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特表2024-515155半導体デバイス用の半導体パワーモジュールおよび半導体パワーモジュールを製造する方法ならびに半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】半導体デバイス用の半導体パワーモジュールおよび半導体パワーモジュールを製造する方法ならびに半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240329BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L23/28 E
H01L23/30 B
H01L25/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555300
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022052065
(87)【国際公開番号】W WO2022189066
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161542.2
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】エルバー,ローマン
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA04
4M109CA21
4M109CA22
4M109DB15
4M109EA02
4M109EA12
4M109EB18
4M109EC03
4M109EE01
4M109GA02
(57)【要約】
半導体パワーモジュール(10)が、ベースプレートを形成する基板層(11)と、基板層と結合された成形体とを含む。成形体は、成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層(11)と、
前記基板層(11)と結合された成形体であって、
前記成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する、
少なくとも1つの繊維構造、および
少なくとも1つのメッシュ構造、
のうちの少なくとも一方を有する、成形体と、
を含む、半導体パワーモジュール(10)。
【請求項2】
前記成形体は、第1の成形コンパウンドと、異なる第2の成形コンパウンドとを含み、前記第1の成形コンパウンドは、局所的な強化を有しない第1の成形体部分(12)を形成するように構成されており、前記第2の成形コンパウンドは、前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を含み、局所的な強化を有する第2の成形体部分(13)を形成するように構成されている、請求項1に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項3】
前記第2の成形コンパウンドは、ガラス繊維および炭素繊維のうちの少なくとも一方を含む、請求項2に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項4】
前記第1の成形コンパウンドおよび前記第2の成形コンパウンドは、それぞれのフィラーおよび樹脂材料のうちの少なくとも一方に関して互いと異なる、請求項2または3に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項5】
前記第1の成形体部分(12)および前記第2の成形体部分(13)は、前記半導体パワーモジュール(10)の積層方向(A)に関して前記基板層(11)と結合され、前記積層方向(A)に対して垂直な、前記半導体パワーモジュール(10)の横方向(B、C)に沿って、互いに少なくとも部分的に重なり合う、請求項2~4のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項6】
前記成形体は、局所的な強化を有する第2の成形体部分(13)を形成する繊維構造およびメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を含む別個の要素によって形成された別個の強化部を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項7】
前記別個の強化部は、ガラス繊維および炭素繊維のうちの少なくとも一方を含む、請求項6に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項8】
前記別個の強化部は、導電性メッシュを含む、請求項6または7に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項9】
前記別個の強化部は、非導電性メッシュを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項10】
前記成形体は、開口(15)、リセス(16)、隣接エリアの観点から減厚を有する壁構造(17)、および/または、隣接エリアの観点から減厚を有する壁エリア(18)を含み、前記少なくとも1つの局所的な強化部分は、前記開口(15)、前記リセス(16)、前記壁エリア(18)および前記壁構造(17)のうちの少なくとも1つに隣接して形成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項11】
前記基板層(11)と結合されるとともに少なくとも部分的に前記局所的な強化部において覆われる電子ユニット(14)をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項12】
前記半導体パワーモジュール(10)は、前記基板層(11)と結合される電子ユニット(14)をさらに含み、前記成形体の前記少なくとも1つの局所的な強化部分は、横方向(B、C)に関して前記電子ユニット(14)以外に加えてのみ形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)と、
前記半導体パワーモジュール(10)に結合される電子機器と、
を備える、半導体デバイス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール(10)を製造する方法であって、
基板層(11)を提供することと、
少なくとも1つの繊維構造および少なくとも1つのメッシュ構造のうちの少なくとも一方を提供することと、
物質を提供することと、
成形体が、前記成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を有して形成されるように、提供された前記物質を前記基板層(11)上に成形することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を提供することは、
第1の成形コンパウンドを提供することと、
前記第1の成形コンパウンドとは異なる第2の成形コンパウンドを提供することであって、前記第1の成形コンパウンドは、局所的な強化を有しない第1の成形体部分(12)を形成するように構成されており、前記第2の成形コンパウンドは、前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を含み、局所的な強化を有する第2の成形体部分(13)を形成するように構成されている、第2の成形コンパウンドを提供することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を提供することならびに提供された前記物質を成形することは、
前記少なくとも1つの繊維構造および前記少なくとも1つのメッシュ構造のうちの前記少なくとも一方を含む別個の強化部を提供することと、
前記強化部を前記基板層(11)に対して位置決めすることと、
提供された前記物質を前記基板層(11)上に成形することであって、それにより、埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する前記強化部を有する成形体を形成する、成形することと、
を含む、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイス用の半導体パワーモジュールおよび対応する半導体パワーデバイスに関する。本開示はさらに、半導体パワーモジュールのための対応する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パワーパッケージは、例えば、冷却器への固定に起因してまたは熱サイクル時に機械的応力を受ける低電圧、中電圧および高電圧用途のための技術を形成する。したがって、例えば、熱機械的応力に起因して、モジュールカプセル化において割れ目またはクラックを生じるリスクがある。これに関して、損傷を防止することが一般的に課題である。文献、米国特許第8906749(B2)号は、半導体デバイスを製造する方法ならびにキャリアおよび少なくとも1つの半導体チップを含む対応する半導体を開示している。一実施形態によれば、半導体デバイスのチップは、チップを完全に覆う繊維強化カプセル化層と接触する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施形態は、損傷のリスクの低減が見られる安定した半導体パワーモジュールに関する。本開示のさらなる実施形態は、対応する半導体デバイスおよびそのようなパワーモジュールのための製造方法を提供することに関する。
【0004】
一実施形態によれば、半導体パワーモジュールは、ベースプレートを形成する基板層と、基板層と結合された成形体とを含む。成形体は、成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含む。
【0005】
記載の構成を用いることにより、繊維および/メッシュを使用する機械的に強化された部分を有する安定した半導体パワーモジュールが低コストで実現可能である。したがって、半導体パワーモジュールは、例えば、狭壁もしくは薄化部分の感度の高い位置または増大した応力に晒される部分に生じる損傷のリスクの低減に寄与する。半導体パワーモジュールは、半導体パワーパッケージと呼ぶこともできる。
【0006】
基板層は、単層を実現することができるか、または、より多くの基板を含むもしくは基板を有するベースプレートを含むことができる。基板層はまた、成形体を支持するリードフレームを実現することができる。基板層はまた、1つのピースに成形体と一体的に形成される、成形体の一部分を実現することができる。「埋め込まれた」という用語は、成形体のコンパウンドで含侵されているかまたは成形体のコンパウンドで覆われている繊維および/またはメッシュ構造があることを意味するかまたはそのようなものと解釈することもできる。繊維および/またはメッシュ構造は、成形体内に完全に封入されているという意味で埋め込まれることもできる。代替的に、繊維および/またはメッシュ構造は、一部が埋め込まれることができる。代替的または追加的に、モールドコンパウンドが初めに繊維を含んでいてもよい。
【0007】
本開示の文脈において、従来のパッケージに関して、パッケージボディは、例えば、十分な機械的安定性を提供するために、堅い基板とともにまたは基板を有するベースプレートとともに組み付けられることが認識である。それにもかかわらず、成形パッケージの観点から、従来のボディの典型的なサイズは比較的小さい。さらに、従来の成形モジュールは、例えば、熱膨張係数の調整のためおよび所望の誘電挙動のために80~90%のシリカ粒子が充填された、高度のフィラーを有する標準の成形コンパウンドを含む。そのような高度のフィラー含量は、成形コンパウンドを機械的挙動に対して脆弱にする。
【0008】
記載の強化された半導体パワーモジュールは、機械的不安定性をなくすようにすることができ、安定性が十分かつ確実な、例えば50mm以上100mmまでの縁の長さを有する、大型のパワーパッケージにおけるその適用さえ可能にする。例えば、記載の半導体パワーパッケージは、例えば、大型基板用途のために100×140mmの成形体サイズにさえ適切であるものとすることができる。そのような大型サイズは、例えばパワーモジュールを冷却器にねじ締めする際または熱サイクル時に曲がることによって生じる機械的応力に対して、パワーモジュールのボディをさらにより感度の高いものにする。成形体に埋め込まれた繊維および/またはメッシュ構造をそれぞれが封入する1つまたは複数の局所的な強化部分により、半導体パワーパッケージは、そのような大型寸法の場合でも前述の応力作用に耐えることができる。したがって、特に機械的に重要な位置での成形体におけるクラックを防ぐことができる。
【0009】
本開示の文脈では、機械的に重要な位置が、一方で、パッケージ設計の脆弱箇所を実現する端子開口付近に存在し、他方で、例えば、ねじ取り付け部の隣のエリアまたはチップの上方のエリアに存在することがさらなる認識である。したがって、半導体パワーパッケージの一実施形態によれば、成形体は、開口、リセス、薄化エリアおよび/または狭壁構造を含み、少なくとも1つの局所的な強化部分が、開口、リセスおよび/または狭壁構造に隣接して形成される。機械的に重要な位置を強化するそのような構成により、例えばねじ込み接続部の隣の、機械的応力に晒される成形体のあらゆる部分の、十分な機械的安定性を達成することが可能である。
【0010】
前述の薄化エリアは、例えば、成形体のそれぞれの隣接部分に比して、より薄い肉厚を有する壁、側部、上部および/または下部部分を示す。成形体のより厚い部分に比して、狭壁構造はまた、例えば、成形体の縁または2つのリセス間における、比較的薄い壁を表すことができ、これは、成形体のうち、意図した配置に起因する増大した応力に晒される部分であり得る。したがって、そのような薄いエリアは有益には、それぞれの強化を含む。
【0011】
半導体パワーパッケージのさらなる実施形態によれば、成形体は、第1の成形コンパウンドと、第1の成形コンパウンドとは異なる第2の成形コンパウンドを含む。第1の成形コンパウンドは、局所的な強化を有しない第1の成形体部分を形成するように構成されており、第2の成形コンパウンドは、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含み、局所的な強化を有する第2の成形体部分を形成するように構成されている。したがって、少なくとも2つの異なる成形コンパウンドを含む半導体パワーパッケージは、機械的に安定した信頼性の高い構造を可能にするように実現可能である。
【0012】
第2の成形コンパウンドは、ガラス繊維および/または炭素繊維を含むことができる。例えば、第1の成形コンパウンドおよび第2の成形コンパウンドは、それぞれのフィラーおよび/または樹脂材料に関して互いと異なる。さらに、第1の成形コンパウンドおよび第2の成形コンパウンドならびに対応する第1の成形体部分および第2の成形体部分は、横方向に関して少なくとも部分的に互いに重なり合うように形成することができる。代替的または追加的に、異なる成形コンパウンドのいくつかの部分は並んで配置することができる。
【0013】
前述した強化用の第2の成形コンパウンドに対して代替的または追加的に、成形体は、局所的な強化を有する成形体部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含む別個の強化部を含むことができる。別個の強化部は、ガラス繊維および/または炭素繊維を含むことができる。半導体パワーパッケージの一実施形態によれば、別個の強化部は、金属メッシュを含む。代替的または追加的に、別個の強化部は、非導電性メッシュを含む。
【0014】
さらに、半導体パワーパッケージは、基板層と結合されるとともに局所的な強化部分に埋め込まれているかまたは局所的な強化部分によって覆われている電子ユニット、例えば、チップ、処理ユニットおよび/または集積回路をさらに含むことができる。電子ユニットの観点から、電子ユニットは、局所的な強化部分と接触することなく半導体パワーモジュールの成形体に埋め込まれるかまたは結合されることも可能である。繊維および/またはメッシュ構造を含む局所的な強化部分は、電子ユニットに加えてのみ成形体の1つまたは複数の領域だけに実施することができる。少なくとも1つの局所的な強化部分は、半導体パワーモジュールの横方向に関して、電子ユニットの隣に直接形成することができるかまたは電子ユニットから離間して形成することができる。局所的な強化部分は、例えば、薄化されていないかまたは窪んでいないが、例えば組み付け時に比較的強い機械的応力が生じる1つまたは複数の領域に、形成することができる。代替的または追加的に、局所的な強化部分は、電子ユニットに加えて、2つの成形コンパウンドが互いに重なり合って使用されるかまたは成形コンパウンドの他のより薄い部分が例えば端子よりも上または下に形成される1つまたは複数の領域に実施することができる。
【0015】
記載の実施形態は、それぞれが繊維によるかまたはメッシュもしくは繊維から作製される要素による、成形体の機械的安定性の少なくとも1つの局所的な向上を含む、半導体パワーパッケージの考えられ得る構成を実現する。成形体は、例えばトランスファー成形によって形成された比較的大型のパッケージボディを実現することができる。強化構造は特に、繊維強化成形コンパウンドの局所的な使用に基づいて、および/または、成形体の機械的に重要な領域にそれぞれ配置されるメッシュまたは繊維要素の実施に基づいて組み込むことができる。
【0016】
補強用の第2の成形コンパウンドの観点から、ガラス繊維または炭素繊維のような或る特定の量の繊維を含むエポキシ成形コンパウンドを使用することができる。したがって、成形体は、2つの異なる成形コンパウンドを含み、第2の成形コンパウンドは、例えば、ねじ込み接続部付近または成形体の薄い部分における、機械的に重要な部分に施される。さらに、成形体の全体部分が、繊維強化された第2の成形コンパウンドによって実現されてもよく、または、繊維強化された第2の成形コンパウンドの層状積層が、第1の成形コンパウンドの下および/または上に調製されてもよい。積層は、成形体の一部または成形体全体に施されてもよい。
【0017】
成形体の他の部分に使用される第1の成形コンパウンドの選択は、熱機械的挙動、成形コンパウンドの接着、誘電強度、ならびに/あるいは、湿気および/または有毒ガスからの保護のような、それらの部分において重要である要件の達成に応じて、行うことができる。
【0018】
機械的に重要な領域への別個のメッシュまたは繊維要素の実施の観点から、そのような構成要素は、成形体の調製のための成形プロセスが実行される前に、基板層に接着することができるかまたは成形ツールに付すことができる。例えば、一時的な接着材料を成形ツールにおける固定に使用することができる。メッシュまたは繊維要素は、導電性もしくは非導電性ワイヤまたは繊維から作製することができる。したがって、そのような強化部は、要素が成形コンパウンドで含侵させられる成形プロセスによって成形体に組み込むことができる。
【0019】
局所的な機械的強化構造が実施される、大型の成形された半導体パワーパッケージの設定は、特に比較的大きな成形体を有するパワーモジュールの実現を容易にする。したがって、ビジネス利益は、対応する半導体パワーモジュールの利点に関し、半導体パワーパッケージの記載の構成は少なくとも、以下のうちの1つまたは複数を可能にする。
【0020】
大型の成形された半導体パワーモジュールが、より大きな基板またはより大きな総基板面積の適用、したがって、より大きな総チップ面積の適用を容易にすることができる。したがって、半導体パワーモジュールの現在の性能を高めることができる。そのため、顧客は、所与の電流について少ないパワーモジュールを必要とすることによって経済的利益を有する。
【0021】
比較的大きな成形体を有する半導体パワーモジュールは、成形コンパウンドと基板層との間の熱膨張の不整合の低減により、より大きな熱サイクル信頼性の可能性を有する。
【0022】
湿気および有毒ガスに対する耐性は、例えば誘導体ゲルが充填された標準パワーモジュールに対して大いに高められる。
【0023】
成形コンパウンドの機械的安定性の向上により、半導体パワーモジュールの防爆性も同様に高めることができる。
【0024】
もっぱら局所的な強化構造を実施することまたは繊維強化成形コンパウンドのもっぱら局所的な使用によって、局所的な要件にしたがって成形体の他の部分に使用される成形コンパウンドを有利に適合させることが可能となる。
【0025】
一実施形態によれば、半導体デバイスは、記載の半導体パワーパッケージの一実施形態のと、半導体パワーパッケージと結合される電子機器とを備える。半導体パワーデバイスはまた、動作中に熱を放散するために半導体パワーパッケージの基板層と結合されるヒートシンクを備えることができる。電子機器は、基板層に取り付けられる1つまたは複数のチップまたはディスクリートデバイスを含むことができる。
【0026】
一実施形態によれば、半導体パワーパッケージの一実施形態を製造する方法は、基板層を提供することと、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を提供することと、圧送可能物質を提供することと、成形体が、成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を有して形成されるように、提供された物質を基板層上に成形することと、を含む。
【0027】
少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を提供するステップは、第1の成形コンパウンドを提供することと、第1の成形コンパウンドとは異なる第2の成形コンパウンドを提供することと、を含むことができ、第1の成形コンパウンドは、局所的な強化を有しない第1の成形体部分を形成するように構成されており、第2の成形コンパウンドは、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含み、局所的な強化を有する第2の成形体部分を形成するように構成されている。
【0028】
代替的または追加的に、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を提供するステップおよび提供された物質を成形するステップは、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含む別個の強化部を提供することと、強化部を基板層に対して位置決めするかまたは一時的な接着材料を使用して強化部を成形ツール内に配置することと、成形体が、埋め込まれたかまたは覆われた、局所的な強化部分を形成する強化部を有して形成されるように、提供された物質を基板層上に成形することと、を含むことができる。
【0029】
記載の半導体デバイスおよび記載の製造方法が、半導体パワーパッケージの一実施形態を製造することを含むかまたは半導体パワーパッケージの一実施形態を製造することに関することであるため、半導体パワーパッケージの記載の特徴および特性もまた、半導体デバイスおよび製造方法に関して開示され、その逆の場合もある。
【0030】
半導体パワーパッケージの例示的な実施形態を、概略図および参照番号を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】半導体パワーパッケージの実施形態を斜視図で示す。
図2】半導体パワーパッケージの実施形態を側面図で示す。
図3】半導体パワーパッケージの実施形態を側面図で示す。
図4】半導体パワーパッケージの一実施形態を製造する方法のためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図に示す実施形態は、例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことを理解されたい。同一の参照番号は、同一の機能を有する要素または構成要素を示す。要素または構成要素が、種々の図においてその機能に関して互いに対応する限り、その説明は、以下の図のそれぞれについて繰り返さない。明確にするため、要素は、場合によってはすべての図において対応する参照符号で見られないことがある。
【0033】
図1は、基板層11と、基板層11と結合された成形体とを含む半導体パワーパッケージ10の一実施形態の斜視図を示す。成形体は、成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を有する。図1によれば、半導体パワーパッケージ10は、主延在面を画定する横方向BおよびCに延在しているのに対し、積層方向Aは、横方向BおよびCに対して略垂直である(図2および図3も参照)。第1の成形体部分12および第2の成形体部分13を含む成形体は、積層方向Aに関して基板層11上に形成されている。
【0034】
「埋め込まれた」という用語は、成形体のコンパウンドで含侵されているかまたは覆われている繊維および/またはメッシュ構造があるものと解釈することができる。繊維および/またはメッシュ構造は、成形体内に完全に封入されているという意味で埋め込まれているものとすることもできる。代替的に、繊維および/またはメッシュ構造は、一部が埋め込まれているものとすることができる。代替的または追加的に、対応するモールドコンパウンドが初めに繊維を含有していてもよい。
【0035】
図1において、半導体パワーパッケージ10の成形体は、第1の成形体部分12および第2の成形体部分13を有する。図1に示された実施形態によれば、2つの第1の成形体部分12および3つの第2の成形体部分13がある。第1の成形体部分12および第2の成形体部分13は、第2の成形体部分13がそれぞれ、成形体のうち強化を有するそれぞれの部分を形成する繊維および/またはメッシュ構造を含むという点で異なる。したがって、第1の成形体部分12は、成形体のうち繊維および/またはメッシュ構造強化を有しないそれぞれの部分を形成する。
【0036】
強化用の第2の成形体部分13は、例えば、ねじ穴15、リセス16、狭壁構造17付近における機械的に重要な部分、および/または、例えば、上面もしくはチップの上またはねじ穴の隣における、成形体の薄い部分または薄化エリア18に関連付けられる。薄化エリア18は、成形体のそれぞれの隣接部分に比して、より薄い肉厚を有する壁、上部および/または下部部分を示す。したがって、図示の半導体パワーパッケージ10は、第1、第2、第3および第4の強化領域A1~A4を含む。さらなるリセス16は、例えば、半導体パワーパッケージ10の意図した用途に応じて、機械的に重要な位置を呈さないため、強化領域には属さないものであり得る。
【0037】
図2および図3は、半導体パワーパッケージ10のさらなる実施形態をそれぞれの側面図で示す。図2は、積層方向Aに関して基板層11の上に連続層として組み立てられている第1の成形体部分12の上に連続層を形成する第2の成形体部分13を示す。このように、第1の成形体部分12は、第2の成形体部分13と基板層11との間に配置される。換言すると、第2の成形体部分13は、第1の成形体部分12を覆う。第2の成形体部分13は、例えばガラス繊維および/または炭素繊維を有する成形コンパウンドによって形成することができる。第1の成形体部分12は、例えば二酸化ケイ素粒子で充填することができる、繊維を有しない成形コンパウンドによって形成される。基板層11は、半導体パワーパッケージ10のベースプレートを形成する。
【0038】
図3は、第1の成形体部分12および第2の成形体部分13の代替的な配置を示し、1つの第2の成形体部分13が電子ユニット14を覆っており、したがって、成形体が局所的なより薄い部分を有する場合に、強化された保護を実現する。電子ユニット14は、強化用の第2の成形体部分13と基板層11との間にしっかりと埋め込まれている。さらに、成形体の1つまたは複数の局所的なセクションは、第2の成形コンパウンドによって完全に調製することができる。第1の成形体部分12および/または第2の成形体部分13の1つまたは複数のセクションは、横方向Bおよび/またはCに関して並んで、および/または、それぞれ部分的または完全に積層方向Aに関して互いに重なり合って配置することができる。
【0039】
半導体パワーパッケージ10の一実施形態は、図4に示すようにフローチャートに従って製造することができる。
【0040】
ステップS1において、基板層11を提供する。
ステップS2において、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造11を提供する。
【0041】
ステップS3において、後の成形体を形成するそれぞれの液状原料を実現する1つまたは複数の圧送可能物質を提供する。これに関して、圧送可能物質は、対応する成形プロセスを可能にする原料をもたらす。
【0042】
ステップS4において、成形体が、成形体に埋め込まれた、局所的な強化部分を形成する少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を有して形成されるように、提供された物質を基板層11上に成形する。成形は、例えばトランスファー成形および/または圧縮成形および/または射出成形によって行うことができる。
【0043】
少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を提供するステップS2は、第1の成形コンパウンドを提供することと、第1の成形コンパウンドとは異なる第2の成形コンパウンドを提供することと、を含むことができ、第1の成形コンパウンドは、局所的な強化を有しないそれぞれの第1の成形体部分12を形成するように構成されており、第2の成形コンパウンドは、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含み、局所的な強化を有するそれぞれの第2の成形体部分13を形成するように構成されている。
【0044】
したがって、ステップS3は、第1の成形コンパウンドを基板層11上に成形することならびに第2の成形コンパウンドを基板層11上および/または第1の成形コンパウンド上に成形することの2つの成形プロセスを含むことができる。第1の成形コンパウンドおよび第2の成形コンパウンドの成形は、同時にまたは順に行うことができる。
【0045】
代替的または追加的に、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を提供するステップS2ならびに提供された物質を成形するステップS4は、少なくとも1つの繊維および/またはメッシュ構造を含む別個の強化部を提供することと、強化部を基板層11上に位置決めすることと、成形体が、封入または被覆によって埋め込まれた強化部を有して、したがって、第2の成形体部分13に関して局所的な強化部分を形成して形成されるように、提供された物質を基板層11上に成形することと、を含むことができる。
【0046】
半導体パワーパッケージ10の記載の実施形態は、機械的な安定性の局所的な向上を含み、メッシュおよび/または繊維に基づいて繊維または要素によって比較的大型のトランスファー成形パッケージボディの製造を可能にする。成形体の強化は、対応する成形コンパウンドが、ねじ穴15の隣に存在するために大きな応力に晒される、位置、あるいは、パッケージボディのいくつかの部分が、端子取り付けのための開口もしくはリセス16間にまたは電子ユニット14もしくは他の半導体構成要素の上に存在するためにほんの僅かな断面を有するかまたは比較的薄い、位置に、特に適用され得る。それでもやはり、成形体において、強化が適用され得る他の領域があるであろう。図1は、100mm以上までの縁の長さを有し得る大型の成形された半導体パワーパッケージ10の考えられ得る配置を示す。しかしながら、局所的な強化の記載のフォーメーションは、成形体を有するあらゆるタイプの半導体パワーモジュールにも適し、例えば50mm超または30mm~80mmの間の縁の長さを有する、より小さいサイズにも適している。
【0047】
強化構造は、繊維強化された第2の成形コンパウンドの局所的な使用に基づいて成形体に実施することができる。例えば、第2の成形コンパウンドは、ガラス繊維または炭素繊維のような或る特定の量の繊維を含有するエポキシ成形コンパウンドである。したがって、半導体パワーパッケージ10の成形体は、2つの異なる成形コンパウンドを含み、強化用の第2の成形コンパウンドは、機械的に重要な部分に使用される。成形体の他の部分に使用される第1の成形コンパウンドの選択は、例えば、所定の熱機械的挙動、成形コンパウンドの接着、誘電強度、および/または、湿気および有毒ガスからの保護を確立するために半導体パワーパッケージ10の他の部分において重要である要件の達成に応じて、行うことができる。
【0048】
強化構造はまた、成形体の機械的に重要なエリアを強化するためにメッシュおよび/または繊維要素を含む別個の強化部分の実施に基づいて、成形体に実施することができる。そのようなメッシュおよび/または繊維要素は、例えば、成形体の調製のための成形プロセスが行われる前に成形ツールに至らしめられる基板層11に、例えば一時的な接着材料を使用することによって、接着することができる。
【0049】
提案された強化構造および対応する第2の成形体部分13は、一方で、単一の比較的薄い壁のような非常に局所的な位置に、または図3に示すようにチップの上方のより薄い部分上に、またはねじ部分の隣に実施することができる。他方で、成形体のより大きな部分もまた、図2に示すような強化構造を用いて実現され得る。2つの異なる成形コンパウンドを含む成形体の実現は、後の2つの成形プロセスによって、または、単一の成形プロセスの後に続く2つの異なる第1の成形コンパウンドおよび第2の成形コンパウンドの射出によって実現することができる。例えば、繊維を含む成形コンパウンドの使用は、図1に示す半導体パワーパッケージの中心におけるいくつかの開口またはリセス16の領域のようなより大きなモジュール部分を調製するのに十分に適し得る。他の場合では、繊維強化された第2の成形コンパウンドおよび他方の第1の成形コンパウンドの層状積層は、局所的にまたはパワーパッケージの全エリア上に調製されてもよい。記載の順序は、その逆、例えば、先に、強化用の第2の成形コンパウンドの成形、その後、第1の成形コンパウンドの成形の順序であってもよい。
【0050】
処理時に基板層11に取り付けられるまたは成形ツールに組み込まれるメッシュ要素を使用する場合、1つだけの均質な成形コンパウンドを成形体に使用することができる。対応する半導体パワーモジュールは、メッシュ要素(複数可)、繊維を有する第2の成形コンパウンド、および繊維を有しない第1の成形コンパウンドを使用する、3つの異なる構成要素を含み得る。
【0051】
繊維強化された第2の成形コンパウンドを局所的に使用する場合、一方で、全く異なる成形コンパウンドを使用することができ、成形体または半導体パワーパッケージ10の他の部分に使用される成形コンパウンドは、例えば、接着、吸湿または破壊強度のような、他の特定の要件に適合され得る。代替的または追加的に、半導体パワーパッケージ10は、そのような要件、および/または基板層11の異なるベース材料および/または基板層11への付加物(adders)またはコーティングによるさらなる要件を満たすことができる。
【0052】
例えば、半導体パワーパッケージ10は、成形体の1つまたは複数の局所的な部分が前述の繊維および/またはメッシュ構造の使用によって機械的に強化される、トランスファー成形パワーデバイスを実現する。局所的な強化は、ガラス繊維もしくは炭素繊維または任意の他のタイプの繊維のような、任意の種類の繊維を含むことができる。追加的または代替的に、メッシュ構造が使用される場合、メッシュは、別個のモジュール部分として実施することができ、金属メッシュ、非導電性材料からなるメッシュまたは別の材料を含み得る。
【0053】
2つの異なる成形コンパウンドの配置は、例えば、局所的に下部および上部成形コンパウンドの層状積層で、成形体のサイズ全体を覆う下部および上部成形コンパウンドの層状積層で行うことができる。第1の成形コンパウンドおよび第2の成形コンパウンドは、単にフィラータイプ(例えば、繊維および/または粒子)が異なるだけの同じ基本的な成形コンパウンドを有することができる。2つの成形コンパウンドはまた、その基本的な樹脂材料、成分および/またはフィラーが異なるものとすることができる。異なる成形コンパウンドの部分の横配置も可能である。
【0054】
材料特性に関して、記載の実施形態は、成形された半導体パワーパッケージに関する。しかしながら、成形体および/または基板層11は代替的に、一般にポリマー体および/または基板層11を形成するポリマー材料から作製することができることが指摘される。記載の実施形態によれば、半導体パワーパッケージ10は、熱硬化性材料を含むことができ、成形体は、成形コンパウンドを含む。したがって、半導体パワーパッケージ10、基板層11および/または成形体は、電気絶縁材料、熱硬化性材料または熱可塑性材料から作製することができる。基板層11および成形体は、別個の構成要素を実現することができるか、または、1つのピースを一体的に形成するように製造することができる。
【0055】
熱硬化性材料は例えば、エポキシ樹脂に基づいて作製され得る。熱可塑性材料は例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはポリアミドイミド(PAI)の群のうちの1つまたは複数の材料を含み得る。熱可塑性材料は、成形または積層時に圧力および熱を加えることによって溶融し、(可逆的に)冷却および圧力解放時に固化する。成形体、基板層11、またはさらには半導体パワーパッケージ10の電気絶縁材料は全体として、ポリマー材料を含み得るかまたはポリマー材料から作製され得るカプセル化を形成することができる。電気絶縁材料は、充填または無充填成形材料、充填または無充填熱可塑性材料、充填または無充填熱硬化性材料、充填または無充填積層体、繊維強化積層体、繊維強化ポリマー積層体、および、フィラー粒子を有する繊維強化ポリマー積層体のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0056】
上述の図1図4に示す実施形態は、改良された半導体パワーパッケージ10および対応する製造方法の例示的な実施形態を表しており、したがって、すべての実施形態の完全な網羅をなすものではない。実際の配置および方法は、例えば半導体パワーパッケージに関して示す実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0057】
参照符号
10 成形されたパワーモジュール
11 基板層
12 第1の成形体部分
13 第2の成形体部分
14 電子ユニット
15 ねじ穴
16 リセス
17 狭い壁構造
18 減厚エリア
A 積層方向
A1 第1の強化領域
A2 第2の強化領域
A3 第3の強化領域
A4 第4の強化領域
B 横方向
C 横方向
S(i) 成形されたパワーモジュールを製造する方法のステップ
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】