(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】巻線型高周波磁気装置用の液冷式ボビン
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240329BHJP
H01F 27/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F27/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023555480
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2022054839
(87)【国際公開番号】W WO2022194517
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317005239
【氏名又は名称】プレモ エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】PREMO S.L.
【住所又は居所原語表記】Av.Severo Ochoa,47 E-29590 Campanillas(MALAGA)Spain
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】カネテ カベツァ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス クエバス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
(72)【発明者】
【氏名】アリツァ バクエロ,ミゲル エンジェル
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050CA06
(57)【要約】
【課題】巻線型高周波磁気装置用の冷却効率の良いボビンを提供する。
【解決手段】本発明のボビン20は第1外面21と第1内面13とチャンバ30を有する。第1外面21はボビン20が規定する第1軸Xの周りに巻回される第1巻線DXを支持する。第1内面13は磁気コアを収納する。磁気コアの外側表面と第1内面13との間にはギャップが存在する。チャンバ30は、接続ポート31を介して封止冷却回路と一体になり、そこを通る冷却液の経路が形成される。チャンバ30の第1部分は外側壁32(第1外面21)と内側壁33(第1内面13)の間にある。チャンバ30は第1外面21の閉じた輪郭の周囲に延びる。ギャップからの発熱が、第1巻線DXから放散するのを阻止する。即ちチャンバ30の封止冷却回路により冷却される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線型高周波磁気装置用の液冷式ボビンにおいて、
電気絶縁性ボビン(以下単に「ボビン」と称する)(20)を有し、
前記ボビン(20)は、第1外面(21)と第1内面(13)とチャンバ(30)を有し、
前記第1外面(21)は、前記ボビン(20)が規定する第1軸(X)の周りに巻回される第1巻線(DX)を支持し、閉じた輪郭を有し、
前記第1内面(13)は、磁気コア(10)を収納し、前記磁気コア(10)の外側表面と前記第1内面(13)とは、ギャップを介して接触し、
前記チャンバ(30)は、接続ポート(31)を介して封止冷却回路と一体になり、前記チャンバ(30)を通る冷却液の経路が形成され、
前記チャンバ(30)の少なくとも第1部分は、前記ボビン(20)の並行する外側壁(32)と内側壁(33)の間にあり、前記外側壁(32)は前記第1外面(21)を形成し、前記内側壁(33)は前記第1内面(13)を形成し、
前記チャンバ(30)は、前記第1外面(21)の閉じた輪郭の周囲に延び、前記ギャップでの発熱が、前記第1巻線(DX)から放散するのを阻止する
ことを特徴とする巻線型高周波磁気装置用の液冷式ボビン。
【請求項2】
前記チャンバ(30)は複数の隔壁(34)を有し、前記隔壁(34)は並行する前記外側壁(32)と内側壁(33)を連結し、蛇行する冷却流体用通路を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の液冷式ボビン。
【請求項3】
前記ボビン(20)は、前記チャンバ(30)を内蔵するモノリシックな単片からなる
ことを特徴とする請求項1記載の液冷式ボビン。
【請求項4】
前記ボビン(20)は、接合面(24)で接合される複数の部分片(20A,20B)からなり、
前記チャンバ(30)は、開放チャンバ(30A)とその閉鎖部分により形成され、
前記開放チャンバ(30A)は、前記複数の部分片(20A,20B)の一方に完全に含まれ、
前記閉鎖部分は、前記複数の部分片(20A,20B)の他方により形成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の液冷式ボビン。
【請求項5】
前記ボビン(20)は、接合面(24)で接合された複数の部分片(20A,20B)からなり、
前記チャンバ(30)は、複数の開放チャンバ(30A、30B)により形成され、
前記複数の開放チャンバ(30A、30B)の各々は、前記複数の部分片(20A,20B)の一方に完全に含まれ、
前記複数の開放チャンバ(30A、30B)は、前記接合面(24)のエッジにより包囲された接合部で連結される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の液冷式ボビン。
【請求項6】
前記ボビン(20)は、3D印刷プロセスで生成された複数の並行する重合層によって生成される
ことを特徴とする請求項1-5のいずれかに記載の液冷式ボビン。
【請求項7】
前記ボビン(20)を構成する複数の部分片(20A,20B)は、3D印刷プロセスで生成された複数の並行する重合層によって生成される
ことを特徴とする請求項4又は5記載の液冷式ボビン。
【請求項8】
前記ボビン(20)は、添加材料製の並行する重合層から形成され、前記重合層は、前記蛇行する冷却流体用通路の連続して相互接続された真っ直ぐな部分を横断する
ことを特徴とする請求項2-7のいずれかに記載の液冷式ボビン。
【請求項9】
前記ボビン(20)はフランジ(25)を有し、前記フランジ(25)は前記第1外面(21)の両側に突出して配置され、前記各フランジ(25)は接続ポート(31)を有する
ことを特徴とする請求項1-8のいずれかに記載の液冷式ボビン。
【請求項10】
前記ボビン(20)は熱可塑性の伝熱性ポリマー材料製である
ことを特徴とする請求項1-9のいずれかに記載の液冷式ボビン。
【請求項11】
液冷式巻線型高周波磁気装置において、
請求項1-10のいずれかに記載の液冷式ボビン(20)と、
前記液冷式ボビン(20)内に収納される磁気コア(10)を有し、
前記磁気コア(10)の外周面は、前記液冷式ボビン(20)の第1内面(13)と接触している
ことを特徴とする液冷式巻線型高周波磁気装置。
【請求項12】
前記磁気コア(10)は、中央部分(11)と周囲部分(12)とを有し、
前記中央部分(11)は、前記液冷式ボビン(20)により包囲され、
前記周囲部分(12)は、前記中央部分(11)の両端を接続し、前記ボビン(20)を包囲し、前記第1巻線(DX)の周りに閉鎖磁気ループを規定する
ことを特徴とする請求項11記載の液冷式巻線型高周波磁気装置。
【請求項13】
前記磁気コア(10)と前記液冷式ボビン(20)と少なくとも前記第1巻線(DX)は、絶縁性かつ伝熱性封止組成物内に埋設されている
ことを特徴とする請求項11又は12記載の液冷式巻線型高周波磁気装置。
【請求項14】
請求項11-13のいずれかに記載の液冷式巻線型高周波磁気装置の集合体において、
前記液冷式巻線型高周波磁気装置の各々は、筐体(5)内の封止冷却回路により相互接続され、
前記封止冷却回路は、対応する前記液冷型巻線型高周波磁気装置のチャンバ(30)の各々の接続ポートを接続し、前記液冷巻線型高周波磁気装置の組の封止された冷却回路が形成される
ことを特徴とする液冷式巻線型高周波磁気装置の集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体特に非導電性の冷却媒体(冷却液)によって冷却される巻線型高周波磁気装置用のボビン(コイル・フォーマ)に関する。本発明は更に液冷式の巻線型高周波磁気装置に関する。この装置の一例は、液冷式ボビンを用いて構成されたインダクタ、トランス、フィルタリング・チョークなどである。本発明は、更に液冷式巻線型高周波磁気装置の組(集合体)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のボビンは高周波磁性部品に特に有用である。この磁性部品は電気自動車(EV)やハイブリッド車用の基板電力変換器に使用される。これらの自動車は特注の磁力部品(magnetic power component)を使用して電流密度を増加させている。電力密度はこれらの部品にとって重要な因子である。その理由は、減量したグラムレベルの部品重量までも、バッテリの追加分の重量として、更に車の重量にまで利用できるからである。同じことが容積についても言える。容積が小さくなればバッテリに利用できる空間が大きくなる。
【0003】
電力密度の増加とは、高周波磁性部品用に確保される同一容積においてより高い電流密度が導入できることを意味する。電流は、磁性部品内で磁束(magnetic flux)に変換され、変換終了時又蓄電時(トランスかフィルタ・チョークかに応じて)に電気エネギ-に戻される。
【0004】
【特許文献1】PCT/EP2020/073290
【特許文献2】EP21382200
【特許文献3】TW202014285A
【特許文献4】CN110938246A
【特許文献5】US2017105315A1
【特許文献6】US2004189429A1
【特許文献7】EP3319174A1
【特許文献8】DE10201306868A
【特許文献9】US3878492A
【特許文献10】CN209232549U
【特許文献11】EP0680055A1
【特許文献12】JPS6182403A
【特許文献13】JPH03240206A
【特許文献14】CN109313978A
【特許文献15】US2005030134A1
【0005】
電気エネルギーを磁気エネルギーに変換する間損失は熱の形で発生し伝達される。目標は単位容積当たりの電力(W/m3)を増加させることであり、磁性部品では、エネルギーは負荷に大部分が伝達される。通常(Pout-Pin)/Pinで表される効率は95%を超える。その結果、Ploss即ち電力損失は小さい容積に集中し、装置の温度を上げてしまう。電力密度が増加するとこれらの損失は同一の装置で益々大きくなる。特に重要なことは、この損失から発生する熱を、高周波磁性部品からできるだけ速やかにかつ効果的に無くす(放熱する)ことである。熱損失の発生又は放熱での非効率な設計では、部品を極高温にし、安定した温度にコンバータの内部を維持することができなくなる。熱流束は定常時適切に放散されないであろう。部品に悪影響を及ぼす温度や部品の破損を生じさせる温度は、短絡を引き起こす絶縁の劣化や、コアが強磁性状態を停止する温度(即ちキュリー温度)に達すること(過電流や短絡の原因となる)により引き起こされる。従って一定効率で単位容積当たりの電力を最大化するための主な制限因子は、次の制限因子(コア飽和誘導(core saturation induction)(Bsat))までの温度である。
【0006】
高周波磁気素子の損失は、高周波磁気素子を加熱することになるが、ヒステリシス、誘導電流又は渦電流(Eddy current)の形でコア内で発生する。ヒステリシスは磁気領域の向きの変化で消費されるエネルギーである。誘導電流又は渦電流はコアの導電性に起因する。
【0007】
導体(通常は銅)内の発熱は、ジュール/オーミック効果、表皮効果、近接効果、渦電流又は誘導電流に起因する。ジュール/オーミック効果は導体抵抗に起因する。表皮効果は高周波電流が流れる導体の断面積の減少に起因する。近接効果は導体内を流れる電流が生成する電磁場が近接する他の導体に誘導する交流電流に起因する。渦電流又は誘導電流は漏洩磁界はコア内に閉じ込められない一次電流によって生じる。最大の損失はフリンジング損失(Fringing loss)として知られている。この損失は空隙内を浮遊する又は分散された磁束が巻線に最も近い領域に誘導する電流によって生じる。
【0008】
ギャップ(空隙)のない一定断面のコアにおける損失は、その容積全体にわたって均等に分配されるが、その質量は大きく、その熱伝導(伝熱)率はフェライト・コアの4W/m・Kから金属コアの100W/m・Kまでであるが、変圧器及びコイルチョークでは高損失及び発熱が集中する領域が存在する。複数の部品から構成されるコアを使用する形態では特にそうである。
【0009】
高周波磁性部品の高電力密度の領域は、最大の損失が生じるが、隙間(ギャップ)又は空隙(エアギャップ)領域である。ギャップ領域は、渦電流が発生する領域であり、所謂「フリンジング磁束(fringing flux)」を発生させる領域である。このフリンジング磁束は磁気コア内に含まれない磁気磁束である。磁気磁束は、漏れるので周囲の材料に影響を及ぼす。
【0010】
自動車搭載用電力変換装置の磁性部品に要求される高電力密度により、巻線、巻線スプ-ル、更には端子を、極端に隙間(ギャップ)に近づける必要がある。高周波磁束は、巻線ワイヤと相互作用し、新たな渦電流を発生させ、これが損失を発生させる。従って不要な発熱を引き起こす。実際ギャップは「発熱源」となり、これを磁性部品から除去する必要がある。
【0011】
第2に、ボビンに巻回される銅線自体が最大の損失を発生させる。交流電流の「近接効果」は望ましくない浮遊場又は分散場を形成する。これは高出力磁性部品の第2の発熱源である。
【0012】
第3に、磁気コア自体の材料が不完全なことである。不完全なところが磁性材料の磁気領域の構成にはある。これらの不完全性は、損失を引き起こし、コア自体の温度を上げてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
巻線型高周波磁気装置用のボビンの上記の発熱問題を解決する(即ちP/Vを大きくする)ためには、等価式であるPloss/Vを最小にする。即ちVを最小にしてPoutを最大にすることである。効率即ちPout/Pinを改善するために、複数の措置が講じられてきた。その措置の一例は以下である。
1.極低周波数損失のコア(フェライト・コア)を使用する。フェライトは、非常に小さい残留磁気(remanence)と抗磁力(coercivity)、高いBsat、高い電気抵抗を有するからである。
2.高周波領域での最大有効断面を持つ巻線(Litzワイヤ、チューブ、フォイル)を使用する。非常に低い抵抗の導体(例えば高電解質銅)を使用すること。
3.ギャップを最小にする或いはギャップを分散させること。
4.巻線をギャップのフリンジング磁束領域から離すこと。
【0014】
冷却方法に基づく種々の解決法、例えば、樹脂、ポッティング材、伝熱性プラスチック、アルミニウム(以下「アルミ」と称する)、冷却板の使用は、様々な先行技術文献に記載されている。
【0015】
特許文献1には電力変圧器集合体を封止する伝熱性化合物が記載されている。この伝熱性化合物の一例はシリコン樹脂と天然鉱物充填材を含む。天然鉱物充填材は、微細粉砕された石英、珪岩、大理石、砂又は炭酸カルシウムを含む。
【0016】
特許文献2は別の伝熱性組成物と伝熱性ポッティングを開示する。これらは、磁気電力集合体を封止し、第1充填材、第2充填材及びシリコン樹脂を含む混合物を含む。第1充填材はセピオライト(sepiolite)と天然鉱物充填材とを含む。
【0017】
多くの伝熱性熱可塑性材料がこの分野において知られている。これらは例えば特許文献3-5に開示されている。
【0018】
別法として、絶縁磁性部品を隔離して設置する代わりに、伝熱能力の高いアルミ製の箱内に収納できることである。箱のアルミ製の壁と底部は放熱を助ける。加えて、垂直壁も磁性部品が背の高い場合には放熱に役立つ。
【0019】
特許文献6は、高電力液冷式誘導装置(例、変圧器)を開示している。この装置は磁気コアに巻回された多層巻線と冷却媒体流(例、オイル)を導く分流器とを有する。分流器は冷却媒体流を入ロポートから各多層巻線の中央部を通って流す。
【0020】
特許文献7は、パワーエレクトロニクスの分野に関するものだが、磁気コアを有する磁気パワーユニットを開示する。このパワーユニットは、放熱のための装置(ヒートパイプ)に関連する貫通孔を含む。
【0021】
特許文献8は、整流器などの電力半導体スイッチを冷却する方法を開示する。この方法は半導体装置を相変化材料(phase-change material)に伝熱接続している。
【0022】
特許文献9は、液冷式変圧器巻線を開示する。巻線は、導体部分の1つが中空であり、液体冷却媒体用の管を備える。
【0023】
特許文献10は、液冷式の高周波スイッチング電源変圧器を開示する。この変圧器は高電圧コイル内の熱を奪う冷却ダクトを備える。冷却ダクトは、高電圧コイルの巻数に対応している。
【0024】
特許文献11は電気自動車用の高周波変圧器を開示する。この変圧器は一次巻線と二次巻線とを有する。一次巻線は冷却流体を流す中空冷却媒体用の巻回状態の金属管を含む。二次巻線は一次巻線に結合された複数の伝熱性の巻回状態の管を含む。
【0025】
特許文献12は、超電導線材の冷却効率を向上させる超電導マグネット用ボビンを開示する。巻取軸に巻回された超電導線材を効果的に冷却するために、巻取軸にはその周囲をらせん状に延びる複数の冷却媒体通路溝が形成されている。
【0026】
特許文献13は、超電導コイルのクエンチングを防止する超電導コイル用ボビンを開示する。超電導コイルは、ボビンとこのボビン周囲に巻回された超電導材料製コイルとを備える。このボビンにおいては、流路がボビンとコイル巻線との接触面近傍に形成されている。この通路は、ボビンの軸方向に沿って形成された複数の中空パイプで構成されている。冷却用媒体(例、液体ヘリウム等)が、この流路を通って流れ、コイル巻線を冷却する。この冷却は、コイル巻線を浸すのと共に行われ、超電導コイルのクエンチングを防止する。
【0027】
特許文献14は、コモン・モ-ドのインダクタンス・コイルを開示する。同コイルにおいて、ボビンは、コアの形状に適合する環形状をしており、中心を垂直方向に貫通する貫通孔を有し、開口部を円周面上の1つ又は複数の位置に有する。ボビンの内面は、コアの断面よりも大きく形成されている。コアがボビンに収容された状態で、空気の流通がコアとボビンとの間(隙間)で循環可能で(
図6、
図10参照)、ボビン本体を冷却する。円周面上の開口は最大開口幅を有する。この最大開口幅はボビンに巻かれたコイルの巻き数や線径に対応していることが好ましい。更に横方向の開口はボビンの直径上の両側の対向位置に形成されることが好ましい、その結果、空気流路Aへの空気の流入と空気流路A’からの空気の流出を円滑になる。
【0028】
特許文献15は、冷却状態の電磁ソレノイド・コイルを開示する。同コイルは、内側コアを形成する模擬磁極片を有する。同模擬磁極片は、冷却媒体供給口と、模擬磁極片を包囲する有孔ボビンと、二重巻きソレノイド・コイル線材を有する。冷却媒体は模擬磁極片に供給される。冷却媒体は、冷却媒体供給口、有孔ボビン、二重巻きソレノイド・コイル線材の周りを通って、供給される。
【0029】
液体冷却は、冷却媒体を電力変換器のアルミ製筐体を通して流すことにより行われるが、自動車内の熱を発散する最も効率的な方法である。完全な冷却回路は既にハイブリッド車又は電気自動車(バッテリは十分に冷却する必要がある)に搭載されているので、冷却媒体の入口ポート及び出ロポートを電力変換器に組み込むことと、冷却媒体を変換器の全体の出入口を通して流すことは容易である。これは、完全な電力変換器における主な放熱対策である。全ての素子はアルミ表面に搭載されており、アルミには冷却媒体がその内部を冷却媒体が流量(6リットル/分)で流れる。
【0030】
磁性部品は、通常電力変換器のハウジング内の平坦なアルミ領域又はベース内に搭載され、十分な冷却媒体がこのベースの内を流れ、磁石から放熱する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、自動車の最適化された冷却回路を利用して、この冷却回路を磁性部品の最大損失発生点(即ちギャップ)に移動させる。これにより、放熱場所を損失の発生源から離す。最適な設計では熱を熱源で可能な限り素早く発散させる。これは、冷却媒体を車両の冷却回路に直接接触させて動かすことにより行われる。
【0032】
本発明の目的はボビン自体の本体を通って延在する封止冷却回路で達成できる。封止冷却回路は非導電性の冷却媒体を含む。この非導電性の冷却媒体は、自由イオン、金属粒子、金属酸化物を含まない。これらはギャップに生成される磁界によって電流が誘起されるからである。冷却媒体には、シリコンオイル、鉱油、グリコ―ル、エチレングリコール等の有機冷却媒体の濃度が50%以上の蒸留水溶液が用いられる。
【0033】
このアプローチにより、間隙発熱(gap heat)が巻線(400W/m・kの高伝導率の電解質銅)を介して全体に広がることを防止できる。コア及び一部の巻線の損失によって発生する熱のみが残る。熱の大部分はアルミ製筐体又は冷却板への伝熱により放熱している。これは以下の3つの利点を有する。
1.発熱領域が直接冷却される。
2.伝熱により冷却板に伝達されべき熱を大幅に低減できる。
3.伝熱抵抗性が低い(伝熱性の高い)新たな通路が生成される。これは冷却表面をボビン自体の本体の内部に導入することによりできる。
【0034】
かくして、従来の解決法による熱の大部分が、ギャップから冷却板(距離dだけ離れている)に移る場合には、この距離dが小さくなると冷却板に放散すべき熱もまた小さくなる。二重の合成効果がでる。磁性部品の温度が下がる。その理由は、新たな短い伝熱路の熱抵抗が下がり、放出される残りの熱も下がるからである。
【0035】
このような設計は、磁性部品の動作中に「ヒートアイランド(heat island)」を生成する可能性を最小限にできる。この設計で最大の熱が常に磁石から外に伝達することになり、正の熱フィードバック・ループの可能性が無くなる。この正の熱フィードバック・ループは、磁性部品のある領域が巻線型高周波磁気装置用の液体冷却ボビンを加熱する。
【0036】
本発明の第1態様によれば、本発明の巻線型高周波磁気装置用の液体冷却(液冷式)ボビンは、以下を有する。
1.自身の周囲に第1外面を有する電気絶縁性(以下単に「絶縁性」と称する)ボビン。第1外面は、絶縁性ボビンが規定する第1軸(X)の周りに巻回される第1巻線(DX)を支持し、第1外面は閉じた輪郭を有し、絶縁性ボビンは磁気コアを収納する第1内面を有する。
2.絶縁性ボビン内に収納されたチャンバ。このチャンバは、接続ポートを介して封止冷却回路と一体になり、これにより前記チャンバを通る冷却液(冷却媒体)の経路が形成される。
【0037】
本発明の第1態様によれば、チャンバの少なくとも第1部分は、絶縁性ボビンの並行する第1壁と第2壁の間にある。第1壁は第1外面を形成し、第2壁は第1内面を形成する。
【0038】
本発明の第1態様によれば、チャンバは第1外面の閉じた輪郭の大部分の周りに延びる。即ちチャンバは第1外面の閉じた輪郭の周囲の少なくとも一部に延びる。
【0039】
本発明の第1態様によれば、チャンバは複数の隔壁を有する。隔壁は、2つの並行する壁を連結し、蛇行する冷却流体用通路を形成する。
【0040】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンはチャンバを内蔵するモノリシックな単片からなる。
【0041】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは接合面で接合された複数の部分片からなる。チャンバは開放チャンバとこの開放チャンバの閉鎖部分により形成される。開放チャンバは複数の部分片の一方に完全に含まれ、閉鎖部分は前記複数の部分片の他方により形成される。
【0042】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは接合面で接合された複数の部分片からなる。チャンバは、複数の開放チャンバにより形成され、複数の部分片の1つに完全に含まれ、複数の開放チャンバの各々は複数の部分片の1つに完全に含まれる。複数の開放チャンバは接合面のエッジにより包囲された接合部で接続される。
【0043】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビン全体又はその一部は、3D印刷プロセスで添加生成された複数の薄い並行する重合層によって生成される。この実施例においては、液冷式ボビンは均一均質の特性を有する。それは、複数の部品、接合/結合部分、溶接部分を有さないからである。これらは、特性の変化・破壊を生成することがある。
【0044】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは、添加材料により形成される並行する重合層から形成される。重合層は、蛇行する冷却流体用通路の連続して相互接続された真っ直ぐな部分を横切る。
【0045】
本発明の第1態様によれば、2つの並行する壁の一方は内側壁である。内側壁は第1の閉鎖内側壁を提供する。第1の閉鎖内側壁は絶縁性ボビンの空洞内部を包囲し、空洞内部が磁性コアの一部を収納する。
【0046】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは突起したエッジ領域(以下「フランジ」と称する)を有する。フランジは前記第1外面の両側から突出している。各フランジは接続ポートを有する。
【0047】
本発明の第1態様によれば、各フランジは横に延びた接続領域を有する。各横に延びた接続領域は対応する接続ポートを有する。
【0048】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンの第1外面は1つ或いは複数の対応する接続ポートを有する。
【0049】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは周りに第2外面を有する。この第2外面は絶縁性ボビンにより規定された第2軸の周りに巻回される第2巻線導体を支持する。第2軸は第1軸に直交する。チャンバ(チャネル)は第2外面に包囲される第2部分を有する。
【0050】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは自身の周りに第3外面を有する。この第3外面は絶縁性ボビンにより規定された第3軸の周りに巻回される第3巻線導体を支持する。第3軸は第1軸と第2に軸に直交する。チャンバ(チャネル)は第3外面に包囲される第3部分を有する。
【0051】
本発明の第1態様によれば、絶縁性ボビンは熱可塑性材料好ましくは伝熱性ポリマー材料製である。
【0052】
本発明の第1態様によれば、ボビンが複数の部分片で作られている一実施例においては、ボビン製造のためのオプションは、2つに割った又は複数の半体片の部品を熱可塑性材料を射出成形して形成する。半体片がプラスチックを注入して成形されると、両方の半体片の部品を一体に嵌合させ、プラスチック用の超音波溶接によって溶接して一体物とする。この溶接により、内部冷却回路の密閉性が保証される。射出成形による製造は、コストを低減し、3D印刷よりも大きな製造物に拡張できる。他の製造方法を用いてもよい。
【0053】
ステレオリソグラフィ装置、類似の3Dプリンタ(選択的レーザ焼結(Slective Laser Sintering)、ステレオリソグラフィ装置(Stereo Lithography Apparatus)) は、液冷内部管を有するこの種のボビンを完全に製造できる。この液冷内部管には、封止冷却回路の入口ポート又は出口ポートを介してアクセスできる。
【0054】
ボビンの一方の部品のみを3D印刷プロセスで製造する実施例においては、ボビンの他方の部品は、ボビンの2つの半体片部分或いはより多くの部品を、モールド注入して形成し、接合することで得られる。具体的には、閉鎖カバー又はフタの実施例を以下に示す。
【0055】
これで冷却液が完全密閉されたボビンになる。特に、振動及び温度に関し自動車に要求される条件を満たすことになる。非常に重要なことは、一旦搭載された部品の全寿命期間中に冷却媒体の漏洩がないことである。 漏洩は破局的な故障となる。冷却媒体が磁性部品の内側領域に漏洩することがあるからである。
【0056】
集積されたチャンバの入口及び出口の接続のために、電力変換器との相互作用が必要である。オーリングを有する特定の可撓性ホースの接続点での装着が、液体の入口及び出口にとって可能なオプションである。 別の可能なオプションは、アルミ製筐体ヘの直接接続である。これは、オーリングを有する穴(公差内の雄雌接続)によって行われる。このオプションはより堅牢である。可撓性ホ-スを使用しないからである。
【0057】
本発明の第2態様によれば、液冷式巻線磁気装置は、本発明の第1態様の液冷式ボビンと、同液冷式ボビンに収納される磁気コアとを有する。磁気コアの外部表面は絶縁性ボビン即ち液冷式ボビンの第1内面と接触している。
【0058】
本発明の第2態様によれば、磁気コアは中央部分とこの中央部分の両端を接続する周囲部分とを有する。中央部分は本発明の第1態様の絶縁性ボビンにより包囲されている。周囲部分は、絶縁性ボビンを囲み、第1巻線の周囲の閉鎖磁気ループを形成する。
【0059】
本発明の第2態様によれば、磁性体コアと絶縁性ボビンと少なくとも第1巻線とが、絶縁性かつ伝熱性のポッティング組成物に埋設されてもよい。
【0060】
本発明の第3態様によれば、本発明の第2態様の液冷式巻線磁気装置の組(集合体)が筐体内に配置されている。これらの装置の組は、接続ポートを接続する冷却回路により相互接続されている。接続ポートの1つは入口ポートであり、他の1つは出口ポートである。これらのポートは、対応する液体冷却式巻線型高周波磁気装置のチャンバのそれぞれのポートである。それにより装置の組の封止された冷却回路が提供される。
【0061】
本明細書において、Bsatはコア飽和誘導を、PIossは電力損失を、Pinは電力入力を、Poutは電力出力を、Pは電力を、Vは電圧を指す。
【0062】
本明細書では全ての態様について、「チャンバは第1外面の閉じた輪郭の大部分の周囲に延在する」、「チャンバは第1外面の輪郭の少なくとも半分の周りに延在する」、「チャンバは第1外面の輪郭の少なくとも4分の3周に渡って延在する」は同義である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の第1態様による単一ピースの液冷式ボビン20の一実施例の斜視図。巻線が巻かれる第1外面21と、ボビンの突出接続領域26、チャンバ30の液体の入口及び出口の2つの接続ポート31を示す。
【
図2】
図1のボビンの断面図。2つの並行する同心壁32,33を接続する複数の隔壁34を含むチャンバ30を示す。
【
図3】
図1、2のボビンの透視図。ボビンの本体内のチャンバ30内に蛇行する冷却チャネルを画定する隔壁34を示す。
【
図4】
図2、3のボビン本体内のチャンバ30の展開平面図。チャンバは単一部品でできている。絶縁性ボビンは多数の薄い並行する重合層から形成される。これらの層は3D印刷プロセスによって製造された添加材料製である。
【
図5】本発明の第2態様による液冷式巻線型高周波磁気装置の実施例を示す展開図。同図には環状磁気コア10を収納する円状空洞を有するボビン20と、チャンバ30の複数の通路を画定する2つの同心壁32,33と、チャンバの複数の通路を閉鎖するフタ20Bが示されている。
【
図6】
図5の液冷式巻線型高周波磁気装置の透過図。
図5、6のボビンは3D印刷プロセスで製造された添加材料の薄い並行する重合層によって作製される。
【
図7】
図5、6のボビン本体内のチャンバの展開平面図。
【
図8】
図5、6のボビン本体内のチャンバの他の展開平面図。ボビン本体の中央部は熱可塑性材料の射出成形によって形成される。2つのフタはチャンバをその上部と下部によって閉鎖する。中央部分は3D印刷プロセスによって作製することもできる。
【
図9】本発明の第1態様によるボビンの別の実施例の展開斜視図。本実施例の2つの半体片20A,20Bはその開口部を合わせて接続され、一連の隔壁によって分離された一連の空洞を示す。2つの半体片は、熱可塑性材料の射出成形又は3D印刷プロセスによって製造された添加材料製の薄い並行する重合層によって形成される。
【
図10】
図9のボビン本体内のチャンバの展開平面図。
【
図11】本発明の第2態様の液冷式巻線型高周波磁気装置の展開斜視図。本発明の第1態様のボビン20と巻線DXと磁気コア10とが示されている。
【
図12】本発明の第3態様の液冷式巻線型高周波磁気装置の組の展開図。本発明の液冷式巻線型高周波磁気装置は筐体5内に配置される。本発明のボビン20を組み込んだ各高周波磁気装置と、密封冷却回路により相互接続された複数の高周波磁気装置が示されている。密封冷却回路は、対応する高周波磁気装置の各チャンバの接続ポート31(入口と出口)を連結する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下本発明の一実施例を詳述する。
【0065】
図1-
図4を参照すると、本発明の第1態様の巻線型高周波磁気装置用の液冷式ボビンは、以下の構成を備える
【0066】
図11も参照すると、本発明の絶縁性ボビン(以下単に「ボビン」と称する)20は、突出縁領域(以下「フランジ」と称する)25と第1外面21を有する。ボビン20は、第1軸Xの周りに巻回される第1巻線DXを支持する。第1軸Xはボビン20によって規定され、第1外面21は閉した輪郭を有する。
【0067】
ボビン20内のチャンバ30は、接続ポート31を介して封止冷却回路に一体化され、ボビン20のチャンバ30を通る冷却液(冷却媒体)の経路が形成される。
【0068】
本実施例のチャンバ(チャネル)30は、外側壁32と内側壁33と隔壁34との間に形成される。
【0069】
本実施例のボビン20は、熱可塑性材料製好ましくは伝熱性高分子材料製である。
【0070】
本発明によれば、チャンバ30の少なくとも第1の部分は、ボビン20の2つの並行する壁である外側壁32と内側壁33の間に構成される。外側壁32は第1外面21を提供し、内側壁33は第1内面13を提供する。チャンバ30は少なくとも第1外面21の閉鎖した輪郭の大部分に延びる、即ち、チャンバ30は第1外面21の閉した輪郭の周りに少なくとも部分的に延在している。この実施例では、チャンバ30は第1外面21の輪郭全体の周りに延在する。
【0071】
図1-
図4に示す実施例では、第1外面21の両側にフランジ25を備える。本実施例では、各フランジ25は接続ポート31を有する突出した(横に延びる)接続領域26を有する。他の実施例では、接続ポート31をフランジ25上又は第1外表面21に配置してもよい(
図5参照)。接続ポート31は、対称配置が好ましいが、一方の接続ポート31は突出した接続領域26にあり、他方は第1外面21にあってもよい。
図1-
図4の実施例では、ボビン20は、チャンバ30が埋設されたモノリシックな単一部品製である。ボビン20は、3D印刷プロセスによって製造できる添加材料の多数の薄い並行する重合層によって形成してもよい。
【0072】
図5、
図6の液冷式巻線型高周波磁気装置の実施例は、本体を有するボビン20を有する。ボビン20は、3D印刷プロセスによって製造できる添加材料の多数の薄い並行する重合層で形成される。ボビン20は部分片20Aと接続ポート31を有する。部分片20Aはチャンバ30によって囲まれた空洞(中央キャビティ)を提供する。チャンバ30は外側壁32と内側壁33との間にある。接続ポート31はチャンバ30への入口及び出口を規定する。本実施例では、チャンバ30はフタ20Bによって封止される。このフタ20Bは、プラスチック用の超音波溶接で部分片20Aに溶接され、チャンバ30を開塞する。
【0073】
図5は磁気コア10を示す。磁気コア10は、この場合リング状であるが、チャンバ30によって囲まれた中央キャビティ内に挿入される。しかし他の実施例では、磁気コア10は、他の形状でもよく、それを
図11に示す。
【0074】
本発明の液冷式巻線型磁気装置ではチャンバ30は、中を冷却流体が流れるが、磁気コア10と第1巻線DXに接触している(
図11参照)。これにより、第1巻線DXと磁気コア10との間の熱伝導による熱の移動(伝熱)を増加させる。これらは冷却が必要な要素である。特に液冷式巻線型磁気装置では、外側壁32が第1巻線DXに接触し、内側壁33が磁気コア10の外面に接触している。この構成で表面接触が最大になり、冷媒チャネルであるチャンバ30と磁気コア10と第1巻線DXとの間の伝熱が最大となる。
【0075】
図6は
図5の実施例の特定のチャンバ構造を示す。チャンバ30は複数の隔壁34を含む。隔壁34は2つの並行する壁32、33をブリッジ接続し、冷媒用の蛇行状の通路を画定する。即ちこの例では、ボビン20の壁32,33内に「最大走行管巻き」が形成される。この「最大走行管巻き」は、液体がボビン(特に磁気コア10と巻線DX)に接触している時間を最大にし、伝熱を最適化する。
【0076】
図7は
図6の実施例を製造する実施例を示す。同図において、ボビンを構成する部品のうちの少なくとも1つは、3D印刷プロセスによって製造される添加材料の多数の薄い並行する重合層によって作られる。
【0077】
図8は
図6の実施例を製造する別の実施例を示す。この実施例は、構成部品の熱可塑性材料の射出成形プロセスによって形成される。様々な部品は後に一体に接合される。
【0078】
図示された種々の実施例に示されるように、ボビン20はフランジ25をさらに含む。フランジ25は各外面21の対向する側(両側)に配置されている。フランジ25は、巻線DX用のハウシング又は収納部分を提供し、フィンとしても機能し、外気へのボビンの熱伝達を増加させる。これにより磁気コア10及び巻線DXの冷却効率を高める。
【0079】
図1-
図3に示すように、ボビン20のフランジ25は突出接続領域26を備える。突出接続領域26は対応するフランジ25からそれに直交する方向に突出する。図示される実施例では、各突出接続領域26は1つの接続ポート31を備える。一方の接続ポートはチャンバ30の入口に、他方は出口に対応する。
【0080】
他の実施例では、チャンバ30は複数の入口又は複数の出口を備えてもよい。
【0081】
図9、10はボビン20の一実施例を示す。ボビン20は、2つの半部20Aと20Bの結合によって得られる。2つの半部20Aと20Bは、壁32,33の間に画定されたチャンバによって接合される。2つの半部20A,20Bは、構成部品の熱可塑性材料の射出成形プロセス又は3D印刷プロセスによって製造される。これら2つのピース(半部)は、プラスチック用の超音波溶接技術又は他の好適な接合技術によって溶接される。
【0082】
図11は本発明の第2態様による液冷式巻線装置の実施例を示す。この液冷式巻線装置は磁気コア10の周囲にボビン20を有する。磁気コア10は中央部分11と周辺部12を有する。図示された実施例では、磁気コア10とその中央部分11は、ほぼ円筒形状である。しかし他の実施例では、磁気コア10とその中央部分11の少なくとも一方は任意の形状を取り得る。例えば、並行六面体特に立方体でもよい。
【0083】
本発明の液冷式巻線型磁気装置の実施例では、巻線DXは収納部分に収容されている。この収納部分は第1外面21と隣接するフランジ25とで区画されている。従ってコンパクトな構成を提供できる。これによりチャンバ30と共に巻線DX及び磁気コア10の最適化された冷却を提供する。
【0084】
図12は本発明の第3態様による液冷式巻線型磁気装置の組の実施例を示す。液冷式巻線型磁気装置は複数の区画を有する筐体5内に配置される。各区画はボビン20を収納する。複数のボビン20は密封冷却回路で連結されている。密封冷却回路は、対応する装置のボビン20のチャンバ30の接続ポート31(人口と出口)とを接続する。かくして、液冷式巻線型磁気装置の組の密封冷却回路が得られる。
【0085】
本発明のボビン20は複数の軸の周りの巻線によっても実現できる。液冷式ボビン20は、その周囲に第2外側表面を有し、第2軸Y周りの第2巻線DYを支持する。第2軸Yは、ボビン20により規定され、第1軸Xに直交する。冷却チャネル(チャンバ)は、第2外側表面により包囲される第2部分を有する。
【0086】
他の実施例によれば、液冷式ボビン20は、その周囲に第3外側表面を有し、第3軸Z周りの第3巻線DZを支持する。第3軸Zは、ボビン20により規定され、第1軸Xと第2軸Yに直交する。冷却チャネル(チャンバ)は、第3外側表面により包囲される第3部分を有する。
【0087】
「%」は特に断らない限り重量%である。上記の説明は本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない(特許法施行規則24条の4及び様式29の2の「備考」14のロ)。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。「少なくとも1つ或いは複数」、「と/又は」は、それらの内の1つに限定されない。例えば「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は「A」、「B」、「C」単独のみならず「A,B或いはB,C更には又A,B,C」のように複数のものを含んでもよい。「A,B,Cの内の少なくとも1つ」は、A,B,C単独のみならずA,Bの組合せA,B,Cの組合せでもよい。「A,Bと/又はC」は、A,B,C単独のみならず、A,Bの2つ、或いはA,B,Cの全部を含んでもよい。本明細書において「Aを含む」「Aを有する」は、A以外のものを含んでもよい。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0088】
10:磁気コア
11:中央部
12:周囲部分
20:(電気絶縁性)ボビン、液冷式ボビン
20A,20B:半部片、部分片
21:第1外面
25:フランジ、突出縁領域
24:接合面
26:突出接続領域
30:チャンバ
31:接続ポート
32:外側壁
33:内側壁
34:隔壁
DX:第1巻線、DY:第2巻線,DZ:第3巻線
X:第1軸、Y:第2軸,Z:第3軸
【国際調査報告】