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特表2024-515261テンプルに配置された感光センサを備える眼鏡機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】テンプルに配置された感光センサを備える眼鏡機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20190101AFI20240401BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240401BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G02F1/15 503
G02C7/10
G02C11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561820
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022058728
(87)【国際公開番号】W WO2022214396
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】21305447.1
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オードゥ・ブシエ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・コンビエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ポール・カノ
【テーマコード(参考)】
2H006
2K101
【Fターム(参考)】
2H006BE01
2H006CA00
2K101AA22
2K101DA01
2K101EA11
2K101EA31
2K101EB83
2K101EC72
2K101ED63
2K101EE02
2K101EF03
2K101EG52
2K101EJ31
2K101EK04
(57)【要約】
本発明は、電子フレーム(3)を含む眼鏡機器(1)に関する。電子フレームは、エレクトロクロミックレンズ(5)を少なくとも部分的に格納するように配置された前方フレーム要素(7)と、前方フレーム要素に接続されたテンプル(11)と、テンプル上に、装用者の顔の一部から、電子フレームがその装用者によって装用されているときに反射された光に関するデータを測定するように配置された感光センサ(15)と、測定されたデータに応じてエレクトロクロミックレンズを制御するように構成された制御回路(17)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子フレーム(3)を含む眼鏡機器(1)であって、前記電子フレームは、
- エレクトロクロミックレンズ(5)を少なくとも部分的に格納するように配置された前方フレーム要素(7)と、
- 前記前方フレーム要素に接続されたテンプル(11)と、
- 前記テンプルの上に、装用者の顔の部分から、前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに反射された光に関するデータを測定するように配置された感光センサ(15)と、
- 前記測定されたデータに応じて前記エレクトロクロミックレンズを制御するように構成された制御回路(17)と、
を含む、眼鏡機器。
【請求項2】
前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに、前記装用者の顔の前記部分から反射された前記光を前記感光センサへと偏向させるように配置された光学系をさらに含む、請求項1に記載の眼鏡機器。
【請求項3】
前記光学系は、前記テンプル上に配置された偏向器(19)を含む、請求項2に記載の眼鏡機器。
【請求項4】
前記前方フレーム要素に少なくとも部分的に格納されたエレクトロクロミックレンズをさらに含み、
前記光学系は前記エレクトロクロミックレンズ上に配置された偏向器(21)を含む、請求項2又は3に記載の眼鏡機器。
【請求項5】
前記エレクトロクロミックレンズ上に配置された前記偏向器(21)は、前記エレクトロクロミックレンズの少なくとも一部を被覆するコーティングを含む、請求項4に記載の眼鏡機器。
【請求項6】
前記感光センサは前記テンプルの止まり穴(23)の中に格納され、前記止まり穴は、前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに、前記装用者の顔の前記部分に向けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項7】
前記感光センサは、前記電子フレームが前記装用者によって装用されているときに、前記装用者の目(LE、RE)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項8】
前記感光センサは、紫外範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合される、請求項7に記載の眼鏡機器。
【請求項9】
前記感光センサは、900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合される、請求項7又は8に記載の眼鏡機器。
【請求項10】
前記感光センサは、前記電子フレームが前記装用者によって装用されているときに、前記装用者の皮膚領域(SA)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項11】
前記感光センサは可視範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合される、請求項10に記載の眼鏡機器。
【請求項12】
前記感光センサは、前記装用者の目(LE、RE)から反射された前記光及び前記皮膚領域(SA)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置され、前記感光センサは、近赤外範囲の光、好ましくは900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合される、請求項1~11のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項13】
前記制御回路はテンプル上に配置され、前記感光センサに、前記テンプルの一部のみにわたって延びる電気コンポーネントによって電気的に接続される、請求項1~12のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項14】
前記感光センサは、前記反射光の強度、照度、波長、又は偏光度を含むデータを測定するように構成され、前記制御回路は前記データに応じて前記エレクトロクロミックレンズを制御するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項15】
前記制御回路は、前記エレクトロクロミックレンズの以下の特徴:
- 前記反射光の前記強度又は前記照度に応じた光透過;
- 前記反射光の前記波長に応じた1つ又は複数のスペクトルバンドのフィルタ処理;及び
- 前記反射光の偏光度の範囲に関する強度又は照度の均一性
のうちの少なくとも1つを制御するように構成される、請求項14に記載の眼鏡機器。
【請求項16】
前記制御回路は、以下の入力(SP):
- 前記光透過を制御するための:
・ 前記反射光について近付くべき強度もしくは照度のセットポイント、
・ 前記反射光について到達すべき最小強度もしくは照度、又は
・ 前記反射光について超過すべきではない最大強度もしくは照度、
- 1つ又は複数のスペクトルバンドをフィルタ処理するための:
・ 前記反射光についてフィルタ処理すべき波長範囲、
- 前記偏光度の範囲に関して強度又は照度の均一性を変化させるための:
・ 前記反射光について近付くべき偏光度に関する強度又は照度
のうちの1つ又は複数を有する閉ループ制御回路である、請求項15に記載の眼鏡機器。
【請求項17】
前記閉ループ制御回路は、PIDコントローラとも呼ばれる比例-積分-微分コントローラである、請求項16に記載の眼鏡機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡機器、より詳しくはエレクトロクロミックレンズ用に適応された電子フレームを含む眼鏡機器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科レンズは、近視、遠視、乱視、及び老視等、屈折異常とも呼ばれる視覚障害や屈折誤差を矯正することを支援する。眼科レンズは、装用者の眼科処方に基づいて製造される。処方には、球面値、乱視値、プリズム、及び加入度数等の各種の情報が含まれる。
【0003】
しかしながら、眼科レンズは装用者の様々な状況に合わせて調整されるように製造されていても、特に近方視と遠方視の両方を矯正することを可能にする累進レンズであっても、より高い適応性のスマートグラスが求められている。
【0004】
この目的のために、眼科レンズ業界は電気活性レンズ、すなわちその特定の特性を電子的に変調できるレンズを開発した。これらの変更は、装用者によって、又は医療従事者、典型的には眼科医によって制御可能である。これらの変更はまた、自動とすることもでき、この場合、電気活性レンズは環境の特定のパラメータ、例えば光の強度又は光線の波長を測定するように構成されたセンサを含み得る。
【0005】
特に、電気活性レンズの中で、エレクトロクロミックレンズは光透過値及び色を変化させることができる。
【0006】
典型的に、エレクトロクロミックレンズは、処方データに基づいて製造されるウェハと、このように形成されるエレクトロクロミックレンズを明るさ、すなわち光の強度に適合させることができるようにするエレクトロクロミックセルとを含む光学系である。処方の一部はまた、エレクトロクロミックセルによっても提供できる。
【0007】
エレクトロクロミックセルは典型的に、2つの平面又はアフォーカルの透明外層、例えば有機材料又は鉱物材料で製作される2つの表面を含み、その内面に透明な導電性コーティングが堆積されている構造である。エレクトロクロミック組成物が2つの導電性コーティング間に形成される空洞に充填される。それゆえ、導電性コーティングに電界を印加することによって、セルの光透過値を変化させることができる。
【0008】
しかしながら、エレクトロクロミックレンズに適合される電子フレームには問題がある。
【0009】
幾つかの電子フレームの場合、周辺光を測定するためにセンサが電子フレーム上に配置される。これらのセンサは、外部環境に向けられ、入射光を測定するためにエレクトロクロミックレンズの前面側に、又は反射光を測定するために後面側に位置付けられる。しかしながら、周辺光は、装用者の目が実際に受け取る光とはかなり異なる可能性があり、したがって、エレクトロクロミックレンズの光透過の変調に対する有効な関連性はない。例えば、太陽光が装用者の背後から差し込み、装用者がコンピュータ等の電子機器のスクリーンを見ている場合、センサが収集する測定値は太陽光による影響を受け、それゆえ、エレクトロクロミックレンズの光透過はスクリーンの明るさには適合されなくなる。
【0010】
それに加えて、センサは一般に、電子フレームのリング上、又はリング間のブリッジ上に配置される。その結果、エレクトロクロミックレンズのコントローラが電子フレームのテンプルの一方に位置付けられるため、センサとコントローラを接続する電気コンポーネントは必然的に電子フレームのヒンジを通る。しかしながら、電気コンポーネントがヒンジを通過するようにすることは複雑で、技術的に困難である。前面側にセンサが存在することによって、審美的な制約も生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、この状況を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電子フレームを含む眼鏡機器に関する。電子フレームは、
- エレクトロクロミックレンズを少なくとも部分的に格納するように配置された前方フレーム要素と、
- 前方フレーム要素に接続されたテンプルと、
- テンプルの上に、装用者の顔の部分から、電子フレームが装用者により装用されているときに反射された光に関するデータを測定するように配置された感光センサと、
- 測定されたデータに応じてエレクトロクロミックレンズを制御するように構成された制御回路と、
を含む。
【0013】
ある実施形態によれば、眼鏡機器は、電子フレームが装用者により装用されているときに、装用者の顔の部分から反射された光を感光センサへと偏向させるように配置された光学系をさらに含む。
【0014】
光学系は例えば、テンプル上に配置された偏向器を含む。
【0015】
ある実施形態によれば、眼鏡機器は、前方フレーム要素に少なくとも部分的に格納されたエレクトロクロミックレンズをさらに含み、光学系はエレクトロクロミックレンズ上に配置された偏向器を含む。
【0016】
有利には、エレクトロクロミックレンズ上に配置された偏向器は、エレクトロクロミックレンズの少なくとも一部を被覆するコーティングを含む。
【0017】
ある実施形態によれば、感光センサはテンプルの止まり穴の中に格納される。止まり穴は、電子フレームが装用者により装用されたときに、装用者の顔の部分に向けられる。
【0018】
ある実施形態によれば、感光センサは、電子フレームが装用者によって装用されているときに、装用者の目から反射された光に関するデータを測定するように配置される。
【0019】
有利には、感光センサは、紫外範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合されている。
【0020】
より正確には、感光センサは例えば、900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合されている。
【0021】
実際に、目の反射係数は紫外範囲及び近赤外範囲において可視範囲より高い値に到達する。
【0022】
ある実施形態によれば、感光センサは、電子フレームが装用者によって装用されているときに、装用者の皮膚領域から反射された光に関するデータを測定するように配置される。
【0023】
有利には、感光センサは可視範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合されている。
【0024】
実際に、皮膚の反射係数は可視範囲及び近赤外範囲において紫外範囲より高い値に到達する。
【0025】
特定の実施形態において、感光センサは、装用者の目から反射された光及び皮膚領域から反射された光に関するデータを測定するように配置され、感光センサは、近赤外範囲、好ましくは900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合されている。
【0026】
ある実施形態によれば、制御回路はテンプル上に配置され、感光センサに、テンプルの一部のみにわたって延びる電気コンポーネントによって電気的に接続される。
【0027】
換言すれば、感光センサと制御回路を接続する電気コンポーネントは、テンプル11を前方フレーム要素の端に接続するヒンジを通らない。電子フレームの構造はそれゆえ、より複雑でなく、より製造しやすい。
【0028】
ある実施形態によれば、感光センサは、反射光の強度、照度、波長、又は偏光度を含むデータを測定するように構成され、制御回路はこのデータに応じてエレクトロクロミックレンズを制御するように構成される。
【0029】
例えば、制御回路は、エレクトロクロミックレンズの以下の特徴のうちの少なくとも1つを制御するように構成される:
- 反射光の強度又は照度に応じた光透過;
- 反射光の波長に応じた1つ又は複数のスペクトルバンドのフィルタ処理;及び
- 反射光の偏光度の範囲に関する強度又は照度の均一性。
【0030】
制御回路は、以下の入力のうちの1つ又は複数を有する閉ループ制御回路であり得る:
- 光透過を制御するための:
・ 反射光について近付くべき強度又は照度のセットポイント、
・ 反射光について到達すべき最小強度又は照度、又は
・ 反射光について超過すべきではない最大強度又は照度、
- 1つ又は複数のスペクトルバンドをフィルタ処理するための:
・ 反射光についてフィルタ処理すべき波長範囲、
- 偏光度の範囲に関して強度又は照度の均一性を変化させるための:
・ 反射光について近付くべき偏光度に関する強度又は照度。
【0031】
ある実施形態によれば、閉ループ制御回路は比例-積分-微分コントローラであり、これはPIDコントローラとも呼ばれる。
【0032】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下のような添付の図面に関する、例示的で非限定的な目的で提供される下記の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のある実施形態による眼鏡機器を斜視図で示す。
図2】本発明の他の実施形態による眼鏡機器の上面図を示す。
図3】本発明の他の実施形態による眼鏡機器の部分図を示す。
図4】波長に応じた目の反射係数の変化を示す。
図5】波長に応じた皮膚の反射係数の変化を示す。
図6】感光センサにより測定されたデータに応じて眼鏡機器のエレクトロクロミックレンズを制御するように構成された制御回路を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は眼鏡機器1を示す。
【0035】
眼鏡機器1は、眼鏡機器1を装用する個人の視覚的快適さを改善するように適合されている。この視覚的快適さは特に、環境から、及び周辺光から得られる明るさ及び照度に関する。
【0036】
眼鏡機器1はまた、装用者の屈折異常とも呼ばれる視覚障害又は屈折誤差を矯正するように構成できる。例えば、装用者は近視、遠視、乱視、又は老視である。
【0037】
図1に示されるように、眼鏡機器1は電子フレーム3と少なくとも1つのエレクトロクロミックレンズ5を含む。
【0038】
エレクトロクロミックレンズ3は、装用者により装用されるように適合されている。例えば、眼鏡機器1が視覚障害を矯正するように適合されている場合、電子フレーム3は、眼鏡機器1の製造に使用される処方データが関係する装用者により装用されるように適合される。実際に、このような場合、エレクトロクロミックレンズ5は、その装用者の視覚障害を特徴付ける処方データに基づいて設計され、製造される。
【0039】
古典的な方法で、非電気的フレームと同様に、電子フレーム3は、少なくとも1つの前方フレーム要素7、少なくとも1つのブリッジ9、少なくとも1つのテンプル11、及び幾つかの実施形態においては、少なくとも1つのヒンジ13を含む。
【0040】
前方フレーム要素7は、レンズ5、例えば眼科レンズを少なくとも部分的に格納するように構成される。典型的に、前方フレーム要素7は、レンズ5の上側部分を格納し、保持するように構成されたホルダと、レンズ5の下側部分を少なくとも部分的に取り囲むように構成されたクレードルを含む。
【0041】
図1に示される例において、電子フレーム3は2つの前方フレーム要素7を含み、各々がレンズ5を少なくとも部分的に格納する。前方フレーム要素は文献では「リム」とも呼ばれる。
【0042】
前方フレーム要素7は、ブリッジ9によって相互に接続される。
【0043】
同様に、図1に示される電子フレーム3は2つのテンプル11を含む。
【0044】
各テンプル11は、前方フレーム要素7の端にヒンジ13によって接続される。より正確には、テンプル11は前方フレーム要素7の端に接続され、もう一方のテンプル11はもう一方のリムである前方フレーム要素7の端に接続される。
【0045】
テンプル11は、眼鏡機器1の、それが装用者により装用されているときの安定性を確保するために、装用者の耳の上に乗せられるように構成される。ヒンジ13により、装用者が眼鏡機器1を装用したいときにはテンプル11を開き、装用者が眼鏡機器1を外すときにはテンプル11を折り畳むことが可能となる。
【0046】
本発明に関して、フレーム3は電子フレームであり、レンズ5はエレクトロクロミックレンズである。
【0047】
エレクトロクロミックレンズ5は、電気活性レンズ、すなわち電子的に変調可能な特定の特性を有するレンズである。特に、エレクトロクロミックレンズ5の光透過値及び/又は色は、電気的に変調できる。例えば、エレクトロクロミックレンズ5は装用者によって、又は医療従事者、典型的には眼科医によって制御される。代替的に、光透過値及び色はまた、自動的に変調することもできる。
【0048】
エレクトロクロミックレンズ5はエレクトロクロミックセルを含む。エレクトロクロミックセルは典型的に、2つの平坦又はアフォーカルの透明外層、例えば有機材料又は鉱物材料で製作される2つの表面を含み、その内面に透明な導電性コーティングが堆積される構造を有する。2つの導電性コーティング間に形成される空洞にエレクトロクロミック組成物が充填される。それゆえ、導電性コーティング間に電界を印加することにより、セルの光透過値を変化させることができる。
【0049】
エレクトロクロミックレンズはまた、装用者の眼科処方を満たすように設計され、製造されるウェハも含み得る点に留意しなければならない。ウェハは好ましくは、透明材料で製作され、エレクトロクロミックレンズ5に眼科特性を付与するように適合される。
【0050】
装用者の眼科処方は、医療従事者、例えば眼科医により特定されるデータ群であり、これは処方データとも呼ばれる。処方データには、球面値、乱視値、プリズム、及び、関係する場合は加入度数等、装用者に関する様々な情報が含まれる。このような処方データは、屈折異常とも呼ばれる視覚障害又は屈折誤差を矯正するために装用者により装用されることになる眼科レンズを設計し、製造するために必要である。例えば、装用者が老視である場合、処方データには、この屈折異常に合わせて調整された累進眼科レンズを製造するための加入度数が含まれる。
【0051】
このような場合、エレクトロクロミックレンズ5はエレクトロクロミック眼科レンズである。
【0052】
本発明において、エレクトロクロミックレンズ5の光透過値は自動的に変調できる。このために、図1に示されるように、電子フレーム3は少なくとも1つの感光センサ15と制御回路17を含む。
【0053】
感光センサ15は、光線に関するデータを測定するように構成される。感光センサ15により測定されるデータには、例えば感光センサ15に到達する光線の強度、照度、波長、又は偏光度が含まれる。
【0054】
感光センサ15は、フォトダイオード等の照明センサ又は照明マイクロセンサとすることができる。感光センサ15はそれゆえ、単位表面積あたりに受け取られる光束の形態での照度(単位はlux又はW・m-2)を測定することができる。変形型として、感光センサ15はまた、光束のその他の値、例えば強度、又は明視輝度又は測光輝度を測定することもできる。感光センサ15は例えば、可視範囲及び/又は紫外範囲内の光束を測定することができる。
【0055】
感光センサ15はまた、例えば偏光カットオフ機能を有効化するための光の偏光度を測定するように適合された光センサとすることもできる。感光センサ15はまた、波長選択的カットオフ機能を有効化させるために可視及び/又は不可視光スペクトルを測定するように適合させることもできる。
【0056】
図1に示されているように、感光センサ15はテンプル11上に配置される。さらに、感光センサ15は、装用者の顔の部分から、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに反射される光に関するデータを測定するように配置される。
【0057】
より正確には、当業者であればここで、感光センサ15は有利には、エレクトロクロミックレンズ5により回折され、したがってそれを透過し、且つ、その後、装用者の顔の部分から反射された光に関するデータを測定するように配置されることがわかるであろう。したがって、装用者の顔の部分から反射されながらエレクトロクロミックレンズ5を透過しない光線は迷光であり、感光センサ15はこのような迷光を受け取らないように配置される。
【0058】
換言すれば、装用者が眼鏡機器1を装用するときは、テンプル11が開かれ、電子フレーム3が装用者の耳の上で安定化される。感光センサ15はテンプル11上に配置され、それによって感光センサ15が受け取る光線は、装用者の顔の部分からそれまでに反射された光線である。顔のこの部分とは、皮膚領域又は目とすることができる。
【0059】
当業者には、センサをエレクトロクロミックレンズ5の前面側に配置して、入射光に関するデータを測定できることが知られている。センサをエレクトロクロミックレンズ5の後面側に配置して、エレクトロクロミックレンズ5を透過した、又はそれによって反射された光の強度を測定できることも知られている。
【0060】
しかしながら、本発明によれば、感光センサ15はテンプル11に配置されて、装用者の顔の部分から、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに反射された光に関するデータを測定する。
【0061】
それに加えて、感光センサ15は、測定されたデータを制御回路17に送信するように構成される。
【0062】
図1に示される例では、電子フレーム3は1つの感光センサ15しか含んでいない。しかしながら、電子フレーム3は複数の感光センサ、例えば両方のテンプル11上に配置された感光センサ15を含んでいてもよい。このような場合、感光センサは同じでも異なっていてもよい。
【0063】
制御回路17は、感光センサ15から受け取った測定データに基づいて、エレクトロクロミックレンズ5を電子的に制御し、その特定の特性を変調させるように構成される。特に、制御回路17は、エレクトロクロミックレンズ5の光透過値を変調するように構成される。それゆえ、制御回路17によって眼鏡機器1を光線に適合させることが可能となる。
【0064】
図1に示されるように、制御回路17はテンプル11上に配置される。その結果、制御回路17は、テンプル11の一部のみにわたって延びる電気コンポーネント(図示せず)によって感光センサ15に電気的に接続できる。換言すれば、このような電気コンポーネントは、ヒンジ13を通らずに感光センサ15と制御回路17を直接接続できる。
【0065】
制御回路17の機能について、図6を参照しながら以下により詳しく説明する。
【0066】
前述のように、感光センサ15はテンプル11上に配置されて、装用者の顔の部分から、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに反射される光に関するデータを測定する。
【0067】
装用者の顔の部分から反射された光を感光センサ15に伝導するために、本発明は幾つかの実施形態を提案する。図1及び図2に示される第一の実施形態によれば、眼鏡機器1は、装用者の顔の部分から、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに反射された光を感光センサ15へと偏向するように配置された光学系を含む。図3に示される第二の実施形態によれば、このような光学系は不要であり、感光センサ15の位置決めが相応に適合される。
【実施例
【0068】
第一の実施形態
第一の実施形態によれば、眼鏡機器1は、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに装用者の顔の部分から反射される光を感光センサ15へと偏向させるように配置された光学系を含む。
【0069】
例えば、図1に示されるように、眼鏡機器1は偏向器19をさらに含む。
【0070】
偏向器19は、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに装用者の顔の部分から反射される光を感光センサ15へと偏向させるようにテンプル11上に配置される。
【0071】
偏向器19により、例えばある方向からの光のみを偏向させることができる。この場合、偏向器はホログラフィック偏向器、プリズム、又は回折格子である。
【0072】
偏向器19は例えば、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに装用者の顔の部分から反射される光を感光センサ15へと反射させるように配置された1つ又は複数の反射器を含む。
【0073】
図1の拡大図は、感光センサ15に関する偏向器19の考え得る配置を示している。感光センサ15と偏向器19は、テンプル11の空洞内に格納される。偏向器19は、感光センサ15の外面と比べて傾斜した偏向面を有する。それゆえ、装用者の顔の部分から入った光線は、偏向器19の傾斜面によって感光センサ15へと偏向される。
【0074】
有利には、空洞は感光センサ15を寄生反射から保護し、追加の光線が感光センサ15に向かって反射されないようにする。同様に、偏向器19の幾つかの部分が隠され、装用者からのものではない偏向が回避される。換言すれば、空洞は、反射光自体を避け、且つ装用者の目から入ったのではない光線が感光センサ15に向かって偏向されるのを防止するように構成された特定の形状を有する。
【0075】
図2もまた、眼鏡機器1が光学系を含む実施形態を示している。
【0076】
実際に、図2に示されるように、眼鏡機器1は偏向器21をさらに含む。
【0077】
図1において提案される実施形態とは逆に、偏向器21は電子フレーム3のテンプル11上ではなく、エレクトロクロミックレンズ5の上に配置されている。エレクトロクロミックセルがエレクトロクロミックレンズ5の前面上にある場合、偏向器21は好ましくは、エレクトロクロミックレンズ5の後面上のウェハ上にある。
【0078】
図1の実施形態の偏向器19と同様に、偏向器21は1つ又は複数の反射器を含んでいてよい。
【0079】
エレクトロクロミックレンズ5上に配置された偏向器21は、例えばエレクトロクロミックレンズ5の少なくとも一部を被覆するコーティングを含む。このようなコーティングは、エレクトロクロミックレンズ5の全体又はその一部のみを被覆できる。
【0080】
コーティングは、装用者の顔から反射された光を反射するのに十分に高い反射係数を有していなければならない。しかしながら、この反射係数は、エレクトロクロミックレンズ5により透過させられた入射放射の全てがフィルタ処理されることがないものであるべきである。
【0081】
偏向器21は例えばミラーである。このようなミラーは、例えば近赤外範囲で高い反射率を有するコーティングによって得ることができる。実際に、近赤外範囲では、エレクトロクロミックレンズ5を通じた装用者への外乱が回避される。このような場合、コーティングは例えば、400nm~800nmでの高い透過率と880nmを超える範囲での高い反射率を有する。
【0082】
より正確には、偏向器21は近赤外範囲又は可視範囲内で使用されるホログラフィックミラーである。有利には、ホログラフィックミラーはおそらく10nm未満の狭いバンド幅を有し、それによってスペクトルのほとんどの部分がエレクトロクロミックレンズ5を通過して、装用者にとっての自然な視野を保持することができる。ホログラフィックミラーは、平面オフアクシスミラー又は曲面オフアクシスミラーとすることができる。曲面オフアクシスミラーは、感光センサ15による集光効率を高めるために使用される合焦動作を含むことができる。曲面オフアクシスミラーによれば、装用者の顔の側での角度受け入れ度をより高くすることができる。
【0083】
それに加えて、図2は、装用者の耳の上で安定化されたときの眼鏡機器1の上面図を示す。装用者の顔の特定の部分、すなわち左目LE、右目RE、及び皮膚領域SAが示されている点に留意しなければならない。
【0084】
この図に示されているように、光線L1はエレクトロクロミックレンズ5によって透過させられて、装用者の顔の皮膚領域SAに到達する。この光線L1は皮膚領域SAによって光線L2として反射される。より正確には、これは皮膚領域SAからの拡散反射である。光線L2はその後、エレクトロクロミックレンズ5上に配置された偏向器21に到達する。光線L2はその後、光線L3として偏向される。偏向器21は、光線L2の偏向により得られた光線L3がテンプル11上に配置された感光センサ15に向かって偏向されるように構成された偏向面を有する。偏向器21の構成は、例えばその偏向面の特定の向きに対応する。
【0085】
この例において、感光センサ15は装用者の目の皮膚領域SAから反射された光を受け取る。しかしながら、感光センサ15は、装用者の皮膚領域SAから反射された光の代わりに、又はそれに加えて、装用者の左目LE又は右目REにより反射された光も受け取る可能性がある。
【0086】
眼鏡機器1が光学系を含む本発明のこの第一の実施形態に関して、当業者であれば、明らかに図1の偏向器19と図2の偏向器21を組み合わせて一体でより複雑な光学系を形成できることがわかるであろう。例えばこのような場合、図2に関して、光線L3はエレクトロクロミックレンズ5上に配置された偏向器21によって偏向器19へと偏向させられ、それがこの光線L3を感光センサ15へと偏向させる。
【0087】
第二の実施形態
第二の実施形態によれば、光学系は必要なく、感光センサ15の位置決めが相応に調整される。
【0088】
図3に示されるように、感光センサ15はテンプル11の止まり穴23に格納される。止まり穴23は、電子フレーム3が装用者により装用されているときに装用者の顔の部分に向けられる。
【0089】
止まり穴23は、電子フレーム3のテンプル11に形成される。止まり穴23は、それが感光センサ15を収容できるような大きさである。
【0090】
有利には、感光センサ15の外面のみが外側の外部環境に露出される。この外面は、止まり穴23の開口の方に、したがって装用者の顔の部分の方に向けられる。反対に、感光センサ15のそれ以外の面は電子フレーム3によって隠され、保護される。
【0091】
このような構成により、寄生放射、すなわち装用者の顔、ここでは左目LEにより反射されたものではない光線を回避することが可能となる。ダイアフラム(ここでは図示せず)を止まり穴23の開口に設置して、感光センサ15が受け取る光の量を制限することができる。
【0092】
図3に示される例では、光線L1はエレクトロクロミックレンズ5により透過させられ、装用者の顔の左目LEに到達する。光線L1は左目LEにより光線L2として反射される。光線L2はその後、正しい向きを有する止まり穴23を通じて感光センサ15に到達する。
【0093】
この例において、感光センサ15は装用者の顔の左目LEから反射された光を受け取る。しかしながら、感光センサ15は、装用者の左目LEから反射された光の代わりに、又はそれに加えて、右目RE又は皮膚領域SAから反射された光を受け取る可能性がある。
【0094】
前述のように、この第二の実施形態では、装用者の顔の部分から反射された光を感光センサ15へと伝導するために光学系は必要ない。しかしながら、第一の実施形態と第二の実施形態は矛盾せず、組み合わせることができる。特に、感光センサ15を止まり穴23に格納して、光学系の射出部における光線、例えば第一の実施形態において前述したものを受け取ることができる。
【0095】
感光センサに関して:
すでに説明したように、感光センサ15は、装用者の顔から、電子フレーム3がその装用者により装用されているときに反射された光に関するデータを測定するために電子フレーム3のテンプル上に配置される。装用者の顔の部分とは、装用者の目又は皮膚領域であってよい。
【0096】
より詳しくは、感光センサ15は、反射光の強度、照度、波長、又は偏光度を含むデータを測定するように構成される。
【0097】
しかしながら、反射係数Cは波長に応じて変化する。それに加えて、波長に応じた反射係数Cの変化は、目と皮膚領域とで同じではない。
【0098】
図4は、波長に応じた目の反射係数Cの変化を示す。
【0099】
図4に示される曲線Eにより、ある波長値について、装用者の目の反射係数Cを特定することができ、左目LEか又は右目REかを問わない。
【0100】
反射係数Cは紫外範囲及び近赤外範囲において可視範囲より高い値に到達するようである。当業者の間で知られているように、紫外範囲は100nm~400nmの波長範囲に対応する。近赤外範囲は780nm~2500nmの波長範囲に対応する。
【0101】
その結果、感光センサ15が、電子フレームが装用者により装用されているときに装用者の目から反射された光に関するデータを測定するように配置されている実施形態において、感光センサ15は、有利な態様として、紫外範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合される。明らかに、感光センサ15はまた、紫外範囲又は近赤外範囲に加えて、又はその代わりに可視範囲内の光に関するデータも測定するように適合されてよい。
【0102】
特に、選択された感光センサ15が紫外範囲内の光に関するデータを測定するように適合されている場合、シリコンカーバイド(SiC)フォトダイオードが適当であり、それは、その検出範囲が215nm~330nmであるからである。
【0103】
さらに、図2及び図3に示されているように、装用者の顔の部分、すなわち図2では皮膚領域SA、図3では左目LEから反射され、その後、感光センサ15により受け取られる光線は一般に、エレクトロクロミックレンズ5により回折され、透過させられた光から得られる。この光線は、回折の後、図2及び図3においてL1で示される。通常、エレクトロクロミックレンズ5は紫外光をフィルタ処理で排除するように構成される。このような場合は、したがって、感光センサ15は紫外範囲の光線を受け取らず、そのため、感光センサ15は近赤外範囲の光に関するデータを測定するように適合されていれば十分とすることができる。
【0104】
幾つかの感光センサが近赤外範囲に適している。例えば、ケイ素(Si)フォトダイオードが適当である。ケイ素フォトダイオードの検出範囲は、200nm~1200nmの区間に対応し、両極端では効率が低く、800nm~1000nmで効率が最大となる。1100nmを超える場合、インジウム-ガリウム-ヒ素(InGaAs)フォトダイオードを使用することもでき、これは800nm~1700nmの波長を検出する。
【0105】
図4に示されるように、目の反射係数Cは近赤外範囲の900nm~1100nmで極大値、すなわちピークに到達する。したがって、感光センサ15は有利な態様として、900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合される。
【0106】
図5は、波長に応じた皮膚の反射係数Cの変化を示す。
【0107】
より詳しくは、図5は、皮膚着色に依存する2種類の曲線を示している。
【0108】
曲線DSは、色黒の皮膚に関する反射係数Cの変化を示し、曲線FSは色白の皮膚に関する反射係数Cの変化を示す。特に、ある波長値に関して、色白の皮膚の反射係数Cは一般に色黒の皮膚の反射係数Cより高いように見える。
【0109】
さらに、紫外範囲については、皮膚の反射係数Cは非常に低く、目の反射率Cは非常に高いように見える。
【0110】
より一般的に、曲線DS及びFSは、電子フレームが装用者により装用されているときに装用者の皮膚領域SAから反射された光に関するデータを測定するように感光センサ15が配置されている実施形態では、感光センサ15が可視範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合されると有利であることを示している。明らかに、感光センサ15はまた、可視範囲又は近赤外範囲に加えて、又はその代わりに紫外範囲内の光に関するデータも測定するように適合されてよい。
【0111】
当業者の間で知られているように、可視範囲は400nm~780nmの波長範囲に対応する。
【0112】
可視範囲のための感光センサの分野では、シリコン(Si)フォトダイオード及び周囲光センサ(ALSの頭字語で知られる)は特に適当である。周囲光センサは、人の視覚をシミュレートするために明順応フィルタを備えるケイ素(Si)フォトダイオードである。
【0113】
さらに、すでに説明したように、感光センサ15は、装用者の眼から反射された光に関するデータと装用者の皮膚領域SAから反射された光に関するデータの両方を測定するためにテンプル11上に配置できる。
【0114】
例えば、図2において、光線L3は装用者の皮膚領域SAからの光線L1の反射から得られる。しかしながら、光線は装用者の右目REからエレクトロクロミックレンズ5上に配置された偏向器21へと反射され、その後、偏向器21によって感光センサ15へと再び偏向されるようにすることも可能である。このような場合、感光センサ15が受け取る光線は、皮膚領域SA及び装用者の右目REにより反射された光線である。同様に、図3に示される例において、光線はまた、装用者の皮膚領域SAから反射され、止まり穴23を通じて感光センサ15に到達する可能性もある。
【0115】
その結果、ある実施形態によれば、感光センサ15は、眼から反射された光と装用者の皮膚領域から反射された光に関するデータを測定するように配置される。このような場合、感光センサ15は、近赤外範囲内の光と、好ましくは900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合される。
【0116】
実際に、近赤外範囲は、図4の曲線Eにより示されているように両目についても、図5の曲線DS及びFSにより示されているように皮膚についても、高い反射係数Cに対応する。
【0117】
制御回路について
制御回路17は、感光センサ15により測定されるデータMSRに応じてエレクトロクロミックレンズ5を制御するように構成される。
【0118】
エレクトロクロミックレンズ5は、感光センサ15により測定されたデータMSRに基づいて制御回路17により制御される1つ又は複数の特徴を有する能動多層系として見ることができる。エレクトロクロミックレンズ5は以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:光透過層、スペクトルバンドフィルタ処理層、及び偏向層。
【0119】
有利には、図1に示されるように、制御回路17は電子フレーム3のテンプル11上に配置される。制御回路17は図2及び図3には示されていないが、当業者にとっては、これらの実施形態では制御回路17をテンプル11上にも配置できることが自明にわかるであろう。
【0120】
このような場合、前述のように、制御回路17はテンプル11の一部にわたって延びる電気コンポーネントによって感光センサ15に電気的に接続され、それゆえヒンジ13を通らない。
【0121】
制御回路17の機能は図6に示されている。
【0122】
図6に示される例において、感光センサ15は、電子フレーム3が装用者により装用されているときに装用者の右目REから反射された光に関するデータMSRを測定するように配置される。典型的に、測定されるデータMSRには、反射光の強度、照度、波長、及び偏光度が含まれる。
【0123】
その後、測定されたデータMSRは感光センサ15から制御回路17に伝送される。
【0124】
制御回路17は例えば、エレクトロクロミックレンズ5の上述の特徴のうちの少なくとも1つを制御するように構成される:
- 反射光の強度又は照度に応じた光透過;
- 反射光の波長に応じた1つ又は複数のスペクトルバンドのフィルタ処理;及び
- 反射光の偏光度の範囲に関する強度又は照度の均一性。
【0125】
有利には、制御回路17は閉ループ制御回路である。このような実施形態では、制御回路17の動作は、感光センサ15により測定されたデータMSRによってだけでなく、1つ又は複数の入力によっても指示される。すでに説明したように、制御ユニット17はエレクトロクロミックレンズ5の1つ又は複数の特徴を制御する。
【0126】
エレクトロクロミックレンズ5の光透過を制御するための入力は例えば以下である:
- 反射光について近付くべき強度又は照度のセットポイント、
- 反射光について到達すべき最小強度又は照度、又は
- 反射光について超過すべきではない最大強度又は照度。
【0127】
1つ又は複数のスペクトルバンドをフィルタ処理するための入力は例えば、反射光についてフィルタ処理すべき波長範囲である。
【0128】
最後に、反射光の偏光度の範囲に関して強度又は照度の均一性を変化させるための入力は例えば、反射光について近付くべき、ある偏向方向又は偏光度に関する強度又は照度である。
【0129】
すでに説明したように、電子フレーム3は複数の感光センサ15を含み得る。電子フレーム3は例えば、1つのテンプル11につき1つの感光センサ15を有する。複数の感光センサ15により測定されるデータMSRは、相互に比較できる。測定値MSRはまた、測定値MSRの最小値、最大値、又は平均値を特定するために処理されてもよい。各感光センサ15が複数の測定値MSR、例えば異なる偏光度範囲についての照度又は強度を取得する場合、測定されたデータMSRは、最大照度又は強度での偏光度、その測定された照度又は強度との差として定義される照度又は強度の対応する超過分、及び全ての偏光度に関する平均照度又は強度を特定するために処理できる。
【0130】
それに加えて、感光センサが誤ったデータを測定した場合、これらの測定値は他の感光センサにより収集された測定値MSRに基づいて排除できる。
【0131】
典型的に、閉ループ制御回路は比例-積分-微分コントローラであり、これはPIDコントローラとも呼ばれる。
【0132】
図6において機能図(又はブロック図)の形態で示されているように、制御回路17は入力データとして感光センサ15により測定されたMSRのほか、強度又は照度の、セットポイントとも呼ばれる目標値を受け取る。制御回路17はすると、測定された強度又は照度と目標強度又は照度との差を測定するように構成される。ここに記載の実施形態において、制御回路17はそれゆえ、この差に対する比例応答、積分応答、及び微分応答を特定するように構成される。
【0133】
もちろん、PIDコントローラはまた、波長のフィルタ処理にも適している。制御回路17は入力として、エレクトロクロミックレンズ5によりフィルタ処理しなければならない1つ又は複数の波長範囲、例えば紫外範囲又は赤外範囲を受け取ることができる。このような場合、セットポイントは必ずしも正確な波長というわけではなく、可視領域に対応する波長範囲でもよい。
【0134】
それに加えて、セットポイントはある偏光度範囲についての強度又は照度の均一性の程度に関するものとすることができる。制御回路17はすると、各偏光度について、その偏光度範囲で測定された強度又は照度と平均強度又は照度との差を計算する。制御回路17がPIDコントローラである実施形態では、この差に対する比例応答、積分応答、及び微分応答が特定される。ある偏光度について計算された差は、ある偏光度範囲の強度又は照度の均一性を特徴付け、例えば所定の閾値と比較される。
【0135】
セットポイントは、使用により設定可能である。それに加えて、セットポイントはまた、装用者の敏感さ及び周囲光等の幾つかのパラメータを考慮することにより、自動的にも更新できる。例えば、装用者が暗い環境中に長時間いて、その後、周囲がより明るくなったことに気付いた場合、セットポイントは装用者が介入せずに自動的に調節できる。セットポイントの変更は例えば、ある瞬間から他の瞬間への光強度の、又は照度の測定値の差が所定の閾値より大きいときにトリガされる。更新されたセットポイントはそれゆえ、前回のセットポイント、検出された差、及び前回の照度に基づいて計算される。
【0136】
PIDコントローラにおいて、応答の各々、したがって比例応答、積分応答、及び微分応答はそれぞれ、文献ではゲインとも呼ばれる係数により特徴付けられる。
【0137】
さらに、PIDコントローラの動作を構成するためのファジィ論理を使用することが有利であり得る。1つの実施形態において、ゲイン又は、制御項、すなわち比例、積分、及び微分の項の加重和はファジィ論理関数に置き換えられる。ファジィ論理関数の入力は、誤差、誤差の変量、及び誤差の和である。代替的に、PIDコントローラのゲイン又は加重和はファジィ論理を使って特定される。もちろん、ファジィ論理の他の使用も可能である。
【0138】
ファジィ論理は、エレクトロクロミックレンズ5が非線形挙動を有するときに特に適している。実際に、光透過又は偏向の変動は、測定値がセットポイントに近いとき、すなわち強度、照度、又は偏光度が短い間隔で目標値より低かったり高かったりする場合に起こり得る。この状況は装用者にとって不快である。それゆえ、エレクトロクロミックレンズ5の反応をスムーズにするために、ファジィ論理や、カルマンフィルタ等の他の予測フィルタを含めることにより、制御回路17の機能を改善することが興味深い。
【0139】
本発明には幾つかの利点がある。
【0140】
第一に、装用者の顔の部分、例えば目や皮膚領域により反射された光に関するデータの測定により、これらのデータが装用者の顔に実際に到達する光に関しているため、関連性の高いデータを有することが可能となる。測定センサはそれゆえ、周囲光による影響をほとんど受けない。それゆえ、制御回路によるエレクトロクロミックレンズの制御は改善され、装用者の視覚的な不快感を是正するのにより適している。
【0141】
それに加えて、テンプル上に感光センサを位置付けることにより、制御回路との電気的接続がより簡単になる。実際に、感光センサと制御回路を電気的に接続する電子コンポーネントはヒンジを通らず、それによって眼鏡機器の製造中の問題が回避される。
【0142】
最後に、感光センサの選択により、特に感光センサが受け取る光線が装用者の皮膚領域又は目により反射される場合に、異なる構成を利用することが可能となる。実際に、目、及び皮膚領域のそれぞれの反射係数は同じではなく、感光センサのキャリブレーションは、装用者の顔の選択された部分により反射される波長について行わなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子フレーム(3)を含む眼鏡機器(1)であって、前記電子フレームは、
- エレクトロクロミックレンズ(5)を少なくとも部分的に格納するように配置された前方フレーム要素(7)と、
- 前記前方フレーム要素に接続されたテンプル(11)と、
- 前記テンプルの上に、装用者の顔の部分から、前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに反射された光に関するデータを測定するように配置された感光センサ(15)と、
- 前記測定されたデータに応じて前記エレクトロクロミックレンズを制御するように構成された制御回路(17)と、
を含む、眼鏡機器。
【請求項2】
前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに、前記装用者の顔の前記部分から反射された前記光を前記感光センサへと偏向させるように配置された光学系をさらに含む、請求項1に記載の眼鏡機器。
【請求項3】
前記光学系は、前記テンプル上に配置された偏向器(19)を含む、請求項2に記載の眼鏡機器。
【請求項4】
前記前方フレーム要素に少なくとも部分的に格納されたエレクトロクロミックレンズをさらに含み、
前記光学系は前記エレクトロクロミックレンズ上に配置された偏向器(21)を含む、請求項2又は3に記載の眼鏡機器。
【請求項5】
前記エレクトロクロミックレンズ上に配置された前記偏向器(21)は、前記エレクトロクロミックレンズの少なくとも一部を被覆するコーティングを含む、請求項4に記載の眼鏡機器。
【請求項6】
前記感光センサは前記テンプルの止まり穴(23)の中に格納され、前記止まり穴は、前記電子フレームが前記装用者により装用されているときに、前記装用者の顔の前記部分に向けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項7】
前記感光センサは、前記電子フレームが前記装用者によって装用されているときに、前記装用者の目(LE、RE)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項8】
前記感光センサは、紫外範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合される、請求項7に記載の眼鏡機器。
【請求項9】
前記感光センサは、900nm~1100nmの波長を有する光に関するデータを測定するように適合される、請求項7又は8に記載の眼鏡機器。
【請求項10】
前記感光センサは、前記電子フレームが前記装用者によって装用されているときに、前記装用者の皮膚領域(SA)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項11】
前記感光センサは可視範囲又は近赤外範囲内の光に関するデータを測定するように適合される、請求項10に記載の眼鏡機器。
【請求項12】
前記感光センサは、前記装用者の目(LE、RE)から反射された前記光及び前記皮膚領域(SA)から反射された前記光に関するデータを測定するように配置され、前記感光センサは、近赤外範囲の光に関するデータを測定するように適合される、請求項1~11のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項13】
前記制御回路はテンプル上に配置され、前記感光センサに、前記テンプルの一部のみにわたって延びる電気コンポーネントによって電気的に接続される、請求項1~12のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項14】
前記感光センサは、前記反射光の強度、照度、波長、又は偏光度を含むデータを測定するように構成され、前記制御回路は前記データに応じて前記エレクトロクロミックレンズを制御するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の眼鏡機器。
【請求項15】
前記制御回路は、前記エレクトロクロミックレンズの以下の特徴:
- 前記反射光の前記強度又は前記照度に応じた光透過;
- 前記反射光の前記波長に応じた1つ又は複数のスペクトルバンドのフィルタ処理;及び
- 前記反射光の偏光度の範囲に関する強度又は照度の均一性
のうちの少なくとも1つを制御するように構成される、請求項14に記載の眼鏡機器。
【請求項16】
前記制御回路は、以下の入力(SP):
- 前記光透過を制御するための:
・ 前記反射光について近付くべき強度もしくは照度のセットポイント、
・ 前記反射光について到達すべき最小強度もしくは照度、又は
・ 前記反射光について超過すべきではない最大強度もしくは照度、
- 1つ又は複数のスペクトルバンドをフィルタ処理するための:
・ 前記反射光についてフィルタ処理すべき波長範囲、
- 前記偏光度の範囲に関して強度又は照度の均一性を変化させるための:
・ 前記反射光について近付くべき偏光度に関する強度又は照度
のうちの1つ又は複数を有する閉ループ制御回路である、請求項15に記載の眼鏡機器。
【請求項17】
前記閉ループ制御回路は、PIDコントローラとも呼ばれる比例-積分-微分コントローラである、請求項16に記載の眼鏡機器。
【国際調査報告】