(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】核酸の多重化分析及び多重化法のために最適化したオリゴヌクレオチドTXプローブ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20240329BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563998
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022060014
(87)【国際公開番号】W WO2022219122
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523390976
【氏名又は名称】バイオタイプ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Biotype GmbH
【住所又は居所原語表記】Moritzburger Weg 67, 01109 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シャンツェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン リピンスキー ヌネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー ブラベッツ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS16
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、集合的かつ連続的な反応設定において複数の分子遺伝学的分析物を同時に検出するための、好ましくは完全に自動化された及び/又は多重的な方法、並びに前記方法において使用するための切断可能な加水分解生成物を有する少なくとも1つの分析物特異的オリゴヌクレオチドTXプローブを提供する。前記方法により、複数の切断可能な加水分解生成物がヌクレアーゼによってそれぞれのTXプローブから特異的に放出される。好ましくはキャピラリー電気泳動での分離ステップに続いて、それぞれの加水分解生成物について明確で他の信号と区別可能な信号が得られる。分離したそれぞれの加水分解生成物は、分子バリアント、例えば複数のTXプローブによって特異的に標的とされる一塩基多型(SNP)、欠失・挿入多型(DIP)又はその他を含むそれぞれの分析物の定性的及び/又は定量的検出を可能にするシグナルをそれぞれもたらす。好ましくは、前記方法は、定性的及び/又は定量的に小さな分子バリアント、例えばSNPを検出するために適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
- 少なくとも1つの分子遺伝分析物(T1-n)を含む少なくとも1つの標的配列、
- 特定の標的配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマー(P1-n)、
- 少なくとも1つの分析物に特異的な少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」1-n)であって、少なくとも1つのTXプローブが、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含む反応混合物を含む集合的かつ連続的な反応装置において少なくとも1つ以上の分子遺伝分析物を検出するための方法であって、切断可能な加水分解生成物(L1-n)が、
・ TXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋された標識
を含む少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含み、以下のステップ、
- 少なくとも1つの標的配列を少なくとも1つのTXプローブ及び少なくとも1つのプライマーと接触させるステップ、
- 少なくとも1つのプライマーとTXプローブの3’配列の双方を同一の標的配列の同一の鎖上のそれぞれの相補配列にハイブリダイズするステップであって、TXプローブがP1の3’上流にハイブリダイズするステップ、
- 鋳型依存性の5’→3’ヌクレアーゼ活性でハイブリダイズしたTXプローブを切断して少なくとも1つの切断可能な加水分解生成物を放出するステップ、
- 電気泳動により加水分解生成物を分離するステップ、及び
- 放出した加水分解生成物(L1-n)を検出するステップであって、それぞれの加水分解生成物が標的配列内の特定の分析物の存在を示すステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
切断可能な加水分解生成物及び放出した加水分解生成物(L1-n)が、骨格修飾、非骨格修飾及び/又は人工塩基を含む少なくとも1つのヌクレオチドの少なくとも1つの修飾をさらに含み、
- 骨格修飾が、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾が、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工化学修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非骨格修飾が、ヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端に、又は2つのヌクレオチド間に結合した化学構造であるスペーサーを含み、かつ好ましくは
a) (C
n)-OH[式中、nは整数であり、少なくとも3、好ましくは3、6、9又は12である]のアルキルアルコール、プロパニル(スペーサーC3)、ヘキサニル(スペーサーC6)、ノナニル(スペーサーC9)及びドデカニル(スペーサーC12)を含む(C
n)-OHのアルキルアルコール、
b) (C-O-C-C)
n-OH[式中、nは整数であり、少なくとも1である]のグリコールエーテル、好ましくはトリエチレングリコール(スペーサー9)、テトラエチレングリコール(スペーサー12)、及びヘキサエチレングリコール(スペーサー18)を含む(C-O-C-C)
n-OHのグリコールエーテル、及び/又は
c) 2’-デオキシリボースの1位にメチレン基を有するテトラヒドロフラン誘導体
から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数の分析物に特異的な3’配列(T1-n)を含む複数のTXプローブ(TXプローブ1-n)を使用し、全てのそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、それぞれ切断可能な加水分解生成物(L1-n)の少なくとも1つのヌクレオチドに結合した同一の標識を含み、それぞれが異なるリンカー及び/又は少なくとも1つの異なる修飾を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
複数のTXプローブが同一であり、かつ同じ切断可能な加水分解生成物(L1-n)からなるが、異なる加水分解生成物を放出して検出する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
以下、
- 放出したそれぞれの加水分解生成物が、重複、点変異、置換、欠失、挿入、フレームシフト、転座、mRNAスプライスバリアント及び/又は他の塩基変異を表す特定の配列の存在を示す、少なくとも1つの分析物内の少なくとも1つの変異
- ジェノタイピング、
- コピー数の変動及び/又は
- 発現レベルの変動
を含む、未修飾配列と比較した少なくとも1つの分析対象内の分子レベルの変動が検出可能である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
分析物内の一塩基多型(SNP)のそれぞれのアレルバリアントが、それぞれ放出した加水分解生成物によって検出される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
分離をキャピラリー電気泳動によって実施する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、プローブ1-n)であって、TXプローブが、
- 少なくとも1つのプライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含み、切断可能な加水分解生成物が、
・ TX プローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋させた標識、好ましくは蛍光体
を含む、分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項10】
切断可能な加水分解生成物が、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーの5’上流に位置する分析物に非特異的な5’配列(FLAP)を含み、かつ標識が、リンカーを介して
- TXプローブのFLAPの5’末端(5’リンカー)、又は
- 少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーから5’上流の内部ヌクレオチド
に結合されている、請求項9に記載のTXプローブ。
【請求項11】
切断可能な加水分解生成物が、骨格修飾、非骨格修飾及び/又は人工塩基を含む少なくとも1つのヌクレオチドの少なくとも1つの修飾を含み、
- 骨格修飾が、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾が、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工化学修飾を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項に記載のTXプローブから放出させた加水分解生成物(L1-n)。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の少なくとも1つ以上の分析物の検出のための方法における、請求項9から11までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)及び/又は請求項12に記載の加水分解生成物の使用。
【請求項14】
放出させた加水分解生成物が特定の分析物の存在の確認である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの標識した、又はそれ以上標識した分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)を含むキットであって、TXプローブが、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
をそれぞれ含み、切断可能な加水分解生成物が、
・ TX プローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋させた標識、好ましくは蛍光体
を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、核酸化学の分野、具体的には、核酸の検出及び定量のための方法に関する。
【0002】
本発明は、集合的かつ連続的な反応設定において複数の分子遺伝学的分析物を同時に検出するための、好ましくは完全に自動化された及び/又は多重的な方法、並びに前記方法において使用するための切断可能な加水分解生成物を有する少なくとも1つの分析物特異的オリゴヌクレオチドTXプローブを提供する。前記方法により、複数の切断可能な加水分解生成物がヌクレアーゼによってそれぞれのTXプローブから特異的に放出される。好ましくはキャピラリー電気泳動での分離ステップに続いて、それぞれの加水分解生成物について明確で他の信号と区別可能な信号が得られる。分離したそれぞれの加水分解生成物は、分子バリアント、例えば複数のTXプローブによって特異的に標的とされる一塩基多型(SNP)、欠失・挿入多型(DIP)又はその他を含むそれぞれの分析物の定性的及び/又は定量的検出を可能にするシグナルをそれぞれもたらす。好ましくは、前記方法は、定性的及び/又は定量的に小さな分子バリアント、例えばSNPを検出するために適している。
【0003】
核酸の分子診断は、定性的又は定量的な核酸配列バリアントを分析するために使用される技術の集合である(詳細について本明細書における分析物及びバイオマーカーの定義も参照されたい)。これらのバリアントは、現在確立され、統計的に有意な試料サイズで検証され、かつ精選されたデータベースに保存されている参照配列と比較して説明できるようになった。例えば、ヒトの診断において、1000人超の野生型又は健康な個人が、生理学的状態又は疾患との相関関係が十分に実証されている生殖細胞系列又は体細胞変異を有する患者と比較される。
【0004】
これらのバリアントを分析するために、いくつかの従来技術が確立されている。標準的な定性的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び定量的PCR(qPCR)は、この分野の専門家に周知である。逆転写ステップと組み合わせて、RNAを遺伝子型同定及び/又は定量することもできる。qPCR技術は、増幅させた標的DNAに特異的に結合するdsDNA選択的蛍光色素(例えばSYBRTMグリーン)又はFRET(Foerster Resonance Energy Transfer;フェルスター共鳴エネルギー移動)プローブを使用するin situ蛍光光学読み取り装置(例えばqPCRサーモサイクラー)と組み合わせて均一なアッセイで実施できる。FRETプローブ、例えばMolecular ScorpionsTM又はMolecular Beacons(モレキュラービーコン)は、増幅させた標的DNAに可逆的に結合する一方で、加水分解プローブ(時にTaqManTM(Roche Diagnostics International AG(Rotkreuz、CH)の商標)とも言われる)は、それぞれのPCRサイクル後にTaq DNAポリメラーゼの固有ヌクレアーゼによって加水分解される。アレル特異的FRETプローブを、種々の蛍光色と組み合わせて、1回のqPCRでSNP又は欠失-挿入多型(DIP)をある程度区別することもできる。FRETプローブの使用は、増幅させた標的DNAのための確認ステップをさらに提供し、これは分析又は医療ガイドラインによって品質基準として時に規定される。
【0005】
核酸増幅及びジェノタイピング又は定量化のためのマルチパラメーター又は多重技術は、いくつかの分析及び鑑別診断の用途のために好ましい。同一の臓器(例えば肺、泌尿生殖管、皮膚)の感染症(ウイルス、微生物及び寄生虫)などの同一又は類似の症状を示す症候群性疾患、又は頭蓋異形症もしくは行動の顕著さなどの遺伝性疾患がその例である。他の例は、個別の治療のための癌の層別化、又は種の個体を区別するための高い識別力を必要とする法医学及び父子鑑定である。これらは、12~24個の複アレル性ショートタンデムリピート(STR)又はSNPもしくはDIP(略称INDEL)のような30超の両アレル性分析マーカーを組み合わせることによってのみ達成できる。これらの程度の多重化を可能にする技術は、例えば、試料の準備から読み取りまでの全てのステップを統合する即時現場(point of need)機器であるカートリッジ装置(例えばFilm Array System、bioMerieux社製(Marcy-l’Etoile、フランス);Vivalytic、Bosch Healthcare Solutions GmbH社製(Waiblingen、DE))である。これらの装置の中核技術は、幾何学的多重化と呼ばれ、個々のPCR又はqPCRがカートリッジの別々のキャビティで実施されることを意味する。幾何学的多重化PCRの他のアプローチは、デジタルドロップレット(又はエマルジョン)PCR(ddPCR)(例えば、QX200 Droplet Digital PCR System、Bio-Rad Laboratories Inc.社製(Hercules、US-CA))、又はエマルジョンPCRを個別のナノリットルキャビティ及び固体ビーズと組み合わせても使用する次世代シークエンシング(NGS)装置(Iron Torrent System、Thermo Fisher Scientific Inc.社製(Waltham、Massachusetts、USA))、又は増幅及びジェノタイピングのために個々のDNA標的を分離するための個別領域を有するDNAチップ(Illumina Inc.社製(San Diego、US-CA))として公知である。NGS技術は、高い多重化機能での絶対定量のためにも使用できる。法医科学又は父子鑑定において標準的な広く受け入れられている多重化の他のアプローチは、ワンステップエンドポイント多重PCRとキャピラリー電気泳動(CE)とを組み合わせて、異なる長さ及び/又は蛍光色素により増幅産物を分離する。この技術は、この分野のエンドユーザーのニーズにより敏感かつ迅速に対応する。これらの試験において、多重PCRにおけるのプライマー対のうちの1つのPCRプライマーは、5’末端に共有結合している蛍光色素により標識されている。その後、その反応混合物を定性分析又は半定量分析のためにCE装置に注入する。25超のSTR又はDIPは遺伝子型を同定することができ、又は最大3人の犯罪者の法医学的汚れに含まれるDNA混合物さえも識別できる。MODAPLEX装置(本明細書の定義、Hlousekら、2012を参照)は、該文献において使用されており、多重qPCRのアプローチとCEとを組み合わせて、1つの反応設定で最大50のパラメーターのジェノタイピング及び定量化を達成する。
【0006】
標準的なqPCRの限界は、FRETプローブによるジェノタイピング及び定量化のための多重化の程度が最大6つの診断パラメーターであることである。この程度は、内部増幅制御を、分析又は医療ガイドライン(例えば体該診断装置の設計)に従って品質基準として含める必要がある場合にも推断される。さらに、いくつかの相対定量プロトコルは、追加で実施しなければならない並行反応及び参照標準が必要である。NGS及びddPCRは、非常に高価であり、大量の高品質の試料核酸を必要とし、かつNGSの場合はDNAライブラリーの構築のような多段階のプロトコルを必要とし、これは一次データの質の高い選択のための検証済みのバイオインフォマティクス並びに再現性及び安全性を保証するための配列アノテーションを含む一連の自動化ステップにより時間を消費する。カートリッジ装置は、アッセイの開発及び製造において欠点も有し、特にバイオマーカーの開発及び臨床検証研究において必要であるアッセイ設計についての柔軟性が低下する。
【0007】
CE内での異なるヌクレオチド配列の分離及び検出は、質量、長さ、電荷又はそれらの組み合わせに依存するそれぞれの分子の異なる移動挙動に基づく。従来技術の技術は、不要な人為構造を追加することなく明確で明確なシグナルを実現できないことが課題である。さらに他の課題は、多重度が増加しても不要な人為構造を追加することなく明確で明確なシグナルを達成することである。特に、蛍光標識したプライマーの使用は、増幅ステップ中に、副生成物を促進するプライマー及び増幅産物の複数の予測不可能な相互作用を生じ、したがって個々のパラメーター又は完全な試験の特異性及び感度を低減させる。MODAPLEXシステムの場合に、CEへの電気運動注入は、部分的な非変性条件下でのみ実施でき、標識したdsDNA配座異性体の追加のシグナルピークを生じうる。CEのこれらの特別な要件は、多重アッセイの開発中にいくつかの反復プライマー最適化ステップによってのみ除外されうる。さらに、多重反応における個々の増幅産物のサイズは、標的核酸配列に応じて、1つのプライマー対の1つのプライマーの5’末端に人工ヌクレオチドを追加することによって最適化しなければならず、これは、異なるアニーリング温度及び/又は非特異的配列相互作用により多重PCRにおける個々の反応の性能も低下させる。
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、従来技術の前記欠点を考慮した方法を提供すること、及び試料中の(標的配列内の)異なる遺伝子分析物の所望の量(多重度)を同定、分離、検出、及び定量するための改良された方法及びその方法において使用するためのオリゴヌクレオチドTXプローブを提供することである。本発明の他の目的は、TXプローブの(本明細書において定義されるような)種々の修飾によって所望の多重度が達成される、前記方法及び前記方法において使用するための前記オリゴヌクレオチドTXプローブを提供することである。他の目的は、異なる修飾を有するが同様及び同一の蛍光標識を有する所望の量のTXプローブで所望の多重度を可能にし、それによって1つ又は2つのみの蛍光チャネルを有する装置の多重化を可能にすることである。したがって、異なる分析物を示すTXプローブの異なる加水分解生成物の明確で明確な検出は、本発明による修飾の適切な組み合わせによって達成される。したがって、本発明の他の目的は、望ましくない人為構造を生じることなく、キャピラリー電気泳動におけるそれぞれの加水分解生成物の異なる移動挙動によって異なる分析物の検出のための多重アプローチを可能にする、異なるTXプローブ及び修飾を提供することである。したがって、本発明の他の目的は、試料中の所望の数の分析物及び異なる単一ヌクレオチド多型について、放出した加水分解生成物の異なる移動挙動を可能にする方法を提供することである。さらに、核酸ポリメラーゼの5’→3’ヌクレアーゼ活性、又は同一であるが別々の活性を有する酵素の混合物によって生じる前記TXプローブの所望の数の加水分解生成物を検出及び定量するための方法を提供することが目的である。そのために、それぞれの標的配列とのハイブリダイゼーション後に5’→3’ヌクレアーゼ活性及び核酸ポリメラーゼ活性により切断又は放出される、検出可能に標識したオリゴヌクレオチドTXプローブが提供される。最終的に、完全に自動化され、公知のキャピラリー電気泳動(CE)装置、例えばMODAPLEX装置又はThermo Fisher Scientific Inc.社製、Promega Corp社製、Fullerton,Qiagen GmbH社製、Syntol,Agilent Technologies Inc.社製などの他のシステムのような密閉された相互汚染のないシステムで実施できる、前記方法を提供することが目的である。
【0009】
技術水準に対するTXプローブの利点は以下である:
(1) 検出されるべき、及び多重PCR中に標的の特異的TXプローブから特異的に切断される、切断可能な加水分解生成物の標識した人工化合物が、多重PCR及びCE条件下で相互に又は増幅産物にハイブリダイズできないオリゴヌクレオチド配列に配置された10未満のヌクレオチドを含むこと。
(2) TXプローブが、非常に特異的な加水分解生成物の放出を可能にする新たに定義した内部ヌクレアーゼブロッカーを少なくとも1つ含むこと。
(3) 多重PCRプライマーが標識されておらず、したがって互いに干渉してCE条件下で標識及び放出させた加水分解生成物の検出を妨げる人為構造を形成しないこと。
(4) TXプローブが注入条件下でdsDNAを形成しないため、MODAPLEX装置の合計分析時間を簡素化し、短縮することができること。
(5) TXプローブの切断可能な加水分解生成物のセットを、多重化キットを迅速に開発するための汎用ツールボックスとして設計できること。キットの設計を、MODAPLEX装置への事前に設計した標準加水分解プローブを備えた公表されているqPCRモノプレックスのワンステップでの転送によって示した(Gabertら、2003、実施例7)。
(6) 両アレル性SNPジェノタイピングの複雑さ、及び試料プールでの集団研究又はDNA混合物の定量のための相対アレル定量の確度を、同一の蛍光体を有する単一のTXプローブに減らすことができること(実施例6)。
【0010】
本発明のTXプローブ及び方法は、試料中の標的配列内の個々の分析物の特異的な検出及び定量化に有用であるが、試料中の複数の分析物の検出及び定量化のための多重用途も提供する。本発明の主題は特許請求の範囲において定義される。本発明の概念を、以下の好ましい実施形態において説明するが、これらに限定されるものではない。実施例は本発明の実現可能性を示している。
【0011】
本発明の第一の目的は、以下、
- 好ましくは対象(ヒト又は動物)からの試料内に存在する、少なくとも1つの分子遺伝分析物(T1-n)を含む少なくとも1つの標的配列、
- 特定の標的配列の増幅に適しており、好ましくは遺伝子分析物に特異的である少なくとも1つのプライマー(P1-n)、好ましくは、PCR中に少なくとも1つ以上の標的を増幅するために適している少なくとも2つのプライマー(1つのプライマー対)、
- 少なくとも1つの分析物、好ましくは分析物内の分子レベルに対する変動に特異的な少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)であって、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的である3’配列であって、好ましくは前記逆相補配列が分析物と(好ましくはアドレス指定配列及び分析物内の分子レベルの変動により)ハイブリダイズし、好ましくは相補配列が少なくとも6(少なくとも7、8、9、10、11、12、13、15、20、25又は30以上ヌクレオチド)、及び他の実施形態において最大35(最大34、33、32、31、30、29、28、27、26、25)ヌクレオチドを含む、3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、好ましくは少なくとも2つのプライマー(1つのプライマー対)を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を阻害する分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカーとも言われる)、及び
- TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域、好ましくはそれぞれの分析物に(好ましくは分析物内のアドレス配列及び/又は分子レベル)にハイブリダイズする少なくとも1つ(及び最後の)ヌクレオチドの3’下流での少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーであって、前記内部ヌクレアーゼブロッカーが、特に少なくとも1つの修飾を保有するヌクレオチド(内部ヌクレアーゼブロッカー)に、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し(実施例1を参照)、かつ切断可能な加水分解生成物を3’下流プローブから構造的に分割し(
図1を参照)、切断可能な加水分解生成物(L1-n;
図1(3))が、
・ TXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、他の実施形態においては、TXプローブの3’配列に特異的な標的配列の5’末端の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ、最も好ましくは1つ、2つ又は3つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋され、好ましくは前記で定義したTXプローブの5’末端の1つ又は最後のヌクレオチドに連結される標識、好ましくは本明細書において定義される蛍光標識
を含む内部ヌクレアーゼブロッカー
を含む、少なくとも1つのTXプローブ
を含有する反応混合物を含む集合的及び連続的な反応装置において、少なくとも1つ以上の分析物の検出、好ましくは少なくとも20の分析物の同時多重検出のための、好ましくは完全に自動化された方法であって、
以下のステップ、
- 少なくとも1つの標的配列、好ましくは標的配列内の分析物、分子バリエーション及びアドレス配列と、少なくとも1つのTXプローブ及び少なくとも1つのプライマー、好ましくはPCR中に少なくとも1つ以上の分析物を増幅するために適している少なくとも2つのプライマー(1つのプライマー対)とを接触させるステップ、
- 少なくとも1つのプライマーP1、好ましくは少なくとも2つのプライマーと、TXプローブの3’配列との双方をそのそれぞれの相補配列に同一の標的配列(標的とした分析物の配列)の同一の鎖上でハイブリダイズするステップ、ここでプローブは、P1の3’上流にハイブリダイズし、又は好ましくは少なくとも2つのプライマーを使用する場合に少なくとも2つのプライマーP1とP2の配列にハイブリダイズし、好ましくは逆相補体である前記TXプローブの3’配列は、標的配列内の分析物(好ましくはアドレス配列及び分子バリエーション)とハイブリダイズし、
- 特に、同一の標的の同一の鎖上でそれぞれのTXプローブの5’上流にハイブリダイズするそれぞれのプライマーP1、好ましくはプライマーP1及びP2を含むか、又は一方はそれぞれのTXプローブの5’上流にハイブリダイズし他方は同一の標的配列の同一の鎖で同一のTXプローブの3’下流にハイブリダイズするプライマーP1及びP2を含む二本鎖を形成するステップ、
- 特に、保護基による前記ポリメラーゼによって前記TXプローブの3’末端ヌクレオチドが伸長されない伸長反応を可能にする/実施するステップ、
- 特に、(好ましくは分析物を含む)標的配列を複製するステップ、
- 鋳型依存の5’→3’ヌクレアーゼ活性を有する加水分解させたTXプローブを切断して、少なくとも1つの切断可能な加水分解生成物(L1-n)、特に一本鎖(ss、又は天然もしくは部分的に非変性のCE条件下でdsDNA形成能力を有さないより一般的なもの)を放出するステップ、特に5’→3’ヌクレアーゼ活性を有する鋳型依存核酸ポリメラーゼ又は鋳型依存核酸ポリメラーゼ及び本明細書で定義した非依存的エンドヌクレアーゼ(FEN)を含む前記で定義した混合物を、加水分解させたTCプローブをせずタンするための5’→3’ヌクレアーゼ活性を可能にする条件下で維持する条件下で切断を生じて標識した加水分解生成物(L1-n)を放出するステップ、
- 好ましくはそれぞれ分析物にハイブリダイズさせたTXプローブを本明細書において定義した切断部位で切断し、放出させた、好ましくは一本鎖の本明細書において記載した加水分解生成物(L1-n)を得るステップ、
- 特に放出させた加水分解生成物を遊走させるステップ、
- 電気泳動、好ましくはキャピラリー電気泳動、最も好ましくはMODAPLEX装置でのCEによって好ましくは少なくとも1つ以上の加水分解生成物を分離するステップ、及び
- それぞれの加水分解生成物が、標的配列内の分析物の存在、好ましくは分析物内の分子バリエーション(SNP又はDIP(略称INDEL))の存在を示し、特に、本明細書において記載したそれぞれのプローブ(T1-n)の逆相補配列によって標的されている、放出させた加水分解生成物(L1-n)を、好ましくは蛍光定量的に、最も好ましくはMODAPLEX装置で検出するステップ
を含む、前記方法である。
【0012】
前記方法の他の実施形態は、TXプローブが、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’末端から位置1(下流)又は位置2(下流)のいずれかで少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーを含み、それによって本明細書において定義した耐性を付与することである。
【0013】
前記方法は、本明細書において記載した任意の公知のキャピラリー電気泳動(CE)装置、好ましくはMODAPLEX装置に適用できる。好ましくは、前記法は、本明細書において定義した「多重」方法であり、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも30以上の標的、例えば、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250以上の分析物の、好ましくは異なる標的配列内の複数の異なる分析物の同時検出を可能にする。好ましくは、それぞれのTXプローブは全て同一の蛍光標識を含む。他の実施形態において、1つの標的配列は1つの分析物を含むが、1つの標的配列は、異なるTXプローブで標的した複数の分析物及び/又は分子バリエーションを含んでよい。したがって、それぞれのTXプローブは、1つの分析物、好ましくは1つの分子バリエーションに特異的であり、したがって複数のTXプローブは同一の標的配列を標的とするが、同一の標的配列内の異なる分析物を標的としてよい。
【0014】
本明細書において記載した本発明の方法は、前記ステップ(接触、ハイブリダイゼーション、二本鎖の形成、伸展(伸長)、切断、複製、分離及び検出)の複数のサイクルを含み、さらに以下:
- 任意に、少なくとも1つの分析物を含む標的配列を変性するステップ
- プライマー及び少なくとも1つのTXプローブを(一本鎖又は二本鎖の)標的配列及び分析物にアニーリングするステップ、並びに
- 標的配列にポリメラーゼを重合するステップ
を含んでよい。
【0015】
本明細書において記載した複製及び増幅反応は、プライマーが標的配列にハイブリダイズし、ポリメラーゼによって伸長されるが、TXプローブは伸長されない条件下で実施される。当業者により認識されるように、かかる反応条件は、対象の標的及びプライマーの組成に応じて変動しうる。複製及び増幅の反応サイクル条件は、プライマーが標的配列に特異的にハイブリダイズして伸長するように選択される。標的に特異的にハイブリダイズするプライマーは、分析される試料中に存在してよい他の核酸と比較して、優先的に標的配列を増幅する。本明細書において記載した方法の一実施形態において、標的配列は、分析物の技術的かつ特異的な検出に必須である分析物及びアドレス配列の周囲の他の領域を含む。PCRの場合において、特定のDNA領域の増幅のためのプライマー対は、(必須ではないが)特異性を保証するために少なくとも1つのプライマーを「アドレス配列」に配置するように設計される。したがって、少なくとも1つのプライマー、好ましくは2つのプライマーは、分析物の外側に結合するが、分析物を絶対に囲まなくてはならず、しかし分析物と重なってはいけない。プライマーは、遺伝的バリアントの上流及び下流に結合するが、必ずしも分析対象内にはない。
【0016】
標的配列及びそれぞれのTXプローブに応じて、及び記載した方法で放出させた加水分解生成物の特異的シグナルを可能にするために、少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーの適切な位置を、本明細書において定義したように選択する。TXプローブとその切断可能な加水分解生成物を完全にハイブリダイズする場合に、第1のヌクレアーゼブロッカーは、第2のハイブリダイズする5’末端ヌクレオチドにあり、必要に応じて第2のヌクレアーゼブロッカーは、TXプローブの切断可能な生成物の5’末端配列の第3のハイブリダイズするヌクレオチドにあってよい。ヌクレアーゼブロッカーの追加が可能である。切断可能な加水分解生成物が標的配列上の対応する配列に対するFLAP(例えば少なくとも1つのヌクレオチド)を含むという条件で、第1のヌクレアーゼブロッカーは、TXプローブの切断可能な加水分解生成物の5’末端配列の第1のハイブリダイズしない5’末端ヌクレオチド(FLAP)にあり、第2のヌクレアーゼブロッカーは、5’末端配列の第3のハイブリダイズするヌクレオチドにある。したがって、個々のFLAPの望ましくない切断及びしたがって望ましくない人為構造は、本明細書において記載した方法において回避される。特に、本発明による少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーは、二本鎖DNA特異的5’→3’ヌクレアーゼ活性についての、又は本明細書において記載したヌクレアーゼ活性を示し、本明細書において記載した加水分解生成物を放出するためにTXプローブを切断するために適している任意の他の酵素についての所望の切断部位を決定する。これらのヌクレアーゼは、本明細書において記載したエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼである。ヌクレアーゼについての切断部位は、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーの5’上流、より詳述すれば内部ヌクレアーゼブロッカーの隣の標的配列にハイブリダイズするTXプローブの少なくとも1つ、2つ又は3つの、特に最後のヌクレオチドの3’下流にある(
図1)。好ましくは、切断部位は、標的配列(好ましくは分析物)にハイブリダイズするTXプローブの3’下流の唯一の(かつ最後の)ヌクレオチドの後に特異的に位置する。この場合、TXプローブは本明細書において記載したFLAPを含み、それは標的配列にハイブリダイズせず、したがって前記で定義した断部位に関連しない。したがって、切断後に、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーを含む3’下流配列は加水分解生成物の一部ではないが、標的配列にハイブリダイズする少なくとも1つ、2つ又は3つのヌクレオチド、好ましくは1つが、加水分解生成物の一部になる(
図1)。好ましくは、ヌクレアーゼブロッカーは、リン酸ジエステルを介してTXプローブの3’下流配列に結合される。ヌクレアーゼブロッカーは、シグナルの特異性のために必須であり、実施例において示した高度に特異的なシグナルは先行技術を考慮すると予想外である。少なくとも2つのヌクレアーゼブロッカーが、切断可能な加水分解生成物の第1及び第3のハイブリダイズする5’末端ヌクレオチドに位置する他の実施形態において、切断部位は、第1のヌクレアーゼブロッカーと第2のヌクレアーゼブロッカーとの間にある。第1のヌクレアーゼブロッカー(第1のヌクレオチドにおける)は、2つの放出生成物への切断可能な加水分解生成物の非特異的切断を回避し、本発明の意味の範囲内で特異的シグナルを確実にする。
【0017】
本発明による内部ヌクレアーゼブロッカーの実現可能性は実施例1に示されており、LNAを使用して定義した位置でハイブリダイズしたTXプローブのヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与することに成功した。同様の又は改善した耐性は、LNAに次いで他の骨格修飾を示すTXプローブでも達成された。好ましくは、ENA、BNA3、PMO、PNA、オルト-TINA又はパラ-TINAヌクレオチドである。
【0018】
従来技術のオリゴヌクレオチドプローブは、増幅ステップを含む方法において非特異的シグナルを生じる。これは、従来技術のオリゴヌクレオチドプローブの5’末端がプライマーの1つの3’末端にアニール又は部分的にアニールし、プローブの5’ヌクレオチドがミスマッチとして残り、ポリメラーゼ酵素が潜在的にこれを基質として認識しプローブを切断しうるという事実によるものである。切断したオリゴヌクレオチドプローブは、露出した3’末端ヒドロキシル基を有し、プライマーとして機能することができる。プローブはプライマーに変わり、逆方向プライマー上で伸長する。次のサイクルで、プライマーとなった伸長プローブは、逆方向プライマーの鋳型としてコピーされる。したがって、生じた二本鎖は、プローブ及び逆方向プライマーから生じた全ての配列を有してよいが、標的からは生じない。これを考慮すると、本発明のTXプローブは、かかる非特異的増幅を回避し、その結果好ましくはCE内での非特異的シグナルを回避するために骨格修飾及び非骨格修飾及び/又は内部ヌクレアーゼブロッカーを提供する(実施例1)。本発明は、本明細書において記載した明確で特異的なシグナルのための切断可能な加水分解プローブを含む本発明のTXプローブの設計のための指示を当業者に提供する。これは、修飾及び/又は内部ヌクレアーゼの本発明の組み合わせによって達成できる。
【0019】
本発明による方法の好ましい実施形態において、前記方法は、癌疾患、例えば、白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、ALL、AML、CML又は任意の固形腫瘍(例えば、肺、肝臓、腎臓、膵臓、前立腺、乳房、子宮)を含む造血器癌の検出のため、好ましくは前記癌に特異的な分子バリエーション(SNP又はDIP(略称INDEL))の検出、並びに生物及び病原体、例えば異なるSARS-CoV-2バリアントの鑑別診断の検出のためのものであるが、ただし、これらに制限されない。本発明の方法は、これらに制限されないが、癌の検出に適していることは、実施例7及び本明細書において記載した表3のTXプローブに示されている。
【0020】
本発明の他の態様は、切断可能な加水分解生成物(
図1)及び放出した加水分解生成物(L1-n)が、少なくとも1つのヌクレオチド、特に骨格修飾、非骨格修飾及び/又は人工塩基を含むTXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチドの塩基、糖環及び/又は官能基の少なくとも1つの修飾をさらに含む、前記した方法であり、ここで
- 骨格修飾は、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾は、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工化学修飾を含む。
【0021】
さらなる態様は、本明細書において記載した本発明の方法及び/又はTXプローブであり、ここで、非骨格修飾、特にTXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチドの骨格修飾が、ヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端に、又は2つのヌクレオチド間に結合した化学構造であるスペーサーを含み、かつ好ましくは
a) (Cn)-OH[式中、nは整数であり、少なくとも3、好ましくは3、6、9又は12である]のアルキルアルコール、プロパニル(スペーサーC3)、ヘキサニル(スペーサーC6)、ノナニル(スペーサーC9)及びドデカニル(スペーサーC12)を含む(Cn)-OHのアルキルアルコール、
b) (C-O-C-C)n-OH[式中、nは整数であり、少なくとも1である]のグリコールエーテル、好ましくはトリエチレングリコール(スペーサー9)、テトラエチレングリコール(スペーサー12)、及びヘキサエチレングリコール(スペーサー18)を含む(C-O-C-C)n-OHのグリコールエーテル、及び/又は
c) 2’-デオキシリボースの1位にメチレン基を有するテトラヒドロフラン誘導体
から選択される。
【0022】
前述の修飾及び/又はそれらの組み合わせのそれぞれは、本発明によって包含され、それぞれ本発明の意味の範囲内で特定の分析物を表す特定のシグナルを生じる。本発明によるそれぞれのTXプローブのそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、本明細書において定義した1つ以上のスペーサー及び/又は修飾を含んでよい。本発明による方法の多重アプローチにおいて、所望の量の異なるTXプローブは、所望の量の異なるTXプローブと異なるスペーサー及び/又は修飾を有してよい。前記多重アプローチにおける他の実施形態において、全てのTXプローブは、同一の蛍光標識で標識され、スペーサー及び/又はリンカー及び/又は他の骨格/非骨格修飾である前記修飾により異なる。放出された全ての加水分解生成物はそれぞれキャピラリー電気泳動(CE)における他と区別可能な個別のシグナルによって、好ましくは、例えば
図4、
図5又は
図6に示したように適切なCE装置、好ましくはMODAPLEX装置内のCEにおけるそれぞれのピーク(曲線)として検出可能である。TXプローブを修飾するための本発明によるスペーサーの実現可能性及び放出された加水分解生成物の移動を実施例3に示し、スペーサー18、スペーサーC12、dスペーサー及びスペーサーC3を使用して、CE内でのそれぞれのスペーサーについて明確で特異的なシグナルを得ることに成功した。結果として、それらを同一の加水分解生成物(配列、リンカー及び標識)と組み合わせると、区別できるスペーサーにより、異なる明確で特異的なシグナルが得られる。
【0023】
本発明の方法のさらなる態様において、リンカーは、切断可能な加水分解生成物(L1-n)に、好ましくはTXプローブの切断可能な加水分解生成物の少なくとも1つのヌクレオチドに修飾及び/又は標識を導入するためのカップリング反応から生じる化学構造である。TXプローブを修飾するための本発明によるリンカーの実現可能性及び放出された加水分解生成物の移動を実施例4に示し、NHSエステル又はクリックケミストリー(ACH)を介した最も効率的なカップリングケミストリーを使用して、CE内で明確で特異的なシグナルを得ることに成功した。結果として、それらを同一の加水分解生成物(配列、スペーサー及び標識)と組み合わせると、区別できるリンカーにより、異なる明確で特異的なシグナルが得られる。好ましくは、特異性及び/又は多重度を高めるために、前記リンカーを本明細書において記載したスペーサーと組み合わせてよい。
【0024】
種々の修飾、スペーサー及び/又は種々のリンカーの適切な組み合わせは、多重度を増加させ、好ましくは、本発明の意味の範囲内の特定の分析物のそれぞれの程度を表す特定のシグナルの多重度を増加させる。本発明の方法及び本発明のTXプローブの他の実施形態において、TXプローブの切断可能な加水分解生成物の同一の、好ましくは蛍光性の標識及び同一の長さ及び同一の配列を維持しながら、修飾及び/又はリンカーを組み合わせる。同一の配列であるが本発明による異なる蛍光体、リンカー及び修飾を有する加水分解生成物からなる本発明のTXプローブの実現可能性を実施例5に示す(
図6、表2)。それぞれ特徴的な移動挙動を示す種々の放出された加水分解生成物は、それぞれのTXプローブ及び加水分解生成物の設計により、それぞれのCE内の明確で特異的なシグナルを検出したことをうまく示している。結果として、それらを同一の加水分解生成物と組み合わせると、本発明に従って非常に高い多重度が得られ、さらにそれを高めることができる。
【0025】
本発明によるそれぞれのTXプローブのそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、本明細書において定義した1つ以上の骨格修飾又は非骨格修飾を含んでよく、好ましくは特異的シグナルを生じる。本発明による方法の多重アプローチにおいて、所望の量の異なるTXプローブは、所望の量の異なるTXプローブと異なる修飾を有してよい。前記多重アプローチにおける他の実施形態において、全てのTXプローブが同一の蛍光標識で標識され、前記修飾が骨格修飾、非骨格修飾及び/又はリンカーであるために異なり、ここで、放出された全ての加水分解生成物はキャピラリー電気泳動における他と区別可能な個別のシグナルによって、好ましくは、例えば
図4、
図5又は
図6に示したように適切なCE装置、好ましくはMODAPLEX装置内のCEにおけるそれぞれのピーク(曲線)として検出可能である。
【0026】
本発明によるリンカーも他の修飾も、DNAポリメラーゼ又はエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼの活性に影響を及ぼさないことは、当業者には明らかである。
【0027】
前記方法の他の態様において、複数の分析物である特異的3’配列(T1-n)を有する複数のTXプローブ(プローブ1-n)が使用され、好ましくはTXプローブ及びそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)が分析物に対応し、全てのそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、それぞれ切断可能な加水分解生成物(L1-n)の少なくとも1つのヌクレオチドに結合した同一の標識を含み、それぞれが異なるリンカー及び/又は少なくとも1つの異なる修飾を含む。少なくとも1つのヌクレオチドは同一又は異なっていてよく、1超のヌクレオチドであってよい。
【0028】
本明細書において記載した方法の他の態様において、複数のTXプローブは同一であり、同じ切断可能な加水分解生成物(L1-n)からなるが、特に分析物を含む標的配列へのハイブリダイゼーション後、ヌクレアーゼによって異なる加水分解生成物が放出され(
図1B)、かつ好ましくはCEにおいて、それぞれ別個の明確なシグナルによって検出される。それぞれのTXプローブ、特に切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、全て、同一の配列、ヌクレアーゼブロッカー、リンカー及び/又は修飾からなる。標識は同一であるか又は異なっていてよい。標的配列へのハイブリダイゼーション後に、ヌクレアーゼは、本明細書において記載した所望の切断部位で切断する。それにより、分析物、好ましくはSNP内の分子バリエーションにより、異なる(少なくとも2つの)加水分解生成物が放出され(
図1B)、本明細書において記載した方法で分離及び検出される。本発明のこの実施形態において、少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれ以上の分子バリエーションが検出可能である。
【0029】
好ましくは、放出された複数の加水分解生成物は、全て分離され、同一のものはそれぞれのシグナルによって検出され、特にそれぞれのシグナルは、特有の分析物、好ましくは分析物内の分子バリエーションを表す一定量の同一の加水分解生成物を表す。ここで、それぞれのシグナルは、好ましくはキャピラリー電気泳動内で、最も好ましくは適切なCE装置、例えばMODAPLEX装置内で、明確で特異的なピーク(曲線)によって表される。好ましい実施形態において、「明確で特異的なシグナル」は、望ましくない人為構造を含まない加水分解生成物のみが検出され、それらの望ましくない人為構造が生じないことを意味する。本明細書において記載した方法及び本明細書において記載した本発明のTXプローブから放出された加水分解生成物の使用によって得られるシグナルの特異性は、ヌクレアーゼブロッカーによって得られる。ヌクレアーゼブロッカーは、実施例において示すように、高度に特異的なシグナルに不可欠である。本明細書において示した結果は、従来技術を考慮して予想外である。
【0030】
本発明の方法の他の態様において、複数の切断可能な加水分解生成物(L1-n)(多重度)は、少なくとも同じ切断可能な加水分解生成物(同一の配列、修飾及び/又はスペーサー=任意のものを有する)を、異なる標識、好ましくは異なる蛍光体と組み合わせることによって増加させることができる。これは、本明細書において記載したか又は当業者に公知の異なる蛍光体を有する少なくとも20の同一の加水分解生成物の区別を可能にする。好ましくは、「多重」は、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも30又はそれ以上の標的、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250又はそれ以上の標的の異なる標的配列内の、複数の異なる分析物の検出を示す。
【0031】
本発明の方法の他の態様において、切断可能な加水分解生成物の長さを変えることによって多重化を増加させることができ、ここで加水分解生成物は、同じ標識、リンカー及び/又は修飾にもかかわらず、長さにより電気泳動において異なる移動挙動を引き起こす1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。多重化の程度は、本明細書において記載した異なる標識、異なるプローブ長及び/又は異なる修飾及び/又はリンカーによってさらに高めることができる。
【0032】
本発明の方法及び本発明の加水分解生成物を含む本発明のTXプローブに従って、最初に放出された加水分解生成物L1は、第1の分析物、好ましくは第1の分析物T1内の第1の分子バリエーションの存在を示し、L2は、同一の集合的連続反応における第2の分析物T2の存在を示す。同じことがLn及びTnに当てはまり、nはそれぞれ、少なくとも2、10、20、25、35、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000から少なくとも2000までの整数である。したがって、本発明による方法は、TXプローブとそれぞれ切断された加水分解生成物が、好ましくは本発明の連続反応装置で同時に、それぞれ同量の特定の異なる分析物を表す少なくとも2、10、20、25、35、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000から少なくとも2000までの特異的で明確なシグナルの検出(定性的及び/又は定量的)を可能にする。好ましくは、1つの標的配列は1つの分析物を含むが、他の実施形態において1つの標的配列は2つ以上の分析物を含んでよい。
【0033】
本発明による方法の他の態様において、未修飾配列と比較した、好ましくは少なくとも1つの標的配列内の、少なくとも1つの分析物、好ましくは少なくとも1つの未修飾分析物の分子レベルでのバリエーション(同義語「分子バリエーション又はバリアント」)が検出可能であり、好ましくは同定され、特に相対的又は絶対的に定量化され、
- 少なくとも1つの分析物内の少なくとも1つの突然変異、ここで放出された各加水分解生成物は、複製、点変異、置換、欠失、挿入、フレームシフト、転座、mRNAスプライスバリアント及び/又は他の塩基バリエーション(例えばDNAメチル化又はDNAヒドロキシメチル化)を表す特定の配列の存在を示し
- ジェノタイピング、
- コピー数の変動及び/又は
- 発現レベルの変動
を含む。同一の標的配列内のさらなる変異は、異なる分析物を定義し、かつそれぞれの量の特定のTXプローブによって検出される。
【0034】
分子レベルでの「バリエーション」(又は分子バリアント)は、分析されるべき標的配列、好ましくはRNA又はDNAが、他の公知の配列と比較して分子偏差を示すことを意味する。分子レベルでの前記バリエーションは、この意味において「未修飾」である標準配列、コントロール配列又は比較配列と比較して同定及び検出されてよい。例えば、「未修飾」は親の遺伝子型であり、分子バリエーションが次世代で同定されるべきであるが、その他の比較も「未修飾」配列として使用されてよい。
【0035】
本発明の方法の他の態様において、分析物内の、又は好ましくは少なくとも1つ以上の分析物内の標的配列内の、一塩基多型(SNP)のそれぞれのアレルバリアントは、(それぞれのTXプローブの)放出されたそれぞれの加水分解生成物によって検出され、好ましくは、それぞれのアレルバリアントは、放出されたそれぞれの加水分解生成物によって検出され、それぞれ別個のシグナルによって分離及び定量される。ここで、それぞれのシグナルは、好ましくは望ましくない人為構造のない、CEにおける明確なピーク(曲線)として表される。好ましくは、それぞれのSNPは、前記一塩基多型(SNP)のない分析物と比較して区別できる1つの別個のシグナルによって検出可能である。かかるSNPは、定性的に、好ましくは定量的に分離及び検出されうる。好ましい実施形態において、かかるSNPは、本明細書において記載した1つの同一のTXプローブの使用によって分析されうる。実施例6(
図7)は、本発明の方法及び本発明によるTXプローブを使用したSNPの検出の実現可能性を示す。同様のことがDIP(INDELと同義)に当てはまる。
【0036】
DNA一塩基多型(SNP、時に一塩基バリアント、SNVとも言う)は、一般に全ての生物及びウイルスにおいて観察される。最大4つの異なるヌクレオチドがSNPの多様性を定義してよいが、DNA複製中にヌクレオチドのトランスバージョンが良好に修復されるという事実により、両アレル性SNPがより頻繁に観察される。SNPは、耐性、疾患又はその他の生物学的機能の変化のような表現型変化を付与するコード領域で生じうる。さらに、それらは、遺伝コードの変性により沈黙しているか、又は進化中に非コード領域又は未知の機能の領域に蓄積しうる。この普遍性が、種々の用途を提供する。分子バイオマーカーとしてのそれらの影響に加えて、それらは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)のために使用でき、進化研究(分子分類学又は疫学)の基礎であるか、又は法医学、考古学、動植物の育種において個々の存在を区別するために適用される。
【0037】
これらの適用分野の多くは、複雑な混合物中のアレル頻度の定量化のための正確な方法を必要とする。一例として、同種造血幹細胞移植(HSCT)後のドナー白血球及び患者白血球の比率を定義するキメラモニタリングがある。他の例は、非変異間質細胞及び造血細胞(血管新生及び免疫応答)も含まれてよい複雑な固形生検内の腫瘍細胞のパーセンテージを定量化することである。さらに、検査試料のプールは、費用及び時間を安全にするために、GWAS及び他のスクリーニング適用、例えば疫学において有利である。リアルタイム定量PCR(qPCR)は、これらの問題に対処する最先端技術でる。しかしながら、SNPアレルを識別及び定量するために、異なるアニーリング温度及び/又は異なる蛍光体を有する異なるプローブを適用する必要がある。さらに、標準化のために参照反応を適用する必要がある。プライマー、プローブ及び反応条件(成分の濃度及びサイクル条件)の設計及び検証は、(同等の増幅効率及びプローブ切断効率を得るために)時間を消費する最適化ステップを必要とし、適用される機器の多重化能力は低い。代わりに、デジタルエンドポイントPCR又は次世代シークエンシング(NGS)技術のような非常に時間を消費し費用がかかるデジタルジェノタイピングアプローチのみが適用されうる。
【0038】
本発明に基づいて、これらの欠点は、同一の蛍光体で標識した単一のTXプローブを適用して、一般的な反応条件を使用する1回のPCRで異なるSNP又はDIPのアレルを遺伝子型同定及び定量することによって解消されうる。
【0039】
本発明による方法の好ましい実施形態において、分離は、キャピラリー電気泳動(CE)によって、好ましくは適切なCE装置内でのCEによって、最も好ましくはMODAPLEX装置内で実施される。この方法を分離した装置(例えばPCRを独立して分離)で実施できるが、この方法はソフトウェアによって制御される単一の装置で実施されることが好ましい。最も好ましくは、本明細書において記載した方法は、PCR及び分離を実施する完全に密閉された滅菌システム、例えばMODAPLEX装置内で実施される。本発明によるM適切な単一のCE装置、例えばMODAPLEX装置の利点は、方法及びTXプローブ及びその使用に起因するものに加えて、相互汚染の回避、高品質の試験試料の維持、検査室スタッフによる手動介入、本明細書において記載した方法の望ましい条件のプログラミング、方法の進行及びシグナルの発生の監視の最小限化又は排除である。
【0040】
本明細書において記載した方法のために必要である全ての化学添加剤及びCE装置の手段が当技術分野で周知であることは、当業者には明らかである。
【0041】
本発明による加水分解生成物の分離中の移動は、例えば
・ 5’末端に結合する標識、好ましくは蛍光体を変化させる(実施例2及び5)、
・ 移動速度に影響を与える5’修飾因子(ヌクレオチド、スペーサーなど)を挿入する(実施例3及び5)、
・ 蛍光体を5’末端に結合することによりリンカーを変える(実施例4及び5)、
・ 蛍光体が結合するヌクレオチドを変える(実施例5)、
異なるTXプローブ設計(
図1)の使用により制御することができる。
【0042】
実施例7は、TaqManTMアッセイのための従来技術のプローブでさえ、本発明のTXプローブに容易に変換でき(表3)、一方で変換されたTXプローブの得られた感度及び特異性が、元のプローブについて記載されたものと同様に良好であったことを示す。したがって、本発明は、新規のTXプローブを提供するだけでなく、従来技術のプローブが本発明に従ってどのように変換され、CE装置、好ましくはCE MODAPLEX装置において使用されるかについての明確で可能な教示も提供する。実施例7は、得られた効果が予想外であったため、本発明による方法及びTXプローブの実現可能性及び発明性を証明する。
【0043】
本発明の他の目的は、分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、プローブ1-n)であり、ここでTXプローブは、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的であるか又は他の実施形態において第1のプライマーP1と第2のプライマーP2との間に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に対して逆相補的である3’配列、
- 標的配列に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、及び
- 特に少なくとも1つの修飾(内部ヌクレアーゼブロッカー)を保有するヌクレオチドに、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、切断可能な加水分解生成物を3’下流プローブから構造的に分割する、(特に分析物、好ましくはアドレス配列及び分子バリエーションにハイブリダイズする5’配列における、より好ましくは、前記配列は、分析物にハイブリダイズする少なくとも1つの(そして最後の)ヌクレオチドの3’下流にある;他の実施形態において)TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域における少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーであって、切断可能な加水分解生成物、好ましくはエンド/エキソヌクレアーゼから選択されるヌクレアーゼによって切断可能な加水分解生成物が、
・ TXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋された標識、好ましくは蛍光体
を含む、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含む。
【0044】
TXプローブ(及びその使用、及び本発明のキットに含まれるもの)の他の実施形態において、内部ヌクレアーゼブロッカーを保有する少なくとも1つの(そして最後の)ヌクレオチドは、本発明の意味の範囲内で前記バリエーションのない「未修飾」配列と比較して、分析物内の分子バリエーションの特定の位置にハイブリダイズする。
【0045】
記載したTXプローブの実施形態において、それは、分析物及び(分析物の技術的かつ特異的な検出に必須である)アドレス配列の周りの他の領域を含む標的配列内の分析物を標的とするように設計され、少なくとも1つのプライマーの場合に、特異性を保証するために(ただし必須ではない)、前記プライマーは「アドレス配列」に配置される。したがって、少なくとも1つのプライマー、好ましくは2つのプライマーは、分析物の外側に結合するが、分析物を絶対に囲まなくてはならず、しかし分析物と重なってはいけない。プライマーは、遺伝的バリアントの上流及び下流に結合するが、必ずしも分析対象内にはない。
【0046】
前記内部ヌクレアーゼブロッカーは、好ましくは、LNA(実施例1)、ENA、BNA3、PMO、PNA、オルト-TINA又はパラ-TINAヌクレオチドである。TXプローブの他の実施形態は、少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーが、特に分析物にハイブリダイズする、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’末端から位置1(下流)又は位置2(下流)のいずれかであり、それによって本明細書において定義した耐性を付与することである。実施例8及び実施例9は、LNA及び他のブロッカーの使用も示す。
【0047】
本発明によるTXプローブのいくつかの実施形態が
図9に示されているが、その設計はそれらの構造に制限されない。標識、好ましくは蛍光体(同義語蛍光標識)は、TXプローブの5’末端、又は1つの内部ヌクレオチド及び/又は(内部)リンカーに結合されてよい。本明細書に記載されるように、リンカーは、標識をTXプローブと結合し、ここで蛍光体のアジド基がリンカー剤の官能基との結合反応に加わる。
【0048】
TXプローブのヌクレオチド配列は、少なくとも6~35(及び6~35の間の任意の整数)のヌクレオチドを含む。加水分解生成物は、少なくとも1、2、3又はそれ以上のヌクレオチド、好ましくは1、2、3、4、5又は6、より好ましくは1、2又は3のヌクレオチドからなり、本発明による1、2又はそれ以上の修飾を含んでよい。
【0049】
Gabertらで公開されているような選択されたTaqMan
TMプローブ配列(そこに開示されている全ての配列は参照をもって含まれる)を、
図1に示し、実施例7に記載したように本発明の「TXプローブ」に変換した。本発明による他の修飾を、本発明に包含される他のTaqMan
TMプローブ配列に適用できる。したがって、本発明の他の態様は、本明細書において記載した少なくとも1つの修飾を含むTXプローブの製造方法である。好ましくは、前記方法において、TaqMan
TMプローブは、好ましくはGabertらに記載されている遊離体(educt)(出発物質)であり、本明細書において記載したように修飾され、本発明によるTXプローブが得られる。
【0050】
本発明の他の態様は、TXプローブであって、切断可能な加水分解生成物が、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー、好ましくはLNA、ENA、BNA3、PMO、PNA、オルト-TINA又はパラ-TINAヌクレオチドの5’上流に位置する分析物に非特異的な5’配列(FLAP)を含み、かつ標識が、リンカーを介して
- プローブのFLAPの5’末端(5’リンカー)、又は
- 少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーから5’上流の内部ヌクレオチド
に結合されている、TXプローブである。
【0051】
FLAP配列は、1~20ヌクレオチド、好ましくは1~15、1~10、1~5ヌクレオチドの非ハイブリダイズ(ミスマッチ)5’オーバーハングであるか、又は1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の非ハイブリダイズヌクレオチドを含んでよい。少なくとも1つ以上のヌクレオチドは、本明細書において記載した修飾を含んでよい。最大20ヌクレオチドのFLAPは、ヌクレアーゼ、好ましくはFENの活性を増加する。FLAPは、切断可能な加水分解生成物の特定の設計、又は本明細書において記載したSNP検出の特定の実施形態を考慮したミスマッチの結果によるものであってよい。
【0052】
所望の複数のTXプローブの使用により、標的配列内(1つ以上の標的配列内)の対応する複数の分析物(好ましくは分子バリエーション)が、本明細書において記載した方法で検出され、これにより、対応する加水分解生成物が、好ましくはCE装置内で放出、分離及び検出される。これは、本明細書において記載されるように検出される全ての所望の分析物(好ましくは分子バリエーション)のために、例えば癌疾患、例えば、白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、ALL、AML、CML又は任意の固形腫瘍(例えば、肺、肝臓、腎臓、膵臓、前立腺、乳房、子宮)を含む造血器癌、並びに生物及び病原体、例えば異なるSARS-CoV-2バリアントの鑑別診断の検出のために適用可能であるが、ただしこれに制限されない。
【0053】
本発明によるTXプローブの他の態様において、切断可能な加水分解生成物、特にTXプローブの切断可能な加水分解生成物(
図9に示す)は、特に骨格修飾、非骨格修飾、及び/又は人工塩基を含む塩基、糖環及び/又は官能基で少なくとも1つのヌクレオチドの少なくとも1つの修飾を含み、ここで、
- 骨格修飾は、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾は、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工的な化学修飾を含む。
【0054】
本発明によるTXプローブの修飾は、好ましくはスペーサーであり、リンカーとTXプローブの5’末端での少なくとも1つの(内部又は末端)ヌクレオチド(例えば、
図9d、9g)との間で結合されてよく、これは、標的配列内、又はリンカーとFLAPの5’末端との間で分析物にハイブリダイズする(
図9e)。
図9において示した実施形態は、2個又は3個(又はそれ以上)のヌクレオチドを有するTXプローブにも適用可能であり、少なくとも1つの修飾は、本明細書において記載したように、第1、第2又は第3のヌクレオチドにあってよい。2つ以上の修飾を組み合わせる場合に、それらは前記ヌクレオチドのいずれか1つにあってよい。一実施形態において、スペーサーは、ホスホジエステル結合と隣接するアルキルアルコール又はグリコールエーテルを含み、少なくともヌクレオチド又は2つのヌクレオチドの間の又は5’リンカーの3’末端及び/又は5’末端に結合する。好ましくは、スペーサーはFENのFLAP、内部ヌクレオチド及び/又は5’末端ヌクレオチドに結合する。1超のヌクレオチドを含むTXプローブの他の実施形態が本明細書において記載されている。
【0055】
本発明の他の目的は、本発明によるTXプローブから、好ましくは本発明による方法で、好ましくは本明細書において記載したヌクレアーゼ活性(エキソ又はエンドヌクレアーゼ)によって放出させた加水分解生成物(L1-n)である。TXプローブ及び放出された加水分解生成物は、核酸の検出及び定量のための他の方法において使用されうる。本発明のさらなる態様は、本発明によるTXプローブの製造方法である。放出された加水分解生成物は、分析物の存在を証明し、加水分解生成物は、好ましくは密閉かつ無菌及び/又は自動化した同一の装置内で、本発明による方法によって生成されてよく、又は第1の装置で生成され、第2の装置で分離及び検出を独立して実施してよい。本発明に従って、前記方法を完全に1つの装置内で実施することが好ましく、より好ましくは密閉及び無菌装置で、さらにより好ましくは本明細書において記載した自動化方法を可能にする装置で実施する。しかしながら、1つ以上の任意の装置は、本発明によるTXプローブを使用することによって、所望の検出及び好ましくは別個のシグナルによる検出の視覚化を可能にする。好ましくは、シグナルはキャピラリー電気泳動のピーク(曲線)である。最も好ましくは、この方法はMODAPLEX装置で実施される。
【0056】
本発明の他の目的は、本発明による少なくとも1つの分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)の使用及び/又は本明細書において記載した少なくとも1つ以上の分析物の検出方法における本発明による加水分解生成物の使用である。
【0057】
本発明による使用の他の態様において、特にCE内、好ましくはMODAPLEX装置のCE内で検出される、放出された、特に標識された加水分解生成物は、特定の分析物の存在の確認となる。検出された配列は、分析物内のプローブの3’配列に対する逆相補配列を表し、好ましくは特定の分子バリエーションを表す。したがって、TXプローブ及び切断可能な加水分解生成物は、前記加水分解生成物がそれぞれの分析物について、好ましくは分析物内の特定の分子バリエーションについて明確で特異的なシグナルを可能にするように設計される。
【0058】
本発明の他の目的は、少なくとも1つの標識した又は1超の標識した分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、プローブ1-n)を含むキットであり、ここでそれぞれのTXプローブは、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的であるか又は少なくとも2つのプライマーP1及びP2の間に位置する3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、好ましくは少なくとも2つのプライマーの使用によりポリメラーゼ連鎖反応を阻害する、分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、及び
- 特に少なくとも1つの修飾(内部ヌクレアーゼブロッカー)を保有するヌクレオチドに、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、切断可能な加水分解生成物を3’下流プローブから構造的に分割する、(特に分析物、好ましくはアドレス配列及び分子バリエーションにハイブリダイズする5’配列における、より好ましくは、前記配列は、分析物にハイブリダイズする少なくとも1つの(そして最後の)ヌクレオチドの3’下流にある)TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域における少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーであって、切断可能な加水分解生成物、好ましくはエンド/エキソヌクレアーゼから選択されるヌクレアーゼによって切断可能な加水分解生成物が、
・ TXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋されたラベル、好ましくは蛍光体
を含む、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含む。
【0059】
前記キットは、さらに任意に、特異的な標的配列の増幅に適している少なくとも1つの特異的プライマー(P1-n)、好ましくは、PCR中に少なくとも1つ以上の標的を増幅し、かつ本明細書において記載した領域にハイブリダイズするために適している少なくとも2つのプライマー(1つのプライマー対)をさらに含む。前記キットは、伸長反応、好ましくはPCR、最も好ましくは本発明による方法に必要な全ての薬剤、緩衝液及び/又は添加剤を含んでよい。前記キットの他の態様は、TXプローブが、特に標的配列にハイブリダイズする、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’末端から位置1(下流)又は位置2(下流)のいずれかの少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーであり、それによって本明細書において定義した耐性を付与することを含む。前記内部ヌクレアーゼブロッカーは、好ましくは、LNA(実施例1)、ENA、BNA3、PMO又はPNAである。
【0060】
定義
分析物は、一般的に、測定可能な特性を有する試料の構成要素として定義される(ISO 18113-1:2009)。核酸の分子診断は、核酸配列バリアント(例えば、アレルのジェノタイピング、例えば一塩基多型、欠失挿入多型、逆位、染色体間の転座、RNAのスプライスバリアント、短いタンデムリピートのような反復配列)、エピジェネティックな修飾(例えばCpGメチル化又はヒドロキシメチル化)、転写後バリアント(例えば、RNA編集及び選択的スプライシング、並びにポリアデニル化、ADPリボシル化、アデニンからイノシンへの変換、リボヌクレアーゼ分解などによるRNAの成熟)又は定義したDNA配列の量的変更(例えばコピー数の変化)もしくはRNA配列の量的変更(例えば遺伝子発現におけるmRNA)を分析するために使用される技術の集合である。核酸配列バリアントは、参照ゲノム内でのその位置を定義し、したがって複雑なゲノム又は異なる生物のDNA混合物における特異性(例えばマイクロバイオーム、環境標本の分析)を定義する、定常の核酸配列の特有な伸展に囲まれている。本明細書においてアドレス配列として定義される最大35bpの定常DNA(constant DNA)は、精製されたDNAの複雑な試験試料内の固有のDNAバリアントの存在を分析するための核酸プライマー及び/又はプローブを定義するためには(配列の複雑さ及び検出技術の特殊性に応じて)ほぼ十分である。これらの特徴を考慮すると、任意の核酸配列バリアント(同義語「分子バリエーション」)、エピジェネティックな修飾、又は少なくとも1つの固有のアドレス配列を有する定量的核酸変化は、特定の分子遺伝分析物(同義語「分析物」)を定義する。
【0061】
標的核酸(又は標的配列)は、特定の技術を適用する分子遺伝学的分析物の検出のために必要である全ての情報を含む核酸配列である。これは、分子バリアント(配列及び/又は量的バリアント)、アドレス指定配列、及び配列増幅(例えばポリメラーゼ連鎖反応の場合にプライマー結合部位、ループ媒介等温増幅の場合にアクセサリープライマー結合部位)又は選択的濃縮及び/又はプローブハイブリダイゼーションによる検出のような技術的理由のために重要な全てのさらなる配列情報を包含する。
【0062】
バイオマーカーは科学的妥当性を有する分析物であり、「分析物の科学的妥当性」とは分析物と生物学的状態との関連を意味する。バイオマーカーは、例えば、病原体の検出、環境又はバイオプロセス条件の評価、食品品質検査、植物及び動物の育種、法医学、獣医学及び人間の医学に使用される。体外診断医療機器の場合に、それらは、人間(又は患者)の正常又は病原性の生物学的プロセスの指標として作用する。また、治療上の発明に対する薬理学的反応の評価も可能である。医療バイオマーカーは、疾患に関連する特定の身体的特徴又は体における生物学的に生じた測定可能な変化を示す(Cariniら、2019)。臨床バイオマーカーの科学的妥当性は、広範な臨床探索及び検証試験において示されなければならない。さらに、分析前(例えば、患者のコンディショニング、サンプリング、試料の保管及び輸送、試験試料の調製)及び分析条件(適用される核酸増幅及び検出技術の能力)は、バイオマーカーの科学的妥当性、並びに診断アッセイの堅牢性及び再現性に大きな影響を与えることを言及すべきである。
【0063】
試験試料は、分析反応に直接適用される分析前プロセスの最終生成物として定義される。これは、マトリックス化学物質と一緒に混合物中に目的の分析物が含まれており、その組成及び濃度は検体の組成(次の定義を参照)及び精製ステップによって異なる。マトリックス化学物質は、分析物又はバイオマーカーの分析を損なう可能性がある(マトリックス効果)。試験試料は、目的の分析物又はバイオマーカー及び/又はコントロール(ネガティブコントロールとして水又は核酸を含まない試料緩衝液、スパイクイン参照標準を含むポジティブコントロール、及び/又は内部増幅コントロール)を含む。試験試料は、検体及び一次試料と区別する必要がある。
【0064】
検体は、分析物もしくはバイオマーカー、又は人工バーコード配列(例えば、追跡管理適用のために使用される)を含む生物学的量を有する考えられる任意の原料物質を含む。臨床診断の現場において、検体(生体からの生検、又は死後解剖された剖検とも呼ばれる)は、全体に適用されると想定される1つ以上の量又は特性の検査、研究又は分析のために採取された体液又は組織の別々の部分である(ISO18113-1:2009及びISO21474-1:2019)。
【0065】
一次試料(又はそのサブ試料)は、検査を目的として、検査室に送る又は検査室で受け取られる試料から調製した試料である(ISO21474-1:2019)。
【0066】
オリゴヌクレオチド合成は、定義した配列を有する核酸の短いフラグメント(許容可能な収率で典型的に6~120塩基)の化学合成である。天然の核酸は、ホスホジエステルによって5’から3’が架橋されているリボース(RNAの場合)又は2-デオキシリボース(DNAの場合)の骨格、及び1’位でヌクレオチド塩基のアデニン、シトシン、グアニン、チミン及びウラシル(RNAにおいてチミンの代わり)からなる。オリゴヌクレオチド合成は、核酸鋳型依存性ヌクレオチジルトランスフェラーゼによる酵素合成とは逆に、成長鎖の5’末端へのヌクレオチド残基の段階的付加(3’から5’方向)によって実施される。現在、オリゴヌクレオチド合成の好ましい技術は、ホスホラミダイト法及び保護した2’-デオキシヌクレオシド(dA、dC、dG及びdT)又はリボヌクレオシド(A、C、G及びU)に由来するホスホラミダイト構成要素を使用した固相合成及び自動化に基づく(Herdewijn 2005;Abramova 2013)。最近では、可溶性合成の再流行を支持している(Loennberg 2017)。
【0067】
(合成)ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの修飾は、糖骨格自体の1つ以上の位置、骨格の1つ以上の官能基、ヌクレオチド塩基に対する任意の化学的な人工的変更を含み、糖環の置換及び/又はヌクレオチド塩基の置換、又は特に後述するような前記修飾の任意の組み合わせを包含する。
【0068】
本発明で定義される(合成)ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド又は核酸類似体の骨格修飾は、五炭糖(リボース又はデオキシリボース)の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含む:オリゴヌクレオチドの骨格は、内部ヌクレオチド結合及び/又は糖部分を示す。架橋核酸(BNA)において、糖環は、架橋又は第三の環構造を介して修飾される。ENA(2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸)、BNA3(2’-O,4’-アミノエチレン架橋核酸)、及びLNA(Locked Nucleic Acid(ロックド核酸)、2’酸素と4’炭素を接続する追加の架橋で修飾されたリボース部分)はよく確立された例であるが、他のものも利用できる。他の中性骨格は、例えばホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)又はペプチド核酸(PNA)修飾を使用する。内部架橋を形成している骨格修飾は、「架橋骨格修飾」の群にまとめられ、本明細書において列挙したものとは異なってよい。
前記骨格修飾は、ヌクレアーゼに対する耐性を付与することが公知であり、標的核酸とのプライマー及びプローブの二重鎖安定性を高めてよい。2’糖位をメチル基及びメトキシエチル基で修飾することも可能である。2’位での修飾は、オリゴヌクレオチド二本鎖では十分に許容される。
【0069】
合成ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの非骨格修飾は、オリゴヌクレオチドの末端(5’又は3’)に又は内部ヌクレオチド塩基に結合される人工的な化学修飾である。これは、オリゴヌクレオチドの固相合成中に、5’末端で又は特別に修飾させたホスホルアミダイト構成要素を内部的に使用して、又は3’末端で、特別に修飾させた固体支持体材料、例えば制御細孔ガラス(CPG)又はマクロ多孔質ポリスチレン(MPPS)でオリゴヌクレオチド合成サイクルを開始することによって実施できる。代わりに、反応性化学基(例えばチオール、アミノ、カルボキシル、末端アルキン)は、固相合成中に非ヌクレオシドホスホラミダイトによって導入するか、又は合成後の処理ステップ(自動合成及び支持体からの切断が完了した後)によって結合させて、種々の化学カップリング反応のために利用できるようにすることができる。リン酸基の1つ又は2つの非架橋酸素原子が硫黄で置換され、それぞれホロチオエート(PTO)又はホスホロジチオエート(diPTO)が生じうる。ホスホジエステルの非荷電類似体であるアルキルホスホネート又はアリールホスホネートにおいて、ホスフェート基の非架橋酸素原子は、アルキル基又はアリール基で置き換えられている。かかる非骨格修飾は、特に少なくとも1つの修飾を保有するヌクレオチドに、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与する。
【0070】
本発明において定義したスペーサーは、非骨格修飾のサブグループであり、ヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端に、又は2つのヌクレオチド間に結合する化学構造として定義される(
図9)。スペーサーは、
a) (C
n)-OH[式中、nは整数であり、少なくとも3、好ましくは3、6、9又は12である]のアルキルアルコール、プロパニル(スペーサーC3)、ヘキサニル(スペーサーC6)、ノナニル(スペーサーC9)及びドデカニル(スペーサーC12)を含む(C
n)-OHのアルキルアルコール、
b) (-CH
2-O-CH
2-CH
2-)
n-OH[式中、nは整数であり、少なくとも1である]のグリコールエーテル、好ましくはトリエチレングリコール(スペーサー9)、テトラエチレングリコール(スペーサー12)、及びヘキサエチレングリコール(スペーサー18)を含む(-CH
2-O-CH
2-CH
2-)
n-OHのグリコールエーテル、及び/又は
c) 脱塩基フラン、脱塩基スペーサー又はdスペーサーとしても公知である、2’-デオキシリボースの1位にメチレン基を有するテトラヒドロフラン誘導体
を含む。
前記化学構造は、最も適したスペーサーを表すいくつかの例にすぎないが、他のスペーサーも可能であり、それらの例は前記定義に包含される。スペーサーは、ホスホラミダイト合成中に結合され、2つのホスホジエステル結合又は他の骨格修飾をもたらすものに隣接する。次の5’構成要素は、従来のヌクレオチド、非従来のヌクレオチド、追加のスペーサー、又は蛍光体を有するリンカーであってよい。
【0071】
天然の2’-デオキシヌクレオシド又はリボヌクレオシドの対応物を置換する修飾塩基又は人工塩基は、H結合を介した他の塩基との内部相互作用により核酸二本鎖の安定性を高める非主鎖修飾のサブグループである。修飾塩基は、2-アミノ-デオキシアデノシン(2-アミノ-dA)、5-メチル-デオキシシチジン(5-Me-dC)、アミノエチル-フェノキサジン-デオキシシチジン(AP-dC、G-Clamp)、C-5プロピニル-デオキシシチジン(pdC)、及びC-5プロピニル-デオキシウリジン(pdU)を含む。さらに、oTINA{オルトツイスト挿入核酸;(S)-1-O-[2-(1-ピレニルエチニル)フェニルメチル]グリセロール}及び(S)-1-O-(4,4’-ジメトキシトリフェニルメチル)-3-O-(1-ピレニルメチル)グリセロールインターカレート擬似ヌクレオチド(IPN)、又は3’マイナーグローブバインダー(MGB、国際公開第1996032496号)は、DNA二重鎖安定剤及び/又はポリメラーゼブロッカーとして機能する。
【0072】
内部ヌクレアーゼブロッカー(内部ブロッカー又はヌクレアーゼブロッカーと同義)は、ヌクレアーゼ活性、特にヌクレアーゼに対する前記ヌクレオチドの耐性を不与する少なくとも1つの人工修飾を有するヌクレオチドとして定義される。言い換えれば、本明細書において記載した特定の修飾は、修飾の位置でヌクレアーゼをブロックする機能を果たし、それによりハイブリダイズ配列の少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーの5’上流にあるヌクレアーゼの切断部位を規定する。第1のヌクレアーゼブロッカーの下流への第2(又はそれ以上)のヌクレアーゼブロッカーの追加は、本明細書において記載した方法において、切断部位を変化しないが、望ましくない人為構造が減少する。本発明の切断可能な加水分解生成物が本明細書において記載したFLAPを含む場合に、ヌクレアーゼブロッカーはFLAPに位置してよく、第2の内部ヌクレアーゼブロッカーは、本明細書において記載した切断可能な生成物の5’末端配列の少なくとも1つのハイブリダイズヌクレオチドの3’下流に位置する(
図1Aを参照)。適した修飾は主鎖修飾であり、より好ましくは、前記で定義した糖主鎖の2’位での修飾である。最も好ましくは、これらは2’-O-メチル及び2’-O-メトキシエチルである。前記で定義した非骨格修飾、好ましくはリン酸基の1つ又は2つの非架橋酸素原子が、硫黄、アルキル基及び/又はアリール基によって置換されているリン酸基の修飾は、ヌクレアーゼ活性に対する、特に特にヌクレアーゼに対する耐性を付与する。最終的に、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与するヌクレオチドの任意の人為的修飾又は前述した修飾の2つ以上の組み合わせは、本発明の意味の範囲内で内部ヌクレアーゼブロッカーとして機能する。好ましくは、内部ヌクレアーゼブロッカーは、架橋核酸又は挿入核酸、例えばそれぞれLNA、TINA、又は本明細書において記載したかもしくは従来技術において公知の他のものである。
【0073】
少なくとも1つの内部ブロッカーは、異なる機能を有する。それはシグナルの特異性に寄与するか、又は特異性にあらゆる影響を与えずにシグナルのストリンジェンシーに寄与する。本発明の方法内でTXプローブの切断可能な生成物の特定の設計のために選択された標識、好ましくはフルオロフォアに応じて、達成されたシグナル(ピーク)は明確かつ明瞭であり(望ましくない人為構造がない)、したがって本発明の意味の範囲内で特異的であるが、ラベルに応じて弱い又は薄暗い低い移動人為構造を伴ってよい。かかる場合に、TXプローブの切断可能な加水分解生成物内で少なくとも2つ又は3つのヌクレアーゼブロッカーを組み合わせることが好ましい。第1のものは、本明細書において記載されており、
図1Aに示される位置を有し、第2及び第3のものは、
図1Aにおける前述した位置のすぐ下流に位置することができる。内部ブロッカーは、切断部位の上流にあるフラップされた(ミスマッチな)ヌクレオチドと結合することによってより高度な多重化も促進する。シグナルの特異性(さらなる定義を参照)のために、最初のフラップされたヌクレオチド(切断部位のすぐ上流の位置)は内部ヌクレアーゼブロッカーを含む。ブロックされたフラップ位置を超えたフラップヌクレオチドの追加は、切断可能な加水分解生成物のサイズ及びその移動を厳密に制御できる。これにより、TX技術を支持できる多重度を高めることが可能である。
【0074】
TXプローブの少なくとも1つの修飾及び/又は内部ヌクレアーゼブロッカーの目的は、規定の加水分解生成物が、規定の切断部位で本明細書において記載したヌクレアーゼ活性を示す酵素によってTXプローブから放出され、複数のTXプローブを組み合わせるために適している本発明の方法における使用に適していることを確実にすることである。
【0075】
リンカーはカップリング反応によって生じる:本明細書において定義したカップリング反応は、骨格、非骨格修飾及び/又は標識をプローブ、特にヌクレオチドに導入するために使用され、固相ホスホラミダイト合成及び/又はオリゴヌクレオチドの合成後処理ステップ(例えば、固体支持体からの放出、無機塩基又はアミンによるアルカリ脱保護、HPLC)に適合する任意の化学反応である。十分に確立された化学反応の小計選択は、(a)活性化有機酸[酸無水物、酸塩化物、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル]又はイソチオシアネートとアミノ基との反応、(b)ヒドラジド基又はアミノオキシ基とアルデヒド基との反応、(c)ヨードアセトアミド又はマレイミド(2,5-ピロールジオン)とチオール基との反応、(d)シアノベンゾチアゾールとシステイン基との反応、(e)金属イオン触媒(例えば銅イオン)を使用しない又は使用するクリックケミストリー(アジド-アルキン付加環化;El-Sagheer及びBrown、2012)、及び(f)レトロ(又は逆)ディールス・アルダー(rDA)反応(例えばテトラジン-トランス-シクロオクテン又はテトラジン-ノルボルネンの反応対)である。異なるカップリング反応は、本願明細書においてリンカーと呼ばれ、(オリゴ)ヌクレオチドとその修飾の間、又はヌクレオチドと標識、好ましくは蛍光体の間で化学構造が生じる。反応性ホスホルアミダイト試薬として現在入手可能なリンカーは、例えば、
2-(3-アミノプロピル)-1,3-ジヒドロキシプロパンホスホルアミダイト
2,2-ジ(e-アミノプロピル)-1,3-ジヒドロキシプロパンホスホルアミダイト
3-アミノ-1,2-ジヒドロキシプロパンホスホルアミダイト
6-アミノ-1,2-ジヒドロキシヘキサンホスホルアミダイト
である。
【0076】
ラベルは、光励起時に発光する蛍光化合物である蛍光体(又は蛍光標識)又は試料内の特定の配列(分析物、標的配列及び/又はバイオマーカー)の存在を検出するための標識及び検出反応に適した他の任意の化合物を含む。診断測定装置内での蛍光体の適用可能性は、その検出ユニットの光学設定(光源及び光学フィルター)に応じて異なる。他の化合物は、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテンなどを含む。通常、標識はリンカーを介してヌクレオチドの5’リン酸基に結合される。代わりに、2’位が蛍光体の結合に広く使用されている。
【0077】
本明細書内で使用されるMODAPLEX装置(Hlousekら、2012)は、2つの方法i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び同時にii)キャピラリー電気泳動(CE)を組み合わせたリアルタイム多重核酸分析のための閉鎖システムである。Modaplexの実行中、目的の遺伝子標的をPCR反応で増幅させる。PCR反応は乱されずに継続するが、増幅させたDNAフラグメントは同時に動電的にキャピラリーゲルに注入される。このゲルで、DNAフラグメントをサイズごとに分離し、定量的に検出する。このプロセスをそれぞれPCRサイクル後に繰り返す。このようにしてリアルタイムデータが生成され、したがって最大50個の標的の同時定量を可能にする。MODAPLEX装置は、それぞれ励起波長488nm及び636+/-8nm並びに発光フィルター535+/-35nm及び675+/-25nmを有する2つの異なる光学チャネル1(青)及び2(赤)で蛍光シグナルを検出する。2つのチャネルは、実施例2及び
図3に示すように、蛍光体FAM/フルオレセイン(520nmで最大発光)及びTYE665(665nmで最大発光、Integrated DNA Technologies Inc(Coralville、US-IA)の所有物)の発光によって校正される。MODAPLEX装置のチャネル1及びチャネル2について代わりの蛍光体の例を以下に示す:
【化1】
【0078】
しかしながら、他の蛍光体及びチャネル1及びチャネル2の組み合わせが可能である。他のシアニンは、CY3、CY3.5、CY5、CY5.5、CY7;ローダミン及び誘導体、例えばTexas Red、R6G、R110、TAMRA、ROX;フルオレセイン及び誘導体、例えば5-ブロモメチルフルオレセイン、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシローダミン(JOE)、6-カルボキシルフルオレセイン(6-FAM)、1,2’,4’,1,4,-テトラクロロフルオレセイン(TET)、2’,4’,5’,7’,1,4-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、Lucifer Yellow、IAEDANS、ベンゾフェノキサジン、7-Me2N-クマリン-4-アセテート、7-OH-4-CH3-クマリン-3-アセテート、7-NH2-4-CH3-クマリン-3-アセテート(AMCA)、モノブロモビマン、ピレントリスルホネート,例えばCascade Bluem、Oregon Green、及びモノブロモリメチルアンモニオビマンを含む。蛍光色素の追加の例は、例えば、Johnson I及びSpent MY(2010)、及びその更新版に提供されており、これらはそれぞれ参照をもって組み込まれる。蛍光色素は、一般的に、例えばMolecular Probes,Inc.(Eugene、US-OR)、Amersham Biosciences Corp.(Piscataway、US-NJ)、Atto-Tec GmbH(Siegen、DE)、Dyomics GmbH(Jena、DE)、Applied Biosystems(Foster City、US-CA)などを含む種々の業者から容易に入手できる。蛍光色素及びその誘導体は、本明細書において記載した方法において特に好ましい。本発明によるTXプローブの適切な設計は、それぞれの蛍光チャネルについての電気泳動図の全範囲の使用を可能にする適した標識、好ましくは蛍光体を含む。本発明のTXプローブの使用によって得られる電気泳動図の範囲は、使用したCE装置の検出範囲に依存する。本明細書において使用したMODAPLEX装置の範囲は最大450bpであるが、本明細書において記載したTX技術は、500bp超の範囲のCE装置、好ましくはMODAPLEX装置にも適用可能である。これらの実施形態について、本明細書において記載したTXプローブ及び修飾の組み合わせをそれに応じて設計できる。実施例2において、TXプローブ配列及び修飾を有する加水分解生成物は同一であり、前記範囲を可能にした。
【0079】
核酸増幅技術(NAT)は、核酸、特に本発明による標的配列のin vitro複製のための酵素的方法をいう。本発明に従って、標的配列は、反復複製反応、好ましくは熱サイクルを必要とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の複製反応において増幅される。PCRは当業者に周知である。RNAは、逆転写酵素によって相補DNA(cDNA)に変換された後に増幅されうる。欧州特許第0506889号明細書、欧州特許第0632134号明細書、欧州特許第1152062号明細書、国際公開第2014023318号は、単一反応チューブ内でRNAを増幅するためのリアルタイム逆転写酵素PCRのためのさらに異なる技術を開示している。他のNATは等温的に処理する(iNAT)。LAMP(ループ媒介等温増幅)、HDA(ヘリカーゼ依存性増幅)、RPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)、SIBA(ストランド侵入ベース増幅)、RCA(ローリングサークル増幅)がDNA等温増幅についての例である。最終的に、リアルタイムNASBA(核酸配列ベースの増幅)は、加水分解プローブと組み合わせたRNAの直接増幅のためのiNATを記載する(Keigthleyら、2005)。
【0080】
多重NAT又は一般的に多重試験(多重アプローチと同義)は、理想的に1つの反応内で、それぞれの試験試料で同時に複数の分析物又はバイオマーカーを調査又は検出するアッセイの能力を表す。多重アッセイは、時間、費用及び情報量の面で利点があり、したがってシングルプレックスアッセイよりも信頼性の高い結果が得られる(「モノプレックス」と「シングルプレックス」は同義)。さらに、手作業の手順が少なくなり、試料の取り違え又は相互汚染のリスクが軽減される。好ましくは、「多重」(多重化と同義)は、好ましくは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも30又はそれ以上の標的、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、又はそれ以上の標的の異なる標的配列内での、複数の異なる分析物の検出を指す。好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30である。
【0081】
本明細書において定義した核酸電気泳動は、電場内の質量及び電荷の組み合わせによって核酸増幅産物を分離する技術である。負に帯電した核酸フラグメントは、水性緩衝液により接続した一対の電極の陰極側に適用される。分子の分離は、ゼリー状の粘稠度を有するアガロース又はアクリルアミドのようなポリマー(架橋又は直鎖、例えばパフォーマンス最適化ポリマーPOPTM-7(Thermo Fisher Scientific Inc.Waltham、US-MA)をふるい分けることによって改善される。フラットゲル及びキャピラリーゲル電気泳動(CE)装置は、ゲルポーターの設定に関して区別できるが、一方でCE装置は自動化のためにより便利である。さらに、PCR増幅産物は、いわゆる天然の条件を適用して二本鎖DNA(dsDNA)として分離することも、尿素や熱又はそれらの組み合わせのような変性剤の存在下で一本鎖(ssDNA)として分離することもできる。
【0082】
本明細書において使用されるMODAPLEX装置(Hlousekら、2012)は、PCRサーモサイクラーと変性キャピラリー電気泳動(CE)システムを組み合わせて、DNA配列標的の多重増幅及びDNA分析物又はバイオマーカーの定量を同時に可能にする自動システムである。本発明を支持し、1~6チャネルを有する異なる光検出ユニット(MODAPLEX検出器特性については蛍光体の定義を参照)を有するCE装置の他の例は、Applied Biosystems 3500/3500xL Genetic Analyzers及びApplied Biosystems SeqStudio装置(Thermo Fisher Scientific Inc.(Waltham、US-MA))、Applied Bioystems RapidHIT ID System、Spectrum CE Systems(Promega Corp.(Madison、US-WI))、Beckmann Coulter CEQTM8000 Genetic Analysis System(Fullerton、US-CA)、QIAxcel Advanced System(Qiagen GmbH(Hilden、DE))、Nanofor(登録商標)05M(Syntol(Moscow、RU))及びAgilent Technologies Inc.(Santa Clara、US-CA)からの多様核酸フラグメント分析器、例えばTapeStation、Bioanalyzer、Fragment Analyzer System、ZAG DNA Analyzer System、Femto Pulse Systemである。
【0083】
本明細書において使用したMODAPLEX標準物質は、多重セットアップにおける少なくとも1つの蛍光チャネルにおけるキャピラリー電気泳動で検出される少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の非増幅性サイズ標準であり、対象の分析物又はバイオマーカーとは無関係である(無関係又は人工的な鋳型及びプライマー)。それらは、長さ1~5ヌクレオチドの短いDNAフラグメントにより構成され、5’末端に蛍光体が結合しているが、内部ヌクレオチドに結合することもできる。これらは、MODAPLEX機器の分析ソフトウェアによる増幅産物の検出の範囲を定義する。本発明の記載した実施例において、MODAPLEXサイズ標準Mix(Biotype GmbH、DE)を1倍の最終濃度で使用した。これは、PCRサイクルを通じてシグナル強度が一定である5つのサイズの標準からなる。増幅コントロール(AC)標準物質は、人工鋳型(ヒトDNAとは無関係)、対応するPCRプライマー対、及び対応するTXプローブからなる。ACプラス3つの非増幅サイズ標準は、6-FAMチャネル(青チャネル)で実施し、2つの標準物質はTYE665蛍光チャネル(赤チャネル)で実行する。計算上の長さのサイズは、青チャネルで114.5bp、169.18bp及び277.5bp、赤チャネルで150.7bp及び440.4bpであった。ACの計算上の長さは58.6bpである。しかしながら、見かけ上の長さは、アッセイ分析に影響を与えることなく最大5bpまでわずかに異なってよい。AC標準物質は、鋳型に依存しないPCRコントロールとしても機能し、全ての試料、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールのウェルに追加しなければならない。代わりに、PCRセットアップに標準物質を使用して適切なエンドポイント濃度をスパイクしてよい。この場合、他のマーカーを鋳型に依存しないPCRコントロールとして使用する必要がある。MODAPLEX標準物質間の領域は、対象の増幅産物の標的、アレル又はプロフィール要求の領域に細分化できる。しかしながら、正確な増幅産物のサイズの要求は不可能である。
【0084】
本明細書において移動時間は、本発明に従って標識した核酸である標識した分析物がそれぞれのPCRサイクルでの動電学的注入後に検出点に到達するまでにかかる時間として定義される。MODAPLEXは、移動時間の単位として「スキャン」を使用し、が約6.66Hzの検出器のスキャン速度により、約150ミリ秒に相当する。移動時間は、標準物質システム成分の公知の移動長とそれぞれの移動時間とを関連付ける線形フィットを実施することによって移動長に変換できる(MODAPLEX標準物質の定義を参照)。
【0085】
FLAPエンドヌクレアーゼ(FEN)は、DNA二重らせんのフォーク型の不対5’末端(5’-FLAP)の一本鎖DNA又はRNA配列を切断する構造特異的及び鎖特異的なエンドヌクレアーゼである(Lyamichevら、1993)。ヌクレアーゼは、最初の5’-ハイブリダイズヌクレオチドの後で切断することが好ましいが、この切断部位に限定されない。5’フラップヌクレオチドの2番目、3番目、4番目及び5番目のハイブリダイズヌクレオチドの後で切断することもできる。したがって、加水分解反応は、主にサイズn+1の加水分解生成物を生じるが、n+2、n+3、n+4、n+5及びn、n-1、n-2、n-3、n-4などの加水分解生成物も生じ、一方で最小フラグメントサイズは1つである。本明細書に記載した修飾の組み合わせにより、本明細書において規定した所望の切断部位、それによるヌクレアーゼの活性を決定し、指示することができる。FENは、全ての生物、さらにはウイルスにも存在し(Mitsubouら、2014)、さらなる酵素と連動して、特にDNA複製中に、複製フォークの残りの鎖にあるいわゆる岡崎フラグメント(RNA-DNAハイブリッド)を放出する(DNA修復機能)。真正細菌のFENは、Pol 1型(Pol Aと同義)のDNAポリメラーゼと組み合わせて単一のタンパク質単位を形成する(例えば大腸菌(Escherichia coli)、テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(T. Thermophilus)、アクウィフェクス菌種(Aquifex spp.)のPol 1)。これまでに記載されている古細菌(アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、ピロコッカス菌種(Pyrococcus spp.)、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)、メタノサーモバクター・サーモオートトロフィカム(Methanothermobacter Thermoautotrophicum)及び真核生物のFEN(例えばヒト(Homo sapiens))は自律タンパク質を示す。好ましくは、熱安定性酵素が本明細書において使用される。
【0086】
加水分解(切断)生成物。ヌクレアーゼ、好ましくはDNA依存性DNAポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ)のFEN活性によって加水分解される、標的配列に完全にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの5’末端ヌクレオチド。得られた加水分解フラグメント(「加水分解(切断)生成物」と同義)は、常に3’-OH基とリンカーを介して結合した蛍光体を有する少なくとも1つのヌクレオチド(従来型又は非従来型)からなる。さらに、標的DNA鎖にハイブリダイズしなかった場合(フラップヌクレオチド)、追加のヌクレオチドを含むこともできるさらなる修飾を含みうる。FENによる加水分解の前に、「加水分解(切断)生成物」又は加水分解フラグメントは、以下で定義したTXプローブの一部である。TXプローブが標的核酸のDNA鎖にハイブリダイズ又はアニールした後、TXプローブを加水分解し、切断し、又はTXプローブから放出させる。本明細書において記載した本発明の好ましい実施形態において、それぞれの加水分解生成物は、本明細書において定義した、好ましくはキャピラリー電気泳動中の分離時にピーク(曲線)をもたらす独特の移動パターンを示すか、又はそれによって特徴付けられる。
【0087】
本発明に従って、シグナルの特異性は、それぞれの標的配列にハイブリダイズするそれぞれのTXプローブから放出されたそれぞれの加水分解生成物について、キャピラリー電気泳動において明確で明確なピーク(曲線)が1つだけ得られ、電気泳動図で表されることを意味する。電気泳動図は、本発明の方法で電気泳動を使用した場合に生成されるピーク及び曲線によって表される加水分解及び分離された加水分解生成物の記録又は視覚化である。好ましくは、明確で特異的なピークは、CE装置、例えばMODAPLEX装置によって得られる曲線である(例えば、
図2、
図4又は
図6を参照)。本明細書において記載した方法及び本明細書において記載した本発明のTXプローブから放出された加水分解生成物の使用によって得られるシグナルの特異性は、本明細書において記載した修飾及びヌクレアーゼブロッカーによって得られる。好ましい実施形態において、「明確で特異的なシグナル」は、望ましくない人為構造を含まない加水分解生成物のみが検出され、それらの望ましくない人為構造が生じないことを意味する。ターゲット配列に依存して、特にTXプローブの切断可能な加水分解生成物の5’末端がハイブリダイズするターゲット配列の3’末端のヌクレオチドに依存して、1つのヌクレアーゼブロッカー及び/又は修飾は、特定のシグナルを得るためには十分ではない可能性がある。したがって、かかる標的配列の場合、TXプローブの切断可能な生成物は、本発明による特異的シグナルを確実にするために、少なくとも2つ、3つ又はそれ以上、好ましくは2つ又は3つのヌクレアーゼブロッカー及び/又は修飾を含む。
特定のシグナルを可能にするかかる標的配列に適した解決法の1つは、TXプローブの切断可能な加水分解生成物の5’末端配列の第2の5’末端ヌクレオチドに第1のヌクレアーゼブロッカーを使用し、5’末端配列の第3のハイブリダイズするヌクレオチドに第2のヌクレアーゼブロッカーを使用することであり、ここで、前記切断可能な加水分解生成物及びTXプローブは、標的配列上のその相補配列に完全にハイブリダイズする。他の実施形態において、切断可能な加水分解生成物は本明細書に記載のFLAPを含み、第1のヌクレアーゼブロッカーはFLAPに位置し、第2のヌクレアーゼブロッカーは本明細書において記載した切断可能な生成物の5’末端配列の少なくとも1つのハイブリダイズヌクレオチドの3’上流に位置し(
図1Aを参照)、例えば、最初のヌクレアーゼブロッカーは、FLAP(=切断可能な加水分解生成物の第1の非ハイブリダイズヌクレオチド)である1つの非ハイブリダイズヌクレオチドにあり、第2の内部ヌクレアーゼブロッカーは、切断可能な加水分解生成物の第3のハイブリダイズヌクレオチドにある(
図1Bを参照)。
【0088】
本発明によるオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、
図1も参照)(TXプローブとも呼ばれる)は、オリゴヌクレオチド(好ましくは最小長5ヌクレオチド)を含み、その配列は、標的核酸の相補的核酸、好ましくはDNA鎖に特異的にハイブリダイズし(
図1.(2))、さらに以下:
- 本明細書において記載した3’末端のPCRブロッカー(保護基と同義)、
- 本明細書において記載した内部ヌクレアーゼブロッカー、及び
- ヌクレアーゼ、好ましくはFENによって放出される(切断可能な)加水分解生成物(
図1、(3))であって、本明細書において記載した切断可能な加水分解生成物は、内部ヌクレアーゼブロッカーの5’末端上流に位置し、
- その3’末端で、ホスホジエステル結合を介して内部ブロッカーに結合した少なくとも1つの標的特異的(相補的)ヌクレオチド(標的配列の鎖に相補的)を含み、
- 標的配列及び/又は標的配列にハイブリダイズしない、本明細書において記載した少なくとも1つの修飾をさらに含んでもよく、
- リンカーを介して切断可能な加水分解生成物、少なくとも1つの修飾又は少なくとも1つの標的特異的(相補的)ヌクレオチドのいずれかに架橋された標識、好ましくは蛍光体(例えば、本明細書において記載したMODAPLEX装置又はThermo Fisher Scientific社のApplied Biosystemにおいて使用するための)であり、標識は、核酸電気泳動装置、好ましくはMODAPLEX装置の検出ユニットによって定量することができる
(切断可能な)加水分解生成物。本発明の一実施形態において、切断可能な加水分解生成物は標識を含まないが(例えば、AgilentのCE/MSシステムで使用するため)、検出可能かつ定量可能である。この実施形態おいて、ゲルは挿入色素、例えばSYBRグリーンを含む。
【0089】
TXプローブの機能は、試験試料中の少なくとも1つの分析物の検出を可能にし、特定のシグナルを生じるために切断可能な加水分解生成物を提供することである。したがって、放出された加水分解生成物は、それぞれのTXプローブが標的上のその相補配列に特異的にハイブリダイズしたことを確認し、前記加水分解生成物のピーク(曲線)による移動パターンを通じて特異的なハイブリダイゼーションの視覚化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】TXプローブ(1)及び標的DNAへのハイブリダイゼーション後の加水分解生成物(3)。
【
図2】キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのプローブ内の内部ヌクレアーゼブロッカーの同定。
【
図3】蛍光標識されたフラグメントの移動を、MODAPLEX機器で測定した。
【
図4】標識した加水分解フラグメントの移動特性における修飾因子スペーサーの影響。
【
図5】標識した加水分解フラグメントの移動特性におけるリンカーの影響。
【
図6】蛍光色素、リンカー、修飾因子、ヌクレオチドの異なる組み合わせによって生じるTXシグネチャーの例。
【
図7】両アレルSNPを遺伝子型同定及び定量のための単一プローブの使用。
【
図8】Modaplex上のAML融合転写物を検出するために、公開されている一重配列(Gabertら、2003)の組み合わせを使用した多重化の例。
【
図10】キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのLNAを使用しFLAPを使用しない特異的なプローブ設計。
【
図11】キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのLNAを使用しFLAPを使用しない特異的なプローブ設計。
【
図12】キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を提供するプローブ内の代わりの内部ヌクレアーゼブロッカーの試験。
【
図13】異なるキャピラリー電気泳動技術での単一増幅産物アッセイによって生じたTXシグネチャーの例。
【0091】
図面の説明
図1:TXプローブ(1)及び標的DNAへのハイブリダイゼーション後の加水分解生成物(3)。A) TXプローブ(1)は、配列が標的核酸(2)のDNA鎖に特異的にハイブリダイズし、以下の修飾:3’末端にPCRブロッカー(白い上向き三角形)、及び内部ヌクレアーゼブロッカーの上流の5’末端に位置する加水分解生成物(白い四角、(4))を含む、一本鎖オリゴヌクレオチド(一連の「T」によりで表す)からなる。加水分解生成物は、ホスホジエステル結合(T)を介して内部ブロッカーに結合した少なくとも1つの標的DNA特異的ヌクレオチドを保持する。さらに、標的核酸にハイブリダイズしない修飾(白い円)及び/又はリンカー(ジグザグ線)を介して架橋された蛍光色素分子(白いひし形)からなってよく、核酸電気泳動装置の検出部により定量することができる。B) 加水分解生成物の他の実施形態は、内部ヌクレアーゼブロッカーを含む位置の上流にハイブリダイズする2つのヌクレオチドを含む。かかる構成において、1つのヌクレオチド加水分解生成物(1)と2つのヌクレオチド加水分解生成物(2)の2つの切断生成物を同時に生成できる。双方の加水分解生成物の相対比率を使用して、異なるアレルの存在を同時に定量できる。そのために、5’から3’方向の最初のヌクレオチドが一塩基多型の位置と一致している必要がある。
【0092】
図2:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのプローブ内の内部ヌクレアーゼブロッカーの同定。A) 未修飾TXプローブ(配列番号3、3’-修飾:スペーサーC3、5’-修飾:6-FAM)の加水分解生成物のスキャンでの移動時間を示す電気泳動図(定義における移動時間を参照)。2つのフラグメント、1つのヌクレオチド(1nt)及び2つのヌクレオチドフラグメント(2nt)を生成及び検出した(1nt及び2ntの加水分解ピーク、それぞれ明るい灰色と暗い灰色で影付けされている)。B) A)に示したのと同じ5’及び3’修飾を有し、さらに5’末端から2位と3位でPTOでブロックされたTXプローブの加水分解生成物。この構成により、いくつかのPTO由来のピーク(白いピーク(1)及び(2))を生じた。C) A)で示したものと同じ5’及び3’修飾を有し、5’末端から2番目の位置で1つのLNAでさらにブロックされたTXプローブの加水分解生成物。5’-FLAPを含まない完全にアニーリングされたヌクレオチド配列。1つのヌクレオチドのフラグメントのみを生成及び検出する。D) A)に示したものと同じ5’及び3’修飾を有し、さらに5’末端から1位と3位で2つのLNAでブロックされたTXプローブ。1位は不一致の位置を含む。2つのヌクレオチドを含む単一フラグメントのみが生成及び検出される(例として表2、参考文献4及び5を参照)。実施例1において最後のPCRサイクル後に生じた電気泳動図を示す。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用したが、この図において青いチャネルの標準物質ピークが1つだけ示されている(計算長114.5bp、対角線の塗りつぶし)。
【0093】
図3:蛍光標識されたフラグメントの移動を、MODAPLEX機器で測定した。内部ブロッカーを有さないプローブ(配列番号3;3’-修飾:スペーサーC3、5’-修飾:蛍光体)を実施例2に記載したように加水分解し、いくつかの短い蛍光体標識フラグメント(約<10nt)を生じた。これらのフラグメントは変則的に移動するが、より長いフラグメントはサイズに応じて直線的に移動する。青いチャネルで流れる加水分解生成物は黒い実線で表され、赤いチャネルで流れる加水分解生成物は破線で表される。6-FAM(ダイヤモンド)のような蛍光体は比較的速く移動し、5’-FLAPを移動修飾子として使用して生成できる分解可能な加水分解生成物の数が制限される。かかる制限は、ゆっくりと移動するAtto488(四角)、TYE665(丸)又はAtto643(三角)のような蛍光体によって克服でき、MODAPLEXの使用可能な範囲が約400ntに拡大する。
【0094】
図4:標識した加水分解フラグメントの移動特性における修飾因子スペーサーの影響。本発明の表2、参考文献17、18、19及び21に記載したように、5’末端をスペーサーで修飾し、実施例3の部門において記載したように加水分解した、異なるTXプローブ(配列番号3、3’修飾:スペーサーC3)の移動時間[スキャン](定義した移動時間を参照)を示す電気泳動図。問題の加水分解生成物は、C5-アミノリンカーによってAtto643に結合させたチミン(T)を含む単一ヌクレオチド(1-nt)である。追加のスペーサー修飾子がないと、単一ヌクレオチド(1-nt)の加水分解生成物は約350ヌクレオチドで移動する(影付きのピークは1-ntを示す)。dSpacer(
図4、2と示したピーク、本発明の表2、参考文献18)、スペーサー18(
図4、4と示したピーク、本発明の表2、参考文献21)、スペーサーC12(
図4、3と示したピーク、本発明の表2、参考文献19)、又は5’末端のスペーサーC3(
図4、1と示したピーク、本発明の表2、参考文献17)の追加は、加水分解生成物をそれぞれ約247nt、190nt、179nt、及び171ntで移動させる。加水分解生成物は、電気泳動図下で示した異なるスペーサーを含む。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用したが、この図では赤いチャネルの標準物質ピークが1つだけ示されている(計算値150.7bp、対角線の塗りつぶし、計算値)。
【0095】
図5:標識した加水分解フラグメントの移動特性におけるリンカーの影響。異なるリンカーを介して5’末端に結合している蛍光体6-FAMを、実施例4の部門に記載したように加水分解したTXプローブ(配列番号3;3’-修飾:スペーサーC3)の移動時間[スキャン](定義した移動時間を参照)を示す電気泳動図。異なるリンカーによって6-FAMに接続された、チミジン(T)を含むヌクレオチド加水分解生成物の移動:1,2,3トリアゾールリンカー(
図5、ピーク3)、プロリノールリンカー(
図5、ピーク2)又はヘキサニルリンカー(
図5、ピーク1)を介して結合したTは、それぞれ約163nt、106nt、及び88ntで移動する。縞模様のピークはMODAPLEX標準物質ピークと増幅コントロール(AC)に対応し、すべて青いチャネルにある。Cal1はAC(58.6bp)に、cal2及びcal3はサイズ標準(算出した長さ114.5bp及び169.18bp)に対応する。
【0096】
図6:蛍光色素、リンカー、修飾因子、ヌクレオチドの異なる組み合わせによって生じるTXシグネチャーの例:TXプローブ(配列番号3~6、3’修飾:スペーサーC3)を、実施例5の部門に記載したように加水分解した。A)青いチャネル、B)赤いチャネル。詳細な配合については表2を参照できる。破線の電気泳動ピークは、Modaplex標準物質に対応する。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用し、全てのサイズ標準を表示する(定義を参照)。
【0097】
図7:両アレルSNPを遺伝子型同定及び定量のための単一プローブの使用。TXプローブ(配列番号9;3’-修飾:スペーサーC3、5’-修飾:6-FAM)を、実施例6の部門に記載したうに加水分解した。ゲノムヒト野生型DNAを、インサートとして配列番号10~11を含む変異組換えプラスミドDNAの異なる量でスパイクした。MODAPLEX測定を実施し、図において測定値(y軸)を野生型と変異体の比率(x軸)に対してプロットする。シグナル強度の相対パーセンテージを定量化し、アレル頻度の定量化のための検量線として使用できる。
【0098】
図8:Modaplex上のAML融合転写物を検出するために、公開されている一重配列(Gabertら、2003)の組み合わせを使用した多重化の例。TXプローブの移動時間[スキャン](定義した移動時間を参照)を示す電気泳動図を、表3に列挙されている修正を適用することによって、実施例7の部門に記載したように生成した。A)青いチャネルで取得した全てのシグナルのエンドポイント電気泳動図、B)39サイクル後の赤いチャネルでの電気泳動図。C)及びD)は、エンドポイント電気泳動図上で番号付けしたそれぞれのピークに対応する増幅曲線である。オリゴヌクレオチド及び標的は表3を参照できる。得られたアッセイは特異的であり、革新的なTX技術を使用して、公開されている一重アッセイから派生した多重アッセイを生成する方法を簡単に要約している。影付きのピークは、実施例7において記載した標準物質のピークに対応する。
【0099】
図9:異なるTXプローブ設計の概略構造。概略図において、TXプローブ(濃い灰色のTTT)が標的配列(薄い灰色のTTT)にハイブリダイズする。(F)は、本明細書において定義したリンカー(ジグザグ線)を介して架橋した標識、好ましくは蛍光体を表す。リンカーは、内部リンカー(c)、f)、及びg))又は5’末端リンカー(a)、b)、d)、e))であってよい。(S)はスペーサーを表し、(M)は標的配列にハイブリダイズしない他の骨格修飾又は非骨格修飾を表す。ヌクレアーゼブロッカーの位置を黒いTにより表し、3’ブロッカー(ポリメラーゼ)を示す。切断可能な加水分解生成物は、ホスホジエステル結合(T)を介して内部ヌクレアーゼブロッカーに結合した少なくとも1つの標的特異的ヌクレオチド(図示した)又は複数のもの(図示せず)を保有する。ヌクレアーゼブロッカーは、ハイブリダイズ配列の5’末端から下流の1位にあるが(図示した)、2位又は3位又は1位及び3位にあってよい(図示せず)。示したTXプローブは10ヌクレオチドからなるが、9個、8個、7個又は6個で十分であり、10超のヌクレオチドも本発明の範囲内である。
【0100】
図10:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのLNAを使用しFLAPを使用しない特異的なプローブ設計。実施例8において記載した得られた加水分解生成物の[スキャン]における移動時間を示す電気泳動図。A)5’末端から位置1で1つのLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。1つのフラグメント、3ヌクレオチドのフラグメント(3)を生じ、検出した。第2のかすかなフラグメントである2ヌクレオチドのフラグメント(2)も同様に検出される。B)5’末端から位置2で1つのLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。この構成により、1つのフラグメント、1ヌクレオチドフラグメント(1)を生じ、検出した。C)5’末端から位置2及び3でLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。この構成により、1つのフラグメント、1ヌクレオチドフラグメント(1)を生じ、検出した。D)5’末端から位置3で1つのLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。この構成により、1ヌクレオチド(1)のフラグメント及び2ヌクレオチド(2)のフラグメントの2つのフラグメントを生じ、検出した。E)5’末端から位置3及び4でLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。この構成により、1ヌクレオチド(1)のフラグメント及び2ヌクレオチド(2)のフラグメントの2つのフラグメントを生じ、検出した。F)5’末端から位置1及び3でLNAでブロックした前記TXプローブの加水分解生成物。この構成により、1つのフラグメント、2ヌクレオチド(2)フラグメントを生じ、検出した。それぞれの電気泳動図は、それぞれの円がヌクレオチドの位置を表す概略図(中央)を有する。円は、一致/アニーリングされたヌクレオチドを表す。ヌクレオチドがLNAの場合に、図式内の位置を灰色で塗りつぶす。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用したが、この図において青いチャネルの標準物質ピークが1つだけ示されており、計算した長さは114.5bp(cal1)である。
【0101】
図11:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのLNAを使用しFLAPを使用しない特異的なプローブ設計。実施例8において記載した得られた加水分解生成物の[スキャン]における移動時間を示す電気泳動図。A)5’末端から位置1で1つのLNAでブロックしたFLAPを有するTXプローブの加水分解生成物。2つのフラグメント、2ヌクレオチド(2)及び3ヌクレオチドのフラグメント(3)を生じ、検出した。B)5’末端から位置2で1つのLNAでブロックしたFLAPを有するTXプローブの加水分解生成物。この構成により、1ヌクレオチド(1)のフラグメント及び3ヌクレオチド(3)のフラグメントの2つのフラグメントを生じ、検出した。C)5’末端から位置3で1つのLNAでブロックしたFLAPを有するTXプローブの加水分解生成物。この構成により、わずかな1ヌクレオチド(1)のフラグメント及び2ヌクレオチド(2)のフラグメントの2つのフラグメントを生じ、検出した。D)5’末端から位置1及び3でLNAでブロックしたFLAPを有するTXプローブの加水分解生成物。この構成により、1つのフラグメント、2ヌクレオチド(2)フラグメントを生じ、検出した。E)5’末端から位置1、3及び4でLNAでブロックしたFLAPを有するTXプローブの加水分解生成物。この構成により、1つのフラグメント、2ヌクレオチド(2)フラグメントを生じ、検出した。それぞれの電気泳動図は、それぞれの円がヌクレオチドの位置を表す概略図(中央)を有する。丸は一致/アニーリングしたヌクレオチドを表し、ひし形はミスマッチ/フラップしたヌクレオチド位置を表す。ヌクレオチドがLNAの場合に、図式内の位置を灰色で塗りつぶす。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用したが、この図において青いチャネルの標準物質ピークが1つだけ示されており、計算した長さは114.5bp(cal1)である。
【0102】
図12:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を提供するプローブ内の代わりの内部ヌクレアーゼブロッカーの試験。実施例9において記載した得られた加水分解生成物の[スキャン]における移動時間を示す電気泳動図。A)5’末端から位置2で1つのLNAでブロックしたTXプローブの加水分解生成物。1つのフラグメント、1ヌクレオチドのフラグメント(1)を生じ、検出した。B)TXプローブの加水分解生成物であるが、5’末端から位置2で2’-Oメトキシエチル-5-メチル-シチジン(2’-O-MOE-rMeC)を使用してブロックした。この構成により、1つのヌクレオチド(1)及び3つのヌクレオチド(3)のフラグメントを検出した。MODAPLEXサイズ標準ミックスを使用したが、この図において青いチャネルの標準物質ピーク(114.5bp、cal1)が1つだけ示されている。
【0103】
図13:異なるキャピラリー電気泳動技術での単一増幅産物アッセイによって生じたTXシグネチャーの例。実施例10において記載した得られた加水分解生成物の[スキャン]における移動時間を示す電気泳動図。全てのシグナルを、A)Applied Biosystems(登録商標)3500 Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific-Applied Biosystems Div.、Foster City、US-CA)及びB)Modaplexの青いチャネルで得た。MODAPLEXは電気泳動図の横軸に別の用語(移動時間)を使用するが、双方の装置(MODAPLEX及び3500 Genetic Analyzer)は、蛍光標識したヌクレオチドの移動を示し、相対蛍光を介してその量を示す電気泳動図を生成する。双方の装置は、同じ加水分解生成物と使用した標準物質を表す明瞭で明確なピークの比較可能な電気泳動図を提供する。
【0104】
【0105】
実施例
材料及び方法
ヒト検体及び真菌参照株からのDNA精製:末梢静脈全血からのヒト検体を、WMA-Word Medical Association(Ferney-Voltaire、FR)の現在のヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを得たボランティアから入手した。ヒト検体からのDNAを、メーカーの仕様書に従ってQIAamp(登録商標)DNA Blood Mini Kit(Qiagen GmbH、Hilden、DE)で調製した。真菌参照株を、DSMZ-German Collectioni of Microorganisms及びCell Cultures GmbH(Braunschweig、DE)又はCBS-The Dutch Centralbureau voor Schimmelcultures、Fungal Biodiversity Centre (Utrecht、NL)から入手した。酵母細胞を、クロラムフェニコール(Bio-Rad Laboratories GmbH、Muenchen、DE)を含むサブローグルコース寒天上で25℃で培養した。細胞を滅菌スパチュラで回収し、滅菌リン酸緩衝塩溶液(PBS、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)に再懸濁した。DNA精製を、QIAamp(登録商標)DNA Mini Kit(Qiagen GmbH、Hilden、DE)を製造元の仕様書に従って使用し、以下の変更を加えて実施した:試料を細胞破壊用にメーカーのATL緩衝液及びプロテイナーゼKと混合し、50℃で少なくとも12時間インキュベートした。
【0106】
精製した全てのDNAを、NanoDrop One(登録商標)(ThermoFisher Scientific Inc.、Waltham、US-CA)を使用したUV-VIS分光法によって定量した。
【0107】
PCRプライマー、プローブ、ユニバーサル標的配列及びプラスミドの設計及び合成:ヒトDNAの一部(配列番号10、ジーンバンクアクセッション番号NG_032903の一部)又はアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)のrDNA遺伝子配列(配列番号12、ジーンバンクアクセッション番号NC_007197の一部)を標的配列として選択した。実施例7のために使用したプラスミドインサートの標的配列は、Gabertら(2003)であった。PCRプライマー及びTXプローブ(表1)を、ソフトウェアGeneious10.2.6(Biomatters Ltd.、Auckland、NZ)及びMfold(Zuker 2003)を使用して設計した。全てのオリゴヌクレオチドを、市販の製造業者からHPLC精製した品質で入手した。実施例7のプラスミドを、Invitrogen GeneArt(登録商標)Gene Synthesis(Lifetechnologies、Darmstad、DE)で合成構築物として注文した。
【0108】
【0109】
Modaplex(登録商標)システムの標準ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の設定:標準PCRを最終容量25μLで実施し、1倍量のModaplex Buffer 3(Biotype GmbH、Dresden、DE)、2.5mM MgCl22.5ユニットMulti Taq2 DNAポリメラーゼ(ホットスタート機能付き;Biotype GmbH)、A.フミガーツスの染色体DNA10~50pgヒトDNA2.5~250ng、又は標的配列、0.3μM PCRプライマー、及び0.3μMプローブを含む7~76000コピーの人工合成プラスミドを含んだ(DNA配列は表1及び表2を参照)。マルチウェルプレートをアルミニウムシーリングフィルム(Biotype)で密封し、プレートアダプターを備えたベンチトップ遠心分離機を使用して遠心分離した。その後、シールを静かに外し、40μLのミネラルオイル(Merck-SIGMA-Aldrich、Darmstadt、DE)をそれぞれのウェルに適用した。
【0110】
MODAPLEXシステムを使用したキャピラリー電気泳動と組み合わせたPCRサイクル:分析器は、PCRサーモサイクラー、自動サンプラー、キャピラリーゲル電気泳動装置、及び2つの分析チャネルを有する蛍光検出器からなるモジュール式装置である(米国特許第7445893号明細書、米国特許第7081339号明細書、米国特許第7674582号明細書、米国特許第8182995号明細書;Hlousekら、2012)。分析装置は製造元の試薬を使用し、その説明書に従って完全に操作した。
【0111】
PCRを製造業者の化学物質で設定し、PCRプライマー及びプローブの最終濃度は標準的なPCRによって記載されたものと一致した。PCRプログラムは、96℃で2分間のホットスタート活性化、その後62℃で45秒、72℃で45秒及び98℃で5秒の16サイクル、並びにCE分離のための12回の注入を含む62℃で45秒、72℃で220秒及び96℃で10秒の23サイクルから構成した。キャピラリーゲル電気泳動によるリアルタイム分析を、17サイクル目から39サイクル目まで(2サイクルごと)、動電学的注入(10.000V、15秒)による72℃での伸長相で12回実施した。検出ユニットは、相対蛍光単位(RFU)で表した蛍光を記録し、記録した移動時間に基づいて電気泳動図を出力として提供する(
図2、
図4~
図6を参照)。リアルタイムPCR増幅曲線を、異なるPCRサイクルで記録した全ての電気泳動図から構築する(
図8C及び
図8Dの挿入)。双方の分析チャネルに存在する非増幅内部キャリブレーター(前記定義を参照:MODAPLEXサイズ標準ミックス)を、加水分解フラグメントの移動長を計算するためにそれぞれのアッセイで使用する。特に説明がない限り、材料及び方法を本発明の全ての実施例のために使用した。
【0112】
Applied Biosystems(登録商標)3500 Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific-Applied Biosystems Div.、Foster City、US-CA)を使用したキャピラリーゲル電気泳動:分析器を、メーカーの仕様に従い、次の調整を行って3500POP-7ポリマー(パフォーマンス最適化ポリマー)と共に使用した:装置のスペクトル較正を、仮想フィルターセットAny5Dye及びマトリックス25標準BT5(青、緑、黄、赤、オレンジの蛍光色素6FAM、BTG、BTY、BTR、BTO)(Biotype GmbH、Dresden、DE)を組み合わせて使用して実施した。本発明のTXプローブを含む本発明の連続反応装置で実行される1つのアッセイを、Modaplexシステムで実施した。PCR産物のアリコート又はその希釈液を、それぞれ、12μL HiDi Formamid(Thermo Fisher Scientific-Applied Biosystems Div.、Foster City、US-CA)及び0.5μLサイズ標準SST-BTO(Biotype GmbH、Dresden、DE)と混合し、95℃で3分間インキュベートし、その後、界面動電注入(10000V、5秒)まで装置の自動サンプラー内で室温で保管した。分析器の分析ユニットは、
図13に例示したように、塩基対[bp]での相対移動長(横軸)にわたる相対蛍光単位(縦軸)の電気泳動図を記録する。
【0113】
実施例1:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのプローブ内の内部ヌクレアーゼブロッカーの同定
標準PCRを、プライマーである配列番号1及び配列番号2で標的配列番号12(10pg)並びに5’-6-FAM及び3’-スペーサーC3修飾を有する異なるTXプローブ(配列番号3)に対してセットアップした。TXプローブの切断は、MODAPLEX-CEのいくつかのピークを明らかにした(
図2Aの1-nt及び2-ntの加水分解ピークを参照)。この現象は、標的に多くのシグナルピークがあり(多重化能力が低下)、さらに加水分解パターンがプローブに依存するため、システムを使用できなくする(ピーク強度がプローブごとに異なり、プローブが配列に基づいて異なる方法で加水分解されることが示唆される)。古典的なヌクレアーゼ阻害修飾PTO(Areziら、2003)は、化学合成中にPTO結合ごとに2つのオリゴヌクレオチド立体異性体を生成するが、目的のスペクトル範囲内に多くの非特異的で非増幅的なバンドを生成するため、適切ではなかった(
図2Bを参照)。したがって、ヌクレオチド類似体「ロックド核酸」(LNA)は、(i)ヌクレアーゼ活性を遅延させ、(ii)アニーリング温度を上昇させる(Owczarzyら、2011)という試験に成功した(
図2C~D)。
【0114】
いくつかのLNAパターンを試験した(例えば1番目の位置のみ、又は3番目の位置のみのLNA)。単一の1nt加水分解フラグメントのコンディショニングは、5’末端から2番目の位置をブロックする必要があった(
図2C)。これは、ほとんどの蛍光体製剤について十分であった。2nt加水分解フラグメントのコンディショニングは、5’末端から1番目と3番目の位置の双方がLNAであることが必要であった(
図2D)。最初のヌクレオチドは、標的配列に対して非ハイブリダイズ(FLAP-2ntピーク)である必要もあった。このLNAパターニングを、2ヌクレオチドより長い加水分解フラグメントの生成に使用できる。
【0115】
実施例2:400bpまでの検出範囲の拡大
標準PCRを、プライマー配列番号1~2、及び5’蛍光体と3’スペーサーC3修飾を有する異なるTXプローブ(配列番号3)を使用して、標的配列番号12(10pg)に対してセットアップし、ここで、TXプローブは蛍光体のみが異なった。本明細書において定義した移動長を実施例1で表したように決定した。TXプローブ(配列番号3)の切断は、MODAPLEX-CEのいくつかのピークを明らかにした(
図2Aの1-nt及び2-ntの加水分解ピークを参照)。MODAPLEX機器のために検証した2つの蛍光体、フルオレセイン(6-FAM)及びTYE665は、高多重化システムを構築するためには不十分である。したがって、同様の吸光スペクトル及び発光スペクトルを有する多くの追加の蛍光体を試験した。
図3は、蛍光体ポートフォリオの拡大の背後にある利点を示す:それぞれの蛍光体が有する異なる移動特性を利用することにより、それぞれの蛍光チャネルの電気泳動図の全範囲をカバーする効果的な多重化を概念化できる。これは、6-FAMによって提供される短い範囲が与える青いチャネルのために特に重要であった。Atto488はさらに使用範囲を広げることができた。
【0116】
実施例3:TXアッセイの多重化機能の拡張 - 修飾子の効果
「材料と方法」において記載したように、標的配列番号12(10pg)に対してプライマー配列番号1~2及びスペーサーで官能化された5’末端に連結された5’Atto643を有する異なるTXプローブ(配列番号3)を使用して標準PCRを設定した。この表2、参考文献17、18、19、及び21に記載されているとおり、及び3’-スペーサーC3修飾。移動長を実施例1で表したように決定した。新規の電気泳動シグネチャーは、特定の蛍光体と修飾剤、例えばスペーサーを組み合わせたり(
図4)、蛍光体の結合化学を変更したり(
図5)することによっても作成できる。炭酸鎖の長さ又は組成が異なるスペーサー部分により、加水分解フラグメントの移動が速くなる(
図4)。実施例3において、Atto643と結合した従来技術のブロックされていないオリゴプローブ(
図4A)を参照として使用した(灰色のピーク1-nt又は2-nt)。1ヌクレオチド(1-nt)のピークは、2ヌクレオチド(2-nt)のピークよりも長い長さで移動する。破線のピークはMODAPLEXキャリブレーター(cal)に対応する。本発明のTXプローブから切断したスペーサー18を有する加水分解生成物(ピーク(4)、
図4)は、全体のフラグメント移動にヌクレオチドの約0.5倍寄与し、本発明のTXプローブから切断したスペーサーC12を有する加水分解生成物(ピーク(3)、
図4)は、ヌクレオチドとほぼ同じ寄与をする一方で、本発明のTXプローブから切断したdSpacer(ピーク(2)、
図4)又はスペーサーC3(ピーク(1)、
図4)を有する加水分解生成物は、ヌクレオチド以上に寄与する。
【0117】
実施例4:TXアッセイの多重化機能の拡張 - リンカー効果
標準PCRを、標的配列番号12(10pg)に対してプライマーである配列番号1~配列番号2及び5’-6-FAM及び3’-スペーサーC3修飾を有する異なるTXプローブ(配列番号3)を用いてセットアップした。定義において記載したように、較正に使用したMODAPLEXサイズ標準混合物に加えて、増幅コントロール(AC)も使用した。ほとんどの蛍光体を異なる方法により結合でき、その結果異なるリンカーが得られるか、又は異なる構成要素として既に入手可能である。移動長を実施例1で表したように決定した。最も一般的で最も効率的なカップリング化学は、この実施例で使用したNHSエステル又はクリック化学(ACH)を介したカップリングである。通常、オリゴヌクレオチドの精製を改善するか又は複数の修飾を可能にするために、種々の化学反応を使用する。さらに、得られた分子の移動度は異なり、システムの多重度を増加できた(
図5)。
【0118】
実施例5:TXシグネチャーの例
標準PCRを、標的配列番号12(10pg)に対して、プライマーである配列番号1~配列番号2及び5’-6-FAM及び3’-スペーサーC3修飾を有する異なるTXプローブ(配列番号3~6)を用いてセットアップした。移動長を実施例1で表したように決定した。蛍光体、リンカー、修飾因子、加水分解性ヌクレオチドの組み合わせは、LNAを使用したポリメラーゼブロッキングパターンと共に、個々のPCR産物をそれぞれ表す固有の電気泳動シグネチャーの生成を可能にし、CE機器で定性的又は定量的に追跡できる(
図6)。
【0119】
【0120】
例として、表2と表3を組み合わせて読み取る方法は次のとおりである:配列番号40(表3)の元の配列から出発し、Mod参考番号5(表2)の修飾を組み合わせた修飾配列は、[T]ACCTCAGCTCCGCGGAAGTTGC(下線=LNA、[ ]=FLAP)である。又は、配列番号37(表3)の元の配列から出発し、Mod参考番号7(表2)の修飾を組み合わせた修飾配列は、TCCCAATGGGCATGGCGTGCである。
【0121】
実施例6:両アレルSNPを遺伝子型同定及び定量のための単一プローブの使用
本発明によるモデルシステムは、他の実施形態において、この例に示されるようなSNPの検出を可能にする。この実施形態において、切断可能な加水分解生成物は、TXプローブの5’末端の最初のヌクレオチドにある少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーに隣接する2つの(第1及び第2の)ヌクレオチドからなり(
図1B)、3つのヌクレオチドは、SNPを有する標的配列の相補配列とハイブリダイズする。標的配列上のSNPは、切断可能な加水分解生成物の第1のヌクレオチドに相補的な位置にある。したがって、同じ切断可能な加水分解生成物は、同じように前記SNPのない標的配列にハイブリダイズしないが、最初のヌクレオチドはミスマッチのためにハイブリダイズせず、その特定の場合には、それは本発明の意味の範囲内でFLAPとなるであろう。
【0122】
ここで、システムは、標準的なPCR(「材料と方法」の部門を参照)で、合計76000コピーの標的として配列番号10と配列番号11の異なる混合物を含み、これらは1 つのSNPが異なる(表1で強調されているC対A)。移動長を実施例1で表したように決定した。プラスミド鋳型の混合物は、配列番号11に対する配列番号10のパーセンテージが0%から100%の間で変動するようなものであった(試験した最高感度は1%であった)。配列番号7及び配列番号8をPCRプライマーとして使用し、配列番号9をTXプローブとして使用し、以下の修飾を追加した(表2には示されていない):5’-6-FAM、プロリノールリンカー、3’-スペーサーC3、及びTXプローブの5’末端から数えてSNPを保有する標的配列にハイブリダイズする2つのヌクレオチドの後の3番目の位置にある内部ヌクレアーゼブロッカーLNA。本発明に従って放出した加水分解生成物は、5’-6-FAMで標識した単一及びジヌクレオチドフラグメントからなり(
図1B)、存在するアレル/バリアントに応じて異なる割合で存在する。
図7は、R
2係数0.9999、式y=-0.2678×3+0.6569×2-1.2268×+0.8689による多項式回帰を示す。この設計により、制御や標準化反応が少なくなり、測定の確度(真実性及び精度)の改善が得られた。MODAPLEX装置のキャピラリー電気泳動と組み合わせると、30超の高度な多重化が得られる。
【0123】
実施例7:さらなるアッセイの最適化を行わない多重化における公開した一重qPCRの検出
公開されているTaqMan
TMアッセイを、記載した発明によってMODAPLEXプラットフォームに容易に転送できる。移動長を実施例1で表したように決定した。例として、急性骨髄性白血病(AML)に関与する融合転写産物を検出するためにGabertら(2003)によって設計された9つの一重qPCR(表3も参照)を多重化PCRで組み合わせ、MODAPLEXで実行した(
図8)。Gabertら(2003)で発表された、この出版物で使用されているがBeillardら(2003)で発表されたABLコントロールを含む選択されたTaqMan
TMプローブ配列(そこに開示されている全ての配列は参照により含まれる)を、異なる修飾を有する本発明の「TXプローブ」(表3)に変換した(
図1)。同じ又は他の本発明の修飾を、本発明に包含される他のTaqMan TMプローブ配列に適用できる。この実施例で使用した実験条件は、MODAPLEX Buffer3、3単位のHotStart Taq Polymerase(Biotech Rabbit、Berlin、DE)、及び5mM MgCl
2からなった。全てのオリゴヌクレオチド濃度を0.2μMに維持した。キャリブレーターとして、6-FAMチャネル(青いチャネル)の4つのサイズ標準とTYE665蛍光チャネル(赤いチャネル)の3つのサイズ標準からなる、前述のMODAPLEXサイズ標準ミックスの拡張セットを使用した。計算した長さのサイズは、青いチャネルで50bp(cal1)、114.5bp(cal3)、169.18bp(cal4)及び277.5bp(cal5)、赤いチャネルで150.7bp(cal6)、196.4bp(cal7)及び440.4bp(cal8)であった(
図8)。使用したACの計算上の長さは58.6bpであった(cal2)。それぞれの融合転写産物の配列(表3)をインサートとして、及びバックグラウンドとして100ngのヒトcDNAを含むプラスミドの等量混合物(コピー数0~76000コピー、試験した最低量は7.6)を鋳型として使用した。プラスミド混合物を用いない対照実験は結果が得られなかった(データは示されていない)。プラスミドコピー数76000、PCRサイクル39で多重化で実施したMODAPLEX反応を
図7に示す。示したように、TXプローブの使用により、Gabertら(2003)に記載されているように、TaqMan
TMプローブを使用した良好なアッセイを実行した。したがって、本発明によるTXプローブは、さらなる最適化ステップなしで、予想外にも感度及び特異性の要件を満たしている。
【0124】
実施例8:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を改善するためのLNAを使用する特異的なプローブ設計
標準PCRを、プライマー配列番号7及び配列番号8を有する標的配列番号10及び配列番号11(双方とも76000コピー)、並びに5’-6-FAM及び3’-スペーサーC3修飾を有する全て配列番号9を有する異なるTXプローブに対して個別にセットアップした。したがって、実施例1、4及び5における記載と同じ修飾を他のTXプローブと組み合わせて使用した。電気泳動図を、最後のPCRサイクル後に達せられた加水分解生成物の検出によって生成した(
図10及び11)。配列番号10の存在下において(
図10)、TXプローブは完全にアニールするが、配列番号11(
図11)の存在下では、5’末端から数えて最初のヌクレオチドが不一致となり、FLAPを形成する。1つ又は複数のLNAを使用した。
【0125】
生じた加水分解生成物の種類は、LNAが5’末端でどのように配置されているかによって異なる。TXプローブ上のいくつかのLNA構成を試験し、加水分解生成物を特定した(
図10~11)。LNAによる位置のブロックは、酵素を異なる加水分解点にリダイレクトすることと同等である。
図10Fの例において、5’から数えて1番目の位置にLNAがあるが、3番目の位置のLNAは、ポリメラーゼによる2番目の位置の消化を促進する。
【0126】
本発明において、FLAPの非存在下で5’末端から数えて2番目の位置(
図10B)、及びFLAPの存在下では5’末端から数えて1番目と3番目の位置(
図11D)をブロックすることが記載されており、双方とも実施例1に記載されている。この設計の要件を満たすために、少なくとも1つの内部ブロッカーが必要です。しかしながら、
図10C、E及び
図11Eの例は、切断部位の下流で複数のブロッカー(この場合は2つ)を使用した場合、生じたシグナルの完全性及び特異性を維持することを示している。複数の内部ブロッカーの背後にある使いやすさは、特定の状況での実現可能性を示す。1つは、他のオリゴヌクレオチド位置を加水分解できる可能性がある強化された活性を持つポリメラーゼを使用する場合で、その結果、他の加水分解フラグメント(4つ以上のヌクレオチド加水分解フラグメント)が望ましくなく生じる。もう1つは、強力な蛍光色素により電気泳動図において望ましくない加水分解生成物が可視化されるため、加水分解反応をより適切に制御する必要がある場合である。
【0127】
得られた結果が、適用したLNA構造に基づいて期待される結果から逸脱する例が多数ある:
図10Aにおいて、5’末端から数えて1番目の位置がブロックされているが、最も強度の高いシグナルは、2ヌクレオチドの加水分解フラグメントではなく、3ヌクレオチド(3)の加水分解フラグメントに相当し、
図10Fにおいて、1番目及び3番目の位置がブロックされているが、その抑制が予想されるにもかかわらず、2ヌクレオチド(2)の加水分解フラグメントが生じる。したがって、ここで示した結果は、最先端技術を考慮すると非常に驚くべきものです。
【0128】
特定の加水分解位置へのアクセスをさらに容易にするために、FLAP(非ハイブリダイズ5’末端ヌクレオチド)を導入した(
図11)。
図11Dの例では、FLAPが位置1に導入されており、したがって、
図10Fと比較して2ヌクレオチド(2)加水分解フラグメントの増加に寄与していることに注目されたい。例の
図11Dにおけるパターンでは、たとえプローブの1番目の位置がミスマッチであっても、1番目と3番目の位置でLNAを利用して2ヌクレオチド(2)の加水分解フラグメントを生成していることに注目されたい。その理由を理解するために、
図11Cの例では、単一ヌクレオチド(1)の加水分解フラグメントが、わずかではあるものの依然として検出できることが見出せる。
【0129】
Modaplexについて、機器の感度が高いため、適切なピークの割り当て、検出、定量化(Ct計算)のためにシグナルの厳密性が非常に重要である。言い換えれば、適切なLNAパターニングの重要性を過小評価してはならない。
【0130】
最終的に、本発明は、標的配列及びそれぞれのTXプローブに依存して、放出した加水分解生成物の特異的シグナルが可能である方法を提供する。これは、本明細書において記載した少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーを適切に配置することによって達せられる。これは、ブロッカーの選択的な配置の実現可能性及び独創性を証明する。特に、TXプローブが2つのブロッカーを含む実施形態についてデータが提供される。より具体的には、TXプローブの切断可能産物の5’末端配列の最初のハイブリダイズする5’末端ヌクレオチドに第1のヌクレアーゼブロッカー、及び3番目のハイブリダイズするヌクレオチドに第2のヌクレアーゼブロッカーを含む、完全にハイブリダイズする切断可能な加水分解生成物を有するTXプローブについて、TXプローブと、標的配列上の対応する配列に対するFLAP及びXプローブの切断可能な加水分解生成物の5’末端配列の最初の非ハイブリダイズ5’末端ヌクレオチド(FLAP)にある第1のヌクレアーゼブロッカーと3番目のハイブリダイズするヌクレオチドにある第2のヌクレアーゼブロッカーを含む切断可能な加水分解生成物とを比較する。驚くべきことに、個々のFLAPの望ましくない切断、したがって望ましくない人為構造を回避する。
【0131】
実施例9:キャピラリー電気泳動装置による検出における加水分解生成物の特異性を提供するプローブ内の代わりの内部ヌクレアーゼブロッカーの試験
標準PCRを、プライマーである配列番号1及び配列番号2で標的配列番号12(10pg)並びに5’-6-FAM及び3’-スペーサーC3修飾を有する異なるTXプローブ(配列番号3)に対してセットアップした。全ての内部ヌクレアーゼブロッカーを、プローブの5’末端から数えて2番目の位置に配置した(
図12)。単一ヌクレオチド、2ヌクレオチド、及び3ヌクレオチドの加水分解フラグメントを、図においてそれぞれ1、2、及び3として強調表示する。参照内部ヌクレアーゼブロッカーは、単一ヌクレオチド(1)の加水分解ピークを生成するLNA(
図12A)であった。メトキシエチル基による2’-糖位の他の骨格修飾の例として、2’-Oメトキシエチル-5-メチル-シチジン(2’-O-MOE-rMeC、
図12B)を使用した。2’-O-MOE-rMeCの使用(
図12B)は、2ヌクレオチド加水分解の生成を抑制した。しかしながら、LNAは、3ヌクレオチド(3)加水分解フラグメントの生成も無効にする(
図12A)。2’-O-MOE-rMeCがこの位置に耐性を付与するために適した2’-糖修飾であり、そのためこの種のブロッキングを達成することが技術的に実現可能であることを示す。前記TXプローブ設計を追加の適した2’-糖修飾及び/又は他の糖修飾と、及び/又はLNAと組み合わせることも適しており、同様に実現可能である。
【0132】
実施例10:異なるキャピラリー電気泳動技術での単一増幅産物アッセイによって生じたTXシグネチャーの例
この実施例は、本発明のTXプローブを含む本発明の連続反応セットアップが、Modaplex以外のCEデバイスとともに使用できることを示す。他の例として、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)の小サブユニット(16S)リボソームDNAを検出するために、それぞれが異なる加水分解生成物によって生成される11の明確なシグナルを生じるアッセイ(表4)を設計した(配列番号55、Nierman WCら)。この例を生成するための実行可能な多重化アッセイを作成することにおいて費用が高く時間のかかる最適化ステップを回避するために、2つのプライマー(配列番号42及び43)によって生成した単一の増幅産物(配列番号55)からなるPCR反応を作成した。増幅産物は、11個の異なるTXプローブの結合を可能にするために十分な長さである必要があり、それぞれのTXプローブは異なる加水分解生成物を生成する(表5)。表5に列挙したオリゴヌクレオチドを、本発明によるPCRにおいて合し、Modaplex上で実行した。
【0133】
その後、プレートを他の非定量的キャピラリー電気泳動装置であるApplied Biosystems(登録商標)3500 Genetic Analyzerで操作した。
図13において、得られたエンドポイント電気泳動図を比較のために表示する:上の
図13Aは3500Genetic Analyzerで得られ、下の
図13BはModaplexを用いて得られたものである。3500 Genetic Analyzerを、キャリブレーターシステムMatrix Standard BT5 multi(00-10421-0025、Biotype)で操作したが、ModaplexはMODAPLEXサイズ標準ミックス(定義)に記載した青いチャネルのサイズ標準のみを使用した。Modaplexは、x軸に移動時間を示す電気泳動図を示すが、内部較正システムのおかげで、定義において記載したように、これらを移動長に簡単に変換できる(
図13Bの二重軸を参照)。較正システムは機器ごとに異なるため、出力の長さも異なる。標準サイズの標準長の代わりに114.5bp、169.18bp、及び277.5bp、83bp、116bp、及び284bpをそれぞれcal1、cal2、cal3の代わりに使用する場合(表5)、3500 Genetic Analyzerによって登録したものと同様の移行長をModaplexで取得できる。この実施例で使用したModaplex実験条件は、MODAPLEX Buffer3、3単位のHotStart Taq Polymerase(Biotech Rabbit、Berlin、DE)、及び5mM MgCl
2からなった。す全てのオリゴヌクレオチド濃度を0.2μMに維持した。鋳型は、抽出したアスペルギルス・フミガーツスのゲノムDNA(配列番号55)10pgとして使用した。表5に列挙したそれぞれのプローブは、個別のシグナルを生じた。双方の電気泳動図において得られたピークは同様の移動パターンを示し、それぞれの加水分解生成物の同定を可能にする。ピーク強度の違いは、機器の較正の違いから生じる。加水分解フラグメントの分離にはいくつかの要因も影響する。緩衝液の組成は電気浸透流を制御し、したがって加水分解フラグメントの移動を制御するため、重要な要素であることが公知である。さらに、ホルムアミドを、3500 Genetic Analyzerでは使用するが、Modaplexでは使用しない。技術とキャピラリー電気泳動法との間には大きな違いがあるにもかかわらず、本発明の方法を使用することにより、電気泳動サインの同数の明瞭で明確なシグナルが観察される。これは、同じ概念、すなわち本発明による同じTXプローブ設計及び方法が実現可能であり、さらなる修正や調整を行うことなく別個のプラットフォームに直接首尾よく適用できることを意味する。
【0134】
【0135】
上記の標的及び染色体異常は、Gabertら(2320頁、表1及び2321頁)に記載されているものに対応しており、元のTaqmanTMプローブ及びプライマーも同様に記載されている。Gabertらの開示全体は、参照をもって本明細書に組み込まれる。
【0136】
【0137】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
- 少なくとも1つの分子遺伝分析物(T1-n)を含む少なくとも1つの標的配列、
- 特定の標的配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマー(P1-n)、
- 少なくとも1つの分析物に特異的な少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」1-n)であって、少なくとも1つのTXプローブが、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含む反応混合物を含む集合的かつ連続的な反応装置において少なくとも1つ以上の分子遺伝分析物を検出するための方法であって、切断可能な加水分解生成物(L1-n)が、
・ TXプローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋された標識
を含む少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含み、以下のステップ、
- 少なくとも1つの標的配列を少なくとも1つのTXプローブ及び少なくとも1つのプライマーと接触させるステップ、
- 少なくとも1つのプライマーとTXプローブの3’配列の双方を同一の標的配列の同一の鎖上のそれぞれの相補配列にハイブリダイズするステップであって、TXプローブがP1の3’上流にハイブリダイズするステップ、
- 鋳型依存性の5’→3’ヌクレアーゼ活性でハイブリダイズしたTXプローブを切断して少なくとも1つの切断可能な加水分解生成物を放出するステップ、
- 電気泳動により加水分解生成物を分離するステップ、及び
- 放出した加水分解生成物(L1-n)を検出するステップであって、それぞれの加水分解生成物が標的配列内の特定の分析物の存在を示すステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
切断可能な加水分解生成物及び放出した加水分解生成物(L1-n)が、骨格修飾、非骨格修飾及び/又は人工塩基を含む少なくとも1つのヌクレオチドの少なくとも1つの修飾をさらに含み、
- 骨格修飾が、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾が、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工化学修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非骨格修飾が、ヌクレオチドの3’末端及び/又は5’末端に、又は2つのヌクレオチド間に結合した化学構造であるスペーサーを含み、かつ好ましくは
a) (C
n)-OH[式中、nは整数であり、少なくとも3、好ましくは3、6、9又は12である]のアルキルアルコール、プロパニル(スペーサーC3)、ヘキサニル(スペーサーC6)、ノナニル(スペーサーC9)及びドデカニル(スペーサーC12)を含む(C
n)-OHのアルキルアルコール、
b) (C-O-C-C)
n-OH[式中、nは整数であり、少なくとも1である]のグリコールエーテル、好ましくはトリエチレングリコール(スペーサー9)、テトラエチレングリコール(スペーサー12)、及びヘキサエチレングリコール(スペーサー18)を含む(C-O-C-C)
n-OHのグリコールエーテル、及び/又は
c) 2’-デオキシリボースの1位にメチレン基を有するテトラヒドロフラン誘導体
から選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
複数の分析物に特異的な3’配列(T1-n)を含む複数のTXプローブ(TXプローブ1-n)を使用し、全てのそれぞれの切断可能な加水分解生成物(L1-n)は、それぞれ切断可能な加水分解生成物(L1-n)の少なくとも1つのヌクレオチドに結合した同一の標識を含み、それぞれが異なるリンカー及び/又は少なくとも1つの異なる修飾を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
複数のTXプローブが同一であり、かつ同じ切断可能な加水分解生成物(L1-n)からなるが、異なる加水分解生成物を放出して検出する、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
以下、
- 放出したそれぞれの加水分解生成物が、重複、点変異、置換、欠失、挿入、フレームシフト、転座、mRNAスプライスバリアント及び/又は他の塩基変異を表す特定の配列の存在を示す、少なくとも1つの分析物内の少なくとも1つの変異
- ジェノタイピング、
- コピー数の変動及び/又は
- 発現レベルの変動
を含む、未修飾配列と比較した少なくとも1つの分析対象内の分子レベルの変動が検出可能である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
分析物内の一塩基多型(SNP)のそれぞれのアレルバリアントが、それぞれ放出した加水分解生成物によって検出される、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
分離をキャピラリー電気泳動によって実施する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、プローブ1-n)であって、TXプローブが、
- 少なくとも1つのプライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
を含み、切断可能な加水分解生成物が、
・ TX プローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋させた標識、好ましくは蛍光体
を含
み、少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーが、ハイブリダイズ配列の5’末端から位置1(下流)又は位置2(下流)のいずれかにある、分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項10】
切断可能な加水分解生成物が、少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーの5’上流に位置する分析物に非特異的な5’配列(FLAP)を含み、かつ標識が、リンカーを介して
- TXプローブのFLAPの5’末端(5’リンカー)、又は
- 少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカーから5’上流の内部ヌクレオチド
に結合されている、請求項9に記載のTXプローブ。
【請求項11】
切断可能な加水分解生成物が、骨格修飾、非骨格修飾及び/又は人工塩基を含む少なくとも1つのヌクレオチドの少なくとも1つの修飾を含み、
- 骨格修飾が、ヌクレオチドの五炭糖の2’位及び/又は4’位での人工修飾を含み、
- 非骨格修飾が、ヌクレオチドの5’末端及び/又は3’末端に結合する人工化学修飾を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
請求項
9に記載のTXプローブから放出させた加水分解生成物(L1-n)。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の少なくとも1つ以上の分析物の検出のための方法における、請求項9から11までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)及び/又は請求項12に記載の加水分解生成物の使用。
【請求項14】
放出させた加水分解生成物が特定の分析物の存在の確認である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの標識した、又はそれ以上標識した分析物に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(「TXプローブ」、1-n)を含むキットであって、TXプローブが、
- 少なくとも1つの特異的プライマー(P1)の相補配列の3’下流に位置する領域内の少なくとも1つの分析物の配列に逆相補的な3’配列、
- プライマー伸長反応を阻害する、分析物に特異的な3’配列の3’末端にある保護基(3’ブロッカー)、及び
- ヌクレアーゼ活性に対する耐性を付与し、3’下流のTXプローブから切断可能な加水分解生成物を構造的に分割する、TXプローブのハイブリダイズ配列の5’領域にある少なくとも1つの内部ヌクレアーゼブロッカー
をそれぞれ含み、切断可能な加水分解生成物が、
・ TX プローブの5’末端の少なくとも1つのヌクレオチド、及び
・ リンカーを介して切断可能な加水分解生成物に架橋させた標識、好ましくは蛍光体
を含
み、少なくとも1つのヌクレアーゼブロッカーが、ハイブリダイズ配列の5’末端から位置1(下流)又は位置2(下流)のいずれかにある、前記キット。
【国際調査報告】