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特表2024-515244特異的なオリゴヌクレオチドによりプログラムされたナンセンスコドンのリードスルー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】特異的なオリゴヌクレオチドによりプログラムされたナンセンスコドンのリードスルー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240401BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240401BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 140Z
C12N15/12
C07H21/04 Z CSP
A61P43/00 105
A61P25/18
A61K48/00
A61P43/00 121
A61K31/711
A61K31/712
A61K31/7125
A61K31/7036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561729
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022023640
(87)【国際公開番号】W WO2022216804
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,893
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505231659
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スソロフ, デニス
(72)【発明者】
【氏名】コロステレフ, アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ザハラ, セラジ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057BB05
4C057CC02
4C057DD03
4C057MM01
4C057MM04
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA181
4C084ZB211
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA09
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA18
4C086ZB21
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、遺伝子操作の分野に関する。特に、本発明は、遺伝に基づく疾患および障害を処置する組成物および方法に関する。例えば、非機能的タンパク質を生成する未成熟終止コドンの翻訳リードスルーを促進する核酸オリゴマーが企図される。未成熟終止コドンの下流の+4~+8(+4、+5、+6、+7および+8)ヌクレオチド位置において結合するDNAおよび改変核酸オリゴは、嚢胞線維症遺伝子における未成熟終止コドンのリードスルーを成功裡に促進した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッセンジャーRNA(mRNA)分子内の未成熟終止コドンにおける最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するリボ核酸(RNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)アンチセンスオリゴマー。
【請求項2】
前記未成熟終止コドンは、UGAC(RNA)である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項3】
前記未成熟終止コドンは、UGAGである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項4】
前記未成熟終止コドンは、UGAAである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項5】
前記未成熟終止コドンは、UGAUである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項6】
前記オリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、57℃および66℃からなる群より選択される融解温度(T)を有する、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項7】
前記オリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項8】
前記オリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項9】
前記オリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項10】
前記オリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項11】
前記オリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項12】
前記オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項13】
前記オリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項14】
前記オリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項15】
前記オリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項16】
前記オリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項17】
前記オリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項18】
前記改変は、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変からなる群より選択される、請求項17に記載のオリゴマー。
【請求項19】
前記オリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項20】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(F)である、請求項19に記載のオリゴマー。
【請求項21】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項22】
i)デオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマー;ならびにii)RNA配列および未成熟終止コドンをコードするメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含む組成物であって、ここで前記アンチセンスオリゴマーは、前記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始する前記RNA配列に相補的である、組成物。
【請求項23】
前記アンチセンスオリゴマーは、前記RNA配列にハイブリダイズされる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質(CFTR)をコードする、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2(Mecp2)をコードする、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物は、アミノグリコシドをさらに含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
翻訳リードスルーを促進する従来のアミノグリコシド濃度の1/5のアミノグリコシド濃度をさらに含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記アミノグリコシドは、G418である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記アミノグリコシドは、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンおよびネオマイシンからなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
前記未成熟終止コドンは、UGACである、請求項22に記載の組成物。
【請求項31】
前記未成熟終止コドンは、UGAGである、請求項22に記載の組成物。
【請求項32】
前記未成熟終止コドンは、UGAAである、請求項22に記載の組成物。
【請求項33】
前記未成熟終止コドンは、UGATである、請求項22に記載の組成物。
【請求項34】
前記オリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃および66℃からなる群より選択される融解温度(T)を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項35】
前記オリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項36】
前記オリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項37】
前記オリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項38】
前記オリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項39】
前記オリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項40】
前記オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項41】
前記オリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である、請求項22に記載の組成物。
【請求項42】
前記オリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項43】
前記オリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項44】
前記オリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である、請求項22に記載の組成物。
【請求項45】
前記オリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項46】
前記改変は、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変からなる群より選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記改変されたオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーを含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
a)以下:
i)未成熟終止コドンを有するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含み、医学的障害の少なくとも1つの症状を示す患者;および
ii)前記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するmRNA配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物
を提供する工程;ならびに
b)前記医学的障害の少なくとも1つの症状が低減されるように、前記薬学的に受容可能な組成物を前記患者に投与する工程、
を包含する方法。
【請求項51】
前記医学的障害は、前記未成熟終止コドンによって引き起こされる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記医学的障害は、嚢胞性線維症またはレット症候群である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記アミノグリコシドは、G418である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記アミノグリコシドは、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンおよびネオマイシンからなる群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
前記未成熟終止コドンは、UGACである、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記未成熟終止コドンは、UGAGである、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記未成熟終止コドンは、UGAAである、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
前記未成熟終止コドンは、UGATである、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
前記オリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃からなる群より選択される融解温度(T)を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
前記オリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
前記オリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
前記オリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である、請求項50に記載の方法。
【請求項67】
前記オリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である、請求項50に記載の方法。
【請求項68】
前記オリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である、請求項50に記載の方法。
【請求項69】
前記オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である、請求項50に記載の方法。
【請求項70】
前記オリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である、請求項50に記載の方法。
【請求項71】
前記オリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である、請求項50に記載の方法。
【請求項72】
前記オリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である、請求項50に記載の方法。
【請求項73】
前記オリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である、請求項50に記載の方法。
【請求項74】
前記オリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項75】
前記改変は、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変からなる群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記改変されたオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項50に記載の方法。
【請求項79】
a)以下:
i)未成熟終止コドンを有するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含み、医学的障害の少なくとも1つの症状を示す患者;ならびに
ii)アミノグリコシド、および前記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するmRNA配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物
を提供する工程;ならびに
b)前記医学的障害の少なくとも1つの症状が低減されるように、前記薬学的に受容可能な組成物を前記患者に投与する工程、
を包含する方法。
【請求項80】
前記投与する工程は、前記アミノグリコシド単独と比較して、前記少なくとも1つの症状の相乗作用的低減を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記医学的障害は、前記未成熟終止コドンによって引き起こされる、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記医学的障害は、嚢胞性線維症またはレット症候群である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記アミノグリコシドは、G418である、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記アミノグリコシドは、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンからなる群より選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする、請求項79に記載の方法。
【請求項89】
前記未成熟終止コドンは、UGACである、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
前記未成熟終止コドンは、UGAGである、請求項79に記載の方法。
【請求項91】
前記未成熟終止コドンは、UGAAである、請求項79に記載の方法。
【請求項92】
前記未成熟終止コドンは、UGATである、請求項79に記載の方法。
【請求項93】
前記オリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、66℃および70℃からなる群より選択される融解温度(T)を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項94】
前記オリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃からなる群より選択される融解温度(T)を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項95】
前記オリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である、請求項79に記載の方法。
【請求項96】
前記オリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である、請求項79に記載の方法。
【請求項97】
前記オリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である、請求項79に記載の方法。
【請求項98】
前記オリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である、請求項79に記載の方法。
【請求項99】
前記オリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である、請求項79に記載の方法。
【請求項100】
前記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である、請求項79に記載の方法。
【請求項101】
前記オリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である、請求項79に記載の方法。
【請求項102】
前記オリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である、請求項79に記載の方法。
【請求項103】
前記オリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である、請求項79に記載の方法。
【請求項104】
前記オリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である、請求項79に記載の方法。
【請求項105】
前記オリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項106】
前記改変は、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変からなる群より選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記改変されたオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである、請求項79に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の陳述
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたGM127094の下で政府支援を得て行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、遺伝子操作の分野に関する。特に、本発明は、ナンセンス終止コドンを有するmRNAからの非機能的タンパク質の翻訳によって引き起こされる遺伝に基づく疾患および障害を処置する組成物および方法に関する。例えば、未成熟mRNA終止(ナンセンス)コドンの翻訳リードスルーを促進するDNAおよび改変された核酸(NA)オリゴマーが、企図される。ナンセンスコドンリードスルーは、全長タンパク質を生じ、タンパク質機能を回復させる。例えば、未成熟mRNA終止コドンの最初のヌクレオチド(+1位置、図1を参照のこと)から下流の+4~+8ヌクレオチド位置(すなわち、+4、+5、+6、+7、+8位置)で開始して結合するDNAオリゴマーは、リードスルーを成功裡に促進した。
【背景技術】
【0003】
背景
未成熟ナンセンス(すなわち、終止)コドンを生じる変異は、ヒト遺伝子疾患のうちの10%超をもたらす。終止コドンは通常、リボソームからのタンパク質の物理的放出を生じる。従って、未成熟終止コドンは、短い(例えば、短縮化した)、しばしば非機能的なタンパク質の翻訳を生じ、疾患を生じる。
【0004】
大部分の試験済み薬物(例えば、アミノグリコシド(例えば、G418))は、ナンセンスコドンまたは終止コドンの全体のリードスルーを提供し得るが、多くの細胞mRNAのミスコードを誘導する可能性があり、それによって、臨床上許容不能なレベルの毒性を生じる。
【0005】
当該分野で必要とされることは、特定のmRNA分子において未成熟終止コドンのリードスルーを増大させる組成物および方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、遺伝子操作の分野に関する。特に、本発明は、ナンセンス終止コドンを有するmRNAからの非機能的タンパク質の翻訳によって引き起こされる遺伝に基づく疾患および障害を処置する組成物および方法に関する。例えば、未成熟mRNA終止(ナンセンス)コドンの翻訳リードスルーを促進するDNAおよび改変された核酸(NA)オリゴマーが、企図される。ナンセンスコドンリードスルーは、全長タンパク質を生じ、タンパク質機能を回復させる。例えば、未成熟mRNA終止コドンの最初のヌクレオチド(+1、図1を参照のこと)から下流の+4~+8ヌクレオチド位置(すなわち、+4、+5、+6、+7、+8位置)で開始して結合するDNAオリゴマーは、リードスルーを成功裡に促進した。比較において、最初のナンセンス終止コドンの最初のヌクレオチドからさらに下流(+9位置など)に配置されたヌクレオチドは、リードスルーを促進しなかった。
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)分子内の未成熟終止コドンにおける最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するリボ核酸(RNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)アンチセンスオリゴマーを企図する。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAC(RNA)である。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAUである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、57℃または66℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0008】
1つの実施形態において、本発明は、i)デオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマー;およびii)RNA配列および未成熟終止コドンをコードするメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含む組成物であって、ここで上記アンチセンスオリゴマーは、上記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するRNA配列に相補的である組成物を企図する。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、上記RNA配列にハイブリダイズされる。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質(CFTR)をコードする。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2(Mecp2)をコードする。1つの実施形態において、上記組成物は、アミノグリコシドをさらに含む。1つの実施形態において、上記組成物は、翻訳リードスルーを促進する従来のアミノグリコシド濃度の1/5のアミノグリコシド濃度をさらに含む。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)未成熟終止コドンを有するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含み、医学的障害の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)上記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するmRNA配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記医学的障害の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記医学的障害は、上記未成熟終止コドンによって引き起こされる。1つの実施形態において、上記医学的障害は、嚢胞性線維症またはレット症候群である。1つの実施形態において、上記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)未成熟終止コドンを有するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を含み、医学的障害の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)アミノグリコシド、および上記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するmRNA配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記医学的障害の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記投与する工程は、上記アミノグリコシド単独と比較して、上記少なくとも1つの症状の相乗作用的低減を有する。1つの実施形態において、上記医学的障害は、上記未成熟終止コドンによって引き起こされる。1つの実施形態において、上記医学的障害は、嚢胞性線維症またはレット症候群である。1つの実施形態において、上記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする。1つの実施形態において、上記mRNA分子は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、66℃または70℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)嚢胞性線維症の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)mRNA分子内の未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記嚢胞性線維症の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に提供する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA配列は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃が挙げられるが、これらに限定されない。融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、a 2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)レット症候群の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)mRNA分子内の未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記レット症候群の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記薬学的に受容可能な組成物は、アミノグリコシドをさらに含む。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA配列は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)嚢胞性線維症の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)アミノグリコシド、およびmRNA分子内の未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)または改変された核酸アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記嚢胞性線維症の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記投与する工程は、上記アミノグリコシド単独と比較して、上記少なくとも1つの症状の相乗作用的低減を有する。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA配列は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子タンパク質をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、32℃、34℃、40℃、47℃、53℃、または66℃が挙げられるが、これらに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCTCCACTCAGTGTGATTCCACCTTC(CFTR +4(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(49))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、GACCTCCACTCAGTGTGATTCCACC(CFTR +7(60))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(32))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、ACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(34))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(47))である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC(CFTR +8(66))である。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、改変を有する少なくとも1個のヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記アンチセンスオリゴマーは、フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴを含むCFTR +8(47)オリゴである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、TCCACTCAGTGTGATTCCACである。1つの実施形態において、上記フッ化物改変されたCFTR +8(47)オリゴマーは、UCCACTCAGTGTGATTCCACである。
【0014】
1つの実施形態において、本発明は、a)以下:i)レット症候群の少なくとも1つの症状を示す患者;およびii)アミノグリコシド、およびmRNA分子内の未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置の間で開始するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)配列に相補的なデオキシリボ核酸(DNA)アンチセンスオリゴマーを含む薬学的に受容可能な組成物を提供する工程;ならびにb)上記レット症候群の少なくとも1つの症状が低減されるように、上記薬学的に受容可能な組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法を企図する。1つの実施形態において、上記投与する工程は、上記アミノグリコシド単独と比較して、上記少なくとも1つの症状の相乗作用的低減を有する。1つの実施形態において、上記投与する工程は、アミノグリコシド副作用を生じない。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドは、G418である。1つの実施形態において、上記アミノグリコシドとしては、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンまたはネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記mRNA配列は、メチルシトシン結合タンパク質2をコードする。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGACである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAGである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、57℃が挙げられるが、これに限定されない融解温度(T)を有する。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGAAである。1つの実施形態において、上記未成熟終止コドンは、UGATである。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CTGAAGCTGACCCTCAGGCC(Mecp2 +8(57) 255X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、CGGGGAGTGTGGTGGCAG(Mecp2 +8(57) 270X)である。1つの実施形態において、上記DNAオリゴマーは、TGCAGGAGACCGTACTCCCC(Mecp2 +8(57) 294X)である。
【0015】
定義
本発明の理解を促進するために、多くの用語が以下で定義される。本明細書で定義される用語は、本発明に直接関連する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」のような用語は、単数形の実体に言及するのみならず、複数形の実体にも言及することが意図され、具体的な例が例証のために使用され得る一般的なクラスをも含む。本明細書中の用語法は、本発明の具体的な実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用法は、特許請求の範囲に概説されるとおりのものを除いて、本発明の範囲を定めない。
【0016】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、本明細書で使用される場合、任意のアッセイ測定系のうちのいずれかの文脈において、所定の測定値の±5%に言及する。
【0017】
包括的用語「+#(##)」とは、本明細書で使用される場合、アンチセンスヌクレオチド結合の命名形式に言及する。例えば、「+8(70)」という上記アンチセンスオリゴヌクレオチドの呼称は、「+8」がナンセンス/未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドから8ヌクレオチド下流である登録された結合ヌクレオチドに言及し、「(70)」が、上記アンチセンスオリゴの同じ配列を有する類似のDNA-DNA二重鎖の融解温度であることを意味する。本明細書で示される他方のアンチセンスオリゴの呼称は、その同じ形式および解釈に従う。
【0018】
用語「アミノグリコシド」とは、本明細書で使用される場合、アミノ糖部分構造を含む任意の有機分子に言及する。臨床的には、アミノグリコシドは、旧来のグラム陰性抗細菌薬品の医薬品および細菌学の分類であり、これは、タンパク質合成を阻害し、分子の一部としてアミノ改変グリコシドを含む。例えば、アミノグリコシドとしては、G418、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシンおよびネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。それは一般に、アミノグリコシドの従来の濃度(すなわち、用量)の投与が、患者の大きなパーセンテージにおいて副作用を生じることが公知である。このような副作用としては、聴覚、腎臓および前庭に関連する系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
用語「有効量」とは、本明細書で使用される場合、臨床上有益な結果(すなわち、例えば、症状の低減)を達成する治療剤を含む薬学的組成物の特定の量に言及する。このような組成物の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死的な用量)およびED50(集団のうちの50%において治療上有効な用量)を決定するための薬学的手順によって、決定され得る。毒性効果と治療的効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、比 LD50/ED50として表され得る。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養物アッセイおよびさらなる動物試験から得られるデータは、ヒトでの使用のための投与量の範囲を製剤化するにあたって使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。上記投与量は、使用される投与形態、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変動する。
【0020】
用語「症状」とは、本明細書で使用される場合、患者によって観察される疾患または身体的障害の任意の主観的もしくは客観的な証拠に言及する。例えば、主観的証拠は通常、患者の自己申告に基づき、疼痛、頭痛、視覚障害、悪心および/または嘔吐が挙げられ得るが、これらに限定されない。あるいは、客観的証拠は通常、体温、全血球計算、脂質パネル、甲状腺パネル、血圧、心拍数、心電図、組織および/または身体画像化スキャンが挙げられるが、これらに限定されない医療検査の結果である。
【0021】
用語「と関連する(associated with)」とは、本明細書で使用される場合、遺伝的変異と医学的状態もしくは疾患との間の当該分野で受容されている原因となる関係性に言及する、例えば、未成熟終止コドンを生じる変異を含むCTFR遺伝子を有する患者が、嚢胞性線維症を有するかまたはそのリスクにあることは、当該分野で受容されている。
【0022】
用語「疾患(disease)」または「医学的状態(medical condition)」とは、本明細書で使用される場合、生命機能の発揮を妨げるかまたは改変する、生きている動物もしくは植物体またはその部分のうちの1つの正常な状態の任意の障害に言及する。代表的には、特徴のある徴候および症状によって現れるが、それは、通常は、以下に対する応答である: i)環境要因(栄養不良、工業災害、または気候としての); ii)特異的な感染性因子(蠕虫、細菌、またはウイルスとして); iii)生物の固有の欠陥(遺伝的異常として);および/またはiv)これらの要因の組み合わせ。
【0023】
用語「低減する(reduce)」、「阻害する(inhibit)」、「減少させる(diminish)」、「抑制する(suppress)」、「減少させる(decrease)」、「防止する(prevent)」および文法上の等価物(「より低い(lower)」、「より小さい(smaller)」などを含む)は、処置された被験体と比較して処置されていない被験体における任意の症状の表現に言及する場合、その処置された被験体における症状の量および/もしくは大きさが、任意の医学的に訓練された職員によって臨床上直接関連すると認識される任意の量だけ、その処置されていない被験体におけるものより低いことを意味する。1つの実施形態において、その処置された被験体における症状の量および/または大きさは、その処置されていない被験体における症状の量および/または大きさよりも、少なくとも10%低い、少なくとも25%低い、少なくとも50%低い、少なくとも75%低い、および/または少なくとも90%低い。
【0024】
用語「投与される(administered)」または「投与する(administering)とは、本明細書で使用される場合、患者に組成物を提供し、その結果、その組成物がその患者に対してその意図した効果を有するようにする任意の方法に言及する。例示的な投与方法は、局所組織投与(すなわち、例えば、血管外配置)、経口摂取、経皮パッチ、局所的、吸入、坐剤などのような直接的機序によるものである。
【0025】
用語「患者」または「被験体」とは、本明細書で使用される場合、ヒトまたは動物であり、入院している必要はない。例えば、外来患者、療養施設にいる個人は、「患者」である。患者は、任意の年齢のヒトまたは非ヒト動物を含み得るので、成体および若年者(すなわち、小児)の両方を包含する。用語「患者」が医学的処置の必要性を含意することは意図されないので、患者は、自発的でも自発的でなくても、臨床的であろうと基礎科学研究の支援であろうと、実験に参加し得る。
【0026】
用語「タンパク質」とは、本明細書で使用される場合、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸残基からなり、元素、炭素、水素、窒素、酸素、通常は硫黄を含む、多くの天然に存在する極めて複雑な物質のうちのいずれかに(酵素または抗体として)言及する。一般に、タンパク質は、数百以内のオーダーのアミノ酸を含む。
【0027】
用語「ペプチド」とは、本明細書で使用される場合、1つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシル基とを結合することによって、2またはこれより多くのアミノ酸から得られる種々のアミドのうちのいずれかに言及し、通常は、タンパク質の部分的加水分解によって得られる。一般に、ペプチドは、数十のオーダーのアミノ酸を含む。
【0028】
用語「ポリペプチド」とは、1つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシル基とを結合することによって、2またはこれより多くのアミノ酸から得られる種々のアミドのうちのいずれかに言及し、通常は、タンパク質の部分的加水分解によって得られる。一般に、ペプチドは、数十またはこれより多くのオーダーのアミノ酸を含む。
【0029】
用語「薬学的に(pharmaceutically)」または「薬学的に受容可能な(pharmacologically acceptable)」とは、本明細書で使用される場合、動物またはヒトに投与される場合に、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を生じない分子実体および組成物に言及する。
【0030】
用語「薬学的に受容可能なキャリア(pharmacologically acceptable carrier)」とは、本明細書で使用される場合、任意のおよび全ての溶媒、または分散媒を含み、これらとしては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、ならびに植物油、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤、リポソーム、市販の洗浄剤などが挙げられるが、これらに限定されない。補助的な成体活性成分はまた、このようなキャリアに組み込まれ得る。
【0031】
「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」とは、本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびこれらのフラグメントもしくは一部、ならびに1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよく、センス鎖もしくはアンチセンス鎖を表し得るゲノム起源もしくは合成起源の、DNAもしくはRNAまたはそれらの改変されたアナログに言及する。
【0032】
用語「改変された核酸」とは、本明細書で使用される場合、改変された骨格、糖、核酸塩基、または新規な塩基もしくは塩基対を有する任意の核酸分子をいう。
【0033】
用語「単離された核酸」とは、本明細書で使用される場合、その天然の状態から取り出されている(例えば、細胞から取り出されている、および好ましい実施形態では、他のゲノム核酸を含まない)任意の核酸分子をいう。
【0034】
用語「アミノ酸配列」および「ポリペプチド配列」とは、本明細書で使用される場合、交換可能であり、アミノ酸の配列に言及する。
【0035】
「用語「部分、一部(portion)」とは、ヌクレオチド配列への言及において使用される場合、そのヌクレオチド配列のフラグメントに言及する。そのフラグメントは、5ヌクレオチド残基からヌクレオチド配列全体から1核酸残基を引いたものまでのサイズの範囲に及び得る。アミノ酸配列への言及において使用される場合には、そのアミノ酸配列のフラグメントに言及する。そのフラグメントは、2アミノ酸残基からアミノ酸配列全体から1アミノ酸残基を引いたものまでのサイズの範囲に及び得る。
【0036】
用語「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」とは、本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそのフラグメントまたは一部、ならびに1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよく、センス鎖もしくはアンチセンス鎖を表し得るゲノム起源もしくは合成起源の、DNAもしくはRNAに言及する。
【0037】
用語「単離された核酸」とは、本明細書で使用される場合、その天然の状態から取り出されている(例えば、細胞から取り出されている、および好ましい実施形態では、他のゲノム核酸を含まない)任意の核酸分子をいう。
【0038】
用語「アミノ酸配列」および「ポリペプチド配列」とは、本明細書で使用される場合、交換可能であり、アミノ酸の配列に言及する。
【0039】
「用語「部分、一部」とは、アミノ酸配列への言及において使用される場合、そのアミノ酸配列のフラグメントに言及する。そのフラグメントは、2アミノ酸残基からアミノ酸配列全体から1アミノ酸残基を引いたものまでのサイズの範囲に及び得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アンチセンス」とは、特定のRNA配列(例えば、mRNA)に相補的である核酸配列への言及において使用される。アンチセンスRNAは、コード鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターに対して逆配向で目的の遺伝子をスプライシングすることによる合成を含む任意の方法によって生成され得る。細胞にいったん導入されると、この転写された鎖は、細胞によって生成された天然のmRNAと組み合わさって、二重鎖を形成する。次いで、これらの二重鎖は、上記mRNAのさらなる転写またはその翻訳のいずれかを遮断する。このようにして、変異表現型が生成され得る。用語「アンチセンス鎖」とは、「センス」鎖に相補的な核酸鎖への言及において使用される。呼称(-)(すなわち、「マイナス(negative)」)は、ときおり、アンチセンス鎖への言及において使用され、呼称(+)は、ときおり、センス(すなわち、「プラス(positive)」)鎖への言及において使用される。
【0041】
用語「機能的に等価なコドン」とは、本明細書で使用される場合、同じアミノ酸をコードする異なるコドンに言及する。この現象はしばしば、遺伝コードの「縮重」といわれる。例えば、6つの異なるコドンが、アミノ酸アルギニンをコードする。
【0042】
タンパク質の「改変体」は、ポリペプチド配列またはこのポリペプチド配列の任意のホモログから1またはこれより多くのアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列として定義される。改変体は、置換されたアミノ酸が類似の構造的もしくは化学的特性を有する、「保存的」変化(例えば、イソロイシンでのロイシンの置換)を有し得る。より希なことではあるが、改変体は、「非保存的」変化(例えば、トリプトファンでのグリシンの置換)を有し得る。同様のマイナーなバリエーションはまた、アミノ酸欠失もしくは挿入(すなわち、付加)、または両方を含み得る。生物学的または免疫学的活性を消滅させることなく、どのアミノ酸残基およびどのくらい多くのアミノ酸残基が置換、挿入または欠失され得るかを決定することにおけるガイダンスは、DNAStar(登録商標)ソフトウェアが挙げられるが、これらに限定されないコンピュータープログラムを使用して見出され得る。
【0043】
ヌクレオチドの「改変体」は、欠失、挿入および置換を有することによって、参照オリゴヌクレオチドとは異なる新規なヌクレオチド配列として定義される。これらは、種々の方法(例えば、配列決定、ハイブリダイゼーションアッセイなど)を使用して検出され得る。
【0044】
「欠失」は、1個もしくはこれより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸残基がそれぞれ存在しない、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のいずれかにおける変化として定義される。
【0045】
「挿入」または「付加」は、1個もしくはこれより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸残基の付加をもたらすヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化である。
【0046】
「置換」とは、1個もしくはこれより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸の、それぞれ、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸による置き換えから生じる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」または「相補性」とは、塩基対合規則によって関連する「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」(これらは、ヌクレオチドの配列に言及する交換可能な用語である)への言及において使用される。例えば、配列「C-A-G-T」は、配列「G-T-C-A」に相補的である。相補性は、「部分的(partial)」または「全体的(total)」であり得る。「部分的」相補性は、1個またはこれより多くの核酸塩基が塩基対合規則に従ってマッチしていない場合がある。核酸間の「全体的」または「完全」な相補性は、各々および全ての核酸塩基が塩基対合規則の下で別の塩基とマッチしている場合がある。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強度に対して顕著な影響を有する。これは、増幅反応、ならびに核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0048】
用語「相同性(homology)」および「相同な(homologous)」とは、ヌクレオチド配列への言及において本明細書で使用される場合、他のヌクレオチド配列との相補性の程度に言及する。部分的相同性または完全な相同性(すなわち、同一性)があり得る。核酸配列と部分的に相補的、すなわち、「実質的に相同」であるヌクレオチド配列は、完全に相補的な配列が標的核酸配列にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する配列である。標的配列に対する完全に相補的な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ(サザンブロットまたはノーザンブロット、液相ハイブリダイゼーション(solution hybridization)など)を使用して試験され得る。実質的に相同な配列またはプローブは、低ストリンジェンシーの条件下での標的配列への完全に相同な配列の結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)に競合するかまたは阻害する。これは、低ストリンジェンシーの条件が、非特異的結合が許容されるようなものであることを意味しているのではない;低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が、特異的(すなわち、選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は、部分的な相補性の程度(例えば、約30%の同一性より低い)すら欠いている第2の標的配列の使用によって試験され得る;非特異的結合の非存在下では、プローブは、第2の非相補的標的にハイブリダイズしない。
【0049】
用語「相同性」および「相同な」とは、アミノ酸配列への言及において本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列間の一次構造の同一性の程度に言及する。このような同一性の程度は、各アミノ酸配列の一部、またはアミノ酸配列の全長に関し得る。「実質的に相同」である2またはこれより多くのアミノ酸配列は、少なくとも50%の同一性、好ましくは少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも85%の同一性、最も好ましくは少なくとも95%の同一性、または100%の同一性を有し得る。
【0050】
「ホモログ」であるオリゴヌクレオチド配列は、100bpまたはこれより大きい長さを有する配列が比較される場合に、配列に対して50%より大きいまたはこれに等しい同一性を示すオリゴヌクレオチド配列として、本明細書で定義される。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズされる」または「ハイブリダイズする」とは、核酸の鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合して、ハイブリダイゼーション複合体を形成する任意のプロセスを使用して、相補的核酸の対合への言及において使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸の間の会合の強度)は、核酸の間の相補性の程度、関わる条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドのT、および核酸内のG:C比のような要因によって影響を受ける。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ハイブリダイゼーション複合体」とは、相補的なG塩基とC塩基との間での、および相補的なA塩基とT塩基との間での水素結合の形成によって2つの核酸配列間で形成される複合体に言及する;これらの水素結合は、塩基スタッキング相互作用によってさらに安定化され得る。その2つの相補的な核酸配列は、アンチパラレル構成において水素結合する。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中で(例えば、C tまたはR t分析)、あるいは溶液中に存在する1つの核酸配列と、固体支持体(例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、ドットブロッティングにおいて使用されるようなナイロン膜もしくはニトロセルロースフィルター、またはFISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)を含むインサイチュハイブリダイゼーションにおいて使用されるようなガラススライド)に固定化された別の核酸配列との間で形成され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「T」とは、「融解温度」への言及において使用される。融解温度は、2本鎖核酸分子の集団が1本鎖へと半分解離された状態になる温度である。標準的な参考文献によって示されるように、T値の単純な推定は、核酸が1M NaClの水性溶液中にある場合に、式: T=81.5+0.41(% G+C)によって計算され得る。Andersonら, 「Quantitative Filter Hybridization」 In: Nucleic Acid Hybridization(1985)。より洗練された計算は、構造的特性および配列特性をTの計算に考慮に入れる。
【0054】
用語「DNAオリゴマー」とは、「5’末端」および「3’末端」を有すると述べられる。なぜならモノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’ホスフェートがその隣のものの3’酸素に、ホスホジエステル連結を介して1方向に結合されるような様式において、オリゴヌクレオチドを作製するために反応させられるからである。従って、オリゴヌクレオチドの末端は、その5’ホスフェートがモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されない場合、「5’末端」といわれる。オリゴヌクレオチドの末端は、3’酸素が別のモノヌクレオチドペントース環の5’ホスフェートに連結されない場合、「3’末端」といわれる。本明細書で使用される場合、核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にあるとしても、5’末端および3’末端を有するとも述べられ得る。直線状または環状DNA分子のいずれにおいても、別々のエレメントが、「下流」または3’エレメントの「上流」または5’側にあるといわれる。この用語法は、DNA鎖に沿って5’側から3’側への様式で転写が進むという事実を反映する。連結された遺伝子の転写を誘導するプロモーターおよびエンハンサーエレメントは概して、コード領域の5’側または上流に位置する。しかし、エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントおよびコード領域の3’側に位置する場合すら、それらの効果を発揮し得る。転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルは、コード領域の3’側および下流に位置する。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」は、遺伝子のコード領域、すなわち、遺伝子生成物をコードする核酸配列を含む核酸配列を意味する。コード領域は、cDNA、ゲノムDNAまたはRNA形態において存在し得る。DNA形態において存在する場合、オリゴヌクレオチドは、1本鎖(すなわち、センス鎖)であってもよいし、2本鎖であってもよい。適切な制御エレメント(例えば、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなど)は、転写の適切な開始および/または一次RNA転写物の正確なプロセシングを可能にするために必要な場合に、遺伝子のコード領域の直ぐ近くに配置され得る。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は、内因性エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナルなど、または内因性制御エレメントおよび外因性制御エレメント両方の組み合わせを含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「をコードする核酸分子」、「をコードするRNA配列」、「をコードするDNA配列」および「をコードするDNA」とは、(デオキシ)リボ核酸の鎖に沿った(デオキシ)リボヌクレオチドの順序または配列に言及する。これら(デオキシ)リボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。DNA配列およびRNA配列は、このようにして、アミノ酸配列をコードする。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「コード領域」または「オープンリーディングフレーム(ORF)」とは、構造遺伝子への言及において使用される場合、mRNA分子の翻訳の結果として新生ポリペプチドにおいて見出されるアミノ酸をコードするヌクレオチド配列に言及する。コード領域は、真核生物において、イニシエーターであるメチオニンをコードするヌクレオチド三つ組「ATG」によって5’側で、および終止コドンを特定する3種の三つ組(すなわち、TAA、TAG、TGA)のうちの1つによって3’側で境界を定められる。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「構造遺伝子」とは、RNAまたはタンパク質をコードするDNA配列に言及する。対照的に、「調節遺伝子」とは、他の遺伝子の発現を制御する生成物(例えば、転写因子)をコードする構造遺伝子である。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」とは、構造遺伝子のコード領域を含み、その遺伝子が全長mRNAの長さに相当するように、いずれかの末端上に約1kbの距離で5’末端および3’末端の両方に接しているコード領域に隣接して位置する配列を含むデオキシリボヌクレオチド配列を意味する。コード領域の5’側に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列といわれる。コード領域の3側または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列といわれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」といわれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、ヘテロ核RNA(hnRNA)へと転写される遺伝子のセグメントである;イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去または「スプライスアウト(spliced out)」される;イントロンは、従って、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物中に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を特定するために翻訳の間に機能する。
【0060】
イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形態はまた、RNA転写物上に存在する配列の5’末端および3’末端の両方に位置する配列を含み得る。これらの配列は、「隣接(flanking)」配列または領域といわれる(これらの隣接配列は、mRNA転写物上に存在する非翻訳配列に対して5’側または3’側に位置する)。その5’隣接領域は、遺伝子の転写を制御するまたはそれに影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーのような調節配列を含み得る。3’隣接領域は、転写の終結、転写後切断およびポリアデニル化を誘導する配列を含み得る。
【0061】
用語「結合する」とは、本明細書で使用される場合、任意の物理的結合(physical attachment)または近接した会合(close association)を含み、これは、恒久的であっても一時的であってもよい。一般に、水素結合、疎水性力、ファン・デル・ワールス力、共有結合およびイオン性結合などの相互作用は、目的の分子と測定されている分析物との間の物理的結合を促進する。「結合」相互作用は、結合が化学反応を起こさせる状況にあるような短時間のものであり得る。それは、結合構成要素が酵素であり、分析物がその酵素の基質である場合に代表的である。結合因子と分析物との間の接触から生じる反応はまた、本発明の目的のための結合の定義の範囲内にある。
【0062】
用語「結合部位」とは、本明細書で使用される場合、物理的結合または近接した会合を結合構成要素とともに受ける特定の三次構造および/または四次構造を有する任意の分子配置に言及する。例えば、上記分子配置は、アミノ酸の配列を含み得る。あるいは、上記分子配置は、核酸の配列を含み得る。さらに、上記分子配置は、脂質二重層または他の生物学的物質を含み得る。
【0063】
図面の簡単な説明
本特許のファイルは、カラーで作成された少なくとも1枚の図面を含む。カラー図面付きのこの特許の写しは、請求し、必要な料金を支払えば、特許商標庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、本発明を記載するために使用されるものと、Karら, 「Induction of Translational Readthrough across the Thalassemia-Causing Premature Stop Codon in β-Globin-Encoding mRNA” Biochemistry 59(1):80-84(2020; 2019年10月2日オンライン)に開示されるものとの間での異なるヌクレオチド登録命名法の説明を示す。
図2図2は、未成熟(ナンセンス)終止コドンまたは天然の(野生型)終止コドンのいずれかを有するmRNA分子(黒)からの仮想タンパク質の翻訳の例示を示す。 図2A: 短縮化したタンパク質(青色、左)は、未成熟終止コドン(赤色、左)において生成される。全長タンパク質(青色、右)は、天然の終止コドン(青色、左)において生成される。 図2B: 未成熟終止コドン(赤色、左)または天然の終止コドン(赤色、右)のいずれかを認識して結合する終結因子(緑色)の図示。終結因子は、終止コドンをリボソーム(灰色)へと立体的に「引き込」み、それによって、翻訳されたタンパク質(青色)を放出する。 図2C: リボソーム(灰色)上の終結因子(緑色)の立体的「引き込み」またはこの因子との他の相互作用に干渉し、それによって、完全なmRNAのリードスルーおよび全長タンパク質の翻訳を可能にする未成熟終止コドン(赤色、左)の下流に配置された部位特異的アンチセンスDNAまたは改変されたオリゴ(黄緑色)の図示。
図3図3は、ウサギ網状赤血球ルシフェラーゼmRNA翻訳アッセイを図示する。 図3A: 終止コドン(赤色)を有するルシフェラーゼmRNA分子(黒色)の、発光する全長ルシフェラーゼタンパク質(青色)(矢印)への翻訳を示す段階的図示。 図3B: ルシフェラーゼmRNA翻訳の間の光度(例えば、相対発光量(RLUs))の例示的データ。左パネル:時間(例えば、秒)の関数としての光度パターン。中央パネル:経時的な光度変動によって示されるルシフェラーゼ翻訳の速度。右パネル:経時的な光度変動によって示されるルシフェラーゼ翻訳の最大の達成可能な速度を示す。
図4図4は、CAN1アルギニンパーミアーゼ遺伝子/ルシフェラーゼ発現構築物(Can1-luc)の1つの実施形態を示す。上パネル:未成熟終止コドンおよびCan1オープンリーディングフレームおよび天然の末端終止コドンを有するルシフェラーゼ遺伝子の相対的位置を示す構築物の模式図。下パネル:TGA未成熟終止コドンを有するCan1-luc構築物のデオキシリボ核酸配列および上記未成熟終止コドンの下流の+8ヌクレオチド位置においてCan1-luc構築物にハイブリダイズしたデオキシリボ核酸オリゴ。
図5図5は、上記未成熟終止コドンの下流の+8ヌクレオチド位置においてハイブリダイズしたDNAオリゴを有するCAN1-luc発現構築物未成熟終止コドンのリードスルーを示す例示的データを示す。
図6図6は、嚢胞線維症遺伝子/ナノルシフェラーゼ発現構築物(511-565 CFTR)の1つの実施形態を示す。上パネル:嚢胞性線維症オープンリーディングフレーム(CFTR)内の未成熟終止コドン(UGAGまたはUGAC)および天然の末端終止コドンを有するルシフェラーゼ遺伝子の相対的位置を示す構築物の模式図。下パネル: TGA未成熟終止コドンを有するCFTR構築物のデオキシリボ核酸配列および上記未成熟終止コドンの下流の+8ヌクレオチド位置においてCFTR構築物にハイブリダイズしたデオキシリボ核酸オリゴ。
図7図7は、上記未成熟終止コドンの下流の種々のヌクレオチド位置に標的化され、異なる融解温度をも有するDNAオリゴの存在下でのCFTR未成熟終止コドン(UGAC)構築物発現のリードスルー分析を示す例示的データを示す。
図8図8は、511-565CFTR構築物発現に対するアミノグリコシドG418の効果を示す例示的データを示す。G418の濃度の増大は、未成熟終止コドン構築物(UGAG、UGAC)の発現を増大させると同時に、未成熟終止コドン(GGAG)なしの野生型構築物の発現を減少させる。
図9図9は、未成熟終止コドンのCFTR DNA構築物発現リードスルーに対する+8(66)DNAオリゴおよびアミノグリコシドG418の相乗効果を示す例示的データを示す。G418との組み合わせでの+8オリゴが、アミノグリコシドの有効濃度を減少させることがまた、示される。
図10図10は、未成熟終止コドンのCFTR DNA構築物発現リードスルーに対する+8(47) DNAオリゴおよびアミノグリコシドG418の相乗効果を示す例示的データを示す。
図11図11は、ナノルシフェラーゼ活性と発現されたタンパク質レベルとを相関させて、本明細書で企図されるとおりのオリゴ構築物によるリードスルー促進を検証する例示的データを示す。
図12-1】図12は、翻訳終止工程の喪失を特定して、リードスルーを促進するためのルシフェラーゼベースのアッセイ(TermiLuc, Susorov, 2020)の模式図を提供する。 図12A: Termi-Lucアッセイの模式図。 図12B: 真核生物終結複合体の一例。
図12-2】同上。
図13図13は、リードスルー促進オリゴ +7および+8が、Termi-Lucアッセイにおいて配列特異的様式で終結を阻害することを示す例示的データを示す。
図14図14は、2’-フッ化物置換を有する改変されたオリゴの例証的構造を示す。
図15図15は、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)アッセイを使用するフッ化物改変されたオリゴでのリードスルー促進を示す例示的データを示す。
図16図16は、 G418および改変されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせによって、用量依存様式においてCFTRナンセンスコドンリードスルーの促進を示す例示的データを示す。O=改変されたオリゴ; G=全長タンパク質発現から生じる化学発光を測定するためにHRPと融合された、未成熟終止コドンG542Xを有するCFTRを発現する細胞の培養物中のG418。
図17図17は、全長Mecp2遺伝子/ナノルシフェラーゼ発現構築物の1つの実施形態を示す。 図17A:全長Mecp2オープンリーディングフレーム内の未成熟終止コドンおよび天然の末端終止コドンを有するルシフェラーゼ遺伝子の相対的位置を示す構築物の模式図。 図17B:レット症候群の原因である4つの未成熟終止コドンに関するリードスルー効率に対する+8 DNAオリゴの効果を示す例示的データ。
図18-1】図18A~Dは、TOPOクローニング(例えば、アレル排除)法を使用するPCRアンプリコンの次世代バルクシーケンシング結果を示す例示的データを示す。
図18-2】同上。
図19-1】図19A~Fは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応およびウェスタンブロットの両方を使用する遺伝子発現の分析を示す例示的データを示す。
図19-2】同上。
図19-3】同上。
図20-1】図20A~Cは、フィルター播種後1週間で行ったTECC/24コンダクタンスアッセイの例示的データを示す。
図20-2】同上。
図21図21A~Bは、CFF-16HBEge細胞株の経上皮電気抵抗(transepithelial resistance)の例示的データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明の詳細な説明
本発明は、遺伝子操作の分野に関する。特に、本発明は、ナンセンス終止コドンを有するmRNAからの非機能的タンパク質の翻訳によって引き起こされる遺伝に基づく疾患および障害を処置する組成物および方法に関する。例えば、未成熟mRNA終止(ナンセンス)コドンの翻訳リードスルーを促進するDNAおよび改変された核酸(NA)オリゴマーが、企図される。ナンセンスコドンリードスルーは、全長タンパク質を生じ、タンパク質機能を回復させる。例えば、未成熟mRNA終止コドンの最初のヌクレオチド(+1、図1を参照のこと)から下流の+4~+8ヌクレオチド位置(すなわち、+4、+5、+6、+7、+8位置)で開始して結合するDNAオリゴマーは、リードスルーを成功裡に促進した。
【0066】
1つの実施形態において、本発明は、未成熟ナンセンスまたは終止コドンによって引き起こされる遺伝的障害を処置する方法を企図する。1つの実施形態において、上記遺伝的障害としては、嚢胞性線維症(CF)またはレット症候群が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上記ナンセンスまたは終止コドンは、X-終止コドンである。1つの実施形態において、上記X-終止コドンは、G542Xである。1つの実施形態において、上記X-終止は、R255X(Rett)である。1つの実施形態において、上記X-終止は、R270X(Rett)である。1つの実施形態において、上記X-終止は、R294X(Rett)である。
【0067】
II.従来の終止コドンリードスルー方法
未成熟終止コドンをリードスルーし、全長タンパク質翻訳を回復させる治療剤を特定するために、多くの努力がなされてきた。低分子(例えば、アミノグリコシド抗生物質)は、mRNAの体系的ミスコードを生じ、治療的価値は制限されている。それらはまた、変異体mRNAに伴う終止コドンリードスルーを生じるが、細胞mRNAの広いミスコードは、このような分子を毒性にし、概して不十分な治療剤にしている。Dabrowskiら. 「Advances in therapeutic use of a drug-stimulated translational readthrough of premature termination codons」 Mol Med 24(2018);およびKeelingら, 「Therapeutics Based on Stop Codon Readthrough」. Annu Rev Genomics Hum Genet.(2014)。
【0068】
アミノグリコシドの主要な報告された有害効果は、聴器毒性、腎毒性、および神経筋遮断である。Aventら, 「Current use of aminoglycosides: indications, pharmacokinetics and monitoring for toxicity” Intern Med J. 41(6):441-449(2011)。アミノグリコシドの従来の投与は、通常、8時間ごとに分けて静脈内/筋肉内(IV/IM)に与えられる約3~5mg/kg/日である。長期投与間隔は、1日1回、4~7mg/kg/用量 IVにおいて約24時間ごとまたはこれより長い間隔である。
【0069】
アミノグリコシド抗生物質は、嚢胞性線維症(CF)の肺の増悪の従来処置として使用され、最終的には大部分の患者の死亡を引き起こす肺機能の低下を遅らせる。CFの予後は改善されており、従って、処置の副作用は、ますます重要になっている。Prayleら, 「Side effects of aminoglycosides on the kidney, ear and balance in cystic fibrosis」 Thorax 65(7):654-658(2010)。
【0070】
観察研究は、アミノグリコシドの副作用による罹患率が不安になるほどに一般的であり、積極的な処置がより多くの副作用をもたらし得ることを示唆する。アミノグリコシドの1つの一般的副作用は、腎毒性である。毒性の定義は研究によって変動するが、アミノグリコシドを受容している(非CF)成人患者のうちのおよそ5~10%は、血清クレアチニンの顕著な増大を有する。Meyer RD., 「Risk factors and comparisons of clinical nephrotoxicity of aminoglycosides」 Am J Med 80:119-125(1986)。
【0071】
毒性はアミノグリコシドクラスの効果であるが、実験データは、ゲンタマイシンがトブラマイシンおよびアミカシンより毒性であることを示唆している。De Broeら, 「Choice of drug and dosage regimen. Two important risk factors for aminoglycoside nephrotoxicity」 Am J Med 80:115-118(1986)。無作為化比較試験(RCT)の定量的概要は、広くは同じ結論に達した。Buringら, 「Randomized trials of aminoglycoside antibiotics: quantitative overview」 Rev Infect Dis 10:951-7(1988)。
【0072】
アミノグリコシド投与レジメンの操作は、腎傷害を低減する費用効果的で単純な方法を提供する。アミノグリコシドの飽和性取り込み(saturable uptake)を考慮すると、毎日1回の用量が、同じ1日用量を3回分割用量にするより腎毒性が少ないと予測されることが報告された。例えば、CFを有する患者に関するトブラマイシンの大きな無作為化試験は、1日1回投与レジメンを用いても、多数回での1日投与レジメンを用いるのと等しい有効性があることが確立され、この所見は、その後のメタ分析においても確認されている。1日1回用量を受容する小児群では、血清クレアチニンレベルは、3回分割用量を受容している群における上昇と比較して、処置過程の間に減少した。腎臓の安全性をさらに裏付けて、1日1回のアームでは、NAGの上昇は、成人および小児の両方において、1日に3回のレジメンを受容する群におけるものより33%低かった。Smythら, 「Once versus three-times daily regimens of tobramycin treatment for pulmonary exacerbations of cystic fibrosis-the TOPIC study: a randomised controlled trial」 Lancet 365:573-578(2008);およびSmythら, 「Once-daily versus multiple-daily dosing with intravenous aminoglycosides for cystic fibrosis」 Cochrane Database Syst Rev 2006;(3):CD002009。アミノグリコシドの薬物動態は、排出の概日リズムによって複雑にされる。1日に1回の群では、彼らの大部分は夜に抗生物質を受容しており、1日に3回の群におけるよりトブラマイシンの排出速度は低かった。Touwら, 「Population pharmacokinetics of tobramycin administered thrice daily and once daily in children and adults with cystic fibrosis」 J Cyst Fibros 6:327-333(2007)。薬物の腎クリアランスには日ごとの変動があり、夜にクリアランスの低下が起こる可能性がある。これは、薬物が、朝と比較して、夜に投与された場合、病気の過程の間のアミノグリコシドへの腎臓の露出の増大をもたらす。
【0073】
多くの試験の選択から、CF患者における純音聴力検査(PTA)によって測定される場合の聴覚毒性が報告される。例えば、CFクリニックから募集した70名の患者の試験によれば、>20 dBまたは片方が>25 dBという2つ以上の閾値の定義を使用すると、彼らは、アミノグリコシドを投与した場合に、17%という聴覚障害の全体的な有病率が見出された。Mulheranら, 「Occurrence and risk of cochleotoxicity in cystic fibrosis patients receiving repeated high-dose aminoglycoside therapy」 Antimicrob Agents Chemother 45:2502-2509(2001)。
【0074】
人工的に導入された未成熟終止コドン「UAG」の下流の+1または+9ヌクレオチドにおいてβ-グロビンmRNAに相補的なDNAオリゴヌクレオチドが、細胞において翻訳リードスルーを誘導し得ることが報告されている。Karら, 「Induction of Translational Readthrough across the Thalassemia-Causing Premature Stop Codon in β-Globin-Encoding mRNA」 Biochemistry 59(1):80-84(2020; 2019年10月2日オンライン)。しかし、これらのDNAオリゴヌクレオチドは、任意の公知の遺伝的障害のための有効な治療剤であるとは示されていない。
【0075】
KarらのDNAオリゴ開始位置命名システムが、本発明において使用されるものとは異なり、Karらによって使用されるDNAオリゴ位置がCFTRおよびMecp2に適用されないことは注記されるべきである。特に、Karの+1および+9位置は、本明細書で示される場合の+4および+12位置に(それぞれ)相当する(図1を参照のこと)。結論として、未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+5~+8ヌクレオチド位置において開始するmRNA配列に相補的なDNAオリゴは、以前に報告されていない。特に、未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチド位置におけるCFTRおよびMecp2に相補的なオリゴヌクレオチドは、以前に報告されていない。例えば、ナンセンスコドンの最初のヌクレオチドのさらに下流に(例えば、位置+9、+12)配置されたヌクレオチドは、CFTRのリードスルーを促進しなかった。
【0076】
II.ナンセンスコドン関連タンパク質放出因子
1つの実施形態において、本発明は、最小限のオフターゲット副作用をもたらす未成熟終止(ナンセンス)コドンの効率的mRNA特異的リードスルーを誘導する組成物および方法を企図する。本発明の機序を理解する必要はないが、このようなアプローチは、終止コドンおよびセンスコドンの細胞認識間の構造的差異に依拠すると考えられる。
【0077】
例えば、終止コドンの細胞認識は、タンパク質放出因子(すなわち、真核生物におけるeRF1)によって媒介されると考えられる。認識は、eRF1タンパク質が終止コドンおよび以下のヌクレオチド(例えば、UGACまたはUAAA)においてmRNAヌクレオチド配列と相互作用する場所であるA-部位コドンにおいて起こる。一方で、三つ組のセンスコドンは、tRNAによって認識され、その場合、A-部位コドンの下流のmRNA配列は、次いで、リボソームmRNAトンネルを通り抜けて溶液の中へと出る。従って、eRF1認識タンパク質は、mRNAがA-部位コドンへと「引き込まれ」ることを必要とし、その一方でtRNAはそうではない。
【0078】
リボソームトンネルの次にmRNAと塩基対合するDNAオリゴヌクレオチドを、以下が可能であるか否かを決定するために試験した: i)mRNA移動性を制限する; ii)eRF1による終止コドン認識を非効率的にする;およびiii)tRNAによる終止コドンのミスリーディングを効率的にし、従って、リードスルーをもたらす、またはiv)異なる機序を介してリードスルーを促進するように作用する。
【0079】
III. +4~+8アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチド
1つの実施形態において、本発明は、ナンセンス終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8ヌクレオチドにおいてまたはその間でmRNAに結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴ)を企図する。
【0080】
本明細書で示されるデータは、未成熟終止コドンの下流のmRNA配列にアニールするDNAアンチセンスオリゴが翻訳リードスルーを促進することを実証する。驚くべきことに、DNAオリゴの最も効果的なアニーリング部位は、上記未成熟終止コドンの下流の+8位置で開始する。その場合、+1位置は、上記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドである。未成熟終止コドンに下流に配置された全てのDNAオリゴがリードスルーを促進するにあたって等しいわけではないことが観察された。位置+4および+7で開始してアニールするDNAオリゴでのリードスルーは、+8で開始するものでのリードスルーより低かったが、バックグラウンリードスルーより効率的であり、+4~+8の間で結合するアンチセンスオリゴの範囲を終止コドンの翻訳リードスルーの促進に対して感受性にした。
【0081】
未成熟終止コドンの周りで短縮化したタンパク質の翻訳リードスルーは、全長タンパク質のリードスルーとは異なり得る。例えば、終止コドンは、翻訳終結および短縮化したタンパク質のその後の放出の効率において異なることが公知である。例えば、UGAC未成熟終止コドンをもたらすナンセンス変異は、野生型UAAA終止コドン(例えば、強い終止コドンとして)より翻訳終結において遙かに効率が低い(例えば、弱い終止コドン)。なぜなら位置+4でのプリン(A、G)ヌクレオチドは、翻訳終結を、位置+4でのピリミジン(C、U)より効率的にするからである。従って、UGAC - 「弱い」終止コドン - は、「強い」UAAA終止コドンよりリードスルーが生じやすい。実際に、低分子を試験する大部分の研究は、UGAC終止コドンの最も効率的なリードスルーを報告するが、UAAAまたはUGAGは、リードスルーに完全に耐性であり得る。
【0082】
1つの実施形態において、本発明は、「弱い」未成熟終止コドンを有するmRNAおよび/または「強い」終止コドンを有するmRNAから、個々にまたはアミノグリコシドとの組み合わせでのいずれかで、効率的にリードスルーして機能的タンパク質を翻訳するアンチセンスオリゴヌクレオチドを企図する。そのデータは、未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+4~+8位置においてmRNAヌクレオチド配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、ナンセンス変異によって引き起こされる遺伝的疾患の有効な治療候補であることを示唆する。これらの所見は、アンチセンスオリゴまたは他の核酸配列(すなわち、RNA、LNAおよび他の改変)が、種々の疾患を引き起こす未成熟終止コドンを有するmRNAに結合し得ることから、異常なmRNAのDNA相補性が特異的であるが、多目的に使用できることを示す。
【0083】
いくつかの遺伝的疾患は、短縮化したタンパク質が翻訳および放出されることから、未成熟終止コドンを有するmRNA分子によって引き起こされる。対照的に、mRNA分子がその適切な位置において天然の(野生型)終止コドンを有する場合、全長タンパク質は翻訳および放出される。図2Aを参照のこと。翻訳終結タンパク質因子は、終止コドンに結合し、リボソームへと「引き込む」ように機能し、リボソームからのタンパク質の放出を生じ、さらなるmRNA翻訳を防止する。図2Bを参照のこと。未成熟終止コドンから下流に配置される部位特異的アンチセンスオリゴは、リボソームへの終止コドンの「引き込み」を防止し、従って、早期のタンパク質翻訳終結を阻害し、これは、未成熟終止コドンのリードスルーおよび全長タンパク質の翻訳をもたらす。図2Cを参照のこと。
【0084】
本明細書で示されるデータは、市販の細胞抽出物(すなわち、ウサギ網状赤血球溶解物)での翻訳アッセイを使用して集めた。図3Aおよび3Bを参照のこと。予備データから、RNA未成熟終止コドンから+8ヌクレオチド位置(+1位置は終止コドンのUに相当)に配置されたアンチセンスオリゴが、未成熟終止コドンを有する2つの異なるmRNA配列の優れたリードスルーを生じる一方で、他の下流の位置の配置がより効率的でないリードスルーを生じることが見出された。さらに、そのデータは、リードスルー効率が、上記アンチセンスオリゴと低濃度のアミノグリコシド(例えば、G418)との組み合わせによって実質的に増大し、それによって、機能的タンパク質翻訳の30~40%の回復を提供することを示す。
【0085】
本明細書で企図されるDNAアンチセンスオリゴを、未成熟終止コドンおよびルシフェラーゼ遺伝子を含むDNA発現構築物を使用して検証した。基本的方法論は、アルギニンパーミアーゼアミノ酸トランスポータータンパク質をコードするCAN1遺伝子発現構築物を使用した。上記CAN1発現構築物は、TAG未成熟終止コドンをCAN1オープンリーディングフレームの末端に、その後続いて、ルシフェラーゼオープンリーディングフレームを位置付ける。図4を参照のこと。次いで、5’-GCGCCGGGCCTTTCTTTATGTTTTTGGCGT-3’の核酸配列を有するDNAアンチセンスオリゴ+8(70)を、上記未成熟終止コドンの最初のヌクレオチドの下流の+8核酸位置に位置づけた。そのデータは、未成熟終止コドンの下流に位置づけた+8アンチセンスオリゴが、CAN1-luc DNA発現構築物において未成熟終止コドンのリードスルーを増大させることを示す。図5を参照のこと。
【0086】
IV.アンチセンスオリゴでの嚢胞性線維症の処置
1つの実施形態において、本発明は、嚢胞性線維症の処置において有用な複数の特異的+4~+8(例えば、+4、+5、+6、+7、+8)アンチセンスオリゴマーを企図する。
【0087】
嚢胞性線維症は、肺系および消化器系を損傷する遺伝性の生命を脅かす障害である。特に、嚢胞性線維症は、粘液、汗、および消化液を生成し、これらの流体を濃厚にかつ粘着性にする細胞に影響を及ぼす。嚢胞性線維症の原因因子は、約2.4%という集団頻度を有する遺伝子変異G542Xであると考えられる。
【0088】
1つの実施形態において、本発明は、改変された嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CFTR)デオキシリボ核酸(DNA)構築物を企図する。1つの実施形態において、上記改変されたCFTR DNA構築物は、未成熟TGA終止コドンを含むCFTRオープンリーディングフレームを含む。1つの実施形態において、上記TGA未成熟終止コドンは、G542X変異である。1つの実施形態において、上記改変されたCFTR DNA構築物は、ナノルシフェラーゼ遺伝子および天然の終止コドンをさらに含む。1つの実施形態において、上記改変されたCFTR mRNA構築物分子は、TGA未成熟終止コドンの下流の+8ヌクレオチド位置において1本鎖DNAアンチセンスオリゴにハイブリダイズされる。1つの実施形態において、上記DNAアンチセンスオリゴは、5’-CTCGTTGACCTCCACTCAGTGTGATTCCAC-3’である。図6を参照のこと。
【0089】
511-565 CFTR DNA発現ベクター構築物を、いくつかの異なるコドン構成において設計した: i)単一野生型センスコドン(「GGAG」)および引き続く野生型終止コドン; ii)G542X変異を含む未成熟終止コドン「TGAG」(例えば、強い終止コドン);およびiii)人工的なリードスルーを起こしやすい状況にするG542X変異を含む未成熟終止コドン「TGAC」(弱い終止コドン)。そのデータは、「TGAC」未成熟終止コドンを有するCFTR DNA発現ベクター構築物が、「TGAC」未成熟終止コドンの下流の+8ヌクレオチド位置においてハイブリダイズするDNAアンチセンスオリゴを提供することを示し、+4、+7、+9、+11および+14核酸の下流位置と比較して、顕著な翻訳リードスルーを示した。驚くべきことに、+8(32)、+8(34)、+8(47)および+8(66) DNAアンチセンスオリゴは、他の下流位置と比較して、4~5倍高いリードスルーを示した。にもかかわらず、位置+4および+7にハイブリダイズしたアンチセンスオリゴは、バックグラウンドリードスルーより革新的により高いリードスルーを示したのに対して、位置+9、+11および+14でハイブリダイズするオリゴは、リードスルーの低減を示した。図7を参照のこと。
【0090】
上記CFTR未成熟終止コドンDNA構築物発現リードスルー分析をまた、以下の構造を有するアミノグリコシドG418:
【化1】
を用いて行った。
そのデータは、G418が濃度依存様式において野生型センスコドン(GGAG)リードスルーを阻害することを示した。さらに、G418は、未成熟終止コドン(UGAGおよびUGAC)リードスルーを濃度依存様式で促進する。図8を参照のこと。
【0091】
アミノグリコシドは、いくつかの未成熟終止コドン関連疾患の臨床治療において使用されることから、DNAアンチセンスオリゴおよびG418を、相乗効果に関して評価した。そのデータは、+8(66)アンチセンスオリゴおよびG418の組み合わせが、G418または+8(66) DNAオリゴのいずれか単独と比較した場合に、CFTR DNA発現構築物を使用する未成熟終止コドンのリードスルーを5倍まで促進するという相乗効果を提供することを示す。図9を参照のこと。強いUGAG(患者変異状況)未成熟終止コドンは、UGAC未成熟終止コドンよりリードスルーが困難である。驚くべきことに、0.5μMおよび0.1μMのG418濃度は、弱い(UGAC)および強いUGAG両方の未成熟コドン(患者変異状況)の1μM G418濃度より顕著に高いリードスルー率を有した。G418および+8(47) DNAアンチセンスオリゴを組み合わせて使用する場合、CFTR UGAG mRNAで単独とは対照的に、類似の相乗効果的データを、観察した。図10を参照のこと。
【0092】
本開示のアンチセンスオリゴによって誘導されるこのmRNAリードスルーを、ナノルシフェラーゼ活性を発現されたタンパク質レベルと相関させることによって検証した。図11を参照のこと。これらのデータは、翻訳リードスルーが、増大したルシフェラーゼシグナルによって明らかにされるように、全長タンパク質の、比例して増大した量と相関することを示す。
【0093】
終止コドンの誘導されたオリゴ翻訳リードスルーの間の終結工程を、改変ルシフェラーゼアッセイ(例えば、Termiluc)で評価した。簡潔には、このアッセイは、eRF1真核生物終結タンパク質の存在下での光の出現の際に翻訳終結を特定する。図12Aおよび12Bを参照のこと。そのデータは、リードスルー促進因子オリゴヌクレオチドが、配列特異的様式においてインビボで翻訳終結を阻害することを示す。図13を参照のこと。
【0094】
翻訳の終結は、Termilucアッセイを使用して、アンチセンスオリゴ+7および+8で示されるとおりのタンパク質放出の阻害を伴った。図13を参照のこと。これらのデータは、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)アッセイにおいて得られたリードスルーデータと一致する。さらに、上記+9アンチセンスオリゴは、効率が最低であり、RRLデータとも一致した。
【0095】
これらのデータは、本明細書で企図されるとおりのアンチセンスオリゴが、翻訳終結工程に特異的に干渉し、それによって、短縮化したタンパク質の放出を低下させ、リボソームが翻訳を継続することを可能にすることを示唆する。本発明の機序を理解する必要はないが、本開示の終止コドンリードスルー技術は、特定のmRNAの特定の終止コドンに対する特異性を提供するためにプログラム可能であると考えられる。
【0096】
V.改変されたアンチセンスオリゴ
1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1個のリボース改変を含む+4~+8 アンチセンスオリゴマーリードスルー促進因子を企図する。1つの実施形態において、これらの改変としては、2’-フッ化物(F)改変、2’-O-メチル(Ome)改変およびホスホチオエート(PS)連結改変が挙げられるが、これらに限定されない。図14を参照のこと。例えば、+8(47) オリゴは、少なくとも1個の核酸がフッ化物で改変された(NA): i)1個の改変: TCCACTCAGTGTGATTCCAC; およびii)6個の改変: UCCACTCAGTGTGATTCCAC。本明細書で示されるデータは、これらの改変されたアンチセンスオリゴが、改善された安定性および/または効率で、ならびに哺乳動物細胞培養物においてRRLアッセイにおいてリードスルーを促進することを実証する。図15および図16を参照のこと。
【0097】
CFTR(G542X)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)融合タンパク質を発現するFischerラット甲状腺(FRT)細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS; Thermo Fisher Scientific, #26140-079)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific, #15140-122)、および100μg/mL ハイグロマイシンB(Thermo Fisher Scientific, #10687010)を有するHam’s F-12、Coon’s Modification(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, #F6636)緩衝液中、37℃および5% COにおいて培養した。次いで、これらのFRT細胞を、2×10 細胞/ウェルの密度でCostar 96ウェルプレート中に播種した。
【0098】
播種して24時間後、CFTR(G542X)を発現するFRT細胞を、異なる濃度のG418および/または以下の改変された8(47) アンチセンスオリゴ:
CCACTCAGTGTGATTCCAC
ありまたはなしで、さらに24時間インキュベートした。
【0099】
次いで、上記細胞を1×DPBSで3回洗浄し、続いて、SuperSignal West Femto HRP基質(15μL/ウェル、Thermo Fisher Scientific, #34096)で5分間、室温でインキュベートした後に、HRP発光アッセイを行った。上記HRPで触媒される発光を、以下の条件下で、Tecanマイクロプレートリーダーで読み取った: 室温; 振盪なし/遅延なし; 積分時間、0.1 s; 読み取りの高さ、8.00mm。そのデータは、G418および上記オリゴの組み合わせが、ナンセンスコドンリードスルーの用量応答関連の相乗効果を生じることを示す。図16を参照のこと。
【0100】
これらのデータは、化学的に改変されたオリゴが、G418とともに、CFTRの(G542X変異に伴う)疾患を引き起こす改変体を発現する細胞において未成熟終止コドンのリードスルーを改善することを示唆する。
【0101】
VI.アンチセンスオリゴでのレット症候群の処置
1つの実施形態において、本発明は、レット症候群の処置において有用な複数の特定の+4~+8(例えば、+4、+5、+6、+7、+8) アンチセンスオリゴマーを企図する。
【0102】
レット症候群は、主に女性において見出されている脳発達に影響を及ぼす稀少な遺伝子変異である。簡潔には、乳児は、生後6ヶ月の間は健常に見えるが、時間を経ると、協調、発話、および手の使用を急速に失う。それから、症状は、数年間安定することがある。治癒することはないが、薬物療法、理学療法、言語療法、および栄養サポートは、症状を管理する助けになり、合併症を防止し、クオリティー・オブ・ライフを改善する。近年では、未成熟終止コドンが関わると思われる遺伝的根拠が見出されている。
【0103】
機能不全の脳タンパク質、メチルシトシン結合タンパク質2(Mecp2)は、レット症候群の症状のうちの多くの原因であり得ると考えられている。MECP2遺伝子は、MeCP2と称されるタンパク質を作製するための指示を提供する。このタンパク質は、クロマチン(DNAを染色体へとパッケージングする、DNAおよびタンパク質の複合体)を改変することによって、遺伝子活性(発現)を調節する助けになる。そのMeCP2タンパク質は、身体全体の細胞に存在するが、それは特に、脳細胞において存在量が多い。
【0104】
脳では、上記MeCP2タンパク質は、神経細胞(ニューロン)を含め、細胞のいくつかのタイプの機能にとって重要である。上記タンパク質はおそらく、細胞間連絡が起こる場所であるニューロンの間で、接続(シナプス)を維持するにあたって役割を果たす。上記MeCP2タンパク質によって調節されることが公知である遺伝子のうちの多くは、正常な脳機能、特に、シナプスの維持において役割を果たす。
【0105】
当業者は、MeCP2タンパク質がまた、タンパク質を作製するための遺伝子の設計図として働くメッセンジャーRNA(mRNA)といわれる分子をプロセシングすることに関与し得ると考えている。mRNA分子を種々の方法で切断および再構成することによって、上記MeCP2タンパク質は、ある特定のタンパク質の種々のバージョンの生成を制御する。このプロセスは、選択的スプライシングとして公知である。脳では、タンパク質の選択的スプライシングは、ニューロン間の正常な連絡において役割を果たし、脳細胞の他のタイプの機能にとっても必要であり得る。
【0106】
レット症候群の大部分の症例は、メチルシトシン結合タンパク質2(Mecp2)遺伝子の変異によって引き起こされる。MECP2遺伝子は、X染色体に位置する。レット症候群を有する女児のうちの90%~95%は、MECP2遺伝子に変異を有する。Amirら, 「Rett syndrome is caused by mutations in X-linked MECP2」 Nature Genetics 23(2):185-188(1999); Schollenら, 「Gross rearrangements in the MECP2 gene in three patients with Rett syndrome: Implications for routine diagnosis of Rett syndrome」 Human Mutations 22:116-120(2003);およびZoghbi, H.Y. 「MeCP2 dysfunction in humans and mice」 Journal of Child Neurology 20:736-740(2005)。MECP2遺伝子における約8個の変異がレット症候群の最も優勢な原因を担うと一般に考えられている。レット症候群の症状の発生および重篤度は、MECP2遺伝子上の変異の位置およびタイプに依存する。Percyら, 「Rett syndrome: North American database」 Journal of Child Neurology 22(12):1338-1341(2007)。
【0107】
本明細書で示されるデータは、ナンセンス変異(例えば、R168X、R255X、R270XまたはR294X)を含む4個の未成熟終止コドンのうちの1つを有するMecp2 mRNAを発現するMecp2 DNA発現ベクター構築物を使用する。図17Aを参照のこと。そのデータは、+8 DNAアンチセンスオリゴが、4個の未成熟終止コドンのうちの3つでmRNAのリードスルーをごく軽微に増強したことを示す。図17Bを参照のこと。
【実施例
【0108】
実験
実施例1
細胞培養
A.例示的細胞株
CFF-16HBEge CFTR G542X
CFF-16HBEge CFTR R1162X
CFF-16HBEge CFTR W1282X
CFFT-16HBEge CFTR Y122X
【0109】
B.例示的細胞培養条件
培地(4℃で完全培地を貯蔵)
【表1】
凍結溶液(新たに作製)
【表2】
【0110】
C.他の試薬
DPBS(Hyclone SH30028.02)
TrypLE Express(Gibco 12604-021)
【0111】
D.コーティング溶液(新たに作製)
【表3】
【0112】
コーティング溶液でフラスコをコーティングする: T-25フラスコに関しては上記溶液を1ml、T-75に関しては2ml。上記溶液を表面に均一に分配し、その表面全体が上記溶液で濡れていることを確認し、2~3時間にわたって37℃で放置する。インキュベーション後、液体を完全に除去する。この溶液は再使用しない。この容器をすすがない。そのコーティングされたフラスコは、4℃において数カ月間貯蔵され得る。
【0113】
E.例示的な継代培養プロトコール
・ 80~100% コンフルエンシーで継代培養する
・ 培地を除去し、DPBSですすぎ、除去する
・ TrypLE Expressを添加し(細胞表面にわたって拡げ)、フラスコを37℃でインキュベートする
・ 3~5分後、そのフラスコを顕微鏡下で調べて、細胞剥離の程度を観察する。その細胞が表面から剥がれそうであれば、自分の掌を使用して、そのフラスコの側面を叩き、さらなる剥離を促す。その細胞がなお付着している場合、そのフラスコをインキュベーターの中へさらに数分間戻し、再びそのフラスコを調べる。目標は、その細胞のうちの>95%が表面から除去されていることである。
・ その細胞を反復してピペットで吸引排出して、あらゆる凝集塊を壊し、細胞懸濁物を遠心分離管に移す。
・ 3.5分間、1200rpmにおいて遠心分離して、その細胞をペレット化する。 o 注: 細胞を遠心分離できない場合(例えば、ハイスループット96ウェル形式)、この工程は省略され得る。
・ 液体を廃棄し、その細胞ペレットを完全培地中で再懸濁する。
・ 細胞を、1:10~1:20で分割し、1週間継代培養する。 o CFF培地交換スケジュール - 1週間に3回
【0114】
F.例示的な液体窒素貯蔵プロトコール
・ 凍結溶液中でその細胞ペレットを再懸濁することを除いて、細胞を、継代培養のためにするように処理する。
・ その細胞を凍結バイアルへと移す(1~1.5mL/バイアル)。細胞密度に応じて、T-75フラスコに関しては4~6本のバイアル、T-75に関しては2~4本のバイアルへとアリコートに分ける。o CFFは、500万個の細胞/バイアルを、T-75フラスコへと解凍するために凍結する。
・ 上記バイアルを、-80℃凍結において一晩、調整された冷却チャンバおよびプレートの中に置く(チャンバは、約1℃/分において冷却を調節する)
・ バイアルを冷却チャンバから液体窒素貯蔵へと可能な限り迅速に移す。
【0115】
G.凍結した貯蔵細胞の例示的な培養
・ 細胞のバイアルを液体窒素から取り出し、その細胞を37℃の水浴中で解凍する。
・ 5mL 完全培地で再懸濁する
・ 3.5分間、1200rpmにおいて遠心分離し、細胞をペレット化する
・ 液体を除去する(DMSOを除去するため)
・ 細胞ペレットを9mL 培地(T-75フラスコに関して)で再懸濁し、その細胞をコーティングされたフラスコに播種する
・ 細胞を37℃インキュベーター中、5% COで増殖させる。
・ 一晩のインキュベーションの後、その細胞は、フラスコに付着するはずである。丸い付着していない細胞は、死細胞である。
【0116】
実施例II
遺伝子編集
A. Cas9タンパク質複合体
・ RNP複合体は、以下を含む:
・ Cas9: S. pyogenes Cas9
・ ガイドRNA標的配列: 5’ - GAGAAAGACAATATAGTTCT - 3’
【0117】
B. プロトスペーサーアクセサリモチーフ配列: TGG
【0118】
C. 相同性指向性修復ドナーテンプレート配列(ssODN: 5’ - 3’):
【化2】
【0119】
D.増幅/配列決定プライマー
順方向プライマー: 5’ - ATGGAAGCCCAGTGAAGATAC - 3’
逆方向プライマー: 5’ - CTAGCCATAAAACCCCAGGA - 3’
【0120】
実施例III
配列決定
PCRアンプリコンのバルクシーケンシングを、実施例IIに従うプライマーを使用して行った。TOPOクローニング(例えば、アレル排除)方法は、プラスミドベクターを配列決定した。図18A~Dを参照のこと。
【0121】
データは、大きな欠失も再構成もCFTR遺伝子座の次世代シーケンシングで特定されなかったことを示す。しかし、未知のサイズの挿入は、16HBE14o-親細胞およびこれから得られた16HBEge細胞において1つのCFTRアレルのイントロン6の位置(hg38) Chr7:117536118において観察された。この挿入は、SV40ゲノム配列を含む。これは、16HBE14o-細胞を作製するために不死化プロセスにおいて使用したものであり、遺伝子編集の結果ではない。いくつかの系統の証拠は、上記挿入を有するアレルが分解されたCFTR転写物または非機能的CFTRを生じることを裏付ける;従って、16HBE14o-細胞は、機能的にモノアレル性である。16HBEge細胞株は、操作されたCFTR改変体に対してホモ接合性であり、16HBE14o-細胞と同数のアレルからCFTRを発現する。
【0122】
実施例IV
遺伝子発現
この実施例は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるmRNA分析およびウェスタンブロットによるタンパク質分析の結果を示す。
【0123】
そのデータは、上記アンチセンス、SMG1iが、NMDメディエーターSMG1の薬理学的インヒビターであり、PTCアレルのmRNAレベルを回復させることを示す。通常どおり、CFTR WT mRNAのより小さな増大はまた、SMG1iとともに観察される。図19A~Fを参照のこと。
【0124】
実施例V
電気生理学
機能アッセイを、抵抗は実証したが、測定可能なCFTR機能は示さなかったTECC/24 Conductance Assayを使用してフィルター播種の1週間後に行った。図20A~Cを参照のこと。
【0125】
CFF-16HBEge株の経上皮抵抗は、時間を経ても安定である(50継代まで、CFF-16HBEge CFTR W1282X細胞株において試験した)。図21A~Bを参照のこと。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図20-1】
図20-2】
図21
【配列表】
2024515244000001.app
【国際調査報告】