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特表2024-515317mRNA送達構築物およびそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】mRNA送達構築物およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240401BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240401BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240401BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240401BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240401BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240401BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240401BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240401BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20240401BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 38/45 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/18 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/48 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/38 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 39/00 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/43 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/19 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 38/22 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/52 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 Z
C12P21/02 H
A61P43/00 105
A61P31/00
A61P35/00
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/28
A61K9/51
A61K9/127
A61K9/10
A61K47/46
A61K35/76
C07H21/02 CSP
C07D405/14
A61K38/45
A61K38/18
A61K38/48
A61K38/38
A61K39/00 H
A61K38/43
A61K38/19
A61K38/16
A61K39/395 A
A61K39/395 M
A61K38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566445
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022053966
(87)【国際公開番号】W WO2022229903
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/181,115
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162266
【氏名又は名称】ジェネバント サイエンシズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】デーリー オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ラム キーウ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C057
4C063
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C057BB02
4C057DD03
4C057MM01
4C057MM02
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC73
4C063DD29
4C063EE01
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD51
4C076DD63
4C076DD64
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE57
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084DA36
4C084DB01
4C084DB52
4C084DB56
4C084DC01
4C084DC25
4C084MA05
4C084MA21
4C084MA24
4C084MA38
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB311
4C084ZC191
4C085AA06
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA01
4C085BB12
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE05
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB31
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、5' UTR、関心対象のタンパク質をコードするmRNA、および3' UTRを含むポリヌクレオチド構築物を含む組成物を、その必要のある対象に投与する段階を含む、疾患または障害を処置するポリヌクレオチド構築物、組成物、および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'から3'方向に以下を含む、ポリヌクレオチド構築物:
(a) SEQ ID NO: 1の配列と少なくとも95%同一の配列を含む5' UTR;
(b) 関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列; および
(c) SEQ ID NO: 2の配列と少なくとも95%同一の配列を含む3' UTR。
【請求項2】
5' UTRがSEQ ID NO: 1の配列を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項3】
3' UTRがSEQ ID NO: 2の配列を含む、請求項1または2記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項4】
5'末端キャップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項5】
5'末端キャップがCap1である、請求項4記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項6】
ポリAテールをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項7】
ポリAテールが80~1000核酸長である、請求項6記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項8】
ポリAテールが100~500核酸長である、請求項6記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項9】
5'から3'方向に以下を含む、ポリヌクレオチド構築物:
(a) 5'末端キャップ;
(b) SEQ ID NO: 1の配列と少なくとも99%同一の配列を含む5' UTR;
(c) 関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列;
(d) SEQ ID NO: 2の配列と少なくとも99%同一の配列を含む3' UTR; および
(e) 100~500核酸長であるポリAテール。
【請求項10】
5' UTRがSEQ ID NO: 1の配列を含み、かつ3' UTRがSEQ ID NO: 2の配列を含む、請求項9記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項11】
mRNAが少なくとも1つの化学修飾ウリジンを含む、請求項1~10のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項12】
ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%が化学修飾されている、請求項11記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項13】
化学修飾ウリジンが、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11または12記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項14】
以下を含む組成物:
(a) 請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物; および
(b) 送達物質。
【請求項15】
送達物質が、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
LNPが、PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC、PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、PEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC、およびPEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPCからなる群より選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチド構築物がLNP中に封入されている、請求項15または16記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド構築物がLNP中に完全に封入されている、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチド構築物の少なくとも95%がLNP中に封入されている、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項14~19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または請求項14~20のいずれか一項記載の組成物を細胞に投与する段階を含む、細胞における関心対象のタンパク質の発現を増加させるための方法。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または請求項14~20のいずれか一項記載の組成物の治療有効量を、その必要のある対象に投与する段階を含む、疾患または障害に関連する症状を処置または軽減するための方法。
【請求項23】
請求項1~13および14~20のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物を含む、発現カセット。
【請求項24】
プロモーターをさらに含む、請求項23記載の発現カセット。
【請求項25】
プロモーターがT7プロモーターである、請求項24記載の発現カセット。
【請求項26】
請求項23~25のいずれか一項記載の発現カセットを含む、プラスミド。
【請求項27】
請求項23~25のいずれか一項記載の発現カセット、または請求項26記載のプラスミドを含む、宿主細胞。
【請求項28】
その必要のある対象における疾患または障害の処置のための医薬の製造のための、請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物、または請求項14~20のいずれか一項記載の組成物、請求項23~25のいずれか一項記載の発現カセット、請求項26記載のプラスミド、または請求項27記載の宿主細胞の使用。
【請求項29】
核酸のインビボ送達のための方法であって、
請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物、請求項14~20のいずれか一項記載の組成物、請求項23~25のいずれか一項記載の発現カセット、請求項26記載のプラスミド、または請求項27記載の宿主細胞を哺乳動物対象に投与する段階
を含む、該方法。
【請求項30】
その必要のある哺乳動物対象において疾患または障害を処置するための方法であって、請求項1~13のいずれか一項記載のポリヌクレオチド構築物、請求項14~20のいずれか一項記載の組成物、請求項23~25のいずれか一項記載の発現カセット、請求項26記載のプラスミド、または請求項27記載の宿主細胞の治療有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む、該方法。
【請求項31】
疾患または障害が遺伝性疾患または障害である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
疾患または障害が感染性疾患またはがんである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
関心対象の機能的タンパク質が、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、ホルモン、膜タンパク質、膜結合タンパク質、抗原、または抗体を含む、請求項28~32のいずれか一項記載の使用または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月28日付で出願された米国仮出願第63/181,115号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願とともに提出されたASCIIテキスト形式の電子的に提出された配列表の内容(名称: 4170_023PC01_Seqlisting_ST25.txt; サイズ: 9,445バイト; および作成日: 2022年4月21日)は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
RNA分子は、インビトロおよびインビボで遺伝子発現の強力な調節因子として作用する能力を有しており、それゆえ核酸に基づく薬物としての潜在性を有する。これらの分子は、細胞タンパク質との特異的相互作用または他のRNA分子との塩基対合相互作用のいずれかを利用したいくつかの機構によって機能することができる。不十分または不完全なタンパク質産生によって特徴付けられる障害の場合、治療用mRNAはリボソームに指令を与えて、欠損または欠陥のあるタンパク質を産生させる潜在性を有する。RNA治療薬は血液中で急速に分解および排泄されやすく、細胞膜を自由に通過しないため、RNA治療薬の効率的かつ効果的な細胞内送達は困難である。
【0004】
生きている細胞へのRNA分子などの外因性ポリヌクレオチドおよび他の膜不透過性化合物の送達は、細胞の複雑な膜システムによって非常に制限されている。典型的には、アンチセンス治療および遺伝子治療において使用される分子は、大きな、負に帯電した、親水性の分子である。これらの特性により、細胞膜を越えて細胞質に直接拡散することが妨げられうる。したがって、遺伝子発現を調節するためにポリヌクレオチドを治療的に使用する際の大きな障壁は、細胞質へのポリヌクレオチドの送達である。トランスフェクション剤は通常、カチオン性のペプチド、重合体および脂質ならびにナノ粒子およびマイクロ粒子を含む。これらのトランスフェクション剤は、インビトロ反応において成功裏に使用されてきた。しかしながら、インビボでの効力および毒性には課題がある。さらに、これらのシステムの陽イオン電荷は血清成分との相互作用を引き起こす可能性があり、これによりポリヌクレオチドとトランスフェクション試薬の相互作用の不安定化や、不十分な生物学的利用能および標的指向化が引き起こされる。インビボで核酸をトランスフェクションする場合、送達物質は核酸ペイロードを初期の細胞外分解から、例えばヌクレアーゼから保護すべきである。さらに、送達物質は、適応免疫系(免疫原性)によって認識されるべきではなく、急性免疫応答を刺激すべきではない。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は5'から3'方向に、SEQ ID NO: 1の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を含む5' UTR; 関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列; およびSEQ ID NO: 2の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を含む3' UTRを含むポリヌクレオチド構築物を提供する。
【0006】
ある特定の局面において、本開示は、関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列を含むポリヌクレオチド構築物を提供する。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は5'から3'方向に、5' UTR; 関心対象のタンパク質をコードするORFを含むmRNA配列; および3' UTRを含む。ある特定の局面において、5' UTRはSEQ ID NO: 1の配列を含み、および/または3' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含む。
【0007】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、5'末端キャップ、例えばCap1をさらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ポリAテールをさらに含む。ある特定の局面において、ポリAテールは、80~1000核酸長、例えば、100~500核酸長である。ポリヌクレオチド構築物は5'から3'方向に、5'末端キャップ; SEQ ID NO: 1の配列と少なくとも99%同一の配列を含む5' UTR; 関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列; SEQ ID NO: 2の配列と少なくとも99%同一の配列を含む3' UTR; および100~500核酸長であるポリAテールを含む。
【0008】
いくつかの局面において、mRNAは少なくとも1つの化学修飾ウリジンを含む。ある特定の局面において、ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%が化学修飾されている。いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、および/またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0009】
本開示のある特定の局面は、本開示のポリヌクレオチド構築物および送達物質を含む組成物を目的とする。いくつかの局面において、送達物質は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
ある特定の局面において、LNPは、LNP1 (PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPCまたはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、およびLNP3 (PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)の群内の組成物からなる群より選択される。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に封入されている。いくつかの局面において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に完全に封入されている。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物の少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上がLNPによって封入されている。
【0011】
本開示のある特定の局面は、本開示の組成物または本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物を細胞に投与する段階を含む、細胞における関心対象のタンパク質の発現を増加させるための方法を目的とする。
【0012】
本開示のある特定の局面は、本開示の組成物または本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物の治療有効量を、その必要のある対象に投与する段階を含む、疾患または障害に関連する症状を処置または軽減するための方法を目的とする。
【0013】
本開示のある特定の局面は、5'から3'方向に、SEQ ID NO: 1の配列を含む5' UTR; 関心対象の機能的タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列; およびSEQ ID NO: 2の配列を含む3' UTRを含むポリヌクレオチド構築物を含む発現カセットを目的とする。いくつかの局面において、発現カセットはプロモーター、例えばT7プロモーターをさらに含む。
【0014】
本開示のいくつかの局面は、本開示の発現カセットを含むプラスミドを目的とする。いくつかの局面において、発現カセットは本開示のmRNAを転写する。本開示のいくつかの局面は、本開示の発現カセット、または本開示のプラスミドを含む宿主細胞を目的とする。
【0015】
本開示のある特定の局面は、その必要のある対象における疾患または障害の処置のための医薬の製造のための、本開示のポリヌクレオチド構築物、または本開示の組成物、または本開示の発現カセット、または本開示のプラスミド、または本開示の宿主細胞の使用を目的とする。
【0016】
本開示のある特定の局面は、核酸のインビボ送達のための方法であって、本開示のポリヌクレオチド構築物、または本開示の組成物、または本開示の発現カセット、または本開示のプラスミド、または本開示の宿主細胞を哺乳動物対象に投与する段階を含む該方法を目的とする。
【0017】
本開示のある特定の局面は、その必要のある哺乳動物対象において疾患または障害を処置するための方法であって、本開示のポリヌクレオチド構築物、または本開示の組成物、または本開示の発現カセット、または本開示のプラスミド、または本開示の宿主細胞の治療有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む該方法を目的とする。
【0018】
いくつかの局面において、疾患または障害は遺伝性疾患または障害である。いくつかの局面において、疾患または障害は感染性疾患またはがんである。
【0019】
いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、ホルモン、膜タンパク質、膜結合タンパク質、抗原または抗体を含む。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は酵素である。
【0020】
これらのおよびその他の局面は、以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
いくつかの例において、本開示は、本開示のさまざまな局面の、以下の詳細な説明を、以下の添付の図面と組み合わせて検討することにより、より完全に理解することができる。
【0022】
図1】PBS対照と比較して異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440ヌクレオチド)を有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNPを投与されたラットにおける1回目の投薬から6時間後のMCP-1誘導を示す。80ヌクレオチドのポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるもの(enz)であった。
図2A】PBS対照と比較して異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440ヌクレオチド)を有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNPを投与されたラットにおける、それぞれ0日目、7日目、および14日目における1回目、2回目、および3回目の投薬から6時間後のMCP-1誘導を示す。80ヌクレオチドのポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるもの(enz)であった。
図2B】PBS対照と比較して異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440ヌクレオチド)を有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNPを投与されたラットにおける、それぞれ0日目、7日目、および14日目における1回目、2回目、および3回目の投薬から6時間後のIP-1誘導を示す。80ヌクレオチドのポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるもの(enz)であった。
図3A】PBS対照と比較して異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440ヌクレオチド)を有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNPの単回投薬後のラット肝臓におけるhOTCタンパク質発現を示す。80ヌクレオチドのポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるもの(enz)であった。
図3B】PBS対照と比較して異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440ヌクレオチド)を有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を保有しているLNPの単回投薬 対 複数回投薬後のラット肝臓におけるhOTCタンパク質発現を示す。80ヌクレオチドのポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるもの(enz)であった。
図4】PBS対照と比較した、異なる修飾: PsU、N1MePsU、または5MoUを有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)群を投与されたマウスにおける1回目の投薬から6時間後のMCP-1誘導を示す。
図5】PBS対照と比較した、異なる修飾: PsU、N1MePsU、またはSMoUを有するmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)群を投与されたマウスにおける投薬の24時間後のhOTC発現を示す。
図6A】EPOおよびLucペイロードと比較してmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与されたラットにおける抗PEG IgG抗体応答を示す。
図6B】EPOおよびLucペイロードと比較してmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与されたラットにおける抗PEG IgM抗体応答を示す。
図7】0日目、7日目および14日目でEPOおよびLucペイロードならびにPBSと比較してmRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与されたラットにおける6時間時のMCP-1誘導を示す。
図8】1回目および3回目の投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与されたラットにおけるOTCタンパク質発現を示す。
図9】1回目および3回目の投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与された後のラット肝臓における脂質濃度(クリアランス)を示す。
図10A】1回目および3回目の投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与された後のラットにおけるALTレベルを示す。
図10B】1回目および3回目の投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入している異なるLNP (LNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)、LNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)、またはLNP3)群を投与された後のラットにおけるASTレベルを示す。
図11A図11A~11Cは、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後のサイトカイン応答を示す。図11Aは、投薬の6時間後のMCP-1誘導を示す。
図11B図11A~11Cは、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後のサイトカイン応答を示す。図11Bは、投薬の6時間後のIP-10誘導を示す。
図11C図11A~11Cは、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後のサイトカイン応答を示す。図11Cは、投薬の6時間後のMIP-1a誘導を示す。
図12】PBS対照と比較した、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)の投与後の抗PEG IgM抗体応答を示す。
図13】PBS対照と比較した、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後の抗PEG IgG抗体応答を示す。
図14】PBS対照と比較した、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後の抗OTC IgM抗体応答を示す。
図15】PBS対照と比較した、毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物の投与後の抗OTC IgM抗体応答を示す。
図16】毎週反復投薬後の、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物を投与されたラットにおけるOTCタンパク質発現を示す。
図17図17A~17Bは、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物を投与されたラットの(A) 肝臓および(B) 血漿中のヒトOTC mRNA (hOTC mRNA)を示す。
図18A】mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの肝臓における投薬の24時間後の平均ALTレベルを示す。
図18B】mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの肝臓における投薬の24時間後の平均ASTレベルを示す。
図18C】mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの肝臓における投薬の24時間後の個別(R1、R2またはR3)および平均ALTレベルを示す。
図18D】mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの肝臓における投薬の24時間後の個別(R1、R2またはR3)および平均AST1レベルを示す。
図19A図19A~19Dは、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの投薬の24時間後の(A) 平均GGTレベル、(B) 総ビリルビンレベル、(C) 個別(R1、R2またはR3)および平均GGTレベル、ならびに(D) 個別(R1、R2またはR3)および平均総ビリルビンレベルを示す。
図19B図19Aの説明を参照のこと。
図19C図19Aの説明を参照のこと。
図19D図19Aの説明を参照のこと。
図20A図20A~20Cは、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの投薬の24時間後の(A) 好中球レベル、(B) 単球レベル、および(C) 血小板レベルを示す。
図20B図20Aの説明を参照のこと。
図20C図20Aの説明を参照のこと。
図21A図21A~21Cは、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1、LNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 18-B6)組成物を投与されたラットの投薬の6時間後の(A) MCP-1レベル、(B) MIP-1aレベル、および(C) IP-10レベルを示す。
図21B図21Aの説明を参照のこと。
図21C図21Aの説明を参照のこと。
図22】mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1またはLNP2 (イオン化可能な脂質: 13-B43)組成物を投与されたラットの投薬の24時間後のOTC発現を示す。
図23A図23A~23Cは、mRNA構築物(Cap1 - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - OTC mRNA - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1を0.25 mg/kg、1 mg/kg、および3 mg/kgで投与された非ヒト霊長類の肝臓における(A) ヒトOTC (hOTC)、(B) MCP-1、および(C) IL-6タンパク質発現レベルを示す。hOTCタンパク質発現を内因性の%として示し、MCP-1およびIL-6タンパク質発現を0 mg/kg対照と比較して示している。
図23B図23Aの説明を参照のこと。
図23C図23Aの説明を参照のこと。
図24図24A~24Bは、mRNA構築物(Cap - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - hEPO mRNA (SEQ ID NO: 4) - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1を投与されたマウスにおける(A) hEPO発現および(B) MCP-1誘導を示す。
図25図25A~25Bは、mRNA構築物(Cap - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - hMMP-8 mRNA (SEQ ID NO: 5) - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1を投与されたマウスにおける(A) hMMP-8および(B) IL-6誘導を示す。
図26】mRNA構築物(Cap - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - 2-M9 mRNA (SEQ ID NO: 6) - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)および(Cap - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - 2-M10 mRNA (SEQ ID NO: 7) - 3' UTR (SEQ ID NO: 2) - ポリA)を封入しているLNP1を投与されたマウスにおける抗オボアルブミン力価を示す。
図27図27A~27Bは、mRNA構築物(Cap - 5' UTR (SEQ ID NO: 1) - 2-M6-HA (SEQ ID NO: 8) - 3' UTR (SEQ ID NO: X) - ポリA)を封入しているLNP1を投与されたマウスにおける(A) 抗ヘマグルチニン力価および(B) ヘマグルチニン阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本開示は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を含む改善された構築物、組成物、および細胞内でポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を発現させるための方法、ならびにそのような構築物、ポリヌクレオチドおよび組成物の使用を目的とする。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、記述される方法および組成物に関連する技術分野の当業者によって通常理解されるものと、同じ意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において頻繁に使用されるある特定の用語の理解を支援するためのものである。
【0024】
本明細書、および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が明確に他を示していない限り、複数形の指示対象を有する局面を包含する。
【0025】
本明細書において使用される場合、「核酸」という用語は、広義で、例えばホスホジエステル結合を介して、ポリヌクレオチド鎖に組み込まれているか、またはポリヌクレオチド鎖に組み込まれることが可能である、任意の化合物および/または物質をいう。いくつかの局面において、「核酸」は個々の核酸残基(例えばヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)をいう。いくつかの局面において、「核酸」は、個々の核酸残基を含むポリヌクレオチド鎖をいう。いくつかの局面において、「核酸」はRNA、例えばmRNAを包含し、かつ一本鎖および/もしくは二本鎖のDNA、ならびに/または一本鎖および/もしくは二本鎖のcDNAをも包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、7~20,000個のヌクレオチド単量体単位(すなわち、7個のヌクレオチド単量体単位から20,000個のヌクレオチド単量体単位までが包含される)を含む、重合体をいう。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体を含み、かつDNAとRNAとの組み合わせを含む。例えば、DNAは以下の形でありうる: cDNA、インビトロで重合させたDNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、発現ベクター、発現カセット、キメラ配列、組み換えDNA、染色体DNA、またはそれらの任意の誘導体。さらなる例において、RNAは以下の形でありうる: メッセンジャーRNA (mRNA)、インビトロで重合させたRNA、組み換えRNA、トランスファーRNA (tRNA)、核内低分子RNA (snRNA)、リボソームRNA (rRNA)、キメラ配列、組み換えRNA、またはそれらの任意の誘導体。加えて、DNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖でありうる。
【0027】
本明細書において使用されるポリヌクレオチドのさらなる例は、一本鎖mRNAを含むが、これに限定されず、該一本鎖mRNAは、修飾されていてよく、または未修飾であってもよい。修飾mRNAは、少なくとも2つの修飾、および1つの翻訳可能な領域を有するものを含む。修飾は、核酸分子の骨格および/またはヌクレオシドに位置しうる。修飾は、ヌクレオシドおよび骨格結合の両方に位置しうる。
【0028】
本明細書において使用される場合、「メッセンジャーRNA」または「mRNA」という用語は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドをいう。mRNAは、本明細書において使用される場合、修飾RNAおよび未修飾RNAの両方を包含する。mRNAは、1つまたは複数のコーディング領域、および1つまたは複数のノンコーディング領域を含みうる。mRNAを、天然の供給源から精製すること、組み換え発現系を用いて産生し、そして任意で精製すること、インビトロで転写させること、化学合成することなどが、可能である。例えば化学合成された分子の場合など、適切である場合には、mRNAはヌクレオシド類似体を含むことができ、これは例えば、化学修飾された塩基または糖、骨格修飾などを有する類似体などである。別途指定されない限り、mRNA配列は、5'から3'に向かう方向で表示される。いくつかの局面において、mRNAは、以下であるか、または以下を含む: 天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン); ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5 プロピニル-シチジン、C-5 プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン); 化学修飾された塩基; 生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化された塩基); インターカレートされている塩基; 修飾された糖(例えば、2'-フルオロリボース、リボース、2'-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース); ならびに/または修飾されたリン酸基(例えばホスホロチオアートおよび5'-N-ホスホロアミダイト結合)。
【0029】
本明細書において使用される場合、核酸配列の「発現」は、ポリヌクレオチド、例えばmRNAの、ポリペプチドへの翻訳、複数のポリペプチドの、インタクトなタンパク質(例えば酵素)への組み立て、および/または、ポリペプチドもしくは完全に組み立てられたタンパク質(例えば酵素)の、翻訳後修飾をいう。本開示においては、「発現」および「産生」という用語、ならびに文法上の同義語は、互換的に使用される。
【0030】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、広義で、ポリペプチド鎖へと組み込まれうる、任意の化合物および/または物質をいう。いくつかの局面において、アミノ酸は、H2N-C(H)(R)-COOHという一般構造を有する。ペプチド中のカルボキシ末端および/またはアミノ末端のアミノ酸を含め、アミノ酸は、メチル化によって、アミド化によって、アセチル化によって、保護基によって、および/または、ペプチドの活性に不利な影響を及ぼすことなく、ペプチドの循環半減期を変化させることが可能な他の化学基での置換によって、修飾されうる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与しうる。アミノ酸は、1つまたは複数の(one or)翻訳後修飾を含むことができ、これは例えば、1つまたは複数の化学的実体(例えばメチル基、アセタート基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との結合などである。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」という用語と互換的に使用され、かつ遊離のアミノ酸、および/またはペプチドのアミノ酸残基をいいうる。該用語が遊離のアミノ酸をいうのか、またはペプチドの残基をいうのかは、該用語が使用されている文脈から明らかであろう。
【0031】
「ポリペプチド」は、天然で産生されたものであっても、合成により産生されたものであってもよい、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の重合体である。
【0032】
本明細書において使用される場合、「ペプチド」という用語は、2~100個のアミノ酸単量体を有するポリペプチドをいう。
【0033】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質は、炭水化物基などの、非ペプチド性の構成要素を含むこともできる。炭水化物の、および他の非ペプチド性の置換基は、タンパク質へと、該タンパク質を産生する細胞によって付加されることができ、かつ該置換基は、細胞のタイプによって変化しうる。本明細書において、いくつかのタンパク質は、それらのアミノ酸骨格構造の観点から定義される。
【0034】
「関心対象のタンパク質」は、発現が望まれるタンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は野生型タンパク質である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は野生型タンパク質に対して修飾されている。
【0035】
本明細書において使用される場合、「機能的」な生物学的分子、例えば関心対象のタンパク質は、該分子を特徴付ける特性および/または活性を発揮する形態にある、生物学的分子である。
【0036】
本明細書において使用される場合、「送達」という用語は、局所への送達および全身への送達の両方を包含する。例えば、ポリヌクレオチド、例えばmRNAの送達は、ポリヌクレオチドが標的組織へと送達され、そしてコードされるタンパク質が、標的組織内で発現し、そして保持される、という状況(「局所分布」または「局所送達」ともいわれる)を包含する。他の例示的な状況は、ポリヌクレオチドが標的組織へと送達され、そしてコードされるタンパク質が発現し、そして患者の循環系(例えば血清)へと分泌され、そして全身に分布しそして他の組織によって取り込まれる、という状況(「全身分布」または「全身送達」ともいわれる)を含む。他の例示的な状況において、ポリヌクレオチドは全身へと送達され、そしてインビボで、多様な細胞および組織において取り込まれる。いくつかの例示的な状況において、送達は、静脈内送達、筋肉内送達、または皮下送達である。
【0037】
本明細書において使用される場合、「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなくて、人工的な環境、例えば、試験管内または反応容器内、細胞培養物内などの人工的な環境において行われる事象をいう。
【0038】
本明細書において使用される場合、「インビボ」という用語は、多細胞生物内、例えばヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物内で行われる事象をいう。細胞に基づく系の環境において、該用語は、生きている細胞内で行われる事象をいうために(例えば、インビトロ系の対語として)使用することができる。
【0039】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、理にかなった医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスクの比に見合っていて、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題または合併症も引き起こさずに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している、化合物、材料、組成物、および/または剤形をいうために利用される。
【0040】
本明細書において使用される場合、「処置する」という用語は、処置されている疾患または異常のいずれか1つの、病理学的特徴または症状のいずれか1つまたは複数のうちの一部または全てを、消失させるか、緩和するか、それらの進行を阻害するか、またはそれらの進行を逆転させる、送達物質および核酸の投与をいう。いくつかの局面において、疾患は、関心対象のタンパク質の欠乏によって引き起こされる疾患であることができる。いくつかの局面において、疾患は感染性疾患またはがんであることができる。「治療的に有効」という語句は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドもしくは薬学的組成物の量、または併用療法の場合の有効成分の総量を特定することが、意図される。この量または総量は、関連する疾患または異常の処置についての目標を達成する。
【0041】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、または任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、もしくは霊長類)をいう。ヒトは、出生前および出生後のヒトを含む。多くの局面において、対象はヒトである。対象は患者であることができ、ここで患者は、疾患の診断または処置のために、医療提供者に引き合わせられるヒトをいう。本明細書において「対象」という用語は、「個体」または「患者」という用語と、互換的に使用されうる。対象は、疾患もしくは異常に苦しめられている対象、または疾患もしくは異常に感受性の対象であることができるが、該疾患もしくは異常の症状を示している可能性も、示していない可能性もある。
【0042】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルであり、かつ水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることによって特徴付けられる、有機化合物の一群をいう。脂質は通常、少なくとも3種類のクラスに分類される: (1) 脂肪および油、ならびにろうを含む「単純脂質」; (2) リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」; (3) 例えばステロイドなどの「誘導脂質」。
【0043】
「両親媒性脂質」という用語は、脂質物質のうちの疎水性部分が疎水性の相を指向し、一方で親水性の部分が水性の相を指向する、任意の適切な物質をいうことがある。両親媒性脂質は通常、脂質LNPの主要な構成要素である。親水性の特徴は、極性基または荷電基の存在に由来しており、これは例えば、炭水化物基、ホスファト基、カルボキシル基、スルファト基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、および他の類似の基である。疎水性は、無極性基を包含することによって付与されることができ、該無極性基は以下を含むが、これらに限定されない: 長鎖飽和脂肪族炭化水素基および長鎖不飽和脂肪族炭化水素基、ならびにそのような基であって、1つまたは複数の、芳香族基、脂環基、または複素環基によって置換されている、基。両親媒性化合物の例は、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質を含むが、これらに限定されない。リン脂質の代表的な例は以下を含むが、これらに限定されない: ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリン。リンを欠く他の化合物、例えば、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸などもまた、両親媒性脂質として称される一群の範囲内にある。加えて、上述の両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロイドを包含する、他の脂質と混合されうる。
【0044】
「アニオン性脂質」という用語は、生理的pHにおいて負に荷電している任意の脂質をいう。アニオン性脂質は以下を含むが、これらに限定されない: ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合している、他のアニオン性の修飾基。
【0045】
「カチオン性脂質」との用語は、選択的なpHにおいて、例えば生理的pHなどにおいて、正味の正電荷を保持するいくつかの脂質種の、任意のものをいう。そのような脂質は以下を含むが、これらに限定されない: N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」); N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」); N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」); N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」); 3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)。加えて、本開示において使用されうる、いくつかのカチオン性脂質調製物が市販されている。これらは、例えば以下を含む: LIPOFECTIN(登録商標) (DOTMAおよび1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含むカチオン性リポソームであり、GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y., USAから市販されている); LIPOFECTAMINE (登録商標) (N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(「DOSPA」)、および(「DOPE」)を含むカチオン性リポソームであり、GIBCO/BRLから市販されている); ならびにTRANSFECTAM (登録商標) (エタノール中にジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)を含むカチオン性脂質であり、Promega Corp., Madison, Wis., USAから市販されている)。以下の脂質はカチオン性であり、かつ生理的pH未満で正の電荷を有する: DODAP、DODMA、DMDMAなど。
【0046】
「脂質ナノ粒子」という用語は、化合物(例えばポリヌクレオチド構築物)を送達するために使用されうる、任意の脂質組成物をいい、該脂質組成物は以下を含むが、これらに限定されない: 水性の一定量が、両親媒性の脂質二重層によって封入されている、リポソーム; もしくは、脂質が、巨大分子である成分を含む、例えばプラスミドなどを含む、内側部分を、縮小されている水性の内側部分でコートしている、リポソーム; または封入されている成分が、比較的無秩序な脂質混合物中に含まれている、脂質凝集体もしくはミセル。
【0047】
本明細書において使用される場合、「脂質に封入されている」または「脂質封入」とは、完全に封入されているか、部分的に封入されているか、またはそれらの両方である化合物(例えばポリヌクレオチド構築物)をもたらす、脂質製剤をいうことができる。本明細書において「完全な封入」または「完全に封入されている」とは、脂質製剤中の化合物(例えばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも90%が、脂質(例えばLNP)に封入されていることを意味すると理解される。いくつかの局面において、脂質製剤中の化合物(例えばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより多くが、脂質(例えばLNP)に封入されている。
【0048】
本明細書において使用される場合、「5'-末端非翻訳領域」、「5'-UTR」または「5'UTR」という用語は、タンパク質に翻訳されず、コード配列の5'末端に位置する核酸配列(nucleic sequence)をいう。
【0049】
本明細書において使用される場合、「3'-末端非翻訳領域」、「3'-UTR」または「3'UTR」という用語は、コード配列の3'末端に位置する核酸配列をいい、典型的には、関心対象のタンパク質をコードするmRNA配列(オープンリーディングフレーム(ORF)またはコード配列(CDS))とポリ(A)配列との間に位置する核酸配列をいう。
【0050】
本明細書において使用される場合、「5'末端キャップ」または「5'キャップ」という用語は、mRNAの5'末端に組み込まれる化学修飾をいう。5'末端キャップは、核酸分子をエキソヌクレアーゼ分解から保護することができ、細胞内の送達および/または局在化を補助することができる。
【0051】
ポリヌクレオチド構築物
本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物は、細胞(インビトロまたはインビボ)における関心対象のタンパク質のレベルを、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物の非存在下で得られるおよび/または観察されるレベルよりも高いレベルへと増大させるための治療剤として使用することができる。
【0052】
ある特定の局面において、ポリヌクレオチド構築物は、機能的タンパク質またはペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む核酸配列、例えばmRNA配列を含む。ORFは、全長タンパク質またはその機能的断片をコードすることができる。
【0053】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、コドン最適化されたORFを含むmRNA配列を含む。mRNAは、細胞内で発現されうる関心対象の任意のタンパク質またはペプチドをコードすることができる。mRNAによってコードされる例示的なタンパク質またはペプチドは、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、治療用タンパク質、ホルモン、膜タンパク質、膜結合タンパク質、抗原、および抗体を含むが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの局面において、関心対象のタンパク質をコードするmRNAの長さは、約30ヌクレオチド長より大きい。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質をコードするmRNAは、30、35、40、45、50、60、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1800、2000、3000、4000、5000ヌクレオチドより大きい、または5000ヌクレオチドより大きい。いくつかの局面において、mRNAの長さは、30~5000、30~4000、30~3000、または30~2000ヌクレオチド長である。いくつかの局面において、mRNAは30~5000、35~5000、40~5000、45~5000、50~5000、60~5000、75~5000、100~5000、125~5000、150~5000、175~5000、200~5000、250~5000、300~5000、350~5000、400~5000、450~5000、500~5000、600~5000、700~5000、800~5000、900~5000、1000~5000、1100~5000、1200~5000、1300~5000、1400~5000、1500~5000、1800~5000、2000~5000、3000~5000、4000~5000、5000~6000ヌクレオチドであり、または5000ヌクレオチドより大きい。
【0055】
いくつかの局面において、mRNAによってコードされる関心対象のタンパク質は酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、エリスロポエチン(EPO)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)から選択される酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、エリスロポエチン(EPO)またはアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)から選択される酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、エリスロポエチン(EPO)、例えばヒトEPO (hEPO)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)、例えばヒトMMP-8 (hMMP-8)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)ではない。
【0056】
いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、SARS-CoV2タンパク質(例えば、SARS-CoV2スパイクタンパク質)およびインフルエンザタンパク質(例えば、ヘマグルチニン(HA))から選択される抗原である。
【0057】
関心対象のタンパク質またはペプチドは、細胞内で発現されうる任意のタンパク質であることができる。いくつかの局面において、本開示の構築物、ポリヌクレオチド、または組成物は、関心対象のタンパク質、例えば、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、治療用タンパク質、ホルモン、膜タンパク質、膜結合タンパク質、抗原、または抗体の発現をもたらす細胞に送達される。
【0058】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は5' UTRを含む。いくつかの局面において、5' UTRは約10~約100、約20~約80、約30~約60、または約40~約50ヌクレオチド長である。いくつかの局面において、5' UTRは約40~約50ヌクレオチド長である。
【0059】
いくつかの局面において、5' UTRは、SEQ ID NO: 1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの局面において、5' UTRはSEQ ID NO: 1の核酸配列を有する。
【0060】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は3' UTRを含む。
【0061】
いくつかの局面において、3' UTRは約10~約200、約40~約180、約60~約160、約80~約140、約100~約120ヌクレオチド長である。いくつかの局面において、3' UTRは約100~約120ヌクレオチド長である。
【0062】
いくつかの局面において、3' UTRは、SEQ ID NO: 2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの局面において、3' UTRはSEQ ID NO: 2の核酸配列を有する。
【0063】
いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、5'から3'方向に: (i) 例えば、SEQ ID NO: 1の配列を含む、5' UTR; (ii) 関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、核酸配列、例えばmRNA; およびSEQ ID NO: 2の配列を含む3' UTRを含む。
【0064】
ポリヌクレオチド構築物は、ポリAテールをさらに含むことができる。いくつかの局面において、ポリAテールは、転写されたmRNAの3'末端のアデニンヌクレオチド配列の単調な部分を含む3'-ポリ(A)テールである。いくつかの局面において、ポリAテールは最大約500個のアデニンヌクレオチドを含むことができる。いくつかの局面において、ポリAテールの長さはmRNAの安定性を増強する。いくつかの局面において、ポリAテールは、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、115、120、125、130、135、140、145、または150個の核酸よりも長い。いくつかの局面において、ポリAテールは、80~1000、85~1000、90~1000、95~1000、100~1000、105~1000、110~1000、115~1000、120~1000、125~1000、130~1000、135~1000、140~1000、145~1000、150~1000、155~1000、160~1000、80~800、85~800、90~800、95~800、100~800、105~800、110~800、115~800、120~800、125~800、130~800、135~800、140~800、145~800、150~800、155~800、または160~800の核酸長である。いくつかの局面において、ポリAテールは100~500の核酸長である。
【0065】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、5'末端キャップをさらに含む。いくつかの局面において、5'末端キャップは、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2'フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、Cap2およびCap4からなる群より選択される。いくつかの局面において、5'末端キャップはCap1である。
【0066】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ORFの5'末端に開始コドンを含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ORFの3'末端に停止コドンを含む。
【0067】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、5'末端キャップ、5' UTR、関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、3' UTR、およびポリ(A)を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、Cap1、SEQ ID NO: 1の核酸配列を有する5' UTR、関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、SEQ ID NO: 1の核酸配列を有する3' UTR、およびポリ(A)を含む。
【0068】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は5'から3'方向に、5'末端キャップ、5' UTR、関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、3' UTR、およびポリ(A)を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は5'から3'方向に、Cap1、SEQ ID NO: 1の核酸配列を有する5' UTR、関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、SEQ ID NO: 1の核酸配列を有する3' UTR、およびポリ(A)を含む。
【0069】
ある特定の局面において、ポリヌクレオチド構築物は修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、機能的な関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列を含み、該mRNA配列は、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの局面において、修飾ヌクレオチドはウリジンである。いくつかの局面において、ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100%は、化学修飾されている。
【0070】
いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、5-メトキシウリジン(5moU)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。ある特定の局面において、ORFは、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の修飾ウリジン、例えば、シュードウリジン(Ψ)修飾またはN1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)修飾を含む。
【0071】
いくつかの局面において、発現カセットはプロモーターをさらに含む。いくつかの局面において、プロモーターはT7プロモーターである。いくつかの局面において、T7プロモーターは、以下の5'から3'方向の配列: TAATACGACTCACTATA (SEQ ID NO: 3)を含む。いくつかの局面において、発現カセットの5' UTRは、プロモーター、例えばT7プロモーターのすぐ下流にアデニン(A)を含む。いくつかの局面は、発現カセットを含むプラスミドを目的とする。いくつかの局面において、プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子をさらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、インビトロ転写を用いて調製される。
【0072】
ポリヌクレオチド構成要素の例示的な核酸配列は、本明細書において表1に示される。
【0073】
(表1)ポリヌクレオチド構築物に関連する配列
【0074】
いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、送達物質、例えば脂質ナノ粒子(LNP)とともに製剤化される。
【0075】
送達物質
本明細書において開示される送達物質は、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物、カセット、およびmRNAを、インビトロおよびインビボで、細胞内へと効果的に輸送することができる。
【0076】
ある特定の局面において、送達物質は、脂質ナノ粒子、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス性送達物質、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0077】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物、発現カセット、および/またはmRNAの、送達物質による輸送は、細胞のサイトゾルへの、ポリヌクレオチド構築物の送達を介して行うことができる。遺伝子の発現、およびmRNAの翻訳が、細胞のサイトゾルにおいて行われる場合、標的遺伝子を効果的に調節するためには、または輸送されたmRNAを効果的に翻訳するためには、ポリヌクレオチドはサイトゾルに入らなければならない。ポリヌクレオチドがサイトゾルに入らない場合、それらは分解されるか、または細胞外の領域にとどまり続けるかのいずれかである可能性が高い。
【0078】
生物学的に活性なポリヌクレオチドを標的細胞に細胞内送達するための方法の例は、例えばヒト、げっ歯類、ネズミ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、およびサルである哺乳動物を含めて、該細胞が哺乳動物中にある場合のものを含む。いくつかの局面において、細胞内送達のための標的細胞は、肝細胞である。
【0079】
いくつかの局面において、送達物質は脂質ナノ粒子(LNP)である。本開示のポリヌクレオチド構築物は、LNP中に製剤化することができる。ある特定の局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に封入されている。本明細書において使用される場合、「封入されている」とは、分子、例えばポリヌクレオチドを、LNPの内部空間に封じ込めることをいう。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物(例えば、mRNAを含む構築物)を送達物質の中に、例えばLNPなどの中に封入することによって、核酸(例えば、本開示のポリヌクレオチド構築物)を、核酸および/もしくは系を分解する酵素もしくは化学物質を含んでいる可能性のある、または核酸の迅速な排出を引き起こす受容体を含んでいる可能性のある環境から保護することができる。脂質ナノ粒子は、典型的には、イオン化可能な脂質(例えばカチオン性脂質)、非カチオン性脂質(例えば、コレステロールおよびリン脂質)、ならびにPEG脂質(例えばコンジュゲートPEG脂質)を含み、これらは、関心対象のペイロードとともに、例えば本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物とともに、製剤化することができる。本開示のポリヌクレオチド構築物、例えばmRNAは、脂質粒子中に封入することができ、それにより、該ポリヌクレオチド構築物は、酵素による分解から保護される。いくつかの局面において、分子(例えばポリヌクレオチド構築物)は、LNPに完全に封入されている。いくつかの局面において、脂質製剤中の分子(例えばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上は、LNPに封入されている。
【0080】
ある特定の局面は、本開示のポリヌクレオチド構築物、および送達物質を含む組成物を目的とする。送達物質はLNP、例えば、LNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、もしくはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、またはLNP3(PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)の群のうちのLNP組成物を含むことができる。
【0081】
いくつかの局面において、本開示のLNPは、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、およびPEG750-C-DLAからなる群より選択されるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG2000-C-DMAであるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG2000-SであるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG750-C-DLAであるPEG脂質を含む。
【0082】
いくつかの局面において、本開示のLNPは、13-B43かまたは18-B6である、イオン化可能な脂質を含む。
【0083】
いくつかの局面において、イオン化可能な脂質は、式13-B43の化合物、またはその塩である。そのような脂質は、例えば、WO 2013/126803 (PCT/US2013/027469)に記述されている。
【0084】
いくつかの局面において、イオン化可能な脂質は、式18-B6の化合物、またはその塩である。
【0085】
いくつかの局面において、本開示のLNPは非カチオン性脂質を含む。いくつかの局面において、非カチオン性脂質は、コレステロールか、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)か、またはそれらの組み合わせである。いくつかの局面において、LNPはコレステロールを含む。いくつかの局面において、LNPはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む。いくつかの局面において、LNPは、コレステロールおよびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む。
【0086】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む: (a) PEG脂質(例えば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA); (b) イオン化可能な脂質(13-B43または18-B6); (c) コレステロール; および(d) ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)。
【0087】
ある特定の局面において、本開示のLNPは、LNPの0.1~4モル%; 0.5~4モル%、2~3.5モル%、0.1~2モル%;0.5~2モル%、または1~2モル%の量の、PEG脂質を含む。ある特定の局面において、LNPは、LNPの50~85モル%; 50~65モル%、または50~60モル%の量の、イオン化可能な脂質を含む。ある特定の局面において、LNPは、45~50モル%の量か、または最大で約50モル%の量の、非カチオン性脂質を含む。ある特定の局面において、LNPは、LNPの30~40モル%または30~35モル%の量の、コレステロールを含む。ある特定の局面において、LNPは、LNPの3~15モル%または6~12モル%の量の、DSPCを含む。
【0088】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む: (a) 1~4モル%のPEG脂質(例えば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA); (b) 50~60モル%のイオン化可能な脂質(13-B43または18-B6); および(c) 45~50モル%の非カチオン性脂質。
【0089】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む: (a) 1~4モル%のPEG脂質(例えば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA); (b) 50~60モル%のイオン化可能な脂質(13-B43または18-B6); (c) 30~35モル%のコレステロール; および(d) 6~12モル%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)。
【0090】
いくつかの局面において、LNPのサイズは直径が約50~200 nmである。いくつかの局面において、LNPの粒子サイズは、約50~150 nm、約50~100 nm、約50~120 nm、または約50~90 nmの範囲にわたる。
【0091】
いくつかの局面において、本明細書において開示されるLNPは、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、治療用タンパク質、ホルモン、膜タンパク質、膜結合タンパク質、抗原、および抗体の1つまたは複数をコードするmRNA構築物とともに、製剤化される。
【0092】
いくつかの局面において、本明細書において開示されるLNPは、酵素をコードする、本明細書において開示されるmRNA構築物とともに製剤化される。いくつかの局面において、mRNA構築物は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、エリスロポエチン(EPO)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)から選択される酵素をコードする。いくつかの局面において、mRNA構築物は、エリスロポエチン(EPO)またはアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)から選択される酵素をコードする。いくつかの局面において、mRNA構築物は、エリスロポエチン(EPO)、例えばヒトEPO (hEPO)をコードする。いくつかの局面において、mRNA構築物は、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)をコードする。いくつかの局面において、mRNA構築物は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)、例えばヒトMMP-8 (hMMP-8)をコードする。いくつかの態様において、mRNA構築物は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードしない。
【0093】
LNPの調製
当業者は、以下の記述が例示のみを目的としていることを理解するであろう。本開示のプロセスは、脂質ナノ粒子の、広範囲にわたるタイプおよびサイズに適用可能である。さらなる粒子は、ミセル、脂質-核酸粒子、ビロソームなどを含む。当業者は、本開示のプロセスおよび装置にとって適切である他の脂質LNPを理解するであろう。
【0094】
1つの局面において、本開示のポリ核酸構築物を封入する本方法は、脂質溶液を提供し、これは例えば、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(Good Manufacturing Practice) (GMP)の下で合成された臨床グレードの脂質が、その後、有機性溶液(例えばエタノール)中に溶解されるという、脂質溶液などである。同様に、治療用の産物、例えば核酸または他の作用物質などの治療用の活性物質もまた、GMPの下で調製される。その後、治療剤溶液(例えばmRNA)含有緩衝液(例えば、クエン酸塩またはエタノール)は、低級アルカノール中に溶解されている脂質溶液と混合されて、リポソーム製剤を形成する。本開示の好ましい局面において、リポソームの形成と実質的に同時に、治療剤はリポソーム中に「受動的に内包化される」。しかしながら当業者は、LNPの形成後の、リポソームへの能動的な内包化または装填に対し、本開示のプロセスおよび装置が等しく適用可能であることを認識するであろう。
【0095】
本開示のプロセスおよび装置にしたがって、混合を行う環境へと、例えば混合チャンバーなどへと、脂質溶液および緩衝溶液を連続的に導入する機構は、緩衝溶液による脂質溶液の連続的な希釈を引き起こし、それにより、混合時にリポソームが実質的に瞬時に産生される。本明細書において使用される場合、「緩衝溶液による脂質溶液の連続的な希釈」との表現(および変化形)は、概して、LNP産生を引き起こすのに十分な力で、水和プロセスにおいて十分に迅速に、脂質溶液が希釈されることを意味する。水性溶液を、脂質の有機性溶液と混合することによって、緩衝溶液(水性溶液)の存在下で、脂質の有機性溶液が連続的に段階希釈されて、リポソームが産生される。
【0096】
複数の溶液が調製された後で、例えば、脂質溶液、および治療剤(例えばポリヌクレオチド構築物)の水性溶液が調製された後で、それらの溶液は、例えばペリスタルティックポンプミキサーを用いて、ともに混合される。1つの局面において、複数の溶液は、実質的に等しい流速で、混合を行う環境へとポンプで注入される。ある特定の局面において、混合を行う環境は、「T」字型のコネクタ、または混合チャンバーを含む。この例においては、流体のライン、およびしたがって流体のフローは、互いに対しおよそ180度で対向するフローとして、「T」字型のコネクタ内の狭い開口部において接触することが好ましい。導入のための他の相対角度も使用することができ、これは例えば、27度~90度、および90度~180度などである。混合を行う環境において、溶液フローを接触および混合させると、脂質LNPが実質的に瞬時に形成される。溶解している脂質を含む有機性溶液と、水性溶液(例えば緩衝液)とが、同時にかつ連続的に混合される際に、脂質LNPが形成される。有利なことに、かつ驚くべきことに、水性溶液を脂質の有機性溶液と混合することによって、脂質の有機性溶液が連続的に段階希釈されて、リポソームが実質的に瞬時に産生される。ポンプ機構は、高アルカノール環境において脂質LNPを作り出す、混合を行う環境に向かう、脂質溶液および水性溶液の等しい流速または異なった流速をもたらすように、構成することができる。
【0097】
有利なことに、本明細書において提供される、脂質溶液および水性溶液を混合するためのプロセスおよび装置は、リポソームの形成と実質的に同時に、少なくとも90~95%の封入効率で、形成されるリポソーム中への治療剤の封入を行う。本明細書において論じられる、さらなる処理段階は、望ましい場合には、試料を濃縮または希釈することによって特定のmRNA濃度へと導くために、使用することができる。
【0098】
いくつかの局面において、LNPは、約150 nm未満(例えば約50~90 nm)の平均直径を有するように形成され、これは、高エネルギーのプロセスによる、例えば膜からの押し出し、超音波処理、またはマイクロ流体化などによる、さらなるサイズ削減を必要としない。
【0099】
ある特定の局面において、有機溶媒(例えばエタノール)中に溶解している脂質が、水性溶液(例えば緩衝液)との混合によって段階的な様式で希釈される際に、LNPは形成される。この制御された段階希釈は、開口部において、例えばTコネクタなどにおいて、水性の流れと脂質の流れとをともに混合することによって、達成される。結果的に得られる脂質、溶媒、および溶質の濃度は、LNP形成プロセス全体を通して一定に維持されることができる。
【0100】
1つの局面において、本開示のプロセスを使用して、勾配無しの2ステージ型の段階希釈によって、LNPは調製される。例えば、1回目の段階希釈において、高アルカノール(例えばエタノール)環境(例えば約30%~約50% v/v エタノール)においてLNPは形成される。これらのLNPはその後、アルカノール(例えばエタノール)の濃度を約25% v/v以下へと、例えば約17% v/v~約25% v/vなどへと、段階的な様式で低下させることによって、安定化することができる。好ましい局面において、水性溶液中または脂質溶液中に存在する治療剤を用いて、治療剤は、リポソーム形成と同時に封入される。
【0101】
ある特定の局面において、脂質のストックは100%エタノール中に調製することができ、そしてその後、Tコネクタを介して、mRNA LNP含有酢酸塩緩衝液と混合することができる。脂質のストックおよびmRNAのストックは、PBSを含む回収容器につながるTコネクタにおいて、400 mL/分の流速で混合することができる。いくつかの局面において、脂質は、約40% v/v~約90% v/vの、より好ましくは約65% v/v~約90% v/vの、および最も好ましくは約80% v/v~約90% v/vのアルカノール環境において、最初に溶解される(A)。次に、水性溶液と混合することによって、脂質溶液は段階希釈され、約37.5~50%のアルカノール(例えばエタノール)濃度において、LNPの形成が引き起こされる(B)。水性溶液を脂質の有機性溶液と混合することによって、脂質の有機性溶液は連続的に段階希釈されて、リポソームが産生される。さらに、LNPを約25%以下のアルカノール濃度へと、好ましくは約15~25%のアルカノール濃度へと、追加的に段階希釈することによって、脂質LNPをさらに安定化することができる(C)。
【0102】
いくつかの局面において、両方の段階希釈(A→BおよびB→C)に関して、結果的に得られるエタノール、脂質、および溶質の濃度は、収集容器内で一定のレベルに維持される。最初の混合段階後に、これらの高いエタノール濃度にあると、脂質単量体の、二重層への再構成は、より低いエタノール濃度での希釈により形成されるLNPと比較して、より秩序立った様式で進行する。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、これらの高いエタノール濃度は、核酸の、二重層中のカチオン性脂質との会合を促進すると考えられる。ある特定の局面において、核酸の封入は、22%を上回るアルカノール(例えばエタノール)濃度の範囲内において行われる。
【0103】
ある特定の局面において、脂質LNPが形成された後で、それら脂質LNPは、別の容器に、例えばステンレススチール製の容器に、回収される。1つの局面において、2回目の段階希釈は、例えば約100~200 mL/分の速度で実施することができる。
【0104】
1つの局面において、混合段階の後で、脂質の濃度は約1~10 mg/mL (例えば約7 mg/mL)であり、かつ治療剤(例えばmRNA)の濃度は約0.1~4 mg/mLである。
【0105】
混合段階の後で、脂質LNP懸濁液が任意で希釈される場合に、治療剤(例えば核酸)の封入の度合いは増大しうる。例えば、希釈段階の前に、治療剤の内包化が約30~40%である場合、これは、希釈段階に続くインキュベーション後に約70~80%へと増加しうる。同様に、例えば緩衝液(例えばPBS)などといった、水性溶液と混合することによって、リポソーム製剤は、約10%~約40%アルカノールへと、好ましくは約20%アルカノールへと、希釈される。そのようなさらなる希釈は、好ましくは緩衝液を用いて達成される。ある特定の局面において、リポソーム溶液のそのようなさらなる希釈は、連続的な段階希釈である。希釈された試料はその後、任意で室温でインキュベートされる。
【0106】
任意の希釈段階の後で、約70~80%またはそれ以上の治療剤(例えば核酸)が、脂質LNP内に内包化される。ある特定の局面において、陰イオン交換クロマトグラフィーが使用される。
【0107】
いくつかの例において、リポソーム溶液は、例えば限外ろ過(例えばタンジェンシャルフロー透析)を用いて、約2~6倍に、好ましくは約4倍に、任意で濃縮される。1つの局面において、試料は、限外ろ過システムのフィードリザーバーへと移され、そして緩衝液が除去される。緩衝液は、さまざまなプロセスを用いて、例えば限外ろ過などによって、除去されうる。
【0108】
いくつかの局面において、濃縮された製剤はその後、アルカノールを除去するために透析ろ過される。段階の完了時のアルカノール濃度は、約1%未満である。好ましくは、脂質の濃度および治療剤(例えば核酸)の濃度は変化しないままであり、かつ治療剤の内包化のレベルもまた一定のままである。
【0109】
アルカノールが除去された後で、水性溶液(例えば緩衝液)はその後、別の緩衝液に対する透析ろ過によって置換される。好ましくは、脂質濃度の治療剤(例えば核酸)濃度に対する比は変化しないままであり、かつ核酸の内包化のレベルはほぼ一定である。いくつかの例において、試料の収量は、濃縮された試料の約10%の量の緩衝液でカートリッジをすすぐことによって、改善されうる。ある特定の局面において、このすすぎ液はその後、濃縮された試料に添加される。
【0110】
ある特定の局面において、試料の無菌ろ過が、任意で実施されうる。ある特定の局面において、ろ過は、カプセルフィルター、および加熱ジャケットを有する加圧された分注容器を用いて、約40 psi未満の圧力で実施される。試料をわずかに加熱すると、ろ過のしやすさが改善されうる。
【0111】
無菌充填の段階は、従来のリポソーム製剤のためのプロセスを用いて実施されうる。いくつかの局面において、本開示のプロセスは、最終産物において、約50~60%の治療剤(例えば核酸)の投入をもたらす。いくつかの好ましい局面において、最終産物の、治療剤の脂質に対する比は、およそ0.04~0.07である。
【0112】
封入されているLNP調製物はその後、無菌条件下でろ過することができ、分注することができ、そして-80℃で保管することができる。
【0113】
共重合体
いくつかの局面において、本開示の組成物は共重合体をさらに含む。いくつかの局面において、本明細書において開示される共重合体は、「膜不安定化重合体(membrane destabilizing polymer)」または「膜破壊性重合体(membrane disruptive polymer)」である。膜不安定化重合体または膜破壊性重合体は、例えば細胞膜構造物における、例えばエンドソーム膜などにおける、例えば透過性の変化などといった変化を、例えば、作用物質が、例えばオリゴヌクレオチドもしくは共重合体、またはそれらの両方が、そのような膜構造物を通過することが可能になるように、直接的または間接的に誘発することができる。いくつかの局面において、膜破壊性重合体は、細胞性小胞の溶解を直接的または間接的に誘発することができ、またはあるいは、例えば、細胞膜の集合物の実質的な画分に関して観察されるように、細胞膜を直接的または間接的に破壊することができる。
【0114】
本明細書において開示される送達物質、共重合体、および組成物は、本開示のポリヌクレオチド構築物を標的細胞へと細胞内送達するための方法において有用であることができ、ここで標的細胞は、インビトロにある標的細胞、エクスビボにある標的細胞、およびインビボにある標的細胞を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物、例えばmRNAを含むポリヌクレオチド構築物を、標的細胞へと送達する方法は、細胞のサイトゾルへの送達を含む。
【0115】
組成物
本明細書において開示される送達物質は、インビトロおよびインビボの両方において、ポリヌクレオチド構築物を細胞内へと効果的に輸送することが可能である。いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、送達物質、例えばLNPとともに、製剤化される。いくつかの局面において、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0116】
本開示のある特定の局面は、細胞において関心対象のタンパク質の量を増加させるための組成物または方法を目的とする。いくつかの局面において、機能的な関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むコドン最適化されたmRNA配列を含む核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物は、LNPおよび/または共重合体とともに組成物へと製剤化される。本開示における製剤のための関心対象のタンパク質をコードするmRNAは、典型的には、その3'末端にポリ(A) (例えば、80個を超える、例えば、100~500個のアデニン残基のポリAテール)をさらに含み、これは、周知の遺伝子操作技法を用いて(例えば、PCRまたは酵素的ポリAテールを介して)構築物に付加することができる。いくつかの局面において、ポリ(A)は100~500ヌクレオチド長である。
【0117】
使用方法
本開示のある特定の局面は、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む組成物と細胞を接触させることによって、細胞中の関心対象のタンパク質の量を増加させることを目的とする。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、本明細書において開示されるLNPとともに製剤化される。さらなる局面において、ポリヌクレオチドは共重合体とともに製剤化することができる。
【0118】
いくつかの局面は、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物を細胞に投与する段階を含む、細胞における関心対象のタンパク質の発現を増加させるための方法を目的とする。細胞は任意の細胞であることができる。使用できる細胞の例としては、肝臓、心臓、肺、脳、腎臓、胃、乳房、筋肉、胆嚢、脾臓、骨髄、膵臓、膀胱、眼、大腸、小腸、鼻、卵巣、副甲状腺、下垂体、副腎、前立腺、唾液腺、皮膚、毛髪、および胸腺の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物の治療有効量を、その必要のある対象に投与する段階を含む、疾患または障害を処置するための方法。疾患または障害は、任意の疾患または障害であることができる。
【0120】
本開示の他の局面は、その必要のある対象における疾患または障害の処置のための医薬の製造のための、本開示のポリヌクレオチド構築物または本開示の組成物、または本開示のベクター、または本開示の宿主細胞の使用を目的とする。疾患または障害は、任意の疾患または障害であることができる。
【0121】
本明細書において開示される方法によって処置可能な対象における、欠損した遺伝子発現および/または活性に関連する疾患または状態。いくつかの局面において、本開示の構築物、ポリヌクレオチド、および/または組成物は、遺伝子治療で用いるのに好適であることができる。いくつかの局面において、構築物要素(例えば、キャップ、5' UTR、3' UTR、およびポリA)の組み合わせは、改善された安定性、発現、および/または効力を有するmRNAを提供する。いくつかの局面において、LNPによる本開示のmRNA構築物の投与は、改善された安定性、発現、および/または効力を提供する。
【0122】
ある特定の局面において、欠損した遺伝子発現に関連する疾患または状態は、機能的ポリペプチドの欠損によって特徴付けられる疾患(本明細書において「タンパク質欠損に関連する疾患」ともいわれる)である。本開示の送達物質、例えば、LNPは、タンパク質の欠損をもたらす遺伝的欠陥に対応するタンパク質をコードするメッセンジャーRNA (mRNA)分子を含む組成物に、製剤化することができる。タンパク質欠損に関連する疾患の処置のために、例えばmRNAを含む、ポリ核酸構築物の製剤を、適切な標的組織へのmRNAの送達のために対象(例えば、マウス、非ヒト霊長類、またはヒトなどの哺乳動物)に投与することができ、ここでタンパク質合成中にmRNAが翻訳され、疾患を処置するのに十分な量でコードされたタンパク質が産生される。
【0123】
いくつかの局面において、疾患は、酵素、成長因子、サイトカイン、受容体、受容体リガンド、ホルモン、膜タンパク質、または膜結合タンパク質から選択されるタンパク質の欠損に関連している。
【0124】
いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、エリスロポエチン(EPO)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)から選択される酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、エリスロポエチン(EPO)またはアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)から選択される酵素である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、エリスロポエチン(EPO)、例えばヒトEPO (hEPO)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)、例えばヒトMMP-8 (hMMP-8)である。いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)ではない。
【0125】
いくつかの局面において、処置される疾患は感染性疾患またはがんである。いくつかの局面において、疾患は、抗体または抗原をコードする遺伝子ワクチンで処置される。
【0126】
いくつかの局面において、関心対象のタンパク質は抗原、例えばSARS CoV2タンパク質、例えばSARS-CoV2スパイクタンパク質、またはインフルエンザ抗原、例えばヘマグルチニン(HA)である。
【0127】
例えば哺乳動物などの、対象における欠損した遺伝子発現、感染、および/または活性に関連する疾患または状態を処置する方法の一例は、LNPおよび/または共重合体とともに組成物に製剤化された、機能的な関心対象のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むコドン最適化mRNA配列を含む核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物の治療有効量を、その必要のある哺乳動物に投与する段階を含む。
【0128】
いくつかの局面において、本開示における製剤のための関心対象のタンパク質をコードするmRNAは、その3'末端にポリ(A) (例えば、80個を超える、例えば、100~500個のアデニン残基のポリAテール)を含む。
【0129】
欠損した遺伝子発現に関連する疾患または状態を処置するための方法のさらなる例は、機能的ポリペプチドの欠損を有する対象を処置する方法であって、投与後に機能的ポリペプチドの発現が投与前よりも大きい、機能的ポリペプチドをコードする少なくとも一部分の少なくとも1つのmRNA分子を含む組成物を対象に投与する段階を含む該方法を含む。
【0130】
疾患を処置するためのmRNA組成物の効力は、疾患の動物モデルにおいてインビボで評価することができる。
【0131】
ある特定の局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物および組成物は、対象における欠損した遺伝子発現および/または活性に関連する疾患または状態の処置のための医薬の調製において有用である。
【0132】
いくつかの局面において、欠損遺伝子は酵素、例えば、エリスロポエチン(EPO)をコードする。いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物は、例えば慢性腎疾患または障害に起因する、貧血の処置のためのエリスロポエチン(EPO)をコードする。
【0133】
いくつかの局面において、欠損遺伝子は酵素、例えば、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)をコードする。いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物は、ASL欠損症の処置のためのアルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)をコードする。
【0134】
いくつかの局面において、欠損遺伝子は酵素、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)をコードする。いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物は、MMP-8欠損症の処置のためのマトリックスメタロプロテイナーゼ-8 (MMP-8)をコードする。
【0135】
いくつかの局面において、欠損遺伝子は酵素、例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)である。いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物は、OTC欠損症の処置のためのオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードする。
【0136】
いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物は抗原、例えば、ヘマグルチニン(HA)またはSARS-CoV2タンパク質(例えば、SARS-CoV2スパイクタンパク質)をコードする。いくつかの局面において、本開示のmRNA構築物および組成物(例えば、ワクチン)は、インフルエンザまたはCOVID感染の処置または予防のための抗原をコードする。
【0137】
本開示のポリヌクレオチド構築物および組成物は、非経口、経口、局所、直腸、吸入などのような種々の投与経路で投与することができる。製剤は、選択された投与経路によって変化するであろう。いくつかの局面において、投与の経路は、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内の経路である。
【0138】
特定の状態にとって適切である投薬量の決定は、当技術分野における技量の範囲内である。本開示の組成物の有効用量は、多くの異なる因子に応じて変化し、該因子は以下を含む: 投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、施される他の治療、ならびに、組成物それ自体の特異的な活性、および個体において所望の応答を誘発するその能力。通常、患者はヒトであるが、いくつかの疾患に関しては、患者は非ヒト哺乳動物であることができる。
【実施例
【0139】
実施例1. 例示的な関心対象のタンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物の調製
プラスミドDNA構築物を用いてインビトロ転写(IVT)により、OTCポリヌクレオチド構築物を調製した。プラスミドDNA構築物には、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指令を含めたが、化学修飾(例えば、シュードウリジン)は、IVT反応への所望のヌクレオチドの添加によって決定された。初めに、プラスミドDNA 1 ugあたり5単位のXbaI制限酵素を用いてプラスミドDNAを直鎖化した。37度で終夜のインキュベーション後、DNAをフェノール/クロロホルム抽出により精製した。T7ポリメラーゼおよびCleanCapを用いて37度で3時間、共転写キャッピング(例えば、Cap1)に加えてIVT反応を実施した。IVT反応後、得られたmRNA産物をDNase処理後、透析ろ過により精製した。精製したmRNAをその後、RNA 1 mgあたり300単位のポリAポリメラーゼで酵素的にポリアデニル化し、所望のポリAテールの長さに依って、15~60分間インキュベートした。次いで、mRNA産物を透析ろ過およびHPLCにより精製した後に、所望の濃度に調整し、滅菌ろ過して分注した。
【0140】
実施例2. 効能および耐容性に及ぼすポリ(A)テールの長さの影響
実施例1に記述したようなOTC mRNA構築物を、可変長を有するポリ(A)テールで調製した。第1の実験では、OTC mRNAを転写し、粗転写物を、予め加温したまたは冷却したポリAポリメラーゼを用いた反応の鋳型として使用した。第2の実験では、OTC mRNAを転写し、精製し、精製した転写物を、予め加温したまたは冷却したポリAポリメラーゼを用いた反応の鋳型として使用した。第3の実験では、的確なポリAテールの長さを得るための反応時間を決定した。
【0141】
ポリA実験1および2では、作製したポリAテールの長さに有意差は起きなかった。さらに、酵素の温度は反応性能に影響しなかった。実験1および2では、反応時間は30分であった。実験3では、45分、60分、および75分の反応時間を試験した。60分および75分の反応時間では、長さが300ヌクレオチド(nts)超のポリAテールを作ることができた。反応時間が長いほど長いテールが生じたが、反応時間は産物の純度にも影響した。
【0142】
効力および耐容性に及ぼす異なるポリ(A)テールの長さ(コードされているまたは酵素による)の影響を評価するため、ラット反復投薬試験を実施した。LNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)中に封入された、異なるポリ(A)テールの長さ(80、161、208、262、322、または440 nts)を有するmRNAを含むOTC構築物を、雄性Srague Dawleyラット(7~8週齢)にD0、7、および14の時点で投与した(表2A)。実験はD1 (投薬の24時間後)またはD15 (最終投薬の24時間後)の時点で終了した。投与した各製剤のZ-Avg、PDIおよび%封入(% Encaps)を表2Bに示す。全ての製剤を社内LALアッセイによりエンドトキシンについて試験された。全ての製剤は0.5 mg/mL時に2 EU/mL未満であった。
【0143】
(表2A)LNP2製剤の投与および投薬
【0144】
(表2B)LNP2製剤の特徴
【0145】
最初の投薬から6時間後の単球走化性タンパク質-1 (MCP-1)誘導レベルを、さまざまなポリA構築物について分析し、その結果を図1に示す。
【0146】
反復投薬時の、さまざまなポリAテール長を有するmRNAを含むOTC構築物とともに製剤化されたLNPの投与に対する免疫応答の誘導を分析するために、各投薬日の投薬の6時間後にテールポークを取得し、ラットのサイトカイン誘導を定量化した。投薬(0日目、7日目、および14日目)の6時間後の単球走化性タンパク質-1 (MCP-1)誘導レベルを分析した(図2A)。80 ntsのコードされたポリ(A)を有するOTC mRNAは、161、208、262、322、または440 ntの酵素的ポリ(A)テールを有するOTC mRNA構築物と比較してさらに高いMCP-1誘導レベルをもたらした。MCP-1およびインターフェロンγ誘導タンパク質10 (IP-10)の誘導レベルをD0、D7、およびD14日目の投薬の6時間後の時点で分析した(図2B)。全ての応答をPBS対照群と比較した。80 ntのコードされたポリ(A)テールを有するOTC mRNA構築物は、80ヌクレオチドより大きい酵素的ポリ(A)テールを有する試験されたOTC mRNA構築物と比較して、さらに高いMCP-1 (図2A)およびIP-10 (図2B)誘導を示した。
【0147】
OTCタンパク質発現を分析するため、最終投薬の24時間後にラット肝臓試料を採取し、瞬間冷凍した。80ヌクレオチドのコードされたポリ(A)を有するOTC構築物は、80ヌクレオチドより大きい酵素的ポリ(A)テールを有するOTC構築物と比較して、肝臓における最も低いhOTCタンパク質発現を有していた(図3Aおよび図3B)。
【0148】
実施例3. 修飾OTC mRNA構築物
効力および耐容性に及ぼす化学修飾の影響を評価するために、マウス試験を実施した。実施例1で調製したOTC mRNA (およそ180~480ヌクレオチド長のポリAテール範囲を有する)を、TriLink法を用いて、シュードウリジン(PsU)、N1-メチル-シュードウリジン(N1MePsU)、または5-メトキシウリジン(5-methoxyduridine) (5MoU)のいずれかで化学修飾した(表3A)。
【0149】
化学修飾したmRNAをLNP1またはLNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)中に製剤化し(表3B)、マウスに投与した(0.5 mg/kg) (表3C)。
【0150】
(表3A)mRNAの化学修飾
【0151】
(表3B)化学修飾mRNAのLNP製剤
【0152】
(表3C)化学修飾mRNAの投与
【0153】
改変OTC mRNA製剤投与後のMCP-1レベルを分析した(図4)。試験された異なるOTC mRNA化学修飾間でMCP-1応答に有意差はなかった。LNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)はLNP1と比較してわずかに刺激性が高かった。
【0154】
次に、ヒトOTC発現をELISAにより分析した(図5)。両方のLNPにおいてOTC mRNA PsU修飾とN1MePsU修飾の間でOTC発現は同様のレベルであった。最も低いOTC発現は、OTC mRNA 5MoU-LNP処置動物において検出された。OTC mRNA N1MePsU-LNP1処置動物は、OTC mRNA PsU-LNP1処置動物よりも高いOTC発現を有していた。OTC mRNA PsU-LNP2処置動物は、OTC mRNA N1MePsU処置動物よりも高いOTC発現を有していた。
【0155】
実施例4. ラットにおけるOTC mRNA-LNP耐容性およびOTC発現
OTC mRNA-PsUの効力および耐容性をラット反復投薬試験において評価した。OTC mRNA-PsU (0.25 mg/kg)をLNP1 (PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPCもしくはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、またはLNP3 (PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)のいずれかに製剤化し、0日目、7日目および14日目にマウスに投与した(表4A)。EPOおよびLUCをLNP1に担持させ、対照として投与した。
【0156】
(表4A)OTC mRNA構築物-PsUの投与および投薬
【0157】
投与した各製剤のZ-Avg、PDIおよび%封入を表4Bに示す。投入バッチサイズは3 mgであった。LNPは100 mM酢酸塩, pH5で製剤化し、TFUでワークアップした。アリコートを-80℃で保管し、試験品を投薬の各日に調製した。
【0158】
(表4B)LNP1、LNP2およびLNP3の製剤特性
【0159】
PEG抗体レベルを調べるために、各投薬日(D0、7、および14)の投薬前に血液を採取した。抗PEG IgG (図6A)および抗PEG IgM (図6B)抗体応答の両方を定量化した。抗PEG抗体は、LNP1のみで処置したラットにおいて観察された。試験したOTC mRNA構築物は、EPOおよびLUCペイロードよりも免疫原性が低かった。LNP1による抗PEG抗体の作製は、血液クリアランスの加速および反復投薬時の効力の喪失をもたらした(データは示さず)。
【0160】
MCP-1誘導を調べるために、各投薬から6時間後に血液を採取した。OTC mRNA構築物を含むLNPの反復投薬によるMCP-1の増加はほとんどまたは全く見られなかったが、これは免疫原性の低さと相関している(図7)。
【0161】
OTC発現レベルを調べるために、各投薬日の投薬前に血液を採取した。LNP2製剤は最も強力であり、一方LNP1製剤は最も効力が低かった(図8)。OTCタンパク質の蓄積が最も高かったのはLNP2製剤であった。このデータは、抗体が産生されず、血液クリアランスの加速が見られなかったことを示す免疫原性データによって支持される。OTC mRNA構築物-LNP2組成物も、最も低い反復投薬MCP-1レベルを有していた。
【0162】
脂質クリアランスを質量分析により投薬の24時間後に定量化した。LNP1およびLNP2 (13-B43)は投薬の14日後の時点で存在したが、LNP2 (18-B6)およびLNP3は投薬の6時間後までに急速に消失することが、単回投薬試験から示された(データは示さず)。OTC mRNA構築物-LNP1またはOTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)の反復投薬により、肝臓における脂質の蓄積が起きた(図9)。OTC mRNA構築物-LNP2 (18-B6)またはOTC mRNA構築物-LNP3の蓄積は、反復投与によっても見られなかった(全てのレベル<500 ng/gのLLOQ)。
【0163】
肝臓損傷のマーカーを分析するため、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルを定量化した。血清を投薬初日および最終日に24時間の時点で採取した。反復投薬(0.25 mg/kgを週1回×3用量; 計0.75 mg/kg投与)では、ALT/AST値に有意な変化は認められなかった(図10Aおよび10B)。LNP1およびLNP2 (13-B43)製剤の両群は3回目の投薬後、LNP2 (18-B6)およびLNP3製剤と比較して、相対的に高いASTを有する。
【0164】
実施例5. ラットにおける単回投薬 対 反復投薬の脂質クリアランス
OTC mRNA構築物-LNPの単回用量および反復用量の投与後の脂質クリアランスを評価した。OTC mRNAをLNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)に製剤化し、1用量あたり0.25 mg/kgでラットに投与した。単回投薬の場合、ラットにD0時に製剤を投与し、終時点は投与から30分、1時間、3時間、6時間および24時間後であった(表5A)。単回高用量(2 mg/kg)をD0時に投与し、終時点をD1とした。反復投薬の場合、ラットに製剤を7日ごとに1回、最大49日間投与した(7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、42日目、および49日目)。8回目の処置(49日目)後、終時点は投薬から30分、1時間、3時間、6時間および24時間(50日目)後に収集した。D0、7、14、21、28、35、42および49の時点に、PBSを対照として投与した(5 mL/kg)。投薬した各製剤のZ-Avg、PDI、および封入%を表5Bに示す。
【0165】
(表5A)OTC mRNA構築物-LNP2の単回および反復投薬
【0166】
(表5B)OTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)の製剤特性
【0167】
サイトカイン応答を測定するため、全ての終時点で血液を採取した。測定されたサイトカインはMCP-1、IP-10およびマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)であった。0.25 mg/kgの週1回の反復投薬からはサイトカイン応答は生み出されなかった(図11A~11C)。2 mg/kgの単回用量の投与により有意なサイトカイン応答が認められた。
【0168】
PEGおよびOTC抗体レベルを調べるために、各投薬前に血液を採取した。反復投与による抗PEG IgMレベルの増加傾向は認められなかった(図12)。同様に、OTC mRNA構築物-LNP2の反復投与による抗PEG IgGレベルの増加は認められなかった(図13)。反復投与により抗OTC IgM抗体は検出されなかった(図14)。同様に、抗OTC IgG抗体は、OTC mRNA構築物-LNP2の反復投与によっても検出されなかった(図15)。
【0169】
hOTCは、各投薬の24時間後の時点で肝臓でも検出された(図16)。肝臓および血漿中のOTC mRNAのレベルを処置1または8 (49日目)後、経時的(30分、1時間、3時間、6時間、および24時間)に定量化した(図17Aおよび17B)。
【0170】
実施例6. SDラットにおける単回用量範囲探索試験
次に、OTC mRNA構築物とともに製剤化されたLNP1 (PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2 (PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)、およびLNP2 (PEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)の効力および耐容性を、SDラットでの用量応答試験において評価した。ラットにOTC mRNA構築物-LNP2をさまざまな濃度(0.5 mg/kg、1 mg/kg、または1.5 mg/kg)で投与し、6時間または24時間分析した(表6A)。対照として、一部のラットに5 mL/kg PBS、1.5 mg/kg LNP1、または1.5 mg/kg LNP2を投与した。投与した各製剤のZ-Avg、PDIおよび%封入を表6Bに示す。
【0171】
(表6A)LNP1およびLNP2の用量応答試験
【0172】
(表6B)用量範囲試験のためのLNPの製剤
【0173】
肝臓損傷を分析するため、最終投薬の24時間後に肝臓試料を採取し、ALT、AST、GGT、および総ビリルビンレベルを分析した。ALT/ASTレベルは、空と比較してmRNA LNPでさらに上昇している(図18A~18Dおよび表7)。LNP1、LNP2 (13-B43)、またはLNP2 (18-B6)の投与量の増加に伴いALT/ASTレベルが上昇する傾向があった。1.5 mg/kgのLNP2 (13-B43)の投与は、同量のLNP1よりも高いレベルのALT/ASTを誘導した。
【0174】
(表7)異なる量のLNP2を投与したラットにおけるALTおよびASTレベル
【0175】
GGTおよび総ビリルビンレベルを最終投薬の24時間後に採取した試料において分析した。LNP1またはLNP2 OTC mRNA製剤の投与量の増加に伴いGGTおよび総ビリルビンレベルが上昇する傾向があった(図19A~19D)。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)の投与は、同量のOTC mRNA構築物-LNP1と比較して同様のレベルのGGTを誘導した。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2の投与は、同量のOTC mRNA構築物-LNP1と比較してさらに高いレベルの総ビリルビンを誘導した。
【0176】
最終投薬の24時間後の採血から全血球数を得た。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP1を投与したラットは、1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)を投与したラットと比較して同様の数の好中球、単球、および血小板を有していた(図20A~20C)。OTC mRNA構築物-LNP2の投与量の増加により、好中球の量は増加したが、単球および血小板の量は減少した。
【0177】
サイトカインレベルを調べるために、投薬の6時間後に血液を採取し、MCP-1、MIP-1α、およびIP-10のレベルを定量化した。空とOTC mRNA構築物-LNP組成物との間でMCP-1およびMIP-1αレベルに有意差はなかった(図21A~21C)。LNP1およびLNP2 OTC mRNA製剤は空と比較して、さらに高いレベルのIP-10を誘導した。OTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)の投与により、サイトカインレベルの用量依存的な上昇も認められた。
【0178】
hOTC発現を、最終投薬の24時間後にウエスタンブロッティングによって調べた。OTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)の投与量の増加に伴い、OTC発現の用量依存的な増加が認められた(図22)。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2 (13-B43)は、1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP1と比較してさらに高いOTC発現をもたらした。
【0179】
実施例7. 非ヒト霊長類の用量範囲試験
OTC mRNA構築物とともに製剤化されたLNP1 (PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)の効力を、非ヒト霊長類(NHP)での用量応答試験において評価した。OTC mRNA構築物は、5'オープンリーディングフレーム、および3'配列、80ヌクレオチドから440ヌクレオチド(すなわち、284ヌクレオチド)のポリAテール長を有するヌクレオチド配列を含み、シュードウリジン(Ψ)修飾されていた。非ヒト霊長類に3つの異なる日(1日目、8日目、および15日目)に、さまざまな濃度(0.25 mg/kg、1 mg/kg、3 mg/kg、または5 mg/kg)で1用量のOTC mRNA構築物-LNP1を投与した(表8)。結果を16日目に分析した。対照として、非ヒト霊長類に5 mg/kgの空のLNP1を投与した。
【0180】
(表8)非ヒト霊長類用量範囲試験のためのLNPの製剤
【0181】
ヒトOTC発現を、非ヒト霊長類の肝臓試料において16日目に分析した。内因性発現と比較して、最も低いOTC発現は0.25 mg/kgの用量で検出され、最も高い発現は3 mg/kgの用量で検出された(図23A)。最初の標的hOTC発現(8%)は、最低用量(0.25 mg/kg)で達成された。
【0182】
サイトカインレベルを調べるために、1日目の最初の投薬から6時間後に試料を採取し、MCP-1およびIL-6のレベルを分析した(図23Bおよび23C)。MCP-1およびIL-6は、0.25 mg/kg用量では検出されなかった。MCP-1およびIL-6の一過性の上昇は、3 mg/kg用量において観察された。
【0183】
これらの結果から、低い免疫刺激で強いhOTC発現が示された。
【0184】
実施例8: マウスにおけるhEPO mRNA-LNPのインビボ発現
プラスミドDNA構築物を用いてインビトロ転写(IVT)により、ヒトエリスロポエチン(hEPO)ポリヌクレオチド構築物を調製した。プラスミドDNA構築物は、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指示を含んだが、化学修飾(例えば、シュードウリジン)は、IVT反応への所望のヌクレオチドの添加によって決定された。mRNAはIVT反応中に5'末端でキャップされた。IVT反応後、得られたmRNA産物を、LiCl沈殿および/または酵素的ポリアデニル化の後に、セルロースに基づくクロマトグラフィーによる別ラウンドの精製により精製した。最終mRNA産物を、ろ菌濾過して分注する前に、所望の濃度に調整した。
【0185】
プラスミドDNA構築物は、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指示を含んだ。EPOポリヌクレオチド構築物は、SEQ ID NO:1の5' UTR配列を含み、3' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含む。ヒトEPO ORFの配列を以下に示す:
【0186】
ヒトEPO (hEPO) mRNA構築物を、「T」コネクタを用いてLNPに製剤化した。LNPは4脂質成分: PEG2000-C-DMA、13-B43、コレステロール、およびDSPCをそれぞれ1.6 : 54.6 : 32.8 : 10のモル比で含んでいた。これらの脂質およびモル比を用いて脂質ストックを調製し、100%エタノール中およそ7 mg/mLの総濃度を達成した。mRNAを酢酸, pH 5緩衝液およびヌクレアーゼ不含水中で希釈し、100 mM酢酸, pH 5中0.366 mg/mLのmRNAの標的濃度を達成した。等容量の脂質および核酸溶液を、T-コネクタを通して400 mL/分の流速で混合し、およそ4容量のPBS, pH 7.4で希釈した。製剤をSlide-A-Lyzer透析ユニット(MWCO 10,000)に配し、10 mM Tris, 500 mM NaCl, pH 8緩衝液に対して終夜透析した。透析後、VivaSpin濃縮ユニット(MWCO 100,000)を用いて製剤をおよそ0.6 mg/mLまで濃縮し、5 mM Tris, 10%スクロース, pH 8緩衝液に対して終夜透析した。製剤を0.2 μmのシリンジフィルタ(PES膜)に通してろ過した。核酸濃度をRiboGreenアッセイによって決定した。Malvern Nano Series Zetasizerを用いて粒子径および多分散性を決定した。
【0187】
mRNA-LNPをマウスに静脈内投与した。投薬の6時間および24時間後の時点でマウス血漿中のhEPOタンパク質レベルを測定した。頑健な発現が6時間および24時間の両時点で達成され、用量依存的な発現が投薬の6時間後で明白であった(図24A)。mRNA-LNPの耐容性を、投薬の6時間後の時点でMCP-1の測定を通して評価した。試験した全ての用量レベルで、PBS対照と比較して最小限の差異が示された(図24B)。
【0188】
実施例9: マウスにおけるhMMP-8 mRNA-LNPのインビボ発現
実施例8に記述されている方法を用いて、ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ8 (hMMP-8)ポリヌクレオチド構築物を調製した。プラスミドDNA構築物は、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指示を含んだ。MMP-8ポリヌクレオチド構築物はSEQ ID NO:1の5' UTR配列を含み、3' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含む。ヒトMMP-8 ORFの配列を以下に示す:
【0189】
ヒトMMP-8 (hMMP-8) mRNA構築物を、実施例8に記述したのと同じLNP組成物に製剤化し、マウスに静脈内投与した。hMMP-8タンパク質レベルを、投薬の0、2、6、24および48時間後の時点でマウス血漿中において測定した。頑健な発現が全ての時点で達成され、用量依存的な発現の増加が投薬の6時間後で明白であった(図25A)。mRNA-LNPの耐容性を、投薬の6時間後の時点でIL-6の測定を通して評価した。試験した全ての用量レベルで、PBS対照と比較して最小限の差異が示された(図25B)。
【0190】
実施例10: マウスにおけるOVA mRNA-LNPのインビボ発現
ニワトリオボアルブミン(OVA)ポリヌクレオチド構築物を、実施例8に記述されている方法を用いて合成した。プラスミドDNA構築物は、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指示を含んだ。OVAポリヌクレオチド構築物はSEQ ID NO:1の5' UTR配列を含み、3' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含む。オボアルブミンORF (野生型およびコドン修飾型)の配列を以下に示す:
【0191】
実施例8に記述されている方法を使い「T」コネクタプロセスを用いてLNPにOVA mRNA (2-M9および2-M10)を別々に製剤化した。LNPは4脂質成分: PEG2000-C-DMA、13-B43、コレステロール、およびDSPCをそれぞれ1.5 : 50.0 : 38.5 : 10.0のモル比で含んでいた。0日目(D0)および21日目(D21)に、各LNP 1 μg用量をマウスに筋肉内投与した。マウス血漿中に存在する抗OVA IgG抗体を、ELISAを用いて35日目に定量化した。頑健な抗体力価がPBS対照群と比較して、2-M9および2-M10 mRNAの両方によって誘導された(図26)。
【0192】
実施例11: マウスにおけるHA mRNA-LNPのインビボ発現
ヘマグルチニン(HA)ポリヌクレオチド構築物を、実施例10に記述されている方法を用いて合成し、マウスに筋肉内送達した。プラスミドDNA構築物は、5' UTR、ORFおよび3' UTRのための指示を含んだ。HAポリヌクレオチド構築物はSEQ ID NO:1の5' UTR配列を含み、3' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含む。HA ORFを以下に示す:
【0193】
Tコネクタプロセスおよび実施例10に記述したのと同じLNP組成物を用いてHA mRNA (2-M6)を製剤化し、その後にマウスに投与した。10 μgまたは30 μg用量を0日目(D0)に投与した。マウス血清中に存在する抗HA IgG抗体を28日目に定量化した。頑健な抗体価が2-M6によって用量依存的に誘導された(図27A)。ヘマグルチニン阻害力価も28日目に採取したマウスの血清を用いて測定した(図27B)。HA mRNA-LNPで処置したマウスはPBS対照動物と比較してさらに高い力価を示したことが明らかである。
【0194】
このように、さまざまな局面が開示されている。上述した実施内容および他の実施内容は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。当業者は、開示されるもの以外の局面を用いて本開示を実施可能であることを理解するであろう。開示される局面は、限定ではなく例示の目的のために提示されており、かつ本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
図22
図23A
図23B
図23C
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2024515317000001.app
【国際調査報告】