(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】修飾ポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240401BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240401BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240401BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240401BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240401BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240401BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240401BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240401BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240401BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240401BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240401BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240401BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61P43/00 105
A61P25/00
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/02
A61K48/00
A61K38/17
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K9/51
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/14
A61K9/16
C07K14/47
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564671
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 AU2022050366
(87)【国際公開番号】W WO2022221922
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514114910
【氏名又は名称】マッコーリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】リー,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】レイナー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】モルシュ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ルアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA65
4C076CC01
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
修飾サイクリンFポリペプチド及びそれをコードする核酸分子が本明細書で提供される。特に、野生型サイクリンFポリペプチドと比較して増加した細胞質標的化を有する修飾サイクリンFポリペプチド、及び機能的な切断された修飾サイクリンFポリペプチド、並びにそれらをコードする核酸分子が本明細書で提供される。運動ニューロンの生存を増強し、運動ニューロン変性を阻害し、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態を治療するための、修飾サイクリンFポリペプチド及びエンコーディング核酸分子の使用もまた本明細書で提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾サイクリンFポリペプチドのコード配列を含む核酸分子であって、前記修飾サイクリンFポリペプチドが、異種核外搬出シグナル(NES)を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記NESが、LPPLERLTL(配列番号8)、LQLPPLERLTLD(配列番号9)、LALKLAGLDL(配列番号10)、PLQLPPLERLTL(配列番号11)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号12)、LSSHFQELSI(配列番号13)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号14)、DHAEKVAEKLEALSV(配列番号15)、QLVEELLKIICAFQL(配列番号16)、及びTNLEALQKKLEELEL(配列番号17)から選択されるアミノ酸の配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記NESが、前記修飾サイクリンFポリペプチドのC末端又はN末端にある、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、核局在化シグナル(NLS)不活性化修飾を一方又は両方の内因性NLSに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して内因性NLSの全て又は一部分の欠失を含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置20~28に前記NLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の欠失を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置568~574に前記NLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、又は7個の欠失を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号4に記載されるアミノ酸の配列、又はそれに対して少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記NLS不活性化修飾が、内因性NLSを含むアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、非塩基性アミノ酸とのK20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、非塩基性アミノ酸とのR568、R569、K571、R572、K574、及びR574のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対してPESTドメインの全て又は一部分の欠失を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置582~766に前記PESTドメインからの少なくとも又は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180個のアミノ酸の欠失を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子であって、前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対してPESTドメインの全て又は一部分の欠失を含む、核酸分子。
【請求項15】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置582~766に前記PESTドメインからの少なくとも又は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180個のアミノ酸の欠失を含む、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号6に記載されるアミノ酸の配列、又はそれに対して少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項14又は15に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、異種核外搬出シグナル(NES)を更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記NESが、LPPLERLTL(配列番号8)、LQLPPLERLTLD(配列番号9)、LALKLAGLDL(配列番号10)、PLQLPPLERLTL(配列番号11)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号12)、LSSHFQELSI(配列番号13)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号14)、DHAEKVAEKLEALSV(配列番号15)、QLVEELLKIICAFQL(配列番号16)、及びTNLEALQKKLEELEL(配列番号17)から選択されるアミノ酸の配列を含む、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記NESが、前記修飾サイクリンFポリペプチドのC末端又はN末端にある、請求項17又は18に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、核局在化シグナル(NLS)不活性化修飾を一方又は両方の内因性NLSに含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して内因性NLSの全て又は一部分の欠失を含む、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置20~28に前記NLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の欠失を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される前記野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置568~574に前記NLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、又は7個の欠失を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記NLS不活性化修飾が、内因性NLSを含むアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、非塩基性アミノ酸とのK20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項26】
前記NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、非塩基性アミノ酸とのR568、R569、K571、R572、K574、及びR574のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項27】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、TDF-43を結合する、請求項1~26のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項28】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドのTDF-43結合能力の少なくとも又は約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を保持する、請求項1~27のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項29】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの位置292~405にサイクリンドメインの少なくとも又は約20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は110個のアミノ酸残基を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項30】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、Skp1-Cul1-Fボックス(SCF)E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体を形成する、請求項1~29のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項31】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、Skp1-Cul1-Fボックス(SCF)E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体を形成するために、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの能力の少なくとも又は約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を保持する、請求項1~30のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項32】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの位置29~76にFボックスの少なくとも又は約15、20、25、30、35、40、又は45個のアミノ酸残基を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項33】
前記修飾サイクリンFポリペプチドが、ニューロンで発現されるか、又は前記ニューロンに送達されるときに、前記ニューロンの細胞質に蓄積するか、かつ/又は前記細胞質に導入される、請求項1~32のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項34】
前記修飾サイクリンFポリペプチドのための前記コード配列に動作可能に連結されたプロモータを含む発現構築物を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされた、修飾サイクリンFポリペプチド。
【請求項36】
請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項35に記載の修飾サイクリンFポリペプチドを含む、送達ビヒクル。
【請求項37】
前記送達ビヒクルが、ウイルスベクターである、請求項36に記載の送達ビヒクル。
【請求項38】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターから選択される、請求項37に記載の送達ビヒクル。
【請求項39】
前記ウイルスベクターが、神経向性ウイルスベクターである、請求項37又は38に記載の送達ビヒクル。
【請求項40】
前記ウイルスベクターが、rAAV2/1、rAAV2/8、及びrAAV2/9から選択される、請求項37~39のいずれか一項に記載の送達ビヒクル。
【請求項41】
前記送達ビヒクルが、非ウイルスベクターである、請求項36に記載の送達ビヒクル。
【請求項42】
前記非ウイルスベクターが、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系から選択される、請求項41に記載の送達ビヒクル。
【請求項43】
ニューロンの生存を増強し、ニューロンの変性を阻害し、ニューロンにおける異常なタンパク質蓄積を阻害し、ニューロンにおける凝集又は不溶性TDP-43蓄積を阻害するための方法であって、前記方法が、前記ニューロンを、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項35に記載の修飾サイクリンFポリペプチド、又は請求項36~42のいずれか一項に記載の送達ビヒクルに曝露させることを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、方法。
【請求項44】
神経変性状態を有するか、又は神経変性状態を発症するリスクがある対象を治療するための方法であって、前記方法が、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項35に記載の修飾サイクリンFポリペプチド、又は請求項36~42のいずれか一項に記載の送達ビヒクルを前記対象に投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、方法。
【請求項45】
前記神経変性状態が、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、家族性神経変性状態を有する、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記家族性神経変性状態が、家族性ALS、家族性FTD、及び家族性ADから選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、孤発性神経変性状態を有する、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項49】
前記孤発性神経変性状態が、孤発性ALS、孤発性FTD、及び孤発性ADから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ニューロンが、運動ニューロンである、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態を治療するか、又はその発症を阻害するための薬剤の製造における、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項35に記載の修飾サイクリンFポリペプチド、又は請求項36~42のいずれか一項に記載の送達ビヒクルの使用。
【請求項52】
ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態を治療するか、又はその発症を阻害するための方法で使用するための、請求項1~34のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項35に記載の修飾サイクリンFポリペプチド、又は請求項36~42のいずれか一項に記載の送達ビヒクルを含む、キット。
【請求項53】
前記方法を実施するための教材を更に含む、請求項52に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、修飾サイクリンFポリペプチド及びそれをコードする核酸分子に関する。いくつかの態様では、本開示は、野生型サイクリンFポリペプチドと比較して増加した細胞質標的化を有する修飾サイクリンFポリペプチドに関する。本開示はまた、運動ニューロンの生存を増強し、運動ニューロン変性を阻害し、神経変性状態を治療するための、修飾サイクリンFポリペプチド及びエンコーディング核酸分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン疾患(MND)の最も一般的な形態であり、脳及び脊髄のそれぞれの上位及び下位運動ニューロンの選択的な変性を指す。ALS及び前頭側頭型認知症(FTD)は、疾患のスペクトラム内に位置し、ALS患者の15%は、早期発症型認知症の第2の最も一般的な形態であるFTDの症状も示す。ALS及びFTDの病因は、未だ十分に理解されていないが、ほとんどのALS患者及び全FTD患者の半数超が共通の病理組織学的特徴を共有している。ALS患者の脳及び脊髄組織の死後分析は、多くの場合、タウ陰性のユビキチン陽性凝集体の存在を明らかにし、これは、罹患したニューロン及びグリアの細胞質において最も一般的に、円形又は骨格様の封入体として現れる。これらの封入体は、ユビキチン、sqstm1、ユビキリン1、及びユビキリン2を含む斑紋型であり、全て、ユビキチン介在性タンパク質代謝に関与するタンパク質であり、欠陥のあるプロテアソームクリアランスがALS/FTD病因の寄与因子であることを示唆する。2006年、これらの封入体の主要成分は、ALS/FTDの場合に核から細胞質に転位置することが見出された、主に核タンパク質であるTransactive Response DNA binding protein of 43kDa(TDP-43)として識別された。患者の脳溶解物からのサルコシル不溶性画分の特徴解析は、TDP-43の生化学的プロファイルの顕著なシフトを明らかにする。患者の溶解物では、TDP-43は、ポリユビキチン化され、過剰リン酸化され、C末端で切断される。TDP-43プロテイノパチーは、家族性又は孤発性の起源にかかわらず、ALS症例の98%超、FTD症例の50%超で現在特定されており、TDP-43-陽性凝集体又は封入体は、疾患の顕著な特徴となっている。
【0003】
その不溶性の凝集病理学的形態とは対照的に、可溶性TDP-43(sTDP-43)は、正常な細胞機能に必要とされる。これに関して、それは、プレmRNAスプライシング、mRNA安定性、mRNA輸送、及びmiRNA処理などのmRNA代謝のいくつかの機構に関与し、ニューロンの生存に必要である。正常な状態では、sTDP-43の細胞内局在化は、主に核であるが、タンパク質のN末端における核局在化配列(NLS)及び核外搬出配列が存在することは、sTDP-43が核と細胞質との間を往復することを可能にする。sTDP-43は、ニューロン及び胚の発達に関与するmRNAを調節することも知られており、CNS発達全体を通して成人期に発現される。したがって、sTDP-43が必須RNA結合タンパク質であり、その細胞の役割を実行するその能力の変化がニューロン細胞に対して毒性であることが理解される。
【0004】
家族性ALS(fALS)変異は、全てのALS症例の5~10%を占めるが、一方で、残りの症例は、明確な原因を有していない(孤発性ALS、sALS)。家族性遺伝子変異は、ALS症例の少数を占めるが、それらは、疾患の基礎となる機序に関する貴重な洞察を提供している。したがって、変異は、SOD1、VCP、TARDBP、FUS、OPTN、SQSTM1、UBQLN2、MATR3、及びTBK1を含む多数の遺伝子で識別されている。TDP-43をコードする遺伝子であるTARDBPにおける興味深い変異が、fALS患者の約4%及びsALS症例の約1%のみに見出される。
【0005】
運動ニューロン内のTDP-43の細胞内の場所が、神経変性表現型の中心にあるという強力な証拠が存在する。例えば、TDP-43の異常な細胞質蓄積(不溶性凝集体)は、ALS(症例の98%)及びFTD(>50%)の病理学的特徴である。2015年、遺伝子組換えマウスが、細胞質に特異的に異常局在するヒトTDP-43バリアントの誘導性過剰発現を用いて生成された(バリアントはdNLS-TDP-43と称される)。過剰発現されたとき、dNLS-TDP-43マウスは、急速なALS様表現型を発現し、運動麻痺及び死が結果的にもたらされる。このdNLS-TDP-43マウスは、それが孤発性疾患の細胞質異常局在TDP-43連想を特異的に引き起こすため、孤発性ALS/FTDの実験モデルを代表する。
【0006】
ALS/FTD関連変異は、CCNFで識別されており、これは、TARDBPに見出だされるものと同様の頻度で発生する。CCNFは、多タンパク質Skp1-Cul1-Fボックス(SCFCyclin F)E3リガーゼのリガンド結合成分である、サイクリンFをコードする。このSCF複合体内では、サイクリンF(Fボックスタンパク質)は、ポリユビキチン化のための基質の動員及び位置付けに関与し、その後にそれらのプロテアソーム分解が続く。今日まで、サイクリンF活性は、リボヌクレオシド二リン酸還元酵素サブユニットM2(RRM2)、核小体及び紡錘体関連タンパク質1(NuSAP)、110kDaの中心子コイルドコイルタンパク質(CP110)、細胞分裂制御タンパク質6ホモログ(CDC6)、ヒストンRNAヘアピン結合タンパク質(SLBP)エキソヌクレアーゼ1(exo1)、並びにフィジー関連タンパク質ホモログ(Fzr1)のユビキチン化を媒介するため、細胞周期の進行及びDNA損傷と大きく関連付けられている。サイクリンFはまた、myb関連タンパク質B(B-Myb)の有糸分裂転写プログラムを結合し、改変することも知られている。重要なことに、これらの研究の全ては、サイクリンFの、細胞周期調節タンパク質としてのその機能と一貫する核局在化を報告する。
【0007】
本発明者らによる以前の研究では、(1)TDP-43がSCFCyclin F複合体の相互作用パートナー及び基質であること、(2)サイクリンFの欠損が運動ニューロンにおけるTDP-43の蓄積につながること、(3)神経変性状態を有する患者のサブセットが、運動ニューロンにおけるサイクリンFの異常に低いレベル又は活性を有すること、及び患者のこのサブセットにおける運動ニューロンにおけるサイクリンFレベルの増加が、タンパク質の異常な蓄積を低減し、それによって、運動ニューロンの生存を増強し得ること、並びに(4)ニューロンに追加のサイクリンFを補充することによって、正常レベルの内因性サイクリンFを有する、運動ニューロンを含むニューロンの生存を増強することが可能であることを見出した(例えば、WO2018/081878及びPCT/AU2020/051133を参照されたい)。
【0008】
本発明者らはまた、TDP-43及び他の基質の過活性ユビキチン化を引き起こすALS/FTDを有する多世代オーストラリア人ファミリーにおけるサイクリンFの621位(S621G)におけるセリンからグリシンへの置換を識別した(Leeら、2017)。まとめると、これは、(i)ユビキチン化依存性タンパク質分解経路の適切な活性の維持のためにサイクリンF活性が厳密に調節され、サイクリンFの低いレベル又は過活性活性につながる調節不全が、これらの経路を損ない、ALS及びFTDなどの神経変性疾患をトリガすること、(ii)TDP-43プロテイノパチーと好適に関連付けられる家族性及び孤発性の神経変性疾患を含む神経変性疾患の治療のために、ニューロンにおける内因性サイクリンFのレベル若しくは活性にかかわらず、及び/又はニューロンが対照と比較して、低減されたレベル若しくは活性の内因性サイクリンFを有していない場合、サイクリンFが運動ニューロンの生存を含むニューロンの生存を増強するための治療として使用され得ることを示す。したがって、治療用途に最適化されるサイクリンFポリペプチドに対する必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、サイクリンFポリペプチドが細胞の細胞質に標的化され得、細胞質TDP-43(TDP-43の病原性形態)に効果的に結合し、それを除去するように機能し得るが、一方で、TDP-43の核形態(正常な細胞機能に必要とされる)が本質的に影響を受けないままであるという判断から生まれる。したがって、細胞質に標的化される修飾サイクリンFポリペプチドが提供される。また、機能的な切断された修飾サイクリンFポリペプチドも提供される。したがって、本開示はまた、ニューロンの生存を増強し、ニューロンの変性を阻害し、ニューロンにおける異常なタンパク質蓄積を阻害し、かつ/又は神経変性状態(例えば、ALS、FTD、ADなど)、好適には、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられる神経変性状態を治療するための方法を提供し、方法は、ニューロンを修飾サイクリンFポリペプチド又はポリヌクレオチドと接触させることを含む。
【0010】
したがって、一態様では、本開示は、修飾サイクリンFポリペプチドのコード配列を含む核酸分子であって、修飾サイクリンFポリペプチドが、異種核外搬出シグナル(NES)を含む、核酸分子を対象とする。いくつかの例では、NESが、LPPLERLTL(配列番号8)、LQLPPLERLTLD(配列番号9)、LALKLAGLDL(配列番号10)、PLQLPPLERLTL(配列番号11)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号12)、LSSHFQELSI(配列番号13)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号14)、DHAEKVAEKLEALSV(配列番号15)、QLVEELLKIICAFQL(配列番号16)、及びTNLEALQKKLEELEL(配列番号17)から選択されるアミノ酸の配列を含む。一実施形態では、NESは、修飾サイクリンFポリペプチドのC末端又はN末端にある。
【0011】
いくつかの実施形態では、核酸分子が、修飾サイクリンFポリペプチドをコードし、これはまた、核局在化シグナル(NLS)不活性化修飾を一方又は両方の内因性NLSに含む。いくつかの例では、NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して内因性NLSの全て又は一部分の欠失を含む。したがって、いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置20~28にNLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の欠失を含む。更なる例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置568~574にNLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、又は7個の欠失を含む。特定の実施形態では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号4に記載されるアミノ酸の配列、又はそれに対して少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する配列を含む。更なる実施形態では、NLS不活性化修飾が、内因性NLSを含むアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換(例えば、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、例えば、非塩基性アミノ酸との、K20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28のうちの1つ以上のアミノ酸置換、又は配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、例えば、非塩基性アミノ酸との、R568、R569、K571、R572、K574、及びR574のうちの1つ以上のアミノ酸置換)を含む。
【0012】
更なる実施形態では、核酸分子が、修飾サイクリンFポリペプチドをコードし、これは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対してPESTドメインの全て又は一部分の欠失を更に含む。したがって、いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置582~766にPESTドメインからの少なくとも又は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180個のアミノ酸の欠失を含む。
【0013】
別の態様では、修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子であって、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対してPESTドメインの全て又は一部分の欠失を含む、核酸分子が提供される。したがって、いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置582~766にPESTドメインからの少なくとも又は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180個のアミノ酸の欠失を含む。特定の実施形態では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号6に記載されるアミノ酸の配列、又はそれに対して少なくとも若しくは約95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0014】
いくつかの例では、核酸分子によってコードされた修飾サイクリンFポリペプチドが、例えば、LPPLERLTL(配列番号8)、LQLPPLERLTLD(配列番号9)、LALKLAGLDL(配列番号10)、PLQLPPLERLTL(配列番号11)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号12)、LSSHFQELSI(配列番号13)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号14)、DHAEKVAEKLEALSV(配列番号15)、QLVEELLKIICAFQL(配列番号16)、及びTNLEALQKKLEELEL(配列番号17)から選択されるアミノ酸の配列を含むものなどの、異種核外搬出シグナル(NES)を更に含む。NESは、例えば、修飾サイクリンFポリペプチドのC末端又はN末端にあってもよい。更なる実施形態では、核酸分子が、修飾サイクリンFポリペプチドをコードし、これはまた、核局在化シグナル(NLS)不活性化修飾を一方又は両方の内因性NLSに含む。いくつかの例では、NLS不活性化修飾が、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して内因性NLSの全て又は一部分の欠失を含む。したがって、いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置20~28にNLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の欠失を含む。更なる例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対して、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置568~574にNLSからのアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、又は7個の欠失を含む。更なる実施形態では、NLS不活性化修飾が、内因性NLSを含むアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換(例えば、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、例えば、非塩基性アミノ酸との、K20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28のうちの1つ以上のアミノ酸置換、又は配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、例えば、非塩基性アミノ酸との、R568、R569、K571、R572、K574、及びR574のうちの1つ以上のアミノ酸置換)を含む。
【0015】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされた修飾サイクリンFポリペプチドは、TDF-43を結合する。いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドのTDF-43結合能力の少なくとも又は約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を保持する。
【0016】
特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされた修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの位置292~405にサイクリンドメインの少なくとも又は約20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は110個のアミノ酸残基を含む。更なる例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、Skp1-Cul1-Fボックス(SCF)E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体を形成する(例えば、修飾サイクリンFポリペプチドが、Skp1-Cul1-Fボックス(SCF)E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体を形成するために、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの能力の少なくとも又は約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を保持する)。更なる実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされた修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの位置29~76にFボックスの少なくとも又は約15、20、25、30、35、40、又は45個のアミノ酸残基を含む。
【0017】
他の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされた修飾サイクリンFポリペプチドが、ニューロンで発現されるか、又はニューロンに送達されるときに、ニューロンの細胞質に蓄積するか、細胞質に局在化するか、細胞質に導入されるか、かつ/又は細胞質に標的化される。
【0018】
特定の実施形態では、核酸分子は、修飾サイクリンFポリペプチドのためのコード配列に動作可能に連結されたプロモータを含む発現構築物を含む。
【0019】
別の態様では、上記及び本明細書に説明される核酸分子によってコードされた、修飾サイクリンFポリペプチドが提供される。
【0020】
また、上記及び本明細書に説明される核酸分子又は修飾サイクリンFポリペプチドを含む、送達ビヒクルも提供される。一実施形態では、送達ビヒクルは、本開示の核酸分子を含むウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(例えば、rAAV2/1、rAAV2/8、若しくはrAAV2/9)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又は単純ヘルペスウイルスベクター)である。一実施例では、ウイルスベクターが、神経向性ウイルスベクターである。更なる実施形態では、送達ビヒクルは、非ウイルスベクター(例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、又は水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、若しくはリポソームなどの脂質ベースの系)であり、本開示の核酸分子又は修飾サイクリンFポリペプチドを含む。
【0021】
更なる態様では、ニューロンの生存を増強し、ニューロンの変性を阻害し、ニューロンにおける異常なタンパク質蓄積を阻害し、ニューロンにおける凝集又は不溶性TDP-43蓄積を阻害するための方法であって、方法が、ニューロンを、上記及び本明細書に説明される核酸分子、修飾サイクリンFポリペプチド、又は送達ビヒクルに曝露させることを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、方法が提供される。いくつかの例では、ニューロンが、運動ニューロンである。
【0022】
別の態様では、神経変性状態を有するか、又は神経変性状態を発症するリスクがある対象を治療するための方法であって、方法が、上記及び本明細書に説明される核酸分子、修飾サイクリンFポリペプチド、又は送達ビヒクルを対象に投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、方法が提供される。一実施形態では、神経変性状態が、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられている。いくつかの例では、対象が、家族性神経変性状態(例えば、家族性ALS、家族性FTD、又は家族性AD)を有する。他の例では、対象が、孤発性神経変性状態(例えば、孤発性ALS、孤発性FTD、又は孤発性AD)を有する。
【0023】
また、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態を治療するか、又はその発症を阻害するための薬剤の製造における、上記及び本明細書に説明される核酸分子、修飾サイクリンFポリペプチド、又は送達ビヒクルの使用が提供される。
【0024】
別の態様では、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態を治療するか、又はその発症を阻害するための方法で使用するための、上記及び本明細書に説明される核酸分子、修飾サイクリンFポリペプチド、又は送達ビヒクルを含むキットが提供される。いくつか例では、キットが、方法を実施するための教材を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】野生型サイクリンF、サイクリンF(CT)、及びサイクリンF(deltaPEST、本明細書ではdPESTとも呼ばれる)を含む、実験的研究のために産生されるサイクリンFポリペプチドの概略図である。核局在化シグナル(NLS)、Fボックス、サイクリンボックス(又はドメイン)、PESTドメイン、及び核外搬出シグナル(NES)の場所が、野生型サイクリンFに関して配列番号2、サイクリンF(CT)に関して配列番号4、及びサイクリンF(deltaPEST)に関して配列番号6に示されるポリペプチドのそれぞれのアミノ酸配列に対するナンバリングを用いて、示されている。
【
図2】NLS、Fボックス、サイクリンドメイン、及びPESTドメインを示すために注釈付けされた、野生型サイクリンFヌクレオチド及びアミノ酸配列を提示する。
【
図3】Fボックス、サイクリンドメイン、PESTドメイン、及びNESを示すために注釈付けされた、サイクリンF(CT)ヌクレオチド及びアミノ酸配列を提示する。
【
図4】NLS、Fボックス、及びサイクリンドメインを示すために注釈付けされた、サイクリンF(deltaPEST)ヌクレオチド及びアミノ酸配列を提示する。
【
図5】サイクリンポリペプチドの生成及び評価の概略図及び写真図である。A)野生型サイクリンF及び修飾細胞質サイクリンF(CT-サイクリンF、サイクリンF(CT)とも呼ばれる)の生成。B)HEK293細胞におけるmCherry-サイクリンF(WT)の発現。C)HEK293細胞におけるmCherry-CT-サイクリンFの発現。
【
図6】培養HEK細胞におけるCT-サイクリンFによるdNLS-TDP-43のクリアランスのグラフ図である。細胞を、dNLS TDP-43及び(CT)サイクリンF(CT-CCNF)をコードするDNA構築物のいずれかでコトランスフェクトするか、又はdNLS TDP-43のみでトランスフェクトした。次いで、尿素可溶性dNLS TDP-43をトランスフェクションの24時間後に評価した。一元配置分散分析統計的検定を事後ダネット多重比較n=3で実施した。
【
図7】全細胞TDP-43蛍光強度によって表された、遺伝子組換えゼブラフィッシュにおけるCT-サイクリンFによるdNLS-TDP-43のクリアランスのグラフ図である。ヒトCT-サイクリンFをコードするmRNAを、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいてヒトdNLS-TDP-43-GFPを過剰発現する安定な遺伝子組換えゼブラフィッシュにトランスフェクトした。48時間後、脊髄画像当たり無作為に選択された3つの運動ニューロン(動物当たり3つの画像)におけるGFPの蛍光強度を、治療群当たり少なくとも3つの動物で測定した。CT-サイクリンFは、脊髄運動ニューロンにおけるdNLS-TDP-43レベルの有意な低減を引き起こした。
【
図8】HEK293細胞におけるmCherry-野生型サイクリンF、mCherry-細胞質サイクリンF(CT-サイクリンF)、及びmCherry-サイクリンF(deltaPEST)の細胞局在化の写真図である。
【
図9】培養HEK細胞におけるサイクリンF(deltaPEST)によるdNLS-TDP-43のクリアランスのグラフ図である。細胞を、dNLS TDP-43及びサイクリンF(deltaPEST)をコードするDNA構築物でコトランスフェクトするか、又はdNLS TDP-43のみでトランスフェクトした。次いで、尿素可溶性dNLS TDP-43をトランスフェクションの24時間後に評価した。一元配置分散分析統計的検定を事後ダネット多重比較n=3で実施した。
【
図10】全細胞TDP-43蛍光強度によって表された、遺伝子組換えゼブラフィッシュにおけるCT-サイクリンF及びdeltaPEST-サイクリンFによる野生型TDP-43のクリアランスのグラフ図である。ヒトCT-サイクリンF又はヒトdeltaPEST-サイクリンFをコードするmRNAを、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいてヒト野生型TDP-43-GFPを過剰発現する安定な遺伝子組換えゼブラフィッシュにトランスフェクトした。48時間後、脊髄画像当たり無作為に選択された3つの運動ニューロン(動物当たり3つの画像)におけるGFPの蛍光強度を、治療群当たり少なくとも3つの動物で測定した。CT-サイクリンFもdeltaPEST-サイクリンFも、脊髄運動ニューロンの野生型TDP-43レベルにいかなる影響も及ぼさなかった。
【
図11】全細胞TDP-43蛍光強度によって表された、遺伝子組換えゼブラフィッシュにおけるLP/AA-サイクリンFによる野生型TDP-43のクリアランスのグラフ図である。ヒト野生型サイクリンF又はヒトLP/AAサイクリンFをコードするmRNAを、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいてヒト野生型TDP-43-GFPを過剰発現する安定な遺伝子組換えゼブラフィッシュにトランスフェクトした。48時間後、脊髄画像当たり無作為に選択された3つの運動ニューロン(動物当たり3つの画像)におけるGFPの蛍光強度を、治療群当たり少なくとも3つの動物で測定した。WT-サイクリンFは、脊髄運動ニューロンにおけるWT-TDP-43レベルの有意な低減を引き起こすが、不活性LP/AAバリアント(IA)は、WT-TDP-43クリアランスには影響を有していない。
【
図12】全細胞TDP-43蛍光強度によって表された、遺伝子組換えゼブラフィッシュにおけるサイクリンFバリアントによる野生型TDP-43(A)及びdNLS-TDP-43(B)のクリアランスのグラフ図である。deltaPEST-サイクリンF、CT-サイクリンF、ヒト野生型サイクリンF(WT)、又はヒトLP/AAサイクリンF(IA)をコードするmRNAを、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいてヒト野生型TDP-43-GFP(A)又はdNLS-TDP-43-GFP(B)のいずれかを過剰発現する安定な遺伝子組換えゼブラフィッシュにトランスフェクトした。48時間後、脊髄画像当たり無作為に選択された3つの運動ニューロン(動物当たり3つの画像)におけるGFPの蛍光強度を、治療群当たり少なくとも3つの動物で測定した。結果は、
図7、
図10、及び
図11に説明されるものを確認する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【0027】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本開示の実施又は試験で使用され得るが、好ましい方法及び材料が説明される。本開示の目的のために、以下の用語が以下に定義される。
【0028】
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、冠詞の文法的な対象のうちの1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連付けられた列挙された項目のうちの1つ以上の任意の及び全ての可能性のある組み合わせ、並びに代替(又は)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、かつそれらを包含する。
【0030】
更に、「約」及び「およそ」という用語は、量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、位置、長さなどの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される場合、指定された量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、位置、長さなどの±15%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更に±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、転写産物又は翻訳産物が生物学的効果を生じさせる能力の尺度、又は生物学的活性分子のレベルに対する尺度として理解されるべきである。したがって、サイクリンFの文脈では、「活性」という用語は、本明細書に開示されるように、以下の活性のうちのいずれか1つ以上を指す。(1)他のサブユニットと会合して、Skp1-Cul1-Fボックス(SCF)E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ複合体(SCFCyclin F)を形成すること、(2)B-Myb活性を抑制して、細胞周期チェックポイント制御を促進すること、(3)基質(例えば、CDC6、RRM2、CP110、及びSLBP、並びにTDP-43)と相互作用して、基質のユビキチン化及び分解を促進すること、(4)TDP-43に直接結合すること。
【0032】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、所望の部位における化合物の少なくとも部分的な局在を結果的にもたらす方法又は経路による、対象への本明細書に説明される薬剤の配置を指す。本明細書に説明される薬剤は、対象における効果的な治療を結果的にもたらす任意の適切な経路によって投与され得、すなわち、投与は、組成物の少なくとも一部分が送達される対象における所望の場所への送達を結果的にもたらす。例示的な投与の様式としては、限定されるものではないが、注射、注入、点滴、又は摂取が挙げられる。「注射」は、限定なしで、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内の注射及び注入を含む。
【0033】
「同時の投与」又は「同時に投与する」又は「同時投与」などの用語は、2つ以上の活性を含有する単一の組成物の投与、又は別個の組成物としての及び/若しくは別個の経路によって送達される各活性剤の、全てのそのような活性剤が単一の組成物として投与されるときに取得された結果と有効な結果が同等である十分に短い期間内に同時に、又は一斉に、又は順次のいずれかの投与を指す。「一斉に」とは、活性薬剤が実質的に同時に投与され、望ましくは同一の製剤で一緒に投与されることを意味する。「同時に」とは、活性薬剤が時間的に厳密に投与されること、例えば、1つの薬剤が、約1分以内から、別の薬剤の前後約1日以内に投与されることを意味する。任意の同時の時間が有用である。しかしながら、同時に投与されない場合、薬剤が約1分~約8時間以内、好適には約1~約4時間以内に投与されることが多い。同時に投与されるとき、薬剤は、対象の同じ部位で好適に投与される。「同じ部位」という用語は、正確な場所を含むが、約0.5~約15センチメートル以内、好ましくは、約0.5~約5センチメートル以内とすることができる。本明細書で使用される場合、「別個」という用語は、薬剤が、ある間隔、例えば、約1日~数週間又は数か月の間隔で投与されることを意味する。活性薬剤は、いずれかの順序で投与され得る。本明細書で使用される場合、「順次」という用語は、薬剤が、例えば、分、時間、日、又は週の間隔を空けて、順次投与されることを意味する。必要に応じて、活性薬剤は、定期的な反復サイクルで投与されてもよい。
【0034】
「薬剤」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘発する化合物を含む。この用語はまた、限定されるものではないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、類似体などを含む、本明細書に具体的に言及される、それらの化合物の薬学的に許容される、かつ薬理学的に活性な成分を包含する。上記の用語が使用されるとき、これは、活性薬剤自体、並びに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、類似体などを含むことが理解されるべきである。「薬剤」という用語は、狭く解釈されるべきではないが、小分子と、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質などのタンパク質性分子と、それらを含む組成物と、RNA、DNA、及び模倣体などの遺伝子分子と、それらの化学的類似体と、細胞薬剤とに及ぶ。「薬剤」という用語は、本明細書で言及されるポリペプチドを産生及び分泌することができる細胞、並びにそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。したがって、「薬剤」という用語は、ある範囲の細胞における発現及び分泌のためのウイルスベクター又は非ウイルスベクター、発現ベクター、及びプラスミドなどのベクターを含む核酸構築物に及ぶ。例示的な薬剤としては、修飾サイクリンFポリペプチド及び修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。
【0035】
「シス作用エレメント」、「シス作用配列」、又は「シス調節領域」という用語は、本明細書では互換的に使用され、動作可能に連結されたプロモータの転写活性及び/又は動作可能に連結されたヌクレオチド配列の発現を調節する、ヌクレオチドの任意の配列を意味する。当業者は、シス配列が、コード及び非コード配列を含む、任意のヌクレオチド配列の発現及び/又は細胞型特異性及び/又は発生特異性のレベルを活性化、サイレンシング、増強、抑制、又は別様に変更することができ得ることを認識するであろう。
【0036】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物又は遺伝子の最終mRNA産物(例えば、スプライシング後の遺伝子のmRNA産物)のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物又は遺伝子の最終mRNA産物に関するコードに寄与しない任意の核酸配列を指す。
【0037】
本明細書全体を通して、文脈が別途必要としない限り、「含む(comprise、comprises、及びcomprising)」という用語は、記載されたステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループの包含を暗示するが、任意の他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループの除外を暗示するものではないと理解されるであろう。したがって、「含む」という用語及び同様の用語の使用は、列挙された要素が必要とされるか、又は必須であるが、他の要素が任意選択であり、存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。「~からなる」とは、「~からなる」という語句に続くものを何でも含み、それに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、列挙された要素が必要とされるか、又は必須であり、他の要素が存在しなくてもよいことを示す。「~から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素について本開示に明記される活動又は作用と干渉するか、又はそれに寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「~から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要とされるか、又は必須であるが、他の要素が任意選択であり、それらが列挙された要素の活動又は作用に影響するか否かに応じて存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「状態」という用語は、生存動物又はその部分のうちの1つの正常状態の障害を構成し、身体機能の性能を妨害又は修飾する、正常からの解剖学的及び生理学的偏差を含む。
【0039】
「条件付き発現」、「条件付きで発現される」、「条件付きで発現する」などの用語は、刺激又は他のシグナル(例えば、化学的、光、ホルモン、ストレス、又は病原体)の存在又は非存在によって、関心対象の遺伝子の発現を活性化又は抑制する能力を指す。特定の実施形態では、関心対象の核酸配列の条件付き発現は、誘導物質の存在又は阻害物質の非存在に依存する。
【0040】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されており、これは、概して、次のように亜分類され得る。
【表1】
【0041】
保存的アミノ酸置換はまた、側鎖に基づくグループ化を含む。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリン及びスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システイン及びメチオニンである。例えば、イソロイシン若しくはバリンとのロイシンの置換、グルタミン酸とのアスパラギン酸の置換、セリンとのスレオニンの置換、又は構造的に関連するアミノ酸とのアミノ酸の同様の置換が、結果として生じるバリアントポリペプチドの特性に大きな影響を有しないことが合理的に予想される。アミノ酸変化が機能性ポリペプチドを結果的にもたらすかどうかは、その活性をアッセイすることによって容易に決定され得る。保存的置換が、例示的及び好ましい置換の見出しの下で表2に示される。本開示の範囲内に収まるアミノ酸置換は、概して、(a)置換のエリアにおけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖のバルクを維持することに対するそれらの効果において著しく異ならない置換を選択することによって達成される。置換が導入された後、バリアントが生物学的活性についてスクリーニングされる。
【表2】
【0042】
運動ニューロン又は運動ニューロンの代用細胞の接触に関連して本明細書で使用される場合、「接触すること」又は「接触」という用語は、運動ニューロン又は代用細胞を、示される化合物及び/又は薬剤を含む適切な培養培地に供することを含む。運動ニューロン又は代用細胞がインビボである場合、「接触すること」又は「接触」は、化合物及び/又は薬剤がインビボで運動ニューロン又は代用細胞に接触するように、適切な投与経路を介して、医薬組成物中の化合物及び/又は薬剤を対象に投与することを含む。特定の実施形態では、接触した運動ニューロン又は代用細胞は、細胞生存についてアッセイされる。細胞生存の測定は、化合物又は薬剤との細胞の接触後の期間が経過した後の生細胞の数に基づき得る。例えば、生細胞の数は、少なくとも約5分、10分、20分、30分、40分、50分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日以上後に計数され、非処置対照における生細胞の数と比較され得る。
【0043】
「構築物」という用語は、異なる供給源からの1つ以上の単離された核酸配列を含む組換え遺伝子分子を指す。したがって、構築物は異なるソースの2つ以上の核酸配列が単一の核酸分子に組み立てられ、(1)天然に一緒には見出されない調節配列及びコード配列を含む核酸配列(すなわち、ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つが、その他のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つに関して異種である)、又は(2)天然に隣接していない機能性RNA分子若しくはタンパク質の部位をコードする配列、又は(3)天然に隣接していないプロモータの部位を含有する任意の構築物を含む、キメラ分子である。代表的な構築物としては、任意の供給源から誘導され、1つ以上の核酸分子が動作可能に連結された核酸分子を含む、ゲノムの組み込み又は自律複製を行うことができる、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製するポリヌクレオチド分子、ファージ、又は直鎖若しくは円形の一本鎖若しくは二本鎖のDNA若しくはRNA核酸分子などの、任意の組換え核酸分子が挙げられる。本開示の構築物は、概して、例えば、標的核酸配列又は調節因子核酸配列などの、構築物中にも含有される関心対象の核酸配列の発現を誘導するために必要な要素を含むことになる。そのような要素は、関心対象の核酸配列に動作可能に連結される(その転写を誘導するために)プロモータなどの制御要素を含み得、多くの場合、ポリアデニル化配列も含む。本開示の特定の実施形態では、構築物は、ベクター内に含有され得る。構築物の構成要素に加えて、ベクターは、例えば、1つ以上の選択可能なマーカ、原核及び真核起源などの1つ以上の複製起源、少なくとも1つの複数のクローニング部位、並びに/又は宿主細胞のゲノムへの構築物の安定した組み込みを容易にする要素を含み得る。2つ以上の構築物は、単一のベクターなどの単一の核酸分子内に含有されてもよく、又は2つ以上の別個のベクターなどの2つ以上の別個の核酸分子内に含有していてもよい。「発現構築物」は、概して、関心対象のヌクレオチド配列に動作可能に連結された少なくとも制御配列を含む。このようにして、例えば、発現されるヌクレオチド配列と動作可能な接続にあるプロモータは、宿主細胞を含む生物又はその一部における発現のための発現構築物において提供される。本開示の方法の実践のために、構築物及び宿主細胞を調製及び使用するための従来の組成物及び方法は、当業者に周知であり、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition Volumes1,2,and3.J.F.Sambrook,D.W.Russell,and N.Irwin,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2000を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対照ニューロン」という用語は、1人以上の健常な対象、又は神経変性状態を有していない、及び/若しくはTDP-43プロテイノパチーを有していない対象(例えば、対照対象)からのニューロン(例えば、運動ニューロン)を意味する。
【0045】
「~に対応する」又は「に対応すること」とは、参照アミノ酸配列と実質的な配列類似性又は同一性を示すアミノ酸配列を意味する。一般に、アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列の少なくとも一部分と少なくとも約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、97、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、又は更には最大100%の配列類似性又は同一性を示すことになる。
【0046】
「減少」、「低減」、又は「阻害」という用語、及びそれらの文法的な均等物は、全て、概して、統計的に有意な量の減少を意味するために本明細書で使用される。しかしながら、疑義を避けるために、「減少」、「低減」、又は「阻害」という用語、及びそれらの文法的な均等物は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の減少を意味し、減少は、100%未満である。一実施形態では、減少は、100%の減少(例えば、参照試料と比較して不存在レベル)、又は参照レベルと比較して10~100%の任意の減少を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「投与単位」とは、治療される対象に対する単位用量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の薬剤を含有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、運動ニューロン細胞の生存を促進するために、又はそのような細胞の死を阻害若しくは遅延させるために有効である化合物及び/又は薬剤の量を意味する。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。概して、有効量は、対象の病歴、年齢、状態、性別、並びに対象における医学的状態の重症度及びタイプと、神経変性状態における病理学的プロセスを阻害する他の薬剤の投与とによって変化し得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「コードする」、「コードすること」などの用語は、別の核酸又はポリペプチドを提供する核酸の能力を指す。例えば、核酸配列は、ポリペプチドを産生するために転写及び/若しくは翻訳され得る場合、又はポリペプチドを産生するために転写及び/若しくは翻訳され得る形態に処理され得る場合、ポリペプチドを「コードする」と言われる。そのような核酸配列は、コード配列、又はコード配列及び非コード配列の両方を含み得る。したがって、「コードする」、「コードすること」などの用語は、DNA分子の転写から結果的に生じるRNA産物、RNA分子の翻訳から結果的に生じるタンパク質、RNA産物を形成するためのDNA分子の転写及びRNA産物のその後の翻訳から結果的に生じるタンパク質、又はRNA産物を提供するためのDNA分子の翻訳、処理されたRNA産物(例えば、mRNA)を提供するためのRNA産物の処理、処理されたRNA産物のその後の翻訳から結果的に生じるタンパク質を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「運動ニューロンの生存を増強すること」という語句は、対照と比較して運動ニューロン細胞の生存の増加を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される薬剤との運動ニューロンの接触は、非処置対照と比較して、運動ニューロンの生存の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍以上の増加を結果的にもたらす。運動ニューロンの生存は、例えば、(i)培養中の運動ニューロンの増加した生存時間、(ii)培養中若しくはインビボにおけるニューロン関連分子の増加した産生、例えば、コリンアセチルトランスフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、及びサイクリンF、(iii)培養中若しくはインビボでのTDP-43を含むタンパク質の低減された異常の蓄積、又は(iv)インビボにおける運動ニューロン機能不全の減少した症状によって評価され得る。そのような効果は、当該技術分野で公知の任意の方法によって測定され得る。1つの非限定的な例では、運動ニューロンの増加した生存は、Arakawa et al.(1990,J.Neurosci.10:3507-3515)によって説明される方法によって測定され得、ニューロン関連分子の増加した産生は、測定される分子に応じて、バイオアッセイ、酵素アッセイ、抗体結合、ノーザンブロットアッセイなどによって測定され得、タンパク質の低減された異常な蓄積は、例えば、Shen et al.(2011,Cell Biochem Biophys60:173-185)によって説明されるように、アグリソーム及び封入体内の凝集タンパク質の検出を通じてアッセイされ得、運動ニューロン機能不全は、運動ニューロン障害の物理的兆候を評価することによって測定され得る。一実施形態では、運動ニューロンの生存の増加は、サイクリンFレベルの増加を測定することによって評価され得る。細胞生存はまた、生存可能な染料のフルオレセイン二酢酸の類似体であるカルセインAMの取り込みによって測定され得る。カルセインは、生細胞によって取り込まれ、生細胞の無傷の膜によって保持される蛍光塩に細胞内で切断される。生存可能なニューロンの顕微鏡的計数は、蛍光生存率アッセイを用いて取得された相対蛍光値と直接相関する。したがって、この方法は、所与の培養物の総細胞集団における細胞生存の確実かつ定量的測定を提供する(Bozyczko-Coyne et al.,J.Neur.Meth.50:205-216,1993)。細胞生存を評価する他の方法は、米国特許第5,972,639号、同第6,077,684号、及び同第6417,160号に説明されており、それらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。インビボ運動ニューロンの生存は、対象における運動ニューロン、神経運動、又は神経筋機能の増加によって評価され得る。1つの非限定的な例では、対象における運動ニューロンの生存は、対象における運動ニューロン機能不全又は死亡と関連付けられた状態、例えば、ALS又はFTDの進行、悪化、又は重症度の回復、軽減、改善、阻害、減速、又は停止によって評価され得る。
【0051】
「内因性」という用語は、宿主生物若しくはその細胞内に存在する、及び/若しくは天然に発現される分子(例えば、核酸、炭水化物、脂質、若しくはポリペプチド)、又は遺伝子、核酸、若しくはタンパク質内に天然に存在するドメイン若しくは領域を指す。例えば、「内因性サイクリンF」は、細胞(例えば、運動ニューロン)で天然に発現されるサイクリンFポリペプチドを指し、「内因性核局在化シグナル」は、サイクリンFなどのタンパク質中に天然に存在する核局在化シグナルを指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、宿主細胞に導入される分子(例えば、核酸、炭水化物、脂質、又はポリペプチド)を指す。特定の実施形態では、外因性ポリペプチドは、それが導入された細胞に対して外来性であるポリヌクレオチドから発現されるポリペプチド、又はそれが導入された細胞の配列に対して相同であるが、ポリヌクレオチドが通常見られない宿主細胞核酸内の位置に発現されるポリペプチドを指す。
【0053】
遺伝子配列に関する「発現」という用語は、RNA転写物(例えば、mRNA、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNAなど)を産生するための遺伝子の転写、及び必要に応じて、タンパク質への結果として生じるmRNA転写物の翻訳を指す。したがって、文脈から明らかであるように、コード配列の発現は、コード配列の転写及び翻訳から結果的に生じる。逆に、非コード配列の発現は、非コード配列の転写から結果的に生じる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、mRNA、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNAなど、及びいくつかの実施形態ではポリペプチドを産生するために使用されることができる核酸分子を指す。遺伝子は、機能性タンパク質を産生するために使用されることができてもよく、又はできなくてもよい。遺伝子は、コード及び非コード領域(例えば、イントロン、プロモータ、エンハンサを含む調節要素、終止配列、並びに5’及び3’非翻訳領域)の両方を含み得る。特定の実施形態では、「遺伝子」という用語は、その範囲内で、発現の調節に関与する特定のポリペプチド、イントロン、並びに隣接する5’及び3’非コードヌクレオチド配列をコードするオープンリーディングフレームを含む。これに関して、遺伝子は、所与の遺伝子と天然に関連付けられているプロモータ、エンハンサ、終止シグナル、及び/又はポリアデニル化シグナルなどの、制御配列、又は異種制御配列を更に含み得る。遺伝子配列は、cDNA若しくはゲノムDNA、又はその断片であってもよい。遺伝子は、染色体外維持又は宿主への導入のために適切なベクターに導入され得る。
【0055】
「異種」という用語は、本開示の目的に関して、宿主生物若しくはその細胞内に天然に存在しない、及び/若しくは天然に発現されない分子(例えば、核酸若しくはポリペプチド)、又は遺伝子、核酸、若しくはタンパク質内に天然に存在しないドメイン若しくは領域を指す。例えば、「異種NES」とは、修飾ポリペプチド(例えば、修飾サイクリンFポリペプチド)中に存在するが、対応する野生型ポリペプチド(例えば、野生型サイクリンFポリペプチド)中に存在しない(又はその位置に存在しない)NESを指す。
【0056】
「増加する」、「増強する」、又は「活性化する」という用語、及びそれらの文法的な均等物は、全て、本明細書では、概して、統計的に有意な量だけの増加を意味するために使用され、疑義を避けるために、「増加する」、「増強する」、又は「活性化する」という用語、及びそれらの文法的な均等物は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は100%以下の増加若しくは10~100%の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、又は少なくとも約3倍、又は少なくとも約4倍、又は少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍の増加、又は2倍~10倍以上の任意の増加を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「運動ニューロン変性を阻害すること」という語句は、運動ニューロンの生存率の喪失を低減すること、運動ニューロン機能の喪失を低減すること、及び/又は運動ニューロンの数の喪失を低減することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される薬剤との運動ニューロンの接触は、非処置対照と比較して、運動ニューロン変性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍以上の減少を結果的にもたらす。運動ニューロン変性は、例えば、酸化ストレス若しくは小胞体ストレス、又はアポトーシス若しくはニューロン死を一般にアッセイすることによって評価され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「調節」という用語は、関心対象の分子、プロセス、経路、又は現象における定性的又は定量的な変化、変更、又は修飾を引き起こすか、又は容易にすることを意味する。限定なしで、そのような変化は、プロセス、経路、又は現象の異なる構成要素又は分岐の結合特性の増加、減少、変化、又は相対強度若しくは活性の変化であり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「運動ニューロン変性」又は「運動ニューロンの変性」という語句は、運動ニューロンの劣化の状態を意味し、ニューロンは、死滅するか、又はより低い若しくは低い機能的活性形態に変化する。
【0060】
「神経変性状態」という用語は、中枢神経系又は末梢神経系の急性及び慢性の状態、障害、又は疾患を包含する包括的用語であり、一般に、神経系の細胞又は組織の劣化によって引き起こされるか、又はそれらと関連付けられる。神経変性状態は、年齢に関連し得るか、又は傷害若しくは外傷に起因し得るか、又は特定の疾患若しくは障害に関連し得る。急性神経変性状態としては、限定されるものではないが、脳血管不全、焦点性又はびまん性の脳外傷、びまん性脳損傷、脊髄損傷、又は末梢神経外傷を含む神経細胞死又は不全と関連付けられた状態が挙げられ、例えば、物理的又は化学的熱傷、深い切り傷、又は四肢切断に起因する。急性神経変性障害の例は、塞栓性閉塞及び血栓性閉塞を含む脳虚血又は梗塞、急性虚血後の再灌流、周産期低酸素性虚血損傷、心停止、及び任意のタイプの頭蓋内出血(硬膜外、硬膜下、くも膜下、及び脳内など)、頭蓋内及び椎体内病変(挫傷、貫入、剪断、圧迫、及び裂傷など)、並びにむち打ち及び乳幼児揺さぶられ症候群である。慢性神経変性状態としては、限定されるものではないが、アルツハイマー病、びまん性レビー小体病、進行性核上性麻痺(Steel-Richardson症候群)、多系統変性症(Shy-Drager症候群)、神経変性と関連付けられた慢性てんかん状態、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む運動ニューロン疾患、前頭側頭型認知症(FTD)、変性性失調症、皮質基底変性、グアムALS-パーキンソン-認知症複合、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイノパチー(多系統萎縮症を含む)、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳変性症3型及びオリーブ橋小脳変性症、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、球麻痺及び偽性球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルグ・ウェランダー病、テイ・ザック病、サンドホフ病、家族性痙性疾患、Wohlfart-Kugelberg-Welander病、痙性対麻痺、進行性多巣性白質脳症、家族性自律神経失調症(ライリーデイ症候群)、及びプリオン病(限定されるものではないが、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、クル病、及び致死性家族性不眠症を含む)、多発性硬化症を含む脱髄疾患及び障害、並びにロイコジストロフィーなどの遺伝性疾患が挙げられる。特定の実施形態では、神経変性状態は、ALS及びFTDから選択される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ニューロン」という用語は、ニューロン及びその一部分(例えば、ニューロン細胞体、軸索、又は樹状突起)を含む。本明細書で使用される場合、「ニューロン」という用語は、中央細胞体又は体細胞腫、及び2つのタイプの伸長又は突起、すなわち、概して、ニューロンシグナルの大部分が細胞体に伝達される、樹状突起と、概して、ニューロンシグナルの大部分が細胞体から標的ニューロン又は筋肉などのエフェクター細胞に伝達される、軸索と、を含む、神経系細胞を示す。ニューロンは、組織及び器官からの情報を中枢神経系(親ニューロン又は感覚ニューロン)に伝達し、中枢神経系からのシグナルをエフェクター細胞(有効又は運動ニューロン)に送信し得る。介在ニューロンと呼ばれる他のニューロンは、中枢神経系(脳及び脊髄)内のニューロンを接続する。ニューロンは、限定なしで、感覚、交感神経、副交感神経、又は腸溶性、例えば、後根神経節ニューロン、運動ニューロン、及び中枢ニューロン、例えば、脊髄からのニューロンを含む、任意のニューロンであり得る。本開示による治療又は方法に供され得るニューロンタイプの特定のある特定の例としては、小脳顆粒ニューロン、後根神経節ニューロン、及び皮質ニューロンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ニューロンは、感覚ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、運動ニューロンである。
【0062】
「神経変性」及び「神経の変性」という用語は、本明細書では互換的に使用され、限定なしで、神経細胞の死又は喪失、細胞死に先行する任意の変化、及びニューロン細胞の活性又は機能の任意の低減又は喪失を含む、神経細胞の任意の病理学的変化を指す。病理学的変化は、自発的であってもよく、又は任意の事象によって誘発されてもよく、例えば、アポトーシスと関連付けられた病理学的変化を含む。ニューロンは、限定なしで、感覚、交感神経、副交感神経、又は腸溶性、例えば、後根神経節ニューロン、運動ニューロン、及び中枢ニューロン、例えば、脊髄からのニューロンを含む、任意のニューロンであり得る。神経変性又は細胞喪失は、様々な神経学的疾患又は障害、例えば、神経変性疾患又は障害の特徴である。いくつかの実施形態では、ニューロンは、感覚ニューロンである。いくつかの実施形態では、ニューロンは、運動ニューロンである。
【0063】
「神経向性ウイルスベクター」という用語は、運動ニューロンを含むニューロン細胞に選択的に感染するウイルスベクターを指す。
【0064】
「取得される」とは、所有することを意味する。そのようにして取得された試料としては、例えば、特定の供給源から単離されたか、又は誘導された核酸抽出物又はポリペプチド抽出物が挙げられる。例えば、抽出物は、対象の生体液又は組織から直接単離され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「動作可能に接続される」又は「動作可能に連結される」という用語は、そのように説明される構成要素が、それらの意図された様式でそれらが機能することを可能にする関係にある、並置を指す。例えば、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、コード及び/又は非コード配列)に「動作可能に連結された」調節配列(例えば、プロモータ)は、制御配列と適合性のある条件下におけるその配列の発現を可能にするための関心対象のヌクレオチド配列に対する制御配列の位置付け及び/又は配向を指す。制御配列は、それらがその発現を誘導するように機能する限り、関心対象のヌクレオチド配列と連続する必要はない。したがって、例えば、介在する非コード配列(例えば、非翻訳であるが転写された配列)は、プロモータとコード配列との間に存在し得、プロモータ配列は、依然として、コード配列に「動作可能に連結されている」とみなされ得る。
【0066】
本明細書で互換的に使用される「患者」、「対象」、「宿主」、又は「個体」という用語は、任意の対象、特に、脊椎動物対象、更により具体的には、療法又は予防が望まれる哺乳動物対象を指す。本開示の範囲内に収まる好適な脊椎動物としては、制限されるものではないが、霊長類(例えば、ヒト、サル及び類人猿、Macaca(例えば、Macaca fascicularisなどのカニクイザル、及び/又はアカゲザル(Macaca mulatta))及びヒヒ(Papio ursinus)、並びにマーモセット(Callithrix属由来の種)、リスレルサル(Saimiri属由来の種)及びタマリン(Saguinus属由来の種)、並びにチンパンジー(Pan troglodytes)などの類人猿の種)、齧歯類(例えば、マウスラット、モルモット)、ウサギ類(例えば、ウサギ、ノウサギ)、ウシ類(例えば、ウシ)、ヒツジ類(例えば、ヒツジ)、ヤギ類(例えば、ヤギ)、ブタ類(例えば、ブタ)、ウマ類(例えば、ウマ)、イヌ類(例えば、イヌ)、ネコ類(例えば、ネコ)、鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、カナリア、セキセイインコなどのコンパニオンバードなど)、海洋哺乳類(例えば、イルカ、クジラなど)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、及び魚類が挙げられる。好ましい対象は、サイクリンFのレベル若しくは活性を増加させること、及び/又は神経変性状態の治療を必要とするヒトである。しかしながら、上述の用語は、症状が存在することを意味するものではないことが理解されるであろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に相応する、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしで、ヒト及び動物の組織と接触しての使用に好適である、それらの化合物、薬剤、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象薬剤を1つの器官、又は身体の一部分から、別の器官、又は身体の一部分に運搬又は輸送するのに関与する、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造補助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛、又はステリン酸)、あるいは溶媒封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に害を与えないという意味で、「許容可能」でなければならない。
【0069】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では、ヌクレオシドのポリマーを示すために、「核酸」と互換的に使用される。典型的には、本開示のポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合されたDNA又はRNA(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)に天然に存在するヌクレオシドから構成される。しかしながら、その用語は、天然由来の核酸中に見出されるか否かにかかわらず、化学的又は生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを含有するヌクレオシド又はヌクレオシド類似体を含む分子を包含し、そのような分子は、特定の用途に好ましい場合がある。本出願がポリヌクレオチドを指す場合、DNA、RNAの両方、及び各場合において、一本鎖及び二本鎖の両方の形態(並びに各一本鎖分子の相補体)が提供されることが理解される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料自体、及び/又は特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(例えば、塩基の略語として使用される文字の連続)を指し得る。本明細書に提示されるポリヌクレオチド配列は、別段の示唆がない限り、5’~3’方向に提示される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ペプチドは、比較的短いポリペプチドであり、典型的には、約2~60アミノ酸長である。本明細書で使用されるポリペプチドは、典型的には、タンパク質中に最も一般的に見られる20個のL-アミノ酸などのアミノ酸を含有する。しかしながら、当該技術分野で公知の他のアミノ酸及び/又はアミノ酸類似体が使用され得る。ポリペプチド中のアミノ酸のうちの1つ以上は、例えば、炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、共役、官能基化のためのリンカーなどの化学的実体を添加することによって修飾され得る。それと共有結合的に又は非共有結合的に会合した非ポリペプチド部分を有するポリペプチドは、依然として、ポリペプチドとみなされる。例示的な修飾としては、グリコシル化及びパルミトイル化が挙げられる。ポリペプチドは、天然源から精製されてもよく、組換えDNA技術を使用して生成されてもよく、従来の固相ペプチド合成などの化学的手段を通じて合成されてもよい。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド配列」又は「アミノ酸配列」という用語は、ポリペプチド材料自体、及び/又はポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(例えば、アミノ酸名称の略語として使用される文字の連続又は3文字コード)を指し得る。本明細書に提示されるポリペプチド配列は、別段の示唆がない限り、N末端~C末端方向に提示される。
【0071】
「プロモータ」という用語は、RNAポリメラーゼに対する認識及び適切な転写に必要な他の因子を提供することによって、転写可能な配列の発現を制御する、通常、転写可能な配列の上流(5’)にあるヌクレオチド配列を指す。「プロモータ」は、発現の制御のために制御要素(例えば、シス作用エレメント)が添加される転写開始部位を指定する役割を果たす、TATAボックス及び他の配列から構成される短い核酸配列である最小プロモータを含む。「プロモータ」はまた、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができる最小プロモータ+制御要素(例えば、シス作用エレメント)を含むヌクレオチド配列を指す。このタイプのプロモータ配列は、近位及びより遠位の上流要素からなり、後者の要素は、多くの場合、エンハンサと呼ばれる。したがって、「エンハンサ」は、プロモータ活性を刺激することができる核酸配列であり、プロモータの先天的要素、又はプロモータのレベル若しくは組織特異性を増強するために挿入された異種要素であってもよい。それは、両方の配向(通常又は反転)で動作することができ、プロモータから上流又は下流のいずれかに移動したときでも機能することができる。エンハンサ及び他の上流プロモータ要素の両方は、それらの効果を媒介する配列特異的核酸結合タンパク質に結合する。プロモータは、その全体が天然遺伝子に由来してもよく、又は天然で見出される異なるプロモータに由来する異なる要素から構成されてもよく、又は更に合成核酸セグメントから構成されてもよい。プロモータはまた、生理学的又は発生的条件に応答して、転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与する核酸配列を含有してもよい。不活性であるか、又は上流活性化の非存在下でプロモータ活性が大幅に低減されたプロモータ要素、特にTATA要素は、「最小又はコアプロモータ」と呼ばれる。好適な転写因子の存在下では、最小プロモータは、転写を可能にするように機能する。したがって、「最小又はコアプロモータ」は、転写開始に必要な全ての基礎要素、例えば、TATAボックス及び/又はイニシエータのみからなる。「調節されたプロモータ」という用語は、構成的ではないが、時間的に及び/又は空間的に調節された様式で、遺伝子発現を誘導するプロモータを指し、組織特異的及び誘導性プロモータの両方を含む。それは、天然及び合成配列、並びに合成及び天然配列の組み合わせであり得る配列を含む。異なるプロモータは、異なる組織若しくは細胞型における、又は異なる発生段階における、又は異なる環境条件に応答する、遺伝子の発現を誘導し得る。宿主細胞に有用な様々なタイプの新しいプロモータが常に発見されている。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全には定義されていないため、異なる長さの核酸断片は、同一のプロモータ活性を有し得る。例示的な調節されたプロモータとしては、限定されるものではないが、より安全な誘導性プロモータ、テトラサイクリン誘導性系由来のプロモータ、サリチル酸誘導性系由来のプロモータ、アルコール誘導性系由来のプロモータ、グルココルチコイド誘導性系由来のプロモータ、病原体誘導性系由来のプロモータ、炭水化物誘導性系由来のプロモータ、ホルモン誘導性系由来のプロモータ、抗生物質誘導性系由来のプロモータ、金属誘導性系由来のプロモータ、熱衝撃誘導性系由来のプロモータ、及びエクジソン誘導性系由来のプロモータが挙げられる。
【0072】
「調節配列」、「調節要素」などは、コード配列の上流(5’非コード配列)、その中、又はその下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、これは、直接的又は間接的に、関連付けられたコード配列の転写、RNA処理若しくは安定性、又は翻訳に影響を与える。調節要素としては、エンハンサ、プロモータ、翻訳リーダ配列、イントロン、Rep認識要素、遺伝子間領域、及びポリアデニル化シグナル配列が挙げられる。それらは、天然及び合成配列、並びに合成及び天然配列の組み合わせであり得る配列を含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「組換えポリヌクレオチド」という用語は、天然には通常見られない形態への核酸の操作によってインビトロで形成されるポリヌクレオチドを指す。例えば、組換えポリヌクレオチドは、発現ベクターの形態であってもよい。概して、そのような発現ベクターは、ヌクレオチド配列に動作可能に連結された転写及び翻訳調節性核酸を含む。
【0074】
「組換えポリペプチド」とは、組換え技術を使用して、すなわち、組換えポリヌクレオチドの発現を通じて作製されるポリペプチドを意味する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象からの抽出されるか、未処置であるか、処置されるか、希釈されるか、又は濃縮され得る、任意の生体試料を含む。試料としては、限定なしで、全血、血清、赤血球、白血球、血漿、唾液、尿、便(すなわち、糞便)、涙、汗、皮脂、乳頭吸引液、乳管洗浄液、腫瘍滲出液、滑液、腹水、腹膜液、羊水、脳脊髄液、リンパ液、細針吸引液、羊水、他の体液、細胞溶解物、細胞分泌物、炎症液、精液、及び膣分泌液などの、生体液が挙げられ得る。試料は、組織試料及び生検、組織ホモジネートなどを含み得る。特定の実施形態では、試料は、組織を含有し、このタイプの代表的な例では、試料は、切除、生検、又はコア針生検からのものである。加えて、細針吸引液試料が使用され得る。試料は、パラフィン包埋組織及び凍結組織を含み得る。特定の実施形態では、試料は、運動ニューロンを含むニューロン組織を含む。他の実施形態では、試料は、運動ニューロンの代用である細胞を含み、その非限定的な例は、例えば、Yang et al.(2015,Neurotox Res28:138-146)によって開示されている線維芽細胞、及び、例えば、www.sciencedaily.com/releases/2014/04/140408121918.htmに開示されている血球を含む。「試料」という用語はまた、未処置の、又は前処置(又は前処理)された試料を含む。いくつかの実施形態では、試料は、未処置の生体試料である。試料は、対象から細胞の試料を除去することによって取得され得るが、以前に単離された細胞を使用することによっても達成され得る(例えば、以前の時点で単離され、同じ又は別の人物によって単離される)。
【0076】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、配列が比較ウィンドウにわたってヌクレオチド毎又はアミノ酸毎に同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列した配列を比較することと、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が、両方の配列で発生して、合致した位置の数を生じる位置の数を決定することと、合致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除算することと、その結果を100で乗算して、配列同一性のパーセンテージを得ることと、によって計算される。本開示は、全長サイクリンFポリペプチド並びにそれらの生物学的に活性な断片の本明細書に開示される方法における使用を企図する。典型的には、全長サイクリンFポリペプチドの生物学的に活性な断片は、相互作用、例えば、分子内相互作用又は分子間相互作用に関与し得る。
【0077】
「類似性」は、上記の表1及び表2に定義される、同一であるか、又は保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数値を指す。類似性は、GAPなどの配列比較プログラムを使用して決定され得る(Deveraux et al.1984,Nucleic Acids Research12:387-395)。このようにして、本明細書に引用されるものと同様又は実質的に異なる長さの配列は、アラインメントへのギャップの挿入によって比較され得、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0078】
2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列関係を説明するために使用される用語としては、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」(例えば、野生型サイクリンF)は、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む長さで、少なくとも12であるが、多くの場合、15~18であり、しばしば、少なくとも25のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドは、各々、(1)2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドの間で同様である配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部分のみ)と、(2)2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間で不一致の配列と、を含み、2つ(以上)のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列比較は、典型的には、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較することによって実施されて、配列類似性の局所領域を識別及び比較する。「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に整列した後の同数の連続位置の参照配列と配列が比較される、少なくとも6つの連続位置、通常、約50~約100、より通常、約100~約150の概念的セグメントを指す。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列するための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release7.0におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USA)のコンピュータ化された実装によって、又は選択された様々な方法のいずれかによって生成される検査及び最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最も高い相同率を結果的にもたらす)によって行われ得る。例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるプログラムのBLASTファミリーも参照され得る。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al.,“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley&Sons Inc,1994-1998,Chapter15のUnit19.3に見出され得る。一例では、修飾サイクリンFポリペプチドの配列が野生型サイクリンFポリペプチドと整列する場合、比較ウィンドウは、修飾サイクリンFポリペプチドの全長を含む。理解されるように、修飾サイクリンFポリペプチドが切断され、野生型サイクリンFポリペプチドと比較される場合、比較ウィンドウは、野生型サイクリンFポリペプチドの全長未満となる(例えば、野生型サイクリンFポリペプチドの長さの40%、50%、60%、70%、80%、又は90%)。
【0079】
「統計的に有意」又は「有意」という用語は、統計的有意性を指し、概して、正常値を2標準偏差(2SD)下回るか、又はより低いマーカの濃度を意味する。この用語は、差異が存在するという統計的証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真であるときに、帰無仮説を否定する決定を行う確率として定義される。決定は、多くの場合、p値を使用して行われる。
【0080】
本明細書では、「TDP-43プロテイノパチー」という用語が、限定されるものではないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嗜銀顆粒症、前頭側頭型認知症(FTD-TDP-43及びFTD-tauなど)、グアムALS-パーキンソン認知症複合、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、ハンチントン病(HD)、レビー小体病、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症(FTLD)、前頭側頭型認知症、ユビキチン陽性封入体による前頭側頭葉変性、海馬硬化症、封入体ミオパチー、封入体筋炎、パーキンソン病(PD)、パーキンソン病認知症、紀伊半島におけるパーキンソン認知症複合、ピック病、マシャド・ジョセフ病などを含む、TDP-43の蓄積に関連する神経変性状態を説明するために使用される。TDP-43プロテイノパチーの更なる詳細は、Gendron et al.,2010,Neuropathol.Appl.Neurobiol.36:97-112、及びLagier-Tourenne et al.,2010,Hum.Mol.Gen.19(1):R46-R64に説明されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、TDP-43プロテイノパチーは、ニューロンにおけるTDP-43蓄積と関連付けられ、これは、本明細書では、「ニューロンのTDP-43プロテイノパチー」と呼ばれる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を取得することを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり得、かつ/又は状態に起因する状態及び/若しくは副作用に対する部分的又は完全な治癒という点で治療的であり得る。本明細書で使用される場合、「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける状態の任意の治療を包含し、(a)その状態になり易いが、そうなっているとは未だ診断されていない対象における状態の発症を阻害することと、(b)状態を阻害すること、すなわち、その発症を停止することと、(c)状態を緩和すること、すなわち、状態の退行を引き起こすことと、を含む。したがって、「神経変性状態の治療」は、その範囲内で、そのような状態(例えば、運動ニューロンの死)の発症を遅延又は予防すること、進行、悪化、又は劣化を逆転、緩和、改善、阻害、減速、又は停止することにおいて、そのような状態の進行又は重症度を遅延又は予防することを含む。一実施形態では、神経変性状態の症状は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%軽減される。一実施形態では、神経変性状態の症状は、50%超軽減される。一実施形態では、神経変性状態の症状は、80%、90%以上軽減される。治療はまた、神経筋機能の改善を含む。いくつかの実施形態では、神経筋機能は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%以上改善する。
【0082】
「ベクター」とは、ポリヌクレオチド分子、好適には、ポリヌクレオチドが挿入又はクローニングされ得るプラスミド、バクテリオファージ、酵母、又はウイルスに由来するDNA分子を意味する。ベクターは、1つ以上の固有の制限部位を含有し得、標的細胞若しくは組織、又は前駆細胞若しくはその組織を含む、定義された宿主細胞において自律的に複製することができるか、又はクローニングされた配列が再現可能であるように、定義された宿主のゲノムと組み込み可能であり得る。したがって、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、染色体外実体として存在するベクターであってもよく、その複製は、染色体複製とは無関係であり、例えば、直鎖状若しくは閉鎖円形プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体であってもよい。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有し得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されたときにゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるベクターであってもよい。ベクター系は、単一ベクター若しくはプラスミド、2つ以上のベクター若しくはプラスミドを含み得、それらは、宿主細胞のゲノムに導入される総DNA、又はトランスポゾンを一緒に含有する。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞とのベクターの適合性に依存することになる。この場合、ベクターは、好ましくは、動物及び好ましくは哺乳動物細胞において動作可能に機能する、ウイルス又はウイルス由来ベクターである。本開示の実施に有用な非限定的なウイルスベクターとしては、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。ベクターはまた、好適な形質転換体の選択に使用され得る抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカを含み得る。そのような耐性遺伝子の例は、当業者に公知であり、抗生物質カナマイシン及びG418(Geneticin(登録商標))に対する耐性を付与するnptII遺伝子、並びに抗生物質ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するhph遺伝子を含む。
【0083】
「野生型」、「天然」、及び「天然由来」という用語は、天然由来の供給源から単離されたときにその遺伝子又は遺伝子産物の特性を有する遺伝子又は遺伝子産物を指すために、本明細書で互換的に使用される。野生型、天然、又は天然由来の遺伝子又は遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団において最も頻繁に観察され、したがって、遺伝子又は遺伝子産物の「正常」又は「野生型」の形態を任意に設計されるものである。
【0084】
本明細書で使用される場合、遺伝子の名称を下線付き又はイタリック体にすることは、そのタンパク質産物とは対照的に、いかなる下線又はイタリック体も存在しない場合の遺伝子の名称によって示される遺伝子を示すものとする。例えば、「cyclin F」は、サイクリンF遺伝子を意味するものとするが、一方で、「cyclin F」は、「cyclin F」遺伝子の転写及び翻訳、並びに/又は選択的スプライシングから生成されるタンパク質産物を示すものとする。
【0085】
本明細書に説明される各実施形態は、特に明記されない限り、ありとあらゆる実施形態に準用されるべきである。
【0086】
2.略語
以下の略語は、本出願全体を通して使用される。
【表B】
【0087】
3.修飾サイクリンFポリペプチド
修飾サイクリンFポリペプチド及びエンコーディング核酸分子が提供される。本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドなどの野生型サイクリンFポリペプチドと比較して、1つ以上の修飾(例えば、アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入)を含有する。例示的な修飾としては、1つ以上の異種核外搬出シグナル(NES)の含有又は付加、内因性核局在化シグナルを不活性化する修飾(すなわち、NLS不活性化修飾)、及びサイクリンFの治療活性に必要とされない1つ以上のアミノ酸残基又はドメイン(例えば、PESTドメインの全て又は一部分)の欠失が挙げられる。いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、少なくとも1つの異種NES及び少なくとも1つのNLS不活性化修飾(例えば、NLSの全て若しくは一部分の欠失、及び/又はポリペプチドを核に誘導するNLSの能力を低減するNLSにおける1つ以上のアミノ酸置換)を含む。更なる例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、少なくとも1つのNES、少なくとも1つのNLS不活性化修飾、及びPESTドメインの欠失を含む。
【0088】
修飾は、任意のサイクリンFポリペプチドに対して行われ得、すなわち、任意のサイクリンFポリペプチドは、修飾が行われ、それによって、修飾サイクリンFポリペプチドを結果的にもたらす「非修飾サイクリンFポリペプチド」を表し得る。いくつかの例では、非修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンF、又は配列番号2に対して少なくとも若しくは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するサイクリンFポリペプチドである。したがって、本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、本明細書に説明される1つ以上の修飾を含み得、ポリペプチドの残りの部分(すなわち、修飾を含まないポリペプチドの一部分)は、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対して少なくとも又は約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、又は99%の配列同一性を有する。いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFと少なくとも又は約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、又は99%の配列同一性を有する。
【0089】
典型的には、修飾サイクリンFポリペプチドは、野生型サイクリンFと比較して、細胞質への標的化を増加させており、すなわち、細胞質への修飾サイクリンFポリペプチドの標的化、又は細胞質における修飾サイクリンFポリペプチドの蓄積は、野生型サイクリンFで観察される際の細胞質に対する標的化又は細胞質における蓄積と比較して、少なくとも又は約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、又は400%以上増加する。
【0090】
本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、サイクリンF活性(例えば、以下で更に詳細に説明されるように、TDP-43に結合する能力及びSKP1-CUL1-Fボックスタンパク質(SCF)ユビキチンリガーゼ複合体を形成する能力)を保持し、したがって、本明細書に説明されるニューロンに送達されたときに治療的有用性を有する。より具体的には、ニューロンに送達され、細胞質に導入されるとき、修飾サイクリンFポリペプチドは、核局在化されたTDP-43を著しく妨害することなく、優先的に、かつ主に細胞質局在化された病理学的TDP-43に結合し、除去する。
【0091】
3.1 核外搬出シグナル
いくつかの例では、本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、異種核外搬出シグナル(NES)を含む。NESは、核から細胞質に搬出される多くのタンパク質に天然に存在する。タンパク質の核外搬出は、主に、CRM1によるタンパク質中のNESの特異的認識を伴う、エクスポーチン/CRM1経路を通じて調節される。NESは、通常、8~15アミノ酸長であり、多様なパターンに特徴的に間隔を置いた4つ又は5つの疎水性(φ)残基を含有し、11のクラスのNESクラス(クラス1a~d、2、3、4、及び1a~d反転)を結果的にもたらす(Kosugi et al.,2008,Traffic9,2053-2062、Fung et al.,2015,eLife4,e10034.)。NESは、概して、Φ1-X2,3-Φ2-X2,3-Φ3-XΦ4のコンセンサス配列を確認する(Φnは、Leu、Val、Ile、Phe、又はMetを表し、Xは、任意のアミノ酸であり得る)(Xu et al.,2012,Mol Biol Cell.23:3677-3693)。本明細書で実証されるように、サイクリンFは、異種NESを含むように修飾され得、主に細胞質に標的化される修飾サイクリンFポリペプチドを結果的にもたらす。
【0092】
修飾サイクリンFポリペプチドは、1、2、3以上のNESを含み得る。更に、ポリペプチドを細胞質に導入する任意のNESが、本開示の修飾ポリペプチドに利用され得、そのようなNESは、当業者に周知である。NESの非限定的な例は、配列LPPLERLTL(配列番号8)、LQLPPLERLTLD(配列番号9)、LALKLAGLDL(配列番号10)、PLQLPPLERLTL(配列番号11)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号12)、LSSHFQELSI(配列番号13)、ERFEMFRELNEALEL(配列番号14)、DHAEKVAEKLEALSV(配列番号15)、QLVEELLKIICAFQL(配列番号16)、又はTNLEALQKKLEELEL(配列番号17)を含むものを含む。Xu et al.(2012,Mol Biol Cell.23:3677-3693)によって説明されるものを含む、当技術分野で説明される他のNES配列が、本開示の文脈で利用され得る。
【0093】
1つ以上のNESは、サイクリンFポリペプチドの活性(例えば、TDF結合活性、又はSCF(Skp1-Cul1-Fボックスタンパク質)ユビキチンリガーゼ複合体形成活性)に著しく悪影響を及ぼさないことを条件に、かつCRM1への結合に利用可能である(例えば、修飾サイクリンFポリペプチドの三次元構造内に埋め込まれていない)ことを条件として、サイクリンFポリペプチドの任意の位置に含められ得る。例えば、NESは、修飾サイクリンFポリペプチドのN又はC末端に存在してもよく(例えば、非修飾サイクリンFポリペプチドのN又はC末端に融合されてもよい)、又は修飾サイクリンFポリペプチド内に存在してもよい。特定の例では、NESは、C末端に存在する。
【0094】
3.2 核局在化シグナル修飾
本開示の修飾サイクリンFポリペプチドはまた、核局在化シグナル(NLS)不活性化修飾を有するものを含み、内因性NLSの不活性化、したがって、野生型サイクリンFと比較して、核への修飾サイクリンFポリペプチドの減少した局在化を結果的にもたらす。
【0095】
野生型サイクリンFポリペプチドは、2つの内因性NLSを有する。第1のNLS(NLS1)は、N末端の近くであり、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、20~28位又は20~29位にあることが様々に報告されているが、一方で、第2のNLS(NLS2)は、配列番号2に記載される野生型サイクリンFの568~574位にある。NLS不活性化修飾の存在によるNLSの不活性化は、部分的であってもよく、又は完全であってもよい。結果として、NLS不活性化修飾としては、修飾サイクリンFポリペプチドが存在する場合、野生型サイクリンFと比較して、核への標的化又は局在化の少なくとも又は約15%、20%、30%、35%、40%、45%、又は50%の減少を呈する修飾サイクリンFポリペプチドを結果的にもたらす。理解されるであろうように、修飾サイクリンFポリペプチドが、両方の内因性NLSにNLS不活性化修飾を含み、野生型サイクリンFと比較して、少なくとも又は約30%、35%、40%、45%又は50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%の核への修飾サイクリンFポリペプチドの標的化又は局在化の減少が存在し得る。したがって、いくつかの事例では、一方又は両方のNLSにおけるNLS不活性化修飾を有する修飾サイクリンFポリペプチドの細胞質への局在化は、野生型サイクリンFと比較して、少なくとも又は約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%以上増加する。
【0096】
いくつかの例では、NLS不活性化修飾が、内因性NLSの全て又は一部分の欠失を含む。したがって、いくつかの実施形態では、修飾ポリペプチドは、NLS1の全て又は一部分の欠失、例えば、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対して、20位~29位から1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個のアミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの例では、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、20~29位、20~28位、20~27位、20~26位、20~25位、20~24位、21~29位、21~28位、21~27位、21~26位、21~25位、22~29位、22~28位、22~27位、22~26位、22~29位、23~28位、23~27位、24~29位、又は24~28位にアミノ酸の欠失が存在する。更なる実施形態では、修飾ポリペプチドは、NLS2の全て又は一部分の欠失、例えば、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対して、568~574位から1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸残基の欠失を含む。したがって、いくつかの実施形態では、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、568~574位、568~573位、568~572位、568~571位、569~574位、569~573位、569~572位、569~571位、570~574位、570~573位、570~572位、571~574位、571~573位、又は570~572位にアミノ酸の欠失が存在する。理解されるであろうように、NLS1及び/又はNLS2の一部分のみが欠失される場合、NLS中の十分な数のアミノ酸(すなわち、NLSの十分な部分)が欠失され、その結果、核への修飾サイクリンFポリペプチドの局在化は、野生型サイクリンFと比較して低減される。
【0097】
一実施形態では、修飾サイクリンFポリペプチドは、NLS1及びNLS2の両方の欠失を含み、異種NESを更に含む。特定の例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号4に記載の配列、又はそれと少なくとも若しくは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む(ポリペプチドが、NLS1及びNLS2の両方の欠失を含み、異種NESを更に含むことを条件とする)。
【0098】
他の例では、NLS不活性化修飾が、NLS1(すなわち、配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて、20~28位又は20~29位)又はNLS2(すなわち、配列番号2に記載される野生型サイクリンFの568~574位)を含むアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換を含み、その結果、ポリペプチドを核に誘導するNLSの能力が、アミノ酸20~28又は20~29として記載される野生型NLSと比較して低減される(すなわち、核を標的化するか、又は核に局在化させる1つ以上のアミノ酸置換を含む修飾サイクリンFポリペプチドの能力が、野生型サイクリンFと比較して、少なくとも又は約15%、20%、30%、35%、40%、45%、又は50%などだけ減少する)。
【0099】
NLSモチーフは、長さ及び特徴の点で実質的に変化するが、ほとんど全てが、リジン(K)及びアルギニン(R)などの主に塩基性アミノ酸の短い伸長の単純な特徴を共有する。したがって、いくつかの例では、NLS不活性化修飾は、異なるアミノ酸残基とのK20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28(配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて)のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの例では、置換は、非塩基性アミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、システイン(C)、グリシン(G)、プロリン(P)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、又はバリン(V))との置換である。一例では、K20、R21、R22、R24、R25、R26、及びR28のうちの1つ以上は、アラニンで置換される。他の例では、NLS不活性化修飾は、異なるアミノ酸残基とのR568、R569、K571、R572、K574、及びR574(配列番号2に記載される野生型サイクリンFに対するナンバリングを用いて)のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの例では、置換は、非塩基性アミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、システイン(C)、グリシン(G)、プロリン(P)、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、又はバリン(V))との置換である。一例では、R568、R569、K571、R572、K574、及びR574のうちの1つ以上は、アラニンで置換される。
【0100】
特定の例では、NLS不活性化修飾は、NLS1の一部分の欠失、及びNLS1からの1つ以上のアミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。他の例では、NLS不活性化修飾は、NLS2の一部分の欠失、及びNLS2からの1つ以上のアミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。
【0101】
3.3 他の欠失
本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、1つ以上の追加のアミノ酸欠失を有し得、それによって、野生型サイクリンFと比較して切断されたサイクリンFポリペプチドを結果的にもたらす。切断されたサイクリンFポリペプチド及びコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの産生などにおいて、野生型ポリペプチド及びポリヌクレオチドと比較して利点を有し得、短いポリペプチド又はポリヌクレオチドは、典型的には、より長いポリペプチド又はポリヌクレオチドよりも大量かつ高品質で産生することが容易であり、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの送達において、より短いポリペプチド又はポリヌクレオチドは、典型的には、より長いポリペプチド又はポリヌクレオチドよりも、ニューロンなどの細胞に送達することが容易である。これは、特に、ウイルスベクターが、それらのゲノム中に担持することができる核酸の長さに上限を有する、ポリヌクレオチドのウイルスベクター送達の場合に当てはまる。
【0102】
理解されるであろうように、修飾サイクリンFポリペプチドは、TDP-43結合及びSCF(Skp1-Cul1-Fボックスタンパク質)ユビキチンリガーゼ複合体、SCFcyclin Fの形成を容易にするために必要なドメイン及び配列を保持する。したがって、少なくともTDP-43結合ドメイン及びSCFcyclin F形成ドメインを含む修飾サイクリンFポリペプチドが提供される。SCFcyclin F形成ドメイン及びTDP結合ドメインは、1つ以上の内因性サイクリンFアミノ酸若しくは領域によって、又は他のアミノ酸若しくはペプチドリンカーによって連結され得、その結果、結果として生じる修飾サイクリンFポリペプチドは、TDP-43に結合し、SCFcyclin F複合体を形成するために必要な立体構造を有する。アミノ酸及びペプチドリンカーは、当該技術分野で周知である。好適なリンカーとしては、例示のみとして、アミノヘキサン酸、グリシン、及びセリンなどのアミノ酸、並びにグリシン及びセリンなどの2つ以上のアミノ酸の伸長が挙げられる。リンカーは、任意の長さとすることができるが、典型的には、少なくとも20アミノ酸長である。したがって、一実施形態では、リンカーは、少なくとも20、30、40、又は50アミノ酸長である。
【0103】
TDP-43結合ドメインは、TDP-43へのサイクリンFの結合を容易にするために必要な最小アミノ酸領域である。本開示の目的のために、TDP-43へのTDP-43結合ドメインを含む修飾サイクリンFポリペプチドの結合は、配列番号2に記載される野生型サイクリンFについて観察される結合の少なくとも50%を意味する。TDP-43へのTDP-43結合ドメインを含むポリペプチドの結合を評価する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、プルダウンアッセイ、マイクロスケール熱泳動(MST)、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、及び等温滴定型熱量測定(ITC)を含む。一例では、免疫沈降アッセイ(例えば、抗体又はGFP/RFPトラップを使用する)が利用されて、TDP-43を用いてサイクリンFポリペプチドを共免疫沈降させる。結果的に得られた溶出物が、例えば、イムノブロッティング又は質量分析によって分析される。別の例では、免疫蛍光顕微鏡及び/又は近接ライゲーションベースの方法が利用される。本発明者らによって以前に決定されたように、TDP-43結合ドメインは、サイクリンFのサイクリンボックス内である(すなわち、配列番号2に記載される野生型サイクリンFのアミノ酸位置292~405に及ぶ領域内。したがって、いくつかの実施形態では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの292~405位、300~400位、310~390位、320~370位、330~360位、300~390位、300~380位、300~370位、300~360位、300~350位、300~340位、310~380位、310~370位、310~360位、310~350位、320~380位、又は320~260位の少なくともアミノ酸などの、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの292~405位のサイクリンドメインの少なくとも又は約20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は110個のアミノ酸残基を含む。
【0104】
修飾サイクリンFポリペプチドはまた、SCF(Skp1-Cul1-Fボックスタンパク質)ユビキチンリガーゼ複合体、SCFcyclin Fの形成を容易にするために必要なドメイン及び配列を保持する。したがって、修飾サイクリンFポリペプチドは、少なくともSCFcyclin F形成ドメインを含む。SCFcyclin F複合体を形成するポリペプチドの能力を評価する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、免疫沈降法及びユビキチン化アッセイを含む。一例では、Skp1、Rbx1、及びCul1に結合するサイクリンFポリペプチドの能力は、細胞からサイクリンFポリペプチドを免疫沈降させることによって評価され(例えば、タグ付きポリペプチド及びタグeを認識する抗体を使用して)、次いで、イムノブロッティング又は質量分析によってSkp1、Rbx1、及びCul1の溶出物を評価する。Skp1-Cul1-Rbx1 E3リガーゼが無傷であることが確認されると、インビトロユビキチン化アッセイが、免疫沈降されたSCFcyclin F複合体の活性を測定するために利用され得る。このアッセイでは、ユビキチン化に必要な全ての成分(例えば、ATP、ユビキチン、基質(組換えTDP-43)、E1、E2、及び免疫沈降されたSCFcyclin F複合体)が混合され、ユビキチン化が評価され、バックグラウンドユビキチン化と比較される(例えば、サイクリンF(LP/AA)バリアントなどの、酵素的に不活性なサイクリンFバリアントを使用して評価される)。いくつかの実施形態では、修飾サイクリンFポリペプチドは、Fボックスの少なくとも又はおよそ少なくとも又は約15、20、25、30、35、40、又は45個のアミノ酸残基などの、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの29~76位に存在するFボックスの全て又は一部分を含む。いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの29~76位、29~70位、29~65位、29~60位、29~55位、29~50位、35~76位、35~70位、35~65位、35~60位、35~55位、40~79位、40~70位、40~65位、40~60位、45~76位、45~70位、又は45~65位を含むか、又は少なくともそれらを含む。
【0105】
いくつかの例では、本開示の修飾サイクリンFポリペプチドは、内因性PESTドメイン(配列番号2に記載される野生型サイクリンFのアミノ酸582~766)の全て又は一部分の欠失を含む。本明細書で初めて実証されるように、内因性PESTドメインの全て又は一部分の欠失は、驚くべきことに、細胞質に誘導され、細胞質に局在化する修飾サイクリンFポリペプチドを結果的にもたらす。いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドが、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドに対するナンバリングを用いて、アミノ酸位置582~766にPESTドメインからの少なくとも又は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180個のアミノ酸の欠失を含む。したがって、いくつかの例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドの582~766位、582~760位、582~750位、582~740位、582~730位、582~720位、582~710位、582~700位、590~766位、590~760位、590~750位、590~740位、590~730位、590~720位、590~710位、590~700位、600~766位、600~760位、600~750位、600~740位、600~730位、600~720位、600~710位、600~700位、610~766位、610~760位、610~750位、610~740位、610~730位、610~720位、610~710位、又は610~700位のアミノ酸の欠失を含むか、又は少なくとも含む。一例では、修飾サイクリンFポリペプチドは、配列番号6に記載の配列、又はそれと少なくとも若しくは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む(ポリペプチドが、PESTドメインの全て又は一部分の欠失を含むことを条件とする)。
【0106】
3.4 核酸構築物
また、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチドをコードする、すなわち、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチドのコード配列を含む、核酸分子も提供される。したがって、核酸分子が、野生型CCNFポリヌクレオチド(配列番号1に記載されるもの)に対する、又は野生型サイクリンFをコードするポリヌクレオチドに対する1つ以上の修飾(例えば、ヌクレオチド欠失、挿入、又は置換)を含む修飾CCNFポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、核酸分子は、修飾サイクリンFポリペプチドのコード配列を含み、コード配列は、プロモータに動作可能に接続される。したがって、本開示のCCNFポリヌクレオチドの非限定的な例としては、配列番号4若しくは6に記載される修飾サイクリンFポリペプチドをコードするもの、又は配列番号4若しくは6に対する少なくとも若しくは約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する修飾サイクリンFポリペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、例えば、デフォルトパラメータを使用して本明細書に説明される配列アラインメントプログラムによって決定されるように、配列番号3又は5に記載される配列、配列番号3又は5に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する配列を含む。
【0107】
本開示はまた、以下に説明される厳密な条件下で、配列番号3若しくは5に記載されるCCNFヌクレオチド配列、又はそれらの相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドを企図する。本明細書で使用される場合、「中程度の厳密さ、高い厳密さ、又は非常に高い厳密さの条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応を実施するためのガイダンスは、Ausubel et al.,(1998、上記)、セクション6.3.1~6.3.6に見出され得る。水性及び非水性の方法は、その参考文献に説明されており、いずれかが使用され得る。中程度の厳密さの条件に対する本明細書の参照は、42℃におけるハイブリダイゼーションのために、少なくとも約16%v/v~少なくとも約30%v/vのホルムアミド、及び少なくとも約0.5M~少なくとも約0.9Mの塩、並びに55℃における洗浄のために、少なくとも約0.1M~少なくとも約0.2Mの塩を含み、かつそれらを包含する。中程度の厳密さの条件はまた、65℃におけるハイブリダイゼーションのために、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、及び(i)2×SSC、0.1%SDS、又は(ii)60~65℃における洗浄のために、0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSを含み得る。中程度の厳密さの条件の一実施形態は、6×SSC中、約45℃でハイブリダイズすること、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、60℃で1回以上の洗浄を含む。高い厳密さの条件は、42℃におけるハイブリダイゼーションのために、少なくとも約31%v/v~少なくとも約50%v/vのホルムアミド、及び約0.01M~約0.15Mの塩、並びに55℃における洗浄のために、約0.01M~約0.02Mの塩を含み、かつそれらを包含する。高い厳密さの条件はまた、65℃におけるハイブリダイゼーションのために、1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、及び(i)0.2×SSC、0.1%SDS、又は(ii)65℃を超過する温度における洗浄のために、0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、1%SDSを含み得る。高い厳密さの条件の一実施形態は、6×SSC中、約45℃でハイブリダイズすること、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で1回以上の洗浄を含む。
【0108】
特定の実施形態では、サイクリンFポリペプチドは、非常に高い厳密さの条件下で開示されたヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる。非常に高い厳密さの条件の一実施形態は、65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSをハイブリダイズすること、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃で1回以上の洗浄を含む。
【0109】
他の厳密さの条件は、当該技術分野で周知であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために様々な因子が操作され得ることを認識するであろう。最終洗浄の厳密さの最適化は、高度のハイブリダイゼーションを確保するように機能し得る。詳細な例については、Ausubel et al.,(1998、上記)の2.10.1~2.10.16ページ、及びSambrook et al.,(1989、上記)のセクション1.101~1.104を参照されたい。
【0110】
厳密な洗浄は、典型的には、約42℃~68℃の温度で実施されるが、当業者であれば、他の温度が厳密な条件に好適であり得ることを理解するであろう。最大ハイブリダイゼーション速度は、典型的には、DNA-DNAハイブリッドの形成のためにTmを約20℃~25℃下回る温度で生じる。Tmは、融解温度、又は2つの相補的なポリヌクレオチド配列が解離する温度であることが当該技術分野で周知である。Tmを推定するための方法は、当該技術分野で周知である(Ausubel et al.,(1994、上記)の2.10.8ページを参照されたい)。概して、完全に合致したDNAの二本鎖のTmは、以下の式による近似として予測され得る:
Tm=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)-0.63(%ホルムアミド)-(600/長さ)
【0111】
式中、Mは、Na+の濃度であり、好ましくは、0.01モル~0.4モルの範囲内であり、%G+Cは、30%~75%のG+Cの範囲内の塩基の総数のパーセンテージとしてのグアノシン塩基とシトシン塩基との総和であり、%ホルムアミドは、体積パーセントホルムアミド濃度であり、長さは、DNA二本鎖中の塩基対の数である。二本鎖DNAのTmは、ランダムにミスマッチした塩基対の数における1%の増加毎に約1℃だけ減少する。洗浄は、概して、高い厳密さの場合はTm-15℃、又は中程度の厳密さの場合はTm-30℃で実施される。
【0112】
ハイブリダイゼーション手順の一例では、固定化されたDNAを含有する膜(例えば、ニトロセルロース膜又はナイロン膜)が、42℃で、標識付きプローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオン化ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、及び0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDS及び200mg/mLの変性したサケ精子DNA)中で一晩ハイブリダイズされる。次いで、膜が、2回の連続する中程度の厳密さの洗浄(すなわち、2×SSC、0.1%SDS、45℃で15分間、続いて、2×SSC、0.1%SDS、50℃で15分間)に供され、続いて、2回の連続するより高い厳密さの洗浄(すなわち、0.2×SSC、0.1%SDS、55℃で12分間、続いて、0.2×SSC及び0.1%SDS溶液、65~68℃で12分間)に供される。
【0113】
4.送達ビヒクル
本開示はまた、本開示のCCNFポリヌクレオチド(すなわち、修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子)又は本開示の修飾サイクリンFポリペプチドをニューロン(例えば、運動ニューロン)に送達するための送達ビヒクルも企図する。核酸分子及び/又はポリペプチドに好適な送達ビヒクルは、当該技術分野で周知であり、CCNFポリヌクレオチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをニューロンに送達するための方法で利用され得る。例えば、ウイルスベクターは、本開示のCCNFポリヌクレオチドを送達するために使用され得るが、一方で、非ウイルスベクター(例えば、リポソーム、エクソソーム、ポリマー、ナノ粒子など)は、本開示の修飾サイクリンFポリペプチドを送達するために使用され得る。したがって、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド、又は本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子を含む、以下に説明される任意のものなどの送達ビヒクルも提供される。
【0114】
4.1 ウイルスベクター
本明細書に開示される修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子の送達に好適なウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられ、特定の実施形態では、神経向性ウイルスベクターである。
【0115】
4.1.1 アデノ随伴ウイルス
CCNFポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)を使用することによって、ニューロン(例えば、運動ニューロン)を含む、中枢神経系の細胞に送達され得る。遺伝子を脳内に送達するためのAAVベクターの使用は、当該技術分野で周知である(例えば、各々が参照により組み込まれる、米国特許第8,198,257号及び同第7,534,613号、米国特許出願第13/881,956号を参照されたい)。
【0116】
CCNFポリヌクレオチドを運動ニューロンに送達するためのAAVベクターは、当該技術分野で公知である(参照により組み込まれる米国特許第7,335,636号を参照されたい)。AAVベクターは、転写開始領域(例えば、プロモータ)、転写終止領域、及び任意選択的に少なくとも1つの転写後調節配列を含む制御要素の少なくとも動作可能に接続された構成要素を提供するために、公知の技術を使用して構築され得る。制御要素は、標的化された細胞において機能的であるように選択される。動作可能に接続された構成要素を含有する結果として生じる構築物は、典型的には、機能的AAV逆方向末端反復配列(ITR)と5’及び3’領域で隣接している。
【0117】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。AAV-2のITR配列は、例えば、Kotin et al.Human Gene Therapy,5:793-01(1994)、Fields&Knipe,Fundamental Virology,“Parvoviridae and their Replication”(2d ed.1986)によって説明される。当業者であれば、AAV ITRが、標準的な分子生物学技術を使用して修飾され得ることを理解するであろう(例えば、Green&Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(4th ed.,2012))。したがって、本開示のベクターで使用されるAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換によって改変され得る。加えて、AAV ITRは、限定されるものではないが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9などを含む、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。更に、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、意図されるITRが機能する限り、すなわち、AAV rep遺伝子産物が細胞中に存在するとき、関心対象の結合されたヌクレオチド配列の除去及び複製を可能にする限り、必ずしも同一である必要はなく、又は同じAAV血清型若しくは単離物に由来する必要はない。
【0118】
当業者であれば、調節配列が、多くの場合、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアンウイルス40などのウイルスに由来する一般的に使用されるプロモータから提供され得ることを理解し得る。タンパク質の発現を誘導するためのウイルス調節要素の使用は、様々な宿主細胞におけるタンパク質の高レベルの構成的発現を可能にし得る。同様に使用され得る遍在的に発現するプロモータはまた、例えば、早期サイトメガロウイルスプロモータ(Boshart et al.,Cell,41:521-30(1985))、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモータ(McKnight et al.Cell,37:253-62(1984))、β-アクチンプロモータ(例えば、ヒトβ-アクチンプロモータ、Ng et al.,Molecular Cell Biology,5:2720-32(1985))、及びコロニー刺激因子-1プロモータ(Ladner et al.,EMBO J.,6:2693-98(1987))を含む。
【0119】
あるいは、AAVベクターの調節配列は、特定の細胞型において優先的に遺伝子の発現を誘導することができ、すなわち、組織特異的調節要素が使用され得る。使用され得る組織特異的プロモータの非限定的な例としては、ニューロン特異的プロモータ(例えば、神経フィラメントプロモータ、Byrne and Ruddle,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:5473-77(1989))及びグリア特異的プロモータ(Morii et al.,Biochemical&Biophysical Research Communications,175:185-91(1991))などの中枢神経系(CNS)特異的プロモータが挙げられる。特定の実施形態では、プロモータは、組織特異的であり、中枢神経系の外部で本質的に活性ではないか、又はプロモータの活性は、他の系における中枢神経系でより高い。例えば、脊髄、脳幹、(髄質、脳梁、及び中脳)、小脳、間脳(視床、視床下部)、終脳(線条体、大脳皮質、又は大脳皮質内の後頭葉、側頭葉、頭頂葉、若しくは前頭葉)、あるいはそれらの組み合わせに特異的なプロモータが選択され得る。プロモータは、CNS中のニューロン又はグリア細胞などの、特定の細胞型に特異的であり得る。グリア細胞中で活性である場合、星状細胞、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、シュワン細胞、又はミクログリアに特異的であり得る。ニューロンで活性である場合、特定のタイプのニューロン、例えば、運動ニューロン、感覚ニューロン、又は介在ニューロンに特異的であり得る。加えて、特定の表現型を有するニューロン、例えば、ドーパミン産生ニューロン、セロトニン産生ニューロンなどに特異的であり得る。特定の実施形態では、プロモータは、脳の特定の領域、例えば、皮質、線条体、黒質、及び海馬の細胞に特異的である。
【0120】
好適なニューロン特異的プロモータとしては、限定されるものではないが、シナプシンプロモータ、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(Olivia et al.,Genomics,10:157-65(1991).GenBankアクセッション番号X51956)、及びヒト神経フィラメント軽鎖プロモータ(NEFL)(Rogaev et al.,Human Molecular Genetics,1:781(1992),GenBankアクセッション番号L04147)が挙げられる。グリア特異的プロモータとしては、限定されるものではないが、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモータ(Morii et al.,Biochemical&Biophysical Research Communications,175:185-91(1991),GenBankアクセッション番号M65210)、S100プロモータ(Morii et al.,Biochemical&Biophysical Research Communications,175:185-91(1991),GenBankアクセッション番号M65210)、及びグルタミンシンターゼプロモータ(Van den et al.,Biochimica Biophysica Acta,2:249-51(1991),GenBankアクセッション番号X59834)が挙げられる。好ましい実施形態では、遺伝子は、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモータによって上流(すなわち、5’)に隣接している。別の好ましい実施形態では、関心対象の遺伝子は、伸長因子1アルファ(EF)プロモータによって上流(すなわち、5’)に隣接している。好適な表現型特異的プロモータとしては、限定されるものではないが、チロシンヒドロキシラーゼプロモータ、ドーパミンベータヒドロキシラーゼ、アセチルコリンエステラーゼプロモータ、コリンアセチルトランスフェラーゼプロモータ、ドーパミン受容体I及びIIプロモータ、ドーパミントランスポータプロモータ、小胞性モノアミントランスポータプロモータ、ネオプシンプロモータ、及び小胞性アセチルコリントランスポータプロモータが挙げられる。
【0121】
CCNFポリヌクレオチドが発現可能である核酸構築物、及びAAV ITRに隣接する転写後調節配列(PRE)を保有するAAVベクターは、関心対象のヌクレオチド配列及びPREをAAVゲノムに直接挿入することによって構築され得、AAVゲノムは、そこから切り出された主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)を有していた。AAVゲノムの他の部分もまた、ITRの十分な部分が複製及びパッケージング機能を可能にするように残る限り、欠失され得る。これらの構築物は、当該技術分野で周知の技術を使用して設計され得る。(例えば、Lebkowski et al.,Molecular&Cellular Biology,8:3988-96(1988)、Vincent et al.,Vaccines90(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990)、Carter,Current Opinion Biotechnology,3:533-39(1992)、Muzyczka,Current Topics Microbiology&Immunology,158:97-29(1992)、Kotin,Human Gene Therapy,5:793-01(1994)、Shelling et al.,Gene Therapy,1:165-69(1994)、及びZhou et al.,J Experimental Medicine,179:1867-75(1994))。あるいは、AAV ITRは、ウイルスゲノムから、又はそれを含有するAAVベクターから切り出され、かつGreen&Sambrook(Green&Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(4th ed.,2012))に説明されるものなどの、標準的なライゲーション技術を使用して、別のベクターに存在する選択された核酸構築物の5’及び3’を融合され得る。いくつかのAAVベクターは、アクセッション番号53222、53223、53224、53225、及び53226で、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能である。
【0122】
組換えAAV粒子を産生するために、AAVベクターは、トランスフェクションなどの公知の技術を使用して好適な宿主細胞に導入され得る。いくつかのトランスフェクション技術が当該技術分野で一般的に知られている(例えば、Graham et al.,Virology,52:456(1973)、Green&Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(4th ed.,2012)、Davis et al.,Basic Methods Molecular Biology,(Elsevier,1986)、及びChu et al.,Gene,13:197(1981)を参照されたい)。特に好適なトランスフェクション方法としては、リン酸カルシウム共沈殿(Graham et al.,Virology,52:456-67(1973))、培養細胞への直接マイクロインジェクション(Capecchi,Cell,22:479-88(1980))、エレクトロポレーション(Shigekawa et al.,BioTechniques,6:742-51(1988))、リポソーム介在性遺伝子導入(Mannino et al.,BioTechniques,6:682-90(1988))、脂質介在性形質導入(Feigner et al.,Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,84:7413-17(1987))、及び高速マイクロプロジェクタイルを使用した核酸送達(Klein et al.,Nature327:70-73(1987))が挙げられる。
【0123】
組換えAAV粒子を産生するための好適な宿主細胞としては、限定されるものではないが、外因性核酸分子のレシピエントとして使用され得るか、又は使用されている、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられる。したがって、本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、概して、外因性核酸分子でトランスフェクトされた細胞を指す。宿主細胞は、細胞又は細胞株が発現されるタンパク質、選択される選択系、又は用いられる発酵系と不適合でない限り、任意の真核細胞又は細胞株を含む。非限定的な例としては、CHO DHFRマイナス細胞(Urlaub and Chasin Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,77:4216-420(1980))、293細胞(Graham et al.,J.General Virology36:59-72(1977))、又はSP2若しくはNSOなどの骨髄腫細胞(Galfre&Milstein,Methods Enzymology,73:3-46(1981))が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、安定なヒト細胞株、293(例えば、アクセッション番号ATCC CRL1573でATCCを通じて容易に入手可能)からの細胞であり、これは、アデノウイルス5型DNA断片で形質転換されているヒト胚性腎臓細胞株であり(Graham et al.,J.General Virology,36:59-72(1977))、アデノウイルスE1a及びE1 b遺伝子を発現する(Aiello et al.,Virology,94:460-69(1979))。293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、AAVビリオンを産生するための特に便利なプラットフォームを提供する。
【0125】
上記に説明されたAAVベクターを含有する宿主細胞は、AAV ITRが隣接した発現カセットを複製及びキャプシド形成して、組換えAAV粒子を産生するために、AAVヘルパー機能を提供することができるようにされなければならない。AAVヘルパー機能は、概して、AAV由来コード配列であり、これは、AAV遺伝子産物を提供するために発現され得、AAV遺伝子産物は、次いで、生産的なAAV複製のためにトランスで機能する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターから欠落している必要なAAV機能を補完するために本明細書で使用される。したがって、AAVヘルパー機能は、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)、すなわち、rep及びcapコード領域、又はその機能的相同体のうちの一方又は両方を含む。
【0126】
AAVゲノムのAAV repコード領域は、複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40をコードする。これらのRep発現産物は、DNA複製のAAV起源の認識、結合、及びニッキング、DNAヘリカーゼ活性、並びにAAV(又は他の外因性)プロモータからの転写の調節を含む、多くの機能を有することが示されている。Rep発現産物は、AAVゲノムを複製するために集合的に必要とされる。AAVゲノムのAAV capコード領域は、キャプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3、又はその機能的相同体をコードする。AAVヘルパー機能は、発現カセットを含むAAVベクターのトランスフェクションの前又は同時に、宿主細胞をAAVヘルパー構築物でトランスフェクトすることによって宿主細胞に導入され得、したがって、AAVヘルパー構築物は、AAV rep及び/又はcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供して、生産的なAAV感染に必要であるAAV機能の欠落を補完するために使用される。AAVヘルパー構築物は、AAV ITRを欠いており、それ自体を複製することもパッケージ化することもできない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態であり得る。Rep及びCap発現産物の両方をコードする一般的に使用されるプラスミドpAAV/Ad及びplM29+45などの、いくつかのAAVヘルパー構築物が説明されている(例えば、Samulski et al.,J.Virology,63:3822-28(1989)、McCarty et al.,J.Virology,65:2936-45(1991)を参照されたい)。Rep及び/又はCap発現産物をコードするいくつかの他のベクターが説明されている(例えば、参照により組み込まれる米国特許第5,139,941号を参照されたい)。
【0127】
ヘルパーウイルスによる宿主細胞の感染の結果として、AAV Rep及び/又はCapタンパク質が産生される。Repタンパク質はまた、AAVゲノムを複製する役割を果たす。発現されたCapタンパク質は、キャプシド内に組み立てられ、AAVゲノムは、キャプシド内にパッケージ化される。これは、AAVが、発現カセットを含む組換えAAV粒子内にパッケージ化されることを結果的にもたらす。組換えAAV複製後、組換えAAV粒子は、CsCl勾配などの様々な従来の精製方法を使用して宿主細胞から精製され得る。次いで、結果的に得られた組換えAAV粒子は、様々な細胞型への遺伝子送達に使用する準備ができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、対象に投与されるウイルスベクター及び/又はビリオン粒子の数は、103~1015粒子/mLの範囲のオーダー、又は、例えば、約107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、若しくは1015粒子/mLなどの、それらの間の任意の値であり得る。いくつかの実施形態では、1013粒子/mL超のベクター及び/又はビリオン粒子が投与される。1μL~10mLの体積は、対象が102~1016の総ベクター及び/又はビリオン粒子を受容するように投与され得る。したがって、いくつかの実施形態では、約102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1014、又は1016のベクター及び/又はビリオン粒子が投与される。
【0129】
本開示の方法の実践では、任意の血清型のAAVが使用され得る。本発明の特定の実施形態で使用されるウイルスベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、及びAAV8からなる群から選択される(例えば、Gao et al.,2002,PNAS99:11854-11859、及びViral Vectors for Gene Therapy:Methods and Protocols,ed.Machida,Humana Press,2003を参照されたい)。本明細書に列挙されたもの以外の他の血清型が使用されてもよい。更に、シュードタイプAAVベクターもまた、本明細書に説明される方法で利用され得る。シュードタイプAAVベクターは、第2のAAV血清型のカプシド中に1つのAAV血清型のゲノムを含有するベクター、例えば、AAV2カプシド及びAAV1ゲノムを含有するAAVベクター、又はAAV5カプシド及びAAV2ゲノムを含有するAAVベクターである(Auricchio et al.,2001.Hum.Mol.Genet.10(26):3075-81)。AAVベクターは、哺乳動物に対して非病原性である一本鎖(ss)DNAパルボウイルスに由来する(Muzyscka,1992.Curr.Top.Microb.Immunol.158:97-129に概説されている)。簡潔に述べると、組換えAAVベースのベクターは、除去されたウイルスゲノムの96%を占めるrep及びcapウイルス遺伝子を有し、ウイルスDNA複製、パッケージング、及び組み込みを開始するために使用される、2つの隣接する145塩基対(bp)逆方向末端反復(ITR)を残す。ヘルパーウイルスの非存在下では、野生型AAVは、染色体19q 13.3に優先的な部位特異性を有してヒト宿主細胞ゲノムに組み込まれるか、又はエピソーム的に維持され得る。単一のAAV粒子は、最大5kbのssDNAを収容することができ、したがって、導入遺伝子及び調節要素のために約4.5kbを残し、これは、典型的には十分である。しかしながら、例えば、米国特許第6,544,785号に説明されるトランススプライシング系は、この限界をほぼ2倍にし得る。
【0130】
特定の事例では、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43、及びCSp3から選択される。
【0131】
CNSの細胞に標的化されたAAVベースの遺伝子療法ベクターは、例えば、米国特許第6,180,613号及び同第6,503,888号に説明されている。追加の例示的なAAVベクターは、ヒトタンパク質をコードする組換えAAV2/1、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/7、AAV2/8、及びAAV2/9血清型ベクターである。特定の実施形態では、AAVは、例えば、Ayers et al.(2015,Mol Ther.23(1):53-62)に説明されるように、rAAV2/1、rAAV2/8、及びrAAV2/9から選択された神経向性AAVである。
【0132】
あるいは、本開示のベクターは、ウイルス核酸中に導入されたCCNF核酸分子の発現を可能にする、アデノ随伴ウイルス以外のウイルス、又はその一部分であってもよい。例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが使用され得る。組換えレトロウイルスを産生するためのプロトコル、及びそのようなウイルスをインビトロ又はインビボで細胞に感染させるためのプロトコルは、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology §§9.10-9.14(Greene Publishing Associates,1989)及び他の標準的な実験マニュアルに見出され得る。好適なレトロウイルスの例としては、当業者に周知であるpLJ、pZIP、pWE、及びpEMが挙げられる。好適なパッケージングウイルス株の例としては、Crip、Cre、2、及びAmが挙げられる。アデノウイルスのゲノムは、関心対象のタンパク質をコードし、発現するが、正常な溶解ウイルスライフサイクルで複製するその能力の点で不活性化されるように操作され得る(例えば、Berkner et al.,BioTechniques,6:616-29(1988)、Rosenfeld et al.,Science,252:431-34(1991)、Rosenfeld et al.,Cell68:143-55(1992)を参照されたい)。アデノウイルス株Ad5型d1324又はアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する好適なアデノウイルスベクターは、当業者に周知である。
【0133】
4.1.2 レンチウイルス
レンチウイルスベクターは、ニューロン(例えば、運動ニューロン)を含む神経系の細胞においてCCNFポリヌクレオチドを発現するために利用され得、好適なレンチウイルスベクターの産生は、当該技術分野で周知である(例えば、参照により組み込まれる米国特許出願第13/893,920号を参照されたい)。本開示によるレンチウイルスベクターは、任意の好適なレンチウイルスに由来し得るか、又はそれから誘導可能であり得る。組換えレンチウイルス粒子は、関心対象のヌクレオチドで標的細胞を形質導入することができる。RNAゲノムから細胞内に入ると、ベクター粒子は、DNAに逆転写され、標的細胞のゲノムに組み込まれる。
【0134】
レンチウイルスベクターは、レトロウイルスベクターのより大きいグループの一部である。レンチウイルスの詳細なリストは、Coffin et al.,Retroviruses758-763(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1997)に見出され得る。簡潔に述べると、レンチウイルスは、霊長類グループと非霊長類グループとに分割され得る。霊長類レンチウイルスの例としては、限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びサル免疫不全ウイルス(SrV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルスグループとしては、プロトタイプの「スローウイルス」のvisnaimaediウイルス(VMV)、及び関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0135】
レンチウイルスは、レンチウイルスが分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有するという点で、レトロウイルス科の他のメンバーとは異なる(Lewis et al.,EMBO J.,11:3053-58(1992)、Lewis&Emerman,J Virology,68:510-16(1994))。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば、筋肉、脳、肺、及び肝臓組織を構成する細胞などの、非分裂細胞又はゆっくり分裂する細胞に感染することができない。
【0136】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの構成部分を含むベクターである。その構成部分は、ベクターが細胞に感染するか、遺伝子を発現するか、又は複製される、生物学的機構に関与し得る。レトロウイルス及びレンチウイルスゲノムの基本的な構造は、5’LTR及び3’LTRなどの多くの共通の特徴を共有し、それらの間に、又はそれらの中には、ゲノムがパッケージ化されることを可能にするパッケージングシグナル、プライマ結合部位、宿主細胞ゲノムへの組み込みを可能にする組み込み部位、並びにウイルス粒子のアセンブリに必要なポリペプチドであるパッケージング構成要素をコードするgag、pol、及びenv遺伝子が位置する。レンチウイルスは、例えば、rev及びrev応答要素(RRE)配列などの追加の特徴を有し、これは、感染した標的細胞の核から細胞質への組み込まれたプロウイルスのRNA転写物の効率的な搬出を可能にする。プロウイルスでは、ウイルス遺伝子は、長い末端リピート(LTR)と呼ばれる領域が両端で隣接している。LTRは、プロウイルス組み込み及び転写に関与する。LTRはまた、エンハンサプロモータ配列として機能し、ウイルス遺伝子の発現を制御し得る。LTR自体は、「U3」、「R」、及び「U5」と呼ばれる3つの要素に分割され得る同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に固有の配列に由来し、Rは、RNAの両端で繰り返される配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に固有の配列に由来する。3つの要素のサイズは、異なるウイルス間でかなり変化し得る。
【0137】
欠陥のあるレンチウイルスベクターゲノムでは、gag、pol、及びenvは、存在しないか、又は機能しない場合がある。RNAの両端のR領域は、反復配列である。U5及びU3は、それぞれ、RNAゲノムの5’及び3’末端における固有の配列を表す。
【0138】
本開示の典型的なレンチウイルスベクターでは、複製に必須の1つ以上のタンパク質コード領域の少なくとも一部がウイルスから除去され得、これは、ウイルスベクターの複製欠損を生じさせる。ウイルスゲノムの一部分はまた、標的非分裂宿主細胞を形質導入することができる、及び/又はそのゲノムを宿主ゲノムに組み込むことができる核酸を含むベクターを生成するために、核酸によって置換され得る。一実施形態では、レンチウイルスベクターは、米国特許出願第12/138,993号(参照により本明細書に組み込まれる)に説明されるように非組み込みベクターである。
【0139】
更なる実施形態では、ベクターは、ウイルスRNAが全くないか、又はそれを欠いている配列を送達する能力を有する。異種結合ドメイン(gagに対して異種)は、送達されるRNA上に位置し、gag又はpol上の同族結合ドメインが、送達されるRNAのパッケージングを確保するために使用され得る。これらのベクターの両方は、米国特許出願第12/139,035号(参照により本明細書に組み込まれる)に説明される。レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクター、すなわち、主に霊長類、特にヒトに感染しないウイルス由来であってもよい。
【0140】
非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類に自然に感染しないレンチウイルス科の任意のメンバーであり得、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、マエディ・ビスナウイルス(MW)、又はウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)を含み得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、EIAVに由来する。EIAVは、レンチウイルスの最も単純なゲノム構造を有する。gag、pol、及びenv遺伝子に加えて、EIAVは、tat、rev、及びS2の3つの他の遺伝子をコードする。tatは、ウイルスLTRの転写活性化因子として作用する(Derse&Newbold,Virology,194:530-36(1993)、Maury et al.,Virology,200:632-42(1994))。revは、rev応答要素(RRE)を通じてウイルス遺伝子の発現を調節及び調整する(Martarano et al.,J.Virology,68:3102-11(1994))。これら2つのタンパク質の作用機序は、霊長類ウイルスにおける類似の機序と広く類似していると考えられている(Martarano et al.,J.Virology,68:3102-11(1994))。S2の機能は不明である。加えて、膜貫通タンパク質の開始時にenvコード配列にスプライシングされたtatの第1のエクソンによってコードされるEIAVタンパク質であるTtmが識別されている。
【0142】
ウイルスベクターは、関心対象のヌクレオチド配列を標的宿主細胞に感染、形質導入、及び送達するために必要な機能を提供するために、非必須要素を除去し、必須要素を保持するように操作され得る(例えば、参照により組み込まれる米国特許第6,669,936号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ゲノムは、パッケージング構成要素の存在下で、標的細胞に感染することができるウイルス粒子へのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレンチウイルス遺伝子情報に限定される。標的細胞の感染は、逆転写及び標的細胞ゲノムへの組み込みを含み得る。レンチウイルスベクターは、ベクターによって標的細胞に送達される非ウイルスコード配列を担持する。いくつかの実施形態では、ベクターは、最終標的細胞内で感染性レンチウイルス粒子を産生するための独立した複製が不可能である。通常、組換えレンチウイルスベクターは、機能的なgag-pol及び/若しくはenv遺伝子、並びに/又は複製に必須の他の遺伝子を欠く。本開示のベクターは、スプリットイントロンベクターとして構成され得る(例えば、参照により組み込まれる米国特許第7,303,910号を参照されたい)。
【0143】
ベクターは、自己不活性化ベクターであってもよい。自己不活性化レトロウイルスベクターは、3’LTRのU3領域中の転写エンハンサ又はエンハンサ及びプロモータを欠失することによって構築され得る。ベクター逆転写及び組み込みのラウンドの後、これらの変化は、転写的に不活性なプロウイルスを産生する5’及び3’LTRの両方にコピーされる(Yu et al.,Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,83:3194-98(1986)、Dougherty and Temin et al.,Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,84:1197-01(1987):Hawley,Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,84:2406-10(1987)、Yee et al.,Proceedings Nat’l Acad.Sci.USA,91:9564-68(1994))。しかしながら、そのようなベクター中のLTRの内部の任意のプロモータは、依然として転写的に活性となる。この戦略は、内部に配置された遺伝子からの転写に対するウイルスLTRにおけるエンハンサ及びプロモータの効果を排除するために採用されている。そのような効果としては、増加した転写(Jolly et al.,Nucleic Acids Research,11:1855-72(1983))又は転写の抑制(Emerman&Temin,Cell,39:449-67(1984))が挙げられる。この戦略はまた、3’LTRからゲノムDNAへの下流転写を排除するために使用され得る(Herman&Coffin,Science,236:845-48(1987))。これは、内因性がん遺伝子の偶発的な活性化を防止することが極めて重要であるヒト遺伝子療法において特に懸念される。
【0144】
宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターはまた、レンチウイルスゲノムに動作可能に連結されて、宿主細胞/パッケージング細胞におけるゲノムの転写を誘導する転写調節制御配列を含むことになる。これらの調節配列は、転写されたレンチウイルス配列と関連付けられた天然配列、すなわち、5’U3領域に関連する天然配列であってもよく、又はそれらは、別のウイルスプロモータ、例えばCMVプロモータなどの異種プロモータであってもよい。いくつかのレンチウイルスゲノムは、効率的なウイルス産生のために追加の配列を必要とする。例えば、HIVの場合、rev及びRRE配列が含まれることが好ましいが、rev及びRREの要件は、コドン最適化によって低減又は排除され得る(参照により組み込まれる米国特許出願第12/587,236号を参照されたい)。rev/RRE系と同じ機能を実施する代替的な配列も公知である。例えば、revIRRE系の機能類似体は、メイソンファイザーサルウイルス中に見出される。これは、構成的輸送要素(CTE)として知られており、感染した細胞の因子と相互作用すると考えられるRRE型配列をゲノム中に含む。細胞因子は、rev類似体として考えられ得る。したがって、CTEは、reviRRE系の代替として使用され得る。知られているか、又は利用可能になる任意の他の機能的均等物は、本開示の方法に関連し得る。例えば、HTLV-1のRexタンパク質は、HIV-1のRevタンパク質を機能的に置換し得る。Rev及びRexは、IRE-BPと同様の効果を有することも知られている。
【0145】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、CCNFポリヌクレオチドが発現可能である、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。ベクターは、(1)組換えEIAV PROSAVIN(Oxford BioMedica pic,Oxford UK)ベクターゲノム(Farley et al.,J.Gen.Med.,9:345-56(2007)、参照により組み込まれる米国特許第7,259,015号)、(2)合成EIAV gag/pol発現ベクター(pESGPK、参照により組み込まれる米国特許出願第13/893,920号及び同第12/587,236号)、及び(3)VSV-Gエンベロープ発現ベクター(pHGK)をコードする、3つのプラスミドによる細胞(例えば、HEK293T細胞)の一過性トランスフェクションによって産生され得る。
【0146】
4.1.3 単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターはまた、ニューロン(例えば、運動ニューロン)を含む神経系の細胞においてCCNFポリヌクレオチドを送達及び発現するためにも利用され得る。1型(HSV-1)のゲノムは、約70個の遺伝子を特徴とする、約150kbの直鎖二本鎖DNAである。多くのウイルス遺伝子は、ウイルスが増殖するその能力を失うことなく欠失され得る。「最初期」(IE)遺伝子が最初に転写される。それらは、他のウイルス遺伝子の発現を調節するトランス作用因子をコードする。「初期」(E)遺伝子産物は、ウイルスDNAの複製に関与する。後期遺伝子は、ビリオンの構造的構成要素、並びにIE及びE遺伝子の転写をオンにするか、又は宿主細胞タンパク質翻訳を破壊するタンパク質をコードする。
【0147】
HSVベクターは、プラスミドベースの系であり得、それによって、遺伝子をコードするヌクレオチド配列と2つのシス作用HSV認識シグナルとを含有するプラスミドベクター(アンプリコンと称される)が生成される。認識シグナルは、DNA複製の起源であり、HSV遺伝子産物をコードしない切断パッケージングシグナルである。したがって、ヘルパーウイルスは、アンプリコンを複製し、それをHSVコートにパッケージ化する必要がある。したがって、ベクターは、レシピエント細胞内にウイルス遺伝子産物を発現せず、ベクターによる潜伏ウイルスの組換え又は再活性化は、欠陥HSVベクターゲノム内に存在する最小量のHSV DNA配列に起因して制限される。
【0148】
HSV介在性遺伝子療法の例は、当該技術分野で周知である(Breakefield&DeLuca.New Biologist,3:203-18(1991)、Ho&Mocarski,Virology,167:279-93(1988)、Palella,et al.,Molecular&Cellular Biology,8:457-60(1988)、Palella et al.,Gene,80:137-44(1988)、Andersen et al.,Human Gene Therapy,3:487-99(1992)、Kaplitt et al.,Current Topics Neuroendocrinology,11:169-91(1993)、Spade&Frenkel,Cell,30:295-04(1982)、Kaplitt et al.,Molecular&Cellular Neuroscience,2:320-30(1991)、Federoff et al.,Proceedings Nat.Acad.Sci.USA,89:1636-40(1992))。
【0149】
4.1.4 アデノウイルス
アデノウイルスベクターは、ニューロン(例えば、運動ニューロン)を含む神経系の細胞においてCCNFポリヌクレオチドを送達及び発現するために利用され得る。アデノウイルスゲノムは、約36kbの二本鎖DNAからなる。アデノウイルスは、気道上皮細胞を標的化するが、ニューロンに感染することもできる。組換えアデノウイルスベクターは、非分裂細胞のための遺伝子導入ビヒクルとして使用されてきた。これらのベクターは、アデノウイルスE1aの最初期遺伝子が除去されるが、ほとんどのウイルス遺伝子が保持されるため、組換えHSVベクターと類似している。Ela遺伝子は、小さく(約1.5kb)、アデノウイルスゲノムは、HSVゲノムの約3分の1であるため、アデノウイルスゲノム内に外来遺伝子を挿入するために、他の非必須アデノウイルス遺伝子が除去される。
【0150】
アデノウイルス介在性遺伝子療法の例は、当該技術分野で周知である(Akli et al.,Nature Genetics,3:224-28(1993)、La Salle et al.,Science,259:988-90(1993),La Salle,Nature Genetics,3:1-2(1993)、Neve,Trends Biochemical Sci.,16:251-53(1993))。
【0151】
4.2 非ウイルス送達系
修飾サイクリンFポリペプチド及び修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子は、非ウイルス送達系を使用して送達され得る。当該技術分野で公知の核酸分子及び/又はタンパク質の送達のための任意の送達方法又は系が、修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子を送達するために使用され得る。これは、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系を含むコロイド分散系における所望の組織への修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子の送達を含む。他の送達系としては、エクソソーム、ビロソーム、ナノ粒子(金又はシリカナノ粒子を含む)、ポリマー(例えば、デンドリマー、ポリマーナノゲルなど)が挙げられる。核酸に好適な送達試薬としては、限定されるものではないが、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えば、ポリリジン)、アテロコラーゲン、ナノプレックス、及びリポソームが挙げられる。核酸分子の送達ビヒクルとしてのアテロコラーゲンの使用は、Minakuchi et al.Nucleic Acids Research,32:e109(2004)、Hanai et al.Annals N.Y.Acad.Sci.,1082:9-17(2006)、Kawata et al.Molecular Cancer Therapeutics,7:2904-12(2008)に説明されている。
【0152】
一例では、リポソームが送達ビヒクルとして使用される。リポソームは、インビトロ及びインビボにおける送達ビヒクルとして有用である人工膜小胞である。リポソームが効率的な導入ビヒクルとなるために、次の特性が存在するべきである。(1)生物学的活性を損なわない、高効率の遺伝子材料又はタンパク質の封入、(2)非標的細胞と比較して、標的細胞への優先的かつ実質的な結合、(3)高効率の標的細胞細胞質へ小胞の水性内容物の送達、及び関連する場合(4)遺伝情報の正確かつ効果的な発現(Mannino et al.,BioTechniques,6:682-90(1988))。
【0153】
本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子の送達に好適なリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され得、これは、一般に、中性又は負に荷電したリン脂質、及びコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は、一般的に、血流中のリポソームの所望のリポソームサイズ及び半減期などの因子を考慮することによってガイドされる。好適な脂質リポソーム産生の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドなどの、ホスファチジル化合物が挙げられる。脂質の追加の例としては、限定されるものではないが、ポリリジン、プロタミン、硫酸塩、及び3.ベータ.-[N--(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロールが挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSzoka et al.,Annual Rev.Biophysics&Bioengineering,9:467-08(1980)、及び米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、及び同第5,019,369号に説明されるように、リポソームを調製するために様々な方法が知られている。
【0154】
リポソームは、水性媒体中に分散され、多重膜同心二重層小胞(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成するリン脂質から形成される。MLVは、一般的に、25nm~4mの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア中に水溶液を含有する、200~500オングストロームの範囲の直径を有する小型単層小胞(SUV)の形成を結果的にもたらす。
【0155】
修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子とともに使用するためのリポソームはまた、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを回避するために修飾され得る。そのような修飾リポソームは、表面上に、又はリポソーム構造に組み込まれたオプソニン化阻害部分を有する。
【0156】
本明細書に説明されるリポソームを調製する際に使用するためのオプソニン化阻害部分は、典型的には、リポソーム膜に結合される大きい親水性ポリマーである。本明細書で使用される場合、オプソニン化阻害部分は、例えば、脂質可溶性アンカーの膜自体へのインターカレーションによって、又は膜脂質の活性基に直接結合することによって、膜に化学的又は物理的に付着する場合、リポソーム膜に「結合」される。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、例えば、参照により組み込まれる米国特許第4,920,016号に説明されるように、MMS及びRESによるリポソームの取り込みを著しく減少させる保護表面層を形成する。
【0157】
いくつかの実施形態では、リポソームを修飾するためのオプソニン化阻害部分は、約500~約40,000ダルトン、又は約2,000~約20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性ポリマーである。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体、例えば、メトキシPEG又はPPG、及びPEG又はPPGステアレート、ポリアクリルアミド又はポリN-ビニルピロリドンなどの合成ポリマー、直鎖、分枝鎖、又はデンドリマーポリアミドアミン、ポリアクリル酸、カルボキシ基又はアミノ基が化学的に連結されているポリアルコール、例えば、ポリビニルアルコール及びポリキシリトール、並びにガングリオシドGM1などのガングリオシドが挙げられる。PEG、メトキシPEG、若しくはメトキシPPG、又はその誘導体のコポリマーも好適である。加えて、オプソニン化阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖類、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、又はポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーとすることができる。オプソニン化阻害ポリマーはまた、例えば、炭酸の誘導体と反応して、カルボキシ基の連結を結果的に生じる、アミノ酸若しくはカルボン酸、例えば、ガラクトロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン、アミノ化多糖類若しくはオリゴ糖類(直鎖若しくは分枝鎖)、又はカルボン酸多糖類若しくはオリゴ糖類を含有する天然多糖類とすることができる。いくつかの実施形態では、オプソニン化阻害部分は、PEG、PPG、又はその誘導体である。PEG又はPEG誘導体で修飾されたリポソームは、「PEG化リポソーム」と呼ばれることがある。
【0158】
5.修飾サイクリンFポリペプチド及びポリヌクレオチドの送達
ニューロン(例えば、運動ニューロン)は、例えば、インビトロ若しくはエクスビボで細胞培養物中の修飾サイクリンFポリペプチド若しくはエンコーディング核酸と接触するか、又は、例えば、インビボで対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又はエンコーディング核酸(任意選択的に、本明細書に説明されるような送達ビヒクル内にある)が、対象に投与されて、ALS、FTD、及びADなどのニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられるものを含む、神経変性状態の発症を治療又は阻害し得る。
【0159】
インビトロ方法については、ニューロンは、異なる供給源から取得され得る。例えば、ニューロンは、対象から取得され得る。いくつかの実施形態では、ニューロンは、全細胞である。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態(例えば、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態(例えば、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態)を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態(例えば、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた神経変性状態)を有すると疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、神経細胞死によって特徴付けられる状態を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、神経細胞死によって特徴付けられる状態に罹患していると疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、神経細胞死に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、ALSに罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、FTDに罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、ADに罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、担体、例えば、無症状担体である。いくつかの実施形態では、運動ニューロン細胞は、対象の胚性幹細胞(ESC)に由来する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、マウスである。いくつかの実施形態では、マウスは、トランスジェニックマウスである。胚性幹細胞からの運動ニューロン分化を誘導する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、Di Giorgio et al.,Nature Neuroscience(2007),published online 15 April 2007;doi:10.1038/nn1885 and Wichterle et al.,Cell(2002)110:385-397に説明されている。いくつかの事例では、人工多能性幹細胞は、対象から生成され、次いで、運動ニューロンに分化され得る。対象から運動ニューロンを誘導する1つの例示的な方法は、Dimos,J.T.,et al.Science(2008)321,1218-122(Epub Jul.31,2008)に説明される。
【0160】
インビボ方法の場合、有効量の本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又はエンコーディング核酸が、対象に投与され得る。対象に薬剤を投与する方法は、当該技術分野で公知であり、当業者に容易に入手可能である。
【0161】
当業者はまた、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又はエンコーディング核酸が、ニューロンの変性を阻害するために、又はニューロンの生存を増強するために使用され得、これが、ニューロン(例えば、運動ニューロン)の変性によって特徴付けられるいくつかの状態の治療、発症の阻害、又は改善につながり得ることも理解するであろう。
【0162】
特定の実施形態では、ニューロン変性は、運動ニューロン変性を含む。運動ニューロン疾患(MND)は、発話、歩行、呼吸、嚥下、及び身体の一般的な動きを含む随意の筋肉活性を制御する神経細胞である運動ニューロンに選択的に影響する神経変性状態のグループである。骨格筋は、脊髄の前角に位置するニューロン(下位運動ニューロン)のグループによって神経支配され、前根を筋細胞に突出させる。これらの神経細胞は、脳の運動皮質から突出する皮質脊髄路又は上位運動ニューロンによってそれ自体が神経支配される。肉眼的病理では、脊髄の前角の変性、及び前根の萎縮が存在する。脳では、前頭葉及び側頭葉に萎縮が存在し得る。顕微鏡検査では、ニューロンは、海綿体症、活性化された星状細胞及びミクログリアの存在、並びに特徴的な「骨格様」封入体、ブニナ小体、及び空胞化を含むいくつかの封入体を示し得る。運動ニューロン疾患は変化し、それらの効果において破壊的である。それらは、一般的に、それらの起源及び原因に特有の差異を有するが、患者にとっては、重度の筋衰弱という同様の結果をもたらす。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、進行性球麻痺、脊髄性筋萎縮症(SMA)、及びポリオ後症候群は、全て、MNDの例である。運動ニューロン変性の主要部位は、神経変性状態を分類する。
【0163】
上位運動ニューロン及び下位運動ニューロンの両方に影響するALSは、最も一般的な形態のMNDである。進行性球麻痺は、脳幹の下位運動ニューロンに影響し、発話の不明瞭化、並びに咀嚼及び嚥下困難を引き起こす。これらの状態を有する個体は、ほぼ常に、腕及び脚に異常な徴候を有する。原発性側索硬化症は、上位運動ニューロンの疾患であるが、一方で、進行性筋萎縮症は、脊髄の下位運動ニューロンのみに影響する。MNDを診断するための手段は、当業者に周知である。症状の非限定的な例が以下に説明される。
【0164】
5.1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ルー・ゲーリック病又は古典的な運動ニューロン疾患とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、全ての随意の筋肉へのシグナルを最終的に破壊する、進行性で最終的に致死性の障害である。米国では、医師は、運動ニューロン疾患及びALSという用語を互換的に使用する。上位及び下位運動ニューロンの両方が影響される。古典的なALS患者の約75%はまた、球根筋(発話、嚥下、及び咀嚼を制御する筋肉)の衰弱及び消耗も発症することになる。症状は、通常、腕及び手、脚、又は嚥下筋で最初に見られる。筋衰弱及び萎縮は、身体の両側で不釣り合いに起こる。罹患者は、力と、その腕、脚、及び身体を動かす能力とを失う。他の症状としては、痙性、緊張性反射、筋けいれん、線維束性収縮、並びに嚥下及び言語構成の増加した問題が挙げられる。発話は、不明瞭又は鼻声になる可能性がある。横隔膜及び胸壁の筋肉が適切に機能しないとき、個体は、機械的支持なしで呼吸する能力を失う。疾患は、通常、人の心又は人格を損なわないが、いくつかの最近の研究は、ALSを有する一部の人が、意思決定及び記憶の問題などの認知機能の変化を有する場合があることを示唆している。ALSは、40~60歳の人々が最も一般的に罹患するが、若年及び成年の人々も疾患を発症し得る。男性は、女性よりも頻繁に罹患する。ALSのほとんどの症例は、孤発的に発生し、それらの個体の家族は、疾患を発症するリスクが高くなるとは考えられていない。しかしながら、成人にはALSの家族性形態が存在し、これは、多くの場合、RNA代謝(例えば、TDP-43及びFUS)及びタンパク質分解(例えば、UBQLN2、TBK1、及びCCNF)に関与する遺伝子の変異から結果的に生じる。加えて、希少な若年発症型のALSは、遺伝的である。ALSを有するほとんどの個体は、通常、症状の発症から3~5年以内に呼吸不全で死亡する。しかしながら、罹患者の約10%が10年以上生存する。
【0165】
5.2 前頭側頭型認知症(FTD)
前頭側頭型認知症(FTD)は、前頭側頭葉変性の臨床症状であり、これは、主に前頭葉及び/又は側頭葉が関与する進行性ニューロン損失、並びにスピンドルニューロンの70%を超える典型的な損失を特徴とするが、一方で、他のニューロンタイプは、FTD、前頭葉及び側頭葉の萎縮又は収縮の一部分では無傷のままである。脳の前頭葉及び側頭葉は、一般的に、人格、行動、及び言語と関連付けられている。一般的な徴候及び症状は、影響される脳の部分に応じて変化する。FTD患者の中には、その性格が劇的に変化し、社会的に不適切、強迫的、又は感情的に無差別になる患者もいるが、一方で、他の患者は、言語を使用する能力を失う。徴候及び症状としては、社会的及び個人的な行動の変化、無気力感、感情の鈍化、表現言語及び受容言語の両方における欠陥の著しい変化が挙げられる。現在、FTDの治療法は存在しないが、症状の軽減に役立つ治療が存在する。
【0166】
5.3 脊髄性筋萎縮症(SMA)
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、いくつかの異なる障害を指し、全てが共通の遺伝的原因と、脊髄及び脳幹の運動ニューロンの喪失に起因する衰弱の兆候と、を有する。骨格筋の衰弱及び消耗は、脊髄の前角細胞の進行性変性によって引き起こされる。この衰弱は、多くの場合、腕よりも脚でより重度である。SMAは、様々な形態を有し、異なる発症年齢、遺伝パターン、並びに症状の重症度及び進行を伴う。より一般的なSMAの一部が以下に説明される。
【0167】
SMN遺伝子産物の欠陥は、SMAの主な原因として考えられ、SMNタンパク質レベルは、SMAに罹患している対象の生存と相関する。SMAの最も一般的な形態は、SMN遺伝子の変異によって引き起こされる。SMN(生存運動ニューロン)遺伝子を含有する染色体5の領域は、大きい重複を有する。いくつかの遺伝子を含有する大きい配列は、隣接するセグメントで2回発生する。したがって、遺伝子の2つのコピー、SMN1、及びSMN2が存在する。SMN2遺伝子は、低レベルではあるが、タンパク質の作製において効率を低下させる追加の変異を有する。SMAは、両方の染色体からのSMN1遺伝子の喪失によって引き起こされる。SMA1~SMA3の範囲のSMAの重症度は、残りのSMN2遺伝子がSMN1の喪失をどの程度補い得るかに部分的に関連する。
【0168】
ウェルドニッヒ・ホフマン病とも呼ばれるSMA I型は、子供が6か月齢になるまでに明らかになる。症状としては、筋緊張低下(重度に低減した筋緊張)、減少した四肢運動、腱反射の喪失、線維束性収縮、震え、嚥下及び摂食困難、並びに呼吸障害が挙げられ得る。一部の子供はまた、側弯症(脊椎の湾曲)又は他の骨格異常も発症する。罹患した子供は、座ったり立ったりせず、大半は、通常、2歳になる前に呼吸不全で死亡する。
【0169】
SMA II型の症状は、通常、子供が6か月齢になった後に始まる。特徴としては、立脚又は歩行不能、呼吸問題、筋緊張低下、腱反射の減少又は不在、及び線維束性収縮が挙げられ得る。これらの子供は、座ることを学ぶが、立たない場合がある。平均余命は異なり、一部の個体は青年期又はそれ以降まで生存する。
【0170】
SMA III型(クーゲルベルグ・ウェランダー病)の症状は、2~17歳の間に現れ、歩行異常、走行、階段を上ること、又は椅子から立ち上がることの困難、並びに指の微細な震えを含む。最も多くの場合、下肢が影響を受ける。合併症としては、側弯症及び関節拘縮が挙げられ、関節拘縮は、異常な筋緊張及び衰弱によって引き起こされる、関節周囲の筋肉又は腱の慢性短縮であり、関節が自由に動くことを妨げる。
【0171】
SMAの他の形態としては、例えば、遺伝性球脊髄性SMAケネディ病(X連鎖、アンドロゲン受容体)、呼吸困難を伴うSMA(SMARD1)(染色体11、IGHMBP2遺伝子)、上肢優位の遠位型SMA(染色体7、グリシルtRNA合成酵素)、及びX連鎖性幼児SMA(遺伝子UBE1)が挙げられる。
【0172】
SMAに対する現在の治療は、慢性運動ユニットの喪失の二次的効果の防止及び管理からなる。SMAの治療のための臨床試験中のいくつかの薬物としては、ブチレート、バルプロ酸、ヒドロキシ尿素、及びリルゾールが挙げられる。
【0173】
ファジオ・ロンド病の症状は、1~12歳の間に現れ、顔面衰弱、嚥下障害(嚥下困難)、吸気性喘鳴(多くの場合、喉頭の急性閉塞と関連付けられる甲高い呼吸音)、発話困難(構音障害)、及び眼筋の麻痺を含み得る。SMA III型患者のほとんどが呼吸合併症で死亡する。
【0174】
進行性球脊髄性筋萎縮症としても知られるケネディ病は、X連鎖劣性疾患である。ケネディ病の患者の娘は保因者であり、50%の確率で息子が罹患する。発症は、15~60歳の間に起こる。症状としては、顔面及び舌の筋肉の衰弱、手の震え、筋肉けいれん、嚥下障害、構音障害、雄乳房及び乳腺の過剰な発達が挙げられる。衰弱は、通常、手足に広がる前に骨盤で始まる。一部の個体は、非インスリン依存性糖尿病を発症する。
【0175】
障害の経過は変化するが、一般的に、ゆっくりと進行する。個体は、疾患の後期まで歩行可能なままである傾向がある。ケネディ病患者の平均余命は、通常、正常である。
【0176】
関節拘縮(手足の固定異常姿勢を伴う関節の持続性拘縮)を伴う先天性SMAは、希少な障害である。症状としては、重度の拘縮、側弯症、胸部変形、呼吸問題、異常に小さい顎、及び上まぶたの下垂が挙げられる。
【0177】
進行性球萎縮症とも呼ばれる進行性球麻痺は、嚥下、発話、咀嚼、及び他の機能に必要な下位運動ニューロンを制御する領域である、球状脳幹が関与する。症状としては、咽頭筋衰弱(嚥下に関与する)、顎及び顔面の筋肉の衰弱、進行性の発話喪失、並びに舌の筋萎縮が挙げられる。下位及び上位運動ニューロンの徴候の両方を伴う手足の衰弱は、ほぼ常に明らかであるが、あまり顕著ではない。罹患者は、笑ったり泣いたりして暴れる(情緒不安定と呼ばれる)。個体は、最終的に、食事又は発話することができなくなり、液体及び食物が声帯を通過して下気道及び肺に入ることによって引き起こされる、窒息及び誤嚥性肺炎のリスクが高くなる。脳卒中及び重症筋無力症は、各々、進行性球麻痺のものと同様の特定の症状を有し、この障害を診断する前に除外されなければならない。ALS症例の約25%では、初期症状は、延髄障害から始まる。古典的なALSを有する個体の約75%は、最終的に何らかの延髄障害を示す。多くの臨床医は、腕又は脚に異常の証拠のない、進行性球麻痺自体が非常に希少であると考えている。
【0178】
進行性球麻痺の多くの症状を共有する仮性球麻痺は、上位運動ニューロン変性、並びに発話、咀嚼、及び嚥下する能力の進行性喪失によって特徴付けられる。顔面筋の進行性衰弱は、無表情な顔につながる。個体は、かすれ気味の声、及び増加した咽頭反射を発症し得る。舌が動かなくなり、口から突出することができなくなる場合がある。個体は、情緒不安定を経験する場合もある。
【0179】
原発性側索硬化症(PLS)は、上位運動ニューロンのみに影響し、男性では女性のほぼ2倍多い。発症は、一般的に、50歳よりも後に起こる。PLSの原因は不明である。それは、随意運動を制御する大脳皮質(最も高レベルの精神機能に関与する脳を覆う細胞の薄い層)の特定の神経細胞が徐々に変性し、その制御下にある筋肉を衰弱させるときに起こる。症候群は、科学者が稀にしか遺伝しないと考えているが、数年又は数十年にわたって徐々に進行し、罹患した筋肉の硬直及び不器用さにつながる。障害は、通常、まず脚に影響し、次に、体幹、腕、及び手、最後に球根筋に影響する。症状としては、バランスの困難さ、脚の衰弱及び硬直、不器用さ、動きの遅さ及び硬直を生じさせる脚の痙性、足の引きずり(歩行不能につながる)、並びに構音障害(舌足らず)を結果的にもたらす顔面病変が挙げられ得る。ALSとPLS(ALSのバリアントとみなされる)と間の主な差異は、関与する運動ニューロン及び疾患進行速度である。PLSは、脚に痙性を引き起こし、通常、青年期に始まる上位運動ニューロンの遺伝性障害である、痙性対麻痺と間違われる場合がある。ほとんどの神経科医は、PLSの診断を行う前に、罹患した個体の臨床経過を少なくとも3年間追跡する。障害は、致命的ではないが、生活の質に影響し得る。PLSは、多くの場合、ALSに進展する。
【0180】
進行性筋萎縮症(PMA)は、下位運動ニューロンのみのゆっくりであるが進行性の変性によって特徴付けられる。これは、男性に大きく影響し、他のMNDよりも早期に発症する。衰弱は、典型的には、最初に手に見られ、次いで、下半身に広がり、重度の場合がある。他の症状としては、筋肉疲労、不器用な手の動き、線維束性収縮、及び筋肉けいれんが挙げられ得る。体幹筋及び呼吸が影響を受けることになる場合がある。低温への曝露は、症状を悪化させ得る。疾患は、多くの事例でALSに進展する。
【0181】
ポリオ後症候群(PPS)は、ポリオ脊髄炎からの回復後、数十年でポリオ生存者が発症し得る状態である。PPSは、傷害、疾病(変性性関節疾患など)、体重増加、又は加齢プロセスが、最初のポリオ発症後に機能したままであった脊髄運動ニューロンを損傷又は死滅させるときに起こると考えられる。多くの科学者は、PPSが、以前にポリオに罹患していた筋肉の潜在的な衰弱であり、新たなMNDではないと考えている。症状としては、疲労、ゆっくり進行する筋衰弱、筋萎縮、線維束性収縮、寒冷不耐性、並びに筋肉及び関節の疼痛が挙げられる。これらの症状は、初期疾患に罹患した筋肉群の中で最も頻繁に現れる。他の症状としては、側弯症などの骨格変形、及び呼吸、嚥下、又は睡眠の困難が挙げられる。症状は、高齢の人々、及び初期疾患によって最も重度の影響を受けた個人の間でより高頻度である。一部の個体は、わずかな症状のみを経験するが、一方で、他の個体は、SMAを発症し、稀に、ALSの形態ではないが、そうであるように見える。PPSは、通常、生命を脅かすものではない。医師は、PPSの発生率を寄生性ポリオの生存者の約25~50%で推定する。
【0182】
本明細書で企図されるニューロンのTDP-43プロテイノパチーはまた、前頭側頭型認知症(FTD)、AD、ペリー症候群、慢性外傷性脳症、グアムALS/パーキンソン認知症複合、海馬硬化症、及び多系統プロテイノパチーなどの、ALS以外の疾患と関連付けられ得る。関連するTDP-43プロテイノパチーの非排他的リストとしては、例えば、Chornenkyy et al.(Laboratory Investigation99:993-1007(2019))に提示されるように、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉変性症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー、脳の鉄沈着を伴う神経変性、小球状グリアタウオパチー、原発性加齢関連タウオパチー、加齢関連タウ星状膠症、脳炎後のパーキンソン病、亜急性硬化性全脳炎、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、慢性外傷性脳症、ダウン症候群、早期発症型AD、筋強直性ジストロフィー、リポフスチン症、ニーマン-ピック病、C型、アレキサンダー病、ペリー症候群、コケイン症候群、神経節膠腫/神経節細胞腫、毛様細胞性星細胞腫、鉛脳症、外傷性脳損傷(急性)及び封入体筋炎、が挙げられる。
【0183】
5.4 アルツハイマー病
ADの主な特徴は次のとおりである。(1)ニューロンの外側のベータアミロイド(いわゆる神経プラーク中のAβペプチド)の進行性の蓄積であり、シナプスにおけるニューロン間通信と干渉し、細胞死に寄与する可能性がある、(2)Aβペプチドはまた、脳の血管の周りにいわゆる血管アミロイドとしても蓄積し、それによって、血液から脳内への必須栄養素の取り込みを妨害する、(3)ニューロン内側の積荷の輸送を阻止する、ニューロン内側のタンパク質タウ(神経原線維濃縮体)の異常な沈着。これは、ニューロン機能不全及び細胞死の主要な駆動因子である。最終的に、アミロイド沈着物及び濃縮体の両方が脳に不可逆的な損傷を引き起こし、脳の萎縮及び認知機能の喪失につながる。ADの最も一般的な初期症状は、最近の事象を記憶することが困難なことであり、疾患が進行するにつれて、症状は、言語の問題、見当識障害(迷い易いことを含む)、気分変動、モチベーションの喪失、セルフケアの管理の欠如、及び行動の問題を含み得る。人の状態が悪化すると、家族及び社会から離脱する場合が多い。徐々に、身体機能が失われ、最終的に死に至る。進行速度は異なり得るが、診断後の典型的な平均余命は3~9年である。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される方法は、神経変性状態を診断された対象、好適には、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた対象を選択することを更に含む。神経変性状態を患う対象は、提示される症状に基づいて選択され得る。例えば、ALSに罹患している対象は、線維束性収縮、けいれん、硬く強張った筋肉(痙性)、腕、肩、若しくは舌の単収縮、手、腕、若しくは脚に影響する筋衰弱、不明瞭又は鼻声の発話、又は咀嚼若しくは嚥下困難の症状を示し得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される方法は、神経変性状態を発症するリスクがある対象、好適には、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられた対象を選択することを更に含む。神経変性状態を発症するリスクがある対象は、遺伝子診断試験に基づいて(例えば、神経変性状態と関連付けられた遺伝子の変異について、又は提示される症状に基づいて)選択され得る。
【0186】
6.治療の方法
本開示の特定の態様は、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられる神経変性状態、及び/又は神経変性によって特徴付けられる状態を治療するための方法に関する。したがって、本開示の態様は、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと好適に関連付けられた神経変性状態を治療するか、又はその発症を阻害することを必要とする対象においてそれを行う方法に関し、方法は、有効量の修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子を対象に投与することを含む。別の態様では、本開示は、ニューロン変性及びTDP-43プロテイノパチーによって特徴付けられる状態を治療するか、又はその発症を阻害することを必要とする対象においてそれを行う方法に関し、方法は、有効量の修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子を対象に投与することを含む。
【0187】
好適には、修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子(「薬剤」と呼ばれる)は、サイクリンFのレベル又は活性を増強又は増加させ、対象におけるニューロンの生存(例えば、運動ニューロンの生存)を増強し、かつ/又はニューロンの変性(例えば、運動ニューロン変性)を阻害する。いくつかの実施形態では、薬剤は、対象における神経変性状態と関連付けられた少なくとも1つの症状を改善する。いくつかの実施形態では、薬剤は、対象の神経変性状態を治療する。いくつかの実施形態では、薬剤は、対象が神経変性状態を発症することを予防する。いくつかの実施形態では、薬剤は、対象の神経変性状態が進行することを予防する。
【0188】
いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞質TDP-43の量を減少させ、対象におけるニューロンの生存(例えば、運動ニューロンの生存)を増強し、かつ/又はニューロンの変性(例えば、運動ニューロン変性)を阻害する。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞質TDP-43の量を減少させ、対象における神経変性状態と関連付けられた少なくとも1つの症状を改善する。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞質TDP-43の量を減少させ、対象の神経変性状態を治療する。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞質TDP-43の量を減少させ、対象が神経変性状態を発症することを予防する。いくつかの実施形態では、薬剤は、細胞質TDP-43の量を減少させ、対象の神経変性状態が進行することを予防する。
【0189】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0190】
いくつかの実施形態では、治療のために選択される対象は、神経変性状態、又は運動ニューロン変性によって特徴付けられる状態を有する。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられる状態、又は運動ニューロン変性によって特徴付けられる状態を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられる状態、又は運動ニューロン変性によって特徴付けられる状態を有すると疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチーと関連付けられる状態に罹患している。神経変性状態は、本明細書に説明される任意の神経変性状態であり得る。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、運動ニューロン変性によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、運動ニューロン変性である。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、ALSである。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、FTDである。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、運動ニューロン変性以外のニューロン変性を含む。いくつかの実施形態では、神経変性状態は、ADである。
【0191】
いくつかの実施形態では、別の治療剤も対象に投与される。そのような別の治療剤又は「補助」剤は、典型的には、修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子と同時に投与される。例えば、治療剤は、同じ製剤で、又は別個の製剤Exで、例えば、ブチレート、バルプロ酸、ヒドロキシ尿素、又はリルゾールで投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される薬剤は、ALSの1つ以上の症状を治療する際に使用するのに好適な別の治療剤と組み合わせて使用され、別の治療剤は、限定されるものではないが、(i)水素化ピリド[4,3-b]インドール又はその薬学的に許容される塩、並びに(ii)筋細胞へのエネルギーの供給を促進若しくは増加させる薬剤、COX-2阻害剤、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ-1(PARP-I)阻害剤、3OSリボソームタンパク質阻害剤、NMDA拮抗薬、NMDA受容体拮抗薬、ナトリウムチャネル遮断薬、グルタミン酸放出阻害剤、K(V)4.3チャネル遮断薬、抗炎症剤、5-HT1A受容体作動薬、神経栄養因子エンハンサ、運動ニューロン表現型生存及び/若しくは神経形成を促進する薬剤、血液脳関門を破壊から保護する薬剤、1つ以上の炎症促進性サイトカインの産生又は活性の阻害剤、免疫調節剤、神経保護剤、星状細胞の機能の調節剤、抗酸化剤(小分子触媒抗酸化剤など)、フリーラジカル捕捉剤、1つ以上の活性酸素種の量を減少させる薬剤、非タンパク質チオール含有量の減少を阻害する薬剤、正常な細胞タンパク質修復経路の刺激剤(分子カペロンを活性化する薬剤など)、神経栄養剤、神経細胞死の阻害剤、神経突起成長の刺激剤、神経細胞の死を防止し、かつ/若しくは損傷した脳組織の再生を促進する薬剤、サイトカイン調節剤、ミクログリア細胞の活性化レベルを低減させる薬剤、カンナビノイドCB1受容体リガンド、非ステロイド性抗炎症薬、カンナビノイドCB2受容体リガンド、クレアチン、クレアチン誘導体、プラミペキソール塩酸塩などのドーパミン受容体作動薬の立体異性体、線毛神経栄養因子、線毛神経栄養因子をコードする薬剤、グリア由来神経栄養因子、グリア由来神経栄養因子をコードする薬剤、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン3をコードする薬剤、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子は、ALS又はFTDの1つ以上の症状を治療する際に使用するのに好適な別の治療剤と組み合わせて使用され、別の治療剤は、限定されるものではないが、抗生物質(例えば、アミノグリコシド、セファロスポリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エリスロマイシン、フルオロキノロン、マクロライドアゾリド、メトロニダゾール、ペニシリン、テトラサイクリン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、バンコマイシン)、ステロイド(例えば、Andranes(例えば、テストステロン)、コレスタン(例えば、コレステロール)、コール酸(例えば、コール酸)、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)、エストラエン(例えば、エストラジオール)、プレグナン(例えば、プロゲステロン)、麻酔性及び非麻酔性鎮痛薬(例えば、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシドン、プロポキシフェン、フェンタニル、メタドン、ナロキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシン)、抗炎症剤(例えば、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナファイド、アムフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジドジナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、コルメタソンアセタート、コルトドキソン、デカン酸、デフラザコルト、デラテストリル、デポテストステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナマート、フェルビナク、フェナモル、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フラザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルクァゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフィミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリソンジブチラート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メステロロン、メタンドステノロン、メテノロン、酢酸メテノロン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モルニフルマート、ナブメトン、ナンドロロン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサンドロラン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、オキシメトロン、塩酸パラニリン、ペントサン多硫酸ナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセラート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナザート、プリフェロン、Prodolie酸、プロクアゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザライト、サルコレクス、サルナセジン、サルサラート、塩化サングイナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スタノゾロール、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テストステロン、テストステロンブレンド、テトリダミン、チオピナク、チキソコルトールピバラート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラクナトリウム)、又は抗ヒスタミン剤(例えば、エタノールアミン(ジフェンヒドミンカルビノキサミンなど)、エチレンジアミン(トリフェレンアミンピリラミンなど)、アルキルアミン(クロルフェニラミン、デキクロルフェニラミン、臭化フェニラミン、トリプロリジンなど)、アステミゾール、ロラタジン、フェキソフェナジン、ブロモフェニラミン、クレマスチン、アセトアミノフェン、シュードエフェドリン、トリプロリジンなどの他の抗ヒスタミン剤)のうちの1つ以上を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子は、限定されるものではないが、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン、及びガランタミンなどの認知促進剤を含む、ADの1つ以上の症状を治療する際に使用するのに好適な別の治療剤と組み合わせて使用される。
【0194】
7.製剤及び投与
対象への投与については、本明細書に説明された薬剤は、経口的、非経口的、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内点滴によって、又は鼻、喉、及び気管支管の粘膜などの粘膜への適用によって投与され得る。脊髄グリアなどの神経系を標的化するための1つの方法は、髄腔内送達によるものである。標的化された薬剤は、周囲のCSF及び/又は組織に放出され、放出された化合物は、急性髄腔内注射の直後に脊髄実質に浸透し得る。CNS送達を含む薬物送達戦略に関する包括的な概説については、参照により全内容が本明細書に組み込まれる、Ho et al.,Curr.Opin.Mol.Ther.(1999),1:336-3443、Groothuis et al.,J.Neuro Virol.(1997),3:387-400、及びJan,Drug Delivery Systmes:Technologies and Commercial Opportunities,Decision Resources,1998を参照されたい。
【0195】
それらは、単独で、又は好適な医薬担体とともに投与され得、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、又はエマルションなどの固体又は液体形態であり得る。
【0196】
薬剤は、有効量の薬剤を含む薬学的に許容される組成物中に製剤化され、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/又は希釈剤とともに製剤化され得る。薬剤は、固体又は液体形態における投与のために特別に製剤化され得、(1)経口投与、例えば、ドレンチ(水溶液若しくは非水溶液又は懸濁液)、トローチ、糖衣錠、カプセル、錠剤、タブレット(例えば、頬側、舌下、及び全身吸収を標的化したもの)、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト、(2)例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液又は徐放性製剤としての非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、又は硬膜外注射、(3)例えば、クリーム、軟膏、又は皮膚に塗布された徐放性のパッチ若しくはスプレーとしての局所適用、(4)例えば、ペッサリー、クリーム、又は発泡体としての膣内又は直腸内、(5)舌下、(6)眼、(7)経皮的、(8)経粘膜的、又は(9)鼻に投与されるように適合されたものを含む。加えて、化合物及び/又は薬剤は、患者に移植されるか、又は薬剤送達系を使用して注射され得る。例えば、Urquhart,et al.(1984.Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.24:199-236)、Lewis,ed.“Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals”(Plenum Press,New York,1981)、米国特許第3,773,919号、及び米国特許第353,270,960号を参照されたい。
【0197】
薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖、(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、及びセルロースアセテートなどの、セルロース及びその誘導体、(4)粉末トラガント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクなどの、潤滑剤、(8)例えば、ココアバター及び坐剤ワックスなどの、賦形剤、(9)例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラーオイル、ゴマ油、オリーブオイル、トウモロコシ油、及び大豆油などの、油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール(PEG)などの、ポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどの、エステル、(13)寒天、(14)例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの、緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリーの水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、及び/又はポリ無水物、(22)ポリペプチド及びアミノ酸などの、充填剤、(23)血清アルブミン、HDL、及びLDLなどの、血清成分、(22)エタノールなどの、C2-C12、並びに(23)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質が挙げられる。湿潤剤、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、灌流剤、防腐剤、及び抗酸化剤もまた、製剤中に存在し得る。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0198】
薬学的に許容される抗酸化剤としては、限定されるものではないが、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの、水溶性抗酸化剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レクチチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの、油溶性抗酸化剤、(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの、金属キレート剤が挙げられる。
【0199】
PEGは、その範囲内に、約20~約2000000個の連結モノマー、典型的には約50~1000個の連結モノマー、通常は約100~300個を含有する任意のエチレングリコールポリマーを含む。ポリエチレングリコールは、様々な数の連結モノマー、例えば、PEG20、PEG30、PEG40、PEG60、PEG80、PEG100、PEG115、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG3350、PEG4000、PEG4600、PEG5000、PEG6000、PEG8000、PEG11000、PEG12000、PEG2000000、及びそれらの任意の混合物を含有するPEGを含む。
【0200】
薬剤は、ゼラチンカプセル、錠剤形態、糖衣錠、シロップ、懸濁液、塗り薬、坐剤、注射用溶液、又は使用直前のシロップ、懸濁液、塗り薬、坐剤、若しくは注射用溶液の調製のためのキットで製剤化され得る。また、化合物及び/又は薬剤は、血流へのそのゆっくりとした放出を容易にする複合体、例えば、シリコンディスク、ポリマービーズに含められ得る。
【0201】
製剤は、単位剤形で好都合に提示され得、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。技術、賦形剤、及び製剤は、概して、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.1985,17th edition,Nema et al.,PDA J.Pharm.Sci.Tech.1997 51:166-171に見出される。本発明の製剤を作製する方法は、活性薬剤を1つ以上の賦形剤又は担体と会合させるか、又は接触させるステップを含む。概して、製剤は、1つ以上の薬剤を液体賦形剤若しくは微粉化固体賦形剤、又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、適切な場合、生成物を成形することによって調製される。
【0202】
調製手順は、医薬調製物の滅菌を含み得る。薬剤は、潤滑剤、防腐剤、安定剤、浸透圧に影響する塩などの補助剤と混合され得、これらは、薬剤と有害に反応しない。
【0203】
注射可能な形態の例としては、溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。注射可能な形態はまた、注射可能な溶液、懸濁液、又はエマルションの即時調製のための滅菌粉末を含む。本発明の薬剤は、生理食塩水、生理的食塩水、静菌水、Cremophor.TM.EL(BASF、Parsippany、N.J.)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、デキストロース溶液、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの好適な混合物、並びに当該技術分野で公知の他の水性担体などの、医薬担体と会合して注射され得る。適切な非水性担体もまた、使用され得、例としては、固定油及びオレイン酸エチルが挙げられる。いずれの場合も、組成物は、滅菌されなければならず、容易な注射性が存在する程度まで流動的であるべきである。これは、製造及び保管の条件下で安定しなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合に必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール、及び塩化ナトリウムなどのポリアルコールを含むことが好ましいことになる。注射用組成物の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含めることによってもたらされ得る。好適な担体は、生理食塩水中の5%デキストロースである。しばしば、等張性及び化学的安定性を増強するために、緩衝剤及び防腐剤又は他の物質などの添加剤を担体中に含むことが望ましい。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される薬剤は、リポソーム内に封入されて投与され得る。そのようなリポソームの製造及びそのようなリポソームへの分子の挿入は、例えば、米国特許第4,522,811号に説明されるように、当該技術分野で周知である。リポソーム懸濁液(特定の細胞、例えば、下垂体細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。
【0205】
一実施形態では、薬剤は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む、徐放性製剤などの、身体からの急速な排除に対して化合物及び/又は薬剤を保護することになる担体を用いて調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販されている場合もある。
【0206】
経口摂取の場合、経口投与用の固形調製物に有用な賦形剤は、当該技術分野で一般的に使用される賦形剤であり、有用な例は、ラクトース、スクロース、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴムなどの賦形剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アラビアゴム、シェラック、スクロース、水、エタノール、プロパノール、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウムなどの、結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの、潤滑剤であり、通常の既知の着色剤などの添加剤、アルギン酸及びPRIMOGEL(商標)などの崩壊剤などを更に含む。
【0207】
薬剤は、例えば、不活性希釈剤を用いて、若しくは同化可能な食用担体を用いて経口投与され得るか、又はそれらは、硬質若しくは軟質シェルカプセルに封入され得るか、又はそれらは、錠剤に圧縮され得るか、又はそれらは、食事の食物に直接組み込まれ得る。経口治療投与については、これらの化合物及び/又は薬剤は、賦形剤に組み込まれ、錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップなどの形態で使用され得る。そのような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の化合物及び/又は薬剤を含有するべきである。これらの組成物中の薬剤のパーセンテージは、当然ながら、変化し得、好都合には、単位重量の約2%~約60%であり得る。そのような治療的に有用な組成物中の化合物及び/又は薬剤の量は、好適な投与量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物は、経口投与単位が約100~2000mgの化合物及び/又は薬剤を含有するように調製される。
【0208】
坐剤の製剤に有用なベースの例は、カカオバター、ポリエチレングリコール、ラノリン、脂肪酸トリグリセリド、witepsol(商標、Dynamite Nobel Co.Ltd.)などの、油性ベースが挙げられる。液体調製物は、水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤などの形態であってもよく、これは、添加剤を使用して従来の方式によって調製され得る。
【0209】
組成物は、ボーラス投与として与えられて、投与後の最大時間にわたる循環レベルを最大化し得る。連続注入もまた、ボーラス投与後に使用され得る。
【0210】
薬剤はまた、エアロゾルの形態で気道に直接投与され得る。吸入による投与のために、溶液又は懸濁液中の薬剤は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガス、又はプロパン、ブタン若しくはイソブテンなどの炭化水素噴射剤を含有する加圧容器又はディスペンサからエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。薬剤はまた、アトマイザ又はネブライザなどの非加圧形態で投与されてもよい。
【0211】
薬剤はまた、非経口投与されてもよい。これらの薬剤の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油中のそれらの混合物中で調製され得る。例示的な油は、石油、動物、植物、又は合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、又は鉱油である。一般に、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、及び関連する糖溶液、並びにプロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に、注射用溶液に対して好ましい液体担体である。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。
【0212】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、経口又は非経口組成物を単位剤形で製剤化することが有利であり得る。
【0213】
投与はまた、経粘膜的又は経皮的手段による場合もある。経粘膜投与又は経皮投与については、浸透されるバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与、界面活性剤、胆汁塩、及びフシド酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレー又は坐剤の使用を通して達成され得る。経皮投与については、薬剤は、当該技術分野で一般的に知られている軟膏、サルベ、ゲル、又はクリームに製剤化される。
【0214】
薬剤は、他の薬学的に活性な薬剤と組み合わせて対象に投与され得る。例示的な薬学的に活性な化合物及び/又は薬剤としては、限定されるものではないが、Harrison’s Principles of Internal Medicine,13.sup.th Edition,Eds.T.R.Harrison et al.McGraw-Hill N.Y.,NY、Physician’s Desk Reference,50.sup.th Edition,1997,Oradell New Jersey,Medical Economics Co.、Pharmacological Basis of Therapeutics,8.sup.th Edition,Goodman and Gilman,1990、United States Pharmacopeia,The National Formulary,USP XII NF XVII,1990に見出されるものが挙げられ、これらの全ての完全な内容が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に活性な薬剤は、ブチレート、バルプロ酸、ヒドロキシ尿素、及びリルゾールからなる群から選択される。
【0215】
薬剤及び他の薬学的に活性な薬剤は、同じ医薬組成物又は異なる医薬組成物(同時に、又は異なる時間)で対象に投与され得る。例えば、神経変性状態を治療するためのオーロラキナーゼ阻害剤及び追加の薬剤は、同じ医薬組成物又は異なる医薬組成物で(同時に又は異なる時間に)対象に投与され得る。
【0216】
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせられ得る薬剤の量は、概して、治療効果を生成する薬剤の量となる。概して、100%のうち、この量は、化合物の約0.1%~99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは10%~約30%の範囲となる。
【0217】
錠剤、カプセルなどはまた、トラガントゴム、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及びスクロース、ラクトース、又はサッカリンなどの甘味剤を含有し得る。単位剤形がカプセルであるとき、上記タイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。
【0218】
様々な他の材料が、コーティングとして、又は投与単位の物理的形態を修飾するために存在し得る。例えば、タブレットは、シェラック、糖、又はその両方でコーティングされてもよい。シロップは、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、並びにチェリー又はオレンジ風味などの香味剤を含有し得る。
【0219】
医薬組成物は、投与のための説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサに含められ得る。
【0220】
ALS又はFTDを治療するための有効量の化合物及び/又は薬剤を送達することになる有効性及び投与量に関するガイダンスは、ALS又はFTDの動物モデルから取得され得、例えば、Hsieh-Li et al.(2000.Nature Genetics24:66-70)及びその中で引用される参考文献に説明されるものを参照されたい。
【0221】
毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比率として表され得る。大きい治療指標を呈する組成物が好ましい。
【0222】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を製剤化するために使用され得る。そのような化合物及び/又は薬剤の投与量は、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。
【0223】
有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。用量は、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の半数阻害を達成する治療剤の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで製剤化され得る。血漿のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定され得る。任意の特定の投与量の効果は、好適なバイオアッセイによって監視され得る。好適なバイオアッセイの例としては、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDF-8結合アッセイ、及び免疫学的アッセイが挙げられる。
【0224】
投与量は、医師によって決定され、必要に応じて、観察された治療の効果に適合するように調整され得る。概して、組成物は、化合物及び/又は薬剤が、1μg/kg~100mg/kg、1μg/kg~50mg/kg、1μg/kg~20mg/kg、1μg/kg~10mg/kg、1μg/kg~1mg/kg、100μg/kg~100mg/kg、100μg/kg~50mg/kg、100μg/kg~20mg/kg、100μg/kg~10mg/kg、100μg/kg~1mg/kg、1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~50mg/kg、又は10mg/kg~20mg/kgの用量で与えられるように投与される。抗体化合物及び/又は薬剤については、1つの好ましい投与量は、体重の0.1mg/kg(一般的には10mg/kg~20mg/kg)である。抗体が脳内で作用する場合、50mg/kg~100mg/kgの投与量が通常適切である。
【0225】
治療の持続時間及び頻度に関して、当業者にとって、治療が治療的利益を提供しているときを決定するために、対象を監視し、投与量を増加又は減少させるかどうか、投与頻度を増加又は減少させるかどうか、治療を中止するかどうか、治療を再開するかどうか、又は治療レジメンに他の変更を行うかどうかを決定することは、典型的である。投与スケジュールは、ポリペプチドに対する対象の感受性などの、いくつかの臨床的因子に応じて、週1回から1日1回まで変化し得る。所望の用量は、一度に投与され得るか、又は部分用量、例えば、2~4部分用量に分割され、ある期間にわたって、例えば、その日又は他の適切なスケジュールを通した適切な間隔で投与され得る。そのような部分用量は、単位剤形として投与され得る。投与スケジュールの例は、週1回、週2回、週3回、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回以上の投与である。
【0226】
8.キット
本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子(すなわち、「薬剤」)は、キット内に提供され得る。キットは、(a)薬剤、例えば、修飾サイクリンFポリペプチド又は修飾サイクリンFポリペプチドをコードする核酸分子を含む組成物、及び(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に説明される方法、及び/又は本明細書に説明される方法のための薬剤の使用に関連する、説明的、指示的、マーケティング又は他の資料であり得る。例えば、情報資料は、運動ニューロンの生存を増強し、神経変性状態、特に、ニューロンのTDP-43プロテイノパチー(例えば、ALS、FTD、ADなど)と関連付けられる状態、又は神経変性状態の少なくとも1つの症状、又は機能不全と関連付けられた状態若しくはニューロン(例えば、運動ニューロン)を減少させる状態を治療するか、又はその発症を阻害するために薬剤を投与するための方法を説明する。
【0227】
一実施形態では、情報資料は、好適な様式、例えば、好適な用量、剤形、又は投与様式(例えば、本明細書に説明される用量、剤形、又は投与様式)で薬剤を投与するための説明書を含み得る。別の実施形態では、情報資料は、好適な対象、例えば、ヒト、例えば、成人ヒトを識別するための説明書を含み得る。キットの情報資料は、その形態に限定されない。多くの場合、情報資料、例えば、説明書は、印刷物、例えば、印刷されたテキスト、図面、及び/又は写真、例えば、ラベル又は印刷されたシートで提供される。しかしながら、情報資料は、点字、コンピュータ可読資料、ビデオ録画、又は音声録画などの他の形式で提供されてもよい。別の実施形態では、キットの情報資料は、リンク又は連絡先情報、例えば、物理的住所、電子メールアドレス、ハイパーリンク、ウェブサイト、又は電話番号であり、キットのユーザは、調節因子及び/又は本明細書に説明される方法におけるその使用に関する実質的な情報を取得することができる。当然ながら、情報資料はまた、任意の形式の組み合わせで提供され得る。
【0228】
薬剤に加えて、キットの組成物は、溶媒若しくは緩衝液、安定剤若しくは防腐剤、及び/又は本明細書に説明される状態若しくは障害を治療するための第2の薬剤などの、他の成分を含み得る。あるいは、他の成分は、キットに含まれ得るが、薬剤とは異なる組成物又は容器に含まれ得る。そのような実施形態では、キットは、薬剤と他の成分とを混合するための、又は薬剤を他の成分と一緒に使用するための説明書を含み得る。
【0229】
薬剤は、任意の形態、例えば、液体、乾燥、又は凍結乾燥形態で提供され得る。薬剤は実質的に純粋及び/又は滅菌であることが好ましい。薬剤が液体溶液中に提供されるとき、液体溶液は、水溶液であることが好ましく、滅菌水溶液が好ましい。化合物及び/又は薬剤が乾燥形態として提供されるとき、再構成は、概して、好適な溶媒の添加による。溶媒、例えば、滅菌水又は緩衝液は、任意選択的にキット内に提供され得る。
【0230】
キットは、化合物及び/又は薬剤を含有する組成物のための1つ以上の容器を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、薬剤(例えば、組成物中)及び情報資料のための別個の容器、仕切り又は区画を含む。例えば、薬剤(例えば、組成物中)は、ボトル、バイアル、又はシリンジ中に収容され得、情報資料は、プラスチックスリーブ又はパケット中に収容され得る。他の実施形態では、キットの別個の要素は、単一の分割されていない容器内に収容される。例えば、薬剤(例えば、組成物中)は、ラベルの形態で情報資料が取り付けられているボトル、バイアル、又はシリンジ内に収容される。いくつかの実施形態では、キットは、複数の(例えば、パックの)個々の容器を含み、各々が、薬剤(例えば、組成物中)の1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に説明される剤形)を収容する。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、又はブリスタパックを含み、各々が、薬剤の単一単位用量を収容する。キットの容器は、気密及び/又は防水であってもよい。
【0231】
薬剤(例えば、組成物中)は、対象、例えば、成人対象、例えば、ニューロン(例えば、運動ニューロン)の生存又は生存能力を増強すること、及び/又はニューロン(例えば、運動ニューロン)の変性を阻害すること、及び/又はニューロン(例えば、運動ニューロン)における異常なタンパク質蓄積を阻害することを必要とする対象に投与され得る。方法は、対象を評価し、例えば、対象におけるニューロンのTDP-43プロテイノパチーの存在を評価し、それによって、対象が、本明細書に説明される修飾サイクリンFポリペプチド又はポリヌクレオチドを用いた治療の影響を受け易い可能性があることを識別することを含み得る。
【0232】
本発明が容易に理解され、実用的な効果をもたらすことができるように、特定の好ましい実施形態が、ここで、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【実施例】
【0233】
実験
発明者らの以前の研究は、野生型TDP-43が野生型サイクリンFの直接ユビキチン化基質であり、したがって、ユビキチンプロテアソーム系を通じた分解のために標的化されることを実証した。また、AAVベースの遺伝子療法アプローチを使用することなどによって、野生型CCNF(サイクリンFタンパク質をコードする遺伝子)を過剰発現させることが、ニューロンからTDP-43を除去し得ることも示した。結果として、MNDを治療するための療法としてサイクリンFを提案した。
【0234】
したがって、治療用途のために更に最適化されているサイクリンFバリアントを開発するために、追加の試験を実施した。
【0235】
細胞質導入サイクリンFバリアント
サイクリンFは、一般的に、核タンパク質と考えられ、プロテアソーム系を通じたユビキチン化及び分解を介して様々な細胞周期タンパク質の核内レベルを調節する。これは、いくつかの理由から、MND/ALSにおける病原性TDP-43を標的化することに関して治療の観点から最適ではない。第1に、病原性TDP-43は、一般的に、核から細胞質内に誤局在化されている形態であると考えられる。結果として、野生型サイクリンF(核内に位置する)が細胞質TDP-43を治療的に除去する能力が制限され得る。第2に、健康なTDP-43は、一連の必須機能を実行する核内に位置し、核TDP-43の喪失は、細胞生存率に影響を与え得る。したがって、長期遺伝子療法における野生型サイクリンFの使用は、健康なTDP-43に有害な効果を有し得る。
【0236】
これを克服するために、細胞質に標的化される修飾サイクリンFバリアントを生成した。このバリアントは、サイクリンFポリペプチドのC末端に融合された細胞質標的化ペプチド(核外搬出シグナル(NES):LPPLERLTL(配列番号8))を有する。サイクリンFポリペプチドはまた、配列番号2に記載される野生型サイクリンFポリペプチドのアミノ酸位置20~28及び568~574に存在する2つの核局在化シグナル(NLS)の欠失を有する。この新しい細胞質特異的サイクリンFバリアントは、CT-サイクリンFと称され、配列番号3に記載される核酸配列によってコードされる配列番号4に記載されるアミノ酸配列を有する。
図3に示されるように、CT-サイクリンFは、Fボックスをアミノ酸位置20~66(配列番号3のヌクレオチド58~198によってコードされる)に、サイクリンドメインをアミノ酸位置282~395(配列番号3のヌクレオチド844~1185によってコードされる)に、PESTドメインをアミノ酸位置565~749(配列番号3のヌクレオチド1693~2247によってコードされる)に保持し、NESをアミノ酸位置769~778(配列番号3のヌクレオチド2305~2334によってコードされる)に有する。
図5に示されるように、CT-サイクリンFは、細胞における主要な細胞質局在化を示す。
【0237】
CT-サイクリンFが細胞質(病理学的)TDP-43を除去する能力を実証するために、TDP-43を細胞質内に誤局在化させる不活性NLS(dNLS-TDP-43)を有するTDP-43バリアントを、HEK293細胞において過剰発現させた。dNLS-TDP-43は、潜在的なTDP-43除去療法の前臨床試験のための好適なTDP-43バリアントとして当該分野で受け入れられている。特に、dNLS-TDP-43を過剰発現するトランスジェニックマウスは、MND様症状を発現し、MND/ALSのゴールドスタンダード前臨床動物モデルとみなされる(Walker et al,2015;Acta Neuropathol130(5):643-60)。
図6に示されるように、CT-サイクリンFは、これらの細胞におけるdNLS-TDP-43のレベルを有意に低減する。
【0238】
インビボで細胞質TDP-43を除去するCT-サイクリンFの能力を調査するために、dNLS-TDP-43を、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンにおいて特異的に過剰発現させた。これらのゼブラフィッシュにおけるCT-サイクリンFの過剰発現は、dNLS-TDP-43レベルの有意な低減を結果的にもたらした(
図7を参照されたい)。
【0239】
要約すると、異種NES及び2つの内因性NLSの欠失を有する修飾サイクリンFポリペプチドは、細胞質に標的化される。更に、この修飾CT-サイクリンは、インビトロ及びインビボにおける細胞質TDP-43のレベルを有意に低減し、細胞質標的化サイクリンFの臨床的有用性を実証する。
【0240】
切断されたサイクリンFバリアント
サイクリンFは、2.4kbのポリヌクレオチドによってコードされる786アミノ酸という比較的大きいポリペプチドである。サイクリンFの能動的切断は、診療所(例えば、遺伝子構築物/ベクターゲノムのサイズに制限が存在し得る場合、ウイルスベクターベースの遺伝子療法の文脈など)及び生産(より小さいポリヌクレオチド又はポリペプチドが典型的に好まれる)において利点を有し得る。サイクリンFのその酵素機能に必要な最小機能構成要素を決定するのを補助し、したがって、治療的に活性な切断されたバリアントを識別するために、TDP-43除去特性を維持した切断されたバリアントを設計した。具体的には、配列番号2に記載された野生型サイクリンFの582~766位のアミノ酸残基に及ぶPESTドメインを欠失させた(
図1を参照されたい)。このPEST領域は、サイクリンFのユビキチン化活性に必要とされない。むしろ、PESTドメインは、タンパク質分解のシグナルとして作用し、したがって、この配列は、サイクリンFの分解に関与する可能性が高い。
【0241】
この新しいサイクリンFバリアントは、deltaPEST-サイクリンF(本明細書ではdPEST-サイクリンFとも呼ばれる)と称され、配列番号5に記載される核酸配列によってコードされる配列番号6に記載されるアミノ酸配列を有する。
図4に示されるように、deltaPEST-サイクリンFは、20~28位及び568~574位(それぞれ、配列番号5のヌクレオチド58~84及び1702~1722によってコードされる)にNLSを保持し、アミノ酸位置29~76(配列番号5のヌクレオチド85~228によってコードされる)にFボックスを保持し、アミノ酸位置292~405(配列番号5のヌクレオチド874~1215によってコードされる)にサイクリンドメインを保持する。
【0242】
驚くべきことに、サイクリンFからのPEST領域の欠失は、その細胞内局在化を変化させ、deltaPEST-サイクリンFの細胞質局在化につながることが観察された(
図8を参照されたい)。更に、deltaPEST-サイクリンFは、HEK細胞におけるdNLS-TDP-43の実質的な除去を容易にする(
図9)。
【0243】
核TDF-43レベルに対するサイクリンFバリアントの効果
上記に詳述したように、CT-サイクリンF及びdeltaPEST-サイクリンFバリアントの両方は、細胞質(病原性)TDP-43を除去する。この低減が核TDP-43ではなく細胞質TDP-43に特異的であるかどうかを決定するために、ゼブラフィッシュの脊髄運動ニューロンで発現される野生型(核)TDP-43に対するCT-サイクリンF又はdeltaPEST-サイクリンFの効果を決定した。
図10に示されるように、いずれのバリアントも、野生型TDP-43除去にいかなる影響も有していなかった。これは、ニューロンの正常な機能に必須である核TDP-43ではなく、標的化及び除去される病原性細胞質TDP-43のみ(又は主に)であるため、診療所で使用するためのバリアントの重要な特性である。
【0244】
酵素的に不活性なサイクリンFバリアント
サイクリンF(SCF E3リガーゼ複合体の一部として)は、TDP-43に直接結合し、SCF複合体によるユビキチン化を容易にし、その後、ユビキチンタグは、除去のためにTDP-43をプロテアソームに導入する。2つのアラニンによる、配列番号2に記載された野生型サイクリンFの35位のロイシン及び36位のプロリンの置換を含む、LP/AAバリアントを、サイクリンFに操作した。この修飾は、サイクリンFのFボックス内におけるものである。修飾は、修飾ポリペプチドがTDP-43に結合するのを妨げないが、TDP-43をユビキチン化することを防止する。これは、サイクリンFの酵素的に不活性なバリアントとして機能する。脊髄運動ニューロンにおいてWT-TDP-43を過剰発現するトランスジェニックゼブラフィッシュでは、不活性LP/AAバリアントがTDP-43除去を完全に防止することを確認する(
図11を参照されたい)。
【0245】
WT TDF-43及びdNls TDP-43レベルに対するサイクリンFバリアントの効果
図7、
図10、及び
図11について説明された実験を反復して実験を実施した。結果が
図12に示されている。
図11のデータを確認すると、野生型サイクリンFは、野生型TDP-43レベルを低減させるが、不活性化(LP/AA)サイクリンFは、そうではない(
図12A)。deltaPEST-サイクリンFもCT-サイクリンFも、野生型TDP-43にいかなる効果も有しない(
図10のデータを確認する)(
図12A)。野生型サイクリンFは、dNLS-TDP-43のレベルを低減させるが、不活性化(LP/AA)サイクリンFは、そうではない(
図12B)。deltaPEST-サイクリンF及びCT-サイクリンFの両方は、dNLS-TDP-43のレベルを低減させる(
図12B)。
【0246】
材料及び方法
プラスミド
全てのプラスミドを合成し、Genscriptによってアーカイブした。プラスミドは、野生型サイクリンF(配列番号2に記載されたアミノ酸配列をコードする、配列番号1に記載された核酸配列を有する)、CT-サイクリンF(配列番号4に記載されたアミノ酸配列をコードする、配列番号3に記載された核酸配列を有する)、及びdeltaPEST-サイクリンF(配列番号2に記載されたアミノ酸配列をコードする、配列番号1に記載された核酸配列を有する)をコードするプラスミドを含んだ(
図1~
図4)。また、LP/AAサイクリンFバリアントをコードするプラスミド(配列番号7に記載されるアミノ酸配列をコードする)も含んだ。簡潔に述べると、mCherry-flag-サイクリンFをコードするDNAオリゴヌクレオチドを、pCS2+プラスミドにサブクローニングした。
【0247】
撮像のためのトランスフェクション
HEK293細胞を、24ウェルプレート内のカバーガラス上に播種した。翌日、細胞は、約80%コンフルエントであり、mCherry-サイクリンF(WT)、mCherry-サイクリンF(細胞質)、又はmCHerry-サイクリンF(deltaPEST)プラスミド(上記に説明された)を使用して、製造業者の説明書に従ってリポフェクタミン2000を使用してトランスフェクトされた。
【0248】
トランスフェクションの24時間後、培地を細胞から吸引し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。洗浄した細胞をPBS中4%PFAで10分間固定した。次いで、DAPIを使用して固定した細胞の核を染色する前に、細胞をPBSで3回洗浄した。次いで、染色した細胞をガラススライド上に装着し、Zeiss AxioImagerを使用して撮像した。
【0249】
可溶性/不溶性研究のためのトランスフェクション
HEK293細胞をT75フラスコに播種した。翌日、細胞を、TDP-43-GFP(デルタNLS)とともに、mCherry-サイクリンF(WT)、mCHerry-サイクリンF(deltaPEST)、又はmCHerry-サイクリンF(CT)プラスミド(上記に説明された)でコトランスフェクトした。対照として、細胞をmCherry空ベクター及びGFP空ベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を氷冷PBSに掻き取り、2000×gで5分間遠心分離し、更に使用するまで-80℃で保存した。
【0250】
培養細胞に対する可溶性/不溶性タンパク質分画
細胞を再懸濁させ、完全なプロテアーゼ阻害剤カクテル及びphosSTOP(Roche)を含有するRIPA緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、1%NP-40置換、5mM EDTA、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)中に、50%の出力及び30%に設定されたパルス設定でSonic Ruptor250を使用して10回超音波処理することによって溶解させた。結果的に得られた溶解物を、4℃で30分間、100,000×gで遠心分離した。生成された上清を、界面活性剤可溶性画分として使用した。結果的に得られたペレットを、RIPA緩衝液中で2回洗浄した(プローブはRIPA緩衝液中で超音波処理し、毎回100,000×gで遠心分離した)。最終洗浄後、タンパク質をRIPA緩衝液中に再懸濁させ、4℃で30分間、100,000×gで再び遠心分離した。結果的に得られたペレットを尿素緩衝液(7M尿素、2Mチオ尿素、4%CHAPS、30mM Tris)中に再懸濁させ、50%の電力及び30%に設定されたパルス設定でSonic Ruptor250を使用して10回超音波処理する前に、上清を除去した。これを不溶性画分とみなした。
【0251】
TDP-43トランスジェニックゼブラフィッシュにおけるmRNA介在性CCNF過剰発現
運動ニューロンにおいてGFP標識ヒトTDP-43を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを使用して、サイクリンF介在性TDP-43除去を評価した。WT-、CT-、又はdeltaPEST-サイクリンF RNA(すなわち、CCNF RNA)をゼブラフィッシュ胚の1細胞期に注射した(約2nl)。正常に注射された幼生を蛍光レポータを使用して検証し、受精の3~5日後まで28.5℃で飼育した。3~5日目に、GFP陽性脊髄ニューロンの共焦点顕微鏡画像を、全ての治療群に対して同じ撮影設定を使用して撮影した。最大値投影法を使用して、脊髄運動ニューロンのTDP-43蛍光強度を計算した。CCNF注射群に対するTDP-43レベルの平均比(核対全細胞強度)を、未注射対照と比較した。
【0252】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0253】
本明細書の任意の参照の引用は、そのような参照が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0254】
本明細書全体を通して、目的は、本開示を任意の1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本開示の好ましい実施形態を説明することであった。したがって、当業者であれば、本開示を考慮して、本開示の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態に様々な修正及び変更が行われ得ることを理解するであろう。そのような全ての修正及び変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】