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特表2024-515173中間温度域で高いCO2吸収効果を発揮する二酸化炭素吸収材料とその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】中間温度域で高いCO2吸収効果を発揮する二酸化炭素吸収材料とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/08 20060101AFI20240329BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240329BHJP
   B01J 20/06 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B01J20/08 A
B01J20/30
B01J20/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562821
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2022015744
(87)【国際公開番号】W WO2022224762
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202121018578
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(71)【出願人】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】バラゴパル エヌ. ナイル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシャク ヴィジャヤン
(72)【発明者】
【氏名】デヴィカ スレンドラン
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル アゼーズ ピア モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ウニクリシュナン ナイル サラワシー ハリーシュ
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA18B
4G066AA30B
4G066AA43D
4G066AA53D
4G066BA09
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA02
4G066FA02
4G066FA21
4G066FA37
4G066GA14
(57)【要約】
ここに開示される技術は、CO吸収特性が改善された二酸化炭素吸収材料を提供する。かかる二酸化炭素吸収材料製造方法は、ケイ酸リチウム粒子または亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を準備すること、第1の粉末と、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子を含む第2の粉末とを混合し、ケイ酸リチウム粒子または亜鉛酸リチウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合化粒子を含む粉末を得ること、炭酸マグネシウム粒子を含む第3の粉末と、第2の粉末とを混合し、炭酸マグネシウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第2の複合化粒子を含む粉末を得ること、および、第1の複合化粒子を含む粉末と第2の複合化粒子を含む粉末とを混合し、第1の複合化粒子と第2の複合化粒子とが凝集した二酸化炭素吸収能を有する凝集物を含む混合粉末を得ること、を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素吸収材料の製造方法であって、
ケイ酸リチウム粒子または亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を準備すること、
前記第1の粉末と、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子を含む第2の粉末とを混合し、前記ケイ酸リチウム粒子または前記亜鉛酸リチウム粒子の表面に前記アルカリ炭酸塩粒子および前記アルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合化粒子を含む粉末を得ること、
炭酸マグネシウム粒子を含む第3の粉末と、前記第2の粉末とを混合し、前記炭酸マグネシウム粒子の表面に前記アルカリ炭酸塩粒子および前記アルカリ硝酸塩粒子が凝集した第2の複合化粒子を含む粉末を得ること、および、
前記第1の複合化粒子を含む粉末と前記第2の複合化粒子を含む粉末とを混合し、前記第1の複合化粒子と前記第2の複合化粒子とが凝集した二酸化炭素吸収能を有する凝集物を含む混合粉末を得ること、
を包含する、二酸化炭素吸収材料の製造方法。
【請求項2】
前記混合粉末の全体を100wt%としたとき、
前記第1の粉末と前記第3の粉末との合計割合は、50wt%以上95wt%以下であり、
前記第1の粉末の割合は5wt%以上60wt%以下であり、
前記第3の粉末の割合は、5wt%以上60wt%以下である、
請求項1に記載の二酸化炭素吸収材料の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ炭酸塩粒子および前記アルカリ硝酸塩粒子のうち少なくともどちらか一方は、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分およびリチウム(Li)成分のうち2種以上を含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素吸収材料の製造方法。
【請求項4】
前記第2の粉末は、共晶炭酸/硝酸塩粒子を含む、請求項3に記載の二酸化炭素吸収材料の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記凝集物を含む混合粉末を熱処理することを包含する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収材料の製造方法。
【請求項6】
二酸化炭素を吸収・脱着可能な粉末であって、
第1の粒子が複数集合してなる第2の粒子を含み、
前記第1の粒子は、
少なくともケイ酸リチウムを含むアルカリケイ酸塩または少なくとも亜鉛酸リチウムを含むアルカリ亜鉛酸塩と、
アルカリ炭酸塩と、
アルカリ硝酸塩と、
少なくとも炭酸マグネシウムを含むマグネシウム含有化合物と
を含有する、二酸化炭素吸収材料。
【請求項7】
前記アルカリケイ酸塩に含まれるケイ素(Si)成分と、前記マグネシウム含有化合物に含まれるマグネシウム(Mg)成分との合計を100mol%としたとき、前記ケイ素(Si)成分の割合は、10mol%以上85mol%以下である、請求項6に記載の二酸化炭素吸収材料。
【請求項8】
前記アルカリ亜鉛酸塩に含まれる亜鉛(Zn)成分と、前記マグネシウム含有化合物に含まれるマグネシウム(Mg)成分との合計を100mol%としたとき、前記亜鉛(Zn)成分の割合は、5mol%以上80mol%以下である、請求項6に記載の二酸化炭素吸収材料。
【請求項9】
前記第1の粒子は、フレーク状またはロッド状の少なくともどちらか一方の形態を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収材料。
【請求項10】
前記アルカリ炭酸塩および前記アルカリ硝酸塩のうち少なくとも一方は、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分およびリチウム(Li)成分のうち2種以上を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収材料。
【請求項11】
前記アルカリ炭酸塩および前記アルカリ硝酸塩は共晶を形成している、請求項10に記載の二酸化炭素吸収材料。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸収材料の熱処理物である、二酸化炭素吸収材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中間温度域において二酸化炭素の吸収特性に優れた二酸化炭素吸収材料とその製造方法に関する。本出願は2021年4月22日に出願されたインド国特許出願第202121018578号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)は、地球温暖化ガスとなることから、排出量の大幅な削減が迫られている。そこで、火力発電所や工場、自動車等から排出される排気ガスからCOを選択的に分離、回収する材料や技術の開発が求められている。これまでにも、例えば、多孔質材料、CO吸収能を有するアミノ基等を導入した化学吸収材料、金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks:MOFs)、炭素質材料、酸化マグネシウム材料、アルカリ金属炭酸塩等からなるCO吸着材料/吸収材料が提案されている。
【0003】
これらの材料は、耐熱性が低いことや、その物理的吸着特性等から、その多くが室温から200℃以下の低温環境でCO吸収材料として利用されている。一方で、上記のうちでもアルカリ金属炭酸塩からなるCO吸収材料は、400℃を超える高温での使用が可能なことから、高温環境で使用し得るCO吸収材料として期待されている。例えば、リチウム成分およびケイ素成分を含むゾル状組成物に電磁波を照射して調製したケイ酸リチウムは、概ね600℃以上の温度範囲で優れたCO吸収特性を発揮することができ、さらにアルカリ炭酸塩を組み合わせることにより、概ね400℃~600℃の温度域のCO吸収特性が改善される(日本国特許第6596567号公報およびChemical Engineering Journal 406 (2021) 126731)。
【発明の概要】
【0004】
ところで、環境中に排出されるCO量を削減するために、中間温度域(例えば200℃~400℃程度)で優れたCO吸収特性を有するCO吸収材料の開発が望まれている。上述のケイ酸リチウムを用いた従来技術では、かかる中間温度域でのCO吸収特性にはさらなる改善の余地がある。また、酸化マグネシウムをベースとしたCO吸収材料は、350℃~450℃の中間温度域で優れたCO吸収容量を有することが報告されている(米国特許第6280503号明細書)。しかしながら、本発明者らの検討により、かかるCO吸収材料には、耐久性を向上させる余地、および、COの吸収・脱着の温度範囲をさらに下げる余地があることが見出された。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、CO吸収特性がより改善された二酸化炭素吸収材料を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる二酸化炭素吸収材料を製造する方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するべく、ここで開示される技術は、ケイ酸リチウムまたは亜鉛酸リチウムと、アルカリ炭酸塩と、アルカリ硝酸塩と、炭酸マグネシウムとを含む二酸化炭素(CO)吸収材料の製造方法を提供する。この製造方法は、ケイ酸リチウム粒子または亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を準備すること、上記第1の粉末と、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子を含む第2の粉末とを混合し、上記ケイ酸リチウム粒子または上記亜鉛酸リチウム粒子の表面に上記アルカリ炭酸塩粒子および上記アルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合化粒子を含む粉末を得ること、炭酸マグネシウム粒子を含む第3の粉末と、上記第2の粉末とを混合し、上記炭酸マグネシウム粒子の表面に上記アルカリ炭酸塩粒子および上記アルカリ硝酸塩粒子が凝集した第2の複合化粒子を含む粉末を得ること、および、上記第1の複合化粒子を含む粉末と上記第2の複合化粒子を含む粉末とを混合し、上記第1の複合化粒子と上記第2の複合化粒子とが凝集した二酸化炭素吸収能を有する凝集物を含む混合粉末を得ること、を包含する。
かかる構成によると、特に中間温度域でCO吸収特性がより改善された二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0006】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料製造方法の好適な一態様では、上記混合粉末の全体を100wt%としたとき、上記第1の粉末と上記第3の粉末との合計割合は、50wt%以上95wt%以下であり、上記第1の粉末の割合は5wt%以上60wt%以下であり、上記第3の粉末の割合は、5wt%以上60wt%以下である。かかる構成により、特に中間温度域でのCO吸収容量がより改善された二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0007】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料製造方法の好適な一態様では、上記アルカリ炭酸塩粒子および上記アルカリ硝酸塩粒子のうち少なくともどちらか一方は、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分およびリチウム(Li)成分のうち2種以上を含む。また、上記第2の粉末は共晶炭酸/硝酸塩粒子を含み得る。かかる構成により、特に中間温度域でのCO吸収容量がさらに改善された二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0008】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料製造方法の好適な一態様では、さらに、上記凝集物を含む混合粉末を熱処理することを包含する。これにより、より二酸化炭素吸収特性が向上した活性化状態の二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0009】
他の側面において、ここに開示される技術は、二酸化炭素吸収材料を提供する。この二酸化炭素吸収材料は、二酸化炭素を吸収・脱着可能な粉末であって、第1の粒子が複数集合してなる第2の粒子を含み、上記第1の粒子は、少なくともケイ酸リチウムを含むアルカリケイ酸塩または少なくとも亜鉛酸リチウムを含むアルカリ亜鉛酸塩と、アルカリ炭酸塩と、アルカリ硝酸塩と、少なくとも炭酸マグネシウムを含むマグネシウム含有化合物とを含有する。かかる構成によれば、ケイ酸リチウムまたは亜鉛酸リチウムによるCO吸収反応がより低温の温度域で促進される。これにより、特に中間温度域でのCO吸収容量を改善することができる。
【0010】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料の好適な一態様では、上記アルカリケイ酸塩に含まれるケイ素(Si)成分と、上記マグネシウム含有化合物に含まれるマグネシウム(Mg)成分との合計を100mol%としたとき、上記ケイ素(Si)成分の割合は、10mol%以上85mol%以下である。かかる構成によれば、中間温度域でのCO吸収容量がより改善される。
【0011】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料の好適な一態様では、上記アルカリ亜鉛酸塩に含まれる亜鉛(Zn)成分と、上記マグネシウム含有化合物に含まれるマグネシウム(Mg)成分との合計を100mol%としたとき、上記亜鉛(Zn)成分の割合は、5mol%以上80mol%以下である。かかる構成によれば、中間温度域でのCO吸収容量がより改善される。
【0012】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料の好適な一態様では、上記第1の粒子は、フレーク状およびロッド状の少なくともどちらか一方の形態を有する。かかる構成によれば、第2の粒子に空隙が形成され易くなるため、COと接する表面積が増大する。これにより、COの吸収および脱着がより起こり易くなるため、CO吸収特性がより改善される。
【0013】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料の好適な一態様では、上記アルカリ炭酸塩および上記アルカリ硝酸塩のうち少なくとも一方は、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分およびリチウム(Li)成分のうち2種以上を含む。特に、上記アルカリ炭酸塩および上記アルカリ硝酸塩は共晶を形成していることが好ましい。かかる構成により、中間温度域におけるCO吸収容量がより一層改善される。
【0014】
また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料は、上述のここに開示される二酸化炭素吸収材料の熱処理物としても提供される。これにより、よりCO吸収特性が向上した活性化状態の二酸化炭素吸収材料が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施形態に係るCO吸収材料の製造方法を説明するためのフロー図である。
図2図2は、第2の実施形態に係るCO吸収材料の製造方法を説明するためのフロー図である。
図3A図3Aは、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図3B図3Bは、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図3C図3Cは、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図3D図3Dは、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のCO吸収前のTEM像である。
図4図4は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)の動的TGA曲線である。
図5図5は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のCO等温吸着線である。
図6図6は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)の各温度における最大CO吸収容量を示すグラフである。
図7図7は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)における、300℃一定温度条件下での圧力スイングプロセスによるCOの吸収・脱着を示すグラフである。
図8図8は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)における、温度変化を伴う圧力スイングプロセスによるCOの吸収・脱着を示すグラフである。
図9図9は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)における、20%COガス雰囲気下における、COの吸収・脱着を示すグラフである。
図10図10は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のサイクル特性を示すグラフである。
図11図11は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)の、CO吸収前、CO吸収後、CO脱着後におけるXRDパターンである。
図12図12は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)の、CO吸収前、CO吸収後、CO脱着後におけるFT-IRパターンである。
図13図13は、一実施形態に係るCO吸収材料(LSME)のLSの混合比と、各混合比における動的TGA曲線から得られるCO吸収容量の最大値との関係を示すグラフである、
図14A図14Aは、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図14B図14Bは、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図14C図14Cは、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)のCO吸収前のFE-SEM像である。
図15図15は、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)の動的TGA曲線である。
図16図16は、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)の350℃一定温度条件下での圧力スイングプロセスによるCOの吸収・脱着を示すグラフである。
図17図17は、第2の実施形態に係るCO吸収材料(LZME)のLZの混合比と、各混合比における動的TGA曲線から得られるCO吸収容量の最大値との関係を示すグラフである、
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において数値範囲を示す「X~Y」との表記は、特にことわりの無い限り「X以上Y以下」を意味し、「XをこえてY未満」を包含する。
【0017】
図1および図2は、一実施形態に係る二酸化炭素(CO)吸収材料の製造方法を示すフロー図である。ここに開示される製造方法は、典型的には、ケイ酸リチウムまたは亜鉛酸リチウムと、アルカリ炭酸塩と、アルカリ硝酸塩と、少なくとも炭酸マグネシウムを含むマグネシウム化合物とを含むCO吸収材料を製造するものである
【0018】
ここに開示されるCO吸収材料の製造方法は、例えば図1および図2に示されるように、以下の(A)~(D)を含むことを特徴としている。
(A)ケイ酸リチウム粒子または亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を準備すること。
(B)上記第1の粉末と、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子を含む第2の粉末とを混合し、上記ケイ酸リチウム粒子または上記亜鉛酸リチウム粒子の表面に上記アルカリ炭酸塩粒子および上記アルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合化粒子を含む粉末を得ること。
(C)炭酸マグネシウム粒子を含む第3の粉末と、上記第2の粉末とを混合し、上記炭酸マグネシウム粒子の表面に上記アルカリ炭酸塩粒子および上記アルカリ硝酸塩粒子とが凝集した第2の複合化粒子を含む粉末を得ること。
(D)上記第1の複合化粒子を含む粉末と上記第2の複合化粒子を含む粉末とを混合し、上記第1の複合化粒子と上記第2の複合化粒子とが凝集した二酸化炭素吸収能を有する凝集物を含む混合粉末を得ること。
なお、必須の工程ではないが、ここに開示される製造方法は、上記の工程(D)に引き続き、下記の(E)を実施することもできる。
(E)得られた凝集物を含む混合粉末を熱処理すること。
なお、上述の(A)~(D)はここに開示される二酸化炭素吸収材料製造方法に含まれる要件を列挙したのであって、(A)、(B)、(C)、(D)の順序で行うことに限定するものではない。例えば、(C)、(A)、(B)、(D)の順序で行ってもよく、(A)と(C)を同時並行で実施してもよい。
以下、第1の実施形態として、ケイ酸リチウムを含むCO吸収材料について説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
(A)ケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末の準備
ここで準備するケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末は、二酸化炭素を吸収・脱着することができる成分である。典型的には、第1の粉末全体に対して、ケイ酸リチウム粒子の割合は90wt%以上であり、95wt%以上が好ましく、100wt%であり得る。
ケイ酸リチウムは、典型的には、以下の反応式:
LiSiO+CO → LiSiO+LiCO
に示される反応が生じることにより、雰囲気中のCOを吸収することができる。また、かかる反応は可逆反応であるため、ケイ酸リチウムはCOを脱着することができる。
【0020】
ケイ酸リチウムとしては、リチウム(Li)とケイ素(Si)と酸素(O)とを含む化合物を考慮することができる。典型的には、ケイ酸リチウムは、一般式:LiSi、ここで式中、x、yおよびzは、x+4y-2z=0を満たす正の実数;で表される各種の化合物であり得る。典型的には、任意の数のケイ酸イオンが連なったケイ酸塩アニオンと、リチウムカチオンとを含む形態の各種のケイ酸リチウムを考慮することができる。このようなケイ酸リチウムとしては、典型的には、オルトケイ酸リチウム(LiSiO)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)、二ケイ酸リチウム(LiSi)、メタ三ケイ酸リチウム(LiSi)、メタ四ケイ酸リチウム(LiSi11)等であってよい。またケイ酸リチウムは、これらの例に限定されることなく、例えば、LiSiO,LiSi,Li12SiO等に代表される化合物であってよい。これらはいずれか1種からなる単相であってもよいし、いずれか2種以上が組み合わされて含まれる混相であってもよい。ケイ酸リチウムは、殆どのものが、本質的にはSiO四面体またはSiの単体が連結した骨格(例えばSiO連結体)を有し、この四面体の空隙にLiのようなアルカリ金属元素がイオンとなって入っていると考えられる。
【0021】
ここに開示されるケイ酸リチウムは、上記のLiとSiとOとに加えて、他の元素(M)を含む化合物であってよい。かかる他の元素としてはCOの吸収および脱着条件において安定に存在し得る化合物を構成する元素である限り特に制限されない。例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等であってよく、また、ケイ素と同じ14族元素のゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb)等であってよい。このような14族元素は、ケイ酸リチウムの結晶構造においてSiと容易に置換し、比較的安定に存在し得るために好ましい。ケイ酸リチウムに含まれる他の元素の割合は厳密には限定されないものの、例えば、ケイ素(Si):他の元素(M)とのモル比が、1:0.001~1:0.5程度であることが好ましく、1:0.04~1:0.45がより好ましい。
【0022】
ここに開示されるCO吸収材料の代表的な一例として、CO吸収能の観点からは、オルトケイ酸リチウムがケイ酸リチウムの70mol%以上であることが好ましく、より好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上、例えば実質的に100mol%であるのが望ましい。以下、かかるケイ酸リチウムとして、例えば、実質的に、オルトケイ酸リチウムが100mol%である場合を例にして本教示についての説明を行う。なお、以上のケイ酸リチウムは、例えば、周辺環境等に依存してその組成が変化することが許容され得る。
【0023】
ケイ酸リチウムを含む第1の粉末は、市販品であっても、従来公知の方法で製造してもよいが、好ましくは、図1に示すように、以下の(A1)~(A3)を包含する方法により製造される。
(A1)リチウム(Li)成分とケイ素(Si)成分とを含むLi-Si前駆体化合物が水溶液中に分散されたゾル状組成物を用意すること。
(A2)ゾル状組成物に対し電磁波を照射してゲル状組成物を得ること。
(A3)ゲル状組成物を焼成してリチウムとケイ素とを含むケイ酸リチウムを得ること。
なお、図1および図2に(A1)~(A3)が示されているが、ここに開示される二酸化炭素吸収材料製造方法に必須の工程であることを示すことは意図していない。
【0024】
(A1)ゾル状組成物の用意
ケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末は、大略的には、Li-Si前駆体化合物を含むゾル状組成物を、ゲル化する湿式法により好ましく調製することができる。
ここでゾル状組成物とは、Li-Si前駆体化合物を分散質とし、少なくとも水を分散媒として含むコロイド水溶液であり得る。分散媒としての水は、蒸留水、イオン交換水、純水等であってよい。かかる分散媒は、水を主体とする限りにおいて、低級アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等)やエチレングリコール、アセトン等のケトン等の水溶性で低分子量の有機溶媒が混合されていてもよい。分散媒は、後述の加水分解の効率を高めるために、100質量%の水からなることが好ましい(すなわち、ゾル状組成物はハイドロゾルであり得る)。
【0025】
分散質としてのLi-Si前駆体化合物は、上記のケイ酸リチウムの原料となるリチウム成分とケイ素成分とを含み、脱水縮合反応、重縮合反応および焼成(加熱)などの処理により、上記ケイ酸リチウムを形成し得る各種の化合物であり得る。典型的には、リチウムとケイ素の水溶性溶解物が水酸化物等として析出した析出物であり得、これらは水和物や水和錯体の形態であってよい。また水酸化物等の析出物は、ゾル状態を維持し得る程度であれば脱水縮合していてもよい。換言すると、このLi-Si前駆体化合物は、ゾル状を呈するコロイド粒子であって、コロイド溶液を維持し得る大きさであればその粒径等は厳密には制限されない。例えば、Li-Si前駆体化合物の平均粒子径は、典型的には1nm~5μm程度であり、好ましくは3nm~3μm程度であり、より好ましくは10nm~1μm程度であり得る。かかる平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値を採用することができる。
【0026】
このようなゾル状組成物は、例えば、別途用意したLi-Si前駆体化合物を水等の分散媒に分散させることで調製してもよいし、上記Li-Si前駆体化合物が予め分散されているゾル状組成物を入手してもよいし、公知の燃焼法またはアーク法等の乾式法ないしは沈降法またはゲル法(ゾルゲル法を含む)等の湿式法を利用するなどして調製してもよい。
一例として、一般的なゾルゲル法によりゾル状組成物を調製する場合、リチウム塩とシリカアルコキシドとが溶解状態となり得る混合溶液中で、アルコキシドを水と接触させて加水分解を生じさせることにより、Li成分とSi成分とを含有する前駆体化合物をこの混合溶液中に形成することができる。なお、このとき、ゾル状組成物は水を分散媒とすることが好ましいことから、リチウム塩を溶解させた水溶液中にアルコキシドを少量ずつ添加することで、ゾル状組成物を調製するのがより好ましい。例えば、リチウム塩を溶かした水溶液を撹拌しながら、この水溶液中にシリカアルコキシドのアルコール溶液を加えることで、前駆体化合物を得ることができる。撹拌は、例えば、マグネチックスターラーや機械式撹拌機、あるいは超音波撹拌機のような他の手段を利用して実施することができる。
【0027】
かかる加水分解反応および縮合反応を進行させるに際し、反応速度(加水分解速度および縮合速度)を調整する目的で、塩酸等の酸やアンモニア等のアルカリを加水分解触媒として混合溶液中に加えるようにしてもよい。なお、かかる加水分解触媒は、反応溶液のpHを制御して、形成される前駆体化合物の一次粒径を調整する役割も果たし得る。
【0028】
リチウム塩としては、リチウムの酸化物や、加熱によって酸化物となり得る各種の化合物を用いることができる。具体的には、例えば、リチウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。好ましくは水溶性の各種塩であり得る。また、リチウムのアルコキシドを用いることもできる。
【0029】
シリカアルコキシドとしては、ゾルゲル法において用いることができる各種の化合物を特に制限なく使用することができる。例えば、具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1,2-ビストリメトキシシリルエタン、Si原子に1~4のアルコキシ基が結合したシリカアルコキシド、グリシジル基等の官能基を導入したシリカアルコキシド等を好ましく用いることができる。なかでもアルコキシシランを用いることが好ましく、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1,2-ビストリメトキシシリルエタン等に代表される、Si原子に1~4のアルコキシ基が結合したシリカアルコキシドが好ましい例として示される。特に好ましくは、テトラエトキシシラン(Si(OC:TEOS、オルトケイ酸テトラエチルともいう)、テトラメトキシシラン(Si(OCH:TMOS、オルトケイ酸テトラメチルともいう)、メチルトリメトキシシランである。これらはいずれか1種を単独で用いてもよいし、いずれか2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
なお、上記で例示したゾルゲル法以外のゾル状組成物の調製方法としては、例えば、下記の手法を採用することが例示される。例えば、ケイ素成分として、ゲル法シリカ(コロイダルシリカを含む)、沈降法シリカ、ヒュームドシリカ(シリカキセロゲル、シリカクリオゲルおよびシリカアエロゲルを含む)等のナノシリカ材料を使用して、上記と同様にゾル状組成物を調製することができる。特に限定されるものではないが、このようなシリカ材料とリチウム成分とが、例えば、水溶液中において互いに錯体を形成したり、加水分化反応および/または脱水縮合反応等により化合物を形成したりすることで、ここに開示されるゾル状組成物として好適に用いることができる。
【0031】
(A2)電磁波照射によるゲル状組成物の形成
次いで、用意したゾル状組成物に対して電磁波を照射することで、このゾル状組成物をゲル化してゲル状組成物を得る。ゾル状組成物に電磁波を照射することで、ゲル化をより好適に促進させるようにしている。撹拌の操作は必ずしも必要ではないが、ゾル状組成物のゲル化を均一に進行させる観点からは、ゾル状組成物を撹拌しながら電磁波を照射することがより好ましい。なお、電磁波照射を行わなくとも、ゾル状組成物を撹拌し続けることでゲル状組成物を得ることもできる。
【0032】
電磁波としては、超低周波、長波、中波、短波、マイクロ波(高周波)、赤外線、可視光線、紫外線、X線およびガンマ線のいずれを用いることも可能である。しかしながら、電磁波の照射効率の観点からは、ゾル状組成物を効果的に加熱し得る電磁波を採用することが好ましい。かかる観点において、マイクロ波(microwave)は、ゾル状組成物の分散媒としての水や、Li-Si前駆体化合物に含まれる結晶水や水和水等の水分子に直接吸収され、この水分子が発熱して、Li-Si前駆体化合物を加熱し得る。このマイクロ波加熱(誘電加熱)によると、Li-Si前駆体化合物を内部から、エネルギーロスを抑えて高速かつ選択的に加熱できるために好ましい態様であり得る。
【0033】
マイクロ波としてはその周波数(波長)や出力、照射時間等は特に制限されない。例えば、照射対象であるゾル状組成物がゲル化するに必要なエネルギー量を適切に供給し得るよう適宜決定することができる。例えば、波長が1mm以上1m以下であって、周波数が300MHz以上300GHz以下のマイクロ波を用いることが例示される。なお、周波数については、国際規格に基づき、2.45GHz帯のマグネトロンにより発生される高周波を利用することがより適切であり得る(地域によっては915MHz帯の高周波であってもよい)。また、例えば、出力については、加熱効率の観点から、300W~300kW程度とすることが適切であり、300W~10kW程度が好ましく、300W~2000W程度がより好ましく、500W~1600W程度が特に好ましい。
【0034】
また、照射時間は、出力やゾル状組成物の量および照射時の形態(マイクロ波の到達度)等を勘案して調整することができる。また、マイクロ波は、例えば、連続して所定の照射時間に亘って照射しても良いし、インターバルを介して複数回照射することもできる。マイクロ波照射の好ましい一形態としては、所定の出力のマイクロ波を、ゾル状組成物における分散媒が沸騰するまで照射し、次いでゾル状組成物を冷却したのち、再度所定の出力のマイクロ波を照射すること、を所定の回数繰り返すことである。ここで、分散媒が沸騰により揮発してしまった場合などには、必要に応じて分散媒を補填するようにしてもよい。マイクロ波の照射時間は、例えば、一つの例として、0.2~0.5モル程度のケイ酸リチウムを製造するに際し、2.45GHzで600W~1000W(例えば700W)のを、合計で1分間以上20分間以下(例えば4~12分間)程度照射することが例示される。
【0035】
(A3)ケイ酸リチウムの焼成
このようにして得られたゲル状組成物を乾燥し、焼成する。これにより、分散媒およびケイ酸リチウム以外の過剰な成分は完全に除去され、目的の固体状のケイ酸リチウムを得ることができる。なお、ゲル状組成物において加水分解反応および脱水縮合反応が完全に終了していない部位が含まれていても、これらの反応は焼成により促進され、ゲル状組成物は、典型的には結晶性の緻密な固体へと変化される。これにより、ケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末を得ることができる。
乾燥は、自然乾燥でもよいし、乾燥器を用いて乾燥してもよい。焼成は、一般的な加熱炉を用いて行ってもよい。さらに、乾燥と焼成とは組み合わせて行ってもよい。この場合、例えば、エアオーブン炉を用いたり、超臨界乾燥法、噴霧乾燥法、噴霧造粒法または噴霧熱分解法等を利用したりして実施することができる。これらの乾燥および焼成の手法は、いずれか一つを単独で実施してもよいし、互いに組み合わせて実施してもよい。
【0036】
焼成条件は、ゲル状組成物がケイ酸リチウムへと変化することができれば特に制限されない。例えば、アモルファスの状態にあるLi-Si前駆体化合物がケイ酸リチウムへと結晶し得る条件であればよい。具体的には、焼成温度をおよそ500℃以下とする場合は、ゲル状組成物の酸化が好適に進行するように、焼成雰囲気を酸素含有雰囲気(典型的には大気雰囲気)とすることが好ましい。また、焼成温度がおよそ500℃以上(超過)の場合は、焼成雰囲気は酸素含有雰囲気(典型的には大気雰囲気)であってもよいし、例えば、大気、窒素ガス、炭酸ガスあるいはこれらのうちの2種以上の混合ガスであってもよい。焼成の温度は、473℃よりも高い温度(好ましくは500℃以上)とするのが適切である。焼成温度については、700℃以上とするのがより好ましく、800℃以上とするのが特に好ましい。これにより、使用した原料に由来する余分な成分を除去することができるとともに、結晶性の高いケイ酸リチウムを得ることができる。焼成温度の上限は特に制限されないが、例えば1100℃以下、1000℃以下、典型的には900℃程度とすることができる。焼成時間は特に制限されないが、例えば、30分間以上5時間以下程度が適切であり、1時間以上5時間以下がより好ましく、2時間以上4時間以下とするのが特に好ましい。
【0037】
このようにして製造された第1の粉末に含まれるケイ酸リチウム粒子は、特殊な形態を有する粒子が集合して形成される粒子となり得る。かかる特殊な形態としては、異方性が高い形状であって、例えば、ロッド状、板状、鱗片状および花弁状等であり得る。このようなケイ酸リチウム粒子は、公知のゾルゲル法により製造したケイ酸リチウム粒子よりもCO吸収特性が高い。そのため、本実施形態においても、(A1)~(A3)によって製造されたケイ酸リチウム粒子を用いることで、よりCO吸収特性が改善された二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0038】
(B)第1の複合粒子を含む粉末の準備
上記(A)で得られたケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末と、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子を含む第2の粉末とを混合することにより、ケイ酸リチウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合粒子を含む粉末を得ることができる。アルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩は、ここに開示される二酸化炭素吸収材料のCO吸収温度域で軟化または液相となり得る。かかるアルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩の存在は、リチウム相へのCOの移動をスムーズにするものと考えられる。これにより、より低温側でのCOの吸収容量を大幅に拡大することができ、COの吸収速度も増大することができる。
【0039】
アルカリ炭酸塩としては、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)成分、セシウム(Cs)成分、フランシウム(Fr)成分等のアルカリ金属の炭酸塩を考慮することができる。これらはいずれか1種のアルカリ金属の炭酸塩であってもよいし、2種以上のアルカリ金属を含む炭酸塩であってもよい。
【0040】
アルカリ硝酸塩としては、ナトリウム(Na)成分、カリウム(K)成分、リチウム(Li)成分、ルビジウム(Rb)成分、セシウム(Cs)成分、フランシウム(Fr)成分等のアルカリ金属の硝酸塩を考慮することができる。これらはいずれか1種のアルカリ金属の硝酸塩であってもよいし、2種以上のアルカリ金属を含む硝酸塩であってもよい。
【0041】
ここに開示される技術においては、アルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩のうち少なくとも一方は、ナトリウム成分、カリウム成分、リチウム成分のうちいずれか1種以上を含むことが好ましく、いずれか2種以上を含むことがより好ましく、3種を含むことが特に好ましい。
【0042】
アルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩のうち少なくとも一方がLi,K,Naのうちの2種以上を含む混合系である場合、これらは、例えば固溶体結晶または共晶となるような割合で混合されていることが好ましい。固溶体である場合、アルカリ炭酸塩におけるNa、K、Liの割合は、下記のとおりであることが好ましい。かかる組成は、共晶組成をも含み得るものである。
Na:1mol%以上80mol%以下
K :1mol%以上70mol%以下
Li:1mol%以上90mol%以下
【0043】
アルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩が共晶である場合、共晶点はより低くなることから、CO吸収容量およびCO吸収速度が更に改善され得るために好ましい。K-Li系共晶炭酸/硝酸塩を形成する混合割合としては、KとLiとのモル比(K:Li)は60:40~40:60程度の範囲であることが好ましい。また、Na-Li系共晶炭酸/硝酸塩を形成する混合割合としては、NaとLiとのモル比(Na:Li)は55:45~45:55程度の範囲であることが好ましい。また、K-Na系共晶炭酸/硝酸塩を形成する混合割合としては、KとNaのモル比(K:Na)は65:35~75:25または35:65~25:75程度の範囲であることが好ましい。また、Na-K-Li系共晶炭酸/硝酸塩を形成する混合割合としては、NaとKとLiとのモル比(Na:K:Li)は約25~35:30~40:30~40程度の範囲であることが好ましい。
【0044】
なお、必ずしもこの例に限定されるものではないが、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子の平均粒子径としては、典型的には、50nm以上5μm以下程度が適切であり、100nm以上1μm以下が好ましく、200nm以上500nm以下が特に好ましい。かかる平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって測定することができる。
【0045】
第2の粉末は、典型的には、アルカリ炭酸塩粉末とアルカリ硝酸塩粉末とを含む粉末であり、典型的にはこれらが混合された粉末である。かかる混合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、乳鉢と乳棒による混合であってよく、ボールミルを用いた電動混合手段であってもよい。かかる混合は、乾燥状態で行ってもよく、分散媒を用いてもよい。分散媒としては、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等)や、水、アセトン等を用いることができる。混合後、必要に応じて乾燥を行ってもよい。かかる乾燥方法は、上述の(A3)に記載の乾燥方法と同様であってよい。かかる乾燥は、例えば、室温~150℃の温度で行うことができる。
【0046】
第2の粉末は、第1の粉末と混合する前に熱処理を行い、アルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩の共晶である共晶炭酸/硝酸塩(ECN:eutectic carbonate/nitrate)を形成していてもよい。即ち、第2の粉末は、アルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子として、共晶炭酸/硝酸塩粒子を含んでいてもよい。熱処理は、例えば、200℃~650℃の温度範囲で行えばよく、350℃~500℃の温度範囲であることが好ましい。熱処理時間は、例えば、30分~3時間とすればよい。
【0047】
第1の粉末と第2の粉末の混合方法は、上述のアルカリ炭酸塩粉末とアルカリ硝酸塩粉末との混合方法と同様であってよい。また、乾燥方法についても同様である。これにより、ケイ酸リチウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第1の複合粒子を含む粉末を得ることができる。
【0048】
(C)第2の複合化粒子を含む粉末の準備
上記第2の粉末と、炭酸マグネシウム粒子を含む第3の粉末とを混合することにより、炭酸マグネシウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第2の複合粒子を含む粉末を得ることができる。炭酸マグネシウムは、ここに開示される二酸化炭素吸収材料の低温におけるCOの吸収容量を向上させ得る成分である。
【0049】
第3の粉末に含まれる炭酸マグネシウム粒子としては、例えば、炭酸マグネシウム水和物、炭酸水酸化マグネシウム水和物、炭酸水酸化マグネシウム五水和物等の水和物粒子を用いることができる。
特に限定されるものではないが、炭酸マグネシウム粒子の平均粒子径としては、典型的には、50nm以上5μm以下程度が適切であり、100nm以上1μm以下が好ましく、200nm以上500nm以下が特に好ましい。かかる平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって測定することができる。
【0050】
第2の粉末と第3の粉末の混合方法は、上述のアルカリ炭酸塩粉末とアルカリ硝酸塩粉末との混合方法と同様であってよい。また、乾燥方法についても同様である。これにより、炭酸マグネシウム粒子の表面にアルカリ炭酸塩粒子およびアルカリ硝酸塩粒子が凝集した第2の複合化粒子を含む粉末を得ることができる。
【0051】
(D)第1の複合化粒子と第2の複合化粒子の凝集物の作製
得られた第1の複合化粒子を含む粉末と第2の複合化粒子を含む粉末とを混合することにより、第1の複合化粒子と第2の複合化粒子とが凝集した二酸化炭素吸収能を有する凝集物を含む混合粉末(即ち、ここに開示される二酸化炭素吸収材料)を得ることができる。なお、混合方法は、上述のアルカリ炭酸塩粉末とアルカリ硝酸塩粉末との混合方法と同様であってよい。また、乾燥方法についても同様である。
【0052】
このようにして得られる混合粉末(二酸化炭素吸収材料)には、第1の粉末と、第2の粉末と、第3の粉末とが含まれている。かかる混合粉末の合計を100wt%としたとき、第1の粉末と第3の粉末との合計割合が50wt%以上95wt%以下となるように配合することが好ましく、60wt%以上80wt%以下であることがより好ましく、65wt%以上75wt%以下であることがさらに好ましい。また、かかる混合粉末の合計に対する第1の粉末の割合は、5wt%以上60wt%以下が好ましい。また、第3の粉末の割合は5wt%以上60wt%以下であることが好ましい。さらに、第1の粉末がケイ酸リチウム粒子を含む場合では、第1の粉末の割合は、20wt%以上50wt%以下であることがより好ましく、30wt%以上50wt%以下であることがさらに好ましい。かかる割合とすることで、CO吸収容量がより向上した二酸化炭素吸収材料を製造することができる。なお、混合粉末中の、第1の粉末と第3の粉末との合計割合の残りの割合は、典型的には、第2の粉末の割合となる。
【0053】
(E)凝集物を含む混合粉末の熱処理
得られた混合粉末(二酸化炭素吸収材料)は、そのままの状態で使用してもよく、また、使用前に熱処理行ってもよい。熱処理をすることにより、混合粉末に含まれる成分がより二酸化炭素吸収特性が向上した活性化状態に変化し得るため好ましい。例えば、熱処理を行うことにより、上述したようにアルカリ炭酸塩とアルカリ硝酸塩とが固溶体または共晶を形成することができるため、より低い温度域で高いCO吸収特性を発揮することができる。また、熱処理により、炭酸マグネシウムは酸化マグネシウムに変化し得る。酸化マグネシウムは、ケイ酸リチウムよりも低い温度域でCO吸収能を発揮するため、より低い温度域(特に中間温度域)でCO吸収特性が改善される。
熱処理の条件は、例えば300℃~650℃の温度範囲で行うことが好ましく、350℃~500℃で行うことがより好ましい。なお、かかる熱処理を行わない場合であっても、ここに開示される二酸化炭素吸収材料の使用温度域が、典型的には100℃~650℃であるため、使用と共に活性化状態に変化し得る。
【0054】
上述のようにして得られた混合粉末(二酸化炭素吸収材料)には、第1の粒子が複数集合してなる第2の粒子が含まれる。第1の粒子は、少なくともケイ酸リチウムを含むアルカリケイ酸塩と、アルカリ炭酸塩と、アルカリ硝酸塩と、少なくとも炭酸マグネシウムを含むマグネシウム含有化合物とを含有している。
上述した第1の粉末に含まれるケイ酸リチウムは、一部がアルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩に含まれ得るリチウム以外のアルカリ成分(例えばカリウム、ナトリウム等)と塩を形成し、アルカリケイ酸塩となり得る。また、上述した第3の粉末に含まれる炭酸マグネシウムは、アルカリ硝酸塩と混合されることにより硝酸マグネシウム等の他のマグネシウム塩を形成し得る。また、炭酸マグネシウムは熱処理や、ここに開示される二酸化炭素吸収材料の使用温度域下で酸化マグネシウムに変化し得るため、第1の粒子はさらに酸化マグネシウムを含有し得る。
【0055】
ここに開示される二酸化炭素吸収材料に含まれるケイ素(Si)成分(典型的にはアルカリケイ酸塩に含まれるSi)と、マグネシウム(Mg)成分(例えば、マグネシウム塩及び酸化マグネシウムに含まれるMg)との合計を100mol%としたとき、ケイ素成分の割合は、5mol%以上85mol%以下であることが好ましく、20mol%以上75mol%以下であることがより好ましく、35mol%以上75mol%以下であることがさらに好ましい。かかる割合であれば、特に中間温度域(例えば、200℃~400℃)におけるCO吸収容量が改善される。なお、二酸化炭素吸収材料の組成の割合は、例えば、X線回折分析(X-ray diffraction analysis;XRD)に基づき算出することができる。
【0056】
第1の粒子の形態は、特に限定されるものではないが、球状、粒状、ロッド状、フレーク状等に成り得るが、フレーク状であることが好ましい。フレーク状の第1の粒子が集合することにより、第1の粒子同士が空隙を形成し易くなるため、COとの接触する表面積が増大する。これにより、CO吸収特性が改善されるため好ましい。例えば、上述のA1~A3の方法によれば、板状のケイ酸リチウム粒子を製造できる。かかるケイ酸リチウム粒子を用いることで、フレーク状の第1の粒子になり得る。なお、フレーク状とは、面方向(二次元)に大きく成長した結晶形態をいう。典型的には比較的平坦な薄板状の結晶である。ここで、結晶面内の長手方向の寸法をa、この長手方向に直交する一の厚み方向の寸法をbとしたとき、厚み方向の平均の寸法bは、概ね500nm以下であり、好ましくは300nm以下であり、特に好ましくは100μm以下であり得る。また、長手方向の平均の寸法aは、特に限定されないものの、概ね5μm以下程度であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500μm以下である。この板状結晶についてa/bで規定されるアスペクト比は、典型的には2以上であり、好ましくは3以上であり、例えば5以上、特に好ましくは10以上であり得る。このような特徴的な形態を有する粒子は、第1の粒子全体の50個数%以上、例えば70個数%以上、特に80個数%以上を占めることが好ましい。なお、第1の粒子はさらに微小な粒子が複数集合して形成された粒子であり得る。そのため、第1の粒子はかかる微小な粒子間に微細な空隙を内包していてもよい。第1の粒子の形態および個数の割合は、例えば、電界放出形走査型電子顕微鏡(field emission -scanning electron microscope : FE-SEM)等の電子顕微鏡観察によって分析することができる。
【0057】
第2の粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm以上20μm以下であって、5μm以上15μm以下であり得る。第2の粒子は、第1の粒子が複数集合してなり、典型的には空隙を有して集合している。なお、第2の粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって測定することができる。
【0058】
以上のようにして、CO吸収特性が改善された二酸化炭素吸収材料を得ることができる。また、ここに開示される技術では、第2の実施形態として、ケイ酸リチウム粒子を含む第1の粉末の代わりに、亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を用いた二酸化炭素吸収材料製造方法が提供される。
【0059】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、ケイ酸リチウム粒子の代わりに亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を用いる。亜鉛酸リチウムとしては、リチウム(Li)と亜鉛(Zn)と酸素(O)とを含む化合物を考慮することができる。典型的には、亜鉛酸リチウムは、一般式LixZnyOz、ここで式中x、yおよびzはx+2y-2z=0を満たす正の実数;で表される各種の化合物であり得る。典型的には、任意の数の亜鉛酸イオンが連なった亜鉛酸塩アニオンと、リチウムカチオンとを含む形態の各種の亜鉛酸リチウムを考慮することができる。このような亜鉛酸リチウムとしては、例えば、LiZnO、LiZnO等であってよい。これらはいずれか1種からなる単相であってもよいし、いずれか2種以上が組み合わされて含まれる混相であってもよい。
【0060】
亜鉛酸リチウムは、典型的には、COを吸収することで、炭酸化の程度に応じて他のLixZnyOz相(2z=x+2y;x=0とき、形成される化合物はZnO;yおよびzは常に0より大きい)を形成する。典型的な反応は、以下の反応式;
LiZnO+CO → LiZnO+LiCO
に示される。また、かかる反応は可逆反応であるため、亜鉛酸リチウムはCOを脱着することができる。そのため、亜鉛酸リチウムはLiZnOの割合が高いことが好ましく、例えば、70mol%以上であることが好ましく、より好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上、例えば実質的に100mol%であるのが望ましい。
【0061】
亜鉛酸リチウムは、市販のものを使用してもよく、従来公知方法に従って製造してもよい。製造方法の好適な一例としては、上述の(A1)~(A3)のケイ酸リチウムの製造方法に従えばよく、例えばケイ酸リチウムの製造方法に用いたSi源であるコロイダルシリカの代わりに、亜鉛塩を用いればよい。亜鉛塩としては、例えば硝酸亜鉛を好適に用いることができる。これにより、亜鉛酸リチウム粒子を含む第1の粉末を製造することができる。そして、かかる第1の粉末を用いて、上述の(A)~(D)を同様に実施することで、第2の実施形態に係る二酸化炭素吸収材料を製造することができる。なお、第1の実施形態と同様に上述の(E)を行ってもよい。
【0062】
このようにして得られる二酸化炭素吸収材料には、第1の粉末と、第2の粉末と、第3の粉末とが含まれており、亜鉛酸リチウムを含む二酸化炭素吸収材料における各粉末の好適な配合の割合は、上述の第1の実施形態と同様である。ただし、亜鉛酸リチウムを含む第1の粉末および第3の粉末との割合としては、第1の粉末の割合は、5wt%以上25wt%以下であることが好適である。かかる割合とすることで、特に中間温度域におけるCO吸収容量がより改善された二酸化炭素吸収材料を製造することができる。
【0063】
第2の実施形態に係る二酸化炭素吸収材料には、上述の第1の実施形態と同様に、第1の粒子が複数集合してなる第2の粒子が含まれる。第1の粒子は、少なくとも亜鉛酸リチウムを含むアルカリ亜鉛酸塩と、アルカリ炭酸塩と、アルカリ硝酸塩と、少なくとも炭酸マグネシウムを含むマグネシウム含有化合物とを含有している。
亜鉛酸リチウムは、一部がアルカリ炭酸塩およびアルカリ硝酸塩に含まれ得るリチウム以外のアルカリ成分(例えばカリウム、ナトリウム等)と塩を形成し、アルカリ亜鉛酸塩となり得る。
【0064】
第2の実施形態における第1の粒子は、球状、粒状、ロッド状、フレーク状等の様々な形態であり得る。このなかでも、ロッド状の第1の粒子が存在することが好ましく、例えば球状、粒状の粒子が集合して形成される空隙よりも、より大きな空隙が形成され得る。これにより、COと接する表面積が増大するためCO吸収特性が向上し得る。なお、ロッド状とは、一方向(一次元)に大きく成長した結晶形態をいう。ここで結晶の長手方向の寸法をa、この長手方向に直交する一の短手方向の寸法をbとしたとき、短手方向の平均の寸法bは、概ね500nm以下であり、好ましくは300nm以下であり、特に好ましくは200nm以下であり得る。また、a/bで規定されるアスペクト比は、典型的には2以上であり、例えば5以上であり得る。かかる寸法は、例えば電子顕微鏡観察に基づいて測定することができる。
【0065】
第2の実施形態における第2の粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm以上20μm以下であって、5μm以上15μm以下であり得る。第2の粒子は、第1の粒子が複数集合してなり、典型的には空隙を有して集合している。かかる平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって測定することができる。
【0066】
第2の実施形態に係る二酸化炭素吸収材料に含まれる亜鉛(Zn)成分(典型的にはアルカリ亜鉛酸塩に含まれるZn)と、マグネシウム(Mg)成分(典型的にはマグネシウム塩及び酸化マグネシウムに含まれるMg)との合計を100mol%としたとき、亜鉛成分の割合は、5mol%以上80mol%以下であることが好ましく、5mol%以上40mol%以下であることがより好ましく、5mol%以上25mol%以下であることがさらに好ましい。かかる割合であれば、特に中間温度域(例えば、200℃~400℃)におけるCO吸収容量が向上する。なお、二酸化炭素吸収材料の組成の割合は、例えば、XRDに基づき算出することができる。
【0067】
以上のようにして得られた二酸化炭素吸収材料は、例えば、100℃~650℃の温度領域で二酸化炭素吸収能を有し得る。特に150℃~450℃、さらに200℃~400℃の中間温度域でより好適なCO吸収容量を有する。また、ここに開示される二酸化炭素吸収材料は、COを選択的に吸収することができる。そのため、例えば、鉄鋼産業のブラスト炉や基本酸素炉からのCOの回収、発電所からの高温煙道ガスからのCOの回収、CO除去による水素生成のための水性ガスシフト反応の効率化等に用いられ得る。また、ここで開示される二酸化炭素吸収材料は、温度スイングプロセスとよばれる温度変化や、圧力スイングプロセスとよばれる雰囲気中のガスの分圧の変化によって、吸収した二酸化炭素を脱着することができる。これにより、ここに開示される二酸化炭素吸収材料は純粋なCOガスを製造することにも用いることができる。製造されたCOガスは、例えば、工業用や食品用に利用することができ得る。また、CO、メタン等の化学物質の原料として用いることができ得る。特に、ここに開示される二酸化炭素吸収材料は、例えば450℃以上の高温で吸収したCOを脱着することができるため、熱触媒によるメタンへの変換に好適に用いることができる。
【0068】
以下、ここで開示されるCO吸収材料の製造方法について、具体的な実施形態を示して説明を行う。しかしながら、ここに開示される技術を以下の例に限定することを意図するものではない。
【0069】
1-1.ケイ酸リチウム(LS)を含む第1の粉末の作製
硝酸リチウム(LiNO,Alfa Aesar製)とコロイダルシリカ(シグマアルドリッチ社製)を出発原料として、ここに開示される技術に従いケイ酸リチウム(オルトケイ酸リチウム)を合成した。
まず、11.5gの硝酸リチウム(LiNO)を蒸留水に溶解し、かかる硝酸リチウム水溶液を室温で撹拌しながら、pH8まで25%アンモニア溶液を加えることで加水分解を行った。この反応水溶液にコロイダルシリカ(SiOが2.5gとなるように)を滴下し、室温で1時間撹拌することで、ケイ酸リチウム前駆体が水溶液中に分散されたゾル状組成物を得た。次いで、このゾル状組成物に対し、2.45GHzで700Wの電子線を照射することで、脱水縮合反応を行った。電子線の照射には電子レンジを使用し、2分間の照射を5回行い、合計10分間行った。具体的には、電子線を2分間照射してゾル状組成物を沸騰させた後、休息期間を設けてゾル状組成物を室温にまで冷却し、沸騰により蒸発した分の水を初期量まで補填すること、を5回繰り返し行った。脱水縮合させたゲル状組成物(反応物)を110℃~150℃で乾燥し、800℃の大気雰囲気で3時間焼成することで、粉末を得た。このようにして得た粉末試料をLSと表記する。
【0070】
1-2.アルカリ炭酸/硝酸塩・ケイ酸リチウム複合化粒子の作製
CO粉末、KNO粉末およびNaNO粉末を準備し、KCO:KNO:NaNO=24:45:31の質量比となるように乳鉢と乳棒を用いて混合した。かかる質量比は、これらが共晶炭酸/硝酸塩を形成することができる配合である。次いで、この混合物をエアオーブン炉で80℃、30分間乾燥させた。このようにして得られた粉末を、以下、共晶炭酸/硝酸塩(ECN:eutectic carbonate/nitrate)と表記する。そして、0.42gのECNと、1gの得られたLS粉末とをイソプロパノール(IPA)中に分散させ、乳鉢と乳棒を用いて混合した後、エアオーブン炉で80℃、30分間乾燥させることで、粉末を得た。このようにして得られた粉末試料をLS+ECNと表記する。
【0071】
1-3.炭酸マグネシウム・アルカリ炭酸/硝酸塩・ケイ酸リチウム複合化粒子の作製
MgCO源としての1gの炭酸水酸化マグネシウム水和物((MgCO・Mg(OH)・xHO、シグマアルドリッチ社製、製品番号:227668、以下、この粉末を「MG」とも表記する)と、0.42gのECNとをIPA中に分散させ、乳鉢と乳棒を用いて混合した。次いで、エアオーブン炉で80℃、30分間乾燥させることで、粉末を得た。このようにして得られた粉末試料をMG+ECNと表記する。なお、上記炭酸水酸化マグネシウム水和物には、24wt%のMgが含まれているものを用いた。
0.5gのLS+ECN粉末と、0.5gのMG+ECN粉末とをIPA中に分散させ、乳鉢と乳棒を用いて混合した後、エアオーブン炉で80℃、30分間乾燥し、粉末を得た。このようにして得られた粉末試料をLSMEと表記する。かかるLSMEは重量比で、LS:MG:ECN=35:35:30であった。また、LSMEに含まれるSi成分とMg成分との合計に対するSi成分のモル比は44%であった。
【0072】
1-4.FE-SEM観察・TEM観察
得られたLSME粉末試料について、FE-SEMによる観察を行った。FE-SEM観察には、日本、株式会社日立ハイテク製のSU8230を用いた。得られたFE-SEM像を図3A図3Cに示す。また、LSME粉末試料について、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察を行った。TEM観察には、オランダ、FEI社製の300kVの高分解能TEM(High-resolution TEM:HR-TEM):Tecnai G30 S-Twinを用いた。得られたTEM像を図3Dに示す。
FE-SEM観察の結果、LSME粉末試料は、フレーク状の粒子が集合して、概ね5μm以上の直径の粒子を形成していることが確認できた。かかるフレーク状の粒子において、結晶面内の長手方向の平均長さは、概ね500nm以下であり、厚み方向の平均長さは、概ね100nm以下であった。また、かかる長手方向の平均長さと、厚み方向の平均長さとのアスペクト比は、確実に2以上であり、概ね5以上であった。また、TEM観察の結果、かかるフレーク状の粒子はさらに、概ね球状の粒子が集合して形成されていることがわかった。
【0073】
1-5.CO吸収特性
<動的吸収特性>
得られたLSME粉末試料の二酸化炭素吸収特性を、環境温度を変化させた動的な吸収特性として評価した。具体的には、所定量のLSME粉末試料にプローブ分子としてのCOを吸着させ、試料の温度を連続的に上昇させることによって生じる着脱ガス量を測定する熱重量分析(Thermogravimetric Analysis;TGA)により評価した。100%COガスを50ml/minの速度で供給し、昇温速度10℃/minで100℃~650℃の温度域で測定を行った。粉末試料の重量変化を測定し、粉末試料1gあたりのCO吸収容量(mg/g)を求めた。得られた動的TGA曲線を図4に示す。なお、かかる測定には、Perkin Elmer社製のSTA6000を用いた。
【0074】
図4に示すように、LSME粉末試料は、100℃~650℃の温度範囲でCO吸収能を有することが確認できた。また、昇温を伴う中で、150℃~450℃の温度範囲で優れたCO吸収容量を有していた。さらに、200℃~400℃の温度範囲より優れたCO吸収容量を有していることが確かめられた。
また、昇温により450℃を超えると、吸収されていたCOの脱着が生じることが確認できた。これにより、LSME粉末試料は、温度スイングプロセス(即ち、COガスの分圧の変化を伴わない温度変化)によってCOガスを脱着できることが確認できた。
【0075】
<等温的吸収特性>
次いで、LSME粉末試料の二酸化炭素の等温吸収特性を、測定温度を様々に変化させてTGAにより評価した。測定温度は、200℃、250℃および300℃に設定した。等温吸収試験には100%COガスを用い、LSME粉末試料を昇温速度10℃/minで所定の測定温度まで昇温したのち、100%CO気流下で60分間保持することで、当該温度でのCO吸収容量を測定した。得られた等温吸収曲線を図5に示す。なお、60分以降は、100%COガスを100%Nガスに置換し、350℃に昇温し、COガスを脱着させた。
図5からわかるように、200℃の場合であっても、例えば10分程度で、CO吸収容量が44mg/g以上(即ち1mmol/g以上)となり、さらに、20分程度でCO吸収容量が50mg/g以上となることが確かめられた。また、200℃~300℃の温度範囲において、高温になるほどCO吸収速度が向上し、CO吸収容量が向上することが確かめられた。
【0076】
次いで、LSME粉末試料の所定の温度におけるCO吸収容量をTGAにより測定した。具体的には、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、325℃、350℃、375℃および400℃に設定し、60分間後のCOガス吸収容量を測定した。また、各温度で4回試行し、その平均値のプロットおよびエラーバー示したグラフを図6に示す。
図6に示すように、200℃~400℃の温度範囲では、COガス吸収容量が40mg/g以上であり、200℃~375℃の温度範囲でCO吸収容量が44mg/g以上(即ち1mmol/g以上)であった。また、特に250℃~350℃の温度範囲では、100mg/g以上の優れたCO吸収容量が実現されることが確かめられた。
【0077】
<圧力スイング>
雰囲気中のガスの分圧を変化させること(圧力スイング)によるLSME粉末試料のCOガスの吸収・脱着特性をTGAにより評価した。具体的には、LSME粉末試料を300℃下に置き、100%COガスを50ml/minの速度で50分間供給した。その後、300℃を保持しながら、100%COガスを100%Nガスに変更した。得られた等温吸収曲線を図7に示す。
図7に示すように、供給されるガスがCOからNへと変更された後、LSME粉末試料は300℃の一定の温度下で、COガスを脱着したことが確かめられた。これにより、LSME粉末試料は一定の温度下の圧力スイングによりCOの吸収・脱着ができることが確かめられた。
【0078】
次いで、LSME粉末試料を350℃下に置き、100%COガスを50ml/minの速度で60分間供給した。その後、温度を300℃に変更するとともに、100%COガスを100%Nガスに変更した。得られたCO吸収曲線を図8に示す。
図8に示すように、CO吸収時の温度(350℃)よりもCO脱着時の温度(300℃)の方が低い場合であってもCOを脱着できることが確かめられた。また、図6からわかるように、CO吸収時の温度(350℃)よりもCO脱着時の温度(300℃)の場合の方が、CO吸収容量が大きい。このような場合であっても、供給されるCOガスをNガスへ変更する圧力スイングによりCOガスを脱着できることが確かめられた。
【0079】
<20%COガスに対する吸収特性>
20%COガスおよび80%Nガスで構成されるガスの気流下にLSME粉末試料を設置した。このときの温度を250℃とし、60分間保持した。その後、温度を350℃とし、100%Nガスへと切り替えた。得られたCO吸収曲線を図9に示す。
図9に示すように、LSME粉末試料は、COの割合が20%であってもCOを吸収することができ、250℃におけるCO吸収容量は44mg/g以上(即ち1mmol/g以上)であることが確かめられた。
【0080】
1-6.サイクル特性
LSME粉末試料に対し、COガスの吸収と脱着を300℃以上の高温で繰り返し行ったときの、CO吸収のサイクル特性を評価した。具体的には、TGA装置を用い、LSME粉末試料を300℃にまで加熱し、この温度で100%COガス気流下に60分間保持してCOガスを吸収させた。次いで、LSME粉末試料を350℃まで加熱し、この脱着温度で100%N気流下に30分間保持することでCOガスを脱離させた。このような吸収・脱着サイクルを4サイクル繰り返し、その時のLSME粉末試料の重量変化を調べた。その結果を図10に示す。
図10から明らかなとおり、LSME粉末試料は繰り返しCOの吸収と脱離を繰り返してもその吸収特性にばらつきがみられず、安定したサイクル特性を有することが確認できた。
【0081】
1-7.XRD
LSME粉末試料について、X線回折分析(X-ray diffraction analysis;XRD)を行った。かかる分析には、Cu Kα線(λ=0.154nm)を使用したX線小角散乱/広角回折セットアップ(フランス,Xenocs社製、Xeuss SAXS/WAXSシステム,2θ=15°~36°)を用いた。
かかる分析には、CO吸収前、CO吸収後およびCO脱着後(再生後)のLSME粉末試料を用いた。一つ目の試料では、COの吸収または脱着を行う前のLSME粉末試料をXRD分析に用いた(吸収前試料)。二つ目の試料では、LSME粉末試料に300℃下で100%COガスを供給し、COの吸収を60分間行った後、COガスを供給したまま室温まで冷却した。この試料を注意深く取り出し、XRDに用いた(吸収後試料)。三つ目の試料は、300℃下でCOの吸収を60分間行った後、温度を350℃に昇温し、COガスを脱着するために100%COガスの供給を100%Nガスに変更した。この試料をNガス供給下で室温まで冷却した後、注意深く取り出し、XRD分析に用いた(再生後試料)。得られたXRDパターンを図11に示す。
【0082】
XRDピークを以下のPDF(Pair Distribution Function)リファレンスナンバー:LiSiO:00-020-0637,LiSiO:00-015-0519,LiCO:00-022-1141,MgCO:00-008-0479,Mg(NO:00-019-0765,KMg(CO:01-075-1725,KNO:01-071-1558,NaNO:00-036-1474に基づいて相同定を行った。図11に示すように、CO吸収後には、LiSiOのピークに加え、LiCO、MgCOおよびKMg(COのような炭酸塩の相のピークが強くなった。また、上記炭酸塩のピークの割合は、CO脱着後には大きく減少していた。さらに、COガス吸収前およびCOガス脱着後では、LiSiOのピーク面積の割合は増大していた。このことから、LSME粉末試料は、COガスと反応することにより、LiSiO(ここで、LiSiO相も形成される)、MgCOおよびKMg(COを合成し、COガスを吸収できると考えられる。また、300℃付近の低温では、CO吸収によるLiSiO相からLiSiO相およびLiCO相への完全な変換(また、より重要な点では、CO脱着によるLiSiO層の形成)がほとんど達成されないことを考慮すると、LSME中で形成されたMgCO相およびKMg(CO相が、COがリチウム相へ拡散して出入りするパスウェイを形成するのに役立つと考えられる。したがって、LSMEの低温におけるCO吸収および脱着性能は材料の組み合わせの相乗効果によって生じるユニークなものである。類似のメカニズムは後述のLZMEの場合であっても同様と考えられる。
【0083】
1-8.FT-IR
LSME粉末試料をフーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared spectroscopy : FT-IR)により分析した。かかる分析には、Bruker社のαE FT-IR分光光度計を用いた。LSME粉末試料としては、上述のXRDで分析したものと同様のもの、即ち、XRD解析の試料と同様の条件により得られたCO吸収前のLSME粉末試料、300℃下でCOガス吸収後のLSME粉末試料、350℃下でCO脱着後のLSME粉末試料を用いた。得られたFT-IRパターンを図12に示す。
図12に示すように、CO吸収後のFT-IRパターンには、1435cm-1(約1300cm-1~1500cm-1の位置にある3本の点線のうちの真ん中の点線)および892cm-1(約800cm-1~900cm-1の位置にある2本の点線のうちの左側の点線)の位置にピークが見られた。その一方で、CO吸収前およびCO脱着後のFT-IRパターンには、かかる位置にピークはほぼ見られなかった。かかる位置のピークは、炭酸イオン(CO 2-)の非対称伸縮振動および面外変角振動に基づいて現れるピークである。したがって、LSMEは、COガスの少なくとも一部を炭酸イオンとして保持できることが確かめられた。なお、上記点線以外の点線の位置にあるピークは、単座カーボネート(unidentate carbonates)であると考慮され、LSME粉末試料の表面に付着したCO由来のものであると考えられる。
【0084】
1-9.LSMEにおけるLSの割合の評価
上記1-3のうち、LS+ECN粉末と、MG+ECN粉末との混合割合を変更し、LSの割合が0wt%~70wt%となるように粉末試料を調製した。なお、LSが0wt%のときは、MG+ECN粉末のみからなり、LSが70wt%のときは、LS+ECN粉末のみからなることを意味する。また、いずれの割合においても、ECNの割合は30wt%であり、残りの割合は上記炭酸水酸化マグネシウム水和物(MG)粉末の割合である。
調製した粉末試料を用いて、上記1-5欄と同様にして動的吸収特性の評価を行った。そして、得られた動的TGA曲線から、最大CO吸収容量の値を求めた。LSの割合とかかる最大CO吸収容量との関係を表すグラフを図13に示す。
図13に示すように、LSの割合が5wt%以上60wt%以下でCO吸収能を有していることが確かめられた。このときの、LSMEに含まれるSi成分とMg成分との合計に対するSi成分の割合(以下、この割合を「Si成分の割合」ともいう)は5mol%以上85mol%以下に相当する。また、LSの割合が概ね20wt%以上50wt%以下(Si成分の割合が概ね20mol%以上75mol%以下)であるとき、より改善されたCO吸収容量を有している。さらに、LSの割合が概ね30wt%以上50wt%以下(Si成分の割合が概ね35mol%以上75mol%以下)であるとき、MG+ECN単独(LSが0wt%)およびLS+ECN単独(LSが70wt%)よりも、優れたCO吸収容量を示すことが確かめられた。
【0085】
2-1.亜鉛酸リチウム(LZ)の調製
上記1-1の操作のうち、コロイダルシリカを硝酸亜鉛六水和物{Zn(NO・6HO、Merck社製}に変更し、亜鉛酸リチウム(LZ)の調製を行った。具体的には、11.5gの硝酸リチウム(LiNO)および8.3gの硝酸亜鉛六水和物を蒸留水に溶解し、かかる硝酸リチウム水溶液を室温で撹拌しながら、pH8まで25%アンモニア溶液を加えることで加水分解を行った。このまま室温で1時間撹拌することで、亜鉛酸リチウム前駆体が水溶液中に分散されたゾル状組成物を得た。その後の操作は、上記1-1と同様にして行った。
次いで、上記1-2のうち、LSをLZに変更して同様の操作を行い、LZ+ECN粉末を得た。さらに、上記1-3のうち、LS+ECN粉末をLZ+ECN粉末に変更し、0.15gのLZ+ECN粉末と0.6gのMG+ECN粉末の混合に変更した。かかる変更点以外の操作は同様にして、LZME粉末試料を調製した。このようにして得られたLZME粉末試料は、重量比でLZ:MG:ECN=14:56:30である。
【0086】
2-2.FE-SEM観察
得られたLZME粉末試料について、上記1-4と同様にしてFE-SEMによる観察を行った。得られたFE-SEM像を図14A図14Cに示す。
FE-SEM観察の結果、LZME粉末試料は、ロッド状の粒子を有しており、ロッド状の粒子を含む複数の粒子が集合して概ね直径5μm以上の粒子を形成していることが確認できた。かかるロッド状の粒子の結晶面内の長手方向の平均長さは、概ね1μm以下であった。また、かかる長手方向の平均長さと、厚み方向の平均長さとのアスペクト比は、確実に2以上であることが観察された。
【0087】
2-3.CO吸収特性
<動的吸収特性>
得られたLZME粉末試料のCO吸収特性を、上記1-5欄と同様にして、環境温度を変化させた動的な吸収特性として評価した。その結果、得られた動的TGA曲線を図15に示した。
図15に示すように、LZME粉末試料は、100℃~450℃の温度範囲でCO吸収容量を有することが確認できた。また、昇温を伴う中で、200℃~400℃の温度範囲で優れたCO吸収容量を有しており、特に300℃~400℃の温度範囲では、300mg/g以上の優れたCOガス吸収容量を有していることが確認できた。また、昇温により420℃を超えると、COガスの脱着が生じることが確認できた。これにより、LZME粉末試料は、温度スイングプロセスによってCOガスを脱着できることが確認できた。
【0088】
<圧力スイング>
得られたLZME粉末試料について、圧力スイングによるLZME粉末試料のCOの吸収・脱着特性をTGAにより評価した。具体的には、LZME粉末試料を350℃下に置き、100%COガスを50ml/minの速度で60分間供給した。その後、350℃を保持しながら、100%COガスを100%Nガスに変更した。得られた等温吸収曲線を図16に示す。
図16に示すように、LZME粉末試料は350℃の一定の温度下で、60分間以降(即ち、供給されるガスがCOからNへと変更された後)、COガスを脱着したことが確かめられた。これにより、LZME粉末試料は一定の温度下の圧力スイングによりCOの吸収・脱着ができることが確かめられた。
【0089】
2-4.LZMEにおけるLZの割合の評価
上記2-1のうち、LZ+ECN粉末と、MG+ECN粉末との混合割合を変更し、LZの割合が0wt%~70wt%となるように粉末試料を調製した。なお、LZが0wt%のときは、MG+ECN粉末のみからなり、LZが70wt%のときは、LZ+ECN粉末のみからなることを意味する。また、いずれの割合においても、ECNの割合は30wt%であり、残りの割合は上記炭酸水酸化マグネシウム水和物(MG)の割合である。
調製した粉末試料を用いて、上記1-5欄と同様にして動的吸収特性の評価を行った。そして、得られた動的TGA曲線から、最大COガス吸収容量の値を求めた。LZの割合とかかる最大CO吸収容量との関係を表すグラフを図17に示す。
図17に示すように、LZが含まれていることにより、MG+ECN単独(0wt%)よりも優れたCO吸収容量を有しており、例えば、LZの割合が5wt%以上60wt%以下であるとき、優れたCO吸収容量を示す。なお、このときのZn成分とMg成分の合計に対するZnの割合(以下、「Znの割合」ともいう)は概ね5mol%以上80mol%以下に相当する。また、LZの割合が5wt%~40wt%(Znの割合が概ね5mol%~40mol%以下)であるとき、より優れたCOガス吸収容量を有することが確かめられた。さらに、LZの割合が5wt%~25wt%(Znの割合が概ね5mol%~25mol%以下)であるとき、さらに優れたCOガス吸収容量を有することが確かめられた。
【0090】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
【国際調査報告】