(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-08
(54)【発明の名称】T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240401BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240401BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17
A61P37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567120
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2021102023
(87)【国際公開番号】W WO2022246942
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110573668.5
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523412038
【氏名又は名称】昭泰英基生物医薬(香港)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 鵬
(72)【発明者】
【氏名】李 揺
(72)【発明者】
【氏名】周 林付
(72)【発明者】
【氏名】湯 朝陽
(72)【発明者】
【氏名】秦 楽
(72)【発明者】
【氏名】姚 瑶
(72)【発明者】
【氏名】胡 朶
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BC11
4B065BD25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB07
(57)【要約】
本願は、T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤およびその使用を提供する。前記誘導剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。本願は、誘導剤を用いてT細胞のメチル化レベルの低下を誘導し、ヒストンの脱アセチル化およびヒストンのメチル化を抑制し、NK細胞受容体およびサイトカインを発現し、インビトロでT細胞をNK様細胞にリプログラミングするという目的を実現し、方法が簡単で、効率が高く、周期が短く、調製されたNK様細胞のインビトロ殺傷効果が顕著であり、細胞免疫治療分野で重要な意義を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤。
【請求項2】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDNAメチルトランスフェラーゼ1阻害剤を含み、デシタビンおよび/またはGSK-3484862であることが好ましい、
請求項1に記載の誘導剤。
【請求項3】
前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、Mocetinostat、Givinostat、またはEntinostatのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項1または2に記載の誘導剤。
【請求項4】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、Tazemetostatおよび/またはGSK126を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の誘導剤。
【請求項5】
前記誘導剤は、さらに医薬的に許容される補助剤を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の誘導剤。
【請求項6】
前記補助剤は、担体、希釈剤、賦形剤、充填剤、粘着剤、湿潤剤、崩壊剤、乳化剤、溶解補助剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、コーティング材、着色剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、または緩衝剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項5に記載の誘導剤。
【請求項7】
活性化されたT細胞と請求項1~6のいずれか1項に記載の誘導剤とを共培養し、NK様細胞を取得することを含む、
T細胞をNK様細胞にリプログラミングする方法。
【請求項8】
前記誘導剤は、デシタビン、GSK-3484862、Mocetinostat、Givinostat、Entinostat、Tazemetostat、またはGSK126のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、前記デシタビンの終濃度は0.05~0.5μMであり、
好ましくは、前記GSK-3484862の終濃度は0.5~8μMであり、
好ましくは、前記Mocetinostatの終濃度は0.1~0.5μMであり、
好ましくは、前記Givinostatの終濃度は0.05~1μMであり、
好ましくは、前記Entinostatの終濃度は0.05~1μMであり、
好ましくは、前記Tazemetostatの終濃度は0.1~5μMであり、
好ましくは、前記GSK126の終濃度は0.05~1μMである、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記共培養の時間は3~10日間である、
請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
活性化されたT細胞に、終濃度0.05~0.5μMのデシタビン、終濃度0.5~8μMのGSK-3484862、終濃度0.05~1μMのGSK126、終濃度0.1
~0.5μMのMocetinostat、終濃度0.05~1μMのGivinostat、終濃度0.05~1μMのEntinostat、または終濃度0.1~5μMのTazemetostatのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを加え、3~10日間培養し、毎日に半数の液を交換し、NK様細胞を取得することを含む、
請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
NK細胞受容体およびT細胞受容体を発現し、
好ましくは、前記NK細胞受容体は、NKp46、NKp30、NKp44、またはNKG2Dのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項7~10のいずれか1項に記載の方法で調製されたNK様細胞。
【請求項12】
請求項11に記載のNK様細胞を含む医薬組成物であって、
好ましくは、前記医薬組成物は、さらに医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の誘導剤、請求項11に記載のNK様細胞、または請求項12に記載の医薬組成物の、細胞免疫治療薬の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医薬技術分野に属し、T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
NK細胞は、天然免疫システムの重要な構成部分であり、活性化することなく異常細胞を殺傷することができ、且つ、殺傷効果に組織適合性複合体(MHC)の制限性がない。NK細胞は、人体内の最も有効で、活力が最も強い免疫細胞の1つであり、NKp46等のNK細胞受容体(NCR)によりウイルスおよびウイルス感染細胞を識別し、複数種のウイルスの免疫応答反応に関与する。しかし、人体内に自然に存在するNK細胞の数および再生能力が限られているため、細胞の由来は、NK細胞の腫瘍治療への応用を制限する主な障害となる。T細胞の表面のT細胞受容体(TCR)は、ウイルス感染細胞または外来抗原を識別して反応する。NK様細胞は、NKp46、NKp30、NKp44およびNKG2D等のNCR受容体を発現できるだけでなく、機能が完全なTCR受容体を発現することもでき、T細胞とNK細胞の機能を併有する。NK様細胞は、正常なNK細胞よりも強い殺傷活性および広い抗腫瘍効果を有するとともに、インビトロ条件で大量に増殖することもでき、インビトロで増殖したNK様細胞は、インビボで3週間以上生存し続けることができる。T細胞をNK様細胞にリプログラミングし、腫瘍および関連疾患の免疫治療に全く新しい細胞源を提供し、腫瘍細胞免疫治療の発展を大きく推進する。
【0003】
現在、T細胞のリプログラミング方法は、主にトランスジェニック手段に基づき、レンチウイルストランスフェクション、PBシステムエレクトロトランスフェクション、CRISPR/cas9システムノックアウト等を含むが、これらの方法に多くの欠陥があり、例えば、レンチウイルストランスフェクション方式は処理周期が長く、プロセスが煩雑であり、エレクトロトランスフェクション方式は、大量の初代T細胞を損失し、効率が低く、遺伝子の過剰発現またはノックアウト過程にオフターゲットの確率があり、且つ、以上の3種の方式は、いずれも規模化応用を実現しにくく、依然としてインビトロでNK細胞を大規模に取得する効果を根本的に実現することができない。
【0004】
化合物薬物に基づいてインビトロでT細胞のリプログラミングを実現してNK様細胞を大規模に調製できるか否かは、従来技術において、まだ関連する研究報道がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤およびその使用を提供し、誘導剤を用いてT細胞を処理することにより、T細胞の脱メチル化レベルを低減させ、ヒストンのアセチル化およびメチル化のプロセスが抑制され、且つNK細胞の表面受容体を発現し、サイトカインを分泌し、インビトロでT細胞をNK様細胞にリプログラミングするという目的を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1において、本願は、
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
T細胞をNK様細胞にリプログラミングする誘導剤を提供する。
【0007】
本願において、低分子薬物DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を用いてT細胞を処理し、T細胞にNK細胞受容体を発現させ、インビトロでT細胞をNK様細胞にリプログラミングするという目的を実現する。
【0008】
好ましくは、前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDNAメチルトランスフェラーゼ1阻害剤を含み、デシタビンおよび/またはGSK-3484862であることが好ましい。
【0009】
本願において、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNA methyltransferase 1、DNMT1)は、人体の最も重要なメチルトランスフェラーゼであり、さらに細胞周期の調節及び腫瘍抑制遺伝子の発現の制御の能力を有する。デシタビン(decitabine、DAC)は、シトシン類似物であり、特異的なメチルトランスフェラーゼ阻害剤に属し、DNAメチルトランスフェラーゼと共有結合して酵素活性を抑制し、DNAを脱メチル化させ、癌抑制遺伝子を再発現させることができる。GSK-3484862は、別のDNMT1非共有阻害剤であり、DNAの低メチル化を誘導することにより抗癌作用を果たす。
【0010】
本願において、デシタビンおよび/またはGSK-3484862を用いてT細胞のメチル化レベルの低下を誘導し、NK細胞を発現して関連分子を殺傷し、インビトロでT細胞をNK様細胞にリプログラミングするという目的を実現する。
【0011】
好ましくは、前記ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、Mocetinostat、Givinostat、またはEntinostatのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0012】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、染色体の構造修飾および遺伝子発現の制御で重要な作用を果たし、ヌクレオソームの弛緩を抑制することにより、各転写因子及び協同転写因子とDNAサイトとの結合を抑制することができ、他のクロマチンモジュレーターと相互作用し、エピジェネティックス過程を調節することができる。Mocetinostat、Givinostat(ITF2357)およびEntinostat(MS-275)は、いずれもHDACの新規の異質選択性(heterogeneous selection)阻害剤である。
【0013】
好ましくは、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、Tazemetostatおよび/またはGSK126を含む。
【0014】
ヒストンメチルトランスフェラーゼZeste相同タンパク質2エンハンサー(enhancer of zeste homolog 2、EZH2)は、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の酵素触媒サブユニットであり、ヌクレオソームのヒストンH3の27位のリシン(H3K27)をメチル化修飾することにより、下流の標的遺伝子のサイレンシングを引き起こし、細胞アポトーシス、細胞周期および細胞分化等の重要な生物学的過程で重要な作用を果たす。Tazemetostatは、経口EZH2低分子阻害剤であり、GSK126(GSK2816126)は、新規な選択性酵素活性阻害剤である。
【0015】
好ましくは、前記誘導剤は、さらに医薬的に許容される補助剤を含む。
【0016】
好ましくは、前記補助剤は、担体、希釈剤、賦形剤、充填剤、粘着剤、湿潤剤、崩壊剤、乳化剤、溶解補助剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、コーティング材、着色剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、または緩衝剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0017】
態様2において、本願は、
活性化されたT細胞と態様1に記載の誘導剤とを共培養し、NK様細胞を取得することを含む、
T細胞をNK様細胞にリプログラミングする方法を提供する。
【0018】
好ましくは、前記誘導剤は、デシタビン、GSK-3484862、Mocetinostat、Givinostat、Entinostat、Tazemetostat、またはGSK126のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0019】
好ましくは、前記デシタビンの終濃度は0.05~0.5μMであり、例えば、0.05μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、または0.5μMであってもよい。
【0020】
好ましくは、前記GSK-3484862の終濃度は0.5~8μMであり、例えば、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、または8μMであってもよい。
【0021】
好ましくは、前記Mocetinostatの終濃度は0.1~0.5μMであり、例えば、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、または0.5μMであってもよい。
【0022】
好ましくは、前記Givinostatの終濃度は0.05~1μMであり、例えば、0.05μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、または1μMであってもよい。
【0023】
好ましくは、前記Entinostatの終濃度は0.05~1μMであり、例えば、0.05μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、または1μMであってもよい。
【0024】
好ましくは、前記Tazemetostatの終濃度は0.1~5μMであり、例えば、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、または5μMであってもよい。
【0025】
好ましくは、前記GSK126の終濃度は0.05~1μMであり、例えば、0.05μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、または1μMであってもよい。
【0026】
好ましくは、前記共培養の時間は3~10日間であり、例えば、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、または10日間であってもよく、5日間であることが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記T細胞をNK様細胞にリプログラミングする方法は、
活性化されたT細胞に、終濃度0.05~0.5μMのデシタビンまたは終濃度0.5~8μMのGSK-3484862、終濃度0.05~1μMのGSK126、終濃度0.1~0.5μMのMocetinostat、終濃度0.05~1μMのGivinostat、終濃度0.05~1μMのEntinostatまたは終濃度0.1~5μMのTazemetostatのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを加え、3~10日間培養し、毎日に半数の液を交換し、NK様細胞を取得することを含む。
【0028】
態様3において、本願は、NK細胞受容体およびT細胞受容体を発現する態様2に記載の方法で調製されたNK様細胞を提供する。
【0029】
好ましくは、前記NK細胞受容体は、NKp46、NKp30、NKp44、またはNKG2Dのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0030】
態様4において、本願は、態様3に記載のNK様細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
好ましくは、前記医薬組成物は、さらに医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0032】
態様5において、本願は、態様1に記載の誘導剤、態様3に記載のNK様細胞、または態様4に記載の医薬組成物の、細胞免疫治療薬の調製における使用を提供する。
【発明の効果】
【0033】
従来技術と比べ、本願は、以下のような有益な効果を有する。
【0034】
(1)本願は、低分子薬物DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、またはヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2阻害剤のいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを用いてT細胞を処理し、T細胞にNK細胞受容体を発現させ、インビトロでT細胞をNK様細胞にリプログラミングするという目的を実現する。
【0035】
(2)本願は、上記誘導剤を用いて誘導されたリプログラミングT細胞は、NK細胞受容体NKp46およびNKp30を著しく高発現し、インビトロ殺傷効果が顕著であり、安定したT細胞とNK細胞の二重機能を有し、前記リプログラミングT細胞は、IFN-γおよびグランザイムB等のサイトカインを分泌し、免疫効果を生じることもできる。
【0036】
(3)本願のNK様細胞の調製方法は、プロセスが簡単で、リプログラミング効率が高く、T細胞のインビトロリプログラミング周期を著しく短縮し、初代T細胞の利用率を高め、大規模なプロセス普及に適し、細胞免疫治療分野で重要な意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図1B】DACによって誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図2A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図2B】DACによって誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図3A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図3B】GSK-3484862によって誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図4A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図4B】GSK-3484862によって誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図5A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図5B】DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図6A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図6B】DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図7A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図7B】GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図8A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図8B】GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図9A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図9B】GSK-3484862によって誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図10A】DMSOで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図10B】GSK-3484862によって誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図11A】Tazemetostatで処理されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図11B】GSK126によって誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図12A】Tazemetostatで処理されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図12B】GSK126によって誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図13A】TazemetostatとGSK-3484862によって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図13B】GSK126とGSK-3484862によって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図14A】TazemetostatとGSK-3484862によって共同誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図14B】GSK126とGSK-3484862によって共同誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞によるNKp30およびNKp46の発現状況の図である。
【
図15A】GSK-3484862によって誘導された、DACによって誘導された、Mocetinostatによって誘導された、GSK-3484862およびMocetinostatによって共同誘導された、DACおよびMocetinostatによって共同誘導されたT細胞、およびDMSOで処理されたT細胞のK562に対するインビトロ殺傷結果の図である。
【
図15B】GSK-3484862によって誘導された、Tazemetostatによって誘導された、GSK126によって誘導された、GSK-3484862およびTazemetostatによって共同誘導された、GSK-3484862およびGSK126によって共同誘導されたT細胞、およびDMSOで処理されたT細胞のK562に対するインビトロ殺傷結果の図である。
【
図16A】DACによって誘導されたT細胞とK562を共培養してIFN-γを分泌するレベルの結果図である。
【
図16B】DACによって誘導されたT細胞とK562を共培養してグランザイムBを分泌するレベルの結果図である。
【
図17A】GSK-3484862によって誘導されたT細胞とK562を共培養してIFN-γを分泌するレベルの結果図である。
【
図17B】GSK-3484862によって誘導されたT細胞とK562を共培養してグランザイムBを分泌するレベルの結果図である。
【
図18A】DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞とK562を共培養してIFN-γを分泌するレベルの結果図である。
【
図18B】DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞とK562を共培養してグランザイムBを分泌するレベルの結果図である。
【
図19A】GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞とK562を共培養してIFN-γを分泌するレベルの結果図である。
【
図19B】GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞とK562を共培養してグランザイムBを分泌するレベルの結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本願で使用される技術手段およびその効果を更に説明するために、以下、実施例および図面を参照しながら本願について更に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことが理解できる。
【0039】
実施例で具体的な技術または条件が明記されていない場合、本分野内の文献で説明された技術または条件に、あるいは製品の説明書に従って行う。使用される試薬または機器についてメーカーが明記されていないものは、いずれも正規のルートから購入できる通常の製品である。
【0040】
材料:
臍帯血は、広東省臍帯血造血幹細胞バンクに由来し、
Pan T細胞分離キットは、STEMCELL Technologies(カナダ)から購入され、
Transactは、ミルテニーバイオテク株式会社から購入され、
デシタビンは、Selleck(中国、上海セレックバイオテック株式会社)から購入され、
GSK-3484862、GSK126、Mocetinostat、Givinostat、EntinostatおよびTazemetostatは、MCE(MedChemExpress)社から購入され、
CD3 PE-Cy7、CD4 APC-Cy7、CD8 FITC、NKp30 PEおよびNKp46 APCは、いずれもBioLegend(米国)から購入され、
K562細胞は、ATCCに由来し、
ELISA検出試薬は、Dakewe Biotech有限公司から購入された。
【0041】
実施例1 ヒト臍帯血の初代T細胞の分離およびインビトロ培養
本実施例は、Ficoll-hypaque(フィコール-ハイペイク)密度勾配遠心分離法で臍帯血から単核細胞(UCBMC)を分離し、4×107個のCD3陽性UCBMCを一晩培養し、細胞密度が2×106/mLであり、残りのUCBMCを凍結保存し、Pan T細胞分離キットを用いてT細胞分取を行い、しばらく培養して4×107個
以上のCD3陽性T細胞を取得し、生存率≧70%であり、細菌、真菌、マイコプラズマ等の外来微生物による汚染がなかった。
【0042】
実施例2 低分子薬物でT細胞のリプログラミングを誘導した
(1)Transactで36時間活性化したT細胞を取り、300gで5min遠心分離し、IMDM+5%FBS+1%二重抗生物質(100×ペニシリン-ストレプトマイシンの混合溶液)+IL2(300 U)を用いてT細胞を再懸濁し、T細胞密度を(2~3)×105個/mLに調整した。
【0043】
(2)再懸濁したT細胞に各グループの低分子阻害剤薬物をそれぞれ加え、各薬物の添加の終濃度は表1に示す。毎日に半数の液を交換し、液交換後の体積に基づいて新しい薬物を追加し、初回投与をDay0とし、Day5まで継続的に投与すると、300gで5min遠心分離して液交換し、その後、IMDM+5%FBS+1%二重抗生物質(100×ペニシリン-ストレプトマイシンの混合溶液)で培養し続けた。
【0044】
【0045】
実施例3 フローサイトメトリー法でリプログラミングT細胞の表現型を検出した
(1)DACによって誘導された後、GSK-3484862によって誘導された後、DACとMocetinostatによって共同誘導された後、およびGSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導された後のDay6のT細胞および未処理のT細胞をそれぞれ200μL取り、400gで4min遠心分離し、上澄みを捨てた後、50μLのリン酸塩緩衝液(PBS)を加えて細胞を再懸濁し、その後、CD3
PE-Cy7、CD4 APC-Cy7、CD8 FITC、NKp30 PEおよびNKp46 APCをそれぞれ0.5μL加え、4℃において遮光下で30minインキュベートし、500μLのPBSを加えて抗体を希釈し、400gで4min遠心分離し、上清を慎重に捨て、300μLのPBSを加えて細胞を再懸濁し、フローチューブに移し、装置で検出した。
【0046】
(2)BD-flowcyto分析ソフトウェアを用いてデータ分析を行い、チューブ毎に10000個の細胞を収集し、NKp30の著しい増加の現れおよびNKp46陽性の細胞群の現れをリプログラミングが成功したマークとし、陽性T細胞の百分率を計算し
た。
【0047】
図1A、
図1B、
図2Aおよび
図2Bに示すように、DAC誘導グループ内のCD4 T細胞におけるNKp30の発現率は約83.2%であったが、DMSOグループ内のCD4 T細胞NKp30の発現率は約7.74%であり、デシタビン誘導グループ内のCD8 T細胞NKp46の発現率は約11.2%であり、NKp30の発現率は約60.5%であったが、DMSOグループ内のCD8 T細胞NKp46の発現率は約0.26%で、NKp30の発現率は約12.2%であった。デシタビンはNKp30およびNKp46を発現するようにT細胞を誘導することができることを示した。
【0048】
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bに示すように、GSK-3484862誘導グループ内のCD4 T細胞NKp46の発現率は約5.16%であり、NKp30の発現率は約81.4%であったが、DMSOグループ内のCD4 T細胞NKp30の発現率は約7.74%であり、GSK-3484862誘導グループ内のCD8 T細胞NKp46の発現率は約21.4%であり、NKp30の発現率は約50.8%であったが、DMSOグループ内のCD8 T細胞NKp46の発現率は約0.26%であり、NKp30の発現率は約12.2%であった。GSK-3484862はNKp30およびNKp46を発現するようにT細胞を誘導することができることを示した。
【0049】
図5A、
図5B、
図6Aおよび
図6Bに示すように、DMSOによって誘導されたT細胞と比べ、DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞におけるNKp30の発現量は7.84%であったが、NKp46はほとんど発現せず、また、DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD8 T細胞におけるNKp30の発現量は20.4%であったが、NKp46もほとんど発現しなかった。
【0050】
図7A、
図7B、
図8Aおよび
図8Bに示すように、GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞のうちのCD4 T細胞におけるNKp30の発現量は59.5%であり、NKp46の発現量は13.4%であったが、CD8細胞におけるNKp30の発現量は49.6%で、NKp46の発現量は37.2%であり、DACとMocetinostatの共同誘導の結果と比べ、GSK-3484862とMocetinostatによって誘導されたT細胞におけるNKp30およびNKp46の発現レベルはいずれも明らかに上昇することを示した。
【0051】
また、GSK-3484862によって誘導された後、Tazemetostatによって誘導された後、GSK126によって誘導された後、TazemetostatとGSK-3484862によって共同誘導された後、およびGSK-3484862とGSK126によって共同誘導された後のDay5のT細胞および未処理のT細胞に対して同じ操作を行い、フローサイトメトリー法によりリプログラミングT細胞の表現型を同定し、結果は、
図9A、
図9B、
図10A、
図10B、
図11A、
図11B、
図12A、
図12B、
図13A、
図13B、
図14Aおよび
図14Bに示す。図から分かるように、DMSOと比べ、単一の阻害剤によって誘導されたT細胞のうちのCD4およびCD8のNKp46およびNKp30は、いずれも明らかに発現し、更に、GSK-3484862とTazemetostatおよびGSK126とを併用した後、誘導されたT細胞のうちのCD4およびCD8のNKP46の発現量はいずれも明らかに上昇し、以上の結果は、単一の阻害剤(Tazemetostat、GSK126、GSK-3484862)、または二重阻害剤(Tazemetostat+gSK-3484862、GSK-3484862+GSK126)の併用はいずれもT細胞のNK様細胞へのリプログラミングを誘導できることを示した。
【0052】
実施例4 低分子薬物によって誘導されたリプログラミングT細胞のインビトロ殺傷の検出
(1)GSK-3484862によって誘導された、DACによって誘導された、Mocetinostatによって誘導された、GSK-3484862およびMocetinostatによって共同誘導された、DACおよびMocetinostatによって共同誘導されたT細胞と、DMSOで処理されたT細胞とをそれぞれ用い、異なるE:T(Effector cell:Target cell)(16:1、8:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4)に従って1×104個のK562細胞(ヒト慢性骨髄性白血病細胞)と混合し、96ウェル細胞培養プレートに加え、グループ毎に3つのウェルを設け、且つ、腫瘍細胞を単独で加えたグループをポジティブコントロールとして設け、250×gで5min遠心分離した後、37℃、5%のCO2インキュベータに置いて24時間共培養した。
【0053】
(2)24時間後に、96ウェル細胞培養プレートに100μL/ウェルでルシフェラーゼ基質(1×)を加え、細胞を再懸濁して均一に混合した直後に、多機能マイクロプレートリーダーによりRLU(relative light unit)を測定し、測定時間を0.1秒とし、ルシフェラーゼ(Luciferase)の定量的な殺傷効率の評価方法の殺傷割合の計算式は、以下のとおりである。
[数1]
100%×(対照ウェルの読取値-実験ウェルの読取値)/対照ウェルの読取値(細胞を加えないブランクグループの読取値は無視できる)
【0054】
結果は、
図15Aに示すように、GSK-3484862によって誘導された、DACによって誘導された、Mocetinostatによって誘導された、GSK-3484862およびMocetinostatによって共同誘導された、DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞は、いずれもヒト慢性骨髄性白血病細胞を効果的に殺傷することができる。
【0055】
また、同じ方法に従い、GSK-3484862によって誘導された、Tazemetostatによって誘導された、GSK126によって誘導された、GSK-3484862およびTazemetostatによって共同誘導された、GSK-3484862およびGSK126によって共同誘導されたT細胞とをそれぞれ用い、且つ対照としてDMSOで処理されたT細胞を用いて、リプログラミングT細胞のK562細胞に対する殺傷能力を検出し、結果は、
図15Bに示す。結果は、GSK-3484862によって誘導された、Tazemetostatによって誘導された、GSK126によって誘導された、GSK-3484862およびTazemetostatによって共同誘導された、GSK-3484862およびGSK126によって共同誘導されたT細胞は、いずれもヒト慢性骨髄性白血病細胞を効果的に殺傷することができることを示した。
【0056】
実施例5 低分子薬物によって誘導されたリプログラミングT細胞のサイトカインに対する分泌
DACによって誘導されたT細胞と、GSK-3484862によって誘導されたT細胞と、DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞と、GSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞と、DMSOで処理されたT細胞とを、それぞれヒト慢性骨髄性白血病細胞K562と48h共培養し、ELISAで上澄み中のサイトカインIFN-γおよびグランザイムBの発現レベルを検出した。
【0057】
結果は、
図16A、
図16B、
図17A、
図17B、
図18A、
図18B、
図19Aおよび
図19Bに示すように、DACによって誘導されたT細胞、GSK-3484862
によって誘導されたT細胞、DACとMocetinostatによって共同誘導されたT細胞、およびGSK-3484862とMocetinostatによって共同誘導されたT細胞はいずれも免疫効果を生じることができることを示した。
【0058】
上述をまとめ、本願は、デシタビンおよび/またはGSK-3484862を用いてT細胞をNK様細胞に誘導し、方法が簡単で、効率が高く、周期が短く、大規模調製に適し、得られたNK様細胞のインビトロ殺傷効果が顕著であり、安定したT細胞とNK細胞の二重機能を有し、細胞免疫治療分野で重要な応用の見通しを有する。
【0059】
本願は、上記実施例により本願の詳細方法を説明したが、本願は上記詳細方法に限定するものではなく、すなわち、本願は上記詳細方法に依存して実施しなければならないものではないと、出願人より声明する。当業者であれば、本願に対するいかなる改良、本願の製品の各原料に対する等価的な置換および補助成分の追加、具体的な形態の選択等は、全て本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【国際調査報告】