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特表2024-515157半導体パワーモジュール用の金属基板構造体および金属基板構造体の製造方法、ならびに半導体パワーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体および金属基板構造体の製造方法、ならびに半導体パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240329BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240329BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L25/04 C
H05K1/02 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555363
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022052227
(87)【国際公開番号】W WO2022189068
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161694.1
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】エルバー,ローマン
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA18
5E338BB63
5E338BB75
5E338CD05
5E338EE21
(57)【要約】
半導体パワーモジュール用の金属基板構造体(10)は、金属上部層(11)の縁部(14)によって制限される少なくとも1つの凹部を有する金属上部層(11)を備え、金属上部層(11)は、縁部(14)に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む。金属基板構造体(10)は、金属下部層(13)と、金属上部層(11)と金属下部層(13)との両方に結合され、積層方向(A)に関して間に形成される誘電体層(12)と、をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール用の金属基板構造体(10)を製造する方法であって、
金属上部層(11)の縁部(14)によって制限される少なくとも1つの凹部を有する前記金属上部層(11)を提供するステップであって、前記金属上部層(11)が、スタンピング、エッチング、および切断のうちの少なくとも1つによって形成された前記縁部(14)に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む、ステップと、
金属下部層(13)を提供するステップと、
誘電体層(12)を提供するステップと、
前記誘電体層(12)が前記金属上部層(11)と前記金属下部層(13)との両方にそれらの間で結合されるように、前記層(11、12、13)を一緒に結合するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記誘電体層(12)を提供し結合する前記ステップが、
ポンプ輸送可能な物質を提供するステップと、
前記金属上部層(11)と前記金属下部層(13)とを間に所定の距離を置いて互いに対して位置合わせするステップと、
位置合わせされた前記金属上部層(11)と前記金属下部層(13)との間に前記ポンプ輸送可能な物質を導入し、それにより成形によって前記誘電体層(12)を形成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
半導体パワーモジュール用の金属基板構造体(10)であって、
金属上部層(11)の縁部(14)によって制限される少なくとも1つの凹部を有する前記金属上部層(11)であって、前記金属上部層(11)が、スタンピング、エッチング、および切断のうちの少なくとも1つによって形成された前記縁部(14)に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む、金属上部層(11)と、
金属下部層(13)と、
前記金属上部層(11)と前記金属下部層(13)との両方に結合され、積層方向(A)に関して間に形成される誘電体層(12)と、
を備える、金属基板構造体(10)。
【請求項4】
前記縁部(14)が、前記誘電体層(12)によって少なくとも部分的に埋め込まれているか、または覆われている、請求項3に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項5】
前記応力緩和構造体が、
前記金属上部層(11)の上面(141)、側面(142)、および底面(143)のうちの少なくとも1つに形成されている、請求項3または4に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項6】
前記応力緩和構造体が、前記積層方向(A)に関して前記金属上部層(11)の厚さの減少として形成された薄化縁部(15)を備える、請求項3から5のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項7】
前記応力緩和構造体が、前記積層方向(A)に関して前記金属上部層(11)の斜め縁部(16)および面取りされた側面(142)のうちの少なくとも1つを備える、請求項3から6のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項8】
前記金属上部層(11)の前記斜め縁部(16)および前記面取りされた側面(142)のうちの前記少なくとも1つが、断面に関して凸状または凹状の形状を含む、請求項7に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項9】
前記応力緩和構造体が、前記金属上部層(11)の表面(141、142、143)の所定の粗さとして形成された構造化端面(17)を備える、請求項3から8のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項10】
前記応力緩和構造体が、前記金属上部層(11)の表面(141、142、143)上にディンプル(18)として形成された凹部を備える、請求項3から9のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項11】
前記応力緩和構造体が、前記金属上部層(11)の表面(141、142、143)上に溝(19)として形成された凹部を備える、請求項3から10のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)。
【請求項12】
半導体デバイス用の半導体パワーモジュール(1)であって、
請求項3から11のいずれか1項に記載の金属基板構造体(10)と、
前記金属基板構造体(10)の前記金属上部層(11)に結合された電子機器(2)と、
を備える、半導体パワーモジュール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体パワーモジュール用の金属基板構造体および半導体デバイス用の半導体パワーモジュールに関する。本開示はさらに、金属基板構造体の対応する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の絶縁金属基板は、低い絶縁要件と低い熱抵抗を同時に備えた低出力および中出力の半導体パッケージの技術を形成する。文献特開2014-090103は、絶縁シートを含む成形パッケージを開示している。絶縁シートは一方の面では下部層を備え、もう一方の面ではアイランド間に延在している。下部層とアイランドの両方を金属で作ることができる。絶縁シートはさらに、短絡を防ぐために下部層とアイランドとの間に樹脂シートを備えている。
【0003】
文献EP1909324A1は、部分的に異なる厚さを有するリードフレームを開示している。リードフレームの厚い部分には、LEDなどの大電流と放熱とが必要な特殊な電子部品が搭載されている。文献特開2014-112640は、金属基板と、金属基板上に位置し熱硬化される電気絶縁性下層樹脂とを備える半導体デバイスを開示している。半導体デバイスは、下層樹脂上に位置し、熱硬化される上層樹脂と、上層樹脂上に位置するリードフレームとをさらに備えている。文献EP2006909A2および米国特許出願公開第2016/315023号にはさらなる半導体デバイスが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この点で、信頼性の高い機能を備えた安定した金属基板を提供することが課題である。
本開示の実施形態は、信頼性の高い機能を可能にし、モジュール寿命の向上に貢献する、半導体パワーモジュール用の安定した金属基板構造体に関する。さらなる実施形態は、半導体デバイス用の対応する半導体パワーモジュールおよびそのような金属基板構造体の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる発展形態および実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
一実施形態によれば、半導体パワーモジュール用の金属基板構造体であって、金属上部層の縁部によって制限される少なくとも1つの凹部を有する金属上部層であって、スタンピング、エッチング、および切断のうちの少なくとも1つによって形成された縁部に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む、金属上部層、を備えている。金属基板構造体は、金属下部層と、金属上部層と金属下部層との両方に結合され、積層方向に関して間に形成される誘電体層と、をさらに備えている。誘電体層は、例えば樹脂材料を含む。
【0007】
上述の成形金属基板構造体を使用することにより、例えば少なくとも0.5kVの電圧を伴う高電圧パワーモジュール用途での使用であっても、信頼性の高い機能と寿命の向上を可能にする半導体パワーモジュールが実現可能である。記載された金属基板構造体は、例えば応力緩和パターンを備えた所定の回路配線構造体(circuit metallization structure)を含むパワーモジュール絶縁金属基板を実現する。
【0008】
応力緩和構造体は、金属上部層と誘電体層との間の接着力を改善するための固定構造体としても機能する。さらに、金属基板構造体は機械的安定性の向上に貢献する。どちらも例えば、高電圧能力の向上と部分放電に関して貢献できる。説明した金属基板構造体の構成は、中電圧または低電圧および低コストの用途の観点から有益な機能にも貢献できる。
【0009】
本開示に関連して、回路配線のパターンの縁部は機械的応力および熱機械的応力にさらされ、空隙や亀裂を引き起こす可能性があり、最終的には配線と樹脂シートとの間の剥離につながり得、結果として部分放電や絶縁破壊を引き起こす可能性があることが認識される。記載された金属基板構造体の応力緩和構造体は、例えば機械的応力または熱機械的応力による力を吸収または消散するために、縁部の領域に特に形成される。また、応力緩和構造体により、比較的硬い金属によって引き起こされる応力の低減が達成され得る。代替的または追加的に、応力緩和構造体は、金属上部層の金属パターンと誘電体層の絶縁樹脂との間の接着力の改善に寄与する。
【0010】
したがって、例えば1つまたは複数の応力緩和機構を備える応力緩和構造体は、絶縁金属基板構造体の回路配線パターンの周辺領域または縁部領域に意図的に組み込まれる。
【0011】
配線は、銅および/またはアルミニウムを含むフィルムおよび/またはシートであり得る金属上部層によって形成される。これは、銅および/もしくはアルミニウム板、または対応する合金または複合材料として形成され得る金属下部層にも適用できる。金属上部層は、例えばスタンピングによって少なくとも1つの凹部を含む所定の構造体で形成される。ただし、上部配線の製造にも代替手段がある。代替的または追加的に、金属上部層は、例えば、提供された金属シートのエッチングおよびレーザー切断のうちの少なくとも1つによって、所定の構造体で形成される。
【0012】
誘電体層は、絶縁されたプリプレグ材料を使用することによって、または例えば成形によって設けることができる。誘電体層は、例えばエポキシおよび/またはセラミックベースの誘電体である。成形された誘電体層の場合、セラミック充填材料を含む樹脂ベースの誘電体材料、例えばエポキシ、Al2O3、AlN、BN、Si3N4、またはSiO2を含み得る。例えば、誘電体層は充填材を含むエポキシである。誘電体層は、ビスマレイミド、シアン酸エステル、ポリイミド、および/またはシリコーンなど、転写、射出、または圧縮成形に適した他の材料をベースにすることもできる。代替的または追加的に、誘電体層は、セラミック材料および/またはハイドロセット材料、または前述の成分の2つ以上の材料の組み合わせを含むことができる。ただし、絶縁誘電体層を製造または提供する代替手段もある。
【0013】
少なくとも1つの凹部は、金属上部層の配線を形成する凝集金属片を通る貫通開口を実現することができる。代替的に、少なくとも1つの凹部は、例えば、2つの別個の金属経路の間に溝または自由容積を形成する。金属上部層は、SMMSの上部に所望の配線を準備するために所定の金属パターンを形成するために、複数の凹部および/または溝および/またはトレンチを備えることもできる。一般に、凹部は、縁部近くの応力緩和構造体を構成する金属上部層の少なくとも1つの縁部によって制限される。
【0014】
金属基板構造体の一実施形態によれば、縁部または縁部の側壁は、誘電体層によって少なくとも部分的に埋め込まれるか、または覆われる。例えば、これは、誘電体層を成形し、金属上部層の縁部または側壁を覆うことによって実現できる。これには、金属上部層の縁部での応力緩和構造体の被覆または埋め込みがさらに含まれ得る。
【0015】
金属基板構造体の一実施形態によれば、応力緩和構造体は、積層方向に対する金属上部層の厚さの減少として形成された薄化縁部を備える。代替的または追加的に、応力緩和構造体は、積層方向に関して金属上部層の縁部に、斜めの側面として形成された斜め縁部および面取り構造体を有する側面のうちの少なくとも1つを備えることができる。側面の面取り部分は曲面や丸みを帯びていてもよい。側方主平面の範囲の断面に関して、金属上部層の縁部は、断面または全体において凸状または凹状のプロファイルまたは形状を含むこともできる。
【0016】
金属基板構造体のさらなる実施形態によれば、応力緩和構造体は、例えば金属上部層の表面の所定の粗さとして形成された構造化端面を備える。代替的または追加的に、応力緩和構造体は、金属上部層の縁部の表面上に局所的なディンプルとして形成された凹部を備えることができる。代替的または追加的に、応力緩和構造体は、金属上部層の1つまたは複数の表面上に溝として形成された凹部を備えることができる。
【0017】
応力緩和構造体は、金属上部層の上面、側面および底面のうちの少なくとも1つに形成され、1つまたは複数の応力緩和構成を備えることができる。一般に、応力緩和構造体は、縁部の領域に輪郭を形成し、この輪郭は、縁部に隣接する所定の粗い構造さえも持たない平坦な長方形の表面を有する滑らかな直方体壁または縁部とは少なくとも部分的に異なる。
【0018】
絶縁金属基板は、例えば温度サイクル中に回路配線の縁部に発生する機械的応力または熱機械的応力を受ける。応力緩和構造体は、金属上部層および誘電体層によってそれぞれ実現される回路配線パターンと絶縁樹脂シートとの界面での空隙または亀裂の形成を回避することに寄与する。ひいては、応力緩和構造体は層間剥離の回避にさらに寄与する。したがって、説明した金属基板構造体は、部分放電、さらには対応するパワーモジュールの劣化を早めること、または故障にさえつながる可能性のある絶縁破壊のリスクを低減することに寄与する。さらに、応力緩和構造体は、基板内部に浸透する可能性のある湿気または有害ガスに対する信頼性の高い保護に寄与する。これらの悪影響はさらに熱放散の減少をもたらす可能性があるため、説明した金属基板構造体は熱放散特性の維持とモジュール寿命の向上にさらに寄与する。
【0019】
一実施形態によれば、半導体デバイス用の半導体パワーモジュールは、記載された金属基板構造体の一実施形態と、金属基板構造体の金属上部層に結合された電子機器とを備える。半導体パワーモジュールは、半導体パワーモジュールの動作中に熱を放散するために、金属基板構造体の金属下部層に結合されたヒートシンクをさらに備えることができる。したがって、半導体パワーモジュールは別個のヒートシンクを備えることができる。代替的または追加的に、金属基板構造体の金属下部層はそれ自体ヒートシンクとして機能することができ、例えば有益な熱放散を提供するためにリブまたは突起を備えるように構成することができる。金属下部層はさらに、半導体パワーモジュールのベースプレートとして機能することができる。さらに、半導体パワーモジュールは、前述の金属基板構造体の2つ以上の実施形態を備えることができる。電子機器は、チップ、集積回路、および/またはその他の個別デバイスを含んでいてもよい。
【0020】
一実施形態によれば、半導体パワーモジュール用の記載された金属基板構造体の一実施形態を製造する方法は、金属上部層の縁部によって制限される少なくとも1つの凹部を有する金属上部層を提供するステップであって、金属上部層が、縁部に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む、ステップ、を含む。金属上部層および縁部に隣接する領域の少なくとも1つの応力緩和構造体は、スタンピング、エッチングおよび/または切断によって製造される。2つ以上の金属上部層および/またはパターン化された金属上部層を設けることもできる。本方法はさらに、金属下部層を提供するステップと、誘電体層を提供するステップとを含む。本方法はさらに、誘電体層が金属上部層と金属下部層との両方にそれらの間で結合されるように、層を一緒に結合するステップを含む。
【0021】
方法の一実施形態によれば、誘電体層を提供し結合するステップは、所定の材料特性を有するポンプ輸送可能な物質を提供するステップを含む。ポンプ輸送可能な物質は、形成される誘電体層の粘性のある原料である。したがって、一実施形態によれば、ポンプ輸送可能な物質はエポキシおよび/またはセラミックベースの液体である。代替的または追加的に、原料は、金属上部層および/または金属下部層に対する熱伝導率および/またはCTE調整を改善するために充填された無機物を含んでもよい。本方法はさらに、金属上部層と金属下部層とを所定の距離を置いて互いに対して位置合わせするステップを含む。この距離は、後の誘電体層の厚さを実質的に予め定める。例えば、位置合わせは、金属上部層をリリースフィルムまたはライナー上に配置するか、または成形ツールのモールドチェイスなどの別の固定具に配置することによって実現できる。これにより、金属上部層の提供された配線構造体を金属下部層に対して正確に位置決めすることができ、例えば動作電位が異なるために金属上部層が別個の金属パッドを含む場合に有用となり得る。
【0022】
本方法はさらに、位置合わせされた金属上部層と金属下部層との間にポンプ輸送可能な物質を導入し、それにより金属上部層と金属下部層との両方に結合する成形誘電体層を形成するステップを含む。成形は、例えば、圧縮成形、転写成形および/または射出成形によって行うことができる。位置合わせにリリースフィルムを使用する場合は、後でこれを配線の上面から剥がすことができる。
【0023】
その結果、記載された半導体パワーモジュールおよび記載された製造方法は、金属基板構造体の一実施形態を製造することを含む、または製造することに関し、金属基板構造体の説明された特徴および特性は、半導体パワーモジュールおよび製造方法に関しても開示されており、またその逆も同様である。
【0024】
例示的な実施形態を、概略図および参照番号を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】半導体パワーモジュールの実施形態を示す図である。
図2】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図3】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図4】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図5】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図6】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図7】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図8】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図9】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図10】半導体パワーモジュール用の金属基板構造体の実施形態を示す図である。
図11】金属基板構造体の一実施形態を製造する方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
理解を深めるために添付の図が含まれている。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないことを理解されたい。同一の参照番号は、同一の機能を有する要素または構成要素を示す。要素または構成要素が異なる図の機能に関して互いに対応する限り、以下の各図ではその説明は繰り返されない。わかりやすくするために、すべての図で要素が対応する参照記号とともに表示されていない場合がある。
【0027】
図1は、半導体デバイス用の半導体パワーモジュール1の一実施形態の側面図を示す。半導体パワーモジュール1は、金属基板構造体10と、金属基板構造体10に結合された電子機器2と、同様に金属基板構造体10に結合されたヒートシンク3とを備えている。図示された積層方向Aに関して、電子機器2は金属基板構造体10の金属上部層11に結合され、ヒートシンク3は金属基板構造体10の金属下部層13に結合される。金属基板構造体10は、金属上部層11と金属下部層13との間に形成された誘電体層12をさらに備えている。
【0028】
金属上部層11と金属下部層13との両方は、金属からなるか、少なくとも銅および/またはアルミニウムまたは対応する合金などの金属を含む。代替の熱伝導性および/または導電性材料または材料の組み合わせを代わりに使用できる。
【0029】
誘電体層12は、プリプレグ材料として提供され得る。誘電体層12は、例えば充填材を含むエポキシとして実現することができる。充填材はセラミックのようなものでも、他の無機充填材でも実現できる。代替的または追加的に、誘電体層12は、Al2O3、AlN、BN、Si3N4、SiO2などのセラミックベースの絶縁層を含む。誘電体層12を成形により形成する場合、ビスマレイミド、シアン酸エステル、ポリイミド、シリコーンなど、転写、射出、および/もしくは圧縮成形に適した他の材料をベースにすることもでき、または、ハイドロセット材料などのセラミック材料をベースにすることもできる。
【0030】
したがって、金属基板構造体10は、構造化された上面配線、金属後面プレート、およびそれらの間の誘電体絶縁層を有する絶縁金属基板を実現する。金属上部層11のパッドは、リード線4を介して電子機器2の構成要素に接続される。したがって、図1は、ワイヤボンド接続を備えたチップの図を示し得る。チップとパッドをボンドワイヤで相互接続することもできる。
【0031】
図示の半導体パワーモジュール1は、電子機器2、または金属基板構造体10の上面全体、さらにはそれ以上がエポキシおよび/またはゲルの封止に埋め込まれたゲル充填パワーモジュールを実現することができる。このような封止は、例えば、金属基板構造体10の製造後の成形によって行うことができる。説明した金属基板構造体10は、ゲル、ポッティング樹脂、および/またはモールド組成物に埋め込むことができる。
【0032】
以下の図2図11を参照して説明するように、金属基板構造体10は、半導体パワーモジュール1の安定性の向上および信頼性の高い機能を可能にし、特に組み込まれた応力緩和構造体によりモジュール寿命の延長にさらに寄与する。応力緩和構造体は、金属上部層11の上部配線に組み込まれた誘電体層12に従って、絶縁シートの接着力を改善するための解放構造体を実現する。
【0033】
図2は、金属基板構造体10の一実施形態を概略側面図で示す。金属上部層11は、金属上部層11の対応する縁部14によって制限される2つの凹部を有する。金属上部層11は、縁部14に隣接する領域に少なくとも1つの応力緩和構造体をさらに含む。縁部14は、一般に、機械的応力および熱機械的応力にとって重要な領域であり、空隙や亀裂、さらには最終的に金属上部層11の配線と誘電体層12の絶縁材料との間の層間剥離を引き起こす可能性があり、さらに結果として部分放電や絶縁破壊を引き起こす可能性がある(応力によって最も危険にさらされ、結果として部分放電が発生する位置を示す図示された稲妻の記号を参照)。意図的に組み込まれた応力緩和構造体により、機械的応力および熱機械的応力が吸収または消散され得る。さらに、金属上部層11と絶縁誘電体層12との間の密着性が改善する。
【0034】
図2図4によれば、金属基板構造体10は、薄化縁部15として形成された応力緩和構造体を備えている。薄化縁部15は、縁部14の領域における金属上部層11の上面141および/または底面143に組み込むことができる厚さの減少として構成される。厚さは積層方向Aに関係するが、主要な領域の範囲は横方向BおよびCに対応する(図10も参照)。したがって、薄化縁部15は、金属上部層11の回路配線パターンの局所的な厚さの減少によって形成される。
【0035】
代替的または追加的に、応力緩和構造体は、縁部14の面取りされた側面142として形成された斜め縁部16を備えることができる(図5および図6を参照)。側面142、側面142の一部、または面取り部分は、斜め縁部16を提供するために、凸状または凹状の輪郭または側壁プロファイルを備えることができる。したがって、局所的な機械的応力は、配線パターンの局所的な厚さの減少という代替設定によって低減される。このような厚さの減少は、完全に傾斜した側壁の準備(図5を参照)、または側壁の一部のみが傾斜した面取りされた縁部部分(図6を参照)によって達成される。例えば、積層方向Aに関して、斜め縁部16は、10°から60°までの値を有する角度Dを囲む。
【0036】
図7は、縁部14の領域における金属上部層11の側面142、上面141および/または底面143上に所定の粗さとして形成された構造化端面17を備えることができる応力緩和構造体の代替または追加の実施形態を示す(図8も参照)。このような粗い構造体は、特別に形成された凹凸のない平らで滑らかな表面とは異なる。図7は、配線縁部14のそのような大まかな輪郭または形状のオプションを示す。構造化端面17は、例えば鋸歯状構造体などの突出部分を備えることができ、例えば圧縮成形される誘電体層11の絶縁樹脂との接着力を改善することができる。さらに、構造化端面17は、金属上部層11の配線パターンと誘電体層12との間の接着力および固定性の改善に寄与するために、波形構造または段差形状を備えることができる。とはいえ、代替構造体も同様に可能である。例えば、金属基板構造体10は、縁部14に隣接する底面143上に構造化端面17を実現する金属上部層11の裏側に粗構造体を備える(図8を参照)。代替的または追加的に、例えば、縁部14に隣接するか否かにかかわらず、金属上部層11の裏側または下側に所定の粗さを形成することができる。構造化端面17により、金属上部層11の配線パターンの底面143の粗さまたは局所構造体の特定の強化は、例えば配線パターンと誘電体層12の樹脂シートとの間の接着力の改善に寄与することができる。
【0037】
さらなる実施形態によれば、応力緩和構造体は、金属上部層11の側面142、上面141および/または底面143上にディンプル18および/または溝19として形成された凹部として実現することができ、またはそれらを備えることができる(図9および図10を参照)。このような溝19は、例えば、断面に関して三角形、凹状または凸状の形状またはプロファイルを備えることができる。局所的なディンプル18に関しては、金属上部層11の縁部14により、機械的に重要な縁部領域における応力が低減されることになる。ディンプルは円形または長方形の形状を有することができるが、他のタイプのインプリントも可能である。
【0038】
金属上部層11の縁部14に隣接する上面141に組み込まれた溝19に関しては、縁部14によって機械的に重要な縁部領域の応力も低減することになる。応力低減のメカニズムはディンプルの使用と同様であり、フレーム状の凹部を形成する縁部14の周囲の境界近くに形成することができる。
【0039】
対応する製造方法のステップは、図11に示すフローチャートに従うことができる。ステップS1では、少なくとも片側の凹部を制限する縁部14の領域に形成された上述の応力緩和構造体の少なくとも1つを含む金属上部層11が提供される。例えば、ステップS1は、スタンピング、エッチングおよび/または切断、または別の適用可能な方法によって、後の金属上部層11を形成するための未加工シートを提供することを含み得る。さらに、誘電体層12と同様に金属下部層13を設けることもできる。後者は、射出成形、転写成形、および/または圧縮成形によって後の誘電体層12を形成するための液体または粘性原料を実現する所定の材料特性を備えたポンプ輸送可能な物質を提供することを含むことができる。代替的に、ラミネートプロセスも可能である。
【0040】
ステップS2では、誘電体層12が金属上部層11と金属下部層13との両方にそれらの間で結合されるように、用意された層11、12、13が結合される。
【0041】
誘電体層12がステップS2の成形によって形成される場合、金属上部層11と金属下部層13は、所定の距離を置いて互いに対して位置合わせされる。これは、例えば、金属上部層11の提供された配線構造体がその上に組み立てられるリリースフィルムを使用することによって行うことができる。その後、このような金属上部層リリースフィルムユニットは、例えば、金属上部層11が金属下部層13に面するように、設けられた金属下部層13に対して配置することができる。代替的に、ラミネート加工も可能である。
【0042】
ステップS3では、提供された物質が、位置合わせされた金属上部層11と金属下部層13との間の自由容積に導入され、こうして誘電体層12の成形が処理される。これには、金属上部層11の金属パターンの側面142を誘電体層12の絶縁材料で覆うか埋め込むことも含まれ得る。
【0043】
したがって、半導体パワーモジュール1用の金属基板構造体10の一実施形態は、例えば、金属上部層11を実現する打ち抜き金属板の上面と、誘電体層12を実現するエポキシベースの成形絶縁体と、金属下部層13を実現する金属板底面と、から構成されるように製造することができる。
【0044】
金属基板構造体10は、特に回路配線の周辺領域または縁部における機械的応力または熱機械的応力の影響に関して改善をもたらす。応力緩和構造体は、対応する縁部14における亀裂または空隙の形成を抑制または少なくとも軽減することを可能にし、最終的に層間剥離の防止に寄与することができる。応力緩和構造体のさまざまなオプションは、絶縁金属基板構造体10の回路配線パターンの縁部領域のレイアウトを考慮して形成することができる。応力緩和構造体は、配線パターンと絶縁層との間の界面にかかる応力を低減し、および/または金属上部層11の配線パターンと誘電体層12の樹脂との間の接着力を強化することができる。記載された応力緩和構造体の形成は、1つまたは複数の回路配線パターンの1つまたは複数の表面141、142、143、または縁部14に隣接する側壁に導入された少なくとも部分的な修正を実現する。記載された応力緩和構造体の形成は、層状セットアップならびに/またはスタンピングおよび圧縮成形によって製造されたセットアップの両方のタイプの絶縁金属基板構造体に適用可能である。
【0045】
縁部14の領域に特に形成される応力緩和構造体の説明された実施形態はすべて、例えば温度サイクル中に回路配線の縁部14に発生する機械的または熱機械的応力による悪影響を打ち消す。例えば、応力緩和構造体は、それぞれ金属上部層11と誘電体層12によって実現される回路配線パターンと絶縁樹脂シートとの間の界面における空隙または亀裂の形成を回避するのに寄与する。したがって、金属基板構造体10は、部分放電、ひいては絶縁破壊のリスクの低減に寄与する。
【0046】
金属基板構造体10は、応力緩和構造体の統合により絶縁金属基板の信頼性が向上しており、対応する基板自体の信頼性に関係するだけでなく、いくつかのビジネス上の利点をさらに提供する可能性がある。信頼性の向上は、金属基板構造体10および対応する半導体パワーモジュール1の電力サイクル能力の強化に直接関係している。亀裂および空隙の発生が抑制または少なくとも減少すると、部分放電の危険性が減り、絶縁金属基板構造体10の使用電圧範囲が向上する可能性がある。その結果、比較的コスト効率の高いこのような絶縁金属基板の幅広い使用が可能になる。さらに、記載された利点は、半導体パワーモジュール1のモジュール寿命の向上にも寄与する。
【0047】
上述したように、図1から図7に示される実施形態は、改良された金属基板構造体10、半導体パワーモジュール1、およびその製造方法の例示的な実施形態を表す。したがって、これらはすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の構成および方法は、例えば金属基板構造体およびパワーモジュールに関して示された実施形態とは異なる場合がある。
【符号の説明】
【0048】
参照符号
1 半導体パワーモジュール
2 電子機器
3 ヒートシンク
4 リード
10 金属基板
11 金属上部層
12 誘電体層
13 金属下部層
14 金属上部層縁部
141 上面
142 側面
143 底面
15 薄化縁部
16 斜め縁部
17 構造化端面
18 ディンプル
19 溝
A 積層方向
B 横方向
C 横方向
D 斜め縁部の角度
S(i) 半導体パワーモジュール用の金属基板構造体を製造する方法のステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】