(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】抗KLRG1抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240329BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240329BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240329BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240329BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240329BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240329BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240329BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240329BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/13
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558946
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022021945
(87)【国際公開番号】W WO2022204514
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521111504
【氏名又は名称】アブクロ,インク.
【氏名又は名称原語表記】Abcuro, Inc.
【住所又は居所原語表記】90 Bridge Street, Newton, MA 02458, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ヴイ. ガラ
(72)【発明者】
【氏名】ケネス エヴァン トンプソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
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4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)に特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片に関する。かかる抗体、またはその抗原結合断片は、がんの治療を含む様々な治療または診断の目的に有用であり、ワクチンの有効性を増加させるために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4を含む重鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号13、配列番号19、配列番号25、配列番号31、及び配列番号37からなる群から選択されるCDR-L1と、配列番号14、配列番号20、配列番号26、配列番号32、及び配列番号38からなる群から選択されるCDR-L2と、配列番号15、配列番号21、配列番号27、配列番号33、及び配列番号39からなる群から選択されるCDR-L3と、を含む軽鎖をさらに含む、請求項1に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR-L1、前記CDR-L2、及び前記CDR-L3が、それぞれ配列番号13、配列番号14、及び配列番号15、それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21、それぞれ配列番号25、配列番号26、及び配列番号27、それぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33、またはそれぞれ配列番号37、配列番号38、及び配列番号39である、請求項2に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号5を含む軽鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号10、配列番号16、配列番号22、配列番号28、配列番号34からなる群から選択されるCDR-L1と、配列番号11、配列番号17、配列番号23、配列番号29、配列番号35からなる群から選択されるCDR-L2と、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30、配列番号36からなる群から選択されるCDR-L3と、を含む重鎖をさらに含む、請求項4に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項6】
CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3が、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12、それぞれ配列番号16、配列番号17、及び配列番号18、それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24、それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30、またはそれぞれ配列番号34、配列番号35、及び配列番号36である、請求項5に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項7】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号4を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号5を含む軽鎖可変領域と、を含む、前記抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項8】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ配列番号8を含む重鎖を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項9】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ配列番号9を含む軽鎖を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項10】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ
(a)配列番号8を含む重鎖と、
(b)配列番号9を含む軽鎖と、を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗原結合断片が、F(ab)断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗原結合断片が、F(ab
2)断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体、またはその抗原結合断片が、二重特異性である、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項14】
がんを治療する方法であって、がん患者に、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記がん患者にチェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記チェックポイント阻害剤の前記投与が、前記抗体、またはその抗原結合断片の投与と同時に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チェックポイント阻害剤が、前記抗体、またはその抗原結合断片の1日、1週間、または1ヶ月以内に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌腫、胃癌、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頚部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫のうちの1つ以上である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
補助療法であって、チェックポイント阻害剤で治療を受けている対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片を投与して、それによって前記補助療法を実施することを含む、前記補助療法。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項21】
配列番号40を含む、請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項22】
配列番号41を含む、請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか1項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項24】
請求項23に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、リンパ球共抑制性受容体キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーGメンバー1の阻害に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月26日に出願された米国仮特許出願第63/166,663号、及び2021年12月29日に出願された米国仮特許出願第63/294,436号の利益を主張するものであり、その内容は各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表の参照
本出願は、コンピュータ可読形態の配列表を含む。コンピュータ可読形態は、参照により本明細書に組み込まれる。2022年3月1日に作成された該ASCIIコピーは、770808_000043_SL.txtという名称であり、32,100バイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
リンパ球共阻害性受容体は、適応性免疫系の作用を調節する(例えば、WO2020/060781を参照されたい)。共抑制性受容体の作用は、一般に、共抑制性受容体の細胞外ドメインへのリガンドの結合、続いて、共抑制性受容体の細胞内ドメインに位置する免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)による細胞内ホスファターゼの動員によって実行される。共抑制性受容体の作用は、一般に、T細胞受容体(TCR)関与の免疫応答を弱めることである。近年、共抑制性受容体の活性を遮断する薬剤を、がん及び感染症の有効な治療法として使用できることが示されている。
【0005】
発明の概要
一態様では、本開示は、配列番号4を含む重鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片に関する。抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号13、配列番号19、配列番号25、配列番号31、及び配列番号37からなる群から選択されるCDR-L1と、配列番号14、配列番号20、配列番号26、配列番号32、及び配列番号38からなる群から選択されるCDR-L2と、配列番号15、配列番号21、配列番号27、配列番号33、及び配列番号39からなる群から選択されるCDR-L3と、を含む軽鎖をさらに含み得る。CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、それぞれ配列番号13、配列番号14、及び配列番号15、それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21、それぞれ配列番号25、配列番号26、及び配列番号27、それぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33、またはそれぞれ配列番号37、配列番号38、及び配列番号39であり得る。
【0006】
別の態様では、本開示は、配列番号5を含む軽鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片に関する。請求項4に記載の抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号10、配列番号16、配列番号22、配列番号28、配列番号34からなる群から選択されるCDR-L1と、配列番号11、配列番号17、配列番号23、配列番号29、配列番号35からなる群から選択されるCDR-L2と、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30、配列番号36からなる群から選択されるCDR-L3と、を含む重鎖をさらに含み得る。CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3は、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12、それぞれ配列番号16、配列番号17、及び配列番号18、それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24、それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30、またはそれぞれ配列番号34、配列番号35、及び配列番号36であり得る。
【0007】
一態様では、本開示は、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片であって、(a)配列番号4を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号5を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体、またはその抗原結合断片に関する。抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号8を含む重鎖を含み得る。抗体、またはその抗原結合断片は、配列番号9を含む軽鎖を含み得る。抗体、またはその抗原結合断片は、(a)配列番号8を含む重鎖と、(b)配列番号9を含む軽鎖と、を含み得る。
【0008】
抗原結合断片は、F(ab)断片であり得る。抗原結合断片は、F(ab2)断片であり得る。抗体、またはその抗原結合断片は、二重特異性であり得る。
【0009】
一態様において、本開示は、がん患者に、本明細書に開示される抗体または抗原結合断片を投与することを含む、がんを治療する方法に関する。方法はまた、がん患者にチェックポイント阻害剤を投与することを含み得る。チェックポイント阻害剤は、抗体、またはその抗原結合断片の投与と同時に投与され得る。チェックポイント阻害剤は、抗体、またはその抗原結合断片の1日、1週間、または1ヶ月以内に投与され得る。がんは、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頚部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫のうちの1つ以上であり得る。
【0010】
本開示はまた、補助療法であって、チェックポイント阻害剤で治療を受けている対象に、本明細書に開示される抗体、またはその抗原結合断片を投与して、それによって該補助療法を実施することを含む、補助療法に関する。
【0011】
本開示は、添付の図面と併せてなされる以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ヒトKLRG1を発現するCHOK1細胞へのPA015結合を示すグラフである。
【
図2】相対結合アッセイにおいて、KLRG1を発現するCHOK1細胞へのE-カドヘリン結合のPA015阻害を示すグラフである。
【
図3】相対結合アッセイにおいて、HG1N01及びHG1N02と比較して、KLRG1を発現するCHOK1細胞へのE-カドヘリン結合のPA015阻害を示すグラフである。
【
図4】FACS結合アッセイにおいて、HG1N02と比較した、2人のドナーからのヒトCD8+T細胞へのPA015結合のグラフを示す。
【
図5】実施例9に記載されるカニクイザル薬物動態アッセイにおける経時的なPA015の血清濃度を示すグラフである。
【
図6】実施例9に記載されるカニクイザル薬物動態アッセイにおける経時的なHG1N01の血清濃度を示すグラフである。
【
図7】HG1N02と比較した、PA015の特定の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)残基における脱アミド化のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の例示的な実施形態は、本明細書に開示される抗体、その断片、物質の組成物、キット、ならびに関連する方法及び療法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解を提供するために記載される。
【0014】
キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG1)は、T細胞及びNK細胞の活性を調節することによって共抑制性受容体として機能することができるII型膜貫通タンパク質である。KLRG1の細胞外部分は、既知のリガンドがカドヘリンであるC型レクチンドメインを含有する。KLRG1の細胞内部分は、T細胞受容体(TCR)媒介シグナル伝達の共阻害に関与する免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)ドメインを含有する。KLRG1リガンドは、E-カドヘリン、N-カドヘリン、R-カドヘリン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0015】
ヒトにおいて、KLRG1発現は、一般に、免疫系の細胞に限定され、特異的にはCD8陽性T細胞、NK細胞に限定され、より低い程度ではCD4陽性T細胞に限定される。KLRG1発現は、後期分化表現型と関連付けられている。抗原特異的T細胞が分化するにつれて、細胞傷害性分子の発現の増加を獲得することができるため、細胞傷害性の可能性が増加する可能性がある。KLRG1の生物学的機能は、これらのT細胞の細胞傷害性及び増殖を、ある特定の状況下で阻害することである。マウスがんモデルにおいて、KLRG1のそのリガンドとの相互作用の遮断は、腫瘍成長または転移の制御に有益であることが示されている。
【0016】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本開示の説明で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示、及び本明細書で説明または他の方法で提供される任意の発明(複数可)を限定することを意図するものではない。
【0017】
アミノ酸は、本明細書において、37C.F.R.§1.822及び確立された用法に従って、1文字コードまたは3文字コードのいずれかによって表される。
【0018】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、特許、特許刊行物、及び他の参考文献は、参照文及び/または参照が提示されるパラグラフに関連する教示に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0019】
定義
文脈が別段明らかに示さない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲の説明で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形も同様に含むことが意図される。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「及び/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意及び全ての可能な組み合わせ、ならびに選択肢(「または」)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、これらを包含する。
【0021】
本明細書で使用される「約」及び「およそ」という用語は、ポリペプチドの量、用量、時間、温度、酵素活性、または他の生物学的活性などの測定可能な値を指す場合、指定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、+0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0022】
「本質的にからなる(consisting essentially of)」という移行句は、請求項の範囲が、請求項に列挙された指定された材料またはステップを包含し、特許請求された発明の「基本的かつ新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」を包含すると解釈されることを意味する。In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 USPQ 461,463(CCPA 1976)(原文で強調)を参照されたい、MPEP§2111.03も参照されたい。
【0023】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される「本質的にからなる(consists essentially of)」」(及び文法的変形)という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドであって、列挙される配列(例えば、配列番号)と、ポリペプチドの機能が実質的に改変されないように、列挙される配列のN末端及び/またはC末端への合計10個以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の追加のアミノ酸との両方からなるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。合計10個以下の追加アミノ酸は、両端の追加のアミノ酸を一緒に加算した総数を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される「有効量」は、所望の効果を提供する量である。「有効量」という用語は、KLRG1の活性を低下させて、患者の症状の改善をもたらすか、または所望の生物学的転帰、例えば、KLRG1の活性の低下、リンパ球共抑制応答の調節、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化の増加もしくは低下、または細胞傷害性T細胞もしくはNK細胞によるIFNγの放出の増加もしくは低下を達成するのに十分な投与量または量を指す。
【0025】
本明細書で使用される「治療有効」量は、対象にある程度の改善または利益を提供する量である。あるいは、「治療有効」量は、対象における少なくとも1つの臨床症状のある程度の緩和、軽減、または減少をもたらす量である。当業者であれば、ある程度の利益が対象に提供される限り、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0026】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「の治療」という用語によって、対象の状態の重症度が低減されるか、または少なくとも部分的に改善もしくは修正され、少なくとも1つの臨床症状のある程度の緩和、軽減、もしくは低減が達成されることが意図される。
【0027】
本明細書で使用される「がん」という用語は、細胞の任意の良性または悪性の異常増殖を指す。例としては、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌腫、胃癌、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頚部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんは、腫瘍形成がんの群から選択される。当業者は、どのがんがその群の範囲内にあるかを認識するであろう。
【0028】
「単離された」という用語は、細胞物質、ウイルス物質、及び/または培養培地(組換えDNA技法によって産生される場合)、または化学前駆体もしくは他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まないポリペプチドを指すことができる。さらに、「単離された断片」は、断片として天然に存在せず、天然状態では見出されないポリペプチドの断片である。「単離された」とは、調製物が技術的に純粋(均一)であることを意味するのではなく、ポリペプチドまたは核酸を、意図された目的のために使用することができる形態で提供するのに十分に純粋であることを意味する。したがって、「単離された」という用語は、その天然環境を実質的に含まない分子を指す。例えば、単離されたタンパク質は、細胞物質またはそれが由来する細胞もしくは組織源からの他のタンパク質を実質的に含まない。「単離された」という用語はまた、単離されたタンパク質が、薬学的組成物として投与されるのに十分に純粋であるか、または少なくともおよそ70~80%(w/w)純粋である、より好ましくは少なくともおよそ80~90%(w/w)純粋である、さらにより好ましくはおよそ90~95%純粋である、及び最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは少なくとも100%(w/w)純粋である調製物を指す。
【0029】
ポリペプチドに適用される「断片」という用語は、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と比較して長さが短く、かつ参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と同一またはほぼ同一(例えば、およそ90%、およそ92%、およそ95%、およそ98%、およそ99%同一)の連続アミノ酸のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、及び/またはそれからなる、アミノ酸配列を意味すると理解される。本開示によるかかるポリペプチド断片は、必要に応じて、それが構成要素であるより大きなポリペプチドに含まれ得る。いくつかの実施形態では、かかる断片は、本開示によるポリペプチドまたはアミノ酸配列の少なくとも約4、約6、約8、約10、約12、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約75、約100、約150、約200、またはそれ以上の連続したアミノ酸の長さを有するペプチドを含むか、本質的にそれからなるか、及び/またはそれからなることができる。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、別途示されない限り、互換的に使用され、ペプチド及びタンパク質の両方を包含する。
【0031】
本明細書で使用される「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを含む、全てのタイプの免疫グロブリンを指す。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、またはヒトを含む起源の任意の種であり得るか、あるいはキメラ抗体であり得る。抗体は、例えば、米国特許第4,474,893号または米国特許第4,816,567号に開示される方法に従って生成される組換えモノクローナル抗体であり得る。抗体はまた、例えば、米国特許第4,676,980号に開示される方法に従って、化学的に構築することができる。
【0032】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」、及び「結合断片」という用語は、抗体と抗原との間の特異的結合を担うアミノ酸を含む抗体分子の一部を指す。抗原が大きい事例では、抗原結合ドメインは、抗原の一部にのみ結合し得る。抗原結合ドメインとの特異的相互作用を担う抗原分子の一部は、「エピトープ」または「抗原決定基」と称される。
【0033】
抗原結合ドメインは、典型的には、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、必ずしもその両方を含む必要はない。例えば、Fd抗体断片は、VHドメインのみからなるが、インタクトな抗体のいくつかの抗原結合機能を依然として保持する。
【0034】
抗KLRG1抗体は、抗体定常領域またはその一部を含む。例えば、VLドメインは、そのC末端に、ヒトCκまたはCλ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインを付着していてもよい。同様に、VHドメインに基づく特異的抗原結合ドメインは、任意の抗体同位体、例えば、IgG、IgA、IgE、及びIgM、ならびにIgG1及びIgG4を含むがこれらに限定されない、同位体サブクラスのいずれかに由来する免疫グロブリン重鎖の全てまたは一部を付着していてもよい。のC末端断片のDNA及びアミノ酸配列は当該技術分野において周知である。
【0035】
「特異的相互作用」及び「特異的結合」という用語は、生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成する2つの分子を指す。特異的結合は、通常、中程度~高容量で低親和性を有する非特異的結合と区別されるように、高親和性及び低~中程度の容量を特徴とし得る。典型的には、結合は、親和性定数KAがおよそ106M-1よりも高い、またはより好ましくはおよそ108M-1よりも高い場合に特異的とみなされる。必要に応じて、非特異的結合は、例えば、結合条件を変化させることによって、特異的結合に実質的に影響を与えることなく、低減することができる。抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合に許容される時間、遮断剤(例えば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度などの適切な結合条件は、日常的な技法を使用して当業者によって最適化され得る。
【0036】
ある特定の実施形態では、抗体は、ヒトまたはサルKLRG1の細胞外ドメイン(ECD)内のエピトープに、少なくとも約2nM、約1nm、約100pM、約10pM、または約5pMのKDで表される親和性で特異的に結合することができる。ヒト及びカニクイザルKLRG1のECDのアミノ酸配列は、配列番号1及び配列番号2に示され、ヒトE-カドヘリンのアミノ酸配列は、以下の配列番号3に記載される。
【0037】
抗体及び組成物
本開示は、E-カドヘリン、R-カドヘリン、及び/またはN-カドヘリンの、KLRG1の細胞外ドメインへの結合を妨害することによって、細胞のKLGR1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体及びその断片を記載する。E-カドヘリン、R-カドヘリン、及び/またはN-カドヘリンリガンドのKLRG1への結合を妨害することによって、かかる抗体は、それらの表面上のKLRG1を有するT細胞及びNK細胞の細胞傷害性を延長させる。本明細書に記載の抗体は、単剤療法として、または他の免疫療法剤(チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、もしくは抗CTLA4抗体など)と組み合わせて、または化学療法剤、もしくはがんワクチンと組み合わせて、がんの治療のための有効な治療剤として使用することができる。かかる抗体、またはその断片は、がん細胞がKLRG1を発現するかどうかにかかわらず、がん治療のための補助療法として使用することができる。
【0038】
異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構成は、当該技術分野で周知である。簡単に説明すると、各軽鎖は、N末端可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)から構成することができる。各重鎖は、N末端可変ドメイン(VH)、3つまたは4つの定常ドメイン(CH)、及びヒンジ領域から構成することができる。VHに最も近接するCHドメインは、CH1と呼ばれる。VH及びVLのドメインは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域からなるか、またはそれらで構成され、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変配列の3つの領域の足場を形成する。CDRは、抗原との特異的相互作用を担うほとんどの残基を含有することができる。3つのCDRは、CDR1、CDR2、及びCDR3と称される。重鎖のCDR成分はH1、H2、及びH3と呼ばれ、軽鎖のCDR成分はL1、L2、及びL3と呼ばれる。CDR3、及び特にH3は、抗原結合ドメイン内の分子多様性の最大の源である。H3は、例えば、2つのアミノ酸残基のように短いか、または26を超えることもできる。
【0039】
Fab断片(断片抗原結合)、またはF(ab)は、定常領域間のジスルフィド結合によって共有結合されるVH-CH1及びVL-CLのドメインからなるか、またはそれらを含む。当業者に既知であるが、Fab(50,000ダルトン)は、分子内ジスルフィド結合によって結合されたVH、CH1及びVL、CL領域からなるか、またはそれらで構成される、IgG及びIgMから産生される一価の断片である。宿主細胞で共発現したときにFv中の非共有結合のVH及びVLのドメインが解離する傾向を克服するために、いわゆる一本鎖(sc)Fv断片(scFv)を構築することができる。scFvにおいて、柔軟で十分に長いポリペプチドが、VHのC末端とVLのN末端またはVLのC末端とVHのN末端のいずれかを連結する。最も一般に、15残基(Gly4Ser)3ペプチド(配列番号42)は、リンカーとして使用されることができるが、他のリンカーも当該技術分野で既知である。
【0040】
抗体多様性は、可変領域及び種々の体細胞事象をコードする複数の生殖細胞系列遺伝子の組み合わせ集合の結果である。体細胞事象には、完全なVH領域を作製するための多様部(D)及び結合部(J)の遺伝子セグメントとの可変部遺伝子セグメントの再構成、ならびに完全なVL領域を作製するための可変部及び結合部の遺伝子セグメントの再構成が含まれ得る。再構成プロセス自体は不正確であり、V(D)J接合部でアミノ酸の喪失または付加をもたらす。これらの多様性のメカニズムは、抗原曝露の前に発達中のB細胞において生じる。抗原刺激後、B細胞内で発現した抗体遺伝子は体細胞変異を起こし得る。
【0041】
Fundamental Immunology,3rd ed.,ed.Paul,Raven Press,New York,N.Y.,1993によると、生殖細胞系列遺伝子セグメントの推定数、これらのセグメントのランダムな再構成、及びランダムVH-VL対合に基づいて、最大およそ1.6×107個の異なる抗体を産生することができる。Immunoglobulin Genes,2nd ed.,eds.Jonio et al.,Academic Press,San Diego,Calif.,1995によって裏付けられるように、抗体多様性に寄与する他のプロセス(体細胞変異など)を考慮に入れると、およそ1×1010個以上の異なる抗体が潜在的に生成され得ると考えられる。抗体の多様性に多くのプロセスが関与するために、独立して生成された抗体がCDRにおいて同一のアミノ酸配列を有する可能性はほとんどない。
【0042】
本開示は、細胞表面KLGR1を発現する細胞におけるKLRG1シグナル伝達の遮断に有効である、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーに由来する新規の抗体可変重鎖及び軽鎖の領域(VH及びVL)、ならびに抗体の重鎖及び軽鎖を提供する。これらの重鎖及び軽鎖、ならびにそれらの可変領域は、CDRを担持するための足場構造を提供する。CDRは、一般に、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはその一部分であり得るが、それに限定されず、CDRは、天然に存在するVH及びVLのCDRに対応する位置に位置する。免疫グロブリン可変ドメインの構造及び位置は、例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,No.91-3242,National Institutes of Health Publications,Bethesda,Md.,1991に記載されているように決定することができる。
【表1】
【0043】
抗体結合特異性
本開示の抗体はまた、例えば、KLRG1の全てまたは一部分を含む組換えタンパク質を含む他のタンパク質と結合し得ることが企図される。
【0044】
KLRG1抗体はまた、二重特異性もしくは四重特異性抗体、ダイアボディ、または同様の分子などの多重特異性抗体であり得る(ダイアボディの説明については、例えば、PNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照されたい)。実際、本発明によって提供される二重特異性抗体、ダイアボディなどは、KLRG1の一部分に加えて、任意の好適な標的に結合し得る。例えば、一実施形態では、二重特異性抗体は、KLRG1及びHER2に結合し得、これにより、KLRG1+T細胞及びNK細胞が活性化され、HER2+がん細胞にリダイレクトされる。別の実施形態では、二重特異性抗体は、KLRG1及びPD-1に結合し得、これにより、2つのチェックポイント受容体(KLRG1及びPD-1)を遮断することによってT細胞及びNK細胞を活性化する。
【0045】
本開示はまた、目的の抗原に対して第1の特異性を有する抗体部分、例えば、FabまたはFab’断片を含み、目的の第2の抗原に対して特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体をさらに含む多重特異性抗体融合タンパク質を提供する。多重特異性抗体融合は、目的の2つ以上の抗原に選択的に結合することができるであろう。
【0046】
一実施形態では、第1及び第2の抗原は、同じ抗原である。
【0047】
一実施形態において、抗体、またはその抗原結合断片によって結合される目的の抗原は、細胞関連タンパク質、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、もしくは腫瘍細胞などの細胞上の細胞表面タンパク質であり得るか、またはそれは、可溶性タンパク質であり得る。目的の抗原はまた、疾患または感染中に上方制御されるそれらのタンパク質などの任意の医学的に関連するタンパク質、例えば、受容体及び/またはそれらの対応するリガンドであり得る。細胞表面タンパク質の特定の例としては、接着分子、例えば、131インテグリンなどのインテグリン、例えばVLA-4、E-セレクチン、PセレクチンまたはLセレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD134(0X40)、ICOS、BCMP7、CD137、CD27L、CDCP1、DPCR1、DPCR1、dudulin2、FLJ20584、FLJ40787、HEK2、KIAA0634、KIAA0659、KIAA1246、KIAA1455、LTBP2、LTK、MAL2、MRP2、ネクチン様2、NKCCI、PTK7、RAIG1、TCAM1、SC6、BCMP101、BCMP84、BCMP11、DTD、がん胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI及びMHCクラスII抗原、ならびにVEGF、ならびに必要に応じて、それらの受容体が挙げられる。可溶性抗原としては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-16、またはIL-17などのインターロイキン、ウイルス抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルスまたはサイトメガロウイルス抗原、IgEなどの免疫グロブリン、インターフェロンa、インターフェロンp、またはインターフェロンyなどのインターフェロン、腫瘍壊死因子-a、腫瘍壊死因子-I3、G-CSFまたはGM-CSFなどのコロニー刺激因子、ならびにPDGF-a、及びPDGF-I3などの血小板由来の成長因子、ならびに必要に応じてそれらの受容体が挙げられる。他の抗原として、細菌細胞表面抗原、細菌毒素、インフルエンザ、EBV、HepA、B、及びCなどのウイルス、バイオテロリズム剤、放射性核種及び重金属、ならびにヘビ及びクモの毒及び毒素が挙げられる。特定の実施形態において、目的の抗原としては、IL-2、可溶性IL-15、または膜結合型IL-15Ra/IL-15複合体、及びIL-12が挙げられる。
【0048】
当業者であれば、本開示の抗体を使用して、KLRG1と多少異なるタンパク質を検出、測定、及び阻害し得ることを認識するであろう。抗体は、標的タンパク質が、配列番号1または配列番号2に示される配列中の少なくとも約130、約100、約80、約60、約40、または約20個の連続するアミノ酸の任意の配列と少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上同一である配列を含む限り、結合の特異性を保持することが予想され得る。パーセント同一性は、例えば、Altshul et al.(1990)J.Mol.Biol.,215:403-410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)などの標準配列アルゴリズム、Needleman et al.(1970)J.Mol.Biol.,48:444-453のアルゴリズム、またはMeyers et al.(1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11-17のアルゴリズムによって決定される。
【0049】
配列相同性分析に加えて、エピトープマッピング(例えば、Epitope Mapping Protocols,ed.Morris,Humana Press,1996を参照されたい)、ならびに二次構造及び三次構造の分析を実施して、開示された抗体及び抗原とのそれらの複合体によって想定される特定の3D構造を特定することができる。かかる方法には、限定されないが、X線結晶学(Engstom(1974)Biochem.Exp.Biol.,11:7-13)、及び現在開示されている抗体の仮想表現のコンピュータモデリング(Fletterick et al.(1986)Computer Graphics and Molecular Modeling,in Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)が含まれる。
【0050】
抗体バリアント
本開示は、KLRG1に特異的な抗体を得るための方法も提供する。かかる抗体における相補性決定領域(CDR)は、以下の実施例に特定されるVH及びVLの特異的配列に限定されず、KLRG1に特異的に結合する能力を保持するこれらの配列のバリアントを含み得る。かかるバリアントは、当該技術分野で周知の技法を使用して、当業者によって実施例に列挙される配列から誘導され得る。例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加は、フレームワーク領域(FR)内及び/またはCDR内で行われ得る。FRの変更は通常、抗体の安定性及び免疫原性を改善するように設計され得るが、CDRの変更は、典型的には、その標的に対する抗体の親和性を増加させるように設計され得る。
【0051】
FRへの変更には、限定されないが、非ヒト由来の抗体のヒト化、あるいは、抗原接触または結合部位の安定化に重要なある特定のフレームワーク残基の操作、例えば、定常領域のクラスもしくはサブクラスの変更、例えば、米国特許第5,624,821号及び同第5,648,260号、ならびにLund et al.(1991)J.Immun.147:2657-2662及びMorgan et al.(1995)Immunology 86:319-324に記載のFc受容体結合などのエフェクター機能を変更する可能性のある特異的アミノ酸残基の変更、または定常領域が導出される種の変更が挙げられる。
【0052】
FRのバリアントには、天然に存在する免疫グロブリンアロタイプも含まれる。かかる親和性の増加変化は、CDRを改変し、その標的に対する親和性抗体を試験することを含む日常的な技法によって経験的に決定され得る。例えば、保存的アミノ酸置換は、開示されるCDRのうちのいずれか1つ内で行われ得る。種々の改変は、例えば、Antibody Engineering,2nd ed.,Oxford University Press,ed.Borrebaeck,1995に記載される方法に従って行うことができる。これらには、限定されないが、配列内の機能的に等価なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって改変され、したがって「サイレント」変化を生じるヌクレオチド配列が含まれる。例えば、非極性アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられる。正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンが挙げられる。負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。配列内のアミノ酸の置換基は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。さらに、ポリペプチド中の任意の天然残基もまた、アラニンで置換され得る(例えば、MacLennan et al.(1998)Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55-67、Sasaki et al.(1998)Adv.Biophys.35:1-24を参照されたい)。
【0053】
「実質的に示される」という語句は、本開示の関連するCDR、VH、またはVLドメインが、その配列が示される特定の領域(例えば、CDR)と同一であるか、または実質的でない差異のみを有することを意味する。実質的でない差異としては、マイナーなアミノ酸変化、例えば、特定の領域の配列中の任意の5個のアミノ酸のうちの1または2個の置換が挙げられる。
【0054】
「KLRG1活性」という用語は、KLRG1に関連する1つ以上のリンパ球共抑制性活性を指す。例えば、KLRG1活性は、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化の調節を意味し得る。
【0055】
「調節する」という用語及びその類似の用語は、抗KLRG1抗体との相互作用に起因する、T細胞及びNK細胞の活性化に関連するKLRG1の活性の低下または増加を指し、その低下または増加は、同じ抗体の不在下でのKLRG1の活性と比較される。活性の低下または増加は、好ましくは、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上である。KLRG1活性が低下する場合、「調節的」及び「調節する」という用語は、「阻害的」及び「阻害する」という用語と互換性がある。KLRG1活性が増加する場合、「調節的」及び「調節する」という用語は、「活性化」及び「活性化する」という用語と互換性がある。
【0056】
本明細書で使用される「パーセント(%)配列同一性」という用語は、最大配列同一性パーセントを達成するように配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後の、参照核酸配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である、候補配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指す。配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内にある種々の方法、例えば、ClustalW、Clustal Omega、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されている入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。
【0057】
本開示の範囲内に含まれる抗体断片には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ドメイン抗体、ダイアボディ;ワクチン抗体(vaccibodies)、線形抗体;一本鎖抗体(ScFv)分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性(例えば、二重特異性、四重特異性)抗体が含まれる。かかる断片は、既知の技法によって産生され得る。例えば、F(ab’)2断片は、抗体分子のペプシン消化によって産生され得、Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得る。あるいは、Fab発現ライブラリーは、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な特定を可能にするように構築することができる(Huse et al,Science 1989 Dec 8;246(4935):1275-1281を参照されたい)。
【0058】
本開示の抗体は、非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態であり、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab1、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)を含み得る。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えることができる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含み得る。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことができ、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域(すなわち、CDR領域間の配列)の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含むことができる。
【0059】
ある特定の実施形態では、VH及び/またはVLドメインは、生殖系列化(germlined)されていてもよく、すなわち、これらのドメインのフレームワーク領域(FR)は、生殖系列細胞によって産生されるものと一致するように従来の分子生物学技法を使用して変異される。他の実施形態では、フレームワーク配列は、コンセンサス生殖系列配列から乖離したままである。
【0060】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で周知である。本開示、及び本明細書に提供される任意の発明(複数可)は、任意の特定の供給源、起源の種、または産生の方法に限定されない。
【0061】
本開示を実施するために使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature 265:495(1975)の技法に従って、ハイブリドーマ細胞株で産生され得る。例えば、適切な抗原を含む溶液をマウスに注射し、十分な時間後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を得ることができる。次いで、脾臓細胞を、例えば、典型的にはポリエチレングリコールの存在下で、骨髄腫細胞またはリンパ腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を産生することによって不死化させることができる。次いで、ハイブリドーマ細胞は、好適な培地で増殖させることができ、上清は、所望の特異性を有するモノクローナル抗体についてスクリーニングされる。モノクローナルFab断片は、当業者に既知の組換え技術によってE.coliにおいて産生され得る。標的ポリペプチドに特異的な抗体は、当該技術分野で既知のファージディスプレイ技術によっても得ることができる。
【0062】
様々なイムノアッセイをスクリーニングに使用して、KLRG1の細胞外ドメインに対して所望の特異性を有する抗体を特定することができる。確立された特異性を有するモノクローナル抗体を使用する競合結合アッセイまたは免疫放射線測定アッセイのための多数のプロトコルは、当該技術分野で周知である。そのようなイムノアッセイは、典型的には、抗原とその特異的抗体との間の複合体形成(例えば、抗原/抗体複合体形成)の測定を伴う。本開示のポリペプチドまたはペプチド上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を利用する2部位のモノクローナルベースのイムノアッセイ、及び競合結合アッセイを使用することができる。
【0063】
上記の複合体に加えて、本明細書に記載される抗KLRG1抗体は、既知の技術に従って、固体支持体(例えば、ラテックスまたはポリスチレンなどの材料から形成されるビーズ、プレート、スライド、またはウェル)にコンジュゲートされ得る。本明細書に記載される抗KLRG1抗体は、同様に、既知の技術に従って、放射性標識(例えば、従来の化学的手法を使用して抗体に結合され得る35S、125I、131I、または99mTc)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ)、及び蛍光標識(例えば、フルオレセイン)などの検出可能な基にコンジュゲートされ得る。検出可能な標識は、特定の同族検出可能な部分、例えば、標識アビジンへの結合を介して検出され得る、ビオチンなどの化学部分をさらに含む。本開示の方法における抗体/抗原複合体の形成の決定は、例えば、沈殿、凝集、軟凝集、放射能、発色または変色、蛍光、発光などの検出によるものであり得、かかる方法は、当該技術分野で周知である。
【0064】
上述のように、本明細書に記載される抗KLRG1抗体は、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(アルブミン、別の抗体など)、毒素、放射性同位体、細胞傷害性薬剤、または細胞増殖抑制剤に連結することができる。本明細書に記載の抗体は、毒素にコンジュゲートされ得る。抗体依存性細胞食作用(ADCP)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、及び補体依存性細胞傷害性(CDC)は、標的細胞を死滅させるための3つの周知の抗体媒介メカニズムである。
【0065】
例えば、抗体は、化学架橋または組換え法によって連結することができる。抗体はまた、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、及び同第4,179,337号に記載される様式で、様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つに連結することができる。抗体は、例えば、それらの循環半減期(circulating half-life)を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学修飾され得る。例示的なポリマー及びそれらを付着させる方法はまた、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、及び同第4,609,546号に示す。
【0066】
PA015組成物
いくつかの実施形態では、抗KLRG1抗体は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれか1つの任意の6つのCDRの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、抗KLRG1抗体は、(i)表2からの3つの重鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、ならびに(ii)表2からの3つの軽鎖CDRを含む。
【表2】
【0067】
Kabat(Wu and Kabat,1970,J Exp Med.(1970)132:211-50)、Kabat EA,Te Wu T,Foeller C,Perry HM,Gottesman KS.Sequences of Proteins of Immunological Interest.Diane Publishing Company(1992))、Chothia(1987,Chothia C,Lesk a M.Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J Mol Biol.(1987)196:901-17)、Al-Lazikani et al.,(1997 Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins.J Mol Biol.(1997)273:927-48)、Lefranc(IMGT numbering;Lefranc,1997 Unique database numbering system for immunogenetic analysis.Immunol Today(1997)18:509、Lefranc et al.,2005 IMGT-ONTOLOGY for immunogenetics and immunoinformatics.In Silico Biol.(2004)4:17-29、及びHonegger(Honegger and Pluckthun,2001,Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool.J Mol Biol.(2001)309:657-70)によって提案されたものを含む、複数の抗体可変鎖番号付けスキームが存在し、これにより、より複雑になる。
【0068】
Chothia及び彼の同僚は、構造、すなわちループの位置に基づいてCDRを定義した(上記Chothia and Lesk,1987、上記Al-Lazikani et al.,1997)。
【0069】
Kabat及びWuは、最初に、1970年代初頭に、アミノ酸配列変動分析によってCDRを定義した(上記Wu and Kabat,1970、上記Kabat and Wu,1971)。それ以来、詳細な遺伝子解析及び3次元構造解析は、HVL/CDRの観点から抗原結合部位の構造的基礎をより明確に定義し、接触残基の定義につながっている(MacCallum et al.,1996,Antibody-antigen interactions:contact analysis and binding site topography.J Mol Biol.(1996)262:732-745、Martin and Allen,2007,Bioinformatics tools for antibody engineering.In: Dubel S,editor.Handbook of Therapeutic Antibodies.Weinheim: Wiley-VCH Verlag GmbH(2008).p.95-117)。
【0070】
Kabat定義とChothia定義との間の折衷案であったCDRのAbM定義を、AbMモデリングソフトウェアで使用した(上記Martin and Allen,2007)。Martin及び彼の同僚はまた、実際のパラトープ、すなわち抗原に実際に接触するそれらの残基に基づいて、CDRの定義を形成し(上記Martin and Allen,2007)、Chothiaアプローチの補正に基づいて、可変鎖番号付け及びCDR決定のための「Abnum」と呼ばれる自動アプリケーションを開発及び試験した(Abhinandan and Martin,2008,Analysis and prediction of VH/VL packing in antibodies.Protein Eng Des Sel.(2010)23:689-97)。
【0071】
CDRのContact定義は、CDR内のアミノ酸の20~33%のみが抗原と直接接触するという観察に基づいている(Padlan EA.Anatomy of the antibody molecule.Mol Immunol.(1994)31:169-217)。「特異性決定残基(SDR)」と呼ばれるこれらの残基は、Padlan et al.(Padlan EA,Abergel C,Tipper JP.Identification of specificity-determining residues in antibodies.FASEB J OffPubl Fed Am Soc Exp Biol.(1995)9:133-9)によって、最初に説明された。彼らの結果は、これらのSDRが、抗原との相互作用に関与し、ほとんどの場合、CDRに存在する最も可変な位置と一致することを示す。このSDRの概念を使用して、MacCallum及び同僚は、CDRを定義するための新しい方法を提案し、SDRを「接触残基」と改名した。彼らはまた、接触残基が、より頻繁にパラトープの中心に位置し、Chothiaが前述したように、非接触残基が、CDRループのコンフォメーションを形成する役割を果たし、したがって、接触残基を効率的かつ特異的な抗原結合のために最適に配向することを示唆した。
【0072】
V-REGIONのIMGT固有の番号付けは、IMGTにおいてそれぞれCDR-IMGT及びFR-IMGTとして指定される相補性決定領域及びフレームワーク領域の限界を再定義することを可能にした。V-DOMAINのIMGT固有の番号付けは、再配置されたV-J-REGION及びV-D-J-REGIONのCDR3-IMGT及びFR4-IMGTの標準化された番号付けを提供する。
【0073】
相補性決定領域(CDR-IMGT)は、VドメインのIMGT固有の番号付けに従って区切られた、V-DOMAIN(可変(V)ドメイン)のループ領域である(Lefranc M.et al.(2003)IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains.Dev Comp Immunol 27:55-77)。V-DOMAINには、3つのCDR-IMGT:CDR1-IMGT(ループBC)、CDR2-IMGT(ループC’C’’)、及びCDR3-IMGT(ループFG)がある。
【0074】
V-DOMAIN(免疫グロブリン(IG)または抗体及びT細胞受容体(TR)のVドメイン)において、CDR-IMGTのアミノ酸は、抗原(エピトープ)に結合し、IG及びTRに特異性を付与する(Paratope,IMGT-ONTOLOGY,SpecificityType)。最初の2つのCDR-IMGTは、V-REGION(可変(V)遺伝子によってコードされる)の一部であるが、CDR3-IMGTは、接合部に対応し、V遺伝子と結合(J)遺伝子との間の再編成(V-J再編成)、またはV遺伝子、多様性(D)遺伝子、及びJ遺伝子の間の再編成(V-D-J再編成)から生じる(免疫グロブリン合成)。
【0075】
PA015配列
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(例えば、配列番号13、配列番号19、配列番号25、配列番号31、配列番号37)、CDR-L2(例えば、配列番号14、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38)及びCDR-L3(例えば、配列番号15、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39)を含む軽鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、重鎖可変領域は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号4に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0076】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号4のアミノ酸配列と、フレームワーク(FR)領域を含むが、これらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖を含み、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3が、それぞれ配列番号13、配列番号14、及び配列番号15;それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21;それぞれ配列番号25、配列番号26、及び配列番号27;それぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33;またはそれぞれ配列番号37、配列番号38、及び配列番号39であるものを提供する。
【0077】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-L1(配列番号13)、CDR-L2(配列番号14)、及びCDR-L3(配列番号15)を含む軽鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域。
【0078】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する重鎖、ならびに(ii)CDR-L1(例えば、配列番号13、配列番号19、配列番号25、配列番号31、配列番号37)、CDR-L2(例えば、配列番号14、配列番号20、配列番号26、配列番号32、配列番号38)及びCDR-L3(例えば、配列番号15、配列番号21、配列番号27、配列番号33、配列番号39)を含む軽鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号8に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖。
【0079】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号8のアミノ酸配列を有する、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、それぞれ少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖、ならびに(ii)CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖を有し、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3が、それぞれ配列番号13、配列番号14、及び配列番号15;それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21;それぞれ配列番号25、配列番号26、及び配列番号27;それぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33、またはそれぞれ配列番号37、配列番号38、及び配列番号39を有するものを提供する。
【0080】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-H1(例えば、配列番号10、配列番号16、配列番号22、配列番号28、配列番号34)、CDR-H2(例えば、配列番号11、配列番号17、配列番号23、配列番号29、配列番号35)及びCDR-H3(例えば、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30、配列番号36)を含む重鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、軽鎖可変領域は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号5に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0081】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖を有し、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3が、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12;それぞれ配列番号16、配列番号17、及び配列番号18、それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24、それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30、またはそれぞれ配列番号34、配列番号35、及び配列番号36であるものを提供する。
【0082】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、ならびに(ii)CDR-H1(配列番号10)、CDR-H2(配列番号11)、及びCDR-H3(配列番号12)を含む重鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、軽鎖可変領域は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号5に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0083】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖、ならびに(ii)CDR-H1(例えば、配列番号10、配列番号16、配列番号22、配列番号28、配列番号34)、CDR-H2(例えば、配列番号11、配列番号17、配列番号23、配列番号29、配列番号35)、及びCDR-H3(例えば、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30、配列番号36)を含む重鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、軽鎖は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号9に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0084】
特定の実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号9のアミノ酸配列と、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、それぞれ少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖、ならびに(ii)CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖を有し、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3が、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12;それぞれ配列番号16、配列番号17、及び配列番号18;それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24;それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30、またはそれぞれ配列番号34、配列番号35、及び配列番号36を有するものを提供する。
【0085】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖、ならびに(ii)CDR-H1(配列番号10)、CDR-H2(配列番号11)、及びCDR-H3(配列番号12)を含む重鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、軽鎖は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。
【0086】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖、ならびに(ii)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖を有するものを提供する。より具体的な実施形態では、軽鎖は、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有し、かつフレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖。
【0087】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、及び(ii)配列番号8のアミノ酸配列と、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖を有するものを提供する。
【0088】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)それぞれ配列番号13、14、及び15のアミノ酸配列を有するCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含有する軽鎖可変領域、(ii)それぞれ配列番号10、11、及び12のアミノ酸配列を有するCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)を含有する重鎖可変領域、(iii)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する重鎖定常領域、ならびに(iv)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖定常領域を有するものを提供する。
【0089】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)それぞれ配列番号13、14、及び15のアミノ酸配列を有するCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含有する軽鎖可変領域、(ii)それぞれ配列番号10、11、及び12のアミノ酸配列を有するCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)を含有する重鎖可変領域、(iii)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する重鎖、ならびに(iv)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する軽鎖を有するものを提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗体、またはその抗原結合断片は、(i)それぞれ配列番号10、11、もしくは12のアミノ酸配列を有する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、もしくはCDR-H3)またはその一部分を含む重鎖可変領域、及び(ii)それぞれ配列番号13、14、もしくは15のアミノ酸配列を有する、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つのCDR(例えば、CDR-L1、CDR-L2、もしくはCDR-L3)またはその一部分を含む軽鎖可変領域を含む。
【0091】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、配列番号5のアミノ酸配列と、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、相補性決定領域(CDR)領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を有するものを提供する。
【0092】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、配列番号4のアミノ酸配列と、FR領域を含むがこれらに限定されない、CDR領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を有するものを提供する。
【0093】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)配列番号5のアミノ酸配列と、フレームワーク(FR)領域を含むがこれらに限定されない、CDR領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、ならびに(ii)配列番号4のアミノ酸配列と、FR領域を含むがこれらに限定されない、CDR領域以外の領域において、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を有するものを提供する。
【0094】
一実施形態は、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、またはその抗原結合断片であって、(i)それぞれ配列番号13、14、及び15のアミノ酸配列を有するCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を含有する軽鎖可変領域、(ii)それぞれ配列番号10、11、及び12のアミノ酸配列を有するCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を含有する重鎖可変領域、(iii)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖定常領域、ならびに(iv)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖定常領域を有するものを提供する。
【0095】
前述の実施形態の全てのある特定の態様では、軽鎖もしくは重鎖、可変領域、または定常領域が、参照配列番号とのある特定のパーセンテージの配列同一性を有するとされる場合、かかる同一性は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0096】
免疫毒素
いくつかの態様では、本開示によって提供される抗体及び/またはその抗原結合断片は、毒剤にコンジュゲートされる。1つ以上の細胞毒素を含む免疫複合体は、「免疫毒素」と称される。細胞傷害性薬剤、薬物などにコンジュゲートされた抗体は、抗体-薬物複合体(ADC)としても知られている。免疫複合体は、抗体-薬物複合体が内在化され、分解され、放出された毒素によって細胞殺傷を誘導するのに十分な期間の半減期を有し得る。細胞毒素または細胞傷害性薬剤には、細胞に有害である(例えば、細胞を死滅させる)任意の薬剤が含まれ得る。本開示の免疫複合体を形成するための好適な細胞傷害性薬剤としては、タキソール、チューブリシン、デュオスタチン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、メイタンシン、またはその類似体もしくは誘導体、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン;カリケアマイシンまたはそれらの類似体もしくは誘導体、代謝拮抗剤(メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビンなど)、アルキル化剤(メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチン、及びカルボプラチンなどの他の白金誘導体;ならびにデュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、CC-1065(別名、ラケルマイシン)、またはCC-1065の類似体もしくは誘導体)、ドラスタチン、アウリスタチン、ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PDB)、インドリノベンゾジアゼピン(IGN)、またはそれらの類似体、抗生物質(ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、ミトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)など)、ジフテリア毒素及び関連分子(例えば、ジフテリアA鎖及びその活性断片及びハイブリッド分子)などの抗有糸分裂剤(例えば、チューリン標的化剤);リシン毒素(リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素など)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、大豆Bowman-Birkプロテアーゼ阻害剤、Pseudomonas exotoxin、alorin、saporin、modeccin、gelanin、abrin A鎖、modeccin A鎖、アルファ-sarcin、Aleurites fordiiタンパク質、dianthinタンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、curcin、crotin、sapaonaria officinalis阻害剤、gelonin、mitogellin、restrictocin、phenomycin、及びenomycin毒素が挙げられる。他の好適なコンジュゲート分子としては、CLIP、Magainin2、mellitin、Cecropin、及びP18などの抗菌/溶解性ペプチド、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、Staphylococcal enterotoxin-A、pokeweed抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、及びPseudomonas endotoxinが挙げられる。
【0097】
補足的治療薬
本開示の抗体であって、その断片及びその複合体を含む抗体は、任意選択的に、他の治療薬と併せて患者に送達することができる。追加の治療剤は、本開示の抗体の前に、同時に、または後に送達することができる。本明細書で使用されるとき、「同時に(concurrently)」という単語は、併用効果を生み出すのに十分に近い時間を意味する(すなわち、同時に(concurrently)は、同時(simultaneously)であり得るか、またはそれは、互いの前または後の短い期間内に発生する2つ以上の事象であり得る)。
【0098】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、5)生物学的応答修飾因子(例えば、インターフェロン-アルファ)、6)白金配位錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、8)置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH))、10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、12)プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、及び酢酸メゲストロール)、13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール)、14)及び抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)、15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)、ならびに17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)のような抗がん剤と併せて投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、VEGFに対する抗体(例えば、ベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))、及び血管新生の他のプロモーター(例えば、bFGF、アンジオポエチン-1)、アルファ-v/ベータ-3血管インテグリンに対する抗体(例えば、VITAXIN)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ダルテパリン、ABT-510、CNGRCペプチド(配列番号43)TNFアルファ複合体、シクロホスファミド、コンブレタスタチンA4リン酸塩、ジメチルキサンテノン酢酸、ドセタキセル、レナリドマイド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤(アブラキサン)、大豆イソフラボン(ゲニステイン)、タモキシフェンクエン酸塩、サリドマイド、ADH-1(EXHERIN)、AG-013736、AMG-706、AZD2171、ソラフェニブトシレート、BMS-582664、CHIR-265、パゾパニブ、PI-88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、リンゴ酸スニチニブ、XL184、ZD6474、ATN-161、シレンギチド、及びセレコキシブなどの抗血管新生剤と併せて投与することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、例えば、シクロスポリンA、ラパマイシン、グルココルチコイド、アザチオプリン、ミゾリビン、アスピリン誘導体、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート、シクロホスファミド、及びFK506(タクロリムス)を含む免疫抑制剤と併せて投与することができる。
【0100】
核酸、クローニング及び発現系
本開示は、開示された抗体をコードする単離された核酸をさらに提供する。核酸は、DNAまたはRNAを含んでもよく、全体的または部分的に合成または組換えであってもよい。本明細書に示されるヌクレオチド配列への言及は、文脈上別段の必要がない限り、特定の配列を有するDNA分子を包含し、TがUで置換される特定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0101】
本明細書に提供される核酸は、本明細書に開示されるCDR、VHドメイン、及び/またはVLドメインのコード配列を含む。本開示はまた、本明細書に開示されるCDR、VHドメイン、及び/またはVLドメインをコードする少なくとも1つの核酸を含む、プラスミド、ベクター、ファージミド、転写、または発現カセットの形態の構築物を提供する。本開示は、上記の1つ以上の構築物を含む宿主細胞をさらに提供する。
【0102】
いくつかの実施形態では、重鎖のコード配列は、配列番号40のヌクレオチド配列である。
【0103】
いくつかの実施形態では、軽鎖のコード配列は、配列番号41のヌクレオチド配列である。
【0104】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現のための系は、当該技術分野で周知である。抗体の産生に好適な細胞については、Gene Expression Systems,Academic Press,eds.Fernandez et al.,1999を参照されたい。簡潔には、好適な宿主細胞としては、細菌、植物細胞、哺乳動物細胞、ならびに酵母及びバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当該技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウス骨髄腫細胞、及び多くの他の細胞が挙げられる。一般的な細菌宿主は、E.coliである。本発明と適合する任意のタンパク質発現系を使用して、開示される抗体を産生し得る。好適な発現系としては、Gene Expression Systems,Academic Press,eds.Fernandez et al.,1999に記載されるトランスジェニック動物が挙げられる。
【0105】
好適なベクターは、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じて他の配列を含む、適切な調節配列を含有するように選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドまたはウイルス、例えば、ファージまたはファージミドであってもよい。さらなる詳細については、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入及び遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの既知の技法及びプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology,2nd Edition,eds.Ausubel et al.,John Wiley & Sons,1992に詳細に記載されている。
【0106】
本開示のさらなる態様は、本明細書に開示される核酸を含む宿主細胞を提供する。なおさらなる態様は、かかる核酸を宿主細胞に導入することを含む方法を提供する。導入は、任意の利用可能な技法を用いることができる。真核細胞の場合、好適な技法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、ならびにレトロウイルスまたは他のウイルス、例えば、ワクシニア、または昆虫細胞についてはバキュロウイルスを使用した形質導入を含み得る。細菌細胞の場合、好適な技法は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを使用したトランスフェクションを含み得る。細胞内への核酸の導入に続いて、例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を引き起こすか、またはそれを可能にすることができる。
【0107】
治療の方法
開示される抗KLRG1抗体は、KLRG1関連の免疫応答を調節することが可能である。特定の実施形態では、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化は、KLRG1シグナル伝達の調節によって媒介される。開示される抗体は、それらの使用方法に応じて、KLRG1のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用することができる。本抗体を使用して、哺乳動物、特にヒトにおける医学的障害を予防、診断、または治療することができる。本開示の抗体はまた、KLRG1またはKLRG1発現細胞を単離するためにも使用することができる。さらに、抗体を使用して、障害の危険性があるもしくはその影響を受けやすい、または異常なKLRG1の発現もしくは機能に関連する障害を有する対象を治療することができる。
【0108】
本開示の抗体は、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化の調節が望ましい場合がある状況で、例えば、ある特定の種のがん及び感染症において、使用することができる。
【0109】
ある特定の状況下において、がんまたは感染症を治療するために、患者の免疫応答を誘発または増強することが望ましい場合がある。開示される方法によって治療または予防される障害には、限定されないが、微生物(例えば、細菌)、ウイルス(例えば、インフルエンザなどの全身性ウイルス感染症、ヘルペスまたは帯状疱疹などのウイルス性皮膚疾患)、または寄生虫による感染、ならびにがん(例えば、黒色腫及び前立腺癌)が含まれる。本明細書に開示される抗KLRG1抗体による細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化は、T細胞及びNK細胞の応答を増強する。かかる場合、抗体はKLRG1のアンタゴニストとして作用する。したがって、いくつかの実施形態では、抗体を使用して、KLRG1に関連する下方制御活性、すなわち、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化の下方制御に関連する活性を阻害または低減することができる。
【0110】
実施例で示されるように、拮抗する抗KLRG1抗体によるKLRG1/E-カドヘリン相互作用の遮断は、細胞傷害性T細胞及びNK細胞の活性化におけるKLRG1経路の下方制御的役割と一致して、これらの細胞によるT細胞増殖応答及びIFNy分泌の増強をもたらす。様々な実施形態では、抗体は、E-カドヘリンのKLRG1への結合を、約50nM未満、及びより好ましくは約40、30、20、10、または5nM未満のIC50で阻害する。E-カドヘリン結合の阻害は、当該技術分野で既知の技法を使用して測定することができる。
【0111】
本開示の抗体または抗体組成物は、治療有効量で投与される。一般に、治療有効量は、対象の年齢、状態、及び性別、ならびに対象の病状の重症度によって変化し得る。抗体の治療有効量は、約0.001~約30mg/kg体重、好ましくは約0.01~約25mg/kg体重、約0.1~約20mg/kg体重、または約1~約10mg/kg体重の範囲である。投与量は、治療の観察された効果に合わせて必要に応じて調整され得る。
【0112】
適切な用量は、治療を行う医師によって臨床的適応症に基づいて選択される。抗体は、投与後の最も長い時間にわたって抗体の循環レベルを最大化するため、ボーラス用量として与えられてもよい。ボーラス投与後にも持続注入を使用することもできる。
【0113】
免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)はまた、患者から単離し、本開示の抗体とともにエクスビボでインキュベートすることができる。いくつかの実施形態では、T細胞及びNK細胞の活性化は、対象から免疫細胞を取り出し、免疫細胞をインビトロで本開示の抗KLRG1抗体と接触させることによって調節することができる。かかる実施形態では、抗KLRG1抗体は、免疫細胞の表面上のKLRG1分子がかかる抗体に結合すると「架橋」するように、多価形態で使用され得る。例えば、抗KLRG1抗体は、固体支持体、例えば、ビーズに結合することができるか、または二次抗体を介して架橋することができる。次に、免疫細胞は、当該技術分野で知られる方法を使用して単離され、患者に再移植され得る。
【0114】
本開示の抗体はまた、生体試料中のKLRG1の存在を検出するためにも使用し得る。検出されるKLRG1の量は、KLRG1の発現レベルと相関し得るものであり、これは、次いで、対象における免疫細胞(例えば、活性化T細胞またはNK細胞)の活性化状態と相関する。
【0115】
抗体を用いる検出方法は当該技術分野で周知であり、例えば、ELISA、放射免疫アッセイ、免疫ブロット、ウェスタンブロット、免疫蛍光、免疫沈降を含む。抗体は、KLRG1を検出するためにこれらの技法のうちの1つ以上を組み込む診断キットにおいて提供され得る。かかるキットは、他の構成要素、パッケージ、説明書、またはタンパク質の検出を補助するための他の材料を含有し得る。
【0116】
抗体が診断目的のものである場合、例えば、リガンド基(ビオチンなど)または検出可能なマーカー基(蛍光基、放射性同位体、または酵素など)でそれらを修飾することが望ましい場合がある。必要に応じて、本開示の抗体は、従来の技法を使用して標識され得る。好適な検出可能な標識としては、例えば、フルオロフォア、発色団、放射性原子、電子高密度試薬(electron-dense reagent)、酵素、及び特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、典型的には、その活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、テトラメチルベンジジン(TMB)を分光光度計で定量可能な青色色素に変換する能力によって検出することができる。検出のために、好適な結合パートナーには、ビオチン及びアビジンまたはストレプトアビジン、IgG及びプロテインA、ならびに当技術分野で既知の多数の受容体リガンド対が含まれるが、これらに限定されない。他の置換及び可能性は、当業者には容易に明らかであり、本開示の範囲内の等価物とみなされる。
【0117】
本開示の抗体は、治療薬として有効なKLRG1経路の阻害剤を同定するためのスクリーニング方法に使用することができる。かかるスクリーニングアッセイでは、KLRG1と本開示の抗体とを組み合わせることによって第1の結合混合物を形成し、第1の結合混合物(MO)中の結合の量を測定する。KLRG1、抗体、及びスクリーニングされる化合物または薬剤を組み合わせることによって第2の結合混合物も形成され、第2の結合混合物(M1)中の結合の量を測定する。試験される化合物は、実施例に示されるように、別の抗KLRG1抗体であってもよい。次に、第1及び第2の結合混合物中の結合の量を、例えば、M1/M0比を計算することによって比較する。化合物または薬剤は、第1の結合混合物と比較して第2の結合混合物における結合の減少が観察される場合、免疫応答のKLRG1関連の下方制御を調節することができると考えられる。
【0118】
結合混合物の製剤化及び最適化は、当業者のレベル内のものであり、かかる結合混合物はまた、結合を増強または最適化するために必要な緩衝液及び塩を含有し得、追加の対照アッセイが本開示のスクリーニングアッセイに含まれ得る。したがって、KLRG1抗体結合を少なくとも約10%(すなわち、M1/M0<0.9)、好ましくは約30%を超えて低下させることが見出される化合物を同定し、次いで、必要に応じて、後述の他のアッセイまたは動物モデルにおいて障害を改善する能力について二次的にスクリーニングし得る。KLRG1と抗体との間の結合の強度は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、表面プラズモン共鳴に基づく技術(例えば、Biacore)を使用して測定することができ、これらは全て、当該技術分野で周知である技法である。
【0119】
次いで、化合物は、実施例または動物モデルで示されるように、インビトロで試験してもよい。例えば、動物試験に従って決定される予備用量、及びヒト投与のための投与量スケーリングは、当該技術分野で許容される慣行に従って実施される。毒性及び治療有効性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。細胞培養アッセイまたは動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するための投与量範囲の策定に使用することができる。
【0120】
1つの動物モデルにおいて達成される治療有効投与量は、当該技術分野で既知の換算係数を使用して、ヒトを含む別の動物で使用するために変換し得る(例えば、Freireich et al.(1966)Cancer Chemother.Reports,50(4):219-244を参照されたい)。
【0121】
薬学的組成物
本開示は、抗KLRG1抗体を含む薬学的組成物を提供する。かかる組成物は、薬学的使用及び患者への投与に好適であり得る。組成物は典型的には、本開示の1つ以上の抗体と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む。「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、薬学的投与と適合する任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。組成物はまた、補足的、追加的、または増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含有してもよい。薬学的組成物は、投与のための指示書とともに、容器、パック、またはディスペンサーに含有されてもよい。
【0122】
本開示の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与を達成するための方法は、当業者には知られている。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮のものであってもよい。局所投与もしくは経口投与され得る、または粘膜を横断して伝達することが可能であり得る組成物を得ることも可能であり得る。
【0123】
皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁物として、典型的には、成分:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝液;及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調整するための薬剤のうちの1つ以上が挙げられる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整することができる。かかる製剤は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスもしくはプラスチック製の複数用量バイアルに封入してもよい。
【0124】
注射に好適な薬学的組成物は、滅菌注射液もしくは分散液を即時調製するための滅菌水溶液もしくは分散液及び滅菌粉末を含む。静脈内投与では、好適な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌である必要があり、容易な注射可能性(syringeability)が存在する程度まで流動性であるべきである。これは、製造及び保存条件下で安定であるべきであり、また、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。微生物作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌剤及び抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール、及び塩化ナトリウムなどの多価アルコールを組成物中に含むことが好ましい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合における必要な粒径の維持によって、及び/または界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を延長させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0125】
投与及び投与量
投与を達成するための方法は、当業者には知られている。投与は、例えば、非経口投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下)であり得る。
【0126】
全身投与は、経粘膜的または経皮的手段によって行うこともできる。経粘膜または経皮投与のために、浸透するバリアに適切な浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は一般に当該技術分野で既知であり、例えば、界面活性剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、例えば、ロゼンジ、鼻スプレー、吸入器、または座薬の使用によって達成され得る。例えば、Fc部分を含む抗体の場合、組成物は、腸、口、または肺の粘膜を横断して伝達することが可能であり得る(例えば、米国特許第6,030,613号に記載されるFcRn受容体媒介経路を介するもの)。経皮投与のために、活性化合物は、当該技術分野で一般に知られているように、軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに製剤化され得る。吸入による投与のために、抗体は、好適な噴霧剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアゾールスプレーの形態で送達され得る。
【0127】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、体からの急速な排出から化合物を保護する担体、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出処方物を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製するための方法は、当業者には明らかであろう。本明細書に開示される抗体を含有するリポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0128】
非経口組成物を、投与の容易さ及び投与量の均一性のために用量単位形態(dosage unit form)に製剤化することが有利であり得る。本明細書で使用される「用量単位形態」という用語は、治療される対象のために単位として用いられる投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。
【0129】
本開示の組成物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死的な用量)及びED50(集団の50%における治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、比率LD50/ED50として表すことができる。
【0130】
大きな治療指数を示す組成物が好ましい。本開示で使用される任意の組成物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。好適なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、サイトカイン放出アッセイ、転写ベースのアッセイ、KLRG1/カドヘリン結合アッセイ、免疫学的アッセイ、他のアッセイ、例えば、実施例に記載されるようなものが挙げられる。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトで使用するための投与量範囲の策定に使用することができる。用量は、IC50を含む循環血漿濃度範囲(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する抗体の濃度)を達成するために動物モデルで策定できる。血漿における循環レベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投与量の効果を、好適なバイオアッセイによって監視することができる。投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形及び使用される投与経路に応じて変化し得る。
【0131】
以下の実施例は、本開示の範囲をいかなる形でも限定するものではない。当業者であれば、本開示の趣旨または範囲を変更することなく実施され得る多数の変更及び変形を認識するであろう。かかる変更及び変形は、本開示の範囲内に包含される。本出願を通じて引用される全ての参考文献、特許、及び公開特許出願の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
組換えタンパク質は、標準分子クローニング及び発現プロトコルによって産生され、ヒトKLRG1 ECD(配列番号1)、カニクイザルKLRG1 ECD(配列番号2)、及びヒトE-カドヘリン(配列番号3)が含まれ、これらのアミノ酸配列は当該技術分野で周知であり、PCT公開第WO2020060781号に開示されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。組換えタンパク質を、それぞれのcDNAをpCDNA4ベクター(Invitrogen)にクローニングし、哺乳動物HEK293中で一過性トランスフェクションすることによって、FC融合バージョンまたはHISタグ付きバージョンとして産生した。発現したタンパク質の精製は、FC融合バージョンについてはプロテインA親和性樹脂、及びHISタグ付きタンパク質についてはニッケル-NTA樹脂を使用してクロマトグラフィーによって行われた。精製した全てのタンパク質をSDS-PAGE電気泳動によって特徴付けて、純度及び分子量を確認した。
例示的な配列
PA015重鎖可変領域配列
>PA015_VH(配列番号4)
QVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLSTFGMGVGWIRQPPGKALEWLAHIWWDDDKWYELALKSRLTISKDTSKNQVVLTITNMDPVDTATYYCARVIYYGSRSAYYSMDYWGQGTTVTVSS
PA015軽鎖可変領域配列
>PA015_VL(配列番号5)
DVVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSIVHSNAHTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPVTFGQGTKLEIKRTV
PA015重鎖定常領域配列
>PA015_重鎖定常領域(配列番号6)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
PA015軽鎖定常領域配列
>PA015_軽鎖定常領域(配列番号7)
AAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
PA015重鎖配列
>PA015_HC(配列番号8)
QVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLSTFGMGVGWIRQPPGKALEWLAHIWWDDDKWYELALKSRLTISKDTSKNQVVLTITNMDPVDTATYYCARVIYYGSRSAYYSMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
PA015軽鎖配列
>PA015_LC(配列番号9)
DVVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSIVHSNAHTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPVTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
>PA015_VH_CDR1(配列番号10)-Chothiaフォーマット
GFSLSTFGM
>PA015_VH_CDR2(配列番号11)-Chothiaフォーマット
WWDDD
>PA015_VH_CDR3(配列番号12)-Chothiaフォーマット
VIYYGSRSAYYSMDY
>PA015_VL_CDR1(配列番号13)-Chothiaフォーマット
KSSQSIVHSNAHTYLE
>PA015_VL_CDR2(配列番号14)-Chothiaフォーマット
KVSNRFS
>PA015_VL_CDR3(配列番号15)-Chothiaフォーマット
FQGSHVPVT
>PA015_HC(配列番号40)
ATGGGCTGGTCCTGCATCATTCTGTTTCTGGTGGCTACCGCCACCGGCGCTCATTCTCAAGTGACACTGAGAGAGTCTGGCCCCGCTCTGGTCAAGCCTACACAGACCCTGACACTGACCTGCACCGTGTCTGGCTTCTCCCTGTCTACCTTTGGCATGGGCGTCGGCTGGATTAGACAGCCTCCTGGAAAAGCCCTGGAATGGCTGGCCCACATTTGGTGGGACGACGACAAGTGGTACGAGCTGGCTCTGAAGTCCCGGCTGACCATCTCCAAGGACACCTCCAAGAATCAGGTGGTGCTGACAATCACCAACATGGACCCTGTGGACACCGCCACCTACTACTGCGCCAGAGTGATCTACTACGGCTCCAGATCCGCCTACTACTCCATGGATTATTGGGGCCAGGGCACCACCGTGACCGTGTCCTCTGCTTCTACAAAGGGCCCCTCTGTGTTCCCTCTGGCTCCTTCCTCTAAATCCACCTCTGGCGGAACCGCTGCTCTGGGCTGTCTCGTGAAGGATTACTTCCCTGAGCCTGTGACAGTGTCCTGGAATAGCGGTGCTCTGACATCCGGCGTGCACACCTTTCCAGCTGTGCTGCAGTCCTCTGGCCTGTACTCTCTGTCCTCTGTCGTGACAGTGCCTTCCAGCTCTCTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAACCCAAGTCCTGCGACAAGACCCACACCTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAAGCTGCTGGCGCTCCCTCCGTGTTTCTGTTCCCTCCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCTCGGACCCCTGAAGTGACCTGCGTGGTGGTGGATGTGTCTCACGAGGATCCCGAAGTGAAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGAGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCTCCTATCGAAAAGACCATCAGCAAGGCTAAGGGCCAGCCTCGGGAACCTCAGGTTTACACCCTGCCTCCATCTCGGGAAGAGATGACAAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTCTACCCTTCCGACATTGCCGTGGAATGGGAGTCCAATGGCCAGCCTGAGAACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGGACTCCGACGGCTCATTCTTCCTGTACTCCAAGCTGACAGTGGACAAGTCTCGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCTCCTGTTCTGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCCCTGTCTCTGTCCCCTGGCAAGTGATGA
>PA015_LC(配列番号41)
ATGGGCTGGTCCTGCATCATTCTGTTTCTGGTGGCTACCGCCACCGGCGCTCATTCTGATGTGGTCATGACACAGACCCCTCTGAGCCTGTCTGTGACACCTGGACAGCCTGCCTCCATCTCCTGCAAGTCCTCTCAGTCCATCGTGCACAGCAACGCCCACACCTACCTGGAATGGTATCTGCAGAAGCCCGGCCAGTCTCCTCAGCTGCTGATCTACAAGGTGTCCAACAGATTCTCTGGCGTGCCCGACAGATTCAGCGGCTCTGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGAAGATCTCTAGAGTGGAAGCCGAGGACGTGGGCGTGTACTACTGTTTCCAAGGCTCTCACGTGCCCGTGACCTTTGGCCAGGGAACAAAGCTGGAAATCAAGCGGACCGTGGCCGCTCCTTCCGTGTTCATCTTTCCACCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCCGGCACAGCTTCTGTCGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCTCGGGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAAGTGGATAATGCCCTGCAGTCCGGCAACTCCCAAGAGTCTGTGACCGAGCAGGACTCCAAGGACTCTACCTACTCTCTGTCCTCCACACTGACCCTGTCCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGTGAAGTGACCCACCAGGGACTGTCTAGCCCCGTGACCAAGTCTTTCAACCGGGGCGAGTGCTGATGA
【実施例】
【0133】
実施例1:抗KLRG1抗体の生成
PA015抗体は、KLRG1の細胞外ドメインに対するヒト化IgG1抗体である。ヒトKLRG1に対するマウスモノクローナル抗体(MAB)を、ヒト及びカニクイザルKLRG1による雌B ALB/cマウス及びSJLマウスの標準免疫化、ならびにその後ハイブリドーマのスクリーニングによって生成した。多様な数の抗体ヒットを生成するために、いくつかの免疫戦略が採用されてきた。簡潔に述べると、SJL及びBalb/cマウスを、cDNA、組換え抗原、または目的の抗原を発現するCHO細胞のいずれかで繰り返し免疫化させた。抗原特異的抗体力価をELISAによって定期的に監視し、適切な力価、通常は1:1000~1:10000の希釈因子に到達したときに動物を屠殺した。屠殺したマウスの脾細胞をマウス骨髄腫細胞に融合させて、ハイブリドーマ細胞を産生し、その後培養し、単一細胞にサブクローニングした。安定したクローンをスケールアップし、条件培地を収集し、ELISA及びFACSによって抗KLRG1抗体の発現について試験した。
【0134】
実施例2:ヒトKLRG1を発現するCHOK1細胞へのPA015結合。
細胞発現ヒト及びカニクイザル-KLRG1への抗KLRG1モノクローナル抗体の結合をFACSによって実行する。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を安定的にトランスフェクトして、完全長ヒトKLRG1(CHOK1-hKLRG1)を発現させる。CHOK1-hKLRG1発現細胞を培養し、様々な濃度のPA015または対照ヒトIgG1のいずれかとともにインキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、上清を廃棄し、インキュベーション緩衝液(HBSS+2%FBS+10mM Ca2+)で洗浄した。細胞を再懸濁し、抗ヒトIgG-Alexa488とともにインキュベートし、洗浄し、再懸濁し、FACS試験を行った。PA015及び対照ヒトIgG1とともにインキュベートされた細胞の平均蛍光強度(MFI)を
図1に示す。PA015のEC50は、1.33nMであった。
【0135】
実施例3:相対結合アッセイにおいて、KLRG1を発現するCHOK1細胞へのE-カドヘリン結合のPA015阻害。
E-カドヘリン/KLRG1結合を阻害するモノクローナル抗体の能力をFACSによって測定する。
【0136】
CHOK1-hKLRG1発現細胞を培養し、様々な濃度のPA015または対照ヒトIgG1のいずれかとともにインキュベートした。次いで、0.3μMの組換えヒトE-カドヘリン-ECD-FC-ビオチンを添加し、インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離し、上清を廃棄し、インキュベーション緩衝液(HBSS+2%FBS+10mM Ca2+)で洗浄した。細胞を再懸濁し、ストレプトアビジン-Alexa488とともにインキュベートし、洗浄し、再懸濁し、FACS試験を行った。PA015及び対照ヒトIgG1とともにインキュベートされた細胞の平均蛍光強度(MFI)を
図2に示す。IC50値を、0.1~100nMのモノクローナル抗体の濃度を変化させる関数としてE-カドヘリン結合の喪失を監視することによって決定する。E-カドヘリン結合のPA015阻害のIC50は、8.05nMであった。
【0137】
実施例4:HG1N02と比較したPA015の優れた純度
実施例4~6は、本明細書に記載される抗体PA015及びHG1N02と命名される抗体を指す。HG1N02は、WO2020/060781に記載される抗KLRG1抗体である。
【0138】
PA015及びHG1N02は、ExpiCho発現システム(Thermo Fisher)を使用して1Lスケールで産生された。還元キャピラリー電気泳動(rCE)及び非還元キャピラリー電気泳動(nrCE)を行い、3つの独立した実験で主要ピークの割合を測定した。結果は、HG1N02と比較して、PA015の、CHO細胞産生中の優れた純度を示す(表3)。
【表3】
【0139】
実施例5:HG1N02と比較したPA015の優れた熱特性(溶融及び凝集温度)
PA015及びHG1N02は、ExpiCho発現システム(Thermo Fisher)を使用して1Lスケールで産生された。融解温度(Tm)を全スペクトル蛍光によって測定し、小分子凝集塊形成(Tagg266)及び大分子凝集塊形成(Tagg473)を、3つの独立した実験において、4時間、7日目、及び28日目の時点で、UNCLE(Unchained Labs,Inc.)を使用して、静的光散乱(SLS)によって測定した。結果は、HG1N02と比較して、PA015について優れた熱特性(より高い融点及び凝集温度)を示す(表4)。
【表4】
【0140】
実施例6:HG1N02と比較したPA015のストレス試験後の優れた熱特性(溶融及び凝集温度)
PA015及びHG1N02を、熱ストレス、低pH、及び高pHストレスによるストレス試験に4時間、7日間、及び28日間供した。融解温度(Tm)を全スペクトル蛍光によって測定し、小分子凝集塊形成(Tagg266)及び大分子凝集塊形成(Tagg473)を、4時間、7日目、及び28日目の時点で、UNCLE(Unchained Labs,Inc.)を使用して、静的光散乱(SLS)によって測定した。結果は、HG1N02と比較して、PA015のストレス試験後の熱特性(より高い融点及び凝集温度)の優れた安定性を示す(表5~7)。
【表5】
【表6】
【表7】
【0141】
実施例7:PA015は、相対結合アッセイにおいて、KLRG1を発現するCHOK1細胞に対する、E-カドヘリンの、HG1N01及びHG1N02と比較して優れた遮断を有する。
CHOK1-hKLRG1発現細胞を培養し、様々な濃度のPA015、HG1N01、HG1N02または対照ヒトIgG1とともにインキュベートした。次いで、0.3μMの組換えヒトE-カドヘリン-ECD-FC-ビオチンを添加し、インキュベートした。細胞を遠心分離し、上清を廃棄し、インキュベーション緩衝液(HBSS+2%FBS+10mM Ca2+)で洗浄した。細胞を再懸濁し、ストレプトアビジン-Alexa488とともにインキュベートし、洗浄し、再懸濁し、FACS試験を行った。抗体とともにインキュベートされた細胞の平均蛍光強度(MFI)を
図3に示す。IC50は、PA015では5.3nM、HG1N01では8.3nM、HG1N02では7.9nMであった。
【0142】
実施例8:PA015は、FACS結合アッセイにおいて、HG1N02と比較して、ヒトCD8+T細胞に対する優れた結合を有する。
3人の健康なドナーからの磁気分離によってヒトCD8+T細胞を単離し、様々な濃度のPA015、HG1N02、または対照ヒトIgG1とともにインキュベートし、蛍光標識された抗ヒトIgG二次抗体とともに検出した。陽性細胞の割合及びEC50値を
図4に示す。
【0143】
実施例9:PA015は、非ヒト霊長類において、HG1N01と比較して優れた薬物動態特性を有する。
PA015及びHG1N01(3mg/kg)を、各々2匹のカニクイザルに単一用量として静脈内投与した。各抗体の血清濃度を42日間にわたって測定した(
図5及び
図6)。HG1N01と比較したPA015は、優れたクリアランス(6.99対38.6mL/日/kg)、曲線下面積(AUC;429対77.6日*ug/mL)、及びベータ半減期(6.23対4.7日)を実証する(表8及び9)。
【表8】
【表9】
【0144】
実施例10:PA015は、HG1N02と比較して脱アミド化特性を改善している。
HG1N02は、理論上の脱アミド化リスク(軽鎖残基N33におけるNG)を有する。しかしながら、臨床的に承認された131の治療用mAbの研究(Lu Y et al.MAbs.2019 Jan;11(1):45-57)において、CDR NG部位の48%(13/27)は、ストレス条件下で実際に脱アミド化を有しないため、配列は、実際に脱アミド化の発現を予測しない。非ストレスPA015及びHG1N02のトリプシンペプチドマッピングは、PA015が、キーN33軽鎖CDR残基でのHG1N02よりも少ない脱アミド化を有することを示した(
図7)。参照による引用
【0145】
本明細書で言及されるありとあらゆる米国及び外国特許ならびに係属中の特許出願及び公開の開示は、配列表及び図の内容と同様に、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。PCT/US2019/050110(WO2020060781として公開されている)の教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0146】
等価物
当業者は、本明細書に記載され、添付の図面に示される開示が非限定的な例示的な実施形態であり、本開示の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して示されるまたは説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられ得る。かかる変更及び変形は、本開示の範囲内に包含されることが意図される。当業者は、本明細書に記載の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。任意の複数の従属請求項または実施例に開示される実施形態の任意の組み合わせは、本開示の範囲内であると企図される。
【0147】
他の実施形態
上記の説明から、本明細書に記載の本発明に、同じまたは類似のタンパク質配列を有する本発明の抗体を発現させるための、異なるシグナル配列及び核酸配列の使用を含む、様々な利用及び条件に本発明を適用させるように、変形及び変更がなされ得、本発明の範囲内であるとみなされることが明らかであろう。本発明による他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0148】
本明細書の変数の任意の定義における要素のリストの列挙は、任意の単一の要素または列挙された要素の組み合わせ(またはサブ組み合わせ)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態として、または任意の他の実施形態もしくはその部分と組み合わせてその実施形態を含む。
【0149】
本明細書に記載される全ての刊行物及び特許出願は、本開示が関連する当業者の技術レベルを示す。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4を含む重鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号13、配列番号19、配列番号25、配列番号31、及び配列番号37からなる群から選択されるCDR-L1と、配列番号14、配列番号20、配列番号26、配列番号32、及び配列番号38からなる群から選択されるCDR-L2と、配列番号15、配列番号21、配列番号27、配列番号33、及び配列番号39からなる群から選択されるCDR-L3と、を含む軽鎖をさらに含む、請求項1に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDR-L1、前記CDR-L2、及び前記CDR-L3が、それぞれ配列番号13、配列番号14、及び配列番号15、それぞれ配列番号19、配列番号20、及び配列番号21、それぞれ配列番号25、配列番号26、及び配列番号27、それぞれ配列番号31、配列番号32、及び配列番号33、またはそれぞれ配列番号37、配列番号38、及び配列番号39である、請求項2に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号5を含む軽鎖可変領域を含む、KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号10、配列番号16、配列番号22、配列番号28、配列番号34からなる群から選択されるCDR-
H1と、配列番号11、配列番号17、配列番号23、配列番号29、配列番号35からなる群から選択されるCDR-
H2と、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30、配列番号36からなる群から選択されるCDR-
H3と、を含む重鎖をさらに含む、請求項4に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項6】
CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3が、それぞれ配列番号10、配列番号11、及び配列番号12、それぞれ配列番号16、配列番号17、及び配列番号18、それぞれ配列番号22、配列番号23、及び配列番号24、それぞれ配列番号28、配列番号29、及び配列番号30、またはそれぞれ配列番号34、配列番号35、及び配列番号36である、請求項5に記載の抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項7】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号4を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号5を含む軽鎖可変領域と、を含む、前記抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項8】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ配列番号8を含む重鎖を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項9】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ配列番号9を含む軽鎖を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項10】
KLRG1の細胞外ドメインに特異的に結合し、かつ
(a)配列番号8を含む重鎖と、
(b)配列番号9を含む軽鎖と、を含む、抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗原結合断片が、F(ab)断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗原結合断片が、F(ab
2)断片である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体、またはその抗原結合断片が、二重特異性である、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体、または抗原結合断片。
【請求項14】
がんを治療する方法であって、がん患者に、先行請求項のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記がん患者にチェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記チェックポイント阻害剤の前記投与が、前記抗体、またはその抗原結合断片の投与と同時に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チェックポイント阻害剤が、前記抗体、またはその抗原結合断片の1日、1週間、または1ヶ月以内に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳腫瘍、原発性脳腫瘍、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌、小細胞肺癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚部癌、精巣癌、膀胱癌、膵臓癌腫、胃癌、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌、甲状腺癌、食道癌、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌、腎細胞癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頚部過形成、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫のうちの1つ以上である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
補助療法であって、チェックポイント阻害剤で治療を受けている対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片を投与して、それによって前記補助療法を実施することを含む、前記補助療法。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体、またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項21】
配列番号40を含む、請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項22】
配列番号41を含む、請求項20に記載の単離された核酸。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか1項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項24】
請求項23に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【国際調査報告】