(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】経鼻流体投与装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20240329BHJP
B65D 83/76 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61M11/00 D
B65D83/76 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023555435
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 FR2022050400
(87)【国際公開番号】W WO2022189742
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘリー, セルジュ
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014KA01
3E014KA03
3E014KC04
(57)【要約】
経鼻流体投与装置であって、投与用量の流体製品を含む容器(10)と、吐出ヘッド(20)と、を備え、前記吐出ヘッド(20)には、軸方向の高さ(h)および半径方向の直径(d)を有する軸方向シリンダ(210)を備える吐出口(21)が設けられ、前記軸方向の高さ(h)が0.6mm、投与量が50μL、作動速度が70mm/sである場合に、さらに、前記直径(d)が0.4mmの場合、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.03N未満、具体的には0.026Nに等しく、液滴サイズ分布が50μm~70μmの間の値であり、具体的には60μmに等しく、前記直径(d)が0.5mmの場合、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.02N未満、具体的には0.019Nに等しく、液滴サイズ分布が80μm~100μmの間の値であり、具体的には90μmに等しい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻流体投与装置であって、
投与用量の流体製品を含む容器(10)と、
吐出ヘッド(20)と、を備え、
前記吐出ヘッド(20)には、軸方向の高さ(h)および半径方向の直径(d)を有する軸方向シリンダ(210)を備える吐出口(21)が設けられ、
前記軸方向の高さ(h)が0.6mm、投与量が50μL、作動速度が70mm/sである場合に、さらに、
前記直径(d)が0.4mmの場合、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.03N未満、具体的には0.026Nに等しく、液滴サイズ分布が50μm~70μmの間の値であり、具体的には60μmに等しく、
前記直径(d)が0.5mmの場合、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.02N未満、具体的には0.019Nに等しく、液滴サイズ分布が80μm~100μmの間の値であり、具体的には90μmに等しい
ことを特徴とする経鼻流体投与装置。
【請求項2】
前記容器(10)は、前記流体製品の少なくとも一部を吐出するためのピストンストッパー(50)を備え、作動前には、前記ピストンストッパー(50)によって密閉されている
ことを特徴とする請求項1に記載の経鼻流体投与装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッド(20)内に挿入、固定された中空インサート(60)を備え、
前記中空インサート(60)は、前記ピストンストッパー(50)を貫通するための針(40)を支持し、作動中に前記針(40)が前記ピストンストッパー(50)を貫通することにより、前記容器(10)が前記吐出口(21)に連通する
ことを特徴とする請求項2に記載の経鼻流体投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品を経鼻投与するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の経鼻流体投与装置の欠点は、小児への使用との適合性に関係している。実際、標準の装置は、新生児や幼児にとっては強すぎる鼻孔内への衝撃力を与えるスプレーを発生できるようになっている。通常、標準の装置は、約0.05N~0.1Nの衝撃力を発生するが、この衝撃力は、小児が使用するには高すぎる大きさである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の欠点を有しない経鼻流体投与装置を提供することである。
【0005】
より具体的には、本発明は、小児使用時のリスクを回避または制限する経鼻流体投与装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、製造および組み立てが簡単で安価な経鼻流体投与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る経鼻流体投与装置は、投与用量の流体製品を含む容器と、吐出ヘッドと、を備え、前記吐出ヘッドには、軸方向の高さhおよび半径方向の直径dを有する軸方向シリンダを備える吐出口が設けられ、前記軸方向の高さhが0.6mm、投与量が50μL、作動速度が70mm/sである場合に、さらに、前記直径dが0.4mmの場合、前記吐出口から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.03N未満、具体的には0.026Nに等しく、液滴サイズ分布が50μm~70μmの間の値であり、具体的には60μmに等しく、前記直径dが0.5mmの場合、前記吐出口から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.02N未満、具体的には0.019Nに等しく、液滴サイズ分布が80μm~100μmの間の値であり、具体的には90μmに等しいことを特徴とする。
【0008】
有利には、前記容器は、前記流体製品の少なくとも一部を吐出するためのピストンストッパーを備え、作動前には、前記ピストンストッパーによって密閉されている。
【0009】
有利には、前記吐出ヘッド内に挿入、固定された中空インサートを備え、前記中空インサートは、前記ピストンストッパーを貫通するための針を支持し、作動中に前記針が前記ピストンストッパーを貫通することにより、前記容器が前記吐出口に連通する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の特徴、利点および他の事項は、非限定的な例として以下に示す詳細な説明および添付の図面を参照することにより、さらに明らかになる。
【
図1】有利な実施形態に係る流体製品投与装置の概略断面図である。
【
図2】
図1に示す吐出ヘッドの詳細な断面図である。
【
図3】
図2に示す吐出ヘッドの吐出口の概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、用語「近位」および「遠位」は、吐出口に関する相対的位置を表す。用語「軸方向」および「半径方向」は、装置の長手方向に沿った中心軸に関する相対的方向を表す。用語「上流」および「下流」は、作動時の流体の流れの方向に関する相対的位置を表す。用語「上」および「下」は、
図1に示す直立姿勢における装置に関する相対的位置を表す。
【0012】
図1に示す有利な実施形態では、投与される流体製品、通常は液体を含む容器10が、吐出ヘッド20を形成する本体の内部に配置される。吐出ヘッド20は、軸方向に向けられた吐出口21を備える。吐出口21は、装置がユーザーによって作動されたときに、吐出ヘッド20から用量の流体製品を吐出するのに用いられる。
【0013】
吐出ヘッド20は、軸方向近位端に吐出口21を備える細長い鼻用エンドピース22と、半径方向フランジ23を介して鼻用エンドピース22に接続されている側部本体24とを備える。
【0014】
図1に示す例では、中空インサート60が吐出ヘッド20内において吐出口21よりも上流側に配置される。中空インサート60は、吐出ヘッド20の底壁と係合して排出チャネルを画定し、吐出口21の直ぐ上流側でスプレープロファイルを形成する。
【0015】
中空の針40が排出チャネル61内に挿入、固定されており、針40はその遠位端に穿刺先端41を備えている。有利には、針40は、排出チャネル内に圧入される。
【0016】
図1の例では、容器10は、ピストンストッパー50によって閉じられた単一の開口部を備え、装置の1回の作動で投与されるべき1回分の用量の流体製品を収容している。
【0017】
作動中、容器10は、吐出ヘッド20に対して、したがって針40に対して軸方向上方に移動する。これにより、ピストンストッパー50が針40の先端41に押し付けられて穿刺され、容器10内の流体製品の全部または一部の排出が可能になる。
【0018】
本発明は、2回投与または多数回投与タイプの装置にも適用できることに留意すべきである。容器には、装置の少なくとも2回の連続した作動により吐出される少なくとも2回分の用量の流体製品が収容されている。先行文献である国際公開第2014/147329号には、2回投与の装置の一例が記載されている。
【0019】
作動手段30は、
図1に示す装置の作動を可能にするために提供され得る。
【0020】
図1に示す実施形態では、作動手段30は、吐出ヘッド20に対して移動可能な作動本体31を含み、作動本体31は、容器10と係合して、容器10を吐出ヘッド20に対して軸方向に吐出口21に向かう方向に移動させる。
【0021】
本装置の動作を以下に説明する。
【0022】
ユーザーは、吐出ヘッド20に形成された半径方向フランジ23上に2本の指を置き、親指で作動本体31の遠位軸方向底部32を押す。この作動中に容器10は、吐出口21に向かって軸方向に押され、針40がピストンストッパー50を貫通する。これにより、容器10内の流体製品が吐出口21と連通し、ユーザーによる作動本体31への押圧力が容器10内のピストンストッパー50を移動させ、流体製品が吐出される。
【0023】
吐出口21は、軸方向の高さhおよび半径方向の直径dを有する軸方向シリンダ210を備える。
【0024】
本発明によれば、軸方向の高さhは0.6mmにほぼ等しく、半径方向の直径dは0.4mm~0.5mmの間の値である。
【0025】
本発明の第1の有利な変形例によれば、半径方向の直径dは0.4mmにほぼ等しい。
【0026】
本発明の第2の有利な変形例によれば、半径方向の直径dは0.5mmにほぼ等しい。
【0027】
吐出口21のこのような幾何学的形状により、吐出口21から吐出されるスプレーの衝撃力を、典型的には0.04N未満、有利には0.03N未満、好ましくは0.02N未満の値で低減することが可能である。この衝撃力の減少は、液滴サイズ分布(DSD:Droplet Size Distribution)の増加を伴うが、50μm~100μm、好ましくは60μm~90μmの許容値内に留まる。
【0028】
以下の〔表1〕は、標準の装置と本発明に係る2つの装置1および2との間の比較試験の結果を示す。
【0029】
標準の装置は、
図1に示すようなものであり、高さhが0.72mmであり、軸方向下流端に向かって狭くなる円錐形になっており、軸方向下流端の出口の最小の直径が0.27mmである吐出口を備える。
【0030】
装置1および装置2は、吐出口21の形状を除いて、標準の装置と同一である。
【0031】
装置1の場合、吐出口21は、高さhが0.6mmであり、かつ、直径dの大きさが高さhに亘って一定の0.5mmになっている軸方向シリンダを備える。
【0032】
装置2の場合、吐出口21は、高さhが0.6mmであり、かつ、直径dの大きさが高さhに亘って一定の0.4mmになっている軸方向シリンダを備える。
【0033】
テスト方法には、投与装置の容器に水を満たし、自動作動機を使用してユーザーにとって現実的な作動速度で装置を作動させることが含まれる。吐出された水のスプレーは、装置の吐出口から3cm離れた位置にあるプレートに衝突する。このプレートには、衝撃力を測定するのに適したセンサーが取り付けられている。スプレー状に放出される水の量は、50μLであり、機械の作動速度は、70mm/sであった。
【0034】
この比較テストでは、衝撃力だけでなく、液滴サイズ分布(DSD)も測定された。
【0035】
【0036】
比較試験の結果から、一定の投与量、一定の作動速度において、吐出口21の形状がスプレーの衝撃力に大きな影響を与えることを立証することが可能である。
【0037】
このように、装置1は、衝撃力に関して最良の結果、すなわち0.02N未満、具体的には0.019Nに等しく、DSDが80μm~100μmの間、具体的には90μmに等しいことが分かる。
【0038】
装置2は、衝撃力が僅かに大きくなったが、それでも標準の装置の値、つまり0.066Nよりも大幅に小さい、0.03N未満、具体的には0.026Nに等しく、DSDは、50μm~70μmの間、具体的には60μmに等しくなっている。
【0039】
したがって、本発明は、鼻孔内へのスプレーの衝撃力を実質的に低減することを可能にする装置を提供し、これにより、小児科での使用、特に新生児および幼児への使用が許容される。
【0040】
当然のことながら、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態の変形例を考慮することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻流体投与装置であって、
投与用量の流体製品を含む容器(10)と、
吐出ヘッド(20)
と、
装置の作動を可能にする作動手段(30)と、を備え、
前記吐出ヘッド(20)には、軸方向の高さ(h)および半径方向の直径(d)を有する軸方向シリンダ(210)を備える吐出口(21)が設けられ、
前記作動手段(30)は、前記吐出ヘッド(20)に対して移動可能な作動本体(31)を備え、
前記作動本体(31)は、作動中に前記容器(10)と係合して、前記容器(10)を前記吐出ヘッド(20)に対して軸方向に前記吐出口(21)に向かう方向に移動させ、
前記軸方向の高さ(h)が0.6mm、投与量が50μ
L、前記直径(d)が0.4mmの場合、
作動速度を70mm/sとしたとき、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.03N未満、具体的には0.026Nに等しく、液滴サイズ分布が50μm~70μmの間の値であり、具体的には60μmに等し
いことを特徴とする経鼻流体投与装置。
【請求項2】
経鼻流体投与装置であって、
投与用量の流体製品を含む容器(10)と、
吐出ヘッド(20)と、
装置の作動を可能にする作動手段(30)と、を備え、
前記吐出ヘッド(20)には、軸方向の高さ(h)および半径方向の直径(d)を有する軸方向シリンダ(210)を備える吐出口(21)が設けられ、
前記作動手段(30)は、前記吐出ヘッド(20)に対して移動可能な作動本体(31)を備え、
前記作動本体(31)は、作動中に前記容器(10)と係合して、前記容器(10)を前記吐出ヘッド(20)に対して軸方向に前記吐出口(21)に向かう方向に移動させ、
前記軸方向の高さ(h)が0.6mm、投与量が50μL、前記直径(d)が0.5mmの場合、作動速度を70mm/sとしたとき、前記吐出口(21)から3cmの距離を離れた位置で測定したスプレーの衝撃力が0.02N未満、具体的には0.019Nに等しく、液滴サイズ分布が80μm~100μmの間の値であり、具体的には90μmに等しいことを特徴とする経鼻流体投与装置。
【請求項3】
前記容器(10)は、前記流体製品の少なくとも一部を吐出するためのピストンストッパー(50)を備え、作動前には、前記ピストンストッパー(50)によって密閉されている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の経鼻流体投与装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッド(20)内に挿入、固定された中空インサート(60)を備え、
前記中空インサート(60)は、前記ピストンストッパー(50)を貫通するための針(40)を支持し、作動中に前記針(40)が前記ピストンストッパー(50)を貫通することにより、前記容器(10)が前記吐出口(21)に連通する
ことを特徴とする請求項
3に記載の経鼻流体投与装置。
【国際調査報告】