(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】多成分乳房インプラント
(51)【国際特許分類】
A61L 27/52 20060101AFI20240401BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240401BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61L27/52
A61L27/56
A61L27/44
A61L27/58
A61L27/18
A61L27/16
A61L27/36 100
A61L27/38
A61L27/24
A61L27/20
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563834
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022024954
(87)【国際公開番号】W WO2022225798
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512315555
【氏名又は名称】テファ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リメム,スカンダー
(72)【発明者】
【氏名】サリブラヒモグル,ケマル
(72)【発明者】
【氏名】バトラー,ティモシー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,サイモン,エフ.
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB38
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB06
4C081BB07
4C081BB08
4C081CA021
4C081CA051
4C081CA161
4C081CA171
4C081CA181
4C081CD08
4C081CD12
4C081CD34
4C081DA04
4C081DA05
4C081DA06
4C081DA11
4C081DA12
4C081DA16
4C081DB03
(57)【要約】
吸収性インプラントが、患者の乳房に再生組織でボリューム及び形状を生み出すために使用され得る。インプラントは、開放セル構造を備える耐荷重吸収性マクロ多孔質ネットワークを含む補強マトリクスを含み、インプラントの表面からインプラントのコアの方へ向かって漸進的に分解する1種以上の分解性ヒドロゲル又は水溶性ポリマーで少なくとも部分的に満たされ、及び同じ方向に組織の内方成長を方向付ける、一時的なものである。ヒドロゲル及び水溶性ポリマーは、組織の内方成長の前の、インプラント内での流体滞留を防止するのを助ける。マクロ多孔質ネットワークは、組織の内方成長が発生した後に吸収され、耐荷重支持体はもはや必要なくなる。インプラントは、例えば、乳房切除術後又は乳房固定処置中に乳房組織を再生する又は増加させるために、形成外科的処置に使用するのに特に好適であり、これらの処置における永久乳房インプラントの使用への代替物を提供し得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強マトリクスを含む乳房インプラントであって、前記インプラントは、表面、コア、患者の胸壁に配置するための後側区域、前記後側区域に対向する前側区域を含み、前記前側区域は、乳房の下極内に配置するための前側底部、前記乳房の上極内に配置するための前側上部、及び前記患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域を含み、及び前記補強マトリクスは、1種以上の分解性ヒドロゲル、分解性水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせで少なくとも部分的に満たされる開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む、乳房インプラント。
【請求項2】
前記補強マトリクスは、第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲルを含み、前記第2のヒドロゲルが前記第1のヒドロゲルを取り囲むか、又は前記補強マトリクスは、第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーを含み、前記第2の水溶性ポリマーが前記第1の水溶性ポリマーを取り囲むか、又は前記補強マトリクスは、第1のヒドロゲル及び第2の水溶性ポリマーを含み、前記第1のヒドロゲルが前記第2の水溶性ポリマーを取り囲むか若しくは前記第2の水溶性ポリマーが前記第1のヒドロゲルを取り囲む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記補強マトリクスは、第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲルを含み、前記第2のヒドロゲルが、生体内で前記第1のヒドロゲルよりも速く分解するか、又は前記補強マトリクスは、第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーを含み、前記第2の水溶性ポリマーが、生体内で前記第1の水溶性ポリマーよりも速く分解するか、又は前記補強マトリクスは、第1のヒドロゲル及び第2の水溶性ポリマーを含み、前記第1のヒドロゲル及び第2の水溶性ポリマーの一方が、前記第1のヒドロゲル及び前記第2の水溶性ポリマーの他方よりも速く分解する、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記補強マトリクスは、第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲルを含み、前記インプラントはさらに第3のヒドロゲルを含み、前記第2のヒドロゲルは、前記第3のヒドロゲルによって取り囲まれ、前記第3のヒドロゲルは、生体内で前記第2のヒドロゲルよりも速く分解する、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、以下の特性:30%の歪みで少なくとも0.1kgfの圧縮強度、5~15%の歪みで0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率、及び0.3~100kPaの損失弾性率のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記インプラントは、涙の滴形状、解剖学的な形状、丸みを帯びた形状、ドーム様形状を有するか、又は前記インプラントの前記前側底部は凸状外面を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記インプラントは、さらに、前記インプラント中へ組織を挿入するための開口部を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記インプラントは、さらに、前記補強マトリクスを囲む外殻を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントは、さらに、前記乳房内で前記インプラントを固定するために、1つ以上のアンカー、ファスナー又はタブを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、分解性であるか、又は1種以上の吸収性ポリマーを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記1種以上の吸収性ポリマーは、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びアジピン酸からなる群から選択された1種以上のモノマーを含むか、又はそれから作製されるか、或いは前記ポリマー組成物は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む、請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、フィラメント、繊維、ストラット、テキスタイル、不織、発泡体、積層体、又は相分離若しくは粒子浸出された構造を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記フィラメント、繊維又はストラットは、以下の特性:引張強度25MPa超、引張弾性率300MPa未満、破断点伸び100%超、溶融温度60℃以上、ガラス転移温度0℃未満、平均直径又は幅10μm~5mm、破断荷重0.1~200N、及び弾性率0.05~1,000MPaのうちの1つを有する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
耐荷重マイクロ多孔質ネットワークは吸収性である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記分解性ヒドロゲルのうちの1種以上又は前記水溶性ポリマーのうちの1種以上は、開放セル構造を備える前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークよりも速く分解する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項16】
開放セル構造を備える前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークは単位セルを含み、前記単位セルは、以下の形状:(i)四面体、直方体、五面体、六面体、七面体、八面体、二十面体、十面体、十二面体、十四面体、並びに角柱、反角柱、及びその先端を切り取った多面体;(ii)長尺状の多面体、(iii)4、6、8、12又は20面を備える形状;並びに(iv)菱形十二面体、のうちの1つ以上から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項17】
前記インプラントは、さらに、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌薬、抗生物質、生体活性作用物質、及び診断機器を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項18】
請求項1に記載の乳房インプラントの製造方法であって、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークが、ポリマー組成物を3D印刷することによって、フィラメントのマクロ多孔質ネットワークを形成することにより、製造される、方法。
【請求項19】
前記マクロ多孔質ネットワークは単位セルを含み、前記単位セルは、以下の形状:(i)四面体、直方体、五面体、六面体、七面体、八面体、二十面体、十面体、十二面体、十四面体、並びに角柱、反角柱、及びその先端を切り取った多面体;(ii)長尺状の多面体、(iii)4、6、8、12又は20面を備える形状;並びに(iv)菱形十二面体、のうちの1つ以上から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、さらに、前記マクロ多孔質ネットワークに第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーの少なくとも一方を入れることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、さらに、前記マクロ多孔質ネットワークに第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの少なくとも一方を入れて、前記第2のヒドロゲル又は前記第2の水溶性ポリマーが前記第1のヒドロゲル又は前記第1の水溶性ポリマーを取り囲むようにすること、及び任意選択的に、前記マクロ多孔質ネットワークに第3のヒドロゲル又は第3の水溶性ポリマーの少なくとも一方を入れて、前記第3のヒドロゲル又は前記第3の水溶性ポリマーが前記第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを取り囲むようにすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フィラメントの前記マクロ多孔質ネットワークは、押出ベースの積層造形、選択的レーザ溶融、熱溶解積層法、熱溶解フィラメント製法、溶融押出堆積、凝固浴を使用するポリマースラリー又は溶液の印刷、並びに結合溶液及びポリマー粉末の顆粒を使用する印刷によって形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記インプラントは、2つ以上のプリントヘッドを備える3Dプリンターを使用して形成され、開放セル構造を備える前記耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、ポリマー組成物から前記ネットワークを印刷するために第1のプリントヘッドを使用することによって形成され、及び第2のプリントヘッドが、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーの少なくとも一方を、前記マクロ多孔質ネットワーク内に位置するように、印刷するために使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記3Dプリンターは第3のプリントヘッドを含み、前記第3のプリントヘッドは、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの少なくとも一方を、前記マクロ多孔質ネットワーク内に、前記第1のヒドロゲル又は前記第1の水溶性ポリマーを取り囲むように、印刷するために使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記インプラントは、前記第1及び第2のヒドロゲル又は第1及び第2の水溶性ポリマーを印刷するために、溶液ベース又はスラリーベースの印刷を使用して形成される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記マクロ多孔質ネットワークは、以下の特性:30%の歪みで少なくとも0.1kgfの圧縮強度、5~15%の歪みで0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率、及び0.3~100kPaの損失弾性率、のうちの1つ以上を有する、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載のインプラントを乳房に移植する方法であって:(i)患者の乳房組織にアクセスするために、少なくとも1か所に切開部を作るステップ、(ii)胸部の乳房の膨らみから皮膚及び皮下筋膜を分離するステップ、(iii)腺下、胸筋下、又は筋膜下に前記インプラントを位置決めするステップ、(iv)すぐ近くの組織に前記インプラントを固定するステップ、及び(v)前記乳房の前記切開部を閉じるステップを含む、方法。
【請求項28】
さらに、以下:自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質、及び生体活性作用物質のうちの1種以上を、前記患者の体内への前記インプラントの移植前又は前記患者の体内への前記インプラントの移植後のいずれかの1回以上の機会に、前記インプラント中にコーティング又は注入することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
さらに、前記インプラントに血管茎又は他の組織塊を挿入することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
本明細書で説明するような補強マクロ多孔質ネットワークを含むインプラント。
【請求項31】
本明細書で説明するようなマクロ多孔質補強ネットワークを含むインプラントを製造する方法。
【請求項32】
複数の相互接続された空隙を規定する補強マクロ多孔質ネットワーク;及び組織が内部で増殖するまで、第1の組の空隙を一時的に占めるように適合された第1の組の犠牲空隙占有体を含み、前記第1の組の犠牲空隙占有体は、ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つで形成される、乳房インプラント。
【請求項33】
さらに、前記第1の組の空隙を取り囲むように配置された第2の組の空隙、及び組織が内部で増殖するまで、前記第2の組の空隙を一時的に占めるように適合された第2の組の犠牲空隙占有体を含み、前記第2の組の空隙占有体は前記第1の組の空隙占有体に先立って吸収可能である、請求項32に記載の乳房インプラント。
【請求項34】
前記第1の組の犠牲空隙占有体は第1のヒドロゲルである、請求項33に記載の乳房インプラント。
【請求項35】
前記第1及び第2の組の犠牲空隙占有体、並びにマクロ多孔質ネットワークは、一緒に、3D印刷によって前記インプラントを形成するように、製作及び配置される、請求項34に記載の乳房インプラント。
【請求項36】
前記第2の組の犠牲空隙占有体は第2のヒドロゲルである、請求項34に記載の乳房インプラント。
【請求項37】
前記第2の組の犠牲空隙占有体は、前記第1の組の空隙占有体の前に吸収され、前記マクロ多孔質ネットワークは、前記第1の組の空隙占有体が分解された後で、完全に分解する、請求項36に記載の乳房インプラント。
【請求項38】
第1の組の空隙占有体は、前記乳房内への移植から一年以内に吸収される、請求項37に記載の乳房インプラント。
【請求項39】
請求項1に記載のインプラントを乳房内に移植する方法であって、ファンネルを通して前記乳房中へ前記インプラントを送達することを含む、方法。
【請求項40】
補強マトリクスを含む乳房インプラントであって、前記インプラントは、表面、コア、患者の胸壁に配置するための後側区域、前記後側区域に対向する前側区域を含み、前記前側区域は、乳房の下極内に配置するための前側底部、前記乳房の上極内に配置するための前側上部、及び前記患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域を含み、前記補強マトリクスは、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含み、前記補強マトリクスは、少なくとも第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマー、及び少なくとも第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを含み、前記第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、前記インプラントの前記後側区域を除いて、前記第1のヒドロゲル又は前記水溶性ポリマーを取り囲む、乳房インプラント。
【請求項41】
前記第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーは第1のヒドロゲルを含み、前記第2のヒドロゲル又は水溶性ポリマーは第2の水溶性ポリマーを含む、請求項40に記載の乳房インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は、概して、乳房組織に置き換わるために好適な、1種以上のヒドロゲル、1種以上の水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせにより少なくとも部分的に満たされた耐荷重補強マクロ多孔質ネットワークを備える三次元インプラントに関する。より詳細には、インプラントは好ましくは吸収性であり、及び1種以上のヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み、これらは分解して組織の内方成長を許し、及び組織の内方成長中の流体の滞留を最小限にする。インプラントは、乳房への移植時に軟組織に置き換わるか又は軟組織の体積を増加させるように設計される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 乳房切除術後の乳房再建は、患者に美的及び心理社会的双方の恩恵をもたらす、外科手術による乳癌の治療に欠くことのできない重要な部分になってきている。米国では、現在、乳房再建処置の65%近くが組織拡張器を使用して、処置の第1のステップにおいて永久乳房インプラント用のポケットを作り出している。一部の患者では、組織拡張器を使用せずに、乳房インプラント用のポケットが形成され得る。ひとたびポケットが作り出されたら、第2のステップにおいて組織拡張器は除去されて、永久乳房インプラントに置き換えられる。
【0003】
[0003] 乳房インプラントは、乳房のサイズを大きくするために、豊胸処置及び乳房固定処置においても使用できる。後者の処置では、乳房リフトが豊胸手術と組み合わせられる。最も一般的には、乳房インプラントは乳房組織の下にあるポケット内に配置されるが、場合によっては胸壁の下に移植される。
【0004】
[0004] 乳房インプラントは、寸法、形状、及び表面テクスチャーが異なっている。多種多様の異なる寸法が利用可能であり、外科医及び患者が、ある範囲の隆起、高さ、幅及び全体的なボリュームから選択できるようにしている。形状の点では、丸みを帯びたインプラント及び解剖学的な形状にされたインプラントがあり、インプラントの表面は、滑らかであっても、マイクロテクスチャー加工されていても、又はマクロテクスチャー加工されていてもよい。一般的に、丸みを帯びたインプラントは滑らかな表面を有するが、解剖学的な形状にされたインプラントは、窪みのあるマイクロ-又はマクロ-テクスチャー加工面を有する。
【0005】
[0005] 乳房再建及び豊胸を考えているが、乳房に永久乳房インプラントを配置することには躊躇がある患者が増え続けている。これは、特に、乳房切除術を受けて、現在乳房再建を考えている女性の場合がそうである。これらの患者の一部は、乳房に永久的に異物が配置されることを望まず、永久乳房インプラントによって発症し得る合併症のリスクを冒すことを望まない。合併症は、再手術を必要とする被膜収縮、インプラントの破裂又は収縮、未分化大細胞リンパ腫(ALCL:anaplastic large cell lymphoma)の発症、感染、及び乳房の非対称性を引き起こすインプラントの動きのリスクを含む。
【0006】
[0006] Hutmacherによる国際公開第2016/038083号には、細胞及び/又は組織移植のための空隙空間(void spaces)を備える、血管予形成結合組織の発生のための空隙(void)システムを含む、足場構造を含む組織再建用のインプラントが開示されている。Hutmacherの要約書を参照されたい。
【0007】
[0007] Rehnkeによる米国特許出願公開第2018/0206978号には、豊胸患者に使用され得る、プリーツのある足場から製作された内部ブラジャー機器が開示されている。
【0008】
[0008] Danzeによる国際公開第2018/078489号には、軟組織に置き換わるための及び/又は軟組織の体積を増加させるためのインプラントを形成するために、対象者の体に移植される機器が開示されており、機器は、三次元フレームを含み、前記フレーム内に内部空間を画成するタイプである。フレームは、一般に、生体吸収性であり、及び血管茎を挿入するための横断通路を形成する2つのサイドアパーチャを含む;機器は、さらに、前記フレームの内部空間内で互いに積み重ねられ得る少なくとも2枚の生体吸収性テキスタイルシートを含む。Danzeの要約書を参照されたい。
【0009】
[0009] Limemによる米国特許出願公開第2020/0375726号には、乳房再建に使用するのに好適な単位セルから形成されたインプラントが開示されている。
【0010】
[0010] Toro Estrellaによる国際公開第2019/217335号には、複数の接続された単位セルを含む生体足場構造が開示されており、ここでは、各単位セルは、内部体積部に接続される少なくとも1つの開口部を含む。
【0011】
[0011] Morrisonによる国際公開第2004/052768号には、チャンバーで囲まれ及びドナーに移植される血管茎を用いて血管化組織を生み出す方法が開示されている。移植に好適な血管化組織移植片、及び血管化組織移植片を使用する組織欠損の修復方法。
【0012】
[0012] Chhayaによる国際公開第2019/043950号には、バルク多孔度が少なくとも50%の、可逆的に圧縮可能な多孔質三次元格子構造を形成するように配置された複数の単位セルを含む軟組織再建用のインプラントが開示されている。
【0013】
[0013] Zhou et al.“Tuning the mechanics of 3D-printed scaffolds by crystal lattice-like structural design for breast tissue engineering”,Biofabrication,12(2020)015023には、ポリウレタンを使用して作製された、積層造形された乳房足場が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0014] 上記にも関わらず、移植時に、特定の望ましい見た目の新しい乳房組織を発生させ得る改良型の乳房インプラントに対するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
[0015] 本明細書で説明する乳房インプラントは、特に乳房切除術後に乳房を再建する、乳房の見た目を良くする、乳房のサイズを大きくする、失われた又は欠落した乳房組織を再建する、乳房の組織構造を強化する、乳房の軟組織体積を増加させる、乳房の軟組織の自然な感触を回復する、並びに乳房の組織の再生、修復、及び再建を支援するために生物学的及び合成材料を送達することにおいて、外科医を支援する。
【0016】
[0016] 乳房インプラントは、表面、コア、後側区域、及び後側区域に対向する前側区域を備えて構成される。インプラントの後側区域は、患者の乳房内で、胸壁に又はその近くに配置されるように設計される。前側区域は、乳房の下極内に配置するための前側底部、乳房の上極内に配置するための前側上部、及び患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域を含む。実施形態では、乳房インプラントは、インプラントの後側区域と前側区域との間に規定される軸によって規定される長手方向軸を有する。
【0017】
[0017] 実施形態では、乳房インプラントは補強マトリクスを含む。実施形態では、補強マトリクスは、1種以上の分解性ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせで少なくとも部分的に満たされる開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む。実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークの圧縮強度は、30%の歪みで少なくとも0.1kgfである。実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークの圧縮弾性率(compressive modulus)は、5~15%の歪みで0.1kPa~10MPaである。実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークの損失弾性率は、0.3~100kPaである。実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、繊維、フィラメント、3D印刷線、又はストラットを含む。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは吸収性である。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、生体内で、予測可能な分解速度、及び予測可能な強度保持率を有する。実施形態では、補強マトリクスは、分解性耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む。実施形態では、インプラントの1種以上の分解性ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせは、吸収性耐荷重マクロ多孔質ネットワークの前に分解する。
【0018】
[0018] 実施形態では、乳房インプラントは、組織の内方成長のための一時的な足場を提供する。移植後、インプラントは、結合組織及び血管が漸進的に入り込み、及び乳房に十分に組み込まれるように設計される。乳房インプラントは、移植後の流体の滞留を最小限にし、これは、空隙体積が大きいインプラントが乳房に移植されるときに発生し得る。移植されると、インプラントの少なくとも一部を満たす1種以上の分解性ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせは、次第に分解して、インプラントの空隙空間に著しい流体の滞留がない状態で、組織の内方成長を可能にする。空隙空間内の流体の滞留は、組織の内方成長前に1種以上のヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせが存在することによって、最小限にされる。好ましくは、ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせ、インプラントの構造は、インプラントの表面からインプラントのコアの方へ向かって漸進的に分解し、組織の内方成長は、インプラントの表面からコアの方へ向かって同じ方向に進む。ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせの分解は、好ましくは、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの分解に先立ち、ひとたびヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせが分解したら、耐荷重マクロ多孔質ネットワークが、組織の内方成長のための足場及び構造支持体を提供することを可能にする。
【0019】
[0019] 実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、移植部位における乳房の形状をインプラントから新しい組織へ移行させることを可能にするのに十分な期間、強度を保持する。インプラントは、患者の組織の再造形を管理するために、長期間、その形状を維持する必要がある。インプラントは、好ましくは、インプラントから新しい組織へ支持が移行されるまで、乳房を支持する。好ましくは、この移行期間に、乳房の形状のための支持を失わないか、又は支持の喪失は最小限に発生する。乳房インプラントの形状は、長期間、維持されて、組織の内方成長をインプラント中へ方向付け、及び所望の乳房形状を生み出す。
【0020】
[0020] 実施形態では、乳房インプラントは、好ましくは分解速度が異なるヒドロゲル及び水溶性ポリマーから選択された、2種以上の分解性ポリマーを含む。ある実施形態では、乳房インプラントは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーの少なくとも一方、及び第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの少なくとも一方を含み、及び第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを取り囲む。第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの分解速度は、好ましくは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーの分解速度よりも速い。第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの分解によって、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの一部分を露出させて、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーが占めていたインプラントの体積部中への組織の内方成長を可能にする。それと同時に、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーが占めていた体積部での流体の滞留は、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーがインプラント中に継続的に存在することによって、防止される。実施形態では、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーは、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーの分解後に分解し、及び第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーが占めていた体積部中への組織の内方成長を可能にする。ヒドロゲル及び/又は水溶性ポリマーの双方の完全な分解は、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク全体への組織の内方成長、及びインプラント全体にわたる新しい乳房組織の形成を可能にする。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、一時的なものであり、及び組織の内方成長後に完全に分解されて、構造支持体がもはや必要とされなくなる。
【0021】
[0021] 実施形態では、乳房インプラントは、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク、第1の水溶性ポリマー、及び第2の水溶性ポリマーを含み、ここで、第2の水溶性ポリマーは第1の水溶性ポリマーを取り囲む。第2の水溶性ポリマーの分解速度は、好ましくは、第1の水溶性ポリマーの分解速度よりも速い。
【0022】
[0022] 実施形態では、乳房インプラントは、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク、ヒドロゲル、及び水溶性ポリマーを含む。実施形態では、水溶性ポリマーは、ヒドロゲルが分解するよりも速く分解し、及び水溶性ポリマーはヒドロゲルを取り囲む。実施形態では、ヒドロゲルは、水溶性ポリマーが分解するよりも速く分解し、及びヒドロゲルは水溶性ポリマーを取り囲む。
【0023】
[0023] 実施形態では、乳房インプラントは、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク及び3種のヒドロゲルを含む。好ましくは、3種のヒドロゲルは、3つの異なる分解速度を有する。実施形態では、乳房インプラントは、第1、第2及び第3のヒドロゲルを含み、第3のヒドロゲルが最も速く分解し、それに第2のヒドロゲルが続き、第1のヒドロゲルは、最後に分解する。乳房インプラントは、第1のヒドロゲルよりも速く分解する第2のヒドロゲルによって取り囲まれる、乳房インプラントのコアに位置する第1のヒドロゲルで形成される。第2のヒドロゲルは第3のヒドロゲルによって取り囲まれる。第3のヒドロゲルは、第2のヒドロゲルよりも速く分解する。同時に、ヒドロゲルは、分解がインプラントの表面からそのコアまでの方向に漸進的にゆっくりと移動して発生する状態で、分解速度の勾配を生じる。好ましくは、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3種のヒドロゲルが分解した後に、分解する。実施形態では、インプラント中の1種以上のヒドロゲルは、3か月未満で分解し、及び耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3~24か月で分解する。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの強度保持率は、3か月で50%である。実施形態では、インプラントは3種のヒドロゲルを含み、及び第3(最も外側)のヒドロゲルは1か月以内で分解し、第2のヒドロゲルは2か月以内で分解し、及び第1(最も内側)のヒドロゲルは3か月以内で分解する。実施形態では、インプラントは3種のヒドロゲルを含み、及び第3(最も外側)のヒドロゲルは1か月以内で分解し、第2のヒドロゲルは3か月以内で分解し、及び第1(最も内側)のヒドロゲルは6か月以内で分解する。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの強度保持率は、6か月で50%である。
【0024】
[0024] 実施形態では、乳房インプラントは、マクロ多孔質耐荷重ネットワーク、及び3種の水溶性ポリマーを含む。好ましくは、3種の水溶性ポリマーは異なる分解速度を有する。実施形態では、乳房インプラントは、第1、第2及び第3の水溶性ポリマーを含み、第3の水溶性ポリマーが最も速く分解し、それに第2の水溶性ポリマーが続き、第1の水溶性ポリマーが最後に分解する。乳房インプラントは、第1の水溶性ポリマーよりも速く分解する第2の水溶性ポリマーによって取り囲まれる、乳房インプラントのコアに位置する第1の水溶性ポリマーで形成される。第2の水溶性ポリマーは、第3の水溶性ポリマーによって取り囲まれる。
【0025】
[0025] 実施形態では、乳房インプラントは、マクロ多孔質耐荷重ネットワーク、水溶性ポリマー、及び2種のヒドロゲルを含むか、又はマクロ多孔質耐荷重ネットワーク、2種の水溶性ポリマー、及び1種のヒドロゲルを含む。最もゆっくり分解する水溶性ポリマー又はヒドロゲルは、乳房インプラントのコアに位置し、より速く分解する第2の水溶性ポリマー又はヒドロゲルによって取り囲まれる。第2の水溶性ポリマー又はヒドロゲルは、最も速く分解する水溶性ポリマー又はヒドロゲルによって取り囲まれる。
【0026】
[0026] 実施形態では、乳房インプラントは、第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲル、又は第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーで少なくとも部分的に満たされる耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含み、ここで、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを少なくとも部分的に取り囲み、及び第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーよりも速く分解する。実施形態では、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、インプラントが胸壁と接触するインプラントの後側区域を除いて、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを取り囲む。実施形態では、ヒドロゲル及び水溶性ポリマーは、マクロ多孔質ネットワークが完全に分解される前に、分解する。実施形態では、乳房インプラントは、さらに、第3のヒドロゲル又は第3の水溶性ポリマーを含み、ここで、第3のヒドロゲル又は第3の水溶性ポリマーは、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを少なくとも部分的に取り囲み、及び第3のヒドロゲル又は第3の水溶性ポリマーは、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーよりも速く分解する。実施形態では、3種のヒドロゲル又は3種の水溶性ポリマーは、マクロ多孔質ネットワークが完全に分解される前に、分解する。実施形態では、インプラントが胸壁と接触するインプラントの後側区域を除いて、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを取り囲み、及び第3のヒドロゲル又は第3の水溶性ポリマーは、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを取り囲む。
【0027】
[0027] 実施形態では、乳房インプラントは、複数の相互接続された空隙を備える補強マクロ多孔質ネットワーク;及び組織が内部で増殖するまで第1の組の空隙を一時的に占めるように適合された第1の組の犠牲空隙占有体を含む。実施形態では、乳房インプラントは、さらに、第1の組の空隙を取り囲むように配置された第2の組の空隙、及び組織が内部で増殖するまで、第2の組の空隙を一時的に占めるように適合された第2の組の犠牲空隙占有体を含み、及び第2の組の空隙占有体は、第1の組の空隙占有体に先立って吸収可能である。実施形態では、第1の組の犠牲空隙占有体は、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーである。実施形態では、第1及び第2の組の犠牲空隙占有体、並びにマクロ多孔質ネットワークは、一緒に、3D印刷によってインプラントを形成するように、製作及び配置される。実施形態では、第2の組の犠牲空隙占有体は、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーである。実施形態では、第2の組の空隙占有体は、第1の組の空隙占有体の前に吸収され、及びマクロ多孔質ネットワークは、第1の組の空隙占有体が分解された後に、分解する。実施形態では、第1の組の空隙占有体は、乳房内へのインプラントの移植から一年以内に吸収される。
【0028】
[0028] 実施形態では、インプラントは、乳房手術処置、例えば豊胸、乳房再建及び乳房固定術において使用するのに好適な形状及びサイズを有する。実施形態では、乳房インプラントは、ドーム様形状、丸みを帯びた形状、涙の滴形状、又は解剖学的な形状を有する。実施形態では、インプラントは、乳房に所望の解剖学的な形状をもたらすように設計された形状を有する。
【0029】
[0029] 実施形態では、乳房インプラントの前側底部は凸状外面を有する。凸状外面は、乳房の下極の輪郭をよくする、及び好ましくは乳房の下極の解剖学的特徴に近づけるようなサイズ及び形状にされる。
【0030】
[0030] 実施形態では、乳房インプラントは、インプラント中へ組織を挿入するための開口部を含む。実施形態では、開口部は、インプラントの後側区域に位置する。実施形態では、開口部は、インプラントの後側区域に位置し、及びインプラントの後側区域と前側区域との間に長手方向軸を有する。実施形態では、インプラントは、インプラントの後側区域と前側区域との間に長手方向軸を規定する中空コアである開口部を有し得る。
【0031】
[0031] 実施形態では、インプラントは、2つ以上の開口部を含み得、複数の血管茎、又は他の組織の塊をインプラント中へ挿入することを可能にする。
【0032】
[0032] 実施形態では、インプラントは、補強マトリクスを囲む外殻を含む。
【0033】
[0033] 実施形態では、インプラントは、乳房にインプラントを固定する(fixate)ために、1つ以上のアンカー、ファスナー又はタブを含む。
【0034】
[0034] 実施形態では、インプラントは吸収性である。
【0035】
[0035] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、1種以上の吸収性ポリマーを含む。実施形態では、1種以上の吸収性ポリマーは:グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びアジピン酸からなる群から選択された1種以上のモノマーを含む、若しくはそれから作製されるか、或いはポリマー組成物は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む。
【0036】
[0036] 実施形態では、インプラントの作製に使用される吸収性ポリマーの重量平均分子量は、GPCによって決定されたポリスチレンに対して、50~1,000kDa、一層好ましくは90~600kDa、及びさらに一層好ましくは200~450kDaである。
【0037】
[0037] 実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、以下の特性:引張強度25MPa超、引張弾性率300MPa未満、破断点伸び100%超、溶融温度60℃以上、ガラス転移温度0℃未満、平均直径又は幅10μm~5mm、破断荷重0.1~200N、及び弾性率0.05~1,000MPaのうちの1つ以上を有する、繊維、フィラメント、3D印刷線、又はストラットを含む。
【0038】
[0038] 実施形態では、インプラントは、分解性であるヒドロゲル、及び好ましくは分解速度が異なる2種以上のヒドロゲルを含む。実施形態では、ヒドロゲルは、ホモポリマー、コポリマー又はマルチポリマーの相互侵入ポリマーヒドロゲルである。ヒドロゲルは、非晶質としても、半結晶としても、又は結晶質としてもよい。ヒドロゲルは、化学又は物理架橋を含み得る。ヒドロゲルは光架橋され得る。ヒドロゲルは、非イオン性、イオン性、酸性基及び塩基性基の双方を含む両性電解質、又はアニオン基及びカチオン基の双方を含む双性イオンである。ヒドロゲルは、天然ポリマー、例えばタンパク質及び多糖類を含み得る。例は、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、スターチ、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロナン、ヒアルロン酸、アルジネート(alginate)、キトサン、カラギーナン、ペクチン、デキストラン、βグルカン、ジェラン、ウェラン、キサンタン、及びアガロースを含む。ヒドロゲルは合成ポリマーを含み得る。例は、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリペプチド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリメタクリル酸、及びポリアクリレート及びコポリマーを含む。
【0039】
[0039] 実施形態では、インプラントは、生体内で分解性である水溶性ポリマーを含む。実施形態では、水溶性ポリマーは生体内で分解して、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク中への組織の内方成長を可能にする。実施形態では、水溶性ポリマーはヒドロゲルではない。水溶性ポリマーは、天然ポリマーとしても、生合成ポリマーとしても、又は合成ポリマーとしてもよい。水溶性ポリマーの例は、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリホスフェート、ポリオキサゾリン、ジビニルエーテル-無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、及びポリホスファゼンを含む。
【0040】
[0040] 実施形態では、乳房インプラントは、以下:自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、水溶性ポリマー、抗菌剤、抗生物質、生体活性作用物質、及び診断機器のうちの1種以上を含み得る。移植後、インプラントは、結合組織及び血管が入り込み、及び乳房にうまく組み込まれるように設計される。実施形態では、インプラントは、脂肪組織工学足場とし得る。
【0041】
[0041] 実施形態では、乳房インプラントの圧縮弾性率は、5~15%の歪みで0.1kPa~10MPa、一層好ましくは0.3kPa~1MPa、及びさらに一層好ましくは3kPa~200kPaである。圧縮弾性率は、インプラントが圧縮され、及び圧縮から回復することを可能にする。乳房インプラントは、インプラントの移植後に乳房が硬い感触にならず、触れると柔らかく、及び自然の乳房のような感触になるように操作される。実施形態では、乳房インプラントは、外科医が、乳房の塊を復元する又は増大させる一方で、乳房の触感を維持する又は回復することを可能にする。
【0042】
[0042] 実施形態では、乳房インプラントの損失弾性率は、0.1kPa~5MPa、好ましくは0.3kPa~1MPa、及びさらに一層好ましくは0.3kPa~100kPaである。
【0043】
[0043] 実施形態では、乳房インプラントの圧縮レジリエンスは1~80%である。
【0044】
[0044] 実施形態では、乳房インプラントは、変形/圧縮後に、最低50%、一層好ましくは75%、及び最も好ましくは90%以上、回復するように適合される。
【0045】
[0045] 実施形態では、インプラントは、低侵襲式に乳房に送達され得る。
【0046】
[0046] 実施形態では、インプラントは圧縮性であり、及びファンネル、例えばKellerファンネルを通して乳房中へ送達され得る。実施形態では、インプラントは、首径(ファンネルの最も細い部分)1~3インチ、及び一層好ましくは1.5~2.5インチのファンネルを通して乳房中へ送達され得る。実施形態では、インプラントは、首径1~3インチのファンネルを通して送達され、及びファンネルの首を通して乳房中へ送達した後、インプラントの体積の少なくとも70%を回復し得る。実施形態では、インプラントの圧縮弾性率は、首径1~3インチのファンネルを通したインプラントの送達を可能にし、及びインプラントは、ファンネルの首を通過後、インプラントの体積の少なくとも70%を回復できる。
【0047】
[0047] 実施形態では、インプラントの内毒素含量は、インプラント当たり20エンドトキシン活性単位(Endotoxin unit)未満である。
【0048】
[0048] 実施形態では、インプラントは、滅菌インプラントである。インプラントは、ある範囲の技術、例えば、限定されるものではないが、エチレンオキシド、電子ビーム、又はガンマ線照射によって、滅菌され得る。
【0049】
[0049] 実施形態では、方法は、補強マトリクスを含むインプラントを製造するために提供され、ここで、補強マトリクスは、1種以上の分解性ヒドロゲル、1種以上の水溶性ポリマー、又は分解性ヒドロゲルと水溶性ポリマーとの組み合わせで少なくとも部分的に満たされる開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含み、インプラントは、患者の胸壁に配置するための後側区域、後側区域に対向する前側区域を含み、前側区域は、乳房の下極内に配置するための前側底部、乳房の上極内に配置するための前側上部、及び患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域を含む。方法は、30%の歪みで少なくとも0.1kgfの圧縮強度、5~15%の歪みで0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率、又は0.3~100kPaの損失弾性率を有する、開放セル構造を備える分解性耐荷重マクロ多孔質ネットワークの製造を提供する。実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、ポリマー組成物を3D印刷することによりフィラメントのネットワークを形成することによって製造される。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、押出ベースの積層造形、選択的レーザ溶融、熱溶解積層法、熱溶解フィラメント製法、溶融押出堆積、凝固浴を使用するポリマースラリー又は溶液の印刷、並びに結合溶液及びポリマー粉末の顆粒を使用する印刷によって、形成される。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク中の3D印刷されたフィラメントのインフィル密度は、1%~60%、及び一層好ましくは5%~25%である。
【0050】
[0050] 実施形態では、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、ポリマー組成物を3D印刷することによって製造され、ここで、ポリマー組成物は、以下:グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びアジピン酸のうちの1種以上のモノマーを含むか又はそれから作製されたポリマー又はコポリマーから選択されたポリマーを含むか、或いはポリマー組成物は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート若しくはそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む。
【0051】
[0051] 実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークの製造方法は、以下の特性:(i)破断点伸び100%超;(ii)破断点伸び200%超;(iii)溶融温度60℃以上、(iv)溶融温度100℃超、(v)ガラス転移温度0℃未満、(vi)ガラス転移温度-55℃~0℃、(vii)引張弾性率300MPa未満、及び(viii)引張強度25MPa超のうちの1つ以上を備えるポリマーから、ネットワークのフィラメントを、好ましくは3D印刷することによって、形成することを含む。好ましい実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3D印刷によって、P4HB、PBS、P4HBコポリマー又はPBSコポリマーから製作される。
【0052】
[0052] 実施形態では、3Dプリンターがインプラントを製造するために使用され、ここで、3Dプリンターの1つのプリントヘッドが、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを印刷するために使用され、及び1つ以上のプリントヘッドが、1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーを印刷するために使用されるため、1種以上のヒドロゲル及び/又は1種以上の水溶性ポリマーで少なくとも部分的に満たされる開放セル構造を備えるマクロ多孔質ネットワークを含むインプラントが、形成される。このようにして、インプラントは製造され得、ここで、インプラントに組み入れられる、各ヒドロゲルの分解速度、又は各水溶性ポリマーの分解速度は、インプラントの表面からインプラントのコアに動くにつれて低下する。
【0053】
[0053] 実施形態では、1種以上の分解性ヒドロゲル、1種以上の分解性水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせで少なくとも部分的に満たされる開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、2つ以上のプリントヘッドを備える3Dプリンターを用いて製造される。実施形態では、インプラントは、2つのプリントヘッドを備える3Dプリンターを用いて形成され、ここで、1つのプリントヘッドは、例えば、押出ベースの積層造形、例えば、熱溶解積層法又は熱溶解ペレット積層を使用して、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを形成するために使用され、及び第2のプリントヘッドは、例えば、溶液ベースの3D印刷を使用して、ヒドロゲル又は水溶性ポリマーを印刷するために使用されるため、ヒドロゲル又は水溶性ポリマーは、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的に満たす。実施形態では、インプラントは、少なくとも3つのプリントヘッドを備える3Dプリンターを用いて形成され、ここで、1つのプリントヘッドは、例えば、熱溶解積層法又は熱溶解ペレット積層を使用して、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを形成するために使用され、第2のプリントヘッドは、例えば、溶液ベースの3D印刷を使用して、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを印刷するために使用されるため、耐荷重マクロ多孔質ネットワークのコアを満たし、及び第3のプリントヘッドは、例えば、溶液ベースの3D印刷を使用して、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを印刷するために使用されるため、第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマーを取り囲む。第2のヒドロゲルは、第1のヒドロゲルよりも速い分解速度を有する。第2の水溶性ポリマーは、第1の水溶性ポリマーよりも速い分解速度を有する。
【0054】
[0054] 実施形態では、インプラントの製造方法は、インプラントを3D印刷すること、又は耐荷重マクロ多孔質ネットワークを3D印刷すること、並びに以下:自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質、生体活性作用物質、及び診断機器のうちの1種以上の構成要素を加えることを含む。実施形態では、これらの構成要素は、コーティング、噴霧、浸漬又は注入によって、インプラントに加えられる。
【0055】
[0055] 実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークの製造方法は、粒子浸出法、相分離、発泡、ラミネーション及び穿孔を含む。実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークの製造方法は、テキスタイル加工、例えば、織り、編み、編組、並びに例えば、メルトブロー、エレクトロスピニング、ステープル繊維加工、溶液紡糸、遠心紡糸、スパンボンド、及び乾式紡糸による不織の形成を含む。
【0056】
[0056] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3Dテキスタイル、3D編組ファブリック、又は3D複合材とし得る。
【0057】
[0057] 実施形態では、インプラントは、予め決められた三次元形状を有し、これは、皮膚と乳房の膨らみ又は乳房の胸壁との間の皮下に移植され得る。乳房インプラントは、腺下位置、胸筋下位置、又は筋膜下位置に移植され得る。インプラント設計は、外科医が、乳房の上極と下極との体積比、胸壁からの乳房の隆起の度合い、並びに乳房の上極及び下極の湾曲を簡単に制御することを可能にする。
【0058】
[0058] 実施形態では、インプラントは、外科医に、細胞、幹細胞、分化した細胞、脂肪細胞、筋細胞、血小板、組織、茎、血管茎、組織塊、脂肪吸引物、細胞外脂肪マトリクスタンパク質、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、生体活性作用物質、薬物、抗生物質、及び他の物質を移植部位へ送達する手段をもたらす働きをする。好ましくは、インプラントによって送達された、又はインプラント中にコーティング若しくは注入された細胞及び組織は、自己由来である。インプラントは、自家脂肪移植に使用され得る。インプラントは、細胞の内方成長を刺激する生体活性作用物質、例えば成長因子、細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、細胞シグナリング分子、例えばサイトカイン、並びに細胞移動、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外マトリクス沈着を促す分子を含み得る。
【0059】
[0059] 実施形態では、インプラントは、軟組織体積又は組織塊に置き換わる及び又はそれを増加させるために移植され得る。実施形態では、インプラントは、さらに、細胞及び組織用の増殖チャンバーを含み得る。
【0060】
[0060] 実施形態では、方法は、患者の乳房にインプラントを移植するために提供される。実施形態では、インプラントの移植方法は:(i)患者の乳房組織にアクセスするために、少なくとも1か所に切開部を作ること、(ii)胸部の乳房の膨らみ(breast mound of the breast)から皮膚及び皮下筋膜を分離すること、(iii)腺下、胸筋下、又は筋膜下にインプラントを位置決めすること、(iv)すぐ近くの組織にインプラントを固定すること、並びに(v)乳房の切開部を閉じることを含む。実施形態では、乳房内へのインプラントの移植方法は、さらに、乳房内へのインプラントの移植前又は乳房内へのインプラントの移植後のいずれかの1回以上の機会に、以下:自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン、抗菌剤、抗生物質、及び生体活性作用物質のうちの1種以上の構成要素をインプラント上にコーティングすること、又はインプラントに加えることを含む。実施形態では、構成要素は、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク上又は中への注入、噴霧、浸漬又はコーティングによるが、好ましくは構成要素の注入によって、インプラントに加えられる。実施形態では、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、又は任意のこれらの組み合わせで、患者からの自己組織でコーティングされる。実施形態では、移植方法は、インプラント中へ組織を挿入するようなサイズにされた開口部の設けられたインプラントを移植すること、並びにインプラントの移植中に、インプラントの開口部中に組織又は茎、好ましくは血管茎、一層好ましくは血管茎穿通枝、及びさらに一層好ましくは、穿通枝を好ましくは備える、小胸筋からの茎を挿入することを含む。実施形態では、移植方法は、患者の小胸筋から、好ましくは穿通枝を備える茎を切り離すこと、及び茎を受け入れるようなサイズにされるインプラントの開口部に茎を挿入することを含む。実施形態では、外科医は、患者へのインプラントの移植前、又は移植後に、茎又は他の組織塊をインプラントに挿入し得る。乳房インプラントは:(i)乳房切除術を受けた、(ii)乳房リフトを受けており、豊胸の必要がある、(iii)乳房縮小を受けており、縮小した乳房の支え及びリフトの必要がある、(iv)以前、シリコーン又は食塩水の乳房インプラントの乳房手術を受けており、シリコーン又は食塩水のインプラントを除去して、その後に、若々しい見た目であるが、よりふくよかな乳房及びより大きいサイズを生じるために乳房の再建を望んでいる、患者において使用され得る。インプラントはまた、乳房組織の除去後に、自然な乳房組織の感触を乳房に回復したい患者において使用され得る。インプラントは、胸からの乳房の隆起を増やすために、及び乳房にボリュームを加えるための脂肪移植片と組み合わせて、使用され得る。
【0061】
[0061] これらの利点並びに本発明の他の目的及び利点は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】[0062]本発明の一実施形態による、
図1Cに示す多成分乳房インプラント1の線A-Aに沿って取った断面図である。乳房インプラント1は、表面2、コア3、患者の胸壁上に又はその近くに配置するための後側区域4、後側区域に対向する前側区域5、乳房の下極内に配置するための前側底部6、乳房の上極内に配置するための前側上部7、患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域8、及び開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク9を備えて示されている。乳房インプラント内の第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12の箇所も示されている。
【
図1B】[0063]患者の胸壁上に又はその近くに配置するための後側区域4、後側区域に対向する前側区域5、乳房の下極内に配置するための前側底部6、乳房の上極内に配置するための前側上部7、患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域8、並びにインプラント内の第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12の箇所を備えて示されている、
図1Aに示す多成分乳房インプラント1の等角図である。
【
図1C】[0064]本発明の一実施形態による乳房インプラント1の中央面に沿った断面の上面図である。乳房インプラントは、第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12を備えて示されている。
【
図1D】[0065]後側区域4及び前側区域5を備える、
図1Aに示す多成分乳房インプラント1の第2の等角図である。
【
図1E】[0066]第1、第2及び第3のヒドロゲル(10、11、12)が除去された状態の、線A-Aに沿って描かれた、
図1Cに示す多成分乳房インプラント1の別の断面図である。
【
図1F】[0067]本発明のある実施形態による、
図1Eに示す耐荷重マクロ多孔質ネットワークの一部分の拡大図である。
【
図2】[0068]3D印刷ステージ22に支持される乳房インプラント21を印刷する3Dプリンター20の断面の側面図である。3Dプリンターは、第1のプリントヘッド23、第2のプリントヘッド24及び第3のプリントヘッド25を備えて示されている。インプラント21の断面は、インプラントのコアに印刷された第1のヒドロゲル27、及び第1のヒドロゲルを取り囲むように印刷された第2のヒドロゲル28で満たされている開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク26を備えて示されている。第1のプリントヘッドは、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを形成するためのポリマー組成物のペレット32が入っているリザーバ29を備えて示され、第2のプリントヘッドは、プレゲル溶液又はスラリー33が入っているリザーバ30を備えて示され、及び第3のプリントヘッドは、ゲル化剤34が入っているリザーバ31を備えて示されている。
【
図3】[0069]3D印刷ステージ45に支持される乳房インプラント44を印刷する3Dプリンター40の断面の側面図である。3Dプリンターは、第1のプリントヘッド46、第2のプリントヘッド47、第3のプリントヘッド48及び第4のプリントヘッド49を備えて示されている。インプラントの断面は、インプラントのコアに印刷された第1のヒドロゲル42、及び第1のヒドロゲルを取り囲むように印刷された第2のヒドロゲル43で満たされている開放セル構造を備える耐荷重ネットワーク41を備えて示されている。第1のプリントヘッド46は、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを形成するためのポリマー組成物のペレット54が入っているリザーバ50を備えて示され、第2のプリントヘッド47は、第1のプレゲル溶液又はスラリー55が充填されているリザーバ51を備えて示され、第3のプリントヘッド48は、第2のプレゲル溶液又はスラリー56が充填されているリザーバ52を備えて示され、及び第4のプリントヘッド49は、ゲル化剤57が充填されているリザーバ53を備えて示されている。
【
図4A】[0070]乳房インプラント62の耐荷重マクロ多孔質ネットワーク61が入っているビーカー60の断面の側面図である。
【
図4B】[0071]振盪器63上のブレーカー60の断面の側面図である。ビーカーは、プレゲル64の溶液又はスラリー中に乳房インプラント62の耐荷重マクロ多孔質ネットワーク61を入れている。矢印65は、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク中へ拡散するプレゲル64を示す。
【
図4C】[0072]乳房インプラント62の耐荷重マクロ多孔質ネットワーク61を入れているビーカー60の断面の側面図である。乳房インプラントは、プレゲルを架橋してマクロ多孔質ネットワーク内にヒドロゲルを形成するために、マクロ多孔質ネットワーク内のプレゲル66が光67で照射されている状態で示されている。
【
図5A】[0073]本発明の別の実施形態によるインプラントの前面図である。
【
図5B】[0074]線A-Aに沿って描かれた、
図5Aに示すインプラントの断面図である。
【
図5C】[0075]
図5Aに示すインプラントの等角図である。
【
図6A】[0076]本発明の別の実施形態によるインプラントの前面図である。
【
図6B】[0077]線B-Bに沿って描かれた、
図6Aに示すインプラントの断面図である。
【
図6C】[0078]
図6Aに示すインプラントの等角図である。
【
図7A】[0079]本発明の別の実施形態による、キャビティを有するインプラントの前面図である。
【
図7B】[0080]線A-Aに沿って描かれた、
図7Aに示すインプラントの断面図である。
【
図7C】[0081]
図7Aに示すインプラントの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
[0082] 本発明を詳細に説明する前に、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、説明される本発明に様々な変更又は修正が行われ得、及び等価物が代わりとなり得るため、本発明は、本明細書で説明する特定の変形例に限定されないことを理解されたい。本開示を読むことで当業者には明らかなように、本明細書で説明し及び示した個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は趣旨から逸脱せずに、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と簡単に分離されたり又は組み合せられたりしてもよい別々の構成要素及び特徴を有する。さらに、本発明の1つ又は複数の目的、趣旨又は範囲に特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの1つ又は複数の行為又は1つ又は複数のステップを適応させるために、多くの修正がなされ得る。そのような修正の全ては、本明細書で特許請求されるものの範囲内にあるものとする。
【0064】
[0083] 本明細書で説明される方法は、論理的に可能である、説明した事象のいずれかの順序で、並びに説明した事象の順序で、実施され得る。さらに、ある範囲の値が提供される場合、その範囲内の上限と下限との間のいずれの中間値も、及びその述べた範囲内の任意の他の述べた値又は中間値も、本発明に含まれることが理解される。また、説明される本発明の変形例のいずれの任意選択的な特徴も、独立して、又は本明細書で説明する特徴のうちのいずれかの1つ以上と組み合わせて、説明され及び特許請求され得ると考えられる。
【0065】
[0084] 本明細書で述べる全ての既存の主題(例えば、刊行物、特許、特許出願及びハードウェア)は、主題が本発明の主題と矛盾し得ることがない限り(その場合、本明細書で提示されることが優先する)、その全体が本明細書に参照することにより援用される。
【0066】
[0085] 単数形のアイテムへの言及は、同じアイテムが複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるような、単数形「a」、「an」、「前記」及び「the」は、文脈上明白に他の意味を指示する場合を除いて、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、いずれの任意選択的な要素も除外するために起草されているかもしれないことにさらに留意されたい。そのようなものとして、本ステートメントは、特許請求する要素の列挙に関連するような「単に」、「のみ」などのような排他的な用語の使用、又は「否定的」な限定の使用に対する先行詞の機能を果たすものとする。
【0067】
[0086] さらに理解を助けるために、以下の定義について下記で説明する。しかしながら、本明細書で説明するものとは別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有することも認識されたい。
【0068】
[0087] I.定義
[0088] 本明細書で一般的に使用されるような「生体活性作用物質」は、治療薬、予防薬又は診断用薬、好ましくは宿主組織の治癒及び再生を促す薬、並びにまた、感染を防ぐ、阻害する又は除去する治療薬を指す。「作用物質(Agent)」は、単一のそのような作用物質を含み、複数のそのようなものを含むことも意図する。
【0069】
[0089] 一般的に本明細書で使用されるような「生体適合性」は、生体内での機器の意図した用途に適切である、材料又は機器に対する生物学的反応を意味する。これらの材料のいずれの代謝産物も生体適合性であるべきである。
【0070】
[0090] 本明細書で一般的に使用されるような「ブレンド」は、2種以上の異なるモノマーで形成されたコポリマーとは対照的に、異なるポリマーの物理的な組み合わせを意味する。
【0071】
[0091] 本明細書で使用されるような「圧縮弾性率」は、クロスヘッド速度20mm min-1で万能試験機において測定される。サンプルは、荷重を加えるように前もって負荷が加えられて、5~15%の歪みで圧縮される。臨床的に意義のある繰り返し荷重が10回繰り返され、及び圧縮弾性率は、たるみを取ること、及び被検査物のアライメント又は載置に起因するアーチファクトのせいで、二次繰り返し荷重に基づいて計算される。圧縮弾性率はまた、ASTM規格ASTM D1621-16又はASTM D695-15を使用して測定され得る。
【0072】
[0092] 本明細書で使用されるような「圧縮レジリエンス」は、圧縮回復中に行われる仕事量を、圧縮中に行われる仕事量で割ったものに、100を掛けたものとして計算される。
【0073】
[0093] 一般的に本明細書で使用されるような「ポリ-4-ヒドロキシブチレートのコポリマー」は、1種以上の異なるヒドロキシ酸単位を備える4-ヒドロキシブチレートを含む任意のポリマーを意味する。コポリマーは、同位体濃縮され得る。
【0074】
[0094] 一般的に本明細書で使用されるような「ポリ(ブチレンサクシネート)のコポリマー」は、1,4-ブタンジオール及びコハク酸単位、並びに1種以上の異なるジオール又は二酸単位を含む任意のポリマーを意味する。コポリマーは、以下:分岐剤(branching agent)、架橋剤、鎖延長剤、及びリアクティブブレンディング剤のうちの1種以上を含み得る。コポリマーは、同位体濃縮され得る。
【0075】
[0095] 一般的に本明細書で使用されるような「分解可能な、分解性」、並びに限定されるものではないが「分解する」、「分解される」及び「分解」を含むその変形又は派生語のいずれかは、体内で分解されて、分解産物が体から排出されるか、又は排除される材料を意味する。接頭辞「生、生体(bio)」が有る又は無い、用語「吸収性、吸収可能」、「再吸収性」、「分解性」、及び「侵食性」及びそれらそれぞれの変形又は派生語は、分解(degradation)が主に加水分解によるものか又は代謝過程を介して行われたものかに関わらず、分解(broken down)されて、体によって次第に吸収されるか、排出されるか、又は排除される材料を説明するために、本明細書では区別しないで使用され得、また、体による吸収、排出、又は排除前に、材料が溶解又は分散されるプロセスを含む。
【0076】
[0096] 本明細書で一般的に使用されるような「内毒素含量」は、インプラント又はサンプル中に存在する内毒素の量を指し、及びカブトガニ変形細胞溶解物(LAL:limulus amebocyte lysate)アッセイを使用して決定される。
【0077】
[0097] 本明細書で使用されるような「インフィル密度」は、百分率で表される、多孔質インプラント内で印刷物が占める体積が、印刷物及び間隙空間が占める全体積によって割られた比である。
【0078】
[0098] 本明細書で一般的に使用されるような「分子量」は、他に特に規定がなければ、数平均分子量(Mn)ではなく、重量平均分子量(Mw)を指し、及びポリスチレンに対してGPCによって測定される。
【0079】
[0099] 「ポリ(ブチレンサクシネート)」は、1,4-ブタンジオール単位及びコハク酸単位を含むポリマーを意味する。ポリマーは、以下:分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及びリアクティブブレンディング剤のうちの1種以上を含み得る。ポリマーは、同位体濃縮され得る。
【0080】
[00100] 「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」は、以下:鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1種以上で作製されたポリマー及びコポリマーを含む。
【0081】
[00101] 一般的に本明細書で使用されるような「ポリ-4-ヒドロキシブチレート」は、4-ヒドロキシブチレート単位を含むホモポリマーを意味する。本明細書では、P4HB又はTephaFLEX(登録商標)生体材料(Tepha, Inc., Lexington, MA製)とも呼ばれ得る。ポリマーは、同位体濃縮され得る。
【0082】
[00102] 本明細書で使用されるような「筋膜下」は、胸筋の結合組織鞘(外筋膜)の下であるが、胸筋の上であることを意味する。
【0083】
[00103] 本明細書で使用されるような「軟組織」は、硬化又は石灰化されていない体内組織を意味する。軟組織は、骨及び歯のエナメル質などの硬組織を除外する。
【0084】
[00104] 「強度保持率」は、材料が、ヒト又は動物への移植後に特定の機械的特性を維持する時間の量を指す。例えば、再吸収性繊維又はストラットの引張強度が動物への移植時から3か月で半分だけ低下する場合、3か月での繊維又はストラットの強度保持率は50%となるであろう。
【0085】
[00105] 本明細書で使用されるような「腺下」は、乳房組織の下であるが、胸筋の上であることを意味する。
【0086】
[00106] 本明細書で使用されるような「胸筋下」は、少なくとも部分的に胸筋の下であることを意味する。
【0087】
[00107] II.インプラントを作製するための材料
[00108] 実施形態では、インプラントは、乳房を再形成し、乳房の空隙を満たし、乳房を持ち上げ、及び乳房を大きくするために使用され得る。インプラントは、軟組織インプラントである、つまり、それらは、軟組織の再生、増加、修復、補強、及び再建に使用され得る。インプラントは、乳房切除術、乳房固定術及び豊胸処置中に永久乳房インプラントを使用する必要性をなくし得る。インプラントは、生体適合性であり、及び好ましくはインプラントが分解するにつれて、患者の組織によって生体内で取って代わられる。インプラントは、豊胸に、特に、乳房の軟組織の増加に、特に好適である。インプラントは、好ましくは、インプラントが圧縮力下で一時的に変形し、力が除去されると圧縮からそれらの形状を回復し、及び乳房組織と同じような感触を有することを可能にする圧縮弾性率を有する。任意選択的に、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、自己組織、自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞でコーティングされ得るか又は満たされ得る。
【0088】
[00109]
図7A~7Cを参照して説明すると、インプラント300は、さらに、1つ以上の通路又はキャビティ320を含む1つ以上の開口部310を含み得、血管茎又は他の組織塊をインプラントに挿入可能にする。
図7A~7Cに示す実施形態では、キャビティは、シリンダー形状であり、及び後壁312にある開口部310から乳房のNACの方へ向かって延在する。開放通路を取り囲むマクロ多孔質ネットワークは、ヒドロゲル、水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせを持っている。本明細書で説明するように、複数の異なるタイプのヒドロゲル及び/又は水溶性ポリマーが、時限吸収のために、及び組織の内方成長を促すために、局所的な又はゾーンの層(330、340、350)に配置され得る。キャビティは、多種多様の形状及び向きを有してもよく、並びに添付の特許請求の範囲のいずれかに列挙されるように限定されるにすぎないことを理解されたい。さらに、
図7A~7Cではキャビティを1つのみ示すが、インプラントは複数のキャビティを有してもよい。好ましくは、キャビティ320の幅又は直径は、5~25mmに及ぶ。
【0089】
[00110] A.インプラントを作製するためのポリマー及びヒドロゲル
[00111] 実施形態では、インプラントは、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを備えるマトリクスを含み、及び1種以上のヒドロゲル、1種以上の水溶性ポリマー、又は1種以上のヒドロゲルと1種以上の水溶性ポリマーとの組み合わせで少なくとも部分的に満たされる。実施形態では、インプラントは、第1のヒドロゲル又は第1の水溶性ポリマー、及び第2のヒドロゲル又は第2の水溶性ポリマーを含み、ここで、第2のヒドロゲルが、第1のヒドロゲル若しくは第1の水溶性ポリマーよりも速く分解し、インプラント内で第1のヒドロゲル若しくは第1の水溶性ポリマーを取り囲むか、又は第2の水溶性ポリマーが、第1のヒドロゲル若しくは第1の水溶性ポリマーを取り囲み、及び第2の水溶性ポリマーが、インプラント内で第1のヒドロゲル若しくは第1の水溶性ポリマーよりも速く分解する。実施形態では、インプラントは、さらに、第2のヒドロゲル若しくは第2の水溶性ポリマーよりも分解速度が速い第3のヒドロゲル、又は第2のヒドロゲル若しくは第2の水溶性ポリマーよりも分解速度が速い第3の水溶性ポリマーを含み、及び第3のヒドロゲル若しくは第3の水溶性ポリマーは、インプラント内で第2のヒドロゲル若しくは第2の水溶性ポリマーを取り囲む。実施形態では、インプラントは、よりゆっくりと分解するヒドロゲル又は水溶性ポリマーを取り囲む、より速く分解するヒドロゲル又は水溶性ポリマーを備える1種以上のヒドロゲル及び/又は1種以上の水溶性ポリマーを含む。耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、任意選択的に、他の特徴、例えば1つ以上の開口部又は通路、例えば1つ以上の横断通路を含み得る。
【0090】
[00112] インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、永久材料、例えば非分解性熱可塑性ポリマー、例えばエチレン及びプロピレンのポリマー及びコポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリ(エーテル-ウレタン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、及びポリ(エチレンオキシド)を含み得る。しかしながら、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、好ましくは、吸収性材料、一層好ましくは熱可塑性又はポリマー性吸収性材料を含み、さらに一層好ましくは、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、吸収性材料から完全に製作される。
【0091】
[00113] 好ましい実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、1種以上の吸収性ポリマー又はコポリマー、好ましくは吸収性熱可塑性ポリマー及びコポリマー、さらに一層好ましくは吸収性熱可塑性ポリエステルから製作される。インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、例えば、ポリマー、例えば、限定されるものではないが、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、3-ヒドロキシヘキサノエート、3-ヒドロキシオクタノエート、ε-カプロラクトンを含むポリマー、例えばポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、グリコール酸と乳酸とのコポリマー、例えばVICRYL(登録商標)ポリマー、MAXON(登録商標)及びMONOCRYL(登録商標)ポリマー、並びに例えばポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン);ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリヒドロキシアルカノエート;合成の若しくは生物学的に作製されたポリエステル;ポリカーボネート;チロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成及び天然のポリアミド、ポリペプチド、及びポリ(アミノ酸)を含む);ポリエステルアミド;ポリ(アルキレンアルキレート);ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール、PEG、及びポリエチレンオキシド、PEO);ポリビニルピロリドン(PVP);ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリアセタール、ポリケタール;ポリホスフェート;(リン含有)ポリマー;ポリホスホエステル;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンサクシネート;ポリ(マレイン酸);シルク(組換えシルク並びにシルク誘導体及び類似体を含む);キチン;キトサン;修飾キトサン;生体適合性多糖類;親水性若しくは水溶性ポリマー、例えば他の生体適合性若しくは生分解性ポリマーのブロックを備える、ポリエチレングリコール又はポリビニルピロリドン(PVP)、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、又はポリカプロラクトン及びそのコポリマー、例えばそのランダムコポリマー及びブロックコポリマーから作製され得る。
【0092】
[00114] 好ましくはインプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、移植後1~24か月の時間枠、一層好ましくは3~18か月の時間枠内で実質的に再吸収され、及び少なくとも2週間~6か月、ある程度の残留強度を保持する吸収性ポリマー又はコポリマーから作製される。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの強度保持率は、3か月で少なくとも50%である。
【0093】
[00115] ポリマー及びコポリマー、好ましくは吸収性ポリマーのブレンドは、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用され得る。吸収性ポリマーの特に好ましいブレンドは、吸収性ポリマー、例えば、限定されるものではないが、グリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド、1,4-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸を含むポリマー、又はそれらのコポリマーから作製される。
【0094】
[00116] 特に好ましいある実施形態では、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(Tepha’s P4HB(商標)ポリマー、Lexington,MA)若しくはそのコポリマーは、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを製作するために使用される。コポリマーは、別のヒドロキシ酸、例えば3-ヒドロキシブチレートを備えるP4HB、及びグリコール酸又は乳酸モノマーを備えるP4HBを含む。ポリ-4-ヒドロキシブチレートは、生体適合性及び再吸収性である、強くてしなやかな熱可塑性ポリエステルである(Williams,et al.Poly-4-hydroxybutyrate (P4HB):a new generation of resorbable medical devices for tissue repair and regeneration,Biomed.Tech.58(5):439-452(2013))。移植すると、P4HBはそのモノマーに加水分解し、及びモノマーは、クレブス回路によって代謝されて、二酸化炭素と水になる。好ましい実施形態では、P4HBホモポリマー及びそのコポリマーの重量平均分子量Mwは、50kDa~1,200kDa(ポリスチレンに対するGPCによって)、一層好ましくは100kDa~600kDa、及びさらに一層好ましくは200kDa~450kDaの範囲内である。50kDa以上のポリマーの重量平均分子量が、加工及び機械的特性のために好ましい。
【0095】
[00117] 別の好ましい実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、少なくともジオール及び二酸を含むポリマーから作製される。特に好ましいある実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用されるポリマーは、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)であり、ここで、ジオールは1,4-ブタンジオールであり、及び二酸はコハク酸である。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマーは、他のジオール、他の二酸又はこれらの組み合わせを備えるコポリマーとし得る。例えば、ポリマーは、さらに、以下:1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、マロン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、及びシュウ酸のうちの1種以上を含む、ポリ(ブチレンサクシネート)コポリマーとし得る。好ましいコポリマーの例は:ポリ(ブチレンサクシネート-コ-アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンジメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-エチレンサクシネート)及びポリ(ブチレンサクシネート-コ-プロピレンサクシネート)である。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はコポリマーは、さらに、以下:鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1種以上を含み得る。例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーは、以下の作用物質又は剤:リンゴ酸、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリメシン酸、クエン酸、グリセロールプロポキシレート、及び酒石酸のうちの1種以上を加えることによって、分岐されても、又は架橋されてもよい。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はそのコポリマーを分岐又は架橋するために特に好ましい作用物質又は剤は、ヒドロキシカルボン酸単位である。好ましくは、ヒドロキシカルボン酸単位は、2つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基、2つのヒドロキシル基と1つのカルボキシル基、3つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基、又は2つのヒドロキシル基と2つのカルボキシル基を有する。好ましい一実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、分岐剤又は架橋剤としてリンゴ酸を含むポリ(ブチレンサクシネート)から作製される。このポリマーは、リンゴ酸で架橋されたポリ(ブチレンサクシネート)、コハク酸-1,4-ブタンジオール-リンゴ酸コポリエステル、又はリンゴ酸で架橋されたポリ(1,4-ブチレングリコール-コ-コハク酸)と呼ばれ得る。リンゴ酸及び他の架橋剤、カップリング剤、分岐剤及び鎖延長剤への言及は、これらの作用物質又は剤で作製されたポリマーを含み、ここで、作用物質又は剤は、加工中にさらなる反応が起こされていることを理解すべきである。例えば、作用物質又は剤は、重合中に脱水されているかもしれない。それゆえ、ポリ(ブチレンサクシネート)-リンゴ酸コポリマーは、コハク酸、1,4-ブタンジオール及びリンゴ酸から作製されたコポリマーを指す。別の好ましい実施形態では、リンゴ酸は、ポリ(ブチレンサクシネート)とアジペートとのコポリマーを作製するために、分岐剤又は架橋剤として使用され得、これは、リンゴ酸で架橋されたポリ[(ブチレンサクシネート)-コ-アジペート]と呼ばれ得る。本明細書で使用されるような、「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」は、以下:鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1種以上で作製されたポリマー及びコポリマーを含む。特に好ましいある実施形態では、ポリ(ブチレンサクシネート)及びそのコポリマーは、少なくとも70重量%、一層好ましくは80重量%、及びさらに一層好ましくは90重量%のコハク酸、及び1,4-ブタンジオール単位を含む。二酸及びジオールを含むポリマー、例えばポリ(ブチレンサクシネート)及びそのコポリマー並びに本明細書で説明する他のものは、好ましくは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)に基づいて、10,000~400,000、一層好ましくは50,000~300,000及びさらに一層好ましくは100,000~200,000の重量平均分子量(Mw)を有する。特に好ましいある実施形態では、ポリマー及びコポリマーの重量平均分子量は、50,000~300,000、及び一層好ましくは75,000~300,000である。好ましい一実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを製作するために使用されるポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーは、以下の特性:密度1.23~1.26g/cm3、ガラス転移温度-31℃~-35℃、融点113℃~117℃、メルトフローレート(MFR:melt flow rate)190℃/2.16kgfで2~10g/10分、及び引張強度30~60MPaのうちの1つ以上、又は全てを有する。
【0096】
[00118] 別の実施形態では、P4HB及びそのコポリマー並びにPBS及びそのコポリマーを含む、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用される、本明細書で説明するポリマー及びコポリマーは、水素、炭素及び/又は酸素の公知の同位体が濃縮されるポリマー及びコポリマーを含む。水素は、1H(プロチウム)、2H(ジュウテリウム)及び3H(トリチウム)を含む3つの天然同位体を有し、それらの最も一般的なものは、1H同位体である。ポリマー又はコポリマーの同位体含有量は、例えば濃縮され得るため、ポリマー又はコポリマーは、天然よりも高い比率で特定の同位体又は複数の同位体を含む。ポリマー又はコポリマーの炭素及び酸素含有量はまた、炭素及び酸素の同位体、限定されるものではないが、13C、14C、17O又は18Oなどの比率が天然よりも高くなるように濃縮され得る。炭素、水素及び酸素の他の同位体が当業者には公知である。P4HB若しくはそのコポリマー又はPBS若しくはそのコポリマー内で濃縮された好ましい水素同位体は、ジュウテリウム、すなわち重水素化P4HB若しくはそのコポリマー又は重水素化PBS若しくはそのコポリマーである。百分率重水素化は、少なくとも1%まで、及び最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%又は85%以上とし得る。
【0097】
[00119] 好ましい実施形態では、P4HB及びそのコポリマー並びにPBS及びそのコポリマーを含む耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用されるポリマー及びコポリマーは、水分含量が低い。これは、高引張強度、長期の強度保持率、及び良好な寿命のインプラントが生産され得ることを保証するのに好ましい。好ましい実施形態では、インプラントを作製するために使用されるポリマー及びコポリマーの水分含量は、1,000ppm(0.1wt%)未満、500ppm(0.05wt%)未満、300ppm(0.03wt%)未満、一層好ましくは100ppm(0.01wt%)未満、及びさらに一層好ましくは50ppm(0.005wt%)未満である。
【0098】
[00120] インプラントを作製するために使用される組成物は、望ましくは、内毒素含量が低い。好ましい実施形態では、内毒素含量は十分に低いため、ポリマー組成物から生産されたインプラントの内毒素含量は、カブトガニ変形細胞溶解物(LAL)アッセイによって決定されるように、機器当たり20エンドトキシン活性単位未満である。一実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用されるポリマー組成物の内毒素含量は、ポリマー又はコポリマーの<2.5EU/gである。例えば、P4HBポリマー若しくはコポリマー、又はコポリマーのPBSポリマーの内毒素含量は、ポリマー又はコポリマーの<2.5EU/gである。
【0099】
[00121] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークを含む、インプラントの補強マトリクスは、1種以上のヒドロゲルで満たされる。好ましくは、ヒドロゲルは分解性である。好ましくは、ヒドロゲルは、2種以上のヒドロゲルがインプラント内に存在するときに、異なる分解速度を有する。実施形態では、インプラントは、第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲルを含み、第2のヒドロゲルは第1のヒドロゲルよりも速く分解する。実施形態では、インプラントは、さらに、第3のヒドロゲルを含み、及び第3のヒドロゲルは第2のヒドロゲルよりも速く分解する。
【0100】
[00122] 実施形態では、ヒドロゲルは、ホモポリマー、コポリマー又はマルチポリマーの相互侵入ポリマーヒドロゲルである。ヒドロゲルは、非晶質としても、半結晶質としても又は結晶質としてもよい。ヒドロゲルは、化学又は物理架橋を含み得る。ヒドロゲルは光架橋され得る。ヒドロゲルは、非イオン性、イオン性、酸性基及び塩基性基の双方を含む両性電解質、又はアニオン基及びカチオン基の双方を含む双性イオンとし得る。
【0101】
[00123] 例えば、ポリマー溶液の加熱、ポリマー溶液の冷却、水素結合による、又はイオン相互作用による、物理架橋によって形成され得るヒドロゲルの例は、PEG-PLA、PEO-PPO、アガロース、カラギーナン、ゼラチン、Na+アルジネート-+Ca2+、+2Cl-、Na+アルジネート - ポリリシン、キトサン-ポリリシン、キトサン-TPP、及びCMCを含む。化学架橋によって形成され得るヒドロゲルの例は、コラーゲン-グルタルアルデヒドを含む。放射線架橋によって形成され得るヒドロゲルの例は、PEG、及びPVMEを含む。
【0102】
[00124] 実施形態では、インプラントは、分解速度が異なる第1のヒドロゲル及び第2のヒドロゲルを含み得、第1及び第2のヒドロゲルは架橋量が異なってもよい。第1のヒドロゲルは、第2のヒドロゲルよりも架橋され得、第1のヒドロゲルが第2のヒドロゲルよりもゆっくりと分解するようにする。実施形態では、インプラントは、第3の異なる分解可能速度、及び第3の異なる架橋度の第3のヒドロゲルを含み得る。第3のヒドロゲルは、第2のヒドロゲルが第3のヒドロゲルよりもゆっくりと分解するように、架橋され得る。実施形態では、ヒドロゲルは、架橋量のみが異なっていてもよい。
【0103】
[00125] 実施形態では、ヒドロゲルは、プレゲル及びゲル化剤から形成され得る。例えば、ゲル化剤は架橋剤とし得る。架橋剤は、プレゲルに異なる量又は濃度で加えられて、異なる分解速度のヒドロゲルを生み出し得る。架橋剤は、ヒドロゲルを化学的又は物理的に架橋し得る。架橋剤は、有機及び無機架橋剤を含む薬剤とし得るが、例えばヒドロゲルを光化学的に架橋するための光を含む、非薬剤ともし得る。光架橋によって形成されるヒドロゲルの場合、異なる分解速度のヒドロゲルは、異なる強度の又は異なる持続時間で光を使用することによって、光架橋性プレゲルから形成され得る。光架橋されたヒドロゲルはまた、異なる波長の光で活性化され得る2種以上の異なる架橋の化学的性質を含む光架橋性プレゲルから、異なる分解速度で形成され得る。
【0104】
[00126] 実施形態では、ヒドロゲル及びプレゲルは、天然ポリマー、例えばタンパク質、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、及び多糖類を含み得る。例は、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、エラスチン、シルク、スターチ、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロナン、ヒアルロン酸(HA)、アルジネート、キトサン、カラギーナン、ペクチン、プルラン、デキストラン、βグルカン、ジェラン、ウェラン(welan)、キサンタン、アガロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラチン硫酸、アルブミン、カゼイン、エラスチン、及びレジリンを含む、ヒドロゲル及びプレゲルを含む。ヒドロゲル及びプレゲルは合成ポリマーを含み得る。例は、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、ポリプロピレングリコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリペプチド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリメタクリル酸、及びポリアクリレート及びコポリマーを含む、ヒドロゲル及びプレゲルを含む。実施形態では、ヒドロゲル及びプレゲルは、天然成分及び合成成分の双方、例えば、メタクリル化ゼラチン(GelMa)ヒドロゲル、GelMa及びPEGDA、アルジネート及びポリアクリルアミド、並びにPVA及びカラギーナンを含み得る。実施形態では、ヒドロゲル及びプレゲルは、天然ポリマーの混合物、例えば、ゼラチンとアルジネート、ゼラチンとヒアルロン酸又はその誘導体、ゼラチンとアガーを含み得る。
【0105】
[00127] 実施形態では、インプラントは、ヒアルロン酸ベースのヒドロゲル(HAベースのヒドロゲル)を含む。実施形態では、HAベースのヒドロゲルは、光架橋によって形成される。実施形態では、HAベースのヒドロゲルは、チオール-エン光架橋によって形成される。実施形態では、HAベースのヒドロゲルは、ノルボルネン、又はその誘導体、例えばノルボルネンカルボン酸を用いる誘導体化、及びジチオール架橋剤とのノルボルネンの光開始架橋によって、形成される。任意選択的に、ノルボルネン由来のHAベースのヒドロゲルは、さらに、他のモノチオール又はジチオールとの光開始反応により、他のリガンドを用いて誘導体化され得る。実施形態では、インプラントは、ノルボルネン修飾アルジネートを含む。
【0106】
[00128] 追加的なプレゲル、ゲル化剤、架橋剤、及びヒドロゲル、並びにこれらの3Dヒドロゲルの印刷方法は、Li et al.“3D PRINTING OF HYDROGELS:RATIONAL DESIGN STRATEGIES AND EMERGING BIOMEDICAL APPLICATIONS”,Mater.Sci.Eng,R 140(2020)100543,https://doi.org/10.1016/j.mser.2020.100543に説明されている。
【0107】
[00129] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークを含む、インプラントの補強マトリクスは、1種以上の水溶性ポリマーで満たされる。好ましくは、水溶性ポリマーは、時間が経つにつれて、インプラントから分解可能である。好ましくは、2種以上の水溶性ポリマーがインプラントに存在するとき、水溶性ポリマーは、異なる分解速度を有する。実施形態では、インプラントは、第1の水溶性ポリマー及び第2の水溶性ポリマーを含み、及び第2の水溶性ポリマーは第1の水溶性ポリマーよりも速く分解する。実施形態では、インプラントは、さらに、第3の水溶性ポリマーを含み、及び第3の水溶性ポリマーは第2の水溶性ポリマーよりも速く分解する。
【0108】
[00130] インプラントを作製するために使用され得る水溶性ポリマーの例は:ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリホスフェート、ポリオキサゾリン、ジビニルエーテル-無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、及びポリホスファゼンを含む。
【0109】
[00131] B.添加剤
[00132] いくつかの添加剤がインプラントに組み入れられ得る。添加剤はインプラントのマトリクスに組み入れられ得る。添加剤は、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワーク上に、又はインプラントの表面を含め、インプラントの1種以上のヒドロゲル若しくは1種以上の水溶性ポリマーの中若しくはその上に組み入れられ得る。一実施形態では、1種以上の添加剤は、本明細書で説明するポリマー又はコポリマーと一緒に配合過程中に組み入れられて、ペレット又は繊維を生産し、これは、その後、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを生産するために加工され得る。例えば、ペレット又は繊維は、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを形成するために3D印刷され得る。別の実施形態では、ペレットは、例えば、3D印刷によるさらなる加工に好適な粉末を生じるようにすりつぶされ得る。又は、例えば3D印刷によるさらなる加工に好適な粉末は、添加剤とポリマー又はコポリマーをブレンドすることによって、直接形成され得る。必要ならば、加工に使用するための粉末は、最適な粒径範囲を選択するためにふるいにかけられ得る。別の実施形態では、添加剤は、溶液ベースの処理を使用して、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワーク構造を作製するために使用されるポリマー組成物に組み入れられ得る。実施形態では、1種以上の添加剤は、1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーと混合され、及び1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーでインプラントを満たす最中に、インプラントに組み入れられ得る。実施形態では、1種以上の添加剤は、インプラントが1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーで満たされた後、1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマー上にコーティングされ得る。1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーはまた、1種以上のヒドロゲル又は1種以上の水溶性ポリマーをインプラントに組み入れる前に、1種以上の添加剤を用いて誘導体化され得る。
【0110】
[00133] 好ましい実施形態では、添加剤は生体適合性であり、さらに一層好ましくは、添加剤は、生体適合性及び吸収性の双方である。
【0111】
[00134] 一実施形態では、添加剤は核剤及び/又は可塑剤とし得る。これらの添加剤は、所望の結果を生じるために、インプラントのマトリクスの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するために使用されるポリマー組成物に十分な量で加えられ得る。概して、これらの添加剤は、1重量%~20重量%の量で加えられ得る。核剤は、ポリマー、コポリマー又はブレンドの結晶化速度を増加させるために組み入れられ得る。そのような核剤は、例えば、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークの製作を容易にするために、及びインプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークの機械的特性を改善するために、使用され得る。好ましい核剤は、限定されるものではないが、クエン酸カルシウムなどの有機酸の塩、PHAポリマー及びコポリマーのポリマー又はオリゴマー、高融点ポリマー、例えばPGA、タルク、微粉化雲母、炭酸カルシウム、塩化アンモニウム、並びに芳香族アミノ酸、例えばチロシン及びフェニルアラニンを含む。
【0112】
[00135] インプラントのマトリクスの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを作製するためにポリマー組成物に組み入れられ得る可塑剤は、限定されるものではないが、マレイン酸ジ-n-ブチル、ラウリン酸メチル、フマル酸ジブチル、ジ(2-エチルヘキシル)(ジオクチル)マレエート、パラフィン、ドデカノール、オリーブ油、大豆油、ポリテトラメチレングリコール、オレイン酸メチル、n-プロピルオレエート、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、エポキシ化アマニ油、2-エチルヘキシルエポキシタレート、グリセロールトリアセテート、リノール酸メチル、フマル酸ジブチル、メチルアセチルリシノレエート、アセチルトリ(n-ブチル)シトレート、クエン酸アセチルトリエチル、トリ(n-ブチル)シトレート、クエン酸トリエチル、ビス(2-ヒドロキシエチル)ダイメレート、リシノール酸ブチル、グリセリルトリ-(アセチルリシノレエート)、リシノール酸メチル、n-ブチルアセチルリシノレエー、リシノール酸プロピレングリコール、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジメチル、ジ(n-ヘキシル)アゼレート、リン酸トリ-ブチル、及びその混合物を含む。特に好ましい可塑剤はクエン酸エステルである。
【0113】
[00136] C.生体活性作用物質、細胞及び組織
[00137] インプラントのマトリクスは、生体活性作用物質が入れられ得る、それで満たされ得る、コーティングされ得る、又は他の方法でそれが組み入れられ得る。生体活性作用物質は、様々な理由でインプラントのマトリクスに含まれ得る。例えば、生体活性作用物質は、インプラント中への組織の内方成長を改善するために、組織の成熟を改善するために、活性作用物質の送達をもたらすために、インプラントの湿潤性を改善するために、感染を防ぐために、及び細胞付着性を改善するために、含まれ得る。生体活性作用物質はまた、インプラントのマトリクスの耐荷重マクロ多孔質ネットワーク構造中に若しくはその上に、又はインプラントのマトリクスの1種以上のヒドロゲル中に若しくはその上に組み入れられ得る。
【0114】
[00138] インプラントのマトリクスは、成長因子、細胞接着因子、例えば細胞接着ポリペプチド、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、細胞シグナリング分子、例えばサイトカイン、並びに細胞移動、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外マトリクス沈着を促す分子を含む、細胞の内方成長を刺激するように設計された活性作用物質を含み得る。そのような活性作用物質は、線維芽細胞成長因子(FGF:fibroblast growth factor)、形質転換成長因子(TGF:transforming growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF:platelet derived growth factor)、表皮成長因子(EGF:epidermal growth factor)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF:granulocyte-macrophage colony stimulation factor)、血管内皮細胞成長因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)、インスリン様成長因子(IGF:insulin-like growth factor)、肝細胞成長因子(HGF:hepatocyte growth factor)、インターロイキン-1-B(IL-1 B)、インターロイキン-8(IL-8)、及び神経成長因子(NGF:nerve growth factor)、及びこれらの組み合わせを含む。本明細書で使用されるような、用語「細胞接着ポリペプチド」は、細胞表面分子によって細胞を結合できる、分子当たり少なくとも2つのアミノ酸を有する、化合物を指す。細胞接着ポリペプチドは、細胞接着において役割を果たすことで知られている、細胞外マトリクスのタンパク質のいずれか、例えばフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリノーゲン、I型、II型、及びV型コラーゲン、並びに同様の細胞接着特性を備える合成ペプチドを含む。細胞接着ポリペプチドはまた、結合ドメインを含む小片又は配列を含め、上述のタンパク質のいずれか由来のペプチドを含む。
【0115】
[00139] インプラントのマトリクスは、流体が簡単にインプラント表面上に吸収されることを可能にし、及び細胞付着性を促す及び又はインプラント表面の水接触角度を修正するために、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク、ヒドロゲル又は水溶性ポリマーの構造の表面の湿潤性を改善するように設計された湿潤剤を組み入れ得る。湿潤剤の例は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はこれらのコポリマー、例えばPLURONICS(登録商標)を含む。他の好適な湿潤剤は、界面活性剤、乳化剤及びタンパク質、例えばゼラチンを含む。
【0116】
[00140] インプラントのマトリクスに組み入れられ得る他の生体活性作用物質は、抗菌薬、特に抗生物質、殺菌薬、腫瘍学的作用物質、抗瘢痕化作用物質、抗炎症剤、麻酔薬、小分子薬物、抗接着剤、細胞増殖の阻害物質、抗血管新生因子及び血管新生促進因子、免疫調節薬、並びに血液凝固剤を含む。生体活性作用物質は、タンパク質、例えばコラーゲン及び抗体、ペプチド、多糖類、例えばキトサン、アルジネート、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体、核酸分子、小分子量化合物、例えばステロイド、無機材料、例えばヒドロキシアパタイト及びセラミック、又は複合混合物、例えば多血小板血漿とし得る。好適な抗菌薬は:バシトラシン、ビグアナイド、トリクロサン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、リファンピン、バンコマイシン、セファロスポリン、銅、亜鉛、銀、及び金を含む。核酸分子は、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンチセンス又はアプタマーを含み得る。
【0117】
[00141] インプラントのマトリクスはまた、同種移植材料及び異種移植材料、例えば無細胞真皮マトリクス材料及び小腸粘膜下組織(SIS:small intestinal submucosa)を含み得る。
【0118】
[00142] 実施形態では、インプラントは、血管茎、血管茎穿通枝、又は他の組織塊を含み得る。血管茎、血管茎穿通枝、又は他の組織塊は、自己組織、同種移植組織、又は異種移植組織とし得る。
【0119】
[00143] 別の実施形態では、インプラントは、治療薬又は予防薬の放出制御のためのシステムを組み入れ得る。
【0120】
[00144] ある実施形態では、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、又は任意のこれらの組み合わせで、自家移植片、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞でコーティングされ得る。特に好ましいある実施形態では、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、又は任意のこれらの組み合わせで、患者からの自己組織及び細胞でコーティングされる。自己組織及び細胞は、好ましくは、以下:自家脂肪、脂肪吸引物、脂肪組織(fat tissue)、注入可能な脂肪、脂肪組織(adipose tissue)、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞、例えば脂肪前駆細胞又は脂肪組織由来前駆細胞としても公知のヒトの脂肪組織由来幹細胞、及び線維芽細胞様幹細胞のうちの1つ以上である。好ましい一実施形態では、インプラントは、本明細書で説明するように、自己組織及び細胞でコーティングされ得、及びさらに、血管茎、血管茎穿通枝、又は他の組織塊を含み得る。本明細書で明らかになるように、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワーク構造は、乳房インプラントの形状だけでなく、組織の内方成長を促すための自己組織及び細胞を保持し得る大きな表面領域を作り出すように設計される。
【0121】
[00145] III.多成分乳房インプラントを作製するための方法
[00146] 様々な方法が、インプラントを製造するために使用され得る。
【0122】
[00147] 実施形態では、インプラントは、以下のうちの1つ以上を提供できるように作製される:(i)乳房内の構造支持体、(ii)組織の内方成長のための開放構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを備えるマトリクス、(iii)組織の内方成長を許し及び流体の滞留を防止するか又は最小限にするために、ある期間にわたって増加する、組織の内方成長用の拡張体積部、(iv)インプラントの表面からインプラントのコアの方向に制御された組織の内方成長、(v)水及び高親和性の他の生物学的流体を吸収できる組織の内方成長の体積部、(vi)完全な分解前にインプラントの完全な組織の内方成長を可能にするように操作された、ゆっくりと吸収するマクロ多孔質ネットワーク、(vii)細胞、組織、脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、及び他の生体活性作用物質を乳房へ送達するためのマクロ多孔質ネットワーク、(viii)インプラント構造への移植片、例えば血管茎又は他の組織塊の組み入れを可能にし得る構造、(ix)針を使用する注入によって、マクロ多孔質ネットワークの内側が、細胞、組織、生体活性作用物質、例えば脂肪、脂肪吸引物、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞でコーティングされ得る構造、(x)30%の歪みで少なくとも0.1kgfの圧縮強度を有する、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク、(xi)5~15%の歪みで0.1kPa~10MPaの圧縮弾性率を有する、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを備える構造、(xii)0.3~100kPaの損失弾性率を有する、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを備える構造。
【0123】
[00148] A.インプラント形状
[00149] ある実施形態では、インプラントは、製造時に三次元であるように設計される。実施形態では、インプラントは、永久乳房インプラント、例えばシリコーン及び食塩水乳房インプラントの代わりに使用されるように設計される。
【0124】
[00150] インプラントの形状は、外科医が、組織体積を増加させる、失われた又は欠落した組織又は組織構造を再建する、組織の輪郭をつける、組織を増加させる、組織機能を回復する、損傷した組織構造を修復する、既存の組織構造を強化する、軟組織体積を増加させる、乳房の隆起を変更する、上極のふくよかさを増す、及び乳房を再形成することを可能にする。好ましい実施形態では、インプラントは、乳房を再形成又は修復し、乳房を大きくするために、及び乳房切除術後に乳房を修復するために、使用される。ある実施形態では、インプラントは、永久インプラントを使用することなく、軟組織構造の形状を変更する、又はその形を整えることを可能にする。
【0125】
[00151] 実施形態では、及び
図1Aを参照して説明すると、補強マトリクスを含む多成分乳房インプラント1は、表面2、コア3、患者の胸壁上に又はその近くに配置するための後側区域4、後側区域に対向する前側区域5、乳房の下極内に配置するための前側底部6、乳房の上極内に配置するための前側上部7、患者の皮膚の下に配置するための前側中間領域8、及び開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク9を含む。多成分乳房インプラント1は、さらに、第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12を含み、第3のヒドロゲルはインプラントの表面2に存在する。
図1Bは、後側区域4、後側区域に対向する前側区域5、前側底部6、前側上部7、前側中間領域8、並びにインプラント内の第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12の箇所を備える多成分乳房インプラント1の等角図を示す。
図1Cは、多成分乳房インプラント1の中央面に沿った断面、並びに第1のヒドロゲル10、第2のヒドロゲル11、及び第3のヒドロゲル12の箇所の上面図を示す。
図1Dは、後側区域4及び前側区域5を備える多成分乳房インプラント1の代替的な等角図を示す。実施形態では、1種以上の水溶性ポリマーは、ヒドロゲル10、11及び12のうちの1種以上と取り替えられてもよい。
【0126】
[00152] 乳房インプラントの前側区域は、乳房に隆起をもたらすような形状にされる。本明細書で使用されるようなインプラントの隆起は、インプラントの後側区域と前側区域との間の最大距離である。
【0127】
[00153] 実施形態では、インプラントの前側底部エリアは凸状外面を含む。インプラントの凸状外面形状は、乳房の下極に満足のいく解剖学的な形状をもたらす。
【0128】
[00154] 本明細書で説明する範囲内で、複数のインプラントの形状及び寸法があること、並びに本発明は、添付の特許請求の範囲に列挙される場合を除いて、インプラントの三次元の形状及び寸法に関して限定されないことを理解すべきである。インプラントは、インプラントとして使用するのに好適な任意のサイズ及び形状を有するように組み立てられ得るか又は印刷され得る。例えば、球形、半球形、シリンダー、涙の滴、解剖学的、円錐、ドーム、直方体、四面体、三角若しくは正四角柱、十二面体、円環体、及び楕円体などの三次元形状を有するインプラントは、簡単に作製され得、及びあつらえの形状が、任意選択的にコンピュータ支援設計を活用して生産され得る。例えば、乳房の再建のためにドーム形状のインプラントを生産できる。
【0129】
[00155] 補強マトリクスを含むインプラントの形状は、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク構造によって作り出される。例えば、
図1Aのドーム形状は、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク構造9によって作り出される。耐荷重マクロ多孔質ネットワークの形状は、異なるインプラント形状を提供するために変更されてもよい。
【0130】
[00156] インプラントは、インプラントの前側底部エリア及び前側上部エリアに異なる形状を有し得る。インプラントの寸法は、乳房組織体積を増加させる、以前の乳房組織体積の代わりとなる、乳房組織の体積分布を変更する、乳房組織の見た目を変更する、又は既存の乳房組織体積をより小さい体積に置き換えるようなサイズにされ得る。インプラントは、乳房に、低い、適度な、又は高い輪郭形状をもたらすようなサイズ又は形状にされ得、ここで、インプラントの輪郭は、乳房の隆起を決定する。高い輪郭形状のインプラントは、乳房の側壁の高さを高くし、及び患者に、より上極のふくよかさ、又は谷間をもたらすために使用され得る。乳房の側壁の高さをそれよりも低くなるように高くすることは、低い又は適度な輪郭形状のインプラントを使用して得られ得る。インプラントは、乳房固定術及び乳房再建において使用することを可能にするのに十分な大きさのサイズで、乳房において使用するために設計され得る。実施形態では、乳房インプラントは、100~1200cc(立方センチメートル)の体積、及び一層好ましくは120~850ccの体積を有する。実施形態では、インプラントは、乳房の幅に広がるのに十分な幅がある。実施形態では、インプラントの後側区域の幅は、6~20cm、及び一層好ましくは8~18cmである。本明細書で使用されるようなインプラントの隆起は、インプラントの後側区域と前側区域との間の最大距離である。実施形態では、インプラントの隆起は、2~15cm、一層好ましくは3~10cm、及びさらに一層好ましくは4~7cmである。
【0131】
[00157] 好ましい実施形態では、インプラントは、永久乳房インプラント、例えばシリコーン乳房インプラントを使用せずに、乳房の軟組織体積を変えるために使用され得る形状で提供される。実施形態では、インプラントは、乳房のサイズを大きくしたり、乳房切除術処置後に乳房の組織の体積及び形状を置き換えたりするために使用されるような形状及びサイズで作製され得、乳房の欠陥を取り除き、及び乳房に特定の見た目を生み出す。例えば、インプラントは、乳房への移植時に、上極体積(UPV:upper pole volume)対下極体積(LPV:lower pole volume)が特定の比である乳房を生み出すように、作製され得る。実施形態では、インプラントは、体積寸法を有する乳房インプラントであり、インプラントの移植によってUPVが総乳房体積の25~35%、及びLPVが総乳房体積の65~75%である乳房をもたらすようにする。上極及び下極の組織における特定の体積比で乳房の形を整えることに加えて、インプラントの寸法及び形状はまた、非常に望ましい形状の下極、上極、及び胸壁からの乳房の隆起の度合いをもたらすように選択され得る。実施形態では、インプラントは、(a)乳房の下極が、非常に魅力的な下極の湾曲、具体的には魅力的な凸形状を有し、(b)乳房の上極が、直線状又はわずかに凹状の湾曲を有し、及び(c)乳房が乳房壁から隆起する距離が規定されるように、設計される。それゆえ、本発明のインプラントは、(i)UPV対LPVの比を規定し;(ii)上極及び下極の湾曲を規定し;(iii)胸壁からの乳房の隆起の度合いを規定し;並びに(iv)乳房での乳頭の角のある形を規定する、特定の形状を有することによって、非常に魅力的な再建された乳房を生み出すために使用され得ることが明らかになるであろう。
【0132】
[00158] インプラントの形状は変わってもよい。形状の非限定的な例は:丸みを帯びた、涙の滴、解剖学的な乳房形状、又は解剖学的な乳房外形を含む。
【0133】
[00159] インプラントの追加的な形状は、2019年1月30日出願の米国特許出願第16/262,018号(「FULL CONTOUR BREAST IMPLANT」)に記載されており、及びその全体を本願明細書に援用する。
【0134】
[00160] 実施形態では、インプラントは、1つ以上の組織塊を挿入するために1つ以上の開口部を含む。好ましい実施形態では、インプラントは、インプラントの後側区域(例えば、
図1Aの後側区域4)に1つ以上の開口部を含む。インプラントの後側区域にある1つ以上の開口部は、インプラントの後側区域が胸壁に移植されるときに、外科医がインプラントに1つ以上の茎を挿入することを可能にする。インプラントにある1つ以上の開口部は、インプラントにチャンバーを作り出し得るか、又はインプラント中を通る通路を作り出し得る。例えば、開口部は、インプラントの後側区域4からインプラントの前側区域5まで延在し得る。実施形態では、インプラントは、組織塊の挿入のための、内側から外側方向に延在する開口部を含み得る。実施形態では、インプラントは、インプラントの前側区域5、前側底部6、前側上部7又は前側中間領域8に、1つ以上の開口部を含み得る。1つ以上の開口部の寸法は、組織塊を受け入れるようなサイズにされる。
【0135】
[00161] B.インプラントの構築
[00162] インプラントは、開放セル構造、及び1種以上のヒドロゲル、1種以上の水溶性ポリマー、又はヒドロゲルと水溶性ポリマーとの組み合わせを備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む補強マトリクスを含む。
【0136】
[00163] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、テキスタイル加工を使用して作製され得、及びフィラメントを含み得る。例えば、マクロ多孔質ネットワークは、フィラメントを編む、織る、又は編組することによって作製されてもよい。フィラメントは、モノフィラメント、マルチフィラメント及び又はヤーンとし得る。実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは3Dテキスタイルである。
【0137】
[00164] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、直交織物構造、多層構造、又は斜交三次元織物構造とし得る。実施形態では、3Dテキスタイルは、2つの軸(x軸及びy軸)に沿って送られるフィラメント又はヤーン、プラス、追加の角度をつけて送られるフィラメント又はヤーンによって形成されて、厚さを生じる。実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、3D編み構造である。
【0138】
[00165] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、不織テキスタイルを使用して作製され得る。実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、不織の複数の層を含む。実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、不織3Dファブリックを含み得る。不織は、短いフィラメント、例えば短糸フィラメントを含み得る。実施形態では、不織は、メルトブローされるか、電気紡糸されるか、ステープル繊維から得られるか、乾紡糸されるか、遠心紡糸法によって作製されるか、溶液紡糸されるか、スパンレイドされるか、又はスパンボンドされる。
【0139】
[00166] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、3D編組ファブリックを含み得る。実施形態では、3D編組ファブリックは、3つの直交する組のフィラメント又はヤーンを相互にメッキ加工する(inter-plating)ことによって、形成され得る。
【0140】
[00167] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、3D複合材を含み得る。例えば、マクロ多孔質ネットワークは、3D織り複合材、3D編組複合材、3D縫合複合材を含み得る。実施形態では、3D複合材は、3Dプリフォーム、例えば3D織り複合材、3D編組複合材、又は3D縫合複合材に樹脂を塗布することによって、形成される。
【0141】
[00168] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、粒子浸出法又は相分離によって形成される。例えば、粒子又はポロゲンを含むポリマー溶液は、マクロ多孔質ネットワークの形状に形成された好適な型へ移され得、その後、例えば、蒸発又は凍結乾燥によって溶媒が除去され、ポリマー構造中に粒子を残す。その後、型は浴へ移され、粒子又はポロゲンを溶解してマクロ多孔質ネットワークを形成し得る。
【0142】
[00169] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、発泡によって形成される。実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは、開放セルの多孔質発泡体である。
【0143】
[00170] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、ラミネーションによって形成される。実施形態では、積層体は穿孔されて、マクロ多孔質ネットワークを形成する。
【0144】
[00171] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3D印刷によるフィラメント又は印刷線から形成される。一実施形態では、インプラントは、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを構築するために、3D印刷を使用して作製される。マクロ多孔質ネットワークの3D印刷は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの形状の精密制御を可能にするため、非常に望ましい。3D印刷に好適な方法は、押出ベースの積層造形、熱溶解積層法、熱溶解フィラメント製法、溶融押出堆積、選択的レーザ溶融、凝固浴を使用するスラリー及び溶液の印刷、並びに結合溶液及び粉末の顆粒を使用する印刷を含む。好ましくは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、押出ベースの積層造形、例えば熱溶解積層法又は熱溶解フィラメント製法によって、作製される。
【0145】
[00172] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークのフィラメント又は印刷線の平均直径又は幅は、50~800μm、一層好ましくは100~600μm、及びさらに一層好ましくは150~550μmである。実施形態では、インプラントのフィラメント間の距離は、50μm~5mm、一層好ましくは100μm~1mm、及びさらに一層好ましくは200μm~1mmである。
【0146】
[00173] フィラメントの平均直径及びフィラメント間の距離は、望まれる耐荷重マクロ多孔質ネットワークの特性、例えば圧縮弾性率(compression modulus)及び多孔度に従って、選択され得る。例えば、マクロ多孔質ネットワークの多孔度は、フィラメントのサイズ、フィラメント間の間隔、及び印刷又はテキスタイルパターンが一定に保たれる場合、インフィル密度(マクロ多孔質中でフィラメント材料が占める体積をマクロ多孔質ネットワークの全体積で割った比を、百分率で表していると定義される)を低下させることによって、低下され得る。インフィル密度が低下するとき、フィラメントのサイズ、フィラメント間の間隔、及び印刷パターンが一定に保たれる場合、圧縮弾性率も低下する。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークのインフィル密度は、1~60%、及び一層好ましくは5~25%である。
【0147】
[00174] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの細孔の幅又は直径は、15mm未満、及び好ましくは1mm~8mm、及び一層好ましくは2mm~5mmである。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔サイズは同じである。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、複数の細孔サイズが混じり合っている。好ましくは、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワーク中のヒドロゲル又は水溶性ポリマーが分解されるにつれて、マクロ多孔質ネットワークに細胞によってコロニーが作られ、及び組織、血管、又はこれらの組み合わせによって入り込まれることを可能にするのに好適な、より大きな表面領域及び大きな空隙体積を提供するアーキテクチャを有する。
【0148】
[00175] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの外側多孔度は、マクロ多孔質ネットワークの垂直多孔度を下回り得る、又は上回り得る。
【0149】
[00176] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワーク内のフィラメント又は印刷線は、少なくとも1つの他のフィラメント又は印刷線に結合される。
【0150】
[00177] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワーク内のフィラメント又は印刷線は、表面粗さを有する。
【0151】
[00178] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの特性、例えば圧縮弾性率はまた、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを印刷するための3D CAM(Computer Aided Design Model)を変えることによって、変更され得る。
【0152】
[00179] 実施形態では、マクロ多孔質ネットワークは単位セルを含む。実施形態では、ネットワークは、以下の形状:四面体、直方体、五面体、六面体、七面体、八面体、二十面体、十面体、十二面体、十四面体、並びに角柱、反角柱、及びその先端を切り取った多面体のうちの1つ以上を備える単位セルから作製され得る。角柱、反角柱及び先端を切り取った多面体の形状の単位セルの例は、六角柱、八角形の反角柱、及び先端を切り取った十二面体である。ある実施形態では、単位セルは、長尺状の多面体から形成される。好ましい実施形態では、単位セルは、4、6、8、12又は20面を有する。特に好ましいある実施形態では、単位セルは、十二面体、さらに一層好ましくは菱形十二面体である。実施形態では、ネットワークは、2つ以上の異なる単位セル、例えば、十二面体と八角形形状との組み合わせから製作され得る。実施形態では、単位セルのサイズ及び形状は、異なる体積密度の異なるタイプの多孔質ネットワークを提供するために選択され得る。繰り返し単位セルから形成されるネットワークの特性は、極めて予想可能であり、並びに単位セルの寸法、及び単位セルを作製するために使用される材料に基づいて予想され得る。物理的特性が異なる単位セルは、単位セルの寸法、単位セルの幾何学的形状、及び単位セルを作製するために使用される材料を選択することによって、作製され得る。特定の単位セルの寸法及び材料を選択することによって、圧縮性及び軟質である特性を備える単位セルからネットワークを生産することを可能にする。実施形態では、ネットワークの機械的特性は、単位セルの形状は変えないが、その代わりに、単位セルのフィラメントの直径又は幅を変えることによって、変更され得る。例えば、所望の機械的特性、例えば弾性率又は圧縮強度が分かっている場合、所与のポリマーから製作された所与の単位セルの必要なフィラメントの厚さ又は直径は計算され得る。好ましい実施形態では、単位セルの寸法及び材料は、単位セルから作製されるインプラントネットワークが乳房組織の特性と同様の特性を有するように、選択される。好ましい実施形態では、マクロ多孔質ネットワークの単位セルは、圧縮され、及び任意選択的に、圧縮力が解放されると、それらの元の形状に回復し得る。
【0153】
[00180] 実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔の寸法は、注入によって生体活性作用物質、細胞、脂肪、及び他の組成物を送達するために、ネットワークの細孔に針を挿入可能にするように、十分に大きい。実施形態では、マクロ多孔質ネットワークのアーキテクチャは、ゲージ12~21の針をネットワークに挿入することを可能にするように設計される。この特性は、シリンジを使用して、ネットワークを損傷せずに、マクロ多孔質ネットワークに細胞、組織、コラーゲン、生体活性作用物質及び添加剤、例えば脂肪が入れられることを可能にする。実施形態では、ネットワークは、外径0.5~3mmの針をネットワークに挿入することを可能にする。
【0154】
[00181] 実施形態では、インプラントは、補強マトリクスを囲む、又は耐荷重マクロ多孔質ネットワークを囲む外殻を含む。
【0155】
[00182] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、組織塊を挿入するための1つ以上の開口部をさらに含むように3D印刷され得る。組織塊は、好ましくは血管茎である。開口部は、好ましくは、組織塊を挿入するためにインプラントの後側区域4に形成される。開口部は、インプラント中へ部分的に延在し得るか、又はインプラントの後側区域4から前側区域5へ延在し得る。インプラントは、インプラントの前側底部6、前側上部7又は前側中間領域8に開口部を含み得る。これらの開口部は、インプラント中へ部分的に延在しても、又はインプラント全体に延在してもよい。
【0156】
[00183] 典型的な処置では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、吸収性ポリマー又はそのブレンドを含む組成物の押出ベースの積層造形、例えば溶融押出堆積、熱溶解ペレット積層、及び熱溶解フィラメント製法によって、作製される。
【0157】
[00184] 吸収性ポリマー又はブレンドは、好ましくは、印刷前に乾燥されて、固有粘度の相当な損失を回避する。好ましくは、ポリマー又はブレンドは乾燥されて、印刷される組成物の水分含量が、重量測定法で測定されるときに、0.5wt%以下、及び一層好ましくは0.05wt%以下となるようにする。ポリマー又はブレンドは、真空内で乾燥され得る。特に好ましい方法では、ポリマー又はブレンドは、少なくとも10mbar、一層好ましくは少なくとも0.8mbarの真空下の真空のチャンバー内で、水分含量0.03重量%未満まで乾燥される。ポリマーの融点を下回る昇温も、乾燥過程において使用されてもよい。或いは、ポリマーは、溶媒中への抽出及びポリマーの再沈殿によって、又は乾燥剤を使用することによって、乾燥されてもよい。ポリマー又はブレンドの水分含量は、Arizona InstrumentからのVaporPro Moisture Analyzer、又は同様の器具を使用して、決定され得る。
【0158】
[00185] ある実施形態では、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)の押出ベースの積層造形、例えば熱溶解ペレット積層、熱溶解フィラメント製法、及び溶融押出堆積によって、形成される。P4HBポリマー(Mw100~600kDa)は、好ましくは、3D印刷に関して上述したように、乾燥される。ポリマーは、ペレット化され、及び任意選択的に、熱溶解ペレット積層法及び溶融押出堆積のためにすりつぶされ得るか、又は熱溶解フィラメント製法による3D印刷に好適なフィラメントに押し出され得る。
【0159】
[00186] P4HBペレット又はフィラメントは、溶融押出ベースの積層造形によって3D印刷されて、例えば、表1に示す印刷パラメータ、Arburg Freeformed 200-3X 3Dプリンター、及びインプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワーク用の3D CAD(Computer Aided Design)Modelを使用して、乳房インプラントのマクロ多孔質ネットワークを形成し得る。P4HBポリマーから印刷される3Dフィラメントの平均直径は、所望の耐荷重マクロ多孔質ネットワークの特性、例えばネットワークの圧縮弾性率、及び多孔度又はインフィル密度に基づいて、選択される。好ましくは、平均的なフィラメントの直径又は幅は、50~800μm、一層好ましくは100~600μm、及びさらに一層好ましくは150~550μmである。
【0160】
【0161】
[00188] 別の実施形態では、表2に示すパラメータは、ポリ(ブチレンサクシネート)若しくはそのコポリマーを含む組成物、及びArburg Freeformed 200-3X 3Dプリンターを使用する、耐荷重マクロ多孔質ネットワークの溶融押出ベースの積層造形に使用され得る。
【0162】
【0163】
[00190] 実施形態では、インプラントは、1種以上のヒドロゲル、1種以上の水溶性ポリマー、又はこれらの組み合わせによって少なくとも部分的に満たされた耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む補強マトリクスを含む。
【0164】
[00191] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、3D印刷によって、ヒドロゲル及び/又は水溶性ポリマーで満たされ得る。一実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、1つのプリントヘッドからプレゲル溶液又はスラリーを3D印刷し、及び第2のプリントヘッドからゲル化剤をプレゲル溶液に加えることによって、ヒドロゲルで少なくとも部分的に満たされる。プレゲル溶液にゲル化剤を加えることによって、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク内でのヒドロゲルの形成につながる。実施形態では、ヒドロゲルは、プレゲル溶液を印刷しゲル化剤を加えるのではなく、プレゲルを照射してヒドロゲルを形成することによって、プレゲル溶液又はスラリーから形成され得る。この方法は、例えば、光の照射によってプレゲル溶液又はスラリーが架橋され得るときに使用され得る(すなわち、方法は、光架橋性ヒドロゲルの作製において使用され得る)。
【0165】
[00192] インプラントの3D印刷に使用されるプレゲル溶液又はスラリーの濃度は、プレゲルの分子量次第である。実施形態では、プレゲル溶液又はスラリーは、濃度1~20wt%、一層好ましくは1~10wt%、及びさらに一層好ましくは2~5wt%のプレゲルの溶液又はスラリーから印刷される。例えば、アルジネートプレゲルは、濃度2~5wt%で印刷され得、及び塩化カルシウムの溶液がゲル化剤として使用される。実施形態では、プレゲル溶液は、プレゲルの混合物を含み得る。例えば、プレゲル溶液は、3%のアルジネート及び9%のメチルセルロースを含み、及び塩化カルシウムの溶液を用いてゲル化され得る。
【0166】
[00193] 実施形態では、分解速度が異なる2種のヒドロゲルは、プレゲル溶液又はスラリーの架橋を増減させることによって、同じプレゲル溶液又はスラリーからインプラントを少なくとも部分的に満たすように3D印刷され得る。例えば、第1のヒドロゲルは、プレゲル溶液又はスラリーからインプラント中に印刷され、及びゲル化溶液を用いて架橋され得、及び第2のヒドロゲルは、同じプレゲル溶液から印刷されるが、より低濃度のゲル化溶液を使用するか又はゲル化溶液へのプレゲルの曝露時間を短縮すること(例えば、プリンターによって塗布されるゲル化溶液の滴下を減らす)によって、同じゲル化溶液を用いて、少ない程度で架橋され得る。或いは、例えば、第1のヒドロゲルは、プレゲル溶液又はスラリーからインプラント中に印刷され、光の照射によって架橋され得、及び第2のヒドロゲルは、同じプレゲル溶液からインプラント中に印刷されるが、光へのプレゲルの曝露時間を短縮するか又は光の強度を低下させることによって、少ない程度で架橋される。
【0167】
[00194] 実施形態では、2種のヒドロゲルは、2種の異なるプレゲル溶液又はスラリーを印刷することによって、インプラント中に印刷され得る。第1のヒドロゲルは、マクロ多孔質ネットワーク中に第1のプレゲル溶液又はスラリーを、及び第1のゲル化剤を印刷することによって、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク中に印刷され得る。第2のヒドロゲルは、マクロ多孔質ネットワーク中に第2のプレゲル溶液又はスラリーを、及びゲル化剤を印刷することによって、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク中に印刷され得る。第2のヒドロゲルの選択次第で、ゲル化剤は、第1のゲル化剤と同じであっても、又は異なってもよい。実施形態では、第1のプレゲル及び第1のゲル化剤は、マクロ多孔質ネットワークのコアを第1のヒドロゲルで満たすために印刷され、第2のプレゲル及びゲル化剤は、第1のヒドロゲルを取り囲む第2のヒドロゲルを形成するために印刷される。
【0168】
[00195] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、水溶性ポリマーのフィラメント又は樹脂を3D印刷することによって、水溶性ポリマーで少なくとも部分的に満たされる。例えば、ポリビニルアルコールのフィラメントは、マクロ多孔質ネットワークを少なくとも部分的に満たすために使用され得る。実施形態では、ポリビニルアルコールフィラメントは、押出温度205~220℃で3D印刷され得る。
【0169】
[00196] 好ましくは、インプラントは、複数のプリントヘッドを備える3Dプリンターセットアップを使用して作製され、ここで、プリンターは、単一の製造ステップで、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク並びにインプラントの1種以上のヒドロゲル及び/又は1種以上の水溶性ポリマーを印刷し得る。
【0170】
[00197] 耐荷重マクロ多孔質ネットワーク及び2種のヒドロゲルを含む補強マトリクスを含むインプラントを3D印刷するための好適なセットアップ20が、
図2に示されている。この実施形態では、3Dプリンターは、3個のプリントヘッド23、24、及び25と、3D印刷ステージ22とを含む。第1のプリントヘッド23のリザーバ29は、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを印刷するためのポリマー組成物のペレット32が充填されている。第2のプリントヘッド24のリザーバ30は、プレゲル溶液又はスラリー33が充填されており、及び第3のプリントヘッド25のリザーバ31は、ゲル化剤34が充填されている。
図2は、印刷ステージ22上で、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク26を印刷すること、及びそれを第1のヒドロゲル27と、第1のヒドロゲル27を囲む第2のヒドロゲル28とで満たすことを同時に行うことによって、印刷中のインプラント21を示す。マクロ多孔質ネットワークの印刷並びに第1及び第2のヒドロゲルでネットワークを満たすことは、インプラント用の3D CAD Modelに従って実施される。第1のヒドロゲル27は、第2のプリントヘッド24からプレゲル33の溶液又はスラリーを印刷し、及び第3のプリントヘッド25から第1の濃度又は量のゲル化剤34を加えることによって、マクロ多孔質ネットワーク中に形成され得る。第2のヒドロゲル28は、マクロ多孔質ネットワーク中に形成され得るため、第2のプリントヘッド24からプレゲル33の溶液又はスラリーを印刷し、及び第3のプリントヘッドから第2の濃度又は量のゲル化剤34を加えることによって、第1のヒドロゲル27を取り囲む。第1及び第2の濃度又は量のゲル化剤34は、第1及び第2のヒドロゲルを形成するために選択され得、ここで、第2のヒドロゲルは第1のヒドロゲルよりも速く分解する。例えば、第2のヒドロゲル28を形成するために加えられるものよりも高い濃度又は量のゲル化剤34がプレゲル33に加えられて、第1のヒドロゲル27を形成する。実施形態では、プリントヘッド23は、ペレットの代わりに、フィラメントを印刷するように設計され得る。
【0171】
[00198] 別の実施形態では、
図2に示すものと同様の機材セットアップが、マクロ多孔質ネットワーク及び2種のヒドロゲルを含む補強マトリクスを含むインプラントを3D印刷するために使用され得、ここで、第1及び第2のヒドロゲルは、ゲル化剤を使用する代わりに、光架橋によって形成される。この実施形態では、第3のプリントヘッド25は、プレゲル33を光架橋するために、好適な光源で置き換えられ得る。この実施形態では、分解速度が異なる複数のヒドロゲルが、異なる時間だけ又は異なる強度の光若しくは異なる波長の光でプレゲルを照射することによって、形成され得る。より長い期間プレゲルを照射することは、例えば、プレゲルがより短期間照射されるときに形成されるものよりも高度に架橋され及びそれよりもゆっくりと分解するヒドロゲルを形成するために使用され得る。
【0172】
[00199] 実施形態では、耐荷重マクロ多孔質ネットワーク41と、2種の異なるプレゲルを使用してインプラントの2種のヒドロゲル42及び43との双方を3D印刷するための好適なセットアップ40が、
図3に示されている。この実施形態では、3Dプリンターは、4個のプリントヘッド46、47、48、及び49と、3D印刷ステージ45とを含む。第1のプリントヘッド46のリザーバ50は、耐荷重マクロ多孔質ネットワークを印刷するためのポリマー組成物のペレット54が充填されている。第2のプリントヘッド47のリザーバ51は、第1のプレゲル溶液又はスラリー55が充填されている。第3のプリントヘッド48のリザーバ52は、第2のプレゲル溶液又はスラリー56が充填されている。及び第4のプリントヘッド49のリザーバ53は、ゲル化剤57が充填されている。
図3は、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワーク41を印刷すること、及びそれを、第1のヒドロゲル42と、第1のヒドロゲル42を取り囲む第2のヒドロゲル43とで満たすことを同時に行うことによって、印刷ステージ45で印刷中のインプラント44を示す。マクロ多孔質ネットワークの印刷並びに第1及び第2のヒドロゲルでネットワークを満たすことは、インプラント用の3D CAD Modelに従って実施される。第1のヒドロゲル42は、第2のプリントヘッド47から第1のプレゲル55の溶液又はスラリーを印刷し、及び第4のプリントヘッド49からゲル化剤57を加えることによって、マクロ多孔質ネットワーク中に形成され得る。第2のヒドロゲル43は、第3のプリントヘッド48から第2のプレゲル56の溶液又はスラリーを印刷し、及び第4のプリントヘッドからゲル化剤57を加えることによって、マクロ多孔質ネットワーク中に、第1のヒドロゲル42を取り囲むように、形成され得る。第1及び第2のヒドロゲルは、第2のヒドロゲルが第1のヒドロゲルよりも速く分解するように、選択及び形成され得る。実施形態では、プリントヘッド46は、ペレット54の代わりにフィラメントを印刷するように構成され得る。
【0173】
[00200] 実施形態では、及び
図5A~5Cを参照して説明すると、インプラントは、3種のヒドロゲル全てが胸壁と接触するように、印刷され得る。この実施形態では、インプラントが移植されると、各ヒドロゲルが胸壁と接触するようになる。実施形態では、インプラントは、インプラント100の後側区域140を除いて、第2のヒドロゲル120が第1のヒドロゲル110を取り囲むように、印刷され得、後側区域では、ヒドロゲルは、胸壁と接触する。実施形態では、1種又は2種の水溶性ポリマーは、ヒドロゲルの一方又は双方と取り替えられてもよい。例えば、インプラントが、第1のヒドロゲル110を取り囲むために、第2のヒドロゲル120の代わりに、水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコールを3D印刷することによって、作製され得る。ポリビニルアルコールは、例えば、ポリビニルアルコールフィラメントから、押出温度205~220℃で、3D印刷され得る。実施形態では、インプラントは印刷され得、ここでは、インプラントは、インプラント100の背面140を除いて、第2のヒドロゲル120を取り囲む第3のヒドロゲル130と、第1のヒドロゲル110取り囲む第2のヒドロゲルとを含む。実施形態では、1種、2種又は3種の水溶性ポリマーは、ヒドロゲル110、120及び130のうちの1つ以上と取り替えられてもよい。
【0174】
[00201] 実施形態では、及び
図6A~6Cを参照して説明すると、インプラント200の全てのヒドロゲル(210、220、230)が、インプラントの後側区域240に存在する。実施形態では、1種以上の水溶性ポリマーは、ヒドロゲルのうちの1つ以上と取り替えられてもよい。
【0175】
[00202] 実施形態では、インプラントの全てのヒドロゲル(210、220、230)、又はインプラントの1種以上の水溶性ポリマーは、インプラントが患者の体内に移植されると、胸壁と接触し得る。
【0176】
[00203] 実施形態では、インプラントは、3D印刷を使用することなく、ヒドロゲル及び/又は水溶性ポリマーで少なくとも部分的に満たされ得る。
【0177】
[00204] 実施形態では、インプラントは、開放セル構造を備える耐荷重マクロ多孔質ネットワークをプレゲルの溶液又はスラリー中に浸し、プレゲルがマクロ多孔質ネットワークに侵入することを可能にし、プレゲルの溶液又はスラリーを除去し、及びプレゲルを架橋することによって作製される。実施形態では、プレゲルは、光に曝露することによって光架橋されて、マクロ多孔質ネットワーク内にヒドロゲルを形成する。
【0178】
[00205]
図4A~Cは、ある実施形態において、最初に、プレゲルがマクロ多孔質ネットワークに侵入することを可能にし、その後、プレゲルを架橋して、ヒドロゲルで少なくとも部分的に満たされたマクロ多孔質ネットワークを提供することによって、どのようにインプラントが作製され得るかを示す。
図4Aは、インプラント62の耐荷重マクロ多孔質ネットワーク61が入っているビーカー60の断面の側面図を示す。耐荷重マクロ多孔質ネットワークは、例えば、本明細書で説明するように3D印刷することによって作製され得る。
図4Bに示すように、ビーカーは、プレゲル64の溶液又はスラリーで満たされ得、それが、マクロ多孔質ネットワーク61を浸している又は覆っている。ビーカーは振盪器63上に配置され、
図4Bの矢印65の方向によって示すように、マクロ多孔質ネットワーク中へのプレゲルの拡散を促すために、振盪される。ひとたびプレゲルがマクロ多孔質ネットワーク中に拡散されたら、プレゲルの残りの溶液又はスラリーは、ビーカーから除去される。
図4Cは、ネットワークがプレゲルの溶液又はスラリーに浸されて、溶液又はスラリーが除去された後の、プレゲル66で満たされたマクロ多孔質ネットワーク61を示す。その後、マクロ多孔質ネットワーク61内に保持されているプレゲル66は架橋されて、マクロ多孔質ネットワーク中でヒドロゲルを形成し得る。
図4Cに示す例では、プレゲルは、プレゲル66を光67に曝露させることによって架橋される。代替的な実施形態では、プレゲル66は、プレゲルにゲル化剤を加えることによって、架橋され得る。
図4A~Cに示す方法は、1種のヒドロゲルで満たされたマクロ多孔質ネットワークを含むインプラントの作製に、好ましくは、光架橋性ヒドロゲルを備えるインプラントの作製に、最も好適である。実施形態では、光架橋性プレゲルは、ノルボルネン誘導体化ヒアルロン酸ベースのプレゲルを含む。これらのプレゲルは、ジチオール架橋剤の存在下で、例えば、波長320~390nmのUV光に曝露することによって架橋され得る。
【0179】
[00206] C.インプラントの特性
[00207] ある実施形態では、インプラントの機械的特性は、インプラントの機械的特性が乳房組織の機械的特性に近づくように、設計される。実施形態では、インプラントの機械的特性は、インプラントの耐荷重マクロ多孔質ネットワークを含む補強マトリクスの機械的特性が乳房組織の機械的特性に近づくように、設計される。
【0180】
[00208] 実施形態では、インプラント又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークの圧縮弾性率は、5~15%の歪みで、0.1kPa~10MPa、一層好ましくは0.3kPa~1MPa、及びさらに一層好ましくは3kPa~200kPaである。実施形態では、インプラント又はマクロ多孔質ネットワークの圧縮弾性率は、圧縮力が加えられると、インプラントは圧縮されるものの、圧縮力が除去されると、圧縮から回復することを可能にする。
【0181】
[00209] 別の実施形態では、インプラント又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークの圧縮弾性率は、5~15%の歪みで、乳房組織の圧縮弾性率の±50%である。他の実施形態では、インプラント又はマクロ多孔質ネットワークの圧縮弾性率は、5~15%の歪みで、腺組織、脂肪組織、皮膚、胸筋筋膜、又は乳房組織の圧縮弾性率の±50%、一層好ましくは±25%である。
【0182】
[00210] 実施形態では、乳房インプラントのマクロ多孔質ネットワークに存在するフィラメントは、ポリマー組成物から形成される。ポリマー組成物は、好ましくは、以下の特性:(i)破断点伸び100%超;(ii)破断点伸び200%超;(iii)溶融温度60℃以上、(iv)溶融温度100℃超、(v)ガラス転移温度0℃未満、(vi)ガラス転移温度-55℃~0℃、(vii)引張弾性率300MPa未満、及び(viii)引張強度25MPa超のうちの1つ以上を有する。
【0183】
[00211] 実施形態では、乳房インプラントのマクロ多孔質ネットワークに存在するフィラメントは、以下の特性:(i)破断荷重0.1~200N、1~100N、又は2~50N;(ii)破断点伸び10%~1,000%、一層好ましくは25%~500%、及びさらに一層好ましくは100%又は200%超、並びに(iii)弾性率0.05~1,000MPa、及び一層好ましくは0.1~200MPaのうちの1つ以上を有する。
【0184】
[00212] 実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、異方性特性を有し得る。すなわち、マクロ多孔質ネットワークは、異なる方向に異なる特性を有し得る。例えば、マクロ多孔質ネットワークは、1つの方向に第1の圧縮弾性率、及び第2の方向に第2の異なる圧縮弾性率を有し得る。実施形態では、乳房インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントの前側上部から前側底部までの方向において、乳房への移植時に、外側から内側の方向に測定されたインプラントの特性と対比して、異なる特性を有し得る。
【0185】
[00213] インプラントのマクロ多孔質ネットワーク中への組織の内方成長を可能にするために、マクロ多孔質ネットワークは、インプラントのマクロ多孔質ネットワークに細胞及び血管が入り込んで増殖することを可能にするために、強度保持率を十分に長く有するべきである。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの強度保持率は、2週間で少なくとも25%、一層好ましくは2週間で少なくとも50%、及びさらに一層好ましくは4週間で少なくとも50%である。他の実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントに作用する機械的な力を支え、及びマクロ多孔質ネットワークから再生した宿主組織へ機械的な力を着実に移行させることを可能にするように、設計される。特に、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、インプラントに作用する機械的な力を支え、及びマクロ多孔質ネットワークから新しい宿主組織へ機械的な力を着実に移行させることを可能にするように、設計される。
【0186】
[00214] D.インプラントの他の特徴
[00215] インプラント、補強マトリクス、又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークトは、ハサミ、ブレード、他の鋭い切断器具、又はサーマルナイフを用いてトリミング又は切断されて、所望のインプラント又はマクロ多孔質ネットワークの形状をもたらし得る。インプラント又はマクロ多孔質ネットワークはまた、レーザ切断技術を使用して所望の形状に切断され得る。これは、フィラメントベースのインプラントを形作るのに特に好都合とし得る。なぜなら、この技術は用途が広く、及び重要なことには、鋭端がない状態に形作られたインプラント及びマクロ多孔質ネットワークを提供し得るためである。
【0187】
[00216] インプラントは縫合糸タブを含み得るため、インプラントは、例えば縫合糸及び又はステープルを使用して体内で留められ得る。タブの数は変わってもよい。一実施形態では、タブの数は、インプラントにかかる荷重次第である。インプラントがより重い又はより大きい体積を有するとき、より多数のタブが望ましいとし得る。実施形態では、インプラントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上のタブを含む。実施形態では、インプラントは、好ましくは、乳房インプラントを胸壁に留めるために、4個以上のタブ、好ましくは4~12個のタブを含む。タブの寸法は、好ましくは0.5cm×0.5cmから5cm×4cmまで、及び一層好ましくは2cm×2.5cmである。インプラントに取り付けられたタブは、機械的荷重に抵抗するために、及びインプラント中への組織の十分な内方成長を可能にするために、生体内での十分な強度保持率を有する必要があり、移植後のインプラントの動きを防止する。好ましい実施形態では、インプラントに取り付けられたタブの縫合糸引き抜き強さは、10N超、及び一層好ましくは20N超である。
【0188】
[00217] E.インプラントコーティング及び充填物
[00218] インプラントはマクロ多孔質ネットワークを含み、ここでは、インプラントを通る連続的な通り道があり、これは、1種又は複数種のヒドロゲル及び/又は1種又は複数種の水溶性ポリマーが分解するにつれて、ネットワーク構造中への組織の内方成長を促して可能にする。連続的な通り道はまた、以下のうちの1つ以上でマクロ多孔質ネットワーク構造全体をコーティングすることを可能にする:細胞、幹細胞、脂肪細胞(fat cells, adipose cells)、組織、コラーゲン、添加剤、及び生体活性作用物質。
【0189】
[00219] 例えば、60%未満、又は5~25%の低インフィル密度のマクロ多孔質ネットワークが、組織の内方成長のためにより大きな空隙空間をもたらすため、好ましい。
【0190】
[00220] 実施形態では、インプラントは、コーティングを備えて製作され、及び又は補強マトリクス又はマクロ多孔質ネットワークのいくつか若しくは全ては、キャリアとして使用される。例えば、マクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワークの空隙空間のいくつか若しくは全てに、以下:細胞及び組織、例えば自家移植片、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞、並びに血管茎のうちの1つ以上を入れることによって、製作され得る。インプラントのマクロ多孔質ネットワークの空隙空間中に挿入され、及びネットワークの表面にコーティングされ得る細胞の例は、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む。実施形態では、血管茎は、インプラントのマクロ多孔質ネットワークの空隙空間中に挿入され得る。実施形態では、インプラントは、1種以上の生体活性作用物質で部分的に又は全体的にコーティングされ得る。インプラントのマクロ多孔質ネットワークにコーティングされ得る特に好ましい生体活性作用物質は、コラーゲン及びヒアルロン酸又はその誘導体を含む。他の実施形態では、インプラント又はインプラントのマクロ多孔質ネットワークは、1種以上の抗生物質でコーティングされ得る。
【0191】
[00221] IV.インプラントを移植するための方法
[00222] 実施形態では、インプラントは体内に移植される。好ましくは、インプラントは、再建、再造形、修復、及び又は再生の部位中へ移植される。好ましい実施形態では、インプラントは、患者の乳房内に移植される。好ましい実施形態では、結合組織及び又は脈管構造は、移植後、1種又は複数種のヒドロゲル及び/又は1種又は複数種の水溶性ポリマーが分解するにつれて、インプラントのマクロ多孔質ネットワークに入り込む。特に好ましいある実施形態では、インプラントは吸収性材料を含み、結合組織及び又は脈管構造も、ヒドロゲル及び/又は水溶性ポリマーが分解した(及び最終的に、マクロ多孔質ネットワークが吸収された)空間に入り込む。マクロ多孔質ネットワークの細孔は、移植前、又は、一層好ましくは移植の後に、細胞によってコロニーが作られ得、及びインプラントのマクロ多孔質ネットワークの細孔に、組織、血管又はこれらの組み合わせが入り込む。
【0192】
[00223] インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前、又は移植後、移植細胞、幹細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、及び又は組織でコーティングされ得るか又は満たされ得る。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前、又は移植後に、分化した細胞でコーティングされる。分化した細胞は、特定の形態及び機能を有する。例は、脂肪細胞である。実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前又は移植後に注入によって、及び好ましくはインプラントのマクロ多孔質ネットワークを損傷させない針を使用することによって、細胞が入れられる。インプラントのマクロ多孔質ネットワークはまた、移植前に、血小板、細胞外脂肪マトリクスタンパク質、ゲル、ヒドロゲル、水溶性ポリマー、及び生体活性作用物質でコーティングされ得るか又は満たされ得る。ある実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、移植前、例えば、抗生物質の溶液中にインプラントをディッピングすることによって、抗生物質でコーティングされ得る。
【0193】
[00224] インプラントは、患者の乳房に自己細胞及び組織を送達するために使用され得る。自己組織は、好ましくは、以下:自家脂肪、脂肪吸引物、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞のうちの1つ以上である。
【0194】
[00225] インプラントは、患者の体内に脂肪組織を送達するために使用され得る。特に好ましいある実施形態では、自家脂肪組織は、インプラントの移植前、又は移植後に調製され、及びインプラントの移植前、又は移植後に、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク中へ注入又は他の方法で挿入されるか又はその上にコーティングされる。自家脂肪組織は、好ましくは、患者の体のドナー部位での脂肪吸引術によって調製される。遠心分離後、脂肪細胞を含む脂質相が、血液成分から分離され、及び移植前にインプラントのマクロ多孔質ネットワークと組み合わせられるか、又は移植後に、インプラントのマクロ多孔質ネットワーク中に注入、若しくは他の方法で挿入される。ある実施形態では、インプラントのマクロ多孔質ネットワークは、マクロ多孔質ネットワークの全体積の1%~50%、及び一層好ましくはマクロ多孔質ネットワークの全体積の1%~20%を示す体積の脂肪吸引物が注入されるか、又はそれで満たされる。
【0195】
[00226] 別の実施形態では、患者から取られた脂肪吸引物の脂肪組織が、インプラントのマクロ多孔質ネットワークに脂肪吸引物を加える前に、生物学的又は合成マトリクス、例えば極細繊維又は非常に小さい粒子と混合され得る。この実施形態では、加えられたマトリクスは、マイクロ脂肪球を保持又は結合し、及びインプラントのマクロ多孔質ネットワーク内にそれらを分散させて保持する働きをする。いくつかの実施形態では、加えられたマトリクスの使用は、壊死につながり得る脂肪の貯留を防止するのを助け得るか、及び又はインプラントの血管新生を増やすのを助け得る。
【0196】
[00227] 別の実施形態では、血管茎又は他の組織塊は、患者から採取され、及びインプラント中へ挿入される。茎若しくは他の組織塊は、インプラントの移植前にインプラント中に挿入され、その後、茎若しくは他の組織塊を備えるインプラントが患者に移植され得るか、又は茎若しくは他の組織塊は、インプラントが患者に移植された後、インプラント中に挿入され得る。
【0197】
[00228] ある実施形態では、インプラントは、両乳房に移植されて固定される。実施形態では、インプラントは、乳房固定術及び豊胸処置、例えば再置換処置中に、患者に移植される。特に好ましいある実施形態では、インプラントは:(i)乳房切除術を受けた、(ii)乳房リフトを受けて、豊胸を必要とする、(iii)乳房縮小を受けて、縮小した乳房の支え、持ち上げ若しくは再造形を必要とする、又は(iv)以前のシリコーン若しくは食塩水乳房インプラント手術を受けて、シリコーン若しくは食塩水インプラントを除去し、その後の乳房の再建によってよりふくよかな若しくは大きなサイズの乳房をもたらしたい患者に移植される。インプラントはまた、胸から離れる乳房の隆起を大きくするために、及び任意選択的に、移植後に、隆起を大きくするために、インプラントに追加的な脂肪移植片体積を追加するために、乳房手術患者に移植され得る。追加的な脂肪移植片体積は、インプラントの移植直後にインプラントに追加され得るが、経過観察の訪問時に追加されてもよい。例えば、追加的な脂肪移植片体積は、インプラントの移植から数日、数週間、又は数か月の1回以上の機会にインプラントに追加され得る。本明細書で説明する処置は、乳房組織の除去、切除、及び乳房組織の再分配によって実施され得る。
【0198】
[00229] ある実施形態では、乳房内へのインプラントの移植方法は、少なくとも:(i)患者の乳房組織にアクセスするために、少なくとも1か所に切開部を作るステップ、(ii)胸部の乳房の膨らみから皮膚及び皮下筋膜を分離するステップ、(iii)胸部の乳房の膨らみにインプラントを位置決めするステップ、(iv)胸部の乳房の膨らみを取り囲む組織にインプラントを固定するステップ、並びに(v)乳房の切開部を閉じるステップを含む。この方法は、さらに、以下のステップ:(a)脂肪吸引物のサンプルを調製し、インプラントの移植前に、インプラントをサンプルでコーティングするか又は満たすステップ、(b)脂肪吸引物のサンプルを調製し、インプラントの移植後に、好ましくはインプラント中へサンプルを注入することによって、インプラントをサンプルでコーティングするか又は満たすステップ、(c)インプラントの移植前、又は移植後に、インプラント中に血管茎を挿入するステップ、及び(d)インプラントを適所に縫合するか又はステープル留めするステップのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、インプラントは、腺下、胸筋下又は胸筋前位置に移植される。実施形態では、インプラントは、乳房の膨らみを取り囲む組織に、及びさらに一層好ましくは乳房の膨らみの下層にある、胸筋を取り囲む筋膜に縫合される。別の実施形態では、インプラントはタブを含み、タブは、乳房の膨らみを取り囲む組織に縫合される。
【0199】
[00230] インプラントの補強マトリクス又はマクロ多孔質ネットワークはまた、移植前、又は移植後に、脂肪移植片以外の細胞及び組織で、並びにサイトカイン、血小板及び細胞外脂肪マトリクスタンパク質で、コーティングされ得るか又は満たされ得る。例えば、インプラントの補強マトリクス又はマクロ多孔質ネットワークは、軟骨又は真皮移植片でコーティングされ得るか又は満たされ得る。インプラントのマクロ多孔質ネットワークはまた、他の組織細胞、例えば患者の病気を治療するための遺伝子を含むように遺伝子組み換えされた幹細胞でコーティングされ得るか又は満たされ得る。
【0200】
[00231] ある実施形態では、インプラントは、小さな切開部を通して、低侵襲手段によって送達されることを可能にする特性を有する。インプラントは、例えば、小さな切開部を通して送達されることを可能にするために、丸められたり、折り畳まれたり又は圧縮されたりすることができるように設計され得る。この低侵襲アプローチは、患者の死亡率、瘢痕化及び感染の機会を減らし得る。実施形態では、インプラントは、三次元形状を有し、及び形状記憶特性を有して、切開部を通して、適切なサイズの切開された組織平面中へ送達された後、助けを受けずに、その元の三次元形状を取ることを可能にする。例えば、インプラントは、インサータを使用して送達される小径のシリンダー形状に丸めることによって、一時的に変形され得、その後、助けを受けずに、生体内でその元の三次元形状を取り戻すことを可能にする。実施形態では、インプラントは、圧縮性であり、及びファンネル、例えばKellerファンネルを通して乳房に送達され得る。実施形態では、インプラントは、首径(ファンネルの最も細い部分)が1~3インチ、及び一層好ましくは1.5~2.5インチのファンネルを通して乳房中へ送達され得る。実施形態では、インプラントは、首径1~3インチのファンネルを通して送達され、及びファンネルの首を通って乳房中へ送達された後、インプラントの体積の少なくとも70%が回復し得る。実施形態では、インプラントは、首径1~3インチのファンネルを通すインプラントの送達を可能にする圧縮弾性率を有し、及びインプラントは、ファンネルの首を通過後、インプラントの体積の少なくとも70%を回復できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】