(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】リチウムバッテリー用電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240401BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240401BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561808
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022023283
(87)【国際公開番号】W WO2022216593
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ミハイリク,ユーリー ブイ
(72)【発明者】
【氏名】コヴァレフ,イゴール ピー
(72)【発明者】
【氏名】シェフィールド,アレクシス
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ02
(57)【要約】
本開示の態様は、電気化学セルのサイクル寿命および安定性の向上に向けられている。再充電可能なリチウムバッテリーに使用されるものを含む電解質および電気化学セルが一般的に提供される。いくつかの実施形態において、電解質および電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含む。また、いくつかの実施形態によれば、電解質および電気化学セルは、カーボネートを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを含む第1の電極、
非対称スルホンアミドを含む第1の溶媒、および
第2の溶媒を含み、
前記第2の溶媒は、環状カーボネートと線状カーボネートの双方を含み、
前記非対称スルホンアミドは、式(I):
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖;シリル置換基;またはR
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択され、
R
1が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
1は、n個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、
R
2が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
2は、m個の炭素原子を含み、mは1以上10以下の整数であり、
R
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは2以上11以下の整数であり、
R
1および/またはR
2がシリル置換基である場合、前記シリル置換基は、SiR
4
3の形態を有し、R
4は、k個の炭素原子を含む、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、kは1以上10以下の整数であり、および
R
3は、電子吸引種である。]を有する、電気化学セル。
【請求項2】
リチウムを含む電極、および
非対称スルホンアミドを含み、
前記非対称スルホンアミドは、式(I):
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖;シリル置換基;またはR
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択され、
R
1が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
1は、n個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、およびR
2はシリル置換基であり、
R
2が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
2は、m個の炭素原子を含み、mは1以上10以下の整数であり、およびR
1はシリル置換基であり、
R
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは2以上11以下の整数であり、
R
1および/またはR
2がシリル置換基である場合、前記シリル置換基は、SiR
4
3の形態を有し、R
4は、k個の炭素原子を含む、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、kは、1以上10以下の整数であり、および
R
3は、電子吸引種である。]を有する、電気化学セル。
【請求項3】
前記電子吸引種は、ハロゲン原子、置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロ脂肪族、-CN、-COOR
1、-C(=O)R
1、-CON(R
1)
2、-CONR
1H、-NO
2、-SO
3R
1、-SO(OR
1)
2、-SO(OR
1)H、-SOR
1、-SO
2R
1、-PO(OR
1)
2、-PO(OR
1)H、プロトン化アミン基(例えば、-NR
3
+および-NH
3
+)、または置換芳香族基である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記置換芳香族基は、ハロゲン原子、置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロ脂肪族、-CN、-COOR
1、-C(=O)R
1、-CON(R
1)
2、-CONR
1H、-NO
2、-SO
3R
1、-SO(OR
1)
2、-SO(OR
1)H、-SOR
1、-SO
2R
1、-PO(OR
1)
2、-PO(OR
1)H、および/またはプロトン化アミン基(例えば、-NR
3
+および-NH
3
+)を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
R
1とR
2が同じである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
R
1とR
2が異なる、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
R
1とR
2の双方が非分岐の脂肪族鎖である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
nが4以下である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
mが4以下である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
jが7以下である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項11】
kが4以下である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
R
1がシリル置換基である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
R
2がシリル置換基である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項14】
R
1およびR
2が、連結してN-結合型複素環を形成している、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項15】
第1の溶媒が非対称スルホンアミドを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項16】
第2の溶媒をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
第2の溶媒がカーボネートを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項18】
カーボネートが線状カーボネートである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項19】
カーボネートが環状カーボネートである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項20】
第2の溶媒のカーボネートが第1のカーボネートであり、第2の溶媒が第2のカーボネートをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項21】
第1のカーボネートが線状カーボネートであり、第2のカーボネートが環状カーボネートである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項22】
線状カーボネートが化学構造(II):
【化3】
[式中、
R
5およびR
6は、同じまたは異なっていてもよく、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族;置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロ脂肪族;または1~10個の炭素原子を含む置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロヘテロ脂肪族鎖から、ともに選択される。]を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項23】
環状カーボネートが化学構造(III):
【化4】
[式中、
R
7は、は2個の酸素原子を連結して複素環を形成し、非置換の、非分岐の脂肪族;置換のまたは非置換の、非分岐ハロの脂肪族;または1~10個の炭素原子を含む、置換のまたは非置換の、非分岐のハロヘテロ脂肪族鎖から選択される。]を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項24】
線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比が、0:1~10:1である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項25】
線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比が、1:6~1:3である、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項26】
線状カーボネートが、ジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項27】
環状カーボネートが、フルオロエチレンカーボネートである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項28】
電気化学セルが塩をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項29】
塩がリチウム塩を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項30】
リチウム塩が、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの1つ以上を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項31】
第2の電極をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項32】
第1の電極がリチウムインターカレーションカソードである、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項33】
第2の電極がリチウムを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項34】
第2の電極がリチウム金属またはリチウム金属合金を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
再充電可能なリチウムバッテリーに使用されるものを含む、電解質と電気化学セルについて一般的に説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターカレート型リチウム化合物をカソード活物質とする高エネルギー密度の再充電可能なLiイオンバッテリーの開発に大きな関心が寄せられている。このようなセルでは、現在の電解質は一般的にリチウム塩やカーボネート電解質の溶液をベースとしている。特に、これらの電解質は通常、充放電を繰り返す間に急速に劣化する。したがって、このような電解質を用いた再充電可能なバッテリーは、一般に限られたサイクル寿命を示す。従って、サイクル寿命を向上させるための電気化学セルおよび電解質、ならびに/またはその他の改良が有益であろう。
【発明の概要】
【0003】
本開示の態様は、電気化学セルのサイクル寿命および安定性の向上に向けられている。再充電可能なリチウムバッテリーに使用されるものを含む電解質および電気化学セルが一般的に提供される。いくつかの実施形態において、電解質および電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含む。電解質および電気化学セルはまた、いくつかの実施形態によれば、カーボネートを含む。本発明の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的な解決策、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる用途を含む。
【0004】
いくつかの態様は、電気化学セルに向けられている。いくつかの実施形態において、リチウムを含む第1の電極;非対称スルホンアミド(又は不斉スルホンアミド;asymmetric sulfonamide)を含む第1の溶媒;および第2の溶媒を含み電気化学セルであり、ここで、第2の溶媒は、環状カーボネート(または炭酸塩;carbonate)および線状カーボネート(又は直鎖状カーボネート;linear carbonate)の双方を含み、ここで、非対称スルホンアミドは、式(I)を有する:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖;シリル置換基;またはR
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択され、
R
1が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
1は、n個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、
R
2が、非置換の、分岐、または非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
2は、m個の炭素原子を含み、mは1以上10以下の整数であり、
R
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは2以上11以下の整数であり、
R
1および/またはR
2がシリル置換基である場合、前記シリル置換基は、SiR
4
3の形態を有し、R
4は、k個の炭素原子を含む、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、kは1以上10以下の整数であり、および
R
3は、電子吸引種である。]
【0005】
別の態様は、電気化学セルに向けられている。いくつかの実施形態において、リチウムを含む電極;および非対称スルホンアミド;を含み電気化学セルであり、ここで、非対称スルホンアミドは式(I)を有する;
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖;シリル置換基;またはR
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択され、
R
1が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
1は、n個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、およびR
2はシリル置換基であり、
R
2が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
2は、m個の炭素原子を含み、mは1以上10以下の整数であり、およびR
1はシリル置換基であり、
R
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは2以上11以下の整数であり、
R
1および/またはR
2がシリル置換基である場合、前記シリル置換基は、SiR
4
3の形態を有し、R
4は、k個の炭素原子を含む、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、kは、1以上10以下の整数であり、および
R
3は、電子吸引種である。]
【0006】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図と併せて考慮される場合、本発明の様々な非限定的実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書と参照により組み込まれる文書とが相反する開示および/または矛盾する開示を含む場合には、本明細書が支配するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図を参照して例示的に説明するが、これらの図は概略的なものであり、特に指示がない限り縮尺通りに描かれることを意図していない。図において、図示された各同一またはほぼ同一の構成要素は、通常、単一の数字によって表される。また、当業者が本発明を理解するために図示が必要でない場合には、明瞭化のため、すべての構成要素がすべての図に表示されているわけではなく、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【0008】
【
図1A】
図1Aは、いくつかの実施形態による、例示的な電気化学セルの断面概略図である。
【
図1B】
図1Bは、いくつかの実施形態による、例示的な電気化学セルの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
バッテリー技術における基本的な問題のひとつは、再充電可能な電気化学セルのサイクル寿命が限られていることである。現在、リチウムインターカレーションカソードバッテリーに使用されている電解質(または電解液;electrolyte)は、サイクル寿命が限られたセルを生み出している。さらに、リチウム金属の高い反応性は、リチウムベースのバッテリー技術がしばしば熱暴走やガス発生の問題に直面することを意味し、これらの電気化学セルの有用性を制限する可能性がある。本開示は、いくつかの実施形態によれば、バッテリーのサイクル寿命および安定性を向上させることができる革新的な電気化学セルおよび電解質に向けられる。いくつかの実施形態において、以下に記載するような非対称スルホンアミドを含む電解質は、電気化学セルのサイクル寿命および安定性を有利に向上させ、および/または望ましくないガスの発生を低減させることができる。いくつかの態様において、新規な非対称スルホンアミドを説明する。いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドは、電気化学セルの電解質中でカーボネートと組み合わせた場合に予想外に良好な性能を発揮する。
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、リチウムイオンまたはリチウム系バッテリー(例えば、リチウムイオン電極およびリチウム金属対極を含むバッテリー)の電気化学セル等、任意の好適なタイプのバッテリーの電気化学セルに関連付けて使用してもよい。いくつかの実施形態では、電気化学セルは一次(非再充電可能)バッテリーである。他の実施形態では、電気化学セルは二次(再充電可能)バッテリーである。いくつかの実施形態は、リチウム再充電可能バッテリーに関する。さらに、本発明の実施形態は、電気化学セルのサイクル寿命および安定性を改善するために特に有用であるが、本明細書に記載の実施形態は、電解溶媒が所望される他の用途にも適用可能であってよい。
【0011】
本明細書に記載される電気化学セルは、電極(例えば、第1の電極)を含み得る。いくつかの実施形態において、電極(例えば、第1の電極)は、以下でより詳細に説明されるように、アノードである。いくつかの実施形態において、電極は、以下でより詳細に説明されるように、カソードである。電極は、いくつかの実施形態によれば、リチウムを含んでいてもよい(例えば、電極がリチウムイオンバッテリーの一部である場合)。
図1A~1Bは、いくつかの実施形態による、電気化学セルの断面概略図を提示する。
図1A~1Bにおいて、電気化学セル100および101は、リチウムを含み得る電極102、ならびに任意の第1の集電体110および任意の第2の集電体112を含む。電気化学セルは、いくつかの実施形態によれば、電解質をさらに含む。例えば、
図1A~1Bでは、電解質104が存在する。場合によっては、電解質の少なくとも一部は、セパレータ(例えば、セパレータの細孔)中に存在する。いくつかの実施形態によれば、電気化学セルは、2つの電極(例えば、第1の電極および第2の電極)を含む。例えば、
図1Bにおいて、電気化学セル101は、第1の電極102および第2の電極108を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、任意の層は、電極に近接して(例えば、隣接して)配置されてもよい。いくつかの実施形態において、任意の層は、第1の電極と第2の電極との間に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、任意の層は、第2の電極と電解質との間に配置される。例えば、
図1Bにおいて、任意の層106は第2の電極108に近接し、第1の電極102と第2の電極108との間に配置され、第2の電極108と電解質104との間に配置される。いくつかの実施形態において、任意の層は、本明細書に記載されるような保護層を含む。加えてまたは代替的に、いくつかの実施形態において、任意の層は、以下でより詳細に説明されるように、リチウムイオン等のイオンに対して導電性であるかまたはイオンの通過を可能にするポリマー層(例えば、セパレータ)であってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の任意の層(例えば、2つ以上の保護層、保護層およびセパレータ)が存在してもよい。他の構成も可能である。
【0013】
上述したように、本明細書に記載の電気化学セルは電解質を含んでいてもよい。電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な場合には、これらの材料は、第1の電極と第2の電極(例えば、アノードおよびカソード)との間のセパレータとしてさらに機能することができる。第1の電極と第2の電極(例えば、アノードとカソード)の間のイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を促進する材料であれば、イオンを貯蔵および輸送することができる液体、固体、またはゲル材料のいずれを使用してもよい。電解質は、第1の電極と第2の電極との間の短絡を防止するために、電子的に非導電性である。いくつかの実施形態では、電解質は非固体電解質を含み得る。
【0014】
本明細書に記載の電解質は、溶媒(例えば、第1の溶媒)を含んでもよい。溶媒は極性溶媒であってもよい。いくつかの実施形態において、溶媒(例えば、液体電解質溶媒)は、非水系溶媒である。溶媒は、非限定的な例として、スルホンアミド系、エーテル系、および/またはカーボネート系の有機溶媒を含む様々な液体を含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、溶媒(例えば、第1の溶媒)は、不斉スルホンアミドを含む。例えば、いくつかの態様において、溶媒は、不斉スルホンアミドである。いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドは式(I)を有する:
【化3】
[式中、
R
1が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
1は、n個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、
R
2が、非置換の、分岐、または非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R
2は、m個の炭素原子を含み、mは1以上10以下の整数であり、
R
1およびR
2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは2以上11以下の整数であり、
R
1および/またはR
2がシリル置換基である場合、前記シリル置換基は、SiR
4
3の形態を有し、R
4は、k個の炭素原子を含む、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、kは1以上10以下の整数であり、および
R
3は、電子吸引種である。]
【0016】
いくつかの実施形態において、非対称スルホンアミドを含む一連の組成物が提供される。いくつかの実施形態において、非対称スルホンアミドを含む一連の組成物は、本明細書に記載の式(例えば、上記に示す式(I))を有し、ここで、R1およびR2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖;シリル置換基;またはR1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択される。本明細書に記載の非対称スルホンアミドのいくつかの実施形態によれば、R1およびR2は同じである。本明細書に記載の非対称スルホンアミドの他の実施形態では、R1およびR2は異なる。いくつかの実施形態によれば、R1およびR2は、双方とも非分岐の脂肪族鎖である。
【0017】
R1が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、いくつかの実施形態では、R1が非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R1はn個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数である(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上、および/または8以下、6以下、4以下)である。例えば、場合によっては、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0018】
R1が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、いくつかの実施形態では、R1がシリル置換基である場合、シリル置換基は、形態SiR4
3を有する。R4が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、各R4は、独立して、k個の炭素原子を含む非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、ここで、kは、1以上10以下の整数である(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上および/または8以下、6以下、4以下)。例えば、場合によっては、k=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0019】
R2が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、いくつかの実施形態では、R2が非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R2はm個の炭素原子を含み、ここでmは1以上10以下の整数である(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上、および/または8以下、6以下、4以下)である。例えば、場合によっては、m=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0020】
R2が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、いくつかの実施形態では、R2がシリル置換基である場合、シリル置換基は、形態SiR4
3を有する。R4が存在するこれらのまたは他の組成物または式において、各R4は、独立して、k個の炭素原子を含む非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、ここで、kは、1以上10以下の整数である(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上および/または8以下、6以下、4以下)。例えば、場合によっては、k=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0021】
例えば、いくつかの実施形態では、R
1はシリル置換基であり、R
2は脂肪族鎖であるか、またはR
2はシリル置換基であり、R
1は脂肪族鎖である。このような例は、いくつかの実施形態によれば、式(II)を有する:
【化4】
【0022】
いくつかのそのような実施形態では、非対称スルホンアミドは式(III)で示される構造を有する:
【化5】
【0023】
いくつかの実施形態において、R3は、本明細書に記載されるような電子吸引種である。そのような例の1つは、N-エチル-N-トリメチルシリルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et(Me3Si)NSO2CF3)であり、電子吸引種R3は、-CF3である。この化合物の合成は、以下の実施例1に記載されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、非対称スルホンアミドは式(IV)で示される構造を有する:
【化6】
ここで、(式Iの)R
2は、示されるように、R
1と同じである。いくつかのそのような実施形態において、R
1は、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される。例としては、式(V)を有する非対称スルホンアミドが挙げられる:
【化7】
【0025】
いくつかの実施形態において、R
3は、本明細書に記載されるような電子吸引種である。そのような例の1つは、N,N-ジメチルフルオロスルホンアミド(Me
2NSO
2F)であり、電子吸引種R
3は-Fである。別の例は、N,N-ジメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Me
2NSO
2CF
3)であり、電子吸引種R
3は-CF
3である。このような非対称スルホンアミドの他の実施形態は、式(VI)で示される構造を有する:
【化8】
【0026】
例えば、N,N-ジエチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et
2NSO
2CF
3)であり、電子吸引種R
3は-CF
3である。R
1が分岐の脂肪族鎖であるいくつかの実施形態は、式(VII)で示される構造を有する:
【化9】
【0027】
例えばN,N-ジイソプロピルトリフルオロメチルスルホンアミド(iPr2NSO2CF3)であり、ここで電子吸引種R3は-CF3である。
【0028】
いくつかの実施形態において、R
1およびR
2は異なり、それぞれ独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される。例えば、いくつかの非対称スルホンアミドは、式(VIII)で示される構造を有する:
【化10】
【0029】
このような例には、N,N-エチルメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(EtMeNSO2CF3)が含まれ、電子吸引種R3は-CF3である。
【0030】
いくつかの実施形態において、R
1およびR
2は異なり、それぞれ独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される。例えば、いくつかの非対称スルホンアミドは、式(IX)に示す構造を有する:
【化11】
【0031】
このような例には、N,N-エチルメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(EtMeNSO2CF3)が含まれ、電子吸引種R3は-CF3である。
【0032】
R1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成する組成物または式において、いくつかの実施形態では、N-結合型複素環はj個の炭素原子を含み、ここでjは2以上11以下の整数である(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上および/または8以下、6以下、4以下)。例えば、場合によっては、j=2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11である。
【0033】
N-結合型複素環は、いくつかの実施形態によれば、飽和または不飽和であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、N-結合型複素環は、(例えば、環の骨格に沿って)1つ以上の二重結合を含む。いくつかの実施形態によれば、N-結合型複素環は、芳香族構造(例えば、ヘテロ芳香環)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、N-結合型複素環は、N-結合型複素環である。一例として、N-結合型複素環は、いくつかの実施形態によれば、式(X)を有する:
【化12】
【0034】
いくつかの実施形態において、R3は、本明細書に記載されるような電子吸引種である。いくつかのそのような実施形態には、電子吸引種R3が-C4F9である、非対称スルホンアミドのピロリルパーフルオロブチルスルホンアミドが含まれる。この化合物の合成は、以下の実施例2に記載されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、N-結合型複素環は、1個以上のヘテロ原子を含む。例えば、N-結合型複素環は、2個、3個、4個、またはそれ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、第1のヘテロ原子は、式(I)で示される窒素である。いくつかの実施形態によれば、第2のヘテロ原子も窒素原子である。例えば、いくつかの実施形態によれば、N-結合型複素環は、式(XI)を有する:
【化13】
【0036】
いくつかの実施形態において、R3は、本明細書に記載されるような電子吸引種である。いくつかのそのような実施形態には、電子吸引種R3が-C4F9である、非対称スルホンアミドイミダゾリルパーフルオロブチルスルホンアミドが含まれる。この化合物の合成は、以下の実施例3に記載されている。
【0037】
R3が存在するこれらの組成物または他の組成物または式において、いくつかの実施形態では、R3は電子吸引種である。本明細書のスルホンアミドの文脈における電子吸引種とは、一般に、硫黄原子から電子を引き離す基を指す。例えば、フッ素原子は硫黄原子に対して電子吸引種である。R3が電子求引性種である場合、非対称スルホンアミドの極性に寄与する可能性がある。本明細書に記載する電子吸引種は、以下に詳述するように、異なる極性および反応性を有することがある。電子吸引種は、荷電していても荷電していなくてもよい。
【0038】
一実施形態において、非対称スルホンアミドに含まれる電子吸引種は、多数の異なる基から選択され得る。例えば、非対称スルホンアミドに組み込まれる電子吸引種としては、以下に限定されないが、ハロゲン原子(例えば、F、Cl)、置換の(または置換された;substituted)または非置換の、分岐または非分岐のハロ脂肪族(例えば、CF3、-C4F9)、-CN、-COOR1、-C(=O)R1、-CON(R1)2、-CONR1H、-NO2、-SOR31、-SO(OR1)2、-SO(OR1)H、-SO1、-SOR21、-PO(OR1)2、-PO(OR1)H、プロトン化アミン基(例えば、-NR3
+および-NH3
+)、または置換芳香族基であってよい。いくつかの実施形態において、置換芳香族基は、ハロゲン原子(例えば、F、Cl)、置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロ脂肪族(例えば、CF3、-C4F9)、-CN、-COOR1、-C(=O)R1、-CON(R1)2、-CONR1H、-NO2、-SOR31、-SO(OR1)2、-SO(OR1)H、-SO1、-SOR21、-PO(OR1)2、-PO(OR1)H、および/またはプロトン化アミン基(例えば、-NR3
+および-NH3
+)を含む。
【0039】
理論に束縛されることを望むものではないが、上記の各基は、R3の特定の官能性に関係なく、電子吸引性を示すことがある。さらに、R3は電子求引性または供与性を示すことがあり、場合によっては電子求引性でも供与性でもないこともある。
【0040】
溶媒は、他の非水系液体電解質溶媒を含んでいてもよい。非水系液体電解質溶媒の非限定的な例としては、非水系有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されず、例えば、カーボネート(以下にさらに詳細に記載する)、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン(例えば、1,3-ジオキソラン)、N-アルキルピロリドン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、これらの置換体、およびこれらのブレンドを含む。これらのフッ素化誘導体は、液体電解質溶媒としても有用である。
【0041】
いくつかの実施形態において、電解質は、第2の溶媒(例えば、共溶媒)を含む。いくつかの実施形態において、電解質中の第2の溶媒の存在は、サイクル寿命、過充電安定性、および/または熱安定性等の電気化学セルの特性を改善することができ、および/またはサイクル中のガス発生等の望ましくない挙動を低減し得る。理論に束縛されることを望まないが、第2の溶媒(例えば、共溶媒)の存在は、電解質内の種(例えば、塩)の溶解度を改善し得る。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は極性溶媒である。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1の溶媒および/または第2の溶媒は、独立して、極性溶媒または非極性溶媒であってもよいことが理解されるべきである。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、第2の溶媒はカーボネートを含む。いくつかの実施形態において、カーボネートは、線状カーボネートである。いくつかの実施形態において、カーボネートは環状カーボネートである。いくつかの実施形態によれば、第2の溶媒は、1種以上のカーボネートを含む。例えば、特定の実施形態によれば、第2の溶媒は、第1のカーボネートおよび第2のカーボネートを含む。本開示の文脈において、いくつかの実施形態において、電解質中の環状カーボネートおよび線状カーボネートの双方の存在が、以下でより詳細に説明されるように、電気化学セルの特性を予想外に改善し得ることが、発明的に認識されている。しかしながら、他の実施形態では、第2の溶媒は存在しないか、またはカーボネートを含まない。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、本明細書に記載されるように、別の(例えば、カーボネートを含まない)非水系溶媒を含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1のカーボネートは線状カーボネートであり、第2のカーボネートは環状カーボネートである。例えば、第2の溶媒は、ジメチルカーボネート(線状カーボネート)とフルオロエチレンカーボネート(環状カーボネート)との混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、第1のカーボネートは環状カーボネートであり、第2のカーボネートは線状カーボネートである。第1のカーボネートおよび第2のカーボネートはまた、同じタイプであってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、第2の溶媒は、1種以上の線状カーボネートを含む。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、1つ以上の環状カーボネートを含む。2つ以上のカーボネートを含む、追加の組み合わせも可能である。
【0044】
いくつかの実施形態において、非対称スルホンアミド(例えば、式I~XIのいずれか1つの式を有する非対称スルホンアミド)を含む第1の溶媒と、1つ以上のカーボネート(例えば、線状カーボネートおよび/または環状カーボネート)を含む第2の溶媒とを含む電気化学セルは、以下にさらに詳細に記載されるように、電気化学セルのサイクル寿命、過充電安定性、および/または熱安定性を有利に増加させ得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、カーボネート(例えば、第1のカーボネート)は、線状カーボネートである。線状カーボネートは、いくつかの実施形態によれば、化学構造(XII)を有する
【化14】
[式中、
R
5およびR
6は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族;置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロ脂肪族;または1~10の炭素原子を含む置換のまたは非置換の、分岐のまたは非分岐のハロヘテロ脂肪族鎖から選択される(例えば、2以上、4以上、6以上、8以上、および/または10以下、8以下、6以下、4以下)である。]。例えば、場合によっては、R
5は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む。場合によっては、R
6、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む。例えば、カーボネートはジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、カーボネート(例えば、第2のカーボネート)は、環状カーボネートである。環状カーボネートは、いくつかの実施形態によれば、化学構造(XIII)を有する
【化15】
[式中、
R
7は、2個の酸素原子を連結して複素環を形成し、非置換の非分岐の脂肪族;置換のまたは非置換の非分岐のハロ脂肪族;または1個~10個の炭素原子を含む置換のまたは非置換の非分岐のハロヘテロ脂肪族鎖から選択される(例.2以上、4以上、6以上、8以上、および/または10以下、8以下、6以下、4以下)である。]。例えば、場合によっては、R
7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む。例えば、環状カーボネートはフルオロエチレンカーボネートであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、溶媒(例えば、第1の溶媒および第2の溶媒)は、電解質の一部を形成する。いくつかの実施形態において、溶媒は、合計で、電解質の10wt%以上、20wt%以上、30wt%以上、40wt%以上、50wt%以上、60wt%以上、70wt%以上、80wt%以上、90wt%以上、95wt%以上、またはそれ以上を形成する。いくつかの実施形態では、溶媒は、合計で、電解質の99wt%以下、95wt%以下、90wt%以下、80wt%以下、70wt%以下、60wt%以下、50wt%以下、40wt%以下、またはそれ以下を形成する。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態によれば、溶媒は、合計で、電解質の10wt%以上99wt%以下を形成する。別の例として、いくつかの実施形態によれば、溶媒は、合計で、電解質の30wt%以上70wt%以下を形成する。
【0048】
本開示の文脈において、いくつかの実施形態において、第1の溶媒が非対称スルホンアミドを含み、第2の溶媒が環状カーボネートおよび線状カーボネートの双方を含む電気化学セルが、線状カーボネートおよび/または環状カーボネートのみを含む電気化学セルよりも予期せぬ利点を有することが、発明的に認識されている。これらの利点には、いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートを含まない電解質を有するセルと比較して、より高いサイクル寿命、より高い過充電安定性、より高い熱安定性、および/または低減されたガス発生が含まれる。
【0049】
いくつかのそのような実施形態において、線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比は、0:1以上、1:10以上、1:9以上、1:8以上、1:7以上、1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:2以上、1:1以上、2:1以上、3:1以上、4:1以上、5:1以上、6:1以上、または10:1以上である。いくつかのそのような実施形態において、線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比は、20:1以下、10:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、1:4以下、1:5以下、1:7以下、1:8以下、1:9以下、1:10以下である。上記範囲の組み合わせも可能である。例えば、第2の溶媒中の線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比は、いくつかの実施形態によれば、0:1以上20:1以下であってもよい。別の例として、いくつかの実施形態によれば、線状カーボネートと環状カーボネートとのモル比は、1:6以上1:3以下である。有機溶媒の他の組成も可能である。
【0050】
カーボネートおよび非対称スルホンアミドの双方が存在するいくつかの実施形態において、カーボネートと非対称スルホンアミドとの間のモル比は、0:1以上、1:10以上、1:9以上、1:8以上、1:7以上、1:5以上、1:4以上、1:3以上、1:2以上、1:1以上、2:1以上、3:1以上、4:1以上、5:1以上、6:1以上、10:1以上である。いくつかのそのような実施形態において、カーボネートと非対称スルホンアミドとの間のモル比は、20:1以下、10:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、3:1以下、2:1以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、1:4以下、1:5以下、1:7以下、1:8以下、1:9以下、1:10以下である。上記範囲の組み合わせも可能である。例えば、電気化学セル中のカーボネートと非対称スルホンアミドとの間のモル比は、いくつかの実施形態によれば、0:1以上、20:1以下であってもよい。いくつかの実施形態において、カーボネートは、線状カーボネートである。いくつかの実施形態において、カーボネートは環状カーボネートである。いくつかの実施形態において、カーボネートは、線状カーボネートと環状カーボネートとの組み合わせである(例えば、カーボネートは、線状カーボネートと環状カーボネートとを上記のモル比で含むカーボネートの合計量である)。線状カーボネートおよび環状カーボネートの双方が存在するいくつかの実施形態において、各タイプのカーボネートは、独立して、非対称スルホンアミドに関して、上記のモル比の1つ以上の量で存在し得る。有機溶媒の他の組成も可能である。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドおよびカーボネート(例えば、線状カーボネート、環状カーボネート)を含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドおよびカーボネートの双方を含まない他の等価な電気化学セルと比較して、向上したサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非対称スルホンアミド、線状カーボネートおよび環状カーボネートを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミド、線状カーボネートおよび環状カーボネートの双方を含まない他の同等の電気化学セルと比較して、向上したサイクル寿命を示す。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非対称スルホンアミドとカーボネートとを含む電気化学セルは、サイクル寿命が1.2倍以上、1.5倍以上、1.7倍、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、または40倍以上であるサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドおよびカーボネートを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドおよび/またはカーボネートを含まない他の点で等価な電気化学セルのサイクル寿命の50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1.2倍以上、50倍以下)。他の範囲も可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートを含む電気化学セルは、サイクル寿命が1.2以上、1.5以上、1.7倍、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、または40倍以上であるサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態では、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートのうちの1つ以上、またはすべてを含まない他の等価な電気化学セルのサイクル寿命の50以下、40以下、30以下、20以下、10以下、または3以下であるサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1.2倍以上50倍以下)。その他の範囲も可能である。
【0054】
一部の実施形態では、本明細書に記載の溶媒をゲルポリマー電解質に組み込むことができる。液体電解質溶媒は、ゲルポリマー電解質、すなわち、半固体ネットワークを形成する1つ以上のポリマーを含む電解質の可塑剤として有用である。有用なゲルポリマー電解質の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、パーフルオロ膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、これらの誘導体、これらのコポリマー、これらの架橋構造およびネットワーク構造、ならびにこれらのブレンド、ならびに任意選択で1種以上の可塑剤から選択される1種以上のポリマーを含むものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ゲルポリマー電解質は、体積比で10~20%、20~40%、60~70%、70~80%、80~90%、または90~95%の液体電解質を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、電解質を形成するために1つ以上の固体ポリマーを使用することができる。有用な固体ポリマー電解質の例としては、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、これらの誘導体、これらのコポリマー、前記の架橋構造およびネットワーク構造、ならびに前記のブレンドから選択される1つ以上のポリマーを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、リチウムを含む第1の電極;非対称スルホンアミドを含む第1の溶媒;および第2の溶媒を含み、ここで、第2の溶媒は、環状カーボネートおよび線状カーボネートの双方を含み、非対称スルホンアミドは、式(I)を有し、ここで、R1およびR2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれは、独立して、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖、シリル置換基、またはR1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成するものからから選択され、ここで、R1が非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R1はn個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、R2が、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R2は、m個の炭素原子を含み、mは、1以上、10以下の整数であり、R1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは、2以上11以下の整数であり、ここで、R1および/またはR2がシリル置換基である場合、シリル置換基は、SiR4
3の形態を有し、ここで、R4は、k個の炭素原子を含む非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、ここで、kは、1以上10以下の整数であり;そしてここで、R3は、電子吸引種である。
【0057】
いくつかの実施形態において、電気化学セルは、リチウムを含む第1の電極;および非対称スルホンアミドを含み、ここで、非対称スルホンアミドは、式(I)を有し;ここで、R1およびR2は、同じまたは異なっていてもよく、それぞれが、非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖、シリル置換基、またはR1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成するものから選択され、ここで、R1が非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R1はn個の炭素原子を含み、nは1以上10以下の整数であり、R2はシリル置換基である;R2が非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖から選択される場合、R2は、m個の炭素原子を含み、mは、1以上、10以下の整数であり、R1は、シリル置換基である;R1およびR2が連結してN-結合型複素環を形成する場合、N-結合型複素環は、j個の炭素原子を含み、jは、2以上、11以下の整数である;R1および/またはR2がシリル置換基である場合、シリル置換基は、SiR4
3の形態を有し、ここで、R4は、k個の炭素原子を含む非置換の、分岐のまたは非分岐の脂肪族鎖であり、ここで、kは、1以上10以下の整数であり;そしてここで、R3は、電子吸引種である。いくつかの実施形態において、第2の溶媒は、環状カーボネートおよび線状カーボネートの双方を含む。
【0058】
上記および本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、線状カーボネートと環状カーボネートとの間のモル比は、1:6~1:3である。上記および本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、R1およびR2は、双方とも非分岐の脂肪族鎖である。上記および本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、電気化学セルは、第2の電極をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の電極は、リチウムインターカレーション電極であってもよい。いくつかの実施形態において、R1およびR2は、連結してN-結合型複素環を形成する。いくつかの実施形態において、R1および/またはR2は、シリル置換基である。いくつかの実施形態において、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、向上したサイクル寿命を示す。本明細書で使用される場合、電気化学セルのサイクル寿命は、その容量が閾値を下回る前に電気化学セルが実行できる充放電サイクル数である。閾値は、電気化学セルの初期充電量の任意の適切な割合であってよい。例えば、いくつかの実施形態によれば、電気化学セルのサイクル寿命は、その容量が初期容量の90%、80%、70%、60%、57%、55%、50%、または25%を下回る前に電気化学セルが実行できる充放電サイクル数である。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、100サイクル以上、150サイクル以上、200サイクル以上、250サイクル以上、300サイクル以上、350サイクル以上、400サイクル以上、450サイクル以上のサイクル寿命を示す、500サイクル以上、600サイクル以上、700サイクル以上、800サイクル以上、900サイクル以上、1000サイクル以上、1100サイクル以上、1200サイクル以上、1300サイクル以上、1500サイクル以上、2000サイクル以上を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、5000サイクル以下、4000サイクル以下、3000サイクル以下、2000サイクル以下、1500サイクル以下、1400サイクル以下、1300サイクル以下、1200サイクル以下、1100サイクル以下、1000サイクル以下、900サイクル以下、800サイクル以下、700サイクル以下、600サイクル以下、約500サイクル以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、その容量が60%を下回る前に、100サイクル以上5000サイクル以下のサイクル寿命を示す。別の例として、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、容量が57%を下回る前に400サイクル以上1500サイクル以下のサイクル寿命を示す。他の範囲も可能である。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含まない他の等価な電気化学セルと比較して、向上したサイクル寿命を示す(他の因子は全て等しい)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含まない他の点で等価な電気化学セルのサイクル寿命の1.2倍以上、1.5倍以上、1.7倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、または40倍以上であるサイクル寿命を示す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含まない他の点で等価な電気化学セルのサイクル寿命の50倍以下、40倍以下、30倍以下、20倍以下、10倍以下、または3倍以下のサイクル寿命を示す。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1.2倍以上、50倍以下)。他の範囲も可能である。
【0061】
バッテリー(リチウムバッテリー等)の設計で一般的に考慮される特徴は、過充電の安定性である。過充電の間、電気化学セルは、以下でより詳細に記載されるような、ガスの発生をしばしば経験する。過充電状態では、電気化学セルは高電圧(過充電電圧)を維持し、温度が上昇する。過充電の間、電気化学セルはしばしばガスの発生を経験する。より高い過充電電圧および/または過充電中のより低い最大観測温度によって示されるような高い過充電安定性は、いくつかの実施形態によれば、電気化学セルにとって有利であり、これらの特性は、通常の使用中、電気化学セルをより安全かつ安定にするからである。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、非対称スルホンアミドを含まない電気化学セルよりも高い過充電電圧を有する。いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、12V以上、13V以上、14V以上、15V以上、15.5V以上の過充電電圧を有する。いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、20V以下、18V以下、17V以下、16V以下、15.5V以下、15V以下、14V以下、13V以下、またはそれ以下の過充電電圧を有する。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態によれば、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルは、12V以上20V以下の過充電電圧を有する。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、電気化学セルは、過充電中の最大観測温度が150℃以下、120℃以下、102℃以下、100℃以下、98℃以下、95℃以下、92℃以下である。いくつかの実施形態によれば、電気化学セルは、過充電中の最大観測温度が30℃以上、40℃以上、50℃以上である。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態によれば、電気化学セルは、30℃以上150℃以下の過充電中の最大観測温度を有する。
【0064】
リチウムバッテリーで特に問題となるのは、例えば150~230℃の高温で観察され、バッテリーの完全な破壊につながる熱暴走である。このような熱暴走を防ぐために、電極をポリマーでコーティングする等の様々な方法が提案されてきた。しかし、これらの方法は通常、容量の劇的な減少につながる。容量の低下は、特に充電中のリチウムデンドライトの形成、充放電中の体積変化等に起因している。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される電気化学セルは、熱暴走を経験することなく、比較的高温でサイクルさせることができる。「熱暴走」という用語は、当業者には理解され、電気化学セルが、セル内の制御不能な温度上昇を防止するために、充放電中に発生する熱を十分に速く放散することができない状況を指す。多くの場合、熱暴走中に正帰還ループが生じ(例えば、電気化学反応が熱を発生させ、それが電気化学反応の速度を増加させ、さらなる熱の発生につながる)、電気化学セルが発火する可能性がある。いくつかの実施形態において、電解質(例えば、非対称スルホンアミドを含み得る電解質の組成)は、電気化学セルの比較的高い動作温度において熱暴走が観察されないように構成され得る。いくつかの実施形態において、これは、高温における非対称スルホンアミドの熱安定性および/または不燃性に関連する。
【0066】
いくつかの実施形態において、電解質は、電気化学セルが熱暴走を経験することなく、最大約130℃、最大約150℃、最大約170℃、最大約190℃、最大約200℃、最大約205℃、最大約210℃、最大約215℃、または最大約230℃(例えば、電気化学セルの外部表面で測定した場合)の温度で電気化学セルを動作(例えば、連続的に充電および放電)させることができるように構成することができる。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、発火することなく、上記のいずれかの温度で動作させることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の電気化学セルは、熱暴走を経験することなく、補助冷却機構(例えば、電気化学セルの外部の熱交換器、電気化学セルの外部の能動流体冷却等)を採用することなく、比較的高い温度(例えば、上記のいずれかの温度)で動作させることができる。
【0067】
既存のシステムによっては、電解質の劣化によってガス状の副生成物が発生することがあり、ガス発生とも呼ばれる。電気化学セルにおけるガス発生は、通常、少なくとも部分的には電解質組成に依存する。理論に束縛されることを望まないが、ガス発生電気化学セルは、電気化学セルのカソード側で電解質が酸化された結果として発生すると考えられることが多い。
【0068】
本明細書に記載されるように、電解質溶液における非対称スルホンアミドの使用は、非対称スルホンアミドを含まない電気化学セルと比較して、電気化学セルの動作中のガス発生を低減する可能性がある。いくつかの実施形態において、非対称スルホンアミドを含む電気化学セルによって形成されるガスの量は、他のすべての要因が等しい場合に、非対称スルホンアミドを含まない電気化学セルと比較して、5%以上、8%以上、10%以上、13%以上、14%以上、またはそれ以上減少する。本明細書に記載される電解質は、電気化学セル(例えば、リチウムベースのバッテリー内)によって生成される複数のガスを、これらの電解質が存在しない電気化学セルと比較して低減させ得る。いくつかの実施形態において、減少したガス発生は、電気活性物質(例えば、リチウム金属)との非対称スルホンアミドの低い反応性に関連する。
【0069】
電気化学セルで生成されるガス状生成物の量(例えば、体積)は、流体置換法を用いて決定することができ、そこでは、サイクル前にバッテリーによって置換された水の体積と、サイクル後にバッテリーによって置換された水の体積とが比較され、体積差は、サイクル中に生成されたガスの体積に等しいと仮定される。この方法は、実施例4でより詳細に説明するように、ガス発生量を計算するために使用された。この方法の1つの利点は、電気化学セル(例えば、組み立て式電気化学セル、密閉式電気化学セル)を開けることなく、電気化学セルの体積(例えば、サイクル前、サイクル後)を決定することができ、電気化学セルの体積および生成されたガス状生成物の体積を決定するために使用することができることである。
【0070】
いくつかの実施形態では、電解質は、製造プロセスの任意の適切な時点で添加することができる流体電解質(例えば、液体)を含む。場合によっては、電気化学セルは、第1の電極および第2の電極(例えば、アノードおよびカソード)を提供し、第1の電極および/または第2の電極の活性表面に垂直な異方性の力の成分を印加し、その後、電解質が第1の電極および第2の電極(例えば、アノードおよびカソード)と電気化学的に連通するように流体電解質を添加することによって作製される。他の態様では、流体電解質は、異方性の力の成分の印加前または印加と同時に電気化学セルに添加され、その後、電解質は、第1の電極および第2の電極(例えば、アノードおよびカソード)と電気化学的に連通する。いくつかの実施形態では、流体電解質は、異方性の力の印加なしに電気化学セルに添加され、その後、異方性の力は印加されない。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、電解質は塩(例えば、リチウム塩)を含む。本明細書に記載の電気化学デバイス(例えば、本明細書に記載の電気化学セル)に使用される電解質塩の例としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiSCN)、LiBr、LiI、リチウムパークロレート(過塩素酸リチウム)(LiClO4)、リチウムヘキサフルオロアルセネート(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)(LiAsF6)、LiSO3CF3、LiSO3CH3、リチウムテトラフルオロボレート(テトラフルオロホウ酸リチウム)(LiBF4)、LiB(Ph)4、リチウムヘキサフルオロホスフェート(ヘキサフルオロリン酸リチウム)(LiPF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、LiC(SO2CF3)3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含むが、これらに限定されない。有用であり得る他の電解質塩としては、リチウムポリスルフィド(Li2Sx)、および有機ポリスルフィドのリチウム塩(LiSxR)nが挙げられ、xは1~20の整数であり、nは1~3の整数であり、Rは有機基であり、Leeらに対する米国特許第5,538,812号に開示されているものが挙げられ、この特許はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
いくつかの実施形態では、電解質は1つ以上の室温イオン液体を含む。室温イオン液体は、存在する場合、典型的には、1つ以上のカチオンおよび1つ以上のアニオンを含む。好適なカチオンの非限定的な例としては、リチウムカチオンおよび/またはイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、およびトリゾリウムカチオン等の1つ以上の第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。適切なアニオンの非限定的な例としては、トリフルオロメチルスルホネート(CF3SO3
-)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(N(FSO2)2
-、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO2)N2
-、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド((CF3CF2SO2)N2
-およびトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO2)C3
-が挙げられる。適切なイオン液体の非限定的な例としては、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム/ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、電解質は、室温イオン液体とリチウム塩の双方を含む。他のいくつかの実施形態では、電解質は室温イオン液体を含み、リチウム塩を含まない。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、塩は電解質の一部を形成する。いくつかの実施形態において、塩は電解質の2wt%以上、5wt%以上、10wt%以上、15wt%以上、20wt%以上、30wt%以上、40wt%以上を形成する。いくつかの実施形態では、塩は電解質の80wt%以下、70wt%以下、60wt%以下、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、5wt%以下を形成する。これらの範囲の組み合わせも可能である。例えば、いくつかの実施形態によれば、塩は電解質の80wt%以上5wt%以下を形成する。
【0074】
電解質は、イオン伝導性を提供するための1種以上のイオン性電解質塩と、1種以上の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料とを含むことができる。適切な非水系電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1種以上の材料を含む有機電解質を含み得る。リチウムバッテリー用の非水系電解質の例は、DornineyによってLithium Batteries, New Materials, Developments and Perspectives, Chapter4, pp.137-165, Elsevier, Amsterdam (1994)に記載されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、Alamgirらにより、Lithium Batteries, New Materials, Developments and Perspectives, Chapter3,pp.93-136, Elsevier, Amsterdam (1994)に記載されている。本明細書に記載のバッテリーに使用することができる液体電解質組成物は、2009年5月26日に出願され、Mikhaylikらによる「Separation of Electrolytes」と題された米国特許出願シリアル番号12/312,764に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
様々な材料を、本明細書に記載される電気化学セルにおける第2の電極(例えば、
図1Bの第2の電極108)として使用することができる。例えば、第2の電極(例えば、アノード)は、リチウム含有材料を含み得て、リチウムが電気活性材料である。適切な電気活性材料(例えば、本明細書に記載される第2の電極におけるアノード活物質として使用するための)としては、リチウム箔や導電性基板上に堆積されたリチウム等のリチウム金属、およびリチウム合金(例えば、リチウム-アルミニウム合金およびリチウム-スズ合金)が挙げられるが、これらに限定されない。負電極材料(例えば、リチウム等のアルカリ金属)を基板上に堆積させる方法としては、熱蒸着、スパッタリング、ジェット蒸着、レーザーアブレーション等の方法が挙げられる。あるいは、第2の電極がリチウム箔、またはリチウム箔と基板を含む場合、これらを当技術分野で知られているようなラミネーションプロセスによって貼り合わせて電極を形成することもできる。
【0076】
いくつかの実施形態において、第2の電極(例えば、アノード)は、放電中にリチウムイオンが解放され、充電中にリチウムイオンが統合(例えば、インターカレーション)される電極である。いくつかの実施形態において、アノード活物質は、リチウムインターカレーション化合物(例えば、格子サイトおよび/または格子間サイトにリチウムイオンを可逆的に挿入することができる化合物)である。いくつかの実施形態において、アノード活物質は炭素を含む。場合によっては、アノード活物質は、グラファイト材料(例えば、黒鉛)であるか、またはグラファイト材料を含む。グラファイト材料とは、一般に、グラフェン(すなわち、六方格子状に共有結合した炭素原子を含む層)の複数の層を含む材料を指す。隣接するグラフェン層は通常、ファンデルワールス力を介して互いに引き寄せられるが、場合によっては1枚以上のシート間に共有結合が存在することもある。場合によっては、炭素を含むアノード活物質は、コークス(例えば、石油コークス)であるか、またはコークスを含む。いくつかの実施形態において、アノード活物質は、ケイ素、リチウム、および/またはそれらの組み合わせの任意の合金を含む。一部の実施形態では、アノード活物質は、リチウムチタネート(チタン酸リチウム)(Li4Ti5O12、「LTO」とも呼ばれる)、錫-コバルト酸化物、またはそれらの組み合わせを含む。
【0077】
一実施形態では、第2の電極(例えば、アノード)の電気活性リチウム含有材料は、50重量%を超えるリチウムを含む。別の実施形態では、第2の電極の電気活性リチウム含有材料は、75重量%を超えるリチウムを含む。さらに別の実施形態では、第2の電極の電気活性リチウム含有材料は、90重量%を超えるリチウムを含む。第2の電極に使用するのに適した追加の材料および配置は、例えば、2009年8月4日に出願されたScordilis-Kelleyらに対する米国特許公開第2010/0035128号明細書(表題「電気化学セルにおける力の応用」)に記載されており、この特許は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0078】
場合によっては、リチウム金属/リチウム金属合金は充放電サイクルの一部のみに存在することもある。例えば、セルは集電体(例えば、第二の集電体)にリチウム金属/リチウム金属合金が存在しない状態で構成することができ、その後、充電ステップ中に第二の集電体にリチウム金属/リチウム金属合金を堆積させることができる。いくつかの実施形態では、リチウムは、充電/放電サイクルの一部のみにリチウムが存在するように、放電後に完全に枯渇する可能性がある。
【0079】
様々な第1の電極(例えば、カソード)もまた、本明細書に記載される実施形態において使用され得る(例えば、
図1Bの第1の電極102として)。いくつかの実施形態において、第1の電極(例えば、カソード)は、処理されたニッケル含有インターカレーション化合物を含む。いくつかの実施形態では、第1の電極(例えば、カソード)の電気活性材料は、処理されたニッケル含有インターカレーション化合物に加えて、1つ以上の追加のカソード活物質を含む。追加のカソード活物質の例としては、1つ以上の金属酸化物、電気活性遷移金属カルコゲニド、電気活性導電性ポリマー、硫黄、炭素および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、1つ以上の金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、インターカレーション電極(例えば、リチウムインターカレーション電極、リチウムインターカレーション電極)を使用してもよい。電気活性物質のイオン(例えば、アルカリ金属イオン)をインターカレートし得る好適な材料の非限定的な例としては、金属酸化物、硫化チタン、および硫化鉄が挙げられる。いくつかの実施形態では、第1の電極(例えば、カソード)は、リチウム遷移金属酸化物またはリチウム遷移金属リン酸塩を含むインターカレーション電極である。追加の例には、LixCoO2(例えば、Li1.1CoO2)、LixNiO2、LixMnO2、LixMn2O4(例えば、Li1.05Mn2O4)、LixCoPO4、LixMnPO4、LiCoxNi(1-x)O2、およびLiCoxNiyMn(1-x-y)O2(例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi3/5Mn1/5Co1/5O2、LiNi4/5Mn1/10Co1/10O2、LiNi1/2Mn3/10Co1/5O2)が含まれる。Xは0以上2以下であってよい。Xは、典型的には、電気化学デバイスが完全に放電された場合には1以上2以下であり、電気化学デバイスが完全に充電された場合には1以下である。いくつかの実施形態では、完全に充電された電気化学デバイスは、1以上1.05以下、1以上1.1以下、または1以上1.2以下であるxの値を有し得る。さらなる例としては、(0<x≦1)であるLixNiPO4、(x+y=2)であるLiMnxNiOy4(例えば、LiMn1.5Ni0.5O4)、(x+y+z=1)であるLiNixCoyAlzO2、(x+y+z=1)であるLiFePO4、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、第1の電極(例えば、カソード)内の電気活性材料は、リチウム遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO4)を含み、一部の実施形態では、ホウ酸塩および/またはケイ酸塩で置換することができる。
【0081】
本発明の第1の電極(例えば、カソード)は、約20~100重量%の電気活性な第1の電極材料(例えば、適切な量の溶媒が第1の電極活性層から除去された後、および/または層が適切に硬化された後に測定される)を含み得る。一実施形態では、ニッケル含有インターカレーション化合物の量は、第1の電極の5~30重量%の範囲である。別の実施形態では、第1の電極中のニッケル含有インターカレーション化合物の量は、第1の電極の20重量%~90重量%の範囲である。
【0082】
いくつかの実施形態において、電気化学デバイスの電極(例えば、第2の電極、アノード)は、ポリマー、セラミック、および/またはガラスから形成された1つ以上のコーティングまたは層を含んでもよい。コーティングは、保護層として機能し、異なる機能を果たすことができる。それらの機能には、そうでなければ短絡を引き起こす可能性のある再充電中のデンドライトの形成を防止すること、電極活物質と電解質との反応を防止すること、およびサイクル寿命を改善することが含まれ得る。このような保護層の例としては、以下のものが挙げられる:Affinitoらに対する米国特許第8,338,034号およびLaramieらに対する米国特許公開第2015/0236322号に記載されているものが挙げられ、これらの各特許は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
いくつかの実施形態では、電気化学セルはセパレータを含む。セパレータは、一般に、高分子材料(例えば、電解質に曝されると膨潤するまたは膨潤しない高分子材料)を含む。いくつかの実施形態では、セパレータは、第1の電極と第2の電極(例えば、アノードとカソード)との間に位置する。
【0084】
セパレータの細孔は、部分的または実質的に液体電解質で満たされていてもよい。セパレータは、セルの製造中に第1の電極および/または第2の電極(例えば、アノードおよびカソード)とを交互配置する(またはインターリーブされる;interleave)多孔性自立フィルムとして供給されてもよい。あるいは、例えばCarlsonらに対するPCT公開第WO99/33125号やBagleyらに対する米国特許第5,194,341号に記載されているように、多孔性セパレータ層を電極の一方の表面に直接塗布してもよい。
【0085】
様々なセパレータ材料が当該技術分野で知られている。好適な固体多孔質セパレータ材料の例としては、例えば、ポリエチレン(例えば、東燃化学製のSETELA(商標))およびポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラス繊維濾紙、およびセラミック材料が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、セパレータは微多孔性ポリエチレンフィルムを含む。本明細書に記載される電気化学デバイス(電気化学セルを含む)において使用するのに適したセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、カールソンらによる米国特許第6,153,337号および同第6,306,545号に記載されるように、微多孔性キセロゲル層、例えば、微多孔性擬ベーマイト層を含むものであり、これは、自立フィルムとして、または電極の1つ(例えば、第2の電極)上に直接コーティング塗布のいずれかによって提供され得る。固体電解質およびゲル電解質は、電解質機能に加えてセパレータとしても機能する。
【0086】
セパレータは、一般に、高分子材料(例えば、電解質に曝されると膨潤する、または膨潤しない高分子材料)を含む。いくつかの実施形態では、セパレータは、電解質と電極との間(例えば、電解質と第1の電極との間、電解質と第2の電極との間、電解質と第1の電極との間、または電解質と第2の電極との間)に配置される。
【0087】
セパレータは様々な材料で作ることができる。セパレータは、ある実施例では高分子であってもよく、他の実施例では無機材料(例えば、ガラス繊維ろ紙)で形成されてもよい。適切なセパレータ材料の例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン-1)、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、ポリ(ピロメリチミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標))等);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)およびポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ-1,3-フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));ポリ複素環式化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノールポリマー(例えば、フェノール-ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば1,2-ポリブタジエン、シスまたはトランス-1,4-ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));ならびに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられるがこれらに限定されてない。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリ(n-ペンテン-2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε-カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリニトリル、ポリ(ピロメリチミド-1,4-ジフェニルエーテル)(Kapton(登録商標))(NOMEX(登録商標))(KEVLAR(登録商標)))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、電気化学セルは、電極(例えば、第1の電極、第2の電極)の電気活性材料の上に保護層を含む。一般に、「保護層」は、電極内の電極活物質を、電気化学セル内の種との非電気化学的化学反応または他の好ましくない相互作用から保護する材料の層である。例えば、保護層は、電極活物質と電解質内の種との間の化学反応または他の好ましくない相互作用、および/または電極活物質と電気化学セル内の電気化学反応の副生成物との間の化学反応または他の好ましくない相互作用を防止するように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、保護層は、第2の電極(例えば、アノード)の電気活性材料の上にある。例えば、いくつかの実施形態によれば、保護層は、第2の電極(例えば、アノード)とセパレータとの間に配置される。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の電気化学セルは、第1の集電体(例えば、
図1A~1Bの第1の集電体110)を含む。第1の集電体は、電気化学セルの第1の電極および/または複数の第1の電極部分に電子的に結合されてもよい。
【0090】
本明細書に記載される電気化学セルは、上述したように、1つ以上の集電体を含み得る。場合によっては、電気化学セルは、第2の集電体(例えば、
図1A~1Bのオプションの第2の集電体112)を含む。第2の集電体は、電気化学セルの第2の電極および/または複数の第2の電極部分に電子的に結合されてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、充電および/または放電中に、本明細書に記載の電気化学セルに異方性の力を加えることが有利であり得る。電気化学セルは、本明細書に記載の非対称スルホンアミドを含む電解質を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の電気化学セルおよび/または電極は、その構造的完全性を維持しながら、加えられる異方性の力(例えば、セル内の電極の形態を強化するために加えられる力)に耐えるようになり得る。本明細書に記載の電極は、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、電気化学セル内の電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金を含むアノード)の活性面に垂直な成分を有する異方性の力がセルに印加されるように適合および配置された電気化学セルの一部であり得る。一組の実施形態では、印加される異方性の力は、電極(例えば、リチウム金属および/またはリチウム合金アノード等のアノード)の形態を強化するように選択され得る。当該技術分野において理解されるように、「異方性の力」とは、全ての方向において等しくない力である。
【0092】
このような場合、異方性の力は、電気化学セル内の電極(例えば、カソード等の第1の電極、アノード等の第2の電極)の活性表面に垂直な成分を含む。本明細書において、「活性表面」という用語は、電気化学反応が起こり得る電極の表面を表すために使用される。表面に対する「垂直成分」を有する力は、当業者に理解されるような通常の意味を与えられ、例えば、少なくとも部分的に表面に実質的に垂直な方向にそれ自体を及ぼす力を含む。例えば、水平なテーブルの上に物体が載り、重力の影響のみを受ける場合、物体はテーブルの表面に対して実質的に完全に垂直な方向に力を及ぼす。物体が水平なテーブルの表面を横切って横方向にも付勢されている場合、物体はテーブルに力を及ぼし、この力は水平な表面に対して完全には垂直ではないが、テーブルの表面に対して垂直な成分を含む。当業者であれば、これらの用語の他の例、特に本書の説明の中で適用される例を理解するであろう。曲面(例えば、凹面または凸面)の場合、電極の活性面に垂直な異方性の力の成分は、異方性の力が印加される点において曲面に接する平面に垂直な成分に対応し得る。異方性の力は、場合によっては、アノードの活性表面上に任意に分布する、1つ以上の予め決定された位置で印加されてもよい。いくつかの実施形態では、異方性の力は、第1の電極(例えば、カソード)および/または第2の電極(例えば、アノード)の活性表面にわたって均一に印加される。
【0093】
本明細書に記載される電気化学セルの特性および/または性能測定基準のいずれかは、充電および/または放電の間に(例えば、セルの充電および/または放電の間に)電気化学セルに異方性の力が加えられている間に、単独で、または互いに組み合わせて、達成され得る。いくつかの実施形態において、電極に、電気化学セルに(例えば、セルの充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に)加えられる異方性の力は、電極(例えば、電気化学セル内のリチウム金属および/またはリチウム合金アノード等のアノード)の活性表面に垂直な成分を含み得る。いくつかの実施形態では、電極の活性表面に垂直な異方性の力の成分は、1kg/cm2以上、2kg/cm2以上、4kg/cm2以上、6kg/cm2以上、8kg/cm2以上,10kg/cm2以上,12kg/cm2以上,14kg/cm2以上,16kg/cm2以上,18kg/cm2以上,20kg/cm2以上、22kg/cm2以上,24kg/cm2以上,26kg/cm2以上,28kg/cm2以上,30kg/cm2以上,32kg/cm2以上,34kg/cm2以上、36kg/cm以上、38kg/cm2以上、40kg/cm2以上、42kg/cm2以上、44kg/cm2以上、46kg/cm2以上、または48kg/cm2以上の圧力を規定する。いくつかの実施形態では、活性表面に垂直な異方性の力の成分は、例えば、50kg/cm2以下、48kg/cm2以下、46kg/cm2以下、44kg/cm2以下、42kg/cm2以下、40kg/cm2以下、38kg/cm2以下、36kg/cm2以下、34kg/cm2以下、32kg/cm2以下、30kg/cm2以下,28kg/cm2以下,26kg/cm2以下,24kg/cm2以下,22kg/cm2以下,20kg/cm以下2,18kg/cm2以下、16kg/cm2以下、14kg/cm2以下、12kg/cm2以下、10kg/cm2以下、8kg/cm2以下、6kg/cm2以下、4kg/cm2以下、または2kg/cm2以下の圧力を規定することができる。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1kg/cm2以上、50kg/cm2以下)。その他の範囲も可能である。
【0094】
本明細書に記載される充電および/または放電中に加えられる異方性の力は、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて加えてもよい。いくつかの実施形態では、力は、圧縮バネを使用して適用されてもよい。力は、特にベルビルワッシャー、機械ネジ、空気圧装置、および/または錘を含むがこれらに限定されない他の要素(封じ込め構造の内部または外部のいずれか)を使用して適用されてもよい。場合によっては、セルは封じ込め構造に挿入される前にあらかじめ圧縮され、封じ込め構造に挿入されると膨張してセルに正味の力を発生させる。このような力を加えるための適切な方法については、例えば米国特許第9,105,938号に詳細に記載されており、この特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0095】
「脂肪族」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和および不飽和の、非芳香族、直鎖(すなわち、非分岐)、分岐、非環式、および環式(すなわち、炭素環式)炭化水素の双方を含み、これらは、1つ以上の官能基で任意に置換される。当業者には理解されるように、「脂肪族」は、本明細書において、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことが意図されるが、これらに限定されない。同様に、「ヘテロ脂肪族」という用語は、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、および複素環基を指す。したがって、本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分岐および環状アルキル基を含む。類似の慣例は、「アルケニル」、「アルキニル」等の他の一般用語にも適用される。さらに、本明細書で使用される場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」等は、置換基および非置換基の双方を包含する。いくつかの実施形態において、本明細書で使用される場合、「脂肪族」は、1~20個の炭素原子を有する脂肪族基(環式、非環式、置換、無置換、分岐または非分岐)を示すために使用される。脂肪族基の置換基としては、安定な部位(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシ等が挙げられ、これらはそれぞれさらに置換されていても置換されていなくてもよい)の形成をもたらす本明細書中に記載される置換基のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルを指す。アルキル基は、以下により詳細に記載されるように、任意に置換されていてもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロアルキル」基は、少なくとも1つの原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リン等)であり、残りの原子が炭素原子であるアルキル基である。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシ、ポリ(エチレングリコール)-、アルキル置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、上記のアルキル基に類似するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基を指す。ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、1つ以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄等)である、本明細書に記載のアルケニル基およびアルキニル基を指す。
【0098】
用語「ハロ脂肪族」は、脂肪族基を指し、1つ以上の水素原子、例えば1~10個の水素原子が、独立して、フルオロ、ブロモ、クロロ、ヨード等のハロゲン原子で置換されている。
【0099】
用語「ハロヘテロ脂肪族」は、1個から10個の水素原子のような1個以上の水素原子が、フルオロ、ブロモ、クロロ、ヨードのようなハロゲン原子で独立して置換されているヘテロ脂肪族基を指す。
【0100】
用語「ハロアルキル」は、置換アルキル基であり、ここで、水素原子の1つ以上が、独立して、ハロゲン、例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードで置換されている。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8ハロアルキル」)。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は、1~6個の炭素原子(「C1-6ハロアルキル」)を有する。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は、1~4個の炭素原子(「C1-4ハロアルキル」)を有する。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は、1~3個の炭素原子(「C1-3ハロアルキル」)を有する。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~2個の炭素原子を有する(「C1-2ハロアルキル」)。ハロアルキル基の例としては、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CH2CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CCl3、-CFCl2、-CF2Cl等が挙げられる。
【0101】
用語「アリール」は、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を有する芳香族炭素環式基を指し、全て任意選択で置換される。「ヘテロアリール」基は、芳香環中の少なくとも1つの環原子がヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素原子であるアリール基である。ヘテロアリール基の例としては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-低級アルキルピロリル、ピリジルN-オキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリル等が挙げられ、これらはすべて任意に置換されている。
【0102】
用語「アミン」および「アミノ」は、非置換および置換アミンの双方を指し、例えば、一般式:N(R’)(R’’)(R’’’)
[式中、R’、R’’およびR’’’は、それぞれ独立に、原子価の規則により許容される基を表す。]で表され得る部位である
【0103】
「アシル基」、「カルボキシル基」または「カルボニル基」という用語は、当技術分野で認識されており、一般式:
【化16】
[式中、WはH、OH、O-アルキル、O-アルケニルまたはそれらの塩である。WがO-アルキルである場合、式は“エステル”を表す。]
で表されるような部位を含むことができる。
WがOHである場合、式は「カルボン酸」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄で置換されている場合、式は「チオールカルボニル」基を表す。WがS-アルキルである場合、式は“チオステロール”を表す。WがSHである場合、式は“チオールカルボン酸”を表す。一方、Wがアルキルである場合、上記式は“ケトン”基を表す。Wが水素の場合、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」は、炭素原子環員および1つ以上のヘテロ原子環員(例えば、酸素、硫黄または窒素等)を含む単環式または多環式のヘテロ芳香族環(またはそのラジカル)を意味する。典型的には、ヘテロ芳香族環は、少なくとも1つの環員が酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子である、5~約14個の環員を有する。別の実施形態では、ヘテロ芳香環は5員環または6員環であり、1~約4個のヘテロ原子を含んでいてもよい。別の実施形態において、ヘテロ芳香環系は、7~14個の環員を有し、1~約7個のヘテロ原子を含んでもよい。代表的なヘテロアリールとしては、ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、カルバゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、クニザオリニル、プリンニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、ベンゾ(b)チエニル等が挙げられる。これらのヘテロアリール基は、1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0105】
「置換(または置換の、または置換された;substituted)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが意図されており、「許容される」とは、当業者に公知の原子価の化学的規則の文脈におけるものである。場合によっては、「置換」は、一般に、本明細書に記載されるような置換基による水素の置換を指すことがある。しかしながら、本明細書で使用される「置換」は、例えば、「置換」官能基が置換により異なる官能基になるような、分子が識別される主要な官能基の置換および/または変化を包含しない。例えば、「置換されたフェニル」は、依然としてフェニル部分を含まなければならず、この定義では、置換によって、例えばピリジンのようなヘテロアリール基になるように修飾することはできない。広い態様において、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が含まれる。例示的な置換基としては、例えば、本明細書に記載のものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1つまたは複数であり得、そして同じまたは異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有していてもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によっていかなる方法においても限定されることを意図するものではない。
【0106】
置換基の例としては、アルキル、アリール、アラルキル、環状アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシル、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、アルコキシアルキル、パーハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
ある部分(例えば、層、構造、領域)が別の部分の「に(on)」、「隣接して(adjacent)」、「上に(above)」、「上に(over)」、または「別の部分によって支持されて(supported by)」いる場合、その部分に直接存在することもできるし、介在する部分(例えば、層、構造、領域)が存在することもできることを理解すべきである。同様に、ある部分が別の部分の「下(below)」または「下(underneath)」にある場合、その部分はその部分の直下にあることもできるし、介在する部分(例えば、層、構造、領域)も存在することができる。別の部分に「直接的に」、「直接的に隣接して」、「すぐ隣接して」、「直接的に接触して」、または「直接的に支持されて」いる部分は、介在部分が存在しないことを意味する。また、ある部分が、別の部分の「に(on)」、「に(above)」、「隣接して(adjacent)」、「上に(over)」、「上に(overlaying)」、「接して」、「下に」、または「別の部分によって支持されて」いると称される場合、その部分は、その部分全体を覆っていてもよいし、その部分の一部を覆っていてもよいことも理解されるべきである。
【0108】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するためのものであるが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0109】
実施例1
本実施例では、非対称スルホンアミドのN-エチル-N-トリメチルシリルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et(Me3Si)NSO2CF3)の合成について説明する。不活性雰囲気下、無水トリフリック(130.4g,77.74mL,0.462mol)を、-70℃に冷却したテトラヒドロフラン(50g,554.51mL,1.109mol)中のエチルアミンの2M溶液に滴下添加した。反応混合物を室温まで温め、12時間攪拌した。溶媒を留去し、500mLH2Oを残渣に加え、得られた混合物をCH2Cl2で抽出した。抽出物をCaCl2上で数時間乾燥させた。溶媒を大気圧で蒸留した。減圧蒸留(b.p.81°C/15mmHg)により、N-エチルトリフルオロメチルスルホンアミド36.82g(収率45%)を得た。1HNMRinCDCl3:1.26ppm,3H(t3J=7.2Hz),3.35ppm,2H(q3J=7.2Hz),5.31ppm,1H(s),13CNMRinCDCl3:15.7ppm(CH3),39.92ppm(CH2),119.9ppm(CF3)(q1JC-F=320.8Hz),19FNMRinCDCl3:-77.97ppm(s)。
【0110】
室温でアルゴン雰囲気下、N-エチルトリフルオロメチルスルホンアミド(18.46g,0.104mol)を150mLのテトラヒドロフランに溶解した溶液に、撹拌しながら部分的にKH(4.179g,0.104mol)を加え、12時間撹拌し続けた。形成されたカリウム塩に、Me3SiCl(11.32g,13.22mL,0.104mol)を加え、反応混合物を室温で12時間攪拌した。得られた反応混合物をろ過して沈殿を除去した。溶媒を大気圧で蒸留した。減圧蒸留(b.p.57°C/15mmHg)により、目的の生成物14.258g(収率55%)を得た。1HNMRinCDCl3:0.40ppm,9H(sSiMe3),1.28ppm,3H(t3J=7.1Hz),3.36ppm,2H(q3J=7.1Hz),13CNMRinCDCl3:0.97ppm(SiMe3),17.41ppm(CH3),43.39ppm(CH2),120.08ppm(CF3)(q1JC-F=323.18Hz),19FNMRinCDCl3:-76.68ppm(s),29SiNMRinCDCl3:21.12ppm(s).
【0111】
実施例2
本実施例では、N-結合型複素環を含む非対称スルホンアミドのピロリルパーフルオロブチルスルホンアミドの合成について説明する。この化合物は以下のプロトコルで合成した。不活性雰囲気下、150mLのジエチルエーテル中のピロリン酸リチウム(ピロールとMeLiから製造)(3g、0.04mol)の懸濁液に、攪拌しながらパーフルオロブチルスルホニルフルオリド(12.4g、0.04mol)を部分的に加え、反応混合物を形成させた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を500mLの水に注ぎ、得られた水層をジエチルエーテル(2x75mL)および塩化メチレン(75mL)で抽出した。合わせた抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を大気圧で留去した。得られた残渣を真空中で蒸留し(b.p.22oC/0.7mmHg)、収率54.2%(7.78g)を得た。1HNMRinCDCl3:6.47ppm,2Hm,7.14ppm2Hm,13CNMRinCDCl3:115.66ppm(2CH),122.67ppm(2CH),107-123ppm(m,C4F9),19FNMRinCDCl3:-126.12ppm(m,CF2),-121.20ppm(m,CF2),-111.04ppm(m,CF2),-80.98ppm(tt,CF3,3JF-F=9.8Hz,4JF-F=2.3Hz)。
【0112】
実施例3
本実施例では、N-結合型複素環を含む非対称スルホンアミドのイミダゾリルパーフルオロブチルスルホンアミドの合成について説明する。この化合物は以下のプロトコルで合成した。不活性雰囲気下、150mLのジエチルエーテル中のLiイミダゾレート(イミダゾールとMeLiから製造)(3g、0.04mol)の懸濁液に、攪拌しながらパーフルオロブチルスルホニルフルオリド(12.4g、0.04mol)を部分的に加え、反応混合物を形成させた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を500mLの水に注ぎ、得られた水層をジエチルエーテル(2x75mL)および塩化メチレン(75mL)で抽出した。合わせた抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を大気圧で留去した。得られた残渣を真空中で蒸留し(b.p.22oC/0.7mmHg)、56.1%の収率を得た。1HNMRinCDCl3:7.28ppm,1Hdd(3J=1.8Hz,4J=0.8Hz),7.39ppm1Hm,8.04ppm1Hm,13CNMRinCDCl3:119.35ppm(1CH),132.74ppm(1CH),138.41ppm(1CH),105-120ppm(m,C4F9),19FNMRinCDCl3:-126.29ppm(m,CF2),-121.09ppm(m,CF2),-110.41ppm(m,CF2),-81.21ppm(tt,CF3,3JF-F=9.7Hz,4JF-F=2.1Hz)。
【0113】
実施例4
本実施例では、NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)カソード、厚さ50マイクロメートルのリチウムアノード、および厚さ9マイクロメートルのポリオレフィン・セパレーターを含むセルにおいて、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートを含む例示的な電解質の性能を比較している。セルの有効電極面積は99.4cm2で、電解質は0.5mLであった。各電解質の構成を表1に示す。使用した非対称スルホンアミドは、N,N-ジメチルフルオロスルホンアミド(Me2NSO2F)、N,N-ジエチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et2NSO2CF3)、N,N-ジメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Me2NSO2CF3)、N-エチル-N-トリメチルシリルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et(Me3Si)NSO2CF3)である。電解質4-5は電解質1-3とは異なり、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)ではなく、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiFSI)を含んでいる。さらに、電解質4は、線状カーボネートとしてジメチルカーボネートではなく、エチルメチルカーボネートを含む。参照のため、非対称スルホンアミドを含まないカーボネート電解質も分析した(電解質6)。電気試験中、セルには12kg/cm2の圧力がかかった。充電は4.4Vで75mAの充電電流で行い、放電は3.0Vで300mAの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は121~123mAhであった。セルは70mAhの充電貯蔵カットオフ容量に達するまでサイクルされ、サイクル寿命(充電貯蔵カットオフ容量に達するまでの充電回数)はこの時点で決定された。1つの電解質につき3つのセルをテストした。これらの結果から、非対称スルホンアミドを含むセルのサイクル寿命は参照の電解質を含むセルのサイクル寿命よりも長かった。
【0114】
【0115】
実施例5
本実施例では、NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)カソード、厚さ50マイクロメートルのリチウムアノード、および厚さ9マイクロメートルのポリオレフィン・セパレーターを含むセルにおいて、非対称スルホンアミド、線状カーボネートおよび、環状カーボネートを含む例示的な電解質の過充電時の安定性を比較している。セルの有効電極面積は1280cm2で、電解質は7mLであった。各電解質の構成を表2に示す。使用した非対称スルホンアミドは、N,N-ジメチルフルオロスルホンアミド(Me2NSO2F)、N,N-ジエチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et2NSO2CF3)、およびN,N-ジメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Me2NSO2CF3)である。参考のため、非対称スルホンアミドを含まないカーボネート電解質も分析した(電解質6)。電気試験中、セルには12kg/cm2の圧力がかかった。充電は4.35Vで0.5Aの充電電流で行い、放電は3.2Vで2Aの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は6Ahだった。セルは4回の充放電サイクルに供され、過充電試験の前に100%の充電状態(SOC)まで充電された。過充電試験は18Aの充電電流で60分間行った。この試験中、セルの電圧と温度がモニターされた。各電解質につき3つのセルを試験した。表2は平均的な試験データを示す。この結果から、非対称スルホンアミドを含む電解質は、過充電時の最大電圧(すなわち、過充電電圧)が高く、温度が低いという有利な関係があることが示された。
【0116】
【0117】
実施例6
本実施例では、NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)カソード、厚さ50マイクロメートルのリチウムアノード、および厚さ9マイクロメートルのポリオレフィン・セパレーターを含むセルにおいて、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、および環状カーボネートを含む例示的な電解質の熱安定性を比較した。セルは実施例5で使用したセルと同一であった。電気試験中、セルには12kg/cm2の圧力がかかった。充電は4.35Vで0.5Aの充電電流で行い、放電は3.2Vで2Aの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は6Ahだった。セルは4回の充放電サイクルに供され、熱安定性試験の前に100%の充電状態(SOC)まで充電された。熱安定性試験は、セルが熱暴走を起こすまで、20℃から5℃/分の速度で温度を上昇させることで行った。熱暴走が発生した温度を表3に示す。これらの結果は、非対称スルホンアミドの存在が、少なくとも10℃の熱暴走温度の上昇と有利に関連していることを示している。
【0118】
【0119】
実施例7
本実施例では、ガス発生の例示的なセルを比較する。セルは実施例5で使用したセルと同一であった(この実験では、参照の電解質6セルと電解質8セルのみが準備された)。
電気試験中、セルは12kg/cm2の圧力にさらされた。充電は4.35Vで0.5Aの充電電流で行い、放電は3.2Vで2Aの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は6Ahであった。セルは4回の充放電サイクルに供され、ガス発生試験の前に100%の充電状態(SOC)まで充電された。ガス発生試験は3段階で行われた:
1.セル体積V1は、高温にさらす前の20℃で測定した;
2.セルを72℃で60時間保存した;
3.セルを20℃まで冷却し、新しいセル体積V2を測定した。
【0120】
セル体積の増加(V2-V1)は、主に高温保存中のガス発生によるものである。試験中、参照の電解質6を用いたセルは33.32mLの体積増加を示したが、電解質8を用いたセルは28.53mLの体積増加を示した。このことは、電解質8を使用したセルではガスの発生が少なかったことを示しており、非対称スルホンアミドが電気化学セル内でのガス発生を有利に抑える可能性があることを示している。
【0121】
実施例8
本実施例では、NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)カソード、厚さ50マイクロメートルのリチウムアノード、および厚さ9マイクロメートルのポリオレフィン・セパレーターを含むセルにおいて、非対称スルホンアミドと環状カーボネートを含む例示的な電解質の性能を、環状カーボネートのみと比較した。セルの有効電極面積は99.4cm2で、電解質は0.5mLであった。各電解質の構成を表4に示す。非対称スルホンアミドはN,N-ジエチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et2NSO2CF3)であった。電気試験中、セルには12kg/cm2の圧力がかかった。充電は4.4Vで75mAの充電電流で行い、放電は3.0Vで300mAの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は123mAhであった。セルは70mAhの充電貯蔵カットオフ容量に達するまでサイクルされ、サイクル寿命(充電貯蔵カットオフ容量に達するまでの充電回数)はこの時点で決定された。1つの電解質につき3つのセルをテストした。これらの結果から、非対称スルホンアミドを含むセルのサイクル寿命は、参照の電解質を含むセルのサイクル寿命よりも長かったことがわかる。これらの結果は、非対称スルホンアミドとフルオロエチレンカーボネートが、いくつかの実施形態において、サイクル寿命の高いセルを製造できることを示している。例えば、実施例4の参照電解質6と比較すると、電解質10および電解質11は、より良好なサイクル寿命を有していた。しかし、予期せぬことに、非対称スルホンアミド、線状カーボネートおよび環状カーボネートを組み合わせてなるセルのサイクル寿命は、これらの成分の1つを欠く電解質を含むセルのサイクル寿命を上回り、そのような組み合わせの中で最もサイクル寿命が低い電解質2(サイクル寿命:1039サイクル)は、本開示で報告された電解質のサイクル寿命を2倍以上上回った。
【0122】
【0123】
実施例9
本実施例では、NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)カソード、厚さ50マイクロメートルのリチウムアノード、および厚さ9マイクロメートルのポリオレフィン・セパレーターを含むセルにおいて、非対称スルホンアミドと環状カーボネートを含む例示的な電解質の性能を、線状カーボネートのみと比較する。さらに本実施例では、対称スルホンアミドであるN,N,N’,N’-テトラエチルスルファミド(Et2NSO2NEt2)を含む電解質の性能と、非対称スルホンアミドを含む電解質の性能を比較している。セルの有効電極面積は99.4cm2で、電解質は0.5mLであった。各電解質の構成を表4に示す。使用した非対称スルホンアミドは、N,N-ジイソプロピルトリフルオロメチルスルホンアミド(iPr2NSO2CF3)、N,N-ジエチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Et2NSO2CF3)、N,N-ジメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(Me2NSO2CF3)、およびN,N-エチルメチルトリフルオロメチルスルホンアミド(EtMeNSO2CF3)である。電気試験中、セルには12kg/cm2の圧力がかかった。充電は4.4Vで75mAの充電電流で行い、放電は3.0Vで300mAの放電電流で行った。初期状態では、セルの充電貯蔵容量は123mAhであった。セルは70mAhの充電貯蔵カットオフ容量に達するまでサイクルされ、サイクル寿命(充電貯蔵カットオフ容量に達するまでの充電回数)はこの時点で決定された。1つの電解質につき3つのセルをテストした。予期せぬことに、非対称スルホンアミド、線状カーボネート、環状カーボネートの組み合わせを含むセルのサイクル寿命は、これらの成分のいずれかを欠く電解質を含むセルのサイクル寿命を上回り、そのような組み合わせの中で最もサイクル寿命が短い電解質2(サイクル寿命:1039サイクル)は、ここで報告した電解質のサイクル寿命を4倍以上上回った。
【0124】
【0125】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書で説明および図示されてきたが、当業者であれば、本明細書で説明される機能を実施するためのおよび/または結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定することができ、そのような変形および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものであることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される/使用される特定の用途または適用に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記載された本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験以上のことを行わずに確認することができるであろう。従って、前述の実施形態は例示としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載され、特許請求の範囲に記載されている以外の方法で実施され得ることが理解される。本発明は、本明細書に記載された個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法に向けられている。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0126】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞“a”および“an”は、反対の意味で明確に示されない限り、“少なくとも1つ”を意味すると理解されるべきである。
【0127】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか一方または両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。他の要素は、「および/または」節によって具体的に特定された要素以外に、任意に存在することができ、反対のことが明確に示されない限り、具体的に特定された要素に関連しているか、または関連していないかにかかわらず、存在することができる。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」等のオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、ある実施形態では、Bを含まないA(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態では、Aを含まないB(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む);等を指すことができる。
【0128】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は、包含的であること、すなわち、要素の数またはリストの少なくとも1つを含むが、1つ以上を含むこと、および任意選択で、さらにリストにない項目を含むことと解釈されるものとする。「の1つだけ(only one of)」、「の1つだけ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において使用される場合、「からなる(consisting of)」のような、反対を明確に示す用語のみが、要素の数またはリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される“または”という用語は、“どちらか一方(either)”、“いずれか一方(one of)”、“いずれか一方のみ(only one of)”、または“いずれか一方のみ(exactly one of)”のような排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的な選択肢(すなわち、“一方または他方であって両方ではない”)を示すものと解釈される。特許請求の範囲において使用される“から本質的になる(Consisting essentially of)”は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0129】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに言及する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素および全ての要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意に存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、等価的に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、等価的に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、Bが存在しない(および、任意選択的にB以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意選択的に1つ以上の、Aを指すことができる;別の実施形態では、Aが存在しない(および任意選択でA以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意選択で1つ以上のBを含む;さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で1つ以上のAを含む、および少なくとも1つの、任意選択で1つ以上のBを含む(および任意選択で他の要素を含む);等を指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「wt%」は重量%の略称である。本明細書で使用される場合、「at%」は原子百分率の略語である。特許請求の範囲において、請求項要素を修飾するために「第1」、「第2」、「第3」等の序数項を使用することは、それ自体、ある請求項要素の他の請求項要素に対する優先順位、先行順位、順序、または方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではなく、請求項要素を区別するために、ある名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称を有する(ただし、序数項を使用する)別の要素から区別するためのラベルとして使用されるにすぎない。
【0131】
上記明細書と同様に、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「実施する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(involving)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」等のすべての経過的語句は、オープンエンド、すなわち、含むが限定されないことを意味すると理解される。米国特許庁の「特許審査手続マニュアル」第211.03項に規定されているように、「~からなる」および「~から本質的になる」という経過的表現のみが、それぞれ閉じたまたは半閉じた経過的表現でなければならない。
【国際調査報告】