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特表2024-515242高い靱性及び寸法安定性を有するセルロースエステル組成物から作られる眼科用物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】高い靱性及び寸法安定性を有するセルロースエステル組成物から作られる眼科用物品
(51)【国際特許分類】
   G02C 5/00 20060101AFI20240401BHJP
   C08L 1/10 20060101ALI20240401BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20240401BHJP
   G02C 5/06 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
G02C5/00
C08L1/10
C08K5/11
G02C5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561660
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022265
(87)【国際公開番号】W WO2022216473
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,292
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】トーレス,デリック・スコット
(72)【発明者】
【氏名】ペコリーニ,トーマス・ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】パスレイ,ザ・サード,リー・クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ハイニン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ナイション
【テーマコード(参考)】
2H006
4J002
【Fターム(参考)】
2H006AA03
4J002AB021
4J002EH096
4J002EH156
4J002FD026
4J002GP00
(57)【要約】
セルロースエステル組成物から作られる眼科用物品が提供され、セルロースエステル組成物は、高いガラス転移温度及び寸法安定性を有する眼科用物品を実現する量で少なくとも1つのセルロースエステル及び少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセルロースエステル及び少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含むセルロースエステル組成物を含む、眼科用物品であって、
前記少なくとも1つのセルロースエステルが、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)、セルローストリプロピオネート(CTP)、又はセルローストリブチレート(CTB)から選択され;
少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤が、セルロースエステル組成物の総重量を基準として10~22wt%未満の量で存在し;
前記セルロースエステル組成物が、少なくとも120℃のTgと、23℃及び50%RHで48時間のバーのコンディショニング後にASTM法D256に準拠し23℃で3.2mmバーを使用して測定される、少なくとも150J/mのアイゾットノッチ衝撃強度と、本明細書において記載されるように測定される10mm未満のクリープたわみと、を有する、
眼科用物品。
【請求項2】
セルロースエステル組成物の総重量を基準として、19~22wt%未満の量の少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含み、0~1wt%の任意の他の可塑剤を含む、請求項1に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項3】
セルロースエステル組成物の総重量を基準として、10~19wt%未満の量の少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含み、2~10wt%の量の少なくとも1つのモノマー可塑剤を含む、請求項1に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセルロースアセテートが、2.5未満、又は2.35~2.5未満の範囲内の置換度を有するCAを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤がベンジルヘキサンジオエート可塑剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤が、ベンジル2-(2-メトキシエトキシ)エチルヘキサンジオエート、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエート、ジベンジルヘキサンジオエート、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項7】
ベンジル2-(2-メトキシエトキシ)エチルヘキサンジオエートが、ヘキサンジオエート可塑剤の総重量を基準として0~50wt%未満の量で組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項8】
9.5mm以下、又は9.0mm以下、又は8.5mm以下、又は8.0mm以下のクリープたわみを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項9】
90℃以上、又は95℃以上の低圧力荷重たわみ温度(LoHDT)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項10】
12~16wt%未満の前記少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤及び5~9wt%の前記少なくとも1つのモノマー可塑剤を含む、請求項3から9のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項11】
DEP、シトレート系可塑剤、トリアセチン、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマー可塑剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項12】
少なくとも120℃のTgと、23℃及び50%RHで48時間のバーのコンディショニング後にASTM法D256に準拠し23℃で3.2mmバーを使用して測定される、少なくとも180J/mのアイゾットノッチ衝撃強度と、本明細書において記載される通りに測定される10.0mm未満のクリープたわみと、を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項13】
抗酸化剤、熱安定剤、離型剤、静電防止剤、白色剤、着色剤、無機物、UV安定化剤、潤滑剤、核剤、強化フィラー、ガラスファイバー、炭素繊維、難燃剤、染料、顔料、着色剤、さらなる樹脂、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのポリマー成分をブレンドとしてさらに含み、前記ポリマーが、他のセルロースエステル、セルロースエーテル;ポリウレタン;ポリ乳酸;及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項15】
眼科用物品が、射出成形物品、押出成形物品、又は圧縮成形物品から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の製造の物品。
【請求項16】
眼科用物品が眼鏡又はサングラスのフレームである、請求項1から15のいずれか一項に記載の製造の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、眼鏡及びサングラスのフレームなどの眼科用途に適した成形プラスチック物品の分野に属する。セルロースエステル化学の態様、特に可塑剤を含むセルロースエステルの態様も提供される。
【背景技術】
【0002】
[0002]眼鏡のフレームなどの眼科用物品は、毎日の酷使に耐える良好な靱性、快適なフィット感を可能にする可撓性、及び高湿度/高温の出荷環境にある間の変形を防ぐ耐クリープ性を必要とする。セルロースエステルは、これらの基準を満たすことができるため、長年にわたって眼鏡のフレームに使用されてきた。眼科用物品へと溶融加工される市販のセルロースエステルは、典型的には、加工を可能にし成形物品に十分な靱性を与えるためにかなりの量のモノマー可塑剤を含有する。しかし、高レベルのモノマー可塑剤の添加には欠点があり、なぜならそれらはベースのセルロースエステルと比較してHDTを低下させ、HDTを約90℃未満に調整することができる用途にセルロースエステル材料の使用を制限することになるからである。セルロースエステル中の高レベルのモノマー可塑剤はまた、成形された眼鏡のフレームが倉庫及び輸送コンテナ内で直面する高温によって変形しゆがむことも引き起こし得る。さらに、セルロースエステル成形物品で使用される一般的なモノマー可塑剤では、加工及び使用中に許容できない可塑剤の滲出が起こることがある。
【0003】
[0003]溶融加工可能なセルロースエステル組成物が、そのような欠点がないと明らかにされ得るならば、眼科用途に対して有益となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]眼鏡及びサングラスのフレームなどの眼科用途において使用される材料は、特に薄い部品へと成形される場合に、比較的高いTg(又はHDT)、高い靱性(例えば、高いアイゾットノッチ衝撃強度)、及び高い寸法安定性(すなわち、低いクリープたわみ)のバランスを必要とする。驚くことに、約120℃、又は125℃、又はそれを超えるガラス転移温度(Tg)を有する、セルロースアセテート(CA)を含めたセルロースエステルの組成物を調製することができ、良好な透明性、寸法安定性、及び靱性を有することが分かった。本発明の実施形態において、これは組成物中の従来のモノマー可塑剤の量を削減することにより実現することができる。しかし、モノマー可塑剤の削減は、これらの高Tgセルロース系組成物の靱性を低下させる可能性がある。驚くことに、CAとヘキサンジオエート可塑剤の特定の組み合わせは、高Tgセルロース系組成物の靱性を回復させることができ、よい高温での用途に適しており長期寸法安定性を維持する、良好な流動特性及び良好な透明性を有するセルロースエステル組成物をもたらすことができることが分かった。
【0005】
[0005]アイウェア市場で使用される可塑化セルロースアセテート(CA)組成物は典型的には90℃未満の低圧力荷重たわみ温度(LoHDT)を有する。これは、溶融加工及び物品の成形に利用される市販のCAが典型的には、加工を可能にし成形物品に靱性を与えるためにかなりの量の可塑剤を含有するためである。90℃を超えるLoHDTを有する可塑化セルロース-エステル製品を調製することはできるが、これは一般には組成物中の可塑剤の量を削減することにより実現される。しかし、可塑剤の削減は成形物品の靱性の低下につながる。溶融加工することができ、優れた靱性を示し、90℃を超えるLoHDTを有する、セルロースに由来するポリマー系樹脂を提供することは有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]特定の実施形態において、本発明は、セルロースエステル組成物の機械的特性及び物理特性を改善するのに十分な量の、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤のセルロースエステル組成物中への分散物から作られる眼科用物品に関する。本発明の実施形態による、ヘキサンジオエートで可塑化されたセルロースエステルは、溶融加工可能であり、典型的な可塑化セルロースエステル熱可塑性物質と比較して著しく高いTgを有するという、特異な特性を有し、高い弾性率、良好な衝撃特性、及び荷重下での良好な耐変形性を有する。
【0007】
[0007]本発明の一実施形態において、セルロースエステル組成物から作られる眼科用物品が提供され、組成物は、少なくとも1つのセルロースエステル、及びセルロースエステル組成物の総重量を基準として10~22wt%未満の量の少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含む。一実施形態において、セルロースエステルは、ポリマーの総重量を基準として約10~約40重量%のアセチルを含有するセルロースアセテートから選択され、セルロースエステル組成物は少なくとも120℃のTgを有する。一実施形態において、セルロースエステルは、ポリマーの総重量を基準として約10~約40重量%のアセチルを含有するセルロースアセテートから選択され、85,000~100,000のMw(本明細書において説明されるように測定される)を有する。実施形態において、セルロースエステル組成物は、90℃以上、又は少なくとも92℃、又は少なくとも95℃のLoHDTを有する。
【0008】
[0008]本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのセルロースエステル、及びセルロースエステル組成物の総重量を基準として10~19wt%未満の量の少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含み、2~10wt%の量の少なくとも1つのモノマー可塑剤を含む、セルロースエステル組成物が提供される。
【0009】
[0009]本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのセルロースエステル、少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤、及び(任意選択により)少なくとも1つのモノマー可塑剤を接触させるステップと、この組み合わせを混合するステップとを含む、セルロースエステル組成物の製造方法が提供される。一実施形態において、セルロースエステル組成物は、モノマー可塑剤を含まない同様の組成物と比較してセルロースエステル組成物のTgを実質的に低下させない量で存在するモノマー可塑剤を含む。実施形態において、モノマー可塑剤を含むことの結果としてTgは10%を超えて、又は5%、又は2%の変化(例えば、低下)をしない。
【0010】
[0010]本発明の実施形態において、セルロースエステル組成物の総重量を基準として、0~1wt%未満のモノマー可塑剤を含有するが、19wt%~22wt%未満、又は20wt%~22wt%未満、又は20超~22wt%未満のヘキサンジオエート可塑剤を含有し、120℃を超えるTg値と、23℃で150J/mを超える、又は160J/m、又は170J/m、又は180J/m、又は190J/mのアイゾットノッチ衝撃強度値と、10mm未満、又は9.5mm未満、又は9.0mm未満のクリープたわみと、を有する、セルロースエステル組成物が記載される。
【0011】
[0011]特定の実施形態において、セルロースエステル樹脂は、少なくとも1つのセルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートイソブチレート(CAIB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)、セルローストリプロピオネート(CTP)、又はセルローストリブチレート(CTB)から選択される。特定の実施形態において、樹脂は、セルロースエステルを含む樹脂の連続バインダー相に寄与する任意の他のポリマーを、25wt%未満、若しくは20wt%未満、若しくは15wt%未満、若しくは10wt%未満、若しくは5wt%未満含有するか、又は含有しない。例えば、特定の実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤は、セルロースエステル樹脂内の分散相として存在し、セルロースエステルを含む樹脂の連続バインダー相に寄与しない。
【0012】
[0012]特定の実施形態において、セルロースエステル樹脂は、少なくとも1つのセルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートイソブチレート(CAIB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)、セルローストリプロピオネート(CTP)、又はセルローストリブチレート(CTB)から選択され、ヘキサンジオエートは、セルロースエステル樹脂中、又はセルロースエステルバインダー相と同じ相中に混和可能である
[0013]実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤及びモノマー可塑剤は、成形が可能であり比較的高いTg、良好な靱性、及びクリープ抵抗(すなわち、荷重下での変形)のバランスをとることが可能な組成物を提供するのに十分な量で存在する。実施形態において、セルロースエステルはCAであり、ヘキサンジオエート可塑剤はベンジルヘキサンジオエートを含み、モノマー可塑剤は、アジペート又はフタレートに基づくモノマー可塑剤、例えば、ジオクチルアジペート(DOA)又はジエチルフタレート(DEP)であり、組成物は10~19wt%、又は10~19wt%未満のヘキサンジオエート可塑剤;及び2~10wt%未満のモノマー可塑剤を含む。一実施形態において、モノマー可塑剤はDEPである。
【0013】
[0014]特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、ベンジル2-(2-メトキシエトキシ)エチルヘキサンジオエート、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエート、ジベンジルヘキサンジオエート、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0014】
[0015]特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、すべてのヘキサンジオエート可塑剤の総重量を基準として、50wt%未満、又は40wt%以下、又は30wt%以下、又は20wt%以下、又は10wt%以下、又は5wt%以下の量のベンジル2-(2-メトキシエトキシ)エチルヘキサンジオエートを含む。一実施形態において、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤(及びセルロースエステル樹脂)は、ベンジル2-(2-メトキシエトキシ)エチルヘキサンジオエートを含有しない。
【0015】
[0016]特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、すべてのヘキサンジオエート可塑剤の総重量を基準として、50wt%以上、又は60wt%以上、又は70wt%以上、又は80wt%以上、又は90wt%以上、又は95wt%以上の量のビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエートを含む。一実施形態において、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエートである。
【0016】
[0017]特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、すべてのヘキサンジオエート可塑剤の総重量を基準として、50wt%以上、又は60wt%以上、又は70wt%以上、又は80wt%以上、又は90wt%以上、又は95wt%以上の量のジベンジルヘキサンジオエートを含む。一実施形態において、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤はジベンジルヘキサンジオエートである。
【0017】
[0018]特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエート、ジベンジルヘキサンジオエート、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、すべてのヘキサンジオエート可塑剤の総重量を基準として、合わせて50wt%以上、又は60wt%以上、又は70wt%以上、又は80wt%以上、又は90wt%以上、又は95wt%以上の量で、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエート及びジベンジルヘキサンジオエートを含む。一実施形態において、1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤は、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]ヘキサンジオエート及びジベンジルヘキサンジオエートの組み合わせである。
【0018】
[0019]特定の実施形態において、セルロースエステルは、ポリマーの総重量を基準として約5~約45重量%のアセチルを含有するセルロースアセテートから選択することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ポリマーの総重量を基準として約10~約40重量%のアセチルを含有するセルロースアセテートから選択することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ポリマーの総重量を基準として約15~約40%、又は20~40%、又は25~40%、又は30~40%、又は35~40重量%アセチルを含有するセルロースアセテートから選択することができる。特定の実施形態において、5~45重量%のアセチルを含有するセルロースエステルは、最大で20wt%のブチリル又はプロピニル又はそれらの混合物によりさらに修飾することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0020]本発明の一実施形態において、少なくとも1つのセルロースエステル及び少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤を含むセルロースエステル組成物(眼科用物品を作るのに有用である)が提供される。
【0020】
[0021]実施形態において、本発明で利用されるセルロースエステルは、C~C10酸の塩又はエステル部分、好ましくはアセテート、プロピオネート、及び/又はブチレート部分の十分な含量を有する任意のセルロースエステルであってもよい。本発明において使用することができるセルロースエステルは、一般に構造
【0021】
【化1】
【0022】
の繰り返し単位を含み、式中、R、R、及びRは、水素、又は2~10個の炭素原子を有する直鎖アルカノイルから成る群から独立に選択される。セルロースエステルに関して、置換レベルは通常は、アンヒドログルコース単位(AGU)1個当たりの非OH置換基の平均数である置換度(DS)を単位として表される。一般に、従来のセルロースは各AGU単位中に置換することができる3個のヒドロキシル基を含有する;したがって、DSは0~3の値を有し得る。しかし、低分子量セルロースの混合エステルは、末端基の寄与の結果として、3をわずかに超える全体の置換度を有し得る。天然セルロースは、パルプ化及び精製の後であっても250~5,000の重合度を有する大きい多糖であり、そのため最大のDSが3.0であるという仮定はおよそ正しい。しかし、低分子量セルロースの混合エステルにおけるように重合度が低くなると、多糖骨格の末端基が比較的重要になり、それにより3.0を超える範囲に及ぶことがあるDSが得られる。低分子量セルロースの混合エステルは、この開示においてこれ以降により詳細に説明される。DSは統計上の平均値であるので、1という値はすべてのAGUが1つの置換基を有することを保証するのではない。いくつかの事例において、一部が2個の置換基、一部が3個の置換基を有する、非置換アンヒドログルコース単位が存在し、典型的には値は非整数となる。全DSは、アンヒドログルコース単位1個当たりのすべての置換基の平均数と定義される。AGU1個当たりの置換度は、特定の置換基、例えば、ヒドロキシル、アセチル、ブチリル、又はプロピニルなども指す。実施形態において、セルロースエステルの重合度は天然セルロースの重合度よりも低い。実施形態において、nは25~250、又は25~200、又は25~150、又は25~100、又は25~75の範囲の整数である。
【0023】
[0022]実施形態において、利用されるセルロースエステルはセルローストリエステル又は二次セルロースエステルであってもよい。セルローストリエステルの例としては、限定はされないが、セルローストリプロピオネート又はセルローストリブチレートが挙げられる。二次セルロースエステルの例としては、セルロースジアセテート(又はセルロースアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0024】
[0023]本発明の一実施形態において、セルロースエステルは、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースプロピオネートブチレート(CPB)、セルロースアセテートイソブチレート(CAIB)、セルローストリプロピオネート(CTP)、又はセルローストリブチレート(CTB)など、又はそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかのセルロースエステルの例は、本明細書における記述と矛盾しない程度まで全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第1698049号;第1683347号;第1880808号;第1880560号;第1984147号、第2129052号;及び第3617201号に記載されている。一実施形態において、セルロースエステルはCAである。
【0025】
[0024]本発明の特定の実施形態において、セルロースエステルは、セルロースエステルポリマーの総重量を基準として重量で5~45%、又は10~45%、又は15~45%、又は20~45%、又は25~45%、又は30~45%、又は35~45%、又は40~45%、又は5~40%、又は10~40%、又は15~40%、又は20~40%、又は25~40%、又は30~40%、又は35~40%、又は5~35%、又は10~35%、又は15~35%、又は20~35%、又は25~35%、又は30~35%、又は5~30%、又は10~30%、又は15~30%、又は20~30%、又は25~30%、又は5~25%、又は10~25%、又は15~25%、又は20~25%の範囲内のアセチルの全パーセンテージを有する。
【0026】
[0025]本発明の特定の実施形態において、セルロースエステルは、セルロースエステルポリマーの総重量を基準として、重量で1~20%、又は1~15%、又は1~10%、又は1~5%、又は2~20%、又は2~15%、又は2~10%、又は2~5%、又は3~20%、又は3~15%、又は3~10%、又は3~5%、又は4~20%、又は4~15%、又は4~10%、又は5~20%、又は5~15%、又は5~10%の範囲内のプロピニルの全パーセンテージを有する。
【0027】
[0026]本発明の特定の実施形態において、セルロースエステルは、セルロースエステルポリマーの総重量を基準として、重量で1~20%、又は1~15%、又は1~10%、又は1~5%、又は2~20%、又は2~15%、又は2~10%、又は2~5%、又は3~20%、又は3~15%、又は3~10%、又は3~5%、又は4~20%、又は4~15%、又は4~10%、又は5~20%、又は5~15%、又は5~10%の範囲内のブチリルの全パーセンテージを有する。
【0028】
[0027]セルロースエステルは当技術分野において既知の任意の方法により製造することができる。セルロースエステルの製造方法の例は、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第5版、5巻、Wiley-Interscience、New York(2004)、394~444頁に教示されている。セルロースエステルを製造するための出発物質であるセルロースは、とりわけコットンリンター、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、トウモロコシ繊維、及び他の農業由来供給源、及びバクテリアルセルロースなどの供給源から、様々なグレードで得ることができる。
【0029】
[0028]セルロースエステルを製造する1つの方法は、セルロースを適切な有機酸、酸無水物、及び触媒と混合することによる、セルロースのエステル化である。次いでセルロースをセルローストリエステルへ転化させる。水-酸混合物をセルローストリエステルへ添加することにより、次いでエステル加水分解が行われ、次いでこれをろ過してゲル粒子又はファイバーを除去することができる。次いで水を混合物へ添加してセルロースエステルを析出させる。次いでセルロースエステルを水で洗浄して反応副生成物を除去し、続いて脱水及び乾燥を行うことができる。
【0030】
[0029]加水分解しようとするセルローストリエステルは、2~10個の炭素原子を有するアルカノイルから独立に選択される3個の置換基を有していてもよい。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート、並びにセルローストリブチレート、又はセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートなどのセルロースの混合トリエステルが挙げられる。これらのセルロースエステルは、当業者に既知のいくつかの方法により調製することができる。例えば、セルロースエステルは、HSOなどの触媒の存在下、カルボン酸及びカルボン酸無水物の混合物中での、セルロースの不均一アシル化により調製することができる。セルローストリエステルはまた、LiCl/DMAc又はLiCl/NMPなどの適切な溶媒中に溶解させたセルロースの均一アシル化により調製することもできる。
【0031】
[0030]セルロースからトリエステルへのエステル化の後、アシル置換基の一部を加水分解により又は加アルコール分解により除去して二次セルロースエステルを得ることができる。前述したように、採用される特定の方法に応じて、アシル置換基の分布はランダム又は非ランダムでとなり得る。二次セルロースエステルは、限定的な量のアシル化剤を使用することにより、加水分解を行わずに直接調製することもできる。このプロセスは、セルロースを溶解させる溶媒中で反応が行われる場合に、特に有用である。これらの方法のすべてが、本発明で有用であるセルロースエステルを得るのに使用できる。
【0032】
[0031]最も一般的な市販の二次セルロースエステルは、セルロースに最初の酸触媒不均一アシル化を行ってセルローストリエステルを形成させることにより調製される。セルローストリエステルの、対応するカルボン酸中の均一溶液が得られた後、所望の置換度が得られるまでセルローストリエステルに加水分解を施す。単離後、ランダム二次セルロースエステルが得られる。すなわち、各ヒドロキシルにおける相対的置換度(RDS)がおおよそ同じである。
【0033】
[0032]本発明の様々な実施形態で有用なセルロースエステルのいくつかの例は、当技術分野において既知の技術を使用して調製することができ、またEastman Chemical Company、Kingsport、TN、米国から得ることができ、例えば、Eastman(商標)セルロースアセテートCA398-10、Eastman(商標)セルロースアセテートCA398-30、及びEastman(商標)セルロースアセテートLA150を得ることができる。
【0034】
[0033]特定の実施形態において、セルロースエステルは、CAポリマーの総重量を基準として5%を超えるアセチル含量を有するセルロースアセテート(CA)である。特定の実施形態において、セルロースエステルは、CAポリマーの総重量を基準として約40%未満のアセチル含量を有するセルロースアセテート(CA)である。特定の実施形態において、セルロースエステルは、本明細書に記載のように測定される、40,000~120,000、又は40,000~110,000、又は40,000~100,000、又は40,000~95,000、又は40,000~90,000、又は40,000~85,000、又は40,000~80,000、又は40,000~75,000、又は40,000~70,000、又は40,000~65,000、又は40,000~60,000、又は40,000~55,000、又は40,000~50,000、又は40,000~45,000、又は50,000~120,000、又は50,000~110,000、又は50,000~100,000、又は50,000~95,000、又は50,000~90,000、又は50,000~85,000、又は50,000~80,000、又は50,000~75,000、又は50,000~70,000、又は50,000~65,000、又は50,000~60,000、又は50,000~55,000、又は60,000~120,000、又は60,000~110,000、又は60,000~100,000、又は60,000~95,000、又は60,000~90,000、又は60,000~85,000、又は60,000~80,000、又は60,000~75,000、又は60,000~70,000、又は60,000~65,000、又は70,000~120,000、又は70,000~110,000、又は70,000~100,000、又は70,000~95,000、又は70,000~90,000、又は70,000~85,000、又は70,000~80,000、又は70,000~75,000、又は75,000~120,000、又は75,000~110,000、又は75,000~100,000、又は75,000~95,000、又は75,000~90,000、又は75,000~85,000、又は75,000~80,000、又は80,000~120,000、又は80,000~110,000、又は80,000~100,000、又は80,000~95,000、又は80,000~90,000、又は80,000~85,000、又は85,000~120,000、又は85,000~110,000、又は85,000~100,000、又は85,000~95,000、又は85,000~94,000、又は85,000~93,000、又は85,000~92,000、又は85,000~91,000、又は85,000~90,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有するセルロースアセテートである。
【0035】
[0034]特定の実施形態において、セルロースエステルは、CAPポリマーの総重量を基準として1%を超えるプロピニル含量を有するセルロースアセテートプロピオネート(CAP)である。特定の実施形態において、セルロースエステルは、CAPポリマーの総重量を基準として約20%未満のプロピニル含量を有するセルロースアセテートプロピオネート(CAP)である。
【0036】
[0035]特定の実施形態において、セルロースエステルは、CABポリマーの総重量を基準として1%を超えるブチリル含量を有するセルロースアセテートブチレート(CAB)である。特定の実施形態において、セルロースエステルは、CABポリマーの総重量を基準として20%未満、又は10%未満のブチリル含量を有するセルロースアセテートブチレート(CAB)である。
【0037】
[0036]特定の実施形態において、セルロースエステルは、セルロースエステルの総重量を基準として1~20%、又は1~15%、又は1~10%、又は1~5%、又は2~20%、又は2~15%、又は2~10%、又は2~5%、又は3~20%、又は3~15%、又は3~10%、又は3~5%、又は4~20%、又は4~15%、又は4~10%、又は5~20%、又は5~15%、又は5~10%の範囲内の、ポリマーの総重量のパーセンテージとしての、プロピニル及びブチリルを合わせた含量を有する、セルロースアセテートプロピオネートブチレートである。
【0038】
[0037]上記で説明されるセルロースエステルのいずれも、最大で10%、好ましくは0.5%~5%の残留ヒドロキシル単位も含有してもよい。
[0038]本発明の実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤は脂肪族及び/又は芳香族置換基を含んでもよい。実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤は、アルキル、アルキルオキシ、及び/又はベンジルヘキサンジオエートから選択することができる。
【0039】
[0039]特定の実施形態において、組成物は、ヘキサンジオエート可塑剤に加えて、少なくとも1つの耐衝撃性改良剤、(任意選択により)少なくとも1つのモノマー可塑剤を含有し、セルロースエステル組成物中のヘキサンジオエート可塑剤の量は、セルロースエステル組成物全体を基準として、10~22wt%未満、又は10~21wt%、又は12~16wt%、又は12~15wt%、又は15~22wt%未満、又は15~21wt%、又は16~22wt%未満、又は16~21wt%、又は17~22wt%未満、又は17~21wt%、又は18~22wt%未満、又は18~21wt%、又は19~22wt%未満、又は19~21wt%、又は19wt%超~22wt%未満、又は19wt%超~21wt%、又は20~22wt%未満、又は20~21wt%、又は20wt%超~22wt%未満、又は20wt%超~21wt%、又は21~22wt%未満である。
【0040】
[0040]一実施形態において、1つ又は複数の耐衝撃性改良剤がヘキサンジオエート可塑剤と共に含まれてもよく、特定の実施形態において、耐衝撃性改良剤は、室温未満のガラス転移温度(Tg)を有するエラストマーとして分類される、任意のポリマー材料であってもよい。Tgは、例えばASTM D3418に準拠して、20℃/分のスキャン速度を使用したTA2100 Thermal Analyst Instrumentを使用して測定することができる。耐衝撃性改良剤のいくつかのクラスはこの説明と一致する。
【0041】
[0041]一実施形態において、耐衝撃性改良剤は、修飾ポリオレフィン(又はオレフィンコポリマー)として知られる材料の部類から選択することができる。
[0042]一実施形態において、耐衝撃性改良剤はブロックコポリマーであってもよく、ここで鎖の少なくとも1つのセグメントが室温未満のTgを有し、これはソフトセグメントと呼ばれ、鎖の少なくとも1つのセグメントが室温を超えるTg又はTmを有し、これはハードセグメントと呼ばれる。これらのブロックコポリマーは一般的に熱可塑性物質エラストマー(TPE)とも呼ばれる。
【0042】
[0043]一実施形態において、耐衝撃性改良剤は、コアシェル耐衝撃性改良剤として知られるエマルションで調製される材料の部類から選択することができる。一実施形態において、耐衝撃性改良剤はMBSコアシェル耐衝撃性改良剤である。
【0043】
[0044]本発明の一実施形態において、コアシェル耐衝撃性改良剤はアクリル系耐衝撃性改良剤である。この実施形態の1つの部類において、耐衝撃性改良剤は、ブタジエン-スチレンコポリマーでできているコア及びアクリロニトリル-スチレンコポリマーでできているシェルを有するABSコアシェル耐衝撃性改良剤である。この実施形態の1つの部類において、耐衝撃性改良剤は、シリコーンアクリル系ゴムでできているコア及びPMMAコポリマー又はメチルメタクリラート-スチレンコポリマーでできているシェルを有するシリコーン-アクリル系コアシェル耐衝撃性改良剤である。
【0044】
[0045]一実施形態において、耐衝撃性改良剤は、非反応性耐衝撃性改良剤若しくは反応性耐衝撃性改良剤、又はその両方の組み合わせのいずれかであってもよい。使用される耐衝撃性改良剤は、セルロースエステル組成物の機械的特性及び物理特性を改善することもできる。
【0045】
[0046]本発明の実施形態において、セルロースエステル組成物中の耐衝撃性改良剤の量は、セルロースエステル組成物の重量を基準として約1wt%~約15wt%、又は1wt%~10wt%、又は1wt%~5wt%、又は1wt%~4wt%、又は1wt%~3wt%、又は1wt%~2wt%、又は約2wt%~約10wt%、又は2wt%~5wt%、又は約3wt%~約10wt%、又は3wt%~5wt%、又は約4wt%~約10wt%、又は約4wt%~約8wt%、又は約5wt%~約10wt%の範囲であってもよい。
【0046】
[0047]一実施形態において、セルロースエステル組成物は透明であり、ASTM D1003に準拠し249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間における射出成形後の3.2mmプラークを使用して測定される、少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%の光透過率を有する。特定の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D1003に準拠し249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間における射出成形後の3.2mmプラークを使用して測定される、70%~95%、又は75%~95%、又は80%~95%、又は85%~95%、又は90%~95%、又は70%~90%、又は75%~90%、又は80%~90%、又は85%~90%の範囲の透過率を有する。この実施形態の1つの部類において、ヘキサンジオエート可塑剤を含むセルロースエステル組成物は、10%未満のヘイズ率を有する。実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤を含むセルロースエステル組成物は、8%未満、又は6%未満、又は5%未満のヘイズ率を有する。
【0047】
[0048]実施形態において、組成物は、ヘキサンジオエート可塑剤に加えて少なくとも1つの耐衝撃性改良剤及び/又は少なくとも1つのモノマー可塑剤を含有し、セルロースエステル組成物中のヘキサンジオエート可塑剤の量は、セルロースエステル組成物全体を基準として、10~19wt%未満、又は10~18wt%、又は10~17wt%、又は10~16wt%、又は10~15wt%、又は10~14wt%、又は10~13wt%、又は10~12wt%、又は11~19wt%未満、又は11~18wt%、又は11~17wt%、又は11~16wt%、又は11~15wt%、又は12~19wt%未満、又は12~18wt%、又は12~17wt%、又は12~16wt%、又は12~15wt%、又は13~19wt%未満、又は13~18wt%、又は13~17wt%、又は13~16wt%、又は13~15wt%、又は14~19wt%未満、又は14~18wt%、又は14~17wt%、又は14~16wt%、又は14~15wt%、又は15~19wt%未満、又は15~18wt%、又は15~17wt%、又は15~16wt%、又は16~19wt%未満、又は16~18wt%、又は16~17wt%、又は17~19wt%未満、又は17~18wt%、又は18~19wt%未満である。
【0048】
[0049]本発明の別の実施形態において、セルロースエステル組成物は、少なくとも1つのさらなるポリマー成分を、セルロースエステル組成物全体を基準として5~95重量%の量で、(セルロースエステルとの)ブレンドとしてさらに含む。さらなるポリマー成分の適切な例としては、限定はされないが、ナイロン;ポリエステル;ポリアミド;ポリスチレン;他のセルロースエステル、セルロースエーテル;ポリスチレンコポリマー;スチレンアクリロニトリルコポリマー;ポリオレフィン;ポリウレタン;アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー;ポリ(メチルメタクリレート);アクリル系コポリマー;ポリ(エーテル-イミド);ポリフェニレンオキシド;ポリ塩化ビニル;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンスルフィド/スルホン;ポリ(エステル-カーボネート);ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリ乳酸;ポリスルホンエーテル;及び芳香族ジヒドロキシ化合物のポリ(エーテル-ケトン);又は前述のポリマーのいずれかの混合物が挙げられる。実施形態において、さらなるポリマー成分は、他のセルロースエステル、セルロースエーテル、ポリウレタン、ポリ乳酸、又はそれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態において、さらなるポリマー成分はポリウレタンであってもよい。ブレンドは、溶融混合又は溶液混合などの当技術分野において既知の従来の加工技術により調製することができる。特定の実施形態において、さらなるポリマー化合物の総量は、セルロースエステル組成物の総重量を基準として25wt%未満、又は20wt%未満、又は15wt%未満、又は10wt%未満、又は5wt%未満、又は0である。
【0049】
[0050]本発明の一実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤に加えて、組成物は別のモノマー可塑剤(ヘキサンジオエート可塑剤以外)を含有してもよい。実施形態において、本発明で利用されるモノマー可塑剤は、セルロースエステルのガラス転移温度及び/又は溶融粘度を低下させて溶融加工特性を改善することができることが当技術分野において知られている任意のものであってもよい。モノマー可塑剤は、セルロースエステルと共に使用するのに適した任意のモノマー可塑剤であってもよい(組成物中に含有されるヘキサンジオエート可塑剤に加えて添加される)。実施形態において、モノマー可塑剤のレベルは従来の/市販のセルロースエステルにおいて利用される通常の(又は典型的な)モノマー可塑剤のレベルよりも低いべきであり;その結果組成物は、完全可塑化セルロースエステル組成物よりも高いTg、良好な靱性及び良好な流動性を有する。実施形態において、モノマー可塑剤は、モノマー可塑剤を含まない同様の組成物と比較してセルロースエステル組成物のTgを実質的に低下させない量で存在する。実施形態において、モノマー可塑剤を含むことの結果としてTgは20%を超えて、又は15%、又は10%、又は5%、又は2%の変化(例えば、低下)をしない。
【0050】
[0051]一実施形態において、モノマー可塑剤は、芳香族リン酸エステル可塑剤、アルキルリン酸エステル可塑剤、ジアルキルエーテルジエステル可塑剤、トリカルボン酸エステル可塑剤、ポリマーポリエステル可塑剤、ポリグリコールジエステル可塑剤、ポリエステル樹脂可塑剤、芳香族ジエステル可塑剤、芳香族トリエステル可塑剤、脂肪族ジエステル可塑剤、カーボネート可塑剤、エポキシ化エステル可塑剤、エポキシ化油可塑剤、ベンゾエート可塑剤、ポリオールベンゾエート可塑剤、アジペート可塑剤、フタレート可塑剤、グリコール酸エステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、ヒドロキシル官能性可塑剤、又は固体の非結晶性樹脂可塑剤から成る群から選択される、少なくとも1つ(ヘキサンジオエート可塑剤以外)である。
【0051】
[0052]本発明の一実施形態において、モノマー可塑剤は、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチル-トリ-n-ブチルシトレート、及びアセチル-トリ-n-(2-エチルヘキシル)シトレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、又はトリエチレングリコールジベンゾエートのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0052】
[0053]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、又はリン酸のうちの1つ又は複数の残基を含む酸残基と;(ii)最大で約20個の炭素原子を含有する脂肪族、脂環式、又は芳香族アルコールのうちの1つ又は複数の残基を含むアルコール残基とを含むエステルのうち、少なくとも1つ(ヘキサンジオエート可塑剤以外)から選択することができる。
【0053】
[0054]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、(i)フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、コハク酸、安息香酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、酪酸、グルタル酸、クエン酸、及びリン酸から成る群から選択される、少なくとも1つの酸残基と;(ii)最大で約20個の炭素原子を含有する脂肪族、脂環式、及び芳香族アルコールから成る群から選択される、少なくとも1つのアルコール残基とを含むエステルのうち、少なくとも1つ(ヘキサンジオエート可塑剤以外)から選択することができる。
【0054】
[0055]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤はアルコール残基を含んでもよく、ここでアルコール残基は、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びジエチレングリコールから選択される少なくとも1つである。
【0055】
[0056]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、ベンゾエート、フタレート、ホスフェート、アリーレン-ビス(ジアリールホスフェート)、及びイソフタレートのうちの少なくとも1つから選択することができる。別の実施形態において、モノマー可塑剤は、本明細書において「DEGDB」と略される、ジエチレングリコールジベンゾエートを含む。
【0056】
[0057]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、C~C10二塩基酸残基、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸と;C~C10ジオール残基とを含む、脂肪族化合物(ヘキサンジオエート可塑剤以外)から選択することができる。
【0057】
[0058]別の実施形態において、モノマー可塑剤は、C~C10ジオール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,5-ペンチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールのうちの少なくとも1つの残基であってもよい、ジオール残基を含んでもよい。
【0058】
[0059]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、Resoflex(登録商標)R296可塑剤、Resoflex(登録商標)804可塑剤、SHP(ソルビトールヘキサプロピオネート)、XPP(キシリトールペンタプロピオネート)、XPA(キシリトールペンタアセテート)、GPP(グルコースペンタアセテート)、GPA(グルコースペンタプロピオネート)、及びAPP(アラビトールペンタプロピオネート)のうちの少なくとも1つを含む。
【0059】
[0060]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、A)炭水化物が約1~約3個の単糖単位を含む、約5~約95重量%のC~C12炭水化物有機エステル;及びB)ポリオールがC又はC炭水化物に由来する、約5~約95重量%のC~C12ポリオールエステルのうち、1つ又は複数を含む。一実施形態において、ポリオールエステルは、ポリオールアセテート(1つ又は複数)を含まない又は含有しない。
【0060】
[0061]別の実施形態において、モノマー可塑剤は少なくとも1つの炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、フルクトース、ソルボース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、及びラフィノースから成る群から選択される1つ又は複数の化合物に由来する。
【0061】
[0062]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は少なくとも1つの炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α-グルコースペンタアセテート、β-グルコースペンタアセテート、α-グルコースペンタプロピオネート、β-グルコースペンタプロピオネート、α-グルコースペンタブチレート、及びβ-グルコースペンタブチレートのうちの1つ又は複数を含む。
【0062】
[0063]別の実施形態において、モノマー可塑剤は少なくとも1つの炭水化物エステルを含み、炭水化物エステルの炭水化物部分は、α-アノマー、β-アノマー、又はそれらの混合物を含む。
【0063】
[0064]別の実施形態において、モノマー可塑剤は、プロピレングリコールジベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、及びポリエチレングリコールジベンゾエートのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0064】
[0065]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は固体の非結晶性樹脂であってもよい。これらの樹脂はある程度の量の芳香族又は極性官能基を含有してもよく、セルロースエステルの溶融粘度を低下させることができる。本発明の一実施形態において、モノマー可塑剤は、固体の非結晶性化合物(樹脂)、例えば、ロジン;水素化ロジン;安定化ロジン、及びそれらの単官能性アルコールエステル又はポリオールエステル;限定はされないがマレイン酸修飾及びフェノール修飾ロジン並びにそれらのエステルを含めた、修飾ロジン;テルペン樹脂;フェノール修飾テルペン樹脂;クマリン-インデン樹脂;フェノール樹脂;アルキルフェノール-アセチレン樹脂;並びにフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などであってもよい。
【0065】
[0066]本発明の別の実施形態において、モノマー可塑剤は、トリアセチン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリメチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリブチル-o-アセチルシトレート、ジブチルフタレート、ジアリールフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジ-2-メトキシエチルフタレート、ジ-オクチルフタレート、ジ-オクチルアジペート、ジブチルタータレート、エチルo-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、n-エチルトルエンスルホンアミド、o-クレジルp-トルエンスルホネート、芳香族ジオール、置換芳香族ジオール、芳香族エーテル、トリプロピオニン、トリベンゾイン、ポリカプロラクトン、グリセリン、グリセリンエステル、ジアセチン、グリセリンアセテートベンゾエート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールジエステル、ジ-2-エチルヘキシルポリエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールビス-2-エチルヘキサノエートグリセリンエステル、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、C~C20ジカルボン酸エステル、ジメチルアジペート、ジ-ブチルマレエート、ジ-オクチルマレエート、レゾルシノールモノアセテート、カテコール、カテコールエステル、フェノール、エポキシ化大豆油、ヒマシ油、亜麻仁油、エポキシ化亜麻仁油、他の植物油、他の種子油、ポリエチレングリコールに基づく二官能性グリシジルエーテル、γ-バレロラクトン、アルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、リン脂質、オイゲノール、シンナミルアルコール、カンフル、メトキシヒドロキシアセトフェノン、バニリン、エチルバニリン、2-フェノキシエタノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、グリコールエステルエーテル、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールエステル、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、イミダゾール、トリエタノールアミン、安息香酸、ベンジルベンゾエート、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、プロピル-4-ヒドロキシベンゾエート、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、エチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ベンジル-4-ヒドロキシベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビトール、キシリトール、エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、トリアジン、トリアゾール、ピロール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、少なくとも1つのモノマー可塑剤である。
【0066】
[0067]実施形態において、セルロースエステル組成物中のモノマー可塑剤(ヘキサンジオエート可塑剤以外)の量は、例えば、採用されるセルロースエステルの種類に応じて、セルロースエステル組成物の重量を基準として0重量パーセントを超える量から約10重量パーセントまでの範囲であってもよい。一実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約10重量パーセントまでの範囲であってもよい。別の実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約9重量パーセントまでの範囲であってもよい。別の実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約8重量パーセントまでの範囲であってもよい。別の実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約7重量パーセントまでの範囲であってもよい。別の実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約6重量パーセントまでの範囲であってもよい。別の実施形態において、量はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約5重量パーセントまでの範囲、又は5重量パーセント未満、又はセルロースエステル組成物の重量を基準として最大で約4重量パーセントまで、又は約3重量パーセント未満の量であってもよい。
【0067】
[0068]本発明の実施形態において、セルロースエステル組成物は、1つ又は複数のポリグリコールから、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールなどから選択される、可塑剤(モノマー可塑剤に加えて、又はモノマー可塑剤の代わりに)をさらに含んでもよい。これらは低分子量の二量体及び三量体から高分子量のオリゴマー及びポリマーまでの範囲に及んでもよい。一実施形態において、ポリグリコールの重量平均分子量(Mw)は約200~約2000の範囲であってもよい。
【0068】
[0069]実施形態において、セルロースエステル組成物は、モノマー可塑剤として一般に知られる又はモノマー可塑剤として本明細書に記載されるが本発明の目的におけるモノマー可塑剤とは見なされない材料のカテゴリーの範囲に含まれる材料を含有してもよいことを理解するべきであり、ただしその材料は、特定のタイプのものであるか、又は他の機能性(可塑剤の機能性以外)をもたらす(又はそれに寄与する)量で含まれるものとするが、Tgの低下又はメルトフロー粘度の低下に対して最小限の影響しか与えない、例えばそのような特性の1%未満又は0.5%未満の変化しか与えないものとする。例えば、エポキシ化大豆油を少量で(例えば、組成物を基準として1wt%以下)添加して他の機能性をもたらしてもよく、例えば酸捕捉剤として作用させてもよく、エポキシ化油又はエポキシ化大豆油は一般にモノマー可塑剤のカテゴリーとなり得るにもかかわらず、そのような材料はモノマー可塑剤であるとは見なされないとされ(可塑剤として作用することになる他の材料を含まない場合)、モノマー可塑剤(本明細書で開示される様々な実施形態による)の指定の範囲から除外されるものとされる。
【0069】
[0070]実施形態において、組成物は0~2wt%、又は0~1.5wt%、又は0~1wt%の脂肪酸エステルを含有する。実施形態において、組成物は0~2wt%、又は0~1.5wt%、又は0~1wt%のエポキシ化脂肪酸エステル、例えば、エポキシ化大豆油を含有する。実施形態において、組成物は0.1~2wt%、又は0.1~1.5wt%、又は0.1~1wt%のエポキシ化脂肪酸エステルを含有する。実施形態において、組成物は0.1~2wt%、又は0.1~1.5wt%、又は0.1~1wt%、のエポキシ化大豆油を含有する。実施形態において、組成物は0.1~2wt%、又は0.1~1.5wt%、又は0.1~1wt%のエポキシ化脂肪酸エステルを含有し、5wt%未満の任意の他のモノマー可塑剤を含有する。実施形態において、組成物は0.1~2wt%、又は0.1~1.5wt%、又は0.1~1wt%のエポキシ化大豆油を含有し、5wt%未満の任意の他のモノマー可塑剤を含有する。
【0070】
[0071]特定の実施形態において、セルロースエステル組成物は、セルロースエステル組成物の総重量を基準として、58~85wt%の1つ又は複数のセルロースエステル、10~22wt%未満の1つ又は複数のヘキサンジオエート可塑剤、0~15wt%の1つ又は複数の耐衝撃性改良剤、0~10wt%の少なくとも1つのモノマー可塑剤、及び10wt%未満、又は5wt%未満の他の成分の合計を含む。
【0071】
[0072]実施形態において、セルロースエステルはCA(例えば、Eastman社のCA398-30)であり、ヘキサンジオエート可塑剤は2種類以上のヘキサンジオエート化合物(例えば、Daihachi社のDaifatty-101)の組み合わせである。実施形態において、セルロースエステル組成物は、モノマー可塑剤、例えばジエチルフタレート(DEP)をさらに含んでもよく、モノマー可塑剤の全体の量は、セルロースエステル組成物全体を基準として10wt%以下、又は10wt%未満(例えば、2~9wt%未満、又は3~9wt%未満、又は4~9wt%未満、又は5~9wt%未満、又は6~9wt%未満、又は7~9wt%未満、又は8~9wt%未満)の量である。実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤、耐衝撃性改良剤(存在する場合)、及びモノマー可塑剤(存在する場合)は、少なくとも110℃、又は少なくとも120℃のTg、良好な衝撃強度特性、及び良好なクリープ性(荷重下での耐たわみ性)を有するセルロースエステル組成物をもたらすのに十分な量で存在する。
【0072】
[0073]本発明の別の実施形態において、組成物は溶融加工可能である。溶融加工性とは一般に、材料を分解温度未満で熱処理して均質のペレット又はプラスチック物品を得る性能を指す。例えば、記載される組成物は、35lbs/時間の処理量において250rpmのスクリュー回転数及び240℃のバレル温度によりWerner&Pflerderer 30mm二軸押出機で溶融押出しすることができ、及び/又は240℃のバレル温度及び71℃(160°F)の型温によりToyo110射出成形機で射出成形することができ、最小限の分子量低下(例えば、最初のMWから5%未満のMWの低下)又は退色(例えば、スケール又は0~100%に基づき、5%未満のヘイズの増加又は5%の透過率の低下)を伴う。
【0073】
[0074]本発明の1つの実施形態において、10wt%~22wt%未満、又は15wt%~22wt%未満、又は19wt%~22wt%未満、又は19wt%超~22wt%未満、又は20wt%~22wt%未満、又は20wt%超~22wt%未満のヘキサンジオエート可塑剤を含み、少なくとも120℃のガラス転移温度(Tg)(本明細書においてさらに説明されるように、ASTM D3418に準拠し20℃/分で測定される)と、150J/mを超える、又は180J/mを超える、又は200J/mを超えるアイゾットノッチ衝撃強度値(ASTM D256に準拠し23℃で3.2mm厚さのバーについて測定される)と、本明細書に記載の手順を使用して測定される場合の10mm以下のクリープたわみと、を有する、溶融加工可能なセルロースエステル組成物が提供される。別途指定されない限り、アイゾットノッチ衝撃強度は、23℃で3.2mm厚さのバーについて23℃及び50%RHで48時間のコンディショニング後に、ASTM法D256に準拠してノッチング後に成形バーについて行われた。
【0074】
[0075]一実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤に加えて、溶融加工可能なセルロースエステル組成物は、0超~15wt%の耐衝撃性改良剤、0超~10wt%のモノマー可塑剤を含んでもよく、120℃を超えるTgを有する。一実施形態において、耐衝撃性改良剤はコアシェル耐衝撃性改良剤である。一実施形態において、耐衝撃性改良剤はアクリル系コアシェル耐衝撃性改良剤である。
【0075】
[0076]本発明の実施形態において、ポリマー系樹脂は、100℃を超える、又は110℃を超える、又は120℃を超えるTgを有する。
[0077]本発明の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D256に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、少なくとも130J/m、又は少なくとも140J/m、又は少なくとも150J/m、又は少なくとも160J/m、又は少なくとも170J/m、又は少なくとも180J/m、又は少なくとも190J/m、又は少なくとも200J/mのアイゾットノッチ衝撃強度を有する。特定の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D256に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、約130J/m~約200J/m、約150J/m~約200J/m、約170J/m~約200J/m、約180J/m~約200J/mの範囲内のアイゾットノッチ衝撃強度を有する。
【0076】
[0078]本発明の特定の実施形態において、ポリマー系樹脂の3.2mm厚さのプラークは、ASTM D3763に準拠した装置の衝撃により試験した場合に、ASTM D3763のX1.8節で定義される延性破壊を示す。
【0077】
[0079]本発明の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D790に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、1600MPaを超える曲げ弾性率を有する。特定の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D790に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、少なくとも1700MPa、少なくとも1800MPa、少なくとも1900MPa、少なくとも2000MPa、少なくとも2100MPa、少なくとも2200MPa、少なくとも2300MPa、又は少なくとも2400MPaの曲げ弾性率を有する。特定の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D790に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、約1600~約3000MPa、約1700~約3000、約1800~約3000、約1900~約3000MPa、約2000~約3000MPa、約2100~約3000MPa、約2200~約3000MPa、約2300~約3000MPa、約2400~約3000MPa、又は約2500~約3000MPaの範囲内の曲げ弾性率を有する。特定の実施形態において、ポリマー系樹脂は、ASTM D790に準拠し23℃で50%の相対湿度に48時間さらされた3.2mm厚さのバーを使用して測定される、約1600~約2500MPa、約1700~約2500MPa、約1700~約2500MPa、約1900~約2500MPa、約1900~約2800MPa、又は約1900~約3000MPaの範囲内の曲げ弾性率を有する。
【0078】
[0080]本発明の特定の実施形態において、セルロースエステル組成物は、セルロースエステル組成物の総重量を基準として10wt%~22wt%未満のヘキサンジオエート可塑剤を含有し、120℃を超えるTg値と、150J/mを超える、又は160J/m、又は170J/m、又は180J/m、又は190J/m、又は200J/mのアイゾットノッチ衝撃強度値と、ASTM D1003に準拠し249℃のバレル設定点及び5分の滞留時間における射出成形後の3.2mmプラークを使用して測定される、80%を超える、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%の光透過率値と、を有する。
【0079】
[0081]本発明の特定の実施形態において、セルロースエステル組成物の総重量を基準として10wt%~22wt%未満のヘキサンジオエート可塑剤を含有する、セルロースエステル組成物の3.2mm厚さのプラークは、ASTM D3763に準拠した装置の衝撃により試験した場合に、ASTM D3763のX1.8節で定義される延性破壊を示し、120℃を超えるTg値を有する。
【0080】
[0082]本発明の別の実施形態において、セルロースエステル組成物は、抗酸化剤、熱安定剤、離型剤、静電防止剤、白色剤、着色剤、流動助剤、加工助剤、防曇添加剤、無機物、UV安定化剤、潤滑剤、鎖延長剤、核剤、強化フィラー、木質又は粉末フィラー、ガラスファイバー、炭素繊維、難燃剤、染料、顔料、着色剤、さらなる樹脂、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0081】
[0083]特定の実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤、(任意選択の)耐衝撃性改良剤、及び(任意選択の)モノマー可塑剤(本明細書において説明される)に加えて、セルロースエステル組成物は、二次酸化防止剤、酸捕捉剤、又はそれらの組み合わせから成る群から選択される安定化剤を含む。特定の実施形態において、セルロースエステル組成物は、組成物の総重量を基準として約0.1~約0.8wt%の範囲内の二次酸化防止剤を含む。特定の実施形態において、セルロースエステル組成物は、組成物の総重量を基準として約0.2~約2.0wt%の範囲内の酸捕捉剤を含む。一実施形態において、セルロースエステル組成物は、組成物の総重量を基準として約0.1~約0.8wt%の範囲内の二次酸化防止剤、及び約0.2~約2.0wt%の範囲内の酸捕捉剤を含む。一実施形態において、二次酸化防止剤は、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンである。一実施形態において、酸捕捉剤はエポキシ化脂肪酸エステルである。一実施形態において、セルロースエステル組成物は、組成物の総重量を基準として例えば約0.1~約0.5wt%の範囲内の塩安定化剤をさらに含む。一実施形態において、セルロースエステル、ヘキサンジオエート可塑剤、及び安定化剤(本明細書において説明される)以外に、セルロースエステル組成物は、組成物の総重量を基準として合計で10wt%未満、又は8wt%未満、又は5wt%未満、又は2未満wt%の任意の他の成分を含有する。
【0082】
[0084]本発明の別の実施形態において、a)少なくとも1つのヘキサンジオエート可塑剤、少なくとも1つのセルロースエステル(及び任意選択により少なくとも1つの耐衝撃性改良剤及び/又はモノマー可塑剤)を、ヘキサンジオエート可塑剤(他の任意選択の成分)を分散させるのに十分な時間及び温度で混合してセルロースエステル組成物を得るステップを含む、セルロースエステル組成物の製造方法が提供される。十分な温度とは、一般にセルロースエステルのTgを約50℃上回る、セルロースエステルの流動温度と定義される。別の実施形態において、温度はセルロースエステルのTgを約80℃上回る。
【0083】
[0085]実施形態において、ヘキサンジオエート可塑剤、セルロースエステル(及び任意選択の耐衝撃性改良剤及びモノマー可塑剤及び添加剤)の混合は、セルロースエステル中に成分を分散させるのに適切である、当技術分野において既知の任意の方法により実現することができる。混合装置の例としては、限定はされないが、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ロールミル、及び押出機(単軸又は二軸)が挙げられる。混合時のせん断エネルギーは、装置、ブレードのデザイン、回転速度(rpm)、及び混合時間の組み合わせによって決まる。せん断エネルギーは、ヘキサンジオエート可塑剤及び任意選択のさらなる成分をセルロースエステル全体に分散させるのに十分であるべきである。
【0084】
[0086]本発明の組成物は、眼科用途の成形プラスチック部品として又は固体プラスチック物体として有用である。そのような部品の例としては眼鏡フレームが挙げられる。一実施形態において、本発明の組成物は、最初にフィルム又はシートに成形され、次いで眼科用レンズ及び/又はフレームなどの眼科用物品となるように成形又は切り出されることが可能である。本明細書に記載される靱性の向上及びHDTの上昇(及び/又はクリープたわみの低減)の独自の組み合わせは、これらの眼科用物品(例えば、フレーム物品)の、高温環境(すなわち、日光曝露)に直面するため、高温の倉庫保管の間又は適度な荷重又は応力下での用途における使用の間にクリープ及び反りに耐えるため、及び使用の間の寸法安定性の喪失を防ぐための性能を大幅に改善させると考えられる。
【0085】
[0087]セルロースエステル組成物を成形してフィルム及び/又はシートとする方法としては、当技術分野において既知の方法を挙げることができる。本発明のフィルム及び/又はシートの例としては、限定はされないが、押出しフィルム及び/又はシート、カレンダー加工フィルム及び/又はシート、圧縮成形フィルム及び/又はシート、溶液流延フィルム及び/又はシートが挙げられる。フィルム及び/又はシートを作製する方法としては、限定はされないが、押出成形、カレンダー加工、圧縮成形、ウェットブロック加工、ドライブロック加工、及び溶液流延が挙げられる。
【0086】
[0088]本発明は、本明細書に記載の成形物品にさらに関する。セルロースエステル組成物を成形して成形物品とする方法としては、当技術分野における既知の方法を挙げることができる。本発明の成形物品の例としては、限定はされないが、射出成形物品、押出成形物品、及び圧縮成形物品が挙げられる。成形物品を作製する方法としては、限定はされないが、射出成形、押出成形、及び圧縮成形が挙げられる。
【0087】
[0089]実施形態において、特定のセルロースエステル組成物は、ゲート線又は溶接線で誘発される衝撃(又は応力)破損が起こりやすい射出成形物品において、例えば、金型のゲート線又は溶接線位置の近くに比較的薄い部分/領域を有し、眼鏡フレームなどの成形物品のゲート線又は溶接線位置で(又はその近くで)応力集中の増加が生じるような射出成形物品において、特に有用である。
【0088】
[0090]本発明は、その好ましい実施形態の下記の実施例によりさらに例証することができるが、これらの実施例は単に例証の目的のために盛り込まれ、別途具体的に示されない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されることになる。
【実施例
【0089】
[0091]セルロースエステル組成物は、選択されたセルロースエステルを、ヘキサンジオエート可塑剤及び(任意選択により)モノマー可塑剤と調合することにより調製された。別段の指定がない限り、セルロースエステル組成物の調合は、25lbs/時間の処理量において250rpmのスクリュー回転数及び220℃のバレル温度によりWerner&Pflerderer 30mm二軸押出機で行われた。以下の実施例において使用されるセルロースエステルのグレードはEastman社のCA398-30(CA1)であった。実施例において使用されるヘキサンジオエート可塑剤(Pz1)はDaihachi社のDaifatty-101であった。
【0090】
[0092]実施例は、射出成形プラーク及びバー、並びに圧縮成形シートから切り出されたバーについての試験を含む。別段の指定がない限り、成形は240℃(460°F)のバレル温度及び70℃(160°F)の型温によりToyo射出成形機で行われた。シート試料を204℃(400°F)及び10MPaにおいて圧縮成形した。別段の指定がない限り、ポリマー分子量、可塑剤含量、Tg、ヘイズ、光透過率、透明性、溶融粘度、アイゾットノッチ衝撃強度、及び耐クリープ性は下記で説明されるように測定/決定された。
【0091】
[0093]ポリマー分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒系を別々に利用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を使用して裏付けられた。
【0092】
[0094]試料中の可塑剤含量は、分離及び定量のための、加熱スプリットインジェクター、DB-5キャピラリーカラム、及び水素炎イオン化検出器を備えたShimadzuガスクロマトグラフを利用した、ガスクロマトグラフィー(GC)法を使用して裏付けられた。
【0093】
[0095]試料が20℃/分の加熱速度で-100℃から加熱される、ASTM標準法D3418に準拠して、ガラス転移温度(Tg)を測定した。材料のブレンドのDSCスキャン複数のTg転移を示すことがある。1つを超えるTg転移がスキャン中に測定された場合、マトリックスのガラス転移はスキャン中に測定される最も高いTgと定義される。
【0094】
[0096]ASTM D1003に準拠し102mm×102mm×3.2mmの射出成形プラークについてヘイズ率及び光透過率を測定した。透明性のグレードが示される実施例において、グレードは目視検査により決定され、透明というグレードが約10%未満のヘイズ率に相当し、わずかなヘイズというグレードが約10%超、又は約15%を超、及び約25%未満のヘイズ率に相当し、ヘイズ又は濁りというグレードが約25%を超えるヘイズ率に相当する。
【0095】
[0097]溶融粘度は、直径25mmの平行なプレート、1mmの間隔、及び10%のひずみによりRheometric Dynamic Analyzer(RDA II)プレート・プレートメルトレオメーターを使用して測定され、ASTM D4440に準拠し1rad/秒~100rad/秒の角周波数を使用して測定された。
【0096】
[0098]アイゾットノッチ衝撃強度は、23℃及び50%RHで48時間のバーのコンディショニング後に、ASTM法D256に準拠してノッチング後に23℃で3.2mm厚さの成形バーについて行われた。
【0097】
[0099]本明細書で使用する耐クリープ性とは、材料の寸法安定性の直接的測定のことを指す。耐クリープ性は、60℃のオーブン中でバーを分析用治具の上に置くことにより測定され、バーの中央に3447kPa(500-psi)の荷重(約295g)が直接印加される。試料をオーブン中に168時間置いた。試験後にバーに残留するたわみ(まっすぐなバーと比較した)を測定されたクリープたわみとした。(耐クリープ性試験において)使用された試験用バーは、成形されるか又はシートから切り出され、L=12.7cm(5.000”)、W=1.27cm(0.500”)、及びT=0.3175cm(0.125”)の寸法を有するものとした。分析治具はバーの端部付近で試験用バーを支持し、バーの端部が10.16cm(4.0インチ)の試験治具開口部上で等距離になるようにまたがり、295gの荷重がバーの中央にかけられた。
【0098】
[00100]ASTM D790試験法により曲げ弾性率を測定した。規格ASTM D790タイプの試験片を以下の通りに調製した:厚さ3.175mm(1/8インチ)、幅12.7mm(0.5インチ)、及び長さ130mm(5インチ)。試験前に、ASTM D618「Standard Practice for Conditioning Plastics for Testing(試験用プラスチックのコンディショニングの標準的実施法)」に準拠して、試料を22.8±1.1℃(73±2°F)の温度及び50±5%の相対湿度で40時間コンディショニングした。Bluehill3.51及びTestMaster2.0.7ソフトウェアをInstronテストフレームのプログラミング作業のために使用した。5個の試験片を各試料において試験して平均値を得た。5cm(2インチ)のスパン、1.3mm(0.05インチ)/分の速度で試料を試験した。各試料を5.5%ひずみまで曲げた。
【0099】
[00101]ASTM D648の通りに(0.25mm/0.01インチ)、端に沿った位置で、曲げ荷重下の荷重たわみ温度(HDT)を分析した。フレックスバーが指定の荷重下(「低圧力」0.46MPa又は66PSI、又は「高圧力」1.82MPa又は264PSI)で規定の変形に達した時点で温度を測定した(0.25mmにおける曲げHDT)。2℃/分の制御された加熱条件において試験を行った。試料サイズは以下の通りとした:127mm(5インチ)長さ、奥行き13mm(1/2インチ)、及び幅3mm(1/8インチ)~13mm(1/2インチ)の寸法を有するフレックスバー。
【0100】
実施例1
[00102]ヘキサンジオエート可塑剤及びDEP可塑剤を含むCA
Pz1を含むCA1(実施例1-1から1-4)、Pz1及びDEP可塑剤の組み合わせを含むもの(実施例1-5及び1-6)、並びにDEP可塑剤を含むもの(実施例1-7及び1-8)を、各々射出成形して12.7×1.27×0.3175cmのバーとした。
【0101】
[00103]クリープたわみ、アイゾットノッチ衝撃強度、及び曲げ弾性率を各試料について決定した。実施例1-1から1-8についての材料の組成及び特性を下記で表1に記載する。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例2
[00104]ヘキサンジオエート可塑剤及びDEP可塑剤を含むCA
Pz1を含むCA1(実施例2-1から2-4)、及びDEP可塑剤を含むもの(実施例2-5及び2-6)を各々射出成形して12.7×1.27×0.3175cmのバーとした。
【0104】
[00105]Mw、アイゾットノッチ衝撃強度、曲げ弾性率、HDT(低圧力及び高圧力)、及びTgを各試料について決定した。実施例2-1から2-6についての材料の組成及び特性を下記で表2に記載する。
【0105】
【表2】
【0106】
[00106]実施例の総括は、特定の量のCA1及びPz1(又はPz1+DEP)の組み合わせが、高いTg、高いアイゾットノッチ衝撃強度、及び高いLoHDT、及び/又は低いクリープたわみの組み合わせを有する成形物品をもたらし得ることを表し、これは眼科用途において重要である。28wt%のDEPを含む組成物は許容不可能なほど高いクリープたわみを有し、21wt%のDEPを含む組成物は許容不可能な靱性性能を有していた。
【0107】
[00107]本開示の実施形態の上記の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを可能にするのに十分な程度に詳細に、本発明の様々な態様を説明することを意図している。本発明の範囲から逸脱せずに、他の実施形態を利用することができ、変更を行うことができる。上記の詳細な説明は、したがって、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の範囲は、そのような特許請求の範囲に認められている等価物の全範囲と共に、以降の通常の実用出願に示される特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0108】
[00108]この説明において、「一実施形態」、「実施形態」、又は「実施形態(複数)」への言及は、言及される構成(1つ又は複数)がこの技術少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。この説明における「一実施形態」、「実施形態」、又は「実施形態(複数)」への別々の言及は、必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、記述がない限り、及び/又は説明から当業者にとって容易に明らかである場合を除き、互いに排除するものではない。例えば、一実施形態において記載される構成、工程、などは、他の実施形態に含まれることもあるが、必ず含まれるわけではない。したがって、本発明の技術は、本明細書に記載の実施形態の様々な組み合わせ及び/又は統合を含んでもよい。
【国際調査報告】