(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】一酸化炭素フリーの雰囲気下でのロジウム錯体を用いたジエナールまたはジエノンの水素化
(51)【国際特許分類】
C07C 45/62 20060101AFI20240329BHJP
C07C 49/217 20060101ALI20240329BHJP
C07C 49/203 20060101ALI20240329BHJP
C07C 49/21 20060101ALI20240329BHJP
C07C 47/232 20060101ALI20240329BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20240329BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
C07C45/62
C07C49/217
C07C49/203 E
C07C49/21
C07C47/232
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563968
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022059703
(87)【国際公開番号】W WO2022223363
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リオネル ソーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー カンテーヌ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC70A
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BD08A
4G169BD11A
4G169BD15B
4G169BE06A
4G169BE16A
4G169BE21A
4G169BE26A
4G169BE27B
4G169BE29A
4G169BE29B
4G169BE32A
4G169BE32B
4G169BE33A
4G169BE34B
4G169BE42A
4G169BE42B
4G169CB02
4G169CB62
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA24
4H006BA40
4H006BA48
4H006BE20
4H039CB10
(57)【要約】
本発明は、接触水素化の分野に関し、かつ、より詳細には、共役ジエナールまたは共役ジエノンを対応する脱共役エナールまたは脱共役エノンへと還元するための特定のロジウム錯体を含む塩基フリーの触媒系の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H
2分子を使用して、式(I)
【化1】
[式中、別々の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6のそれぞれは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意に置換されるフェニル基、C
1~C
8アルキル基、C
2~C
8アルケニル基、C
3~C
8シクロアルキル基、またはC
3~C
8シクロアルケニル基を表すが、前記R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうち少なくとも1つは水素原子ではないことを条件としているか;またはR
1およびR
2またはR
2およびR
3またはR
3およびR
4は、一緒の場合、任意に置換されるC
3~C
4アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
1およびR
3またはR
2およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
3アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
4およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
4~C
5アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
6およびR
1またはR
6およびR
2は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
4アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
6およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
10アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表す]
のC
6~C
20共役ジエナールまたは共役ジエノンを、式(II)
【化2】
[式中、R
1からR
6は、式(I)で定義したものと同じ意味を有している]
の、R
6が水素原子の場合は脱共役エナールまたはR
6が水素原子でない場合は脱共役エノンにする、水素化による還元の方法であって;
少なくとも1つのCO配位子を有する適切なRh前駆体と、85°~130°である固有の挟み角を有するC
34~C
60二座ジホスフィン配位子(L2)との反応によって得られる、少なくとも1つのRh(I)錯体を含む触媒系の存在下で実施される、方法。
【請求項2】
前記式(I)および式(II)の化合物は、式中、別々の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6のそれぞれは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意に置換されるフェニル基、C
1~C
4アルキル基、C
5~C
6シクロアルキル基またはC
5~C
6シクロアルケニル基を表すが、前記R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とし;R
3およびR
4は、一緒の場合、任意に置換されるC
3~C
4アルカンジイル基を表し;R
4およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
4~C
5アルカンジイル基を表す、C
6~C
15化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)および式(II)の化合物は、式中、R
1、R
2は互いに独立して、水素原子を表し、R
3は水素原子、メチル基もしくはエチル基または任意に置換されるフェニル基を表し;R
4、R
5は互いに独立して、水素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基を表し、ここで、該シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基は、それぞれ任意に置換されるが、前記R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうちの少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とし;R
3およびR
4は、一緒の場合、任意に置換されるC
4アルカンジイル基を表す、化合物である、請求項1または2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
塩基の非存在下で行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該Rh前駆体は、RhH(CO)(PPh
3)
3、Rh(CO)
2(acac)、Rh
4(CO)
12およびRh
6(CO)
16からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記Rh(I)錯体は、式(2)
【化3】
[式中、L2の有する意味は請求項1と同じであり、Zは配位アニオンである]
の化合物である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
L2は、式(A)
【化4】
[式中、別々の場合、それぞれのR
bは任意に置換されるC
6~C
10芳香族基または任意に置換されるシクロヘキシル基を表すか、または一緒の場合、同じP原子に結合した2つのR
bは任意に置換される2,2’-オキシジフェニル基を表す]
の化合物であり;かつ
Qは、任意に置換されるC
10~C
16メタロセンジイル基を表すか、または
- a)式(i)
【化5】
[式中、それぞれのR
dは水素原子またはC
1~C
8アルキル基を表し、かつXは酸素原子または硫黄原子またはC(R
10)
2基、Si(R
11)
2基またはNR
10基であって、ここで、R
10は水素原子またはR
11基であり、R
11は、C
1~C
4直鎖または分枝のアルキル基、好ましくはメチル基を表す]
の基か;または
- b)式(ii)
【化6】
[式中、mは0または1であり、MはFeまたはRuを表し、かつR
aは水素原子またはC
1~C
4アルキル基を表す]の鏡像異性体のいずれかの形態
の基を表し;かつ
該波線は、前記Q基と化合物(A)の残りの部分との間の結合の位置を示し;かつ
R
bの置換は、ハロゲン原子、またはC
1~C
10アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、またはペルハロ炭化水素基の中から選択される1つ、2つ、3つまたは4つの基であり;
該メタロセンジイル基の可能な置換基は、1つまたは2つのC
1~C
4アルキル基、またはCR
d’PhN(R
d’’)
2基であって、ここで、R
d’またはR
d’’は水素原子またはC
1~C
4アルキル基であり、かつ、Phはフェニル基でありR
bについて上記で示されるように任意に置換されていてよい、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記R
bは、それぞれ、任意に置換されるC
6~C
10芳香族基または任意に置換されるシクロヘキシル基を表す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Qは、任意に置換される1,1’-フェロセンジイルまたは
- a)式(i’)
【化7】
[式中、それぞれのR
dは、水素原子またはC
1~C
4アルキル基を表し、かつXは、C(R
10)
2基、Si(R
11)
2基またはNR
10基を表し、ここで、R
10は水素原子またはR
11基であり、R
11はC
1~C
4直鎖または分枝のアルキル基、好ましくはメチル基を表す]
の基か;または
- b)式(ii)
【化8】
の鏡像異性体のいずれか1つの形態の基を表し;
該波線は、前記Q基と化合物(A)の残りの部分との間の結合の位置を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記L2は、93°~125°、好ましくは97°~120°である固有の挟み角を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
L2は、(9,9-ジメチル-9H-キサンテン-4,5-ジイル)ビス(ジフェニルホスファン)および4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触水素化の分野に関し、かつ、より詳細には、共役ジエナールまたは共役ジエノンを対応する脱共役エナールまたは脱共役エノンへと還元するための特定のロジウム錯体を含む塩基フリーの触媒系の使用に関する。
【0002】
背景技術
共役ジエナール(α,γ-ジエナール)または共役ジエノン(α,γ-ジエノン)の直接選択的α-β水素化、すなわち特定のC=C結合の直接選択的α-β水素化は、困難な目標である。実際、水素化は、3つの異なる部位(2つのC=Cおよび1つのC=O)で起こりうる。さらには、そのような方法を工業目的にとって魅力的にするために、許容できる変換率および妥当なターンオーバー(錯体の添加量および反応時間)で、水素化を達成することが好ましい。
【0003】
共役ジエナールまたは共役ジエノンの選択的α-β還元は、文献でほとんど報告されていない。共役ジエナールの選択的α-β水素化は、国際公開第2012150053号で報告されており、該文献において選択的水素化は、少なくとも塩基と、ロジウムに配位しているC34~C60二座ジホスフィン配位子(L2)を含むロジウム錯体の形態である少なくとも1つの錯体とを含む、触媒系の存在下で行われる。しかし、この先行技術文献に記載された水素化は、そのような条件下で所望の生成物の代わりにポリマーの形成を引き起こす、特定の基質にとって欠点となる塩基の存在下で常に実施される。さらに、この先行技術文献は、ジエノンの選択的α-β水素化については触れていない。
【0004】
したがって、α,γ-ジエナールまたはα,γ-ジエノンの選択的α-β水素化をできるようにする塩基フリーの水素化方法であって、かつ可能ならば工業的に適用できる反応条件での、塩基フリーの水素化方法が依然として必要とされている。先行技術文献では、少なくとも1つのCO配位子を有する適切なRh前駆体と、85°~130°である固有の挟み角(natural bite-angle)を有するC34~C60二座ジホスフィン配位子(L2)との反応によって得られる、少なくとも1つのRh(I)錯体を含む特定の触媒系を、共役ジエナールまたは共役ジエノンの還元に使用する報告はない。
【0005】
発明の説明
前述の問題を解決するために、本発明は、水素化、すなわちH2分子の使用による、C6~C20共役ジエナールまたは共役ジエノンを対応する脱共役エナールまたは脱共役エノンへと還元するための方法であって、ロジウムに配位しているC34~C60二座ジホスフィン配位子(L2)と、少なくとも1つのCO配位子とを含むロジウム錯体の形態である少なくとも1つの錯体を含む触媒系の存在下で実施されることを特徴とする方法に関する。
【0006】
本発明の特定の実施形態によれば、式(I)
【化1】
[式中、別々の場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6のそれぞれは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意に置換されるフェニル基、C
1~C
8アルキル基、C
2~C
8アルケニル基、C
3~C
8シクロアルキル基、またはC
3~C
8シクロアルケニル基を表すが、前記R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のうち少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とし;またはR
1およびR
2またはR
2およびR
3またはR
3およびR
4は、一緒の場合、任意に置換されるC
3~C
4アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
1およびR
3またはR
2およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
3アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
4およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
4~C
5アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
6およびR
1またはR
6およびR
2は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
4アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表すか;またはR
6およびR
5は、一緒の場合、任意に置換されるC
2~C
10アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表す]
の共役ジエナールまたは共役ジエノンは、式(II)
【化2】
[式中、R
1からR
6は、式(I)で定義したものと同じ意味を有している]
の脱共役エナール(R
6が水素原子の場合)または脱共役エノン(R
6が水素原子でない場合)になり;
前記方法は、少なくとも1つのCO配位子を有する適切なRh前駆体と、85°~130°である固有の挟み角を有するC
34~C
60二座ジホスフィン配位子(L2)との反応によって得られる、少なくとも1つのRh(I)錯体を含む触媒系の存在下で実施されるものである。
【0007】
「固有の挟み角」という表記は、当該技術分野における通常の意味、例えばP. W. N. M. VAN LEEUWEN, P. C. J. KAMER, J. N. H. Reek, P. Dierkes, Chem. Rev. 2000, 2741.で定義されるような意味で理解される。
【0008】
R1からR6の可能な置換基は、それぞれ任意に1つ、2つ、もしくは3つのC1~C3アルキル基、または1つ、2つもしくは3つのCOOR7基、OCOR7基、N(R7)2基、CNOR8基もしくはR7基で置換される、1つのフェニル基、1つのシクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキセニル基またはシクロペンテニル基であって、ここで、R8は水素原子またはR7基であり、R7基はC1~C4直鎖もしくは分枝のアルキル基またはアルケニル基を表す。特に、R1からR6の可能な置換基は、1つのフェニル基、または1つ、2つもしくは3つのCOOR7基、OR8基もしくはR7基であって、ここでR7およびR8は、上記で定義したものと同じ意味を持つ。本発明のいずれか1つの実施形態によれば、前記R1からR6のうち1つまたは2つのみが、任意に置換されてよく、特に、前記R1からR5のうち1つまたは2つは、任意に置換されてよい。
【0009】
波線は、二重結合がそのE異性体もしくはZ異性体またはそれらの混合物の形態であってよいことを示す;例えば、式(I)のC6~C20共役ジエナールまたは共役ジエノンは、同じ化学構造を有するが二重結合の立体配置において異なる、式(I)の1つ以上の化合物からなる物質の組成物の形態であってよい。特に、化合物(I)は、それぞれZ、Eまたはそれらの混合物でありうる2つの二重結合を含み、かつ式(II)の化合物は、Z、Eまたはそれらの混合物でありうる1つの二重結合を含む。式(I)の化合物および式(II)の化合物は、EおよびZの異性体からなる混合物の形態であってよく、かつここで前記異性体Eは、混合物全体の少なくとも50%であるか、またはさらには少なくとも75%である(すなわち、E/Z混合物が75/25~100/0である)。
【0010】
明確性の理由から、「R1およびR2・・・・・・は、一緒の場合、C3~C4アルカンジイル基またはアルケンジイル基を表す」またはその類似の表記は、当業者に理解される通常の意味、すなわち2つの水素原子の除去によりアルカンまたはアルケンから形成される2価の基を意味する。言い換えると、R1およびR2は、一緒の場合、C5~C6シクロアルキル基またはシクロアルケニル基を形成する。
【0011】
前記化合物(II)は、基質の性質および使用される錯体に応じて、ラセミ体または光学活性形態でありうると理解される。
【0012】
「アルケニル」基、「シクロアルケニル」基または「アルケンジイル」基とは、本明細書では当該技術分野で通常の意味を意味すると理解され、これは、不飽和が共役ジエナールまたは共役ジエノンの炭素-炭素二重結合に共役できない不飽和基である。
【0013】
「アルキル」基および「アルケニル」基という用語は、分枝および直鎖のアルキル基およびアルケニル基を含むとして理解される。
【0014】
「共役ジエナール」とは、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合およびアルデヒド官能基を有する化合物を意味すると理解され、それらのうちの3つは、式(I)で示されるように共役している。したがって、「共役ジエナール」という用語は、追加の非芳香族である炭素-炭素二重結合を有する化合物も任意に含むとして理解されるが、前記追加の炭素-炭素二重結合はジエナール系の二重結合と共役しないことを条件とする。「共役ジエノン」とは、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合およびケトン官能基を有する化合物を意味すると理解され、それらのうち3つは式(I)で示されるように共役している。したがって、「共役ジエノン」という用語は、追加の非芳香族である炭素-炭素二重結合を有する化合物も任意に含むとして理解されるが、前記追加の炭素-炭素二重結合はジエナール系の二重結合と共役しないことを条件とする。
【0015】
「脱共役エナール」とは、式(II)に示されるような、少なくとも1つのγ-δ炭素-炭素二重結合およびアルデヒド官能基を有する化合物を意味すると理解される。したがって、「脱共役エナール」という用語は、追加の炭素-炭素二重結合を有する化合物も任意に含むとして理解されるが、前記追加の非芳香族である炭素-炭素二重結合はエナール系の二重結合と共役しないことを条件とする。「脱共役エノン」とは、式(II)に示されるような、少なくとも1つのγ-δ炭素-炭素二重結合およびケトン官能基を有する化合物を意味すると理解される。したがって、「脱共役エノン」という用語は、追加の炭素-炭素二重結合を有する化合物も任意に含むとして理解されるが、前記追加の非芳香族である炭素-炭素二重結合はエノン系の二重結合と共役しないことを条件とする。
【0016】
本発明のいずれかの実施形態によれば、式(I)および(II)の化合物は、C6~C15化合物である。
【0017】
本発明のいずれかの実施形態によれば、別々の場合、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のそれぞれは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意に置換されるフェニル基、C1~C6アルキル基、C5~C6シクロアルキル基またはC5~C6シクロアルケニル基を表すが、前記R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とし;R3およびR4は、一緒の場合、任意に置換されるC3~C4アルカンジイル基を表し;R4およびR5は、一緒の場合、任意に置換されるC4~C5アルカンジイル基を表す。特に、別々の場合、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のそれぞれは、互いに独立して、水素原子、互いに任意に置換されるフェニル基、C1~C4アルキル基、C5~C6シクロアルキル基またはC5~C6シクロアルケニル基を表すが、前記R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とし;R3およびR4は、一緒の場合、任意に置換されるC3~C4アルカンジイル基を表し;R4およびR5は、一緒の場合、任意に置換されるC4~C5アルカンジイル基を表す。
【0018】
本発明のいずれかの実施形態によれば、式(I)および(II)の化合物は、各々共役ジエノンおよび脱共役エノンである;すなわち、R6は、それぞれ任意に、フェニル基、C1~C8アルキル基、C2~C8アルケニル基、C3~C8シクロアルキル基またはC3~C8シクロアルケニル基であってよい。
【0019】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R1は、水素原子またはC1~C4アルキル基を表してよい。特に、R1は、水素原子またはC1~C3アルキル基を表してよい。特に、前記R1は、水素原子、メチル基またはエチル基を表してよい。さらにより詳述すれば、前記R1は、水素原子を表してよい。
【0020】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R6は、水素原子、C1~C4アルキル基またはフェニル基を表してよい。特に、R6は、水素原子、C1~C3アルキル基またはフェニル基を表してよい。特に、前記R6は、水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基を表してよい。さらにより詳述すれば、R6は、メチル基またはエチル基であってよい。
【0021】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R2は、水素原子またはC1~C4アルキル基を表してよい。特に、R2は、水素原子またはC1~C3アルキル基を表してよい。特に、前記R2は、水素原子、メチル基またはエチル基を表してよい。さらにより詳述すれば、前記R2は、水素原子を表してよい。
【0022】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R3は、水素原子、任意に置換されるC1~C4アルキル基またはフェニル基を表してよい。特に、R3は、水素原子、C1~C3アルキル基またはフェニル基を表してよい。特に、前記R3は、水素原子、メチル基もしくはエチル基または任意に置換されるフェニル基を表してよい。
【0023】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R4は、水素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基を表してよく、ここで、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基はそれぞれ任意に置換されてよい。
【0024】
上記実施形態のいずれか1つによれば、別々の場合、前記R5は、水素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基を表してよく、ここで、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基またはフェニル基は、それぞれ任意に置換されてよい。
【0025】
上記実施形態のいずれか1つによれば、一緒の場合、前記R3およびR4は、一緒の場合、任意に置換されるC4アルカンジイル基を表す。
【0026】
上記実施形態のいずれか1つによれば、一緒の場合、前記R4およびR5は、一緒の場合、任意に置換されるC5アルカンジイル基を表す。
【0027】
上記実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の基質は、R1、R2がそれぞれ水素原子を表し、R3、R4、R5がそれぞれ水素原子またはメチル基、エチル基、シクロヘキシル基もしくはフェニル基を表すし、ここでシクロヘキシル基またはフェニル基はそれぞれ任意に置換されてよいが、前記R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つは水素原子ではないことを条件とするものであるか;またはR3およびR4が、一緒の場合、任意に置換されるC4アルカンジイル基を表すものであってよい。
【0028】
上記実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の基質は、前記R1、R2、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つまたは2つが水素原子でよいものであってよい。
【0029】
上記実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の基質は、前記R1、R2、R3、R4およびR5のうちの2つまたは3つが水素原子でよいものであってよい。
【0030】
上記実施形態のいずれか1つによれば、前記R1からR6の置換は、1つのフェニル基または1つ、2つもしくは3つのOR8基またはR7基でよく、ここで、R8は水素原子またはR7基であり、R7はC1~C4直鎖または分枝のアルキル基を表す。好ましくは、前記置換はOR7基またはR7基でよい。本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、前記R1からR5のうちの1つまたは2つのみ、任意に置換されてよい。特に、R7は、C1~C3アルキル基を表してよい。特に、前記R7は、メチル基またはエチル基を表してよい。
【0031】
本発明の更なる実施形態によれば、基質は、製薬、農薬または香料工業において最終生成物または中間生成物として有用であってよい脱共役エナールまたは脱共役エノンを提供する、共役ジエナールまたは共役ジエノンでよい。特に好ましい基質は、香料工業において最終生成物または中間生成物として有用であってよい脱共役エナールまたは脱共役エノンを提供する、共役ジエナールまたは共役ジエノンでよい。
【0032】
基質の非限定的な例は以下の通りである:(3E,5E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5Z)-5-フェニルヘプタ-3,5-ジエン-2-オン、(3E)-5-メチルオクタ-3,5-ジエン-2-オン、(3E)-5-エチルノナ-3,5-ジエン-2-オン、(3E)-5-プロピルデカ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5E)-6-シクロペンチル-5-メチルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5E)-6-シクロヘキシル-5-メチルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5E)-5-(シクロヘキシルメチレン)ヘプト-3-エン-2-オン、(E)-4-(5,5-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン、(E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン、(3E,5E)-6-(シクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5E)-5-メチル-7-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ヘプタ-3,5-ジエン-2-オン、(3E,5E)-5-エチル-7-((S)-2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ヘプタ-3,5-ジエン-2-オン、6-シクロヘキシルヘプタ-3,5-ジエン-2-オン、6,10-ジメチルウンデカ-3,5,9-トリエン-2-オン、(3E,5E)-6-フェニルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン、(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-5-フェニルペンタ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-5-フェニルヘキサ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-4-メチル-5-フェニルペンタ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-2-メチル-5-フェニルペンタ-2,4-ジエナール、(2E,4Z)-4-フェニルヘキサ-2,4-ジエナール、(E)-3-(4-(tert-ブチル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル)アクリルアルデヒド、(2E,4E)-5-シクロヘキシル-4-メチルペンタ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-5,9-ジメチルデカ-2,4,8-トリエナール、5,9-ジメチルデカ-2,4-ジエナール、(2E,4E)-5-シクロペンチル-4-メチルペンタ-2,4-ジエナール、5-メチル-7-フェニルヘプタ-2,4-ジエナール、(E)-3-(5,5-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)アクリルアルデヒドまたは(2E)-4-メチルドデカ-2,4-ジエナール。
【0033】
本発明の実施形態のいずれか1つの特定の態様によれば、本発明の方法は、40%より高い、特に60%より高い、特に80%より高い、特に90%より高い、より詳述すれば95%より高い選択率で、化合物(II)を提供することも特徴とする。
【0034】
本発明の実施形態のいずれか1つの特定の態様によれば、本発明の方法は、60%より高い、特に70%より高い、特に80%より高い、特に90%より高い、より詳述すれば95%より高い出発化合物からの変換率で、化合物(II)を提供することも特徴とする。
【0035】
ここで、「脱共役エナール」とは化合物(II)を意味し、「アルデヒド」とは両方の炭素-炭素二重結合が還元されている化合物(I)を意味し、「アルコール」とはカルボニルも還元されているアルデヒドを意味する。ここで、「脱共役エノン」とは化合物(II)を意味し、「ケトン」とは両方の炭素-炭素二重結合が還元されている化合物(I)を意味する。
【0036】
水素化反応は、溶媒の存在下または非存在下で実施されうる。本発明の特定の実施形態において、その方法は、溶媒の存在下で実施され(一般的には実用的な理由による)、かつ水素化反応において広く受け入れられている任意の溶媒を、本発明の目的で使用できる。非限定的な例として、C6~C10芳香族溶媒、例えばトルエンまたはキシレン、C1~C2ハロゲン化炭化水素、例えばCH2Cl2、C5~C8炭化水素溶媒、例えばヘキサンまたはシクロヘキサン、C4~C9エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはMTBE、C3~C9エステル、例えばエチルアセテートまたはメチルアセテート、C3~C6ケトン、例えばアセトン、極性溶媒、例えばC1~C5第1級または第2級アルコール、例えばイソプロパノールまたはエタノール、またはそれらの混合物が包含される。溶媒は、基質および錯体の性質に応じて選ばれ、当業者は、それぞれの場合にもっとも都合の良い溶媒をうまく選択して水素化反応を最適化することができる。
【0037】
本発明の水素化方法において、その反応は、純粋なH2雰囲気下、または水素と少なくとも不活性なガス、例えばN2またはArとの混合物下で実施されうる。好ましくは、反応媒質の雰囲気は、COフリー、例えば存在するCOの量が1ppm未満である。任意の場合において、反応媒質は、基質と比較して少なくとも化学量論量のH2が好ましくは供給されることが理解され;H2が化学量論量よりも少ない場合は基質の部分的な変換のみが達成されることが理解される。任意の場合において、非限定的な例として、典型的なH2圧力は、105Pa~80×105Pa(1~80バール)である圧力か、または所望される場合にはより高い圧力を挙げてよい。この場合も、当業者は、錯体の添加量および溶媒中の基質の希釈に応じて圧力をうまく調節できる。例として、典型的な圧力である、3~50×105Pa(3~50バール)、またはさらには5~20×105Pa(5~20バール)が挙げられる。
【0038】
水素化が実施されうる温度は、20℃~100℃、好ましくは25℃~80℃の範囲である。当然、当業者は、出発物および最終生成物の融点および沸点ならびに所望の反応時間または変換時間に応じて、好ましい温度を選択することもできる。
【0039】
本発明のいずれかの実施形態によれば、本発明の方法は、塩基の非存在下で行われる。
【0040】
上述のように、本発明は、少なくとも1つのCO配位子を有する適切なRh(I)前駆体と、85°~130°の固有の挟み角を有するC34~C60二座ジホスフィン配位子(L2)との反応によって得られる、少なくとも1つのRh(I)錯体を含む特定の触媒系を使用することを必要とする。
【0041】
上記実施形態のいずれかに1つによれば、Rh(I)錯体は:
- 85°~130°の固有の挟み角を有するC
34~C
60二座ジホスフィン配位子(L2)と;
- 式(1)または式(1’)
【化3】
[式中、pは1~4の整数であり;qは2~20の整数であり;rは0~1の整数であり;Zは配位アニオンであり、PはC
3~C
30モノホスフィンである]
の適切なRh前駆体と
を、一緒に反応することで得られる化合物である。
【0042】
上記実施形態のいずれか1つによれば、Zは、配位アニオンであってよいが、Zがハロゲン化物でないことを条件とする。特に、Zは、アセチルアセトネート、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペンタン-2,4-ジオネート、2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオネート、カルボキシレート、例えばベンゾエート、アセテート、ホルミエート、ピバレートもしくはプロピオネート、アルコキシド、例えばメトキシド、エトキシド、プロポキシドもしくはブトキシド、アリル、例えばプロパ-2-エン-1-イド、3-フェニル-プロパ-2-エン-1-イド、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニルおよびペンタフルオロシクロペンタジエニルからなる群から選択してよい。特に、Zは、アセチルアセトネートでよい。
【0043】
本発明のいずれかの実施形態によれば、Pは、式PR9
3のモノホスフィンを表してよく、ここで、R9は、任意に置換される、C1~C12基、例えば直鎖、分枝もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であるか、置換または非置換のフェニル基、ジフェニル基またはナフチル基またはジ-ナフチル基である。より詳述すれば、R9は、置換または非置換のフェニル基、ジフェニル基またはナフチル基またはジ-ナフチル基を表してよい。Rb基の可能な置換基は、下記に挙げられるものである。好ましくは、Pは、トリフェニルホスフィンである。
【0044】
本発明のいずれかの実施形態によれば、式(1)または式(1’)のRh(0)前駆体は、Rh(CO)2(acac)、RhH(CO)(PPh3)3、Rh4(CO)12およびRh6(CO)16からなる群から選択されてよい。
【0045】
Rh(I)錯体の調製は、好ましくは溶媒の存在下で実施される。本発明の特定の実施形態において、前記溶媒は、水素化方法において任意に使用されるものと同じである。しかし、他の溶媒も使用でき、非限定的な例として、C6~C10芳香族溶媒、例えばトルエンまたはキシレン、C5~C8炭化水素溶媒、例えばヘキセンまたはシクロヘキサン、C4~C9エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはMTBE、極性溶媒、例えばC1~C5第1級または第2級アルコール、例えばイソプロパノールもしくはエタノール、ジクロロメタン、水またはそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、基質および錯体の性質に応じて選ばれ、当業者は、それぞれの場合にもっとも都合の良い溶媒をうまく選択して水素化反応を最適化することができる。
【0046】
Rh(I)錯体の調製は、不活性雰囲気下、または本質的に一酸化炭素および酸素フリーの雰囲気下、例えば存在するCOおよびO2の量が1ppm未満の雰囲気下で実施されうる。当業者は、不活性雰囲気の意味するものを知っている。そのような雰囲気の非限定的な例は、窒素またはアルゴン雰囲気である。
【0047】
Rh(I)錯体の調製において、その方法の温度は、0℃~100℃、好ましくは10℃~60℃の範囲に含まれうる。当然、当業者は、出発物および最終生成物の融点および沸点ならびに所望の反応時間または変換時間に応じて、好ましい温度を選択することもできる。
【0048】
特定の実施形態によれば、Rh(I)錯体は、式(2)
【化4】
[式中、L2およびZは、上記で定義したものと同じ意味を有する]
を有するとして記載されうると考えられる。
【0049】
上記実施形態のいずれか1つによれば、L2は、式(A)
【化5】
[式中、それぞれのR
bは、別々に、任意に置換されるC
6~C
10芳香族基または任意に置換されるシクロヘキシル基を表すか、または同じP原子に結合した2つのR
bは、一緒になって、任意に置換される2,2’-オキシジフェニル基を表す]
の化合物であってよく;かつ
Qは、任意に置換されるC
10~C
16メタロセンジイル基または、
- a)式(i)
【化6】
[式中、それぞれのR
dは、水素原子またはC
1~C
8アルキル基を表し、かつXは、酸素原子もしくは硫黄原子またはC(R
10)
2基、Si(R
11)
2基もしくはNR
10基であって、ここで、R
10は、水素原子またはR
11基であり、R
11はC
1~C
4直鎖または分枝のアルキル基、好ましくはメチル基を表す]
の基か;または
- b)式(ii)
【化7】
[式中、mは0または1であり、MはFeまたはRuを表し、かつR
aは水素原子またはC
1~C
4アルキル基を表す]の鏡像異性体のいずれかの1つの形態
の基を表し;かつ
波線は、前記Q基と化合物(A)の残りの部分との間の結合の位置を示す。
【0050】
上記実施形態のいずれか1つによれば、Qは、任意に置換される1,1’-フェロセンジイルまたは
- a)式(i’)
【化8】
[式中、それぞれのR
dは、水素原子またはC
1~C
4アルキル基を表し、かつXは、C(R
10)
2基、Si(R
11)
2基またはNR
10基を表し、ここでR
10は水素原子またはR
11基であり、R
11はC
1~C
4直鎖または分枝のアルキル基、好ましくはメチル基を表す]
の基か;または
- b)式(ii’)
【化9】
の鏡像異性体のいずれかの形態の基を表し;
波線は、前記Q基と化合物(A)の残りの部分との間の結合の位置を示す。
【0051】
上記実施形態のいずれか1つによれば、Qの定義において、メタロセンジイル基は、フェロセンジイル基であり、かつ特に1,1’-ジイル基である。式(ii)において、特に、MはFeである。
【0052】
上記実施形態のいずれか1つによれば、それぞれのRbは、任意に置換されるC6~C10芳香族基または任意に置換されるシクロヘキシル基を表す。
【0053】
上記実施形態のいずれか1つによれば、「芳香族基または芳香族環」とは、フェニル基またはナフチル基を意味し、かつ特にフェニル基を意味する。
【0054】
上記実施形態のいずれか1つによれば、それぞれのRbは、フェニル基、シクロヘキシル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,5-ジ(CF3)-フェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシ-フェニル基を表す。
【0055】
上記実施形態のいずれか1つによれば、Rdは、水素原子を表す。
【0056】
上記実施形態のいずれか1つによれば、Xは、CMe2基、SiMe2基、NH基またはNMe基を表す。
【0057】
上記実施形態のいずれか1つによれば、L2は、93°~125°、特に97°~125°、特に102°~125°、特に108°~125°、さらにより詳述すれば110°~125°である固有の挟み角を有する。
【0058】
上記実施形態のいずれか1つによれば、非限定的なRbの可能な置換基の例は、ハロゲン原子、またはC1~C10アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、またはペルハロ炭化水素基の中から選択される1つ、2つ、3つまたは4つの基である。例えば、「ペルハロ炭化水素」という表記は、本明細書では、当該技術分野で通常の意味、例えばCF3のような基を有する。特に、前記置換基は、1つまたは2つのハロゲン原子(例えばFもしくはCl)またはC1~C4アルコキシ基もしくはアルキル基、またはCF3基である。
【0059】
上記実施形態のいずれか1つによれば、メタロセンジイル基または1,1’-フェロセンジイル基の可能な置換基の非限定的な例は、1つまたは2つのC1~C4アルキル基またはCRd’PhN(Rd’’)2基であって、ここでRd’またはRd’’は水素原子またはC1~C4アルキル基であり、かつPhはフェニル基であり、Rbについて上記で示されるように任意に置換されていてよい。特に、前記置換基は、1つのメチル基または1つのCH(C6H5)N(Me)2基である。
【0060】
上記実施形態のいずれか1つによれば、前記Rb基、メタロセンジイル基または1,1’-フェロセンジイル基は、1つずつまたはすべて一緒に、非置換である。
【0061】
上記実施形態のいずれか1つによれば、式(A)の配位子は、ラセミ体または光学活性形態でありうる。
【0062】
L2配位子の非限定的な例として、以下のものが挙げられ:
【化10】
[式中、Cyは1つまたは2つのC
1~C
4アルキル基で置換されたシクロヘキシル基を表し、Phは1つもしくは2つのC
1~C
4アルキル基、1つもしくは2つのトリフルオロメチル基または1つのメトキシ基で任意に置換されたフェニル基を表す]
適用できる場合、前記化合物は光学活性形態またはラセミ体である。
【0063】
配位子(A)は、先行技術文献においてすべて公知であり、先行技術水準において周知な標準の一般的な方法の適用と当業者によって(例えば、R. P. J. Bronger, P. C. J. Kamer, P. W. N. M. van Leeuwen, Organometallics 2003, 22, 5358 or R. P. J. Bronger, J. P. Bermon, J. Herwig, P. C. J. Kamer, P. W. N. M. van Leeuwen, Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 789 or M. Kranenburg, Y. E. M. van der Burgt, P. C. J. Kamer, P. W. N. M. van Leeuwen, K. Goubitz, J. Fraanje Organometallics 1985, 14, 3081 or P. Dierkes, P. W. N. M. van Leeuwen J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1999, 1519を参照されたい)得ることができる。前記配位子のいくつかは、市販されてさえいる。
【0064】
上記実施形態のいずれか1つによれば、L2配位子は、(9,9-ジメチル-9H-キサンテン-4,5-ジイル)ビス(ジフェニルホスファン)および4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジンからなる群から選択される。
【0065】
一般的に、式(2)の錯体を、文献に記載された一般的な方法による方法におけるそれらの使用に先立って、調製および単離できる。方法は、実施例において記載される。
【0066】
さらには、錯体を、in situで、いくつかの方法によって、水素化媒質中にて、単離または精製なしで、使用の直前に調製できる。
【0067】
本発明のRh錯体を、広範な濃度で本発明の方法の反応媒質へと添加できる。非限定的な例として、基質の量と比較して、錯体濃度として、10ppmより多い、好ましくは100ppmより多い、より好ましくは1000ppmより多いが、50000ppmより少なく、より好ましくは10000ppmより少ない錯体の量を挙げることができる。言うまでもなく、錯体の最適な濃度は、当業者に公知であるように、錯体の性質、基質、溶媒の性質および方法中に使用されるH2の圧力、ならびに所望の反応時間に依存することになる。
【0068】
実施例
これより本発明を、以下の実施例の方法によってさらに詳しく記載することになるが、ここで略号は当該技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示す。NMRスペクトルを、Bruker Avance II Ultrashield 400 plus(400MHz(1H)および100MHz(13C)で操作する)または Bruker Avance III 500(500MHz(1H)および125MHz(13C)で操作する)またはBruker Avance III 600 cryoprobe (600MHz(1H)および150MHz(13C)で操作する)のいずれかを使用して取得した。スペクトルは、テトラメチルシランの0.0ppmを基準として内部参照した。1H NMRシグナルシフトを、δppmで表記し、カップリング定数(J)を、以下の多重度:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;b、ブロード(分離されていないカップリングを示す)と共にHzで表記し、かつBruker Topspin softwareを使用して解析した。13C NMRデータは、DEPT90法およびDEPT135法の測定のケミカルシフトδppmおよび混成状態で表記し、Cは4級(s);CHはメチン(d);CH2はメチレン(t);CH3はメチル(q)である。
【0069】
実施例1
ジエノンの接触水素化
典型的な実験手順は以下の通りである:
アルゴン下のグローブボックス内にて、ジクロロメタン中のRh(CO)2(acac)およびニキサントホス(L2、表に構造を示す)の溶液を30分間撹拌した。エタノール中のジエノン溶液を75mLのオートクレーブに入れ、続いてジクロロメタン中の[Rh(ニキサントホス)(CO)(acac)](0.1または0.2モル%)の溶液を入れた。オートクレーブを閉じ、水素ガスでパージし(10×20バール)、反応条件に応じて20バールまたは50バールにて水素ガスで加圧した。オートクレーブを60℃の設定でオイルバスに置き、適当な時間磁気撹拌して反応させた。反応の終わりに、オートクレーブをアイスバスにて冷却し、減圧した。反応混合物を減圧下で濃縮した。次いで、粗生成物をバルブ・トゥ・バルブ(bulb to bulb)蒸留によって精製して所望のケトン(別途示す)を得た。
【0070】
(E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ5-エン-2-オンの水素化
オートクレーブにエタノール(18mL)中の(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(4.081g、19.97ミリモル)と、Rh(CO)
2(acac)(5.0mg、0.02ミリモル)およびニキサントホス(11.6mg、0.02ミリモル)から調製したジクロロメタン(2mL)中の[Rh(ニキサントホス)(CO)(acac)]の溶液とを連続して入れた。反応混合物をH
2圧力下(20バール)にて2時間30分間加熱した。バルブ・トゥ・バルブ蒸留(bp=157℃、1.2ミリバール下)による精製で、(E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ5-エン-2-オン(3.858g、18.69ミリモル、収率94%)を、淡黄色の油状物(GC純度=98%)として得た。
【数1】
【0071】
実施例2
種々のRhX(Ln)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オンのジエノンの接触水素化
ジホスフィンLnを用いた、種々のロジウム錯体のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、ジホスフィン(Ln、表1に構造を示す)(1モル%)およびトルエン中のロジウムプレ触媒(1モル%)の溶液を別々に入れた。1時間の室温での撹拌の後、トルエン中の(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1、表7に構造を示す)(0.5ミリモル/バイアル)の溶液(1mL、0.5M、0.5ミリモル)を添加した。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に5バールにて水素ガスで加圧した。20時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きし、試料をそれぞれのバイアルから取り出してGCによって分析した。結果を表2に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
項目1および2は、比較例である。
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を包含する)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)+他の生成物の合計]として計算。
* 酢酸カリウムを反応混合物に添加した(10モル%)。
** 本実施例ではジクロロメタンをトルエンの代わりに使用した。
*** 4時間後に反応は停止した。
【0072】
実施例3
種々のRh(COD)Cl(Ln)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1)のジエノンの接触水素化 - 比較例(国際公開第2012150053号にて報告された条件)
[Rh(COD)Cl]
2を用いた、種々のジホスフィン(Ln)のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、表1に示す適当なジホスフィン(Ln)(1モル%)、[Rh(COD)Cl]
2(0.5モル%)、酢酸カリウム(10モル%)およびトルエン(1mL)を別々に入れた。1時間室温で撹拌した後、トルエン中の(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1、表7に構造を示す)の溶液(1mL、0.5M、0.5ミリモル)を添加した。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に5バールにて水素ガスで加圧した。20時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きし、試料をそれぞれのバイアルから取り出してGCによって分析した。結果を表3に示す。
【表3】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を包含する)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)+他の生成物の合計]として計算。
【0073】
実施例4
種々のRh(Ln)(CO)(acac)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1)のジエノンの接触水素化
種々のジホスフィンL1-L4を用いた、ロジウム錯体のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、表1に示す適当なジホスフィン(L1~L4)(1モル%)およびトルエン中のRh(CO)
2(acac)(1モル%)の溶液(1mL)を別々に入れた。1時間室温で撹拌した後、トルエン中の(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(表7に示したS1)(0.5M、0.5ミリモル)の溶液を添加した。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に5バールにて水素ガスで加圧した。20時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きし、試料をそれぞれのバイアルから取り出してGCによって分析した。結果を表4に示す。
【表4】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)+他の生成物の合計]として計算。
【0074】
実施例5
種々の溶媒中で様々なRh(L1~L2)(CO)(acac)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1)のジエノンの接触水素化
種々の溶媒中でのRh(L1~L2)(CO)(acac)のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、適当な予め形成されたRh(L1~L2)(CO)(acac)錯体(0.5モル%)を入れ、続いて(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(1ミリモル、表7に示したS1)と適当な溶媒(2mL)を入れた。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に5バールにて水素ガスで加圧した。を4時間60℃で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをアイス/ウォーターバスで冷却してガス抜きした。試料をバイアルから取り出し、GCによって分析した。結果を表5に示す。
【表5】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)+他の生成物の合計]として計算。
【0075】
実施例6
種々の圧力および温度にてRh(L2)(CO)(acac)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1)のジエノンの接触水素化
種々の圧力および温度でのRh(L2)(CO)(acac)のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたステンレス鋼オートクレーブに、予め形成したRh(L2)(CO)(acac)錯体(0.1モル%)を入れ、続いて(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(5ミリモル、表7に示したS1)およびEtOH(10mL)を入れた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に、示した圧力にて水素ガスで加圧して示した時間の間所望の温度で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをアイス/ウォーターバスで冷却してガス抜きした。試料をバイアルから取り出し、GCによって分析した。結果を表6に示す。
【表6】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ-5-エン-2-オン)+他の生成物の合計]として計算。
【0076】
実施例7
Rh(L2)(CO)(acac)錯体を用いた、種々のジエノン(S1~S15)の接触水素化:
Rh(L2)(CO)(acac)を用いた、ジエノンの水素化の一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたステンレス鋼オートクレーブに、CH
2C
l2(2mL)中に予め形成したRh(L2)(CO)(acac)錯体(0.1モル%)を入れ、続いて表7に示す適当なジエノン(20ミリモル)およびEtOH(18mL)を入れた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に20バールにて水素ガスで加圧して示した時間の間60℃で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをアイス/ウォーターバスで冷却してガス抜きした。生成物を減圧下での溶媒のエバポレーションによって単離し、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。結果を表8に示す。
【表7-1】
【表7-2】
【表8】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=示した時間後の、S1~17から所望の生成物ガンマ-デルタ-不飽和ケトンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンを含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[所望のガンマ-デルタ-不飽和ケトン]/[所望のガンマ-デルタ-不飽和ケトン+他の生成物の合計]として計算。
収率=精製後の単離の収率。
ND=未定。
* 反応は50バールの水素圧力下にて実施した。
** 3,4-および9,10-位の両方のC=C結合の水素化(15%)は、所望の生成物(71%)および完全水素化生成物のいくつかの不明な異性体(7%)と共に認められた。
【0077】
実施例8
種々のRhX(L1)錯体を用いた、(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)の接触水素化:
ジホスフィンL1を用いた、種々のロジウム錯体のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、キサントホス(L1、表1に構造を示す)(1モル%)、ロジウムプレ触媒(1モル%)およびCH
2C
l2(1mL)を別々に入れた。1時間室温で撹拌した後、CH
2C
l2中の(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)(表7に構造を示す)の溶液(1mL、1M、1ミリモル)を添加した。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に50バールにて水素ガスで加圧した。1時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きし、試料をそれぞれのバイアルから取り出してGCによって分析した。
【表9】
項目1から4は、比較例である。
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=本実施例で1時間後の、S18から所望のアルデヒド(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナールおよび他のいずれかの生成物(飽和アルコールである(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オールを含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール]/[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール+(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オール]として計算。
【0078】
実施例9
種々のRh(CO)(acac)(Ln)錯体を用いた、(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)の接触水素化:
種々のジホスフィンのスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、適当なジホスフィン(Ln)(1モル、表1に示した)、Rh(CO)
2(acac)(1モル%)、およびCH
2C
12(1mL)を別々に入れた。1時間室温で撹拌した後、CH
2C
l2中の(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)の溶液(1mL,0.5M、0.5ミリモル)を添加した。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に50バールにて水素ガスで加圧した。1時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きし、試料をそれぞれのバイアルから取り出してGCによって分析した。結果を表10に示す。
【表10】
錯体/塩基=基質に対するモル比(ppm)。
Conv.=本実施例で1時間後の、S18から所望のアルデヒド(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナールおよび他のいずれかの生成物(飽和アルコールである(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オールを含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール]/[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール+(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オール]として計算。
【0079】
実施例10
種々の溶媒中でのRh(CO)(acac)(L1)錯体を用いた、(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)の接触水素化:
種々の溶媒中でのRh(L1)(CO)(acac)のスクリーニングの一般的手順:
グローブボックス内にて、磁気撹拌子を備えたガラスバイアルに、予め形成したRh(L1)(CO)(acac)錯体(0.1モル%)を入れ、続いて(2E,4E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-2,4-ジエナール(S18)(5ミリモル、表7に示した)および適当な溶媒(5mL)を入れた。バイアルを75mLのオートクレーブに置いた。オートクレーブを閉じ、20バールにて水素ガスでパージし、最後に50バールにて水素ガスで加圧した。次いで、1時間室温で撹拌して反応させた。次いで、オートクレーブをガス抜きした。試料をバイアルから取り出してGCによって分析した。結果を表11に示す。
【表11】
Conv.=本実施例で1時間後の、S18から所望のアルデヒド(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナールおよび他のいずれかの生成物(飽和アルコールである(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オールを含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール]/[(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エナール+(E)-4-メチル-5-(p-トリル)ペンタ-4-エン-1-オール]として計算。
【0080】
実施例11
Rh(COD)(acac)またはRh(CO)
2(acac)錯体を用いた、(3E,5E)-5-メチル-6-p-トリルヘキサ-3,5-ジエン-2-オン(S1)の接触水素化 - 比較例:
実施例1で報告した一般的手順に従い、かつL2を使用した。結果を表12に示す。
【表12】
項目2および3は、比較例である。
Conv.=示した後の、S1から所望の生成物(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ5-エン-2-オンへの、および他のいずれかの生成物(完全飽和芳香族ケトンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサン-2-オンおよび脱共役エノンである5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ4-エン-2-オン(EおよびZ異性体の混合物)を含む)への変換率((%)、GCによって分析)。
Sel.=選択率((%)、GCによって分析)、100×[(E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ5-エン-2-オン]/[((E)-5-メチル-6-(p-トリル)ヘキサ5-エン-2-オン+他の生成物の合計]として計算。
【国際調査報告】