定の要素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。他に記載がない限り、すべての組成パーセンテージは重量パーセント(wt.%)である。
【0035】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈上明らかに別の意味が示される場合を除き、単数形及び複数形の参照を含む。
【0036】
連続鋳造用のノーズチップ
これらの例示的な実施例は、本明細書で説明した全般的な主題を読者に紹介するために与えており、開示した考え方の範囲を限定することは意図していない。以下のセクションでは、図面を参照して種々のさらなる特徴及び例について説明する。図面では、同様の数字は同様の構成要素を示している。また方向の記述を、例示的な実施形態を説明するために使用しているが、例示的な実施形態と同様に、本開示を限定するために使用するべきではない。本明細書の例示に含まれる要素は、一定の比率で描かれてはいない場合がある。詳細には、本明細書で例示する迎え角は、説明のために誇張されている。
【0037】
円弧状ノーズチップなどの連続鋳造用のノーズチップを本明細書に記載している。図2は、本開示の特定の態様による連続鋳造装置200を示す断面または側面概略図である。連続鋳造装置200は、上部ベルトアセンブリ202と下部ベルトアセンブリ204とを含み、両者の間に鋳造キャビティ250が配置される。上部ベルトアセンブリ202及び下部ベルトアセンブリ204のそれぞれは、冷却ベルト208、近位支持体210、及び遠位支持体212を含むことができる。場合によっては、近位支持体210は、冷却ベルト208から熱を抽出するために使用される近位冷却パッドとすることができる。場合によっては、遠位支持体212は、冷却ベルト208から熱を抽出するために使用される遠位冷却パッドとすることができる。近位支持体210及び/または遠位支持体212が冷却パッドでない場合には、冷却ベルト208からの熱抽出は、冷媒ノズル、スプレーバー、または任意の他の好適な冷却要素などの他の冷却要素を使用して達成することができる。本明細書で使用する場合、冷却パッド、支持体などに関する用語「近位」は、液体金属が鋳造キャビティ250に入る場所など、鋳造キャビティ250への入口またはその付近に配置された構造を指すことができる。本明細書で使用する場合、冷却パッド、支持体などに関する用語「遠位」は、凝固した金属が鋳造キャビティ250から出る場所など、鋳造キャビティ250の出口またはその付近に配置された構造を指すことができる。
【0038】
図2は、上部ベルトアセンブリ202及び下部ベルトアセンブリ204のそれぞれに対して単一の近位支持体210及び単一の遠位支持体212を示しているが、他の数の支持体または冷却パッドを使用することができる。場合によっては、近位支持体210及び/または遠位支持体212はそれぞれ、2段階の収束プロファイルを達成するように構成できる複数の支持体及び/または冷却パッドを含むことができる。場合によっては、さらなる支持体(たとえば、さらなる冷却パッド)を近位支持体210と遠位支持体212との間に配置して、収束プロファイルにさらなる段階を与えて、たとえば、3段階以上の収束プロファイルを達成することができる。
【0039】
ベルト208は、銅、鋼鉄、またはアルミニウムなどの任意の好適な熱伝導性材料で形成することができる。上部ベルトアセンブリ202及び下部ベルトアセンブリ204のベルト208は、互いに反対方向に回転することができ、鋳造キャビティ250内の液体金属252と接触するベルト208の表面が下流方向254に移動する。上部ベルトアセンブリ202及び下部ベルトアセンブリ204は、必要に応じて、モータ及び他の機器などのさらなる機器をさらに含むことができる。
【0040】
液体金属252は、ノズル214を介して鋳造キャビティ250に入ることができる。鋳造キャビティ250内では、上部ベルトアセンブリ202及び下部ベルトアセンブリ204のベルト208を介して熱が抽出されるにつれて、液体金属252は凝固することができる。液体金属252及び凝固しつつある液体金属は、鋳造キャビティ250内を方向254に移動する。十分な熱が抽出された後に、液体金属252は固体になり、連続鋳造物品206として鋳造キャビティ250を出ることができる。連続鋳造物品206は、連続鋳造装置200を出口温度で出る。ノズル214は、冷却パッドの幅にわたって及び/または実質的もしくは完全に鋳造キャビティ250の幅にわたって延びる少なくとも1つの線形ノズルであってもよい。ノズル214は、本明細書に記載するように、円弧状ノーズチップなどのノーズチップを含んでもよい。
【0041】
鋳造キャビティ250は、入口(たとえば、ノズル214における)、出口(たとえば、連続鋳造物品206が鋳造キャビティ250から出る場所)、サイドダム、上部ベルトアセンブリ202、及び下部ベルトアセンブリ204によって境界を付けられている。より具体的には、上部及び下部ベルトアセンブリ202、204のベルト208は動いているため、鋳造キャビティ250の上部及び下部は、任意の特定の時点における鋳造キャビティ250の入口と出口との間に横たわるベルト208の外面256によって境界を付けられる。これらの外面256の経路は、上部及び下部ベルトアセンブリ202、204内から(たとえば、鋳造キャビティ250からベルト208とは反対側から)それらを押すことなどにより、調整することができる。図2に示したように、近位支持体210及び遠位支持体212が、上部及び下部ベルトアセンブリ202、204のそれぞれ内に配置される。近位支持体210及び遠位支持体212は、ベルト208に物理的に接触して、ベルト208の経路、したがってベルト208の外面256の経路を画定することができる。上部及び下部ベルトアセンブリ202、204のベルト208の外面256の経路は、鋳造キャビティ250に対する収束プロファイルを画定する。
【0042】
図3に、液体金属352を鋳造キャビティ内に(たとえば、図2のノズル214からキャビティ250内に)分配するための円弧状ノーズチップ例300の部分断面図を示す。液体金属352は、ノーズチップ300を出て、鋳造キャビティを満たし始め、ベルトBの外面308に接触することができる。メニスカス雰囲気354が、ノーズチップ300の下でベルトBの上方のスペースを満たす。メニスカス350が、ノーズチップ300とベルトBの外面308との間の液体金属352内に形成される。液体金属352は冷却すると、凝固し始めて、固体の連続鋳造物品(たとえば、金属ストリップ)になるまで続く。液体金属352がベルトBに最初に接触する場所と、液体金属352が完全に凝固したか、またはその後に凝固収縮がほとんどまたはまったく起こらないように十分に凝固した場所との間に、凝固距離(図示せず)が存在する。
【0043】
ノーズチップ300は、第1の部分322を有することができる。第1の部分322は、第2の表面323と平行または実質的に平行な第1の表面321を有する。第2の表面323は、第1の表面321と対向する。ノーズチップ300は、第2の部分326を有する。第2の部分326は、延長された第1の表面325の方に向けられた第3の表面327を有し、延長された第1の表面325は、第1の表面321と共通の平面内にある。図3に示したように、第3の表面327は、延長された第1の表面325に向かう方向に角度をなす。第3の表面327は、第3の表面327が延長された第1の表面325と接触することなく、延長された第1の表面の方に角度をなすか、傾斜するか、湾曲するか、曲がっているか、先細であるか、またはその他の方法で向けられていてもよい。ノーズチップ300は、第3の部分330を有する。第3の部分330は、第3の表面327を延長された第1の表面325に接続する円弧状表面329を有する。
【0044】
円弧状表面329は、湾曲点pを含む。液体金属352は、この湾曲点pからベルトBに向かって移動する。線Lは、点pからベルト外面308まで延びる。湾曲点pは、ベルトBから線Lに沿った距離hである。距離hは、メニスカス350に対する最大高さとなるように構成され、ノーズチップ300及びベルトBと接触すべき液体金属の高さである。
【0045】
いくつかの例では、本開示の円弧状ノーズチップは、乱流生成メカニズムを含む。本明細書では、乱流生成メカニズムは全般的に、湾曲した物体の周りに乱流を設ける任意のメカニズムとして規定される。図4Aに、滑らかな表面を有するボール状の物体の概略図を示し、図4Bに、窪みのある表面を有するボール状の物体の概略図を示す。窪みのある表面のボール状の物体の場合、乱流渦の存在により、乱流境界層が、同様の層流境界層よりもはるかに急な角度で付着したままとなる可能性がある。この効果によって、図4Bのボール状の物体の周りの流れは乱流に陥る。その結果、流れは、ボール状の物体上の上部中心点を過ぎて付着したままとなり、ボール状の物体の反対側でのみ分離される。その結果、図4Bのボール状の物体上での圧力抵抗は、図4Aの場合のような滑らかな表面を有する比較のボール状の物体よりも低い。
【0046】
ボール状の物体に対する乱流渦の影響のこの考え方が、本開示の円弧状ノーズチップに適用される。いくつかの例では、円弧状ノーズチップは、乱流生成メカニズムを含む第3の部分を有する。図5に、乱流生成メカニズム520を含む改善されたノーズチップ500を示す。この乱流の増加により、流れがノーズチップ出口(たとえば、湾曲点p)により長く付着し、そして、形成されるメニスカスの全体の高さが減少する。このメニスカス高さの減少により、メニスカス振動の振幅の減少に起因して表面仕上げが改善される。鋳造直後の表面上のメニスカスマークの間隔の減少に加えて、これにより、新たに凝固した鋳造表面における隣接する層内の温度勾配が減少する。浸出物または水泡などの表面欠陥が、メニスカスマークに沿って形成されることが多いが、これは、隣接する領域における凝固速度の小さな差に起因すると考えられる。メニスカスマーク間の距離を小さくすることによって、隣接する領域における凝固速度の差が減少し、形成される欠陥が減少することが予想される。鋳造速度のより広い範囲を通してメニスカスが安定したままであるため、鋳造速度の増加も達成される。従来の連続鋳造装置は、メニスカス振動によって生じる表面欠陥のために鋳造速度が制限されていた。
【0047】
いくつかの例では、乱流生成メカニズム520には、表面粗さ、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、または同様の構造、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つが含まれるが、これらに限定されない。それに加えてまたはその代わりに、いくつかの例では、乱流生成メカニズムには、図5に示した乱流生成メカニズム520の場所において制御可能な電磁石を使用して液体金属と相互作用する場所など、磁気振動が含まれる。円弧状ノーズチップを乱流生成メカニズムと組み合わせることによって、液体金属の流れは、はるかに急な角度になるまでノーズチップに付着したままであり、それによって、メニスカス長さが減少し、より高い鋳造速度での安定性が向上する。
【0048】
図5に、液体金属552を鋳造キャビティ内に分配するための円弧状ノーズチップ500の部分断面図を示す。ノーズチップ500は、円弧状表面529を含み、さらに、ノーズチップ500の表面などに乱流生成メカニズム520を含む。メニスカス550が、ノズルのノーズチップ500とベルトBの外面508との間の液体金属552内に形成される。メニスカス雰囲気554が、ノーズチップ500の下でベルトBの上方のスペースを満たす。液体金属552が冷却すると、凝固し始めて、固体の連続鋳造物品(たとえば、金属ストリップ)になるまで続く。ノーズチップ500は、第1の部分522を含む。第1の部分522は、第2の表面523と平行な第1の表面521を有し、第2の表面523は第1の表面521と対向する。ノーズチップ500は、第2の部分526を有する。第2の部分526は、延長された第1の表面525の方に向けられた第3の表面527を有し、延長された第1の表面525は、第1の表面521と共通の平面内にある。図5に示したように、第3の表面527は、延長された第1の表面525に向かう方向に角度をなす。第3の表面527は、第3の表面527が延長された第1の表面525と接触することなく、延長された第1の表面525の方に角度をなすか、傾斜するか、湾曲するか、曲がっているか、先細であるか、またはその他の方法で向けられていてもよい。ノーズチップ500は、第3の部分530を有する。第3の部分530は、第3の表面527を延長された第1の表面525に接続する円弧状表面529を有する。円弧状表面529は、湾曲点pを含む。湾曲点pは、ベルトBから線Lに沿った距離hである。距離hは、メニスカス550に対する最大高さとなるように構成され、ノーズチップ500及びベルトと接触すべき液体金属の高さである。乱流生成メカニズム520の形態に応じて、メニスカス550は、図3に示したメニスカス350のそれと比較して、形状または長さを変えてもよい。一例では、乱流生成メカニズム520は複数の窪みを含むが、他の乱流生成メカニズムが考えられ、少なくとも部分的に円弧状表面に含まれていてもよい。乱流生成メカニズム520に対する例には、表面粗さ、複数のリブ、複数のピア、及び他のこのような構造、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
図6に、液体金属652を鋳造キャビティ内に分配するための他のノーズチップ600の部分断面図を示す。ノーズチップ600は、円弧状表面629及びカットバック631を含む。メニスカス650が、ノズルのノーズチップ600とベルトBの外面608との間の液体金属652内に形成される。液体金属652が冷却すると、凝固し始めて、固体の連続鋳造物品(たとえば、金属ストリップ)になるまで続く。ノーズチップ600は、第1の部分622を含む。第1の部分622は、第2の表面623と平行な第1の表面621を有し、第2の表面623は第1の表面621と対向する。ノーズチップ600は、第2の部分626を有する。第2の部分626は、延長された第1の表面625の方に向けられた第3の表面627を有し、延長された第1の表面625は第1の表面621と共通の平面内にある。図6に示したように、第3の表面627は、延長された第1の表面625に向かう方向に角度をなす。第3の表面627は、第3の表面627が延長された第1の表面625と接触することなく、延長された第1の表面625の方に角度をなすか、傾斜するか、湾曲するか、曲がっているか、先細であるか、またはその他の方法で向けられていてもよい。ノーズチップ600は、第3の部分630を有する。第3の部分630は、第3の表面627をカットバック631に接続する円弧状表面629を有する。例示したように、ベルトBに垂直な線Lに対して約15度の角度が、カットバック631を画定する。カットバック631は、部分630内に延びる延長された第1の表面625まで延びる。円弧状表面629は、カットバック631の一端と一致する湾曲点pを含み、カットバック631の他端は、延長された第1の表面625と交わる。湾曲点pは、ベルトBから線Lに沿った距離hである。距離hは、メニスカス650に対する最大高さとなるように構成され、ノーズチップ600及びベルトと接触すべき液体金属の高さである。
【0050】
随意に、部分630は、前述したような乱流生成メカニズム620を含んでもよい。メニスカス650は、図3に示したメニスカス350または図5に示したメニスカス550のそれと比較して、形状または長さを変えてもよい。一例では、随意の乱流生成メカニズム620は複数の窪みを含むが、他の乱流生成メカニズムが考えられ、少なくとも部分的に円弧状表面に含まれていてもよい。乱流生成メカニズム620に対する例には、表面粗さ、複数のリブ、複数のピア、及び他のこのような構造、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
図3のノーズチップ300、図5のノーズチップ500、及び図6のノーズチップ600などの本開示のノーズチップは、鋳造されている液体金属の温度に耐える任意の耐火材料で形成してもよい。いくつかの例では、耐火材料は、優れた非湿潤特性を得るために高い表面エネルギーを有する。ノーズチップの円弧状の形状及び/または乱流生成メカニズムは、当技術分野で知られている技術を使用して製造してもよい。耐火材料は、容易に損傷するほど、たとえば、割れるか、または穴が開くほど薄くても脆くてもいけない。なぜならば、このような損傷が鋳造表面に影響する可能性があるからである。他の例では、図3のノーズチップ300、図5のノーズチップ500、及び図6のノーズチップ600などのノーズチップは、耐火材料または非耐火材料で形成し、次に、優れた非湿潤特性を得るために高い表面エネルギーを有する材料でコーティングしてもよい。非限定的な例では、窒化ホウ素(BN)をノーズチップに対するコーティングとして用いてもよい。
【0052】
開示したアルミニウム合金及びアルミニウム合金製品を製造する方法
本明細書に記載のアルミニウム合金及びアルミニウム合金製品は、図3、5、及び6それぞれの円弧状ノーズチップ300、500、及び600などの本明細書に記載のノーズチップを使用して、当業者に知られた任意の好適な連続鋳造方法を使用して、連続鋳造することができる。いくつかの例では、ノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、第2の表面は第1の表面と対向する、第1の部分と、延長された第2の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、延長された第2の表面は第2の表面と共通の平面内にある、第2の部分と、第3の表面を延長された第2の表面に接続する湾曲面を有する第3の部分であって、第3の部分は湾曲点を含む,第3の部分と、を含む。本方法はさらに、最大で湾曲点からベルトまでの距離に等しいメニスカス長さをもたらすように構成された円弧状ノーズチップを利用して、液体金属を鋳造することを含む。いくつかの例では、メニスカス長さは、約0.5mm~約2mm、たとえば、0.5mm~1.0mm、0.5mm~1.5mm、1.0mm~1.5mm、1.0mm~2.0mm、または1.5mm~2.0mmの範囲である。
【0053】
本明細書に記載のアルミニウム合金の連続鋳造によって、表面粗さ、またはRa値が、従来のノーズチップを使用した鋳造品の表面粗さよりも小さい鋳造品を提供することができる。表面粗さは代替的に、たとえば画像解析によって、欠陥のサイズ及び分布を含む欠陥数として測定してもよい。欠陥数では、Ra値が比較的小さい領域にわたって測定されるため、サンプリング領域が大きくなることに起因して、鋳造品の表面粗さに対するより良好な表現が得られ得る。したがって、欠陥が表面上に均一に分布していない場合、測定箇所ごとにRaに大きなばらつきが生じる可能性がある。いくつかの例では、本開示の鋳造品の表面は、表面欠陥がほとんどなく、Ra値が最大で10μm、最大で5.0μm、最大で3.5μm、最大で2.5μm、最大で2.0μm、または最大で1.5μmである。
【0054】
本明細書に記載の方法により、鋳造品の表面またはその付近での表面欠陥を少なくすることができる。欠陥には浸出物が含まれていてもよい。浸出物は、凝固している鋳造スラブが冷却面から離れる方向に収縮するときに、そのスラブの表面付近領域の再加熱によって生じる表面欠陥である。浸出物の密度は合金に依存する場合があり、6xxx合金は、より浸出する傾向がある。浸出物は、合金に応じて直径が約50μm以下の場合がある。いくつかの例では、鋳造アルミニウム合金は、画像解析によって測定した場合、浸出物頻度が最大で30浸出物/cmである。浸出物高さは、約5μm~約100μmの範囲である。粗さは、3Dイメージング(Keyence)によって欠陥(浸出物)の高さを測定することによって測定してもよい。
【0055】
本明細書に記載の方法によって、12m/分を超える、14m/分を超える、16m/分を超える、または18m/分を超える鋳造速度が得られる。鋳造速度は、最大12m/分に限定される従来のノーズチップを使用した鋳造速度と比較して、最大で50パーセント以上向上し得る。
【0056】
本開示による鋳造品によって、欠陥及び不純物が少ない表面付近の組成が得られる。表面付近の組成は、深さの関数としての元素濃度の尺度を得るために、グロー放電発光分析法(GDOES)によって分析してもよい。表面付近の組成は、たとえば、最大で1μm、最大で2μm、最大で5μm、最大で10μm、最大で15μm、またはそれよりより大きいかまたは小さい深さなどの、所望の深さまでの元素分析に対するGDOESによって特徴付けてもよい。従来の連続鋳造品では、連続鋳造最終ゲージ製品の表面上にFe及びMnの存在が含まれ、表面下に露出ゾーンが存在する場合があり、標準的な直接鋳造加工製品とは対照的である。これは、連続鋳造から生じた表面金属間化合物を含むFe及び/またはMnの存在に起因する可能性がある。鋳造品の表面付近の組成は、参照となる従来の鋳造標準と比較して、Fe及びMnが減少している。
【0057】
いくつかの例では、表面付近の組成における浸出物を含む表面欠陥の数が少なく、それによって鋳造表面におけるFe及びMn含有量が減少している。
【0058】
例示的な態様
以下で使用するように、一連の態様(たとえば、「態様1~4」)または態様の列挙されない集合(たとえば、「任意の先行または後続の態様」)へのいかなる言及も、それらの態様のそれぞれに対する離接的な言及として理解されたい(たとえば、「態様1~4」は、「態様1、2、3、または4」として理解されたい)。
【0059】
態様1は、金属合金の連続鋳造用のノーズチップであって、前記ノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、前記第2の表面は前記第1の表面と対向する、前記第1の部分と、延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、前記延長された第1の表面は前記第1の表面と共通の平面内にある、前記第2の部分と、前記第3の表面を前記延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分と、を含む、前記ノーズチップである。
【0060】
態様2は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記円弧状表面は湾曲点を含む、前記ノーズチップである。
【0061】
態様3は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記湾曲点は前記延長された第1の表面からの垂直方向の距離であり、前記垂直方向の距離は、前記ノーズチップと連続鋳造表面との間での、前記ノーズチップを使用して鋳造される液体金属に対する最大メニスカス高さを制限するように構成されている、前記ノーズチップである。
【0062】
態様4は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記第3の部分は、前記湾曲点と前記延長された第1の表面との間にカットバックを含む、前記ノーズチップである。
【0063】
態様5は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記第3の部分は乱流生成メカニズムを含む、前記ノーズチップである。
【0064】
態様6は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記乱流生成メカニズムは、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、または前記第1の表面、前記第2の表面、もしくは前記延長された第1の表面の表面粗さよりも大きい表面粗さから選択される少なくとも1つである、前記ノーズチップである。
【0065】
態様7は、任意の先行または後続の態様のノーズチップであって、前記ノーズチップは耐火材料を含む、前記ノーズチップである。
【0066】
態様8は、金属合金を連続鋳造する方法であって、前記方法は、円弧状ノーズチップを用意することであって、前記円弧状ノーズチップは、第2の表面と平行な第1の表面を有する第1の部分であって、前記第2の表面は前記第1の表面と対向する、前記第1の部分と、延長された第1の表面の方に向けられた第3の表面を有する第2の部分であって、前記延長された第1の表面は前記第1の表面と共通の平面内にある、前記第2の部分と、前記第3の表面を前記延長された第1の表面に接続する円弧状表面を有する第3の部分と、を含む、前記用意することと、前記円弧状ノーズチップを通して液体金属を鋳造キャビティに流して、鋳造品を形成することと、を含む、前記方法である。
【0067】
態様9は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記円弧状ノーズチップを通って流れる前記液体金属のメニスカス長さは、最大で、湾曲点から前記鋳造キャビティを部分的に画定する鋳造表面までの距離に等しい、前記方法である。
【0068】
態様10は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記メニスカス長さは0.5mm~2.0mmである、前記方法である。
【0069】
態様11は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記円弧状ノーズチップの前記第3の部分は乱流生成メカニズムをさらに含む、前記方法である。
【0070】
態様12は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記乱流生成メカニズムは、表面粗さ、複数の窪み、複数のリブ、複数のピア、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つである、前記方法である。
【0071】
態様13は、任意の先行または後続の態様の方法であって、磁気振動技術を使用して前記円弧状表面において前記液体金属内に乱流を生成することをさらに含む、前記方法である。
【0072】
態様14は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記ノーズチップは耐火材料である、前記方法である。
【0073】
態様15は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記鋳造品の表面粗さは最大で10μmである、前記方法である。
【0074】
態様16は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記表面粗さを3D画像解析によって測定する、前記方法である。
【0075】
態様17は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記鋳造品の前記表面付近の組成は、参照となる従来の鋳造標準と比較して前記鋳造表面においてFe及びMnが減少する、前記方法である。
【0076】
態様18は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記組成はグロー放電発光分析法によって特徴付けられる、前記方法である。
【0077】
態様19は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記鋳造品は、浸出物頻度が最大で30浸出物/cmである、前記方法である。
【0078】
態様20は、任意の先行または後続の態様の方法であって、前記浸出物頻度を3D画像解析によって決定する、前記方法である。
【0079】
態様21は、任意の先行する態様の方法であって、前記方法は12m/分を超える鋳造速度をもたらす、前記方法である。
【0080】
態様22は、任意の先行する態様の方法であって、前記円弧状ノーズチップは任意の先行する態様のノーズチップである、前記方法である。
【0081】
前述で引用した特許、刊行物、及び要約はすべて、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。例示した実施形態を含む実施形態の前述の説明は、例示及び説明を目的としてのみ提示しており、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定することは意図されていない。その多くの変更、適応、及び使用が、当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】