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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-09
(54)【発明の名称】小型パッチポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023564592
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060652
(87)【国際公開番号】W WO2022223757
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,816
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506324208
【氏名又は名称】ウノメディカル アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】オテル-ヤコブセン,エーリク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF04
4C066HH01
(57)【要約】
パッチポンプシステム(100)は、電子アセンブリ(106)と、流体を収容するためのリザーバ(102)と、ニードル(206)を後退位置から延長位置に選択的に移行させるための挿入器(104)とを有する。挿入器は、ニードルの遠位先端をリザーバに選択的に流体的に結合する流体チャネルを提供する。ニードルは、後退位置から延長位置に移行する際に少なくとも部分的に変形し、電子アセンブリは、流体をリザーバからニードルの遠位先端に選択的に分配する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子アセンブリと、
流体を収容するためのリザーバと、
ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるための挿入器であって、ニードルの遠位先端をリザーバに選択的に流体的に連結する流体チャネルを提供する挿入器と、を備え、
ニードルは、後退位置から延長位置に移行する際に少なくとも部分的に変形し、電子アセンブリは、流体をリザーバからニードルの遠位先端に選択的に分配する、パッチポンプシステム。
【請求項2】
リザーバは、ユーザに結合されるように構成されたベース表面を有し、
ベース表面は、ベース平面を画定し、
挿入器は、ニードルを後退位置から延長位置に移行させるために、ベース平面に対して実質的に平行な回転軸の周りを回転する内側部品を有する、請求項1に記載のパッチポンプシステム。
【請求項3】
リザーバとニードルの遠位先端との間に位置決めされたフィルタをさらに備える、請求項2に記載のパッチポンプシステム。
【請求項4】
フィルタは、そこを通過する流体からフェノールおよびメタクレゾールの残留物のうちの1つ以上を少なくとも部分的にフィルタ処理する、請求項3に記載のパッチシステム。
【請求項5】
パッチシステムは、幅49ミリメートル、奥行き39ミリメートル、厚さ12ミリメートル未満である、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項6】
パッチシステムは、幅約41ミリメートル未満、奥行き約36ミリメートル未満、厚さ約10ミリメートル未満である、請求項5に記載のパッチシステム。
【請求項7】
ニードルの遠位先端とリザーバとの間の流体チャネルに沿って位置決めされたバルブをさらに備える、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項8】
バルブは、流体がリザーバから流体チャネルを通ってニードルの遠位先端まで流れることを可能にする一方向バルブである、請求項7に記載のパッチシステム。
【請求項9】
リザーバとニードルの遠位先端との間の流体チャネルと直列に位置決めされたフィルタと、フィルタとリザーバとの間の流体チャネルに沿って位置決めされた第1の一方向バルブとをさらに備える、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項10】
ニードルの遠位先端とフィルタとの間の流体チャネルに沿って位置決めされた第2の一方向バルブをさらに備える、請求項9に記載のパッチシステム。
【請求項11】
リザーバは、電子アセンブリおよび挿入器から取り外し可能である、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項12】
電子アセンブリは、ニードルを後退位置と延長位置との間で選択的に移行させる、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項13】
電子アセンブリは、モータを選択的に制御して、挿入器を回転し、ニードルを後退位置と延長位置との間で移行させる、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項14】
電子アセンブリは、ニードルの延長長さを選択的に制御する、請求項13に記載のパッチシステム。
【請求項15】
電子アセンブリは、ニードルの挿入角を選択的に制御する、請求項13に記載のパッチシステム。
【請求項16】
ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるように構成された内側部品と、
挿入角コンポーネントと、をさらに備え、
内側部品が後退位置から延長位置に移行する際、ニードルは、挿入角コンポーネントによって少なくとも部分的に変形する、請求項1に記載のパッチシステム。
【請求項17】
ニードルは、後退位置において、挿入器内に適合するように弾性変形し、ニードルが後退位置から延長位置に移行する際に、挿入角コンポーネントとの接触を通じて偏向する、請求項16に記載のパッチシステム。
【請求項18】
ニードルは、ベースの外側に延びる際に、ほぼ直線状の形状を維持する、請求項17に記載のパッチシステム。
【請求項19】
電子アセンブリと、
流体を収容するためのリザーバと、
ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるための挿入器であって、ニードルの遠位先端をリザーバに選択的に流体的に連結する流体チャネルを提供する挿入器と、を備えるパッチポンプシステムであって、
パッチポンプシステムは、幅49ミリメートル未満、奥行き39ミリメートル未満、厚さ12ミリメートル未満である、パッチポンプシステム。
【請求項20】
リザーバは、ユーザに結合されるように構成されたベース表面を有し、
ベース表面は、ベース平面を画定し、
挿入器は、延長位置において、ニードルを、ベース平面を少なくとも約4ミリメートル過ぎて延長させる、請求項19に記載のパッチポンプシステム。
【請求項21】
パッチシステムは、幅約41ミリメートル以下、奥行き約36ミリメートル以下、厚さ約10ミリメートル以下である、請求項20に記載のパッチシステム。
【請求項22】
リザーバは、電子アセンブリおよび挿入器から取り外し可能である、請求項19に記載のパッチシステム。
【請求項23】
ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるように構成された挿入器の内側部品と、
挿入角コンポーネントと、をさらに備え、
内側部品が後退位置から延長位置に移行する際、ニードルは、挿入角コンポーネントによって少なくとも部分的に変形する、請求項19に記載のパッチシステム。
【請求項24】
ニードルは、後退位置において、挿入器内に適合するように弾性変形し、ニードルが後退位置から延長位置に移行する際に、挿入角コンポーネントとの接触を通じて偏向する、請求項23に記載のパッチシステム。
【請求項25】
ニードルは、ベースの外側に延びる際に、ほぼ直線状の形状を維持する、請求項24に記載のパッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザの皮下に流体を配送するためのパッチシステムに関し、より詳細には、ニードル挿入機構を有する小型パッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプシステムは、ユーザに、流体の長時間皮下注入を提供するように開発されている。多くの場合、ポンプシステムは、流体をリザーバからチューブにポンプ送給し、ユーザの皮下に位置決めされたニードルまたはカニューレを有する注入セットにつながる。ポンプシステムは、ユーザに、計量した流体配送を提供すために対応する電子または機械コンポーネントを有することができる。多くの場合、ポンプおよびリザーバは、注入セットから分離されており、リザーバからの流体は、チューブを介して注入セットにポンプ送給される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態は、電子アセンブリと、流体を収容するためのリザーバと、ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるための挿入器であって、ニードルの遠位先端をリザーバに選択的に流体的に連結する流体チャネルを提供する挿入器と、を備える。この実施形態では、ニードルは、後退位置から延長位置に移行する際に少なくとも部分的に変形し、電子アセンブリは、流体をリザーバからニードルの遠位先端に選択的に分配する。
【0004】
この実施形態の一例では、リザーバは、ユーザに結合されるように構成されたベース表面を有し、ベース表面は、ベース平面を画定する。挿入器は、ニードルを後退位置から延長位置に移行させるために、ベース平面に対して実質的に平行な回転軸の周りを回転する内側部品を有する。この例の一部は、リザーバとニードルの遠位先端との間に位置決めされたフィルタを有する。しかしながら、この例の別の部分は、フィルタを全く有していない。
【0005】
フィルタを有する例では、フィルタは、そこを通過する流体からフェノールおよびメタクレゾールの残留物のうちの1つ以上を少なくとも部分的にフィルタ処理する。
【0006】
この実施形態の一例では、パッチシステムは、幅49ミリメートル未満、奥行き39ミリメートル未満、厚さ12ミリメートル未満である。
【0007】
この実施形態の他の例では、パッチシステムは、幅約41ミリメートル未満、奥行き約36ミリメートル未満、厚さ約10ミリメートル未満である。
【0008】
この実施形態の他の例は、ニードルの遠位先端とリザーバとの間の流体チャネルに沿って位置決めされたバルブを含む。この例の一部では、バルブは、流体がリザーバから流体チャネルを通ってニードルの遠位先端まで流れることを可能にする一方向バルブである。
【0009】
この実施形態のさらに他の例は、リザーバとニードルの遠位先端との間の流体チャネルと直列に(in-line)位置決めされたフィルタと、フィルタとリザーバとの間の流体チャネルに沿って位置決めされた第1の一方向バルブとを有する。追加の例では、ニードルの遠位端とフィルタとの間の流体チャネルに沿って位置決めされた第2の一方向バルブを追加できる。
【0010】
この実施形態の他の例では、リザーバは、電子アセンブリおよび挿入器から取り外し可能である。
【0011】
この実施形態の他の例では、電子アセンブリは、ニードルを後退位置と延長位置との間で選択的に移行させる。
【0012】
この実施形態の他の例では、電子アセンブリは、モータを選択的に制御して、挿入器を回転し、ニードルを後退位置と延長位置との間で移行させる。この例の一部として、電子アセンブリは、ニードルの延長長さを選択的に制御する。この例の他の部分では、電子アセンブリは、ニードルの挿入角を選択的に制御する。
【0013】
この実施形態のさらに他の例は、ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるように構成された内側部品と、挿入角コンポーネントとを含む。この例では、内側部品が後退位置から延長位置に移行する際、ニードルは、挿入角コンポーネントによって少なくとも部分的に変形する。この例の一部では、ニードルは、後退位置において、挿入器内に適合するように弾性変形し、ニードルが後退位置から延長位置に移行する際に、挿入角コンポーネントとの接触を通じて偏向する。この例の他の部分では、ニードルは、ベースの外側に延びる際に、ほぼ直線状の形状を維持する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、電子アセンブリと、流体を収容するためのリザーバと、ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるための挿入器であって、ニードルの遠位先端をリザーバに選択的に流体的に連結する流体チャネルを提供する挿入器と、を有するパッチポンプシステムである。この実施形態では、パッチポンプシステムは、幅49ミリメートル未満、奥行き39ミリメートル未満、厚さ12ミリメートル未満である。
【0015】
この実施形態の一例では、リザーバは、ユーザに結合されるように構成されたベース表面を有し、ベース表面は、ベース平面を画定する。挿入器は、延長位置において、ニードルを、ベース平面を少なくとも約4ミリメートル過ぎて延長させる。この例の一部では、パッチシステムは、幅約41ミリメートル以下、奥行き約36ミリメートル以下、厚さ約10ミリメートル以下である。
【0016】
この実施形態の他の例では、リザーバは、電子アセンブリおよび挿入器から取り外し可能である。
【0017】
この実施形態のさらに他の例は、ニードルを後退位置から延長位置に選択的に移行させるように構成された挿入器の内側部品と、挿入角コンポーネントとを有する。この例では、内側部品が後退位置から延長位置に移行する際、ニードルは、挿入角コンポーネントによって少なくとも部分的に変形する。この例の一部では、ニードルは、後退位置で挿入器内に適合するように弾性変形し、ニードルが後退位置から延長位置に移行する際に、挿入角コンポーネントとの接触を通じて偏向する。この例の他の部分では、ニードルは、ベースの外側に延びる際に、ほぼ直線状の形状を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示の上述の態様およびそれらを取得する方法は、添付図面と併せて、本開示の実施形態の下記説明を参照することによってより明らかになり、本開示自体がより良く理解されるであろう。
【0019】
図1】パッチポンプシステムの上面斜視図である。
図2図1のパッチポンプシステムの断面図である。
図3図1のパッチポンプシステムの他の断面図である。
図4a】後退構成における図1のパッチポンプシステムの挿入器の概略図である。
図4b】延長構成における図1のパッチポンプシステムの挿入器の概略図である。
図4c】調節可能な挿入角を有する図1のパッチポンプシステムの挿入器の概略図である。
図5図1のパッチポンプシステムの概略断面図である。
図6a】ニードルを延長位置まで延長させるスプリングを利用した本開示の一実施形態を示す。
図6b】ニードルを延長位置まで延長させるスプリングを利用した本開示の一実施形態を示す。
図7a】リザーバがパッチポンプシステムから取り外し可能である一実施形態を示す。
図7b】リザーバがパッチポンプシステムから取り外し可能である一実施形態を示す。
図7c】リザーバがパッチポンプシステムから取り外し可能である一実施形態を示す。
図8a】挿入器のための歯車付きモータアセンブリの一実施形態を示す。
図8b】挿入器のための歯車付きモータアセンブリの一実施形態を示す。
【0020】
いくつかの図を通して、対応する部分を示すために対応する参照番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する本開示の実施形態は、網羅的で、または本開示を下記の詳細な説明の正確な形態に限定することを意図していない。むしろ、実施形態は、他の当業者が本開示の原理および実践を認識し理解できるように選択され説明されている。
【0022】
図1を参照すると、パッチポンプシステム100の一実施形態が示されている。パッチポンプシステム100は、挿入器104を有する注入アセンブリに流体を提供するリザーバ102を有することができる。さらに、電子アセンブリ106は、ここでより詳細に説明するように、リザーバ102からパッチポンプシステム100のコンポーネントへの流体の分配を制御するパッチポンプシステム100の一部でもよい。
【0023】
より詳細には、図2図3のパッチポンプシステムの断面図を参照すると、リザーバ102は、リザーバ102内の流体に圧力を選択的に印加するために、その中にピストン202などを有することができる。ピストン202は、モータおよび歯車アセンブリ204に接続でき、リザーバ102を通って軸方向に移動するようにピストン202を選択的に駆動する。このモータおよび歯車アセンブリ204は、電子アセンブリ106からのコンポーネントによって通電され制御できる。例えば、電子アセンブリ106は、内部にはバッテリーなどの電源と、プロセッサおよびメモリーユニットを有するコントローラとを有することができる。コントローラは、モータおよび歯車アセンブリ204に選択的に通電して、リザーバ102を通してピストン202を移動させることができる。この構成では、電子アセンブリは、リザーバ102内の任意の流体を所定のレートまたはサイクルで投与できる。
【0024】
ここではモータおよび歯車アセンブリについて説明するが、ここで考えられる別の実施形態は、モータおよび歯車アセンブリを有さず、ピストン202を移行させるためにスプリングなどを利用してもよい。代替として、ここで考えられる一実施形態では、モータは、ピストン202を直接駆動し、歯車アセンブリを全く有さなくてもよい。
【0025】
リザーバ102の一部が、挿入器104に流体的に結合され、リザーバ102からニードル206の外に流体を分配できる。挿入器104は、ニードル206を後退位置400(図4aを参照)から選択的に移行させることができ、ニードルは、挿入器104内で延長位置401(図4bを参照)まで実質的に収容され、ニードル206は、ベース平面からパッチポンプシステム100のベース表面302に沿って延びている。より詳細には、挿入器104は、回転軸304の周りで挿入器104のハウジング210に対して回転する内側部品208を有することができる。回転軸304は、ベース表面302のベース平面に対して実質的に平行でもよい。さらに、内側部品208は、リザーバ102に流体的に結合される流体チャネル212を有してもよい。流体チャネル212は、ピストン102がリザーバ102内の流体に十分な圧力を印加する場合、流体をリザーバ102から挿入器102を通ってニードル206の中に導いて、ニードル206の遠位部分から排出する。
【0026】
本開示の一態様では、バルブ214が、流体チャネル212とリザーバ102との間に少なくとも部分的に位置決めされる。バルブ214は、一方向バルブでもよい、流体は、リザーバ102から流体チャネル212に流れることができるが、流体チャネル212からリザーバ102に戻ることはできない。とりわけ、これは、汚染された流体がリザーバ102に入るのを防止できる。さらに、リザーバ102は、パッチポンプシステム100の残りのコンポーネントから取り外し可能でもよい。この構成では、パッチポンプシステム100のリザーバ102の流体が枯渇すると、枯渇したリザーバを取り外し、満杯のリザーバが代替として挿入器102に流体的に結合できる。
【0027】
取り外し可能なリザーバ702の一実施形態を図7a~図7cに示している。より詳細には、リザーバ702は、パッチハウジング704に取り外し可能に結合でき、リザーバ702はスライドして、挿入器104との流体接続をオンオフできる。パッチハウジング704は、リザーバ702に対応する受け入れ部分を画定でき、リザーバ702はスライドして、挿入器104との流体結合のオンオフを可能にする。流体結合位置では、リザーバ702は、リザーバ702を、挿入器104との流体結合位置にロックするラッチなどを有してもよい。しかしながら、リザーバ702が枯渇すると、ユーザは、ラッチを外して、リザーバ702をパッチハウジング704から取り外すことができる。そして、流体で満杯のリザーバが、続いて追加使用のためにそれに結合できる。この実施形態の一態様では、ほぼ円形のシールが、取り外し可能なリザーバ702と挿入器104との間の流体チャネル212の周りに位置決めでき、取り外し可能なリザーバ702がパッチハウジング704にラッチされた場合、流体チャネル212が取り外し可能なリザーバ702と挿入器104との間の交換部分で実質的に封止されることを確保できる。
【0028】
本開示の他の態様では、フィルタ216が、流体チャネル212に沿って位置決めできる。フィルタ216は、とりわけリザーバ102からニードル206に流れる流体からフェノールおよびメタクレゾールの残留物をフィルタ処理できる。しかしながら、フィルタ216として他のタイプのフィルタもここでは考えられる。
【0029】
挿入器102はまた、内側部品208とニードル206との間に位置決めされたバルブ218を有してもよい。バルブ214と同様に、バルブ218もまた、ニードル206からリザーバ102への流体の逆流を実質的に防止する一方向バルブでもよい。ここで考えられる実施形態が、バルブ214,218のうちの一方だけを有してもよく、他方は有さないことがある。代替として、ここで考えられる一実施形態が、ここで説明し図示するように位置決めされた両方のバルブ214,218を有する。
【0030】
内側部品208は、ニードル206に結合でき、内側部品208の回転によって、ニードル206を後退位置400と延長位置401との間で移動できる。内側部品208は、ニードル206に結合でき、回転軸304の周りのハウジング210に対する内側部品208の回転により、ベース表面302を越えて延びる前に、挿入角コンポーネント406内で挿入ガイドチャネル402に沿ってニードルを移行できる。より詳細には、ニードル206は、ニードル206が挿入器102の内部で弾性変形できるような材料特性を有する材料で形成できる。ニードル206は、典型的にはほぼ直線状の形状を有するが、ニードル206の弾性特性により、ニードル206が後退位置にある場合にハウジング210の内面に沿って曲がることが可能になる。
【0031】
ニードル206のこの円弧状の弾性変形により、挿入器102および対応するパッチポンプシステム100は薄型(即ち、厚さ112)を有することが可能になり、延長位置401においてニードル206がベース表面302を越えて所望の延長深さ404を達成でき、ニードルが後退位置400に達するために追加の軸方向クリアランスを必要としないためである。一例では、延長深さ404は約4ミリメートルでもよい。しかしながら、ここで考えられる他の実施形態では、延長深さ404は、4ミリメートルよりも大きくてもよく、4ミリメートルよりも小さくてもよい。さらに、内側部品208が回転する程度によって、ニードル206の延長深さ404を変更できる。本開示の一態様では、内側部品208の回転の程度は、電子アセンブリ106によって制御されて、延長深さ404を変更できる。
【0032】
換言すると、ほぼ直線状のニードルは、典型的には、ニードルの長手方向軸に沿って軸方向に移動し、後退位置と延長位置との間に移行する。これは、ニードルが後退位置を維持できるために、ニードルの長手方向軸に沿って十分な軸方向スペースを必要とする。ここで説明する屈曲ニードル206の構成を実装することによって、ニードル206は、後退位置400においてハウジング210に沿って部分的に屈曲でき、先行技術の設計と同じ延長深さ404を達成しながら、パッチポンプシステム100の必要な厚さ112を低減できる。
【0033】
挿入ガイドチャネル402は、ハウジング210の一部になり得る挿入角コンポーネント406内に形成できる。挿入ガイドチャネル402は、ユーザの皮膚上に位置決めされるように意図されたベース表面302に対して任意の所望の角度配向を有することができる。図4aと図4bに示す実施形態は、主に、ベース表面302からほぼ垂直に延びるニードル206を示すが、他の実施形態は、ベース表面302から約30度でニードル206を延びることができる。代替として、ここで考えられる他の実施形態は、ベース表面302に対して30度より大きく90度未満の角度でニードル206が延びるように導く挿入ガイドチャネル402を利用できる。さらに、他の実施形態は、ニードル206が30度未満の角度で延びるように導く挿入ガイドチャネル402を利用できる。
【0034】
図4cに示す本開示の一態様では、挿入器104は、パッチポンプシステム100内で旋回することができ、パッチポンプシステム100のベース表面304に対するニードル206の挿入角408を変更できる。これにより、ユーザまたは医療専門家は、ユーザにとって理想的な挿入角408を選択できる。ニードル206は、ニードル206に沿って延長可能なスリーブ410を有することができ、ニードル206がほぼ直線状の構成でベース表面304を越えて延びることを確保できる。スリーブ410は、スリーブ410と挿入器104との間でニードル206の周りに軸方向に位置決めされたスプリング412を有してもよい。この構成では、挿入角408が約90度である場合、スリーブ410は、スプリング412を圧縮し、実質的に挿入器104の空洞の内部に位置決めできる。しかしながら、挿入角408が90度未満である場合、スプリング412は、ベース表面304に向けてバイアスを与えるため、スリーブ410は少なくとも部分的に空洞の外に延びることができ、それによりスリーブ410は、ニードル206がユーザの中にさらに挿入されるためのチャネルを確実に提供できる。
【0035】
この実施形態のさらに他の態様では、電子アセンブリ106は、挿入角408を制御できる。より詳細には、挿入器104およびハウジング210は、ここで説明するように、挿入角408を変更するために電子アセンブリ106に対して回転可能でもよい。さらに、モータなどが、ハウジング210を通して挿入器104を選択的に回転でき、挿入角408を変更できる。この構成では、電子アセンブリ106は、モータを介して挿入器104を選択的に回転させることによって、挿入角408を選択的に変更できる。
【0036】
ここで図5を参照すると、パッチポンプシステム100の概略断面図500を示す。より詳細には、モータ502が電子アセンブリ106の一部として示されている。モータ502は、挿入器102の内側部品208に結合されたシャフトを有する。さらに、モータ502は、電子アセンブリ106のコントローラによって選択的に通電できる。代替として、モータ502は、ユーザ入力によって選択的に通電されてもよい。それでもモータ502は、後退位置400と延長位置401との間で内側部品208およびニードル206を回転させるように通電できる。さらに、ここで想定される一実施形態では、モータ502は、歯車アセンブリ802,804(図8aと図8bを参照)に結合でき、内側部品208を選択的に回転できる。さらに、歯車アセンブリ802,804は、遊星歯車アセンブリ、または当技術分野で知られている他のタイプの歯車アセンブリでもよい。
【0037】
図6aと図6bに示す本開示の他の実施形態では、内側部品208は、ニードル206を後退位置400から延長位置401に移行させるように構成された機械アセンブリを有してもよい。より詳細には、スプリング602が、延長位置401に向けてハウジング210に対して内側部品308にバイアスを与えるように位置決めできる。内側部品308は、後退位置においてアクティベータ604およびロックピン606を用いてロックできる。アクティベータ604は、ユーザによって係合でき、スプリング602によって印加されるバイアスに起因して、内側部品208を解放して延長位置401に回転できる。
【0038】
流体チャネル212は、回転軸304に沿って内側部品208に移行できる。この構成では、内側部品208の流体チャネル212は、内側部品208の角度配向に関係なく(即ち、ニードル206が後退位置400または延長位置401にあるかに関係なく)、流体チャネルを介してリザーバ102に流体的に結合された状態にできる。本開示の一態様では、内側部品208とリザーバ102との間にシールを位置決めできる。シールは、内側部品208とリザーバ102との間の交換部分において流体チャネル212の周りに円形状に位置決めできる。この場所にシールを位置決めすることにより、流体チャネル212内の流体がリザーバ102からニードル206に導かれることを確保できる。
【0039】
本開示の一態様では、屈曲ニードル206を利用する挿入器102は、先行技術のパッチポンプシステムよりも著しく小さいパッチポンプシステム全体100を提供する。より詳細には、パッチポンプシステム100は、長さ108、幅110および厚さ112を有することができ、その結果、先行技術のデバイスと比較して小型のパッチポンプシステムが得られる。一例では、幅110は、56ミリメートル未満であり、長さ108は、41ミリメートル未満であり、厚さは、14.5ミリメートル未満である。他の例では、幅110は、49ミリメートル未満、長さ108は、39ミリメートル未満、厚さは、12ミリメートル未満である。さらに他の例では、幅110は、約41ミリメートル、長さ108は、約36ミリメートル、厚さは、約10ミリメートルである。
【0040】
使用の際、パッチポンプシステム100は、ベース表面302上に接着剤などを有してもよい。代替として、パッチポンプシステム100は、パッチポンプシステム100の少なくとも一部に渡って延びる接着エレメントを有してもよい。いずれにせよ、パッチポンプシステム100は、ベース表面302がユーザの皮膚に隣接するようにユーザの皮膚に結合できる。パッチポンプシステム100は、ニードル206が後退位置400にある状態でユーザに結合できる。さらに、リザーバ102は、ユーザに投与する用意がある少なくともいくつかの流体をその中に有してもよい。いったんパッチポンプシステム100がユーザに結合されると、電子アセンブリ106は、挿入器102を用いてニードル206を後退位置400から延長位置401に移行できる。これによりニードル206の遠位先端をユーザの皮下に延ばす。挿入器102は、電子アセンブリ106へまたはモータ502への直接のユーザ入力により、挿入プロセスを開始できる。代替として、挿入器は、手動で係合させて、ニードル206を延長位置401に移行させてもよい。いったんニードル206が延長位置になると、電子アセンブリ106は、モータおよび歯車アセンブリ204と選択的に係合して、ピストン202を選択的に駆動させることによって、ニードル206を介してリザーバ102内の流体の設定した用量をユーザに提供できる。
【0041】
いったんユーザがパッチポンプシステム100を取り外す準備をすると、挿入器102は、電子アセンブリ106を介して、または手動で挿入器102を係合させることによって、ニードル206を後退位置400に移行できる。いったんニードル206が後退構成400になると、パッチポンプ100をユーザに保持している接着剤を除去するか、あるいはパッチポンプをユーザの皮膚から剥がすことができる。
【0042】
本開示の原理を組み込んだ実施形態について上述したが、本開示は、上記の実施形態に限定されない。その代わりに、本願は、その一般原則を用いて本開示の任意の変形、使用または適応を網羅することを意図している。さらに、本願は、本開示が関係する技術分野における既知または慣例の範囲内にあり、添付の請求項の範囲内に入るような本開示からの逸脱を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
【国際調査報告】