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特表2024-515156側壁を有する基板、基板を含むパワー半導体モジュール、および基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】側壁を有する基板、基板を含むパワー半導体モジュール、および基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555318
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022052332
(87)【国際公開番号】W WO2022189071
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161711.3
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ビーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】マレキ,ミラド
(72)【発明者】
【氏名】トリューセル,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ルートビヒ,マキシム
(57)【要約】
パワー半導体モジュール用の基板(10)が提供され、基板(10)は、一体に形成された基体(1)を備える。基体(1)は前側(1A)と後側(1B)を有し、前側(1A)は、基板(10)の取付け領域(1M)を含む。基体(1)は、その縁(1E)の少なくとも1つに沿って、垂直方向の高さ(11H)だけ取付け領域(1M)を超えて突出する少なくとも1つの側壁(11)を形成する少なくとも1つの隆起した一体部品を有する。取付け領域(1M)の領域では、基体(1)は、前側(1A)と後側(1B)との間に延びる垂直方向の厚さ(1T)を有し、垂直方向の厚さ(1T)は、側壁(11)の垂直方向の高さ(11H)よりも大きい。さらに、すべての縁(1E)に沿って、基体(1)は、少なくとも1つの側壁(11)または少なくとも1つの溝(12)のいずれかを含むが、同じ縁(1E)に側壁(11)と溝(12)の両方を備えることはない。基体(1)は、その縁(1E)の少なくとも1つに沿って、少なくとも1つの側壁(11)を形成する1つの隆起した一体部品を備える。さらに、そのような基板(10)を備えるパワー半導体モジュール(100)およびそのような基板(10)を製造する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体モジュール用基板(10)であって、
- 前記基板(10)は、一体に形成された基体(1)を含み、
- 前記基体(1)は、前側(1A)と後側(1B)を有し、前記前側(1A)は前記基板(10)の取付け領域(1M)を含み、
- その縁(1E)の少なくとも1つに沿って、前記基体(1)は、前記取付け領域(1M)を超えて垂直方向の高さ(11H)だけ突出する少なくとも1つの側壁(11)を形成する少なくとも1つの隆起した一体部品を有し、
- 前記取付け領域(1M)の領域では、前記基体(1)は、前記前側(1A)と前記後側(1B)との間に延びる垂直方向の厚さ(1T)を有し、前記垂直方向の厚さ(1T)は、前記側壁(11)の前記垂直方向の高さ(11H)よりも大きく、および
- すべての縁(1E)に沿って、前記基体(1)は、少なくとも1つの側壁(11)または少なくとも1つの溝(12)のいずれかを含むが、同じ縁(1E)に側壁(11)および溝(12)の両方は含まず、その縁(1E)の少なくとも1つに沿って、前記基体(1)は、前記少なくとも1つの側壁(11)を形成する1つの隆起した一体部品を含む、基板(10)。
【請求項2】
前記隆起した一体部品は、前記取付け領域(1M)を超えて突出する少なくとも2つの側壁(11)を形成し、前記少なくとも2つの側壁(11)は、前記基体(1)の2つの隣接しないまたは反対側の縁(1E)に沿って配置されている、請求項1に記載の基板(10)。
【請求項3】
前記基体(1)は、2つの対向する縁(1E)に配置された2つの側壁(11)と、前記基体(1)の2つの別の縁(1E)に配置された2つの溝(12)とを含む、請求項1に記載の基板(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの側壁(11)は、0.05mmから5.0mmの間(両端を含む)の垂直方向の高さ(11H)と、0.05mmから10mmの間(両端を含む)の平均横幅(11W)とを有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項5】
前記後部(1B)に複数の冷却フィン(3)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溝(12)は、前記基体(1)の前記縁(1E)の少なくとも1つに沿って延び、横方向に沿って、前記取付け領域(1M)は前記溝(12)によって区切られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの側壁(11)が垂直壁である、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの側壁(11)が傾斜壁である、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの側壁(11)が円形壁である、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの側壁(11)は、部分的に垂直壁として、部分的に傾斜壁として形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの側壁(11)は、部分的に垂直壁として、部分的に円形壁として形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板(10)。
【請求項12】
ハウジング本体(20)をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の基板(10)を含むパワー半導体モジュール(100)であって、
- 前記ハウジング本体(20)は前記基板(10)を横方向に囲み、
- 前記側壁(11)は前記ハウジング本体(20)で覆われており、前記ハウジング本体(20)を前記基板(10)に追加で固定する固定構造として機能する、パワー半導体モジュール(100)。
【請求項13】
ハウジング本体(20)をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の基板(10)を含むパワー半導体モジュール(100)であって、
- 前記ハウジング本体(20)は前記基板(10)を横方向に囲み、
- 前記側壁(11)は前記ハウジング本体(20)で覆われており、前記少なくとも1つの溝(12)は前記ハウジング本体(20)の材料によって少なくとも部分的に充填されるため、前記側壁(11)と前記溝(12)の両方が、前記ハウジング本体(20)を前記基板(10)に追加で固定する固定構造として機能する、パワー半導体モジュール(100)。
【請求項14】
モジュール構成要素(30)をさらに含む、請求項12から13のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール(100)であって、
- 前記モジュール構成要素(30)は、接続層(2)によって前記取付け領域(1M)に固定され、
- 前記ハウジング本体(20)は、前記モジュール構成要素(30)を横方向に取り囲む、パワー半導体モジュール(100)。
【請求項15】
前記側壁(11)および/または前記溝(12)は、前記接続層(2)の材料が組立て面(1Z)に向かってクリープするのを防ぐために形成される、請求項14に記載のパワー半導体モジュール(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばパワー半導体モジュール用の側壁を有する基板、基板を含むパワー半導体モジュール、および基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを基材に固定したり、基材を基板に固定したりすると、表面の濡れ性により、はんだなどの接続材料が基材の隣接する表面に広がったり、基板の取付け領域の広い領域に広がり得る。この接続材料のオーバーフローは、例えばワイヤボンディングに使用される領域の汚染を引き起こし得、またはパワー半導体モジュールのハウジング本体などのカプセル化材料の接着性の低下をもたらし、層間剥離をもたらし得る。また、接続材料のオーバーフローにより、接続材料の一部が紛失し得、半導体チップと基材間、基材と基板間、または半導体チップと基板間の非常に安定した接続を実現するのに十分な接続材料が利用できない可能性がある。
【0003】
接続材料のオーバーフローを防ぐためなどの基板の変更が導入されない場合、はんだなどの接続材料の強いオーバーフローが発生し、基板の他の領域、特に基板の前側だけでなく、側面または後側にもはんだが望ましくない堆積をし得る。
【0004】
これらの問題を解決するために、基板または基材の表面にはんだレジストをコーティングして、そのような表面の濡れを防止または低減することができる。しかし、表面を耐はんだ性材料でコーティングするには、基材または基板の製造に追加のプロセスが必要であり、製造コストが高くなる。また、はんだレジストとして有機系コーティング材を使用した場合、コーティング層からの物質のガス放出は、パワー半導体モジュールおよび基板を含むパワー半導体モジュールを製造するためのその後のプロセスステップ、またはパワー半導体モジュールの信頼性および機能に悪影響を与える。また、はんだレジストを使用すると、封止材の密着性に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
接続材料のオーバーフローを防ぐためのもう1つのアプローチは、取付け領域の周囲に溝を準備することである。本開示において、取付け領域は、基材および/またはチップなどのモジュール構成要素を受け入れるための基板の前側の表面を意味すると理解される。固定用の表面、例えば、クーラーとして機能するキャリアに基板をねじ込むための表面は、組立て面と呼ばれる。組立て面は、取付け領域の外側、例えば基板の前側の側壁および/または溝の外側の表面を含むことができる。しかし、基板の側面および/または後側をさらに組立て面の一部と呼ぶことが可能である。ここで、基板の組立て面のいかなる部分もまたはごく一部も接続材料によって汚染されないように、はんだ材料などのオーバーフローした接続材料を溝に集めることができる。しかし、例えば、はんだ接続の安定性を高めるために厚いはんだメニスカスを形成すべき場合など、溝は十分に大きく形成する必要がある。しかし、これは取付け領域のサイズの縮小につながる。さらに、一方では、十分に大きいサイズの溝を選択すると、大量の接続材料が溝に蓄積する。この接続材料の損失は、局所的に不十分もしくは欠落しているはんだ付け接続、または例えば溝の隣の領域に空隙の形成をもたらし得る。その一方で、基材はんだ付け位置周辺の溝のサイズを小さくしておくと、接続材料のオーバーフローを十分に防げない可能性がある。
【0006】
文献 欧州特許第0 577 966 A1号、米国特許出願第2009/224384A1号、米国特許出願第2002/011661A1号、米国特許第6 667 545 B1号、米国特許出願第2015/235929A1号および特開2011 258814は、基板またはプリント回路基板と、基板またはプリント回路基板上に配置された半導体チップとを有する構成要素について説明し、基板またはプリント回路基板には構造化された上面がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、例えばパワー半導体モジュール用の基板に関し、基板は、例えば、接続材料のオーバーフローを防止または低減するための適切な障壁構造を含む。別の目的は、基板を含む高度に機械的に安定したパワー半導体モジュールを提供することであり、パワー半導体モジュールは、基板の表面とハウジング本体、例えば成形体との間の改善された接着および固定を有することができる。さらに、基板を製造するための効率的な方法が提供される。
【0008】
本開示の実施形態は、当技術分野における上記の欠点の全部または一部を対処する。基板、基板を含むパワー半導体モジュール、および基板を製造するための方法のさらなる実施形態は、さらなる特許請求の範囲の主題である。
【0009】
例えばパワー半導体モジュールを受け入れるために使用される基板の一実施形態によれば、それは一体に形成された基体を含む。基体は、前側と後側を有し、前側は、基板の取付け領域を含む。その縁の少なくとも1つに沿って、基体は、垂直方向の高さだけ取付け領域を超えて突出する少なくとも1つの側壁を形成する少なくとも1つの隆起した一体部品を有する。取付け領域の領域では、基体は、基体の前側と後側との間に延びる垂直方向の厚さを有し、基体の垂直方向の厚さは、少なくとも1つの側壁の垂直方向の高さよりも大きい。
【0010】
垂直方向とは、取付け領域または基体の主延長面に垂直に向けられた方向を意味すると理解される。横方向とは、取付け領域または基体の主延長面に平行な方向を意味すると理解される。垂直方向と横方向は互いに直交している。
【0011】
「少なくとも1つの縁に沿って」または「縁で」という用語は、「直接縁で」を必ずしも意味しない。側壁および可能な溝は、基体の前側の縁領域にむしろ配置されている。側壁および/または溝は、縁領域全体にわたって、または縁領域の一部でのみ延びることができる。側壁は、基体の側面に直接隣接してもよく、すなわち、縁に直接隣接して、もしくは縁に直接でもよく、または基体の側面から横方向に離間してもよく、すなわち、縁から横方向に離間して配置されてもよい。例えば、側壁を形成する基体の隆起した一体部品は、対応する縁と平行または実質的に平行である。基体がその前側に溝を含む場合、溝は縁からかなり横方向に離間している。溝は、側壁に直接隣接することも、側壁から横方向に離間することもできる。例えば、側壁は、対応する溝に平行または実質的に平行である。
【0012】
「1つのピースで形成された基体」とは、基体が1つのピースで作られていることを意味する。例えば、基体は、例えば接続材料を使用して互いに接続された別個の部品を含まない。基体は、むしろ、互いに一体的に接続された、すなわち追加の接続材料を使用せずに、一体部品のみを含む。このような一体部品は同じ材料から形成することができる。
【0013】
基体の隆起した一体部品は、基体の縁の1つのみに沿って単一の側壁を形成することが可能である。しかし、基体の隆起した一体部品は、基体の複数の縁に沿って、例えば正確に2つまたは3つの縁に沿って、またはすべての縁に沿って、単一の連続的な側壁を形成することが可能である。さらに、基体の隆起した一体部品は、基体の異なる縁に沿って少なくとも2つまたは2つを超える空間的に分離された側壁を形成することも可能である。
【0014】
したがって、接続材料が、例えばチップを備えた1つまたは複数の基材を基板の取付け領域上に固定するために使用される場合、1つまたは複数の側壁、すなわち基体の1つまたは複数の隆起部分は、接続材料のオーバーフローを防止するための1つまたは複数の障壁として機能することができる。この場合、パワー半導体モジュールは、基板と、その上に配置された少なくとも1つの基材とを有する。パワー半導体モジュールは、単一の基材または複数の分離された基材、半導体チップなどの単一の電子部品または複数のそのような電子部品、基材上に配置された1つの部品または複数の部品、または複数の基材から配置された複数の部品を備えることができる。
【0015】
1つまたは複数の側壁の存在下では、基板または基体が溝の形態で凹部がない、すなわち空隙であることが可能である。1つまたは複数の側壁は基板の縁に形成されるので、例えばはんだ材料などの接続材料のオーバーフローは、溝または異なる溝に蓄積された接続材料の損失なしに防止することができる。あるいは、側壁と溝の組み合わせが可能である。しかし、側壁の存在のおかげで、溝のサイズを小さく保つことができ、その結果、接続材料の損失量は非常に小さく、したがって、許容可能なものとなる。
【0016】
基板のさらなる実施形態によれば、基体は金属または金属合金でできている。例えば、基体はCuもしくはAl、または対応する合金でできている。あるいは、基体が非金属複合材料、例えばSiCを含む複合材料、例えばAlSiCまたはMgSiCでできていることも可能である。しかし、基体は上記の材料に限定されない。
【0017】
基板のさらなる実施形態によれば、基体の隆起した一体部品は、取付け領域を超えて突出する少なくとも2つの側壁を形成する。少なくとも2つの側壁は、2つの隣接していない縁に沿って、例えば、基体の2つの対向する縁に沿って配置される。したがって、少なくとも2つの側壁は互いに空間的に分離されている。この場合、側壁は連続的な障壁を形成せず、むしろ不連続であり、基体の前側に2つの空間的に分離した障壁を形成する。
【0018】
基板のさらなる実施形態によれば、基体の隆起した一体部品は、取付け領域を越えて突出し、取付け領域を完全に取り囲む少なくとも1つの側壁を形成する。この場合、少なくとも1つの側壁は、連続障壁または単一の連続フレーム形状の側壁を形成する。
【0019】
基板のさらなる実施形態によれば、側壁または各側壁は、0.05mmから5.0mmの間(両端を含む)、例えば0.5mmから2mmの間の垂直方向の高さを有する。側壁または各側壁は、0.05mmから10mmの間(両端を含む)の平均横幅、0.05mmから5mmの間、または0.1mmから5mmの間(両端を含む)、典型的には0.5mmから2mmの間(両端を含む)の平均横幅を有することができる。
【0020】
基板のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの側壁は、垂直壁、傾斜壁、または円形壁である。少なくとも1つの側壁は、部分的に垂直壁として、部分的に傾斜壁として、および/または部分的に円形壁として形成されることが可能である。側壁の形状、例えば側壁の断面は、正方形、長方形、台形、半円、三角形、または別の形態であり得る。
【0021】
しかし、本開示は、側壁の幾何学的寸法および形状、例えば断面の形態を、上記の寸法および形状に限定するものではない。側壁は他の形状または他の幾何学的寸法を有することが可能である。
【0022】
基板のさらなる実施形態によれば、それは少なくとも1つの溝を含む。溝は、基体の少なくとも1つの縁に沿って、またはいくつかの縁に沿って、またはすべての縁に沿って延びることができる。横方向に沿って、取付け領域は溝によって区切ることができる。これと異なり、取付け領域が側壁によって区切られ、側壁が取付け領域と溝との間に位置することも可能である。
【0023】
基板のさらなる実施形態によれば、溝は少なくとも1つの側壁に直接隣接している。この場合、少なくとも1つの側壁は、例えば溝に直接、連続的に延びることができる。したがって、少なくとも1つの側壁および溝の製造は、共通の製造プロセスで、またはその後の2つのプロセスステップ、例えば、少なくとも1つの側壁を形成する第1のプロセスステップと、例えばスタンピング法を使用して溝を形成する第2のプロセスステップで実行することができる。例えば、基体の少なくとも1つの縁に沿って、例えば、基体の正確に1つ、正確に2つ、正確に3つの縁に沿って、またはすべての縁に沿って、基体は、少なくとも1つの側壁と溝の両方を含む。
【0024】
基板のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの縁に沿ってまたはいくつかの縁に沿って、基体は、少なくとも1つの側壁および溝の両方を有し、基体の前側の平面図において、溝は、取付け領域と少なくとも1つの側壁との間に配置されるか、または少なくとも1つの側壁は、取付け領域と溝との間に配置される。溝が少なくとも1つの側壁に直接隣接するか、または少なくとも1つの側壁から横方向に離間することが可能である。
【0025】
側壁のない基体の場合と比較して、側壁の存在下では、溝は縮小された横方向の幅、および/または縮小された垂直方向の深さを有することができる。したがって、溝のサイズを十分に大きく選択する必要はなく、その結果、一方では接続材料の損失の可能性を小さく保つことができ、その一方で、取付け領域のサイズを大きく保つことができる。また、側壁の存在や予想される接続材料のオーバーフロー量に応じて、溝の幅および/または深さを設計することが可能であり、したがって基板の設計の柔軟性が向上する。
【0026】
例えば、溝の幅は、0.05mmから5mmの間(両端を含む)、例えば、0.5mmから2mmの間である。溝の深さは、0.05mmから3mmの間(両端を含む)、例えば、0.05mmから2mmの間、または0.05mmから1mmの間(両端を含む)であり得る。溝の形状は、正方形、長方形、台形、部分的に円形、半円、三角形、または別の形態にすることができる。しかし、本開示は、幾何学的寸法および形状、例えば、溝の断面の形態を、上記の寸法および形状に限定するものではない。
【0027】
基板のさらなる実施形態によれば、すべての縁に沿って、基体は、少なくとも1つの側壁または少なくとも1つの溝のいずれかを含むが、側壁および溝の両方は含まない。例えば、基体は、基体の2つの対向する縁に配置された2つの側壁と、基体の2つの別の縁に配置された2つの溝とを含む。側壁と基体の異なる縁の溝の他の組み合わせも可能である。
【0028】
基板のさらなる実施形態によれば、それは、基体の後側に複数の冷却フィンを含む。冷却フィンは、基体の一体部品として形成することができる。この場合、冷却フィンと側壁は同じ材料ででき得る。しかし、冷却フィンは、側壁の材料とは異なる材料で作ることができる。この場合、冷却フィンは、基体の一体部品ではなく、基体の後側に設けられた追加の構造と見なすことができる。
【0029】
パワー半導体モジュールの一実施形態によれば、それは基板、例えば、本開示でここに記載されている基板を含む。パワー半導体モジュールは、ハウジング本体をさらに含み、ハウジング本体は、横方向に、例えば、基板を完全に取り囲む。少なくとも1つの側壁は、ハウジング本体によって完全に覆われ得、ハウジング本体を基板に追加で固定する固定構造として機能する。ハウジング本体は、金型本体またはゲル材料で作られた本体であり得、ゲル材料は、ハウジングフレームを有するパワー半導体モジュールを充填することができる。しかし、ハウジング本体は、金型本体またはゲル材料で作られた本体に限定されない。
【0030】
パワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、それはハウジング本体を含み、ハウジング本体は基板を横方向に囲み、少なくとも1つの側壁はハウジング本体によって完全に覆われている。溝は、少なくとも1つの側壁および溝の両方が、ハウジング本体を基板に追加的に固定する固定構造として機能するように、ハウジング本体の材料によって少なくとも部分的に充填することができる。いくつかの溝は、ハウジング本体の材料によって部分的または完全に充填され得るので、溝は、ハウジング本体を基板に固定する固定構造として機能することが可能である。
【0031】
パワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、それは、少なくとも1つのモジュール構成要素、例えば、その上に配置された1つまたは複数のチップを有する少なくとも1つの基材を含む。モジュール構成要素は、接続層によって取付け領域に固定されている。例えば、ハウジング本体は、モジュール構成要素を横方向に囲む。モジュール構成要素は、1つもしくは複数の基材および/あるいは半導体チップ、電子もしくは光電子チップ、または抵抗器、コンデンサもしくはインダクタンスなどの個別のデバイスなどの1つもしくは複数のチップを含み得る。
【0032】
パワー半導体モジュールのさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの側壁および/または溝は、接続層の材料、例えば、はんだ材料、焼結材料または接着剤が、基体の側面または後側に向かってクリープするのを防ぐために形成される。接続層は、例えば、はんだ、焼結または接着層である。したがって、側壁または溝または側壁と溝の組み合わせは、接続材料のオーバーフローを防止するために取付け領域を部分的または完全に取り囲む障壁構造を形成することができる。
【0033】
はんだオーバーフローなどの接続材料のオーバーフローを防止するため、パワー半導体モジュールのモジュール構成要素を基板に固定するプロセスの歩留まりを改善し、全体的な製造コストを削減できる。さらに、パワー半導体モジュールを取付け領域に固定した後の目視検査を免除できる。最後に、不要な汚染を減らすと、半導体パワーモジュールの信頼性が向上する。
【0034】
基板を製造するための方法の一実施形態によれば、側壁を有する基体、または冷却フィンの有無にかかわらず基板全体を有する基体は、単一の共通の製造プロセスまたはその後の2つの、例えば異なる製造プロセスで製造される。例えば、基体は、鍛造、スタンピング、フライス加工、または他の機械加工プロセスのうちの少なくとも1つによって製造される。冷却フィンの有無にかかわらず、基体または基板全体が、鋳造プロセスまたは成形プロセスによって形成されることも可能である。
【0035】
鋳造プロセスまたは成形プロセスを適用する場合、基体の側壁および/または溝は、修正された成形工具によって準備することができる。冷却フィンは、側壁および/または溝と同じ製造プロセスで形成されることも可能である。したがって、側壁を実装するための追加費用は予想されない。しかし、溝または複数の溝は、その後、例えば、側壁が形成された後の別の機械加工プロセスによるスタンピングまたはフライス加工などの機械加工プロセスによって形成することができる。
【0036】
基板を製造するための方法の別の実施形態によれば、少なくとも1つの側壁および/または溝を含む基体は、単一の共通の鋳造または成形プロセスで製造される。この場合、基体の側壁および溝は、例えば冷却フィンと一緒でも、修正された成形工具によって準備することができる。したがって、鋳造または他の任意の成形プロセスを使用して、側壁および溝は、鋳造または成形工具のわずかな変更によって実装することができる。
【0037】
したがって、側壁および溝は、その後の2つの製造プロセスによって形成することができる。側壁および/または溝を含む基体を単一の共通の製造プロセスで製造することも可能である。
【0038】
本開示は、基板のいくつかの態様、基板を含むパワー半導体モジュール、および基板の製造方法を含む。態様の1つに関して説明されるすべての特徴は、特定の態様の文脈でそれぞれの特徴が明示的に言及されていない場合でも、他の態様に関して本明細書にも開示される。例えば、パワー半導体モジュールは、ここで説明する基板のいずれかを含むことができる。上記の方法は、ここで説明する基板のいずれかの製造に向けられている。したがって、基板に関連して説明される特徴および利点は、パワー半導体モジュールおよび方法に使用することができ、逆もまた同様である。
【0039】
本開示は、様々な変更および代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、例として図に示され、詳細に説明される。しかし、その意図は、開示を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲内にあるすべての変更、同等物、および代替案をカバーすることである。
【0040】
さらなる理解を提供するために、添付の図が含まれている。図において、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号によって参照され得る。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも縮尺どおりに描かれているとは限らないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】比較例による、基板上にモジュール構成要素を固定してパワー半導体モジュールを形成することができる基板の斜視図である。
図1B】一実施形態による基板の斜視図である。
図1C】さらなる実施形態によるさらなる基板の上面図である。
図1D】さらなる実施形態によるさらなる基板の上面図である。
図2A】側壁および溝を有する異なる基板の異なるセクションの斜視および断面図である。
図2B】側壁および溝を有する異なる基板の異なるセクションの斜視および断面図である。
図2C】一実施形態による基板の上面図である。
図3A】一実施形態による基板を有するパワー半導体モジュールの断面図である。
図3B】別の実施形態による基板を有するパワー半導体モジュールの断面図である。
図4A】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4B】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4C】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4D】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4E】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4F】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
図4G】さらなる実施形態による基板を有するさらなるパワー半導体モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1Aは、例えば、図1Aにも示されているモジュール構成要素30を受け入れるための基板10を示している。この比較基板10は、比較目的および本開示に記載されているいくつかの技術的効果を説明するために導入され、最先端技術とは見なされないものとする。図1Aに示される基板10に関連して説明される特徴は、本開示の基板10のすべての実施形態に使用することができる。
【0043】
基板10は、側壁および溝のない標準的な基体1を備える。基体1は、前側1Aと後側1Bとを有し、前側1Aは、基板10の取付け領域1Mを備える。モジュール構成要素30は、パワー半導体モジュール100を形成するための基板10の取付け領域1Mに固定することができる。基板10は、後側1Bに形成された複数の冷却フィン3を有する。
【0044】
基板10は、その側面1Sに横方向のくぼみ1Iを含む。図1Aでは、基板10は2つの対向する側面1Sを有し、対向する側面1Sのそれぞれは2つの横方向のくぼみ1Iを有する。例えば、くぼみ1Iは、基板10を冷却器に固定またはねじ込むように構成される。例えば、くぼみ1Iは、ねじを受け入れるように構成されている。垂直方向に沿って、くぼみは、基体1の前側1Aから後側1Bまで延びることができる。したがって、側面1Sまたは後側1Bは、基材および/またはチップなどのモジュール構成要素30を受け入れるための取付け領域1Mとは呼ばれず、むしろ基板10を例えば冷却器に固定するための組立て面1Zと呼ばれる。
【0045】
パワー半導体モジュール100のモジュール構成要素30、例えば基材、電子チップまたは半導体チップが基板10に固定されるとき、表面の濡れ性により、接続層2のはんだ材等の接続材料は、ベース板10の取付け領域1Mの広い範囲に広がっていてもよい。これにより、接続材料がオーバーフローし得る。接続材料のオーバーフローは、基体1または基板10の縁1E、側面1S、または後側1Bに汚染を引き起こし得る。汚染に加えて、これは接続材料の大幅な損失にもつながる。
【0046】
例えば、取付け領域1Mに構成要素をはんだ付けしたパワー半導体モジュール100の走査型音響顕微鏡(SAM)写真を使用すると、局所的に欠落したはんだ付け接続およびはんだ材料の空隙またはオーバーフローが観察され得る。
【0047】
図1Bは、接続材料のオーバーフローを防止または低減するための障壁構造を有する基板10を示している。基板10は、一体に形成された基体1を備える。基体1は、CuやAlなどの金属または金属合金、またはAlSiCやMgSiCなどのSiCを含む複合材料で作ることができるが、これに限定されない。その縁1Eに沿って、基体1は、垂直方向の高さ11Hだけ取付け領域1Mを超えて突出する少なくとも1つの側壁11を形成する隆起した一体部品を有する。障壁構造は、例えば、少なくとも1つの側壁11によってのみ形成される。例えば、少なくとも1つの側壁11は、基体1を1つまたはすべての横方向に区切る。少なくとも1つの側壁11は、横幅11Wを有する。この横幅11Wは、少なくとも1つの側壁11の平均幅11Wと見なすことができる。
【0048】
基体1は、前側1Aと後側1Bとの間で垂直方向に沿って延びる垂直方向の厚さ1Tを有する。少なくとも取付け領域1Mの領域では、基体1の垂直方向の厚さ1Tは、少なくとも1つの側壁11の垂直方向の高さ11Hよりも大きい。例えば、基体1の垂直方向の厚さ1Tは、少なくとも1つの側壁11の垂直方向の高さ11Hの少なくとも2倍、3倍、5倍、または少なくとも10倍もしくは20倍大きい。
【0049】
基体1は、横対角幅1Wを有する。横対角幅1Wは、基体1の最大の横展開と見ることができる。例えば、基体1の横対角線幅1Wは、基体1の垂直方向の厚さ1Tの少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、または少なくとも50倍大きい。
【0050】
少なくとも1つの側壁11の垂直方向の高さ11Hは、0.05mmから2.0mmの間(両端を含む)、例えば、0.05mmから1.5mmの間(両端を含む)、または0.05mmから10mmの間(両端を含む)であり得る。少なくとも1つの側壁11の横方向または平均横方向幅11Wは、0.05mmから10mmの間(両端を含む)、例えば、0.1mmから5mmの間(両端を含む)、0.1mmから3mmの間(両端を含む)、または0.1mmから1mmの間(両端を含む)であり得る。疑わしい場合、少なくとも1つの側壁11の垂直方向の高さ11Hおよび横方向幅11Wは、それぞれ、少なくとも1つの側壁11の平均垂直方向の高さおよび平均横方向幅として理解されるものとする。
【0051】
少なくとも1つの側壁11は、0.15~0.3mmの典型的な高さ11Hおよび0.5mmの典型的な幅11Wを有することができる。しかし、他の寸法は可能である。側壁11の形状は固定されておらず、任意の形状が可能である。しかし、側壁11の断面に関連する典型的な形状は、正方形、長方形、台形、半円または三角形であり得る。
【0052】
図1Bに示すように、基体1の隆起した一体部品は、基体1のすべての縁1Eに沿って単一の連続側壁11を形成する。側壁11は、取付け領域1Mを完全に取り囲んでいる。図1Bとは異なり、側壁11は、基体1の1つの縁1Eに沿ってのみ、2つの縁1Eに沿ってのみ、または3つの縁1Eに沿ってのみ延びることが可能である。
【0053】
図1Bによれば、側壁11は部分的に傾斜した壁である。側壁11は、取付け領域1Mに面する内面11Aを有し、内面11Aは傾斜している。また、側壁11は、取付け領域1Mとは反対側を向いた外面を有し、外面は垂直面である。取付け領域1Mからの垂直距離が増加すると、側壁11の断面が減少する。
【0054】
取付け領域1Mの少なくとも一部は、コーティングされていない取付け領域1Mの場合と比較して濡れ性の改善を達成するための材料でコーティングすることができる。取付け領域1Mの少なくとも一部は、基体1の表面によって直接形成されることが可能である。例えば、取付け領域1Mは、1つまたは複数の接合領域を有し、モジュール構成要素30を受け取った後、モジュール構成要素30によって覆われる。このような接合領域は、濡れ性の改善を達成するための材料(例えば、銅コーティング、ニッケルコーティングなど)でコーティングすることができる。はんだレジストは、接合領域の周囲など、濡らしてはならない領域に塗布できる。しかし、基板10または基体1にはんだレジストがない、すなわち空隙であることが可能である。
【0055】
基板10は、後側1Bに形成された複数の冷却フィン3を有する。冷却フィン3は、基体1の一体部品として形成することができ、側壁11または基体1の残りの部分の材料と同じ材料から形成することができる。しかし、冷却フィン3は、基体1の材料と比較して、より高い熱伝導率を有する材料で作られることが可能である。例えば、冷却フィン3は、基板10の後側1Bの最も外側の構造である。したがって、垂直方向に沿って、基板10は、冷却フィン3によって区切ることができる。この場合、基板10は、平面または平坦な後側1Bではなく構造化された後側1Bを有する。冷却フィン3は、基板10の後側1Bの面積の20%、30%、40%、50%を超え、さらには60%または70%を超えて覆うことができる。
【0056】
図1Cは、さらなる実施形態によるさらなる基板10を示す。図1Cに示される基板10は、本質的に、図1Bに示される基板10に対応する。対照的に、基体1の隆起した一体部品は、取付け領域1Mを超えて突出する正確に2つの側壁11を形成する。2つの側壁11は、基体1の2つの対向する縁1Eに沿って配置され、したがって、互いに空間的に分離されている。2つの側壁11のそれぞれは、基体1の1つの縁1E全体に沿って延びる。
【0057】
さらに、図1Bとは逆に、図1Cによれば、基板10は、基体1の2つの別の反対側の縁1Eに沿って配置された2つの溝12を有する。したがって、2つの溝12は互いに空間的に分離されている。図1Cによれば、すべての縁1Eに沿って、基体1は、1つの側壁11または1つの溝12のいずれかを含むが、両方は含まない。
【0058】
図1Cとは異なり、側壁11と溝12の他の組み合わせも可能である。例えば、基体は、1つの縁に沿って配置された正確に1つの側壁11と、残りの縁に沿って1つの溝12もしくはいくつかの溝12とを有することができ、またはその逆もまた同様である。基体1は、正確に2つの隣接する縁1Eに沿って配置された側壁11および残りの縁1Eに沿った溝12を有することも可能であり、またはその逆も同様である。取付け領域1Mは、側壁11および溝12によって完全に取り囲むことができる。基体の少なくとも1つの縁1Eまたはいくつかの縁1Eが、溝12も1つの側壁11も備えられていない可能性もある。
【0059】
側壁11が取付け領域1Mの周囲に部分的にしか準備されていない可能性もある。例えば、正方形または長方形の基板10の場合、側壁11は、基体1の1~3の縁1Eに沿って準備され得るが、側壁11または他の構造、例えば、溝12は、それぞれ、他の3から1の縁1Eには準備されない。あるいは、溝12が、側壁11を持たない他の3から1の縁1E上に準備されることも可能である。さらに、少なくとも1つの側壁11および/または少なくとも1つの溝12が、1つの縁領域の一部に準備されているが、基板10の縁全体に沿って延びていない可能性もある。
【0060】
図1Dは、さらなる実施形態によるさらなる基板10を示す。図1Dに示される基板10は、本質的に、図1Bに示される基板10に対応する。対照的に、横方向では、取付け領域1Mは、連続溝12と連続側壁11の両方によって完全に囲まれている。連続溝12および連続側壁11のそれぞれは、フレーム形状である。連続溝12は、連続側壁11と取付け領域1Mとの間に位置する。横方向には、取付け領域1Mは、溝12によって区切られている。
【0061】
図1Cおよび1Dから逸脱して、側壁11および/または溝12の別の組み合わせも可能である。例えば、溝12は、基体1の正確に1つ、正確に2つ、または正確に3つの縁1Eに沿って延びる連続溝12として形成されることが可能である。さらに、溝12が基板10の取付け領域1Mを完全に取り囲んでいる一方で、側壁12が取付け領域1Mを完全には取り囲んでいないことも可能である。別の代替手段として、基体1は、基体1の正確に2つの対向する縁1Eに配置された正確に2つの溝12および2つの側壁11を備えることができる。
【0062】
図2Aは、図1Dで強調表示されている基板10のセクション10Sの詳細を示している。図2Aに示すように、溝12は側壁11に直接隣接している。したがって、接続材料のオーバーフローを防止するための障壁構造は、側壁部分と溝部分を含むコヒーレント構造によって形成される。ここで、側壁11は、溝12内に連続的または直接延びる。
【0063】
図2Aに示すように、溝12は垂直壁と平坦な底面を有する。垂直方向に沿って、溝12の断面は実質的に一定である。しかし、側壁11は傾斜している。したがって、側壁11と溝12との間の移行領域にはジャンプまたはキンクが存在する。例えば、側壁11は、取付け領域1Mに対して20°~70°または30°~60°傾斜した内面11Aを有する。例えば、図2Aに示すように、側壁11の内面11Aは、取付け領域1Mに対して45°傾斜している。溝12は、取付け領域1Mに対して90°の角度を形成する内側垂直面を有する。したがって、図2Aは、45°側壁11と90°溝12の組み合わせを示している。
【0064】
図2Bは、溝12および側壁11のさらなる幾何学的形状を示している。例えば、側壁11と溝12との間の移行領域には、ジャンプやキンクがない。側壁11と溝12との間には、むしろ滑らかな移行がある。左側には、図2Bは45°側壁11と45°溝12の組み合わせを示している。右側には、図2Bが45°の側壁と円形の溝12の組み合わせを示している。取付け領域1Mに向かう垂直方向に沿って、溝12の断面が増加する。
【0065】
図2Cは、さらなる実施形態によるさらなる基板10を示す。図2Cに示される基板10は、本質的に、例えば図1Bに示される基板10に対応する。対照的に、図2Cに示される基板10は、基体1の前側1A上に1つの単一の側壁11のみを含む。側壁11は、対応する縁1E全体に沿って延びておらず、側面1Sから離間している。さらに、基板10には、冷却フィン3がなくてもよい。
【0066】
図3Aは、基板10、例えば上記の基板10のいずれか1つを含むパワー半導体モジュール100の実施形態を示す。パワー半導体モジュール100は、ハウジング本体20をさらに備え、ハウジング本体20は、基板10を横方向に、例えば完全に取り囲む。側壁11は、ハウジング本体10によって完全に覆うことができ、ハウジング本体20を基板10に追加で固定する固定構造として機能する。
【0067】
上面図では、ハウジング本体20は、基板10を部分的または完全に覆うことができる。例えば、ハウジング本体20は、成形または鋳造または充填プロセスによって形成される。
【0068】
パワー半導体モジュール100は、モジュール構成要素30をさらに備え、モジュール構成要素30は、接続層2によって取付け領域1Mに固定されている。接続層2は、はんだ層または焼結層または接着層であり得る。ハウジング本体20は、横方向に、例えばモジュール構成要素30を完全に取り囲むことができる。パワー半導体モジュール100は、例えばモジュール構成要素30を電気的に接続するための端子4を備える。端子4は、ハウジング本体20の側面で外部電源に外部から電気的に接続することができる。パワー半導体モジュール100は、このような端子4を複数備えることができる。
【0069】
例えば、モジュール構成要素30は、1つの基材または複数の横方向に分離された基材および/または電子もしくは光電子チップを含む。モジュール構成要素30は、はんだ付け、接着、焼結プロセスによって取付け領域1Mに固定することができる。したがって、接続層2は、はんだ層、焼結層、接着剤層、または接着層であり得る。例えば、接続層2は、基板10の取付け領域1Mを完全には覆っていない。しかし、接続材料の広がりに応じて、接続層2は、基体1の側壁11に少なくとも部分的に直接隣接することができ、または溝12が内側にあり、側壁11が外側にある場合、溝12に直接隣接することができる。
【0070】
垂直方向には、側壁11は接続層2を越えて突出することができる。横方向では、モジュール構成要素30は、側壁11および/または溝12によって取り囲まれ得る。溝12は、接続層2の材料で部分的または完全に充填することができる。このようなケースは、例えば図3Bに示すパワー半導体モジュール100で起こり得る。垂直方向に沿って、モジュール構成要素30またはモジュール構成要素30の構成要素の後側は、側壁11の上面の下に位置し、一方、モジュール構成要素30の前側は、側壁11の上面よりも上に配置することができる。言い換えれば、モジュール構成要素30は、側壁11の完全に上方に位置しているわけではない。
【0071】
図3Bは、さらなる実施形態によるさらなるパワー半導体モジュール100を示している。図3Bに示すパワー半導体モジュール100は、実質的に図3Aに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、図3Bに示される基板10または基板10の基体1は、少なくとも1つの側壁11および少なくとも1つの溝12を備える。側壁11および/または溝12は、ハウジング本体20が形成される前に、接続層2の材料が基体1の側面1Sまたは後側1Bに向かってクリープするのを防ぐように形成される。
【0072】
例えば、溝12は、側壁11および溝12の両方が、ハウジング本体20を基板10に追加で固定する固定構造として機能するように、ハウジング本体20の材料によって少なくとも部分的に充填または完全に充填される。また、溝12には、接続層2の材料が部分的に充填され、ハウジング本体20の材料が部分的に充填されることも可能である。
【0073】
ハウジング本体20で覆われた、または囲まれた基板10を備える従来のパワー半導体モジュール100は、ハウジング本体20と基板10との間の接着不良のために、基板10とハウジング本体20との間の安定性が不十分である場合がある。側壁11および/または溝12を固定構造として使用すると、一方では接触面が拡大され、他方では、ハウジング本体20が固定構造に係合することができ、その結果、パワー半導体モジュール100の安定性が向上する。例えば、特にハウジング本体20が金型本体である場合、側壁11および/または溝12は、金型縁破損のリスクを軽減し、基板10とハウジング本体20との間の界面での剥離を防止することによって、全体の成形を改善することができ、なぜなら、より多くの接触面がハウジング本体20に提供され、側壁11および/または溝12がハウジング本体20の固定構造として機能することができるからである。
【0074】
接続材料のオーバーフローを防止するために、溝12を使用する代わりに、基板10の縁1Eの側壁11または隆起部分を使用することにより、溝12内の接続材料の損失を防ぐことができる。あるいは、側壁11と溝12との組み合わせが可能であり、溝12は障壁構造の内部部分として、側壁11は障壁構造の外側部分として提供され得る。側壁11の存在のおかげで、溝12を小さく保つことができ、その結果、接続材料の非常に小さく許容可能な損失のみが生じる。設計に応じて、モジュールは例えば、空間に関して、側壁11および/または溝12は部分的に実装することもできる、例えば、側壁11は、基体1または基板10の異なる端部1Eに溝12を備えているか、または備えていない。
【0075】
図4A図4Gは、パワー半導体モジュール100のいくつかの例示的な実施形態を示している。図4Aに示すパワー半導体モジュール100は、本質的に図3Aに示すパワー半導体モジュール100である。明確さのために、また図4Bから図4Gに示されるパワー半導体モジュール100のさらなる実施形態とより良い比較を行うためにのみ、図4Aでは、ハウジング本体20および端子4は示されていない。図4Aによれば、側壁11は側面1Sに直接隣接している。したがって、側壁11は、基体1の一縁に直接配置されている。
【0076】
図4Bに示すパワー半導体モジュール100は、実質的に図4Aに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、上面視では、側壁11は、対応する側面1Sから離間している。したがって、側壁11は、基体1の対応する1つの縁から横方向に離間している。
【0077】
図4Cに示すパワー半導体モジュール100は、実質的に図4Bに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、基体1の前側1Aの少なくとも1つの縁領域において、基体1は、いくつかの側壁11を有し、この場合、3つの側壁11を有する。側壁11は、互いに直接隣接することができ、または横方向に互いに離間することができる。例えば、側壁11は、互いに平行または実質的に平行である。
【0078】
図4Dに示すパワー半導体モジュール100は、図4Bに示すパワー半導体モジュール100に本質的に相当する。対照的に、基体1の前側1Aの少なくとも1つの縁領域において、基体1は、側壁11に直接隣接する1つの溝12を有する。溝12は、側壁11と取付け領域1Mとの間に位置する。
【0079】
図4Eに示すパワー半導体モジュール100は、実質的に図4Dに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、基体1の前側1Aの少なくとも1つの縁領域において、基体1は、2つの側壁11の間に位置する1つの溝12を有する。図4Eに示すように、溝12は、両方の側壁11に直接隣接することができる。溝12が両側壁11から横方向に離間されているか、または一方の側壁11に直接隣接し、別の側壁11から離間されることも可能である。
【0080】
図4Fに示すパワー半導体モジュール100は、実質的に図4Dに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、側壁11と溝12の位置は交換されている。溝12は、側面1Sと側壁11との間に位置する。取付け領域1Mは、取付け領域1Mと溝12との間にある側壁11によって区切ることができる。
【0081】
図4Gに示すパワー半導体モジュール100は、本質的に図4Dまたは図4Eに示すパワー半導体モジュール100に相当する。対照的に、基体1の前側1Aの少なくとも1つの縁領域において、基体1は、1つ以上の溝12および2つ以上の側壁11、ここでは2つの溝12および3つの側壁11を有する。溝12のそれぞれは、2つの側壁11の間に配置され、2つの側壁11のうちの少なくとも1つから直接隣接または離間することができる。また、側壁11の各々は、2つの溝12の間に配置され、2つの溝12のうちの少なくとも1つから直接隣接または離間することができる。
【0082】
図4A図4Gでは、基板10またはパワー半導体モジュール100の部分断面図のみが示されている。側壁11、溝12、または側壁11と溝12の可能な組み合わせは、基体1の1つの縁1Eに正確に沿って、2つの隣接または対向する縁1Eに正確に沿って、3つの縁1Eに正確に沿って、またはすべての縁1Eに沿って、すなわち、基体1の前側1A上の正確に1つの縁領域、正確に2つの隣接または対向する縁領域、正確に3つの縁領域、またはすべての縁領域にそれぞれ配置することができる。側壁11および/または溝12は、例えば図2Cに示されるように、縁領域全体または縁領域のいくつかの部分に沿って延びることができる。
【0083】
本開示のさらなる実施形態は、以下に提供される。ここで、以下で使用される番号は、他の実施形態の特徴への参照を容易にすることが意図されている。
【0084】
実施形態1:基板は一体に形成された基体を備え、この基体は前側と後側を有し、前側は、基板の縁の少なくとも1つに沿った、基板の取付け領域を含み、基体は、取付け領域の領域において垂直方向の高さだけ取付け領域を越えて突出する少なくとも1つの側壁を形成する少なくとも1つの隆起した一体部品を有し、基体は、前側と後側との間に延びる垂直方向の厚さを有し、この垂直方向の厚さは側壁の垂直方向の高さよりも大きい、パワー半導体モジュール用基板。
【0085】
実施形態2:隆起した一体部品は、取付け領域を越えて突出する少なくとも2つの側壁を形成し、少なくとも2つの側壁は、基体の2つの隣接しないまたは対向する縁に沿って配置される、実施形態1に記載の基板。
【0086】
実施形態3:側壁が取付け領域を完全に取り囲む、実施形態1に記載の基板。
実施形態4:少なくとも1つの側壁が、0.05mmから5.0mmの間(両端を含む)の垂直方向の高さおよび0.05mmから10mmの間(両端を含む)の平均横幅を有する、実施形態1から3の1つに記載の基板。
【0087】
実施形態5:後側に複数の冷却フィンを備える、実施形態1から4の1つに記載の基板。
【0088】
実施形態6:実施形態1から5の1つに記載の基板は、基体の縁の少なくとも1つに沿って延びる少なくとも1つの溝をさらに含み、横方向に沿って、取付け領域は溝によって区切られている。
【0089】
実施形態7:縁の少なくとも1つに沿って、またはいくつかの縁に沿って、は、少なくとも1つの側壁および溝の両方を有し、基体の前側の平面図において、溝は、取付け領域と少なくとも1つの側壁との間に配置される、実施形態1から6の1つに記載の基板。
【0090】
実施形態8:縁の少なくとも1つに沿って、またはいくつかの縁に沿って、基体は、少なくとも1つの側壁および溝の両方を有し、基体の前側の平面図において、側壁は取付け領域と溝の間に配置されている、:実施形態1から5の1つに記載の基板。
【0091】
実施形態9:溝が少なくとも1つの側壁に直接隣接している、実施形態6から8のいずれかに記載の基板。
【0092】
実施形態10:すべての縁に沿って、基体が少なくとも1つの側壁または少なくとも1つの溝のいずれかを含むが、同じ縁に側壁および溝の両方を含まない、実施形態1から6の1つに記載の基板。
【0093】
実施形態11:少なくとも1つの共通縁に沿って、基体は、少なくとも2つの側壁および少なくとも1つの溝、または少なくとも1つの側壁および少なくとも2つの溝を含む、実施形態1から9の1つに記載の基板。
【0094】
実施形態12:ハウジング本体をさらに備え、ハウジング本体が基板を横方向に取り囲み、側壁がハウジング本体によって覆われ、ハウジング本体を基板に追加固定する固定構造として機能する、先行する実施形態の1つに記載の基板を備えるパワー半導体モジュール。
【0095】
実施形態13:実施形態6~11の1つに記載の基板を備えるパワー半導体モジュールであって、ハウジング本体をさらに備え、ハウジング本体が基板を横方向に取り囲み、側壁がハウジング本体で覆われ、溝がハウジング本体の材料によって少なくとも部分的に充填されるため、側壁と溝の両方がハウジング本体を基板に追加的に固定する固定構造として機能する、パワー半導体モジュール。
【0096】
実施形態14:モジュール構成要素をさらに備え、モジュール構成要素は、接続層によって取付け領域に固定され、ハウジング本体は、モジュール構成要素を横方向に取り囲んでいる、実施形態12~13の1つに記載のパワー半導体モジュール。
【0097】
実施形態15:側壁および/または溝が、接続層の材料が組立て面に向かってクリープするのを防ぐように形成されている、実施形態14に記載のパワー半導体モジュール。
【0098】
記載されている図に示される実施形態は、基板および基板を含むパワー半導体モジュールの改善された配置の例示的な実施形態を表す。したがって、それらは、基板および基板を含むパワー半導体モジュールの改善された配置によるすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。基板またはパワー半導体モジュールの実際の配置は、上記の例示的な実施形態とは異なってもよい。
【0099】
本出願は、欧州特許出願EP 21 161 711.3の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
参照記号
100 パワー半導体モジュール
10 基板
10S 基板の部分
20 ハウジング本体
30 モジュール構成要素/基材/半導体チップ
1 基体
1A 基体の前側
1B 基体の後側
1S 基体の/基板の側面
1E 基体の縁
1M 基体の/基板の取付け領域
1T 基体の垂直方向の厚さ
1W 基体の対角横幅
1I 基体の横方向のくぼみ
1Z 組立て面
11 基体の側壁
11A 側壁の内面
11H 側壁の垂直方向の高さ
11W 側壁の平均横幅
12 基体の溝
2 接続層
3 冷却フィン
4 端子
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
【国際調査報告】