(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】腫瘍消化物からの腫瘍浸潤リンパ球の培養
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240401BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240401BHJP
C12N 9/48 20060101ALN20240401BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20240401BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61P35/00
A61K35/17
C12N9/48
C12N9/26
C12N9/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562833
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022024804
(87)【国際公開番号】W WO2022221525
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304021853
【氏名又は名称】エイチ リー モフィット キャンサー センター アンド リサーチ インスティテュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】マリナックス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ピロン-トーマス,シャーリ
(72)【発明者】
【氏名】サーナイク,アモード
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BB19
4B065BD44
4B065CA44
4B065CA60
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、血流から離れて腫瘍に移行した免疫細胞である。TILは、がんの治療のために自家養子移植療法で使用されてきた。消化された腫瘍細胞を用いて腫瘍浸潤リンパ球を迅速に増殖させる方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子細胞療法で使用するための増殖された腫瘍反応性の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を迅速に生産する方法であって、腫瘍反応性が高い腫瘍浸潤リンパ球を増殖させるのに有効な量のIL-2を含む培養培地中で、ヒト対象からバルクの非精製腫瘍消化物を培養することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記増殖されたTIL集団が、高い腫瘍特異性も有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象から1つ以上の組織試料を取得することと、前記1つ以上の組織試料を、1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素で消化することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素が、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、及び/またはDNAseを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素が、HYLENEX(登録商標)、PULMOZYME(登録商標)、及び/またはXIAFLEX(登録商標)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の組織試料が、1つ以上のコア生検組織試料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記組織試料を消化する前に1回以上のコア生検を実施することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の組織試料が、1つ以上の外科的切除物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記組織試料を消化する前に1回以上の外科的切除を実施することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のコア生検または1つ以上の外科的切除物を、前記検体を脱凝集することなく消化する、請求項3~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記培養培地が完全培地である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記増殖したTIL集団を採取することをさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記TILを、IL-2を含む培地中で5週間以下の間培養する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の方法によって作製される迅速に増殖されたTIL集団を対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法。
【請求項15】
ヒト対象のがんの治療方法であって、腫瘍反応性及び/または特異性が高い腫瘍浸潤リンパ球を増殖するのに有効な量のIL-2を含む培養培地中で、前記対象由来のバルクの未精製腫瘍消化物を培養することと;前記増殖されたTIL細胞を採取することと;前記増殖されたTILを前記対象に養子移植することとを含む、前記方法。
【請求項16】
対象から1つ以上の組織試料を取得することと、前記1つ以上の組織試料を、1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素で消化することとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素が、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、及び/またはDNAseを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素が、HYLENEX(登録商標)、PULMOZYME(登録商標)、及び/またはXIAFLEX(登録商標)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の組織試料が、1つ以上のコア生検組織試料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記組織試料を消化する前に1回以上のコア生検を実施することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の組織試料が、1つ以上の外科的切除物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組織試料を消化する前に1回以上の外科的切除を実施することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上のコア生検または1つ以上の外科的切除物を、前記検体を脱凝集することなく消化する、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記がんが固形腫瘍である、請求項14~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、肉腫である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記肉腫が軟部組織肉腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記軟部組織肉腫が線維性肉腫である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記線維性肉腫が、非定型脂肪腫性腫瘍、高分化脂肪肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫、単発性線維性腫瘍、及び平滑筋肉腫からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、血流から離れて腫瘍に移行した免疫細胞である。TILは、がんの治療のために自家養子移植療法で使用されてきた。典型的には、TIL療法の臨床的に妥当な用量を製造するために、腫瘍特異的TIL培養の開始及び増殖を成功させるための出発物質として、新たに外科的に切除された腫瘍を使用する。したがって、TIL療法の候補患者は手術に適格である必要がある。患者が手術に適格である場合、腫瘍は切除可能である必要がある。複数の腫瘍解剖学的部位が存在する場合、潜在的なT細胞浸潤を伴う適切な腫瘍転移(複数可)の切除の熟練した選択を、各患者について行わなければならない。
【0002】
TILの生成において、外科的に切除可能な腫瘍が一旦得られると、腫瘍は通常、小さな断片に切断され、個々の断片が最初のTIL増殖(「Pre-REP」と称される)が生じる培養プレートの別個のウェルに配置される。次いで、最初に増殖したTIL集団を、腫瘍反応性について選択する。腫瘍反応性クローンは、2回目の増殖ラウンド(「REP」と称する)の対象となる。合計で5~7週間の培養が必要であり、この培養条件にはクリーンルームの使用、培養物の分離によるコンフルエンスのチェック、及び細胞の維持にかなりの時間を必要とする。より侵襲性が低い、より速い、またはより少ない資源しか必要としない、TILを迅速に増殖する任意の方法が有益であろう。
【発明の概要】
【0003】
バルクの非精製腫瘍消化物から増殖腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を迅速に製造することに関する方法及び組成物が開示される。
【0004】
一態様では、本明細書に開示されるのは、ヒト患者における養子細胞療法で使用するための増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を迅速に生産する方法であって、腫瘍反応性及び/または特異性が高い腫瘍浸潤リンパ球を増殖させるのに有効な量のIL-2を含む培養培地中で、ヒト対象からバルクの非精製腫瘍消化物を培養することを含む方法である。
【0005】
また本明細書では、任意の前述の態様の増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を迅速に生成する方法であって、バルクの未精製腫瘍消化物が由来または取得される1つ以上の組織試料(限定するものではないが、1つ以上の生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物を含む)を取得することであって、前記1つ以上の組織試料が対象由来のTILを含む、取得することと;1つ以上の組織試料(限定するものではないが、1つ以上の生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物)を含む)を、1つ以上のヒトまたはヒト化酵素であって、限定するものではないが、コラゲナーゼ(例えばXIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えばHYLENEX(登録商標))、及び/またはDNAse(例えばPULMOZYME(登録商標))を含む酵素で消化することと、をさらに含む方法も開示される。いくつかの態様において、この方法は、増殖したTIL集団を採取することをさらに含んでもよい。
【0006】
一態様において、TILは、1つ以上のコア生検組織試料から得られる。また本明細書では、1つ以上のコア生検が、検体の脱凝集なしに患者から直接消化される、上記のいずれかの態様の方法が開示される。消化には、コラゲナーゼ(例えば、XIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えば、HYLENEX(登録商標))、及び/またはDNAse(例えば、PULMOZYME(登録商標))を含むがこれらに限定されない1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素の使用を含み得る。
【0007】
TILをプレートする前に、1つ以上の生検(例えば、コア生検及び/または外科的切除など)を実行することをさらに含む、上記のいずれかの態様の方法も開示される。一態様では、増殖したTIL集団を迅速に生産する方法であって、増殖したTIL集団を採取することをさらに含む方法が開示される。
【0008】
一態様では、消化が、組織試料(限定するものではないが、1つ以上の生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物を含む)の機械的破壊をさらに含む、任意の先行する態様のTIL集団を迅速に生産する方法が開示される。
【0009】
開示された増殖TIL集団は、ヒトのがん(例えば、軟部組織肉腫(例えば、限定するものではないが、線維性肉腫、例としては、非定型脂肪腫腫瘍、高分化脂肪肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫、単発性線維性腫瘍、及び平滑筋肉腫)、任意の結合組織新生物、または骨肉腫の治療に用いてもよい。一態様では、本明細書に開示されるのは、ヒト対象におけるがんを治療する方法であって、対象に、任意の先行する態様の迅速に増殖したTILを投与することを含む方法である。言い換えれば、本明細書に開示の一態様では、対象におけるがんを治療する方法であって、高い腫瘍反応性及び特異性を有する腫瘍浸潤リンパ球を増殖するのに有効な量のIL-2を含む培養培地において、対象からのバルクの未精製腫瘍消化物を培養すること;増殖されたTIL細胞を採取すること;増殖されたTILを対象に養子移植することを含む、方法が開示される。いくつかの態様では、がんを治療する方法はさらに、バルクの未精製腫瘍消化物が由来または取得される1つ以上の組織試料(限定するものではないが、1つ以上の生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物を含む)を取得することであって、前記1つ以上の組織試料が対象由来のTILを含む、取得することと;1つ以上の組織試料(限定するものではないが、1つ以上の生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物)を含む)を、1つ以上のヒトまたはヒト化酵素であって、限定するものではないが、コラゲナーゼ(例えばXIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えばHYLENEX(登録商標))、及び/またはDNAse(例えばPULMOZYME(登録商標))を含む酵素で消化することと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】IL-2(6000IU/mL)のみを用いたTIL増殖の消化法からの総収率を示す。
【
図2】消化法及び唯一のサプリメントとしてIL-2(6000IU/mL)を用いて軟組織肉腫腫瘍から増殖させたpreREP TILの表現型を示す。
【
図3】酵素製剤の間の総細胞収率の比較を示す。xenoフリー酵素を利用するFDA承認酵素製剤は、新鮮な腫瘍を処理した後の総生存細胞数において優れた収率を示した。
【
図4】生存率及び表現型の比較を示す。xenoフリーの酵素を使用するFDA承認酵素製剤は、新鮮腫瘍由来の消化物試料の優れた生存率及びpreREP培養におけるより多くのCD8+リンパ球を示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本化合物、組成物、物品、デバイス、及び/または方法が開示及び記載される前に、これらは、別途明記のない限り、特定の合成方法もしくは特定の組換えバイオテクノロジー方法に、または、別途明記のない限り、特定の試薬に限定されず、したがって、当然、異なり得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。
【0012】
A.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0013】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定値から、及び/または「約」別の特定値までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定値から及び/または他の特定値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」を使用することにより、特定値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、範囲のそれぞれの端点は、他の端点に関してかつ他の端点とは独立して、有意であることが理解されるであろう。本明細書にはいくつかの数値が開示されていること、及び各数値はまた、その数値自体に加えて、「約」その特定値として本明細書で開示されることも理解される。例えば、「10」という数値が開示される場合、「約10」も開示される。数値が開示される場合、当業者により適切に理解されるように、その数値「以下」、「その数値以上」、及び数値間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。本出願の全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点及び開始点、ならびにデータ点の任意の組み合わせに対する範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点15が開示される場合、10及び15超、以上、未満、以下、及び等しい、ならびに10~15が開示されたとみなされると理解される。2つの特定の単位間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0014】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲では、いくつかの用語への言及がなされ、それらは以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0015】
「任意」または「任意選択で、任意に」とは、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、及び、記載が該事象または状況が生じる場合及び生じない場合を含むことを意味する。
【0016】
「減少」とは、症状、疾患、組成、状態、または活性の量を少なくするあらゆる変化を指すことができる。ある物質がある場合の遺伝子産物の遺伝的産出量が、その物質がない場合の遺伝子産物の産出量に比べて少ない場合、その物質は、遺伝子の遺伝的産出量を減少させるとも理解される。また例えば、減少とは、症状が以前に観察されたものよりも少なくなるような障害の症状の変化であってもよい。減少とは、統計的に有意な量の、状態、症状、活性、組成のあらゆる個々の、中央値の、または平均の減少であってもよい。したがって、減少が統計的に有意である限り、減少とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であってもよい。
【0017】
「阻害する」、「阻害すること」、及び「阻害」とは、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これは、その活性、応答、状態、または疾患の完全な除去を含み得るがこれに限定されない。これはまた、例えば、天然または対照のレベルと比較して、その活性、応答、状態、または疾患における10%の減少を含み得る。したがって、減少は、天然または対照のレベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の減少量であり得る。
【0018】
「減少させる(reduce)」または当該語の他の形態、例えば、「減少させること(reducing)」または「減少(reduction)」とは、事象または特徴(例えば、腫瘍の成長)の低下を意味する。これは通常、何らかの標準値または期待値に関連する、言い換えれば相対的なものであることが理解されるが、必ずしも標準値または相対値が参照される必要はない。例えば、「腫瘍成長を減少させる」とは、標準または対照と比較して腫瘍の成長速度を減少させることを意味する。
【0019】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」、及びそれらの文法的変形は、1つ以上の疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態の根本的な原因の強度または頻度を部分的または完全に予防する、遅延させる、治癒させる、治す、弱める、軽減する、変更させる、修復する、回復させる、改善する、安定化する、軽減する、及び/または減少させることを意図または目的として、組成物を投与することを含む。本発明による治療は、防止的、予防的、緩和的、または治療的に適用されてもよい。予防的治療は、がんの発症前(例えば、がんの明らかな徴候の前)、早期発症時(例えば、がんの初期徴候及び症状時)、または確立された発症後に対象に投与される。予防的投与は、感染症の症状が出現する数日から数年前に行ってもよい。
【0020】
「防止する(prevent)」または当該語の他の形態、例えば、「防止すること(preventing)」または「防止(prevention)」とは、特定の事象もしくは特性を停止させること、特定の事象もしくは特性を安定させるかまたはその発生もしくは進行を遅延させること、または特定の事象もしくは特性が発生する可能性を最小限に抑えることを意味する。防止するは通常、例えば、減少させるに比べて絶対的であるため、対照との比較を必要としない。本明細書で使用する場合、あるものを減少させることはできても防止することはできない場合もあれば、あるものを減少させて防止もされる場合もある。同様に、あるものを防止することはできても減少させることはできない場合もあれば、あるものを防止させて減少もされる場合もある。減少させるまたは防止するが使用される場合、別段具体的に示されない限り、もう一方の語の使用も明確に開示されることが理解される。
【0021】
「生体適合性」とは、一般的には、レシピエントに対して一般的に無毒性であり、対象に重大な悪影響を及ぼさない材料及びその任意の代謝産物または分解生成物を指す。
【0022】
「含む」という用語は、その組成物、方法などに、示されている要素が含まれているが、他の要素が排除されないことを意味するものとする。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなる」は、示されている要素を含むが、組み合わせにとって本質的に重要な他の任意の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法からの微量汚染物質、ならびに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などを除外しない。「~からなる」とは、本開示で提供される及び/または特許請求される組成物を投与するための他の成分の微量を超える要素及び実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれにより定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0023】
「対照」とは、比較目的で実験に使用される、代替となる対象または試料である。対照は「陽性」であっても、または「陰性」であってもよい。
【0024】
「対象」という用語は、投与または治療の標的となる任意の個体を指す。対象とは脊椎動物、例えば哺乳動物であってもよい。一態様では、対象とは、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、またはネコであってもよい。対象とはまた、モルモット、ラット、ハムスター、ウサギ、マウス、またはモグラでもあってもよい。したがって、対象とは、ヒトまたは動物の患者であってもよい。用語「患者」とは、臨床医、例えば内科医の治療を受けている対象を指す。
【0025】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。「有効」である薬剤の量は、対象の年齢及び全身状態、特定の薬剤(複数可)などの多くの要因に応じて、対象ごとに異なるであろう。したがって、定量化された「有効量」を常に指定できるとは限らない。しかしながら、任意の対象の場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定され得る。また、本明細書で使用される場合、特に別段の記載がない限り、薬剤の「有効量」は、治療有効量及び予防有効量の両方を網羅する量を指し得る。治療効果を得るために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、及び体重などの要因によって異なり得る。用量レジメンを調整して、最適な治療応答を提供することもできる。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように相対的に用量を減少させてもよい。
【0026】
「薬学的に許容される」成分とは、生物学的に、または他の理由で望ましくないことがない成分を指し得、すなわち、この成分は、本開示で提供される医薬製剤に組み込まれ、重大な望ましくない生物学的影響を引き起こすこともなく、この成分を含有する製剤の他の成分のいずれかと有害な形で相互作用することもなく、本明細書に記載の対象に投与される。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は一般に、成分が毒物学的試験及び製造試験の必要な基準を満たしているか、または成分が米国食品医薬品局によって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれていることを意味する。
【0027】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と呼ばれることもある)は、一般に安全かつ毒性のない医薬組成物または治療用組成物を調製する際に有用な担体または賦形剤を意味し、これには獣医及び/またはヒトの薬学的使用または治療的使用に許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(油/水もしくは水/油エマルジョンなど)及び/または様々なタイプの湿潤剤を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または、医薬製剤中で使用するための、及び本明細書にさらに記載される、当技術分野で周知の他の材料を包含するが、これらに限定されない。
【0028】
「薬理学的に活性な」誘導体または類似体などとして使用される「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)とは、誘導体または類似体(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝物、異性体、断片など)であって、親化合物と同じ種類の薬理活性を有し、程度がほぼ等しい誘導体または類似体を指し得る。
【0029】
「治療薬」とは、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果としては、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療などの治療効果と、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性のがん)の防止などの予防効果との両方が挙げられる。これらの用語はまた、これらに限定されないが、塩、エステル、アミド、プロエージェント(proagent)、活性代謝物、異性体、断片、類似体など、本明細書で具体的に言及される有益な剤の薬学的に許容される薬理学的に活性な誘導体を包含する。「治療薬」という用語が使用される場合、または特定の薬剤が具体的に特定される場合、その用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロエージェント、コンジュゲート、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含む。
【0030】
組成物(例えば、ある薬剤を含む組成物)の「治療有効量」または「治療上有効な用量」とは、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。いくつかの実施形態において、望ましい治療結果はI型糖尿病の制御である。いくつかの実施形態において、望ましい治療結果は、肥満の制御である。所与の治療薬の治療有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類及び重症度、対象の年齢、性別、及び体重などの要因に応じて変化するであろう。この用語は、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、経時的な量)を指す場合もある。正確な所望される治療効果は、治療される状態、対象の耐性、投与される薬剤及び/または薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、ならびに当業者によって理解されるさまざまな他の要因に応じて変化する。場合によっては、組成物の複数投与の後に、数日、数週間、または数年の期間にわたって、所望の生物学的または医学的応答が達成される。
【0031】
用語「治療」とは、疾患、病理学的状態、または障害を治癒、改善、安定化、または予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語には、積極的治療、すなわち、疾患、病態、または障害の改善を特に目的とした治療が含まれ、また、原因療法、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の原因の除去を目的とした治療も含まれる。さらに、この用語には、緩和療法、すなわち、疾患、病理学的状態、または障害の治癒ではなく、症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、または障害の発症を最小限に抑えるか、または部分的もしくは完全に阻害することを目的とした治療;ならびに支持療法、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、または障害の改善を目的とした別の特定の療法を補完するために用いられる治療が含まれる。
【0032】
本出願全体を通して、様々な出版物が参照される。それらの刊行物全体の開示は、本出願が属する現況技術をより完全に説明するために、本明細書により、本出願に参照により組み込まれる。開示された参考文献は、また、参考文献が依拠している文で考察される、それらに含有される資料について、本明細書に参照により個別かつ具体的に組み込まれる。
【0033】
B.組成物及び方法
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、血流から離れて腫瘍に移行した免疫細胞である。TILは、がんの治療のために自家養子移植療法(ACT)で使用されてきた。典型的には、TIL療法の臨床的に妥当な用量を製造するために、腫瘍特異的TIL培養の開始及び増殖を成功させるための出発物質として、新たに外科的に切除された腫瘍を使用する。したがって、TIL療法の候補患者は手術に適格である必要がある。患者が手術に適格である場合、腫瘍は切除可能である必要がある。複数の腫瘍解剖学的部位が存在する場合、潜在的なT細胞浸潤を伴う適切な腫瘍部位の切除の熟練した選択を、各患者について行わなければならない。
【0034】
TILの産生を従来技術の方法で開始し得る前に、外科的に切除可能な腫瘍を得る必要がある。TIL培養のための腫瘍の取得(TIL治療における最初のステップ、preREPと呼ばれる)には、外科的手順が必要である。患者にリスクがあるが、組織試料の侵襲的取得は、本開示より前に使用されるプロトコルの最も技術的に要求の高い部分ではない。取得後、先行技術の方法由来の組織試料は、外科的切除物のさらなる切片(すなわち、切除の断片化)を含む培養のための腫瘍の集中的な実験室調製を経なければならない。実際には、TIL数をACTで使用するのに十分に増殖する前に、5~7週間の培養が必要である。これを達成するために、培養条件では、クリーンルームの使用、培養物の分離によるコンフルエンスのチェック、及び細胞の維持にかなりの人員時間が必要となる。広範囲の培養法にもかかわらず、TILはあらゆる外科的切除断片から増殖するのではなく、TILは培養に供された組織断片から移行しない場合がある。
【0035】
当技術分野で採用されている方法の障害を克服するために、出願人らは、組織試料を直接消化してバルクの未精製消化物を作成することにより、腫瘍試料からTIL培養を開始するための信頼できる方法を開発した。さらに、本明細書に開示された方法で、腫瘍の個々の断片が、腫瘍に対する様々な有効性を有する大きく異なるTIL培養物を生み出すことが認識される。この方法により、複数の培養を維持する必要性が無くなり、TILの増殖が速まる。これらの利点により、TILによる治療の適格性が高まる(切除不能な患者の増加が可能になる)。さらに、外科的に切除された腫瘍ではなくコア生検を使用することにより、この方法で、不均一な腫瘍(すなわち、壊死ではなく生存領域)において、高収量の領域の画像誘導サンプリングが可能になる。
【0036】
さらに、先行技術の精製された断片化法は、組織の微小環境に細胞を残し、バルクの未精製の腫瘍断片を消化することにより、in situで細胞構造が除去される。in situの細胞構造のこの除去により、腫瘍反応性TILの形成に有益な共培養相互作用が可能になる。さらに、TILの正確な開始数を決定してもよいが、これは、従来技術で使用される精製断片化法では不可能である。
【0037】
従って、一態様では、増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を迅速に生成する方法であって、対象由来のTILを含む1つ以上の組織試料(限定するものではないが、生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物を含む)を取得することと;1つ以上の組織試料(限定するものではないが、生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切除物)を含む)を、1つ以上のヒトまたはヒト化酵素であって、限定するものではないが、コラゲナーゼ(例えばXIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えばHYLENEX(登録商標))、及び/またはDNAse(例えばPULMOZYME(登録商標))を含む酵素で消化することと;IL-2を含む完全培地中でこの生検由来の細胞を培養することと、を含む方法が、本明細書で開示される。一態様では、この方法は、増殖したTIL細胞を採取することをさらに含んでもよい。一態様では、この消化は、Miltyeniの消化キットを用いて行ってもよい。
【0038】
開示されている方法のpre-REPに使用されるバルクの非精製消化細胞の濃度は、開示されている方法の収量及び有効性に影響を与え得る。一態様では、この方法は、5x106未満の細胞を利用し、例えば、この方法は、1組織培養ウェルあたり、4x106、3x106、2x106、1x106、9x105、8x105、7x105、6x105、5x105、4x105、3x105、2x105、または1x105以下のバルクの未精製消化細胞を使用し得る。
【0039】
IL-2の濃度がTILの増殖を最大にするように調整され得ると理解され、本明細書において考慮される。例えば、TILの培養に使用されるIL-2濃度は、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000IU/mL以上であってもよい。
【0040】
一態様において、増殖したTIL集団を産生する開示された方法は、対象から1つ以上の生検(例えば、経皮的腫瘍試料)を取得することを含む。本明細書で使用される場合、「生検」とは、切除生検、切開生検、コア生検、または細針吸引生検などの組織の任意の部分的な除去を含み得る。生検(例えば、コア針生検を含むコア生検など)から得られたTILを使用することにより、外科手術に適格でない患者及び切除不可能な腫瘍を有する患者に対して、TIL治療が可能になることが理解されかつ本明細書において考慮される。加えて、コア生検(例えば、コア針生検など)は、複数の解剖学的部位からの画像誘導サンプリングを可能にする。
【0041】
生検、特にコア生検が組織試料の供給源として使用される場合、コア生検(例えば、コア針生検など)は、コア生検を取得可能な任意のデバイスを使用して取得され得ることが理解され、本明細書において考慮される(例えば、BARD MAGNUM(登録商標)、BARD MAX-CORE(登録商標)、BARD BIOPTY-CUT(登録商標)、BARD MARQUEE(登録商標)、BARD MISSION(登録商標)、及びBARD MONOPTY(登録商標)(CR Bard,Inc.)などのBard Core Biopsy Instruments及びCarefusionのTemno Biopsy Systemsを参照のこと)。生検を得るための針は、6、8、10、12、14、16、18または20ゲージの針であってよく、針長は、約2cm~約30cm、好ましくは約10cm~約25cm、より好ましくは約16cm~約20cmの長さを有する。例えば、コア生検を得るための針長は、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、11cm、12cm、13cm、14cm、15cm、16cm、17cm、18cm、19cm、20cm、21cm、22cm、23cm、24cm、25cm、26cm、27cm、28cm、29cm、または30cmの長さであってもよい。針の侵入深さは、約15mm~30mm、好適には約20mm~25mmであってよい。例えば、侵入深さは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30mmであってもよい。
【0042】
一態様において、コア生検を使用することにより、腫瘍の特定の領域及び場合によっては複数の領域を標的とする能力が可能になる。一態様では、本明細書に開示する方法は、増殖したTIL集団を迅速に生産する方法であり、この方法はさらに、TIL取得を誘導するためにラジオミクスなどのイメージング技術を使用することを含む。
【0043】
生検(例えば、コア針生検を含むコア生検)及び/または外科的切除物を含むがこれらに限定されない組織試料が得られると、さらなる切片化(すなわち、断片の作製)を必要としないが、直接消化され得るという追加の利点が得られる。一態様では、開示される方法は、組織試料を消化溶液(例えば、コラゲナーゼ(例えば、XIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えば、HYLENEX(登録商標))及び/またはDNAse(例えば、PULMOZYME(登録商標))を含むがこれらに限定されない1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素など)に直接入れることを含んでもよい。
【0044】
当該技術分野で理解されている方法によって使用される培養プロセスでは、バルクの非精製腫瘍消化物からTILを増殖させるのに5~7週間を要する。このことは、TILの養子移入療法を開始するための追加的な時間が、細胞生成物が調製されている間の悪性化の進行に起因する患者へのリスクの増加を表すので、当該技術分野において重要な問題である。さらに、培養に必要な追加時間には、培養の維持及び培地の費用の要件ならびにクリーンルームの維持に対して、追加の人員において病院の追加の資源が必要となる。本方法は、増殖時間を5週間未満に短縮することで、疾患の進行に対して二次的な治療からの患者の消耗が減少する。例えば、TILの増殖された集団を得るために培養することは、1日~5週間(35日)、好ましくは21日(3週間)~5週間(35日)、より好ましくは4週間(28日)~5週間(35日)の間の任意の時間にわたり行ってもよい。例えば、培養時間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35日未満であってもよい。いくつかの態様によれば、pre-REP増殖は、所望の増殖に達したときに、ただし4週間以下で、採取される。したがって、本明細書では、pre-REP培養が1、2、3、4、5、6、7(1週間)、8、9、10、11、12、13、14(2週間)、15、16、17、18、19、20、21(3週間)、22、23、24、25、26、27または28(4週間)日であるTIL増殖法が開示される。pre-REPに続いて、pre-REP TILを凍結し、後で使用してもよい。最後に、新たな、または解凍されたpre-REP TILを、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日間未満で継続され得る迅速増殖プロトコル(REP)に供する。凍結TILを使用する場合には、TILを1~3日間解凍してもよい。いくつかの態様では、解凍されたTILを使用して、かつ解凍されたTILの回収が40×106未満である場合、解凍されたTILの第2の培養を用いて、TILの数を増大し得る。
【0045】
培養中の栄養素の品質を維持し、一切の老廃物を除去するために、リザーバ内の培地の全部または一部を交換してもよいことが理解され本明細書で考慮される。培地の交換は、培地の5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の除去及び交換を含み得る。この培地交換は、当該技術分野で公知の適切な組織培養維持のための任意の許容可能な方法を用いて達成され得る。一態様では、培地交換は、TILの培養中に少なくとも1回行ってもよい。例えば、リザーバ内の培地は、培養期間中、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35回交換されてもよい。すなわち、この培地交換は、培養期間に1回、15日ごとに1回、10日ごとに1回、7日ごとに1回、5日ごとに1回、隔日に1回、または週に約2~3回行ってもよい。
【0046】
本明細書で使用される培養方法は、TILの成長及び増殖に適したIL-2を含む任意の完全な培地を利用してもよく、これには、限定するものではないが、最低必須培地(MEM)、イーグルの最低必須培地(EMEM)、ダルベッコ最低必須培地(DMEM)Medium 199、RPMI 1640、CMRL-1066、BGJb Medium、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)及び血球培地が挙げられる。
【0047】
TILは、細胞培養及びTILの増殖に適した任意のガス透過性リザーバにおいて培養され得る。一態様では、大きな組織培養フラスコは、細胞がコンフルエンシーに達するのに長い時間がかかるので、TILの増殖を遅くし得ることが理解され本明細書で考えられる。一態様では、ガス透過性リザーバは、6(約10cm2表面積/ウェル及び60cm2総表面積)、12(約4cm2表面積/ウェル及び約48cm2総表面積)、24(約2cm2表面積/ウェル及び約48cm2総表面積)、48(約1cm2表面積/ウェル及び約48cm2総表面積)、または96(約0.32cm2表面積/ウェル及び31cm2総表面積)のウェル(例えば、G-Rex24ウェルプレートまたはG-Rex6ウェルプレート(Wilson Wolf製)を含む組織培養プレートであってもよい。いくつかの態様では、プレートはシリコーンコーティングされ得る。
【0048】
増殖されたTIL集団を迅速に生産するための方法の意図は、TILをがんのための養子移植療法において使用することである。新たな方法は、先行のプロセスからいくつかの利点を生じる。第一に、以前は発育不良であった腫瘍サブタイプからのTILの増殖がより成功を収めている。さらに、この方法は、より低いリスク及び低減されたコストで、現在の方法では以前は利用できなかったであろう患者に対して、ACTのためのTILを首尾よく製造する。この新しい方法は、著しく少ない技術介入時間で実施され、TIL生産効率を増大させる。
【0049】
本明細書ではまた、増殖したTIL集団を迅速に生産する方法であって、この増殖したTIL集団を採取することをさらに含む方法も開示される。
【0050】
開示された方法によって生成されたTILは、腫瘍特異的であると共に、preREPとして機能することも理解されかつ本明細書で考慮される。一態様では、本方法は、IFN-γ遊離アッセイ、細胞内IFN-γ染色、ELISA、及び/またはELIspotによってpreREP TILの腫瘍特異性及び活性を検証することをさらに含んでもよい。
【0051】
一旦、増殖されると、開示された増殖されたTIL集団を、がんの処置のために使用してもよい。一態様では、本明細書に開示される方法は、対象におけるがん及び/または転移を治療、低減、阻害及び/または予防する方法であって、開示された方法により産生及び/または増殖された任意のTILを含む、本明細書に開示される迅速に増殖されたTILのいずれかを対象に投与することを含む方法である。換言すれば、本明細書で開示されるのは、一態様では、対象におけるがん及び/または転移を治療、低減、阻害及び/または予防する方法であって、バルクの未精製の腫瘍消化物が由来または取得される1つ以上の組織試料(生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切片を含むがこれらに限定されない)を取得することであって、前記1つ以上の組織試料が対象由来のTILを含む、取得することと;1つ以上の組織試料(限定するものではないが、生検(例えば、コア生検など)及び/または1つ以上の外科的切片を含む)を、コラゲナーゼ(例えば、XIAFLEX(登録商標))、ヒアルロニダーゼ(例えば、HYLENEX(登録商標))、及び/またはDNAse(例えば、PULMOZYME(登録商標))を含むがこれらに限定されない1つ以上のヒト酵素またはヒト化酵素で消化することと;IL-2を含む完全培地中で生検から細胞を培養することと;増殖したTIL細胞を採取することと;増殖したTILを対象に養子移植することとを含む、方法である。
【0052】
開示された方法によって迅速に増殖されたTILを、がん等の制御されない細胞増殖が生じるあらゆる疾患の治療、阻害、低減、及び/または予防に使用し得る。様々な種類のがんの非限定的なリストは、以下のとおりである:癌腫、固形組織の癌、扁平上皮癌、腺癌、肉腫(限定するものではないが、軟組織肉腫(限定するものではないが、異型脂肪腫性腫瘍、高分化脂肪肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫、単発性線維性腫瘍または平滑筋肉腫を含む)及び骨組織肉腫、グリオーム腫、高悪性度グリオーム腫、芽腫、神経芽腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫または肉腫、転移性癌、または一般のがん。
【0053】
開示された組成物が治療するために使用され得る、代表的だが非限定的ながんの一覧は、以下である:肉腫、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、肺癌、例えば、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、及び上皮癌、腎癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌腫、大腸癌、造血癌;精巣癌;結腸直腸癌、前立腺癌、または膵癌である。
【0054】
1.薬学的担体/医薬品の送達
上記のように、TILは、in vivoで薬学的に許容される担体中で投与されてもよい。「薬学的に許容される」とは、生物学的または他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすこともなく、その材料が含有される医薬組成物の他の構成要素のいずれかと有害な形で相互作用することもなく、核酸またはベクターと共に対象に投与されてもよい。担体は、当然、当業者に周知のように、活性成分の任意の分解を最小限にし、対象における任意の有害な副作用を最小化するように、選択されるであろう。
【0055】
組成物は、局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含め、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮、体外、局所などで投与されてもよい。本明細書で使用される場合、「局所鼻腔内投与」は、外鼻孔の一方または両方を介して鼻及び鼻腔に組成物を送達することを意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化による送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴機構による送達により鼻または口を介するものであり得る。挿管により、呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達してもよい。必要な組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、治療されるアレルギー性障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、投与様式などに応じて、対象間で変動するであろう。このように、すべての組成物について正確な量を明記することは可能ではない。しかし、適切な量は、本明細書の教示により日常的な実験のみを使用して、当業者が決定し得る。
【0056】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般に注射を特徴とする。注射可能薬剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液に適する固体形態、またはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製し得る。非経口投与のためのより最近改訂されたアプローチは、一定の投薬量が維持されるように、持続放出または徐放性の系の使用を含む。例えば、米国特許第3,610,795号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0057】
材料は、溶液、懸濁液であってよい(例えば、微粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して特定の細胞型に標的化されてもよい。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化させるためのこの技術の使用の例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)、及びRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」などのビヒクル及び他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸癌への脂質媒介薬物標的化を含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介標的化、リンパ球指向性腫瘍標的化、ならびにin vivoでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化させるためのこの技術の使用の例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989)、及びLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、受容体は、構成的またはリガンド誘導のいずれかの、エンドサイトーシスの経路に関与する。クラスリン被覆ピット中のこれらの受容体クラスターは、クラスリン被覆小胞を介して細胞に入り、酸性化エンドソームを通過し、この中で、受容体が選別され、その後、細胞表面に再循環するか、細胞内に保存されるか、またはリソソーム中で分解される。内在化経路は、様々な機能、例えば、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルス及び毒素の日和見侵入、リガンドの解離及び分解、ならびに受容体レベルの調節、を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体の濃度、リガンドの型、リガンド価数、及びリガンド濃度に応じて、複数の細胞内経路をたどる。
【0058】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することができる。
【0059】
好適な担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載される。通常は、適切な量の薬学的に許容される塩が、製剤を等張にするために製剤に使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、より好ましくは、約7~約7.5である。さらなる担体としては、徐放性調製物、例えば、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子の形態である。これは、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて、ある特定の担体がより好ましくあり得ることが当業者には明らかであろう。
【0060】
医薬担体は、当業者に既知である。これらは、最も一般には、滅菌水、生理食塩水、及び生理学的pHの緩衝液などの溶液を含む、ヒトに薬物を投与するための標準的な担体である。組成物は、筋肉内投与または皮下投与することができる。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0061】
医薬組成物は、選択された分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤などを含んでもよい。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1つ以上の有効成分も含んでもよい。
【0062】
医薬組成物は、局所的または全身的治療が望まれるか否か、及び治療されるべき領域に応じて、いくつかの方法で投与されてもよい。投与は、局所的(眼科的、経膣的、直腸的、鼻腔内を含む)、経口的、吸入による、または非経口的、例えば、静脈内点滴、皮下、腹腔内、または筋肉内注射であってよい。開示の抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮投与することができる。
【0063】
非経口投与用の製剤は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。水性担体は、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、または懸濁液を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油を含む。静脈内ビヒクルは、液体及び栄養素補充剤、電解質補充剤(リンゲルのデキストロースに基づくものなど)などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどの防腐剤及び他の添加剤も存在してもよい。
【0064】
局所投与用の製剤は、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、スプレー剤、液剤、及び散剤を含んでもよい。従来の薬学的担体、水溶液、散剤、または油性基剤、増粘剤などが、必要または望ましい場合がある。
【0065】
経口投与用の組成物は、散剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体中の懸濁剤もしくは液剤、カプセル剤、サシェ、または錠剤を含む。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましい場合がある。
【0066】
組成物のいくつかは、場合により、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸、ならびに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸との反応により、または無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、ならびに有機塩基、例えば、モノ、ジ、トリアルキル及びアリールアミン、ならびに置換エタノールアミンとの反応により形成された、薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩として投与されてもよい。
【0067】
b)治療的用途
組成物を投与するための有効な投薬量及びスケジュールは、経験的に決定されてもよく、そのような決定を行うことは、当該技術分野の技術の範囲内である。組成物の投与のための投薬量の範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生じさせるのに十分なものである。投薬量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の程度、投与経路、または他の薬物が投薬計画に含まれるか否か、により変動することになり、当業者が決定することができる。投薬量は、反対の兆候が少しでもある場合には、個々の医師が調整することができる。投薬量は、変動し得、1日または数日間、1日に1回以上の用量の投与で投与してもよい。所与のクラスの医薬品の適切な投薬量に関するガイダンスは、文献に見出すことができる。例えば、抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、抗体の治療的使用に関する文献に見出すことができる(例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferrone et al.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357、Smith et al.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber et al.,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365-389)。単独で使用される抗体の代表的な1日投薬量は、上記の要因に応じて、1日あたり約1μg/kg体重~最大100mg/kg体重以上の範囲であってよい。
【0068】
2.キット
本明細書に開示されるのは、本明細書に開示の方法を実施する際に使用できる試薬に関するキットである。キットは、本明細書で論じられるか、または開示された方法の実施において、必要であるかまたは有益であると理解されるであろう任意の試薬または試薬の組み合わせを含んでもよい。例えば、キットは、コア生検(例えば、コア針生検など)の採取用の針、コア生検器具、コア生検組織試料を培養するための培地、IL-2、ならびに必要とされるバッファー及び酵素を含み得る。
【実施例】
【0069】
3.実施例
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍内に存在し、腫瘍微小環境(TME)内の一連の腫瘍抑制メカニズムに供される。養子細胞療法(ACT)は、TME抑制を克服するために用いられる戦略であり、腫瘍からTILを培養すること、TIL細胞産物を増殖させること、次いで増殖したTILにIL-2を注入することを含む。TIL培養の古典的な方法は、出発組織源として腫瘍断片を必要とする。歴史的に、TILは黒色腫患者での成功に基づいて腫瘍断片(1mm3)から培養されてきた。ACTを用いた試みが他の固形腫瘍に対して展開されるにつれて、腫瘍特異的反応性を有するTILの培養は、特に肉腫検体においてはあまり成功を収めていない。
【0070】
本研究では、TILの一部は断片化法を用いて腫瘍から移行することができない場合があるので、最初のTIL培養源として腫瘍消化物(例えば、バルクの未精製腫瘍消化物)を利用する代替戦略を検討する。さらに、本明細書に示されているのは、バルクの未精製の腫瘍消化物と比較して、断片から増殖したTILの成長、表現型、及び反応性の間の相違である。ここで本発明者らは、軟組織肉腫由来の断片と比較した、消化物から産生されたTILの増殖成功、リンパ球亜集団の表現型、及び腫瘍特異的反応性を報告する。
【0071】
方法
軟部組織肉腫の患者は、IRB承認プロトコルに同意し、一次腫瘍検体を手術室から新たに入手した。原発腫瘍由来の腫瘍断片(1mm3)を破砕し、6000IU/mLのIL-2を補充した2mLの培地を含む24ウェルプレートの単一ウェルに入れた。過剰な腫瘍組織は、コラゲナーゼ酵素及び機械的破壊を使用して消化した。消化腫瘍細胞(5×105生細胞)を、IL-2(6000IU/ml)を含有する培地を含む48ウェルプレートの単一ウェルに入れた。すべてのTILを30日間培養し、次いで採取した。
【0072】
消化または断片に基づく培養TIL由来のリンパ球表現型(CD3、CD4及びCD8T細胞ならびにCD56 NK細胞)を、培養4週間後にフローサイトメトリーを用いて測定した。
【0073】
結果
7つの肉腫検体を取得した。TILは各検体から増殖し、消化法と断片化法との間の総TIL数の中央値に有意差はなかった(4.3×106対2.7×106、p=0.6250)。各検体についての腫瘍消化物由来のTILの増殖を、
図1に示す。収量中央値3.4×10
7(範囲1.4×10
7-9.2×10
7)及び生存率中央値97%(93%~99%)である。
【0074】
消化の方法論を用いてTILの割合または表現型を決定するために、リンパ球を抗CD3、抗CD4、抗CD8、及び抗CD56抗体で染色し、フローサイトメトリーを用いて測定して、それぞれ総T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びNK細胞の数を決定した(
図2)。
ヒトで使用する消化物を調製し、消化に使用するコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、及び/またはDNAse酵素を、ヒトまたはヒト化酵素(例えばHYLENEX(登録商標)、PULMOZYME(登録商標)、及び/またはXIAFLEX(登録商標))に切り替えた。そうすることで、ヒト酵素(非xeno)が、消化後の生存細胞の総数に驚くべき予想外の有意な改善を示した(
図3)。さらに、ヒト/ヒト化(非xeno)消化を用いた場合、消化生存率が驚くほど向上し、総CD8T細胞が増大した。
【0075】
結論
TILは、軟部組織肉腫腫瘍の消化物から直接増殖することができる。これらは原発性悪性腫瘍の線維化性の高いセットであるので、この方法は、転移性リンパ節以外の供給源に由来するTIL培養にも有効に働き得る。
【0076】
腫瘍消化物から生成されたTIL培養物は、全体数及び表現型提示の点で同等であり、各種の肉腫の亜型にわたって異なるものではないが、個々の違いが存在する。
【0077】
消化から培養したTILは、断片から培養したTILと比較して、腫瘍特異的反応性の確率が高い。
【国際調査報告】