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特表2024-515282薬剤を含有する外部のフィラメントを有する縫合糸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】薬剤を含有する外部のフィラメントを有する縫合糸
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240401BHJP
   A61L 17/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61L 17/06 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61B17/04
A61L17/00
A61L17/06
A61K31/155
A61K31/4409
A61K33/38
A61K31/085
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562719
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 IB2022052965
(87)【国際公開番号】W WO2022219442
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/174,162
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スカルゾ・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】クリクスノフ・レオ
(72)【発明者】
【氏名】タンハウザー・ロバート・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4C160
4C206
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081BB06
4C081CE01
4C081DA04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086HA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA67
4C086NA10
4C086ZB35
4C160BB01
4C160BB18
4C160BB23
4C160NN01
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA28
4C206HA32
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA87
4C206NA10
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は、針と、当該針に取り付けられた接続端部と、反対側の自由端部と、を有する細長い可撓性縫合糸と、当該針に取り付けられた又は接続端部において当該縫合糸に取り付けられた、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を有する縫合システムを対象とする。有益なフィラメントは、縫合糸よりも小さい断面積及び低い機械的強度を有し、かつ薬剤を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合システムであって、
a)針と、
b)前記針に取り付けられた接続端部と、反対側の自由端部と、を有する細長い可撓性縫合糸と、
c)前記針に取り付けられた又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けられた、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を備え、
前記有益なフィラメントが、前記縫合糸よりも小さい断面積及び低い機械的強度を有し、
前記有益なフィラメントが、薬剤を有する、縫合システム。
【請求項2】
前記縫合糸が、非吸収性であり、前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性である、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項3】
前記縫合糸が、吸収性であり、前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性である、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項4】
前記有益なフィラメントが、少なくとも20重量%の前記薬剤を含有する、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項5】
前記縫合糸が、棘付き又は無結節の縫合糸であり、前記有益なフィラメントが、棘付きでも、無結節でもない、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項6】
前記縫合糸が、編組されたフィラメント構築物であり、前記有益なフィラメントが、モノフィラメントである、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項7】
前記有益なフィラメントが、前記縫合糸よりも短い、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項8】
前記縫合糸が、前記有益なフィラメントの少なくとも一部分を受け入れるように構成されたへこみを備えている、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項9】
前記有益なフィラメントが、前記縫合糸の長さに沿って前記縫合糸に取り付けられていない、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項10】
前記有益なフィラメントが、前記縫合糸の長さに沿って、前記縫合糸のあらゆる地点で、又は間欠的に前記縫合糸に固定されている、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項11】
前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の60分以内に、断面が少なくとも25%膨張可能である、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項12】
前記縫合システムの機械的特性が、設置中又は設置後に、前記有益なフィラメントのない前記縫合糸の特性の5%以内である、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項13】
前記縫合システムが、設置の1週間後に、前記有益なフィラメントのない前記縫合糸のBSRと実質的に同じであるBSRを有する、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項14】
前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の約168時間以内に完全に溶解するように、又は完全に再吸収されるように構成されている、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項15】
前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の24時間以内に前記薬剤の少なくとも10%を放出するように構成されている、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項16】
前記薬剤が、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、オクテニジン、銀粒子、銀塩、トリクロサン、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項17】
前記有益なフィラメントが、別々にかつ前記縫合糸及び前記針とは異なって滅菌されているか、又は前記有益なフィラメントが、別々にかつ前記縫合糸及び前記針と同じ様式で滅菌されている、請求項1に記載の縫合システム。
【請求項18】
埋植前に、請求項1に記載の縫合システムを組み立てるためのキットであって、
a)前記針に取り付けられた細長い可撓性縫合糸と、
b)前記針に又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けるように構成された、前記縫合糸及び前記針とは別の、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を備え、
前記外部の有益なフィラメントが、前記針に取り付けられた前記縫合糸とは別に滅菌処理される、キット。
【請求項19】
請求項1に記載の縫合システムを作製する方法であって、
前記縫合糸の前記接続端部を前記針に取り付けることと、
前記有益なフィラメントを前記針に又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関連する技術分野は、モノフィラメント縫合糸又は編組されたマルチフィラメント縫合糸などの吸収性医療用装置又は非吸収性医療用装置、より具体的には、放出可能な薬剤を含有する有益なフィラメントが外部に取り付けられた手術用縫合糸である。
【背景技術】
【0002】
手術用縫合糸及び取り付けられた手術用針は、従来の様々な外科的処置において用いられることが、当該技術分野において周知である。例えば、そのような縫合糸を、表皮層及びその下の筋膜層の切開又は裂傷の周囲の組織に接近し、血管の端部を接合し、心臓弁などの医療用装置に組織を取り付け、身体器官を修復し、結合組織を修復することなどに使用することが可能である。従来の手術用縫合糸は、既知の生体適合性材料、特に合成及び天然の生体適合性ポリマー材料から作製可能であり、これらは非吸収性である場合も吸収性である場合もある。非吸収性縫合糸を製造するために有用な合成の非吸収性ポリマー材料の例は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリアミドを含む。非吸収性材料の更なる例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及び同様のポリマーである。吸収性縫合糸を製造するための有用な合成吸収性ポリマー材料の例は、ラクチドなどのラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、イプシロン-カプロラクトン、及びトリメチレンカーボネートから作製されるポリマー及びコポリマーを含む。吸収性という用語は、生体又は組織において生体吸収性、再吸収性、生体再吸収性、分解性、又は生体分解性である埋植可能な装置も含み得る、総称的な用語であることを意味する。非吸収性という用語は、生体又は組織に恒久的に設置される埋植可能な装置を意味する。
【0003】
縫合糸は、そのような縫合糸が有するいくつかの利点及び特性ゆえに、多くの外科的処置における使用において、外科医により好まれている。吸収性縫合糸は、組織の効果的治癒が可能となるのに十分な期間にわたって、望ましい生体内抗張力を提供することが可能でなければならない。傷の治癒は、具体的な組織の性質に加え、外科的処置を受けた個人の治癒特性にも依存する。例えば、血管新生のうまくいかない組織は、血管新生がうまくいく組織と比べて治癒に時間がかかり、同様に、糖尿病の患者及び高齢者もまた、治癒に時間がかかる。したがって、様々な傷の治癒特性にマッチした縫合糸材料を提供する機会が存在することになる。縫合糸のように埋植されるものは何であれ、患者の免疫系にとっては異物として現れるものである。加えて、縫合糸を含む埋植可能な医療用装置は、細菌が付着し、バイオフィルムを形成するためのプラットフォームを提供し得るということが知られている。
【0004】
手術用縫合糸は、望ましくかつ効き目のある生体内での挙動を確保するのに必要な物理的特性を有するように設計されている。吸収性縫合糸は、必要とされる治癒期間中、適切な抗張力を保つ必要があり、典型的にはこれは、破壊強度保持率(breaking strength retention、BSR)として特性評価されるものである。求められる設計特性を得るためには、求められる特性を有する吸収性縫合糸を作り出せるような吸収性ポリマー及び製造プロセスを提供することが必要となる。
【0005】
同様に、埋植後に、例えば引張強度及び結節強度を含む、機械的特性が保持できるということは、吸収性医療用装置にとっては重要かつ決定的な特徴である場合が多い。装置は、組織が十分に治癒するまで機械的完全性を保持しなければならない。身体組織によっては、治癒するのにより時間がかかり、機械的完全性をより長く保持する必要がある。前述のように、これは、血管新生が不十分である組織と関連している場合が多い。同様に、所与の患者(例えば、糖尿病患者)は、治癒が遅い傾向があり得るというような他の状況が存在する。
【0006】
外科手術後の感染の可能性を減らすために、縫合糸又はヘルニアメッシュなどの他の医療インプラント内に又はその上に、迅速に放出するための又は長期間にわたって生体内に留まらなければならない、抗菌剤などのある種の薬剤を含有させることが知られている。しかしながら、インプラントのポリマー材料内に又はその上に組み込まれるそのような物質の存在は、その加工性及び/又は機械的完全性に悪影響を及ぼす場合がある。そのような物質の存在はまた、可撓性、可屈曲性、外科医による取り扱い性、結節強度、結節摺動などの他の縫合糸パラメータにも悪影響を及ぼす場合がある。
【0007】
特に、上記のように、縫合糸材料自体への組み込みにより、又は縫合糸の表面コーティングを介して、のいずれかで縫合糸に十分な抗菌特性を提供するために必要とされる大量の薬剤の追加は、縫合糸の特性に悪影響を及ぼし得る。更に、薬剤を組み込むためのそのようなアプローチは、塗布、処理、殺菌、及び包装が困難であり得る。
【0008】
米国特許第8097005号、「Suture system」は、プロテーゼ装置を身体に埋埋植するための方法を開示しており、当該方法は、縫合糸ストランドによって接続された4本以上の針を有する縫合糸システムの第1の針を使用して、組織を通して第1の縫合糸ストランドを第1の位置に配置することと、縫合糸システムの第2の針を第1の位置からある距離をおいて組織内に配置することであって、第2の針が、第1の縫合糸ストランドに取り付けられ、第2の縫合糸ストランドが、第1のストランド及び第2のストランドを識別することができるように異なるインジケータを有し、第2の針が、少なくとも第2の縫合糸ストランドの直径に加えた第1の縫合糸ストランドの直径と少なくとも同じ大きさの針直径を有する、配置することと、第2の針に取り付けられた追加の針を使用して、組織を通して追加の縫合糸を配置することと、4本以上の針を使用して、プロテーゼ装置を通して縫合糸ストランドを挿入することと、インジケータを有する縫合糸ストランドを使用して、プロテーゼ装置を適所に固定することと、を含む。
【0009】
特許公開第CN210204810U号、「Double-strand surgical suture needle」は、ダブルストランドフェニックステール糸と、手術用針と、を備えている、ダブルストランド手術用縫合針を開示しており、ダブルストランドフェニックステール糸は、3本のダブルストランド吸収性縫合糸及び1つのジョイントで構成され、ジョイントの側面には、半円形の溝のリングが提供され、ジョイントの左端部には、3本のダブルストランド吸収性縫合糸が固定的に接続され、手術用縫合針は、全体的に三日月形であり、手術用縫合針の尾部には、尾部糸接続孔が提供され、テールワイヤ接続孔の内壁には、半円形突起のリングが提供され、結合部分が、テールワイヤ接続孔内へ挿入され、半円形突起と組み合わせた円形のカードスロットが、ダブルストランドフェニックステール糸及び手術用針を一緒に接続し、ダブルストランドフェニックステール糸は、ダブルストランド縫合糸を必要とする骨折傷を包むために使用される。
【0010】
国際公開第2019/045303(A1)号、「Coupling Structure Of Multifilament Polydioxanone Suture And Needle Tube」は、胃の中へ挿入されて、身体に吸収されるポリジオキサノンで形成された縫合糸を開示しており、縫合糸は、結合されて、身体に挿入される針管と、鍼管及び縫合糸を固定するためのスポンジと、を含み、縫合糸は、針管の溝に結合及び接続され、針管及び縫合糸は、スポンジ内へ挿入されて固定され、縫合糸は、マルチフィラメントポリジオキサノン縫合糸であり、鍼管は、針管の溝に結合されてリングを形成する第1の縫合糸と、第1の縫合糸の組み合わせ構造体の上に折り畳まれた形状で第1の縫合糸に接続された複数の第2の縫合糸と、を含む。
【0011】
H.Scalzo、L.B.Kriksunov、R.J.Tannhauser、E.R.Skulaによる米国特許出願公開第20180221021号、「Braided Suture With Filament Containing A Medicant」は、フィラメント束から作製されて、少なくとも2種の異なるフィラメント状材料、大部分の少なくとも第1の種々のフィラメント、及び生物医学的に有用な作用剤を組み込んだ小部分の第2の種々のフィラメントを使用して形成された、編組された縫合糸を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
最近の進歩にもかかわらず、縫合糸などの医療用装置の機械的強度及び長期的完全性を維持しながら、当該医療用装置に薬剤を提供するという、当技術分野における満たされていない必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
組織の中へ挿入して縫合糸に組織を通過させるための針に取り付けられた、手術用縫合糸などの埋植可能な医療用装置が提示され、有益なフィラメントが放出可能な薬剤を含んだ状態であり、当該有益なフィラメントは、当該縫合糸と並行に位置付けられて同じ針に取り付けられるか、又は針の近位で縫合糸に取り付けられる。
【0014】
本発明は、縫合システムであって、針と、当該針に取り付けられた接続端部と、反対側の自由端部と、を有する細長い可撓性縫合糸と、当該針に取り付けられた又は接続端部において当該縫合糸に取り付けられた、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を備えている、縫合システムを対象とする。有益なフィラメントは、縫合糸よりも小さい断面積及び低い機械的強度を有し、かつ薬剤を有する。縫合糸は、非吸収性であり得、一方で、有益なフィラメントは、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性であり得る。別の代替案では、縫合糸は、吸収性であり得、一方で、当該有益なフィラメントは、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性であり得る。有益なフィラメントは、少なくとも20重量%の薬剤を含有することができる。縫合糸は、棘付き又は無結節の縫合糸であり得、一方で、有益なフィラメントは、棘付きでも、無結節でもない。縫合糸は、編組されたフィラメント構築物であり得、一方で、当該有益なフィラメントは、モノフィラメントである。有益なフィラメントは、縫合糸よりも短くなり得る。
【0015】
一実施形態では、縫合糸は、当該有益なフィラメントの少なくとも一部分を受け入れるように構成されたへこみを備えている。有益なフィラメントは、縫合糸の長さに沿って、針に取り付けて、縫合糸に取り付けないことができる。代替的に、有益なフィラメントは、縫合糸の長さに沿って、縫合糸のあらゆる地点で、又は間欠的に縫合糸に固定することができる。
【0016】
有益なフィラメントは、哺乳類の組織内への設置後の60分以内に、断面が少なくとも25%膨張可能であり得る。好ましくは、縫合システムの機械的特性は、有益なフィラメントのない縫合糸の機械的特性の5%以内である。例えば、縫合システムは、設置の1週間後に、有益なフィラメントのない当該縫合糸のBSR(Breaking Strength Retention、破壊強度保持率)と実質的に同じであるBSRを有することができる。有益なフィラメントは、哺乳類の組織内への設置後の約168時間以内に完全に溶解するように、又は完全に再吸収されるように構成することができる。代替的に、有益なフィラメントは、哺乳類の組織内への設置後の24時間以内に薬剤の少なくとも10%を放出するように構成することができる。薬剤は、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、オクテニジン、銀粒子、銀塩、トリクロサン、及びそれらの組み合わせを含有することができる。有益なフィラメントは、別々にかつ縫合糸及び/又は針とは異なって滅菌すること、又は別々にかつ縫合糸及び/又は針と同じ様式で滅菌することができる。
【0017】
本発明はまた、哺乳類の組織を縫合する方法であって、本明細書に記載される縫合システムを組織に通して組織領域に近づけて、縫合糸による組織の支持を確立することと、組織を通して縫合糸と並行する有益なフィラメントを引っ張ることと、任意選択で、結節によって縫合システムを固定することと、縫合糸と並行する有益なフィラメントを組織内に残して、薬剤を組織内へ放出することを可能にすることと、による、方法を対象にする。
【0018】
本発明はまた、埋植前に、本明細書に記載の縫合システムを組み立てるためのキットであって、針に取り付けられた細長い可撓性縫合糸と、取り外されて別の形態で格納された、当該針に又は接続端部において当該縫合糸に取り付けるように構成された少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を有する、キットを対象とする。外部の有益なフィラメントは、針に取り付けられた当該縫合糸とは別に滅菌処理することができる。
【0019】
本発明はまた、縫合糸の接続端部を針に取り付けることと、有益なフィラメントを当該針に又は接続端部において当該縫合糸に取り付けることと、によって、本明細書に記載され縫合システムを作製する方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示には、様々な修正形態及び代替形態が考えられるが、その特定の例示的な実装形態を図面に示し、本明細書において詳細に説明する。しかしながら、特定の例示的な実装形態に関する本明細書における説明は、本開示を本明細書に開示された特定の形態に限定することを意図していないことを理解されたい。
【0021】
本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような全ての修正及び等価物を網羅するものである。また、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに本発明の例示的な実施形態の原理を明確に示すことに重点が置かれていることも理解されるべきである。更に、そのような原理を視覚的に伝えるのを助けるために特定の寸法が誇張されることがある。更に、適切と考えられる場合には、対応する要素又は類似の要素を示すために図面間で参照番号を繰り返すことがある。更に、図面において別個の又は別々のものとして示されている2つ又はそれ以上のブロック又は要素は、単一の機能ブロック又は要素に組み合わせることができる。同様に、図面に示されている単一のブロック又は要素は、複数の工程として、又は協働する複数の要素によって実装され得る。
【0022】
本明細書にて開示した形態は、添付図面の図において、例として、また限定としてではなく図示され、同様の参照番号は、類似の要素を指す。
図1a】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図1b】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図1c】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図1d】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図1e】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図2】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図3】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図4】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図5】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図6】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図7】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図8】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図9】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図10】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図11】本発明による縫合糸システムの一実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図12a】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図12b】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図12c】本発明による縫合糸システムの実施形態の側断面図の概略的な表現を示す。
図13a】本発明による縫合糸システムの実施形態の斜視図の概略的な表現を示す。
図13b】本発明による縫合糸システムの実施形態の斜視図の概略的な表現を示す。
図14a】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図14b】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図14c】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図14d】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図14e】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図14f】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図15a】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図15b】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図15c】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図15d】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16a】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16b】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16c】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16d】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16e】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図16f】本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図17a】哺乳類の組織に設置された状態で示される、本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図17b】哺乳類の組織に設置された状態で示される、本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
図17c】哺乳類の組織に設置された状態で示される、本発明による縫合糸システムの実施形態の軸方向断面図の概略的な表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
簡潔に、本発明の縫合糸システムは、有利には、主手術用縫合糸の材料、コーティング、及び特性を変化させずに、任意の手術用縫合糸(モノフィラメント、編組、吸収性、非吸収性、など)を使用して、抗菌薬剤、及び/又は治癒促進薬剤、及び/又は膨張可能な薬剤などの薬剤又は追加の若しくは増加した量の薬剤を、縫合された傷又は組織に送達することを可能にする。送達は、追加の薬剤及び/又は膨張可能な材料を含有する少なくとも1つの有益なフィラメント及び/又は感知要素を有することによって、及び主手術用縫合糸よりも小さい断面を有することによって、更には、より弱い機械的特性(抗張力、破壊強さ、BSR、など)を有することによって、及び主手術用縫合糸に対してより速い溶解プロファイル又は吸収プロファイルを有することによって提供される。有益なフィラメントは、主縫合糸と同じ縫合針に取り付けられるか、又は針の近位で主縫合糸に取り付けられる。有益なフィラメントは、主手術用縫合糸に沿わせて配置されて、主手術用縫合糸と並行に組織内に設置される。したがって、傷閉鎖及び縫合糸結節の全体的な強度は、手術用縫合糸によって画定される基本的なレベルを有し、一方で、手術用縫合糸と並行に組織内へ設置される有益なフィラメントは、抗菌薬剤などの追加の薬剤、又は傷治癒薬剤、及び/又は縫合糸孔(例えば、高圧血管閉鎖のため、など)を塞ぐのに有用な膨張作用を提供する。主要な手術用縫合糸は同じままであるので、手術用縫合糸の知覚的な取り扱いは影響を受けない。いくつかの実施形態では、有益なフィラメントの存在により、結節強度が増大する。
【0024】
構築物
概略的な側断面図を示す図1A図1Eを参照すると、一実施形態では、本発明の縫合糸システム1は、接続端部10b及び反対側の自由端部10aを有する縫合糸10を備えている細長い可撓性ストリング、フィラメント、糸、フィラメントの束、編組を備え、縫合糸10の接続端部10bは、針接続端部100bにおいて縫合針100に接続される。針100は、針接続端部100bの反対側に鋭利な端部100aを有する細長い直線状の又は湾曲した部材を備えている。示されるように、及び更に図2を参照すると、縫合糸10の接続端部10bは、典型的には、針接続端部100bの開口部102内へ挿入される。縫合糸10の接続端部10bは、スエージング針100、接着剤の使用、などによって、開口部102内に固定することができる。自由端部10aは、任意選択で、自由端部10aを組織内に固定する止め具又はタブ(図示せず)を有することができる。
【0025】
縫合糸10は、合成又は天然の材料を含む任意の生体適合性材料で作製された、モノフィラメント若しくはマルチフィラメント若しくは編組の縫合糸、又は吸収性若しくは非吸収性若しくは部分的に吸収性の縫合糸、及びそれらの組み合わせを含む、当技術分野で既知の任意の縫合糸であり得る。いくつかの実施形態では、縫合糸10のポリマー材料は、生体再吸収性ポリエステル又は非生体再吸収性ポリプロピレンを含む。縫合糸10として特に好ましいものは、例えば、VICRYL(登録商標)(ポリグラクチン910)縫合糸、コーティングしたVICRYL(登録商標)(ポリグラクチン910)縫合糸;コーティングしたVICRYL(登録商標)+抗菌(ポリグラクチン910)縫合糸;VICRYL RAPIDE(商標)(ポリグラクチン910)縫合糸;MONOCRYL(登録商標)(ポリグレカプロン25)縫合糸;PDS(登録商標)(ポリジオキサノン)縫合糸;PDS(登録商標)+抗菌(ポリジオキサノン)縫合糸;ETHILON(登録商標)ナイロン糸;ETHIBOND(登録商標)ポリエステル縫合糸;MERSILENE(登録商標)ポリエステル繊維縫合糸;PRONOVA(登録商標)ポリ(ヘキサフルオロプロピレン-VDF)縫合糸;PROLENE(登録商標)ポリプロピレン縫合糸;NUROLON(登録商標)ナイロン糸、などの外科的処置での使用が承認された縫合糸であり、例えば、様々な商標名の下でEthicon,Inc.によって販売されている縫合糸である。縫合糸10は、任意選択で、STRATAFIX(商標)Spiral Knotless Tissue Control Device;STRATAFIX(商標)Symmetric Knotless Tissue Control Device、又は同様のもの、などの棘付き又は無結節の縫合糸であり得る。縫合糸10は、抗菌縫合糸であり得る。
【0026】
針100は、直線状の又は湾曲した針、様々な幾何学的形状の針の本体及び先端又は鋭利端部を有する針、潤滑性コーティングによってコーティングされた又はコーティングされていない針、及び鋼、タングステン合金、などの金属で作製された針、又はポリマー材料で作製された針を含む、当技術分野において既知の任意の手術用縫合針であり得る。例としては、EVERPOINT(登録商標)心臓血管針;ETHALLOY(登録商標)針合金ベースの針;HEMO-SEAL(商標)針縫合糸;ETHIGUARD(登録商標)鈍利点針;MULTIPLASS(登録商標)針;VISI-黒色(商標)手術用針、などの、様々な商標名の下でEthicon,Inc.によって販売されている縫合針が挙げられる。テーパポイント針、テーパカット針、カッティングエッジ針、など、及び同様のものを利用することができる。一実施形態では、本発明の縫合糸システムは、ダブルアーム型(図示せず)であり得、それによって、第2の針(図示せず)が自由端部10aに取り付けられる。
【0027】
図1及び図2に示されるように、本発明の縫合糸システム1は、縫合糸10と並行に位置付けられ、主縫合糸10と同じ針に取り付けられる、少なくとも1つの外部の有益なストリング又は糸又はフィラメント20を有する。示される実施形態では、フィラメント20は、スエージング針100、接着剤の使用、などによって、縫合糸100とともに開口部102内に固定されている。
【0028】
図1Aを参照すると、フィラメント20は、縫合糸10と並行に配置され、縫合糸10と同じ長さを有する。図1Bは、針100に取り付けられ、自由形状で位置付けられ、縫合糸10と並行に結合されておらず、縫合糸10と同じ長さを有する、フィラメント20を示す。いくつかの実施形態では、図1Cに示されるように、フィラメント20は、縫合糸10よりも短く、例えば、縫合糸10の長さのパーセンテージとしてそれぞれ5、10、15、20、30、50%短い長さを有する。いくつかの実施形態では、フィラメント20は、mmで測定してそれぞれ5、10、15、20、30、50、100mmだけ縫合糸10よりも短い。
【0029】
図1D及び図1Eを参照すると、いくつかの実施形態では、縫合糸10は、棘13を有する棘付き縫合糸であるが、任意の実施形態では、フィラメント20は、棘を有しない。図1Eに示されるように、縫合糸10が棘付き縫合糸である場合、フィラメント20は、縫合糸10に沿っていくつかの地点で縫合糸10に取り付けることができ、又は接続端部10bの近くでの取り付け以外のどこにも取り付けないことができる。
【0030】
図3に示される実施形態では、フィラメント20は、図1及び図2に見られるように、開口部102内への挿入を通して針100に取り付けられない。この実施形態では、フィラメント20は、縫合糸10の接続端部10bとフィラメント20との間に配設された接着剤30aによって、縫合糸10の接続端部10bに固定されている。図4に示されるように、接着剤30bはまた、接続端部10b及びフィラメント20の周りに延在させることができる。図5に示されるように、接着剤30cはまた、接続端部10b及びフィラメント20の周りに延在させ、更には、針接続端部100bに接触させることができる。
【0031】
図6に示される実施形態では、フィラメント20は、スポット溶接又は溶融によって縫合糸10の接続端部10bに固定され、溶融又は溶解領域32を示す。
【0032】
図7に示される実施形態では、有益なフィラメント20は、熱収縮可能な又は接着性のスリーブなどのスリーブ34によって縫合糸10の接続端部10bに固定されている。図8に示される実施形態では、フィラメント20は、針接続端部100bにも重なっている熱収縮可能な又は接着性のスリーブ36などの、スリーブ36によって縫合糸10の接続端部10bに固定されている。
【0033】
図1図8に示される実施形態では、フィラメント20は、縫合糸10と並行に位置付けられ、縫合糸10に、又は針100に、又は両方に取り付けることによって縫合糸10の接続端部10bに固定されている。更なる実施形態では、有益なフィラメント20はまた、縫合糸10の長さに沿って、縫合糸10の長さの少なくとも30%に沿って、例えば縫合糸10の長さの30、50、75、100%に沿って、縫合糸10の長さのあらゆる地点で、又は間欠的に縫合糸10に固定されている。図9を参照すると、フィラメント20は、断続的なスポット溶接又は接着スポット33によって縫合糸10の長さの全長に沿って縫合糸10に固定されている。断続的なスポット溶接又は接着スポット33は、0.5~15mmの長さ、例えば約1、2、3、5mmの長さであり得、約2~50mmの間隙で、例えば2、3、5、10、20、30mmの間隙で分離され得る。図10を参照すると、フィラメント20は、連続した溶接又は接着剤35によって縫合糸10の長さの全長に沿って縫合糸10に固定されている。図11を参照すると、有益なフィラメント20は、接続端部10bにおいて縫合糸10に固定され、断続的なスポット溶接又は接着スポット33によって反対側の自由端部10aにおいても固定されている。
【0034】
有益なフィラメント20を縫合糸10に固定するために利用することができる1つの更なる技法は、浸漬、スプレー、蒸気キャビネット暴露、又は同様のことによって、水、水溶液、純粋な溶剤(エタノールなど)、非水性溶剤中の溶液などの液体に、又は蒸気(水蒸気、エタノール蒸気、又は同様のもの、など)に、縫合糸10と並行に配置された有益なフィラメント20を暴露することによって行われる。有益なフィラメント20を縫合糸10に押圧しながら水、溶剤、溶液、又は蒸気に暴露することで、有益なフィラメント20が縫合糸10に固着する。その後の乾燥により、溶剤又は湿気を除去し、一方で、縫合糸10に取り付けられた有益なフィラメント20を、それらが一緒に押圧された領域に残す。そのような実施形態では、液体の存在は、有益なフィラメント20を軟化させて、部分的に一時的に可溶化させ、粘着及び接着させる。別の実施形態では、縫合糸10と有益なフィラメント20との接着は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの可溶性の吸収性材料、CMC、ポリエステルなどの多糖類、又は同類のものなどを使用することによって達成される。乾燥中に溶剤の蒸発がそのような溶液を形成した後、残留する吸収性材料は、有益なフィラメント20を縫合糸10に取り付ける役割を果たす。
【0035】
本発明の縫合糸システム1の実施形態は、側面図で図12に更に概略的に示される。図12Aは、接続端部10bの近位だけにおいて縫合糸10に固定された有益なフィラメント20を示す。図12Bは、接続端部10bにおいて、並びに縫合糸10の長さに沿った中間スポット10iにおいて、及び自由端部10aにおいて縫合糸10に固定された有益なフィラメント20を示す。図12Cは、縫合糸10の全長に沿って縫合糸10に固定された有益なフィラメント20を示す。
【0036】
図13A及び図13Bは、縫合糸10に沿った有益なフィラメント20の位置付けの斜視図を概略的に示し、図13Aは、接着剤、溶接、スリーブ、など(図13Aに示さず)を介して取り付ける、縫合糸10の接続端部10bの領域だけでなく、長さ全体に沿っても有益なフィラメント20を縫合糸10に取り付ける又は固定する手段によって、横並びに配置した一実施形態を示す。図13Bは、縫合糸10の接続端部10bの領域内でだけ有益なフィラメント20及び縫合糸10が取り付けられた一実施形態を示す。
【0037】
図14は、縫合糸10と並行する有益なフィラメント20の配置を示す軸方向概略断面図を示す。図14Aは、概略図を示し、一方で、図14Bは、有益なフィラメント20及び縫合糸10がどちらもモノフィラメントを備えている、すなわち、単一の材料のストリングで作製された一実施形態を示す。図14Cは、有益なフィラメント20がモノフィラメントを備えており、一方で、縫合糸10が編組、すなわち、一緒に編まれた複数の糸で作製された束を備え、そのような束を一緒に編組して、安定した相互編組構築物又は構造体を形成する一実施形態を示す。図14Dは、有益なフィラメント20が、編組を備えている、すなわち、複数の一緒に編組した糸で作製され、一方で、縫合糸10が、モノフィラメントを備えている一実施形態を示す。図14Eは、有益なフィラメント20及び縫合糸10がどちらも編組を備えている一実施形態を示す。図14Fは、Ethicon,Inc.から入手可能なSTRATAFIX(商標)Symmetric Knotless Tissue Control Deviceと同様に、縫合糸10が、外向きに突出した棘17を有する棘付き縫合糸を備えている一実施形態を示す。有利には、有益なフィラメント20は、棘17に干渉しないように、棘17の間に配置される。
【0038】
図15は、縫合糸10と並行する有益なフィラメント20の配置を示す軸方向概略断面図を示す。図15Aは、有益なフィラメント20と縫合糸10との間に配設され、有益なフィラメント20を縫合糸10に固定する、接着剤30a又は溶融若しくは溶解領域32、又は断続的なスポット溶接若しくは接着スポット33、又は連続溶接若しくは接着剤35を示す。図15Bは、有益なフィラメント20と縫合糸10との間に配設され、有益なフィラメント20を縫合糸10に固定する、接着剤30a又は33又は35を示す。図15Cは、有益なフィラメント20及び縫合糸10の周りに延在し、有益なフィラメント20を縫合糸10に固定する、接着剤30bを示す。図15Dは、有益なフィラメント20及び縫合糸10の周りに延在し、有益なフィラメント20を縫合糸10に固定する、熱収縮可能な又は接着性のスリーブなどのスリーブ34を示す。
【0039】
有利には、あらゆる断面形状の縫合糸10及び有益なフィラメント20を利用することができる。示される好適な実施形態は、略丸い又は円形の断面形状を利用しているが、任意の好適な幾何学的な形状の代替的な断面を使用することができる。図16は、縫合糸10と並行する有益なフィラメント20の配置を示す、いくつかの例示的な幾何学的形状を有する軸方向概略断面図を示す。図16Aは、略円形の縫合糸10と並行に係着させた、弧状又は中空半円形状の有益なフィラメント20を示し、組織内への設置を容易にするためのコンパクトな構築物をもたらす。図16Bは、どちらも互いに並行に位置付けられた有益なフィラメント20及び縫合糸10のリボン形状を示し、組織内への設置を容易にするためのコンパクトな構築物をもたらす。図16Cは、リボン形状の縫合糸10と並行する円形の有益なフィラメント20を示す。図16Dは、へこみ又は平坦部11aを有する円形縫合糸10を示し、それによって、円形の有益なフィラメント20がへこみ11内で縫合糸10と並行に位置付けられ、組織内への設置を容易にするためのコンパクトな構築物をもたらす。図16Eは、有益なフィラメント20の少なくとも一部分を収容するように成形された半円形のカット部分又は中空11bを有する円形縫合糸10を示し、それによって、円形の有益なフィラメント20が縫合糸10と並行に中空11b内に位置付けられ、組織内への設置を容易にするためのコンパクトな構築物をもたらす。図16Fは、略円形の縫合糸10と並行に係着させた2つの有益なフィラメント20を示す。大部分の実施形態では、少なくとも1つの有益なフィラメント20が示されているが、有益なフィラメント20のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を用いることができ、最も好ましいシステムは、縫合糸10と並行する1つ又は2つの有益なフィラメント20を備えている。2つの異なる有益なフィラメント20は、異なるタイプの薬剤を含有することができる。
【0040】
図17は、組織T内に設置された縫合糸システムの軸方向概略断面図を示す。図17A及び図17Bは、組織Tの開口部40内の略円形の縫合糸10と並行する有益なフィラメント20を示す。組織開口部40は、縫合糸10の設置中に針100(図示せず)が組織Tに突き刺さるように形成される。
【0041】
図17Cは、膨張可能な有益なフィラメント25が設置されて膨張した後の、組織Tの開口部40内の略円形の縫合糸10と並行する膨張可能な有益なフィラメント25を示し、膨張可能な有益なフィラメント25の拡張は、組織開口部40内の空間を満たし、組織開口部40を少なくとも部分的に塞ぎ、したがって、組織開口部40を通した出血を防止又は低減する。
【0042】
構築物の特性
好ましい実施形態では、縫合糸10は、関連する規制当局によって使用が承認された任意の市販の縫合糸を備えている。したがって、縫合糸10は、承認された市販の縫合糸に対応する、望ましい機械的特性、取り扱い特性、結節強度、及び吸収性特性を維持する。
【0043】
縫合糸10自体は、抗菌剤、又は任意の他の医学的に有益な特性(例えば、傷の治癒を支援又は刺激するための作用剤、など)、又は膨張可能なコーティング、及び/又は抗菌剤、又は膨張可能な構成要素を縫合糸10内へ組み込むことができ、又は代替的に、いかなる抗菌又は膨張可能なコーティングも、及びいかなる抗菌又は膨張可能な構成要素も縫合糸10内へ組み込まないことができる。有利には、本発明の縫合糸システム1は、有益なフィラメント20が存在するため、市販の承認された縫合糸と比較して、更なる抗菌活性又は膨張特性を提供する。
【0044】
一実施形態では、有益なフィラメントは、設置中又は設置後に本発明の縫合糸システム1の機械的特性に対して僅かな影響を及ぼすか、更には全く影響を及ぼさず、それによって、より小さい断面及びより弱い構築材料のため、有益なフィラメントの機械的強度は、低くなり得る。
【0045】
寸法的に、有益なフィラメント20断面積は、縫合糸10の断面積に対して25%未満である。代替的に、円形又は丸みのある断面形状の場合、寸法関係は、縫合糸10の直径の50%以下のときの有益なフィラメント20の直径に対して表すことができ、その結果、有益なフィラメント20の断面積は、縫合糸10の断面積に対して25%以下となる。最も好ましくは、有益なフィラメント20の直径は、円形状の縫合糸10の直径の50、40、30、20、10、5%である。代替的に、より一般的には、有益なフィラメント20の断面積は、縫合糸10の断面積の25、20、15、10、5、4、3、2、1%である。同じ比率の断面積の関係を、丸みのない/非円形の断面幾何学的形状に適用することができる。
【0046】
縫合糸10及び少なくとも1つの有益なフィラメント20の組み合わせを備えている本発明の縫合糸システムの引張強度、及び/又は荷重下での伸長、及び/又は破壊強度、及び/又は結節強度、及び/又は結節摺動などの機械的特性は、生体内において、又は組織環境をシミュレーションする温度/緩衝剤を伴う水系などの、組織内への設置をシミュレーションする組織モデルにおいて、設置する前及び組織に暴露させた後に、縫合糸10単独の特性と同じであるか、又は当該特性に非常に近い。表1で概説されるように、実施形態A1における本発明の縫合糸システム1の機械的特性は、組織又は組織モデル内へ設置する前に、組織又は組織モデルにおいて24時間後に測定して、組織又は組織モデルにおいて48時間後に測定して、組織又は組織モデルにおいて72時間後に測定して、測定誤差の範囲内で縫合糸10単独と同じである。実施形態B1における本発明の縫合糸システム1の機械的特性は、組織又は組織モデル内へ設置する前に、及び組織又は組織モデルにおいて24時間後に測定して、縫合糸10単独での5%以内であり、組織又は組織モデルにおいて48時間後及び72時間後に測定した本発明の縫合糸システム1の機械的特性は、測定誤差の範囲内で縫合糸10単独と同じである。実施形態C1における本発明の縫合糸システム1の機械的特性は、組織又は組織モデル内へ設置する前に、及び組織又は組織モデルにおいて24時間後、48時間後に測定して、縫合糸10単独での10%以内であり、組織又は組織モデルにおいて72時間後に測定した本発明の縫合糸システム1の機械的特性は、測定誤差の範囲内で縫合糸10単独と同じである。
【0047】
縫合糸システム1の機械的特性は、以下の理由から、縫合糸10単独でのそのような特性に近いか、又は同じである。
●有益なフィラメント20は、縫合糸10よりも小さい断面を有する
●有益なフィラメント20は、縫合糸10よりも低い機械的強度を有する
●有益なフィラメント20は、縫合糸10と比較して組織内でより速い溶解及び/又は吸収を有する
【0048】
【表1】
【0049】
材料
縫合糸10の材料
縫合糸10の材料は、当技術分野で既知の任意の縫合糸材料、特に合成及び天然の生体適合性ポリマー材料などの市販のかつ承認された縫合糸材料とすることができ、これらは非吸収性である場合も吸収性である場合もある。非吸収性縫合糸を製造するために有用な合成の非吸収性ポリマー材料の例は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリアミドを含む。非吸収性材料の更なる例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及び同様のポリマーである。吸収性縫合糸を製造するための有用な合成吸収性ポリマー材料の例は、ラクチドなどのラクトン、グリコリド、p-ジオキサノン、イプシロン-カプロラクトン、及びトリメチレンカーボネートから作製されるポリマー及びコポリマーを含む。好適な生体適合性、生体分解性のポリマーが、合成ポリマー又は天然ポリマーであってもよい。好適な合成の生体適合性、生体分解性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーが挙げられる。本発明の目的のために、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D-、L-、及びmesoラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、イプシロン-カプロラクトン、p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)、トリメチレンカーボネート(1,3-ジオキサン-2-オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、並びにそれらの混合物のホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーは、ポリ(乳酸)(poly lactic acid、PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリ乳酸-グリコール酸(polylactide-glycolic acid、PLGA)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリジオキサノン(polydioxanone、PDS)、又はそのモノマーの組み合わせ若しくはコポリマーから選択することができる。好適な生体吸収性で生体適合性のエラストマーコポリマーには、限定するものではないが、イプシロン-カプロラクトンとグリコリドのコポリマー(イプシロン-カプロラクトンとグリコリドのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30、好ましくは35:65~約65:35、より好ましくは45:55~35:65である);イプシロン-カプロラクトンと、L-ラクチド、D-ラクチド、それらの配合物又は乳酸コポリマーを含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(イプシロン-カプロラクトンとラクチドとのモル比は、好ましくは約35:65~約65:35、より好ましくは45:55~30:70である);p-ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)と、L-ラクチド、D-ラクチド及び乳酸を含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(p-ジオキサノンとラクチドとのモル比は、好ましくは約40:60~約60:40である);イプシロン-カプロラクトンとp-ジオキサノンとのエラストマーコポリマー(イプシロン-カプロラクトンとp-ジオキサノンとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);p-ジオキサノンと炭酸トリメチレンとのエラストマーコポリマー(p-ジオキサノンと炭酸トリメチレンとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);炭酸トリメチレンとグリコリドとのコポリマー(炭酸トリメチレンとグリコリドとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である);炭酸トリメチレンと、L-ラクチド、D-ラクチド、それらの配合物又は乳酸コポリマーを含めたラクチドとのエラストマーコポリマー(炭酸トリメチレンとラクチドとのモル比は、好ましくは約30:70~約70:30である)、並びにそれらの配合物が挙げられる。一実施形態では、エラストマーコポリマーは、グリコリドとイプシロン-カプロラクトンとのコポリマーである。別の実施形態では、エラストマーコポリマーは、ラクチドとイプシロン-カプロラクトンとのコポリマーである。非吸収性の、すなわち生物耐久性の縫合糸材料としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はそのモノマー若しくはコポリマーを挙げることができる。好適な生物耐久性ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl-methacrylate、PMMA)、ポリスチレン(polystyrene、PS)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリトリフルオロクロロエチレン(polytrifluorochloroethylene、PTFCE)、ポリフッ化ビニル(polyvinylfluoride、PVF)、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene、FEP)、ポリアセタール、ポリスルホン、シリコン及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
有益なフィラメント20の材料
有益なフィラメント20は、ある量の薬剤を組み込んでおり、最大で80%の薬剤、例えば5、10、20、30、40、50、60、70、75、80重量%の薬剤を含有することができる。有利には、そのような大量の薬剤は、縫合糸10に対してより速い/より迅速な可溶性/吸水性である、機械的に弱いフィラメントをもたらす。
【0051】
好ましくは、薬剤は、有益なフィラメント20の材料に合成されて、そこで、有益なフィラメント20は、薬剤及びポリマー結合剤の混合物を損ない、そのような混合物は、押し出されて細長い有益なフィラメント20を形成する。
【0052】
有益なフィラメント20は、一実施形態では、組織内へ設置した後に薬剤を迅速に放出するように構成されている。実施形態D1、E1、F1について表2に示されるように、有益なフィラメント20は、組織又は組織モデルにおいて24時間以内に少なくとも5、10、20%の薬剤を放出するように構成され、組織又は組織モデルにおいて48時間以内に少なくとも10、25、50%の薬剤を放出するように構成され、組織又は組織モデルにおいて72時間以内に少なくとも20、50、90%の薬剤を放出するように構成されている。
【0053】
【表2】
【0054】
いくつかの実施形態では、有益なフィラメントは、生体内において、又は組織環境をシミュレーションする温度/緩衝剤を伴う水系などの、組織内への設置をシミュレーションする組織モデルにおいて、組織暴露から24時間以内、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後、又は168時間後に、略完全に溶解する及び/又は再吸収されるように構成されている。
【0055】
有益なフィラメント20は、少なくとも1種の薬剤と、少なくとも1種の吸収性及び/又は可溶性フィラメント形成材料と、を含み、当該フィラメント形成材料は、薬剤と混合されるか、又は薬剤に結合するか、又はフィラメント形成材料のマトリックス内に薬剤を全体的に含有又は保持し、溶融押し出し、溶剤押し出し、注型、引き抜き、又は任意の利用可能な技法を介して細長いストリングを形成することを可能にする。
【0056】
好ましくは、有益なフィラメント20のフィラメント形成材料は、天然又は合成のポリマー又はポリマーの混合物である。好適な天然ポリマーとしては、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、重合ヒアルロン酸、セルロース、酸化セルロース、あるいは任意の天然由来のポリマー、又はそれらと天然若しくは合成ポリマーとの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な合成ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、及びこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される生体適合性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
有益なフィラメント20からの抗菌剤又は薬剤の放出は、縫合糸10自体によって放出される任意の抗菌剤/薬剤に代わるものであることができるか、又はそれに加えてのものであることができる。
【0058】
薬剤
好適な抗菌剤は、磨耗性コーティングのポリマーマトリックス全体にわたって均一に分散させることができるものであり得る。例えば、抗菌剤は、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(polyhexamethylene biguanide、PHMB)、オクテニジン、銀粒子、銀塩、トリクロサン、及びそれらの組み合わせを含む、抗生機能又は抗菌機能を有する任意の薬剤であり得る。好適な抗菌剤は、ハロゲン化ヒドロキシエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。特に、抗菌剤は、ハロゲン化2-ヒドロキシジフェニルエーテル及び/又はハロゲン化2-アシルオキシジフェニルエーテルであってもよく、酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、メチル又はジメチルカルバミン酸エステル、安息香酸エステル、クロロ安息香酸エステル、メチルスルホン酸エステル及びクロロメチルスルホン酸エステルが特に適している。いくつかの特に有利な抗菌剤は、一般にトリクロサンと称される2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、グルコン酸クロルヘキシジン、及びそれらの組み合わせである。
【0059】
一形態では、抗菌剤に対して高い親和性を有する材料、又はそのような材料の粒子は、有益なフィラメント20のポリマーマトリックスの全体にわたって分布させることができる。例えば、ポリカプロラクトン、及びポリカプロラクトンに基づくコポリマーは、トリクロサンに対して高い親和性を有する。したがって、トリクロサンが抗菌剤として選択される場合、ポリカプロラクトンの(コ)ポリマー又はポリカプロラクトン自体の粒子を有益なフィラメント20中に含めることができる。有益なフィラメント20は、生物医学的に有用な作用剤の高溶解性を有する材料、例えば少なくとも約30重量%のポリカプロラクトンを含むことができ、生物医学的に有用な作用剤は、トリクロサンである。トリクロサンは、比較的穏やかな温度及び/又は低圧条件の下で気化することが知られており、ポリカプロラクトン含有ポリマー中に選好的に吸収される。
【0060】
一形態では、約10、約50、約100、更には約150ミクロンなどの約0.1ミクロン~約300ミクロンのサイズを有する銀粒子などの粒子が、例えば2、3、5、10、15、20、30、又は50体積%などの、約1~約75体積%の濃度で、有益なフィラメント20に組み込まれる。いくつかの形態では、炭酸塩、ラクチド、硝酸塩、又は類似物などの銀塩を使用することができる。
【0061】
本明細書に記載される抗菌剤に加えて、有益なフィラメント20の薬剤は、エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール類;グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類;トリクロロカルバニリドなどのアニリド類;クロルヘキシジンなどのビグアニド類;次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素及び酸性亜塩素酸ナトリウムなどの塩素放出剤;ポビドンヨード、ポロキサマーヨードなどのヨウ素放出剤;硝酸銀、スルファジアジン銀、他の銀剤、銅-8-キノレート及びビスマスチオールなどの金属;過酸化水素、過酢酸などの過酸素化合物;フェノール類;ベンザルコニウムクロリド、セトリミド、及びイオネン-ポリ第四級アンモニウム化合物などの第四アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない、殺生物剤、消毒剤及び/又は防腐剤であってもよい。
【0062】
有益なフィラメント20には、アモキシシリン、オキサシリン、及びピペラシリンなどのペニシリン;セファゾリン、セファドロキシル、セフォキシチン、セフプロジル、セフォタキシム及びセフジニルなどの非経口的なセファロスポリン類;アズトレオナムなどのモノバクタム;クラブラン酸スルバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤;バンコマイシンなどの糖ペプチド;ポリミキシン;ナリジクス酸、シプロフロキサシン、レバキンなどのキノロン類;メトラニダゾール;ノボビオシン;アクチノマイシン;リファンピン;ネオマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド類;ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン;クロラムフェニコール;エリスロマイシンなどのマクロライド;クリンダマイシン;スルファジアジンなどのスルホンアミド;トリメトプリム;局所用抗生物質;バシトラシン;グラミシジン;ムピロシン;及び/又はフシジン酸を含むがこれらに限定されない抗生物質が組み込まれていてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、薬剤は、抗体、成長因子、サイトカイン、ケモカイン、傷の治癒を高める作用剤、治療ペプチド、及びそれらの組み合わせを更に含む。
【0064】
1つの有益なフィラメント20は、その中に組み込まれた2種又はそれ以上の異なる薬剤を含むことができる。2つ又はそれ以上の異なる有益なフィラメント20が使用される場合は、それぞれが同じ薬剤を組み込むことができるか、又はそれぞれが異なるタイプの薬剤を含有することができる。したがって、第1の有益なフィラメント20は、第1の薬剤、例えばグルコン酸クロルヘキシジン又は銀粒子を組み込むことができ、第2の有益なフィラメント20は、第2の薬剤、例えばポリヘキサメチレンビグアニド又は銀塩を組み込むことができる。
【0065】
滅菌及び組み立て
一実施形態では、本発明の縫合システム1は、組み立てられてから滅菌及び包装されるか、又は包装されてから滅菌される。この実施形態では、縫合糸10/針100に固定された有益なフィラメント20の滅菌は、(例えば、酸化エチレンベース、ガンマ照射ベース、電子ビーム照射ベース、熱ベース、などの)同じ滅菌技法によって一緒に行われる。
【0066】
代替的な実施形態では、有益なフィラメント20は、取り付けられるのではなく、縫合糸10及び針100を有するキットの一部として供給される。この場合、有益なフィラメント20は、使用の1~30分前以内などの使用の1~120分前以内である患者に使用する直前に、縫合システム1を形成する縫合糸10及び/又は針100に固定される。この実施形態では、縫合糸10/針100に取り付けられていない有益なフィラメント20の滅菌は、(例えば、酸化エチレンベース、ガンマ照射ベース、電子ビーム照射ベース、熱ベース、などの)同じ滅菌技法によって同時に、又は異なる滅菌技法によって別々に行うことができる。有利には、薬剤に負の影響を及ぼさず、一方で、別の好適な滅菌技法によって縫合糸10/針100を滅菌する、好適な滅菌技法による有益なフィラメント20の滅菌は、別々に行うことができ、したがって、滅菌した有益なフィラメント20及び縫合糸10/針100は、結合されていない滅菌キットの一部として提供することができる。この実施形態では、医療専門家は、好適な滅菌接着剤、熱収縮可能なスリーブ、又は熱処理を使用して、手術室内で有益なフィラメント20の縫合糸10/針100への取り付けを行って、有益なフィラメント20を縫合糸10及び/又は針100に接合し、したがって、患者に使用する直前に縫合システム1を形成する。
【0067】
情報伝達又はセンサ
いくつかの実施形態では、有益なフィラメント20は、組織及び/又は傷の状態を示すように構成されたセンサを備えている。特に、感染などの望ましくないプロセスを示す状態、感染体の存在、及びそれらのようなものを示すバイオマーカーが感知及び検出される。一実施形態では、がん型細胞の存在を反映するインジケータを組み込むことができる。抗体、サイトカイン及びケモカイン、並びに細菌抗原及び代謝物質などの、炎症及び/又は感染のバイオマーカーと同様に、細菌の直接的な検出が想到される。また、特定のpH、酸素供給、温度などの、感染を示すことができる傷の生理的環境の検出が想到される。代替的に、炎症及び/又は感染がないことを示す正常状態の感知及び検出も想到される。
【0068】
傷の状態の報告及び情報伝達は、色の変化などの、有益なフィラメントの情報伝達によって達成される。代替的に、有益なフィラメントを取り外して解析する。代替的に、有益なフィラメントは、電子マイクロチップ及びセンサ、並びに有線又は無線で報告するための有線導管又はアンテナを備えている。電子式センサが利用される場合、有益なフィラメントは、既に埋め込まれているセンサからの無線信号を受動的に増幅するように、すなわち、アンテナ効果を介して信号を共振させる、又は増幅する、又は送信するように作用するように、既に埋め込まれているセンサと相乗的に相互作用することができる。
【0069】
代替的な実施形態では、有益なフィラメント20は、傷の部位の組織内に設置されたセンサ(図示せず)からの信号を搬送するように構成され、有益なフィラメント20は、有線又は無線通信手段によって、電気信号、すなわち、電流を搬送するか、又は組織の外部にある受信機/レコーダに情報を通信するための送信アンテナとしての役割を果たす。本実施形態では、組織及び/又は傷の状態を感知するセンサによって、センサからの信号は、有益なフィラメント20を介して外部の受信機(図示せず)に搬送される。したがって、治癒及び/又は感染の状態に関する情報は、外部に搬送されて衛生従事者及び/又は患者に通信され、有益なフィラメント20を利用して、傷/患者の外部にある受信機にそのような情報を搬送/送信し、有益なフィラメント20は、必ずしも情報を生成する、又は傷の環境を感知するとは限らない。いくつかの実施形態では、有益なフィラメント20は、有益なフィラメント20の組織への設置後に、有線又は無線リンクを介して、補助の組織内センサに接続され、また、同じく有益なフィラメント20の組織への設置後に、同じく有線又は無線リンクを介して、外部のレコーダに接続される。
【0070】
膨張可能な有益なフィラメント
一実施形態では、有益なフィラメント20は、湿気、体液、又は組織への暴露に応じて膨張可能である。有利には、縫合のための縫合糸システム1の使用、及び組織内への有益なフィラメント20を有する縫合糸10の設置に応じて、有益なフィラメントが膨張し、したがって、針を突き刺して組織に開いた孔の閉鎖を容易にする。有益なフィラメント20aの膨張及び拡張は、組織内への設置後に、60分未満以内、例えば1、2、3、5、10、30、45分以内に生じるように構成される。膨張又は拡張は、少なくとも10%、例えば10、20、30、50、100、200、300、500%の有益なフィラメントの断面の増加を構成する。
【0071】
図17Cは、膨張可能な有益なフィラメント25が設置されて膨張した後の、組織Tの開口部40内の略円形の縫合糸10と並行する膨張可能な有益なフィラメント25を示し、膨張可能な有益なフィラメント25の拡張は、組織開口部40内の空間を満たし、組織開口部40を少なくとも部分的に塞ぎ、したがって、組織開口部40を通した出血を防止又は低減する。
【0072】
膨張材料は、超吸収性ポリマー、ヒドロゲル、すなわち、大量の水又は生物学的流体を吸入することができる親水性の三次元ネットワーク化された材料、ゼラチン、ゼラチン/ポリビニルピロリドンヒドロゲル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(酸化エチレン)、アルギン酸ナトリウム、などを含む、水の吸入に応じて容積が増加する、又は膨張する、任意の生体適合性材料である。
【0073】
膨張可能な有益なフィラメント20は、フィラメント20にコーティング、又は含侵、又は化合された抗菌薬剤などの、放出可能な活性薬剤を更に有することができる。
【0074】
本発明についてその具体的な実施形態を参照して本明細書で説明してきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、及び変形が可能であることは明白である。したがって、これは、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内にある、全てのかかる変更、修正、及び変形を包含するものとする。
【0075】
〔実施の態様〕
(1) 縫合システムであって、
a)針と、
b)前記針に取り付けられた接続端部と、反対側の自由端部と、を有する細長い可撓性縫合糸と、
c)前記針に取り付けられた又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けられた、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を備え、
前記有益なフィラメントが、前記縫合糸よりも小さい断面積及び低い機械的強度を有し、
前記有益なフィラメントが、薬剤を有する、縫合システム。
(2) 前記縫合糸が、非吸収性であり、前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性である、実施態様1に記載の縫合システム。
(3) 前記縫合糸が、吸収性であり、前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後に吸収性又は可溶性である、実施態様1に記載の縫合システム。
(4) 前記有益なフィラメントが、少なくとも20重量%の前記薬剤を含有する、実施態様1に記載の縫合システム。
(5) 前記縫合糸が、棘付き又は無結節の縫合糸であり、前記有益なフィラメントが、棘付きでも、無結節でもない、実施態様1に記載の縫合システム。
【0076】
(6) 前記縫合糸が、編組されたフィラメント構築物であり、前記有益なフィラメントが、モノフィラメントである、実施態様1に記載の縫合システム。
(7) 前記有益なフィラメントが、前記縫合糸よりも短い、実施態様1に記載の縫合システム。
(8) 前記縫合糸が、前記有益なフィラメントの少なくとも一部分を受け入れるように構成されたへこみを備えている、実施態様1に記載の縫合システム。
(9) 前記有益なフィラメントが、前記縫合糸の長さに沿って前記縫合糸に取り付けられていない、実施態様1に記載の縫合システム。
(10) 前記有益なフィラメントが、前記縫合糸の長さに沿って、前記縫合糸のあらゆる地点で、又は間欠的に前記縫合糸に固定されている、実施態様1に記載の縫合システム。
【0077】
(11) 前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の60分以内に、断面が少なくとも25%膨張可能である、実施態様1に記載の縫合システム。
(12) 前記縫合システムの機械的特性が、設置中又は設置後に、前記有益なフィラメントのない前記縫合糸の特性の5%以内である、実施態様1に記載の縫合システム。
(13) 前記縫合システムが、設置の1週間後に、前記有益なフィラメントのない前記縫合糸のBSRと実質的に同じであるBSRを有する、実施態様1に記載の縫合システム。
(14) 前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の約168時間以内に完全に溶解するように、又は完全に再吸収されるように構成されている、実施態様1に記載の縫合システム。
(15) 前記有益なフィラメントが、哺乳類の組織内への設置後の24時間以内に前記薬剤の少なくとも10%を放出するように構成されている、実施態様1に記載の縫合システム。
【0078】
(16) 前記薬剤が、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、オクテニジン、銀粒子、銀塩、トリクロサン、及びそれらの組み合わせを含む、実施態様1に記載の縫合システム。
(17) 前記有益なフィラメントが、別々にかつ前記縫合糸及び前記針とは異なって滅菌されているか、又は前記有益なフィラメントが、別々にかつ前記縫合糸及び前記針と同じ様式で滅菌されている、実施態様1に記載の縫合システム。
(18) 哺乳類の組織を縫合する方法であって、
実施態様1に記載の縫合システムを前記組織に通して前記組織領域に近づけて、前記縫合糸による前記組織の支持を確立することと、
前記組織を通して前記縫合糸と並行する前記有益なフィラメントを引っ張ることと、
任意選択で、結節によって前記縫合システムを固定することと、
前記縫合糸と並行する前記有益なフィラメントを前記組織内に残すことと、
前記薬剤を前記組織内へ放出することを可能にすることと、を含む、方法。
(19) 埋植前に、実施態様1に記載の縫合システムを組み立てるためのキットであって、
a)前記針に取り付けられた細長い可撓性縫合糸と、
b)前記針に又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けるように構成された、前記縫合糸及び前記針とは別の、少なくとも1つの細長い外部の有益なフィラメントと、を備え、
前記外部の有益なフィラメントが、前記針に取り付けられた前記縫合糸とは別に滅菌処理される、キット。
(20) 実施態様1に記載の縫合システムを作製する方法であって、
前記縫合糸の前記接続端部を前記針に取り付けることと、
前記有益なフィラメントを前記針に又は前記接続端部において前記縫合糸に取り付けることと、を含む、方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15a
図15b
図15c
図15d
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図17A
図17B
図17C
【国際調査報告】