(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】スルフィルイミン型リガンドとの金属錯体及び重合触媒としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07F 17/00 20060101AFI20240401BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240401BHJP
C07F 7/28 20060101ALI20240401BHJP
C07C 381/10 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C07F17/00
C08F4/6592
C07F7/28 F CSP
C07C381/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561813
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022059349
(87)【国際公開番号】W WO2022214634
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511242409
【氏名又は名称】アランセオ・ネザーランズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・ベルソー
(72)【発明者】
【氏名】フィクトル・フィデル・キロガ-ノランブエナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ヘンドリクス・ヴィルヘルムス・ファン・デ・ムースデイク
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
4H050
4J128
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H049VN05
4H049VP01
4H049VQ05
4H049VQ52
4H049VR23
4H049VR51
4H049VW01
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC10
4J128AD01
4J128AD16
4J128AD17
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128CB25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB04
4J128EB18
4J128EC03
4J128EC05
4J128GA01
4J128GB02
(57)【要約】
一般式(I)の金属錯体:Cyc L M Z
p(I)(式中、Mが、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群から選択される金属であり;Cycが、シクロペンタジエニル、インデニル、及びフルオレニルから選択され、1つ以上の置換基を有し得る環状リガンドであり;Zが、アニオン性リガンドであり、Lが、一般式(II):
のスルフィルイミン含有リガンドであり、式中、Sub1及びSub2が、互いに独立して、非置換であり得るか又は少なくとも1つの置換基を含有し得る芳香族残基である)。モノマーの重合のための化合物の使用及び金属錯体を使用してポリマーを生成するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
Cyc L M Z
p (I)
(式中、
Mが、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群から選択される金属であり;
Cycが、シクロペンタジエニル、インデニル、及びフルオレニルから選択される環状リガンドであり、かつ1つ以上の置換基を有していてもよく;
Zが、前記金属Mに結合された中性又はアニオン性リガンドから独立して選択され、ここで、前記中性リガンドが、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化カルビル及びそれらの組合せからなる群から選択される置換基で1回又は2回以上任意選択により置換されていてもよい、4~40個の炭素原子を有する共役ジエンから選択され、また、前記アニオン性リガンドが、-H、-F、-Cl、-Br、I、-擬ハロゲン、-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-アルキル、-C(=O)C
1~12-アルキル、-アセチルアセトネート、C
1~12アルキルのビスカルボキシレート、-フェニル、-O-フェニル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-Ge(C
1~12-アルキル)
3、-N(C
1~12-アルキル)
2、-P(C
1~12)-アルキル)
2、-S-C
1~12-アルキルのアニオン形態、及びそれらの組合せからなる群から;好ましくは、-C
1~12-アルキル、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、O-フェニル;-C
1~12アルキル、-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、-Cl、-Br、-I、-擬ハロゲン、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4、又は5つの置換基で置換された-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択されるリガンドであり;
指数pが、1又は2のいずれか、好ましくは2であり;かつ
Lが、一般式(II):
【化1】
のスルフィルイミン型リガンドであり、式中、Sub1及びSub2が芳香族残基であって、これらは互いに独立して、非置換であるか又は少なくとも1つの置換基を有していてもよい芳香族残基である)
の金属錯体。
【請求項2】
前記リガンドLが、下記一般式(III):
【化2】
に相当し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、-C
1~12-アルキル、-C
1~12-フルオロアルキル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-フェニル、-NH
2、-NH(C
1~12-アルキル)、-N(C
1~12-アルキル)
2、-C(=O)-NH
2、-C(=O)-NH(C
1~12-アルキル)、-C(=O)-N(C
1~12-アルキル)
2、-OH、-O-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-フルオロアルキル、-S-C
1~12-アルキル、及び-C(=O)C
1~12-アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
前記リガンドLが、下記一般式(III):
【化3】
に相当し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-CF
3、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-C
4H
9(その異性体を含む)、-C
6H
13(その異性体を含む)、-C
10H
21(その異性体を含む);フェニル、及び-Si(CH
3)
3から選択され、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも2つ又は少なくとも3つが、-Hから選択される、請求項1又は2に記載の金属錯体。
【請求項4】
前記リガンドLが、下記一般式(III):
【化4】
に相当し、式中、
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル、及びそれらの組合せから選択される残基を表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも2つが、Hを表し、かつ、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも2つが、水素を表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル及びそれらの組合せから選択される残基を表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも3つが、水素を表し、かつ、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも3つが、水素を表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル、及びそれらの組合せから選択される残基を表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5の全てが水素を表すか、又はR1’、R2’、R3’、R4’及びR5’の全てが水素を表すかのいずれかである、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項5】
指数pが、1であり、かつ、前記錯体が、下記一般式(I-A)若しくは(I-B)に相当し、又は指数pが、2であり、かつ、前記金属錯体が、下記一般式(I-C):
【化5】
に相当し、式中、それぞれ、R6、R7、R8、R9、及びR10が、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-C
4H
9(その異性体を含む)、-C
6H
13(その異性体を含む)、-C
10H
21(その異性体を含む)、-フェニル、-ビフェニル(その異性体を含む)、-Si(CH
3)
3からなる群から互いに独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項6】
指数pが、1であり、かつ、前記錯体が、下記一般式(I-D)で表され、又は指数pが、2であり、かつ、前記錯体が、下記一般式(I-E):
【化6】
で表され、式中、各場合に、
前記リガンドZが、-CH
3、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、-O-フェニル;-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、F、Cl、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4、又は5つの置換基で置換された-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、-C
1~12-アルキル、-C
1~12-フルオロアルキル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-フェニル、-NH
2、-NH(C
1~12-アルキル)、-N(C
1~12-アルキル)
2、-C(=O)-NH
2、-C(=O)-NH(C
1~12-アルキル)、-C(=O)-N(C
1~12-アルキル)
2、-OH、-O-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-フルオロアルキル、-S-C
1~12-アルキル及び-C(=O)C
1~12-アルキルからなる群から選択され;
R6、R7、R8、R9、及びR10が、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-C
4H
9(その異性体を含む)、-C
6H
13(その異性体を含む)、-C
10H
21(その異性体を含む)、-フェニル、-ビフェニル(その異性体を含む)、及び-Si(CH
3)
3からなる群から互いに独立して選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項7】
前記指数pが、2であり、かつ、前記金属錯体が、下記一般式(I-E):
【化7】
に相当し、式中、各Zが、互いに独立して、-CH
3、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、-O-フェニル;-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、-Cl、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4、又は5つの置換基で置換された-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、-C
1~12-アルキル、-C
1~12-フルオロアルキル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-フェニル、-NH
2、-NH(C
1~12-アルキル)、-N(C
1~12-アルキル)
2、-C(=O)-NH
2、-C(=O)-NH(C
1~12-アルキル)、-C(=O)-N(C
1~12-アルキル)
2、-OH、-O-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-フルオロアルキル、-S-C
1~12-アルキル及び-C(=O)C
1~12-アルキルからなる群から選択される金属錯体であって、
R6、R7、R8、R9、及びR10が、互いに独立して、-H及び-CH
3から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
前記指数pが、2であり、かつ、前記金属錯体が、下記一般式(I-E):
【化8】
に相当し、式中、各Zが、互いに独立して、-CH
3、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、-O-フェニル;-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、-Cl、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4、又は5つの置換基で置換された-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択され;
R6、R7、R8、R9、及びR10が、互いに独立して、-H及び-CH
3から選択される金属錯体であって、
R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-CF
3、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-C
4H
9(その異性体を含む)、-C
6H
13(その異性体を含む)、-C
10H
21(その異性体を含む);フェニル、及び-Si(CH
3)
3から選択され、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’のうちの少なくとも2つ又は少なくとも3つが、-Hから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項9】
前記指数pが、2であり、かつ、前記金属錯体が、下記一般式(I-E):
【化9】
に相当し、式中、各Zが、互いに独立して、-CH
3、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、-O-フェニル;-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、-Cl、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4、又は5つの置換基で置換された-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択され;
R6、R7、R8、R9、及びR10が、互いに独立して、-H及び-CH
3から選択される金属錯体であって、
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル、 及びそれらの組合せから選択される残基を表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも2つが、水素を表し、かつ、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも2つが、水素を表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル、及びそれらの組合せから選択される残基を表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも3つが、Hを表し、かつ、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも3つが、水素を表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、トリフルオロメチル、及びそれらの組合せを表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5の全てが水素を表すか、又はR1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の全てが水素を表すかのいずれかであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項10】
前記金属Mがチタンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項11】
Zが-CH
3である、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項12】
ポリマーを調製するための方法であって、
(a)エチレンを含むモノマー組成物を準備する工程と;
(b)前記モノマー組成物の少なくとも一部を、請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの金属錯体を含む触媒組成物と接触させて、エチレンに由来する単位を含むポリマーを生成させる工程とを含む、方法。
【請求項13】
前記ポリマーが、エチレン及び3~20個の炭素原子を有する少なくとも1つのα-オレフィン、並びに任意選択により場合によっては、6~30個の炭素原子を有し、少なくとも1つの環状単位を有する少なくとも1つの非共役ジエンに由来する単位を有するエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、前記モノマー組成物が、エチレン、プロピレン及び任意選択により場合によっては、3~20個の炭素原子を有する少なくとも1つのα-オレフィン、及び任意選択により場合によっては、6~30個の炭素原子を有し、少なくとも1つの環状単位を有する少なくとも1つの非共役ジエンを含み、かつ、好ましくは、前記コポリマーが、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定して、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、及びそれらの組合せから選択されるジエンに由来する単位を含むエチレン/プロピレン/ジエンコポリマーである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
エチレンに由来する単位を含むポリマーを製造するための重合触媒としての、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属錯体を含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第4族金属を含み、スルフィルイミン型含有リガンドを有する金属錯体、オレフィンの重合のための金属錯体の使用、及び金属錯体を使用してポリマーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、α-オレフィン又はポリエンなどの、単純アルケンから生成されるポリマーである。それらは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、及びポリブテン-1(PB-1)などの熱可塑性ポリオレフィンと;高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリ-α-オレフィン-エチレン-プロピレンゴム(EPM)、及びエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDMゴム)などのポリオレフィンエラストマー(POE)とに区別され得る。これらのポリマーは、一般に、重合触媒を用いて生成される。多くのこのような触媒が、公知である。アミド基含有リガンドを有するハーフメタロセン触媒及び高分子量のポリマーを生成するためのオレフィンの重合におけるそれらの使用が、例えば、米国特許第6,114,481号明細書及び国際公開第2005/090418号パンフレットに記載されている。しかしながら、代替的な又は改良された重合触媒が、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,114,481号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/090418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、第4族金属及びスルフィルイミン型リガンドを含むハーフメタロセン金属錯体が、ポリオレフィン、特に、高分子量の、好ましくは、少なくとも200,000g/モルの分子量(Mw)のオレフィンを生成するためにオレフィンの重合において使用され得ることも分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、一般式(I)の金属錯体:
Cyc L M Z
p(I)
(式中、
Mが、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群から選択される金属であり;Cycが、金属Mに結合された環状リガンドであり、非置換及び置換シクロペンタジエニル、インデニル、及びフルオレニルから選択され;
Zが、金属Mに結合された中性又はアニオン性リガンドから独立して選択され、ここで、中性リガンドが、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化カルビル及びそれらの組合せからなる群から選択される置換基で1回又は2回以上任意に置換され得る、4~40個の炭素原子を有する共役ジエンから選択され、アニオン性リガンドが、-H、-F、-Cl、-Br、-I、擬ハロゲン、-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-アルキル、-C(=O)C
1~12-アルキル、-アセチルアセトネート、C
1~12アルキルのビスカルボキシレート、-フェニル、-O-フェニル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-Ge(C
1~12-アルキル)
3、-N(C
1~12-アルキル)
2、-P(C
1~12)-アルキル)
2、-S-C
1~12-アルキルのアニオン形態、及びそれらの組合せ;好ましくは、-C
1~12-アルキル、ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル、O-フェニル、-C
1~12アルキル、-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、-Cl、-Br、-I、-擬ハロゲン、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4又は5つの置換基で置換される-フェニル及び-O-フェニルからなる群から選択され、
指数pが、1又は2のいずれか、好ましくは、2であり;
Lが、金属Mへの硫黄-窒素二重結合の窒素原子によって結合された、一般式(II):
【化1】
のスルフィルイミン型リガンドであり、式中、Sub1及びSub2が、互いに独立して、非置換であり得るか又は少なくとも1つの置換基を含有し得る芳香族残基である)
が提供される。
【0006】
別の態様において、ポリマーを調製するための方法であって、
(a)エチレンを含むモノマー組成物を提供する工程と;
(b)モノマー組成物の少なくとも一部を、金属錯体を含む触媒組成物と接触させて、エチレンに由来する単位を含むポリマーを生成する工程とを含む、方法が提供される。
【0007】
さらなる態様において、エチレンに由来する単位を含むポリマーを生成するための重合触媒としての金属錯体を含む組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示及びその利点の完全な理解のために、以下の詳細な説明が参照される。
【0009】
本明細書に開示される詳細な説明の様々な態様及び実施形態が、本開示を作製及び使用する特定の方法を例示するためのものであり、特許請求の範囲及び詳細な説明とともに考慮されるとき、本開示の範囲を限定しないことが理解されるべきである。本開示の様々な態様及び実施形態からの特徴が、本開示の様々な態様及び実施形態からの特徴と組み合わされ得ることも理解されるであろう。
【0010】
以下の説明において、「含有する(containing)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意のさらなる構成要素、工程又は手順の存在を、それが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することが意図されない。
【0011】
以下の説明において、いくつかの基準が使用され得る。特に示されない限り、基準は、2020年3月1日に施行されたバージョンで使用される。例えば、基準が失効したため、その日付の時点で有効なバージョンがない場合、2020年3月1日に最も近い日付で有効なバージョンが参照される。
【0012】
以下の説明において、組成物又はポリマーの成分の量は、「重量パーセント(weight percent)」、「重量%(wt.%)」又は「重量%(% by weight)」によって示され得る。「重量パーセント」、「重量%(wt.%)」又は「重量%(% by weight)」という用語は、同義的に使用され、それぞれ、組成物又はポリマーの総重量を基準にしており、総重量は、特に示されない限り100%である。
【0013】
「phr」という用語は、ゴム100部当たりの部数、すなわち、100%に設定されるゴムの総量を基準にした重量パーセンテージを意味する。
【0014】
本開示において特定される範囲は、特に規定されない限り、範囲の端点の間の全ての値及び端点を含み、それを開示することが意図される。
【0015】
「置換」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、水素以外の化学物質で置換された有機化合物を表すのに使用される。この化学物質は、本明細書において「置換基」、「残基」又は「ラジカル」と同義的に言及される。例えば、「フッ素で置換されたメチル基」又は「フッ素置換メチル基」という用語は、フッ素化メチル基を指し、基-CF3、-CHF2及び-CH2Fを含む。「非置換」という用語は、水素原子のいずれも置換されていない有機化合物又は残基を表すことが意図される。例えば、「非置換メチル基」という用語は、メチル、すなわち、-CH3を指す。
【0016】
金属錯体
リガンドCyc
「Cyc」と表されるリガンドは、シクロペンタジエニルリガンド、インデニルリガンド及びフルオレニルリガンドから選択される。Cyc-リガンドは、非置換であってもよく、又はそれらは、置換されていてもよく、これは、それらが、1つ又は2つ以上の置換基を含有することを意味する。
【0017】
好ましくは、置換基は、互いに独立して、C1~12-アルキル、C6~C12アリール、及びトリアルキルシランからなる群から選択される。-C1~C12アルキルの例としては、限定はされないが、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-C4H9(異性体を含む)、-C6H13(異性体を含む)、又は-C10H21(異性体を含む)が挙げられる。C6~C12アリールの例としては、限定はされないが、フェニル、ビフェニル(異性体を含む)及び1~6個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル置換基を含有するフェニルが挙げられる。
【0018】
本開示の好ましい実施形態において、リガンドCycは、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、トリメチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル及びペンタメチルシクロペンタジエニルから選択される。
【0019】
金属M
本開示の金属錯体の金属Mは、第4族金属である。本開示の趣旨では、「第4族金属」という用語は、従来のIUPAC命名法を指す。好ましくは、金属Mは、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群から選択される。本発明の特に好ましい実施形態において、金属Mはチタンである。金属Mの酸化状態は、リガンドZがアニオン性リガンドであるか又は中性リガンドであるかに応じて異なり得るが、金属Mは、金属錯体の全電荷が中性であるような酸化状態である。
【0020】
リガンドZ
好ましい実施形態において、リガンドZは、アニオン性である。好ましくは、リガンドZは、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-擬ハロゲン、-C1~12-アルキル、-O-C1~12-アルキル、-C(=O)C1~12-アルキル、-アセチルアセトネート、C1~12アルキルのビスカルボキシレート、-フェニル、-O-フェニル;-Si(C1~12-アルキル)3、-Ge(C1~12-アルキル)3、-N(C1~12-アルキル)2、-P(C1~12)-アルキル)2、-S-C1~12-アルキル、及びそれらの組合せ;好ましくは、-C1~12-アルキルからなる群から選択され、ここで、これらのリガンドは、それらのアニオン性形態である。擬ハロゲンは、化学的性質が真のハロゲンに類似し、いくつかの種類の化学化合物においてハロゲンの代用となることが可能であるハロゲンの多原子類似体である。好適な例としては、限定はされないが、-CN、-OCN、-SCN又は-N3が挙げられる。
【0021】
好ましくは、リガンドZは、-CH3、-ベンジル、-Si(CH3)3、-CH2-Si(CH3)3、-フェニル、-O-C1~12-アルキル、-N(C1~12-アルキル)2、-F、及び-Si(C1~12-アルキル)3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4又は5つの置換基で置換される-フェニル、例えば、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、N,N-ジメチルアミノフェニル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペルフルオロフェニル、トリメチルシリルフェニル、ビス(トリメチルシリル)フェニル、トリス(トリメチルシリル)フェニルからなる群から選択され;好ましくは、Zが-CH3である。
【0022】
本開示の別の実施形態において、リガンドZは、中性リガンドであり、共役ジエンから選択される。ジエンリガンドは、s-trans配置(π-結合)又はs-cis配置(π-結合若しくはσ-結合のいずれか)のいずれかで金属Mと結合され得る。好ましくは、共役ジエンは、4~40個の炭素原子を含有し、任意に、ヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化カルビル又はそれらの組合せからなる群から互いに独立して選択される置換基で1回又は2回以上置換され得る。好適な中性リガンドの例としては、限定はされないが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;2,3-ジフェニル-1,3-ブタジエン;3-メチル-1,3-ペンタジエン;1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン;2,4-ヘキサジエン;2,4,5,7-テトラメチル-3,5-オクタジエン;2,2,7,7-テトラメチル-3,5-オクタジエン;1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン;1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン;2,3-ジメチルブタジエンが挙げられる。
【0023】
本開示の特に好ましい実施形態において、金属錯体が2つのリガンドZを含み、好ましくは、両方のリガンドZが同一であるように、指数pは、2である。本開示の特に好ましい実施形態において、2つのリガンドZがそれぞれ、メチルアニオンである。
【0024】
本開示に係る金属錯体の好ましい実施形態において、指数pは、1であり、錯体は、下記一般式(I-A)若しくは(I-B)に相当し、又は指数pは、2であり、本開示に係る金属錯体は、下記一般式(I-C):
【化2】
に相当し、式中、それぞれ、R6、R7、R8、R9及びR10が、互いに独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-C
4H
9(異性体を含む)、-C
6H
13(異性体を含む)、-C
10H
21(異性体を含む)、-フェニル、-ビフェニル(異性体を含む)、-Si(CH
3)
3、及びそれらの混合物;好ましくは、-CH
3からなる群から選択される。一般式(I-B)の化合物において、リガンドZは、二座である。二座リガンドZは、モノアニオン性(例えばアセチルアセトネート)又はジアニオン性、例えばオキサレートのようなビスカルボキシレート)であり得る。好ましくは、式(I-A)及び(I-C)中のZは、-CH
3、-ベンジル、-Si(CH
3)
3、-CH
2-Si(CH
3)
3、-フェニル;-O-C
1~12-アルキル、-N(C
1~12-アルキル)
2、-F、及び-Si(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4又は5つの置換基で置換される-フェニル、例えば、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、N,N-ジメチルアミノフェニル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペルフルオロフェニル、トリメチルシリルフェニル、ビス(トリメチルシリル)フェニル、トリス(トリメチルシリル)フェニルからなる群から選択され;より好ましくは、Zが-CH
3である。
【0025】
好ましくは、本開示の金属錯体は、式(I-C)に相当する。
【0026】
リガンドL
リガンドLは、スルフィルイミン型リガンドであり、下記式(II):
【化3】
に相当する。スルフィルイミン型リガンドは、そのN-原子を介して、金属錯体の金属Mに結合される。式(II)中の点線は、金属M及び金属錯体の残りの部分が、式(II)中に示されていないことを示す。
【0027】
スルフィルイミン型リガンドLの置換基Sub1及びSub2は、同じか又は異なり得る。好ましくは、リガンドLの置換基Sub1及びSub2のそれぞれが、アリール残基を含む。好ましくは、アリール残基は、リガンドの硫黄原子に直接結合される。しかしながら、アリール残基が、-C1~6-アルキレン-、-O-C1~6-アルキレン-、-C1~6-アルキレン-O-、又は-O-;例えば-CH2-を介して、前記硫黄原子に架橋されることも考えられる。好ましくは、アリール残基は、フェニル、-O-フェニル、ピリジニル、好ましくは、フェニルから選択され、ここで、アリール残基は、C1~C4アルキル及びハロゲン、好ましくは、Fから選択される1つ以上の置換基を含有し得る。Sub1及びSub2の好ましい実施形態としては、互いに独立して、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、イソプロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、2-ピリジニル、フルオロフェニル及びジフルオロフェニルが挙げられる。
【0028】
本開示に係る金属錯体の好ましい実施形態において、リガンドLは、下記一般式(III):
【化4】
に相当し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-C
1~12-アルキル、-C
1~12-フルオロアルキル、-Si(C
1~12-アルキル)
3、-フェニル、-NH
2、-NH(C
1~12-アルキル)、-N(C
1~12-アルキル)
2、-C(=O)-NH
2、-C(=O)-NH(C
1~12-アルキル)、-C(=O)-N(C
1~12-アルキル)
2、-OH、-O-C
1~12-アルキル、-O-C
1~12-フルオロアルキル、-S-C
1~12-アルキル、-C(=O)C
1~12-アルキル、及びそれらの組合せ;好ましくは、-H、-F、-Cl、-Br、-I又は-C
1~12-アルキルからなる群から選択される。式(II)に同様に、式(III)中の点線は、金属原子M及び金属錯体の残りの部分が、式(III)中に示されていないことを示す。
【0029】
本開示の他の好ましい実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-C1~12-アルキル、例えば、-CH3、-CF3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-C4H9(その異性体を含む)、-C6H13(その異性体を含む)、-C10H21(その異性体を含む);フェニル又はビフェニル(その異性体を含む)、又は-Si(C1~12-アルキル)3、例えば、-Si(CH3)3;及びそれらの混合物から選択される。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも2又は3つが、Hから選択される。一実施形態において、R1及びR2が、H又はCH3を表し;R1’及びR2’が、H又はFを表し、R3、R4、R5、R3’、R4’、R5’が、好ましくは、Hを表す。
【0030】
本開示の好ましい実施形態において、
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、F、トリフルオロメチル及びそれらの組合せを表し、ここで、R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも2つが、Hを表し、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも2つが、Hを表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、F、トリフルオロメチル及びそれらの組合せを表し、ここで、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも3つが、Hを表し、R1’、R2’、R3’、R4’及びR5’のうちの少なくとも3つが、Hを表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、F、トリフルオロメチル及びそれらの組合せを表し、ここで、R1、R2、R3、R4及びR5の全てがHを表すか、又はR1’、R2’、R3’、R4’及びR5’の全てがHを表すかのいずれかである。
【0031】
本開示の別の好ましい実施形態において、
-R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、Hを表し;
- R1及びR2が、CH3を表し、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、Hを表し;又は
- R1及びR2が、CH3を表し、R1’及びR2’が、Fを表し、R3、R4、R5、R3’、R4’、及びR5’が、Hを表す。
【0032】
リガンドLの具体例としては、限定はされないが、S,S-ジフェニルスルフィルイミン、S-2,6-ジメチルフェニル-S-フェニルスルフィルイミン及びS-2,6-ジメチルフェニル-S-2,6-ジフルオロフェニルスルフィルイミン、S-2,6-ジイソプロピル-S-フェニルスルフィルイミン、S-2,6-ジメチルフェニル-S-2,6-ジメチルフェニルスルフィルイミン、S-2,6-ジメチル-S-2-ピリジニルが挙げられる。
【0033】
本開示に係る金属錯体の好ましい実施形態において、指数pは、1であり、金属錯体は、下記一般式(I-D)に相当し、又は指数pは、2であり、金属錯体は、下記一般式(I-E)に相当する。
【化5】
式中、それぞれ、
金属Mが、チタン、ジルコニウム、及びハフニウム;好ましくは、チタンからなる群から選択され;
リガンドZが、CH
3、ベンジル、Si(CH
3)
3、CH
2-Si(CH
3)
3、フェニル、O-C
1~12-アルキル、N(C
1~12-アルキル)
2、F、及びSi(C
1~12-アルキル)
3からなる群から互いに独立して選択される1、2、3、4又は5つの置換基で置換されるフェニル、例えば、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、N,N-ジメチルアミノフェニル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペルフルオロフェニル、トリメチルシリルフェニル、ビス(トリメチルシリル)フェニル、トリス(トリメチルシリル)フェニル;好ましくは、CH
3からなる群から選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、CH
3、CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
3、CH(CH
3)
2、C
4H
9(その異性体を含む)、C
6H
13(その異性体を含む)、C
10H
21(その異性体を含む)、フェニル、ビフェニル(その異性体を含む)、Si(CH
3)
3、及びそれらの混合物;好ましくは、H、CH
3又はFからなる群から選択され;
R6、R7、R8、R9、及びR10が、互いに独立して、H、CH
3、CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
3、CH(CH
3)
2、C
4H
9(その異性体を含む)、C
6H
13(その異性体を含む)、C
10H
21(その異性体を含む)、フェニル、ビフェニル(その異性体を含む)、Si(CH
3)
3、及びそれらの混合物;好ましくは、CH
3からなる群から選択される。
【0034】
本開示の好ましい実施形態において、指数pは、2であり、金属錯体は、一般式(I-E)に相当し、
- Mが、チタンを表し;
- Zが、メチルアニオンを表し;
- R1、R2、R1’及びR2’が、-H、-CH3又は-Fを表し、R3、R4、R5、R3’、R4’、及びR5’が、-Hを表し;
- R6、R7、R8、R9及びR10が、-CH3を表す。
【0035】
本開示の別の好ましい実施形態において、指数pは、2であり、金属錯体は、一般式(I-E)に相当し、
- Mが、チタンを表し;
- Zが、-CH3を表し;
- R1、R2、R3、R4、R5、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’が、Hを表し;
- R6、R7、R8、R9、及びR10が、-CH3を表す。
【0036】
本開示の別の好ましい実施形態において、指数pは、2であり、金属錯体は、一般式(I-E)に相当し、
- Mが、チタンを表し;
- Zが、-CH3を表し;
- R1及びR2が、-CH3を表し、R3、R4、R5、R1’、R2’ R3’、R4’、及びR5’が、-Hを表し;
- R6、R7、R8、R9、及びR10が、-CH3を表す。
【0037】
本開示の別の好ましい実施形態において、指数pは、2であり、金属錯体は、一般式(I-E)に相当し、
- Mが、チタンを表し;
- Zが、-CH3を表し;
- R1及びR2が、-CH3を表し、R1’及びR2’が、-Fを表し、R3、R4、R5、R3’、R4’、及びR5’が、-Hを表し;
- R6、R7、R8、R9、及びR10が、-CH3を表す。
【0038】
金属錯体を調製するための方法
本開示の別の態様は、上記の一般式(I)の金属錯体の調製のための方法であって、
(a)一般式(IV):
Cyc M Z
p(IV)
(式中、
Mが、上に定義される第4族金属であり;
Cycが、上に定義される環状リガンドであり;
Zが、上に定義されるリガンド、好ましくは、-CH
3であり;ここで、指数pが、整数2又は3、好ましくは、3である)
の試薬を準備する工程と;
(b)一般式(V)
【化6】
(式中、
Sub1及びSub2が、上記のように定義され;
Qが、H
+、Li
+、Na
+、及びK
+;好ましくは、H
+からなる群から選択される)
で表されるスルフィルイミン型リガンド前駆体を提供する工程と;
(c)工程(a)において準備される一般式(IV)の試薬を、一般式(V)で表されるスルフィルイミン型リガンド前駆体と接触させ、それによって、一般式(I)の化合物及び副生成物Q-Zを得る工程とを含む、方法に関する。
【0039】
本開示に係る方法の好ましい実施形態において、一般式(V)のスルフィルイミン型リガンド前駆体は、上記のスルフィルイミンであることができ、その場合、Qが、H+を表す。本開示に係る方法の他の好ましい実施形態において、スルフィルイミン型リガンド前駆体は、上記のスルフィルイミンの金属塩であることができ、ここで、スルフィルイミンは、典型的に、脱プロトン化され、Qが、金属原子を表し;好ましい金属原子としては、限定はされないが、Li+、Na+、及びK+が挙げられる。本開示に係る方法のさらに他の好ましい実施形態において、スルフィルイミン型リガンド前駆体は、上記のスルフィルイミンの酸付加物であることができ、その場合、Qが、H+を表す。これらの実施形態において、スルフィルイミンは、典型的に、酸によってさらにプロトン化され、それにより、それに正電荷が与えられ、対応する酸アニオンとともに付加物が形成される。好適な酸アニオンの例としては、限定はされないが、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、SO4
2-、HSO4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-、CO3
2-、HCO3
-、芳香族又は脂肪族カルボキシレート、BF4-、(置換)テトラフェニルボレート、フッ素化テトラアリールボレート、-C1~12-アルキルスルホネート及び-アリールスルホネートが挙げられる。
【0040】
好ましくは、スルフィルイミン型リガンド前駆体は、上に定義されるスルフィルイミン、その金属塩、及びその酸付加物;好ましくは、スルフィルイミンから選択される。好ましくは、スルフィルイミン型リガンド前駆体は、上記のスルフィルイミンと、HF、HCl、HBr、HI、HClO4、H2SO4、HSO4
-、H3PO4、H2PO4
-、HPO4
2-、H2CO3、HCO3
-、芳香族又は脂肪族カルボン酸、HBF4、(置換)テトラフェニルホウ酸、フッ素化テトラアリールホウ酸、-C1~12-アルキルスルホン酸及び-アリールスルホン酸からなる群から選択される酸との酸付加物である。好ましくは、スルフィルイミン型リガンド前駆体は、スルフィルイミンであり、工程(c)は、式(IV)の試薬に対して少なくとも1当量の塩基を加えることを含む。
【0041】
好ましくは、塩基は、アミン、ホスファン、カルボキシレート、フッ化物、水酸化物、シアン化物、アミド、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属からなる群から選択される。
【0042】
本開示に係る方法の好ましい実施形態において、工程(c)は、溶媒中で行われ、溶媒は、芳香族及び脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族カルボン酸及び第一級又は第二級アミンのアミド、DMSO、ニトロメタン、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、エーテル、ポリエーテル、環状エーテル、芳香族及び脂肪族エーテル、エステル、ピリジン、-C1~12-アルキルピリジン、環状及び第一級又は第二級アミン、及びそれらの混合物;好ましくは、芳香族炭化水素からなる群から選択される。
【0043】
本開示の別の態様において、上記の本開示に係る方法によって得られる、上記の一般式(I)の化合物が提供される。
【0044】
エチレン含有ポリマーを製造する方法
エチレン含有ポリマーは、本開示に係る金属錯体を使用することによって製造され得る。金属錯体は、単独で又は他の重合触媒と組み合わせて、又は任意選択により場合によってスカベンジャー及び活性化剤若しくはそれらの組合せと組み合わせて使用され得る。
【0045】
したがって、本開示の別の態様において、ポリマーの調製のための方法であって、
(a)モノマー組成物を準備する工程と;
(b)本開示の金属錯体を含む組成物の存在下で、モノマー組成物を重合して、ポリマーを製造する工程とを含む、方法が提供される。
【0046】
本方法は、任意選択により場合によっては、少なくとも1つのスカベンジャーを提供すること及び/又は、任意選択により場合によっては、少なくとも1つの活性化剤を提供することをさらに含み得る。活性化剤及びスカベンジャーは、本開示の金属錯体を含む触媒組成物の成分であることができ、又はそれらは、別々に、例えば、別個の供給流れとして提供されてもよい。
【0047】
広い又は狭い分子量分布(Mw/Mn)を有するポリマーが、生成され得る。一実施形態において、1.80~30又は2~10の分子量分布(Mw/Mn)を有するポリマーが、生成され得る。
【0048】
高い又は低いムーニー粘度を有するポリマーが、生成され得る。一実施形態において、本方法によって生成されるポリマーは、125℃で少なくとも40のムーニー粘度ML1+4及び150℃で100以下のムーニー粘度ML1+8を有する。本開示の一実施形態において、ポリマーは、125℃で約40~約100のムーニー粘度ML1+4を有する。本開示の別の実施形態において、ポリマーは、150℃で約50~約100のムーニー粘度ML1+8を有する。
【0049】
高い又は低い重量平均分子量(Mw)のポリマーが、本開示に係る方法によって生成され得る。一実施形態において、ポリマーは、少なくとも200,000g/モル超、例えば、約200,000g/モル~約600,000g/モルの(Mw)を有する。
【0050】
高い又は低い数平均分子量(Mn)を有するポリマーが、生成され得る。一実施形態において、本開示に係る方法によって生成されるポリマーは、40,000g/モル~250,000g/モルのMnを有する。
【0051】
分枝鎖状又は直鎖状ポリマーは、本開示に係る方法を用いて生成され得る。分枝鎖状ポリマーの分岐レベルは、高、中程度又は低であり得る。ポリマー分岐レベルは、パラメータΔδによって特徴付けられ得る。度で表されるΔδは、125℃及び10%の歪みで動的機械分光法(Dynamic Mechanical Spectroscopy)(DMS)によって測定される際の、0.1ラジアン/秒の周波数における位相角δと、100ラジアン/秒の周波数における位相角δとの間の差である。この量Δδは、ポリマー中に存在する長鎖分枝鎖構造の量の尺度であり、参照により本明細書に援用される、H.C.Booij,Kautschuk+Gummi Kunststoffe,Vol.44,No.2,pages 128-130において紹介されている。本開示の一実施形態において、2~50のΔδを有するポリマーが、生成され得る。
【0052】
本開示に係る方法によって生成されるポリマーは、単峰性であり得、又はそれらは、二峰性若しくは多峰性であり得る。ポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって得られる線図において、二峰性ポリマーの場合、2つのピーク又は1つのピーク及び1つのショルダー、又は多峰性ポリマーの場合、3つ以上のピーク又は2つのショルダーを特徴とする分子量分布を有し得る。反応器ブレンドも生成され得、これは、ポリマーが、少なくとも2つの異なる反応容器中で生成され、混合、典型的に、湿式混合によって、すなわち、反応混合物を混合することによって組み合わされることを意味する。ブロックポリマー又はグラフトポリマーも生成され得る。
【0053】
エチレン含有ポリマー:
本開示に係る金属錯体を使用することによって生成され得るポリマーは、エチレンに由来する単位を含有し、本開示に係る方法において提供されるモノマー組成物は、少なくともエチレンを含有する。好ましくは、本開示に係る方法によって生成されるポリマーは、エチレン-コポリマー、より好ましくは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0054】
エチレン/α-オレフィンポリマー:
本開示の一実施形態において、本開示に係る金属錯体を用いて生成されるポリマーは、エチレン/α-オレフィン-ポリマーである。エチレン/α-オレフィン-ポリマーは、エチレン及び別のα-オレフィン及び任意に、1つ以上のさらなるコモノマーのコポリマーである。少なくとも20重量%(ポリマーの総重量を基準にして)の、エチレンに由来する単位を含み、80重量パーセント(重量%)以下の、エチレンに由来する単位を含有し得るエチレン/α-オレフィンポリマーが、生成され得る。一実施形態において、本開示のエチレン-α-オレフィン-コポリマーは、40~70重量%、好ましくは、44~65重量%の、エチレンに由来する単位を含む。重量パーセンテージは、コポリマーの総重量を基準にする。
【0055】
エチレンに由来する単位に加えて、本開示に係るポリマーは、1つ以上の他のα-オレフィンに由来する単位を含有し得る。
【0056】
α-オレフィン:
α-オレフィンは、単一の脂肪族炭素-炭素二重結合を有するオレフィンである。二重結合は、オレフィンの末端(α位)に位置する。α-オレフィンは、芳香族又は脂肪族、直鎖状、分枝鎖状又は環状であり得る。典型的に、α-オレフィンは、3~20個の炭素原子を有する。
【0057】
α-オレフィンとしては、式:H2C=X-CH3
によって表されるものが挙げられ、式中、Xが、直鎖状又は分枝鎖状であり得る、1~17個の炭素原子を有する脂肪族アルキレン残基を表す。好ましくは、分枝は、互いに独立して、1~3個の炭素原子を含む。
【0058】
好ましい実施形態において、α-オレフィンとしては、式:H2C=CH-(CH2)n-CH3によって表されるものが挙げられ、式中、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、及び17を表す。
【0059】
α-オレフィンの好ましい例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン及び12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。
【0060】
1つ以上のα-オレフィンが、組み合わせて使用され得る。好ましくは、ポリマーは、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%の、1つ以上のα-オレフィンに由来する単位を含有する。57重量%以下、より好ましくは、55重量%以下の、1つ以上のα-オレフィンに由来する単位(重量パーセンテージ(重量%)は、ポリマーの総重量を基準にする)を含有するポリマーが、生成され得る。好ましくは、エチレン-α-オレフィン-コポリマーは、17~57重量%の、1つ以上のα-オレフィンに由来する総単位を含有する。好ましくは、ポリマーは、プロピレンを含有する。
【0061】
非共役ジエン:
エチレン及びα-オレフィンに加えて、コモノマーとして1つ以上の非共役ジエンに由来する単位をさらに含有するエチレン/α-オレフィンポリマーが、生成され得る。
【0062】
非共役ジエンは、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含むポリエンであり、二重結合は、非共役であり、鎖、環、環系又はそれらの組合せ中に存在し得る。炭素-炭素二重結合は、少なくとも2つの炭素原子によって隔てられる。ポリエンは、環内及び/又は環外二重結合を有してもよく、置換基を有さないか、同じか又は異なる置換基を有し得る。好ましくは、非共役ジエンは、脂肪族、より好ましくは、脂肪族及び脂環式である。好適な非共役ジエンとしては、例えば、芳香族ポリエン、脂肪族ポリエン及び脂環式ポリエン、好ましくは、6~30個の炭素原子を有するポリエン(C6~C30-ポリエン、より好ましくは、C6~C30-ジエン)が挙げられる。非共役ジエンの具体例としては、限定はされないが、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、1,5,9-デカトリエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい非共役ジエンとしては、脂環式ポリエンが挙げられる。脂環式ジエンは、少なくとも1つの環状単位を有する。好ましい実施形態において、非共役ジエンは、少なくとも1つの環内二重結合及び任意に少なくとも1つの環外二重結合を有するポリエンから選択される。好ましい例としては、ジシクロペンタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン及び5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が挙げられ、ENBが特に好ましい。一実施形態において、本開示のコポリマーは、非共役ジエンとしてENBのみを含有する。
【0063】
非共役ジエンのさらなる例としては、二重重合性ジエンが挙げられる。二重重合性ジエンとしては、α-ωジエン、好ましくは、直鎖状α-ωジエン、ビニル置換単環式及び二環式非共役ジエンが挙げられ、これは、脂肪族又は芳香族であり得る。二重重合性ジエンは、ポリマー分枝の形成を引き起こすか又はそれに寄与し得る。脂肪族二重重合性ジエンの例としては、限定はされないが、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロ-ヘキサン、1,4-ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン(DCPD)及び1,4-シクロヘキサジエンが挙げられる。非共役ビニルノルボルネン及びC8~C12αω直鎖状ジエン(例えば、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン)が好ましい。二重重合性ジエンは、13~17族のヘテロ原子、例えばO、S、N、P、Cl、F、I、Br、又はそれらの組合せを含む少なくとも1つの基でさらに置換され得る。
【0064】
芳香族非共役ポリエンの例としては、ビニルベンゼン(その異性体を含む)及びビニル-イソプロペニルベンゼン(その異性体を含む)が挙げられる。
【0065】
本開示の好ましい実施形態において、二重重合性ジエンは、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、1,7-オクタジエン及び1,9-デカジエンから選択され、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が最も好ましい。
【0066】
本開示の典型的な実施形態において、少なくとも3重量%及び15重量%以下(及び15重量%を含む)の1つ以上の非共役ジエンに由来する単位を含有するエチレン/α-オレフィンコポリマーが、生成され得る。
【0067】
本開示の別の実施形態において、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、1,7-オクタジエン又は1,9-デカジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)又はそれらの組合せから選択される非共役ジエンを含有するポリマーが、生成される。好ましくは、本開示のコポリマーは、0.05重量%~5重量%、より好ましくは、0.10重量%~3重量%又は0.15重量%~1.2重量%の、VNBに由来する単位(全ての重量パーセンテージは、エチレン-α-オレフィン-コポリマーの総重量を基準とする)を含有する。別の実施形態において、5-エチリデン-2-ノルボルネン及び5-ビニル-2-ノルボルネンに由来する単位を含有するエチレン/α-オレフィン-コポリマーが、生成され得、例えば、生成されるエチレン/α-オレフィン-コポリマーは、2~15重量%の、ENBに由来する単位及び0.05~4重量%の、VNBに由来する単位を含有し得る。
【0068】
他のコモノマーに由来する単位を含有しても又は含有しなくてもよいエチレン/α-オレフィン-コポリマーが、本開示に係る方法によって生成され得る。エチレン、α-オレフィン及び任意に、非共役ジエンに由来する単位の合計は、エチレン/α-オレフィンポリマーの総重量を基準にして、90重量%超、99重量%超(100重量%を含む)であり得る。
【0069】
連鎖移動剤:
重合は、ポリマーの分子量を制御するための1つ以上の連鎖移動剤の使用を含み得る。好ましい連鎖移動剤は、水素(H2)を含む。他の連鎖移動剤としては、限定はされないが、エタン、ジエチル亜鉛及びそれらの組合せが挙げられる。
【0070】
活性化剤:
本明細書において同義的に共触媒」とも呼ばれる1つ以上の活性化剤が、重合において使用され得る。共触媒は、当該技術分野において「活性化剤」とも呼ばれる。共触媒の存在は、典型的に、触媒がオレフィンを重合する速度を上昇させる。共触媒はまた、分子量、分岐度、コモノマー含量、又はポリマーの他の特性に影響を与え得る。共触媒は、典型的に、触媒とは別々に又は触媒、すなわち、金属錯体と一緒に、反応器中に導入される。
【0071】
典型的な共触媒としては、限定はされないが、ホウ素含有活性化剤が挙げられる。好ましい実施形態において、活性化剤(b)は、ボラン(C1)又はボレート(C2若しくはC3)から選択される。
【0072】
好適なホウ素活性化剤(C1)は、一般式BQ1Q2Q3によって表され得る。
【0073】
(C2)で表される好適なボレート活性化剤は、一般式G(BQ1Q2Q3Q4)によって表され得る。
【0074】
(C3)で表される好適なボレート活性化剤は、一般式(J-H)(BQ1Q2Q3Q4)によって表され得、
(C1)で表される活性化剤において、Bがホウ素であり、Q1~Q3が、置換又は非置換アリール基、好ましくは、フェニル基である。好適な置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、好ましくは、フッ化物、及びC1~C40ヒドロカルビル、好ましくは、C1~C20アルキル又は芳香族が挙げられる。(C1)で表される活性化剤の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニル-ビス(ペンタフルオロ-フェニル)ボランなどが挙げられる。
【0075】
(C2)で表される活性化剤において、Gが、無機又は有機カチオンであり、Bがホウ素であり、Q1~Q3が、(C1)中と同じであり、Q4も、置換又は非置換アリール基、好ましくは、置換又は非置換フェニルである。置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、好ましくは、フッ化物、及びC1~C40ヒドロカルビル、好ましくは、C1~C20アルキル又は芳香族が挙げられる。ボレート基(BQ1Q2Q3Q4)の具体例としては、限定はされないが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロ-フェニル)ボレート、テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。Gの具体例としては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀カチオンなどが挙げられる。有機カチオンGの具体例としては、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。Gが、好ましくは、カルベニウムカチオン、特に好ましくは、トリフェニルメチルカチオンである。
【0076】
(C3)で表される活性化剤において、Jが、中性ルイス塩基を表し、(J-H)が、ブレンステッド酸を表し、Bがホウ素であり、Q1~Q4及びボレート基(BQ1Q2Q3Q4)が両方とも、(C2)中と同じである。ブレンステッド酸(J-H)の具体例としては、トリアルキル置換アンモニウム、N,N-ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられる。(C3)で表される活性化剤の具体例としては、限定はされないが、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)-ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル)ボレート、N,N-ジメチル-アニリニウムテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム-テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル)ボレート、ジイソプロピル-アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシル-アンモニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)-ホスホニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0077】
共触媒の他の例としては、限定はされないが、トリアルキルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、又はトリ-n-オクチルアルミニウムを含むアルミニウムアルキルが挙げられる。他の例としては、限定はされないが、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドを含むアルキルアルミニウムハライドが挙げられる。さらなる例としては、限定はされないが、アルモキサンが挙げられ、これは、メチルアルモキサン(MAO)、テトライソブチルアルモキサン(TIBAO)及びヘキサイソブチルアルモキサン(HIBAO)を含む。
【0078】
スカベンジャー:
不純物は、触媒の活性を低下させることによって触媒に悪影響を与え得る。このような不純物と反応し、それらを触媒活性に無害な化合物に変化させる化合物は、重合の技術分野の当業者によってスカベンジャーと呼ばれる。スカベンジャーは、本開示に係る方法において使用され得る。スカベンジャーの例としては、限定はされないが、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。スカベンジャーは、共触媒としても働き得る。この場合、スカベンジャーは、一般に、触媒を完全に活性化するのに必要とされるものを超えて適用される。
【0079】
本発明に係る方法の一実施形態において、本開示に係る金属錯体に対する本方法の工程(c)において提供される活性化剤のモル比は、10:1~1:1、好ましくは、2:1、好ましくは、1:2である。
【0080】
スカベンジャー、好ましくは、アルミニウム含有スカベンジャーは、立体障害炭化水素又は立体障害ヘテロ炭化水素、好ましくは、15又は16族ヘテロ原子(好ましくは、O、N、P及びS原子、より好ましくは、O及びNヘテロ原子)を含有する、立体障害フェノールと組み合わせて使用され得る。立体障害炭化水素の具体例としては、限定はされないが、tert-ブタノール、イソ-プロパノール、トリフェニルカルビノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。好ましい立体障害化合物は、4-メチル-2,6-tertブチルフェノールである。
【0081】
本開示に係るポリマーを生成する方法において、モノマー組成物は、本開示に係る少なくとも1つの金属錯体と接触される。接触は、気相中で行われ得る。接触はまた、1つ以上の溶媒の存在下で、例えば、溶液又はスラリー中で行われ得る。重合は、気相が形成されないように、十分な圧力及び温度下で、溶液又はスラリー中で行われ得る。好ましくは、重合は、溶液又はスラリー重合として行われる。好ましい溶媒としては、1つ以上の炭化水素溶媒が挙げられる。好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタメチルヘプタン、水添ナフサ、それらの異性体及び混合物などのC5~12炭化水素が挙げられる。
【0082】
本方法は、このようなポリマーの重合の技術分野において公知であるような反応温度及び圧力で行われ得る。本開示の好ましい実施形態において、本開示に係る金属錯体は、130℃もの温度及び少なくとも8.3バールの圧力で、触媒重合活性を有する。
【0083】
本開示の別の態様において、上記の本発明に係る方法によって得られるポリマーが提供される。一実施形態において、ポリマーは、エチレンプロピレンゴム(EPM)又はエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)である。
【0084】
本開示の他の態様
本開示の別の態様は、上に定義されるモノマー組成物を重合するための重合触媒としての、本開示に係る金属錯体の使用に関する。
【0085】
本開示の別の態様において、担持材料上に本開示に係る金属錯体を含む、担持触媒が提供される。担持触媒は、任意選択により場合によっては、スカベンジャー又は活性化剤又はスカベンジャー及び活性化剤の組合せをさらに含有し得る。担持材料は、高い表面積を有する固体材料であることができ、それに、本開示の少なくとも1つの金属錯体が固定される。典型的に、不均一系触媒の活性は、表面原子において生じる。その結果、触媒の表面積を最大にするために多大な労力が払われる。表面積を増大するための1つの好適な方法は、触媒を担持材料にわたって分配することを含む。担持材料は、不活性であることができ、又は触媒反応に関与し得る。好ましくは、担持材料は、シリカ、ハロゲン化マグネシウム、例えば、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、ゼオライト、アルミナ、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本開示をこれらの実施例に限定することを意図せずに、本開示をさらに例示する。
【0087】
一般的な操作手順:
ハーフメタロセン化合物を調製するための全ての実験を、アルゴン又は窒素の雰囲気下で、標準的なシュレンクライン又はドライボックス技術を用いて行った。窒素でスパージすることによって溶媒を脱気し、適切な乾燥剤のカラムを通すことによって乾燥させた。
【0088】
重水素化溶媒を、CaH2上で乾燥させ、減圧下で蒸留し、PTFEバルブアンプル中で、窒素下で貯蔵した。NMR試料を、J.Young PTFEバルブを備えた、SP Wilmad-LabGlass製の5mm 507-PPチューブ中で、窒素下で調製した。1H、19F及び13C-{1H}スペクトルを周囲温度で記録し、残留プロトン性溶媒(1H)又は溶媒(13C)共鳴に対して内部参照し、テトラメチルシラン(d=0ppm)に対して報告する。化学シフトをδ(ppm)単位で提示し、結合定数をHz単位で提示する。NMRスペクトルを、Bruker製のAvance 400分光計において測定した。
【0089】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いて、当該技術分野において公知の方法に従って、コポリマーの組成物を決定した。FT-IR測定により、全組成物に対する重量パーセントで様々なモノマーの組成物が示される。組成物を、中域FT-IR分光法を用いて決定した。
【0090】
触媒の合成:
異なるハーフメタロセン金属錯体触媒(化合物1~3、「cpds 1~3」)を、以下のように異なるスルフィルイミン型リガンドとともに調製した:
【0091】
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)[S,S-ジフェニルスルフィド]チタンアミンジメチル(Cpd 1)
【化7】
S,S-ジフェニルスルフィルイミン(30.0mg、149.0μmol)及びCp
*TiMe
3(34.0mg、149.0μmol)を、C
6D
6(1mL)に溶解させ、
1H NMRに供した。所望の生成物への完全な転化が観察された。
1H NMR(300MHz、C
6D
6)δ 7.90-7.77(m,4H、meta-ArH)、7.08-6.94(m,4H、ortho-ArH)、6.93-6.83(m,2H、para-ArH)、1.97(s,15H、CpCH
3)、0.69(s,6H、TiCH
3)。
重合反応のために、1mlのトルエン中のリガンドの5.0mg(25μmol)の溶液を、1mlのトルエン中のCpTiMe
3(5.7mg、25μmol)の溶液に加えた。得られた溶液を、25mLの総体積になるまでトルエンで希釈し、バッチ反応器中で使用した。
【0092】
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)[S-2,6-ジメチルフェニル-S-フェニルスルフィド]チタンアミンジメチル(Cpd 2)
【化8】
S-2,6-ジメチルフェニル-S-フェニルスルフィルイミン(10.0mg、43.6μmol)及びCp
*TiMe
3(10.0mg、43.6μmol)を、C
6D
6(1mL)に溶解させ、
1H NMRに供した。所望の生成物への完全な転化が観察された。
1H NMR(300MHz、C
6D
6)δ 7.82-7.74(m,2H、meta-ArH)、7.04(tt,J=6.9、0.9Hz、2H、ortho-ArH)、6.98-6.90(m,1H、para-ArH)、6.89-6.80(m,1H、para-ArMe2H)、6.70(dq,J=7.5、0.7Hz、2H、meta-ArMe2H)、2.54(s,6H、CH
3)、1.97(s,15H、CpCH
3)、0.67(d,J=0.8Hz、3H、TiCH
3)、0.54(d,J=0.8Hz、3H、TiCH
3)。
重合反応のために、1mlのトルエン中のリガンドの5.7mg(25μmol)の溶液を、1mlのトルエン中のCpTiMe
3(5.7mg、25μmol)の溶液に加えた。得られた溶液を、25mLの総体積になるまでトルエンで希釈し、バッチ反応器中で使用した。
【0093】
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)[S-2,6-ジメチルフェニル-S-2,6-ジフルオロフェニルスルフィド]チタンアミンジメチル(Cpd 3)
【化9】
S-2,6-ジメチルフェニル-S-2,6-ジフルオロフェニルスルフィルイミン(6.6mg、25μmol)及びCp
*TiMe
3(5.7mg、25μmol)を、C
6D
6に溶解させ、
1H及び
19F NMRに供した。所望の生成物への完全な転化が観察された。
1H NMR(300MHz、C
6D
6):δ 6.89-6.82(m,1H、para-ArMe2H)、6.74(dtd,J=7.2、1.2、0.6Hz、2H、meta-ArMe2H)、6.46-6.35(m,1H、para-ArF2H)、6.30-6.20(m,2H、meta-ArF2H)、2.83(d,J=0.8Hz、6H、ArCH
3)、1.97(s,15H、CpCH
3)、0.54(d,J=0.6Hz、3H、TiCH
3)、0.51(q,J=0.6Hz、3H、TiCH
3)。
19F NMR(282MHz、C
6D
6):δ-110.93。
重合反応のために、1mlのトルエン中のリガンドの6.6mg(25mmol)の溶液を、1mlのトルエン中のCpTiMe
3(5.7mg、25μmol)の溶液に加えた。ハーフメタロセン錯体を含有する得られた溶液を、25mLの総体積になるまでトルエンで希釈し、バッチ反応器中で使用した。
【0094】
置換アリール残基を有する実験室規模の量のスルフィルイミン型リガンドを、ジアリールスルフィド前駆体を、メシチルスルホニルヒドロキシルアミンと反応させ、アニオン交換樹脂(OH形態のAMBERLITE IRA-402イオン交換樹脂、溶離剤としてのエタノール)による処理によって調製した。メシチルスルホニルヒドロキシルアミンは、自己分解しやすく、十分注意して取り扱われる必要があるため、それを、インサイチュで調製した(0℃で、トリエチルアミンの存在下で、ジメチルホルムアミド中で、O-メシチルスルホニルヒドロキシルアミンから調製される)。ジアリールスルフィド前駆体を、Chengら(Journal of Organic Chemistry 2012,77,10369)及びClaydenら(Angew.Chem.Int.Ed.2009,48,6270)によって報告されるように調製した。
【0095】
非置換ジアリールスルフィルイミンリガンドを、CaH2(1g)上で、トルエン(30mL)中でS,S-ジフェニルスルフィルイミンモノヒドリド(500mg、2.28mmol)を撹拌することによって調製した。S,S-ジフェニルスルフィルイミンモノヒドリドは、例えば、Sigma-Aldrichから市販されている。反応混合物をろ過し、残渣を、トルエン(3×5mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0096】
重合:
ポリマー組成物:
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)が、C2/C3比についてASTM D3900(改訂日2017)及び加圧ポリマーフィルムのジエン含量についてD6047(改訂日2017)に準拠して、コポリマーの組成物を決定するのに使用され得る。
【0097】
位相角測定:
ポリマー分岐は、パラメータΔδを用いて、Montech MDR 3000ムービングダイレオメータにおける位相角測定によって決定され得る。Δδ(度で表される)は、125℃で動的機械分析(DMA)によって決定される、0.1ラジアン/秒の周波数で測定される位相角δと、100ラジアン/秒の周波数で測定される位相角δとの間の差である。Δδは、ポリマー構造の長鎖分枝の存在の尺度であり、参照により本明細書に援用される、H.C.Booij,in Kautschuk+Gummi Kunststoffe,Vol.44,No.2,pages 128-130,1991によって紹介されている。Δδの値が低いほど、より多くの長鎖分枝がポリマー中に存在する。
【0098】
分子量:
分子量(Mw、Mn、Mz)及び分子量分布(MWD)は、Polymer Characterization S.A(Valencia,Spain)製のPolymer Char GPC-IRを用いて、ゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって決定され得る。サイズ排除クロマトグラフには、3つのAGILENT PL OLEXISカラム(7.5×300mm)及びPolymer Charオートサンプラとともに、オンライン粘度計(Polymer CharV-400粘度計)、オンライン赤外検出器(IR5 MCT)が装備される。システムのユニバーサルキャリブレーション(Universal calibration)が、ポリエチレン(PE)標準を用いて行われる。
【0099】
ポリマー試料を、Polymer Charオートサンプラのバイアル中に量り入れる(0.3~1.3mg/mlの濃度範囲で)。オートサンプラ中で、バイアルに、溶媒(1g/lのジ-tertブチルパラクレゾール(DBPC)で安定化された1,2,4-トリ-クロロベンゼン)が自動的に充填される。試料を、4時間にわたって高温オーブン(160℃)に入れておく。この溶解時間の後、試料が、カラムに注入される前に、インラインフィルタによって自動的にろ過される。クロマトグラフシステムは、160℃で操作される。1,2,4-トリクロロベンゼン溶離剤の流量は、1.0mL/分である。
【0100】
ムーニー粘度:
コポリマー試料のムーニー粘度は、Perfon B.V.(Goor,The Netherlands)によって提供される2軸延伸(biaxially strained)PP(20μmの厚さ)フィルムを用いて、ISO 289、改訂日2015に準拠して測定され得る。測定条件は、典型的に、125℃におけるML(1+4)である。
【0101】
実施例1(EPMポリマー):
バッチ共重合を、二重インペラ及びバッフルを備えた2リットルのバッチオートクレーブ中で行った。反応温度を、LAUDA Thermostatによって制御した。供給流れ(溶媒及びモノマー)を、様々な吸着媒体と接触させることによって精製して、当業者に公知であるように、水、酸素及び極性化合物などの触媒失活(catalyst killing)不純物を除去した。重合中、エチレン及びプロピレンモノマーを、反応器のガスキャップに連続して供給した。反応器の圧力を、背圧弁によって一定に保った。
【0102】
窒素の不活性雰囲気中で、反応器に、ペンタメチルヘプタン(PMH)(950mL)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を充填した。反応器を、1350rpmで撹拌しながら所望の温度に加熱した。反応器を加圧し、決定された比率のエチレン及びプロピレン下で調整した。10分後、触媒成分、及び該当する場合は、ボレート共触媒を、反応器中に添加し(触媒の生産性に応じて0.02~0.14μmol)、続いて、触媒容器を、PMH(50mL)ですすいだ。10分間の重合の後、モノマー流れを停止させ、溶液を、イソプロパノール中のIRGANOX-1076の溶液を含む2Lのエルレンマイヤーフラスコ中に注意深く入れ、減圧下で、100℃で一晩乾燥させた。ポリマーを、分子量(SEC-IR)及び組成(FT-IR)について分析した。
【0103】
実施例1a~1dを、触媒としてCpd 1を用いて行った。
【0104】
実施例1e~1hを、触媒としてCpd 2を用いて行った。
【0105】
実施例1i~1lを、触媒としてCpd 3を用いて行った。
【0106】
高い重量平均分子量(Mw)を有するEPMポリマーが得られた。結果及び重合の詳細を、表1中にまとめてある。
【0107】
【0108】
実施例2(EPDMポリマー):
一般的な手順:
反応器に、不活性雰囲気中で、ペンタメチルヘプタン(PMH)(950mL)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、及び5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を充填したことを除いて、実施例1におけるEPM重合のための手順に従った。さらに、水素(0.35NL/h)を、加圧された反応器に供給した。
【0109】
実施例2.1を、Cpd 1を用いて行った。
【0110】
実施例2.2を、Cpd 2を用いて行った。
【0111】
実施例2.3を、Cpd 3を用いて行った。
【0112】
200,000g/モル超の、高い重量平均分子量(Mw)を有するEPDMポリマーが得られた。結果及び重合の詳細を表2中にまとめる。
【0113】
【国際調査報告】