(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】肺損傷を治療するための薬物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240401BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240401BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240401BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240401BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240401BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240401BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P11/00
A61P29/00
A61P37/06
A61K31/573
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/12
A61K9/72
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565450
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2021131749
(87)【国際公開番号】W WO2022227513
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110448591.9
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095787
【氏名又は名称】上海薩美細胞技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】侯曦凡
(72)【発明者】
【氏名】張文傑
(72)【発明者】
【氏名】王斌
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA25
4C076AA26
4C076AA30
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4C076BB15
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4C086ZB11
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺損傷疾患を効果的に治療する面におけるアネキシンの使用の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は肺損傷を治療するための薬物に関し、具体的には、本発明は、(i)肺損傷の予防及び/又は治療、(ii)好中球の凝集の低減、からなる群から選択される1つ又は複数の使用に用いられる組成物又は製剤を調製するためのアネキシンの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物又は製剤の調製のためのアネキシンの使用であって、前記組成物又は製剤は、(i)肺損傷の予防及び/又は治療、(ii)好中球数の低減、(iii)血液ガスPO
2及び/又はsO
2%指標の向上、(iv)肺部炎症の軽減、(v)血清における炎症因子の減少、(vi)肺組織の病変程度の改善、及び/又は(vii)肺臓湿乾比の低下、からなる群から選択される1つ又は複数の使用に用いられることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記アネキシンはアネキシンA5を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記肺損傷は、急性肺損傷、呼吸窮迫症候群、又はその組成物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記肺損傷は好中球(neutrophil)の増加による肺損傷を含み、及び/又は
前記肺損傷はサイトカインストームによる肺損傷を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記肺損傷の予防及び/又は治療は、好中球数の低減による肺損傷の予防及び/又は治療を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記肺損傷の予防及び/又は治療は、
(i)生存率の向上、
(ii)血液ガスPO
2及び/又はsO
2%指標の向上、
(iii)肺部炎症の軽減、
(iv)血清における炎症因子の減少、
(v)肺組織の病変程度の改善、
(vi)肺臓湿乾比の低下、からなる群から選択される1つ又は複数の特徴を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記好中球は肺部における好中球を含み、及び/又は
前記サイトカインストームは肺部におけるサイトカインストームを含むことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記「好中球数の低減」とは、対象における好中球数を低減するか、又は対象の肺部における好中球の凝集を低減することを意味することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記対象は好中球数が増加したヒトであり、好ましくは、前記「好中球数が増加した」とは、正常人の好中球数A0と比較して、前記対象の好中球数A1がA0より高いことを意味し、好ましくは、A1/A0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧8であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記肺部炎症の軽減は、
(iii-1)肺部炎症因子数の減少、
(iii-2)肺部白血球数の減少、
(iii-3)肺部総タンパクの減少、からなる群から選択される1つ又は複数の手段によって行われることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項11】
前記肺部炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記肺部の白血球は白血球、好中球、リンパ球、単核球を含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記「肺部炎症因子の減少」とは、肺損傷対象の炎症因子(E0)と比較して、前記投与対象の肺部炎症因子の数(E1)がE0より低いことを意味し、好ましくはE0/E1≧10であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記「白血球の減少」とは、肺損傷対象の白血球(F0)と比較して、前記投与対象の白血球の数(F1)がF0より低いことを意味し、好ましくはF0/F1≧3であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
前記「肺部総タンパクの減少」とは、肺損傷対象の総タンパク(H0)と比較して、前記投与対象の総タンパクの数(H1)がH0より低いことを意味し、好ましくはH0/H1≧2であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
前記血清における炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含むことを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項17】
前記「血清における炎症因子の減少」とは、肺損傷対象の炎症因子(J0)と比較して、前記対象の血清における炎症因子の数(J1)がJ0より低いことを意味し、好ましくはJ0/J1≧20であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物又は製剤は、肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物をさらに含み、
好ましくは、前記の肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物は、糖質コルチコイド、ビタミン、又はその組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物又は製剤の剤形は粉剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、経口液、タブレット、トローチ、パウダースプレー剤、エアゾール剤又は噴霧剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記注射剤は静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下製剤、気道投与製剤であることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的には、肺損傷を治療するための薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺損傷は、人体の健康に重大な影響を与える。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、重度感染、創傷、ショック等の肺内外の攻撃後に現れた、肺胞毛細血管損傷を主な表現とする臨床症候群を指し、急性肺損傷(acute lung injury,ALI)の重症段階又はタイプに属する。その臨床的特徴は、頻呼吸と窮迫、進行性低酸素血症、X線に瀰漫性肺胞浸潤を呈することを含む。しかしながら、現在、臨床的には、急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺損傷を効果的に治療する薬物はまだ欠けている。
【0003】
したがって、本分野では、急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺損傷疾患を効果的に治療する薬物の開発を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺損傷疾患を効果的に治療する面におけるアネキシンの使用の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1方面は、組成物又は製剤を調製するために用いられるアネキシンの使用であって、前記組成物又は製剤は、(i)肺損傷の予防及び/又は治療、(ii)好中球数の低減、からなる群から選択される1つ又は複数の使用に用いられる使用を提供する。
【0006】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤は、さらに、血液ガスPO2及び/又はsO2%指標の向上、肺部炎症の軽減、血清における炎症因子の減少、肺組織の病変程度の改善、及び/又は肺臓湿乾比の低下、からなる群から選択される1つ又は複数の使用に用いられる。
【0007】
別の好ましい例では、前記アネキシンはアネキシンA5を含む。
【0008】
別の好ましい例では、前記肺損傷は、急性肺損傷、呼吸窮迫症候群、又はその組成物からなる群から選択される。
【0009】
別の好ましい例では、前記呼吸窮迫症候群は急性呼吸窮迫症候群を含む。
【0010】
別の好ましい例では、前記呼吸窮迫症候群は新生児呼吸窮迫症候群を含む。
【0011】
別の好ましい例では、前記肺損傷は好中球(neutrophil)の増加による肺損傷を含む。
【0012】
別の好ましい例では、前記肺損傷はサイトカインストームによる肺損傷を含む。
【0013】
別の好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、好中球数の低減による肺損傷の予防及び/又は治療を含む。
【0014】
別の好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、サイトカインストームの改善による肺損傷の予防及び/又は治療を含む。
【0015】
別の好ましい例では、前記サイトカインストームの改善は低減、阻害又は除去を含む。
【0016】
別の好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、好中球数を低減すること、及び/又は好中球数の増加によるサイトカインストームを阻害することによって肺損傷を予防及び/又は治療することを含む。
【0017】
別の好ましい例では、前記好中球は肺部における好中球を含む。
【0018】
別の好ましい例では、前記サイトカインストームは肺部におけるサイトカインストームを含む。
【0019】
別の好ましい例では、前記好中球は肺胞における好中球を含む。
【0020】
別の好ましい例では、前記サイトカインストームは肺胞におけるサイトカインストームを含む。
【0021】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、対象における好中球数を低減するか、又は対象の肺部における好中球の凝集を低減することを意味する。
【0022】
別の好ましい例では、前記対象はヒト、又は非ヒト哺乳動物(例えば、齧歯動物)である。
【0023】
別の好ましい例では、前記対象は好中球数が増加したヒトである。
【0024】
別の好ましい例では、前記「好中球数が増加した」こととは、正常人の好中球数A0と比較して、前記肺損傷対象の好中球数A1がA0より高いことを意味し、好ましくは、A1/A0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧8である。
【0025】
別の好ましい例では、前記対象は肺損傷対象である。
【0026】
別の好ましい例では、前記対象は肺損傷の治療を受けていた、受けている、又は受けようとする対象である。
【0027】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、対照の好中球数C0と比較して、肺部(例えば、肺胞)の好中球数C1を低減することを意味する。
【0028】
別の好ましい例では、前記の対照の好中球数C0は、アネキシンを用いて治療又は処理する前の前記対象の好中球数Czs、又は対照群の好中球数Cdzである。
【0029】
別の好ましい例では、前記対照群は正常人の好中球数を含む。
【0030】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、C1/Czs≦0.9、好ましくは≦0.8、より好ましくは≦0.7、より好ましくは≦0.6、より好ましくは≦0.5、より好ましくは≦0.4、より好ましくは≦0.3、より好ましくは≦0.2、より好ましくは≦0.1であることを意味する。
【0031】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、C1/Cdz≦0.9、好ましくは≦0.8、より好ましくは≦0.7、より好ましくは≦0.6、より好ましくは≦0.5、より好ましくは≦0.4、より好ましくは≦0.3、より好ましくは≦0.2、より好ましくは≦0.1であることを意味する。
【0032】
別の好ましい例では、前記肺損傷は、
(a)生存率が低いこと、
(b)血液ガスPO2及び/又はsO2%指標が低下すること、
(c)肺部に炎症が存在すること、
(d)血清に炎症因子が存在すること、
(e)肺臓が病変すること、
(f)肺臓湿乾比が高いこと、の1つ又は複数の特徴を有する。
【0033】
別の好ましい例では、前記した「生存率が低い」こととは、肺損傷対象の生存率が70%、好ましくは60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%と低いことを意味する。
【0034】
別の好ましい例では、前記した「PO2が低下する」こととは、正常対象のPO2(LB0)と比較して、前記肺損傷対象のPO2(LB1)がLB0より低いことを意味し、好ましくはLB0/LB1≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0035】
別の好ましい例では、前記した「sO2%が低下する」こととは、正常対象のsO2%(LD0)と比較して、前記肺損傷対象のsO2%(LD1)がLD0より低いことを意味し、好ましくはLD0/LD1≧1.1、好ましくは≧1.15、より好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.25、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5である。
【0036】
別の好ましい例では、前記肺部に炎症が存在することは、
(c-1)肺部炎症因子の増加、
(c-2)肺部白血球の増加、
(c-3)肺部総タンパクの増加、からなる群から選択される1つ又は複数の特徴を含む。
【0037】
別の好ましい例では、前記肺部炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含む。
【0038】
別の好ましい例では、前記肺部白血球はWBC(白血球)、Neut(好中球)、Lymph(リンパ球)、Mono(単核球)を含む。
【0039】
別の好ましい例では、前記「肺部炎症因子の増加」とは、正常対象の炎症因子(LE0)と比較して、前記肺損傷対象の肺部炎症因子の数(LE1)がLE0より高いことを意味し、好ましくはLE1/LE0≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100、より好ましくは≧200、より好ましくは≧300、より好ましくは≧500、より好ましくは≧1000である。
【0040】
別の好ましい例では、前記「白血球の増加」とは、正常対象の白血球(LF0)と比較して、前記肺損傷対象の白血球の数(LF1)がLF0より高いことを意味し、好ましくはLF1/LF0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100である。
【0041】
別の好ましい例では、前記「肺部総タンパクの増加」とは、正常対象の総タンパク(LH0)と比較して、前記肺損傷対象の総タンパクの数(LH1)がLH0より高いことを意味し、好ましくはLH1/LH0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100である。
【0042】
別の好ましい例では、前記血清における炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含む。
【0043】
別の好ましい例では、前記した「血清に炎症因子が存在する」こととは、正常対象の炎症因子(LJ0)と比較して、前記肺損傷対象の血清における炎症因子の数(LJ1)がLJ0より高いことを意味し、好ましくはLJ1/LJ0≧2、好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100、より好ましくは≧200、より好ましくは≧300、より好ましくは≧500、より好ましくは≧1000である。
【0044】
別の好ましい例では、前記した「肺臓湿乾比が高い」こととは、正常対象の湿乾比(LK0)と比較して、前記肺損傷対象の湿乾比(LK1)がLK0より高いことを意味し、好ましくはLK1/LK0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0045】
別の好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、
(i)生存率の向上、
(ii)血液ガスPO2及び/又はsO2%指標の向上、
(iii)肺部炎症の軽減、
(iv)血清における炎症因子の減少、
(v)肺組織の病変程度の改善、
(vi)肺臓湿乾比の低下、からなる群から選択される1つ又は複数の特徴を含む。
【0046】
別の好ましい例では、前記「生存率の向上」とは、投与対象の生存率が70%、好ましくは80%、85%、90%、92%、95%、99%、99.5%まで高くなることを意味する。
【0047】
別の好ましい例では、前記「PO2の向上」とは、肺損傷対象のPO2(B0)と比較して、前記投与対象のPO2(B1)がB0より高いことを意味し、好ましくはB1/B0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0048】
別の好ましい例では、前記「sO2%の向上」とは、肺損傷対象のsO2%(D0)と比較して、前記投与対象のsO2%(D1)がD0より高いことを意味し、好ましくはD1/D0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0049】
別の好ましい例では、前記肺部炎症の軽減は、
(iii-1)肺部炎症因子の減少、
(iii-2)肺部白血球の減少、
(iii-3)肺部総タンパクの減少、からなる群から選択される1つ又は複数の手段によって行われる。
【0050】
別の好ましい例では、前記肺部炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含む。
【0051】
別の好ましい例では、前記肺部白血球はWBC(白血球)、Neut(好中球)、Lymph(リンパ球)、Mono(単核球)を含む。
【0052】
別の好ましい例では、前記「肺部炎症因子の減少」とは、肺損傷対象の炎症因子(E0)と比較して、前記投与対象の肺部炎症因子の数(E1)がE0より低いことを意味し、好ましくはE0/E1≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100である。
【0053】
別の好ましい例では、前記「白血球の減少」とは、肺損傷対象の白血球(F0)と比較して、前記投与対象の白血球の数(F1)がF0より低いことを意味し、好ましくはF0/F1≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100である。
【0054】
別の好ましい例では、前記「肺部総タンパクの減少」とは、肺損傷対象の総タンパク(H0)と比較して、前記投与対象の総タンパクの数(H1)がH0より低いことを意味し、好ましくはH0/H1≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0055】
別の好ましい例では、前記血清における炎症因子はTNF-α、IL-10、IL-6及び/又はIL-1βを含む。
【0056】
別の好ましい例では、前記「血清における炎症因子の減少」とは、肺損傷対象の炎症因子(J0)と比較して、前記投与対象の血清における炎症因子の数(J1)がJ0より低いことを意味し、好ましくはJ0/J1≧2、好ましくは≧5、より好ましくは≧10、より好ましくは≧20、より好ましくは≧30、より好ましくは≧50、より好ましくは≧100、より好ましくは≧200、より好ましくは≧300、より好ましくは≧500、より好ましくは≧1000である。
【0057】
別の好ましい例では、前記「肺臓湿乾比の低下」とは、肺損傷対象の湿乾比(K0)と比較して、前記投与対象の湿乾比(K1)がK0より低いことを意味し、好ましくはK0/K1≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧10である。
【0058】
別の好ましい例では、前記投与対象はアネキシン治療を受けた対象を指す。
【0059】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤は、薬物組成物又は製剤、食品組成物又は製剤、健康品組成物又は製剤、あるいはダイエタリーサプリメントを含む。
【0060】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤は、薬学的、食品的、健康品又は食事的に許容可能な担体をさらに含む。
【0061】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤は、肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物をさらに含み、
好ましくは、前記の肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物は、糖質コルチコイド、ビタミン、又はその組合せからなる群から選択される。
【0062】
別の好ましい例では、前記ビタミンは、ビタミンC、ビタミンE、又はその組合せからなる群から選択される。
【0063】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤の剤形は経口製剤、外用製剤又は注射製剤である。
【0064】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤の剤形は固体製剤、液体製剤又は半固体製剤である。
【0065】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤の剤形は粉剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、チンキ剤、経口液、タブレット、トローチ、パウダースプレー剤、エアゾール剤又は噴霧剤である。
【0066】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤の剤形は気道投与製剤である。
【0067】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤の剤形は注射剤である。
【0068】
別の好ましい例では、前記注射剤は静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下製剤、気道投与製剤である。
【0069】
別の好ましい例では、前記気道投与製剤は気道内霧化剤である。
【0070】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤における前記アネキシンの質量パーセントは、組成物又は製剤の総重量で5wt%、好ましくはl~20wt%である。
【0071】
本発明の第2方面は、必要のある相手にアネキシンを投与するステップを含む、(i)肺損傷の予防及び/又は治療、及び/又は(ii)好中球数の低減の方法を提供する。
【0072】
別の好ましい例では、前記非ヒト哺乳動物はブタ、ウシ、ヒツジ、ラット、マウス又はウサギを含む。
【0073】
別の好ましい例では、前記投与の投与量は0.2~5mg/kg、例えば、0.2mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kgである。
【0074】
本発明の範囲内で、本発明の上記各技術的特徴と、以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴とを互いに組み合わせて、新しい又は好ましい技術的解決手段を構成することができることを理解されたい。紙数に限りがあるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】実施例1における肺胞洗浄液中の好中球カウントであり、*p<0.05で、G2-G12 VS G1であり、One-way ANOVA/Dunnett′sを用いる。
【
図2】実施例1における肺胞洗浄液中の好中球が占めるパーセントであり、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001で、G2-G12 VS G1であり、One-way ANOVA/Dunnett′sを用いる。
【
図3】実施例1における肺部の病理学的スコアである。
【
図4】実施例1における肺部組織の病理学的スライスの染色である。
【
図5】実施例2における肺損傷ラットの血液ガス分析に対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【
図6】実施例2における肺損傷ラットの肺洗浄液(BALF)中の白血球の総数及び分類に対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【
図7】実施例2における肺損傷ラットのBALFの総タンパクに対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【
図8】実施例2における肺損傷ラットのBALFの炎症因子に対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【
図9】実施例2における肺損傷ラットの血清における炎症因子に対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【
図10】実施例2における肺損傷ラットの組織の病変程度に対するアネキシンの影響である。
【
図11】実施例2における肺損傷ラットの湿乾比値に対するアネキシンの影響(平均値±SD)である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明者は広くて深い研究を経て、アネキシンが肺損傷の予防及び/又は治療、並びに好中球数の低減に使用可能であるほか、肺損傷による死亡を顕著に減少し、血液ガスPO2及び/又はsO2%指標を向上させ、肺部炎症を軽減し、肺損傷による血清における炎症因子の増加を減少し、肺組織の病変程度を改善し、肺臓湿乾比を低下させることもできることを初めて見出した。これに基づいて本発明を達成した。
【0077】
用語
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0078】
本明細書で使用されるように、用語「含む」、「からなる」及び「含有」は互換的に使用可能であり、開放的な定義を含むだけでなく、半閉鎖的、及び閉鎖的な定義をも含む。換言すれば、前記用語は「……から構成される」という意味、「実質的に……から構成される」という意味を含む。
【0079】
アネキシン
アネキシンは広く分布しているカルシウム依存性リン脂質結合タンパクであり、分子系統発生学と比較ゲノム学による解析に基づいて、該タンパク質ファミリーは統一的にannexin(Anxと略称)と命名され、その後に異なる種属を表す大文字の英字が添えられており、A、B、C、D、Eは、それぞれ脊椎動物、無脊椎動物、真菌とミセトゾア類、植物、原生生物を表す。いままで、AnxAファミリーには、A1~A11及びA13(A12は指定されていない)の計12メンバーがある。
【0080】
代表的には、前記アネキシンはアネキシンA5を含む。アネキシンA5(AnxA5)は有機体の種々の組織球に広く分布しており、インビトロ研究により、AnxA5は抗ホスホリパーゼ、抗血液凝固、抗キナーゼ等の複数種の機能を有することが見出されたが、その具体的なインビボ機能は明確ではなく、現在、主にアポトーシスを検出する試薬として使用される。
【0081】
本発明で使用できるアネキシンは、特に限定されておらず、任意の生体に由来するアネキシンであってもよく、好ましくは、哺乳動物(例えば、霊長類動物)に由来し、より好ましくは、ヒトに由来する。また、「アネキシン」は野生型又は変異型(切断型を含む)のアネキシンを含み、該変異型アネキシンが野生型アネキシンの解毒活性を保有又は保持すればよいことを理解されたい。
【0082】
使用
本発明は、(i)肺損傷の予防及び/又は治療、(ii)好中球数の低減、からなる群から選択される1つ又は複数の使用に用いられる組成物又は製剤を調製するための本発明に係るアネキシンの使用を提供する。
【0083】
本発明に記載の肺損傷は特に限定されておらず、好ましくは、前記肺損傷は急性肺損傷、呼吸窮迫症候群、又はその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0084】
代表的には、前記肺損傷は急性肺損傷を含む。
【0085】
代表的には、前記肺損傷は呼吸窮迫症候群を含む。
【0086】
本発明に記載の呼吸窮迫症候群は、好ましくは急性呼吸窮迫症候群である。
【0087】
肺損傷は、例えば、直接的な損傷、ショック、膵炎、煙と有毒ガスの吸入、肺炎、再灌流障害等のさまざまな理由で引き起こされ得、本発明の研究によると、「サイトカインストーム」は肺損傷を引き起こす要因の1つであり、肺部にある好中球数が増加すると、TNF-α、IL-1、IL-6等のサイトカインが大量に発生し(即ちサイトカインストーム)、これらのサイトカインは自身の組織を攻撃し、急性肺損傷及び臓器不全を引き起こし、肺部における好中球数を低減し、サイトカインストームを改善することによって、肺損傷を予防及び/又は治療することができることが示される。
【0088】
本発明の1つの好ましい例では、前記肺損傷は好中球(neutrophil)の増加による肺損傷を含む。
【0089】
本発明の1つの好ましい例では、前記肺損傷はサイトカインストームによる肺損傷を含む。
【0090】
本発明の1つの好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、好中球数の低減による肺損傷の予防及び/又は治療を含む。
【0091】
本発明の1つの好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、サイトカインストームの改善による肺損傷の予防及び/又は治療を含む。
【0092】
別の好ましい例では、前記サイトカインストームの改善は低減、阻害又は除去を含む。
【0093】
本発明の1つの好ましい例では、前記肺損傷の予防及び/又は治療は、好中球数を低減すること、及び/又は好中球数の増加によるサイトカインストームを阻害することによって肺損傷を予防及び/又は治療することを含む。
【0094】
本発明の1つの好ましい例では、前記好中球は肺部における好中球を含む。
【0095】
別の好ましい例では、前記好中球は肺胞における好中球を含む。
【0096】
本発明の1つの好ましい例では、前記サイトカインストームは肺部におけるサイトカインストームを含む。
【0097】
別の好ましい例では、前記サイトカインストームは肺胞におけるサイトカインストームを含む。
【0098】
本発明の1つの好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、対象における好中球数を低減することを意味する。
【0099】
別の好ましい例では、前記対象はヒト、又は非ヒト哺乳動物(例えば、齧歯動物)である。
【0100】
本発明の1つの好ましい例では、前記対象は好中球数が増加したヒトである。
【0101】
別の好ましい例では、前記「好中球数が増加した」こととは、正常人の好中球数A0と比較して、前記肺損傷対象の好中球数A1がA0より高いことを意味し、好ましくは、A1/A0≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.3、より好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5、より好ましくは≧1.6、より好ましくは≧1.8、より好ましくは≧2、より好ましくは≧3、より好ましくは≧5、より好ましくは≧8である。
【0102】
別の好ましい例では、前記対象は肺損傷対象である。
【0103】
別の好ましい例では、前記対象は肺損傷の治療を受けていた、受けている、又は受けようとする対象である。
【0104】
本発明の1つの好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、対照の好中球数C0と比較して、肺部(例えば、肺胞)の好中球数C1を低減することを意味する。
【0105】
別の好ましい例では、前記の対照の好中球数C0は、アネキシンを用いて治療又は処理する前の前記対象の好中球数Czs、又は対照群の好中球数Cdzである。
【0106】
別の好ましい例では、前記対照群は正常人の好中球数を含む。
【0107】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、C1/Czs≦0.9、好ましくは≦0.8、より好ましくは≦0.7、より好ましくは≦0.6、より好ましくは≦0.5、より好ましくは≦0.4、より好ましくは≦0.3、より好ましくは≦0.2、より好ましくは≦0.1であることを意味する。
【0108】
別の好ましい例では、前記「好中球数の低減」とは、C1/Cdz≦0.9、好ましくは≦0.8、より好ましくは≦0.7、より好ましくは≦0.6、より好ましくは≦0.5、より好ましくは≦0.4、より好ましくは≦0.3、より好ましくは≦0.2、より好ましくは≦0.1であることを意味する。
【0109】
別の好ましい例では、前記組成物又は製剤は、薬物組成物又は製剤、食品組成物又は製剤、健康品組成物又は製剤、あるいはダイエタリーサプリメントを含む。
【0110】
本発明の1つの好ましい例では、前記組成物又は製剤は、肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物をさらに含む。
【0111】
別の好ましい例では、前記の肺損傷を予防及び/又は治療する他の薬物は、糖質コルチコイド、ビタミン、又はその組合せからなる群から選択される。
【0112】
別の好ましい例では、前記ビタミンは、ビタミンC、ビタミンE、又はその組合せからなる群から選択される。
【0113】
組成物と投与
本発明に係る組成物は、薬物組成物、食品組成物、健康組成物、ダイエタリーサプリメント等を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0114】
代表的には、本発明に係る無細胞脂肪抽出物を薬物組成物、例えば、タブレット、カプセル、粉剤、微顆粒剤、溶液剤、錠剤、ゼリー、クリーム剤、酒精剤、懸濁剤、チンキ剤、湿布剤、リニメント剤、ローション剤、及びエアゾール剤といった剤形に調製することができる。薬物組成物は一般的に知られている調製技術によって調製することができ、適切な医薬添加剤が該薬物に添加され得る。
【0115】
本発明の組成物は、薬学的、食品的、健康品又は食事的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。「薬学的、食品的、健康品又は食事的に許容可能な担体」とは、ヒトの使用に適し、かつ十分な純度と十分に低い毒性を有しなければならない1つ又は複数の相容性の固体又は液体フィラー又はゲル物質を指す。ここで、「相容性」とは、組成物中の各成分は、化合物の薬効を顕著に低下させることなく、本発明の化合物と混和することができ、又は互いに混和することができることを意味する。薬学的、食品的、健康品又は食事的に許容可能な担体は、一部の例として、セルロース及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテート等)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ごま油、落花生油、オリーブ油等)、ポリオール(例えば、プロパンジオール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等)、乳化剤(例えば、ツウィーン(登録商標))、湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、風味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、パイロジェンフリー水(pyrogen free water)等がある。
【0116】
本発明に係る組成物の投与形態は特に限定されておらず、代表的な投与形態は、経口投与、非経口(静脈内、筋肉内)投与、局所投与を含み(これらに限定されない)、好ましい投与形態は経口投与及び注射投与である。
【0117】
本発明に記載の組成物又は製剤の剤形は経口製剤、外用製剤又は注射製剤である。代表的には、経口施用又は投与のための固体剤形はカプセル剤、タブレット、丸剤、散剤及び顆粒剤を含む。これらの固体剤形には、活性化合物は、少なくとも1種の汎用な不活性賦形剤(又は担体)、例えば、クエン酸ナトリウム又はジカルシウムホスフェートと混合し、あるいは、下記成分(a)~(i)と混合する。(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸等のフィラー又は可溶化剤;(b)例えば、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム等のバインダー;(c)例えば、グリセリン等の保湿剤;(d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤;(e)例えば、パラフィン等の溶解遅延剤;(f)例えば、四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(g)例えば、セタノール及びモノステアリン酸グリセリド等の湿潤剤;(h)例えば、カオリン等の吸着剤;並びに(i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、又はその混合物等の潤滑剤。カプセル剤、タブレット及び丸剤では、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0118】
タブレット、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤のような固体剤形は、コーティング及びシェル材、例えば、腸管コーティング及び本分野で公知の他の材料を採用して調製することができる。それらは不透明剤を含んでもよい。
【0119】
経口施用又は投与のための液体剤形は薬学的に許容可能なエマルション、溶液、懸濁液、シロップ又はチンキ剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、水又は他の溶剤、可溶化剤及び乳化剤のような本分野で一般的に採用される不活性希釈剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、並びに油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びごま油、又はこれらの物質の混合物等を含んでもよい。
【0120】
これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、矯味剤及び香料を含んでもよい。
【0121】
活性成分に加えて、懸濁液は懸濁剤、例えば、エトキシル化イソオクタデシル、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメトキシド及び寒天、又はこれらの物質の混合物等を含んでもよい。
【0122】
非経口注射のための組成物は、生理学的に許容可能な滅菌の含水又は無水溶液、分散液、懸濁液又はエマルション、及び再溶解して滅菌の注射可能な溶液又は分散液とするための滅菌粉末を含んでもよい。適切な含水及び非水な担体、希釈剤、溶剤又は賦形剤は、水、エタノール、ポリオール及びその適切な混合物を含む。
【0123】
局所施用又は投与のための本発明に係る化合物の剤形は軟膏剤、散剤、テープ剤、噴射剤及び吸入剤を含む。活性成分は、滅菌条件下で、生理学的に許容可能な担体及び任意の防腐剤、緩衝剤、又は必要に応じて推進剤と混合される。
【0124】
本発明に係る無細胞脂肪抽出物は、単独で施用又は投与されてもよく、あるいは非増殖性瘢痕を予防及び/又は治療する他の薬物と組み合わせて施用又は投与されてもよい。
【0125】
組成物を投与する場合に、安全有効量の本発明の無細胞脂肪抽出物を、治療の必要あるヒト又は非ヒト動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ、アヒル等)に適用し、ここで、投与時の用量は薬学的、食品的又は健康品的に許容可能な認められる有効投与量である。本明細書で使用されるように、用語「安全有効量」とは、ヒト及び/又は動物に機能や活性を発生し、且つヒト及び/又は動物に許容可能な量を指す。当業者であれば、前記「安全有効量」は、薬物組成物の形態、投与経路、使用される薬物の副原料、疾患の重症度、及び他の薬物との併用等の状況によって異なり得ることを理解すべきである。例えば、体重60kgのヒトに対して、1日の投与量は一般的に0.1~1000mg、好ましくは1~600mg、より好ましくは2~300mgである。当然ながら、具体的な用量は、投与経路、患者の健康状態等の要素も考慮すべきであり、これらはいずれも熟練した医師の技術範囲内のものである。
【0126】
本発明の主な利点は以下の1)~3)を含む。
【0127】
1)本発明者は、アネキシンが肺損傷の予防及び/又は治療、並びに好中球数の低減に使用可能であることを初めて見出した。
【0128】
2)本発明者は、アネキシンが生存率の向上、血液ガスPO2及び/又はsO2%指標の向上、肺部炎症の軽減、血清における炎症因子の減少、肺組織の病変程度の改善、及び/又は肺臓湿乾比の低下を含めて、肺損傷を全面的に予防及び/又は治療することができることを初めて見出した。
【0129】
3)アネキシンは、特に、肺臓における白血球、炎症因子及び血清における炎症因子の数を顕著に低減することができ、疾患対象の上記指標を正常対象のレベルに低下させることができる。
【0130】
以下において、具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定する意図がないことを理解されたい。以下の実施例において具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、一般的な条件、又はメーカーによって推奨される条件に従う。特に説明しない限り、パーセンテージ及び部数は重量によるものである。
【0131】
実施例
アネキシンA5は人体の脂肪組織から抽出かつ精製して得られたものであり、登録番号AccessionはP08758である。
【0132】
実施例1
1. 試験内容
1.1 モデル製造
正常な成体雄性SDラットを、群ごとに5匹になるように、ランダムに群分けした。動物に対して、モデリング試薬であるリポ多糖(LPS)の腹腔内注射と気道内霧化を併用し、詳細を下記表1に示した。
【0133】
【0134】
モデリング方法は以下のとおりであった。
【0135】
G1~G2群に動物の体重に応じて腹腔内注射によりリポ多糖(0.8mg/kg.体重)を与え、リポ多糖を腹腔内注射してから16h後に、イソフルランを吸入させて麻酔し、G1~G2群に動物の気管内霧化によりリポ多糖(5mg/kg.体重)を与えた。G0群は正常対照群であり、リポ多糖処理を行わず、正常な食事をした。G1~G2群のラットはリポ多糖処理を経た後に、急性呼吸窮迫症候群の臨床症状を示した。
【0136】
リポ多糖(LPS)の腹腔内注射:秤量した動物の体重に応じて、各動物に与えられるリポ多糖の量を使い捨てマイクロシリンジで抽出し、腹腔内注射によりリポ多糖を与えた。
【0137】
リポ多糖(LPS)の気道内霧化:動物にイソフルランを吸入させで麻酔し、そして45°で配置されたラット固定器に固定し、小動物麻酔用喉頭鏡を用いて、動物の舌根を押し下げ、声帯を露出させ、所定量のリポ多糖(LPS)溶液を抽出した肺部ミニネブライザーの針(鈍性)を気管に優しく挿入し、ピストンを素早く押してLPS溶液を肺臓内に霧化させ、針を素早く引き抜き、動物を固定器から取り外し、頭部を上向きにし、左右に回転させてLPSを各肺葉にできるだけ均一に分布させた。
【0138】
1.2 群分けと投与
気道内霧化によりモデリング試薬(LPS)を動物に与えてから1h後に、1回目の投与を開始し、24h後に2回目の投与を行い、具体的な投与群及び投与レジメンを下記表2に示した。
【0139】
【0140】
1.3 材料採取とインビボ実験終了時間
2回目の投与が終了した後の翌日(気道内霧化によりモデリング試薬を与えてモデリングしてから48h後)。
【0141】
1.4 検出指標
1.4.1 一般的な臨床観察
動物の検疫期間及び投与期間中に1日2回(午前と午後各1回)観察し、又は必要に応じて頻度を増やした。観察内容は、精神状態、行動活動、死亡、呼吸、分泌物、糞便性状及び他の異常状況であった。
【0142】
1.4.2 体重
群分け前、モデリング当日、試験品投与当日に体重を測定し、動物の死亡や瀕死を観察した場合、及び安楽死の場合も体重を測定した。
【0143】
1.4.3 肺洗浄液(BALF)の収集と検出
サンプル採取:2回目の投与が終了した後の翌日、各群の動物を過量CO2で安楽死させた後に腹腔を開いて、腹腔中の動脈を切断して出血させる。ハサミで首部の気管を露出させ、小さい切り欠きにして、注射器に接続されるチューブを挿入した後に、糸で固く結紮した。5mlのPBS(1%FBSを含む)を抽出し、肺内に注入して3回吸引し、この操作を3回繰り返し、肺臓洗浄液を収集した。洗浄液(BALF)を4℃、1200rpmで10min遠心分離し、上澄みを-70℃以下で保存して用意した。沈殿細胞を1mLのPBSで再懸濁し、血球計数器及びトリパンブルー染色によりBALF中の総細胞数をカウントした。
【0144】
白血球分類検出:残りの細胞を再懸濁して塗抹標本の製造に使用し、Wright-Giemsa染色液を用いて染色し、好中球を区別した。
【0145】
1.4.4 組織病理学的検査
全ての動物に対して肺洗浄液を収集した後に、胸腔を開いて右肺を取り、注射針で肺にホルマリンを灌流し、10%中性緩衝ホルマリン溶液に置いて固定し、パラフィンで包埋し、スライスし、シート化し、HE染色して肺組織の病理形態学的観察を行い、専門の病理医が肺組織に対して病理学的検出を行った。組織病理学的評価指標は下記の表3に示すとおりであった。
【0146】
【0147】
2. 統計分析
実験データは、平均値±標準誤差(Mean±S.E.M.)として示された。データはGraphpad Prism又はSPSSにより、対応する統計方法を採用して分析された。P<0.05の場合、有意差があると認められた。
【0148】
3. 結果
3.1 体重
動物に対してLPSモデリングを行った後、各群の動物の体重は全てモデリング前よりも顕著に減少し、群間に有意差がなく、各群の動物の体重は表4に示すとおりであった。
【0149】
【0150】
3.2 肺胞洗浄液の細胞カウント
肺胞洗浄液の細胞カウントデータから、正常対照群G0のラットと比較して、モデル対照群G1における好中球が顕著に増加し、モデル対照群G1と比較して、投与群G2では肺胞洗浄液の好中球(Neu細胞)のカウントが顕著に阻害されたことが示された。肺胞洗浄液の細胞タイプ別のパーセンテージデータからも、好中球パーセンテージカウントに対するG2(投与群)の阻害作用が示され、肺胞洗浄液中のNeu細胞カウントの結果は表5及び
図1に示すとおりであり、肺胞洗浄液のNeu細胞パーセンテージは表6及び
図2に示すとおりであった。
【0151】
【0152】
【0153】
3.3 病理学的分析
結果から示されるように、投与群G2は、モデル対照群G1と比較して、LPSから誘発された急性呼吸窮迫症候群を明らかに改善したことを示し、モデル対照群G1及び投与群G2の肺部の病理学的スコアは表7及び
図3に示すとおりであり、正常対照群G0、モデル対照群G1及び投与群G2の典型的な肺部組織病理スライス染色は
図4に示すとおりであった。
【0154】
【0155】
図4から分かるように、モデル対照群G1と比較して、投与群G2は肺損傷が顕著に改善され、それにより、アネキシンA5は呼吸窮迫症候群に対して優れた治療効果を有することが示された。
【0156】
実施例2.
1. 実験前の準備
1.1 試薬
試験品:アネキシンA5(Annexin A5)、番号CEFFE01、天津▲下▼梅徳生物技術株式会社(KMD Bioscience Co., Ltd.)製、濃度0.3mg/mL、未開封の場合は、-20℃以下で長期保存することができ、開封後は、2~8℃で48時間保存することができる。
【0157】
モデリング試薬:リポ多糖(LPS,Lipopolysaccharides)、SIGMA社製、弱黄褐色冷凍乾燥粉末であり、2~8℃で保存した。
【0158】
溶媒:塩化ナトリウム注射液、湖南科倫製薬株式会社(Hunan Kelun Pharmaceutical Co., Ltd.)製、無色澄明液体であり、密閉保存した。
【0159】
1.2 試薬配合及び後保管
モデリング試薬:投与当日、適量のリポ多糖を正確に秤量し、適量の塩化ナトリウム注射液を加え、ボルテックス振盪して均一に混合し、最終的にリポ多糖の配合濃度を1mg/mLと5mg/mLにした。
【0160】
試験品:投与当日、試験品を-20℃の冷蔵庫から取り出し、2~8℃の冷蔵庫又は氷嚢の入れたインキュベーターに移し、完全に溶けた後、配合することなく、直接原液を使用した。
【0161】
投与当日、試験品、溶媒及びモデリング試薬を氷嚢の入れたインキュベーターに入れて動物室に移し、動物に与える前に、室温まで戻す必要があった。投与後に、残りの試験品は2~8℃の冷蔵庫で保存された。
【0162】
1.3 動物
SPFグレードのSprague-Dawleyラット(SDラット)18匹を使用し、ラットは週齢8~10、体重321~367gであった。
【0163】
実験動物の供給元:浙江維通利華実験動物技術株式会社(Zhejiang Vital River Laboratory Animal Technology Co. Ltd.)。実験動物生産ライセンス番号:SCXK(浙)2019-0001。実験動物品質証明書番号:20210722Aazz0619000304。生産ライセンス発行単位:浙江省科学技術庁。
【0164】
動物は10日間の検疫を行い、この間に資格のある人員が動物に対して全身検査を行い、その健康状況を評価した。検疫に合格した動物はSDによって承認されて本試験に使用された。
【0165】
1.4動物の飼育と管理
SPFグレードの動物室を使用し、SPFラット・マウス成長繁殖飼料を使用し、精製水(供給源:本機構で調製された二次逆浸透RO膜ろ過水)を使用し、飲用水ボトルで供給し、自由に飲用させた。
【0166】
動物はポリカーボネートのプラスチックケースに飼育され、各ケースには5匹以下であり、バリア環境の動物室で、照明は明暗を12時間ごとに切り替えた。
【0167】
環境条件は、室温20℃~26℃、相対湿度40%~70%、実測室温範囲22.1℃~25.75℃、実測湿度範囲55.35%~71.4%に制御された。
【0168】
2. 試験内容
2.1 モデル構築
動物の群分け:検疫に合格した18匹の雄性動物を、群分け前に測定した体重に応じて、6匹/群で、正常対照群、モデル対照群、試験品群にランダムに群分けた。
【0169】
モデル構築:
D0:正常対照群の動物に対して塩化ナトリウム注射液(1mL/kg)を腹腔内注射し、その他の各群の動物に対して全て腹腔内注射によりリポ多糖(1mg/kg、1mL/kg)を与えた。
D1:腹腔内注射してから16h(±30min)後に、イソフルランを吸入させで麻酔し、正常対照群の動物に対して気道内霧化により塩化ナトリウム注射液(1mL/kg)を与え、その他の各群の動物に対して全て気管内霧化によりリポ多糖(5mg/kg、1mL/kg)を与えた。
【0170】
リポ多糖(LPS)の腹腔内注射:最近秤量した動物の体重に応じて、各動物に与えられるリポ多糖の量を使い捨て注射器で抽出し、腹腔内注射によりリポ多糖を与えた。リポ多糖の体積が2つの目盛容量線の間にある場合は、上の目盛値に従って抽出した。
【0171】
リポ多糖(LPS)の気道内霧化:動物にイソフルランを吸入させて麻酔してから、45°で配置されたラット固定器に固定し、小動物麻酔用喉頭鏡を用いて、動物の舌根を押し下げ、声帯を露出させ、所定量のリポ多糖(LPS)溶液を抽出した肺部用ミニネブライザーの針(鈍性)を気管に優しく挿入し、ピストンを素早く押してLPS溶液を肺臓内に霧化させ、針を素早く引き抜き、動物を固定器から取り外し、頭部を上向きにし、左右に回転させ、LPSを各肺葉にできるだけ均一に分布させた。リポ多糖の体積が2つの目盛容量線の間にある場合は、上の目盛値に従って抽出した。
【0172】
2.2投与量の設定
D1:気道内霧化によりモデリング試薬(LPS)を動物に与えてから約3h~5h後に、下記の表に従って試験品又は溶媒を与え、詳細は下記表8に示した。
【0173】
【0174】
投与方法
投与経路:静脈注射
【0175】
投与頻度及び期間:D1は、気道内霧化によりモデリング試薬(LPS)を動物に与えてから約3h後に、1回目の投与を開始し、D2は、2回目の投与を行い、2つの投与の間隔は約24h(±20min)であった。
【0176】
静脈注射:最近秤量した動物の体重に応じて、各動物の薬物量を使い捨て注射器で抽出し、尾静脈注射により投与した。投与体積が2つの目盛容量線の間にある場合は、上の目盛値に従って抽出した。
【0177】
3.検出
データはシステム生成及び手動記録の方式で収集された。本試験のデータは「平均値±標準誤差」で示された。
【0178】
3.1一般的な臨床観察
動物の検疫期間及び投与期間中に1日2回(午前と午後各1回)観察した。動物は、モデリング試薬を与えた翌日に、目や鼻の分泌物、体重減少、気無精等のモデリングに関連する異常状況が発生し、他の臨床観察には異常がなかった。
【0179】
3.2体重
動物を受け取る時、群分け前、モデリング当日、投与当日に体重を測定し、動物を安楽死させる前にも体重を測定した。
【0180】
3.3生存率の検出
安楽死を計画した後に、試験周期内の各群の生存動物数と各群の動物総数との比を計算した。
【0181】
生存率(%)=各群の生存動物数/各群の動物総数×100%。
【0182】
結果:試験中に、モデル対照群では1匹の動物が死亡し、その他の各群ではいずれも動物の死亡を発見しなかった。正常対照群、モデル対照群、試験品群の動物生存率はそれぞれ100%、83.3%、100%であった。
【0183】
3.4血液ガスの検出
検出時間:2回目の投与が終了した後の翌日(D3)
【0184】
サンプル採取:ラットに対して抱水クロラール(350mg/kg、100mg/mL)を腹腔内注射して麻酔させ、腹中線に沿って縦方向に切開し、腹の大動脈を分離し、動脈血を動脈採血器で約0.2mL抽出し、採血器を手のひらで持ち、注射器をこすって上下を5秒ずつ逆にし、決して採血器を引いて血液の均一混合処理を行ってはならなかった。
【0185】
検出方法:動脈血を抽出した後、針を測定カードの血液注入口に優しく挿入し、血液を徐々に押し込み、サンプル充填管を満たし、血液がサンプル充填位置に到達すると、サンプル充填を停止し、蓋を掛け、血液が測定管内に自動的に入り、測定カードを血液ガス分析器に挿入し、検出結果を待った。
【0186】
検出指標:PO2(mmHg)、PCO2(mmHg)、pH、sO2%。
【0187】
結果:モデル対照群の動物は、正常対照群と比較して、PO
2、sO
2%、PCO
2がいずれも低下し、そのうちPO
2が50%程度低下し、一方で、投与後、試験品群の動物の対応する指標はいずれも増加し、且ついずれも統計学的差異(P≦0.05又はP≦0.01)を有し、そのうちPCO
2が正常対照レベル以上まで向上し、pH指標に明らかな変化が見られていなかった。結果は表9及び
図5に示すとおりであった。
【0188】
【0189】
3.5 肺洗浄液(BALF)検出
サンプル採取:動物を安楽死させた後に、首部及び胸部の皮膚と組織を切開して気管、気管支及び肺を露出させ、右肺気管支を分離し、結紮した。気管の下に縫合糸を通し、甲状軟骨の下の適当な位置で、気管軟骨輪との間に1/2の切り欠きにして、気管カニューレを、切り欠きを介して気道内に徐々に挿入して左側の気管支まで到達させ、通した縫合糸を用いて切り欠きの求心方向の適当な位置でカニューレを気管と固く結紮して固定した。PBS緩衝液を注射器で3mL抽出して徐々に注入し、肺胞洗浄を行い、洗浄を3回繰り返し、1回の洗浄は約10s留まり、洗浄液を適切な容量の遠心分離管に収集した。
【0190】
BALF処理:収集された洗浄液を4℃、約2000rpmの条件下で、20min遠心分離した。上澄みを-60℃以下で保存し、使用に備えた。沈殿物を1mLのPBS緩衝液で再懸濁し、白血球のカウント及び分類に用いた。肺洗浄液の遠心分離後の上澄みはWatson LIMS7.5システムを採用してサンプル管理を行った。
【0191】
白血球の分類検出:再懸濁後の肺洗浄液に対して、全自動血球分析器を採用して白血球のカウント及び分類を行った。
【0192】
肺洗浄液の総タンパク含量の検出:試験が終了した後、総タンパク検出キットを採用して肺洗浄液中の総タンパク含量を検出した(BCA法)。
【0193】
肺洗浄液の炎症因子の検出:試験が終了した後、炎症因子検出キットを採用して肺洗浄液中の炎症因子(IL-1β、IL-6、IL-10、TNF-α)を検出した。
【0194】
結果:結果は表10、11及び
図6~8に示すとおりであり、モデリング後に、モデル対照群の動物のBALF白血球の総数はいずれも10~100倍程度増加し、炎症因子レベルは約100~900倍向上し、総タンパク濃度は10倍程度向上し、肺部に明らかな炎症反応が発生したことが示された。
【0195】
投与後に、モデル対照群の動物の対応する指標と比較して、試験品群の動物は、WBC(白血球)、Neut(好中球)、Lymph(リンパ球)、Mono(単核球)カウントの平均値、総タンパク指標の平均値、BALF炎症因子(TNF-α、IL-10、IL-6、IL-1β)指標の平均値がいずれも顕著に低下し、且ついずれも統計学的差異(P≦0.05又はP≦0.01)を有し、そのうち白血球カウント及び炎症因子濃度は正常対照群に相当するレベルまで低下し、顕著に優れた抗炎作用を有することが示され、本発明に係るアネキシンは肺部炎症を全面的に阻害する効果を有することが示された。
【0196】
【0197】
【0198】
3.6血清の炎症因子の検出
血液サンプル採取:約1mLの動物の腹部大動脈血を分離ゲル+凝固剤の遠心分離管に収集する。
【0199】
血液サンプル処理:血液サンプルを採取した後、室温で保存及び輸送し、2時間以内に遠心分離を完了し、遠心分離の条件は、3000g、室温、10分間であった。遠心分離後の血清を2本に分けて、マーキングされた新たな遠心分離管に移し、-60℃以下で一時的に保存した。試験が終了した後、キットを採用して血清の炎症因子(IL-1β、IL-6、IL-10、TNF-α)を検出した。Watson LIMS7.5システムを採用して血液サンプル管理を行った。
【0200】
結果:結果は表12及び
図9に示すとおりであり、モデリング後に、モデル対照群の動物の血清における炎症因子レベルが約100~1000倍向上し、血液にも明らかな炎症反応が発生したことが示された。投与後に、モデル対照群の動物の対応する指標と比較して、試験品群の動物の血清における炎症因子も明らかに低減し、且つ正常対照群に同様なレベルまで低減し、本発明に係るアネキシンは顕著に優れた抗炎作用を有することが再び検証された。
【0201】
【0202】
3.6動物安楽死
AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals:2020 Edition(the American Veterinary Medical Association,2020)に従って、D3は、全ての動物に対して抱水クロラール(350mg/kg、100mg/mL)を腹腔内注射して麻酔させ、腹部大動脈を出血させて安楽死を実施した。
【0203】
3.7 組織病理学的検査
全体的な観察:各群の全ての動物(死亡が発見された動物を含む)を解剖し、組織を保存した。稼働時間外に発見された死亡した動物を、2~8℃の冷蔵庫に保存し、24時間以内にできるだけ早く解剖した。解剖して組織を収集した後、動物の死体を医療廃棄物として処理した。
【0204】
剖検中に、動物の肺臓、気管及び気管支に異常があるか否かを観察した。右肺中葉を切り取って重量を測定し、湿/乾燥重量比を計算するために用いた。残りの右肺組織及び気管支を10%中性緩衝ホルマリン溶液に置いて固定し、パラフィンで包埋し、スライスし、シート化し、HE染色して肺組織の病理形態学的観察を行い、標準用語で診断及び分類し、5段階法(軽微、軽度、中等度、顕著、重度)に従って肺組織に対して病理学的検出を行った。
【0205】
結果:この試験の条件下で、正常対照群の動物は、顕微鏡下で、肺臓に軽微な炎症性細胞の浸潤、軽微な出血が見られ、モデル対照群の動物は、顕微鏡下で、肺臓に顕著から重度の炎症性細胞の浸潤、軽度の出血、中等度の肺胞上皮細胞の増殖が見られ、試験品群の動物は、顕微鏡下で、肺臓に中等度から顕著な炎症性細胞の浸潤、軽度の出血、軽度から中等度の肺胞上皮細胞の増殖が見られた。試験品群の動物の肺臓の病変程度はモデル対照群よりも低かった。5分法の結果は、表13及び
図10に示すとおりであった。
【0206】
【0207】
3.8肺臓湿乾比
ティシューで右肺中葉の組織表面の血液、組織液等の異物を拭き取り、重量を測定した後に、右肺中葉の組織を60℃のオーブンに72h置いて再び重量を測定し、肺臓の湿/乾燥重量比を計算した。
【0208】
肺臓湿乾比=右肺中葉の湿重量/乾燥重量
【0209】
結果:試験品群の動物の肺臓湿乾比が低減し、表14及び
図11に示すとおりであった。
【0210】
【0211】
検討
本発明に係るアネキシンは肺損傷ラットに対して優れた治療効果を有し、その効果は以下に反映される。
【0212】
(1)生存率が向上した。
(2)モデル対照群に比べて、血液ガス分析中のPO2(mmHg)、sO2%がいずれも増加した。
(3)BALF検出において、白血球数がいずれも大幅に減少し、基本的には、いずれも正常対照群に相当するレベルまで減少し、総タンパク数も明らかに低減し、炎症因子の濃度が正常対照レベルまで、明らかに低下した。
(4)血清における炎症因子も顕著に低減した。
(5)肺部組織の重度及び中等度の病変を効果的に低下させ、全てのラットの炎症性細胞浸潤病変が重度から、顕著及び中等度に明らかに変化し、半分のラットの肺胞壁厚さが中等度から軽度に変化した。
(6)肺臓の湿乾比を低下させた。
【0213】
以上のことから明らかなように、本発明に係るアネキシンは、多くの側面及び角度から肺損傷(急性呼吸窮迫症候群)のラットの治療を行い、優れた治療効果が得られた。
【0214】
本発明で言及される全ての文献は、個々の文献が個別に参照により組み込まれるように、本出願に参照により組み込まれる。なお、本発明の上記教示内容を読んだ後、当業者は本発明に対して種々の変更や修正を行うことができ、これらの等価な形態は同様に本出願に添付される特許請求の範囲によって限定される範囲内にあることを理解されたい。
【国際調査報告】