(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】熱可塑性ウレタン含有組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240401BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240401BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240401BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L23/08
C08L101/00
C08L21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561826
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2022020026
(87)【国際公開番号】W WO2022214879
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ヘリントン
(72)【発明者】
【氏名】ネイ・セバスティアン・ドミンゲス・ジュニオル
(72)【発明者】
【氏名】ハディ・モハンマディ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC004
4J002AC014
4J002AC024
4J002BB043
4J002BB04X
4J002BB083
4J002BC023
4J002CD003
4J002CG003
4J002CG013
4J002CK02W
4J002CP033
4J002EK006
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK086
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD203
4J002FD206
4J002GC00
4J002GF00
4J002GG00
4J002GJ01
4J002GK01
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
ポリマー組成物は、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニル(VA)から製造されたポリマー、並びに熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含み得る。ポリマー組成物を製造する方法は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、並びにエチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニル(VA)から製造されたエチレン系ポリマーをブレンドして、ブレンドされた混合物を形成する工程と、ブレンドされた混合物を押し出してポリマー組成物を形成する工程とを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニル(VA)から製造されたエチレン系ポリマー、並びに
熱可塑性ポリウレタン(TPU)
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
エチレン系ポリマーが、0.5~85質量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタンが、15~99.5質量%の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
0超~10質量%の範囲の相溶化剤を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
相溶化剤が、反応性相溶化剤である、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
相溶化剤が、有機過酸化物、エチレンコポリマー、エポキシ樹脂、エチレンアクリル酸コポリマー、スチレン系ポリマー、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリシロキサンポリオール、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項4又は5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
エラストマーを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成ゴム、又はこれらの混合物を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
合成ゴムポリマーがジエン系であり、共役ジエンモノマーのホモポリマー、並びに共役ジエンモノマーとモノビニル芳香族モノマー及びトリエン類とのコポリマー及びターポリマーを含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
架橋された、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
動的架橋された、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
発泡された、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
エチレン系ポリマーが、約0から約40質量%の範囲の酢酸ビニル(VA)含有率を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
TPUが、ポリエステル系又はポリエーテル系である、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
ASTM D1505に従って測定して、0.9から1.7g/cm
3の範囲の密度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
TPUと、そのポリマー組成物中のエチレン系ポリマーと同じ濃度及び同じエチレン含有率の参照EVAとから本質的になる参照ブレンド組成物よりも、低いガラス転移温度及び高い耐摩耗性を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
ASTM D2240に従って測定して、50ショアAから96ショアAの範囲のショアA硬さを有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
TPUから本質的になる参照組成物と比較して、ASTM D2240に従って測定して、ショアA硬さが少なくとも2%低く、ASTM D638に従って測定して、100%引張ひずみにおける弾性率(M100)が少なくとも5%高い、請求項1から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
ASTM D638に従って測定して、100%引張ひずみにおける弾性率(M100)が少なくとも300psiである、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
ASTM D1525に従って測定して、70℃から200℃の範囲のビカー軟化温度を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された物品。
【請求項22】
靴底又は靴部品、フィルム、管材、繊維、ケーブル、耳標、自動推進車部品、自動車部品、ホース、ベルト、減衰素子、アームレスト、家具要素、スキーブーツ、ストップバッファ、ローラー、スキーゴーグル、パウダースラッシュ、アンテナ及びアンテナの足、ハンドル、ハウジング、スイッチ、発泡体、接着剤、並びにクラッディング及びクラッディング要素からなる群より選択される、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
射出成形、圧縮成形、押出成形、3D印刷、発泡、及び熱成形からなる群より選択される方法によって製造される、請求項21に記載の物品。
【請求項24】
ポリマー組成物を製造する方法であって、
熱可塑性ポリウレタン(TPU)、並びに、
エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニル(VA)から製造されたエチレン系ポリマー
をブレンドして、ブレンドされた混合物を形成する工程と、
ブレンドされた混合物を押し出して、ポリマー組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ウレタン含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン、すなわちTPUは、マクログリコール、ジイソシアネート、及び短鎖ジオールの間の反応から生成される熱可塑性プラスチックである。それらは熱可塑性だけではなく、エラストマー性を示す。熱可塑性ポリウレタンは、高耐摩耗性、高せん断強度、及び高弾性等の有益な特性により、スポーツ用品、自動推進車、射出成形技術部品、ソフトタッチ家庭用品、管材及び形材、フィルム及びシート、布、シール及びガスケット等のさまざまな用途で使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、TPUは、硬度の低下によって引張特性、弾性率、及び強度が低下するという傾向に追従している。引張特性を維持しながら硬度を低下させたポリマーを開発する必要性が、当技術分野において残されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この要約は、以下の詳細な説明において更に説明される概念の抜粋を紹介するために提供される。この要約は、請求された発明主題の重要又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、請求された発明主題の範囲を制限する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【0006】
1つ又は複数の態様では、本明細書に開示される実施形態は、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニルから製造されたポリマー、並びに熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物に関する。
【0007】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、ポリマー組成物を製造する方法であって、熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリマー及びビニルエステル含有コポリマーをブレンドして、ポリマー組成物を形成する工程を含み、ビニルエステル含有コポリマーが、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニルを含む、方法に関する。
【0008】
1つ又は複数の態様では、本明細書に開示される実施形態は、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニルから製造されたポリマー、並びに熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物から製造された物品に関する。
請求された発明主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態におけるTPUブレンドの引張データのグラフである。
【
図2】本開示の1つ又は複数の実施形態におけるTPUブレンドの引張データのグラフである。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、参照TPUブレンドの原子間力顕微鏡写真であり、
図3C、
図3D、及び
図3Eは、本開示の1つ又は複数の実施形態におけるTPUブレンドの原子間力顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、エチレン及び1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーから調製されるエチレン系ポリマー、並びに熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含有するポリマー組成物に関する。このようなポリマー組成物は、(TPU単独と比較して) 硬度の低下及び触覚の改善を、引張強度、低いガラス転移温度(Tg)、及び高い耐摩耗性を維持しながら可能にし得る。
【0011】
EVAはTPU含有組成物において硬度を低下させるために使用され得るが、TPUとブレンドされた少なくともエチレン及び分岐ビニルエステルを含むエチレン系ポリマーは、EVAと比較してより低い充填量でそのような効果を有利には達成し得る。1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、発泡されて、現在のソリューションよりも低い操作温度及びより良好な摩耗挙動等の良好な特性の組み合わせを有する物品を製造することができる。このようなポリマー組成物は、靴底又は靴部品、フィルム、管材、繊維、ケーブル、耳標、自動推進車部品、自動車部品、ホース、ベルト、減衰素子、アームレスト、家具要素、スキーブーツ、ストップバッファ、ローラー、スキーゴーグル、パウダースラッシュ、アンテナ及びアンテナの足、ハンドル、ハウジング、スイッチ、並びにクラッディング及びクラッディング要素を含む種々の用途において有用であり得る。
【0012】
本開示によるポリマー組成物は、さまざまな比率のエチレン及び1種又は複数種の分岐ビニルエステルを組み込んだエチレン系ポリマーを含み得る。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、高圧重合プロセスにおいて追加のコモノマーの存在下で、エチレン及び分岐ビニルエステルを反応させることによって調製され得る。他の実施形態では、ターポリマーは、酢酸ビニルモノマーを追加的に組み込むことによって同様に調製され得る。1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、石油資源及び/又は再生可能資源に由来するモノマーから生成されるポリマーを含んでもよい。
【0013】
ポリマー組成物
本明細書に開示されるポリマー組成物は、好適な量の熱可塑性ポリウレタン、並びに、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニルから製造された好適な量のポリマー、を含む。また、本明細書に開示されるポリマー組成物は、場合により、1種又は複数種の相溶化剤、架橋剤、発泡剤、促進剤、及びエラストマーを含み得ることが想定される。
【0014】
エチレン系ポリマー
1つ又は複数の実施形態では、本明細書に開示されるポリマー組成物は、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー(コポリマーとして)、及び場合により酢酸ビニル(ターポリマーとして)から製造された好適な量のエチレン系ポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により酢酸ビニルから製造されたエチレン系ポリマーを5~85質量%(質量パーセント)を含む。エチレン、1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマー、及び場合により、酢酸ビニルから製造されるこのポリマーは、0.5、1、2.5、5、15、20、25、30、35、40又は45質量%のいずれかの下限から、50、55、60、65、70、75、80及び85質量%の上限までの範囲の量でポリマー組成物中に存在してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0015】
本開示によるポリマー組成物は、さまざまな比率のエチレン及び1種又は複数種の分岐ビニルエステルを組み込んだエチレン系ポリマーを含んでもよい。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、高圧重合プロセスにおいて追加のコモノマーの存在下で、エチレン及び分岐ビニルエステルを反応させることによって製造され得る。他の実施形態では、ターポリマーは、酢酸ビニルモノマーを追加的に組み込むことによって同様に調製され得る。1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、石油資源及び/又は再生可能資源に由来するモノマーから生成されるポリマーを含んでもよい。
【0016】
分岐ビニルエステルモノマー
上述のように、ポリマー組成物は、分岐ビニルエステルモノマーを含むエチレン系ポリマーを含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、分岐ビニルエステルは、分岐アルキル酸の異性体混合物から生成された分岐ビニルエステルを含んでもよい。本開示による分岐ビニルエステルは、一般化学式(I)を有し得る。
【0017】
【0018】
(式中、R1、R2、及びR3は、C3~C20の範囲の合計炭素数を有する。一部の実施形態では、R1、R2、及びR3はすべて、一部の実施形態でさまざまな程度の分岐を有するアルキル鎖であってもよいか、又はR1、R2、及びR3のサブセットは、一部の実施形態では、水素、アルキル、若しくはアリールからなる群より独立して選択されてもよい。)
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、分岐ビニルエステルは、一般化学式(II)を有し得る。
【0020】
【0021】
(式中、R4及びR5は、6又は7の合計炭素数を有し、ポリマー組成物は、GPCにより得られる5kDaから10000kDaの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。1つ又は複数の実施形態では、R4及びR5は、6未満又は7を超える合計炭素数を有してもよく、ポリマー組成物は、10000kDaまでのMnを有してもよい。すなわち、Mnが5kDa未満の場合、R4及びR5は、6未満又は7を超える合計炭素数を有してもよいが、Mnが5kDaを超える場合、例えば5から10000kDaの範囲における場合、R4及びR5は、6又は7の合計炭素数を含んでもよい。特定の実施形態では、R4及びR5は、7の合計炭素数を有し、Mnは、5から10000kDaの範囲であってもよい。さらなる1つ又は複数の特定の実施形態では、式(II)による分岐ビニルエステルを酢酸ビニルと組み合わせて使用してもよい。)
【0022】
分岐ビニルエステルの例には、その誘導体を含む以下の化学構造を有するモノマーが含まれる。
【0023】
【0024】
1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、石油資源及び/又は再生可能資源から誘導されるモノマーから生成されるポリマーを含んでもよい。
【0025】
1つ又は複数の実施形態では、分岐ビニルエステルには、ネオノナン酸、ネオデカン酸等のビニルエステルを含有するモノマー及びコモノマー混合物が含まれてもよい。一部の実施形態では、分岐ビニルエステルには、Hexion(商標) chemicalsから市販されている、コッホ合成によって調製されたVersatic(商標)酸EH、Versatic(商標)酸9及びVersatic(商標)酸10を含むVersatic(商標)酸シリーズの第三級カルボン酸が含まれてもよい。
【0026】
本開示によるエチレン系ポリマーは、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)及び炭素13核磁気共鳴(13C NMR)によって測定される、ある質量パーセントのエチレンを含んでもよく、この質量パーセントは、70質量%、75質量%、及び80質量%のいずれかから選択される下限から、85質量%、90質量%、95質量%、99.9質量%、及び99.99質量%のいずれかから選択される上限までの範囲であり、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0027】
本開示によるエチレン系ポリマーは、1H NMR及び13C NMRによって測定される、ある質量パーセントのビニルエステルモノマー、例えば上記の式(I)及び(II)のビニルエステルモノマーを含んでもよく、この質量パーセントは、0.01質量%、0.1質量%、1質量%、5質量%、10質量%、20質量%、又は30質量%のいずれかから選択される下限から、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、89.99質量%、又は90質量%から選択される上限までの範囲であり、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0028】
本開示によるエチレン系ポリマーは、1H NMR及び13C NMRによって測定される、ある質量パーセントの酢酸ビニルを含んでもよく、この質量パーセントは、0.01質量%、0.1質量%、1質量%、2質量%、5質量%、10質量%、12質量%、15質量%、20質量%、又は30質量%のいずれかから選択される下限から、20質量%、30質量%、33質量%、35質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、又は89.99質量%から選択される上限までの範囲であり、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0029】
本開示によるエチレン系ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるキロダルトン(kDa)単位の数平均分子量(Mn)を有してもよく、この数平均分子量(Mn)は、1kDa、5kDa、10kDa、15kDa、及び20kDaのいずれかから選択される下限から、40kDa、50kDa、100kDa、300kDa、500kDa、1000kDa、5000kDa、及び10000kDaのいずれかから選択される上限までの範囲であり、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0030】
本開示によるエチレン系ポリマーは、GPCにより測定されるキロダルトン(kDa)単位の質量平均分子量(Mw)を有してもよく、この質量平均分子量(Mw)は、1kDa、5kDa、10kDa、15kDa、及び20kDaのいずれかから選択される下限から、40kDa、50kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa、1000kDa、2000kDa、5000kDa、10000kDa及び20000kDaのいずれかから選択される上限までの範囲であり、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0031】
本開示によるエチレン系ポリマーは、GPCによって測定される分子量分布(MWD、Mnに対するMwの比として定義される)を有してもよく、この分子量分布は、1、2、5、又は10のいずれかの下限、及び20、30、40、50、又は60のいずれかの上限を有し、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0032】
一部の実施形態では、エチレン系ポリマーは、反応物混合物中でコモノマー及びプレポリマーの連鎖重合を開始するフリーラジカルを生成することができるラジカル重合のための1種又は複数種の開始剤の存在下で重合され得る。1つ又は複数の実施形態では、ラジカル開始剤は、自発的に、又は温度、pH、若しくは他の誘因による刺激下でフリーラジカルを放出するように分解する化学種を含んでもよい。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、ラジカル開始剤には、過酸化物及び二官能性過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;tert-ブチルクミルペルオキシド;t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;tert-ブチルペルオキシピバレート;第三級ブチルペルオキシネオデカノエート;t-ブチル-ペルオキシ-ベンゾエート;t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;tert-ブチル3,5,5-トリメチルヘキサノエートペルオキシド;tert-ブチルペルオキシベンゾエート;2-エチルヘキシルカーボネートtert-ブチルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキサン;1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシド)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシド)バレレート;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;ペルオキシドジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等が含まれてもよい。
【0034】
ラジカル開始剤にはまた、過酸化ベンゾイル、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2-t-ブチルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-クミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-t-アミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、m/p-アルファ,アルファ-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3,5-トリス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(t-アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ-t-アミルペルオキシド、t-アミルクミルペルオキシド、t-ブチル-イソプロペニルクミルペルオキシド、2,4,6-トリ(ブチルペルオキシ)-s-トリアジン、1,3,5-トリ[1-(t-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、ジ(イソボミル)ペルオキシジカーボネート、3-クミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-ブチルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-アミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、トリ(1,3-ジメチル-3-t-ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル)1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ))ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、過酸化ベンゾイル、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状三量体)、メチルエチルケトンペルオキシド環状二量体、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルベンゾエート、t-アミルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、ジ-t-ブチルジペルオキシフタレート、t-ブチルペルオキシ(3,3,5-トリメチルヘキサノエート)、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-(cis-3-カルボキシ)プロピオネート、アリル3-メチル-3-t-ブチルペルオキシブチレート、OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、1,1,1-トリス[2-(t-ブチルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(t-アミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(クミルペルオキシ-カボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、OO-t-アミル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、2,4-ジブロモ-ベンゾイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、及びこれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0035】
1つ又は複数の実施形態では、ラジカル開始剤には、アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩等、過酸化物とアゾジニトリル化合物の混合物を含有するアゾペルオキシド開始剤、例えば、2,2'-アゾビス(2-メチル-ペンタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチル-ブタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-エチル-ペンタンニトリル)、2-[(1-シアノ-1-メチルプロピル)アゾ]-2-メチル-ペンタンニトリル、2-[(1-シアノ-1-エチルプロピル)アゾ]-2-メチルブタンニトリル、2-[(1-シアノ-1-メチルプロピル)アゾ]-2-エチル等が含まれてもよい。
【0036】
1つ又は複数の実施形態では、ラジカル開始剤には、炭素-炭素(「C-C」)フリーラジカル開始剤、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジベンジル-3,4ジトリルヘキサン、2,7-ジメチル-4,5-ジエチル-4,5-ジフェニルオクタン、3,4-ジベンジル-3,4-ジフェニルヘキサン等が含まれてもよい。
【0037】
1つ又は複数の実施形態では、エチレン系ポリマー重合は、0.000001質量%、0.0001質量%、0.01質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.4質量%、0.6質量%、0.75質量%及び1質量%のいずれかから選択される下限から、0.5質量%、1.25質量%、2質量%、4質量%、及び5質量%のいずれかから選択される上限までの範囲の合計重合混合物の質量パーセント(質量%)で存在する1種又は複数種のラジカル開始剤を含んでもよく、任意の下限は、任意の上限とともに使用することができる。更に、ラジカル開始剤の濃度は、多かれ少なかれ最終材料の用途に応じる可能性があることが想定される。
【0038】
一部の実施形態では、エチレン系ポリマーは、モノマー及びコモノマーの供給ラインにおける重合を防止することができるが、反応器での重合を妨げない1種又は複数種の安定剤の存在下で重合されてもよい。
【0039】
1つ又は複数の実施形態では、安定剤には、ニトロキシル誘導体、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニルオキシ、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、2,2,6,6-テトラメチル-4-アミノ-ピペリジニルオキシ等が含まれてもよい。
【0040】
1つ又は複数の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.000001質量%、0.0001質量%、0.01質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.4質量%、0.6質量%、0.75質量%及び1質量%のいずれかから選択される下限から、0.5質量%、1.25質量%、2質量%、4質量%、及び5質量%のいずれかから選択される上限までの範囲の合計重合混合物の質量パーセント(質量%)で存在する安定剤を含有してもよく、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。更に、安定剤の濃度は、多かれ少なかれ最終材料の用途に応じる可能性があることが想定される。
【0041】
一部の実施形態では、エチレン系ポリマーは、連鎖移動剤の存在下で重合されてもよい。連鎖移動剤の例には、プロピレン、エタン、プロパン、メタン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、クロロホルム、及び四塩化炭素が含まれ得る。連鎖移動剤は、0.0000001質量%、0.000001質量%、0.001質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.05質量%、1.0質量%のいずれかから選択される下限から、2.0質量%、3.0質量%、4.0質量%、5.0質量%のいずれかから選択される上限までの範囲の合計重合混合物の質量パーセント(質量%)で存在してもよく、任意の下限は、任意の上限とともに使用することができる。
【0042】
1つ又は複数の実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン及び1種又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーを重合することによって反応器中で調製されてもよい。ラジカル開始剤の存在下でコモノマーを反応させる方法は、溶液相重合、加圧ラジカル重合、塊状重合、乳化重合、及び懸濁重合を含む当技術分野における任意の好適な方法を含み得る。
【0043】
一部の実施形態では、反応器は、低圧重合系として知られている500bar未満の圧力での回分反応器又は連続反応器であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、反応は、エチレン及び1種又は複数種のビニルエステルモノマーを、不活性溶媒及び/又は1種又は複数種の液体モノマーの液相中で重合する低圧重合プロセスにおいて実行されてもよい。
【0044】
一部の実施形態では、重合は、重合ゾーンの体積1リットル当たりのフリーラジカル重合のための、1種又は複数種の開始剤の総量として計算される約0.0001から約0.01ミリモルの量でフリーラジカル重合のための開始剤を含んでもよい。重合ゾーンにおけるエチレンの量は、主に、約20barから約500barの範囲の反応器の全圧力及び約20℃から約300℃の範囲の温度に依存し得る。
【0045】
1つ又は複数の実施形態では、反応器内の圧力は、20、30、40、50、75、又は100barのいずれかの下限から、100、150、200、250、300、350、400、450、又は500barのいずれかの上限までの範囲であってもよく、反応器内の温度は、20℃、50℃、75℃又は100℃のいずれかの下限から、150℃、200℃、250℃、300℃のいずれかの上限までの範囲であってもよく、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0046】
本開示による重合プロセスの重合混合物は、エチレン、1種又は複数種のビニルエステルモノマー、フリーラジカル重合の開始剤、及び場合により1種又は複数種の不活性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルカーボネート(DMC)、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニトリル、トルエン、キシレン、エーテル、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ベンゼン又はアセトンを含んでもよい。低圧条件下で製造されたエチレン系ポリマーは、1~300kDaの数平均分子量、1~1000kDaの質量平均分子量及び1~60のMWDを示し得る。
【0047】
一部の実施形態では、コモノマー及び1種又は複数種のフリーラジカル重合開始剤を重合して、高圧重合系として知られている50℃を超える温度及び1000barを超える圧力での連続又は回分プロセスでエチレン系ポリマーを製造する。例えば、1000、1100、1200、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、3000、5000、又は10000barを超える圧力が使用されてもよい。ビニルエステル含有コポリマーは、高圧条件下で製造されるコポリマー又はターポリマーであってもよく、1~10000kDaの数平均分子量(Mn)、1~20000kDaの質量平均分子量(Mw)を有してもよい。分子量分布(MWD)は、GPCにより得た質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の間の比から得られる。高圧条件下で製造されたコポリマー及びターポリマーは、1~60のMWDを有し得る。GPC実験は、どちらもPolymerChar社の赤外線検出器IR5及び4ブリッジ細管粘度計(four bridge capillary viscometer)、並びにWyatt社の8角度光散乱検出器を用いる三重検出(triple detection)と組み合わせたゲル浸透クロマトグラフィー等の分析方法で実行することができる。東ソー株式会社の4つの混床式13μmカラムのセットを、140℃の温度で使用してもよい。実験の条件は、濃度1mg/mL、流速1mL/分、溶解温度及び時間がそれぞれ160℃及び90分、注入量200μLである。使用した溶媒は、100ppmのBHTで安定化されたTCB(トリクロロベンゼン)である。
【0048】
一部の実施形態では、低圧重合系及び高圧重合系における重合中の転化率は、製造されたポリマーの質量又は質量流量を、モノマー及びコモノマーの質量又は質量流量で除したものとして定義され、0.01%、0.1%、1%、2%、5%、7%、10%のいずれかの下限、及び15%、17%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%のいずれかの上限を有することができ、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0049】
熱可塑性ポリウレタン
TPUコポリマーは、ジイソシアネート、鎖延長剤又は短鎖ジオール、及びポリオール又は長鎖ジオールの反応によって形成されるドメインを含有するブロックコポリマーである。当業者に公知の任意の種類のTPUコポリマーが、本明細書において使用されるのに好適である。上記の反応成分の比率、構造、及び/又は分子量を変化させて、TPUコポリマーの構造を材料を微調整して所望の最終特性にすることにより、さまざまな種類のTPUコポリマーを製造することができる。
【0050】
本明細書に開示されるポリマー組成物は、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、又は50質量%のいずれかの下限から、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、又は99.5質量%のいずれかの上限までの範囲の好適な量の熱可塑性ポリウレタンを含むことができ、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0051】
本開示によるポリマー組成物は、例えば、主にアジピン酸エステルから誘導されるポリエステル系、又は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)エーテル、ポリエチレングリコール又はポリプロピレンオキシドグリコールをベースとするポリエーテル系であり得る熱可塑性ポリウレタンを含んでもよい。例示的なTPUコポリマーは、Epamould(Epaflex Poly urethanes S.r.l.社、イタリア)、Epaline(Epaflex Polyurethanes S.r.l.社)、Epacol(Epaflex Polyurethanes S.r.l.社)、Pakoflex(Epaflex Polyurethanes S.r.l.社)、Elastollan(登録商標)(BASF社、ミシガン州)、Pearlthane(登録商標)(Lubrizol社、オハイオ州)、Pearlthane(登録商標) ECO(Lubrizol社)、Estane(登録商標)(Lubrizol社)、Pellethane(Lubrizol社)、Desmopan(Covestro社、ドイツ)、New Power(登録商標)(New power industrial limited社、香港)、Irogran(登録商標)(Huntsman社、テキサス州)、Avalon(登録商標)(Huntsman社)、Exelast EC(シンエツポリマーヨーロッパB.V.社、オランダ)、Laripur(C.O.I.M.S.p.A.社、イタリア)、Isothane(Greco社、台湾)、Zythane(商標)(Alliance Polymers & Services社、ミシガン州)、及びTPU95A(Ultimaker社、オランダ)である。
【0052】
相溶化剤
ポリマー組成物はまた、2種のポリマー成分をともにブレンドすることを容易にするために、1種又は複数種の相溶化剤を含んでもよい。本明細書に開示されるポリマー組成物は、場合により、0質量%、2質量%、又は4質量%のいずれかの下限から、6質量%、8質量%、又は10質量%のいずれかの上限までの範囲の量で相溶化剤を含んでもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0053】
好適な相溶化剤には、有機過酸化物;相溶化エチレンコポリマー;エポキシ樹脂及びスチレン系ポリマーを含む相溶化剤;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;ポリシロキサンポリオール、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0054】
好適な有機過酸化物には、これらに限定されないが、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-アミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオヘプタノエート、α-クミルペルオキシネオヘプタノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(n-プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-イソ-ノナノイルペルオキシド、ジ-ドデカノイルペルオキシド、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-デカノイルペルオキシド、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、ジ-(3-カルボキシプロピオニル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、ジベンゾイルペルオキシド、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシ(cis-3-カルボキシ)プロペノエート、1,1-ジ-(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、o-t-アミル-o-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、o-t-ブチル-o-イソプロピル-モノペルオキシカーボネート、o-t-ブチル-o-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、ポリエステルテトラキス(t-ブチルペルオキシカーボネート)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-アミルペルオキシアセテート、t-アミルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソノナノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルジペルオキシフタレート、2,2-ジ-t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ジ-(t-アミロペルオキシ)プロパン、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ-(t-アミロペルオキシ)ブチレート、エチル3,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、ジクミルペルオキシド、α,α'-ビス-(t-ブチルペルオキシ)ジ-イソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-(t-アミル)ペルオキシド、t-ブチルa-クミルペルオキシド、ジ-(t-ブチル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキサン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン、及びこれらの混合物が含まれる。
【0055】
好適な相溶化エチレンコポリマーは、式E-X、E-Y、又はE-X-Yを有するものであり、式中、Eはエチレンであり、Xは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルビニルエーテル、一酸化炭素、二酸化硫黄、又はこれらの混合物(各アルキル基は、独立して1~8個の炭素原子を含有する)から誘導されるα,β-エチレン性不飽和モノマーであり、Yは、TPUコポリマー成分及び/又は分岐ビニルエステルコポリマー成分と共有結合を形成することができる反応性基を含有するα,β-エチレン性不飽和モノマーである。一実施形態では、Xは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、エチルメチルアクリレート、又はアクリル酸ブチルである。一実施形態では、Yは、メタクリル酸グリシジル、グリシジルエチルアクリレート、又はグリシジルブチルアクリレートである。例示的な相溶化剤は、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレート(E-MA-GMA)ターポリマーである。
【0056】
エポキシ樹脂及びスチレン系ポリマーを含む好適な相溶化剤は、エポキシ樹脂とスチレン系ポリマーとをブレンドすることにより調製することができる。利用される特定のエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリン等のエポキシド含有化合物と、グリセリン又はビスフェノール等の多価化合物とを、塩酸と結合するのに十分な塩基性材料の存在下で反応させてエポキシ末端プレポリマーを形成することにより調製することができる。エポキシは、過酢酸等の過酸化剤によるポリオレフィンのエポキシ化によっても調製することができる。種々のエポキシ樹脂が、広範囲のエポキシ含量、分子量、軟化点及び組成物で市販されており、これらも本明細書で使用することができる。好適なスチレン系ポリマーには、これらに限定されないが、スチレン、a-メチルスチレン、及びp-メチルスチレンのホモポリマー;スチレン-ブタジエンコポリマーゴム、エチレン-プロピレンコポリマーゴム等のゴム状ポリマーで修飾された耐衝撃性ポリスチレン;エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴム;スチレン-無水マレイン酸コポリマー;スチレンアクリロニトリルコポリマー;スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンターポリマー;スチレン-メチルメタクリレートコポリマー等が含まれる。例示的な相溶化剤は、スチレンアクリロニトリル(SA)-エポキシである。
【0057】
好適なエチレン-アクリル酸コポリマー(ethylene-acrylic copolymer)には、これらに限定されないが、エチレン、アクリル酸エステル及び無水マレイン酸のランダムターポリマー(Lotader類)等のエチレン-アクリル酸コポリマーが含まれる。
【0058】
好適なポリカーボネートポリオールには、これらに限定されないが、ポリカーボネートポリオール、例えば、ポリカーボネートジオール(例えば、ポリ(プロピレンカーボネート(PPC)-ジオール)又はポリカーボネートトリオール;ポリカプロラクトンポリオール;アルコキシル化ポリオール;及びこれらの混合物が含まれる。ポリオールは、ジオール、トリオール、テトロール、若しくは他の任意のポリオール又はこれらの組み合わせであり得る。例示的な相溶化剤は、ポリ(プロピレンカーボネート(PPC)-ジオール)である。
【0059】
好適なポリブタジエンポリオールには、これらに限定されないが、約2から約3の範囲の平均ヒドロキシル官能基を有するヒドロキシル官能化ポリブタジエン等が含まれる。
【0060】
好適なポリシロキサンポリオールには、これらに限定されないが、末端又はペンダントヒドロキシル基を有するポリシロキサン骨格を有するポリマー、例えば、米国特許第5,916,992号に記載のポリブタジエンポリオールが含まれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
架橋剤
本開示によるポリマー組成物は、ポリマー加工中にフリーラジカルを発生することができる1種又は複数種の架橋剤を含んでもよい。本開示によるポリマー組成物は、場合により、架橋剤を0から10質量%の範囲で含むことができる。架橋剤は、0、0.001、0.01、0.1、1、1.5、2及び3質量%のいずれかの下限から、5、6、7、8、9又は10質量%のいずれかの上限までの範囲の量で存在してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0062】
1つ又は複数の実施形態では、架橋剤には、二官能性過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;00-tert-アミル-0-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート;tert-ブチルクミルペルオキシド;tert-ブチル3,5,5-トリメチルヘキサノエートペルオキシド;tert-ブチルペルオキシベンゾエート;2-エチルヘキシルカーボネートtert-ブチルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキサン;1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシド)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシド)バレレート;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンペルオキシド等が含まれてもよい。
【0063】
架橋剤にはまた、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノール、ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、第三級ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチル-ペルオキシ-ベンゾエート、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノエート、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2-t-ブチルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-クミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-t-アミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、m/p-アルファ,アルファ-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3,5-トリス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(t-アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート、ジ-t-アミルペルオキシド、t-アミルクミルペルオキシド、t-ブチル-イソプロペニルクミルペルオキシド、2,4,6-トリ(ブチルペルオキシ)-s-トリアジン、1,3,5-トリ[1-(t-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、ジ(イソボミル)ペルオキシジカーボネート、3-クミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-ブチルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、3-t-アミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート、トリ(1,3-ジメチル-3-t-ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)フェニル)1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチルN-[1-{3(1-メチルエテニル)フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート、1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ))ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、過酸化ベンゾイル、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、3,6,9トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状三量体)、メチルエチルケトンペルオキシド環状二量体、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルベンゾエート、t-アミルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシスクシネート、ジ-t-ブチルジペルオキシフタレート、t-ブチルペルオキシ(3,3,5-トリメチルヘキサノエート)、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-(cis-3-カルボキシ)プロピオネート、アリル3-メチル-3-t-ブチルペルオキシブチレート、OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、1,1,1-トリス[2-(t-ブチルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(t-アミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(クミルペルオキシ-カボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、OO-t-アミル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、2,4-ジブロモ-ベンゾイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド、及びこれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0064】
1つ又は複数の実施形態では、架橋剤には、ポリイソシアネート、例えばメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI);トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパン-トリス-メタクリレート(TRIM)、トリアリルシアヌレート(TAC)、三官能(メタ)アクリレートエステル(TMA)、N,N'-m-フェニレンジマレイミド(PDM)、ポリ(ブタジエン)ジアクリレート(PBDDA)、高ビニルポリ(ブタジエン)(HVPBD)、ポリ-トランスオクテナマーゴム(TOR)(Vestenamer(登録商標))、及びこれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0065】
また、ポリマー組成物は、化学的に架橋されたポリマーのクラスである「共有適応ネットワーク(covalent adaptable networks)」とも呼ばれるビトリマーとして動的架橋を含有してもよく、外部刺激(温度、応力、pH等)が結合交換反応を引き起こし、それによって結合及び架橋の数を一定に保ちながらネットワークトポロジーの変化を可能にすることが想定される。ビトリマーに存在する動的共有結合は、常結合性結合交換反応(associative exchange reaction)を起こすことができ、したがってネットワークトポロジーが変化することができ、結合の総数は時間的に一定であり、常時あらゆる温度で変動しないにもかかわらず、材料が応力及び流れを緩和する。触媒は、上述の動的架橋の交換反応を促進することができる。1つ又は複数の実施形態では、触媒は、金属塩、金属酸化物、金属アルコキシド、金属アクリレート、金属アセチルアセトネート、金属水素化物、金属ハロゲン化物からなる群より選択される金属塩である。このような金属には、例えば、亜鉛、スズ、マグネシウム、コバルト、カルシウム、チタン及びジルコニウムが含まれ得る。
【0066】
エラストマー
本開示の1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、1種又は複数種のエラストマーを含んでもよい。
【0067】
本開示によるポリマー組成物は、場合により、エラストマーを0から60質量%の範囲で含むことができる。エラストマーは、0、5、10及び15質量%のいずれかの下限から、20、30、40、50及び60質量%のいずれかの上限までの範囲の量で存在してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0068】
本開示によるエラストマーは、1種又は複数種の天然ゴム、合成ゴム、又はそれらの混合物を含んでもよい。代表的な合成ゴムポリマーには、ジエン系合成ゴム、例えば共役ジエンモノマーのホモポリマー、並びに共役ジエンモノマーとモノビニル芳香族モノマー及びトリエン類とのコポリマー及びターポリマーが含まれる。例示的なジエン系化合物には、これらに限定されないが、ポリイソプレン(IR)、例えば、1,4-cis-ポリイソプレン及び3,4-ポリイソプレン;ネオプレン;ポリスチレン;スチレンブタジエンゴム(SBR);ポリブタジエン(BR);1,2-ビニル-ポリブタジエン;ブタジエン-イソプレンコポリマー;ブタジエン-イソプレン-スチレンターポリマー;イソプレン-スチレンコポリマー;スチレン/イソプレン/ブタジエンコポリマー;スチレン/イソプレンコポリマー、エマルジョンスチレン-ブタジエンコポリマー、溶液スチレン/ブタジエンコポリマー;イソブチレンゴム等のブチルゴム;エチレン/プロピレンコポリマー、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)、並びにそれらのブレンドが含まれる。また、四塩化スズ等の多官能改質剤、又はジビニルベンゼン等の多官能モノマーの使用により形成される分岐構造を有するゴム成分が使用されてもよい。さらなる好適なゴム成分には、ニトリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(例えば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム等)、フッ素エラストマー、アクリルゴム(アクリル酸アルキルコポリマー(ACM)、例えばエチレンアクリルゴム)、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、例えば、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、水素化イソプレンイソブチレンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、及びこれらのブレンドが含まれる。
【0069】
発泡剤
本開示によるポリマー組成物は、発泡ポリマー組成物及び発泡体を製造するための1種又は複数種の発泡剤を含んでもよい。本開示によるポリマー組成物は、場合により、発泡剤を0から20質量%の範囲で含むことができる。発泡剤は、0、2、4、6及び8質量%のいずれかの下限から、10、12、14、16、18及び20質量%のいずれかの上限までの範囲の量で存在してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0070】
発泡剤には、固体、液体、又は気体の発泡剤が含まれてもよい。固体発泡剤を利用する実施形態では、発泡剤は、粉末又は顆粒としてポリマー組成物と組み合わされてもよい。
【0071】
本開示による発泡剤には、ポリマー加工温度で分解し、N2、CO、CO2等の発泡ガスを放出する化学発泡剤が含まれてもよい。化学発泡剤の例としては、有機発泡剤、例えば、トルエンスルホニルヒドラジン等のヒドラジン、オキシジベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4'-ジスルホン酸ヒドラジド等、硝酸塩、アゾ化合物、例えばアゾジカルボンアミド、シアノ吉草酸、アゾビス(イソブチロニトリル)、及びN-ニトロソ化合物及び他の窒素系材料、並びに当技術分野で公知の他の化合物が挙げられる。
【0072】
無機化学発泡剤は、炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等を含んでもよく、これらは単独で使用しても、弱有機酸、例えばクエン酸、乳酸、又は酢酸と組み合わせて使用してもよい。
【0073】
発泡剤促進剤
本開示によるポリマー組成物は、関連する活性化温度を下げることによって発泡剤の作用を増強又は開始する1種又は複数種の発泡促進剤(キッカー(kicker)としても知られている)を含んでもよい。例えば、選択された発泡剤が170℃を超える温度、例えば220℃以上で反応又は分解し、活性化温度に加熱すると周囲のポリマーが分解する場合、発泡促進剤が使用され得る。発泡促進剤には、選択された発泡剤を活性化することができる任意の好適な発泡促進剤が含まれてもよい。1つ又は複数の実施形態では、好適な発泡促進剤には、カドミウム塩、カドミウム-亜鉛塩、鉛塩、鉛-亜鉛塩、バリウム塩、バリウム-亜鉛(Ba-Zn)塩、酸化亜鉛、二酸化チタン、トリエタノールアミン、ジフェニルアミン、スルホン化芳香族酸及びそれらの塩等が含まれてもよい。
【0074】
本開示によるポリマー組成物は、場合により、発泡剤促進剤を0から5質量%の範囲で含むことができる。発泡剤促進剤は、0、0.001、0.1、0.5、及び1質量%のいずれかの下限から、2、3、4及び5質量%のいずれかの上限までの範囲の量で存在してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と組み合わされてもよい。
【0075】
可塑剤
1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤は、フタレート系、例えば:DOP、DOA、DINP、DEHP、DPHP、DIDP、DIOP、DEP、DIBP等であってもよく、アジペート系、例えば:DEHA、DMAD、DBS、DBM、DIBM等であってもよく、バイオ系、例えば:クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、リシノール酸メチル、大豆油、エポキシ化大豆油、他の植物油等であってもよく、トリメリテート類、アゼレート類、ベンゾエート類、スルホンアミド類、有機リン酸類、グリコール類及びポリエーテル類、高分子可塑剤、ポリブテン等であってもよい。
【0076】
ワックス
1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、ワックス、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びナノクリスタリンワックス、天然ワックス(ビーズワックス、カルナウバワックス、セレシンワックス等)、石油ワックス等を含んでもよい。
【0077】
充填剤、ナノ充填剤及び添加剤
本開示によるポリマー組成物は、充填剤、ナノ充填剤、及びブレンド中にポリマー組成物に添加されるとさまざまな物理的及び化学的特性を改変し、1種又は複数種のポリマー添加剤を含む添加剤を含んでもよく、例えば加工助剤、潤滑剤、帯電防止剤、清澄剤、核剤、ベータ核剤、滑り剤、酸化防止剤、相溶化剤、制酸剤、光安定剤、例えばHALS、IR吸収剤、白色化剤、無機充填剤、有機及び/又は無機染料、ブロッキング防止剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、殺生物剤、接着促進剤、金属酸化物、鉱物充填剤、流動促進剤、油、酸化防止剤、オゾン化防止剤、促進剤、並びに加硫剤を含んでもよい。
【0078】
本開示によるポリマー組成物は、1種又は複数種の無機充填剤、例えばタルク、ガラス繊維、大理石粉(marble dust)、セメントダスト、クレイ、カーボンブラック、長石、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸粉末、ガラスミクロスフェア、マイカ、金属酸化物粒子及び金属酸化物ナノ粒子、例えば酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、無機塩粒子及び無機塩ナノ粒子、例えば硫酸バリウム、珪灰石、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、又はリサイクルEVAを含んでもよい。本明細書で定義されるように、リサイクルEVAは、少なくとも1つの加工方法、例えば成形又は押出しを経た再粉砕材料に由来することができ、その後のスプレー、ランナー、鋳バリ、不合格部品等は、粉砕又は細断される。本開示によるポリマー組成物は、1種又は複数種のナノ充填剤、例えば、単層カーボンナノチューブ、二層及び多層カーボンナノチューブ、ナノセルロース、ナノ結晶セルロース、ナノクレイ、ナノメートル金属又はセラミック粒子等を含んでもよい。
【0079】
バイオベース炭素含有率
1つ又は複数の実施形態のポリマー組成物では、ポリマーは、少なくとも一部のバイオベース炭素を含有してもよい。具体的には、1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、ASTM D6866-18の方法Bによって求められる、1%から100%のバイオベース炭素含有率を示し得る。一部の実施形態は、少なくとも1%、5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、又は100%のバイオベース炭素を含み得る。ポリマー組成物中の全バイオベース炭素又は再生可能炭素は、バイオベースエチレン及び/又はバイオベース酢酸ビニルからもたらされ得る。
【0080】
熱可塑性ポリマー組成物の特性
架橋及び/又は発泡プロセスにかけられない場合(すなわち、溶融ブレンドされる場合)、TPU成分及び分岐ビニルエステル含有エチレン系ポリマーをブレンドすることによって製造されたポリマー組成物は、約0.9g/cm3から約1.7g/cm3の範囲の密度を有し得る。密度は、ASTM D1505規格で測定される。特に、分岐ビニルエステル含有コポリマー又はターポリマーの組み込みは、TPUに対して密度を低下させる可能性がある。
【0081】
1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、-100℃~180℃の範囲の1つ又は複数のガラス転移温度(Tg)を有してもよい。1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、-100、-80、-60、-50、-40、-30、-20、-10又は0℃のいずれかの下限から、10、20、30、40、50、80、100、150、又は180℃の上限までの範囲の1つ又は複数のガラス転移温度を有してもよく、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。本開示によるポリマー組成物は、-100℃~0℃の範囲の少なくとも1つのTgを有し得る。1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、-100℃~0℃の範囲の少なくとも第1のTg、及び100℃~180℃の範囲の少なくとも第2のTgを提示し得る。ガラス転移温度は、ASTM D7028-07に従って測定され得る。
【0082】
本開示の1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、ASTM D2240によって求められ、40、45、50、55、60、65、又は70のいずれかの下限から、70、75、80、85、90、93、95、96、又は97の上限までの範囲のショアA硬さを有してもよく、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0083】
本開示の1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、ASTM D1525によって求められ、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、又は115℃のいずれかの下限から120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃又は200℃の上限までの範囲のビカー軟化温度を有してもよく、任意の下限は、任意の上限と対になることができる。
【0084】
本開示の1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、ASTM D638によって求められ、300psi、400psi、500psi、600psi、700psi、800psi、900psi、1000psi、2000psi、3000psi、4000psi、又は5000psiのいずれかの下限から、2000psi、4000psi、6000psi、7000psi、8000psi、9000psi、10000psi、20000psi、又は30000psiの上限までの範囲の100%引張ひずみにおける弾性率(M100)を有してもよく、任意の下限は、任意の数学的に適合性のある上限と対になることができる。
【0085】
1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、TPUと、そのポリマー組成物中のエチレン系ポリマーと同じ濃度及び同じエチレン含有率の参照EVAとから本質的になる参照ブレンド組成物よりも、低いガラス転移温度及び高い耐摩耗性を有してもよい。
【0086】
1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、TPUから本質的になる参照組成物と比較して、ASTM D2240に従って測定される、ショアA硬さの少なくとも2%の減少、及びASTM D638に従って測定される、100%引張ひずみにおける弾性率(M100)の少なくとも5%の増加を有してもよい。
【0087】
物品
本開示の1つ又は複数の実施形態によるポリマー組成物は、多様な最終用途のための多数のポリマー物品の製造に使用され得るが、特に、引張特性を維持しながら低いガラス転移温度、高い耐摩耗性、及び硬度の低下が望まれるものである。更に、開示された組成物の物品は、履物工業、特に靴底、ミッドソール、アウトソール、ユニソール(unisole)、インソール、モノブロックサンダル(monobloc sandal)、ビーチサンダル、及びスポーツ物品、自動推進車製品、家具製品、布製品、スポーツ/レクリエーション製品、又は家電製品における用途に好適であり得る。
【0088】
例示的な物品には、靴底又は靴部品、フィルム、管材、繊維、ケーブル、耳標、自動推進車部品、自動車部品、ホース、ベルト、減衰素子、アームレスト、家具要素、スキーブーツ、ストップバッファ、ローラー、スキーゴーグル、パウダースラッシュ、アンテナ及びアンテナの足、ハンドル、ハウジング、スイッチ、発泡体、接着剤、並びにクラッディング及びクラッディング要素が含まれる。
【0089】
ポリマー組成物の製造方法
1つ又は複数の実施形態では、ポリマー組成物は、従来のニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングローラー、二軸押出機、プレス等で、従来のポリマー加工条件下で混合し、続いて射出成形又は圧縮成形等の従来の発泡プロセスで硬化(若しくは架橋)又は硬化及び発泡させることによって製造され得る。
【0090】
また、ポリマー組成物を形成する他の成分と混合される際に、ポリマー組成物は、例えば、上記で論じたものを含む架橋剤の存在下で硬化することもできることが理解される。発泡組成物を含む実施形態の場合、発泡及び硬化は、発泡剤及び架橋剤、並びに場合により、発泡促進剤の存在下で行われ得る。
【0091】
ポリマー組成物は、ガスの注入を提供し得る押出機で押出されてもよく、又は化学発泡剤が使用される場合、発泡剤は、押出機に供給されるポリマーとともに混合されてもよい。ガスは、押出機に注入されるか、又は押出機の溶融ゾーンでの化学発泡剤の熱分解によって形成される。ポリマー中のガス(ガスの発生源に関わりなく)は、溶融ポリマー中に分布する気泡に形成される。溶融ポリマーの最終的な固化時に、気泡はセル構造又は発泡材料をもたらす。特定の実施形態では、発泡組成物のセル構造は、クローズドセル構造であってもよい。他の実施形態では、発泡組成物のセル構造は、オープンセル構造であってもよい。
【0092】
用途
一態様では、本開示は、ポリマー組成物を含む物品に関する。一部の実施形態では、物品は、射出成形品、熱成形品、フィルム、発泡体、ブロー成形品、積層造形品、圧縮品、共押出成形品、積層品、射出ブロー成形品、回転成形品、押出成形品、単層物品、多層物品、又は引抜成形品等であってもよい。
【0093】
一部の実施形態では、ポリマー組成物を含む物品は、これらに限定されないが、押出成形、共押出成形、押出コーティング、射出成形、圧縮ブロー成形、圧縮成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、熱成形、キャストフィルム押出、インフレーションフィルム押出、インフレーションフィルムプロセス、発泡、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、回転成形、引抜成形、カレンダー加工、積層造形、積層を含むプロセスによって製造され得る。
【0094】
本開示の1つ又は複数の実施形態によれば、ポリマー組成物は、多様な最終用途のための多数のポリマー物品、特に、引張特性を維持しながらより低いガラス転移温度、高い耐摩耗性、及び硬度の低下が望まれる物品の製造に使用され得る。更に、開示された組成物の物品は、履物工業、特に靴底、ミッドソール、アウトソール、ユニソール、インソール、モノブロックサンダル、ビーチサンダル、及びスポーツ物品、自動推進車製品、家具製品、布製品、スポーツ/レクリエーション製品、又は家電製品における用途に好適であり得る。
【0095】
例示的な物品には、靴底又は靴部品、フィルム、管材、繊維、ケーブル、耳標、自動推進車部品、自動車部品、ホース、ベルト、減衰素子、アームレスト、家具要素、スキーブーツ、ストップバッファ、ローラー、スキーゴーグル、パウダースラッシュ、アンテナ及びアンテナの足、ハンドル、ハウジング、スイッチ、発泡体、接着剤、並びにクラッディング及びクラッディング要素が含まれる。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0097】
材料
VeoVa(商標) 10は、Hexion Inc.社から購入した。ポリエステル系TPUであるEstane(登録商標) 2355-80AE、及びポリエーテル系TPUであるEstane(登録商標) 2103-80AEは、Lubrizol社から購入した。HM728は、Braskem社から入手した。G1651は、Kraton社から購入した。Lotader AX8900は、SK Functional Polymer社から購入した。
【0098】
方法
ショアA硬さは、ASTM D2240に従って測定した。
【0099】
ビカー軟化温度は、ASTM D1525に従って測定した。
【0100】
引張データは、ASTM D638-98に従って、20℃にて2インチ/分のクロスヘッド速度で測定した。
【0101】
試料の形態は、原子間力顕微鏡(Nanoscope VIII-Bruker)を使用して試験した。棒張力中心の横方向の切片を台形にトリミングし、この領域を35°のダイヤモンドナイフを使用して-120℃でクライオウルトラミクロトームにかけた。これらの解析を実施するために、タッピングモードを選択した。アンチモン(n)ドープSiプローブ(f0=320KHz、K=42N/m)を使用して、画像を取得した。画像は、20μm、5μm、及び2μmの走査サイズで取得した。使用したパラメーターは、線積分ゲイン及び比例ゲイン0.2及び2.0、走査速度0.2又は0.5Hz、駆動周波数20.0mV、及び振幅設定値8.0nmであった。
【0102】
メルトフローインデックスは、ASTM D1238に従って測定した。
【0103】
本発明のTPUブレンド
エチレン、酢酸ビニル、及び分岐ビニルエステル(DV001A及びDV001B)を含む2種の異なるエチレン系ポリマーを、EVAコポリマーを製造する、正常に動作する高圧工業設備で調製した。DV001Aは、5.6質量%の分岐ビニルエステル(VeoVa(商標) 10)、及び28.3質量%の酢酸ビニルを含むターポリマーであり、DV001Bは、9.3質量%のVeoVa(商標) 10及び24.1質量%の酢酸ビニル(残りはエチレンである)を含むターポリマーである。ターポリマー試料を製造するための一般的な反応条件を、Table 1(表1)に記載する。
【0104】
【0105】
2種のTPUをベース材料として使用して、試験した試料を作製した。TPU1は、商用グレードのポリエステル系TPU、Estane 2355-80AEで、ショアA硬さは85、MIは7g/10分(224℃/8.7kg)である。TPU2は、商用グレードのポリエーテル系TPU、Estane 2103-85AEで、ショアA硬さは88、MIは24g/10分(224℃/8.7kg)である。
【0106】
Lotader AX8900は、アクリル酸メチル含有率が24質量%、メタクリル酸グリシジル含有率が8質量%の市販のランダムエチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートターポリマーであり、ブレンド用の相溶化剤として使用した。
【0107】
参照TPUブレンド
TPUの修正(modify)に使用した比較ポリマーは、28質量%の酢酸ビニル含有率、及び6g/10分(190℃/2.16kg)のメルトフローレート(MFR)を有する商用グレードのエチレン酢酸ビニル(EVA1)、HM728であった。
【0108】
TPUの修正に使用した比較ポリマーは、スチレン及びエチレン/ブチレン(SEB)ポリマーであるG1651 Eをベースにした市販の直鎖状トリブロックコポリマーであり、31.5質量%の結合スチレン含有率、及び25℃にてトルエン中の10%m/m溶液でKM06により測定した、1.5Pa sの溶液粘度を有する。
【0109】
Lotader AX8900は、アクリル酸メチル含有率が24質量%、メタクリル酸グリシジル含有率が8質量%の市販のランダムエチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートターポリマーであり、ブレンド用の相溶化剤として使用した。
【0110】
TPUブレンドの調製
本発明ブレンド及び比較(参照)ブレンドの製造のための材料を、以下のTable 2(表2)に列挙する。材料を対流式オーブンで80℃で一晩乾燥させた後、25mm30L/D二軸同方向回転押出機(NFM)で190℃、及び350rpmで混錬してブレンドを製造した。
【0111】
【0112】
混錬した試料を一晩乾燥させた。次いで、乾燥させた試料を、バレル温度204℃、パック圧750psi、射出速度2インチ/秒、金型温度10℃で、ASTM D638 type1引張試験片(1/8インチ×1/2インチ×6インチ)に射出成形した。
【0113】
成形した試料は、試験の前に80℃で24時間、次いで20℃で48時間焼きなましした。試料は、ビカー軟化温度(ASTM D1525)、ショアA硬さ(ASTM D2240)、引張(ASTM D638、2インチ/分及び20℃)並びに形態について試験した。
【0114】
以下のTable 3(表3)は、Table 2(表2)に列挙した試料のショアA硬さ、引張ひずみ100%時の弾性率(M100)、及びビカー軟化温度の結果を示す。
【0115】
【0116】
参照ブレンド1及び2は、EVA1、SEB、及びターポリマーのブレンドでは、予測したようにTPUのショアA硬さが低下することを示している。硬度の低下は、概して、参照ブレンド1及び2に見られるように、ビカー温度の低下に対応する。驚くべきことに、新規ブレンド2及び3は、TPUのみ(参照1)と比較して硬度の低下とともにビカー温度の改善を示している。ターポリマー、相溶化剤、及びTPUの組み合わせにより、予期せずビカー温度の上昇が得られる。新規ブレンド1は相溶化剤を有しないが、相溶化剤を用いたSEB及びEVA1を有する参照ブレンド1及び2よりも、低いショアA硬さ、及び高いビカーをもたらした。これらの結果は、DV001A及びDV001Bが、SEB及びEVAの試料と比較して、より良好なTPUとの相溶性を有することを示唆している。
【0117】
図1は、TPU1ベースの試料についての引張データを示し、
図2は、TPU2ベースの試料についての引張データを示す。新規ブレンド2及び3は、参照ブレンド1及び2よりも同等の伸びで高い応力を有し、新規ブレンド2は、TPU1の参照例よりも優れている。
【0118】
図3A及び
図3Bは、それぞれ参照ブレンド1及び参照ブレンド2のAFM顕微鏡写真を示す。
図3C~
図3Eは、それぞれ新規ブレンド1、新規ブレンド2、及び新規ブレンド3のAFM顕微鏡写真を示す。AFM顕微鏡写真は位相信号であり、ブレンドの形態/硬度の違いを示す。明るい領域は、硬いTPUマトリックスを表し、暗い部分は、さまざまな改質剤である。新規ブレンド2及び新規ブレンド3の改質剤の粒径が小さいことは、DV001A及びDV001Bが、参照ブレンドで使用されるSEB及びEVA1よりも、TPUとのより良好な相溶性を有することを示している。この改善された相溶性が、改善された引張及びビカーデータの原因である可能性がある。
【0119】
いくつかの例示的な実施形態のみが上記で詳細に説明されたが、当業者は、本発明から実質的に逸脱することなく例示的実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、このような変更の全ては、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクションクローズは、列挙された機能を実施するものとして本明細書に記載される構造、及び構造的均等物だけでなく均等な構造も包含することを意図している。したがって、釘及びネジは、木製部品を固定するのに釘が円筒面を採用し、ネジがらせん状の表面を採用するという点で構造的均等物ではないかもしれないが、木製部品を固定する環境という点では、釘及びネジは均等な構造であり得る。出願人は、特許請求の範囲が関連する機能とともに「~するための手段」という用語を明示的に使用している場合を除き、本明細書の特許請求の範囲のいずれかの制限について、35U.S.C.§112(f)を想起しないことを明示的に意図する。
【国際調査報告】