(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】DHFR阻害剤を用いたCD47遮断療法の増強
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240329BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240329BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240329BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240329BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240329BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20240329BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240329BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240329BHJP
C07K 16/42 20060101ALN20240329BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K47/68
A61P35/02
A61K31/519
A61K31/714
A61K38/17
C07K14/705 ZNA
C07K16/42
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565346
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2022053827
(87)【国際公開番号】W WO2022229818
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】グロリア ホイ イング リン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アダム ウーガー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
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4C076EE59M
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4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
CD47/SIRPα相互作用を遮断する薬剤と、DHFR阻害剤とを組み合わせる、がん療法を含む、療法にとって有用な材料および方法が提供される。
【
図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD47
+がん細胞を呈する対象を処置するための方法であって、前記対象に、CD47遮断剤、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)を投与することを含む方法。
【請求項2】
CD47
+がん細胞を呈する対象の処置を改善するための方法であって、前記対象がCD47遮断剤で処置されており、前記対象に、ジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)を投与することを含む方法。
【請求項3】
CD47
+がん細胞を呈する対象の処置を改善するための方法であって、前記対象がジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)で処置されており、前記対象に、CD47遮断剤を投与することを含む方法。
【請求項4】
CD47
+がん細胞を呈する対象を処置するために組み合わせて使用するためのCD47遮断剤およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)。
【請求項5】
CD47
+がん細胞を呈する対象を処置するためにCD47遮断剤と組み合わせて使用するためのジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)。
【請求項6】
CD47
+がん細胞を呈する対象におけるがんの処置のためにジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)と組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるCD47遮断剤の使用。
【請求項7】
CD47
+がん細胞を呈する対象におけるがんの処置のためにCD47遮断剤と組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)の使用。
【請求項8】
DHFRiが、メトトレキサートまたはプララトレキサートを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項9】
DHFRiがプララトレキサートを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項10】
CD47遮断剤が、ヒトSIRPαのCD47結合形態を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項11】
ヒトSIRPαのCD47結合形態が、ヒトSIRPαのCD47結合断片である、請求項10に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項12】
ヒトSIRPαのCD47結合断片が、ヒトSIRPαのV領域を含む、請求項11に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項13】
CD47遮断剤が、抗体定常領域(Fc)に結合した可溶性ヒトSIRPαバリアント2のV領域を含むFc融合タンパク質を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項14】
可溶性SIRPαを含むFc融合タンパク質が、配列番号9または配列番号10を含む、請求項13に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項15】
CD47遮断剤が、L4V/I、V6I/L、A21V、V27I/L、I31T/S/F、Q37W/H、E47V/L、K53R、E54Q/P、H56P/R、S66T/G、K68R、V92I、F94V/L、V63I、M72R、およびF103Vから選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を有する可溶性SIRPαを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項16】
CD47遮断剤が、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する可溶性SIRPαを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項17】
CD47遮断剤が、抗体定常領域(Fc)に結合した可溶性ヒトSIRPαバリアント2のV領域を含むFc融合タンパク質を含む、請求項15から16のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項18】
CD47
+がん細胞が、血液がん細胞または固形腫瘍細胞である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項19】
がん細胞が、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML)およびp53突然変異型AML;慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性障害/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群から選択されるがん型の細胞である、請求項18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項20】
がん細胞が、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、無痛性非ホジキンリンパ腫、侵攻性非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、および小細胞型濾胞性リンパ腫、および大細胞型濾胞性リンパ腫から選択されるリンパ腫に由来する、請求項18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項21】
がん細胞が、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞性骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫から選択される骨髄腫に由来する、請求項18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【請求項22】
葉酸またはビタミンB12を対象に投与することをさらに含む、請求項1から3および8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
葉酸またはビタミンB12と組み合わせて使用するための、請求項4から21のいずれか一項に記載の使用または使用のための薬物。
【請求項24】
CD47
+疾患細胞を枯渇させるのに有効な、所定量のCD47遮断剤と、CD47
+疾患細胞の枯渇を増強させるのに有効な、所定量のプララトレキサートとを、請求項1から23のいずれか一項に記載のその使用を教示する使用説明書と共に含む、抗がん薬の組合せ。
【請求項25】
CD47
+疾患細胞を呈する対象の処置における使用のための、請求項24に記載の組合せ。
【請求項26】
CD47
+疾患細胞がCD47
+がん細胞である、請求項25に記載の使用のための組合せ。
【請求項27】
CD47
+がん細胞が、血液がんまたは固形腫瘍に由来する細胞を含む、請求項26に記載の使用のための組合せ。
【請求項28】
CD47遮断剤およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)の単位用量製剤を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD47/SIRPα相互作用を遮断する薬剤を使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、組み合わせて、がん療法を改善するのに有用である方法および手段に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞は、がん細胞抗原に結合する抗体による、ならびにその抗体のFc部分に結合するFc受容体を手段としたマクロファージの動員および活性化を介する破壊のために標的化される。がん細胞上のCD47と、マクロファージ上のSIRPαとの間の結合は、多くの腫瘍細胞が、マクロファージによる破壊から逃れるのを可能にする「ドントイートミー(don’t eat me)」シグナルを伝達する。CD47/SIRPα相互作用の阻害(CD47遮断)は、マクロファージが、標的であるCD47+がん細胞を「見る」および破壊するのを可能にするであろう。CD47遮断によってがんを処置するためのSIRPαの使用は、参照により本明細書に組み込まれるWO2010/130053に記載されている。
【0003】
その全体が参照により組み込まれる、国際特許出願公開WO2014/094122は、CD47とSIRPαとの相互作用を阻害するタンパク質薬物を記載する。このCD47遮断薬は、IgGに基づくFc領域の特に有用な形態と連結されたその細胞外ドメインの特定の領域を含むヒトSIRPαの形態である。この形態では、SIRPαFc薬は、CD47+表現型を呈するがん細胞の生存能力に対して劇的な効果を示す。その効果は、特に、急性骨髄性白血病(AML)細胞、および他の多くの型のがんについて見られる。一次構造が有意に変更され、CD47結合親和性が増強された可溶性形態のSIRPが、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2013/109752に記載されている。
【0004】
他のCD47遮断薬は、文献に記載されており、これらのものとしては、それぞれ、異なる抗原結合部位を含むが、共通して、CD47への結合について内因性RIRPαと競合し、それによって、マクロファージとの相互作用を可能にし、最終的には、CD47+がん細胞枯渇の速度を増大させる能力を有する、種々のCD47抗体(例えば、StanfordのUS8562997、およびInhibRxのWO2014/123580を参照されたい)が挙げられる。これらのCD47抗体は、SIRPαに基づく薬物に固有のものとは全く異なるin vivoでの活性を有する。後者は、例えば、赤血球への無視できる程度の結合を示すが、CD47抗体における反対の特性は、投与後に薬物「シンク」を収容する戦略に対する必要性を作出する。
【0005】
CD47/SIRPα軸の遮断における使用のために、さらに他の薬剤が提唱されている。これらのものとしては、CD47Fcタンパク質(Viral LogicのWO2010/083253を参照されたい)、およびUHNのWO2013/056352、StanfordのWO2016/022971、EberhardのUS6913894その他に記載されたSIRPα抗体が挙げられる。
【0006】
抗がん薬開発におけるCD47遮断手法は、非常に有望である。これらの薬物の効果を改善するため、および特に、CD47遮断薬形態、特に、SIRPαを含むものの効果を改善するための方法および手段を提供することが有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、CD47遮断の抗がん効果は、ジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)、またはプララトレキサートなどの抗葉酸剤と組み合わせた場合に改善されることが示されている。より具体的には、がん細胞枯渇の有意な改善は、CD47+がん細胞が、DHFRiと組み合わせた、SIRPαに基づく薬物などのCD47遮断剤(本明細書ではCD47遮断薬とも称される)で処理された場合に見られる。2つの薬物は、がん細胞に対するその効果において相乗作用し、その個別の効果の合計によって説明することができるよりも多くのがん細胞の枯渇をもたらす、すなわち、バックグラウンドを減算して、組合せの食作用(%)は、SIRPaFCとプララトレキサートとから別々に加算された食作用(%)よりも大きい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、CD47+がん細胞を呈する対象を処置するための方法であって、CD47結合形態のSIRPαまたは別の形態の抗CD47剤、およびプララトレキサートなどのDHFRiを含む処置有効薬物組合せを投与することを含む方法が提供される。
【0009】
関連する態様では、CD47+がんを呈する対象の処置のための、DHFRiと組み合わせたSIRPαに基づく薬物の使用が提供される。
【0010】
また、別の態様では、可溶性SIRPαに基づく薬物(または別の形態の抗CD47剤)などのCD47遮断薬と、DHFRiとを含む抗がん剤、すなわち、薬物の組合せと共に、本明細書に記載される処置方法におけるその使用を教示する使用説明書も提供される。
【0011】
実施形態、詳細、または変化が1つの特定のSIRPαに基づく薬物またはDHFRiを参照して本明細書に記載される程度で、本出願または本文が別途明示的に指摘しない限り、同じ実施形態、詳細、および変化が本明細書で同定される他のものにも適用されると意図されることが理解されるべきである。
【0012】
種々の詳細および態様が、処置または処置方法として本明細書に記載される。全てのそのような環境において、関連するか、または等価な態様は、処置における使用のための本明細書に記載のペプチド、アナログ、誘導体、または組成物;および本明細書に記載の疾患または状態の処置のための薬剤の製造における使用のための本明細書に記載のペプチド、アナログ、誘導体、または組成物を含むことが理解されるべきである。
【0013】
本明細書における見出しは、読者の便宜のためのものであり、限定を意図するものではない。本発明の他の態様は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0014】
本明細書に提供される本発明の例示的実施形態(E)は、以下を含む。
【0015】
E1.CD47+がん細胞を呈する対象を処置するための方法であって、前記対象に、CD47遮断剤/遮断薬、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)を投与することを含む方法。
【0016】
E2.CD47+がん細胞を呈する対象の処置を改善するための方法であって、前記対象がCD47遮断剤で処置されており、前記対象に、ジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)を投与することを含む方法。
【0017】
E3.CD47+がん細胞を呈する対象の処置を改善するための方法であって、前記対象がジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)で処置されており、前記対象に、CD47遮断剤を投与することを含む方法。
【0018】
E4.CD47+がん細胞を呈する対象を処置するために組み合わせて使用するためのCD47遮断剤およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)。
【0019】
E5.CD47+がん細胞を呈する対象を処置するためにCD47遮断剤と組み合わせて使用するためのジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)。
【0020】
E6.CD47+がん細胞を呈する対象におけるがんの処置のためにジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)と組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるCD47遮断剤の使用。
【0021】
E7.CD47+がん細胞を呈する対象におけるがんの処置のためにCD47遮断剤と組み合わせて使用するための薬剤の製造におけるジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)の使用。
【0022】
E8.DHFRiが、メトトレキサートまたはプララトレキサートを含む、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0023】
E9.DHFRiがプララトレキサートを含む、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0024】
E10.CD47遮断剤が、ヒトSIRPαのCD47結合形態を含む、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0025】
E11.ヒトSIRPαのCD47結合形態が、ヒトSIRPαのCD47結合断片である、実施形態10に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0026】
E12.ヒトSIRPαのCD47結合断片が、ヒトSIRPαのV領域を含む、実施形態11に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0027】
E13.CD47遮断剤が、抗体定常領域(Fc)に結合した可溶性ヒトSIRPαバリアント2のV領域を含むFc融合タンパク質を含む、実施形態1から12のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0028】
E14.可溶性SIRPαを含むFc融合タンパク質が、配列番号9または配列番号10を含む、実施形態13に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0029】
E15.CD47遮断剤が、L4V/I、V6I/L、A21V、V27I/L、I31T/S/F、Q37W/H、E47V/L、K53R、E54Q/P、H56P/R、S66T/G、K68R、V92I、F94V/L、V63I、M72R、およびF103Vから選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を有する可溶性SIRPαを含む、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0030】
E16.CD47遮断剤が、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する可溶性SIRPαを含む、実施形態1から9のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0031】
E17.CD47遮断剤が、抗体定常領域(Fc)に結合した可溶性ヒトSIRPαバリアント2のV領域を含むFc融合タンパク質を含む、実施形態15から16のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0032】
E18.CD47+がん細胞が、血液がん細胞または固形腫瘍細胞である、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0033】
E19.がん細胞が、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML)およびp53突然変異型AML;慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性障害/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群から選択されるがん型の細胞である、実施形態18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0034】
E20.がん細胞が、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、無痛性非ホジキンリンパ腫、侵攻性非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、および小細胞型濾胞性リンパ腫、および大細胞型濾胞性リンパ腫から選択されるリンパ腫に由来する、実施形態18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0035】
E21.がん細胞が、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞性骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫から選択される骨髄腫に由来する、実施形態18に記載の方法、使用、または使用のための薬物。
【0036】
E22.葉酸またはビタミンB12を対象に投与することをさらに含む、実施形態1から3および8から21のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
E23.葉酸またはビタミンB12と組み合わせて使用するための、実施形態4から21のいずれか一項に記載の使用または使用のための薬物。
【0038】
E24.CD47+疾患細胞を枯渇させるのに有効な、所定量のCD47遮断剤と、CD47+疾患細胞の枯渇を増強させるのに有効な、所定量のプララトレキサートとを、実施形態1から23のいずれか一項に記載のその使用を教示する使用説明書と共に含む、抗がん薬の組合せ。
【0039】
E25.CD47+疾患細胞を呈する対象の処置における使用のための、実施形態24に記載の組合せ。
【0040】
E26.CD47+疾患細胞がCD47+がん細胞である、実施形態25に記載の使用のための組合せ。
【0041】
E27.CD47+がん細胞が、血液がんまたは固形腫瘍に由来する細胞を含む、実施形態26に記載の使用のための組合せ。
【0042】
E28.CD47遮断剤およびジヒドロ葉酸リダクターゼ阻害剤(DHFRi)の単位用量製剤を含むキット。
本発明のこれらのおよびその他の態様を、添付の図面を参照して、より詳細にここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、ヒトリンパ腫細胞系HH上でのマクロファージ食作用アッセイからの結果を示す。バーは、左から右へ、以下の実験条件:処理なし(「Txなし」);プララトレキサートのみ(「Pra」);TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)(「621」)のみ;プララトレキサートとTTI-621との組合せ(「Pra+621」)に関する食作用のパーセンテージを示す。
【
図2】
図2は、ヒトリンパ腫細胞系H9上でのマクロファージ食作用アッセイからの結果を示す。バーは、左から右へ、以下の実験条件:処理なし(「Txなし」);プララトレキサートのみ(「Pra」);TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)(「621」)のみ;プララトレキサートとTTI-621との組合せ(「Pra+621」)に関する食作用のパーセンテージを示す。
【
図3】
図3は、異なる形式での
図1(HH細胞)のマクロファージ食作用アッセイからの結果を示し、バーは、処理なしの条件よりも大きい食作用のパーセンテージ(すなわち、処理なしの条件の値を減算した)を示す。条件は、左から右へ、プララトレキサートのみ(「Pra」);TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)(「621」)のみ;プララトレキサートとTTI-621との組合せ(「Pra+621」)である。
【
図4】
図4は、異なる形式での
図2(H9細胞)のマクロファージ食作用アッセイからの結果を示し、バーは、処理なしの条件よりも大きい食作用のパーセンテージ(すなわち、処理なしの条件の値を減算した)を示す。条件は、左から右へ、プララトレキサートのみ(「Pra」);TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)(「621」)のみ;プララトレキサートとTTI-621との組合せ(「Pra+621」)である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、CD47+表現型を有するがん細胞および腫瘍を呈する対象を処置するための改善された方法を提供する。この方法では、対象は、CD47/SIRPa軸をわたるシグナル伝達を遮断するSIRPαの任意のCD47結合形態、およびDHFRiであってもよい、CD47遮断薬(すなわち、SIRPaFcなどの抗CD47剤)の組合せを受ける。組み合わせた場合、この組合せの抗がん効果は、いずれかの薬剤のみの効果、または両方の薬剤の効果を加えたものよりも優れている。相乗作用は、特に、CD47遮断薬が可溶性SIRPαに基づく薬剤である場合に得られると考えられる。
【0045】
かくして、本発明の処置方法は、CD47遮断薬または遮断剤としての、SIRPαのCD47結合形態および遮断形態と、DHFRiとを組み合わせる。CD47遮断活性を有する薬剤または薬物は、CD47がマクロファージに提示されたSIRPαと相互作用する場合に得られるシグナル伝達を阻害し、弱める薬剤である。ヒトSIRPαのCD47結合形態は、本明細書に開示される組合せにおいて使用するための好ましいCD47遮断薬である。これらの薬物は、ヒトSIRPαの細胞外領域に基づくものである。それらは、有効なCD47結合親和性および特異性を付与するのに十分な細胞外領域の少なくともある領域を含む。膜固定成分を欠く、いわゆる「可溶性」形態のSIRPαは、文献に記載されており、それぞれ、その全体が参照により組み込まれる、NovartisのWO2010/070047、およびStanfordのWO2013/109752、およびTrilliumのWO2014/094122において参照されたものが挙げられる。
【0046】
好ましい実施形態では、可溶性形態のSIRPαは、Fc融合物である。より具体的には、薬物は、好適には、抗体定常領域、またはFc(フラグメント結晶化可能領域)と直接的に、または間接的に融合された形態の、ヒトSIRPαタンパク質を含む。別途記述しない限り、本明細書で使用される場合の用語「ヒトSIRPα」は、野生型、内因性、成熟形態のヒトSIRPαを指す。ヒトでは、SIRPαタンパク質は、2つの主要な形態で見出される。1つの形態であるバリアント1またはV1形態は、NCBI RefSeq NP_542970.1として記載されたアミノ酸配列を有する(残基27~504が成熟形態を構成する)。別の形態であるバリアント2またはV2形態は、13アミノ酸によって異なり、CAA71403.1としてGenBankに記載されたアミノ酸配列を有する(残基30~504が成熟形態を構成する)。これらの2つの形態のSIRPαは、ヒトに存在するSIRPαの形態の約80%を占め、両方とも用語「ヒトSIRPα」によって本明細書に包含される。また、ヒトにとって内因性であり、それに結合する際にCD47を介してシグナル伝達を誘発する同じ特性を有するそのマイナー形態も、用語「ヒトSIRPα」によって包含される。本発明は、ヒトSIRPバリアント2形態、またはV2を含む薬物組合せに対して最も具体的に向けられている。
【0047】
本発明の薬物組合せでは、有用なSIRPαFc融合タンパク質は、ヒトSIRPαの細胞外領域内にある3つのいわゆる免疫グロブリン(Ig)ドメインのうちの1つを含む。より具体的には、本発明のSIRPαFcタンパク質は、現行の命名法によるV2形態のIgVドメインを構成し、定義する、ヒトSIRPαの残基32~137(106マー)を含む。以下に示される、このSIRPα配列は、配列番号1として本明細書で参照される。
EELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGA[配列番号1]
【0048】
好ましい実施形態では、SIRPαFc融合タンパク質は、配列番号1によって定義されるIgVドメイン、およびSIRPα配列内で近接するさらなる隣接残基を含む。V2形態のヒトSIRPαの残基31~148によって表される、この好ましい形態のIgVドメインは、以下に示される配列番号6を有する118マーである:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPS[配列番号6]
【0049】
本発明のSIRPα融合タンパク質はまた、エフェクター機能を有するFc領域を含んでもよい。Fcとは、「フラグメント結晶化可能領域」を指し、主に重鎖定常領域およびヒンジ領域内の成分を含む抗体の定常領域を表す。かくして、好適なFc成分は、エフェクター機能を有するものである。「エフェクター機能を有する」Fc成分は、抗体依存性細胞性細胞傷害への少なくともいくらかの寄与または補体を固定するいくらかの能力などの、少なくともいくらかのエフェクター機能を有するFc成分である。また、Fcは、少なくともFc受容体に結合するであろう。これらの特性を、この目的のために確立されたアッセイを使用して明らかにすることができる。機能的アッセイとしては、標的細胞溶解を検出する標準的なクロム遊離アッセイが挙げられる。この定義によると、野生型IgG1またはIgG4であるFc領域はエフェクター機能を有するが、Pro233、Val234、Ala235を含み、Gly236(EU)の欠失を含む変更系列の組込みなどによる、エフェクター機能を除去するように突然変異させたヒトIgG4のFc領域は、エフェクター機能を有しないと考えられる。好ましい実施形態では、Fcは、IgG1アイソタイプのヒト抗体に基づく。これらの抗体のFc領域は、当業者には容易に同定可能であろう。実施形態では、Fc領域は、下側ヒンジ-CH2-CH3ドメインを含む。
【0050】
特定の実施形態では、Fc領域は、UniProtKB/Swiss-ProtにおいてP01857、残基104~330と記載されたヒトIgG1のアミノ酸配列に基づくものであり、以下に示されるアミノ酸配列を有し、本明細書では配列番号2として参照される:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*[配列番号2]
【0051】
かくして、実施形態では、Fc領域は、IgG1定常領域の野生型またはコンセンサス配列のいずれかを有する。代替的な実施形態では、融合タンパク質に含まれるFc領域は、典型的なエフェクター活性定常領域を有する任意のIgG1抗体に由来する。そのようなFc領域の配列は、例えば、以下のIgG1配列のいずれかのFc領域(全てGenBankから参照される)、例えば:BAG65283(残基242~473)、BAC04226.1(残基247~478)、BAC05014.1(残基240~471)、CAC20454.1(残基99~320)、BAC05016.1(残基238~469)、BAC85350.1(残基243~474)、BAC85529.1(残基244~475)、およびBAC85429.1(残基238~469)と一致してもよい。
【0052】
他の実施形態では、Fc領域は、野生型ヒトIgG4定常領域の配列を有する。代替的な実施形態では、融合タンパク質に含まれるFc領域は、存在するが、天然では、IgG1Fc領域よりも有意に効力が低いエフェクター活性を示す定常領域を有する任意のIgG4抗体に由来する。そのようなFc領域の配列は、例えば、以下のIgG4配列のいずれかのFc領域:UniProtKB/Swiss-ProtからのP01861(残基99~327)およびGenBankからのCAC20457.1(残基99~327)と一致してもよい。
【0053】
特定の実施形態では、Fc領域は、UniProtKB/Swiss-ProtにおいてP01861、残基99~327と記載されたヒトIgG4のアミノ酸配列に基づくものであり、以下に示されるアミノ酸配列を有し、本明細書では配列番号7として参照される:
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号7]
【0054】
実施形態では、Fc領域は、ある特定のFc特性に影響するアミノ酸置換を含む、1つまたは複数の変更、通常、約10個以下、例えば、最大で5個のそのような変更を含む。1つの特定の好ましい実施形態では、Fc領域は、228位(EUナンバリング)に変更を含み、この位置のセリンはプロリンによって置換されており(S228P)、それによって、Fc二量体内のジスルフィド結合を安定化する。Fc領域内の他の変更は、グリシンまたはアラニンによるAsn297の置換などのグリコシル化を変更する置換;US62777375、およびその他多くに教示されたT252L、T253S、およびT256Fなどの半減期を増強する変更を含んでもよい。コンフォメーションに関してサイレントを維持しながら、例えば、Fc受容体結合を維持しながら、Fc特性を増強する変更が特に有用である。別の実施形態では、Fc領域は、その生物学的半減期を増大させるように改変される。種々の手法が可能である。例えば、以下の突然変異の1つまたは複数を導入することができる;米国特許第6,277,375号に記載されたT252L、T254S、T256F。
【0055】
特定の実施形態では、およびFc成分がIgG4 Fcである場合には、Fcは、少なくともS228P突然変異を含み、以下に記載され、配列番号8として本明細書で参照されるアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号8]
【0056】
組合せ中で使用されるCD47遮断薬は、かくして、好ましくは、ヒトSIRPαおよびヒトCD47の結合を阻害することによって、SIRPαに結合したCD47によって媒介されるシグナルの伝達を阻害するか、または低減させるのに有用なSIRP融合タンパク質であって、融合タンパク質が、ヒトSIRPα成分およびそれと共に融合された、Fc成分を含み、SIRPα成分が、ヒトSIRPαV2の単一のIgVドメインを含むか、またはそれからなり、Fc成分が、エフェクター機能を有するヒトIgGの定常領域である、融合タンパク質である。
【0057】
一実施形態では、融合タンパク質は、V2形態の野生型ヒトSIRPαの少なくとも残基32~137、すなわち、配列番号1からなるSIRPα成分を含む。好ましい実施形態では、SIRPα成分は、V2形態のヒトSIRPαの残基31~148、すなわち、配列番号6からなる。別の実施形態では、Fc成分は、P01857と命名されたヒトIgG1のFc成分であり、特定の実施形態では、その下側ヒンジ-CH2-CH3領域を含むアミノ酸配列、すなわち、配列番号2を有する。
【0058】
好ましい実施形態では、したがって、SIRPαFc融合タンパク質は、分泌された二量体融合物形態で提供および使用され、ここで、融合タンパク質は、配列番号1および好ましくは配列番号6を有するSIRPα成分、ならびにそれと共に融合された、エフェクター機能を有し、配列番号2を有するFc領域を含む。SIRPα成分が配列番号1である場合、この融合タンパク質は、以下に示される配列番号3を含む:
EELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*
[配列番号3]
【0059】
SIRPα成分が配列番号6である場合、この融合タンパク質は、以下に示される配列番号9を含む:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
[配列番号9]
【0060】
代替的な実施形態では、融合タンパク質のFc成分は、IgG4、および好ましくは、S228P突然変異を含むIgG4に基づくものである。融合タンパク質が配列番号6の好ましいSIRPα IgVドメインを含む場合、得られるIg4に基づくSIRPα-Fcタンパク質は、以下に示される配列番号10を有する:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号10]
【0061】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のSIRPα IgVドメインとして、配列番号6である配列を含む。好ましいSIRPαFcは、配列番号9または配列番号10である。
【0062】
CD47遮断薬内に含まれるSIRPα配列は、文献に記載されたように、変化してもよい。これは、89位およびその他の位置などの、タンパク質中のグリコシル化部位を除去し得る。SIRPα内の他の有用な置換としては、以下の1つまたは複数:L4V/I、V6I/L、A21V、V27I/L、131T/S/F、E47V/L、K53R、E54Q、H56P/R、S66T/G、K68R、V92I、F94V/L、V63I、および/またはF103Vが挙げられる。
【0063】
SIRPαFc融合タンパク質では、SIRPα成分と、Fc成分とが、直接的または間接的に融合され、必要に応じて、単鎖ポリペプチドがFc領域内で形成される鎖間ジスルフィド結合を介してカップリングされる二量体として最終的に産生され得る単鎖ポリペプチドを提供する。融合領域の性質は重要ではない。融合は、2つの成分の間で直接のものであってよく、SIRP成分が融合物のN末端を構成し、Fc成分がC末端を構成する。あるいは、融合は、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸、または5~100アミノ酸の任意数のアミノ酸、例えば、5~50、5~30もしくは5~20アミノ酸などの、1つまたは複数のアミノ酸、望ましくは遺伝子コードされたアミノ酸を含むリンカーを介する間接のものであってもよい。リンカーは、BamHI、ClaI、EcoRI、HindIII、PstI、SalIおよびXhoI部位などの制限部位を構成するDNAによってコードされるペプチドを含んでもよい。
【0064】
リンカーアミノ酸は、典型的に、かつ望ましくは、FcおよびSIRP成分に、その活性コンフォメーションを採らせるいくらかの可撓性を有する。そのような可撓性を可能にする残基は、典型的には、Gly、AsnおよびSerであり、したがって、リンカー内のこれらの残基の実質的に任意の組合せ(特に、GlyおよびSer)が、望ましい連結効果を提供する可能性が高い。一例では、そのようなリンカーは、(G4S)n(式中、nは、1、2、3以上である)として反復してもよい、いわゆるG4S配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser[配列番号5])に基づくか、または(Gly)n、(Ser)n、(Ser-Gly)nもしくは(Gly-Ser)nなどに基づく。別の実施形態では、リンカーは、GTELSVRAKPS[配列番号4]である。この配列は、IgVドメインをC末端で挟むSIRPα配列である(このフランキング配列は、リンカー、または上記のIgV最小配列とカップリングした場合、異なる形態のIgVドメインのいずれかと考えることができることが理解される)。融合領域またはリンカーは、成分に、その活性コンフォメーションを採らせることだけが必要であり、これは当業界で有用な任意の形態のリンカーによって達成することができる。
【0065】
記載の通り、SIRPαFc融合物は、SIRPαとCD47との相互作用を阻害することによって、この軸をわたるシグナル伝達を遮断するのに有用である。CD47によるマクロファージ上のSIRPαの刺激は、ミオシン-IIおよび標的をマクロファージ中に引き込むのに関与する収縮性細胞骨格活性を不活化することによってマクロファージ媒介性食作用を阻害することが知られている。このカスケードの活性化は、したがって、CD47+疾患細胞の生存にとって重要であり、この経路の遮断は、マクロファージに、CD47+疾患細胞集団を根絶させるか、または少なくとも減少させる。かくして、CD47遮断薬は、CD47抗体およびその二重特異性形態、ならびにCD47Fc融合物またはSIRPα抗体を含む、この目的を達成する任意の薬剤であってもよい。
【0066】
用語「CD47+」(またはCD47+)は、本発明のポリペプチドによる結合のために標的化される細胞の表現型を参照して使用される。CD47+である細胞を、親和性リガンドとしてCD47抗体を使用するフローサイトメトリーによって同定することができる。適切に標識されたCD47抗体は、この使用のために商業的に入手可能である(例えば、クローンB6H12の抗体生成物は、Santa Cruz Biotechnologyから入手可能である)。CD47表現型について検査される細胞は、特に、内因性CD47+がん細胞を担持することが疑われる対象から採取された血液試料を含む標準的な腫瘍生検試料を含んでもよい。本発明の融合タンパク質を用いた療法のための標的としての特定の目的のCD47疾患細胞は、CD47を「過剰発現する」ものである。これらのCD47+細胞は、典型的には、疾患細胞であり、所与の型の細胞に関する正常なCD47密度を超える、その表面上の密度でCD47を提示する。CD47過剰発現は、異なる細胞型にわたって変化するであろうが、本明細書では、例えば、本明細書に例示されるフローサイトメトリーによって、または免疫染色によって、または遺伝子発現分析などによって、その細胞型に関して正常であるCD47表現型を有する対応する細胞上で測定可能なレベルよりも高いと決定される任意のCD47レベルを指すことを意味する。
【0067】
本発明の薬物組合せは、まさに記載される、CD47結合形態のSIRPαであるCD47遮断剤と、DHFRiとの両方を含む。好ましい実施形態では、DHFRiはプララトレキサートであり、CD47遮断剤はCD47結合形態のSIRPaFcである。
【0068】
プララトレキサートは、Folotyn(登録商標)(Acrotech Biopharma)の名称の下で現在販売されている。それは、限定されるものではないが、再発性または難治性末梢T細胞リンパ腫、侵攻性であることが多い非ホジキンリンパ腫を含む、種々のがんの処置のために使用される薬剤である。それは、以下に示される構造を有する:
【0069】
【0070】
プララトレキサートは、静脈内(IV)注射によって与えられる。あり得る副作用のリスクを低減させるために、プララトレキサートを用いた処置の間に、葉酸およびビタミンB12栄養補助食品も処方される。プララトレキサートは、がん細胞中の葉酸を中和し、それと競合し、細胞の葉酸欠乏をもたらし、その細胞死を引き起こすことができることによってその化学療法効果を発揮する。
【0071】
SIRPaFcまたは他のCD47遮断剤(SIRPとCD47との間の結合を遮断する薬剤)と組み合わせて使用することもできる他の形態の抗葉酸剤(葉酸誘導体)としては、メトトレキサート、ラルチトレキセド、およびペメトレキセドが挙げられ、これらのものは本発明の実施形態である。
【0072】
組合せに含まれるそれぞれの薬物は、組み合わせて使用するために別々に製剤化することができる。両方の薬物のレシピエントにおいて、一方の薬物の効果が他方の効果を増強する場合、薬物は、「組み合わせて」使用され、所望の効果をもたらすか、または有効量を含むと言われる。
【0073】
この手法では、それぞれの薬物は、薬学的に許容できる担体、および治療有効量で含む剤形で提供される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる担体」は、生理学的に適合し、タンパク質/抗体製剤の当業界で有用である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を意味する。薬学的に許容できる担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数、ならびにその組合せが挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含有させることが好ましい。薬学的に許容できる担体は、薬剤の保存可能期間または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含んでもよい。SIRPαFc融合タンパク質は、治療タンパク質製剤の当業界で標準的な実務を使用して製剤化される。注射または輸注などによる、静脈内投与にとって好適である食塩水などの溶液が、特に有用である。DHFRiは、ヒトにおけるその使用を認可した規制当局によって許可されたように製剤化されるであろう。
【0074】
必要に応じて、上に列挙された成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を含有させた後、滅菌精密濾過を行うことによって、滅菌溶液を調製することができる。一般に、分散体は、活性化合物を、基本分散媒体および上に列挙されたものに由来する必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に含有させることによって調製される。調製のための滅菌粉末の場合、活性成分と、その予め滅菌濾過された溶液に由来するさらなる所望の成分との粉末を得る、減圧乾燥および凍結-乾燥(凍結乾燥)である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量で、必要な特定の期間にわたって有効な量を指す。組合せ中の各薬物の治療有効量は、個体の疾患段階、年齢、性別、および体重、ならびにレシピエントにおいて所望の応答を惹起する薬剤の能力などの因子に応じて変化してもよい。治療有効量はまた、薬剤の任意の毒性効果または有害効果を、治療的に有益な効果が上回るものである。DHFRiは、ヒトにおけるその使用を認可した規制当局によって許可されたように患者への投薬にとって好適である量で製剤化されるであろう。プララトレキサートについては、有効用量は、疾患進行または許容できない毒性まで、7週のサイクルで6週にわたって週1回、3~5分かけた静注による30mg/m2を含むであろう。SIRPaFc、TTI-621については、例示的な投薬は、毎週、0.2~2.0mg/kg IVの投与、またはおそらくより低い頻度(Q2WもしくはQ3W)での投与である。
【0076】
本発明の組合せで処置される患者は、プララトレキサート投薬のため、低用量(1mg~1.25mg)の経口葉酸を毎日摂取してもよい。葉酸は、プララトレキサートの1回目の用量の10日前に開始し、最後の用量後、30日間継続してもよい。患者は、プララトレキサートの第1の用量の前の10週以内およびその後8~10週毎にB12(1mg)の注射を受けてもよい。その後のB12注射を、例えば、5~15分の経過にわたる輸注などによって静脈内投与される2~4ミリグラムのプララトレキサートを用いた処置と同じ日に投与してもよい。
【0077】
SIRPαFc融合タンパク質を、タンパク質送達のために確立された経路のいずれか、特に、静脈内、皮内および皮下注射もしくは輸注、または経口もしくは経鼻投与によって対象に投与することができる。
【0078】
本発明の組合せ中の薬物を、連続的に、または本質的に同時に投与することができる。実施形態では、DHFRiは、SIRPαFcの投与の前に与えられる。CD47遮断薬が投与される場合、DHFRiが患者の系内に存在することは必須ではないが、これが好適である。かくして、一実施形態では、CD47+疾患細胞を呈する対象を処置するための方法であって、プララトレキサートを対象に投与すること、次いで、疾患細胞集団を減少させるのに十分な量のSIRPαFcをその対象に投与することを含む方法が提供される。
【0079】
投薬レジメンは、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、各薬物の単回ボーラスを投与するか、またはいくつかの分割された用量を時間をかけて投与するか、または治療状況によって示されるように用量を比例的に減少させるか、もしくは増加させることができる。投与の容易性および投与量の均一性のために単位剤形中で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される場合、「単位剤形」とは、治療しようとする対象のための単一の用量として適した物理的に個別の単位を指す;それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0080】
薬物を組み合わせて製剤化することができるので、その組合せを1回の投与で、例えば、1回の注射または1回の輸注バッグでレシピエントに導入することができる。あるいは、薬物を、単一のパッケージ中で一緒に提供される別々の単位として、本発明の方法に従うその使用のための使用説明書と共に組み合わせることができる。別の実施形態では、本明細書に記載の障害の処置にとって有用な量のSIRPαFc薬物とDHFRiとの組合せを含有する製品が提供される。製品は、本発明の抗体薬物組合せの一方または両方の薬物、ならびに容器およびラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器を、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成させることができる。容器は、状態を処置するのに有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。容器上の、または容器と関連するラベルは、組成物が本発明に従って別のCD47遮断薬と組み合わせて使用されることによって、CD47+疾患細胞に対する相乗効果を惹起することを示す。製品は、リン酸緩衝溶液、リンゲル溶液、またはデキストロース溶液などの薬学的に許容できる緩衝剤を含む第2の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、充填剤、針、シリンジ、および使用のための説明書を含む添付文書などの、商業的観点および使用の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0081】
投与のために、CD47遮断薬の用量は、TTI-621が使用される場合、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、より通常は、0.01~30mg/kgの範囲内にあるであろう。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重であってもよい。薬物がTTI-622(配列番号10)(FcがG4アイソタイプであり、S228PとしてFc中で置換が生じるSIRPaFc)である場合、より高い用量、例えば、0.1~50mg/kgの一般的な範囲内などを使用することができる。
【0082】
SIRPαFcタンパク質は、赤血球への無視できる程度の結合を示す。したがって、薬物組合せと共に投薬する場合、RBC「シンク」について説明する必要はない。RBCによって結合された他のCD47遮断薬と比較して、本発明のSIRPαFc融合物は、CD47抗体などの、RBCと結合するようになる薬物にとって必要とされる用量の半分未満である用量で有効であり得ると見積もられている。さらに、SIRPα-Fc融合タンパク質は、それが結合している場合に無視できる程度のCD47アゴニズムを示すため、SIRPα媒介性シグナルの専用のアンタゴニストである。したがって、医学的に有用な単位投与レジメンを確立する場合、薬物によって誘導されるいかなる刺激についても説明する必要はない。
【0083】
薬物組合せは、様々なCD47+疾患細胞を処置するのに有用である。これらのものは、特に、液性(血液学的)腫瘍および固形腫瘍を含む、CD47+がん細胞を含む。抗葉酸剤(DHFRi)自体、かくして、組合せはまた、白血病リンパ腫、骨肉腫、非小細胞肺がん、中皮腫、結腸直腸がんおよび乳がんの処置のために使用される。固形腫瘍を本発明の薬物組合せを用いて処置して、そのサイズ、数または成長速度を低減させ、がん幹細胞の増殖を制御することができる。そのような固形腫瘍は、同様に、膀胱、脳、乳房、肺、結腸、卵巣、前立腺、肝臓および他の組織におけるCD47+腫瘍を含む。一実施形態では、薬物組合せを使用して、血液がんの成長または増殖を阻害することができる。本明細書で使用される場合、「血液がん」とは、血液のがんを指し、特に、白血病、リンパ腫および骨髄腫を含む。「白血病」とは、感染と戦うには無効である多すぎる白血球が作られ、かくして、血小板および赤血球などの、血液を構成する他の部分を閉め出す、血液のがんを指す。白血病の症例は急性または慢性と分類されることが理解される。ある特定の形態の白血病は、例として、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性障害/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群であってもよい。「リンパ腫」は、特に、ホジキンリンパ腫、無痛性と侵攻性の両方の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、および濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)を指してもよい。骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞性骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫を指してもよい。特定の実施形態では、組合せは、それ自身、節性または節外性に分割される、皮膚および末梢TCLに分割されるリンパ性悪性疾患の非常に異種性の群であるT細胞リンパ腫を処置するのに有用である。CTCLは、皮膚ホーミングT細胞に由来し、菌状息肉腫、セザリー症候群、原発性皮膚T細胞リンパ増殖性障害、および未分化大細胞リンパ腫からなる。TCLの一般的な特徴は、ALKおよびALCLを除いて、侵攻性の経過および療法に対する弱い応答である。
【0084】
一部の他の実施形態では、薬物組合せで処置される血液がんは、好ましくは、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および骨髄異形成症候群、好ましくは、ヒト急性骨髄性白血病から選択される、CD47+白血病である。
【0085】
他の実施形態では、薬物組合せで処置される血液がんは、ホジキンリンパ腫、無痛性と侵攻性の両方の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞性骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンス・ジョーンズ骨髄腫ならびに平滑筋肉腫から選択されるCD47+リンパ腫または骨髄腫である。
【0086】
ヒト非小細胞肺がん(NSCLC)異種移植片では、プララトレキサートは、増大した抗腫瘍活性を示した。2mg/kgのプララトレキサート処置群では、38%の腫瘍増殖阻害(TGI)が観察された。NCI-H460 NSCLC異種移植片では、プララトレキサートは、用量依存的様式で抗腫瘍活性を示した。1mg/kgおよび2mg/kgのプララトレキサート処置群のTGIは、それぞれ、34%および52%であった。かくして、本発明の組合せは、肺腫瘍および他の固形組織の腫瘍などの固形腫瘍を処置するのに有用であり得る。
【0087】
CD47遮断薬と、プララトレキサートなどの抗葉酸剤とを含む併用療法を、アジュバント療法における外科手術、またはネオアジュバント療法における追加の化学療法などの、標的適応症の処置において有用な任意の他の薬剤またはモダリティと一緒に活用することもできる。
【実施例】
【0088】
ヒトリンパ腫細胞のマクロファージ食作用に対する、個別の薬剤と比較した、DHFRiとCD47遮断剤との組合せの効果を評価するために、マクロファージ食作用アッセイを行った。
【0089】
このアッセイについては、DHFRiはプララトレキサートであり、CD47遮断剤は可溶性SIRPαを含むFc融合タンパク質(TTI-621)であった。リンパ腫細胞は、ヒトT細胞リンパ腫細胞系HH(ATCC参照番号CRL-2105)(侵攻性皮膚T細胞白血病/リンパ腫を有する患者の末梢血に由来する成熟T細胞系)またはH9(ATCC参照番号HTB-176)(皮膚T細胞リンパ腫)であった。かくして、それぞれのリンパ腫細胞型について4つの実験条件:A)処理なし;B)プララトレキサートのみ;C)TTI-621(SIRPa-IgG1 Fc)のみ;およびD)プララトレキサートとTTI-621との組合せがあった。
【0090】
正常なドナーに由来するPBMCを、BiolVTから購入し、インフォームドコンセントを全てのドナーから得た。CD14+単球を、ヒト単球単離キットを使用する陽性選択によってPBMCから単離した。M-CSF(PeproTech)を添加したX-Vivo-15培地(Lonza)中で少なくとも10日間培養することによって、単球をマクロファージに分化させ、その時点で、プララトレキサート処理実験条件については、プララトレキサート(Selleckchem)をさらに3日間にわたってマクロファージ培養物に添加した。同様に、プララトレキサート処理実験条件について、ヒトリンパ腫細胞系HHまたはH9も、食作用アッセイの前に3日間にわたってプララトレキサート(Selleckchem)で処理した。食作用アッセイの1日前に、マクロファージをIFNg(PeproTech)でプライミングした。食作用アッセイの当日、マクロファージを、バイオレット増殖染料450(VPD450)処理したHHまたはH9細胞と共に2時間同時培養し、TTI-621処理条件については、TTI-621を2時間の同時培養の前に添加した。食作用を、フローサイトメトリーによって、生きた単一のCD14+CD11b+マクロファージのVPD450+細胞(%)として評価した。結果を、
図1~4に示す。
【0091】
図1は、細胞系HHのマクロファージ食作用および一元配置分散分析によって確立された、単剤のみまたは処理なしの対照に対する、プララトレキサート+TTI-621の組合せ処理に関する
****p<0.0001を示す。
図2は、細胞系H9のマクロファージ食作用および一元配置分散分析によって確立された、単剤のみまたは処理なしの対照に対する、プララトレキサート+TTI-621の組合せ処理に関する
****p<0.0001を示す。
図1および
図2に示されるように、がん細胞と共に培養したマクロファージを、プララトレキサートとTTI-621(配列番号9)との組合せで処理した場合、単剤のみを用いた処理、または非処理対照に対してがん細胞食作用の有意な増加があった。さらに、この効果は、CD47感受性細胞系(HH細胞;
図1)と、CD47非感受性細胞系(H9細胞;
図2)との両方について存在していた(CD47感受性の指標については、HH細胞対H9細胞に関する621のみの食作用(%)を比較されたい;非処理対照と比較して、621のみに関してHH細胞の食作用が増加する;621のみに関するこの増加は、H9細胞については存在しない)。
【0092】
次いで、
図1および
図2におけるデータを、バックグラウンドを減算して再評価した;これを、それぞれ、
図3および
図4に提供する。
図3および
図4に示されるように、組合せの食作用パーセンテージは、HH細胞(
図3)とH9細胞(
図4)との両方について、SIRPaFcおよびプララトレキサートに個別に由来する食作用パーセンテージを加算したものよりも大きい。かくして、単剤処置と比較して、プララトレキサートとTTI-621との組合せについて、有意な、さらには相乗的な効果が存在する。
【0093】
本明細書で参照される全ての特許および特許公開は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。限定されるものではないが、UniProtKB/Swiss-Protおよび/またはGenBankにおける実体を含む、本明細書で参照される全ての配列データベース実体は、2021年4月27日の時点で存在するバージョンに関して本明細書に組み込まれる。
【0094】
米国仮特許出願第63/180,604号(2021年4月27日出願)および同第63/253,125号(2021年10月6日出願)の内容は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】