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特表2024-515221ラウドスピーカー・ドライバー用音響アダプター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ラウドスピーカー・ドライバー用音響アダプター
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20240329BHJP
   H04R 1/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
H04R1/28 310C
H04R1/00 310C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565572
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022018100
(87)【国際公開番号】W WO2022225612
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】17/238,611
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523401995
【氏名又は名称】プラマー,ジャン,ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】プラマー,ジャン,ピー.
(57)【要約】
本開示で提供されるのは、スピーカー・ドライバーの背面を実質的に包囲するとともにスピーカー・ドライバーの背面の周囲に予め定められた3次元内部容積(3DV1)を形成するための内部筐体を含み、それによって振動減衰器として機能する音響アダプターである。3次元内部容積の外側に制限された2次元容積(2DV)を形成するために、内部筐体の構成に対応するとともに内部筐体から離間した構成を有する外部筐体が設けられる。筐体の内面には、2次元容積に音を通すための開口が形成されている。発泡材は、少なくとも外部筐体の内面を被覆するために、2次元容積(2DV)内に受承され、2次元容積内に受容された音を減衰させるための摩擦面を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカー・ドライバーの背面を包囲し、前記スピーカー・ドライバーの前記背面の周囲に予め定められた3次元内部容積(3DV1)を規定することにより、振動ダンパーとして機能する内部筐体と、
前記内部筐体の構造体に対応する構造体を有する外部筐体であって、前記3次元内部容積の外側に規制された2次元容積(2DV)を形成するために、前記内部筐体から間隔をあけて配置される、外部筐体と、
前記筐体の内面に形成され、前記2次元容積に音を通すための開口と、前記2次元容積(2DV)内に受承され、少なくとも前記外部筐体の内面を被覆するための発泡材であって、前記2次元容積内に受容された音を減衰させるための摩擦面を提供する発泡材と、
を備える、音響アダプター。
【請求項2】
前記外部筐体の外面の外側に第2の3次元容積(3DV2)をさらに備える、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項3】
前記第2の3次元容積(3DV2)は、予め定められた3次元容積(3DV1)よりも大きな容積であり、それにより、より調整された空気圧を規定する、請求項2に記載の音響アダプター。
【請求項4】
前記内部筐体および前記外部筐体に形成された少なくとも1つの動圧アイソレーターをさらに備え、前記第2の3次元容積(3DV2)と前記予め定められた3次元容積(3DV1)との間に、ポートと連動して低周波出力を拡大するための調整された圧力を連通させる、請求項3に記載の音響アダプター。
【請求項5】
前記発泡材が、前記外部筐体の前記内面の裏地となる摩擦強化型連続気泡発泡体である、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項6】
前記発泡材が前記2次元容積の50%を占める、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項7】
前記開口が前記内部筐体上の前記スピーカー・ドライバーの背面中央に設けられる、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項8】
前記開口は、前記スピーカー・ドライバーの周波数帯域に応じて選択された開口サイズおよび開口形状を有し、前記開口サイズは、より低周波スピーカー・ドライバーとともに使用される場合には前記内面のより大きい部分からなり、より高周波スピーカー・ドライバーとともに使用される場合には前記内面のより小さい部分からなる、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項9】
前記内部筐体および前記外部筐体は、円形、楕円形、正方形、または矩形から選択される構造体を有する、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項10】
前記2次元容積は、前記スピーカー・ドライバーの寸法に適合する寸法領域(x,y)と、前記スピーカー・ドライバーの周波数帯域に応じて選択される固定値に制限された容積寸法(z)とを有し、より低周波数スピーカー・ドライバーにはより大きな容積寸法(z)が選択され、より高周波数スピーカー・ドライバーにはより小さな容積寸法(z)が選択され、前記容積寸法(z)は所望の音質(Q)を得られるように選択される、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項11】
前記2次元容積は、対応する個別の開口を有する少なくとも1つの追加の細分化された2次元容積を含み、前記少なくとも1つの追加の細分化された2次元容積は、選択された予め定められた周波数に対応する、請求項1に記載の音響アダプター。
【請求項12】
前記少なくとも1つの追加の細分化された2次元容積とその対応する個別の開口は、前記筐体の前記内面に形成された前記開口から離間した位置にそれぞれ配置されている、請求項11に記載の音響アダプター。
【請求項13】
前記対応する個別の開口を有する追加の細分化された2次元容積は、前記内部筐体と前記外部筐体との間の内部に形成された内部の2次元容積である、請求項11に記載の音響アダプター。
【請求項14】
前記対応する個別の開口を有する追加の細分化された2次元容積は、前記内部筐体の外面に取り付けられた外部の2次元容積である、請求項11に記載の音響アダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーディオスピーカーの分野に関する。特に、本発明は、スピーカーに生じるオーディオの歪み、およびオーディオの歪みの要因を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダイナミック・スピーカーのドライバーは、装置の製造および販売に必要なため、スピーカー・キャビネットなどの筐体に収納される。この筐体の目的は、見た目の美しさ以外に、ドライバーの振動板の前後を隔離することにある。振動板から同時に発生する高圧力場および低圧力場による音の固有の打ち消しを防止するために、これらの領域は隔離される必要がある。このため、広帯域信号に関する課題が生じる。ラウドスピーカーの振動板で音を生成する場合に、他の音色を参照することなく1つの音を生成することができる。しかしながら、1つの音色の音声信号は、試験の目的以外にはほとんど実用的ではない。実地のラウドスピーカーの使用では、音声情報を伝送するために常に多くの異なる信号が生成される。音響再生のほとんどの用途、特に小型かつ狭小な寸法の最新システムでは、1つのドライバーを使用することが望ましい。1つのドライバーは、重低音以外のすべての周波数を含む広い可聴周波数(フル・レンジ)を生成する必要がある。部屋の低音域をサポートするには、通常、より大型の振動板および別体の電源(つまりサブウーファー)が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現代のエンターテイメント用音響再生では、一般的に80Hz乃至20kHzの音響周波数帯域が設けられる。一般的に使用されるスピーカー・ドライバーは、フルレンジ動作に必要な3インチ(約7.62センチメートル)以下(通常は楕円形)である。すべてのラウドスピーカー・システムにおいて、スピーカー・ドライバーを隔離して収納することが、音質低下の主な原因である。
【0004】
ラウドスピーカー技術の物理的な課題は、様々な種類の可聴歪みに遭遇することなく広帯域の音を再生することにあった。スピーカーに入力される電子音声信号は通常、非直線性を最小限に抑えた原始的なものである。歪みは、スピーカーが作動する物理的環境から生じ得る。スピーカー・ドライバーは、電気的な音声信号を伝達する際に振動するため、スピーカー・キャビネット内と周囲の空気との差圧に遭遇する。空気中の大きな渦、流れ、局所的な渦の形態の熱乱流は、スピーカーおよび付属の電子機器によって発生する。この熱乱流は、スピーカー・ドライバーに作用する圧力条件およびその他の流体力学的な力を大きく変化させ、スピーカー振動板の振動速度、ひいては純粋な電子音声信号の伝達を妨げ、音に歪みを生じさせる。さらに、この歪みはスピーカーの中心から軸線が外れると悪化する。
【0005】
音波は周囲の圧力環境において実際の長さを有する。典型的なラウドスピーカー・ドライバーの背面の音波の長さは、その応用において、非線形的に相当変化する。周囲の空気は、確立された自然音の正確な長さをサポートする一方で、ラウドスピーカーは、密閉された空間内で発生した歪みを表す非線形音も周囲に提示する。
【0006】
現在の物理法則で説明されるこの現象は、従来のスピーカー技術の分野では克服できないと考えられている。その結果、音響再生を必要とするハイエンド機器以外のほとんどの用途では、許容できない音質を受け入れるという業界標準が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明する本発明は、ドライバーの速度プロファイルによって生成される波長およびレベルをサポートしながら、スピーカー・ドライバーの奥行きに対して最小限の必要な密閉空間を有する音響アダプターを提供する。本発明の音響アダプターにより、その帯域幅に対して臨界ダンピングを達成することで、スピーカーの音響精度が得られる。
【0008】
本発明は、スピーカー・ドライバーの背面の圧力変動を制御するために、筐体内に配置された2次元(2D)筐体またはモジュールを含むことにより、先行技術を改善した音響アダプターを提供する。驚くべきことに、圧力によって引き起こされる熱を管理するために、特定のスピーカー・ドライバーに最適な容積が、関連付けられる2次元容積とともに存在することが判明した。本明細書で説明する本発明は、最終製品の密閉容積に対する懸念を解消し、関連付けられる2次元等温制御容積を提供する。本発明は、最終製品の寸法に関係なく、ドライバーに適切な音響性能をもたらす。一例を挙げると、タワー型スピーカーは通常、妥協のない垂直方向の表現力をフルに発揮するために背が高い。しかしながら、本発明による音響アダプターを取り付ければ、スピーカータワーの奥行きを深くする必要はない。スピーカーの性能は、臨界減衰によって精度が大幅に向上し、これにより、高品位な音声が得られる。
【0009】
要求される自然流速をサポートするために、アダプターで包囲された3D/2DT(乱流)隔離容積内に等温環境が形成される。これらの容積比は、広帯域臨界減衰に対するドライバーの要求と一致している。レベルおよび帯域幅に応じて適切な圧力環境を維持することが目的である。入力電気信号の速度プロファイルにより、低歪みおよび自然な音響表現に必要な振動板の位置および速度の変化が決定される。信号の周波数により、速度の精度を維持するために必要な音響質量が得られる。
【0010】
ニーズを満たす小型ドライバーを使用することにより、ドライバーの音響出力の軸線に対して必要な角度で適切な高周波数分散を保証する点音源の理論的要件が満たされる。この音響アダプターによって、ドライバーは理論上の性能に近づくことができる。
【0011】
上述した説明に従って、本明細書に記載の本発明は、スピーカー・ドライバーの背面を実質的に包囲するための内部筐体を含み、スピーカー・ドライバーの背面の周囲に予め定められた3次元内部容積(3DV1)を形成し、それによって振動減衰器として機能する音響アダプターを提供するものである。3次元内部容積の外側に制限された2次元容積(2DV)を形成するために、内部筐体の構成に対応するとともに内部筐体から離間した構成を有する外部筐体が設けられる。筐体の内面には、2次元容積内に音声を通すための開口が形成されている。2次元容積(2DV)内には、少なくとも外部筐体の内面を被覆するための発泡材が受承され、これにより、2次元容積内に流入した音を減衰させるための摩擦面が得られる。
【0012】
本音響アダプターは、外部筐体の外面の外側に第2の3次元容積(3DV2)を含むこともできる。第2の3次元容積(3DV2)は、好ましくは、予め定められた3次元容積(3DV1)よりも大きな容積であり、それにより、より規制された空気圧を規定する。また、音響アダプターは、第2の3次元容積(3DV2)と予め定められた3次元容積(3DV1)との間の圧力の伝達を規制し、ポートと連動して低周波出力を拡大するために、内部および外部の筐体に形成された1つ以上の動的圧力アイソレーターを含むことができる。
【0013】
2次元容積内の発泡材は、好ましくは、外部筐体の内面を裏打ちする摩擦を高める開放セル発泡体である。発泡材は実質的に2次元容積の50%を占める。
【0014】
音響アダプターの開口は、内部筐体のスピーカー・ドライバーの背面中央に設けられる。開口は、スピーカー・ドライバーの周波数帯域に応じて選択される開口サイズおよび開口形状を有し、開口サイズは、より低周波スピーカー・ドライバーとともに使用される場合には内面のより大きい部分からなり、より高周波スピーカー・ドライバーとともに使用される場合には内面のより小さい部分からなる。
【0015】
音響アダプターの内部筐体および外部筐体は、円形、楕円形、正方形、矩形のいずれかの形状を有する。2次元容積は、スピーカー・ドライバーの寸法に適合する寸法領域(x、y)と、スピーカー・ドライバーの周波数帯域に応じて選択される固定値に制限された容積寸法(z)とを有し、より低周波スピーカー・ドライバーにはより大きな容積寸法(z)が選択され、より高周波スピーカー・ドライバーにはより小さな容積寸法(z)が選択され、容積寸法(z)は所望の音質(Q)が得られるように選択される。
【0016】
代替的な実施形態では、2次元容積は、各々が対応する個別の開口を有する1つ以上の追加の細分化された2次元容積を含むことができる。追加の細分化された2次元容積の各々は、選択された予め定められた周波数に対応し、容積に関連付けられる対応する周波数で選択的に減衰を行うために、それに応じてサイズおよび寸法を設定することができる。追加の細分化された2次元容積および対応する個別の開口は、筐体の内面に形成された開口から離間した対応する点に配置することができる。一態様では、対応する個別の開口を有する追加の細分化された2次元容積のうちの1つ以上は、内部筐体と外部筐体との間の内部に形成された内部の2次元容積とすることができる。これに代えて、対応する個別の開口を有する追加の細分化された2次元容積のうちの1つ以上は、内部筐体の外面に貼り付けられた外部の2次元容積とすることができる。
【0017】
さらなる代替的実施形態では、バランスト・アーマチュア・ドライバーの背面を実質的に包囲し、バランスト・アーマチュア・ドライバーの背面の周囲に予め定められた3次元内部容積(3DV1)を形成してそれによって振動ダンパーとして機能するための第1の筐体を含むバランスト・アーマチュア音響アダプターを提供することができる。バランスト・アーマチュア・ドライバーからチューブの反対側の端に音声を運ぶためのチューブが設けられている。バランスト・アーマチュア・ドライバーの下流の位置で、第2の筐体がチューブに並列に取り付けられており、この筐体が3次元内部容積の外側に制限された2次元容積(2DV)を形成している。2次元容積内に音声を通すための開口がチューブに形成され、チューブ内のより弱い反応性圧力を管理する。発泡材は、少なくとも外部筐体の内面を被覆するために、2次元容積(2DV)内に受承され、これにより、2次元容積内に受容された音声を減衰させるための摩擦面が得られる。反対側の端部を含むチューブの一部には、仮想的な第2の3次元容積(3DV2)が形成される。好ましい実施形態では、バランスト・アーマチュア・ドライバーは補聴器の部品であり、チューブはバランスト・アーマチュア・ドライバーから補聴器装用者の外耳道に音声を伝達する。
【0018】
本発明の一態様によれば、本音響アダプターは、ドライバーの広帯域の臨界減衰を達成するためにシステム負荷を最適化する。
【0019】
本発明の別の態様によれば、本音響アダプターにより、モデム・ハイビジョン・ビデオに匹敵する精細な音声をスピーカーで再生することができる。
【0020】
本発明の他の利点および効果は、以下の詳細な明細書を読み、理解すれば、本発明に関連する技術分野の当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本発明の例示的な実施形態による、音響アダプターを備えたスピーカー・ドライバーを示す側断面図および正面図と、これに代えて、複数の2次元容積を備えた同じものを示す図とを示す。
図1B図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本発明の例示的な実施形態による、音響アダプターを備えたスピーカー・ドライバーを示す側断面図および正面図と、これに代えて、複数の2次元容積を備えた同じものを示す図とを示す。
図2A図2Aおよび図2Bは、本発明の第1および第2の追加的な例示的実施形態による音響アダプターを備えたスピーカー・ドライバーを示す側断面図である。
図2B図2Aおよび図2Bは、本発明の第1および第2の追加的な例示的実施形態による音響アダプターを備えたスピーカー・ドライバーを示す側断面図である。
図3A図3Aは、音響アダプターを使用しない場合のシステムインピーダンスを示すグラフである。
図3B図3Bは、音響アダプターを使用した場合のシステムインピーダンスを示すグラフである。
図4A図4Aおよび図4Bは、本発明の第1の追加的な例示的実施形態による、音響アダプターなしおよび音響アダプターありでそれぞれ使用されたときの、図2Bによる高周波スピーカーの軸線上および軸線外のオーディオ忠実度を示すグラフである。
図4B図4Aおよび図4Bは、本発明の第1の追加的な例示的実施形態による、音響アダプターなしおよび音響アダプターありでそれぞれ使用されたときの、図2Bによる高周波スピーカーの軸線上および軸線外のオーディオ忠実度を示すグラフである。
図5図5は、本発明のさらなる例示的な実施形態による、補聴器とともに使用するためのバランスト・アーマチュア音響アダプターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示された音響アダプターは、特定の部品および部品の配置で物理的な形態をとることができ、その実施形態は、本明細書で詳細に説明し、本明細書の一部を構成する添付図面に図示される。
【0023】
ここで、図面を参照すると、図示は物品の実施形態を例示する目的のみであり、これを限定する目的ではなく、同様の参照符号は同様の構成要素を指すと理解される。
【0024】
図1Aを参照すると、先行技術で遭遇した前述の課題は、本発明の音響アダプター10で克服されている。音響アダプター10は、スピーカー・ドライバー12を収納するために使用される構造体であり、ドライバー12の追加の奥行きを最小にする。アダプター10は、ドライバー12の前後を分離することで、従来のサウンド・キャンセリングに関連付けられる課題を解決する。アダプター10はまた、内部筐体14aおよび外部筐体14bを設けることで、さらなる課題を解決する。内部筐体14aは、スピーカー・ドライバー12の背面を実質的に包囲する。内部筐体14aによって、これにより、スピーカー・ドライバー12の背面の周囲に予め定められた3次元内部容積(3DV1)20が形成される。外部筐体14bは、内部筐体14aの形状または構造体に密接に対応する形状または構造体を有する。
【0025】
図1Aをさらに引き続き参照すると、外部筐体14bは、筐体14aと筐体14bとの間の空間において、3次元内部容積20の外側に制限された2次元容積(2DV)22を形成するために、内部筐体14aから正確な一定の距離で離間されている。筐体の内面14には、2次元容積22に音を通すための開口24が形成されている。2次元容積22は、スピーカー・ドライバー12の寸法に適合する寸法領域(x、y)と、スピーカー・ドライバーの周波数帯域に応じて選択される固定値に制限された容積寸法(z)とを有する。より低周波スピーカー・ドライバーにはより大きな容積寸法(z)が選択され、より高周波スピーカー・ドライバーにはより小さな容積寸法(z)が選択されることが経験的に決定されている。この経験的な決定プロセスに基づいて、所望の音質(Q)が得られるように音量寸法(z)が選択される。
【0026】
図1Aに示したアダプター10をさらに引き続き参照すると、「2次元乱流」(2DT)と呼ばれる物理現象が、得られた優れた経験的結果の原因であると考えられる。最良の結果は、2次元容積22と3次元容積20との間の適切な比率を決定することによって得られることが判明しているが、その比率を決定するプロセスは現時点では経験的なものである。これらの結果を正式に調査し、根本的な物理的原因をより深く理解するために、さらなる後続作業が行われる予定である。ドライバー12の電気音響仕様、および所定のスピーカー用途で利用可能な3次元容積20は、反応する2次元容積22の寸法容積を決定するために使用される。これらの変数により、ドライバー・ピストンを適切に等温作動させるための実行可能な環境を完成させることができる。
【0027】
以下は、驚くべき経験的結果を生み出す現象についての現在の理解についての考察である。内部/外部境界層は、3次元容積20の周辺部のソリッド表面で形成される。内部/外部境界層は、表面の片側が完全に包囲されている場合に生じる。固定された境界線および仮想の境界線がある。固定された境界は、スピーカー・ドライバー12のピストンの可聴域が、振動のたびに圧力で負荷される内部容積を確立する。仮想境界は、この圧力負荷の等温管理によって形成される。すべての波長が打ち切られることとなる境界は、「仮想」とみなされる。これは、この圧力を波長および圧力レベルに対して管理することで達成される。
【0028】
典型的なシステムでは、境界で包囲された3次元容積20内では、内部の境界層に対して作用する内部圧力を調整する方法はない。これによって、電気的な音声信号によって確立されるスピーカー・ドライバー12の速度プロファイルが変化する。2次元容積22は、z(高さ)寸法が小さな値に制限された狭小なプロファイル容積である。z寸法は、他の寸法との比率で特定のスピーカーのために経験的に決定されるが、摩擦が強化された境界面に沿って音の最適なスクラブまたは減衰をもたらすことが発見された高さに維持される。このため、発泡材30は、図1Aにも描かれているように、2次元容積22内に受承される。発泡材30は、少なくとも外部筐体14の内面を被覆するために使用され、内面は2次元容積22内にある。このようにして、発泡材30は、2次元容積22に入った音を減衰させる摩擦面を提供する。
【0029】
図1Aをさらに引き続き参照すると、開口部または開口24は、2次元容積22に音を入れるための入り口である。開口24のサイズおよび形状は、特定の基準音周波数に対して非共振寸法となるように経験的に選択される。開口24により、2次元容積は3次元容積20に生じる圧力変動と直接連通することができ、それによって境界層でエネルギーを散逸させるコヒーレントな渦を生成する。瞬間的な圧力印加により、2次元容積22は、2次元内部境界層での熱放散を通じて、適切な圧力/容積の関係を維持することができる。境界層に対向するz次元に沿って、最小の大気開放面が形成される。2次元容積22内の熱放散は、2次元容積22内の渦度を高めるために、粗面を有する発泡材30を使用して強化される。このようにして、3次元容積20内の圧力変動および乱流が緩和され、スピーカー・ドライバー12背面の層流が振動板/ピストンに対して適切な速度を有するようになり、その結果、スピーカー周辺の圧力変動が大きすぎたり小さすぎたりせず、正確な臨界量となる臨界減衰が得られる。
【0030】
開口24の大きさを変える場合、通常、より大きな開口24を有するより大きな3次元容積20は低音域の音声周波数により反応し、より小さな開口24を有するより小さな3次元容積20は高音域の音声周波数により反応する。より大きな容積は、主要なコヒーレント渦の範囲に対応して、より長い波を終端させる。適切な帯域幅を散逸させるコヒーレントな渦は、これらの寸法に対応してより大きくなったりより小さくなったりする。さらに小さな容積を追加することで、フルレンジ・ドライバーの音響負荷の線形性を確保できる。
【0031】
一般的なフルレンジ・ドライバーは、スピーカーの軸線からの距離が長くなるにつれて分散が悪化し、高忠実度性能を阻害する。忠実度とは、適切なスピーカー振動板の速度プロファイルで、その帯域幅の特定の波に反応する内部ドライバーの能力として定義される。本発明は、包囲された等温熱力学的3次元容積20を設け、これに含まれる2次元乱流は、圧力が開口24から2次元容積22に入るときに強制されるコヒーレントな渦を確立する役割を果たすと理解される。ドライバーの電気機械は周波数に対して線形ではないが、ドライバーに適用される周波数帯域に特有の圧力挙動に影響を与えるために、2次元容積22を細分化することができる。
【0032】
引き続き図1Aを参照すると、2次元容積22は、ドライバーの振動板の広帯域振動のための等温3D環境を確立する。ドライバー12は寸法的な制約があり、低域でのレスポンスが制限される。しかしながら、より低音域の情報は音響処理され、ドライバーの意図する音域に沿った急激なレスポンスのロールオフを最小限に抑える。その結果、より高レンジでの速度線形性および分散性が改善された。好ましい実施形態では、アダプター10は、少なくとも1つの2次元容積22のための筐体構造を含むが、高周波や中周波などの特定の周波数帯域に応答する追加の2次元容積で補うことができる。
【0033】
図1Bは、図1Aに描かれたものと同じ構造体と、同じ参照符号を有する構成要素とを有する代替的実施形態を示すが、割り当てられた2次元容積22が、主開口から離間した位置にある点で、より小さな2次元容積22a、22bを含むように細分化できる点のみが異なる。これらのポイントは通常、ドライバーにより近い位置にある。内部2次元容積22aは、製造中に内部筐体14aと外部筐体14bとの間に内部に形成された主要2次元容積22内に隔離することができる。内部2次元容積(2DV2)22aは、その容積22aに関連付けられる個別の開口24aを有することができ、より高い音響周波数での応答を改善するために設けられる。この2次元容積22の細分化部は、通常、フルレンジ・ドライバーの応答を調整するために使用される。これに代えて、外部2次元容積22b(2DV2)を3DV1容積20の内部筐体14aの外面に貼り付けて、現場でのスピーカーの微調整を可能にしたり、主2次元容積22内に組み込むための生成調整を可能にする。外部2次元容積22bは、対応する個別の開口224bを有する。この外部2次元容積22bは、調整に柔軟性を持たせるために、任意に選択可能な様々な厚みを持たせることもできる。
【0034】
20世紀初頭に確立されたラウドスピーカーのパラダイムに依存しているスピーカー業界では、技術者たちの間で乱流環境に対する理解が不足しており、技術革新の妨げとなっている。本発明の音響アダプターは、小型化および薄型化が進むオーディオ製品に採用できる21世紀の見識を提供するものであり、旧来のルールを適用したり、強制したりすることはできない。本発明の音響アダプターは、サブウーファー、ウーファー、ミッドレンジ、およびトゥイーターを使用するシングルドライバー、マルチウェイ・ラウドスピーカーを問わず、あらゆるラウドスピーカー・システムに正確な音響再生を提供するために使用することができる。
【0035】
図2Aおよび図2Bに代替的な例示的実施形態を示す。音響アダプター110が設けられ、これは、本実施形態において、スピーカー・ドライバー112を包囲するために、より深みのある構造体のハウジングを有する。本実施形態では、スピーカー・ドライバー112は、好ましくは、低周波数またはフルレンジで作動するラウドスピーカーである。本実施形態のアダプター110は、本明細書における上記の説明に従って、内部筐体114aおよび外部筐体114bをさらに含む。内部筐体114aは、スピーカー・ドライバー112の背面を実質的に包囲し、スピーカー・ドライバー112の背面の周囲に予め定められた3次元内部容積120を形成し、それによって振動減衰器として機能する。外部筐体114bは、内部筐体114aの形状(この場合、矩形)に対応する形状を有し、内部筐体114aから間隔をあけて配置され、3次元の内部容積120の外側に制限された2次元容積122を形成する。
【0036】
図2Aに特に示されるように、内部の3次元容積(3DV1)120は、スピーカー・ドライバー112の振動板のすぐ背面に形成される。この容積120は、関連付けられる2次元容積(2DV)122と連動して減衰バネとして機能する。この減衰により、振動板の振動の質(Q)が決定される。3次元容積120は、より低域の周波数生成が望ましい場合により多くの減衰が必要とされる用途によって経験的に決定される。
【0037】
通常、3次元容積120の主な決定要因は、振動板のサイズおよび形状である。好ましくは、振動板は円形であるが、これに代えて、楕円形および正方形のドライバーを採用することもできる。適切な音響アダプター110の形状は、対応するどのような振動板形状にも実装可能である。(3DV1)120の容積は、Qが(2DV)122境界摩擦面の密度によって制御され、最小の厚みを必要とする製品への応用において最小化することができる。
【0038】
図2Aにさらに示されているように、摩擦を向上させる開放セル発泡体130は、外部筐体114b内面を被覆するとともに裏打ちするために使用される。好ましい実施形態では、発泡体130は通常、2DV122の50%を占めることができる。開口124は、内部筐体114aに設けられ、好ましくは、スピーカー・ドライバー112の背面において、スピーカー122の中心軸線に沿って中央に配置される。開口124は、2DV122の開放空間への初速度を決定する開口サイズおよび形状を有する。開口124の開口面積は、用途の周波数帯域およびドライバー振動板の容積能力によって経験的に決定される。一般に、より高い周波数はより小さな開口面積を必要とするが、大容量の低周波用途はより大きな開口面積を必要とする。
【0039】
図2Aをさらに参照すると、2DV122は、摩擦を高める発泡体130および空間で占められている。この2次元容積122は、面積(xおよびy)は変化させることができるが、z次元には制限がある。2次元領域(x/y)は、特定の寸法や形状に制限されるものではないが、通常、適切な設置のためにドライバーの寸法に適合する。すなわち、2次元領域は円形ドライバーの場合は円形、あるいはそれぞれ楕円形や矩形などである。高さ(z)または容積の寸法は、2次元領域全体にわたって一定である最小の固定値に制限される。この最小値は、この2次元容積122が共鳴3次元容積になることを妨げる。この寸法の決定は、x/yまたは円形領域の寸法に対してより大きなz値を必要とする、より低い周波数の応用に再び関連付けられる。現在のところ、2DV122のx/y寸法はドライバーのサイズおよび形状によって決定され、経験的に決定されたz寸法は適切な最終Q値のために選択される。
【0040】
図2Aにさらに示すように、外部筐体114bの外面の外側には、第2の3次元容積(3DV2)140が形成されている。3DV2140は、製品寸法を確定し、低周波ポートまたはダクト150を使用して低周波出力を増加させることができる任意の容積である。ポート150は通常、スピーカーの前面に開口しており、スピーカー・キャビネット内部からの圧力情報を外部に伝えることで、低音域の応答をさらにブーストする。第2の3次元容積140は、好ましくは3DV1 120よりも大きな容積であり、それによって追加の調整された空気圧が生成される。従来のポート付き筐体とは異なり、その境界の圧力は、等温的に調整された3DV1 120の圧力である。
【0041】
図2Aに追加的に示されているように、1つ以上の動圧アイソレーター(DPis)142が、内部筐体114a、外部筐体114bに形成されている。1つ以上のDPI142は、第2の3次元容積(3DV2)140と3次元容積(3DV1)120との間に調整された圧力を伝達し、ポートと連動して低周波出力を拡大する。動圧アイソレーター開口部142は、閉鎖システム全体の等温圧力管理のために、(3DV1)120と(3DV2)140との間の適切な連通を可能にする位置およびサイズになっている。ダクト・スロートが境界層に隣接している場合、出力圧力は周波数と一致する。この構成のダクトは、ドライバーのエクスカージョン(excursion)を最小限に抑え、固定容積の筐体として共振ピークを持たない幅広い低域を出力する。(従来の低音システムでは、ドライバーの振動板は1つの周波数で最小限のエクスカージョンを経験する)。
【0042】
音響アダプター110の寸法および位置は、関連付けられるドライバー112を収容するために、用途および意図する周波数帯域に基づいて変化する。音響アダプター110は、スピーカー・ドライバー112のピストン速度の最適な広帯域等温制御を行う。一部の実施形態では、空間の活用のために、3DV1 120をドライバーのすぐ背面には設けず、オフセット音響アダプター110に流す必要がある場合がある。このようなチャネリングは、車やテレビなどに必要な音響アダプター110の一部である。
【0043】
以下の仕様は、図2Aに描かれている低周波の実施形態に優れた結果をもたらすと経験的に決定されている。6インチ(約15.24センチメートル)の振動板面積を備える8インチ(約20.32センチメートル)のドライバーの場合:
密閉型3DV2:0.185立方フィート(約0.0052386166立方メートル)
密閉型3DV1:0.049立方フィート(約0.0013875255立方メートル)
正方形面積2DV:28平方インチ(約0.0180645平方メートル)
厚み2DV:0.75インチ(約1.905センチメートル)
フォームの厚み:0.25インチ(約6.35ミリメートル)
フォームの密度:32kg/m
フォームの上の空間:0.5インチ(約1.27センチメートル)
開口部:0.75インチ(約1.905センチメートル)
【0044】
実施例のポートの長さは13インチ(約33.02センチメートル)である。8インチ(約20.32センチメートル)x10インチ(約25.4センチメートル)x4インチ(約10.16センチメートル)という小型の筐体の寸法に合うように湾曲している。ポート径は1.5インチ(約3.81センチメートル)である。3DV2容積をほとんど影響なく変位させることができる一例として、チューブの大部分が3DV2容積の外側に位置する状態でポートの長さを決定したことが挙げられる。適切な長さが決定されたときに、すべてのポートがボックスの中に入ってもグラフは変わらなかった。ポートが3DVの容積を変位させ、2DVの容積がこれを補正する。
【0045】
図2Bに示すように、サイズおよび空間が大幅に縮小された実施形態では、小型のフラット・ドライバー112を必要に応じて選択することで、相当小さな3DV1容積120を有するとともにより低周波数出力を必要としないフラット化された音響アダプター110が得られる。2DV122はフラット・ドライバー112のすぐ近傍に取り付けられ、コーンの動きおよび圧力がより小さな開口124から2DV122に入るようにすることができる。2DV122は、最適なQのために出力を封じ込めるとともに減衰させるように設定可能である。
【0046】
以下の仕様は、図2Bに描かれた高周波実施形態に優れた結果をもたらすよう、本発明者が経験的に決定したものである。1インチ(約2.54センチメートル)・シルクドーム・トゥイーター用:
密閉型3DV1:0.098立方センチメートル(約1.605932e-6立方メートル)
2DVの面積:1.57平方インチ(約0.001012901平方メートル)
2DV高さ:0.125インチ(約3.175ミリメートル)
フォームの厚み:0.0625インチ(約1.5875ミリメートル)
発泡密度:32kg/m
フォームの上の空間:0.0625インチ(約1.5875ミリメートル)
開口部;2mm(0.060インチ)
【0047】
図4Aおよび図4Bは、音響アダプター110なしおよび音響アダプター110ありのスピーカー112の軸線上および軸線外のオーディオ忠実度を示すグラフである。
【0048】
図3Aは、音響アダプター110を使用しない場合のシステムインピーダンスを示す。グラフは、7.8オームが最も低いインピーダンスで、ピークは20オームを超えることを示している。ドライバーのDCインピーダンスは4Ωである。このシステムでは、低音がブーミーで反響(反応)し過ぎるため、低音の質を信号で制御することはほとんどできない。このシステムのQは1をはるかに超えている。
【0049】
図3Bは、音響アダプター110を使用した同システムのインピーダンスを示す。グラフから、最低インピーダンスは4Ω付近、最高ピークは10Ω以上であることがわかる。信号は、ブーミング音の原因となる共振や反応インピーダンスをほとんど反響させずにドライバーを制御する。これは、広帯域インピーダンス全体で0.707から1の間の臨海減衰が達成されていることを示している。
【0050】
図4Aおよび図4Bは、音響アダプター110無しで使用した場合と、音響アダプター110有りで使用した場合における、図2Bによる高音域スピーカー110の軸線上および軸線外のオーディオ忠実度を示すグラフである。
【0051】
図4Aは、音響アダプター110無しのスピーカー110の動作を示し、スピーカー振動板の背圧による振動板破壊(breakup)を示す。複数の周波数が同時に存在する場合に、この問題はさらに悪化する。軸線上の応答は円滑ではなく、軸線外の応答は相当不規則である。
【0052】
図4Bは、音響アダプター110を使用した場合の、軸線上および軸線外の周波数特性の滑らかさを示している。応答の改善された分散および平坦さは、等温圧力管理と、スピーカー振動板への背圧の欠如とによるものである。
【0053】
図5は、本発明のさらなる例示的な実施形態によるバランスト・アーマチュア音響アダプター(BAAA)210を示す。この実施形態は、補聴器としてBA(バランスト・アーマチュア)ドライバー212と組み合わせて使用することができる。バランスト・アーマチュア・ドライバー212は、指定された第1の筐体214a(好ましくは矩形)内に配置され、ダクトまたはチューブ216を通して耳に音を届ける。チューブ216は、BAドライバー212から、チューブ216の端218にある外耳道に音を運ぶ。音波は、チューブ216に入る前に、第1の3次元容積3DV1 220に存在する。この容積220は、他の図面ではスピーカー・ドライバー12のすぐ背面の容積20として示されている。複合波がチューブ216に入ると、チューブ216の長さに関連付けられた共振が生じる。音がチューブ216を通り、端部218で終端するチューブ216の背面部で3次元容積3DV2 240に到達すると、主音声信号はドライバー212に作用するが、ドライバー212が動くと反作用の圧力が発生する。2次元容積2DV222は、BAドライバー212の下流に、チューブ216と平行に配置され、チューブ216内の弱い反応圧力を、その2次元容積222内の等温垂直放熱によって管理する。2次元容積222は、バランスト・アーマチュア・ドライバーの下流の位置でチューブ216に並列に取り付けられた第2の筐体214bによって形成され、第2の筐体214bは、3次元内部容積220の外側に制限された2次元容積(2DV)を形成する。チューブ216の側面に開口224が形成され、2次元容積222に音を導入し、チューブ216内の弱い反応圧力を管理する。耳は反対側の端218にあり、チューブ216をシールし、ドライバー212に最終的な音響的負荷を付与する。
【0054】
追加情報
【0055】
本発明の基礎となる作動物理学の現在の理解をさらに説明するために、追加の説明情報をここに提供する。あらゆる機械の機能は作業をすることにあり、その作業は、前のサイクルで完了した作業の影響を受けなければ、最も効率的である。
【0056】
機械の負荷は、過去の事象の残留負荷ではなく、進行中の作業によってのみ影響されるべきである。この一般的な説明は、制御入力に対して高効率を必要とし、かつ歪みを低くする必要があるあらゆるシステムに該当する。これは物理学で説明されるエントロピーの一態様である。以下の説明は、ラウドスピーカー・ピストンの適切なエントロピー条件を達成するために必要な方法である。ラウドスピーカーが適切に作動するための条件は、低歪みおよび広いダイナミック・レンジを考慮すれば、可聴音の再生や補強に関連付けられるすべての周波数で同じである。
【0057】
使用可能な容積(3DV)(x+y+z)は、ドライバーを取り付けたときに振動板の背面にできる容積のことである。この容積は、前後の動的な圧力変化も隔離するため、その機能を実現するためにはシールされる必要がある。現在のところ、ほとんどの製品はこの容積を重視しておらず、エンジニアはドライバーを物理的に取り付けるために必要な容積しか認めていない。ほとんどの場合に、これは振動板の前面および背面も隔離し、音響的な孤立を回避する。利用可能な容積に依存しているものは、その制限を克服するために電子処理を使用している。制限の原因となる問題は物理的なものであり、電子処理によってこれを克服しようとしても、問題に対処することはできない。
【0058】
許容される3DVは、スピーカー・ドライバーの製造業者にはない変数である。ドライバーは様々な方法で使用される可能性があるため、最終的なオーディオ製品の設計者が、高品質な音声のための単純な解決策として、費用対効果の高い部品を利用できるようにすることが望まれる。外部音響アダプター110により、ラウドスピーカーを、所望の周波数帯域で高品質のオーディオ性能を予測可能な部品として組み込むことができる。
【0059】
2次元容積(2DV)は、2DVに必要な面積を生成するために、xおよびyの寸法を拡大しながら、深み(z)を制限するときに生成される。得られる上述した3DVは「3次元乱流」(3DT)を生成する。3DTおよび2DTという用語は、静的な空気容積が、印加された動的な力によって乱されたときに乱流が生じる利用可能な容積に対するものである。この場合に、電圧によって作動するラウドスピーカー・ドライバーが、3DVのダイナミック・ボリュームの乱れを引き起こす。通常、このような動的な力によって生じる音響エネルギーには、同時に多くの周波数が含まれる。入力される電子信号に関連付けられる音響波長は相当異なる。発生する力は強度および波長によって異なり、そのすべてがドライバーの振動板の動きに対抗する圧力変動を引き起こす。これらの相反する力は振動板の速度を変化させ、強度および周波数の両者に対して避けられない歪みを引き起こす。このような状況では3DTが発生し、プログラムの素材および容積によって変化する予測不可能な動的圧力が発生する。
【0060】
2DTは、これらの動的な力が、深み(z)が制限された付着容積に導入されたときに生じる。2DV容積は3DVに物理的に取り付けられ、指定された寸法の開口を介して連通する。開口は通常円形で、これにより、圧力波が2DVに入り、狭小な容積内で乱流を発生させる。この2DTを生成する目的は、発泡材による摩擦が音響エネルギーを熱として放散する境界層に制限することにある。この制限された2DVの容積に生じる乱流は、コヒーレントで、利用可能な領域内で熱を放散する。摩擦は、粗面境界層や渦度を高める材料の応用によって強化することができる。空気の流れに関係するこの材料の密度は、乱流を発生させるための追加的な変数である。2DTを適切に発生させるためには、摩擦材よりも上方に開放的な空間を確保する必要がある。適切に設計された2DVは、(この等温熱力学モデルによって)3DVの圧力を層流として維持し、これにより、振動板がプログラムソースによって確立された速度に追従できるようにする。3DVの境界層は、広帯域信号の適切な音圧終端を維持する。2DV内の熱放散による作用が、仮想の3DV容積を生成する。所与の3DVに必要な2DVの比率は、一般的にドライバーの振動板の正方形面積に関係する。3DVは正確である必要はないが、隣接する2DVに動圧の詳細を伝えるためには比較的小さい必要がある。2DVの深み(z)および開口の寸法は、ドライバーの電気機械的特性およびその他の潜在的な変数によって相対的に変化する。
【0061】
本発明は、「2DTによる根本的改善の5つのD」を取り入れている:
歪み-低
ダイナミック・レンジ-高
放散-幅広 深み-深い
次元-幅広
3D+2D=ドライバーの密閉圧力の等温管理
【0062】
3次元容積は、振動板の背面で利用可能なものとして特徴づけられる。この容積は、周囲の音の波長および強度に比べて相当限られている。この限られた容積の応用では、等温的に支配された2次元容積と連通する場合に、利用可能な3次元容積は無関係である。容積内に生じる2次元乱流は、その境界壁に制限される。これらの境界に沿って、熱はコヒーレントな渦によって発生し、放散を通して維持される。渦度を増加させることができる適切な正方形領域を2次元容積内に確保することは、3次元容積内の圧力管理に不可欠である。反応する2次元容積内に生じる反応性コヒーレント乱流/散逸は、ドライバーの電気機械的パラメーターに関連付けられる負荷圧力を等温的に最適化する。このローディング方法は、波長とその強度に関連した封入圧力を管理するという要求を達成する。等温圧力管理は、音声信号に関連付けられる広帯域圧力に適した方法である。解決策は複雑に見えるが、実際にそうである。2次元環境における渦度発生の詳細は複雑であるが、比較的単純な用語で説明できる。2次元容積に導入された圧力エネルギーは、直ちに個別の渦パターンを発生させ、それらが独立してコヒーレントな渦として結合する。コヒーレントな渦は、エネルギーが導入される限り再生するが、その符号が一致したときのみ、新しいエネルギーの結合を許容する。この許可活動は、主なコヒーレント渦内の既存のエネルギーが、2次元(乱流)容積に関連付けられる境界層に沿って熱として放散される間、継続される。第3(z)次元の容積を制限することで、この作用が強制される。主なコヒーレント渦(複数可)のコヒーレンシーは、3次元環境の圧力が信号要件に対して層流(非乱流)に確実に維持されるようにする。管理されていない圧力のために動きが制限されると、振動板の速度は相当損なわれる(歪む)。機械的なシステムでは、これは、質量の実時間速度に対して適切な速度(符号)のときに外部からの補助回転入力を受け入れる回転質量として表すことができる。回転を遅くするのではなく、回転を刺激するような入力があれば、コヒーレントであると考えられる。2次元容積に入力される圧力が広帯域信号入力全体でコヒーレンスを達成しない場合に、振動板でランダムな背圧が感じられるであろう。このため、振動板の速度が変化し、聴感上の歪みが生じる。目標は、ドライバーの周波数帯域に対して臨界減衰(CD)を提供することにある。
【0063】
オーディオ忠実度ホイール
【0064】
このプロセスを独創的に表現すると、周波数、圧力、速度(FPV)ホイールは、FPVの正常性の関数として真円度を維持する。特定の直径の真円は、理想的な音響トランスデューサーの直線的なリアルタイムの広帯域出力を表す。ホイールの直径は、入力信号の要求に対する圧力レベルの関数である。円周に沿って直径が大きくなったり小さくなったりして、円のどこかがずれると、その点で信号の歪みが明らかになる。平均レベルが増減した場合に、円の直径は増減するはずだが、丸みは維持される。直径の増減を示す周波数ポイントでの変化は、振動板の速度が信号入力に対して変化していることを示している。これは、振動板の動きが静的な密閉容積を動的に増減させるために生じる圧力変動によるものである。静的な容積では、信号要求に対する振動板の速度および位置に影響を与えることなく、広帯域オーディオに関連付けられる圧力変動に単純に対応することはできない。FPVホイールは、望ましい速度からの偏差をグラフィカルに示す。任意の直径の連続した円周は、静的レベルと線形的な関係を示す。静的レベルよりも偏差が大きいか小さい円周は、入力信号を反映していない速度の変化を示す。これらの変化は、振動板の継続的な動きに反応するランダムな圧力の増減によるものである。その結果、周波数コンテンツおよびレベルが直接の要因となり、相当に予測不可能な歪み成分が発生する。場合によっては、このエネルギーは、ドライバーによって現在行われている作業の一部ではないエネルギーという意味で、蓄積エネルギーとみなされる。エントロピーは、物理的な作動で失われるエネルギーを特徴付けるために使われる用語で、前のサイクルで実行された作業が、現在実行されている作業に影響を与えない状況を表す。前の作業は散逸させる手段を有する必要がある。この作業によって振動板の背面に圧力がかかり、その圧力は複合エネルギーの関数として管理される必要がある。圧力が上昇すると容積内に熱が発生し、特に境界層に沿って熱が発生するという事実は、圧力管理の手段が必要であることを意味する。任意の所定の瞬間における圧力管理は、コンポジット内に存在するウェーブレットがコヒーレントに終端することを意味する。コヒーレントの終端は、各波長に関連付けられる圧力が、振動板が存在する期間中のみ、振動板に負荷を与える支持的な役割を持つ点を定義する。このコヒーレントの終端は、隣接する容積の関数として提供され、その容積は全境界層圧力を見るが、主に2次元容積として見る。この容積は、乱流を発生させ、その乱流は高摩擦境界層を介して捕捉および強制され、周波数および強度に応じて圧力を変調させる。これにより、振動板の負および正の位置が適切な圧力バイアスから開始されるため、ピストン運動の両方向で振動板にコヒーレントな負荷が生じる
【0065】
(AA)音響アダプター=V1+V2
【0066】
すべてのラウドスピーカー・ドライバーには、密閉容積での作動を規定する電気機械的パラメーターがある。これらのパラメーターは、主に低域の性能に焦点を当てている。ドライバーの適切な作動の目標は、その全帯域幅に対して決定的な減衰を行うことにある。より低域からより高域への遷移は段階的である。その範囲はドライバーの使用目的によって異なり、2DV機能では全オーディオ・レンジが含まれる。ウーファーに焦点を当て、トゥイーターと組み合わせて65のオーディオ・レンジ全体をカバーする。ウーファーにより、ドライバーの両者を組み込んだバッフルの最小寸法が決定される。単純にするため、矩形の筐体を形成すると仮定する。ウーファーは最も長い波長を再生する役割を担っているため、音響アダプターはその直径に合わせる必要がある。適切な2DVパラメーターと組み合わせた3DV1の深みにより、作動範囲にわたってドライバーを決定的に減衰させる。音響アダプターの直径は、2DVの面積を増やすために折り畳まれた2DVを含むことができる。V1およびV2を接続する開口の直径は、現時点では、関連付けられるドライバーについて経験的に決定される。発泡体の密度および空気の空間の高さなど、その他のパラメーターは経験的に決定される。V1は、V2が重要な減衰を提供するために補償することにより、相当変化し得る。V1の調整要件は、用途(製品)寸法の制約による場合がある。V2は、ドライバーの重要な減衰を維持するために、V1の制約を幅広く補正することができる。V1は、入力信号を再現する圧力情報の層流を要求する容積である。この容積は、信号の全帯域幅の終端として残る境界層を包含する。これは、V2を占める渦度により、変化する圧力を内部で熱として放散するためである。この放散は、渦が境界で熱放出のコヒーレントなパターンを組み合わせた結果である。コヒーレントな回転渦度は、V2内で同極性が確立されたときに、新たに導入された情報によって維持される。この作用の結果、圧力の等温調整が確立される。複合広帯域波の支配的エネルギーは、リアルタイムで一次放散率を確立する。このエネルギーは、信号の波長およびレベルのマトリックスであり、無限の組み合わせが可能である。V2の面積は、これらの組み合わせに必要な渦度パターンを採取できるものである必要がある。
【0067】
2次元乱流アブストラクト
【0068】
物理系では、次元の縮小がしばしば興奮させる新現象を引き起こす。ここでは、2つの空間次元に限定された流体乱流を考慮することから生じる新規な効果について議論する。3次元(3D)乱流に対する二乗渦度の保存制約が加わることで、KraichnanおよびBatchelorの二重カスケードシナリオが導かれ、より大きなスケールへの逆エネルギーカスケードと、より小さなスケールへの直接エントロピーカスケードとが発生する。スペクトル、構造関数、確率分布、および機構に関する具体的な理論予測が示され、主要な実験的および数値的比較がレビューされている。3次元摂動を導入しても、カスケード写真の主な特徴は崩れず、このことは、2次元の乱流現象論が、ある空間方向が重い幾何学的な制約を受けたり、物体力による制約を受けたりする場合の乱流の一般的な姿を確立していることを示唆している。このような流れは、地球物理学および惑星の文脈では一般的であり、観察するのは美しく、流体の乱流に対する次元の影響を反映している。
【0069】
ラウドスピーカー用2DTによる広帯域等温負荷(BIL)
【0070】
等温ローディングにより、固定容積から確立された仮想容積(VV)とみなされる動的な容積膨張が得られ、仮想容積は、任意の所定の周波数およびレベルでドライバーに適切に負荷をかけるために必要な内圧をリアルタイムで表す。要するに、ドライバーの振動板は、2DV内の粘性熱放散による等温圧力管理によって、常に適切な速度を達成しているのである。確立された容積内にプロセス全体を収めることで、筐体は、複合エネルギーのすべての要素に継続的な動的負荷を付与しながらリアルタイムで作動する流体トランスミッションとして機能する。
【0071】
潜在的3DV1+3DV2+2D
【0072】
3DV1容積の潜在的な選択肢として、アダプターが製品構造体内で追加の3次元容積を利用することが考えられる。この容積は、低周波信号の拡張を可能にする追加の3DV2容積を得るための確立されたパッシブパスを有することになる。この追加容積は、利用可能な特定の3DV2容積に設定される調整で、オフセット領域の音響経路で形成することができる。この容積は完全に密閉され、ドライバーの前面から隔離される必要がある。低周波数レベルの要求が用途に確実に適合するように、さらなる研究がこのアプローチの有効性を決定することになるであろう。より高域の2DT乱流活動に影響を与えないように、音響経路は所定の周波数未満でしか見られない。3DV2容積は、追加の減衰材を必要とせず、その境界層は、そこに伝達されるすべての波長を終端する。2DV容積は、外部の3DV2容積がその影響下にあり、両3次元容積の境界層が関連したままである間に、等温調整の動的膨張を確立するであろう。低域ダクトはより大きな3DV2容積からアクセスすることができ、より小型の制御する3DV1容積で得られるよりも高いレベルで広帯域の低域を出力することができる。3DV2容積は周囲から音響的に隔離された状態を保持する。2次元容積は振動板の近傍に位置し、3次元V2容積と音響的に接続されていても、圧力エネルギーの主要なターゲットであり続ける。これにより、3DV2の減衰が緩和され、等温調整がすべてのエネルギーと関連付けられる。これは、音響アダプター内の2DV容積の位置が近いと、低周波数帯域の減衰が過大になる可能性があるため、臨界減衰を確立するために必要であるかもしれない。すべての容積は、周囲圧力と同じ静圧を有する。振動板が低音域に近づくと、3DV1容積の圧力が上昇する。その後、2DV容積の乱流によってその容積がほぼ瞬時に制御される。2DV容積の乱流は、3DV1容積の流れを層流として管理する容積の熱放散を確立する。3DV2容積の圧力制御は、3DV2容積に開放されたポート領域によって確立されたポイント未満の低周波数域で維持される。その確立点を超える周波数は、3DV2容積を無視し、3DV1容積および2DV容積のみと相互作用する。3DV2容積は、その容積に関連付けられるポートからより多くの空気が出るようにするためのエアタンクとして機能する。このポートは共振周波数に調整されているわけではなく、適切な速度で最低波を伝えるために適切な寸法である必要がある。ドライバーの振動板が動いているときは、すべての容量は動的に圧力変調され、そうでなければすべての容量は大気圧にある。複数の実施形態が本明細書に記載されている。上述した方法および装置は、本発明の一般的範囲から逸脱することなく、変更および修正を組み込むことができることが、当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲に含まれる限りにおいて、そのような修正および変更をすべて含むことが意図されている。
【0073】
こうして本発明を説明したので、次にその特許を請求する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】