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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553107
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022052061
(87)【国際公開番号】W WO2022184350
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21159962.6
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,ジャンパオロ
(72)【発明者】
【氏名】ノール,ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】アランゴ,ユリース
(72)【発明者】
【氏名】ビルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(57)【要約】
少なくとも1つの実施形態において、パワー半導体デバイス(1)は、半導体本体(2)と、半導体本体(2)における少なくとも1つのソース領域(21)と、半導体本体(2)におけるゲート電極(3)と、半導体本体(2)とゲート電極(3)との間のゲート絶縁体(4,41,42)と、少なくとも1つのソース領域(21)およびゲート絶縁体(4,41,42)における少なくとも1つのウエル領域(22)とを備え、ゲート絶縁体(4,41,42)は、可変誘電容量を有し、誘電容量は、いずれの場合でも、誘電率と、その特定の位置におけるゲート絶縁体(4,41,42)の幾何学的厚さとの商であり、誘電容量は、ゲート絶縁体(4,42)の残りの領域よりも少なくとも1つのウエル領域(22)において大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(1)であって、
- 半導体本体(2)と、
- 前記半導体本体(2)における少なくとも1つのソース領域(21)と、
- 前記半導体本体(2)におけるゲート電極(3)と、
- 前記半導体本体(2)と前記ゲート電極(3)との間のゲート絶縁体(4,41,42)と、
- 前記少なくとも1つのソース領域(21)および前記ゲート絶縁体(4,41,42)における少なくとも1つのウエル領域(22)とを備え、
- 前記ゲート絶縁体(4,41,42)は、可変誘電容量を有し、前記誘電容量は、いずれの場合でも、誘電率と、その特定の位置における前記ゲート絶縁体(4,41,42)の幾何学的厚さとの商であり、
- 前記誘電容量は、前記ゲート絶縁体(4,42)の残りの領域よりも前記少なくとも1つのウエル領域(22)において大きく、
- 断面でみると、前記ゲート絶縁体(4,41,42)は、前記より大きい誘電容量を有する2つの第1のゲート絶縁体領域(41)と、前記より小さい誘電容量を有する中央の第2のゲート絶縁体領域(42)とからなり、前記少なくとも1つのウエル領域(22)は、前記第1のゲート絶縁体領域(41)とのみ直接接触しており、前記第2のゲート絶縁体領域(42)とは直接接触していない、
パワー半導体デバイス(1)。
【請求項2】
- 前記半導体本体(2)が、バンドギャップが大きい材料または炭化ケイ素からなる、および
- 前記パワー半導体デバイス(1)が、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、
の少なくとも一方である、先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項3】
前記ゲート絶縁体(4,41,42)が、第1の材料(M1)および第2の材料(M2)を含み、前記第2の材料(M2)が、前記第1の材料(M1)よりも高い比誘電率を有し、
前記第2の材料(M2)が、前記ゲート電極(3)と前記半導体本体(2)との間に完全に延在する連続的な層である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項4】
前記第1の材料(M1)が、前記半導体本体(2)から離れた前記第2の材料(M2)の側部に位置し、
前記半導体本体(2)が、前記第2の材料(M2)と直接接触しているが、前記第1の材料(M1)とは接触しておらず、
前記第2の材料(M2)の前記連続的な層が、一定の幾何学的層厚さを有する、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項5】
前記第2の材料(M2)が、前記半導体本体(2)から離れた前記第1の材料(M1)の側部に位置し、それによって前記第1の材料(M1)および前記第2の材料(M2)の両方が前記半導体本体(2)と直接接触している、
請求項3に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項6】
前記ゲート絶縁体(4,41,42)が、一定の幾何学的厚さを有し、前記第1の材料(M1)および前記第2の材料(M2)が共通平面において互いに隣り合って位置し、
前記第1の材料(M1)および前記第2の材料(M2)が、前記半導体本体(2)と直接接触している、
請求項3に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記ゲート絶縁体(4,41,42)が1つの材料からなり、それによって前記ゲート絶縁体(4,41,42)が非可変比誘電率を有するが、可変幾何学的厚さを有し、
前記幾何学的厚さが、断面でみると、前記ゲート絶縁体(4,41,42)の中央部分において最大である、
請求項1および2のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項8】
前記ゲート電極(3)が、平面構成を有し、それによって前記ゲート電極(3)が、前記半導体本体(2)の上側部(20)上に位置し、前記上側部(20)が平面状である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記ゲート電極(3)が、トレンチ構成を有し、それによって前記ゲート電極(3)が、前記半導体本体(5)のトレンチ(5)内に延在し、前記ゲート電極(3)が、前記少なくとも1つのウエル領域(22)よりも前記半導体本体(2)に深く延在し、前記少なくとも1つのウエル領域(22)が、前記トレンチ(5)と直接隣り合う、
請求項1~7のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項10】
前記第1のゲート絶縁体領域(41)が、前記ゲート電極(3)の縁部に位置し、前記第2のゲート絶縁体領域(42)が、前記ゲート電極(3)の中間部分に位置する、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項11】
前記半導体本体が、ドリフト領域(23)をさらに備えており、
前記ドリフト領域(23)および前記少なくとも1つのソース領域(21)が、第1の導電型を有し、前記少なくとも1つのウエル領域(22)が、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有し、
前記第2のゲート絶縁体領域(42)が接触している前記半導体本体(2)の唯一の領域が、前記ドリフト領域(23)であり、
断面でみると、前記第1のゲート絶縁体領域(41)が、前記少なくとも1つのソース領域(21)および前記少なくとも1つのウエル領域(22)、ならびに前記ドリフト領域(23)と接触している、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項12】
前記半導体本体(2)に対向する前記ゲート電極(3)の界面に沿った前記第2のゲート絶縁体領域(42)の割合は、前記界面の全体的な範囲の20%以上80%以下であり、
断面でみると、前記第1のゲート絶縁体領域(41)が、前記第2のゲート絶縁体領域(42)の周りで対称的に前記界面に沿って位置する、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項13】
前記第1のゲート絶縁体領域(41)の前記誘電容量が、前記第2のゲート絶縁体領域(42)の前記誘電容量の少なくとも1.4倍、最大で6倍である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項14】
前記ゲート絶縁体(4,41,42)の幾何学的厚さ全体が、10nm以上1.5μm以下である、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項15】
少なくとも2つのソース領域(21)と、前記ソース領域(21)のうちの前記少なくとも2つと電気接触しているソース電極(31)とを備え、
断面でみると、
- 前記ゲート電極(3)が、前記少なくとも2つのソース領域(21)のうちの2つの間に位置し、
- 前記ソース電極(31)が前記半導体本体(2)から離れた側部上で前記ゲート電極(3)を被覆し、それによって前記ソース電極(31)が、前記少なくとも2つのソース領域(21)のための共通電極である、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パワー半導体デバイスが提供される。
【背景技術】
【0002】
文献、WO2014/204491A1は、低損失パワーSiC MOSFETについて言及している。
【0003】
文献、米国特許第8,436,367(B1)号は、安全動作域が増加したSiCパワー垂直DMOSについて言及している。
【0004】
文献、米国特許出願公開第2016/0064550(A1)号は、第1の導電型を有する第1の領域と、第2の導電型を有し、第1の領域と接触している本体領域と、第1の導電型を有し、本体領域によって第1の領域から分離されている第2の領域と、第1の領域、本体領域、および第2の領域と接触している絶縁膜と、絶縁膜を介して本体領域に対向しているゲート電極とを含む絶縁ゲート型スイッチングデバイスを提供する。本体領域は、第1の本体領域と、第2の本体領域とを含む。第1の本体領域は、第2の本体領域よりも大きい理論的閾値レベルVthを有する。
【0005】
文献、米国特許出願公開第2016/0225905(A1)号および米国特許出願公開第2020/0259012(A1)号は、ゲート電極を備える半導体デバイスについて言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、スイッチング挙動が改善されたパワー半導体デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、独立特許請求項に定義されるようなパワー半導体デバイスに関する。例示的なさらなる発展は、従属特許請求項の主題を構成する。
【0008】
パワー半導体デバイスは、バンドギャップが大きい材料に基づくことができ、ゲート電極と、高k材料を全体的または部分的に含み得るゲート絶縁体とを備える。ゲート絶縁体が、中央領域において、例えば縁部よりも大きい可変誘電容量を有する。バンドギャップが大きい材料が、例えばSiCに基づいている。
【0009】
そのようなゲート絶縁体を利用して、デバイスのオン状態のより低い抵抗と、さらに同程度に短いスイッチング時間が維持可能である。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、パワー半導体デバイスは、少なくとも1つのソース領域を有する半導体本体を備える。さらに、パワー半導体デバイスは、半導体本体におけるゲート電極と、半導体本体とゲート電極との間のゲート絶縁体とを備える。少なくとも1つのウエル領域は、少なくとも1つのソース領域およびゲート絶縁体に位置する。ゲート絶縁体は、可変誘電容量を有し、その誘電容量は、いずれの場合でも、総誘電率とその特定の位置におけるゲート絶縁体の幾何学的厚さとの商であり得る。誘電容量は、ゲート絶縁体の残りの領域よりも少なくとも1つのウエル領域において大きい。任意選択的に、断面でみると、ゲート絶縁体は、より大きい誘電容量を有する2つの第1のゲート絶縁体領域と、より小さい誘電容量を有する中央の第2のゲート絶縁体領域とからなり、少なくとも1つのウエル領域は、第1のゲート絶縁体領域とのみ直接接触しており、第2のゲート絶縁体領域とは直接接触していない。
【0011】
換言すれば、誘電容量は、Cdielectric=εε/tであり、εは比誘電率、εは電気定数、tはゲート絶縁体の幾何学的厚さである。Cdielectricは、チャネル領域上でよりも接合型電界効果トランジスタ領域、略してJFET領域上で低い。チャネル領域は、少なくとも1つのウエル領域がゲート絶縁体に近い領域を指す場合があり、JFET領域は、ゲート電極の上面図でみると、ゲート電極の中央領域を指す場合がある。
【0012】
比誘電率(relative dielectric constant)は、比誘電率(relative permittivity)、略記するとそれぞれεもしくはκと称される場合もあり、または単にkと称される場合もある。比誘電率は、例えば、温度300K、および例えば周波数1kHzで測定された値を指すが、これに限定されない。
【0013】
ここで、さらに以下において、「ゲート絶縁体」なる語は、ゲート電極の下方、すなわちゲート電極と半導体本体との間の絶縁体を指す場合がある。例えば、ゲート電極の上部上、すなわち、半導体本体から離れたゲート電極の側部上などのさらなる電気絶縁材料は、「ゲート絶縁体」なる語によって意図されない場合があるが、ゲート電極と半導体本体との間で即座に電気絶縁を確実にする絶縁材料のみを意図する。
【0014】
「ソース領域」なる語は、電界効果トランジスタにおけるソースおよびバイポーラトランジスタにおけるエミッタの両方を指し得る。
【0015】
したがって、パワー半導体デバイスは、スイッチング挙動改善のための可変誘電領域を有する、炭化ケイ素(SiCと略される)金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFETと略される)、またはSiC金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ(MISFETと略される)であり得る。例えば、炭化ケイ素材料に基づくパワーMOSFETを説明する。ゲート絶縁体は、少なくとも1つの高k材料を用いて部分的または全体的に形成される。加えて、ゲート絶縁体は、以下の2つの区分に分割される。第1の区分は、チャネル領域と重複しており、第2の区分はJFET領域上に延在する。JFET領域上に延在する誘電体は、第1の区分と比較すると、異なる材料および/または異なる層厚さで形成され得る。上述のゲート構造によって、デバイススイッチングの速度を下げることなく通電する高k誘電体の利点の活用を可能にする。
【0016】
それ以外の場合、高誘電率材料を使用することは、ゲート端子からみて容量を増加させ、スイッチング速度を下げるようになり得る。異なる材料および/または厚さを有する上述の2つのゾーンのゲート絶縁体を使用することは、ゲート容量の減少を可能にする。
【0017】
炭化ケイ素パワー半導体デバイスは、例えば、650V~1.2kVの電圧による低電圧用途におけるケイ素系パワー半導体デバイスと置き換えられ得る。SiC市場は低電圧デバイスによって大部分が推進されているが、牽引用途など、中電圧および高電圧系統のための≧3.3kVのSiCパワーMOSFETの使用も多くの注目を集めている。優れた材料の特性にかかわらず、様々な用途におけるSiCパワーデバイスの広範な使用前には、対処しなければならないいくつかの問題が依然として存在する。例えば、ゲート誘電体/炭化ケイ素の界面の品質を改善することに労力の大部分が集中している。実際、SiOなどのゲート絶縁体を形成するための酸化プロセス中において、いくつかの界面捕獲状態および欠陥が生じ、SiCのバンドギャップ内に存在することが知られている。これらの欠陥は、電荷捕獲およびクーロン散乱機構に起因して反転チャネル移動度を著しく劣化させる。
【0018】
ゲート絶縁体のために高k材料を使用することは、同じ印加電圧および誘電体厚さに対して反転チャネルにおけるキャリア数が高いことを示唆する。この結果、RDS,ONとも称されるターンオン状態におけるドレインとソースとの間の抵抗が低くなる。加えて、高kゲート誘電体が、高い閾値電圧安定性と、より低い界面状態密度とを実現することが証明されている。ただし、高誘電率材料の1つの欠点は、ゲート容量、例えば、ゲート-ソース容量CGSおよびゲート-ドレインミラー容量CGDがより高い値を有し、これがスイッチング速度を低速にすることである。
【0019】
本明細書において、ゲート絶縁体の改良された構造を説明する。一定の誘電容量を有するゲート誘電体と比較すると、本明細書で説明する構造は、異なる領域に分割され、第1の絶縁体ゲート領域がチャネル領域上に延在し、例えば少なくとも1つの高k材料を用いて形成され、第2の絶縁体ゲート領域が異なる構成を有するJFET領域に対応し、チャネル領域のように同じ厚さを有してSiOで形成可能であり、またはより厚くてもよく、SiOまたは高k材料のいずれかまたはその組み合わせで形成可能である。したがって、本明細書で説明するデバイスの1つの設計上の特徴は、JFET領域上に延在するゲート絶縁体のより低い誘電容量を有することであり、それによってさらにゲート容量を減少させる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体が、SiCである。ただし、半導体本体が、代替的に、Siを有することもでき、または、GaまたはGaNなどの高バンドギャップ化合物半導体材料を有することもできる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスが、電界効果トランジスタ、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、略してIGBTである。例えば、本明細書で説明するパワー半導体デバイスは、例えば、MOSFETおよびIGBTなどのMOS系SiCトレンチデバイスまたは平面デバイスであるか、あるいはそれらに含まれる。したがって、パワー半導体デバイスは、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ(MISFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含む、またはそれらのグループから選択されたデバイスである、またはそのようなデバイスであり得る。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、第1の材料および第2の材料を含む。第2の材料は、第1の材料よりも高い比誘電率を有し、結果として高k材料であり得る。例えば、第2の材料と第1の材料の比誘電率間の比率は、例えば、少なくとも係数1.2だけ、または少なくとも係数1.5だけ、または少なくとも係数2.5だけ、および/または最大で係数4.5だけなど、1.2~5の間で変化する。例えば、第1の材料がSiOであり、第2の材料が、例えば、Si、Al、Y、ZrO、HfO、La、Ta、TiOのグループから選択される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の材料のみが、チャネル領域上に直接、すなわち、ウエル領域上に直接存在する。第1の低k材料がウエル領域から離れた場所にのみ適用されることが可能であり、それによって第1の材料がJFET領域に限定され得る。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の材料が連続的な層として存在する。上記の連続的な層は、ゲート電極と半導体本体との間に完全に延在し得る。したがって、第2の材料、すなわち、高k材料にわたって延びることなく、ゲート電極と半導体本体との間に直接の直線的接続線が存在しなくてもよい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の材料が、半導体本体から離れた第2の材料からなる側部に位置する。この場合、第2の材料が、半導体本体と直接接触でき、第1の材料が半導体本体から離れていて、半導体本体と直接接触していなくてもよい。例えば、第2の材料が、連続的な層として半導体本体に最初に適用され、次いで、第1の材料が構造化するように適用され、またはその逆である。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の材料の連続的な層が、一定の幾何学的層厚さを有する。「一定の幾何学的層厚さ」なる語は、その層の最大の厚さの最大10%、または最大5%という厚さばらつきを許容し得る。したがって、例えば製造許容範囲に起因する不意の厚さばらつきは、本文脈では可変厚さと見なされないものとする。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の材料が、半導体本体から離れた第1の材料からなる側部に位置する。この場合、第1の材料および第2の材料の両方は、半導体本体と直接接触していることが可能である。例えば、第1の材料は、構造化するように半導体本体に適用され、それによって半導体本体の一部のみが、後のゲート電極領域における第1の材料によって被覆され、次いで、第1の材料が、例えば、この場合も一定の厚さを有し得る連続的な層として適用される。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体が、一定の幾何学的厚さを有する。この場合、第1の材料および第2の材料が、共通平面において互いに隣り合って位置する。例えば、両方の材料が、一定の厚さを有する半導体本体の上側部上に直接適用される。例えば、両方の材料が、上側部の上面図でみると、分離性かつ非重複で適用される。したがって、第1および第2の材料は、互いに重複せずに互いに直接隣り合ってもよい。それ以外では、第1および第2の材料は、例えば製造プロセスに起因して重複し得る。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体が、正確に1つの材料からなる。したがって、ゲート絶縁体は、非可変比誘電率、結果として可変幾何学的厚さを有する。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体の幾何学的厚さが、断面でみると、ゲート絶縁体の中央部分で最大である。「断面」なる語は、半導体本体の上側部に対して垂直で、上側部の上面図でみると、例えば、ゲート電極がストリップ電極の場合に、ゲート電極の主な範囲の方向に対して垂直な面を指し得る。ゲート絶縁体の中央部分は、ドリフト層に直接接触しているゲート絶縁体のその領域である。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極が、平面構成を有する。したがって、ゲート電極が半導体本体の上側部上に位置し、上側部が平面状である。この場合、ゲート電極もゲート絶縁体も、半導体本体において貫通していない。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極が、トレンチ構成を有する。この場合、ゲート電極が、半導体本体のトレンチ内に延在する。例えば、ゲート絶縁体が、トレンチの側壁およびトレンチの底部を被覆し、ゲート電極が、トレンチ内のゲート絶縁体に埋め込まれている。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極が、少なくとも1つのウエル領域および/または少なくとも1つのソース領域よりも、半導体本体により深く延在する。結果として、ゲート絶縁体も、少なくとも1つのウエル領域および/または少なくとも1つのソース領域の深さよりも大きい深さを有する。「深さ」は、半導体本体の上側部から離れた方向に延び、その上側部に対して垂直な方向を指し得る。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つのウエル領域および/または少なくとも1つのソース領域が、トレンチと直接隣り合う。それによって、少なくとも1つのウエル領域および/または少なくとも1つのソース領域が、トレンチの側壁においてゲート絶縁体と直接接触していることが可能である。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体が、より大きい誘電容量を有する、2つ、または3つ以上の第1のゲート絶縁体領域と、より小さい誘電容量を有する、1つ、または少なくとも1つの中央の第2のゲート絶縁体領域とからなる。これは、例えば、ゲート電極を介して、半導体本体の上側部に対して垂直な断面でみる場合に該当する。上記の断面でみると、第1のゲート絶縁体領域が、ゲート電極の縁部に位置することができ、第2のゲート絶縁体領域が、ゲート電極の中間部分に位置することができる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、例えば、ゲート電極を通って半導体本体の上側部に対して垂直な断面でみると、少なくとも1つのウエル領域が、第1のゲート絶縁体領域のうちの少なくとも1つとのみ直接接触し、第2のゲート絶縁体領域とは接触しない。したがって、少なくとも1つのウエル領域が、より高い誘電容量を有するそれぞれの第1のゲート絶縁体領域に限定されることができる。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体が、ドリフト領域をさらに備える。ドリフト領域および少なくとも1つのソース領域が、第1の導電型、例えばn導電型を有することができ、したがってnドープであり得る。例えば、少なくとも1つのソース領域および少なくとも1つのウエル領域が、ドリフト領域に埋め込まれ、それによって半導体本体の大部分が、ドリフト領域からなり得る。このドリフト層が、同質のドーピング濃度を有し得る。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つのウエル領域が、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する。例えば、少なくとも1つのウエル領域が、p導電型を有し、したがってpドープである。半導体本体内で、少なくとも1つのウエル領域が、それぞれのソース領域をドリフト領域から完全に分離することが可能であり、それによってそれぞれのソース領域とドリフト領域との間に直接接触がない。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、例えば、ゲート電極を通って半導体本体の上側部に対して垂直な断面でみると、第2のゲート絶縁体領域が接触している半導体本体の領域のみがドリフト領域である。それによって、第2のゲート絶縁体領域が、少なくとも1つのウエル領域から離れることができ、少なくとも1つのソース領域を形成し得る。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、例えば、ゲート電極を通って半導体本体の上側部に対して垂直な断面でみると、第1のゲート絶縁体領域が、少なくとも1つのソース領域および/または少なくとも1つのウエル領域、ならびにドリフト領域と接触している。それによって、第1のゲート絶縁体領域が、半導体本体のそれらの3つの領域全てに近接できる。ただし、ドリフト領域と接触している第1のゲート絶縁体領域の割合は、例えば、少なくとも1つのソース領域および/または少なくとも1つのウエル領域と接触している割合より小さい。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体が、コレクタ層をさらに備える。このコレクタ層が、ウエル領域と同じ導電型を有する。コレクタ層が、上側部の反対側の半導体本体の下側部に位置し得る。ソース領域の全てに対して1つのコレクタ層が存在し得る。コレクタ電極が、コレクタ層に対して直接適用され得る。コレクタ層が存在する場合、パワー半導体デバイスがIGBTであり得る。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体が、少なくとも1つのドレイン領域をさらに備える。このドレイン領域が、少なくとも1つのソース領域と同じ導電型を有する。例えば、ドレイン領域が、下側部における層である。例えば、ドリフト領域が、上側部とドレイン領域との間に位置する。ソース領域の全てに対して1つの共通ドレイン領域が存在し得る。ドレイン電極が、少なくとも1つのドレイン領域と直接接触し得る。ドレイン領域が存在する場合、パワー半導体デバイスが、MOSFETまたはMISFETであり得る。ドレイン層が、ドリフト層よりも高いドーピング濃度を有する。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体に対向するゲート電極の界面に沿った第2のゲート絶縁体領域の割合は、その界面の全体的範囲の少なくとも20%であり、または少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、および/また最大で80%もしくは最大で70%もしくは最大で60%である。界面が、ゲート絶縁体と半導体本体との間の接触面であり得る。上述した値は、例えば、ゲート電極を通る例えば最短の線に沿って半導体本体の上側部に対して垂直な断面でみる場合に該当する。ゲート電極が平面状の場合、界面が、直線に沿って延びてもよく、ゲート電極がトレンチ設計を有する場合、界面が断面でみるときに、U字形であり得る。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、断面でみると、第1のゲート絶縁体領域が、第2のゲート絶縁体領域の周りで対称的に界面に沿って位置する。それによって、断面でみると、第1のおよび第2のゲート絶縁体領域の設計に関して、ゲート絶縁体を通る鏡面対称の線が存在し得る。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体全体の幾何学的厚さが、少なくとも5nm、または少なくとも40nm、または少なくとも100nmである。代替的または追加的に、この幾何学的厚さが、最大1.5μmまたは最大0.8μmまたは最大0.5μmである。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体が少なくとも1つのプラグを備える。例えば、このプラグが、少なくとも1つの割り当てられたウエル領域との電気接触を実現するために、ソース電極と直接接触している。例えば、少なくとも1つのプラグおよび少なくとも1つのウエル領域が、同じ導電型を有し、少なくとも1つのプラグがより強力にドープされ得る。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスが、ソース領域およびソース電極のうちの少なくとも2つを備える。ソース電極が、ソース領域のうちの少なくとも2つと電気接触しており、例えば直接接触している。それによって、上記の少なくとも2つのソース領域が、同電位であり得る。任意選択肢として、ソース電極はまた、少なくとも1つのプラグと直接接触し得る。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、上側部に対して垂直な断面でみると、ゲート電極が、少なくとも2つのソース領域のうちの2つの間に位置する。それによって、2つのソース領域が、1つのゲート電極に割り当てられ得る。ソース領域が、それぞれのゲート電極に隣り合って対称的に配置され得る。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、上側部に対して垂直な断面でみると、ソース電極が、半導体本体から離れた側部上のゲート電極を部分的または全体的に被覆する。ソース電極およびゲート電極が、1つまたは複数の絶縁材料からなる1つまたは複数の層によって電気的絶縁される。それによって、ソース電極が、少なくとも2つの割り当てられたソース領域の共通電極であり得る。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスが、セル設計を有する。これは、例えば、上面図でみると、ゲート電極が四角形または略四角形の形状を有するが、それに限定されないことを意味し得る。それ以外では、パワー半導体デバイスが、ストライプ設計であり得、それによってゲート電極が幅よりも大幅に長い。セル設計およびストライプ設計の両方において、複数のゲート電極が存在し得る。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスが、パワーデバイスである。例えば、パワー半導体デバイスが、少なくとも1A、もしくは少なくとも20Aのドレイン電極またはコレクタ層を通る最大電流のために構成されている。代替的または追加的に、パワー半導体デバイスが、少なくとも0.1kVまたは少なくとも0.6kVまたは少なくとも1.2kVの最大電圧のために構成されている。
【0052】
パワー半導体デバイスが、例えばハイブリッド自動車またはプラグイン電気自動車において、電気モーターのためにバッテリからの直流を交流に変換する、例えば車両におけるパワーモジュールのためのものである。さらに、パワー半導体デバイスが、例えば自動車のような車両におけるヒューズであり得る。パワー半導体デバイスが、例えば変換器として、電車または鉄道網において使用されることも可能である。
【0053】
パワー半導体デバイスが、図面を参照して、例示的な実施形態を用いてより詳細に説明される。個別の図面において同一である要素は、同一の参照番号で示される。要素間の関係は、一定の縮尺で示されていないが、むしろ、個別の要素が理解を助けるために誇張して大きく示される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略斜視図であって、ゲート電極領域の詳細図も提供される図である。
図2】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略斜視図であって、ゲート電極領域の詳細図も提供される図である。
図3】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図4】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図5】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図6】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図7】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図8】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図9】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図10】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図11】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図12】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図13】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図14】本明細書で説明するパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
図15】修正されたパワー半導体デバイスの概略斜視図である。
図16図1および図2の例示的な実施形態についてのシミュレーションデータを示す図である。
図17図1および図2の例示的な実施形態についてのシミュレーションデータを示す図である。
図18図1および図2の例示的な実施形態についてのシミュレーションデータを示す図である。
図19図1および図2の例示的な実施形態についてのシミュレーションデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1において、パワー半導体デバイス1の例示的な実施形態が図示されている。パワー半導体デバイス1は、半導体本体2を備える。半導体本体2は、半導体本体2の上側部20に2つのソース領域21と、ソース領域21に2つのウエル領域22とを備える。さらに、ウエル領域22およびソース領域21が埋め込まれるドリフト領域23が存在する。ウエル領域22は、ソース領域21をドリフト領域23から分離する。パワー半導体デバイス1がMISFETまたはMOSFETの場合、上側部20の反対側の半導体本体2の下側部29に任意のドレイン領域24が存在し得る。任意選択肢として、ドリフト領域23とドレイン領域24との間に不図示のバッファ層が存在し得る。
【0056】
任意選択肢として、ウエル領域22との電気接触を提供する2つのプラグ25が上側部20に存在する。例えば、ソース領域21およびウエル領域22は、ソース電極31によって電気接触される。ドレイン領域24は、ドレイン電極32によって電気接触され得る。
【0057】
例えば、ソース領域21およびドレイン領域24はnドープであり、ドリフト領域23はnドープであり、ウエル領域22はpドープであり、任意のプラグ25はpドープである。それ以外では、ドーピング型は、全て反転され得る。
【0058】
例えば、ソース領域21、ドレイン領域24およびプラグの最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1018cm-3、または少なくとも5×1018cm-3、または少なくとも1×1019cm-3、および/または最大で5×1020cm-3、または最大で2×1020cm-3、または最大で1×1020cm-3である。さらに、ウエル領域22の最大ドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3、または少なくとも1×1017cm-3、および/または最大で5×1019cm-3、または最大で5×1018cm-3であり得る。パワー半導体デバイス1の電圧階級に応じて、ドリフト領域23の最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1014cm-3、または少なくとも5×1014cm-3、または少なくとも1×1015cm-3、および/または最大で1×1017cm-3、または最大で5×1016cm-3、または最大で1×1016cm-3であり得る。
【0059】
半導体本体2は、基板およびエピタキシャルに成長した半導体区分、またはエピタキシャルに成長した半導体区分のみからなり得る。基板の存在に応じて、例えば、基板は、ドレイン領域24に含まれ、ドリフト領域23は、その上部上で成長される。ドリフト領域厚さは、例えば3μm~0.2mmの範囲であることが可能で、および/またはドレイン領域厚さは、1μm以上0.5mm以下であり得る。
【0060】
さらに、パワー半導体デバイス1は、ドリフト領域23のウエル領域22間に位置する上側部20においてゲート電極3を含む。例えば、ゲート電極3は、金属、またはポリSiなどの高伝導半導体材料からなる。
【0061】
ゲート電極3と半導体本体2との間には、ゲート絶縁体4が存在する。ゲート絶縁体4は、2つの異なるゾーン、すなわち、2つの第1のゲート絶縁体領域41と、1つの第2のゲート絶縁体領域42とを備える。第2のゲート絶縁体領域42は、第1のゲート絶縁体領域41よりも小さい誘電容量を有する。ゲート絶縁体4の特定の位置毎において、それぞれの局所的誘電容量は、総誘電率および局所的材料の局所的幾何学的厚さの商を指す。図1の平面設計の場合、幾何学的厚さは、平面的な上側部20に対して垂直に測定される。
【0062】
図1によれば、ゲート絶縁体4は、一定の幾何学的厚さを有し、したがって第1および第2のゲート絶縁体領域41、42の全ては、同じ幾何学的厚さを有する。異なる誘電容量を得るために、第1のゲート絶縁体領域41は、第2のゲート絶縁体領域42の第1の材料M1よりも高い比誘電率を有する第2の材料M2からなる。第2の材料M2は、高k材料と称され得る。例えば、第1の材料M1は、SiOであり、第2の材料M2は、Y、ZrO、HfO、La、Ta、またはTiOである。例えば、第1のゲート絶縁体領域41の誘電容量と第2のゲート絶縁体領域42の誘電容量との比率は、少なくとも1.2、および/または最大10である。
【0063】
第2のゲート絶縁体領域42は、ドリフト領域23においてのみ半導体本体2と接触している一方、第1のゲート絶縁体領域41は、ソース領域21、ウエル領域22、および、例えばより小さい割合のために、ドリフト領域23に接触する。第1のゲート絶縁体領域41は、第2のゲート絶縁体領域42に隣り合って鏡面対称のように配置される。第1のゲート絶縁体領域41および第2のゲート絶縁体領域42の全ては、上側部20に対して平行な平面において、上側部20上に直接位置する。
【0064】
図1に示す以外で、ドレイン電極32は、バイアによって上側部20まで延ばされることができ、または、例えば、ドレイン層24を不図示の窪みによって局所的に露出させることによって、同様に上側部20上に位置し得る。
【0065】
ゲート電極3と、したがってゲート絶縁体4とはストリップ形状を有してもよく、したがって長さ方向Gに沿ったゲート電極3の長さは、ゲート電極3の幅よりも大きい。それ以外では、パワー半導体デバイスが、セル設計を有してもよく、それによってゲート電極3は、四角形、または略四角形を有するが、それに限定されない。下方の断面は、長さ方向Gに対して垂直である。
【0066】
図2の例示的な実施形態において、第2のゲート絶縁体領域42は、第1のゲート絶縁体領域41よりも大きい幾何学的厚さを有する。したがって、第1のゲート絶縁体領域41および第2のゲート絶縁体領域42は、異なる誘電容量が異なる幾何学的厚さによって得ることができるため、同じまたは異なる材料を有し得る。例えば、ウエル領域22上の第1のゲート絶縁体領域41は、高k材料、すなわち、第2の材料M2からなり、第2のゲート絶縁体領域42は、SiOなどの第1の材料M1からなり得る。
【0067】
ゲート絶縁体4およびゲート電極3の両方からなるスタック全体は、一定の厚さを有し得、それによってゲート電極3は、断面でみるとU字形を有し得る。
【0068】
それ以外について、図2は、図1と同様である。
図3の例示的な実施形態において、第2のゲート絶縁体領域42の厚さは、ゲート絶縁体4およびゲート電極3からなるスタック全体の厚さに対応する。それによって、ゲート電極3は、第1のゲート絶縁体領域41に限定されることが可能である。断面でみると、ゲート電極3は、第2のゲート絶縁体領域42によって、2つの等しい部分に分割可能である。例えば、第2のゲート絶縁体領域42は、SiOのような低kを有する第1の材料M1を有し、または高kを有する第2の材料M2を有し、第1のゲート絶縁体領域41は、高kを有する第2の材料M2を有する。
【0069】
さらに、パワー半導体デバイス1は、半導体本体2から離れたゲート電極3の側部に位置する上部ゲート絶縁体領域6を含み得る。上部ゲート絶縁体領域6は、ソース電極31をゲート電極3から電気的に分離し得る。そのような上部ゲート絶縁体領域6は、図1および図2のパワー半導体デバイス1にも存在し得る。
【0070】
例えば、ゲート絶縁体4は、例えば、少なくとも1μmおよび/または最大20μmの全幅Wを有する。上側部20に沿って、第2のゲート絶縁体領域42は幅W2を有し、第1のゲート絶縁体領域41の各々は幅W1を有し、したがってW=W2+2×W1である。
【0071】
それ以外について、図3は、図2と同様である。
図4によれば、ゲート絶縁体4は、上側部20において直接、一定の厚さを有する連続的な層を備える。例えば、この層は、第2の高k材料M2を有する。上側部20から離れたこの層の側部上に、例えば第1の材料M1を有する被膜が存在する。第1の材料M1からなる被膜は、第2の材料M2からなる層よりも小さい幅を有し、その層と被膜との両方が、例えば第2の材料M2などの同じ材料を有することも可能である。
【0072】
例えば、断面でみると、被膜は、台形の形状を有することができ、それによって上側部20から離れる方向において狭くなる。ゲート絶縁体4およびゲート電極3の両方からなるスタック全体は、図2にあるように、例えば一定の厚さを有し得る。
【0073】
それ以外について、図4は、図1図3と同様である。
また、図5のゲート絶縁体4は、上記被膜および層を備える。図4とは逆に、被膜は、上側部20上に直接適用され、層は、被膜と、上側部20の一部とを完全に被覆する。この場合も、層は一定の厚さを有し得る。
【0074】
それ以外について、図5は、図4と同様である。
図6によれば、第1のゲート絶縁体領域41は、例えば製造問題に起因して、第2のゲート絶縁体領域42よりも大きい幾何学的厚さを有する。これは、所望の誘電容量を得るために、第2のゲート絶縁体領域42のために第1の材料M1、および第1のゲート絶縁体領域41のために第2の材料M2を選択することによって補償され得る。それによって、材料M1、M2の比誘電率は、第1および第2のゲート絶縁体領域41、42の幾何学的厚さを補償し得る。
【0075】
それ以外について、図6は、図1図5と同様である。
図7によれば、パワー半導体デバイス1は、トレンチ設計を有し、したがって半導体本体2において、下側部29に向かって延びるトレンチ5が存在する。ゲート電極3およびゲート絶縁体4は、大部分または完全にトレンチ5内に位置する。トレンチ5は、トレンチ5と、したがってゲート絶縁体4と直接隣り合うウエル領域22よりも下側部29に近くに延びる。ゲート電極3は、ゲート電極5をソース電極31から分離するために、上部ゲート絶縁体領域6によって被覆されることができる。
【0076】
トレンチ5の側壁51において、第1のゲート絶縁体領域41が存在し、トレンチ底部52において、第2のゲート絶縁体領域42が存在する。側壁51に沿って、第1のゲート絶縁体領域41が第1の長さL1を有する。トレンチ5の深さは、第1の長さL1および第2の長さL2の和に相当する。トレンチ5の幅は、第3の長さL3に相当する。例えば、長さL2は、側壁またはチャネルに対して垂直方向でみると、第1のゲート絶縁体領域41の厚さよりも大きい。
【0077】
すなわち、断面でみると、ゲート絶縁体4と半導体本体2との間の界面が全体長さL=L1+L2+L3+L2+L1を有する一方、第2のゲート絶縁体領域42が、結果として、長さL*=L2+L3+L2を有する。トレンチ底部52において、第2のゲート絶縁体領域42の幾何学的厚さはL2である。
【0078】
第1および第2のゲート絶縁体領域41、42は、同じ材料、例えば第2の材料M2を有し得る。
【0079】
それ以外について、図7は、図1図6と同様である。
図8によれば、側壁51およびトレンチ底部52の全ての上に一定の厚さの層が存在する。この層上、およびトレンチ底部52上に、第2のゲート絶縁体領域42を画定する被膜が存在する。例えば、第2のゲート絶縁体領域42のための被膜は、第1の材料M1を有し、大部分が第1のゲート絶縁体領域41のための層は、第2の材料M2を有する。
【0080】
それ以外について、図8は、図7と同様である。
図9の実施形態では、まず、被膜がトレンチ底部52に適用され、次いで、層がその被膜、および側壁51の残りの部分に適用される。例えば、第2のゲート絶縁体領域42のための被膜は、第1の材料M1を有し、大部分が第1のゲート絶縁体領域41のための層は、第2の材料M2を有する。
【0081】
それ以外について、図9は、図7および図8と同様である。
図10によれば、その被膜は、例えば湾曲するトレンチ底部52を補償するために可変厚さを有する。この文脈において、図7図12では、トレンチ5は、矩形の断面を有するように理想化されて図示されていることに留意されたい。ただし、エッチングプロセスに起因して、トレンチ5は、断面でみると、台形形状、または丸みを帯びた角部を有する矩形形状を有し得る。
【0082】
それ以外について、図10は、図7図9と同様である。
図11の実施形態では、トレンチ5の側壁51は、第1のゲート分離領域41を画定する、例えば第2の材料M2の一定の厚さを有する層とともに設けられる。第2のゲート分離領域42のために、トレンチ底部52において、第1の材料M1が適用される。追加的または代替的に、各側壁51およびトレンチ底部52は、本質的に第2の材料M2によってのみ被覆可能である。
【0083】
それ以外について、図11は、図7図10と同様である。
図12によれば、この場合も、側壁51は第2の材料M2で被覆され、トレンチ底部52は第1の材料M1によって被覆される。図11以外において、第1の材料M1は、例えば、側壁51上の他方の材料へも薄層として延びる。
【0084】
それ以外について、図12は、図7図11と同様である。
図1図12のパワー半導体デバイス1において、電流は、ソース領域21からドレイン領域24へ、すなわち、上側部20から下側部29へ本質的に垂直方向に流れる。それとは逆に、図13では、ドレイン領域24およびソース領域21の両方が上側部20に位置する。
【0085】
それ以外について、図13は、図1図6と同様である。例えば、図1図6の異なるゲート絶縁体設計は、同様に、図13のソース-ドレイン設計に対しても使用可能である。
【0086】
図1図13において、パワー半導体デバイス1は、MISFETまたはMOSFETである。図14のパワー半導体デバイス1は、IGBTである。したがって、下側部29において、ウエル層22と同じ導電型、例えばpドープを有するコレクタ層26が存在する。ドリフト領域23とコレクタ層26との間に不図示のバッファ層が存在し得る。例えば、コレクタ層26のドーピング濃度については、同様のことが任意選択のプラグ25にも適用される。結果として、ゲート電極4から離れたコレクタ層26の側部において、コレクタ電極33が存在する。
【0087】
図14のIGBTが平面設計を有するが、図7図14のトレンチ設計は、図14のようなIGBTにも適用可能である。したがって、それ以外について、図14は、図1図12と同様である。
【0088】
図15において、修正された半導体デバイス9が示されている。修正された半導体デバイス9は、一定の誘電容量を有し、したがって一定の実効厚さを有する修正されたゲート絶縁体91を備える。図1図14のパワー半導体デバイス1と比較すると、図15の修正された半導体デバイス9は、低減された、すなわち、低速化したスイッチング挙動を有する。
【0089】
本明細書で説明するゲート絶縁体設計の好ましい効果を証明するために、図16図19において、1.2kVの電圧用に構成されたパワー半導体デバイス1を考慮したコンピュータ支援設計技術TCADによるシミュレーション結果が示されている。図16および図17は、図1のパワー半導体デバイス1を参照し、図18および図19は、図2のパワー半導体デバイス1を参照する。シミュレーションされた回路は、誘導負荷スイッチング、ILS、すなわち、負荷として、制御されていないダイオードを用いたインダクタを有する被験デバイスのために使用される標準である。一例として、供給電圧は600Vに設定され、負荷電流は50Aに設定される。
【0090】
曲線Cは、図1および図2の文脈で上述されたそれぞれのゲート絶縁体4を示し、第1のゲート絶縁体領域41は高k材料を有し、第2のゲート絶縁体領域42はSiOを有する。曲線Aは、図1および図2と同じ形状を有するが、高k材料のみを用いた修正されたゲート絶縁体91を示し、したがって、曲線Bは、SiOのみを用いた修正されたゲート絶縁体91を示す。図16および図18は、ターンオフ段階中に時間Tに応じたゲートソース間電圧Vgsを示し、図17および図19は、ターンオン段階中におけるゲートソース間電圧Vgsを示す。
【0091】
図16図19から、本明細書で説明するゲート絶縁体構造を用いると、完全な高kゲート絶縁体設計の場合と比較すると、少なくともスイッチング時間を短くすることが可能であることがわかる。
【0092】
ここで説明する本発明は、例示的な実施形態を参照して与えられた記載によって限定されない。むしろ、本発明は、請求項における特徴の特定の任意組み合わせを含む任意の新規の特徴および特徴の任意の組み合わせを、この特徴またはこの組み合わせ自体が請求項または例示的な実施形態に明示されていなくても、包含する。
【0093】
本特許出願は、欧州特許出願第21159962.6号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0094】
参照符号の一覧
1 パワー半導体デバイス
2 半導体本体
20 上側部
21 ソース領域
22 ウエル領域
23 ドリフト領域
24 ドレイン領域
25 プラグ
26 コレクタ層
29 下側部
3 ゲート電極
31 ソース電極
32 ドレイン電極
33 コレクタ電極
4 ゲート絶縁体
41 第1のゲート絶縁体領域
42 第2のゲート絶縁体領域
5 トレンチ
51 側壁
52 トレンチ底部
6 上部ゲート絶縁体領域
9 修正された半導体デバイス
91 修正されたゲート絶縁体
A 高k材料のみの使用についてのシミュレーションデータ
B SiOのみの使用についてのシミュレーションデータ
C 第1および第2のゲート絶縁体領域の使用についてのシミュレーションデータ
G ゲート電極の長さ方向
L1 第1のゲート絶縁体領域の第1の長さ
L2 第2の長さ
L3 第3の長さ
M1 より低い比誘電率を有する材料
M2 より高い比誘電率を有する材料
T 任意の単位の時間
Vgs Vを単位とするゲートソース間電圧
W ゲート絶縁体全体の幅
W1 第1のゲート絶縁体領域の幅
W2 第2のゲート絶縁体領域の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】