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特表2024-515294低相互結合の小型セルラ/GNSS複合アンテナ
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  • 特表-低相互結合の小型セルラ/GNSS複合アンテナ 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】低相互結合の小型セルラ/GNSS複合アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/28 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
H01Q21/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563255
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 RU2021000170
(87)【国際公開番号】W WO2022225412
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505315742
【氏名又は名称】トプコン ポジショニング システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ビタリエビッチ アスタクホフ
(72)【発明者】
【氏名】パーヴェル ペトロヴィッチ シャマトゥルスキー
(72)【発明者】
【氏名】アントン パブロビッチ ステパネンコ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ニコラエヴィチ エメリアノフ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB02
5J021FA32
5J021GA01
5J021JA03
5J021JA05
(57)【要約】
セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)複合アンテナが提供される。前記セルラ/GNSS複合アンテナは、円の円周によって確定される外部領域および内部領域を備える。さらに、前記セルラ/GNSS複合アンテナは、セルラアンテナとGNSSアンテナとを備える。前記セルラアンテナは、外部領域に配置されたセルラ放射部群を備え、セルラ給電ネットワークに接続されて前記セルラ放射部群を励起させる。GNSSアンテナは、内部領域に配置された放射素子を備え、前記円の略中心に位置する中心を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円の円周によって定義される境界によって画定される外部領域および内部領域と、
前記外部領域に配置されたセルラ放射部群を備え、前記セルラ放射部群が前記セルラ放射部群を励起するためのセルラ給電ネットワークに接続されたセルラアンテナと、
前記内部領域に配置され、前記円の略中心に位置する中心を有する放射素子を備えたGNSSアンテナとを備える、
ことを特徴とする、セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)複合アンテナ。
【請求項2】
前記セルラアンテナはさらに出力ポートを備え、
前記セルラ給電ネットワークの出力ポートが前記セルラアンテナの前記出力ポートとなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項3】
前記セルラ給電ネットワークおよび前記GNSSアンテナの接地面がPCB(プリント回路基板)上に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項4】
前記セルラアンテナの前記セルラ放射部群が、前記GNSSアンテナのバックローブのレベルを低くする、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項5】
前記セルラ放射部群内の各セルラ放射部が、前記円の中心軸に略平行な少なくとも一つの垂直導体と、前記円の前記中心軸に略垂直な少なくとも一つの水平導体とを備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項6】
前記セルラアンテナの前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体と、前記GNSSアンテナの前記放射素子とが、PCB(プリント回路基板)上に配置される、
ことを特徴とする、請求項5に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項7】
前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体の各々が、第一の端部および第二の端部を備え、
前記第一の端部が、前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの垂直導体のうちの対応する一つに接続され、前記第二の端部が絶縁される、
ことを特徴とする、請求項5に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項8】
前記セルラ/GNSS複合アンテナの第一の側が、前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体を備え、
前記セルラ/GNSS複合アンテナの第二の側が、前記GNSSアンテナの接地面を備え、
前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体の各々の前記第一の端部および前記第二の端部が、前記中心軸の周りの前記第一の端部から前記第二の端部への回転が前記セルラ/GNSS複合アンテナの前記第一の側に対し反時計回り方向となるように配置されている、
ことを特徴とする、請求項7に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項9】
前記セルラ放射部群が、前記円の中心軸に対して90度の回転対称で前記円周を囲んで等距離に配置された4つの同一のセルラ放射部を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。
【請求項10】
前記セルラ給電ネットワークが、
それぞれ略同一長の第一のマイクロストリップライン、第二のマイクロストリップライン、第三のマイクロストリップライン、および第四のマイクロストリップラインと、
ウィルキンソン分配器とを備え、
前記第一のマイクロストリップラインの第一の端部が第一のセルラ放射部に接続され、前記第二のマイクロストリップラインの第一の端部が第二のセルラ放射部に接続され、前記第三のマイクロストリップラインの第一の端部が第三のセルラ放射部に接続され、前記第四のマイクロストリップラインの第一の端部が第四のセルラ放射部に接続され、
前記第一のマイクロストリップラインの第二の端部と前記第三のマイクロストリップラインの第二の端部とが第一の接合点で接続され、前記第二のマイクロストリップラインの第二の端部と前記第四のマイクロストリップラインの第二の端部とが第二の接合点で接続され、
前記ウィルキンソン分配器の第一の入力が、前記第一の接合点に接続され、前記ウィルキンソン分配器の第二の入力が、前記第二の接合点に接続され、
前記ウィルキンソン分配器の出力が、前記セルラ給電ネットワークの出力ポートとなっている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のセルラ/GNSS複合アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはアンテナに関し、より具体的には、低相互結合の小型セルラ/全地球航法衛星システム(GNSS)複合アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の高精度測位受信機は、全地球航法衛星システム(GNSS)信号の受信と、セルラネットワークを介した補正の送信との両方を提供している。そのため、受信機には、典型的に、GNSSアンテナだけでなく、例えば、4G/LTE(第四世代Long Term Evolution)規格のセルラアンテナも搭載される。アンテナは、一般的に、全体的なハウジング寸法を低減するように設計されるため、セルラアンテナとGNSSアンテナとが、互いに近接しすぎて配置されることがあり、その結果、セルラアンテナとGNSSアンテナとの間の相互結合が大きくなり、GNSS信号受信中の干渉が増加することがある。
【0003】
近年、GNSSアンテナに比較的近接した位置ではあるが横向きに配置されたセルラアンテナを有するアンテナが提案されている。GNSSアンテナとセルラアンテナとの間のアイソレーションについては、約-10db(デシベル)であることが示されている。このような設計によるセルラアンテナは、その高さがGNSSアンテナの高さを著しく超えるため、このセルラアンテナがGNSSアンテナの放射パターンに悪影響を及ぼす可能性がある。特に、前述のセルラアンテナは、GNSSアンテナの方位角放射パターンの部分的な劣化、GNSSアンテナの対称軸に対する位相中心の大幅なオフセット、およびGNSSアンテナの放射パターンにおける高レベルのバックローブを引き起こす可能性がある。
【0004】
米国特許第10483633号には、積層配置された第一および第二の誘電体基板を含む多機能GNSSアンテナが開示されている。これらの基板は金属化層を含み、GNSSアンテナおよび4Gアンテナの両方の放射素子は、この金属化層を用いて形成されている。セルラアンテナの放射素子は、第一の誘電体板の縁部および側面に配置されている。このような設計において、セルラアンテナはGNSSアンテナの下に配置され、GNSSアンテナの放射パターンに対するセルラアンテナの影響は低減されている。しかし、当該セルラアンテナの放射パターンは、GNSSアンテナの金属化層に衝突することで歪む可能性がある。セルラアンテナの設計はGNSSアンテナの設計に対し対称ではないため、GNSSアンテナがセルラアンテナに与える悪影響は、比較的強くなり得る。GNSSアンテナとセルラアンテナとの間の相互結合を減少させるため、追加のフィルタも提案されているが、これによりアンテナのコストが増加する。
【0005】
受信機のハウジングの横寸法を縮小すると、GNSSアンテナの接地面も減少する。それに応じてGNSSアンテナにおける放射パターンのバックローブのレベルが上昇し、マルチパス受信のため、測位誤差が増大する。特にGNSS帯域の低周波数帯での事例では、波長に対する接地面面積の比率が最小となるため、その傾向が強い。
【0006】
米国特許第10381734号は、放射パッチと接地面とを接続するワイヤのセットにより放射パターンのバックローブが減少するパッチアンテナを開示している。しかしながら、前記ワイヤーはパッチアンテナの周辺領域に位置するため、この周辺領域にセルラアンテナの素子を配置することが難しくなる。さらに、GNSSアンテナのワイヤーとセルラアンテナ素子を近接して配置すると、特に低周波数領域において、セルラアンテナの調整が困難となる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、セルラアンテナとGNSSアンテナとを備えた低相互結合の小型セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)アンテナを提案する。前記セルラアンテナは、放射パターンおよび前記GNSSアンテナの位相中心に歪みのない、対称な方位放射パターンを有する。さらに、小型受信機のハウジング内に配置された場合でも、前記GNSSアンテナのバックローブが低レベルとなる。
【0008】
一実施形態では、セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)の複合アンテナが提供される。前記セルラ/GNSS複合アンテナは、円の円周で定義される境界により画定される外部領域と内部領域から構成される。さらに、前記セルラ/GNSS複合アンテナは、セルラアンテナとGNSSアンテナとを備える。前記セルラアンテナは、外部領域に配置されたセルラ放射部群を備え、セルラ給電ネットワークに接続されて前記セルラ放射部群を励起させる。前記GNSSアンテナは内部領域に配置された複数の放射素子を備え、前記複数の放射素子の中心は円の略中心に位置する。
【0009】
一実施形態では、前記セルラアンテナは、出力ポートをさらに備える。前記セルラ給電ネットワークの出力ポートが、前記セルラアンテナの前記出力ポートとなる。前記GNSSアンテナの前記セルラ給電ネットワークおよび接地面は、PCB(プリント回路基板)上に配置してもよい。
【0010】
一実施形態では、前記セルラアンテナの前記セルラ放射部群は、前記GNSSアンテナのバックローブのレベルを低くする。前記セルラ放射部群中の各セルラ放射部は、前記円の中心軸に対し略平行な少なくとも一つの垂直導体と、前記円の中心軸に対し略垂直な少なくとも一つの水平導体とを備える。前記セルラアンテナの前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体と、前記GNSSアンテナの前記放射素子とが、PCB上に配置される。前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体は、それぞれが第一の端部と第二の端部とを備え、前記第一の端部は、前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの垂直導体のうちの対応する一つに接続され、前記第二の端部は絶縁される。前記セルラ/GNSS複合アンテナの第一の側は、前記セルラ放射部群の少なくとも一つの水平導体を備え、前記セルラ/GNSS複合アンテナの第二の側は、前記GNSSアンテナの接地面を備える。前記セルラ放射部群の前記少なくとも一つの水平導体のそれぞれの第一の端部および第二の端部は、前記中心軸に対する前記第一の端部から前記第二の端部への回転が、前記セルラ/GNSS複合アンテナの前記第一の側に対し反時計回りの方向になるように配置される。
【0011】
一実施形態では、前記セルラ放射部群は、前記円の中心軸に対して90度の回転対称で、前記円周のまわりに等距離に配置された、4つの同一のセルラ放射部を備える。
【0012】
一実施形態において、前記セルラ給電ネットワークは、それぞれが略同一長である第一のマイクロストリップライン、第二のマイクロストリップライン、第三のマイクロストリップライン、および第四のマイクロストリップラインと、ウィルキンソン分配器とを備える。前記第一のマイクロストリップラインの第一の端部は第一のセルラ放射部に接続され、前記第二のマイクロストリップラインの第一の端部は第二のセルラ放射部に接続され、前記第三のマイクロストリップラインの第一の端部は第三のセルラ放射部に接続され、前記第四のマイクロストリップラインの第一の端部は第四のセルラ放射部に接続される。前記第一のマイクロストリップラインの第二の端部と前記第三のマイクロストリップラインの第二の端部とは第一の接合点で互いに接続され、前記第二のマイクロストリップラインの第二の端部と前記第四のマイクロストリップラインの第二の端部とは第二の接合点で互いに接続される。前記ウィルキンソン分配器の第一の入力は前記第一の接合点に接続され、前記ウィルキンソン分配器の第二の入力は前記第二の接合点に接続される。前記ウィルキンソン分配器の出力が、セルラ給電ネットワークの出力ポートとなっている。
【0013】
本発明の前記効果およびその他の効果については、以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、当業者にとって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)複合アンテナの上部等角図を例示的に示す図である。
図1B図1Bは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS複合アンテナの底部等角図を例示的に示す図である。
図2図2は、一以上の実施形態による、セルラアンテナのセルラ給電ネットワークを例示的に示す図である。
図3図3は、一以上の実施形態による、セルラアンテナの別のセルラ給電ネットワークを例示的に示す図である。
図4A図4Aは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS複合アンテナの等角図を例示的に示す図である。
図4B図4Bは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS複合アンテナの側面図を例示的に示す図である。
図4C図4Cは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS複合アンテナの上面図を例示的に示す図である。
図5図5は、一以上の実施形態による、実装されたセルラアンテナとGNSSアンテナとのアイソレーションの依存性を示すグラフである。
図6図6は、一以上の実施形態による、実装されたGNSSアンテナの子午線角に対する放射パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示される実施形態は、低相互結合のセルラアンテナとGNSSアンテナとを備えた小型セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)複合アンテナを提供する。このセルラアンテナは、GNSSアンテナの周りに対称に配置され同相で励起される放射素子の円形アンテナアレイから構成される。これによって、セルラアンテナの対称的な放射パターンと、GNSSアンテナの対称的な放射パターンおよび位相中心の安定性とが保証される。このセルラアンテナは、位相が方位角に依存しない直線偏波を励起する。このGNSSアンテナは、位相が方位角に線形依存する右旋円偏波を励起する。したがって、このセルラアンテナとこのGNSSアンテナとで直交球面高調波が励起され、それゆえに両方のアンテナの位置が相互に近いと、大きなアイソレーションが生じる。本明細書に開示される実施形態は、図面を参照先としてより詳細に説明されており、図面上の同一の参照番号は、同一または類似の要素を表す。
【0016】
図1A図1Bは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS(全地球航法衛星システム)複合アンテナ100を例示的に示す図である。図1Aは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の上部等角図を示し、図1Bは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の下部等角図を示す図である。セルラ/GNSS複合アンテナ100は、セルラアンテナ10と、GNSSアンテナ11とを備える。
【0017】
セルラ/GNSS複合アンテナ100は、円104の円周によって定義される境界によって画定または分離される、外部領域114および内部領域113から構成される。したがって、内部領域113は、円104の円周の内側を範囲とするエリアであり、外部領域114は、円104の円周とセルラ/GNSS複合アンテナ100の外周(すなわち、PCB(プリント回路基板)107の外周)との間を範囲とするエリアである。円104は、半径をRとし、中心軸105を中心とする。
【0018】
セルラアンテナ10は、同一のセルラ放射部101a、101b、101c、および101dがセットとなった円形アンテナアレイと、セルラ給電ネットワーク102とを備える。セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、外部領域114内の円104の円周のまわりに等距離に配置される。したがって、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、中心軸105に対し90度の回転対称性を有する。中心軸105は、GNSSアンテナ11が信号を最大レベルで受信する方向に向いている。
【0019】
セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、その各々が、適切なセルラネットワークにおいてセルラアンテナ10の動作を確実に行うように作られた導電素子のセットを備える。例えば、LTE(long-term evolution)セルラアンテナは、698MHz(メガヘルツ)から960MHzまで、および1427.9MHzから2700MHzまでの周波数帯域で動作する。一実施形態では、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dが備える導電性素子のセットは、その各々が、一以上の垂直導体ピンと、一以上の水平導体とを備える。垂直導体ピンは中心軸105に対して略平行であり、水平導体は中心軸105に対して略垂直である。例えば、図1Aに示すように、セルラ放射部101aは、垂直導体ピン110aと水平導体111aとを備え、セルラ放射部101bは、垂直導体ピン110bと水平導体111bとを備え、セルラ放射部101cは、垂直導体ピン110cと水平導体111cとを備え、セルラ放射部101dは、垂直導体ピン110dと水平導体111dとを備える。水平導体111a、111b、111c、および111dは、PCB108上に配置される。セルラ放射部101a、101b、101c、および101dの導電素子は、例えば、長手方向の軸が中心軸105と一致し、半径が円104の半径と等しい円柱状に曲げられたフレキシブルPCB上に作ることができる。
【0020】
セルラ給電ネットワーク102は、入力ポート109a、109b、109c、および109dと、出力ポートとを備える。各セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、セルラ給電ネットワーク102のそれぞれの入力ポート109a、109b、109c、および109dに接続される。セルラ給電ネットワーク102の出力ポートは、セルラアンテナ10の出力でもあるコネクタ103に接続される。セルラ給電ネットワーク102は、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dの同相励起を行う。
【0021】
GNSSアンテナ11は、GNSS周波数帯のRHCP波(右旋円偏波)を受信するように調整される。例えば、GNSSアンテナ11は、1165MHzから1300MHzまで、および1530MHzから1605MHzまでの周波数帯域で動作してもよい。GNSSアンテナ11は、接地面106と、放射素子112とを備える。放射経路をGNSSアンテナの放射素子とすることもできる。放射素子112は、内部領域113に配置される。したがって、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、GNSSアンテナ11のまわりに対称的に配置される。
【0022】
一実施形態では、接地面106は、PCB107の金属化層であってもよい。本実施形態では、セルラ給電ネットワーク102は、PCB107の別の金属化層内に配置することができる。例えば、図1Bは、PCB107の下部金属化層上にセルラ給電ネットワーク102が配置されたセルラ/GNSS複合アンテナ100の一実施形態を示し、図4Aは、PCB107の上部金属化層上にセルラ給電ネットワーク102が配置されたセルラ/GNSS複合アンテナ100の一実施形態を示す。
【0023】
GNSSアンテナ11は出力コネクタ108を備え、出力コネクタ108はPCB107上に配置されてもよい。GNSSアンテナ11の中心は、円104の中心を通る中心軸105に位置する。セルラアンテナ10のセルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、このように、GNSSアンテナ11の周りに対称的に配置される。
【0024】
図2は、一以上の実施形態による、セルラアンテナのセルラ給電ネットワーク200を例示的に示す図である。一実施形態では、セルラ給電ネットワーク200は、図1のセルラ/GNSS複合アンテナ100のセルラアンテナ10のセルラ給電ネットワーク102である。セルラ給電ネットワーク200は、ウィルキンソン分配器202、203、および204を備える。ウイルキンソン分配器202および203の入力ポートは、それぞれ入力ポート109а、109b、109с、および109dに接続されており、この接続には、同一長のマイクロストリップライン201a、201b、201c、および201dを用いる。ウィルキンソン分配器202および203の出力ポートは、同一長のマイクロストリップライン205および206を用いてウィルキンソン分配器204の入力ポートに接続される。ウィルキンソン分配器204の出力ポートは、コネクタ103に接続される。このようにして、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dの同相励起が行われる。セルラ給電ネットワーク200の欠点の一つは、GNSSアンテナ11の大幅な損失に寄与することである。GNSSアンテナ11は円偏波信号を受信するように調整されているため、GNSSアンテナ11によって入力ポート109а、109b、109с、および109dに誘起された波は90度の位相差を有し、バラスト抵抗207および208を介して電流が流れてGNSS信号電力の一部損失を引き起こす。
【0025】
図3は、一以上の実施形態による、セルラアンテナのセルラ給電ネットワーク300を例示的に示す図である。一実施形態では、セルラ給電ネットワーク300は、図1のセルラ/GNSS複合アンテナ100のセルラアンテナ10のセルラ給電ネットワーク102となっている。セルラ給電ネットワーク300によって、セルラ放射部101a、101b、101c、および101dは同相で励起され、GNSS信号の損失は生じない。図3に示すように、セルラ給電ネットワーク300は、同一長の4つのマイクロストリップライン308a、308b、308c、および308dを備える。マイクロストリップライン308aおよび308cは、それぞれ入力ポート109aおよび109сに接続され、マイクロストリップライン311は、ウイルキンソン分配器310の第一の入力に接続される。マイクロストリップライン308a、308c、および311は、接合点301で互いに接続される。同様に、マイクロストリップライン308bおよび308dは、それぞれが入力ポート109bおよび109dに接続され、マイクロストリップライン309は、ウィルキンソン分配器310の第二の入力に接続される。マイクロストリップライン308b、308d、および309は、接合点302で互いに接続される。ウィルキンソン分配器310の出力ポートは、コネクタ103に接続される。マイクロストリップライン308は、マイクロストリップライン308bと308cとが交差するはずの地点で断線しており、この断線部に、動作周波数帯域における短絡インピーダンスに近いインピーダンスを有するキャパシタ303が接続されている。
【0026】
ポート109aおよび109сは、中心軸105(図3では、ページを貫通する形で示されている)に対して互いに180度回転した位置にあるため、GNSSアンテナ11が誘起する波は、逆位相となる。さらに、ライン308aおよび308cは同一長のため、GNSSアンテナ11が誘起するこれらの波もまた、接合点301において逆位相となり、接合点301で波の減衰が生じる。したがって、GNSSアンテナ11が誘起する波は、ライン311に供給されない。同様に、入力ポート109bおよび109dは、中心軸105に対して互いに180度回転した位置にあるため、GNSSアンテナ11が誘起する波は、逆位相となる。ライン308bおよび308dは同一長のため、GNSSアンテナ11が誘起するこれらの波もまた、接合点302において逆位相となり、接合点302で波の減衰が生じる。したがって、GNSSアンテナ11が誘起する波は、ライン309に供給されない。このため、GNSSアンテナ11からの電流は、ウィルキンソン分配器310のバラスト抵抗器304には誘導されず、セルラ給電ネットワーク102は、GNSSアンテナ11での損失には寄与しない。
【0027】
セルラアンテナ10を整合させるために、リアクタンス性インピーダンスを有する整合素子305a、305b、305c、および305dは、それぞれ、マイクロストリップライン308a、308b、308c、および308dと直列に接続できる。例えば、整合素子305a、305b、305c、および305dは、インダクタであってもよい。リアクタンス性インピーダンスを有する整合素子306および307は、それぞれ、マイクロストリップライン311および309と直列に接続することもできる。例えば、整合素子306および307は、キャパシタであってもよい。
【0028】
図4A図4Cは、一以上の実施形態による、セルラ/GNSS複合アンテナ100を例示的に示す図である。図4Aは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の等角図を示し、図4Bは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の側面図を示し、図4Cは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の上面図を示す。
【0029】
図4A図4Cに示されるセルラ/GNSS複合アンテナ100の実施の形態では、GNSSアンテナ11の放射素子112と、セルラアンテナ10の水平導体111a、111b、111c、および111dとは、同一のPCB401上に配置される。PCB401は、境界線402によって分離または画定される、内部領域403および外部領域404を備える。したがって、内部領域403は境界線402の内側を範囲とし、外部領域404は境界線402とPCB401の外周との間を範囲とする。GNSSアンテナ11の放射素子112は、PCB401の内部領域403に配置される。セルラアンテナ10の水平導体111a、111b、111c、および111dは、PCB401の外部領域404に配置される。GNSSアンテナ11のLNA(低雑音増幅器)は、PCB107またはPCB401上に配置することができる。
【0030】
セルラアンテナ10のセルラ放射部101a、101b、101c、および101dは、GNSSアンテナ11のバックローブのレベルを低減するように構成されている。水平導体111a、111b、111c、111dの全長L(図4Cに、セルラ放射部101aについて例示的に示す)、および垂直導体110a、110b、110c、110dの高さH(図4Bに例示的に示す)は、セルラネットワーク周波数帯におけるセルラアンテナ10の整合、およびGNSSアンテナ11のバックローブのレベル低減が確実となるようなものを選択することができる。一実施形態では、高さHは15~40mm(ミリメートル)の間であり、長さLは50~70mmの間である。
【0031】
セルラ放射部101a、101b、101c、および101dそれぞれの水平導体111a、111b、111c、および111dそれぞれは、第一の端部および第二の端部を備える。図4Cは、一例として水平導体111aを例示的に示す。水平導体111aの第一の端部403aは、対応する垂直導体110aに接続され、また水平導体111aの第二の端部404aは、絶縁される。GNSSアンテナ11のバックローブのレベルを低減するため、第一の端部403aおよび第二の端部404aは、図4Cに示すとおり、中心軸105を中心として第一の端部403aから第二の端部404aへ最小角度で回転したときに、上面図に対し反時計回りとなるように配置される。同様に、水平導体111b、111c、および111dは、それぞれ第一の端部および第二の端部を備え、これら第1の端部および第2の端部は、中心軸105を中心として第一の端部から第二の端部へ最小角度で回転したときに、上面図に対し反時計回りとなるように配置される。セルラ放射部101a、101b、101c、および101dの水平導体111a、111b、111c、および111dは、セルラ/GNSS複合アンテナ100の第一の(例えば、上部)側に配置され、接地面106は、セルラ/GNSS複合アンテナ100の第二の(例えば、下部)側にあるPCB107上に配置される。
【0032】
図5および図6は、図4A~4Cに示す実施形態に従って実装されたセルラ/GNSS複合アンテナ100の実験結果を示す。アンテナパラメータは、高さH=27mm、長さL=65mmとした。セルラ給電ネットワーク102は、図3に示される実施形態に従って実装し、インダクタは、8nH(nanny Henry)のインダクタとした。
【0033】
図5は、実装されたセルラアンテナとGNSSアンテナとのアイソレーションの依存性を示すグラフ500を示している。曲線501は、セルラ給電ネットワーク102がセルラ放射部101a、101b、101c、および101dに接続された事例に相当する。なお、アイソレーションは、680~2500MHzの周波数帯域において約-30db以下である。曲線502は、セルラ給電ネットワーク102がセルラ放射部101a、101b、101c、および101dに接続されなかった場合の、セルラ放射部のうちの一つである101аとGNSSアンテナ11との間のアイソレーションを示す。これにより、アイソレーションの値は約-15dbであることがわかる。したがって、本明細書に開示された実施形態によるセルラ給電ネットワーク102の使用によって、セルラアンテナ10とGNSSアンテナ11との間のアイソレーションが改善される。
【0034】
図6は、GNSSアンテナの放射パターン(dB単位)に対する、子午面角度(度単位)のグラフ600を示している。曲線601は、セルラアンテナの水平導体111a、111b、111c、および111dを、図4Cに示される実施形態に従った方向に向けた事例に相当する。本実施形態では、水平導体111aの第一の端部403aおよび第二の端部404aは、中心軸105を中心として第一の端部403aから第二の端部404aへ最小角度で回転したときに、上面図に対し反時計回りとなるように配置されている。上述のとおり、第一の端部403aは垂直導体110aに接続され、第二の端部404aは絶縁されている。水平導体111b、111c、および111dも、同様に配置されている。曲線602は別の事例に相当し、この事例においてセルラアンテナ10の水平導体111a、111b、111c、111dは、前記事例とは異なった方向へ向いている。特に、水平導体111aの第一の端部403aおよび第二の端部404aは、中心軸105を中心として第一の端部403aから第二の端部404aへ最小角度で回転したときに、上面図に対し時計回りとなるように配置される。これによって、セルラアンテナ10の水平導体111a、111b、111c、および111dを図4Cに示される実施形態に従った方向に向けた場合には、-16dbのバックローブレベルが生じるが、水平導体111a、111b、111c、および111dを別の方向に向けた場合には、バックローブのレベルが著しく悪化し、-5dbとなることがわかる。
【0035】
本明細書は、あらゆる点において説明と例示のためのものであり、本発明を限定するものではなく、また、本明細書に開示されている本発明の範囲は、本明細書から決定されるべきものではなく、特許請求の範囲を特許法により許される最大範囲に従って解釈し決定されるべきものである。本明細書に記載および説明された実施の形態は、本発明の原理を例示するものにすぎず、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者が種々の変更を実施し得ることを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な他の特徴の組み合わせを実施することが可能であろう。

図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【国際調査報告】