(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】抗菌剤及び抗癌剤
(51)【国際特許分類】
C07D 291/06 20060101AFI20240329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240329BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240329BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240329BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240329BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240329BHJP
A61K 31/54 20060101ALI20240329BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240329BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240329BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240329BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240329BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240329BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240329BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240329BHJP
A61K 31/549 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07D291/06 CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/54
A61K47/10
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/08
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/12
A61K31/549
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565466
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 IB2022053973
(87)【国際公開番号】W WO2022229907
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517215814
【氏名又は名称】ガイストリッヒ・ファルマ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GEISTLICH PHARMA AG
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstrasse 40, CH-6110 Wolhusen, Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メーラー、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】コスティン、ジェイムズ・シー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD38
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC87
4C086BC94
4C086GA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
抗悪性腫瘍剤及び抗菌剤として有用な式(I):
【化1】
の化合物を開示し、抗悪性腫瘍化合物及び抗菌化合物を使用する組成物及び方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、R
1は-CO-アリール、又はC1~C6の分岐若しくは非分岐のアルキルであり、R
2はH、
【化2】
である)の化合物から選択される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項3】
経口投与可能な組成物の形態である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
カプセル、錠剤又は薬学的に許容可能な溶液の形態である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物を約0.01%~約3%(w/v)の濃度で含有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物を約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度で含有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1つ以上の可溶化剤を含有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリオールを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容可能な注射又は注入用の担体を含む注射及び/又は注入用の製剤である、請求項2~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物を含む経口剤形。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、癌を患う被験体を治療する方法。
【請求項12】
前記癌が膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、癌性髄膜炎、結腸癌、直腸癌、大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、黒色腫、腎癌、肝癌、膵癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、子宮頸癌、噴門癌、胆嚢癌、皮膚癌、骨癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、リンパ肉腫、腺癌、線維肉腫又はそれらの転移である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、微生物感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍幹細胞を治療する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、血管新生阻害を必要とする被験体を治療する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、細管形成阻害を必要とする被験体を治療する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、細菌感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、ウイルス感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項19】
タウロリジン及び/又はタウルルタムを請求項1に記載の少なくとも1つの化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形と組み合わせて共同療法として被験体に投与することを含む、共同療法レジメンを被験体に提供する方法。
【請求項20】
タウロリジン及び/又はタウルルタムを請求項1に記載の少なくとも1つの化合物と組み合わせてヒト被験体に投与することを含む、異なる半減期を有する少なくとも2つの化合物を用いてヒト被験体におけるタウロリジン及び/又はタウルルタムの薬物動態効果を広げる方法。
【請求項21】
0.1mg/kg~1000mg/kgの投与量の前記少なくとも1つの化合物を0.01mg/kg~500mg/kgの投与量のタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
約0.1g~約100gの総1日用量の前記少なくとも1つの化合物を約0.01g~約50gの総1日用量のタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
a)請求項1に記載の少なくとも1つの化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を、b)カルムスチン、シタラビン、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、アスパラギナーゼ、プロカルバジン、マイトマイシン、5-FU、メトトレキサート、ビンブラスチン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブ、1つ以上のチェックポイント阻害剤、1つ以上のPARP阻害剤、1つ以上の抗PD-1薬、ドセタキセル、イリノテカン(Onivyde(商標)を含む)、ドキソルビシン、エルロチニブ、オラパリブ、ラパチニブ、トポテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、シクロフォスファミド、イホスファミド又はそれらの組合せとともに共同療法として被験体に投与することを含む、共同療法レジメンを被験体に提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな化合物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば患者における癌の治療又は患者における微生物感染症の治療のための多くの化合物が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
当該技術分野においては、抗悪性腫瘍活性及び抗菌活性がより強力であり、毒性及び副作用がより少なく、腫瘍細胞又は微生物細胞の治療に対する耐性がより低い新たな化合物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、新たな化合物及びその使用が開示される。
【0005】
一態様においては、本開示は、式I:
【化1】
(式中、R
1は-CO-アリール、又はC1~C6の分岐若しくは非分岐のアルキルであり、R
2はHである)の化合物から選択される化合物を含む。
【0006】
一態様においては、本開示は、
【化2】
から選択される化合物を含む。
【0007】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物を含む医薬組成物を含む。
【0008】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物を含む経口剤形を含む。
【0009】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、被験体を治療する方法を含む。
【0010】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、癌を患う被験体を治療する方法を含む。
【0011】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、被験体において腫瘍幹細胞を治療する方法を含む。
【0012】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、血管新生阻害を必要とする被験体を治療する方法を含む。
【0013】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、細管形成阻害を必要とする被験体を治療する方法を含む。
【0014】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、細菌感染症を患う被験体を治療する方法を含む。
【0015】
一態様においては、本開示は、本開示の化合物、組成物又は経口剤形を被験体に投与することにより、ウイルス感染症を患う被験体を治療する方法を含む。
【0016】
一態様においては、本開示は、タウロリジン及び/又はタウルルタムを本開示の少なくとも1つの化合物、医薬組成物又は経口剤形と組み合わせて含む共同療法組成物又は共同療法レジメンを含む。
【0017】
一態様においては、本開示は、タウロリジン及び/又はタウルルタムを本開示の少なくとも1つの化合物、医薬組成物又は経口剤形と組み合わせてヒト被験体に投与することを含む、異なる半減期を有する少なくとも2つの化合物を用いてヒト被験体におけるタウロリジン及び/又はタウルルタムの薬物動態効果を広げる方法を含む。
【0018】
一態様においては、本開示は、a)本開示の少なくとも1つの化合物、医薬組成物又は経口剤形を、b)カルムスチン、シタラビン、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、アスパラギナーゼ、プロカルバジン、マイトマイシン、5-FU、メトトレキサート、ビンブラスチン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブ、1つ以上のチェックポイント阻害剤、1つ以上のPARP阻害剤、1つ以上の抗PD-1薬、ドセタキセル、イリノテカン(Onivyde(商標)を含む)、ドキソルビシン、エルロチニブ、オラパリブ、ラパチニブ、トポテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、シクロフォスファミド、イホスファミド又はそれらの組合せと組み合わせて含む共同療法組成物又は共同療法レジメンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】MDA MB 468細胞を用いた細胞遊走アッセイを示す図である。
【
図2】細胞生存性についてのMTTアッセイを示す図である。
【
図3】細胞増殖についてのBrdUアッセイを示す図である。
【
図4】24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の化合物2289、2293及び2296を用いたPanc TuI細胞についてのMTT細胞傷害性アッセイの結果を示す図である。全ての物質が、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株Panc TuIの細胞生存性に対して有意な影響を示す。測定を八連の(eightfold)決定で行い、p値をt検定によって算出した(
*p≦0.05 有意、
**p≦0.01 非常に有意、
***p≦0.001 極めて有意)。
【
図5】24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の化合物2289、2293及び2296を用いたAsPc1細胞についてのMTT細胞傷害性アッセイの結果を示す図である。物質2289及び2296は、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株AsPc1の細胞生存性に対して有意な影響を示す。物質2293は、24時間後に非処理対照(NC)と比較して500μMの濃度から細胞生存性に対して有意な影響を示す。測定を八連の決定で行い、p値をt検定によって算出した(
*p≦0.05 有意、
**p≦0.01 非常に有意、
***p≦0.001 極めて有意)。
【
図6】24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の化合物2289、2293及び2296を用いたBxPc3細胞についてのMTT細胞傷害性アッセイの結果を示す図である。全ての物質が、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株BxPc3の細胞生存性に対して有意な影響を示す。測定を八連の決定で行い、p値をt検定によって算出した(
*p≦0.05 有意、
**p≦0.01 非常に有意、
***p≦0.001 極めて有意)。
【
図7】6時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の物質2289、2293及び2296の影響下での細胞株Panc TuI、AsPc1及びBxPc3の増殖アッセイの結果を示す。全ての物質が、非処理対照(NC)と比較して500μMの濃度から分析した全ての細胞株の細胞増殖に対して有意な影響を示す。測定を八連の決定で行い、p値をt検定によって算出した(
*p≦0.05 有意、
**p≦0.01 非常に有意、
***p≦0.001 極めて有意)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の主題の態様は様々な形態で具現化され得るが、以下の記載は単に、これらの形態の幾つかを本開示に包含される主題の具体例として開示することを意図している。したがって、本開示の主題は、そのように記載及び説明される形態又は態様に限定されることを意図したものではない。
【0021】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「a」、「an」及び「the」等の用語は、単数の実体のみを指すことを意図したものではなく、具体例を説明に用いることができる一般的な分類を含む。本明細書の専門用語は、本発明の具体的な態様を説明するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲において概説される場合を除き、本発明を画定するものではない。
【0022】
「阻害する」、「低減する」若しくは「防止」という用語、又はこれらの用語の任意の変形は、特許請求の範囲及び/又は本明細書において使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少又は完全な阻害を含む。
【0023】
本開示の化合物は、本開示による療法を必要とする任意の被験体に投与することができ。かかる被験体は様々な疾患、障害及び病態を患うリスクがあるか又は患っている可能性がある。例えば、かかる疾患、障害及び病態は、微生物因子による感染を特徴とし得る。幾つかの態様においては、疾患、障害及び病態は癌、腫瘍、癌幹細胞、癌の家族歴、又は癌リスクと関連する陽性遺伝子マーカーの存在又はリスクを特徴とし得る。
【0024】
ある特定の実施形態によると、本発明は、抗悪性腫瘍活性、抗菌活性及び/又は他の活性を有する化合物に関する。
【0025】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、特にヒト患者等の被験体における癌及び腫瘍の治療に有用である。したがって、ある特定の実施形態においては、本発明は、本明細書に記載される化合物を用いた癌及び腫瘍の治療にも関する。例えば、膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫及び癌性髄膜炎を含む中枢神経系癌、結腸癌、直腸癌及び大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、黒色腫、腎癌、肝癌、膵癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、子宮頸癌、噴門癌、胆嚢癌、皮膚癌、骨癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、リンパ肉腫、腺癌、線維肉腫及びそれらの転移等の癌が、本発明のある特定の実施形態による治療について企図される疾患である。幾つかの態様においては、患者は、胆道癌;膠芽腫及び髄芽腫を含む脳癌;乳癌;トリプルネガティブ乳癌;子宮癌;卵管癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;膀胱癌;子宮内膜癌;網膜芽細胞腫;膣癌;外陰癌;食道癌;口腔癌(mouth cancer);胃癌;腎癌;急性リンパ性及び骨髄性白血病を含む血液学的腫瘍;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びページェット病を含む上皮内新生物;肝癌(肝臓癌腫);肺癌;頭頸部癌又は口部癌(oral cancers)(口腔、咽喉、食道、鼻咽頭、顎、扁桃、鼻、唇、唾液腺、舌等);ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;神経内分泌腫瘍;扁平上皮癌を含む口部癌;副腎癌;肛門癌;血管肉腫;虫垂癌;胆管癌;骨癌;カルチノイド腫瘍;軟部組織肉腫;横紋筋肉腫;眼癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から生じるもの並びにファローピウス管癌を含む卵巣癌;胆嚢癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌を含む皮膚癌;生殖細胞腫瘍(精上皮腫、非精上皮腫(奇形腫、絨毛癌))、間質腫瘍及び胚細胞腫瘍を含む精巣癌;陰茎癌;血管内皮腫;消化管癌;尿管癌;尿道癌;脊髄癌;脳下垂体癌;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;甲状腺腫及び髄様癌を含む甲状腺癌;並びに腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎癌を含むが、これらに限定されない癌又は腫瘍を患っている。幾つかの態様においては、癌又は腫瘍は乳癌、前立腺癌、大腸癌、リンパ腫、多発性骨髄腫及び黒色腫を含む。本発明の化合物を用いるある特定の実施形態においては、固形腫瘍、非固形腫瘍及びリンパ腫である薬剤耐性腫瘍を含む薬剤耐性腫瘍、例えば多剤耐性(MDR)腫瘍にも有効である。本明細書に記載される方法を用いて任意の新生細胞を治療し得ることが現在考えられる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「実質的に」及び「実質的な」という用語は、相当な程度又は範囲を指す。例えば事象、状況、特性又は性質とともに使用される場合、この用語は事象、状況、特性又は性質が正確に発生する場合だけでなく、本明細書に記載される例の典型的な許容レベル又は変動性を説明するような事象、状況、特性又は性質が極めて近似して起こる場合を指すこともある。
【0027】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、与えられた値が端点の「少し上」又は「少し下」であってもよいと規定することによって数値範囲の端点に自由度を与えるために使用される。この用語の自由度は、特定の変数によって決まる場合があり、経験及び本明細書の関連する記載に基づく決定は当業者の知識の範囲内である。例えば、一態様においては、自由度は数値の約±10%以内であり得る。別の態様においては、自由度は数値の約±5%以内であり得る。更なる態様においては、自由度は数値の約±2%、±1%又は±0.05%以内であり得る。
【0028】
概して、本明細書において、「又は」という用語は、「及び」及び「及び/又は」を含む。
【0029】
本明細書において使用される場合、複数の化合物又は工程が便宜上、共通のリストに提示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが別々の固有のメンバーとして個別に特定されるかのように解釈する必要がある。このため、反対の指示がない限り、かかるリストの個々のメンバーは、共通のグループに提示されていることのみに基づいて、同じリストの任意の他のメンバーと事実上同等であると解釈すべきではない。
【0030】
本発明の化合物は、その化学構造に基づいて明らかであるように、遊離酸形態、遊離塩基形態の1つ以上、薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な水和物、薬学的に許容可能なエステル、薬学的に許容可能な溶媒和物、薬学的に許容可能なプロドラッグ、薬学的に許容可能な代謝産物の形態、及び薬学的に許容可能な立体異性体の形態で有用であり得る。開示される化合物は、その形態のそれぞれにおいて本発明の範囲内である。
【0031】
「薬学的に許容可能な塩」、「水和物」、「エステル」又は「溶媒和物」は、所望の薬理活性を有し、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、本発明の化合物の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を指す。有機酸を用いて、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、ナフチル酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩等の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を生成することができる。無機酸を用いて、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩及びチオシアン酸塩等の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を生成することができる。他の薬学的に許容可能な塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩及びトシル酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
塩、水和物、エステル又は溶媒和物は、有機塩基と形成することもできる。酸性化合物の薬学的に許容可能な塩基付加塩は、従来の方法によって有機及び無機塩基と形成することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、アンモニア、第一級、第二級及び第三級アミン等が挙げられる。また、本化合物のアルミニウム塩は、対応するナトリウム塩を適切なアルミニウム錯体、例えば塩化アルミニウム六水和物等で処理することによって得ることができる。非毒性の有機塩基としては、トリエチルアミン、ブチルアミン、ピペラジン及びトリ(ヒドロキシメチル)-メチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な塩基の塩、水和物、エステル又は溶媒和物の例としては、アンモニアの水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、並びに亜鉛塩が挙げられる。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩基付加塩、水和物、エステル又は溶媒和物の形成に適した有機塩基には、非毒性であり、かかる塩、水和物、エステル又は溶媒和物を形成するのに十分に強力な有機塩基が含まれる。説明のために、かかる有機塩基類として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン及びジシクロヘキシルアミン等のモノアルキルアミン、ジアルキルアミン及びトリアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のモノヒドロキシアルキルアミン、ジヒドロキシアルキルアミン又はトリヒドロキシアルキルアミン;アルギニン及びリジン等のアミノ酸;グアニジン;N-メチル-グルコサミン;N-メチル-グルカミン;L-グルタミン;N-メチル-ピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジル-フェネチルアミン;(トリヒドロキシ-メチル)アミノエタン等を挙げることができる。例えば、"Pharmaceutical Salts," J. Pharm. Sci., 66:1, 1-19 (1977)を参照されたい。したがって、塩基性窒素含有基はメチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物等の低級アルキルハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル及び硫酸ジアミル等の硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物等の長鎖ハロゲン化物;並びにベンジル及びフェネチルの臭化物等のアラルキルハロゲン化物を含む作用物質で四級化することができる。
【0033】
塩基性化合物の塩、水和物、エステル又は溶媒和物は、オキサチアジン様化合物の遊離塩基を、適切な酸又は塩基を含有する水溶液又は水性アルコール溶液又は他の好適な溶媒に溶解し、溶液を蒸発させることで塩を単離することによって調製することができる。代替的には、オキサチアジン様化合物の遊離塩基を酸と反応させ、酸性基を有するオキサチアジン様化合物を塩基と反応させてもよく、反応は有機溶媒中で行われ、この場合、塩は直接分離するか、又は溶液を濃縮することによって得ることができる。
【0034】
「薬学的に許容可能なプロドラッグ」は、生体内変化を受けた後にその薬理効果(複数の場合もある)を示す本発明の化合物の誘導体を指す。プロドラッグは、化学安定性の改善、患者の承諾及びコンプライアンスの改善、バイオアベイラビリティの改善、作用時間の延長、臓器選択性の改善、製剤化の改善(例えば水溶性(hydrosolubility)の増大)、及び/又は副作用(例えば毒性)の減少を目的として製剤化される。プロドラッグは、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Chemistry, Fifth Ed., Vol. 1, pp. 172-178, 949-982 (1995)に記載されているような当該技術分野で既知の方法を用いて本発明の化合物から容易に調製することができる。例えば、本発明の化合物は、ヒドロキシ基又はカルボキシ基の1つ以上をエステルに変換することによってプロドラッグへと変化させることができる。
【0035】
「薬学的に許容可能な代謝産物」は、代謝的変換を受けた薬物を指す。殆どの薬物は、体内に入った後、それらの物理的特性及び生物学的効果を変化させ得る化学反応の基質となる。これらの代謝変換は、通常は化合物の極性に影響を与え、薬物が体内に分布し、体内から排出される方法を変化させる。また、場合によっては、薬物の代謝が治療効果に必要とされる。例えば、代謝拮抗物質群の抗癌薬は、癌細胞に輸送された後に活性型へと変換される必要がある。殆どの薬物は何らかの代謝的変換を受けるため、薬物代謝に関与する生化学反応は多種多様であり得る。薬物代謝の主な部位は肝臓であるが、他の組織が関与する場合もある。
【0036】
さらに、ある特定の組成物、濃度、投与レジメン、投与量、症候群又は病態、工程等が特定の一態様との関連で論考され得る。これは単に便宜上のことであり、かかる開示が本明細書に見られる他の態様にも同様に当てはまることが理解される。例えば、本開示の化合物を投与する方法に関して記載された方法工程、活性剤、キット又は組成物のリストは、例えば感染、又は癌、腫瘍、癌幹細胞、癌の家族歴、若しくは癌リスクと関連する陽性遺伝子マーカーの存在若しくはリスクに起因又は関連する疾患、障害又は病態の少なくとも1つの兆候又は症状を治療、予防、抑制又は軽減する方法工程、活性剤、キット又は組成物に関連する態様を、これらの方法工程、活性剤、キット又は組成物が本明細書においてその態様との関連で再び記載されなくても直接支持する。
【0037】
本明細書で使用され、当該技術分野で十分に理解されている「治療する」又は「治療」という用語は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能又は検出不能を問わず、1つ以上の症状又は病態の緩和又は改善、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患の状態の改善又は緩和、疾患の再発の減少、及び寛解(部分又は完全を問わない)を挙げることができるが、これらに限定されない。「治療する」及び「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味する場合もある。本明細書に記載される方法は、治療方法として有用であることに加えて、疾患の予防又は予防法に有用であり得る。本明細書において使用される場合、「治療する」という用語は、本発明の化合物の任意の投与を指すことがあり、(i)疾患の病状若しくは総体的症状を経験若しくは発現している哺乳動物、例えばヒトにおける疾患を予防若しくは抑制すること(すなわち、病状及び/又は総体的症状の更なる進行を止めること)、又は(ii)疾患の病状若しくは総体的症状を経験若しくは発現している哺乳動物、例えばヒトにおける疾患を改善すること(すなわち、病状及び/又は総体的症状を逆転させること)を含む。「制御する」という用語は、制御される病態を予防、治療、根絶、改善するか、又は別の形でその重症度を低下させることを含む。
【0038】
濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で表現又は提示され得る。かかる範囲形式は、単に便宜上、簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に列挙されている数値だけでなく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを、各々の数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように含むと柔軟に解釈する必要があることを理解されたい。例として、「約0.01~2.0」の数値範囲は、約0.01~約2.0の明示的に列挙される値だけでなく、指定の範囲内の個々の値及び部分範囲を含むと解釈する必要がある。このため、0.5、0.7及び1.5等の個々の値、並びに0.5~1.7、0.7~1.5及び1.0~1.5等の部分範囲がこの数値範囲に含まれる。さらに、かかる解釈は、範囲の広さ又は記載されている特性に関わらず適用されるべきである。加えて、他に指定のない限り、全てのパーセンテージが重量パーセンテージであることに留意されたい。
【0039】
本開示の範囲を理解する上で、「含む("including" or "comprising")」という用語及びその派生語は、本明細書において使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を除外するものではないオープンエンドな用語であることが意図される。上記の内容は、「含む」、「有する」という用語及びそれらの派生語等の同様の意味を有する語にも当てはまる。「なる(consisting)」という用語及びその派生語は、本明細書において使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を除外するクローズドな(closed)用語であることが意図される。「から本質的になる」という用語は、本明細書において使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程、並びに特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の基本的な新規の特性(複数の場合もある)に実質的に影響を与えないものの存在を特定することが意図される。これらの移行語(すなわち「含む」、「なる」又は「本質的になる」)のいずれか1つへの言及が、具体的に使用されない他の移行語のいずれかへの置換えを直接支持することが理解される。例えば、「含む」から「から本質的になる」への用語の修正は、この定義により直接の支持が得られる。
【0040】
腫瘍幹細胞(癌幹細胞(CSC)とも称される)は、転移の発生及び切除後の腫瘍の再成長の主要なドライバーであると考えられる。
【0041】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、特に被験体における腫瘍幹細胞の治療に有用である。
【0042】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、特に被験体における膠芽腫腫瘍幹細胞の治療に有用である。
【0043】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、特に被験体において血管新生阻害効果をもたらすのに有用である。
【0044】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、特に被験体において細管形成阻害効果をもたらすのに有用である。
【0045】
ある特定の実施形態においては、本発明は、酸化ストレス、アポトーシス、及び/又は腫瘍部位での新生血管の成長の阻害により、腫瘍細胞及び/又はCSCを死滅させるか、又はそれらの成長を阻害する。腫瘍細胞及び/又はCSCを死滅させる主な作用機序は、酸化ストレスである。腫瘍細胞及び/又はCSCは、本発明に従ってアポトーシスによっても死滅させることができる。より低い血中濃度では、本発明による化合物は、その血管新生阻害作用及びその細管形成阻害作用によって腫瘍細胞の成長を阻害するのに効果的であり、したがって、これらの化合物は姑息的治療に有用である。
【0046】
本発明の化合物は、血流中でタウロリジン及びタウルルタムよりもはるかに遅く代謝される。したがって、より低用量のかかる化合物を患者に投与し、同様の効果を達成することができる。
【0047】
本発明の化合物は、ある特定の実施形態においては、ヒト患者等の被験体における微生物感染症の治療にも有用である。ある特定の実施形態に従って治療され得る微生物感染症としては、細菌感染症、真菌感染症及び/又はウイルス感染症が挙げられる。
【0048】
癌患者は免疫不全の傾向があるため、特に外科手術中及び/又は外科手術後に、微生物感染症を特に起こしやすい。
【0049】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体における膠芽腫の治療に利用される。
【0050】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるS.アウレウス(S. aureus)感染症の治療に利用される。
【0051】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0052】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるE.コリ(E. coli)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0053】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるH.ピロリ(H. pylori)感染症、及び/又は被験体におけるH.ピロリに関連する癌(複数の場合もある)の治療に本発明に従って利用される。
【0054】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0055】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0056】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0057】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0058】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるヘモフィラス・インフルエンザエ(Haemophilus influenza)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0059】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるモラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)感染症の治療に本発明に従って利用される。
【0060】
ある特定の態様においては、本発明の化合物は、以下の細菌:エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecilum)、スタフィロコッカス・アウレウス、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、アシネトバクター・バウマンニイ(Acineobacter baumannii)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、シトロバクター・フロウンディ(Citrobacter freundii)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneomoniae)、モーガネラ・モーガニイ(Morganelle morganii)、バクテロイデス・フラギリス(Bactroides fragilis)及びヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の少なくとも1つによる感染症を患う被験体の治療に本発明に従って利用される。
【0061】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体におけるウイルス感染症の治療に本発明に従って利用される。治療されるウイルス感染症としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、SV-40ウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス-5、ウエストナイルウイルス(WNV)、デングウイルス(DENV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、インフルエンザウイルス、ポックスウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、流行性耳下腺炎を引き起こすウイルス、狂犬病を引き起こすウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、エテロウイルス(Etheroviruses)、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス又はE型肝炎ウイルス、ジカウイルス、アロアウイルス(aroa virus)、チュレーニーウイルス(tyuleniy virus)、ハンタウイルス、エンテロウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、コロナウイルス、SARS-コロナウイルス、ラブドウイルスファミリー、ベシクロウイルス、リッサウイルス、パラミクソウイルスファミリー、パラミクソウイルス、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、モルビリウイルス、肺炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オルトミクソウイルス、ブニヤウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルスファミリー、ラッサ熱ウイルス、オルビウイルス、コロラドダニ熱ウイルスが挙げられる。
【0062】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、被験体における真菌感染症の治療に本発明に従って利用される。本開示の化合物は、ヒトを含む動物における真菌感染症の治療的処置又は予防的処置に有用である。例えば、化合物は、数ある生物の中でもカンジダ属、トリコフィトン属、ミクロスポルム属若しくはエピデルモフィトン属の種に起因するヒト(man)における局所性真菌感染症、又はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に起因する粘膜感染症の治療に有用である。化合物は、例えばカンジダ・アルビカンス、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオイデス属、トルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata)、パラコクシジオイデス属、ヒストプラズマ属又はブラストミセス属に起因する全身性真菌感染症の治療に使用することもできる。
【0063】
ヒトへの使用については、式(I)の抗真菌化合物及びその塩は、単独で投与することができるが、一般に、意図される投与経路及び標準的な製薬慣行に関して選択される医薬担体と混合して投与される。例えば、これらはデンプン若しくはラクトースのような賦形剤を含有する錠剤の形態で、又は単独で若しくは賦形剤と混合してカプセル若しくはオビュール(ovules)で、又は香料若しくは着色料を含有するエリキシル若しくは懸濁液の形態で経口投与することができる。幾つかの態様においては、口腔内崩壊錠を使用することができる。これらを非経口的に、例えば静脈内、筋肉内、膀胱内又は皮下に注射することができる。非経口投与については、これらを他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースを含有していてもよい滅菌水溶液の形態で使用するのが最良である。
【0064】
ある特定の実施形態においては、式Iによる化合物が本発明に従って利用される。
【0065】
【0066】
R1は-CO-アリール、又はC1~C6の分岐若しくは非分岐のアルキル、例えば、CH3、COH、COCH3、COCH2CH3、COCH2CH2CH3であり得る。R2はHであり得る。
【0067】
ある特定の態様においては、R1はHではない。ある特定の態様においては、R1はベンジルではない。ある特定の態様においては、R1はアリールではない。
【0068】
ある特定の態様においては、R2はアルキルではない。
【0069】
ある特定の実施形態においては、新たな化合物2289が本発明に従って利用される。化合物2289は、以下の構造:
【化4】
を有する。
【0070】
化合物2289は、腫瘍及び癌幹細胞、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療及び抑制に使用することができる。
【0071】
ある特定の実施形態においては、新たな化合物2293が本発明に従って利用される。化合物2293は、以下の構造:
【化5】
を有する。
【0072】
化合物2293は、腫瘍及び癌幹細胞、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療及び抑制に使用することができる。
【0073】
ある特定の実施形態においては、新たな化合物2296が本発明に従って利用される。化合物2296は、以下の構造:
【化6】
を有する。
【0074】
化合物2296は、腫瘍及び癌幹細胞、ウイルス感染症、細菌感染症及び/又は真菌感染症の治療及び抑制に使用することができる。
【0075】
必要とされる化合物の量は、腫瘍サイズによって決まる。一実施形態においては、本発明は、腫瘍サイズを外科的に縮小させ、1つ以上の化合物で治療することを含む。化合物は、腫瘍を縮小させる外科手術の前、その最中又はその後に投与することができる。本発明による化合物は、任意の好適な方法によって、例えば、限定されるものではないが、カプセルによって、錠剤によって、静脈内に(IV)、腹腔内に(IP)、膀胱内に、及び/又は腫瘍に直接投与することができる。
【0076】
化合物が他の化学療法剤のように創傷治癒を阻害しないため、外科手術中及び外科手術の直後に化合物を投与し得ることが予想外に見出された。
【0077】
本開示の化合物が腫瘍幹細胞を死滅させることが予想外に見出され、これは従来の化学療法剤の中では極めて稀であり、おそらく未知である。従来の化学療法剤は、腫瘍幹細胞に対して有効であったとしても、一般にヒト患者にとって極めて毒性の強い非常に高い用量でしか有効でない。
【0078】
腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされるよりも低用量のタウロリジン及び/又はタウルルタムが腫瘍幹細胞を死滅させることが予想外に見出された。
【0079】
式Iの化合物がヒト血液中でタウロリジン及びタウルルタムの半減期よりも顕著に長い半減期を有することが予想外に見出された。したがって、これらの化合物は、患者の血流からあまり急速に除去されず、それにより、身体のクリアランス機構によって引き起こされる薬効の喪失を効果的に遅らせる。
【0080】
このため、化合物2289、2293及び2296のそれぞれの半減期は、ヒト血液中で約5時間~6時間である。
【0081】
幾つかの実施形態においては、本開示の1つ以上の化合物、例えば式I、2289、2293及び2296は、約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度にて組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、化合物は、約1μg/ml~約100μg/mlの濃度にて組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、化合物は、約10μg/ml~約50μg/mlの濃度にて組成物中で投与される。組成物は、約0.01μg/ml~約1000μg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml又は約10μg/ml~約50μg/mlのタウロリジン及び/又はタウルルタムを含有していてもよい。
【0082】
幾つかの実施形態においては、本開示の1つ以上の化合物は、約0.001重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3.5重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.5重量%~約2.5重量%又は約1重量%~約2重量%の濃度にて組成物中で投与される。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.01%~約1.5%の濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、化合物は、約0.1%~約1%の濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、化合物は、約100μM~約5000μM、約250μM~約2500μM、約500μM~約2000μM、約750μM~約1500μM、約1000μM~約1250μMの濃度、又は列挙される範囲内の任意の他の濃度にて組成物中で与えられる。組成物は、約0.01%~約3%、約0.1%~約2.5%又は約1%~約2%のタウロリジン及び/又はタウルルタムを付加的に含有していてもよい。
【0083】
幾つかの態様においては、本開示の1つ以上の化合物は、単位剤形の組成物中で与えられる。本明細書において使用される場合、「単位剤形」は、適正な医療行為に従う単回投与での哺乳動物等の動物、例えばヒト被験体への投与に好適な量の化合物を含有する組成物である。これらの組成物は、約0.1mg(ミリグラム)~約500mg、例えば約5mg~約350mgの化合物を含有し得る。本発明の組成物による治療の頻度は、所望の標的血漿レベルが達成及び維持されるように変更することができる。このため、治療スケジュールの非限定的な例としては、毎日、1日2回、1日3回、毎週、隔週、毎月及びそれらの組合せが挙げられる。代替的には、本発明の組成物は、持続注入又はボーラスに続く、例えば投与される薬物の速度及び投与量が異なる1回、2回、3回以上の異なる持続注入として投与することもでき、かかるレジメンは、1回以上の付加的なボーラス注射によって任意に中断される。
【0084】
一態様においては、本開示の1つ以上の化合物は、それを必要とする被験体に約0.001g~約1000g、例えば約0.01g~約500g、0.1g~300g、0.5g~200g、1g~100g、又は列挙される範囲内の任意の量であり得る総1日投与量で投与される組成物中で与えられる。1日投与量は、経口投与可能な組成物の形態で投与され得る。1日投与量はカプセル、錠剤又は薬学的に許容可能な溶液の形態で投与してもよい。1日投与量は、本開示の1つ以上の化合物を約0.01%~約5%(w/v)、約0.1%~約3%(w/v)、約0.5%~約2.5%(w/v)又は約1%~約2%(w/v)の濃度で含有する形態で投与してもよい。
【0085】
1日投与量は、本開示の1つ以上の化合物を約0.001μg/ml~約1000μg/ml、約0.01μg/ml~約750μg/ml、約0.05μg/ml~約500μg/ml、約0.1μg/ml~約300μg/ml、約0.5μg/ml~約200μg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、約5μg/ml~約50μg/ml、約10μg/ml~約25μg/ml又は約15μg/ml~約20μg/mlの濃度で含有する形態で投与してもよい。1日投与量は、1つ以上の可溶化剤、例えばポリオールを含有する形態で投与してもよい。
【0086】
組成物中で与えられる有効投与量は、1日当たり約0.01mg/kg~500mg/kg、約1mg/kg~100mg/kg、又は1日当たり約5mg/kg~50mg/kgの本開示の1つ以上の化合物を含有する投与単位を含み得る。幾つかの態様においては、投与単位は隔日、隔週又は毎週投与される。
【0087】
一実施形態においては、式Iの化合物は、腫瘍幹細胞を死滅させるためにタウロリジン及び/又はタウルルタムとの共同療法として投与することができる。かかる実施形態によれば、共同療法は、通常の腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされるよりも、腫瘍幹細胞を死滅させるのに必要とされる投与量が少なくて済むことが予想外に見出された。
【0088】
一実施形態においては、式Iの化合物は、約0.1g~約100g、約1g~約80g、約2g~約50g又は約5g~約30gの総1日用量で被験体に投与される。
【0089】
化合物の有効投与量は、1日当たり約0.1mg/kg~1000mg/kg、好ましくは150mg/kg~450mg/kg、最も好ましくは1日当たり300mg/kg~450mg/kgの範囲内の投与単位である。
【0090】
注射又は注入に適した製剤は、化合物濃度を高めた溶液を提供するために1つ以上の可溶化剤、例えば糖、ポリオール、界面活性剤、浸透圧調節物質を含有する等張溶液を含み得る。かかる溶液は、欧州特許第253662号に記載されている。溶液は、リンゲル液又は乳酸リンゲル液で等張にすることができる。かかる溶液中の化合物の濃度は、1g/リットル~60g/リットルの範囲であり得る。
【0091】
本明細書において使用される場合、「ポリオール」という用語は、通常の糖類と比較して多くのヒドロキシル(-OH)基を有する糖を指す。ポリオールとしては、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、イソマルト、エリトリトール、ラクチトール、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、フコース、リボース、ラクトース、マルトース及びセロビオース等のアルコール及び炭水化物が挙げられる。
【0092】
ある特定の実施形態においては、本発明は、例えば上記化合物の本明細書に記載されるような少なくとも1つの活性を、例えば該活性の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%以上有する上記の化合物の誘導体にも関する。
【0093】
ある特定の実施形態においては、本発明は、上記化合物の薬学的に許容可能な溶液、並びに上記組成物を含有するカプセル及び錠剤等の経口投与可能な組成物を含む、本明細書に記載される化合物を含有する組成物にも関する。
【0094】
ある特定の実施形態においては、本発明の化合物は、任意の好適な手段によって、例えば溶液中で、例えば局所的に、全身的に、例えば静脈内注入等によって被験体又は患者に投与することができる。
【0095】
2289の合成
化合物2289は、以下の非限定的な合成プロトコルに従って調製した。
1.以下の化合物:
【化7】
をピリジンの存在下にて約100℃の温度で無水酢酸と反応させて、化合物2289を形成した。水を添加し、沈殿を濾過することによって反応混合物から化合物2289を単離した。収率(生):89%。
2.以下の化合物:
【化8】
をピリジンの存在下にて約60℃の温度で塩化アセチルと反応させて、化合物2289を形成した。水を添加し、沈殿を濾過することによって反応混合物から化合物2289を単離した。収率(粗):57%。
【0096】
精製:
例えば、
エタノール
酢酸エチル
酢酸エチル/石油エーテルによる再結晶化
【0097】
物理的特性
融解範囲:79℃~83℃
水への溶解度:室温で約1.5%
【0098】
同一性はNMR、IR及び元素分析によって確認した。
【0099】
幾つかの態様においては、本開示は、以下の反応によって化合物2289を作製する方法を含む:
【0100】
【0101】
幾つかの態様においては、Xは脱離基である。例えば、Xは、ハロゲンが例えばCl、Br、Iであるハロゲン化アシルであってもよい。別の例においては、Xは、CO=OR等の無水物であってもよい。別の例としては、Xは、チオエステルSR又はエステルORであってもよい。別の例としては、Xは、メシレート又はトシレートであってもよい。別の例としては、Xはハロゲンであってもよい。
【0102】
2293の合成
化合物2293は、以下の非限定的な合成プロトコルに従って調製した。
【0103】
以下の化合物:
【化10】
をピリジンの存在下で塩化プロピオニルと反応させ、化合物2293を形成した。化合物2293は、ピリジン相に留まり、例えばカラムクロマトグラフィーによって単離することができる。
【0104】
精製:
カラムクロマトグラフィー:溶離液:ヘキサン/酢酸エチル 50:50
【0105】
物理的特性
融解範囲:52℃~53℃
水への溶解度:室温で1.5%未満
【0106】
同一性はNMR、IR及びMSによって確認した。
【0107】
幾つかの態様においては、本開示は、以下の反応によって化合物2293を作製する方法を含む:
【0108】
【0109】
幾つかの態様においては、Xは脱離基である。例えば、Xは、ハロゲンが例えばCl、Br、Iであるハロゲン化アシルであってもよい。別の例においては、Xは、CO=OR等の無水物であってもよい。別の例としては、Xは、チオエステルSR又はエステルORであってもよい。別の例としては、Xは、メシレート又はトシレートであってもよい。別の例としては、Xはハロゲンであってもよい。
【0110】
2296の合成
化合物2296は、以下の非限定的な合成プロトコルに従って調製した。
【0111】
1-ヒドロキシプロパン-2-スルホンアミドを水に溶解し、メチレングリコールと反応させて、化合物2296を形成した。
収率(粗):51%
【0112】
精製:
アルコール溶媒による再結晶化
【0113】
物理的特性
融解範囲:74℃~75℃
水への溶解度:室温で最低1%
【0114】
同一性はNMR、IR及び元素分析によって確認した。
【0115】
幾つかの態様においては、本開示は、以下の反応によって化合物2296を作製する方法を含む:
【0116】
【0117】
上に示した反応物は代替であり、非限定的なものである。当業者は、他の代替的な反応物が反応に使用され得ることを認識するであろう。アルコール、例えばエタノール又はメタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等を含むが、これらに限定されない様々な溶媒を使用することができる。
【0118】
ある特定の実施形態においては、当該技術分野で既知の実験用ガラス器具で構成される昇華装置を、本発明による化合物を精製する昇華の技法に使用することができる。ある特定の実施形態においては、昇華容器を真空下及び減圧下で加熱する。化合物は揮発し、冷却表面上に精製化合物として凝縮し、不揮発性の残留不純物が後に残る。この冷却表面は、コールドフィンガーの形をとることが多い。加熱を停止し、真空が解放された後、昇華した化合物を冷却表面から回収することができる。
【0119】
一実施形態においては、本開示は、腫瘍幹細胞死滅有効量のタウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物を、式Iの1つ以上の化合物と組み合わせて、それを必要とする被験体に投与することにより、腫瘍幹細胞を死滅させる方法を含む。タウロリジン及び/又はタウルルタムの腫瘍幹細胞死滅有効量は、腫瘍細胞を死滅させるのに必要とされるタウロリジン及び/又はタウルルタムの量よりも少ない。幾つかの態様においては、式Iの化合物をカルムスチン、シタラビン、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、アスパラギナーゼ、プロカルバジン、マイトマイシン、5-FU、メトトレキサート、ビンブラスチン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブ、1つ以上のチェックポイント阻害剤、1つ以上のPARP阻害剤、1つ以上の抗PD-1薬、ドセタキセル、イリノテカン(Onivyde(商標)を含む)、ドキソルビシン、エルロチニブ、オラパリブ、ラパチニブ、トポテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、シクロフォスファミド、イホスファミド又はそれらの組合せと共投与する。幾つかの態様においては、治療は卵巣癌に対するものであり、式Iの化合物をカルボプラチン、パクリタキセル、トポテカン、ベバシズマブ、1つ以上のPARP阻害剤、1つ以上の抗PD-1薬又はそれらの組合せと共投与する。例えば、1つ以上のPARP阻害剤には、オラパリブ(Lynparza(商標))、ニラパリブ(Zejula(商標))、ルカパリブ(Rubraca(商標))及びタラゾパリブ(Talzenna(商標))、ベリパリブ、パミパリブ、CEP9722、E7016、イニパリブ、3-アミノベンズアミド又はそれらの組合せが含まれ得る。例えば、1つ以上の抗PD1薬には、ペムブロリズマブ(Keytruda(商標))、ニボルマブ(Opdivo(商標))、セミプリマブ(Libtayo(商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標))、アベルマブ(Bavencio(商標))及びデュルバルマブ(Imfinzi(商標))が含まれ得る。例えば、共投与される薬物には、ペムブロリズマブ(Keytruda(商標))、ニボルマブ(Opdivo(商標))、セミプリマブ(Libtayo(商標))、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、ササンリマブ、ブディガリマブ、ジンベレリマブ、BI754091、JTX-4014、AMP-224、AMP-514、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標))、アベルマブ(Bavencio(商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(商標))、コシベリマブ、KN035、CK-301、AUNP12、CA-170、BMS-986189又はそれらの組合せが含まれ得る。幾つかの態様においては、治療は膵癌に対するものであり、式Iの化合物を膵癌の治療に適した上述の化合物の1つ以上と共投与する。
【0120】
「共投与する」又は「組み合わせて投与する」という表現は、本明細書において使用される場合、2つ(以上)の作用物質が時間的に並んで投与されることを意味する。共投与又は組合せは、2つの作用物質を単一の製剤に混合するか、又は2つの作用物質を別々ではあるが同時に若しくは短い時間間隔で別々に投与することによって達成することができる。例えば、概して、2つの作用物質は、6時間~168時間の時間範囲内に共投与される。この場合、作用物質をいずれの順序で投与してもよく、すなわち化学療法薬を初めに投与しても、又は本開示の1つ以上の化合物を初めに投与してもよい。幾つかの態様においては、2つの作用物質を単一の製剤中で共投与するか、又は順次、別々に共投与する。
【0121】
幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.01μg/ml~約500μg/mlの濃度にて腫瘍幹細胞死滅組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.1μg/ml~約100μg/mlの濃度にて腫瘍幹細胞死滅組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約10μg/ml~約50μg/mlの濃度にて腫瘍幹細胞死滅有効組成物中で投与される。タウロリジンは、in vitro組織培養において0.01μg/mlで腫瘍幹細胞の死滅に有効である。
【0122】
幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.001%~約2%の濃度にて腫瘍幹細胞死滅組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.01%~約1.5%の濃度にて腫瘍幹細胞死滅組成物中で投与される。幾つかの実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.1%~約1%の濃度にて腫瘍幹細胞死滅組成物中で投与される。
【0123】
一実施形態においては、タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物は、約0.01g~約50g、約0.1g~約30g、約0.5g~約10g又は約1g~約5gの総1日用量で、それを必要とする被験体に腫瘍幹細胞の死滅のために投与される。
【0124】
タウロリジン、タウルルタム又はそれらの混合物の腫瘍幹細胞死滅有効投与量は、1日当たり約0.01mg/kg~500mg/kg、好ましくは1mg/kg~100mg/kg、最も好ましくは1日当たり5mg/kg~50mg/kgの範囲内の投与単位である。
【0125】
別の実施形態においては、本開示は、本開示の1つ以上の化合物を単独で又はタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて、それを必要とする被験体に投与することにより、腫瘍幹細胞を死滅させる方法を含む。かかる技法は、異なる半減期を有する少なくとも2つの化合物を用いて腫瘍幹細胞を死滅させることで、それによって得られる薬物動態効果を広げる方法をもたらす。
【0126】
幾つかの態様においては、本開示は、タウロリジン及び/又はタウルルタムと本開示の1つ以上の化合物とを共投与することにより、タウロリジン及び/又はタウルルタム療法の治療濃度域を広げることを含む。
【0127】
ある特定の態様においては、以下の実験プロトコルを行った。
【0128】
細胞株及び培養条件
4つの異なるヒト癌細胞株:膵癌細胞Panc TuI(CLS Cell Lines Service、エッペルハイム、ドイツ)、結腸癌細胞HCT116(ATCC-LGC Standards GmbH、ヴェセル、ドイツ)、メルケル細胞癌細胞MCC 14.2及び乳腺/乳癌細胞MDA MB 468(ATCC-LGC Standards GmbH、ヴェセル、ドイツ)を本開示の化合物の試験に使用する。HCT116細胞、MDA MB 468細胞及びPanc TuI細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養し、MCC 14.2は、RPMI 1640中で維持する。全ての培養物にペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)及び2mM L-グルタミンを添加する。MCC 14.2細胞に25nM HEPESを更に補充する。細胞を加湿雰囲気にて37℃及び5%CO2で単層として成長させる。
【0129】
種々のグラム陰性菌及びグラム陽性菌:スタフィロコッカス・アウレウス及びエシェリキア・コリ(ATCC-LGC Standards GmbH、ヴェセル、ドイツ)、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム、スタフィロコッカス・アウレウス、クロストリジウム・ディフィシル、アシネトバクター・バウマンニイ、シュードモナス・エルジノーサ、ステノトロホモナス・マルトフィリア、シトロバクター・フロウンディ、エシェリキア・コリ、クレブシエラ・ニューモニエ、モーガネラ・モーガニイ、バクテロイデス・フラギリス、ヘリコバクター・ピロリ(新鮮臨床分離株)を本開示の化合物の試験に使用する。バクテロイデス・フラギリス及びヘリコバクター・ピロリを除く全ての分離株は、ミューラーヒントン寒天で培養する。バクテロイデス・フラギリスは、5%ウマ血液及び20mg/l β-NADを含有するミューラーヒントン寒天で培養する。ヘリコバクター・ピロリは、Chocolat PolyViteX寒天で培養する。
【0130】
細胞遊走アッセイ
細胞を60mmディッシュにプレーティングしてコンフルエントな単層を作製し、24時間インキュベートし、細胞を接着及び伸展させる。コンフルエントな単層に必要とされる細胞数は、特定の細胞型によって異なる。細胞単層にスクラッチを作製した後、ギャップ領域を位相差顕微鏡法によって調べる。開始時及びスクラッチを埋める細胞遊走中に一定間隔(48時間、72時間及び120時間(5日))で画像を取得し、細胞の遊走速度を半定量化する。
【0131】
MTT細胞傷害性アッセイ
細胞を個別に播種し、96ウェルプレートフォーマットでサブコンフルエントな単層を得て、処理前に24時間インキュベートする。抗悪性腫瘍活性に関する用量応答を調べるために、細胞を漸増濃度(100μmol/l、200μmol/l、500μmol/l、1000μmol/l、1500μmol/l、2000μmol/l)のあらゆるオキサチアジナン誘導体及び対照としてddH2Oとともに24時間及び48時間インキュベートする。曝露時間後に、10μlのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物)試薬(5mg/ml)を添加し、2時間インキュベートした後、紫色のホルマザン結晶を100μlのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解する。細胞の生存性は、OD560の測定によるマイクロプレート吸光度リーダー(ASYS、UVM340、Anthos Mikrosystheme GmbH、ドイツ)を使用することによって分析することができる。アッセイは、連続継代による3回の独立実験の8回の反復を用いて行う。
【0132】
ROS分析
機能的側面について更なる洞察を得るために、活性酸素種(ROS)の細胞レベルに対する化合物の影響を、Cellular ROS/Superoxide Detection Assay KIT(Abcam、ケンブリッジ、イギリス)を製造業者の使用説明書に従って用いて分析する。
【0133】
BrdU増殖アッセイ
細胞を個別に播種し、96ウェルプレートフォーマットでサブコンフルエントな単層を得て、処理前に24時間インキュベートする。細胞の抗増殖活性に関する用量応答を調べるために、細胞を漸増濃度(100μmol/l、200μmol/l、500μmol/l、1000μmol/l、1500μmol/l及び2000μmol/l)のあらゆるオキサチアジナン誘導体及び対照としてddH2Oとともに6時間インキュベートした後、BrdU増殖アッセイ(5-ブロモ-2-デオキシウリジン)-ELISA(Roche Applied Science、マンハイム、ドイツ)を製造業者の使用説明書に従って行う。6時間のインキュベーション期間は、以前の実験においてBrdU増殖アッセイに適切であることが示されている。合成されたDNAの量を、参照波長492nmにて370nmで測定するマイクロプレート吸光度リーダー(ASYS、UVM340、Anthos Mikrosysteme GmbH、クレーフェルト、ドイツ)を用いて検出する。BrdUアッセイは、連続継代による3回の独立実験の8回の反復を用いて行う。
【0134】
ディスク拡散試験
化合物の抗細菌能を、ミューラーヒントン寒天を用いるKirby-Bauerディスク拡散試験によって調べる。10mgの試験物質を含有する150μlの蒸留水に浸した直径10mmのディスクを、該当する試験細菌のプレローン(pre-lawn)を保持するミューラーヒントン寒天(bioMeieux、ジュネーヴ、スイス)上に置く。プレートを37℃で24時間インキュベートし、阻止帯を記録する。対照として培養培地及び滅菌蒸留水を使用した。N-アセチルシステイン(NAC)を抗酸化対照として使用する。
【0135】
統計
MTTアッセイ及びBrdUアッセイの結果(生細胞/増殖細胞の割合)を平均±SEMとして表す。一元配置ANOVAを用い、続いて正規分布を有する実験群を比較するテューキーの事後検定及びカテゴリーデータについてのフィッシャーの正確確率検定を必要に応じて用いる。0.05以下のp値を統計的に有意とみなす。
【実施例】
【0136】
実施例1:
細胞遊走アッセイ:化合物2289、2244、2287、2255、2256の細胞遊走を非処理対照(NK)及び陽性対照(化合物2250)と比較した。比較化合物2244、2287、2255、2256は、以下の構造を有する。
【0137】
【0138】
細胞遊走アッセイを用いて、2289、陰性対照及び陽性対照(2250)での処理下での種々の癌細胞実体の遊走速度を半定量化した。
図1は、MDA MB 468のコンフルエントな単層を用いて例示的に示した2日~5日後の結果を示す。
【0139】
図1に示されるように、細胞がスクラッチ領域にまで遊走してギャップを埋める非処理対照と比較して、2250で処理した培養物の遊走速度は明らかに阻害された。2289で処理した細胞培養物も、2250による処理ほどではないが、より低い遊走速度を示した。他の全ての試験誘導体では遊走速度の低下は見られず、5日後にほぼ完全に埋められたギャップを示し、非処理対照と同等であった。結果は、試験した全ての細胞株を代表するものである。
【0140】
実施例2:
化合物2289、2293及び2296の抗悪性腫瘍活性を、上記のMTTアッセイ及びBrdUアッセイに従って決定した。
【0141】
図2に示されるように、細胞生存性についてのMTTアッセイにおいては、2250及び2289が、両方の物質に対して様々な感受性を有する試験した全ての癌細胞株(MDA MB 468、HT29、MCC 14.2、Panc TuI)において生細胞の有意な減少を示した(MDA MB 468が最も高い応答率、HT 29が最も低い応答率を示した)。
【0142】
図3に示されるように、細胞増殖についてのBrdUアッセイにおいては、2250及び2289が、試験した全ての癌細胞株において増殖細胞の有意な減少を示し、MDA MB 468が最も高い応答率、MCC 14.2が最も低い応答率を示した。2250は、全体的に2289と比較してより高い抗増殖能を示す。
【0143】
実施例3:
化合物2289、2250、2244、2255、2256、2287、2289、2293及び2296の抗細菌活性を、寒天拡散試験を用いて決定した。結果は、以下のようにまとめられる。
【0144】
【0145】
2289:種々の細菌株の阻止帯
エシェリキア・コリ(ATCC 8739)、グラム陰性:18.5mm
スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC 6538)、グラム陽性:27.5mm
【0146】
2293:種々の細菌株の阻止帯
エシェリキア・コリ(ATCC 8739)、グラム陰性:19.5mm
スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC 6538)、グラム陽性:31.5mm
スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA 2065番)、グラム陽性:32.5mm
【0147】
2296:種々の細菌株の阻止帯
エシェリキア・コリ(ATCC 8739)、グラム陰性:23.0mm
スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC 6538)、グラム陽性:38.0mm
スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA 2065番)、グラム陽性:43.0mm
【0148】
実施例4:
種々のオキサチアジン誘導体を用いた細胞株Panc TuIのMTT細胞傷害性アッセイを行った。
図4は、24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の物質2289、2293及び2296の影響下の細胞生存性を示す。
【0149】
全ての物質が、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株Panc TuIの細胞生存性に対して有意な影響を示す。
【0150】
種々のオキサチアジン誘導体を用いた細胞株AsPc1のMTT細胞傷害性アッセイを行った。
図5は、24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の物質2289、2293及び2296の影響下の細胞生存性を示す。
【0151】
物質2289及び2296は、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株AsPc1の細胞生存性に対して有意な影響を示した。物質2293は、24時間後に非処理対照(NC)と比較して500μMの濃度から細胞生存性に対して有意な影響を示す。
【0152】
種々のオキサチアジン誘導体を用いた細胞株BxPc3のMTT細胞傷害性アッセイを行った。
図6は、24時間、48時間及び72時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の物質2289、2293及び2296の影響下の細胞生存性を示す。全ての物質が、24時間後に非処理対照(NC)と比較して100μMの濃度から分析した細胞株BxPc3の細胞生存性に対して有意な影響を示す。
【0153】
種々のオキサチアジン誘導体を用いた細胞株Panc TuI、AsPc1及びBxPc3の増殖アッセイを行った。
図7は、6時間のインキュベーション期間後の陰性対照=NCの非処理細胞及び陽性対照の1000μM GP2250と比較した種々の濃度の物質2289、2293及び2296の影響下の細胞増殖を示す。全ての物質が、非処理対照(NC)と比較して500μMの濃度から分析した全ての細胞株の細胞増殖に対して有意な影響を示す。
【0154】
実施例5:
タウロリジンが約30分の半減期を有し、化合物2250が顕著により長い半減期を有することが以前に報告されている。ヒト新鮮血液における化合物2289、2293及び2296のそれぞれの半減期をin vitroにて37℃で測定した。
【0155】
2289及び2293から2250については、K2-EDTAヒト血液に256μMの2289又は2293、26μMの2250及び26μMの2244をスパイクした(n=1)。プールを37℃で20分間~25分間保持した後、アリコートを遠心分離した(4℃にて2500gで少なくとも5分間)。遠心分離後にヒト血漿を採取し、即座に-80℃で凍結した。このアリコートをT0に相当するとした。
【0156】
残りのプールを分取し、37℃に維持した。少なくとも0.25時間、0.5時間、1時間、6時間、8時間、24時間及び48時間後にアリコートを採取し、遠心分離し(4℃にて2500gで少なくとも5分間)、回収した血漿を-80℃で凍結した。
【0157】
T0と比較した各時点での2289及び2293のピーク面積を測定することによって安定性を決定した。
【0158】
2296からその代謝産物1-ヒドロキシプロパン-2-スルホンアミドについては、K2-EDTAヒト血液に256μMの2296及び26μMの1-ヒドロキシプロパン-2-スルホンアミドをスパイクした(n=1)。
【0159】
プールを37℃で20分間~25分間保持した後、アリコートを遠心分離した(4℃にて2500gで少なくとも5分間)。遠心分離後にヒト血漿を採取し、即座に-80℃で凍結した。このアリコートをT0に相当するとした。
【0160】
残りのプールを分取し、37℃に維持した。少なくとも0.5時間、1時間、3時間、6時間、8時間及び24時間後にアリコートを採取し、遠心分離し(4℃にて2500gで少なくとも5分間)、回収した血漿を-80℃で凍結した。
【0161】
T0と比較した各時点での2296のピーク面積を測定することによって安定性を決定した。
【0162】
結果から、化合物2296が2250と非常によく似たプロファイルのヒト血液安定性を有することが予想外に実証された。
【0163】
【0164】
【0165】
結果から、化合物2289及び2293が約20分~25分以内に2250に代謝又は分解され、これが2250を用いて行った実験と同様の安定性プロファイルを示すという点で2250と非常によく似たプロファイルのヒト血液安定性を有することが予想外に実証された。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
化合物2296及び2289及び2293のそれぞれの半減期(2250への代謝を経る)は、タウロリジンの半減期よりも顕著に長い。
【0171】
本開示の主題について、特徴の様々な組合せ及び部分的組合せを含むある特定の例示的な実施例を参照してかなり詳細に記載し示したが、当業者は、他の態様並びにその変形形態及び変更形態を、本開示の範囲内に包含されるものとして容易に理解するであろう。さらに、こうした態様、組合せ及び部分的組合せの記載は、請求項に係る主題が、請求項に明示的に列挙されているもの以外の特徴又は特徴の組合せを必要とするということを意味するようには意図されていない。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に包含される全ての変更形態及び変形形態を含むように意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、R
1は-CO-アリー
ルであり、R
2はH、
【化2】
である)の化合物から選択される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項3】
経口投与可能な組成物の形態である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
カプセル、錠剤又は薬学的に許容可能な溶液の形態である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物を約0.01%~約3%(w/v)の濃度で含有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物を約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度で含有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1つ以上の可溶化剤を含有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリオールを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容可能な注射又は注入用の担体を含む注射及び/又は注入用の製剤である、請求項2~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物を含む経口剤形。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、癌を患う被験体を治療する方法。
【請求項12】
前記癌が膠芽腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、癌性髄膜炎、結腸癌、直腸癌、大腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、黒色腫、腎癌、肝癌、膵癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、子宮頸癌、噴門癌、胆嚢癌、皮膚癌、骨癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、リンパ肉腫、腺癌、線維肉腫又はそれらの転移である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、微生物感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、被験体において腫瘍幹細胞を治療する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、血管新生阻害を必要とする被験体を治療する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、細管形成阻害を必要とする被験体を治療する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、細菌感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を被験体に投与することを含む、ウイルス感染症を患う被験体を治療する方法。
【請求項19】
タウロリジン及び/又はタウルルタムを請求項1に記載の少なくとも1つの化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形と組み合わせて共同療法として被験体に投与することを含む、共同療法レジメンを被験体に提供する方法。
【請求項20】
タウロリジン及び/又はタウルルタムを請求項1に記載の少なくとも1つの化合物と組み合わせてヒト被験体に投与することを含む、異なる半減期を有する少なくとも2つの化合物を用いてヒト被験体におけるタウロリジン及び/又はタウルルタムの薬物動態効果を広げる方法。
【請求項21】
0.1mg/kg~1000mg/kgの投与量の前記少なくとも1つの化合物を0.01mg/kg~500mg/kgの投与量のタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
約0.1g~約100gの総1日用量の前記少なくとも1つの化合物を約0.01g~約50gの総1日用量のタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
a)請求項1に記載の少なくとも1つの化合物、請求項2~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は請求項10に記載の経口剤形を、b)カルムスチン、シタラビン、ゲムシタビン、ナブパクリタキセル、アスパラギナーゼ、プロカルバジン、マイトマイシン、5-FU、メトトレキサート、ビンブラスチン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバシズマブ、1つ以上のチェックポイント阻害剤、1つ以上のPARP阻害剤、1つ以上の抗PD-1薬、ドセタキセル、イリノテカン(Onivyde(商標)を含む)、ドキソルビシン、エルロチニブ、オラパリブ、ラパチニブ、トポテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、シクロフォスファミド、イホスファミド又はそれらの組合せとともに共同療法として被験体に投与することを含む、共同療法レジメンを被験体に提供する方法。
【国際調査報告】